以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
1.送電装置、受電装置、制御装置の構成
図1に本実施形態の制御装置20、50及びこれを含む送電装置10、受電装置40の構成例を示す。なお、これらの各装置の構成は図1の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素(例えば報知部)を追加したり、接続関係を変更するなどの種々の変形実施が可能である。
送電装置10は、送電側の電子機器に含まれる。送電側の電子機器は、例えば充電器や、送電機能を有する各種の機器である。受電装置40は、受電側の電子機器に含まれる。受電側の電子機器は、例えば補聴器、ウェアラブル機器、携帯情報端末等である。この送電装置10と受電装置40とにより、送電装置10から受電装置40に対して電力を伝送する電力伝送システムが実現される。なお送電装置10から受電装置40への送電は、後述する無接点の電力伝送(ワイヤレスの電力伝送)であってもよいし、ケーブル、コネクター等による接点のある電力伝送(有線の電力伝送)であってもよい。
送電装置10(送電モジュール、1次モジュール)は、送電部12、制御装置20を含む。送電部12は、受電装置40に電力を送電する回路であり、送電ドライバーなどにより実現できる。制御装置20は、送電側の各種制御を行うものであり、集積回路装置(IC)などにより実現できる。制御装置20は、制御部24、通信部30を含む。なお送電部12を制御装置20に内蔵させるなどの変形実施も可能である。
制御部24は、送電側の制御装置20の各種の制御処理を実行する。例えば制御部24は、送電部12や通信部30の制御を行う。具体的には制御部24は、電力伝送、通信処理等に必要な各種のシーケンス制御や判定処理を行う。この制御部24は、例えばゲートアレイ等の自動配置配線手法で生成されたロジック回路や、或いはマイクロコンピューターなどの各種のプロセッサーにより実現できる。
通信部30は、受電装置40との間での通信データの通信処理を行う。例えば通信部30は、受電装置40からの通信データを検出して受信するための処理を行う。
受電装置40(受電モジュール、2次モジュール)は、制御装置50を含む。制御装置50は、受電側の各種制御を行うものであり、集積回路装置(IC)などにより実現できる。制御装置50は、受電部52、制御部54、電力供給部57を含む。また通信部46、監視部78を含むことができる。なお、受電部52を制御装置50の外部に設けるなどの変形実施も可能である。
受電部52は、送電装置10からの電力を受電する。例えば受電部52は、交流の電圧を直流の整流電圧(VCC)に変換して、出力する。
電力供給部57は、受電部52が受電した電力に基づいて、負荷80に対して電力を供給する。例えば受電部52が受電した電力を供給して、バッテリー90を充電する。
電力供給部57は充電部58と放電部60を含むことができる。充電部58はバッテリー90の充電(充電制御)を行う。例えば充電部58は、受電部52の出力電圧VCC(整流電圧、直流電圧)に基づく電圧が供給されて、バッテリー90を充電する。放電部60はバッテリー90の放電動作を行う。例えば放電部60は、バッテリー90の放電動作を行って、バッテリー90からの放電電力を電力供給対象100に対して供給する。電力供給部57は、充電部58と放電部60を含む構成には限定されない。
制御部54は、受電側の制御装置50の各種の制御処理を実行する。例えば制御部54は、通信部46、電力供給部57(充電部、放電部)の制御を行う。また受電部52や監視部78の制御を行うこともできる。制御部54は、例えばゲートアレイ等の自動配置配線手法で生成されたロジック回路や、或いはマイクロコンピューターなどの各種のプロセッサーにより実現できる。
制御部54は、充電系制御部54C(第1の制御部)と放電系制御部54D(第2の制御部)を含む。充電系制御部54Cは、例えば受電部52の出力電圧VCCに基づく電源電圧で動作する充電系の回路の制御を行う。放電系制御部54Dは、例えばバッテリー電圧VBATに基づく電源電圧で動作する放電系の回路の制御を行う。放電系制御部54Dは、放電系の制御用の情報が設定されて記憶される設定レジスター55を含む。
通信部46は、送電装置10に対して通信データを送信する通信を行う。或いは送電装置10から通信データを受信する通信を行ってもよい。例えば通信部46は、例えば無接点の電力伝送の場合には、負荷変調により通信処理を行うが、負荷変調以外の方式、例えばRFなどの近接無線通信で通信を行ってもよい。
監視部78は、スイッチ部514の操作状態を監視する回路である。例えばスイッチ部514によるオフ操作やオン操作を監視する。スイッチ部514はユーザーが操作する操作デバイスであり、例えば受電装置40が組み込まれる電子機器に設けられる。
負荷80は、バッテリー90、電力供給対象100を含む。バッテリー90は例えば充電可能な二次電池であり、例えばリチウム電池(リチウムイオン二次電池、リチウムイオンポリマー二次電池等)、ニッケル電池(ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池等)などである。電力供給対象100は、例えば、処理部(DSP、マイコン)などのデバイス(集積回路装置)であり、受電装置40を内蔵する電子機器に設けられ、例えばバッテリー90の電力供給対象となるデバイスである。
そして本実施形態では、送電装置10から供給された電力を受電する受電装置40に含まれる制御装置50(受電側の制御装置)は、電力供給部57と、電力供給部57を制御する制御部54を含む。電力供給部57は、受電装置40内の受電部52が受電した受電電力に基づいて、バッテリー90を充電する。例えば受電部52の出力電圧VCC(整流電圧)に基づいて、バッテリー90を充電する制御を行う。また電力供給部57は、バッテリー90から放電された放電電力に基づいて、電力供給対象100に対して電力を供給する。例えばバッテリー90の電圧であるバッテリー電圧VBATに基づく出力電圧VOUTを、受電側の電子機器が有する処理部等のデバイスである電力供給対象100に供給する。出力電圧VOUTは、バッテリー電圧VBATを電圧変換(例えば降圧)した電圧である。
制御部54は、電力供給部57の電力供給動作を制御するための動作モードとして第1のモードと第2のモードとを有する。第1、第2のモードの設定は例えば設定レジスター55により行われる。そして送電装置10から受電装置40が取り去られたことが検出された場合、制御部54は、動作モードが第1のモードに設定されている時には、電力供給部57の電力供給動作をオン(イネーブル)にする。即ち、電力供給動作の動作モードが第1のモードに設定されている場合には、受電装置40の取り去り検出時に、電力供給部57の電力供給動作をオンにする。一方、送電装置10から受電装置40が取り去られたことが検出された場合、制御部54は、動作モードが第2のモードに設定されている時には、電力供給部57の電力供給動作をオフ(ディスエーブル)にする。即ち、動作モードが第2のモードに設定されている場合には、受電装置40の取り去り検出時に、電力供給部57の電力供給動作をオフにする。
ここで、送電装置10からの受電装置40の取り去りは、無接点(ワイヤレス)や有接点(有線)の電力伝送の経路が遮断されている状態であり、例えば送電側の電子機器(充電器等)から、受電側の電子機器(補聴器、ウェアラブル機器、携帯情報端末等)が取り去られた状態(取り外された状態)である。取り去りの検出は、例えば受電部50の出力電圧VCCの低下を検出することなどにより実現できる。
また第1、第2のモードは、電力供給部57の電力供給動作の動作モード(制御装置50の動作モード)であり、その設定情報が例えば設定レジスター55に記憶される。例えば第1のモードは通常動作モードであり、通常動作モードでは、受電装置40の取り去りが検出された場合に、電力供給部57の電力供給動作がオンになって電力供給動作が開始される。これにより、バッテリー90からの放電電力が電力供給対象100に供給されて、電力供給対象100の通常動作(受電側の電子機器の通常動作)が可能になる。一方、第2のモードは、電力供給動作のオフスタートモードである。このオフスタートモードでは、受電装置40の取り去りが検出された場合に、電力供給動作がオフになって、バッテリー90からの放電電力が電力供給対象100に供給されなくなる。これにより無駄な電力の消費が抑制されて、低消費電力化を図れるようになる。
また制御部54は、受電部52の受電電力に基づいてバッテリー90が充電される充電期間(例えば通常送電期間)において、電力供給部57の電力供給動作をオフにする。即ち、充電期間においては、電力供給部57の電力供給動作がオフになり、バッテリー90からの放電電力は電力供給対象100に供給されなくなる。これにより、充電中に無駄な電力が消費されるのを抑制できる。そして、充電中や充電終了後(満充電後)に受電装置40の取り去りが検出された場合に、第1のモードでは、オフであった電力供給動作が自動的にオンになり、バッテリー90からの放電電力が電力供給対象100に供給されるようになる。これにより電力供給対象100の通常動作が可能になる。一方、充電中や充電終了後に受電装置40の取り去りが検出された場合に、第2のモードでは、オフであった電力供給動作は、そのままオフ状態に維持される。これにより、受電装置40の取り去り期間での省電力化を実現できる。
また制御装置50は監視部78を含み、監視部78は、スイッチ部514(操作部)の操作状態(オン操作、オフ操作、切替操作等)を監視(検出)する。そして制御部54(放電系制御部54D)は、受電装置40が送電装置10から取り去られている取り去り期間において、スイッチ部514の操作状態の監視結果(監視部からの監視結果信号)に基づいて、電力供給動作をオンからオフ又はオフからオンに切り替える。
例えば第1のモードでは、取り去り検出時に電力供給部57の電力供給動作はオンになっているが、その後に、スイッチ部514による操作(切替操作、オフ操作)が監視部78により検出された場合には、電力供給動作をオンからオフに切り替える。そして、その後にスイッチ部514による操作が検出された場合に、電力供給動作をオフからオンに切り替える。また第2のモードでは、取り去り検出時に電力供給動作はオフになっているが、その後にスイッチ部514による操作が監視部78により検出された場合に、電力供給動作をオフからオンに切り替える。そして、その後にスイッチ部514による操作が検出された場合に、電力供給動作をオンからオフに切り替える。
また制御装置50は、送電装置10(送電側の制御装置20)により、動作モードとして、少なくとも第2のモードが設定される。なお送電装置10とは異なる外部装置550により、動作モードとして、少なくとも第2のモードが設定されてもよい。外部装置550は、送電装置10とは別個の装置として用いられる装置(例えばPC、携帯情報端末等)である。また送電装置10又は外部装置550により、動作モードとして、第1のモードが設定されてもよい。また送電装置10又は外部装置550による動作モードの設定は、送電装置10又は外部装置550と制御装置50との通信(送電側の応答)に基づいて行われ、例えば設定レジスター55に対して行われる。
また通信部46は、送電装置10又は外部装置550に対して通信データを送信する通信を行う。そして通信部46は、動作モードが、第1のモード、第2のモードのいずれのモードに設定されているかを知らせる通知情報を、通信データとして、送電装置10又は外部装置550に送信する。なお、通知情報は、少なくとも動作モードが第2のモードに設定されていることを送電装置10又は外部装置550に認識させることができる情報であればよい。例えば通知情報は、第2のモードであるオフスタートモードに設定されていることを知らせるフラグ情報などである。そして、通知情報を受信した送電装置10又は外部装置550は、第2のモード(オフスタート)に設定されていることを、光や音や画像などを用いて、LED等の報知部(報知デバイス)により報知することが望ましい。
また設定レジスター55は、動作モードが、第1のモード、第2のモードのいずれのモードに設定されているかを記憶する。例えば送電装置10又は外部装置550による通信(応答)により、設定レジスター55に第1のモードが設定されている場合には、受電装置40の取り去り検出時に、電力供給部57の電力供給動作がオンになり、設定レジスター55に第2のモードが設定されている場合には、受電装置40の取り去り検出時に、電力供給部57の電力供給動作がオフになる。
そして設定レジスター55は、バッテリー90のバッテリー電圧VBATに基づく電源電圧(VBATそのもの又はVBATをレギュレートした電圧)が供給されて動作する。例えば設定レジスター55はフリップフロップ等により実現できる。そして当該フリップフロップが第1の論理レベル(例えば「1」)を記憶している場合には、動作モードが第2のモードに設定され、第2の論理レベル(例えば「0」)を記憶している場合には、動作モードが第1のモードに設定される。
電力供給部57は充電部58と放電部60を含むことができる。充電部58は、受電部52の受電電力に基づいて、バッテリー90を充電する。放電部60は、バッテリー90の放電動作を行って、バッテリー90からの放電電力を電力供給対象100に対して供給する。そして制御部54は放電部60を制御する。具体的にはバッテリー電圧VBATに基づく電源電圧で動作する放電系制御部54Dが、放電部60(及び監視部78)を制御する。なお、充電部58は、受電部52の出力電圧VCCに基づく電源電圧で動作する充電系制御部54Cにより制御される。
また制御部54は、充電系制御部54Cと放電系制御部54Dを含む。充電系制御部54Cは、受電部52の出力電圧VCCに基づく電源電圧が供給されて動作する。例えば出力電圧VCCをレギュレーターによりレギュレートすることで得られた電源電圧が供給されて動作する。例えば充電部58、受電部52等の充電系の回路は、充電系制御部54Cにより制御されて動作する。
放電系制御部54Dは、バッテリー電圧VBATに基づく電源電圧(VBATそのもの又はVBATをレギュレートした電圧)が供給されて動作する。例えば放電部60、監視部78等の放電系の回路は、放電系制御部54Dにより制御されて動作する。
2.本実施形態の手法
次に本実施形態の手法について説明する。なお以下では、バッテリー90からの放電電力に基づいて電力供給対象100に対して電力を供給する電力供給動作を、適宜、放電動作と記載する。即ち、バッテリー90の放電電力に基づく電力供給部57の電力供給動作を、適宜、放電部60の放電動作と記載する。
本実施形態では、受電装置40の取り去りが検出されたことをトリガーとして、放電部60の放電動作(電力供給部57の電力供給動作)を開始する手法を採用している。例えば充電中には、放電部60の放電動作(電力供給動作)をオフにして、無駄な電力消費を抑制し、取り去りが検出された場合に、放電部60の放電動作(電力供給動作)をオンにして、バッテリー90の電力を電力供給対象100に供給する。
しかし、このように自動的に放電動作が開始される場合、取り去りは行われたが受電側の電子機器(補聴器、ウェアラブル機器等)を使用しない、という状況における電力消費を考慮する必要がある。典型的には、受電側の電子機器の製造、出荷から、当該電子機器が使用開始されるまでの期間(以下、保管期間)での電力消費である。
電子機器を使用するユーザーからすれば、電子機器の入手後(購入後)に、充電を行わなくても、当該電子機器を即座に使用できることが望ましい。そのため、電子機器の製造メーカー等では、バッテリーをできるだけ充電した状態で(狭義には満充電の状態で)、出荷することになる。
しかし、上述したように受電装置40の放電部60は、取り去りをトリガーに動作を開始するため、バッテリー90の電力の消費も開始される。即ち、通常動作時と同様の電力消費となるため、例えば数十mAといった高出力を行う場合には消費電力も大きくなり、保管期間において充電不足となっている可能性が高い。
例えば、4.2Vのリチウム電池をバッテリー90として用いる場合であって、保管期間を22ヶ月とした場合、保管期間経過後に電子機器が充電不足となっていないためには、当該保管期間での電流値を0.2μA程度に抑える必要がある。そして、取り去りをトリガーとした放電動作を継続した場合、この条件を満たすことは非常に難しい。
例えば比較例の手法として、電池を別梱包にする、又は絶縁シートで電池の接点を接触させないなどの処置を行うことで、出荷後の消費電力を抑え、保管期間の要件を満たす手法が考えられる。しかし、この比較例の手法では、工数が増加するし、利便性も良くない。また、電池を単体で扱うには安全性に配慮しなくてはいけないという課題もある。
なお、取り去り後に電子機器を使用しないという状況は、上記の保管期間に限定されるものではない。例えば、ユーザーが長期旅行等に出かけるのでその間の電子機器の使用を行わないといったように、送電装置10を有する充電器からは電子機器を取り去っておくが、電子機器の使用を想定していないという状況は、多々考えられる。その場合、ユーザーに電池を取り外す、或いは絶縁シートを挿入するといった作業を強いることは好ましいとは言えない。
そこで本実施形態では図2Aに示すように第1のモードでは、送電装置10からの受電装置40の取り去り検出時に、E1に示すように放電部60の放電動作(電力供給部57の電力供給動作)をオンにする。例えば第1のモードは通常動作モード(受電側の機器の通常時の動作モード)であり、この通常動作モードでは、受電装置40の取り去りをトリガーとして、放電部60の放電動作をオンにして放電動作を開始させる。具体的には図2CのE2に示すように、バッテリー90が充電される充電期間(通常送電期間)においては、放電部60の放電動作がオフになっているが、取り去りが検出されると、図2AのE1に示すように放電動作がオンになる。このようにすれば、充電期間中における無駄な電力消費を抑制できるため、受電側の電子機器が充電器の上に置かれる充電期間においては動作しないようなタイプの電子機器(補聴器、ウェアラブル機器等)に好適な電力伝送システムを提供できる。
一方、図2Bに示すように第2のモードでは、受電装置40の取り去り検出時に、E3に示すように放電部60の放電動作(電力供給部57の電力供給動作)をオフにする。例えば第2のモードはオフスタートモードであり、このオフスタートモードでは、受電装置40の取り去りが検出された場合にも、上述の通常動作モードとは異なり、放電部60の放電動作をオフにする。即ち、図2Cのように充電期間中に放電動作がオフにされる場合に、このオフスタートモードでは、取り去りが検出された場合にも、放電動作のオフ状態を維持する。
このようにすれば、オフスタートモード(広義には第2のモード)では、取り去り検出後の取り去り期間においても、放電部60の放電動作はオフのままになり、バッテリー90から電力供給対象100への電力の放電は行われないため、取り去り期間での電力消費を最小限に抑えることができる。上記の例であれば、電子機器の製造メーカー等では、バッテリー90を満充電した後に、動作モードをオフスタートモードに設定して、電子機器をオフにしてから、電子機器を出荷する。こうすることで、保管期間が長期に亘ったとしても、当該保管期間では放電動作がオフになっているため、当該保管期間内での電力消費を最小限に抑えることが可能になる。従って、ユーザーは、電子機器の入手後に、充電を行わなくても、当該電子機器を即座に使用できるようになり、ユーザーの利便性の向上等を図れるようになる。
また本実施形態では、図1の監視部78はスイッチ部514の操作状態を監視する。そして制御部54は、受電装置40の取り去り期間において、スイッチ部514の操作状態の監視結果に基づいて、放電動作をオンからオフ又はオフからオンに切り替える。
例えば図3に監視部78の構成例を示す。この監視部78は、例えばスイッチ部514の長押し操作(例えば3秒)を監視して、検出信号SSWを出力する回路である。
監視部78は、レギュレーター71、タイマー73、発振回路74、プルアップ用の抵抗RP、シュミットトリガーSHを含む。レギュレーター71は、バッテリー電圧VBATのレギュレートを行い、バッテリー電圧VBAT(例えば4.2V)を降圧した電源電圧VDDB(例えば1.3V)を生成して出力する。発振回路74は、レギュレーター71からの電源電圧VDDBが供給されて、発振動作を行い、クロック信号MCLKを生成して出力する。発振回路74は、低い電源電圧でも発振動作が可能な回路であり、例えばリングオシレーターなどにより実現できる。
監視部78の抵抗RPは、電源電圧VDDBのノードと、スイッチ部514の一端との間に設けられる。スイッチ部514は、例えば制御装置50の外付け部品として設けられ、その一端が抵抗RPに接続され、他端がグランド(広義には低電位側電源電圧)のノードに接続される。このスイッチ部514は、いわゆるプッシュスイッチ(ボタン)である。スイッチ部514の一端に出力される信号XCEの電圧レベルは、スイッチ部514(ボタン)が押下されている間は、グランド電位であるLレベル(ローレベル)に設定される。一方、スイッチ部514が押下されていない場合は、信号XCEの電圧レベルは、抵抗RPにより電源電圧VDDBにプルアップされることで、Hレベル(ハイレベル)に設定される。
信号XCEは、ノイズ除去用のシュミットトリガーSHを介してタイマー73に入力される。タイマー73は信号XCEがLレベルになった期間の長さをカウントする回路である。タイマー73は、発振回路74からのクロック信号MCLKに基づいて当該期間の長さをカウントし、当該期間の長さが例えば3秒以上になった場合に、検出信号SSWをHレベル(アクティブ)にする。例えばスイッチ部514が押下されることで信号XCEがLレベルになり、信号XCEがLレベルとなる期間が3秒以上になると、検出信号SSWがHレベルになる。これによりスイッチ部514の3秒以上の長押し操作を判定できる。
このように、スイッチ部514の長押し操作の判定を行うことで、短い時間の押下操作と、長押し操作とを、異なる操作状態であると判定できる。これにより、シンプルなスイッチ部514の構成でも、利用可能な操作の種類数を増やすことができる。また、短い時間の押下操作では、検出信号SSWがHレベルにならないため、誤操作を防止できる。
図4A、図4Bは本実施形態の動作を説明する信号波形図である。図4Aは、動作モードが第1のモードに設定された場合の信号波形図である。
図4AのG1に示すように、充電期間においては放電動作はオフになっている。即ち図2Cで説明したように、充電部58によるバッテリー90の充電中には、放電部60の放電動作がオフになることで、放電経路が電気的に遮断され、電力供給対象100にはバッテリー90からの電力は供給されなくなる。
そして充電中や充電終了後に、図4AのG2に示すように受電装置40の取り去りが検出されると、G3に示すように第1のモードでは放電動作はオンになる。即ち、G1に示すように充電期間ではオフであった放電動作が、取り去りが検出されると、オフからオンに切り替わり、放電動作が開始する。これにより、バッテリー90からの電力が電力供給対象100に供給されて、電力供給対象100の通常動作が可能になる。
このように放電動作がオンの状態で、スイッチ部514の3秒以上の長押し操作が行われて、G4に示すように信号XCEがLレベルになる期間が3秒以上になると、図3のタイマー73からの検出信号SSWがHレベルになる。すると図4AのG5に示すように、制御部54(放電系制御部54D)により放電部60の放電動作がオンからオフに切り替えられる。同様に、放電動作がオフの状態で、G6に示すように3秒以上の長押し操作が行われると、G7に示すように放電動作がオフからオンに切り替えられる。なおG8では、3秒に達しない短い時間(例えば2秒)の押下操作であったため、放電動作のオンからオフへの切替は行われない。
図4Bは、動作モードが第2のモードに設定された場合の信号波形図である。図4BのG11に示すように充電期間においては放電動作はオフになっている。そして、充電中や充電終了後に、G12に示すように受電装置40の取り去りが検出されると、G13に示すように第2のモードでは放電動作はオフのままになる。即ち第1のモードでは、図4AのG3に示すように放電動作がオフからオンに切り替わったが、第2のモードでは、G13に示すように取り去りが検出されても放電動作はオフのままになる。その後、G14に示すようにスイッチ部514の長押し操作が行われると、G15に示すように放電動作がオフからオンに切り替わり、次にG16に示すように長押し操作が行われると、G17に示すようにオンからオフに切り替わる。またG18に示すような3秒に満たない押下操作では放電動作の切替は行われない。
なおスイッチ部514による放電動作のオン、オフの切替手法は図3〜図4Bで説明した手法には限定されず、種々の変形実施が可能である。例えばスイッチ部514として、いわゆるレベルスイッチを用いてもよい。即ちスイッチ部514が第1の操作状態である場合にはLレベルの信号XCEを出力し、第2の操作状態である場合にはHレベルの信号XCEを出力するスイッチであってもよい。この場合には、タイマー73等は不要になり、信号XCEに基づいて放電動作のオン、オフの切替を行う。例えばスイッチ部514が第1の操作状態であり、Lレベル(第1の電圧レベル)の信号XCEが出力された場合には、放電動作をオンにする。一方、スイッチ部514が第2の操作状態であり、Hレベル(第2の電圧レベル)の信号XCEが出力された場合には、放電動作をオフにする。
また本実施形態では、送電装置10又は外部装置550により、放電動作の動作モードが設定される。また動作モードが第1、第2のモードのいずれに設定されているかを知らせる通知情報が、送電装置10又は外部装置550に送信される通信が行われる。
例えば図5に示すように、送電装置10又は外部装置550は、制御部54の設定レジスター55に対して、放電動作の動作モードを設定する。例えば第2のモードで動作させたい場合には、設定レジスター55に対して第2のモードを設定する。これにより制御装置50は第2のモードで動作するようになる。そして図2B、図4Bに示すように、取り去り検出時に放電動作がオフになり、放電動作のオフスタートが実現される。一方、設定レジスター55に第1のモードが設定されている場合には、制御装置50は第1のモードで動作するようになる。そして図2A、図4Aに示すように、取り去り検出時に放電動作がオンになり、通常動作が実現される。
また制御装置50がどのような動作モードに設定されているかは、通信部46が通知情報を送信することで、送電装置10又は外部装置550に通知される。例えば図5では、通信部46は、通知情報としてフラグOFSTを送電装置10又は外部装置550に送信している。例えば動作モードが第1のモードに設定されている場合には、OFST=0を通知情報として送信し、動作モードが第2のモードに設定されている場合には、OFST=1を通知情報として送信する。こうすることで送電装置10又は外部装置550は、動作モードが第1、第2のモードのいずれのモードに設定されているかを認識できる。
例えば送電装置10又は外部装置550は、制御装置50に対して通信データを送信(応答)することなどにより、設定レジスター55に対して動作モードを設定する。例えば、製品(電子機器、制御装置)の製造、出荷時に、設定レジスター55に第2のモードを設定する。
しかしながら、製品の製造、出荷時に、動作モードが確実に第2のモードに設定されていることを、製造メーカーが確認できるようにする必要がある。このため図5では、制御装置50(通信部)は、通知情報としてフラグOFSTを、送電装置10又は外部装置550(製造現場のパーソナルコンピューター等)に送信する。こうすることで、フラグOFST=1に設定されていることを確かめることで、動作モードが確かに第2のモードに設定されていることを、確認できるようになる。例えば、フラグOFST=1である場合に、充電器に設けられた報知部であるLED等を点灯させることで、製造現場の作業者は、動作モードが第2のモードに設定されていることを確認できる。
例えば製品の製造、出荷の際には、製造、出荷時用の専用の充電器が用意され、この専用の充電器を用いて充電を行う。そして、この専用の充電器を用いた場合には、この専用の充電器が有する送電装置10により、動作モードを第2のモードに自動的に設定する。このようにすれば、製品の製造、出荷時には、第2のモードに自動的に設定されるようになり、製品の保管期間においては、放電動作がオフに設定され、当該保管期間において無駄に電力が消費されてしまう事態を防止できるようになる。
一方、ユーザーが所有する充電器で充電を行った場合には、ユーザーの充電器が有する送電装置10により、動作モードを第1のモードに自動的に設定する。このようにすれば、ユーザーの使用環境(通常動作時)においては、充電器から電子機器が取り去られた場合に、放電動作がオンに設定されるようになる。従って、取り去りを検出して自動的に放電動作をオンにして、電力供給対象100に対してバッテリー90の電力を供給できるようになる。
この場合、比較例の手法として、製品の製造、出荷時に、図3〜図4Bで説明したスイッチ部514を用いて、放電動作をオフに設定する手法が考えられる。例えば図4AのG2、G3のように取り去り検出時に放電動作がオンになる場合に、G4に示すようなスイッチ部514の長押し操作を行って、G5に示すように放電動作をオフにする。
しかしながら、この比較例の手法では、製造現場の作業者がスイッチ部514を操作する必要があり、製造工程の煩雑化や製品の高コスト化等を招いてしまう。また放電動作をオフにする作業者に作業ミスがあると、取り去り検出時の放電動作が誤ってオンに設定されてしまうおそれがあり、確実性に欠ける。
この点、本実施形態の手法によれば、図4Aのように取り去り検出時に放電動作がオンになる第1のモード(通常動作モード)に加えて、図4Bのように取り去り検出時に放電動作がオフになる第2のモード(オフスタートモード)が用意される。従って、専用の充電器を用いて、動作モードを第2のモードに設定すれば、充電後の取り去り時に放電動作が自動的にオフに設定される。従って、スイッチ部514等を用いた作業者の作業工程を省くことができ、製造工程の簡素化や、製品の低コスト化等を実現できる。また作業者の作業ミス等が原因で取り去り検出時の放電動作が誤ってオンに設定されてしまう事態も防止でき、製品の出荷後の保管期間において、放電動作を確実にオフにできるようになる。
図6は、受電側の制御装置50の構成例を示す図である。図6に示すように、制御装置50には、制御部54として、充電系制御部54Cと、放電系制御部54Dが設けられている。そして充電系制御部54Cは、受電部52の出力電圧VCC(整流電圧)に基づく電源電圧VDDが供給されて動作する。例えばレギュレーター72が、VCCのレギュレート(降圧)を行い、例えばVDD=1.8Vの電源電圧が生成されて、充電系制御部54Cに供給される。そして充電系制御部54Cは、電源電圧VDDが供給されて動作し、充電部58等の制御を行う。
一方、放電系制御部54Dは、バッテリー電圧VBATに基づく電源電圧(VBATそのもの、或いはVBATに基づき生成された電源電圧)が供給されて動作する。
即ち、電子機器が充電器の上に置かれ、受電部52が電力を受電している期間では、受電部52の出力電圧VCCに基づく電源電圧VDDが供給されて、充電系制御部54Cが動作し、充電部58等の制御を行う。
また、充電器から電子機器が取り去られ、受電部52が電力を受電しない状態になると、受電部52の出力電圧VCCが低下し、充電系制御部54C等の充電系の回路は例えばリセット状態になる。一方、放電系制御部54D、放電部60、監視部78等の放電系の回路には、バッテリー電圧VBATが供給されており、動作可能な状態になる。従って、電子機器510の取り去り後に、放電部60の放電動作をオンにして、電力供給対象100に対してバッテリー90の電力を供給する動作を実現できる。
3.無接点電力伝送システム
次に、無接点電力伝送システムへの本実施形態の手法の適用例について説明する。この場合には受電装置40は、送電装置10から電力を無接点(ワイヤレス)で受電する。具体的には充電部58は、送電装置10から無接点で受電した電力に基づいて、バッテリー90を充電することになる。
図7Aに本実施形態の無接点電力伝送システムの一例を示す。充電器500(電子機器の1つ)は送電装置10を有する。電子機器510は受電装置40を有する。また電子機器510は、操作用のスイッチ部514(広義には操作部)やバッテリー90を有する。なお図7Aではバッテリー90を模式的に示しているが、このバッテリー90は実際には電子機器510に内蔵されている。図7Aの送電装置10と受電装置40により本実施形態の無接点電力伝送システムが構成される。
充電器500には、電源アダプター502を介して電力が供給され、この電力が、無接点電力伝送により送電装置10から受電装置40に送電される。これにより、電子機器510のバッテリー90を充電し、電子機器510内のデバイスを動作させることができる。
なお充電器500の電源は、USB(USBケーブル)による電源であってもよい。また、本実施形態が適用される電子機器510としては種々の機器を想定できる。例えば補聴器、腕時計、生体情報の測定装置(脈波等を測定するウェアラブル機器)、携帯情報端末(スマートフォン、携帯電話機等)、コードレス電話器、シェーバー、電動歯ブラシ、リストコンピューター、ハンディターミナル、車載用機器、ハイブリッド車、電気自動車、電動バイク、或いは電動自転車などの種々の電子機器を想定できる。例えば本実施形態の制御装置(受電装置等)は、車、飛行機、バイク、自転車、或いは船舶等の種々の移動体に組み込むことができる。移動体は、例えばモーターやエンジン等の駆動機構、ハンドルや舵等の操舵機構、各種の電子機器(車載機器)を備えて、地上や空や海上を移動する機器・装置である。
図7Bに模式的に示すように、送電装置10から受電装置40への電力伝送は、送電側に設けられた1次コイルL1(送電コイル)と、受電側に設けられた2次コイルL2(受電コイル)を電磁的に結合させて電力伝送トランスを形成することなどで実現される。これにより非接触での電力伝送が可能になる。なお無接点電力伝送の方式としては、電磁誘導方式又は磁界共鳴方式等の種々の方式を採用できる。
4.送電装置、受電装置、制御装置の詳細な構成例
図8に本実施形態の制御装置20、50及びこれを含む送電装置10、受電装置40の詳細な構成例を示す。なお図8において図1と同様の構成については詳細な説明を省略する。
図7Aの充電器500などの送電側の電子機器は送電装置10を含む。また受電側の電子機器510は受電装置40と負荷80を含む。そして図8の構成により、1次コイルL1と2次コイルL2を電磁的に結合させて送電装置10から受電装置40に対して電力を伝送する無接点電力伝送(非接触電力伝送)システムが実現される。
送電装置10は、1次コイルL1、送電部12、報知部16、制御装置20を含む。送電部12は、電力伝送時において所定周波数の交流電圧を生成して、1次コイルL1に供給する。送電部12は、1次コイルL1の一端を駆動する第1の送電ドライバーDR1と、1次コイルL1の他端を駆動する第2の送電ドライバーDR2と、電源電圧制御部14を含む。送電ドライバーDR1、DR2の各々は、例えばパワーMOSトランジスターにより構成されるインバーター回路(バッファー回路)などにより実現される。これらの送電ドライバーDR1、DR2は、制御装置20のドライバー制御回路22により制御(駆動)される。即ち、制御部24は、ドライバー制御回路22を介して送電部12を制御する。
電源電圧制御部14は、送電ドライバーDR1、DR2の電源電圧VDRVを制御する。例えば制御部24は、受電側から受信した通信データ(送電電力設定情報)に基づいて、電源電圧制御部14を制御する。これにより、送電ドライバーDR1、DR2に供給される電源電圧VDRVが制御されて、例えば送電電力の可変制御等が実現される。この電源電圧制御部14は、例えばDCDCコンバーターなどにより実現できる。例えば電源電圧制御部14は、電源からの電源電圧(例えば5V)の昇圧動作を行って、送電ドライバー用の電源電圧VDRV(例えば6V〜15V)を生成して、送電ドライバーDR1、DR2に供給する。具体的には、送電装置10から受電装置40への送電電力を高くする場合には、電源電圧制御部14は、送電ドライバーDR1、DR2に供給する電源電圧VDRVを高くし、送電電力を低くする場合には、電源電圧VDRVを低くする。
1次コイルL1(送電側コイル)は、2次コイルL2(受電側コイル)と電磁結合して電力伝送用トランスを形成する。例えば電力伝送が必要なときには、図7A、図7Bに示すように、充電器500の上に電子機器510を置き、1次コイルL1の磁束が2次コイルL2を通るような状態にする。一方、電力伝送が不要なときには、充電器500と電子機器510を物理的に離して、1次コイルL1の磁束が2次コイルL2を通らないような状態にする。
報知部16(表示部)は、無接点電力伝送システムの各種状態(電力伝送中、ID認証等)を、光や音や画像などを用いて報知(表示)するものであり、例えばLEDやブザーやLCDなどにより実現できる。
送電側の制御装置20は、ドライバー制御回路22、制御部24、通信部30、クロック生成回路37、発振回路38を含む。ドライバー制御回路22(プリドライバー)は、送電ドライバーDR1、DR2を制御する。例えばドライバー制御回路22は、送電ドライバーDR1、DR2を構成するトランジスターのゲートに対して制御信号(駆動信号)を出力し、送電ドライバーDR1、DR2により1次コイルL1を駆動させる。発振回路38は、例えば水晶発振回路などにより構成され、1次側のクロック信号を生成する。クロック生成回路37は、送電周波数(駆動周波数)を規定する駆動クロック信号等を生成する。そしてドライバー制御回路22は、この駆動クロック信号や制御部24からの制御信号などに基づいて、所与の周波数(送電周波数)の制御信号を生成し、送電部12の送電ドライバーDR1、DR2に出力して、制御する。
受電装置40は、2次コイルL2、制御装置50を含む。受電側の制御装置50は、受電部52、制御部54、負荷変調部56、電力供給部57、不揮発性メモリー62、検出部64を含む。
受電部52は、複数のトランジスターやダイオードなどにより構成される整流回路53を含む。整流回路53は、2次コイルL2の交流の誘起電圧を直流の整流電圧VCCに変換して、出力する。
負荷変調部56(広義には通信部)は負荷変調を行う。例えば負荷変調部56は電流源ISを有し、この電流源ISを用いて負荷変調を行う。具体的には、負荷変調部56は電流源IS(定電流源)とスイッチ素子SWを有する。電流源ISとスイッチ素子SWは、例えば整流電圧VCCのノードNVCとGND(広義には低電位側電源)のノードとの間に直列に設けられる。そして、例えば制御部54からの制御信号に基づいてスイッチ素子SWがオン又はオフにされ、ノードNVCからGNDに流れる電流源ISの電流(定電流)をオン又はオフにすることで、負荷変調が実現される。
なお、ノードNVCにはキャパシターCMの一端が接続される。このキャパシターCMは例えば制御装置50の外付け部品として設けられる。またスイッチ素子SWはMOSのトランジスターなどにより実現できる。このスイッチ素子SWは、電流源ISの回路を構成するトランジスターとして設けられるものであってもよい。また負荷変調部56は図8の構成に限定されず、例えば電流源ISの代わりとして抵抗を用いるなどの種々の変形実施が可能である。
電力供給部57は充電部58と放電部60を含む。充電部58はバッテリー90の充電(充電制御)を行う。例えば充電部58は、受電部52からの整流電圧VCC(広義には直流電圧)に基づく電圧が供給されて、バッテリー90を充電する。この充電部58は、電力供給スイッチ42とCC充電回路59を含むことができる。CC充電回路59は、バッテリー90のCC(Constant-Current)充電を行う回路である。
放電部60はバッテリー90の放電動作を行う。例えば放電部60は、バッテリー90の放電動作を行って、バッテリー90からの電力を電力供給対象100に対して供給する。例えば放電部60は、バッテリー90からのバッテリー電圧VBATが供給され、出力電圧VOUTを電力供給対象100に供給する。この放電部60はチャージポンプ回路61を含むことができる。チャージポンプ回路61は、バッテリー電圧VBATを降圧(例えば1/3降圧)して、出力電圧VOUT(VBAT/3)を電力供給対象100に対して供給する。この放電部60(チャージポンプ回路)は、例えばバッテリー電圧VBATを電源電圧として動作する。
不揮発性メモリー62(広義には記憶部)は、各種の情報を記憶する不揮発性のメモリーデバイスである。この不揮発性メモリー62は例えば受電装置40のステータス情報等の各種の情報を記憶する。不揮発性メモリー62としては、例えばEEPROMなどを用いることができる。EEPROMとしては例えばMONOS(Metal-Oxide-Nitride-Oxide-Silicon)型のメモリーを用いることができる。例えばMONOS型のメモリーを用いたフラッシュメモリーを用いることができる。或いはEEPROMとして、フローティングゲート型などの他のタイプのメモリーを用いてもよい。
検出部64は各種の検出処理を行う。例えば検出部64は、整流電圧VCCやバッテリー電圧VBAT等を監視して、各種の検出処理を実行する。具体的には検出部64はA/D変換回路65を有し、整流電圧VCCやバッテリー電圧VBATに基づく電圧や、不図示の温度検出部からの温度検出電圧などを、A/D変換回路65によりA/D変換し、得られたデジタルのA/D変換値を用いて検出処理を実行する。検出部64が行う検出処理としては、過放電、過電圧、過電流、或いは温度異常(高温、低温)の検出処理を想定できる。
そして図8では、制御部54(放電系制御部)は、受電装置40の着地が検出された場合に、放電部60の放電動作をオフにして放電動作を停止する。即ち図7Aにおいて受電装置40(受電側の電子機器)の着地が検出された場合に、放電部60の放電動作(VOUTの供給)を停止して、バッテリー90の電力が電力供給対象100に放電されないようにする。そして送電装置10が通常送電を行う通常送電期間では、放電部60の放電動作をオフにする。例えばバッテリー90の充電期間の間は、放電部60の放電動作をオフのままにする。
そして制御部54は、動作モードが第1のモードに設定されている場合には、受電装置40の取り去りが検出された場合に、放電部60の放電動作をオンにする。そして取り去り期間(受電装置が取り去られている期間)において、放電部60に放電動作を行わせる。この放電動作により、バッテリー90からの電力が放電部60を介して電力供給対象100に供給されるようになる。
また負荷変調部56は、受電装置40(受電側の電子機器)の着地が検出された場合に、負荷変調を開始する。送電装置10(制御部24)は、例えば受電装置40(負荷変調部56)が負荷変調を開始したことを条件に、送電部12による通常送電を開始させる。そして受電装置40の取り去りが検出された場合に、負荷変調部56は負荷変調を停止する。送電装置10(制御部24)は、負荷変調が継続されている間は、送電部12による通常送電を継続させる。即ち、負荷変調が非検出となった場合に、通常送電を停止させ、例えば着地検出用の間欠送電を送電部12に行わせる。この場合に受電側の制御部54は、受電部52の出力電圧VCCに基づいて、着地検出、取り去り検出を行うことができる。
また制御部54(放電系制御部)は、動作モードが第1のモードに設定されている場合には、受電部52の出力電圧(VCC、VD5)が低下し、放電動作の起動期間(TST)が経過した後に、放電部60の放電動作をオンにして放電動作を開始する。具体的には制御部54は、受電部52の出力電圧が判定電圧を下回ってから起動期間が経過した後に、放電部60の放電動作を開始する。起動期間(TST)は、例えば放電動作の立ち上げ動作の開始タイミング(後述の図11のC4)から放電動作を実際に開始するタイミング(図11のC8)までの期間であり、放電動作の開始タイミングまでのウェイト期間に対応するものである。
また送電装置10は、取り去り検出用の間欠送電を行う。例えばバッテリー90の満充電が検出された場合や、受電側の異常が検出された場合に、送電装置10は、通常送電を停止して、取り去り検出用の間欠送電を行う。そして、放電部60の放電動作の起動期間は、取り去り検出用の間欠送電の期間の間隔よりも長い期間となっている。
また制御部54は、送電装置10が着地検出(例えばダミーデータの検出)に成功して受電装置40に対して応答を行った場合に、この応答に基づいて、動作モードを第2のモードに設定する。
例えば送電装置10は、送電周波数を変化させることで、上記の応答を行う。例えば、通常時には第1の送電周波数(f1)で送電を行っていたとする。すると、送電装置10は、着地検出後(ダミーデータの受信後)の所与の応答期間において、送電周波数を第1の送電周波数から第2の送電周波数(f2)に変更する。受電側の制御部54は、この送電周波数(送電周波数に対応する受電周波数)を測定し、応答期間に対応する測定期間において送電周波数の変化を検出することで、送電装置10の応答を検出する。例えば、送電周波数が第1の送電周波数(f1)から第2の送電周波数(f2)に変化していることが、当該測定期間において検出された場合に、送電装置10からの応答があったと判断する。そして、このような応答があったことを条件に、動作モードを第2のモードに設定する。
また負荷変調部56は、動作モードが、第1、第2のモードのいずれのモードに設定されているかを知らせる通知情報を、通信データとして送電装置10に送信する。この通知情報は、少なくとも動作モードが第2のモードに設定されていることを送電側が認識できる情報であればよい。
5.無接点電力伝送システムの動作シーケンス
次に本実施形態の無接点電力伝送システムの動作シーケンスの一例について説明する。図9は動作シーケンスの概要を説明する図である。
図9のA1では、受電装置40を有する電子機器510が、送電装置10を有する充電器500に上に置かれておらず、取り去り状態になっている。この場合にはスタンバイステートとなる。このスタンバイステートでは、送電装置10の送電部12は、着地検出のための間欠送電を行って、電子機器510の着地を検出する状態になる。またスタンバイモードでは、受電装置40では、電力供給対象100への放電動作がオンになっており、電力供給対象100への電力供給がイネーブルになっている。これにより、処理部等の電力供給対象100は、バッテリー90からの電力が供給されて動作可能になる。
図9のA2に示すように、電子機器510が充電器500に上に置かれ、着地が検出されると、通信チェック&充電ステートになる。この通信チェック&充電ステートでは、送電装置10の送電部12は、連続送電である通常送電を行う。この際に、電力伝送の状態などに応じて電力が可変に変化する電力制御を行いながら、通常送電を行う。またバッテリー90の充電状態に基づく制御も行われる。電力伝送の状態は、例えば1次コイルL1、2次コイルL2の位置関係(コイル間距離等)などにより決まる状態であり、例えば受電部52の整流電圧VCCなどの情報に基づいて判断できる。バッテリー90の充電状態は、例えばバッテリー電圧VBATなどの情報に基づいて判断できる。
また通信チェック&充電ステートでは、受電装置40の充電部58の充電動作がオンになり、受電部52が受電した電力に基づいてバッテリー90の充電が行われる。また放電部60の放電動作がオフになり、バッテリー90からの電力が、電力供給対象100に供給されなくなる。また通信チェック&充電ステートでは、負荷変調部56の負荷変調により、通信データが送電側に送信される。例えば電力伝送状態情報(VCC等)や、充電状態情報(VBATや各種のステータスフラグ等)や、温度などの情報を含む通信データが、通常送電期間中の常時の負荷変調により、受電側から送電側に送信される。
図9のA3に示すように、バッテリー90の満充電が検出されると、満充電スタンバイステートになる。この満充電スタンバイステートでは、送電部12は、例えば取り去り検出のための間欠送電を行って、電子機器510の取り去りを検出する状態になる。また放電部60の放電動作はオフのままとなり、電力供給対象100への電力供給もディスエーブルのままとなる。
図9のA4に示すように電子機器510の取り去りが検出されると、A5に示すように電子機器510が使用状態になり、受電側の放電動作がオンになる。具体的には、放電部60の放電動作がオフからオンに切り替わり、バッテリー90からの電力が放電部60を介して電力供給対象100に供給される。これにより、バッテリー90からの電力が供給されて、処理部等の電力供給対象100が動作し、ユーザーが電子機器510を通常に使用できる状態となる。
以上のように本実施形態では図9のA1に示すように、電子機器510の着地が検出されると、通常送電が行われ、この通常送電期間において常時の負荷変調が行われる。また着地が検出されると、放電部60の放電動作が停止する。そして、この常時の負荷変調では、送電側の電力制御のための情報や受電側のステータスを表す情報を含む通信データが、受電側から送電側に送信される。例えば電力制御のための情報(電力伝送状態情報)を通信することで、例えば1次コイルL1と2次コイルL2の位置関係等に応じた最適な電力制御を実現できる。また受電側のステータスを表す情報を通信することで、最適で安全な充電環境を実現できる。そして本実施形態では、負荷変調が継続している間は、通常送電も継続され、放電部60の放電動作もオフのままになる。
また本実施形態では図9のA3に示すように、バッテリー90の満充電が検出されると、通常送電が停止し、取り去り検出用の間欠送電が行われる。そしてA4、A5に示すように、取り去りが検出されて、取り去り期間になると、放電部60の放電動作が行われる。これによりバッテリー90からの電力が電力供給対象100に供給されて、電子機器510の通常動作が可能になる。なお、着地検出や取り去り検出は、受電部52の出力電圧VCCに基づいて行われる。
このように本実施形態では、電子機器510のバッテリー90の充電期間(通常送電期間)においては、電力供給対象100への放電動作がオフになるため、充電期間において電力供給対象100により無駄に電力が消費されてしまう事態を抑制できる。
そして、電子機器510の取り去りが検出されると、通常送電から間欠送電に切り替わると共に、電力供給対象100への放電動作がオンになる。このように放電動作がオンになることで、バッテリー90からの電力が電力供給対象100に供給されるようになり、処理部(DSP)等の電力供給対象100の通常動作が可能になる。このようにすることで、例えば電子機器510が充電器500の上に置かれる充電期間においては動作しないようなタイプの電子機器510(例えば、補聴器、ウェアラブル機器等のユーザーが装着する電子機器)において、好適な無接点電力伝送の動作シーケンスを実現できる。
図10、図11、図12は本実施形態の無接点電力伝送システムの動作シーケンスの詳細を説明するための信号波形図である。
図10のB1は、図9のA1のスタンバイステートであり、着地検出用の間欠送電が行われている。即ち、期間TL1の間隔毎に期間TL2の間隔の送電が行われる。TL1の間隔は例えば3秒であり、TL2の間隔は例えば50ミリ秒である。そして図10のB2、B3では、整流電圧VCCは電圧VST以下(第1の電圧以下)であるため、負荷変調による通信は行われない。
一方、B4では整流電圧VCCが電圧VST(例えば4.5V)を超えたため、B5に示すように負荷変調部56が負荷変調を開始する。即ち、B2、B3ではL1、L2のコイルが十分には電磁的結合状態になっていないが、B4ではL1、L2のコイルが図7Bに示すように適正な電磁的結合状態になっている。このため、整流電圧VCCが上昇して、電圧VSTを超え、B5に示すように負荷変調が開始する。そして、この負荷変調により、B6に示すような通信データが送電側に送信される。このB5の負荷変調は、B7に示す着地検出用の間欠送電により整流電圧VCCが上昇したことにより開始している。
具体的には、受電側は、着地検出用のダミーデータ(例えば64ビットの「0」)を送信する。送電側は、このダミーデータを検出(例えば8ビットの「0」の検出)することで、受電側の着地を検出して、B7に示すように通常送電(連続送電)を開始する。
次に受電側は、ID情報や整流電圧VCCの情報を送信する。前述したように、ID情報の送信に対して送電側が応答を行うことで、簡易的な認証処理が実現される。
また送電側は、整流電圧VCCの情報である送電電力設定情報を受信して、送電電力の制御を行う。この送電側の送電電力の制御により、B8に示すように整流電圧VCCが上昇する。そしてB9に示すように、VCCが電圧VCCL(第2の電圧)を超えると、バッテリー90への充電が開始する。
このように本実施形態では、負荷変調(通信)を開始する電圧VSTを低く設定できる。これにより送電側の駆動電圧が高く設定されることによる耐圧異常等の不具合の発生を抑制できる。そして、開始した負荷変調により、送電電力設定情報(VCC)を送電側に送信することで、送電側の送電電力の制御が行われ、この送電電力の制御により、B8に示すように整流電圧VCCが上昇する。そして、整流電圧VCCが上昇して、B9に示すように充電可能電圧である電圧VCCLを超えると、バッテリー90の充電が開始するようになる。従って、広い距離範囲での着地検出と、耐圧異常等の不具合の発生の抑制とを、両立して実現できるようになる。
図11のC1では、バッテリー90の充電が行われる通常送電期間において、電子機器510が取り去られている。このC1の取り去りは、C2、C3に示すように、バッテリー90の満充電前(満充電フラグ=Lレベル)の取り去りである。
このように電子機器510の取り去りが行われると、送電側の電力が受電側に伝達されなくなり、整流電圧VCCが低下する。そしてC4に示すように例えばVCC<3.1Vになると、C5に示すように負荷変調部56による負荷変調が停止する。負荷変調が停止すると、C6に示すように送電部12による通常送電が停止する。
また、整流電圧VCCが低下し、判定電圧である例えば3.1Vを下回ると、受電側のスタートキャパシター(図13のCST)の放電が開始する。このスタートキャパシターは、受電側の放電動作の起動用(起動期間の計測用)のキャパシターであり、例えば受電側の制御装置50の外付け部品として設けられる。そして、整流電圧VCCが判定電圧(3.1V)を下回ってから、起動期間TSTが経過すると、C8に示すように放電部60の放電動作がオフからオンに切り替わり、バッテリー90からの電力が電力供給対象100に供給されるようになる。また送電部12は、通常送電を停止した後、C9に示すように、着地検出用の間欠送電を行うようになる。起動期間TSTは、放電動作の立ち上げ動作のタイミング(C4)から放電動作の実際の開始タイミング(C8)までの期間である。即ち、図11のC4のタイミングで放電動作の立ち上げ動作を行うことを決定するが、直ぐには放電動作を開始せずに、ウェイト期間である起動期間TSTが経過するC8のタイミングまで待ってから、放電動作を開始する(オフからオンに切り替える)。
図12のD1では、満充電フラグがアクティブレベルであるHレベルになっており、バッテリー90の満充電が検出されている。このように満充電が検出されると、D2に示すように満充電後の取り去り検出用の間欠送電が行われる。即ち、期間TR1の間隔毎に期間TR2の間隔の送電が行われる。TR1の間隔は例えば1.5秒であり、TR2の間隔は例えば50ミリ秒である。取り去り検出用の間欠送電の期間TR1の間隔は、着地検出用の間欠送電の期間TL1の間隔に比べて、短くなっている。
この取り去り検出用の間欠送電により、図12のD3、D4に示すように整流電圧がVCC>VSTとなり、D5、D6に示すように負荷変調が行われる。送電側は、この負荷変調(空の通信データ等)を検出することで、電子機器510が未だ取り去られていないことを検出できる。
そして、前述のスタートキャパシターにより設定されるD7に示す起動期間TSTの間隔(例えば3秒より長い)に比べて、取り去り検出用の間欠送電の期間TR1の間隔(例えば1.5秒)は短い。従って、電子機器510が取り去られていない状態では、スタートキャパシターの電圧(充電電圧)は、放電動作オンのための閾値電圧VTを下回らず、D8に示すように放電動作のオフからオンへの切り替わりは行われない。
一方、D9では、電子機器510が取り去られている。そして、D4に示す取り去り検出用の間欠送電の期間TR2の終了後に、D10に示すように、整流電圧VCCは判定電圧である3.1Vを下回るため、D7に示す起動期間TSTの計測がスタートする。そしてD11では、スタートキャパシターの電圧が放電動作オンのための閾値電圧VTを下回っており、起動期間TSTの経過が検出されている。これにより、放電部60の放電動作がオフからオンに切り替わり、バッテリー90からの電力が電力供給対象100に供給されるようになる。またD12に示すように、電子機器510の着地検出用の間欠送電が行われるようになる。
以上のように本実施形態では、図10のB5に示すように受電装置40が負荷変調を開始したことを条件に、B7に示すように送電部12による通常送電が開始する。そしてB5の負荷変調が継続されている間は、B7に示す通常送電は継続する。具体的には図11のC5に示すように負荷変調が非検出となった場合に、C6に示すように送電部12による通常送電が停止する。そしてC9に示すように送電部12による着地検出用の間欠送電が行われるようになる。
このように本実施形態では、負荷変調の開始を条件に通常送電を開始し、負荷変調が継続されている間は通常送電を継続し、負荷変調が非検出になると通常送電を停止するという動作シーケンスを採用している。このようにすれば、シンプルで簡素な動作シーケンスで、無接点電力伝送と、負荷変調による通信を実現できるようになる。また、通常送電期間中において、常時の負荷変調による通信を行うことで、電力伝送の状態等に応じた効率的な無接点電力伝送も実現できるようになる。
6.放電部の放電動作
さて本実施形態では、図11、図12で説明したように、受電側の制御部54(放電系制御部)は、受電部52の出力電圧である整流電圧VCC(VD5)が低下し、放電動作の起動期間TSTが経過した後に、放電部60の放電動作を開始する。そしてバッテリー90からの電力を電力供給対象100に対して放電する。具体的には制御部54は、整流電圧VCC(或いは後述するVD5)が判定電圧(3.1V)を下回ってから、起動期間TSTが経過した後に、放電部60の放電動作を開始する。例えば放電部60に放電の開始信号を出力して、放電動作を開始させる。これにより、図11のC8や図12のD11に示すように、放電部60の放電動作がオンになって、バッテリー90からの電力が電力供給対象100に供給されるようになる。
そして本実施形態では、図12のD2、D7に示すように、起動期間TST(例えば5秒)よりも短い期間TR1(例えば1.5秒)の間隔で、取り去り検出用の間欠送電が行われる。即ち、起動期間TSTは、取り去り検出用の間欠送電の期間TR1の間隔よりも長い。
このようにすれば、取り去り検出用の期間TR1の長さでは、起動期間TSTは経過しないため、取り去り検出用の間欠送電の期間においては放電部60の放電動作はオンにならないようになる。そして図12のD9に示すように、電子機器510が取り去られると、取り去り検出用の間欠送電の期間のように整流電圧VCCが定期的に上昇することはなくなり、D7に示す起動期間TSTが経過することで、D11に示すように放電部60の放電動作がオンになる。従って、電子機器510の取り去りを検出して、自動的に、放電部60の放電動作をオンにして、バッテリー90からの電力を電源供給対象100に供給できるようになる。
即ち、バッテリー90のサイクル特性の劣化を考慮した場合に、満充電後のバッテリー90の放電電流はゼロであることが理想的である。この点、本実施形態では、図11に示すように満充電前の充電期間(通常送電期間)において放電部60の放電動作がオフになると共に、図12に示すように満充電後の間欠送電の期間においても放電部60の放電動作がオフになる。これにより、満充電後のバッテリー90の放電電流をほぼゼロにすることが可能になり、不必要な再充電が行われてしまう事態を抑制できる。従って、再充電を原因とするバッテリー90のサイクル特性の劣化等を抑制できるようになる。また、満充電後の間欠送電の期間において、放電部60の放電動作がオフになることで、バッテリー90から無駄な電力が放電されてしまうのを抑制できる。従って、間欠送電が行われる待機期間での無駄な電力消費を抑制でき、省電力化を実現できる。
図13は、受電側の制御装置50の詳細な構成例を示す図である。図13に示すように、充電系制御部54Cは、受電部52の出力電圧VCCに基づく電源電圧VDDが供給されて動作する。例えばレギュレーター72により、VDD=1.8Vの電源電圧が生成されて、充電系制御部54Cに供給される。
なお、後述する図22の電圧VD5(=5V)に基づいて、電源電圧VDD=1.8Vを生成してもよい。即ち、電圧VD5は電圧VCCを図22のレギュレーター67によりレギュレートすることで生成される定電圧である。例えばVCC<5.0Vとなる低電圧の範囲では、VD5=VCCになり、VD5とVCCは等価な電圧となる。従って、VCCの代わりにVD5を用いることができる。
一方、放電系制御部54Dは、バッテリー電圧VBATによる電源電圧(VBATそのもの、或いはVBATに基づきレギュレーター等により生成された電源電圧)で動作する。放電部60、監視部78も、バッテリー電圧VBATによる電源電圧で動作する。
即ち、図9のA2に示すように電子機器510が充電器500の上に置かれ、受電部52が電力を受電している期間では、受電部52の出力電圧VCC(VD5)に基づく電源電圧VDDが供給されて、充電系制御部54Cは動作する。そして充電系制御部54Cは、負荷変調部56や充電部58などの制御を行う。
一方、図9のA4、A5に示すように充電器500から電子機器510が取り去られ、受電部52が電力を受電しない状態になると、受電部52の出力電圧VCC(VD5)が0Vまで低下し、充電系制御部54C等の充電系の回路はリセット状態になる。
具体的には図13のパワーオンリセット回路70は、電圧VCC(実際にはVD5)に基づいて、パワーオンリセット信号XPORを出力する。そして受電部52が電力を受電しており、VCCが十分に高い電圧である期間では、パワーオンリセット信号XPORがHレベル(非アクティブ)となり、充電系制御部54C等の充電系の回路は動作可能な状態になる。一方、電子機器510が取り去られて、受電部52が電力を受電しておらず、VCC(VD5)が低下すると、パワーオンリセット信号XPORがLレベル(アクティブ)になり、充電系制御部54C等の充電系の回路がリセット状態になる。
このとき、放電系の回路である放電系制御部54Dや放電部60や監視部78には、バッテリー電圧VBATが供給されている。このため、パワーオンリセット信号XPORがLレベルになり、充電系の回路がリセット状態になっている期間においても、放電系制御部54Dや放電部60や監視部78は、バッテリー電圧VBATによる電源電圧により動作可能な状態になる。これにより、図11、図12に示すように、電子機器510の取り去り後に、放電部60の放電動作をオンにして、電力供給対象100に対してバッテリー90の電力を供給する動作などを実現できる。
そして図13に示すように本実施形態では、放電動作の起動用のスタートキャパシターCST(以下、単にキャパシターCSTと呼ぶ)が設けられている。放電系制御部54Dは、受電部52の受電電力に基づき充電されるキャパシターCST(受電部が電力を受電しているときに充電されるキャパシター)の放電を、受電部52の出力電圧VCC(VD5)が判定電圧(3.1V)を下回った場合に開始する。一方、図11のC4、図12のD9に示すように、電子機器510が取り去られて、電圧VCC(VD5)が判定電圧である3.1Vを下回ると、キャパシターCSTの放電が開始する。そしてキャパシターCSTの充電電圧が閾値電圧VTを下回った場合に、図11のC8、図12のD11に示すように、放電部60の放電動作が開始する。このようなキャパシターCSTを用いることで、図11、図12に示す起動期間TST(5秒)の経過を測定できるようになる。
また本実施形態では、着地検出に成功した送電装置10が受電装置40に対して応答を行った場合に、この応答に基づいて、動作モードを第2のモード(オフスタートモード)に設定する。即ち、図5で説明した設定レジスター55への動作モードの設定を、送電装置10からの応答に基づいて行う。
例えば図14は、送電側の応答手法の一例を説明する図である。例えば送電側は、通常時は送電周波数fck=f1で送電を行う。受電側は、着地検出用のダミーデータを送信した後に、送電装置10(充電器)を認証するためのID情報(認証情報、IDコード)を送電側に送信する。図14では受電側はID情報を2回送信する。1回目のID情報をチェックした送電側は、2回目のID通信期間における応答期間TRSにおいて、送電周波数fckをf1からf2に変化させることで、ID情報による認証に対する応答を行う。受電側は、送電側がこのような応答を行った場合に、適正な送電装置10(充電器)に対して着地したと判断する。これにより簡易的な認証処理が実現される。認証に成功すると、受電装置40は、IC番号(ICN)やオフスタートのフラグ(OFST)を送電側に送信する。
具体的には図14において、受電側は、1回目のID通信期間における期間TREFにおいて、送電周波数fck=f1を検出する。そして期間TREFでのfck=f1をリファレンス周波数として、2回目のID通信期間における期間TMSにおいて、送電周波数fck=f2を検出する。受電側は、期間TMSにおいて送電周波数fck=f2が検出された場合に、送電側が応答を行ったと判断する。
例えば受電側の制御装置50は、2次コイルL2の一端に現れるコイル端信号を、例えばヒステリシスタイプのコンパレーターを用いて整形することで、送電信号波形(受電信号波形)に対応する矩形波信号を抽出する。そして抽出された矩形波信号を用いて送電周波数fckを測定する。具体的には、受電側の制御装置50は、発振回路(例えばCR発振回路)を内蔵しており、この発振回路の発振信号に基づき生成されたクロック信号を用いて、送電周期T=1/fckの長さ(具体的には32×T)をカウントする測定を行うことで、送電周波数fck(送電周波数に対応する受電周波数)を測定する。なお送電側の応答は、このような送電周波数の変化による応答には限定されず、例えば送電信号波形のデューティーの変化や振幅の変化による応答であってもよい。
本実施形態では、送電装置10からこのような応答(f2)があった場合に、動作モードを、オフスタートモードである第2のモードに設定する。そして図14に示すように、オフスタートに設定されたことを知らせるフラグOFSTを、図5で説明した通知情報として送電装置10に送信する。即ち、フラグOFSTは、動作モードが、第1、第2のモードのいずれのモードに設定されているかを知らせる通知情報である。例えば、第1のモードに設定されている場合には、フラグOFST=0が送信され、第2のモードに設定されている場合には、フラグOFST=1が送信される。これにより送電側は、動作モードが第1、第2のモードのいずれのモードに設定されているかを認識できる。
例えば製品の製造、出荷時において、前述したように専用の充電器で充電して、動作モードを自動的に第2のモードに設定する。そして受電側からフラグOFST=1を受信すると、図8の報知部16であるLED等を点灯させる。こうすることで製造現場の作業者は、動作モードがオフスタートモードである第2のモードに設定されたことを確認できる。
図15に放電系制御部54D、監視部78の詳細な構成例を示す。監視部78はタイマー73、AND回路AN1を含む。AND回路AN1には、クロック信号MCLKと信号SWONが入力される。MCLKは、図3で説明したように、発振回路74が生成するクロック信号である。信号SWONは、信号XCEの反転信号に相当する。タイマー73のCLK端子(クロック端子)には、AND回路AN1の出力信号が入力され、RST端子(リセット端子)には、信号SWONが入力される。
放電系制御部54Dは、フリップフロップDF1、DF2、DF3、セレクターSEL、AND回路AN2を含む。
フリップフロップDF1は、図1等で説明した設定レジスター55に相当する。フリップフロップDF1のD端子(データ端子)、C端子(クロック端子)には、各々、充電系制御部54CからレベルシフターLSA、LSBを介して、信号SETDATA、SETCLKが入力される。フリップフロップDF1はQ端子(出力端子)から信号CHKDATAを出力し、このCHKDATAはレベルシフターLSCを介して充電系制御部54Cに入力される。放電系制御部54Dと充電系制御部54Cは、供給される電源電圧が異なるため、信号の電圧レベルの変換を行うレベルシフターLSA、LSB、LSCが必要になる。
フリップフロップDF2のC端子には、タイマー73の出力信号SSWが入力され、R端子(リセット端子)には、信号SWONが入力される。フリップフロップDF2のD端子は高電位側電源電圧のレベルに設定される。
フリップフロップDF3のC端子には、フリップフロップDF2の出力信号SSWCが入力され、R端子には、図13で説明したパワーオンリセット信号XPORが入力される。フリップフロップDF3は、Q端子から信号Qを出力し、XQ端子(反転出力端子)から、信号Qの反転信号XQを出力する。信号XQはフリップフロップDF3のD端子に入力される。
セレクターSELは、信号CHKDATAに基づいて、信号Q、XQのいずれかを選択して、信号SLQとして出力する。例えば、動作モードが第1のモードである場合には、設定レジスター55であるフリップフロップDF1にはLレベルが保持されるため、信号CHKDATAがLレベルになる。そして信号CHKDATAがLレベルである場合には、セレクターSELは、信号XQを選択して信号SLQとして出力する。一方、動作モードが第2のモードである場合には、フリップフロップDF1にはHレベルが保持されるため、信号CHKDATAがHレベルになる。そして信号CHKDATAがHレベルである場合には、セレクターSELは、信号Qを選択して信号SLQとして出力する。そしてAND回路AN2は、信号SLQ、STINが入力され、信号DCDCONを出力する。
図16は第1のモードでの動作を説明するための波形図である。動作モードを第1のモードに設定する場合には、図16のH1に示すように、送電装置10は図14で説明した応答を行わないため、送電周波数はf1のままで変化しない。このため、応答の受け付け処理を行う充電系制御部54Cは、H2に示すようにLレベルの信号SETDATAと、クロックパルス信号SETCLKを出力する。これにより、設定レジスター55であるフリップフロップDF1にLレベルが保持される。このLレベルの保持は、設定レジスター55に第1のモードが設定されたこと意味する。
また充電系制御部54Cは、フリップフロップDF1からのLレベルの信号CHKDATAを受けて、設定レジスター55に第1のモードが設定されていることを確認する。そして充電系制御部54Cは、負荷変調部56を制御して、H4に示すようにフラグOFST=0を送電装置10に送信する。
次に、H5に示すようにパワーオンリセット信号XPORがLレベルからHレベルになり、フリップフロップDF3のリセットが解除され、フリップフロップDF3は、Lレベルの信号Qと、Hレベルの信号XQを出力する。この場合に、設定レジスター55であるフリップフロップDF1は第1のモードに設定されており、信号CHKDATAはLレベルになっているため、セレクターSELは、Hレベルの信号XQを選択して、信号SLQとしてAND回路AN2に出力する。
この状態でH6に示すように、図13のキャパシターCSTの放電による起動期間TSTが経過すると、H7に示すように信号STINがLレベルからHレベルに変化する。すると、Hレベルの信号SLQ、STINが入力されたAND回路AN2の出力信号DCDCONが、H8に示すようにLレベルからHレベルに変化する。これにより、通常送電期間(充電期間)ではオフであった放電部60の放電動作がオンに設定され、バッテリー90からの電力が電力供給対象100に供給されるようになる。即ち、取り去り検出時に放電動作がオンに設定される第1のモードが実現される。
その後、H9に示すようにスイッチ部514の3秒以上の長押し操作が行われると、H10に示すように放電動作がオンからオフに切り替わる。即ち、スイッチ部514が押下されると、H9に示すように信号SWONがLレベルからHレベルになり、図15のタイマー73による3秒のカウント処理が開始する。そして3秒の経過後もスイッチ部514の押下操作が行われており、3秒以上の長押し操作が検出されると、タイマー73の出力信号SSWがLレベルからHレベルに変化し、フリップフロップDF2の出力信号SSWCもLレベルからHレベルに変化する。これにより、D端子に信号XQが入力されるフリップフロップDF3の保持レベルが、LレベルからHレベルに変化し、信号XQがHレベルからLレベルに変化する。この結果、信号XQを選択するセレクターSELの出力信号SLQがLレベルに変化し、信号DCDCONもLレベルに変化するため、図16のH10に示すように放電動作がオンからオフに切り替わる。
図17は第2のモードでの動作を説明するための波形図である。動作モードを第2のモードに設定する場合には、図17のJ1に示すように、送電装置10が図14で説明した応答を行い、応答期間において送電周波数がf1からf2に変化する。これにより、充電系制御部54Cは、J2に示すようにHレベルの信号SETDATAと、クロックパルス信号SETCLKを出力する。この結果、設定レジスター55であるフリップフロップDF1にHレベルが保持される。このHレベルの保持は、設定レジスター55に第2のモードが設定されたこと意味する。
また充電系制御部54Cは、フリップフロップDF1からのHレベルの信号CHKDATAを受けて、設定レジスター55に第2のモードが設定されていることを確認する。そして充電系制御部54Cは、負荷変調部56を制御して、J4に示すようにフラグOFST=1を送電装置10に送信する。これにより送電側は、動作モードが第2のモードに設定されたことを確認できる。
次に、J5に示すようにパワーオンリセット信号XPORがLレベルからHレベルになり、フリップフロップDF3は、Lレベルの信号Qと、Hレベルの信号XQを出力する。この場合に、フリップフロップDF1は第2のモードに設定されており、信号CHKDATAはHレベルになっているため、セレクターSELは、Lレベルの信号Qを選択して、信号SLQとしてAND回路AN2に出力する。
この状態でJ6、J7に示すように、起動期間TSTが経過して、信号STINがLレベルからHレベルに変化しても、AND回路AN2に入力される信号SLQがLレベルであるため、AND回路AN2の出力信号DCDCONは、J8に示すようにLレベルのままで変化しない。従って、放電部60の放電動作はオフに設定される。即ち、取り去り検出時に放電動作がオフに設定される第2のモードが実現される。
その後、J9に示すようにスイッチ部514の3秒以上の長押し操作が行われると、J10に示すように放電動作がオフからオンに切り替わる。即ち、タイマー73によりカウントされる3秒の経過後もスイッチ部514の押下操作が行われており、3秒以上の長押し操作が検出されると、タイマー73の出力信号SSWがLレベルからHレベルに変化する。これにより、フリップフロップDF2の出力信号SSWCもLレベルからHレベルに変化し、フリップフロップDF3の保持レベルが、LレベルからHレベルに変化し、信号QがLレベルからHレベルに変化する。この結果、信号Qを選択するセレクターSELの出力信号SLQがHレベルに変化し、信号DCDCONもHレベルに変化するため、図16のJ10に示すように放電動作がオフからオンに切り替わる。
以上のように本実施形態によれば、設定レジスター55であるフリップフロップDF1に対して動作モードを設定できる。そして動作モードが第1のモードに設定された場合には、取り去り検出時に放電動作をオンにし、第2のモードに設定された場合には、取り去り検出時に放電動作をオフにすることが可能になる。またスイッチ部514の長押し操作を検出して、放電動作をオンからオフに切り替えたり、オフからオンに切り替えることが可能になる。
7.通信手法
図18は、負荷変調による通信手法を説明する図である。図18に示すように、送電側では、送電ドライバーDR1、DR2が、電源電圧制御部14から供給された電源電圧VDRVに基づいて動作して、1次コイルL1を駆動する。
一方、受電側(2次側)では、2次コイルL2のコイル端電圧を受電部52の整流回路53が整流し、ノードNVCに整流電圧VCCが出力される。なお、1次コイルL1とキャパシターCA1により送電側の共振回路が構成され、2次コイルL2とキャパシターCA2により受電側の共振回路が構成されている。
受電側では、負荷変調部56のスイッチ素子SWをオン・オフさせることで、電流源ISの電流ID2をノードNVCからGND側に間欠的に流して、受電側の負荷状態(受電側の電位)を変動させる。
送電側では、負荷変調による受電側の負荷状態の変動により、電源ラインに設けられたセンス抵抗RCSに流れる電流ID1が変動する。例えば送電側の電源(例えば図7Aの電源アダプター502等の電源装置)と電源電圧制御部14との間に、電源に流れる電流を検出するためのセンス抵抗RCSが設けられている。電源電圧制御部14は、このセンス抵抗RCSを介して電源から電源電圧が供給される。そして負荷変調による受電側の負荷状態の変動により、電源からセンス抵抗RCSに流れる電流ID1が変動し、通信部30が、この電流変動を検出する。そして通信部30は、検出結果に基づいて、負荷変調により送信される通信データの検出処理を行う。この通信部30は、電源から送電部12に流れる電流ID1を検出する電流検出回路と、電流検出回路による検出電圧と判定用電圧との比較判定を行う比較回路と、比較回路の比較判定結果に基づいて負荷変調パターンを判断する復調部を含むことができる。
図8の制御部54(充電系制御部)は、送電装置10の送電信号の送電周波数を測定し、通信データを送信するための制御信号を生成して、負荷変調部56に出力する。そして、この制御信号により、図18のスイッチ素子SWのオン・オフ制御を行って、通信データに対応する負荷変調を負荷変調部56に行わせる。
負荷変調部56は、例えば第1の負荷状態、第2の負荷状態というように、受電側の負荷状態(負荷変調による負荷)を変化させることで、負荷変調を行う。第1の負荷状態は、例えばスイッチ素子SWがオンになる状態であり、受電側の負荷状態(負荷変調の負荷)が高負荷(インピーダンス小)になる状態である。第2の負荷状態は、例えばスイッチ素子SWがオフになる状態であり、受電側の負荷状態(負荷変調の負荷)が低負荷(インピーダンス大)になる状態である。
そして、これまでの負荷変調手法では、例えば第1の負荷状態を、通信データの論理レベル「1」(第1の論理レベル)に対応させ、第2の負荷状態を、通信データの論理レベル「0」(第2の論理レベル)に対応させて、受電側から送電側への通信データの送信を行っていた。即ち、通信データのビットの論理レベルが「1」である場合には、スイッチ素子SWをオンにし、通信データのビットの論理レベルが「0」である場合には、スイッチ素子SWをオフにすることで、所定のビット数の通信データを送信していた。
しかしながら、例えばコイル間の結合度が低かったり、コイルが小型であったり、送電電力も低パワーであるような用途では、このような従来の負荷変調手法では、適正な通信の実現が難しい。即ち、負荷変調により受電側の負荷状態を、第1の負荷状態、第2の負荷状態というように変化させても、ノイズ等が原因で、通信データの論理レベル「1」、「0」のデータ検出エラーが発生してしまう。
そこで本実施形態では、図19に示すように、負荷変調部56は、送電装置10に送信する通信データの第1の論理レベル「1」については、負荷変調パターンが第1のパターンPT1となる負荷変調を行う。一方、通信データの第2の論理レベル「0」については、負荷変調パターンが第1のパターンPT1とは異なる第2のパターンPT2となる負荷変調を行う。
そして送電側の通信部30(復調部)は、負荷変調パターンが第1のパターンPT1である場合には、第1の論理レベル「1」の通信データであると判断する。一方、負荷変調パターンが第1のパターンPT1とは異なる第2のパターンPT2である場合には、第2の論理レベル「0」の通信データであると判断する。
ここで負荷変調パターンは、第1の負荷状態と第2の負荷状態で構成されるパターンである。第1の負荷状態は、負荷変調部56による受電側の負荷が、例えば高負荷になる状態である。具体的には、図19において、第1の負荷状態の期間TM1は、負荷変調部56のスイッチ素子SWがオンになって、電流源ISの電流がノードNVCからGND側に流れる期間であり、第1、第2のパターンPT1、PT2のHレベル(ビット=1)に対応する期間である。一方、第2の負荷状態は、負荷変調部56による受電側の負荷が、例えば低負荷になる状態である。具体的には、図19において第2の負荷状態の期間TM2は、負荷変調部56のスイッチ素子SWがオフになる期間であり、第1、第2のパターンPT1、PT2のLレベル(ビット=0)に対応する期間である。
そして図19において、第1のパターンPT1は、第1の負荷状態の期間TM1の幅が第2のパターンPT2に比べて長くなるパターンとなっている。このように第1の負荷状態の期間TM1の幅が、第2のパターンPT2に比べて長い第1のパターンPT1については、論理レベル「1」であると判断される。一方、第1の負荷状態の期間TM1の幅が、第1のパターンPT1に比べて短い第2のパターンPT2については、論理レベル「0」であると判断される。
図19に示すように、第1のパターンPT1は、例えば(1110)のビットパターンに対応するパターンである。第2のパターンPT2は、例えば(1010)のビットパターンに対応するパターンである。これらのビットパターンにおいて、ビット=1は、負荷変調部56のスイッチ素子SWがオンになる状態に対応し、ビット=0は、負荷変調部56のスイッチ素子SWがオフになる状態に対応する。
例えば受電側は、送信する通信データのビットが論理レベル「1」である場合には、第1のパターンPT1に対応する(1110)のビットパターンで、負荷変調部56のスイッチ素子SWをオン又はオフにする。具体的には、スイッチ素子SWを、順に、オン、オン、オン、オフにするスイッチ制御を行う。そして送電側は、負荷変調パターンが、(1110)のビットパターンに対応する第1のパターンPT1であった場合には、通信データのビットの論理レベルは「1」であると判断する。
一方、受電側は、送信する通信データのビットが論理レベル「0」である場合には、第2のパターンPT2に対応する(1010)のビットパターンで、負荷変調部56のスイッチ素子SWをオン又はオフにする。具体的には、スイッチ素子SWを、順に、オン、オフ、オン、オフにするスイッチ制御を行う。そして送電側は、負荷変調パターンが、(1010)のビットパターンに対応する第2のパターンPT2であった場合には、通信データのビットの論理レベルは「0」であると判断する。
ここで、送電部12の送電周波数(駆動クロック信号FCKの周波数)をfckとし、送電周期をT=1/fckとした場合には、第1、第2のパターンPT1、PT2の長さは、例えば512×Tと表すことができる。この場合に、1つのビット区間の長さは、(512×T)/4=128×Tと表される。従って、受電側は、通信データのビットが論理レベル「1」である場合には、例えば128×Tの間隔で、第1のパターンPT1に対応する(1110)のビットパターンで、負荷変調部56のスイッチ素子SWをオン又はオフにする。また受電側は、通信データのビットが論理レベル「0」である場合には、例えば128×Tの間隔で、第2のパターンPT2に対応する(1010)のビットパターンで、負荷変調部56のスイッチ素子SWをオン又はオフにする。
一方、送電側は、例えば図20に示す手法で通信データの検出処理及び取り込み処理を行う。例えば通信部30(復調部)は、第1のパターンPT1における第1の負荷状態の期間TM1内に設定された第1のサンプリングポイントSP1から、所与のサンプリング間隔SIで負荷変調パターンのサンプリングを行って、所与のビット数の通信データを取り込む。
例えば図20のサンプリングポイントSP1、SP2、SP3、SP4、SP5、SP6は、サンプリング間隔SI毎に設定されるサンプリングポイントである。このサンプリング間隔SIは、負荷変調パターンの長さに対応する間隔である。例えば図19では、第1、第2のパターンPT1、PT2の長さは512×T(=512/fck)となっているため、サンプリング間隔SIの長さも512×Tになる。
そして図20では、期間TS1、TS2、TS3、TS4、TS5、TS6での負荷変調パターンは、各々、PT1、PT2、PT1、PT2、PT2、PT2になっている。従って、図20の場合には、第1のサンプリングポイントSP1から、サンプリング間隔SIで負荷変調パターンのサンプリングを行うことで、例えばビット数=6である通信データ(101000)が取り込まれることになる。
具体的には、第1の負荷状態の期間TM1の幅が、第1の範囲幅内(220×T〜511×T)である場合に、図20に示すように、第1の負荷状態の期間TM1内に、第1のサンプリングポイントSP1を設定する。即ち、信号レベルがHレベルとなる期間TM1の幅が、第1の範囲幅内である場合に、ビット同期を行い、その期間TM1内の例えば中心点に、第1のサンプリングポイントSP1を設定する。そして、設定された第1のサンプリングポイントSP1から、サンプリング間隔SI毎にサンプリングを行う。そして取り込んだ信号のレベルが、Hレベル(第1の負荷状態)であれば、論理レベル「1」(第1のパターンPT1)であると判断し、Lレベル(第2の負荷状態)であれば、論理レベル「0」(第2のパターンPT2)であると判断する。
ここで第1の範囲幅(220×T〜511×T)は、第1のパターンPT1における第1の負荷状態の期間TM1(384×T)に対応して設定される範囲幅である。例えば信号に重畳するノイズ等が原因となって、期間TM1の幅は変動してしまう。そして第1のパターンPT1における期間TM1の幅のティピカル値は、3ビット分(111)に対応する幅である128×3×T=384×Tである。従って、この384×Tを含むような第1の範囲幅220×T〜511×Tを設定する。そして、第1の範囲幅220×T〜511×T内であるHレベルの期間については、第1のパターンPT1の期間TM1であると判断し、第1のサンプリングポイントSP1を設定するためのビット同期を行う。このようにすることで、ノイズが信号に重畳している場合にも、適正なビット同期を行って、適切な第1のサンプリングポイントSP1を設定できるようになる。
なお、図20の各サンプリングポイントSP2〜SP6において、そのサンプリングポイントを含む負荷状態の期間の幅が、所定の範囲幅内であるか否かを確認するようにしてもよい。
例えば第2のサンプリングポイントSP2において、負荷状態が第1の負荷状態(Hレベル)であり、且つ、第2のサンプリングポイントSP2を含む第1の負荷状態の期間TM1の幅が、第1の範囲幅内(220×T〜511×T)である場合には、第2のサンプリングポイントSP2での負荷変調パターンが第1のパターンPT1(論理レベル「1」)であると判断する。
一方、第2のサンプリングポイントSP2において、負荷状態が第2の負荷状態(Lレベル)であり、且つ、第2のサンプリングポイントSP2を含む第2の負荷状態の期間TM2の幅が、第2の範囲幅内(例えば80×T〜150×T)である場合には、第2のサンプリングポイントSP2での負荷変調パターンが第2のパターンPT2(論理レベル「0」)であると判断する。
ここで第2の範囲幅(80×T〜150×T)は、第2のパターンPT2における第2の負荷状態の期間TM2(128×T)に対応して設定される範囲幅である。期間TM2のティピカル値は、1ビットに対応する幅である128×Tとなるため、この128×Tを含むような第2の範囲幅80×T〜150×Tが設定される。
以上のように本実施形態では、負荷変調パターンを判別して通信データの論理レベルを判定している。従って、ノイズが多いような状況においても、通信データの適正な検出が可能になる。即ち、図19の第1、第2のパターンPT1、PT2では、例えば第1の負荷状態(Hレベル)の期間TM1の幅が大きく異なっており、本実施形態では、この期間TM1の幅の違いを判別することで、パターンを判別して、通信データの各ビットの論理レベルを検出している。従って、例えばノイズが原因でサンプリングポイントSP1での期間TM1の幅等が変動した場合にも、通信データの適正な検出が可能になる。また、以降のサンプリングポイントSP2、SP3、SP4・・・は、サンプリング間隔SIに基づき簡素な処理で設定できるため、通信データの検出処理の処理負荷も軽減できるという利点がある。
図21A、図21Bに、本実施形態で用いられる通信データのフォーマットの例を示す。
図21Aでは、通信データは64ビットで構成され、この64ビットで1つのパケットが構成される。一番目の16ビットは0000hとなっている。例えば受電側の負荷変調を検出して送電側が通常送電(或いは間欠送電)を開始する場合に、通信部30の電流検出回路等が動作して、通信データを適正に検出できるようになるまでに、ある程度の時間が必要になる。このため、一番目の16ビットには、ダミー(空)のデータである0000hを設定する。送電側は、この1番目の16ビットの0000hの通信期間において、例えばビット同期のために必要な種々の処理を行うことになる。
次の2番目の16ビットには、データコードと、整流電圧(VCC)の情報が設定される。データコードは、図21Bに示すように、次の3番目の16ビットで通信されるデータを特定するためのコードである。整流電圧(VCC)は、送電装置10の送電電力設定情報として用いられる。
3番目の16ビットには、データコードでの設定に従って、温度、バッテリー電圧、バッテリー電流、ステータスフラグ、サイクル回数、IC番号・充電実行・オフスタート、或いはIDなどの情報が設定される。温度は例えばバッテリー温度などである。バッテリー電圧、バッテリー電流は、バッテリー90の充電状態を表す情報である。ステータスフラグは、例えば温度エラー(高温異常、低温異常)、バッテリーエラー(1.0V以下のバッテリー電圧)、過電圧エラー、タイマーエラー、満充電(ノーマルエンド)などの受電側のステータスを表す情報である。サイクル回数(サイクルタイム)は充電回数を表す情報である。IC番号は、制御装置のICを特定するための番号である。充電実行のフラグ(CGO)は、認証した送電側が適正であり、送電側からの送電電力に基づいて充電を実行することを示すフラグである。オフスタートのフラグ(OFST)は、取り去り検出時に放電動作がオフに設定されることを知らせるフラグである。4番目の16ビットにはCRCの情報が設定される。
なお本実施形態の通信手法は、図19〜図21B等で説明した手法に限定されず、種々の変形実施が可能である。例えば図19では第1のパターンPT1に論理レベル「1」を対応づけ、第2のパターンPT2に論理レベル「0」を対応づけているが、この対応づけは逆であってもよい。また、図19の第1、第2のパターンPT1、PT2は負荷変調パターンの一例であり、本実施形態の負荷変調パターンはこれに限定されず、種々の変形実施が可能である。例えば図19では、第1、第2のパターンPT1、PT2は同じ長さに設定されているが、異なる長さに設定してもよい。また図19では、ビットパターン(1110)の第1のパターンPT1と、ビットパターン(1010)の第2のパターンPT2を用いているが、これらとは異なったビットパターンの第1、第2のパターンPT1、PT2を採用してもよい。例えば第1、第2のパターンPT1、PT2は、少なくとも第1の負荷状態の期間TM1(或いは第2の負荷状態の期間TM2)の長さが異なるパターンであればよく、図19とは異なる種々のパターンを採用できる。また、通信データのフォーマットや通信処理も本実施形態で説明した手法に限定されず、種々の変形実施が可能である。
8.受電部、充電部
図22に、受電部52、充電部58等の詳細な構成例を示す。図22に示すように、受電部52の整流回路53は、整流用のトランジスターTA1、TA2、TA3、TA4と、これらのトランジスターTA1〜TA4を制御する整流制御部51を有する。トランジスターTA1〜TA4の各々のドレイン・ソース間にはボディーダイオードが設けられている。整流制御部51は、トランジスターTA1〜TA4のゲートに対して制御信号を出力して、整流電圧VCCを生成するための整流制御を行う。
整流電圧VCCのノードNVCとGNDのノードとの間には抵抗RB1、RB2が直列に設けられている。整流電圧VCCを、抵抗RB1、RB2で電圧分割した電圧ACH1が、例えばA/D変換回路65に入力される。これにより整流電圧VCCの監視が可能になり、VCCに基づく電力制御や、VCCに基づく通信開始や充電開始の制御を実現できる。
レギュレーター67は、整流電圧VCCの電圧調整(レギュレート)を行って、電圧VD5を出力する。この電圧VD5は、トランジスターTC1を介して、充電部58のCC充電回路59に供給される。トランジスターTC1は、例えばバッテリー電圧VBATが所与の電圧を超える過電圧の検出時において、制御信号GC1に基づいてオフになる。なお制御装置50の各回路(放電部60等の放電系の回路を除く回路)は、この電圧VD5に基づく電圧(VD5をレギュレートした電圧等)を電源電圧として動作する。
CC充電回路59は、トランジスターTC2と、演算増幅器OPCと、抵抗RC1と、電流源ISCを有する。演算増幅器OPCの仮想接地により、抵抗RC1の一端の電圧(非反転入力端子の電圧)と、外付け部品であるセンス抵抗RSの他端の電圧VCS2(反転入力端子の電圧)とが等しくなるように、トランジスターTC2が制御される。信号ICDAの制御により電流源ISCに流れる電流をIDAとし、センス抵抗RSに流れる電流をIRSとする。すると、IRS×RS=IDA×RC1となるように、制御される。即ち、このCC充電回路59では、センス抵抗RSに流れる電流IRS(充電電流)が、信号ICDAにより設定される一定の電流値になるように制御される。これにより、CC(Constant-Current)充電が可能になる。
トランジスターTC3は、CC充電回路59の出力ノードと、バッテリー電圧VBATの供給ノードNBATとの間に設けられる。P型のトランジスターTC3のゲートには、N型のトランジスターTC4のドレインが接続されており、トランジスターTC4のゲートには、制御部54からの充電の制御信号CHONが入力されている。また、トランジスターTC3のゲートとノードNBATの間には、プルアップ用の抵抗RC2が設けられ、トランジスターTC4のゲートとGND(低電位側電源)のノードの間には、プルダウン用の抵抗RC3が設けられている。トランジスターTC3(TC4)により、図8の電力供給スイッチ42が実現される。
充電時には、制御部54が、制御信号CHONをHレベル(アクティブ)にする。これにより、N型のトランジスターTC4がオンになって、P型のトランジスターTC3のゲート電圧がLレベルになる。この結果、トランジスターTC3がオンになり、バッテリー90の充電が行われるようになる。
一方、制御部54が、制御信号CHONをLレベル(非アクティブ)にすると、N型のトランジスターTC4がオフになる。そしてP型のトランジスターTC3のゲート電圧が、抵抗RC2によりバッテリー電圧VBATにプルアップされることで、トランジスターTC3がオフになり、バッテリー90の充電が停止する。
また、充電系の電源電圧が回路の動作下限電圧よりも低くなった場合には、トランジスターTC4のゲート電圧が、抵抗RC3によりGNDにプルダウンされることで、トランジスターTC4がオフになる。そしてトランジスターTC3のゲート電圧が、抵抗RC2によりバッテリー電圧VBATにプルアップされることで、トランジスターTC3がオフになる。このようにすれば、例えば受電側が取り去られ、電源電圧が動作下限電圧よりも低くなった場合に、トランジスターTC3がオフになることで、CC充電回路59の出力ノードとバッテリー90のノードNBATとの間の経路が電気的に遮断される。これにより、電源電圧が動作下限電圧以下になった場合におけるバッテリー90からの逆流が防止されるようになる。
またノードNBATとGNDのノードとの間には抵抗RC4、RC5が直列に設けられており、バッテリー電圧VBATを、抵抗RC4、RC5で電圧分割した電圧ACH2が、A/D変換回路65に入力される。これによりバッテリー電圧VBATの監視が可能になり、バッテリー90の充電状態に応じた各種の制御を実現できる。またバッテリー90の近くには、サーミスターTH(広義には温度検出部)が設けられている。このサーミスターTHの一端の電圧RCTが制御装置50に入力され、これによりバッテリー温度の測定が可能になる。
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本発明の範囲に含まれる。また送電側、受電側の制御装置、送電装置、受電装置の構成・動作等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。