JP2017186808A - 木質ブレース構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、地震時に引張力を負担可能にしつつ、木質ブレースの破損を抑制することができる木質ブレース構造を提供することを目的とする。【解決手段】木質ブレース構造20は、架構10に設けられ、互いに対向する一対の連結ベース24Cと、材軸方向に延びる貫通孔34を有し、一対の連結ベース24Cの間に配置される木質ブレース30と、貫通孔34に貫通された状態で、一対の連結ベース24C同士を連結する引張線材40と、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、木質ブレース構造に関する。
木材によって形成された木質ブレースが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
特許文献2に開示された技術では、架構に設けられた一対の取付金物に、木質ブレースの両端部がそれぞれ固定されており、当該木質ブレースによって一対の取付金物が連結されている。また、一対の取付金物には、木質ブレースの側面に沿って配置された鋼筋かいの両端部がそれぞれ固定されており、当該鋼筋かいによって一対の取付金物が連結されている。これにより、特許文献2に開示された技術では、地震時に木質ブレースが圧縮力を負担する一方で、鋼筋かいが引張力を負担可能とされている。
特開2015−140616号公報 特開平10−237950号公報
しかしながら、特許文献2に開示された技術では、前述したように、木質ブレース及び鋼筋かいによって、一対の取付金物が連結されている。そのため、一対の取付金物から鋼筋かいに引張力が伝達される際には、一対の取付金物から木質ブレースにも引張力が伝達される。そのため、木質ブレースが破損等する可能性がある。
本発明は、上記の事実を考慮し、地震時に引張力を負担可能にしつつ、木質ブレースの破損を抑制することができる木質ブレース構造を提供することを目的とする。
請求項1に記載の木質ブレース構造は、架構に設けられ、互いに対向する一対の連結部と、材軸方向に延びる貫通孔を有し、一対の前記連結部の間に配置される木質ブレースと、前記貫通孔に貫通された状態で、一対の前記連結部同士を連結する引張線材と、を備える。
請求項1に係る木質ブレース構造によれば、木質ブレースは、材軸方向に延びる貫通孔を有し、架構に設けられた一対の連結部の間に配置される。また、引張線材は、木質ブレースの貫通孔に貫通された状態で、一対の連結部同士を連結する。
これにより、例えば、地震時における架構のせん断変形に伴って、一対の連結部の間隔が狭くなると、一対の連結部から木質ブレースに圧縮力が伝達される。この圧縮力に木質ブレースが抵抗することにより、架構のせん断変形量が低減される。つまり、木質ブレースが、圧縮ブレースとして機能する。
一方、地震時における架構のせん断変形に伴って、一対の連結部の間隔が広くなると、一対の連結部から引張線材に引張力が伝達される。この引張力に対して引張線材が抵抗することにより、架構のせん断変形量が低減される。つまり、引張線材が、引張ブレースとして機能する。
ここで、木質ブレースは、一対の連結部の間に配置されるが、一対の連結部同士を連結していない。そのため、一対の連結部の間隔が広くなっても、木質ブレースに引張力が伝達されない。したがって、引張力による木質ブレースの破損等が抑制される。
このように本発明では、地震時に、引張力を負担可能にしつつ、木質ブレースの破損を抑制することができる。
また、引張線材は、木質ブレースの貫通孔に貫通されるため、木質ブレースの外部から見え難い。したがって、木質ブレースの意匠性が向上する。
請求項2に記載の木質ブレース構造は、請求項1に記載の木質ブレース構造において、前記連結部は、前記木質ブレースの端面が接触されるとともに、前記引張線材の端部が貫通される連結ベースを有し、前記引張線材の前記端部には、前記連結ベースを挟んで前記木質ブレースと反対側に配置され、該連結ベースに係止される係止部材が設けられる。
請求項2に係る木質ブレース構造によれば、連結部は、木質ブレースの端面が接触される連結ベースを有する。この連結ベースには、引張線材の端部が貫通される。
ここで、引張線材の端部には、係止部材が設けられる。係止部材は、連結ベースを挟んで木質ブレースと反対側に配置される。この係止部材を連結ベースに係止することにより、引張線材の端部が連結ベースに連結される。これにより、地震時における架構のせん断変形に伴って、一対の連結ベースの間隔が広くなった場合に、一対の連結ベースから係止部材を介して引張線材に引張力が伝達される。
一方、地震時における架構のせん断変形に伴って、一対の連結ベースの間隔が狭くなると、連結ベースから係止部材が離れ、当該連結ベースと係止部材との係止状態が解除される。そのため、一対の連結ベースの変位に、引張線材が追従しない。したがって、一対の連結ベースの間隔が狭くなった場合には、一対の連結ベースから木質ブレースに圧縮力が伝達されるが、引張線材には圧縮力が伝達されない。これにより、引張線材の軸剛性(圧縮軸剛性)を考慮せずに、木質ブレースの軸剛性(圧縮軸剛性)を設定することができる。したがって、木質ブレースの設計が容易となる。
請求項3に記載の木質ブレース構造は、請求項1又は請求項2に記載の木質ブレース構造において、前記連結部には、前記木質ブレースの側面に沿って配置されるずれ止め部が設けられる。
請求項3に係る木質ブレース構造によれば、連結部には、ずれ止め部が設けられる。ここで、木質ブレースは、一対の連結部同士を連結していない。そのため、一対の連結部に対して、木質ブレースの端部がずれる可能性がある。特に、地震時における架構のせん断変形に伴って一対の連結部の間隔が広くなると、連結部に対して木質ブレースの端部がずれ易くなる。
これに対して本発明では、前述したように、連結部にずれ止め部が設けられる。ずれ止め部は、木質ブレースの側面に沿って配置される。このずれ止め部によって、連結部に対して木質ブレースの端部がずれることが抑制される。
これにより、地震時における架構のせん断変形に伴って一対の連結部の間隔が狭くなった場合に、一対の連結部から木質ブレースの端部に圧縮力をより確実に伝達することができる。つまり、本発明では、地震時に、木質ブレースを圧縮ブレースとしてより確実に機能させることができる。したがって、架構の耐震性能が向上する。
以上説明したように、本発明に係る木質ブレース構造によれば、地震時に引張力を負担可能にしつつ、木質ブレースの破損を抑制することができる。
第1実施形態に係る木質ブレース構造が適用された木質ブレースを示す立面図である。 図1に示される木質ブレースの端部を示す拡大立面図である。 図2の3−3線断面図である。 (A)及び(B)は、地震時における架構及び木質ブレースの変形状態を示す模式図である。 連結ベースに対するナットの係止が解除された状態を示す図2に対応する拡大立面図である。 第2実施形態に係る木質ブレース構造が適用された一対の木質ブレースを示す立面図である。 図6の一部拡大立面図である。 (A)は、第1実施形態における連結ベースの変形例を示す図2に対応する立面図であり、(B)は、図8(A)の8B−8B線断面図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る木質ブレース構造について説明する。
(第1実施形態)
先ず、第1実施形態について説明する。
図1に示されるように、本実施形態に係る木質ブレース構造20は、一対のベースブラケット22と、一対の端部ブラケット24と、木質ブレース30と、複数の引張線材40とを備えている。
一対のベースブラケット22は、架構10に設けられている。架構10は、一対の柱12と、一対の柱12に架設された上下の梁14とを有している。この架構10の対角上に、互い対向する一対のベースブラケット22が設けられている。なお、架構10は、鉄骨造や鉄筋コンクリート造、鉄筋鉄骨コンクリート造等であっても良い。
ベースブラケット22は、金属製とされており、架構10の構面の角部(隅部)に、柱12及び梁14に亘って配置されている。また、ベースブラケット22は、ブラケット本体部22Aと、フランジ部22Bと、固定プレート22Cとを有している。ブラケット本体部22Aは、リブ22Dによって補強されている。このブラケット本体部22Aの一端部には、柱12及び梁14に固定されるフランジ部22Bが設けられている。また、ブラケット本体部22Aの他端部には、端部ブラケット24が固定される固定プレート22Cが設けられている。
一対の端部ブラケット24は、金属製とされており、一対のベースブラケット22の間に、互いに対向して配置されている。各端部ブラケット24は、ブラケット本体部24Aと、固定プレート24Bと、連結ベース24Cとを有している。ブラケット本体部24Aは、断面十字状に形成されている。このブラケット本体部24Aの一端部には、固定プレート24Bが設けられている。固定プレート24Bは、前述したベースブラケット22の固定プレート22Cに重ねられた状態でボルト等によって固定されている。
ブラケット本体部24Aの他端部には、連結ベース24Cが設けられている。連結ベース24Cは、矩形の板状に形成されている。ここで、一対の端部ブラケット24の連結ベース24Cは、架構10の対角方向(矢印Z方向)に、互いに対向して配置されている。この一対の連結ベース24Cの間に、木質ブレース30が配置されている。
なお、一対の連結ベース24Cは、架構10の対角方向に限らず、上下方向(又は水平方向)に対して傾斜する方向に、互いに対向していれば良い。また、本実施形態では、ベースブラケット22及び端部ブラケット24によって連結部が構成されている。
木質ブレース30は、一対の連結ベース24Cの対向方向を材軸方向(矢印Z方向)として配置されている。この木質ブレース30は、複数の分割ピース32を有している。各分割ピース32は、例えば、集成材や無垢材等の木質材料によって、直方体状に形成されている。これらの分割ピース32は、木質ブレース30の材軸方向に配列されている。
図2に示されるように、木質ブレース30は、両端の端面30Tを連結ベース24Cの内面24C1に接触させた状態で、一対の連結ベース24Cの間に配置されている。一対の連結ベース24Cは、木質ブレース30の両端の端面30Tに、それぞれ重ねられている。また、各連結ベース24Cは、木質ブレース30の端面30Tに固定(接合)されておらず、当該端面30Tとは木質ブレース30の材軸方向に離間可能(相対変位可能)に接触されている。
各分割ピース32には、木質ブレース30の材軸方向に延びる複数の貫通孔34が形成されている。図3に示されるように、貫通孔34は、分割ピース32の各角部に形成されており、当該分割ピース32を材軸方向に貫通している。また、各貫通孔34は、円形状に形成されている。さらに、隣り合う分割ピース32の貫通孔34は、木質ブレース30の材軸方向に、互いに接続(連通)されている。
なお、貫通孔34の形状は、適宜変更可能であり、例えば、楕円形状や矩形状であっても良い。また、貫通孔34の配置も適宜変更可能である。
貫通孔34には、引張線材40が貫通されている。引張線材40は、例えば、PC鋼棒やPC鋼線、鉄筋等によって形成される。ここで、貫通孔34の直径は、引張線材40の直径(=2r)よりも大きくされている。また、貫通孔34には、グラウト等の充填材が充填されておらず、分割ピース32に引張線材40が固定されていない(アンボンド)。これにより、貫通孔34に対して引張線材40が、軸方向にスライド可能となっている。
図2に示されるように、引張線材40の端部は、連結ベース24Cに形成された連結孔42に貫通されている。連結孔42は、円形状に形成されるとともに、連結ベース24Cを厚み方向に貫通している。また、連結孔42の直径は、引張線材40の直径(=2r)よりも大きくされている。さらに、連結孔42には、グラウト等の充填材が充填されておらず、連結ベース24Cに対して引張線材40が固定されていない(アンボンド)。これにより、連結孔42に対して引張線材40が軸方向にスライド可能とされている。
また、引張線材40の両端の端部には、ネジが切られたネジ部40Aが形成されている。このネジ部40Aには、係止部材の一例としてのナット44が取り付けられている。ナット44は、連結ベース24Cを挟んで木質ブレース30と反対側に配置されている。
ナット44は、引張線材40のネジ部40Aに締め込まれた状態で、連結ベース24Cの外面24C2に解除可能に係止されている。これらのナット44及び引張線材40によって、一対の連結ベース24C同士が連結されている。また、ナット44を引張線材40のネジ部40Aに締め込むことにより、引張線材40に引張力が付与されている。つまり、本実施形態の引張線材40には、プレテンションが導入されている。これにより、一対の連結ベース24Cを介して木質ブレース30に圧縮力(プレストレス)が導入されている。この結果、隣り合う分割ピース32が圧着されている。なお、本実施形態では、ナット44は、ダブルナットとされているが、シングルナットであっても良い。
次に、第1本実施形態の作用について説明する。
本実施形態に係る木質ブレース構造20によれば、架構10には、一対の端部ブラケット24が設けられている。一対の端部ブラケット24は、一対のベースブラケット22を介して架構10に固定されている。また、一対の端部ブラケット24は、架構10の対角方向に、互いに対向する一対の連結ベース24Cを有している。この一対の連結ベース24Cの間に、木質ブレース30が配置されている。
木質ブレース30は、両端の端面30Tを一対の連結ベース24Cの内面24C1にそれぞれ離間可能に接触させた状態で、一対の連結ベース24Cの間に配置されている。この木質ブレース30は、複数の分割ピース32を有している。各分割ピース32は、木質ブレース30の材軸方向に延びる複数の貫通孔34を有している。また、各貫通孔34には、引張線材40がスライド可能に貫通されている。これらの引張線材40によって、一対の連結ベース24C同士が連結されている。
これにより、例えば、図4(A)に矢印P1で示されるように、地震時における架構10のせん断変形に伴って、一対の連結ベース24Cの間隔Gが狭くなると、一対の連結ベース24Cから木質ブレース30に圧縮力Sが伝達される。この圧縮力Sに木質ブレース30が軸剛性(圧縮軸剛性)で抵抗することにより、架構10のせん断変形量が低減される。つまり、木質ブレース30が、圧縮ブレースとして機能する。
一方、図4(B)に矢印P2で示されるように、地震時における架構10のせん断変形に伴って、一対の連結ベース24Cの間隔Gが広くなると、一対の連結ベース24Cから引張線材40に引張力Tが伝達される。この引張力Tに対して引張線材40(図1参照)が軸剛性(引張軸剛性)で抵抗することにより、架構10のせん断変形量が低減される。つまり、引張線材40が、引張ブレースとして機能する。
ここで、木質ブレース30は、一対の連結ベース24Cの間に配置されており、その両端の端面30Tに一対の連結ベース24Cがそれぞれ接触されているが、一対の連結ベース24Cには固定されていない。つまり、木質ブレース30は、一対の連結ベース24C同士を連結していない。そのため、一対の連結ベース24Cの間隔Gが広くなっても、一対の連結ベース24Cから木質ブレース30に引張力Tが伝達されない。したがって、引張力Tによる木質ブレース30の破損等が抑制される。
このように本実施形態は、地震時に、引張力Tを負担可能にしつつ、木質ブレース30の破損を抑制することができる。
また、引張線材40は、木質ブレース30の貫通孔34に貫通されるため、木質ブレース30の外部から見え難い。したがって、木質ブレース30の意匠性が向上する。
さらに、図2に示されるように、引張線材40の端部のネジ部40Aには、ナット44が取り付けられている。ナット44は、連結ベース24Cを挟んで木質ブレース30と反対側に配置されており、連結ベース24Cの外面24C2に係止されている。これにより、地震時における架構10のせん断変形に伴って、一対の連結ベースの間隔Gが広くなると、一対の連結ベース24Cからナット44を介して引張線材40に引張力Tが伝達される。
一方、地震時における架構10のせん断変形に伴って、一対の連結ベース24Cの間隔Gが狭くなると、図5に示されるように、引張線材40が連結ベース24Cに対して軸方向にスライドし、連結ベース24Cの外面24C2からナット44が離れる。これにより、連結ベース24Cとナット44との係止状態が解除されるため、一対の連結ベース24Cの変位に引張線材40が追従しない。
そのため、一対の連結ベース24Cの間隔Gが狭くなった場合には、一対の連結ベース24Cから木質ブレース30に圧縮力Sが伝達されるが、一対の連結ベース24Cから引張線材40に圧縮力Sは伝達されない。したがって、引張線材40の軸剛性(圧縮軸剛性)を考慮せずに、木質ブレース30の軸剛性(圧縮軸剛性)を設定することができる。よって、木質ブレース30の設計が容易となる。
また、本実施形態では、引張線材40に引張力(プレテンション)が導入されており、これにより、木質ブレース30に圧縮力(プレストレス)が導入されている。そのため、引張線材40に引張力Tが作用した場合に、隣り合う分割ピース32が離れ難くなる。この結果、隣り合う分割ピース32がずれることが抑制される。
さらに、本実施形態の木質ブレース30は、複数の分割ピース32を有している。このように木質ブレース30を複数の分割ピース32に分割することにより、木質ブレース30(分割ピース32)の運搬性、揚重性、及び製作性等が向上する。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成の部材等については、同符号を付して説明を適宜省略する。
図6に示されるように、第2実施形態に係る木質ブレース構造50では、一対の木質ブレース30A,30Bが逆V字状(A字状)に架構10に設けられている。具体的には、架構10の構面における下側の両角部(隅部)には、ベースブラケット22がそれぞれ設けられている。各ベースブラケット22には、一対の木質ブレース30A,30Bの下側の端部ブラケット24が固定されている。
一方、上側の梁14の梁中央部14Mには、ベースブラケット52が設けられている。このベースブラケット52には、一対の木質ブレース30A,30Bの上側の端部ブラケット24がそれぞれ固定されている。
ここで、図7に示されるように、架構10に一対の木質ブレース30A,30Bが逆V字状に配置される場合、例えば、地震時に架構10が矢印P2方向にせん断変形すると、一方の木質ブレース30A(引張線材40)は引張ブレースとして機能し、他方の木質ブレース30Bは圧縮ブレースとして機能する。なお、一対の木質ブレース30A,30Bは、上下方向(鉛直方向)に対して略左右対称に配置されており、上下方向に対する一対の木質ブレース30A,30Bの傾斜角度θが略同じになっている。
この場合、一方の木質ブレース30Aの引張線材40から梁中央部14Mに作用する反力RAの鉛直成分(下向き)Ryと、他方の木質ブレース30Bから梁中央部14Mに作用する反力RBの鉛直成分(上向き)Ryとの差が大きいと、梁中央部14Mに発生する応力が大きくなり、当該梁中央部14Mに補強等が必要になる可能性がある。なお、図7では、反力RAの鉛直成分Ryが、反力RBの鉛直成分Ryよりも小さくなっている。
この対策として本実施形態では、一方の木質ブレース30Aの引張線材40の軸剛性(引張軸剛性)K1と、他方の木質ブレース30Bの軸剛性(圧縮軸剛性)K2とが、同等に設定されている。これにより、反力RA,RBの鉛直成分Ryが同等となり、これらの反力RA,RBが互いに打ち消し合うため、梁中央部14Mに発生する応力が低減される。これと同様に、一方の木質ブレース30Aの軸剛性(圧縮軸剛性)K2と、他方の木質ブレース30Bの引張線材40の軸剛性(引張軸剛性)K1とが、同等に設定されている。
なお、引張線材40の軸剛性K1、及び木質ブレース30の軸剛性K2は、次の式から求められる。
引張線材の軸剛性K1 =(E1×断面積A1)/長さL
木質ブレースの軸剛性K2=(E2×断面積A2)/長さL
ただし、
E1:引張線材のヤング係数
A1:引張線材の断面積(=π×半径r
E2:木質ブレースのヤング係数
A2:木質ブレースの断面積(=縦幅a×横幅b−貫通孔による断面欠損)
L :木質ブレース及び引張線材の材軸方向の長さ(力の作用点間の長さ)
である。なお、各種の寸法は、図3を参照する。
ここで、例えば、引張線材40がPC鋼棒の場合、PC鋼棒のヤング係数E1は、木質ブレース30A,30Bのヤング係数E2の約20倍となる。したがって、この場合には、木質ブレース30A,30Bに対するPC鋼棒(×4本)の断面積比を約1/20にすることで、PC鋼棒の軸剛性K1と木質ブレース30A,30Bの軸剛性K2とを同等にすることができる。
なお、貫通孔34による木質ブレース30A,30Bの断面欠損が無視できる程度に小さい場合には、当該木質ブレース30A,30Bの断面積A2の算出において貫通孔34の断面欠損分を考慮しなくても良い。
また、ここでいう軸剛性K1と軸剛性K2とが「同等」とは、軸剛性K1と軸剛性K2とが同一の場合だけでなく、梁中央部14Mに発生する応力が問題にならない程度に軸剛性K1と軸剛性K2との差異が小さい場合を含む概念である。
次に、第2実施形態の作用について説明する。
本実施形態に係る木質ブレース構造50によれば、架構10に一対の木質ブレース30A,30Bが逆V字状に配置されている。そして、一方の木質ブレース30Aの引張線材40の軸剛性K1と、他方の木質ブレース30Bの軸剛性K2とが、同等に設定されている。これと同様に、一方の木質ブレース30Aの軸剛性K2と、他方の木質ブレース30Bの引張線材40の軸剛性K1とが、同等に設定されている。
これにより、例えば、図7に示されるように、一方の木質ブレース30Aの引張線材40から梁中央部14Mに作用する反力RAの鉛直成分(下向き)Ryと、他方の木質ブレース30Bから梁中央部14Mに作用する反力RBの鉛直成分(上向き)Ryとの差が無くなり、若しくは差が小さくなるため、梁中央部14Mに発生する応力が低減される。したがって、梁中央部14Mに対する補強(曲げ補強)等が低減されるため、コスト削減を図ることができる。
なお、本実施形態では、一対の木質ブレース30A,30Bが逆V字状に配置されるが、一対の木質ブレースは、例えば、V字状に配置されても良い。
次に、上記第1,第2実施形態の変形例について説明する。なお、以下では、上記第1実施形態を例に各種の変形例について説明するが、これらの変形例は、第2実施形態にも適宜適用可能である。
先ず、図8(A)及び図8(B)に示される変形例では、連結ベース24Cの内面24C1に筒状部材60が設けられている。ずれ止め部の一例としての筒状部材60は、角形鋼管等によって形成されており、内部に木質ブレース30の端部が嵌め込まれている。この筒状部材60は、木質ブレース30の側面30Sに沿って配置される4枚の周壁部60Aを有している。また、筒状部材60の端部は、連結ベース24Cの内面24C1に溶接等によって接合されている。
ここで、木質ブレース30は、一対の連結ベース24C同士を連結していない。そのため、一対の連結ベース24Cに対して、木質ブレース30の端部がずれる可能性がある。特に、地震時における架構10のせん断変形に伴って一対の連結ベース24Cの間隔G(図4(B)参照)が広くなると、連結ベース24Cに対して木質ブレース30の端部がずれ易くなる。
これに対して図8(A)及び図8(B)に示される変形例では、前述したように、連結ベース24Cに筒状部材60が設けられており、この筒状部材60によって木質ブレース30の端部が拘束されている。これにより、地震時における架構10のせん断変形に伴って一対の連結ベース24Cの間隔Gが広くなった場合に、連結ベース24Cに対して木質ブレース30の端部がずれることが抑制される。
この結果、地震時における架構10のせん断変形に伴って一対の連結ベース24Cの間隔G(図4(A)参照)が狭くなった場合に、一対の連結ベース24Cから木質ブレース30の端部に、圧縮力Sをより確実に伝達することができる。つまり、地震時に、木質ブレース30を圧縮ブレースとしてより確実に機能させることができる。したがって、架構10の耐震性能が向上する。
なお、図8(A)及び図8(B)に示される変形例では、ずれ止め部が筒状部材60とされるが、ずれ止め部は、これに限らない。ずれ止め部としては、連結ベース24Cの内面24C1から突出し、木質ブレース30の側面30Sに沿って配置されるリブ等であっても良い。
また、隣り合う分割ピース32の接触面(端面)に、コッター等の凹凸部を設け、地震時における隣り合う分割ピース32のずれを抑制することも可能である。
また、上記実施形態では、引張線材40の両端部に係止部材としてのナット44がそれぞれ設けられるが、上記実施形態はこれに限らない。引張線材40には、一対の連結ベース24Cから圧縮力Sが導入されなければ良い。そのため、例えば、引張線材40の一方の端部は、溶接等によって連結ベース24Cに固定されても良い。つまり、係止部材は、引張線材40の少なくとも一方の端部に設けることができる。
また、上記実施形態では、係止部材がナット44とされるが、係止部材としては、連結ベース24Cに係止可能なクリップ等の他の部材を用いても良い。また、上記実施形態では、連結ベース24Cに円形状の連結孔42が形成されるが、連結孔42の形状は、矩形状等であっても良い。また、連結ベース24Cには、連結孔42に替えて、引張線材40を通す溝や切欠きを形成しても良い。
また、上記実施形態では、木質ブレース30に複数の引張線材40が設けられるが、木質ブレース30には、少なくとも1本の引張線材40があれば良い。また、上記実施形態では、引張線材40にプレテンションが導入されるが、引張線材40には、プレテンションを導入しなくても良い。
また、上記実施形態の木質ブレース30は、複数の分割ピース32を有するが、分割ピースの数や大きさは、適宜変更可能である。また、木質ブレースを複数の分割ピースに分割せずに、木質ブレースを1本の木質部材で形成しても良い。さらに、木質ブレースの断面形状等は、適宜変更可能であり、例えば、円形状であっても良い。
また、上記実施形態では、連結部がベースブラケット22及び端部ブラケット24によって構成されるが、上記実施形態はこれに限らない。例えば、ベースブラケット22を省略し、端部ブラケット24を架構10に固定しても良い。この場合、端部ブラケット24によって連結部が構成される。また、端部ブラケットは、構造は適宜変更可能である。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
10 架構
20 木質ブレース構造
22 ベースブラケット(連結部)
24 端部ブラケット(連結部)
24C 連結ベース
30 木質ブレース
30A 木質ブレース
30B 木質ブレース
30S 側面(木質ブレースの側面)
30T 端面(木質ブレースの端面)
34 貫通孔
40 引張線材
44 ナット(係止部材)
50 木質ブレース構造
52 ベースブラケット(連結部)
60 筒状部材(ずれ止め部)

Claims (3)

  1. 架構に設けられ、互いに対向する一対の連結部と、
    材軸方向に延びる貫通孔を有し、一対の前記連結部の間に配置される木質ブレースと、
    前記貫通孔に貫通された状態で、一対の前記連結部同士を連結する引張線材と、
    を備える木質ブレース構造。
  2. 前記連結部は、前記木質ブレースの端面が接触されるとともに、前記引張線材の端部が貫通される連結ベースを有し、
    前記引張線材の前記端部には、前記連結ベースを挟んで前記木質ブレースと反対側に配置され、該連結ベースに係止される係止部材が設けられる、
    請求項1に記載の木質ブレース構造。
  3. 前記連結部には、前記木質ブレースの側面に沿って配置されるずれ止め部が設けられる、
    請求項1又は請求項2に記載の木質ブレース構造。
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