JP6675149B2 - におい識別システム - Google Patents

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Description

本発明は、測定対象物から発せられる化学物質(におい分子)の正体を、分子サイズや極性(脂溶性)、分子内に有する官能基等から特定するのに役立つにおい識別システムに関する。
近年の情報化社会の発展に伴って、各種情報の管理における安全性を高めるために、より高い信頼性をもち、且つ利便性に優れた個人認証システムが要請されている。このなかで、情報の紛失・盗難・偽造といった危険性がないバイオメトリクスを用いた認証方法が注目され、すでに指紋や虹彩、静脈パターンを利用した認証方法が公知である。
また、体臭にも個人に固有の「匂い型」が存在することが知られる。例えば、P.Wallanceは、掌から発散される体臭によって、ヒトが他のヒトの個体を区別し得ることを報告しており、遺伝及び食事によって体臭原因物質の種類が影響され得ることを示唆している(Physiology & Behavior,vol.19,pp.577−579,Pergamon Press and Brain Research Publ.,1977)。したがって、この「匂い型」もバイオメトリクスを用いた認証方法の1つになり得る可能性があり、本願の発明者らは臭気や体臭を利用するバイオメトリクスセンサに係る発明を、下記特許文献1で提案している。
特許第5187571号公報
上述した例をはじめとして今後、においを活用した様々な応用例が創出されることが期待される。これを実現するためには、においの情報を人間が使いしやすい形にすること、すなわち、においを数値化していくことが求められる。本願出願人らは、測定対象物から発せられる化学物質(におい分子)の分子サイズ、極性(脂溶性)、分子内に有する官能基等の化学的な特徴を数値(パラメーター)として捉えることに着目し、これを具現化するシステムの開発を進めている。
本発明は、上記実情に鑑み提案され、測定対象物から発せられるにおい分子の分子サイズ、極性、分子内に有する官能基等の化学的な特徴をパラメーターとして捉え、その正体を特定することが可能となるにおい識別システムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係るにおい識別システムは、測定対象物を収容し、前記測定対象物から発生するにおい分子を含んだ空気を閉じ込める容器を有するにおい導入部と、前記におい導入部で閉じ込めた前記空気のうち、前記におい分子を選別し、濃縮するにおい選別素子部と、前記におい選別素子部で濃縮した前記におい分子を検出するにおい検出部と、を備え、前記におい選別素子部を構成するにおい選別素子として、分子サイズの違いにより前記におい分子を選別し、吸着し、蓄積する分子サイズフィルタ及び、極性の違いにより前記におい分子を選別し、吸着し、蓄積する極性フィルタと、この極性フィルタ及び前記分子サイズフィルタに蓄積した前記におい分子を揮発させるにおい脱離手段とが配設され、前記におい脱離手段は、前記におい選別素子を加熱する加熱手段であることを特徴とする。
さらに、上記におい選別素子として、分子が有する官能基によって前記におい分子を選別し、吸着し、蓄積する官能基フィルタを含むことを特徴とする。
また、上記分子サイズフィルタは、前記におい分子が選別される分子サイズの範囲が異なる種類毎に、前記におい選別素子部において並列或いは直列に設置されることを特徴とする。上記極性フィルタは、前記におい分子が選別される極性の範囲が異なる種類毎に、前記におい選別素子部において並列或いは直列に設置されることを特徴とする。
上記におい識別システムは、前記におい検出器の検出結果と予め保存したデータを比較するデータ処理部を備えることを特徴とする。
本発明は、におい選別素子部を構成するにおい選別素子内のフィルタとして、分子サイズの違いによりにおい分子を選別し、吸着し、蓄積する分子サイズフィルタ及び、極性の違いによりにおい分子を選別し、吸着し、蓄積する極性フィルタを含んで構成される。したがって、におい分子の分子サイズ、極性という2つの特徴をパラメーターとして捉えることができ、上記2つの化学的特徴に基づいてにおい分子の正体に迫ることができる。
また、本発明は、におい選別素子部を構成するにおい選別素子内のフィルタとして、分子が有する官能基によってにおい分子を選別する官能基フィルタを含んで構成される。これにより、上記2つの特徴に、さらに官能基の特徴もパラメーターとして捉えることが可能となるので、合計3つの化学的特徴に基づいてにおい分子の正体に迫ることができ、その確度を上げることができる。
特に、本発明において、分子サイズフィルタが、におい分子が選別される分子サイズの範囲が異なる種類毎に、におい選別素子部において並列或いは直列に設置される構成である。極性フィルタも、におい分子が選別される極性の範囲が異なる種類毎に、におい選別素子部において並列或いは直列に設置される構成である。これにより、大小どのような分子サイズであっても、さらに、極性の大小がどのような分子であっても、並列或いは直列に設置したいずれかの分子サイズフィルタや極性フィルタでにおい分子を確実に捕捉することができる。したがって、におい分子の正体を極めて高い確度で特定及び識別することができる。
このほか、本発明は、におい検出器の検出結果と予め保存したデータを比較するデータ処理部を備える構成である。これによりデータ処理部において、例えば、におい検出器の検出結果としてにおい分子を座標上の点としてマッピングし、同じ形式の座標上に、対応する化学物質が予めマッピングされているデータベースと照合することで、検出されたにおい分子がどの化学物質に対応するのかを突き止める処理を行うことができる。したがって、におい分子の正体に迫ることができるようになる。
本発明に係るにおい識別システムの全体の概略構成を説明する概略構成説明図である。 本発明に係るにおい識別システムの全体の概略構成において特に、におい選別素子部の概略構成を説明する概略構成説明図である。 本発明に係るにおい識別システムにおけるデータ処理部のデータベースに予め保存されているにおい分子を座標上にマッピングして示した例である。 分子サイズの大きさの範囲が異なる種類毎に設置される分子サイズフィルタにより、分子サイズが異なるにおい分子の吸着特性の違いを示すグラフである。 酸性官能基フィルタにより、サンプル分子中の酸性物質を分離できることを示すグラフである。
以下、本発明に係るにおい識別システムの実施形態を、図面に基づいて詳細に説明していく。本実施形態は、本発明の技術的範囲に含まれる一つの例示であるので、本発明は、以下に説明する装置構成等に限定されることなく、その技術的範囲内において種々の設計変更をすることが可能である。また、以下の説明において、同じ機能あるいは類似の機能をもった装置に対し、特別な理由がない場合に同じ符号を用いるものとする。
本発明に係るにおい識別システム1は、図1に示すように、測定対象物Sを収容するにおい導入部としてのサンプル収容室2と、測定対象物Sから発せられる化学物質であるにおい分子を検出するにおい選別素子が配置されたにおい選別素子部31及び、におい検出部としてのにおいセンサ部32からなるにおい検出室3とを備えている。さらに、このにおい検出室3で検出された結果と予め保存したデータを比較するデータ処理部としてのパーソナルコンピュータ(PC)4を備えている。サンプル収容室2とにおい検出室3とは流路5によって接続されている。この流路5は脱臭室6とも接続されている。この脱臭室6において外部から導入された空気は脱臭され、クリーンな空気(脱臭済み空気)として流路5へ放出される。
サンプル収容室2は、測定対象物Sから発生するにおい分子を含んだ空気を外部に漏らさないようにする密閉容器を有している。この密閉容器が密閉されると、流路5を環流している脱臭済み空気のみが容器内に流入可能となる。測定対象物Sから発せられるにおい分子は、この脱臭済み空気に乗って流路5に放出され、におい検出室3で検出される。
におい検出室3は二室から構成される。この二室は上述のように、一方が各種のにおい選別素子が配置されたにおい選別素子部31であり、他方がにおいセンサ部32である。図2に示すように、におい選別素子部31には、におい分子を分子サイズの違いにより分類し、におい分子のうち特定範囲のオングストローム(Å)サイズの分子を選別し、吸着し、濃縮する分子サイズフィルタ31aが備えられている。におい分子を極性(脂溶性)の違いにより分類し、におい分子のうち特定範囲の極性を持つ分子を選別し、吸着し、濃縮する極性フィルタも備えられている。さらに、分子内に有する官能基によってにおい分子を選別し、吸着し、濃縮する官能基フィルタ、例えば、酸性官能基或いはアミノ基の有無に基づいてにおい分子を選別する官能基フィルタが備えられている。分子サイズフィルタ又は極性フィルタ、官能基フィルタはそれぞれガス用フィルタである。
測定対象物Sから発せられ、流路5の脱臭済み空気に乗ってにおい検出室3に到達したにおい分子は、におい選別素子部31において、その分子サイズの違いから、個別の流路5を有して並列或いは直列に配置されている複数種の分子サイズフィルタ31aのうち、いずれかで捕捉される。また、極性の違いから、分子サイズフィルタ31aと別の区画に配置され、個別の流路5を有して並列或いは直列に配置されている複数種の極性フィルタのうち、いずれかで捕捉される。さらに、分子サイズフィルタ又は極性フィルタに対して並列或いは直列に配置されている官能基フィルタにより、酸性官能基或いはアミノ基を有する場合に捕捉される。なお、図2において、極性フィルタ及び官能基フィルタが配置されている様子については図示が省略されている。また、本実施形態おいて示す官能基フィルタの例示は、後述するように酸性官能基を選別する酸性官能基フィルタ(アルカリビーズ)である。
分子サイズフィルタ31aとして、多孔質の例えば、カーボンモレキュラーシーブ(SUPELCO社製)を採用することができる。本実施形態において分子サイズフィルタ31aは、具体的には、C1−C3の炭化水素を捕らえるCarbosieve−G(CMS−G)、60/80メッシュのCarboxen−1000(CMS−1000)及び、15〜40オングストローム(Å)のポアサイズを有するCarbosieve−SIII(CMS−SIII)の3種から構成されている。これらの分子サイズフィルタ31aは、200〜400℃という高温に対する耐熱性が備わっている。
また、分子サイズフィルタ31aとして、規則正しい細孔をもつ結晶性ゼオライト(アルミノケイ酸塩)のモレキュラーシーブを用いることもできる。この場合、例えば、3A、4A、5A、13Xの4種で構成することができる。3A、4A、5A、13Xのモレキュラーシーブは、それぞれ直径約3Å、4Å、5Å、10Åの細孔を持ち、特定分子サイズの吸着サイトを持つナノ構造を有する。例えば、3Aのモレキュラーシーブでは3Å未満の物質はモレキュラーシーブの細孔内に吸着し、トラップされてしまうが、3Å以上の物質は細孔内に入り込むことができないため、トラップされない。4Aのモレキュラーシーブでは4Å未満の物質は吸着することができるが、4Å以上の物質は吸着することができない。つまり、分子サイズが3〜4Åである化学物質は、3Aと4Aのモレキュラーシーブへの吸着を比較することで検出することができる。
極性フィルタとして、各種のイオン交換樹脂又はイオン交換膜等を採用することができる。本実施形態において極性フィルタは、具体的には、極性の小さな分子を捕捉する側からPDMS(ポリジメチルシロキサン)、DVB−PDMS〔ポリ(スチレン−ジビニルベンゼン共重合体)〕マイクロスフェア(平均粒子径8um)、ATBC−PVC(アセチルトリブチルクエン酸ポリ塩化ビニル)、DOP−PVC(ジオクチルフタル酸ポリ塩化ビニル)の4種のものから選ばれる2〜4種が並列或いは直列に配置されて構成されている。極性フィルタも、高温耐熱性を備えている。
分子サイズフィルタ31a又は極性フィルタに対して並列或いは直列に配置される官能基フィルタには、本実施形態においてアルカリビーズ(信和化工社製)が採用されている。このアルカリビーズは、無孔性ガラスビーズに強塩基である水酸化ストロンチウムを被覆して構成され、酸を選択的に吸着することができる。また、他の例として、Au等の金属表面をチオール膜で被覆し、このチオール膜の末端にカルボキシル基を配置した構成の官能基フィルタとすれば、アミン類を吸着することができる。このように、官能基フィルタ9としてアルカリビーズを用いることにより、酸性、塩基性その他の特定官能基と相互作用する末端を有する単分子膜を形成することができる。
本発明に係るにおい識別システムでは、におい選別素子部31において、例えば、縦15mm、幅5.5mm、深さ15mmにくりぬかれたアルミ製容器の内部に、フィルタを直接加熱する加熱手段としての正方形のヒーター(面積100mm2)が設置されている。このヒーターの表面に各種のフィルタが取り付けられている。流路5は、テフロン(登録商標)等のフッ素樹脂性のチューブによって構成される。また、図2に示すように、どの流路系においてもガス流量を一定に保つため、マスフローコントローラMFCが挿入されている。マスフローコントローラMFCによりガス流量を制御することができる。流路5に設置された電磁弁(例えば、三方電磁弁7)の開閉の制御は、制御装置8(コンピュータ)で行なわれる。
例えば、三方電磁弁7の開閉を制御装置8で制御することで、におい導入部(サンプル収容室2)を通さずに、クリーンな空気をにおい選別素子部3に送るのか、サンプル収容室2を通して、におい分子を含んだサンプルガスをにおい選別素子部31に送るのかを決めることができる。また、サンプルガスをにおい選別素子部31に十分送った後にクリーンな空気で洗浄し、次いで、におい脱離手段(加熱手段としての正方形のヒーター)を用いる。これにより、におい選別素子部31の各フィルタに蓄積したサンプルガス中のにおい分子を揮発させ、におい検出部(においセンサ部32)に送ることができる。
そして、複数のにおいセンサ部32に送られたにおい分子はガスセンサ32aで検出されてデータが収集され、このガスセンサ32aの応答を比較する等のデータ処理がPC4で行われることによって、ある特定の性質をもつにおい分子が、測定対象物Sにどれだけ含まれているかを測定することができる。
ガスセンサ32aの例示として、酸化物半導体型匂いセンサ(FIGARO・TGS2600)を挙げることができる。酸化物半導体型匂いセンサは、高温に熱した酸化物半導体に可燃性ガスが吸着すると電気抵抗が変わることを利用した酸化物半導体ガスセンサである。ガスセンサ32aは複数設置され、その抵抗値を読み取ることにより測定される。
また、酸化物半導体ガスセンサのほか、電解質ににおい分子を拡散させる電気化学インピーダンス式ガスセンサ、接触電位差の変化を検出する電気化学式ガスセンサ、分子選択性のある膜を振動子表面に形成した水晶振動子(QCM)センサ、或いは表面プラズモン共鳴(SPR)の共鳴周波数が表面状態で変化することを利用したセンサ等を採用することができる。
ここで、図1に示す流路を通じてにおい分子を測定する順序は、およそ以下のとおりである。
におい導入部(サンプル収容室2)を通さずクリーンな空気を流通して流路5を洗浄→サンプル収容室2を通して、におい分子を含んだサンプルガスを流通→サンプル収容室2を通さずクリーンな空気を流通してにおい選別素子部31(例えば、におい選別素子内のフィルタとしての分子サイズフィルタ31a)から余計なにおい分子を洗浄→サンプル収容室2を通さずクリーンな空気を流通しつつ、におい脱離手段によってにおい選別素子部31からにおい分子をにおい検出部(においセンサ部32)へ送る→サンプル収容室2を通さずクリーンな空気を流通して流路5を洗浄
なお、におい選別素子内のフィルタとしての極性フィルタ、官能基フィルタに対しても、同様な操作を経ることでにおい分子を選別、測定することができる。
PC4でのデータ処理では、検出されたにおい分子が、予め保存されていたデータと比較、照合され、その正体が特定される。具体的には、におい分子の特性(分子サイズ、極性)を座標軸上にマッピングする、すなわちガスセンサ32aにおいて、分子サイズ、極性が数値として検出されることから、これをパラメーターとして捉えてマッピングするのである。これに対し、PC4にはデータベースとして、例えば、図3に示すような所定の座標上に、既知の化学物質が領域としてマッピングされているデータが収容されている。このため、ガスセンサ32aで検出されたにおい分子を、分子サイズ、極性の点から図3に示すような座標と同じ形式の座標上の点としてマッピングし、PC4のデータベースに収容されているデータと照合することで、検出されたにおい分子が、どの化学物質に対応するのかを特定する処理を行うことができる。図3では、分子サイズのパラメーターとして♯1(小)〜#3(大)の3つに、極性のパラメーターとしてI(弱)〜III(強)の3つに分類した座標が表され、3×3(3掛ける3)で区画された面積領域に、それぞれ対応する化学物質(A〜H)が2次元でマッピングされてデータベース化されている。
なお、図3において、Aの領域は脂肪酸(Fatty acid)が、Bの領域はC9以上の長鎖におい分子(Long-chain odorant:C>9)が、Cの領域はアルデヒド(Intermediate chain aldehyde)が、Dの領域はエステル又は短鎖におい分子(Ester, Small-chain odorant)が、Eの領域はフェノール(Phenol)が、Fの領域は芳香族炭化水素又はケトン(Aromatic, Intermediate chain ketone)が、Gの領域はその他の炭化水素(Hydrocarbon)が、Hの領域は硫黄原子又は窒素原子を含むにおい分子(Odorant containing S or N)が、それぞれ対応する化学物質であることを示す。
上記実施形態において、におい選別素子部31を構成するにおい選別素子内のフィルタは、3種のカーボンモレキュラーシーブ(CMS)、極性フィルタ(PDMS、DVB−PDMS、ATBC−PVC、DOP−PVC)から選ばれる2〜4種、例えば3種、及び1種のアルカリビーズからなる3種のパラメーターで構成されている。実際のにおい測定は種々のガス成分を検出する必要があるので、更に多種のガス用フィルタを組み合わせて、ガス用フィルタのチャネル数を検出対象のガス成分に応じて増やすことができる。
このように、本発明に係るにおい識別システムは、複数の種類からなるガス用フィルタを組み合わせ、測定対象物Sに含まれる特定のにおい分子を選択的に吸着し、濃縮し、脱離手段によって揮発させることによって達成することができる。
以下、本発明に係るにおい識別システムが、測定対象物Sに含まれるにおい分子を特定することが可能かどうかの模擬試験を行ったので、その試験結果等を説明する。
(実施例1)
実施例1では、分子サイズに対応するパラメーター評価を目指し、異なる細孔径を持つ吸着剤である3種のカーボンモレキュラーシーブ(CMS−G、CMS−1000及びCMS−SIII)を適用して実施した。CMS−G、CMS−1000及びCMS−SIIIを、それぞれ個別の流路に配置した。また、分子サイズの異なるサンプル(におい分子)として炭素数の異なる3種類のケトン(アセトン、2−ヘキサノン、2−ノナノン)を用意した。
実施例1では、各サンプルを濃度が0.75%となるように調整した後、容器内の気体を脱臭済み空気で押し出し、CMS−G、CMS−1000及びCMS−SIIIに、流量30ml/minで120秒間通気した。その後、弁を切り替え、脱臭済み空気により流量200ml/minで300秒間流路内を喚起し、再び流量30ml/minで脱臭済み空気を流しながら120秒間ヒーターに通電し、CMS−G、CMS−1000及びCMS−SIIIを250℃に加熱した。加熱によって、これらの分子サイズフィルタ7から各サンプルに含まれるにおい分子を揮発させて酸化物半導体型匂いセンサへと導き、続いて検出値を得た。その結果を図4に示す。
図4のグラフの縦軸は、脱臭済み空気のみの測定時とサンプルガス測定時のガスセンサの検出値の比を表している。数値が大きいほど、分子サイズフィルタ7が各サンプルに含まれるにおい分子(アセトン、2−ヘキサノン、2−ノナノン)を吸着していると理解される。CMS−Gではアセトンと、2−ヘキサノンが、CMS−1000では2−ヘキサノンが、CMS−SIIIでは、2−ヘキサノンと2−ノナノンが、サンプルガス測定時における検出比が脱臭済み空気のみの測定時の値よりも1.4〜2.4倍程度高くなっていることから、「分子サイズの異なるにおい分子の検出比がCMSの種類によって異なる」という結果が得られた。すなわち、図4に示した結果から、サンプルに含まれるにおい分子の分子サイズに対応するパラメーター評価が可能であることが判明した。したがって、このパラメーター評価によって、におい分子の正体に迫ることが可能となることが分かる。なお、実施例1では単一のにおい分子に対し、その正体に迫ることが可能となる効果が確認されたに過ぎないものの、例えば、主成分分析法のデータ分析手法を用いることで、混合臭に対しても同様な効果を得ることができるものと理解される。
(実施例2)
実施例2では、極性(脂溶性)に対応するパラメーターの評価を目指し、3種の極性フィルタを適用した。極性フィルタにはそれぞれを個別の流路に配置し、測定を実施した。
実施例2では、極性(脂溶性)の異なる各サンプルを濃度が0.75%となるように調整した後、容器内の気体を脱臭済み空気で押し出し、PDMS、DVB−PDMS、及びATBC−PVCに、流量30ml/minで120秒間通気した。その後、弁を切り替え、脱臭済み空気により流量200ml/minで300秒間流路内を喚起し、再び流量30ml/minで脱臭済み空気を流しながら120秒間ヒーターに通電し、PDMS、DVB−PDMS、ATBC−PVCを180℃に加熱した。加熱によって、これらの分子サイズフィルタ7から各サンプルに含まれるにおい分子を揮発させて酸化物半導体型匂いセンサへと導き、続いて検出値を得た。
「極性(脂溶性)の異なるにおい分子の検出比が極性フィルタの種類によって異なる」という結果が得られた。すなわち、サンプルに含まれるにおい分子の分子サイズに対応するパラメーター評価が可能であることが判明した。したがって、このパラメーター評価によって、におい分子の正体に迫ることが可能となることが分かる。なお、実施例2では単一のにおい分子に対し、その正体に迫ることが可能となる効果が確認されたに過ぎないものの、例えば、主成分分析法のデータ分析手法を用いることで、混合臭に対しても同様な効果を得ることができるものと理解される。
(実施例3)
実施例3では、分子内の特定官能基の有無に対応するパラメーター評価を目指し、サンプル中の分子から、酸性官能基を吸着する官能基フィルタとしての水酸化ストロンチウムを被覆したアルカリビーズによって、酸性官能基を含む分子のみを吸着し、その他を通過させることができるか否かについて検証した。
実施例3では、100ppmに調製されたエタノール及び酢酸のそれぞれ単一サンプルについて、容器内の気体を脱臭済み空気で押し出し、アルカリビーズに流量30ml/minで120秒間通気した。その後、弁を切り替え、脱臭済み空気により流量200ml/minで300秒間流路内を喚起し、再び流量30ml/minで脱臭済み空気を流しながら120秒間ヒーターに通電してアルカリビーズを加熱した。加熱によってアルカリビーズが吸着していたにおい分子(エタノール及び酢酸)を脱離させてガスセンサへと導き、続いて検出値(酸性物質濃度)を得た。その結果を図5に示す。
その結果、酸化物半導体型匂いセンサは、有機酸である酢酸に対して良好に応答し、高い酸性物質濃度が示されたが、酸でないエタノールに対して応答なかった。したがって、図5に示した結果から、サンプルに含まれるにおい分子の分子内の特定官能基に対応するパラメーター評価が可能であることが理解される。このパラメーター評価によって、におい分子の正体に迫ることが可能となることが示された。
したがって、本発明は、におい選別素子部を構成するにおい選別素子として、分子サイズフィルタ及び極性フィルタ、官能基フィルタを備えて構成することにより、分子サイズ、極性(脂溶性)及び酸性官能基等の少なくとも3つの化学的特徴に基づいてにおい分子の正体に迫ることができる。さらに、におい検出器の検出結果と予め保存したデータを比較するデータ処理部において、検出結果であるマッピングしたにおい分子と、対応する化学物質が予めマッピングされているデータベースとを照合することで、検出されたにおい分子がどの化学物質に対応するのかを特定する処理を行うことができる。したがって、測定対象物Sに含まれるにおい分子の正体を容易に特定することが可能となる。
以上、本発明について出願人が最良であると信じる実施形態の1つを詳述したが、本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、上記実施形態に限定されることなく、種々の設計変更を行う事が可能である。例えば、本発明を構成するために必要とされる部材、部品等は、本発明から得ることのできる作用を満たすものである限り、例示した以外の部材、部品等を採用することができる。
また、今後、におい分子の数値化しようとする化学的特徴を増やすことにより、さらに確度の高いにおい分子の特定が可能となる。例えば、logPや、その他の官能基の有無を捕捉可能なガス用フィルタ(におい選別素子)を採用して本発明を構成すること等を試みることができる。ガス用フィルタは、少なくともにおい分子を選別し、吸着し又は蓄積する機能があれば、本発明に採用可能である。
1・・・におい識別システム
2・・・サンプル収容室
3・・・におい検出室
31・・におい選別素子部
31a・分子サイズフィルタ
32・・においセンサ部
32a・ガスセンサ
4・・・パーソナルコンピュータ(PC)
5・・・流路
6・・・脱臭室
7・・・三方電磁弁
8・・・制御装置
S・・・測定対象物
MFC・マスフローコントローラ

Claims (5)

  1. 外部から導入された空気を脱臭する脱臭室と、
    測定対象物を収容し、前記測定対象物から発生するにおい分子を含んだ空気を閉じ込める容器を有し、前記脱臭室と接続されたにおい導入部と、
    前記におい導入部で閉じ込めた前記空気に、前記脱臭室で脱臭された空気を混合させた空気のうち、前記におい分子を選別し、濃縮するにおい選別素子部と、
    前記におい選別素子部で濃縮した前記におい分子を検出するにおい検出部と、
    を備え、
    前記におい選別素子部を構成するにおい選別素子として、分子サイズの違いにより前記におい分子を選別し、吸着し、蓄積する複数種の分子サイズフィルタ及び、極性の違いにより前記におい分子を選別し、吸着し、蓄積する複数種の極性フィルタと、前記極性フィルタ及び前記分子サイズフィルタに蓄積した前記におい分子を揮発させるにおい脱離手段と、が配設され、
    前記分子サイズフィルタは、前記におい分子が選別される分子サイズの範囲が異なる種類毎に、前記におい選別素子部において並列に設置され、
    前記極性フィルタは、前記におい分子が選別される極性の範囲が異なる種類毎に、前記におい選別素子部において並列に設置され、
    前記におい脱離手段は、前記におい選別素子を加熱する加熱手段である、
    ことを特徴とするにおい識別システム。
  2. 前記におい選別素子として、分子が有する官能基によって前記におい分子を選別し、吸着し、蓄積する官能基フィルタを含む、
    ことを特徴とする請求項1に記載のにおい識別システム。
  3. 前記におい検出部は、ガスセンサを有し、
    前記ガスセンサは、酸化物半導体ガスセンサ、電気化学インピーダンス式ガスセンサ、水晶振動子センサ、表面プラズモン共鳴を利用したセンサの何れかで構成される、
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のにおい識別システム。
  4. 前記におい検出部の検出結果と予め保存したデータを比較するデータ処理部を備える、
    ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載のにおい識別システム。
  5. 前記データ処理部において、
    前記ガスセンサにおいて数値化された分子サイズ、極性を座標上にマッピングした結果と、既知の化学物質の分子サイズ、極性をマッピングされた情報とを照合することで、検出されたにおい分子に対応する化学物質を特定する、
    ことを特徴とする請求項3を引用する請求項4に記載のにおい識別システム。
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