JP6427917B2 - 柱梁接合構造 - Google Patents
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Description
一方で柱フランジの内面にスチフナを設置しない場合は、梁フランジに直交する柱フランジの面外曲げが生じるため、接合部近傍の梁フランジの応力は幅方向で均一にならず、フランジ面外剛性の大きい柱ウェブの中心で最も大きく、柱ウェブから距離のあるフランジ縁端側で小さくなる。
しかしながら、その一方で、梁フランジと柱の接合部全てにスチフナを設置することは、架構の製作費および製作期間の増大を招き、経済的な課題を内包している。
前述の梁フランジの応力集中を回避する他の方法としては、柱フランジの板厚を厚くして面外曲げに対する剛性を上昇させる手段が考えられるが、当然ながらこの方法は、柱の鋼材量を増加させ架構に要する材料費の上昇を招くので、スチフナを設置する手段と同様に、経済的な課題を解決できない。
前記フランジの幅をB、前記両縁端部の板厚をt1、前記幅方向中央部の板厚をt2とすると、
前記幅方向中央部の幅がB/3以下とされ、
前記板厚t2に対する板厚t1の比率(t1/t2)が0.40以上、0.77以下に設定され、
前記フランジの幅方向中央部と両縁端部の板厚差により生じる段差をフランジ内面側に有していることを特徴とする。
また、フランジの幅方向中央部と両縁端部の板厚差により生じる段差をフランジ内面側に有しているので、工事施工上の利点が高くなる。
前記梁の梁ウェブと前記柱の柱ウェブとが同一平面内に位置していることを特徴とする。
図1は本実施の形態に係るH形鋼1の断面図、図2は従来の通常のH形鋼10の断面図である。
H形鋼1は、上下のフランジ2,2と、これら上下のフランジ2,2を接続するウェブ3とを有している。また、H形鋼1では、上下のフランジ2,2の幅方向中央部4の板厚が、当該幅方向中央部4より外側の両縁端部5の板厚よりも厚く形成されている。また、この幅方向中央部4はフランジ2の長手方向(図1において紙面と直交する方向)において連続して形成されている。
そして、フランジ2の幅をB、両縁端部5の板厚をt1、幅方向中央部4の板厚をt2とすると、幅方向中央部4の幅B2がB/3以下とされており、板厚t2に対する板厚t1の比率(t1/t2)が0.40以上0.77以下に設定されている。
このように、H形鋼1は、図2に示す従来のH形鋼10に比して、フランジ2の幅方向中央部4の板厚t2が増加しており、両縁端部5の板厚t1は等しくなっている。なお、従来のH形鋼10は、上下のフランジ2,2と、これら上下のフランジ2,2を接続するウェブ3とを有しており、フランジ2の板厚はt1となっており、高さHはH形鋼1と同じ高さHとなっている。
柱11はH形の断面を有しており、柱フランジ12,12と、これら柱フランジ12,12を接続する柱ウェブ13とを有している。
そして、柱フランジ12に、梁(H形鋼)1が柱フランジ12の内面側に応力伝達用のスチフナを設けない状態で接合されている。つまり、柱フランジ12の外面に、梁フランジ2および梁ウェブ3の端面が溶接よって接合されており、柱フランジ12の内面側に応力伝達用のスチフナが設けられていない。
また、柱11と梁1とは、柱ウェブ13と梁ウェブ3とが同一平面内に位置するようにして接合されている。つまり、柱11と梁1とは、柱ウェブ13の梁1の長手方向における延長線上に梁ウェブ3が位置するようにして接合されている。なお、本実施の形態では梁ウェブ3より柱ウェブ13の方が厚いので、梁ウェブ3と柱ウェブ13とが同一平面内に位置しているとは、梁ウェブ3の厚さの中心の仮想平面と柱ウェブ13の厚さの中心の仮想平面とが同一平面内に位置することを意味する。
また、梁フランジ2の幅は柱フランジ12の幅より小さくなっている。例えば、梁フランジ2の幅は柱フランジ12の幅の1/2程度となっている。
すなわち、図4(a)に示すように、柱フランジ12の内面側(図4(a)において下側)にスチフナを有しない形態で、柱フランジ12の外面(図4(a)において上面)に梁フランジ2が垂直に接合されており、梁フランジ2の端部で引張力Fを梁フランジ2の軸方向に与えた場合の、柱中心面状の接合部近傍の代表点(ここでは柱フランジ12の外面から距離10mmの位置)であるA点において、引張力Fと同一方向に発生するひずみ発生量εAについて、本発明の実施の形態に係る柱梁接合構造と従来の柱梁接合構造とを比較する。なお、梁ウェブの厚さの中心(梁フランジ2の幅方向の中心)の仮想平面と柱ウェブ13の厚さの中心の仮想平面とは同一平面内に位置している。
また、表1は、前記パラメータの各条件と、各解析条件下での図5の荷重−変形履歴上の、梁弾性時、梁降伏時、および梁全塑性時の各時点における、A点のひずみ発生量εAnを、フランジの板厚が一様な条件のケース1におけるひずみ発生量εA1で無次元化した値の計算結果を示したものである。なお、nはケースナンバーを示す。
表1に示すように、εAn/εA1の値が1以下となる条件(表1の網掛け部分)であれば、本実施形態によるH形鋼は、従来の一様板厚のフランジを有するH形鋼よりも、ひずみ発生量が低減できるものといえる。
また、ケース1〜6では、梁弾性時においては、ひずみ発生量(εAn/εA1)がいずれも1.0を超えており、ケース7〜9では、弾性時、降伏時、および梁全塑性時のいずれにおいても、ひずみ発生量が1.0未満である。
また、図6(b)に示すように、梁降伏時において、全ての範囲でεAn/εA1≦1.0となる。
また、図6(c)に示すように、梁全塑性時において、t1/t2=0.25でεAn/εA1=1.13(ケース6)、t1/t2=0.40でεAn/εA1=0.95(ケース7)となる。
したがって、0.25<t1/t2<0.40の範囲にεAn/εA1=1.0となる閾値(t1/t2の閾値)が存在するものと推測できる。
よって、少なくとも0.40≦t1/t2でεAn/εA1≦1.0であることは明らかである。
また、図6(b)に示すように、梁降伏時において、全ての範囲でεAn/εA1≦1.0となる。
また、図6(c)に示すように、梁全塑性時において、t1/t2=0.77でεAn/εA1=0.96(ケース9)となる。
したがって、梁弾性時、梁全塑性時でεAn/εA1=1.0となる閾値は、図6(a)〜(c)から工学的にt1/t2>0.77の範囲にあると判断できる。
よって、0.77≦t1/t2の範囲でεAn/εA1≦1.0であることは明らかである。
上記の結果は、フランジ断面積を一定とした条件で確認したものであり、H形断面はフランジ断面積と図1に示すH形鋼1の断面せいHにより、ほぼ曲げ耐力および曲げ剛性が定まるので、前記条件の梁フランジ形状とすることにより、これらの値に影響を与えずに、柱ウェブ中心面上で発生する梁フランジ軸方向のひずみ発生量を低下させ、早期破壊の確率を低減できる。
これにより、例えば、接合するH形断面の柱11の柱フランジ12の板厚を増やすことなくスチフナを省略することが可能となり、より経済的な架構を実現できる。
一方、梁フランジ2の幅方向両端部にはそれぞれ貫通孔2aが前記貫通孔8aとほぼ同軸に形成されている。
そして、これら貫通孔8a,2a,7a,9aに高力ボルト6が挿通され、この高力ボルト6にナット6aが螺合されて締め付けられることによって、梁フランジ2どうしが摩擦接合されている。
2 フランジ(梁フランジ)
3 ウェブ(梁ウェブ)
4 幅方向中央部
5 両縁端部
11 柱
12 柱フランジ
13 柱ウェブ
Claims (1)
- H形の断面を有する柱の柱フランジに、H形鋼からなる梁が前記柱フランジの内面側に応力伝達用のスチフナを設けない状態で接合された鋼構造建築物における柱梁接合構造であって、
前記梁の梁ウェブと前記柱の柱ウェブとが同一平面内に位置し、
前記梁の梁フランジの幅が、前記柱フランジの幅より小さく、かつ前記柱フランジの幅の1/2以上であり、
前記H形鋼は、
上下のフランジの幅方向中央部の板厚が、当該幅方向中央部より外側の両縁端部の板厚よりも厚く形成され、
前記フランジの幅をB、前記両縁端部の板厚をt1、前記幅方向中央部の板厚をt2とすると、
前記幅方向中央部の幅がB/3以下とされ、
前記板厚t2に対する板厚t1の比率(t1/t2)が0.40以上、0.77以下に設定され、
前記フランジの幅方向中央部と両縁端部の板厚差により生じる段差をフランジ内面側に有しているものであることを特徴とする柱梁接合構造。
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