JP6675179B2 - ポリエン(polyene)系偏光フィルム(film)の製造方法、ポリエン系偏光フィルム、積層偏光フィルム、及び表示装置 - Google Patents

ポリエン(polyene)系偏光フィルム(film)の製造方法、ポリエン系偏光フィルム、積層偏光フィルム、及び表示装置 Download PDF

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Description

本発明は、ポリエン系偏光フィルムの製造方法、ポリエン系偏光フィルム、積層偏光フィルム、及び表示装置に関する。
OLED(有機発光ダイオード)を使用した有機発光表示装置の普及に伴い、偏光フィルムの透過率を高くすることが求められている。一方、各種表示装置に使用される偏光フィルムとして、ヨウ素(iodine)系偏光フィルムが知られている。ヨウ素系偏光フィルムは、広く普及している。
ヨウ素系偏光フィルムでは、偏光に寄与する構成(すなわち可視光を吸収する構成)はヨウ素である。したがって、透過率を高めるためには偏光フィルム中のヨウ素の量を低減する必要がある。しかし、高温高湿時にはヨウ素が昇華するので、偏光フィルム中のヨウ素の量を低減した場合、偏光フィルム中のヨウ素が不足し、結果として、偏光度が大幅に低下する可能性がある。このため、高透過率(例えば透過率が44%以上)のヨウ素系偏光フィルムは、偏光フィルムの高温高湿での長期信頼性が低下する。
このような問題を解決することが期待される偏光フィルムとして、染料系偏光フィルム及び特許文献1、2に開示されるポリエン系偏光フィルムが知られている。染料系偏光フィルムは、透過率が高い場合であっても、優れた耐熱性を示す。しかし、染料系偏光フィルムには、透過率が高い場合に偏光度が低下しやすいという問題がある。
一方、ポリエン系偏光フィルムは、ヨウ素系偏光フィルムよりも偏光度が若干劣るものの、透過率が高い場合であっても高温高湿での信頼性が高いという利点がある。この理由として、ポリエン系偏光フィルムでは、偏光に寄与する構成(すなわち可視光を吸収する構成)がポリエンとなることが挙げられる。ここで、ポリエンとは、多数の共役炭素二重結合を有する有機物の総称である。炭素二重結合は、温度や湿度に影響を受けにくい。したがって、ポリエン系偏光フィルムは根本的に高温高湿への耐久性が大きい。このため、ポリエン系偏光フィルムは、表示装置用の偏光フィルムとして非常に注目されている。
ポリエン系偏光フィルムの製造方法としては、ポリビニルアルコールフィルム(以下、「ポリビニルアルコール」を「PVA」とも称する)をポリエン化させて延伸する方法が上げられるが、この方法ではポリエン系偏光フィルムの薄膜化に十分に対応できない。具体的には、この方法で薄膜のポリエン系偏光フィルムを作製するためには、薄膜のPVAフィルムを延伸する必要がある。しかし、この場合、PVAフィルムが破断しやすくなってしまう。なお、PVAのポリエン化とは、PVAに脱水反応(PVA中の水酸基を隣接する水素原子とともに除去する反応)を起こさせることを意味する。PVAのポリエン化によって、PVA中に多数のポリエンブロック(polyene block)が形成される。ポリエンブロックは、多数の共役炭素二重結合を有する。
そこで、近年では、基材フィルム上にPVA層を形成して一体延伸する方法が提案されている。この方法では、例えば、PVAを含む塗工液を基材フィルムに塗工することで基材フィルム上にPVA層を形成する。基材フィルム上にPVAフィルムを貼り付けることで基材フィルム上にPVA層を形成する場合もある。ついで、基材フィルム及びPVA層を一体延伸する。ついで、PVA層に酸触媒を含浸させる。ついで、PVA層中のPVAをポリエン化させる。この方法によれば、基材フィルム上に薄膜のPVA層を形成することで、ポリエン系偏光フィルムを薄膜化することができる。また、基材フィルム及びPVA層を一体延伸するので、延伸時にPVA層が破断しにくくなる。したがって、ポリエン系偏光フィルムを薄膜化することができる。
ここで、PVA層に酸触媒を含浸させる方法としては、酸触媒雰囲気(濃塩酸等の蒸気等)中にPVA層を暴露する方法、塗工液に予め酸触媒を含めておく方法(特許文献2に開示された方法)等が挙げられる。
特開2006−99076号公報 特開2014−130226号公報
ところで、ポリエン系偏光フィルムの偏光特性(例えば偏光度)を高めるためには、ポリエン系偏光フィルムのポリエン濃度を十分に高くする必要がある。しかしながら、十分なポリエン濃度を得るためには、酸触媒としてパラトルエンスルホン酸(PTSA)や塩酸などの強酸を用いる必要がある。この場合、例えば上述した酸触媒水溶液のpH値は2程度となる。したがって、PVAをポリエン化させるための設備として耐蝕性の高い設備を用意する必要があった。
例えば、酸触媒雰囲気中にPVA層を暴露する設備では、少なくとも酸触媒の蒸気を封入する容器、当該容器に酸触媒の蒸気を導入する配管、ポンプ(pump)、液体の酸触媒を気化する装置、液体の酸触媒を貯留するタンク(tank)等を全て耐蝕性の高い材料(例えば合金)で構成する必要があった。また、この方法では、安全性の観点から、酸触媒の蒸気を封入する容器から酸触媒が漏出しないように当該容器の密封性を高める必要があった。
また、PVA層の塗工液に予め酸触媒を含めておく方法では、基材フィルム上に塗工液を塗工するためのコータ(coater)(例えばスリットダイ(slit die)等)、コータに酸触媒を導入するための配管、ポンプ、酸触媒を貯留するタンク等を全て耐蝕性の高い材料(例えば合金)で構成する必要があった。このため、設備コスト(cost)が非常に高くなるという問題があった。また、耐蝕性の高い合金でスリットダイを作製する場合、研磨精度が低下し、ひいては、塗工面の品質が低下するという別の問題も生じていた。このため、PVAのポリエン化をより低コストかつ安全に行う方法が強く望まれていた。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、PVAのポリエン化をより低コストかつ安全に行うことが可能な、新規かつ改良されたポリエン系偏光フィルムの製造方法、ポリエン系偏光フィルム、積層偏光フィルム、及び表示装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、第1のポリビニルアルコール層を含む第1のフィルムと、第2のフィルムとを準備する第1の工程と、第1のフィルムのポリビニルアルコール面と第2のフィルムとを圧着するとともに、第1のフィルムのポリビニルアルコール面と第2のフィルムとの界面に酸触媒水溶液を供給する第2の工程と、第1のフィルムと第2のフィルムとが圧着された圧着体をポリエン化する第3の工程と、を含むことを特徴とする、ポリエン系偏光フィルムの製造方法が提供される。
この観点によれば、酸触媒水溶液は、第1のフィルムのポリビニルアルコール面と第2のフィルムとの界面に供給されればよいので、酸触媒を当該界面に供給するための装置を小型化できる。例えば、ノズルのような構成によって酸触媒水溶液を当該界面に供給することができる。したがって、耐蝕性が要求される装置を小型化、簡略化することができる。すなわち、PVAのポリエン化をより低コストで行うことができる。さらに、本観点では、酸触媒の雰囲気を形成する必要がない。したがって、酸触媒の含浸、ひいてはPVAのポリエン化をより安全に行うことが可能となる。
ここで、第2のフィルムは、第2のポリビニルアルコール層を含み、第2の工程では、第1のフィルムのポリビニルアルコール面と第2のフィルムのポリビニルアルコール面とを圧着してもよい。
この観点によれば、PVAのポリエン化をより低コストかつ安全に行うことが可能となる。
また、第2のポリビニルアルコール層には、ポリエン連鎖抑制剤が含まれていてもよい。
この観点によれば、PVAのポリエン化をより低コストかつ安全に行うことが可能となる。さらに、ポリエン系偏光フィルムが吸収可能な可視光(より詳細には、ポリエンの配向方向に平行な方向の偏光)の波長帯域が拡張される。
また、ポリエン連鎖抑制剤は、第2のポリビニルアルコール層に含まれるポリビニルアルコールの総質量に対して2〜8質量%の割合で第2のポリビニルアルコール層に含まれてもよい。
この観点によれば、PVAのポリエン化をより低コストかつ安全に行うことが可能となる。さらに、ポリエン系偏光フィルムが吸収可能な可視光(より詳細には、ポリエンの配向方向に平行な方向の偏光)の波長帯域が拡張される。
また、ポリエン連鎖抑制剤は、ホウ酸、ホウ砂、グリセリン、金属アルコキシド化合物、及びテトラエトキシシランからなる群から選択されるいずれか1種以上であってもよい。
この観点によれば、PVAのポリエン化をより低コストかつ安全に行うことが可能となる。さらに、ポリエン系偏光フィルムが吸収可能な可視光(より詳細には、ポリエンの配向方向に平行な方向の偏光)の波長帯域が拡張される。
また、第2のポリビニルアルコール層は、変性基で変性されたポリビニルアルコールを含んでいてもよい。
この観点によれば、PVAのポリエン化をより低コストかつ安全に行うことが可能となる。さらに、ポリエン系偏光フィルムが吸収可能な可視光(より詳細には、ポリエンの配向方向に平行な方向の偏光)の波長帯域が拡張される。
また、第2の工程では、界面を上方に露出した状態で第1のフィルムのポリビニルアルコールフィルム面と第2のフィルムとを圧着するとともに、界面の露出部分に酸触媒水溶液を供給してもよい。
この観点によれば、PVAのポリエン化をより低コストかつ安全に行うことが可能となる。
また、酸触媒水溶液に含まれる酸触媒は、低揮発性の酸触媒であってもよい。
この観点によれば、PVAのポリエン化をより低コストかつ安全に行うことが可能となる。
また、酸触媒は、100℃での質量減少率が3質量%未満であってもよい。
この観点によれば、PVAのポリエン化をより低コストかつ安全に行うことが可能となる。
本発明の他の観点によれば、第1のポリエン系偏光層と、第1のポリエン系偏光層上に積層された第2のポリエン系偏光層と、を備え、第1のポリエン系偏光層の吸収ピーク波長は、第2のポリエン系偏光層の吸収ピーク波長と異なることを特徴とする、ポリエン系偏光フィルムが提供される。
この観点によるポリエン系偏光フィルムは、より低コストかつ安全な工程によって作製される。さらに、この観点によれば、ポリエン系偏光フィルムが吸収可能な可視光(より詳細には、ポリエンの配向方向に平行な方向の偏光)の波長帯域が拡張される。
本発明の他の観点によれば、上記ポリエン系偏光フィルムを含むことを特徴とする、積層偏光フィルムが提供される。
この観点による積層偏光フィルムは、より低コストかつ安全な工程によって作製される。さらに、この観点によれば、積層偏光フィルムが吸収可能な可視光(より詳細には、ポリエンの配向方向に平行な方向の偏光)の波長帯域が拡張される。
本発明の他の観点によれば、上記積層偏光フィルムを含むことを特徴とする、表示装置が提供される。
この観点による表示装置に使用される積層偏光フィルムは、より低コストかつ安全な工程によって作製される。さらに、この観点によれば、積層偏光フィルムが吸収可能な可視光(より詳細には、ポリエンの配向方向に平行な方向の偏光)の波長帯域が拡張される。
以上説明したように本発明によれば、PVAのポリエン化をより低コストかつ安全に行うことが可能となる。
本発明の実施形態で使用される第1及び第2のフィルムの概略構成を示す側断面図である。 第1及び第2のフィルムを圧着する工程を説明するための側断面図である。 本実施形態に係るポリエン系偏光フィルムの概略構成を示す側断面図である。 各フィルムの吸光度スペクトル(spectrum)を対比して示すグラフ(graph)である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<1.第1の実施形態>
(1−1.ポリエン系偏光フィルムの製造方法)
(1−1−0.概要)
まず、本実施形態の概要を説明する。本実施形態に係るポリエン系偏光フィルムの製造方法は、第1〜第3の工程を含む。第1の工程では、第1のフィルム10及び第2のフィルム20を準備する(図1参照)。ここで、第1のフィルム10は、第1のPVA層12を含み、第2のフィルム20は、第2のPVA層22を含む。
第2の工程では、第1のフィルム10のPVA面12aと第2のフィルム20のPVA面22aとを圧着するとともに、第1のフィルム10のPVA面12aと第2のフィルム20のPVA面22aとの界面Xに酸触媒水溶液200を供給する(図2参照)。ここで、第1のフィルム10のPVA面12aと第2のフィルム20のPVA面22aとを圧着する際には、界面Xを上方に露出させる。そして、ノズル(nozzle)120から酸触媒水溶液200を界面Xの露出部分に供給(滴下)する。これにより、酸触媒水溶液200は界面Xから第1のPVA層12及び第2のPVA層22に侵入する。すなわち、第2の工程により、酸触媒を第1のPVA層12及び第2のPVA層22に含浸させる。第3の工程では、第1のフィルム10と第2のフィルム20とが圧着された圧着体30をポリエン化させる。これにより、図3に示すポリエン系偏光フィルム1を作製する。
ポリエン系偏光フィルム1は、第1のポリエン系偏光層12a及び第2のポリエン系偏光層22aを含む。第1のポリエン系偏光層12a及び第2のポリエン系偏光層22aは、ポリエン系偏光フィルム1の偏光特性を発現する部分であり、同一方向に配向された共役炭素二重結合を多数有する。なお、第1の実施形態では、第1のポリエン系偏光層12a及び第2のポリエン系偏光層22aは互いに圧着されており、かつ、実質的に同じ組成を有する。このため、ポリエン系偏光フィルム1内で両者は実質的に一体となっている。以下、第1のポリエン系偏光層12a及び第2のポリエン系偏光層22aからなる層を「圧着ポリエン系偏光層40a」とも称する。以下、各工程を詳細に説明する。
(1−1−1.第1の工程)
第1の工程では、図1に示す第1のフィルム10及び第2のフィルム20を準備する。第1のフィルム10は、第1の基材フィルム11と、第1のPVA層12とを備える。第1の基材フィルム11は、第1のPVA層12が積層されるフィルムである。第1の基材フィルム11は、第1のPVA層12と一体延伸される。第1の基材フィルム11は、上記の特性を有するフィルムであれば特に制限されない。第1の基材フィルム11を構成する樹脂の例としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。また、第1の基材フィルム11は延伸フィルムであっても、無延伸フィルムであってもよいが、無延伸フィルムであることが好ましい。
第1のPVA層12は、PVAを含む層であり、第1の基材フィルム11上に形成される。第1のPVA層12を第1の基材フィルム11上に形成する方法は、例えば以下の通りである。すなわち、まず、PVAを適当な溶媒(例えば水)に投入し、PVAが溶媒に完全に溶解するまで撹拌する。撹拌中に溶媒及びPVAを加熱してもよい。これにより、塗工液を作製する。ついで、塗工液を第1の基材フィルム11に塗工し、乾燥することで、第1のPVA層12を第1の基材フィルム11上に形成する。なお、PVAフィルムを基材フィルム11に貼り付けることで、基材フィルム11上に第1のPVA層12を形成してもよい。
本実施形態に使用可能なPVAは特に制限されない。ただし、後述するように、PVAのケン化(saponification)度に応じて、ポリエンの配列方向に平行な方向の偏光の吸収ピーク(peak)波長が異なる。すなわち、ポリエン系偏光フィルムの偏光に対する吸光度と偏光の波長との相関を測定した場合、吸光度がピークとなる波長が観測される。このピーク波長がPVAのケン化度に応じて異なる。なお、吸光度の測定方法は後述する。したがって、所望の吸収ピーク波長に応じたケン化度のPVAを使用してもよい。ここで、ケン化度は、PVA中の水酸基及び酢酸基の総モル(mol)数に対する水酸基のモル数の割合である。ケン化度は、例えば日本興業規格JIS6726_1994 ポリビニルアルコール試験方法(http://kikakurui.com/k6/K6726−1994−01.html)によって測定可能である。また、塗工液中のPVAの濃度も特に制限されないが、塗布液の粘度を考慮すると6〜9質量%(塗工液の総質量に対する質量%)であってもよい。
また、塗工液には、レベリング(leveling)剤等の添加剤を添加してもよい。ここで、レベリング剤は、第1のPVA層12の表面(すなわちPVA面12a)を平滑化するために塗工液に添加される。レベリング剤の具体例としては、例えばパーフルオロアルキルエチレンオキシド(perfluoroalkyl ethylene oxide)付加物等が挙げられる。
第1の基材フィルム11上に塗工液を塗工する方法は特に制限されない。塗工液を第1の基材フィルム11上に塗工する方法としては、例えばグラビア(gravure)コータ法、バー(bar)コータ法、ダイ(die)コータ法等が挙げられる。
一方、第2のフィルム20は、第2の基材フィルム21と、第2のPVA層22とを備える。第2の基材フィルム21及び第2のPVA層22は、第1の基材フィルム11及び第1のPVA層12と同様のものである。したがって、第2のフィルム20は第1のフィルム10と同様の工程により準備される。このように、第1の実施形態では、第1のフィルム10及び第2のフィルム20は同種のフィルムとなっている。
(1−1−2.第2の工程)
第2の工程では、第1のフィルム10と第2のフィルム20とを圧着するとともに、第1のPVA層12及び第2のPVA層22に酸触媒を含浸させる。第2の工程は、例えば図2に示す圧着装置100を用いて行われる。圧着装置100は、圧着ローラ(roller)100a、100bと、加圧ローラ110a、110bと、ノズル120とを備える。もちろん、第2の工程は、圧着装置100以外の装置で行われてもよい。すなわち、第2の工程を実現可能な装置であれば、どのような装置を用いてもよい。
圧着ローラ100a、100bの中心軸は、互いに平行かつ同一水平面上に配置されている。第1のフィルム10は、圧着ローラ100aに向けて水平に(具体的には矢印A方向に)搬送される。また、第2のフィルム20は、圧着ローラ100bに向けて水平に(具体的には矢印B方向に)搬送される。圧着ローラ100a、100bに到達した第1のフィルム10及び第2のフィルム20は、圧着ローラ100a、100b間を通過して鉛直下方(矢印C方向)に搬送される。ここで、第1のフィルム10及び第2のフィルム20は、PVA面12a、22aが対向した状態で圧着ローラ100a、100b間を通過する。圧着ローラ100a、100bは、これらの間を通過する第1のフィルム10及び第2のフィルム20を圧着する。すなわち、圧着ローラ100a、100bは、第1のフィルム10のPVA面12aと、第2のフィルム20のPVA面22aとを圧着する。
加圧ローラ110aは、圧着ローラ100aと連動して回転するとともに、圧着ローラ100aを矢印P1方向に加圧する。一方、加圧ローラ110bは、圧着ローラ100bと連動して回転するとともに、圧着ローラ100bを矢印P2方向に加圧する。これにより、圧着ローラ100a、100bは、第1のフィルム10のPVA面12aと、第2のフィルム20のPVA面22aとを圧着する。
ここで、第1のフィルム10のPVA面12aと、第2のフィルム20のPVA面22aとの界面Xは、上方に露出された状態となっている。そして、ノズル120は、界面Xの露出部分に酸触媒水溶液200を供給(滴下)する。この結果、界面Xの露出部分に液溜まりが形成される。液溜まりを構成する酸触媒水溶液200の一部は、界面X内に侵入し、その後、界面Xから第1のPVA層12及び第2のPVA層22に侵入する。これにより、酸触媒は第1のPVA層12及び第2のPVA層22に含浸する。
したがって、圧着装置100は、界面Xを上方に露出した状態で第1のフィルム10のPVA面12aと、第2のフィルム20のPVA面22aとを圧着するとともに、界面Xの露出部分に酸触媒水溶液200を供給する。これにより、圧着装置100は、第1のフィルム10と第2のフィルム20とが圧着された圧着体30を作製する。ここで、圧着体30中の第1のPVA層12及び第2のPVA層22には、酸触媒が含浸している。また、圧着体30中の第1のPVA層12及び第2のPVA層22は、互いに圧着されている。さらに、第1のPVA層12及び第2のPVA層22は実質的に同じ組成を有する。このため、圧着体30内で両者は実質的に一体となっている。以下、第1のPVA層12及び第2のPVA層22からなる層を「圧着PVA層40」とも称する。
このように、本実施形態では、酸触媒水溶液200を界面Xに供給できればよい。このため、酸触媒水溶液200を界面Xに供給するための装置(ここでは、ノズル120、ノズル120に酸触媒水溶液200を供給するための配管、ポンプ、及び酸触媒水溶液200を貯留するタンク)を小型化、簡略化することができる。また、後付の改造も比較的容易かつ低コストで行うことができる。したがって、圧着装置100を低コストで製造することができる。これに対し、例えば、PVA層の塗工液に予め酸触媒を含めておく方法では、基材フィルム上に塗工液を塗工するためのコータ(例えばスリットダイ等)、コータに酸触媒を導入するための配管、ポンプ等を全て耐蝕性の高い材料で構成する必要がある。この方法では、特にコータの耐蝕性を高めるのに高いコストが必要となる。
また、本実施形態では、圧着装置100内に酸触媒の雰囲気を形成する必要がない。したがって、第1のPVA層12及び第2のPVA層22への酸触媒の含浸、ひいてはPVAのポリエン化をより低コストかつ安全に行うことが可能となる。
ここで、酸触媒は、PVAのポリエン化の触媒となるものであれば特に制限されない。例えば、酸触媒としては、有機酸、無機酸等が挙げられる。有機酸は、例えば、カルボキシル(carboxyl)基及びスルホ(sulfo)基からなる群から選択されるいずれか1つの官能基を有していてもよい。有機酸の具体的な構成は、R−Xで示される。Rは、炭素・水素・弗素からなる化合物であれば特に限定されない。Rは、たとえばアルキル(alkyl)基、パーフルオロ(perfluoro)アルキル基、芳香族官能基、及びフッ素置換型芳香族官能基等から選択されるいずれか1つである。Xは、カルボキシル基及びスルホ基からなる群から選択されるいずれか1つの官能基である。有機酸の例としては、パラトルエンスルホン酸(PTSA)、カンファースルホン酸等が挙げられる。無機酸の例としては、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸等が挙げられる。
ただし、酸触媒は、低揮発性の酸触媒であることが好ましい。酸触媒が低揮発性である場合、酸触媒水溶液200から酸触媒が揮発しにくくなるので、圧着装置100が酸触媒で腐食される可能性をより低減することができる。さらに、ポリエン生成時に酸触媒の蒸発が抑制されるので、第1のPVA層12及び第2のPVA層22中の酸濃度をより均一にすることができる。
より具体的には、酸触媒は、100℃での質量減少率が3質量%未満であることが好ましい。100℃での質量減少率が3質量%未満となる場合、ポリエン生成時にPVA中の酸濃度をより均一にすることができる。ここで、100℃での質量減少率は、酸触媒を100℃で10分間加熱したときの質量減少量を加熱前の酸触媒の質量で除算することで得られる。質量減少量の測定装置(分析装置)としては、イオンクロマトグラフィー(ion chromatography)装置等が挙げられる。測定方法は以下の通りである。すなわち、サンプル(sample)をヒートプレート(heat plate)上で熱して発生したガス(gas)を捕集する。続いてそのガスを水中でバブリング(bubbling)を行い置換させる。そして、置換したイオンクロマトグラフィーにて定量分析を行う。
上記の要件を満たす酸触媒としては、例えば上述した有機酸が挙げられる。例えば、パラトルエンスルホン酸の100℃で10分間加熱した際の質量減少率は、分析機器の検出限界(10ppm以下)である。
なお、パラトルエンスルホン酸の飽和水溶液濃度は塩酸よりも高いので、酸触媒としてパラトルエンスルホン酸を使用した場合、より高濃度の酸触媒を第1のPVA層12及び第2のPVA層22内に分散させることができる。また、ポリエン系偏光フィルムに残留した酸触媒は、ポリエン系偏光フィルムの耐久性を低下させる可能性があるが、パラトルエンスルホン酸は、塩酸よりもポリエン系偏光フィルム1から容易に除去される。
圧着PVA層40中の酸触媒の濃度によってポリエン系偏光フィルム1のポリエン濃度が変動する。したがって、圧着PVA層40中の酸触媒の濃度は、所望のポリエン濃度に応じて適宜調整されればよい。ここで、圧着PVA層40中の酸触媒の濃度は、圧着PVA層40中のPVAの質量に対する圧着PVA層40中の酸触媒の質量%を意味する。また、ポリエン系偏光フィルム1のポリエン濃度は、例えば圧着ポリエン系偏光層40a中の共役二重結合の総数を圧着ポリエン系偏光層40aの総体積で除算することで得られる。ポリエン濃度は、ポリエン系偏光フィルム1の偏光特性に影響を与えうるパラメータ(parameter)の一種である。例えば、ポリエン濃度が低すぎると、ポリエン系偏光フィルムの偏光特性(例えば偏光度)が低下する可能性がある。
圧着PVA層40中の酸触媒の濃度は、酸触媒水溶液200中の酸触媒の濃度、酸触媒水溶液200の供給速度、第1のフィルム10及び第2のフィルム20の搬送速度によってコントロール(control)可能である。
ただし、圧着PVA層40中の酸触媒の濃度は、2〜10質量%程度であることが好ましく、4.0〜10.0質量%程度であることがより好ましい。これにより、PVAのポリエン化に要する時間を低減することができ、副反応を抑制することができる。さらに、ポリエン濃度を容易に制御することができる。
ここで、圧着PVA層40中の酸触媒の濃度の測定方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。まず、圧着体30の一部を切り出す。ついで、切り出された圧着体30から第1の基材フィルム11及び第2の基材フィルム21を剥離する。すなわち、圧着体30から圧着PVA層40を取り出す。ついで、圧着PVA層40を乾燥する。これにより、圧着PVA層40の試験片を作製する。ついで、圧着PVA層40の試験片の質量を測定する。
一方、圧着前の第1のフィルム10の一部を切り出す。ついで、切り出された第1のフィルム10から第1の基材フィルム11を剥離する。すなわち、第1のフィルム10から第1のPVA層12を取り出す。ついで、第1のPVA層12を乾燥する。これにより、第1のPVA層12の試験片を作製する。ついで、第1のPVA層12の試験片の体積及び質量を測定する。また、塗工液中のPVA及び添加剤の質量比と、第1のPVA層12の試験片の質量とに基づいて、第1のPVA層12の試験片に含まれるPVAの質量を算出する。
同様に、圧着前の第2のフィルム20の一部を切り出す。ついで、切り出された第2のフィルム20から第2の基材フィルム21を剥離する。すなわち、第2のフィルム20から第2のPVA層22を取り出す。ついで、第2のPVA層22を乾燥する。これにより、第2のPVA層22の試験片を作製する。ついで、第2のPVA層22の試験片の質量を測定する。また、塗工液中のPVA及び添加剤の質量比と、第2のPVA層22の試験片の質量とに基づいて、第2のPVA層22の試験片に含まれるPVAの質量を算出する。ここで、第1のPVA層12の試験片及び第2のPVA層22の試験片の総体積は、圧着PVA層40の試験片の体積に略一致する。
ついで、圧着PVA層40の試験片の質量から第1のPVA層12の試験片及び第2のPVA層22の試験片の総質量を減算する。これにより得られた値は、圧着PVA層40の試験片に含まれる酸触媒の質量を示す。ついで、圧着PVA層40の試験片に含まれる酸触媒の質量を、第1のPVA層12の試験片及び第2のPVA層22の試験片に含まれるPVAの総質量で除算することで、圧着PVA層40中の酸触媒の濃度を算出(測定)する。
また、酸触媒水溶液200中の酸触媒の濃度(すなわち、酸触媒水溶液の総質量に対する酸触媒の質量%)は、上述したように、圧着PVA層40中の酸触媒の濃度が所望の値となるように調整される。ただし、酸触媒水溶液200中の酸触媒の濃度は、20〜60質量%であることが好ましく、30〜50質量%であることがより好ましい。酸触媒水溶液200中の酸触媒の濃度が20質量%未満となる場合、圧着PVA層40中の酸触媒の濃度を所望の値とすることが難しくなる可能性がある。一方、酸触媒水溶液200中の酸触媒の濃度が60質量%を超える場合、圧着PVA層40から酸触媒が析出する可能性がある。酸触媒が析出すると、ポリエン系偏光フィルム1の品質が低下する可能性がある。
(1−1−3.第3の工程)
第3の工程では、圧着体30をポリエン化させる。より正確には、圧着体30中のPVAをポリエン化させる。具体的には、まず、圧着体30をドライ(dry)延伸する。ドライ延伸は、乾燥した気体中(例えば乾燥した大気中)で行われる延伸である。ドライ延伸時の温度は、各基材フィルムの軟化温度に応じて適当な値とすればよく、例えば100〜180℃程度であってもよい。また、ドライ延伸の倍率は特に制限されず、例えば3〜7倍程度であっても良い。ドライ延伸を行うことで、圧着体30中のPVAの配向をドライ延伸方向に揃えることができる。なお、ドライ延伸時にPVAの一部がポリエン化する場合もある。
ここで、圧着体30は、圧着PVA層40の表裏両面に第1の基材フィルム11及び第2の基材フィルム21が形成された構成を有する。したがって、圧着体30は、厚さ方向に対称性の高い構成を有する。このため、ドライ延伸後に圧着体30の端部でカールが発生しにくい。この効果は、第1の基材フィルム11及び第2の基材フィルム21を延伸性の良い低弾性フィルムあるいは薄膜で構成した場合にも同様に得られる。したがって、圧着体30の加工性、すなわちポリエン系偏光フィルム1の加工性が向上する。
ついで、圧着体30中のPVAをポリエン化させる。具体的には、圧着体30を所定時間加熱する。これにより、圧着体30中のPVAがポリエン化する。ここで、PVAのポリエン化は、PVA中のいずれかの部分でスタートし、そこから連鎖的に進行すると考えられている。PVAのポリエン化によって、PVA中に多数のポリエンブロックが形成される。PVAの加熱温度及び加熱時間によってポリエン系偏光フィルム1のポリエン濃度が変動するので、PVAの加熱温度及び加熱時間は、所望のポリエン濃度が得られるように調整されればよい。一例として、PVAの加熱温度は110〜180℃、好ましくは130〜150℃であってもよく、加熱時間は2〜7分であってもよい。
また、上記の例では、圧着体30のドライ延伸とポリエン化とを別工程で行っているが、これらを並行して行ってもよい。すなわち、圧着体30をドライ延伸しつつ、圧着体30をポリエン化時の温度で加熱してもよい。ただし、圧着体30のドライ延伸とポリエン化とを別工程で行うことで、ポリエン系偏光フィルム1の偏光特性のさらなる向上が期待できる。以上の工程により、図3に示すポリエン系偏光フィルム1を作製する。
(1−1−4.第4の工程)
上記第3の工程を行った後、以下で説明する第4の工程を行っても良い。第4の工程では、第3の工程により作製されたポリエン系偏光フィルム1をウエット(wet)延伸する。具体的には、ポリエン系偏光フィルム1から第1の基材フィルム11及び第2の基材フィルム21の少なくとも一方を剥離する。ついで、ポリエン系偏光フィルム1をホウ酸(boric acid)水溶液に浸漬し、ホウ酸水溶液中で延伸する。ここで、延伸方向はドライ延伸の方向と同じとする。このようなウエット延伸を行うことで、互いに分離したPVA同士がホウ酸分子によって架橋される。したがって、ポリエン系偏光フィルム1の強度および耐水性が向上する。ウエット延伸後、ポリエン系偏光フィルム1を乾燥することで、第4の工程が終了する。
ここで、ホウ酸水溶液のpH及び温度は、ポリエン系偏光フィルム1の強度及び偏光特性に影響を与えるので、所望の強度及び偏光特性に応じた値とすればよい。一例として、ホウ酸水溶液のpH及び温度は、pH2.5〜4.5、50〜95℃であってもよい。
また、ウエット延伸の延伸倍率もポリエン系偏光フィルム1の強度及び偏光特性に影響を与えるので、所望の強度及び偏光特性に応じた値とすればよい。一例として、延伸倍率は、1.0〜1.5倍であってもよい。
(1−1−5.第4の工程の第1変形例)
第4の工程では、ウエット延伸を行う前に、水和処理を行ってもよい。水和処理では、ポリエン系偏光フィルム1から第1の基材フィルム11及び第2の基材フィルム21の少なくとも一方を剥離する。ついで、ポリエン系偏光フィルム1を水和用水溶液に浸漬する。水和用水溶液は、pHが3.0〜4.0、温度が85〜100℃の水溶液である。浸漬時間は0.5〜60minであればよい。このような水和処理を行うことで、共役炭素二重結合の一部が水和される。すなわち、ポリエン系偏光フィルム1内の共役炭素二重結合が少なくなる。したがって、ポリエン系偏光フィルム1の単体透過率が上昇し、偏光度が低下することが予測される。しかし、本発明者が実験したところ、ある程度の含浸時間までは偏光度がほとんど変動せず、単体透過率だけが上昇することが判明した。浸漬時間の上限値は、60minとなる。一方、浸漬時間が短すぎると水和がほとんど進行せず、水和の効果がほとんど得られない。浸漬時間の下限値は0.5minとなる。すなわち、浸漬時間は0.5〜60minとなる。
また、水和用水溶液のpHは3.0〜4.0となる。水和用水溶液の温度は85〜100℃となる。水和用水溶液のpH及び温度がこれらの範囲内の値となる場合に、単体透過率及び偏光度が向上する。このように、水和処理に使用される水和用水溶液の温度はウエット延伸で使用される酸性水溶液よりも高温となる。水和用水溶液の種類は特に問われないが、例えばホウ酸水溶液となる。また、水和処理は、水和用水溶液をポリエン系偏光フィルム1に噴霧することで行われてもよい。
(1−1−6.第4の工程の第2変形例)
第4の工程では、ウエット延伸を行う前に、染料浴浸漬処理を行っても良い。染料浴浸漬処理では、ポリエン系偏光フィルム1から第1の基材フィルム11及び第2の基材フィルム21の少なくとも一方を剥離する。ついで、ポリエン系偏光フィルム1を染料浴に浸漬する。染料浴は、染料を含む水溶液である。したがって、染料浴浸漬処理を行うことで、圧着ポリエン系偏光層40aに染料が導入される。ここで、染料は、その種類によって異なる波長帯域の可視光を吸収するものである。したがって、ポリエン系偏光フィルム1による吸収が不十分な波長帯域が存在する場合、その波長帯域の可視光を吸収可能な染料を用いて染料浴浸漬処理を行ってもよい。これにより、ポリエン系偏光フィルム1が吸収可能な可視光(より詳細には、ポリエンの配向方向に平行な方向の偏光)の波長帯域(吸収波長帯域)が補完される。染料浴浸漬処理は、ポリエン系偏光フィルム1による吸収が不十分な波長帯域が存在しない(すなわち、色相に問題がない)か、あるいは補完が不要な場合には、省略してもよい。
ここで、染料浴のpH及び温度は、ポリエン系偏光フィルム1の強度及び偏光特性に影響を与えるので、所望の強度及び偏光特性に応じた値とすればよい。一例として、染料浴のpH及び温度は、pH4〜7、60〜95℃であってもよい。染料浴は、例えば染料を含むホウ酸水溶液である。染料の濃度は、ポリエン系偏光フィルム1に求められる偏光特性に応じて調整されればよい。
(1−1−7.第4の工程の第3変形例)
第4の工程では、ウエット延伸後に中和処理を行っても良い。すなわち、ウエット延伸後のポリエン系偏光フィルム1には、プロトンが残留している。特に、上述した水和処理を行った場合、ポリエン系偏光フィルム1中のプロトン(proton)濃度が高くなる可能性がある。このようなプロトンは、特に高温高湿中でポリエン系偏光フィルム1の共役炭素二重結合を攻撃し、共役炭素二重結合を消失させてしまう可能性がある。この結果、ポリエン系偏光フィルム1の単体透過率は、高温高湿下で時間の経過とともに上昇し、偏光度は高温高湿下で時間の経過とともに低下する。すなわち、ポリエン系偏光フィルム1の信頼性が悪化する。
そこで、第3変形例では、ウエット延伸後に中和処理を行う。中和処理では、ポリエン系偏光フィルム1を中和用水溶液に浸漬する。これにより、ポリエン系偏光フィルム1中のプロトンが中和される。
ここで、中和用水溶液のpHは、例えば4.5〜8.5である。中和用水溶液の温度は特に制限されないが、例えば65℃〜85℃程度であればよい。中和用水溶液は、例えばホウ酸水溶液に水酸化ナトリウム(sodium hydrate)(または水酸化カリウム(potassium hydrate))を添加することで作製される。もちろん、中和水溶液は、上述したpHを有するものであれば、特にその成分は問われない。
ポリエン系偏光フィルム1の浸漬時間は特に問われないが、浸漬時間が長いほど多くのプロトンを除去できるので好ましい。なお、ポリエン系偏光フィルム1を中和用水溶液に浸漬する際には、ポリエン系偏光フィルム1が縮まない程度の力(Tension)をポリエン系偏光フィルム1に掛けることが好ましい。また、中和処理は、中和用水溶液をポリエン系偏光フィルム1に噴霧することで行われてもよい。
なお、上述した第1〜第3変形例は全て行われてもよく、いずれか1種以上を選択的に行っても良い。
(1−2.ポリエン系偏光フィルムの構成)
次に、図3に基づいて、第1の実施形態に係るポリエン系偏光フィルム1の構成を説明する。ポリエン系偏光フィルム1は、上述した製造方法により作製されたものであり、少なくとも第1のポリエン系偏光層12a及び第2のポリエン系偏光層22aを含む。これらのポリエン系偏光層は、ポリエンの配向方向に平行な方向の偏光(すなわち平行光)を遮断、言い換えれば吸収し、ポリエンの配向方向に垂直な方向の偏光(すなわち垂直光)を透過する。すなわち、これらのポリエン系偏光層は、二色性を有する。
また、図3に示す例では、ポリエン系偏光フィルム1は、第1の基材フィルム11をさらに有する。すなわち、ポリエン系偏光フィルム1には、第1の基材フィルム11が残留している。したがって、ウエット延伸の際に第2の基材フィルム21を圧着体30から剥離されたことになる。もちろん、ウエット延伸時に第1の基材フィルム11を剥離してもよい。この場合、ポリエン系偏光フィルム1には第2の基材フィルム21が残留する。
第1のポリエン系偏光層12aは、第1のPVA層12中のPVAがポリエン化することで形成されたものであり、第2のポリエン系偏光層22aは、第2のPVA層22中のPVAがポリエン化することで形成されたものである。第1の実施形態では、第1のPVA層12及び第2のPVA層22が同じ組成を有するので、第1のポリエン系偏光層12a及び第2のポリエン系偏光層22aは同じ組成を有する。すなわち、これらのポリエン系偏光層は、同じ偏光特性を有する。
(1−3.積層偏光フィルムの構成)
ポリエン系偏光フィルム1を用いて積層偏光フィルムを作製してもよい。例えば、ポリエン系偏光フィルム1のポリエン面(ポリエン系偏光層が露出した表面)に保護フィルム(例えばトリアセチルセルロール系フィルム(TACフィルム))を貼り付ける。ついで、ポリエン系偏光フィルム1に残留している基材フィルムを除去する。そして、露出したポリエン面に保護フィルムを貼り付ける。そして、各保護フィルム上にさらに位相差フィルムを貼り付ける。以上の工程により積層偏光フィルムを作製する。この例では、積層偏光フィルムは、位相差フィルム/保護フィルム/圧着ポリエン系偏光層40a/保護フィルム/位相差フィルムで示される構成を有する。もちろん、位相差フィルム及び保護フィルムのいずれかは省略されてもよい。例えば、積層偏光フィルムは、保護フィルム/圧着ポリエン系偏光層40a/位相差フィルムで示される構成を有していてもよい。また、上記保護フィルム及び位相差フィルムの代わりにポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、アクリル(acrylic)フィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム等の光学フィルムを用いて積層偏光フィルムを作製してもよい。
第1の実施形態によれば、ノズル120、ノズル120に酸触媒水溶液200を供給するための配管、ポンプ、及び酸触媒水溶液200を貯留するタンクを耐蝕性の高い材料で構成すればよいことになる。したがって、圧着装置100を低コストで製造することができる。また、圧着装置100内に酸触媒の雰囲気を形成する必要がない。したがって、PVAのポリエン化をより低コストかつ安全に行うことが可能となる。
また、厚さ方向に対称性の高い圧着体30をドライ延伸するので、ドライ延伸後にフィルム端部でカールが発生しにくい。このため、ポリエン系偏光フィルム1の加工性が向上する。
<2.第2の実施形態>
第2の実施形態では、第1のフィルム10として第1の基材フィルム11を使用し、第2のフィルム20としてPVAフィルムを使用する。PVAフィルムは、上述した第2のPVA層22と同様の特性を有するものであればよい。第2の実施形態によっても第1の実施形態と同様の効果が得られる。
<3.第3の実施形態>
第3の実施形態では、第1のPVA層12と第2のPVA層22とが異なる組成を有する。具体的には、第1のPVA層12は第1の実施形態と同様の組成を有する。一方、第2のPVA層22には、ポリエン連鎖抑制剤が含まれる。
ここで、ポリエン連鎖抑制剤は、第2のPVA層22のポリエン化を抑制する添加剤である。具体的には、ポリエン連鎖抑制剤は、第2のPVA層22中の水酸基と結合する。すなわち、ポリエン連鎖抑制剤は、PVA同士を架橋する添加剤である。第2のPVA層22のポリエン化は、第2のPVA層22を構成するPVAの一部でスタート(start)し、そこから連鎖的に進行する。したがって、第2のPVA層22中の水酸基がポリエン連鎖抑制剤と反応している場合、ポリエン化の連鎖はその部分でストップ(stop)する。これにより、ポリエン連鎖抑制剤は、第2のPVA層22のポリエン化を抑制する。
したがって、ポリエン連鎖抑制剤は、PVAの水酸基と反応可能なものであれば特に制限されない。ポリエン連鎖抑制剤の例としては、ホウ酸、ホウ砂(borax)、グリセリン(glycerin)、金属アルコキシド(alkoxide)化合物、及びテトラエトキシシラン(Silicon tetrahydoxide)等が挙げられる。第2のPVA層22には、これらのポリエン連鎖抑制剤のうち、少なくとも1種以上が含まれていれば良い。
また、ポリエン連鎖抑制剤の濃度(第2のPVA層22に含まれるPVAの総質量に対する質量%)は特に制限されないが、2〜8質量%であることが好ましく、4〜6質量%であることがより好ましい。ポリエン連鎖抑制剤の濃度が2質量%未満となる場合、ポリエン連鎖抑制剤の効果が十分に得られない。また、ポリエン連鎖抑制剤の濃度が8質量%を超過する場合、ポリエン連鎖抑制剤による架橋部分が過剰になる可能性がある。ポリエン連鎖抑制剤による架橋部分が過剰になった場合、ドライ延伸時に圧着体30が延伸しにくくなる、亀裂等の傷が入りやすくなる等の問題が生じる可能性がある。
第3の実施形態では、第2のPVA層22にポリエン連鎖抑制剤が含まれているので、第1のポリエン系偏光層12aと第2のポリエン系偏光層22aとが異なる組成を有する。具体的には、第2のポリエン系偏光層22aには、比較的短いポリエンブロックが多く含まれるのに対し、第1のポリエン系偏光層12aには、比較的長いポリエンブロックが多く含まれる。そして、ポリエンブロックの長さは、ポリエン系偏光層の吸収ピーク波長に影響を与える。すなわち、第2のポリエン系偏光層22aの吸収ピーク波長は、第1のポリエン系偏光層12aの吸収ピーク波長よりも低い。この結果、ポリエン系偏光フィルム1全体としての吸収波長帯域が拡張される。この結果、ポリエン系偏光フィルム1は、例えば上述した染料浴浸漬処理を行わなくても、広い波長帯域の光を吸収可能となる。なお、このような広い吸収波長帯域を1種類のポリエン系偏光フィルムで実現させることは難しい。
このように、第3の実施形態では、第2のPVA層22中の水酸基とポリエン連鎖抑制剤とを反応させることで、ポリエン化を抑制している。したがって、第2のPVA層22を構成するPVAとして、変性基で変性されたPVA、すなわち水酸基が変性基で置換されたPVAを使用してもよい。このようなPVAを使用した場合、変性基の部分でポリエン化の連鎖がストップする。
変性基の種類は特に制限されないが、例えば酢酸基、カルボキシ基等が挙げられる。変性基の割合が高いほど、ポリエンブロックが短くなる。したがって、所望の吸収波長帯域が得られるように変性基の割合を調整すればよい。なお、変性基の割合に対応するパラメータとして、PVAのケン化度が挙げられる。ケン化度は、PVA中の水酸基及び酢酸基の総モル数に対する水酸基のモル数の割合である。ケン化度は、例えば日本興業規格JIS6726_1994 ポリビニルアルコール試験方法 <http://kikakurui.com/k6/K6726−1994−01.html)によって測定可能である。ケン化度は、例えば98mol%以下であってもよい。この場合、第1のPVA層12を構成するPVAのケン化度は、98mol%より大きく、例えば99mol%以上となる。
このように、第3の実施形態では、第1のポリエン系偏光層12aと第2のポリエン系偏光層22aとが異なる組成を有する。このため、ポリエン系偏光フィルム1の吸収波長帯域を拡張することができる。
また、第3の実施形態による積層偏光フィルムはニュートラルグレーを実現することができる。したがって、このような積層偏光フィルムを使用した液晶ディスプレイ(LCD)では黒表示画面が得られ、積層偏光フィルムを使用した有機発光ディスプレイ(OLED)では黒いディスプレイ外観が得られる。したがって、積層偏光フィルムは、これらの表示装置に好適に使用することができる。もちろん、積層偏光フィルムは、他の種類の表示装置に使用されても良い。
<1.実施例1>
まず、実施例1について説明する。実施例1では、以下の工程によりポリエン系偏光フィルム1を作製した。
(1−1.第1の工程)
溶媒である水にPVA(日本酢ビ・ポバール(VAN & POVAL)社製 JC−25)を投入した。ついで、水及びPVAの混合液を撹拌しながら加熱することで、PVAを水に十分溶解させた。次いで、PVA水溶液を25℃に保持し、PVA水溶液にレベリング剤(DIC株式会社のメガファック(MEGAFACE))を投入し、攪拌・溶解した。以上の工程により塗工液を作製した。塗工液中の水及びPVAの質量比は、91.5:8.5とした。また、レベリング剤の質量比は外数であり、具体的には、水、ポリビニルアルコールの総質量に対して0.002質量%とした。
ついで、ポリプロピレン(PP)製の第1の基材フィルム11に塗工液を塗工し、熱風循環オーブンで乾燥することで、第1の基材フィルム11上に厚さ10μmの第1のPVA層12を形成した。以上の工程により第1のフィルム10を作製した。また、同様の工程により第2のフィルム20を作製した。したがって、第1のPVA層12と第2のPVA層22とは同じ組成を有する。
(1−2.第2の工程)
第2の工程では、第1のフィルム10と第2のフィルム20とを圧着するとともに、第1のPVA層12及び第2のPVA層22に酸触媒を含浸させた。ここで、第2の工程は、圧着装置100を用いて行った。また、酸触媒水溶液200として、濃度が30質量%のPTSA水溶液(pH=0.4)を準備した。また、圧着PVA層40中の酸触媒の濃度が5質量%となるように、酸触媒水溶液200の供給速度と、第1のフィルム10及び第2のフィルム20の搬送速度とを調整した。
(1−3.第3の工程)
第3の工程では、第2の工程で作製された圧着体30を130℃に保持した乾燥炉に投入し、1軸ドライ延伸を行った。ドライ延伸の倍率は5倍とした。ついで、圧着体30中のPVAをポリエン化した。具体的には、圧着体30を当該130℃の乾燥炉中で3分間保持した。以上の工程でポリエン系偏光フィルム1を作製した。
(1−4.第4の工程)
第4の工程では、まず、第3の工程で作製されたポリエン系偏光フィルム1から第2の基材フィルム21を剥離した。ついで、ポリエン系偏光フィルム1を濃度7質量%、温度90℃のホウ酸水溶液(水和用水溶液)に2分間浸漬した。これにより、水和処理を行った。ついで、ポリエン系偏光フィルム1を濃度4.5質量%、温度60℃のホウ酸水溶液に浸漬し、ウエット延伸した。ウエット延伸の倍率は1.15倍とした。その後、ポリエン系偏光フィルム1を80℃に保持した乾燥炉に投入し、1分間乾燥させた。
(1−5.積層偏光フィルムの作製)
ついで、ポリエン系偏光フィルム1のポリエン面にUV接着剤を厚さ2μmで塗布した。ついで、UV接着剤層上に膜厚50μmの保護フィルム(紫外線吸収剤含有トリアセチルセルロース系フィルム:富士フィルム社製「フジタック(FUJITAC)」)を積層した。次いで、1000mJのUV光をUV接着剤層に照射することで、UV接着剤を硬化させた。ついで、ポリエン系偏光フィルム1から第1の基材フィルム11を剥離した。
ついで、ポリエン系偏光フィルム1のポリエン面にUV接着剤を厚さ2μmで塗布した。ついで、ポリエン系偏光フィルム1のUV接着剤層上に膜厚50μmの位相差フィルム(1/4波長板、帝人化成社製「WRS」)をポリエン系偏光フィルム1の光学吸収軸と1/4波長板の遅相軸とが45度となるように貼り付けた。ついで、上記と同様の処理によりUV接着剤を硬化させた。これにより、評価用の積層偏光フィルムを作製した。
(1−6.偏光特性の評価)
偏光特性として、単体透過率、偏光度、色座標a、bを測定した。具体的には、波長380〜780nmの範囲においてMD透過率とTD透過率を測定した。測定装置は、積分球付き分光光度計(日本分光株式会社製、V7100)を使用した。また、「MD透過率」とは、グラントムソンプリズム(glan−thompson prism)から出る偏光の向きと評価用の積層偏光フィルムの透過軸(すなわち、ポリエンの配向方向に垂直な方向)とを平行にしたときの透過率である。また、「TD透過率」とは、グラントムソンプリズムから出る偏光の向きと評価用の積層偏光フィルムの透過軸とを直交にしたときの透過率である。また、「MD透過率」及び「TD透過率」は、JIS Z8701の2度視野(C光源)により測定して視感度補正を行ったY値である。そして、MD透過率及びTD透過率と、以下の式(1)、(2)とに基づいて、単体透過率、及び偏光度を算出(測定)した。
単体透過率(%)=(MD+TD)/2 ・・・・式(1)
偏光度(%)={(MD−TD)/(MD+TD)}×100 ・・式(2)
式(1)、(2)中、MDはMD透過率を意味し、TDはTD透過率を意味する。
また、色座標a、bは、CIE1976(L)表色系の数値であり、紫外可視分光光度計V−7100に組み込まれたソフトウェア(software)により測定した。また、色座標a、bは、TD透過率測定時の値である。評価結果を表1に示す。なお、表1において、単体透過率及び偏光度は、380〜780nmの波長に比視感度曲線で重み付けして積分した値である。
Figure 0006675179
表1によれば、積層偏光フィルムは、単体透過率及び偏光度に優れていることがわかった。
<2.実施例2>
(2−1.積層偏光フィルムの作製)
実施例2では、以下の工程で第2のフィルム20を作製したことを除き、実施例1と同様の工程を行うことで、積層偏光フィルムを作製した。すなわち、実施例1と同様の工程により塗工液を作製した。さらに、この塗工液にポリエン連鎖抑制剤としてホウ酸を投入した。ホウ酸の投入量は、塗工液中のPVAの質量に対して4質量%とした。ついで、実施例1と同様の処理を行うことで、第2のフィルム20を作製した。
(2−2.偏光特性の評価)
次に、実施例1と同様の処理により、偏光特性を評価した。なお、実施例2では、第1のフィルム10及び第2のフィルム20の偏光特性も評価した。具体的には、第1のフィルム10及び第2のフィルム20を用いて積層偏光フィルムを作成し(具体的な工程は実施例1に準じる)、これらの積層偏光フィルムの偏光特性を評価した。その結果を表2及び図4に示す。なお、表2において、単体透過率及び偏光度は、380〜780nmの波長に比視感度曲線で重み付けして積分した値である。図4の縦軸は、吸光度、すなわち(−log10TD)で示される値を示し、横軸は測定光の波長を示す。
Figure 0006675179
表2及び図4によれば、第1のフィルム10及び第2のフィルム20を組み合わせた積層偏光フィルムは、吸収波長帯域が拡張されている。また、吸収ピーク波長が比較的大きい吸収特性を持つ第1のフィルム10と、吸収ピーク波長が比較的小さい吸収特性を持つ第2のフィルムは、直交色がニュートラルグレー(neutral glay)ではない。しかしながら、これらを組み合わせた積層偏光フィルムは、直交色がニュートラルグレーとなる。なお、色座標a、bで定義されるベクトル(vector)の長さが5未満となる場合、ニュートラルグレーが実現されているといえる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1 ポリエン系偏光フィルム
10 第1のフィルム
11 第1の基材フィルム
12 第1のPVA層
12a 第1のポリエン系偏光層
21 第2の基材フィルム
22 第2のPVA層
22a 第2のポリエン系偏光層
40 圧着PVA層
40a 圧着ポリエン系偏光層
120 ノズル

Claims (9)

  1. 第1のポリビニルアルコール層を含む第1のフィルムと、第2のフィルムとを準備する第1の工程と、
    前記第1のフィルムのポリビニルアルコール面と前記第2のフィルムとを圧着するとともに、前記第1のフィルムのポリビニルアルコール面と前記第2のフィルムとの界面を上方に露出させ、酸触媒水溶液を前記界面の露出部分に滴下する第2の工程と、
    前記第1のフィルムと前記第2のフィルムとが圧着された圧着体をポリエン化する第3の工程と、を含むことを特徴とする、ポリエン系偏光フィルムの製造方法。
  2. 前記第2のフィルムは、第2のポリビニルアルコール層を含み、
    前記第2の工程では、前記第1のフィルムのポリビニルアルコール面と前記第2のフィルムのポリビニルアルコール面とを圧着することを特徴とする、請求項1記載のポリエン系偏光フィルムの製造方法。
  3. 前記第2のポリビニルアルコール層には、ポリエン連鎖抑制剤が含まれることを特徴とする、請求項2記載のポリエン系偏光フィルムの製造方法。
  4. 前記ポリエン連鎖抑制剤は、前記第2のポリビニルアルコール層に含まれるポリビニルアルコールの総質量に対して2〜8質量%の割合で前記第2のポリビニルアルコール層に含まれることを特徴とする、請求項3記載のポリエン系偏光フィルムの製造方法。
  5. 前記ポリエン連鎖抑制剤は、ホウ酸、ホウ砂、グリセリン、金属アルコキシド化合物、及びテトラエトキシシランからなる群から選択されるいずれか1種以上であることを特徴とする、請求項3または4記載のポリエン系偏光フィルムの製造方法。
  6. 前記第2のポリビニルアルコール層は、変性基で変性されたポリビニルアルコールを含むことを特徴とする、請求項2記載のポリエン系偏光フィルムの製造方法。
  7. 前記第2の工程では、前記界面を上方に露出した状態で前記第1のフィルムのポリビニルアルコールフィルム面と前記第2のフィルムとを圧着するとともに、前記界面の露出部分に前記酸触媒水溶液を滴下することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリエン系偏光フィルムの製造方法。
  8. 前記酸触媒水溶液に含まれる酸触媒は、低揮発性の酸触媒であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリエン系偏光フィルムの製造方法。
  9. 前記酸触媒は、100℃での質量減少率が3質量%未満であることを特徴とする、請求項8記載のポリエン系偏光フィルムの製造方法。
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