以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
1.電子機器
図1Aに本実施形態の無接点電力伝送システムの一例を示す。充電器500(電子機器の1つ)は送電装置10を有する。電子機器510は受電装置40を有する。また電子機器510は、操作用のスイッチ部514(広義には操作部)やバッテリー90を有する。なお図1Aではバッテリー90を模式的に示しているが、このバッテリー90は実際には電子機器510に内蔵されている。図1Aの送電装置10と受電装置40により本実施形態の無接点電力伝送システムが構成される。
充電器500には、電源アダプター502を介して電力が供給され、この電力が、無接点電力伝送により送電装置10から受電装置40に送電される。これにより、電子機器510のバッテリー90を充電し、電子機器510内のデバイスを動作させることができる。
なお充電器500の電源は、USB(USBケーブル)による電源であってもよい。また、本実施形態が適用される電子機器510としては種々の機器を想定できる。例えば補聴器、腕時計、生体情報の測定装置(脈波等を測定するウェアラブル機器)、携帯情報端末(スマートフォン、携帯電話機等)、コードレス電話器、シェーバー、電動歯ブラシ、リストコンピューター、ハンディターミナル、車載用機器、ハイブリッド車、電気自動車、電動バイク、或いは電動自転車などの種々の電子機器を想定できる。例えば本実施形態の制御装置(受電装置等)は、車、飛行機、バイク、自転車、或いは船舶等の種々の移動体に組み込むことができる。移動体は、例えばモーターやエンジン等の駆動機構、ハンドルや舵等の操舵機構、各種の電子機器(車載機器)を備えて、地上や空や海上を移動する機器・装置である。
図1Bに模式的に示すように、送電装置10から受電装置40への電力伝送は、送電側に設けられた1次コイルL1(送電コイル)と、受電側に設けられた2次コイルL2(受電コイル)を電磁的に結合させて電力伝送トランスを形成することなどで実現される。これにより非接触での電力伝送が可能になる。なお無接点電力伝送の方式としては、電磁誘導方式又は磁界共鳴方式等の種々の方式を採用できる。
2.送電装置、受電装置、制御装置の構成
図2に本実施形態の制御装置20、50及びこれを含む送電装置10、受電装置40の構成例を示す。なお、これらの各装置の構成は図2の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素(例えば報知部)を追加したり、接続関係を変更するなどの種々の変形実施が可能である。
図1Aの充電器500などの送電側の電子機器は送電装置10を含む。また受電側の電子機器510は受電装置40と負荷80を含む。負荷80は、バッテリー90、電力供給対象100を含むことができる。電力供給対象100は、例えば処理部(DSP等)などの各種のデバイスである。そして図2の構成により、1次コイルL1と2次コイルL2を電磁的に結合させて送電装置10から受電装置40に対して電力を伝送する無接点電力伝送(非接触電力伝送)システムが実現される。
送電装置10(送電モジュール、1次モジュール)は、1次コイルL1、送電部12、制御装置20を含む。送電部12は、電力伝送時において所定周波数の交流電圧を生成して、1次コイルL1に供給する。送電部12は、1次コイルL1を駆動する送電ドライバーや、送電ドライバーに電源を供給する電源回路(例えば電源電圧制御部)や、1次コイルL1と共に共振回路を構成する少なくとも1つのキャパシター(コンデンサー)を含むことができる。
1次コイルL1(送電側コイル)は、2次コイルL2(受電側コイル)と電磁結合して電力伝送用トランスを形成する。例えば電力伝送が必要なときには、図1A、図1Bに示すように、充電器500の上に電子機器510を置き、1次コイルL1の磁束が2次コイルL2を通るような状態にする。一方、電力伝送が不要なときには、充電器500と電子機器510を物理的に離して、1次コイルL1の磁束が2次コイルL2を通らないような状態にする。
制御装置20は、送電側の各種制御を行うものであり、集積回路装置(IC)などにより実現できる。制御装置20は、制御部24、通信部30を含む。なお送電部12を制御装置20に内蔵させるなどの変形実施も可能である。
制御部24は、送電側の制御装置20の各種の制御処理を実行する。例えば制御部24は、送電部12や通信部30の制御を行う。具体的には制御部24は、電力伝送、通信処理等に必要な各種のシーケンス制御や判定処理を行う。この制御部24は、例えばゲートアレイ等の自動配置配線手法で生成されたロジック回路や、或いはマイクロコンピューターなどの各種のプロセッサーにより実現できる。
通信部30は、受電装置40との間での通信データの通信処理を行う。例えば通信部30は、受電装置40からの通信データを検出して受信するための処理を行う。
受電装置40(受電モジュール、2次モジュール)は、2次コイルL2、制御装置50を含む。制御装置50は、受電側の各種制御を行うものであり、集積回路装置(IC)などにより実現できる。制御装置50は、受電部52、制御部54、電力供給部57を含む。また通信部46、記憶部48を含むことができる。なお、受電部52を制御装置50の外部に設けるなどの変形実施も可能である。
受電部52は、送電装置10からの電力を受電する。具体的には受電部52は、2次コイルL2の交流の誘起電圧を直流の整流電圧(VCC)に変換して、出力する。
電力供給部57は、受電部52が受電した電力に基づいて、負荷80に対して電力を供給する。例えば受電部52が受電した電力を供給して、バッテリー90を充電する。或いはバッテリー90からの電力や、受電部52が受電した電力を、電力供給対象100に供給する。電力供給部57は電力供給スイッチ42を含む。電力供給スイッチ42は、受電部52が受電した電力を、負荷80に供給するスイッチ(スイッチ素子、スイッチ回路)である。例えば電力供給スイッチ42は、受電部52が受電した電力を、負荷80であるバッテリー90に供給して、バッテリー90を充電する。
制御部54は、受電側の制御装置50の各種の制御処理を実行する。例えば制御部54は、通信部46、電力供給部57の制御を行う。また受電部52や記憶部48の制御を行うこともできる。制御部54は、例えばゲートアレイ等の自動配置配線手法で生成されたロジック回路や、或いはマイクロコンピューターなどの各種のプロセッサーにより実現できる。
通信部46は、送電装置10に対して通信データを送信する通信を行う。或いは送電装置10から通信データを受信する通信を行ってもよい。通信部46の通信は、例えば負荷変調により実現できる。但し、通信部46の通信方式は負荷変調には限定されない。例えば通信部46は、1次コイルL1、2次コイルL2を用いて負荷変調以外の方式で通信を行ってもよい。或いは、1次コイルL1、2次コイルL2とは別のコイルを設け、この別のコイルを用いて負荷変調やそれ以外の通信方式で通信を行ってもよい。或いはRFなどの近接無線通信で通信を行ってもよい。
記憶部48は、各種の情報を記憶する。記憶部48は例えば不揮発性メモリーにより実現できるが、これに限定されるものではない。例えば不揮発性メモリー以外のメモリー(例えばROM)により記憶部48を実現してもよい。或いは、ヒューズ素子を用いた回路等により記憶部48を実現してもよい。
負荷80は、バッテリー90、電力供給対象100を含む。但し、これらのいずれか一方が設けられない変形実施も可能である。
バッテリー90は例えば充電可能な二次電池であり、例えばリチウム電池(リチウムイオン二次電池、リチウムイオンポリマー二次電池等)、ニッケル電池(ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池等)などである。電力供給対象100は、例えば、処理部(DSP、マイコン)などのデバイス(集積回路装置)であり、受電装置40を内蔵する電子機器510(図1A)に設けられ、例えばバッテリー90の電力供給対象となるデバイスである。なお、受電部52が受電した電力を直接に電力供給対象100に供給してもよい。
そして本実施形態では、送電装置10から無接点電力伝送で電力を受電する受電装置40に使用される制御装置50は、制御部54と、電力供給部57を含む。電力供給部57は、電力供給スイッチ42を含み、送電装置10からの電力を受電する受電部52が受電した電力に基づいて、電力供給スイッチ42をオンにしてバッテリー90に対して電力を供給して、バッテリー90を充電する。制御部54は、電力供給部57を制御する。
電力供給部57が有する電力供給スイッチ42は、例えば受電部52の出力電圧VCCのノードと、バッテリー電圧VBATの供給ノードとの間の経路に設けられる。電力供給スイッチ42のオン、オフの制御は制御部54が行う。例えば電力供給スイッチ42がオンになると、受電部52が受電した電力が供給されてバッテリー90が充電される。一方、電力供給スイッチ42がオフになると、受電部52の出力電圧VCCのノードとバッテリー電圧VBATの供給ノードとの間は電気的に遮断される。
そして制御部54は、受電部52の出力電圧VCCが、所定電圧以下である場合に、電力供給スイッチ42をオフにすることで、バッテリー90から電力供給部57(制御装置、受電部)への電流の逆流を防止(遮断、抑止)する。即ち、バッテリー電圧VBATが出力電圧VCCよりも高い場合に、バッテリー90からの電流が制御装置50側に流れ込むのを抑制する。
ここで所定電圧は、動作下限電圧よりも高い電圧である。動作下限電圧は、例えば受電側の回路(制御部54等)を構成するN型トランジスターの閾値電圧とP型トランジスターの閾値電圧の和に相当する電圧(例えば0.9〜1.4V程度)である。またバッテリー90からの逆流の電流は、充電電流とは逆方向に流れる電流である。
例えば前述した従来技術では、電源電圧が動作下限電圧よりも低い場合に、ACアダプターからの電流の逆流を防止している。これに対して本実施形態では、受電部52の出力電圧VCCが、動作下限電圧よりも高い所定電圧以下である場合に、電力供給スイッチ42をオフにして、バッテリー90からの電流の逆流を防止している。例えば動作下限電圧をVLとして、所定電圧をVCCLとした場合に、本実施形態では、VL≦VCC≦VCCLである場合にも、電力供給スイッチ42をオフにする。このようにすれば、例えば1次コイルL1と2次コイルL2が適切な位置関係ではないことが原因で、受電部52の出力電圧VCCが低下し、バッテリー電圧VBATよりも低くなった場合にも、電力供給スイッチ42がオフになることで、バッテリー90からの電流の逆流を防止できるようになる。
また制御部54は、送電装置10の送電周波数を測定する。例えば送電部12は、電力伝送時において所定周波数の交流電圧を生成して、1次コイルL1を駆動しているが、当該所定周波数である送電周波数(送電周波数に対応する受電周波数)を、制御部54が測定する。そして制御部54は、送電周波数が非検出(送電信号波形が非検出)である場合、又は受電部52の出力電圧VCCが所定電圧以下である場合に、電力供給スイッチ42をオフにする。即ち、出力電圧VCCが所定電圧以下である場合のみならず、送電周波数が非検出である場合にも、電力供給スイッチ42をオフにする。送電周波数が非検出である場合には、受電側が取り去られたと判断できるからである。
また、電力供給スイッチ42をオフにする判定電圧である所定電圧(後述する第2の電圧)は、バッテリーの充電電圧(例えば4.2V)よりも高い電圧(例えば4.8V)である。例えば所定電圧は、充電電圧よりも高い充電可能電圧であり、例えばCV充電の場合のCV充電電圧よりも高い電圧(例えば+0.6V)である。このようにすれば、出力電圧VCCが所定電圧よりも高くなった場合に、電力供給スイッチ42を介して充電可能電圧をバッテリー90に供給して、バッテリー90を充電できるようになる。
また受電側の制御装置50は、送電装置10(制御装置20)に対して通信データを送信する通信を行う通信部46を含む。そして通信部46は、受電部52の出力電圧VCCが所定電圧以下になってバッテリー90の充電が停止したことを知らせる通知情報を、通信データとして送電装置10に送信する。例えば、出力電圧VCCが所定電圧以下になったことが原因で充電が停止したことを知らせるフラグ情報(FLVCCL)を、通知情報として送電装置10に送信する。このようにすることで、送電側は、VCCが所定電圧(充電可能電圧)に達していないことが原因で、バッテリー90の充電を開始できないことを、当該通知情報に基づき認識できるようになる。これにより送電側は、この通知情報を、受電部52の出力電圧VCCを高めるための制御(例えば送電電力の制御)に利用したり、報知部を用いて当該通知情報をユーザーに報知して、例えば受電側の機器の再設置(再配置)をユーザーに促すことなどが可能になる。
また制御部54は、受電部52の出力電圧VCC(整流電圧)が、上記の所定電圧(第2の電圧)とは異なる第1の電圧よりも高くなった場合に、通信部46の通信を開始させる。例えば受電部52の受電により、受電部52による整流電圧である出力電圧VCCが上昇した場合に、出力電圧VCCが第1の電圧に達するまでは、通信部46は通信を行わず、出力電圧VCCが第1の電圧よりも高くなった場合に、通信部46が送電装置10に対して通信データを送信する。
そして制御部54は、通信を開始させた後、受電部52の出力電圧VCCが、上記の所定電圧である第2の電圧よりも高くなった場合に、電力供給スイッチ42をオンにして、バッテリー90の充電(負荷80への電力供給)を開始させる。例えば出力電圧VCCが第1の電圧を超えて、通信部46が通信を開始した場合にも、バッテリー90の充電を開始せずに、出力電圧VCCが所定電圧である第2の電圧よりも高くなった場合に、初めて、バッテリー90の充電を開始する。
このように本実施形態では、通信部46の通信が開始する第1の電圧(後述するVST)と、バッテリー90の充電が開始する所定電圧である第2の電圧(後述するVCCL)とを異ならせている。そして受電部52の出力電圧VCCが、所定電圧である第2の電圧を超えていなくても、第1の電圧よりも高くなった場合には、通信部46の通信が開始し、送電装置10に対して通信データが送信される。こうすることで、この通信データを受けた送電装置10の制御装置20(制御部24)は、受電側の出力電圧VCCを高めるための各種の制御を行うことができる。例えば送電部12を制御して、送電電力を高めるような制御を行うことができる。こうすることで、出力電圧VCCが上昇して所定電圧である第2の電圧を超えると、例えば電力供給スイッチ42がオンになって、受電部52が受電した電力がバッテリー90(負荷80)に供給されるようになる。従って、例えば着地検出時の送電部12の駆動電圧(送電ドライバの電源電圧)をそれほど高い電圧に設定しなくても、広い距離範囲での着地検出を実現できるようになる。そして着地検出時の駆動電圧を低い電圧に設定できるため、VCCが高くなることによる回路の不具合の発生を抑制できる。即ち、送電側の駆動電圧が低く設定されることで、受電側の電圧(VCC)も低くなり、受電側での過電圧の発生を抑制できるようになる。
ここで、第1の電圧は、通信部46による通信が可能な電圧である。例えば受電側の通信部46が通信データを送信したときに、送電側の通信部30が受電側からの通信データの検出が可能になる電圧である。また所定電圧である第2の電圧は、上述したように受電側の回路の動作下限電圧よりも高い電圧である。より具体的には、バッテリー90の充電電圧(例えば4.2V)よりも高い電圧である充電可能電圧である。
また制御部54によって通信を開始した通信部46は、送電電力設定情報を通信データとして送電装置10(制御装置20)に送信する。送電電力設定情報は、送電側の送電電力を制御するための情報であり、一例としては受電部52の整流電圧である出力電圧VCCの情報である。送電側の制御装置20(制御部24)は、この送電電力設定情報に基づいて、送電部12の送電電力を制御する。例えば出力電圧VCCが高くなると、送電電力を低くし、出力電圧VCCが低くなると、送電電力を高くするような送電制御を行う。
そして制御部54は、送電電力設定情報に基づく送電装置10(制御装置20)の送電電力の制御により、受電部52の出力電圧VCCが所定電圧である第2の電圧よりも高くなった場合に、電力供給スイッチ42をオンにして、バッテリー90の充電を開始する。
このようにすれば、例えば着地検出時の送電部12の駆動電圧が低く設定され、出力電圧VCCが所定電圧である第2の電圧に達していない場合にも、送電電力設定情報を受信した送電装置10が、送電電力を高くすることで、出力電圧VCCが上昇するようになる。そして、出力電圧VCCが第2の電圧を超えて、適正な電圧になった場合に、負荷80への電力供給が開始され、バッテリー90の充電が行われるようになる。
また送電装置10は、着地検出用の間欠送電を行う。例えば送電装置10(送電部12)は、通常送電のような連続送電は行わずに、所与の期間毎に間欠的に電力を送電する間欠送電を行って、着地(受電側の電子機器の着地)を検出する。そして制御部54は、送電装置10が行う着地検出用の間欠送電により受電部52の出力電圧VCCが第1の電圧よりも高くなった場合に、通信部46の通信を開始させる。この通信の結果、出力電圧VCCが上昇して所定電圧である第2の電圧を超えると、バッテリー90の充電が開始する。例えば送電電力設定情報を受信した送電装置10が送電電力を増加させ、これにより出力電圧VCCが上昇して第2の電圧を超えると、バッテリー90が充電される。
また通信部46は、受電部52の出力電圧VCCが第1の電圧よりも高くなった場合に、送電装置10が着地検出を判断するためのダミーデータを、送電装置10に送信する。送電装置10は、このダミーデータを用いて、受電側の電子機器510(受電装置)が着地したか否かを判断する。例えばダミーデータとしては、全てのビットが所定の論理レベル(例えば論理レベル「0」)となる所定ビット数(例えば64ビット)のデータを用いることができる。例えばダミーデータがpビット(例えばp=64)である場合に、pビットのうちqビット(例えばq=8ビット)が所定の論理レベル(例えば「0」)であることが検出された場合に、送電装置10は着地が検出されたと判断し、通常送電を開始する。なお、通信方式が負荷変調の場合に、ダミーデータの各ビットの論理レベルは、負荷変調パターン(例えば論理レベル「0」に対応する第2のパターン)で表されることになる。
また制御部54は、送電装置10が着地検出(例えばダミーデータの検出)に成功して受電装置40に対して応答を行った場合に、バッテリー90の充電を許可する。即ち、着地検出に成功した送電装置10が受電装置40に対して応答することが、バッテリー90の充電の条件になる。
例えば送電装置10は、送電周波数を変化させることで、上記の応答を行う。例えば、通常時には第1の送電周波数(f1)で送電を行っていたとする。すると、送電装置10は、着地検出後(ダミーデータの受信後)の所与の応答期間において、送電周波数を第1の送電周波数から第2の送電周波数(f2)に変更する。受電側の制御部54は、この送電周波数(送電周波数に対応する受電周波数)を測定し、応答期間に対応する測定期間において送電周波数の変化を検出することで、送電装置10の応答を検出する。例えば、送電周波数が第1の送電周波数(f1)から第2の送電周波数(f2)に変化していることが、当該測定期間において検出された場合に、送電装置10からの応答があったと判断する。そして、このような応答があったことを条件に、バッテリー90の充電を許可する。
また、通信開始電圧である第1の電圧は、電力供給開始電圧である第2の電圧よりも低い電圧に設定される。但し本実施形態はこれに限定されず、第1の電圧が第2の電圧よりも高い電圧に設定されていてもよい。
また記憶部48は、第1の電圧の電圧情報を記憶する。記憶部48は、例えば不揮発性メモリーなどのメモリーにより実現できる。制御部54は、記憶部48に記憶される電圧情報(第1の電圧の情報)に基づいて、受電部52の出力電圧VCCが第1の電圧よりも高くなったか否かを判断する。こうすることで、記憶部48に記憶される第1の電圧の電圧情報を異ならせることで、コイル性能等に応じて第1の電圧を様々な電圧に設定できるようになる。
また受電装置40に無接点電力伝送で電力を送電する送電装置10に使用される本実施形態の制御装置20は、受電装置40に電力を送電する送電部12の送電電力を制御する制御部24と、受電装置40からの通信データを受信する通信を行う通信部30を含む。また本実施形態の無接点電力伝送システムは、送電装置10と受電装置40を含み、送電装置10は、受電装置40に電力を送電し、受電装置40は、受電部52が受電した電力に基づいて、負荷80に対して電力を供給すると共に、送電装置10に対して通信データを送信する通信を行う。
そして受電装置40は、受電した電力をバッテリー90に供給して充電する電力供給スイッチ42を含む。受電装置40は、受電部52の出力電圧VCCが動作下限電圧よりも高い所定電圧以下である場合に、電力供給スイッチ42をオフにして、バッテリー90の充電を停止する。また出力電圧VCCが所定電圧以下になってバッテリー90の充電が停止したことを知らせる通知情報を、通信データとして送電装置10に送信する。
そして送電側の通信部30(送電装置10)は、受電装置40からの通知情報を受信する。送電側の制御部24(送電装置10)は、受電装置40に対する送電電力を最大電力に設定した後も、バッテリー90の充電が停止したことが通知情報により通知された場合には、受電装置40に対する通常送電を停止させる。
3.本実施形態の手法
3.1 逆流防止
図1Aのように充電器500に受電側の電子機器510を配置(着地)した場合に、図3Aに示すように、送電側の1次コイルL1と受電側の2次コイルL2とが、適切ではない位置関係になってしまう場合がある。
例えば1次コイルL1から2次コイルL2へと向かう方向をZ軸とし、Z軸に直交する方向をX軸、Y軸とした場合に、図3Aでは、1次コイルL1と2次コイルL2の位置が、XY平面においてずれている。1次コイルL1と2次コイルL2がこのような位置関係で配置されると、1次コイルL1の磁束の一部が2次コイルL2を通らないようになるため、無接点電力伝送の効率が低くなる。この結果、1次コイルL1と2次コイルL2が適切な位置関係で配置される場合に比べて、受電部52の整流電圧である出力電圧VCCが低下してしまう状況が発生する。
このような状況において、電力供給部57の電力供給スイッチ42がオンのままであると、図3Bに示すように、バッテリー90からの電流が電力供給部57(制御装置50)に逆流してしまう現象が発生する。このような逆流が発生すると、せっかく充電したバッテリー90の電力が無駄に消費されてしまう。特に図3Aのような1次コイルL1と2次コイルL2の不適切な位置関係が継続すると、その継続期間の間、バッテリー90の電力が消費され続けてしまい、バッテリー電圧VBATの大きな低下を招く。なお電力供給スイッチ42は、制御部54からの充電の制御信号CHONに基づいてオンオフ制御されている。
また、充電器500からの受電側の電子機器510の取り去りが行われると、その取り去りの瞬間において、受電部52の出力電圧VCCが低下し、バッテリー90からの電流の逆流が発生してしまう。即ち、取り去りの瞬間において、VCCがバッテリー電圧VBATよりも低くなることで、逆流が発生し、せっかく充電したバッテリー90の電力が無駄に消費されてしまう。
そこで本実施形態では、図4Aに示すように、受電部52の出力電圧VCCが、所定電圧VCCL以下である場合に、電力供給スイッチ42をオフにすることで、バッテリー90から電力供給部57への電流の逆流を防止する手法を採用している。具体的には、検出部64は、出力電圧VCCを検出してモニターしている。例えば検出部64は、出力電圧VCCをA/D変換して、A/D変換結果を制御部54に出力する。制御部54は、このA/D変換結果(検出結果)に基づいて、VCC≦VCCLになったか否かを判断する。そしてVCC≦VCCLになった場合には、充電の制御信号CHONを非アクティブレベルにして、電源供給スイッチ42をオフにする。例えばアクティブレベルであった制御信号CHONを非アクティブレベルに変化させる。このようにすれば、出力電圧VCCのノードとバッテリー電圧VBATのノードとの間の経路が、オフになった電源供給スイッチ42により電気的に遮断され、バッテリー90からの逆流の電流が流れ込むのを防止できる。
従って本実施形態によれば、例えば図3Aのように1次コイルL1と2次コイルL2が不適切な位置関係である場合や、充電器500からの受電側の電子機器510の取り去りの瞬間において、バッテリー90から逆流の電流が流れて、バッテリー90の電力が無駄に消費されてしまう事態を、効果的に抑制できる。これにより、バッテリー90からの無駄な放電が防止され、バッテリー90を有する電子機器510のバッテリー動作時間を長くしたり、バッテリー90の過熱や過放電の防止等を図れるようになる。
また本実施形態では制御部54は、送電装置10の送電周波数を測定する。具体的には図4Bに示すように制御部54は送電周波数測定部44を有し、この送電周波数測定部44が、送電装置10の送電周波数(送電周波数に対応する受電周波数)を測定する。例えば受電側の制御装置50は発振回路45(CR発振回路等)を内蔵しており、この発振回路45の発振信号に基づくクロック信号を用いてカウント処理を行うことで、送電周波数を測定する。
そして制御部54は、送電周波数が非検出である場合、又は受電部52の出力電圧VCCが所定電圧VCCL以下である場合に、電力供給スイッチ42をオフにする。例えば図4Cにおいて、送電装置10は、通常時には送電周波数fck=f1で送電を行っている。そして、この送電周波数fck=f1の送電信号波形(受電信号波形)が非検出になった場合にも、電源供給スイッチ42をオフにする。即ち、このように送電周波数(送電信号波形)が非検出になった場合には、受電側の電子機器510が取り去られたと考えられるため、この場合にも制御部54は、制御信号CHONを非アクティブにして電源供給スイッチ42をオフにする。
なお所定電圧VCCLは、前述したように受電側の回路(制御部54、電力供給部57等)の動作下限電圧よりも高い電圧である。具体的には、所定電圧VCCL(後述する第2の電圧)は、バッテリー90の充電電圧(例えば4.2V)よりも高い電圧であり、例えば充電可能電圧(例えば4.8V)である。また以下では、VCCを、適宜、整流電圧と記載したり、受電部52の出力電圧と記載する。
また本実施形態では図5Aに示すように、受電側の通信部46は、整流電圧VCCが所定電圧VCCL以下となってバッテリー90の充電が停止したことを知らせる通知情報を、送電装置10に送信する。図5Aでは、この通知情報としてフラグFLVCCLが送信されている。FLVCCLは、VCC≦VCCLとなって充電が停止したことを知らせるフラグである。VCC≦VCCLの場合には、このようなフラグFLVCCLが通信データとして、送電装置10に送信される。
送電装置10は、後述するように、受電装置40からの通信データである送電電力設定情報(例えばVCCの情報)に基づいて、送電電力を制御している。例えば、整流電圧VCCが低くなった場合には、送電電力を高くし、整流電圧VCCが高くなった場合には、送電電力を低くするような送電電力の制御を行っている。
そして図5Bに示すように、送電側の制御部24は、受電装置40に対する送電電力を最大電力に設定した後も、バッテリー90の充電が停止したことが通知情報(FLVCCL)により通知された場合には、図5Cに示すように、受電装置40に対する通常送電を停止させる。
例えば制御部24は、送電部12の送電ドライバーに供給する電源電圧(VDRV)を制御することで、送電電力を制御している。そして制御部24は、この電源電圧(VDRV)を、最大電力に対応する電圧に設定している場合にも、図5Bに示すように、充電の停止を知らせる通知情報(FLVCCL)が受電装置40から送られて来る場合には、受電側の電子機器510が取り去られたと判断して、図5Cに示すように、送電部12による通常送電を停止する。
このようにすれば、例えば図3Aのように1次コイルL1と2次コイルL2が不適切な位置関係になっている場合に、これを取り去りと判断して、通常送電を停止できるため、無駄な電力伝送が行われてしまうのを防止できる。即ち図3Aのような位置関係となって、VCC≦VCCLになった場合に、本実施形態では図4Aに示すように電力供給スイッチ42をオフにして、バッテリー90の充電を停止している。このため、このような状況において、送電側が通常送電を継続することは、送電電力の無駄になる。従って、この場合には、送電側は、受電側が取り去り状態であると見なして、通常送電を停止し、無駄な電力伝送が行われるのを防止する。これにより、過熱による信頼性の低下を防止したり、省電力化を図れるようになる。
また本実施形態では、最大電力に設定した場合にもVCC≦VCCLとなった場合には、エラーが発生したと判断し、このエラーの発生を、後述する図8の報知部16を用いてユーザーに伝える。例えば当該エラーの発生を、報知部16を用いて、光や音や画像等によりユーザーに伝え、受電側の電子機器510の再設置(再配置)をユーザーに促す。こうすることで、無接点電力伝送による整流電圧VCCの上昇が不十分であることを、ユーザーに報知することができ、バッテリー90の充電ができていないというような不具合の発生を防止できる。
3.2 通信開始、電力供給開始の制御
さて、無接点電力伝送システムにおいて広い距離範囲での着地検出を実現するためには、送電部12の駆動電圧(1次コイル駆動電圧)を高くする必要がある。例えば図3C(或いは図3A)では、1次コイルL1と2次コイルL2の距離が離れている。このような状況において、受電側の電子機器510の充電器500への着地を適切に検出するためには、送電部12の駆動電圧を高くする必要がある。
しかしながら、送電側の駆動電圧を高く設定すると、図3Dのようにコイル間の距離が近い場合に、受電電力に基づく電圧が受電装置40の回路の耐圧を超えてしまい、耐圧異常が生じるリスクがある。例えば受電装置40の回路(電力供給部、制御部、通信部等)は、受電部52の出力電圧VCCに基づく電源電圧で動作する。従って、送電側の駆動電圧が高くなり、受電部52の出力電圧VCCが耐圧を超える電圧になると、これらの回路を構成するトランジスターに対して過電圧が印加されて、トランジスターの破壊や劣化等の不具合が生じるおそれがある。
そこで本実施形態では、通信開始電圧である第1の電圧と、電力供給開始電圧である第2の電圧とを別個に用意し、これらの第1、第2の電圧を異なる電圧に設定する。ここで、第2の電圧は、例えば上述した所定電圧(VCCL)である。そして受電部52の出力電圧VCCが第1の電圧よりも高い場合に、通信部46の通信を開始させ、出力電圧VCCが第2の電圧よりも高い場合に、電力供給部57の負荷80への電力供給を開始させ、バッテリー90を充電する。
なお以下では、通信開始電圧である第1の電圧を、電圧VSTと記載し、充電開始電圧であり、上述の所定電圧である第2の電圧を、電圧VCCLと記載する。
例えば本実施形態の比較例の手法として、整流電圧VCCが充電開始の電圧VCCLよりも高くなった場合にバッテリー90の充電を開始する制御だけを行い、通信開始の電圧VSTを設定しない手法が考えられる。
しかしながら、この比較例の手法では、例えば図3C(或いは図3A)のようにコイル間の距離が遠い場合に、バッテリー90の充電を開始するためには、整流電圧VCCが電圧VCCLを超えるように、送電側の駆動電圧を十分に高い電圧にする必要がある。このため、例えば図3Dのようにコイル間の距離が近い場合に、上述した耐圧異常の不具合が発生してしまう。
これに対して本実施形態では、電圧VSTとは別個に電圧VCCLを設定している。そして整流電圧VCCが電圧VSTを超えると、送電側への通信を開始し、整流電圧VCCが電圧VCCL(所定電圧)を超えると、バッテリー90の充電を開始する手法を採用する。
このようにすれば、例えば図3Cのようにコイル間の距離が遠い場合に、送電側の駆動電圧をそれほど高くしなくても、整流電圧VCCが電圧VSTに達することで、通信が開始して、受電側から送電側に通信データが送信されるようになる。そして、送電側は、この通信データ(例えばダミーデータ)を受信することで、受電側の着地を検出して、例えば送電電力制御等の制御を開始できるようになる。そして、この送電電力制御等により、整流電圧VCCが高くなり、VCCが電圧VCCLを超え、VCCが充電可能な電圧になると、バッテリー90の充電が開始するようになる。
従って本実施形態の手法によれば、着地検出の距離範囲を広げるために、送電側の駆動電圧をそれほど高くする必要がなくなり、受電側の耐圧異常等の不具合の発生も抑制できるようになる。この結果、着地検出の距離範囲の拡大と、受電側の耐圧異常等の不具合の発生の抑制とを、両立して実現することが可能になる。
図6は本実施形態の手法を説明するフロー図である。まず送電側は着地検出用の間欠送電を行う(ステップS11)。例えば後述するように第1の期間(TL1)の間隔毎に第2の期間(TL2)、送電を行う。
受電側は、この着地検出用の間欠送電により、整流電圧VCCが電圧VST(第1の電圧)よりも高くなった場合に、送電側への通信を開始する(ステップS21、S22)。具体的には通信部46が、送電側が着地検出を判断するためのダミーデータを送信する(ステップS23)。
このダミーデータ(広義には通信データ)を受信した送電側は、ダミーデータの検出により受電側の着地を検出する(ステップS12)。そして、間欠送電とは異なる連続送電の通常送電を開始する(ステップS13)。
受電側は、着地検出用のダミーデータの送信後、送電電力設定情報を送信する(ステップS24)。例えば送電電力設定情報としてVCCの電圧情報を送信する。すると、この送電電力設定情報を受信した送電側は、送電電力設定情報に基づいて送電部12の送電電力の制御を行う(ステップS14)。
この送電電力の制御により、送電側の駆動電圧(1次コイル電圧)が高くなると、送電電力を受電する受電部52の整流電圧VCCも高くなる。例えば、駆動電圧が高くなることで送電信号波形の振幅が大きくなると、受電信号波形の振幅も大きくなり、受電信号波形の整流電圧VCCも高くなる。そしてVCCがVCCLよりも高くなると、バッテリー90の充電が開始する(ステップS25、S26)。
本実施形態によれば、図6のステップS11の着地検出用の間欠送電時における送電側の駆動電圧を、それほど高い電圧に設定しなくても済むようになる。例えば図3Cのようにコイル間の距離が離れており、送電側の駆動電圧がそれほど高い電圧でなくても、図6のステップS21で整流電圧VCCが電圧VSTよりも高くなることで、受電側から送電側への通信が開始する。そして受電側からの通信データ(ダミーデータ)に基づいて(S23)、送電側が受電側の着地を検出する(S12)。次に受電側からの送電電力設定情報に基づいて(S24)、送電側が送電電力を制御することで(S14)、受電側の整流電圧VCCが上昇する。そして整流電圧VCCが電圧VCCLよりも高くなることで(S25)、バッテリー90の充電が開始するようになる(S26)。従って、本実施形態によれば、広い距離範囲での着地検出と、受電側の耐圧異常の発生の抑制とを、両立して実現することが可能になる。
図7Aに電圧VST、VCCL、動作下限電圧VLの関係の一例を示す。動作下限電圧VL(最小動作電圧)は、回路の正常な動作を保証できる電圧であり、例えば受電側の回路(電力供給部、制御部、通信部)の動作に必要な下限となる電源電圧である。この動作下限電圧VLは、例えば回路を構成するN型トランジスターの閾値電圧とP型トランジスターの閾値電圧の和に相当する電圧(例えば0.9〜1.4V程度)になる。
通信開始電圧である電圧VSTや充電開始電圧(電力供給開始電圧)である電圧VCCLは、この動作下限電圧VLよりも十分に高い電圧になる。また図7Aでは、電圧VCCL(第2の電圧、所定電圧)は電圧VST(第1の電圧)よりも高い電圧になっている。一例としては、動作下限電圧VLは0.9〜1.4V程度であり、電圧VSTは4.5V程度であり、電圧VCCLは4.8V程度であり、VL<VST<VCCLの関係が成り立っている。
なお、本実施形態では、必ずしも、VST<VCCLの関係が成り立たなくてもよい。例えば通信開始時での無接点電力伝送の状態と、充電開始時の無接点電力伝送の状態は異なる。例えば通信開始時には、バッテリー90の充電(負荷への電力供給)は行われていないため、例えばバッテリー90に充電電流が流れることによるVCCの電圧低下は発生しない。一方、充電開始時には、バッテリー90に充電電流が流れることによるVCCの電圧低下が発生する。従って、この電圧低下の影響も考慮して、VST>VCCLとなるように電圧VST、VCCLを設定してもよい。
また、通信開始の電圧VSTの高低は、無接点電力伝送に使用するコイルの性能も影響する。例えばコイル性能が高い場合には、電圧VSTをそれほど高い電圧に設定しなくても、負荷変調等による受電側と送電側の通信が可能になる。一方、コイル性能が低い場合に、電圧VSTを低い電圧に設定してしまうと、例えば図3Cのようにコイル間の距離が遠い場合に、負荷変調等による受電側と送電側の通信が困難になってしまう。従って、使用するコイル性能に応じて電圧VSTを設定できることが望ましい。
そこで本実施形態では、記憶部48がVST(第1の電圧)の電圧情報を記憶する。例えば不揮発性メモリーで構成される記憶部48がVSTの電圧情報を記憶する。そして記憶部48に記憶されるVSTの電圧情報に基づいて、VCCがVSTよりも高くなったか否かを判断する。これにより、VSTを、コイル性能等に応じた電圧に設定できるようになる。
例えば図7Bに、記憶部48へのVSTの電圧情報の設定例を示す。図7Bでは、VSTの電圧として、4.5V、5.0V、5.5V、6.0Vの設定が可能になっている。例えば電圧情報であるDVST[1:0]の設定により、これらのVSTの電圧を設定する。
そして、コイル性能が高い場合には、DVST[1:0]=0に設定して、VST=4.5Vに設定する。この場合にはVST<VCCL(=4.8V)の関係が成り立つ。一方、コイル性能がそれほど高くない場合には、DVST[1:0]=1、2又は3に設定して、VST=5V、5.5V、6.0Vに設定する。この場合にはVST<VCCLの関係は成り立たなくなる。但し、例えばVST=5Vに設定したとしても、上述したように充電開始時には充電電流が流れることでVCCが低下する。従って、VST=5.0Vで通信が開始した後、充電開始時に、一旦、VCCが5.0Vよりも低い電圧(例えば4.0V)に低下し、その後に、再度、VCCが電圧VCCLを超えることで、バッテリー90の充電が開始することになる。
また本実施形態では、着地検出用の間欠送電により整流電圧VCCが電圧VSTよりも高くなった場合に、通信が開始して、着地検出用のダミーデータが通信データとして受電側から送電側に送信される。送電側はこのダミーデータを検出することで、受電側の着地を検出する。そして、送電側は着地検出に成功すると、受電側に対してその応答を行い、受電側は、送電側が応答を行ったことを条件に、負荷90への電力供給を開始して、バッテリー90の充電を開始する。
例えば図7Cは、送電側の応答手法の一例を説明する図である。例えば送電側は、通常時は送電周波数fck=f1で送電を行う。受電側は、着地検出用のダミーデータを送信した後に、送電装置10(充電器)を認証するためのID情報(認証情報、IDコード)を送電側に送信する。図7Cでは受電側はID情報を2回送信する。1回目のID情報をチェックした送電側は、2回目のID通信期間における応答期間TRSにおいて、送電周波数fckをf1からf2に変化させることで、ID情報による認証に対する応答を行う。受電側は、送電側がこのような応答を行った場合に、適正な送電装置10(充電器)に対して着地したと判断する。これにより簡易的な認証処理が実現される。認証に成功すると、受電側は、IC番号(ICN)や充電実行フラグ(CGO)を送電側に送信する。
具体的には図7Cにおいて、受電側は、1回目のID通信期間における期間TREFにおいて、送電周波数fck=f1を検出する。そして期間TREFでのfck=f1をリファレンス周波数として、2回目のID通信期間における期間TMSにおいて、送電周波数fck=f2を検出する。受電側は、期間TMSにおいて送電周波数fck=f2が検出された場合に、送電側が応答を行ったと判断する。
例えば受電側の制御装置50は、2次コイルL2の一端に現れるコイル端信号を、例えばヒステリシスタイプのコンパレーターを用いて整形することで、送電信号波形(受電信号波形)に対応する矩形波信号を抽出する。そして抽出された矩形波信号を用いて送電周波数fckを測定する。具体的には、受電側の制御装置50は、発振回路(例えばCR発振回路)を内蔵しており、この発振回路の発振信号に基づき生成されたクロック信号を用いて、送電周期T=1/fckの長さ(具体的には32×T)をカウントする測定を行うことで、送電周波数fck(送電周波数に対応する受電周波数)を測定する。なお送電側の応答は、このような送電周波数の変化による応答には限定されず、例えば送電信号波形のデューティーの変化や振幅の変化による応答であってもよい。
4.送電装置、受電装置、制御装置の詳細な構成例
図8に本実施形態の制御装置20、50及びこれを含む送電装置10、受電装置40の詳細な構成例を示す。なお図8において図2と同様の構成については詳細な説明を省略する。
図8では、送電部12は、1次コイルL1の一端を駆動する第1の送電ドライバーDR1と、1次コイルL1の他端を駆動する第2の送電ドライバーDR2と、電源電圧制御部14を含む。送電ドライバーDR1、DR2の各々は、例えばパワーMOSトランジスターにより構成されるインバーター回路(バッファー回路)などにより実現される。これらの送電ドライバーDR1、DR2は、制御装置20のドライバー制御回路22により制御(駆動)される。即ち、制御部24は、ドライバー制御回路22を介して送電部12を制御する。
電源電圧制御部14は、送電ドライバーDR1、DR2の電源電圧VDRVを制御する。例えば制御部24は、受電側から受信した通信データ(送電電力設定情報)に基づいて、電源電圧制御部14を制御する。これにより、送電ドライバーDR1、DR2に供給される電源電圧VDRVが制御されて、例えば送電電力の可変制御等が実現される。この電源電圧制御部14は、例えばDCDCコンバーターなどにより実現できる。例えば電源電圧制御部14は、電源からの電源電圧(例えば5V)の昇圧動作を行って、送電ドライバー用の電源電圧VDRV(例えば6V〜15V)を生成して、送電ドライバーDR1、DR2に供給する。具体的には、送電装置10から受電装置40への送電電力を高くする場合には、電源電圧制御部14は、送電ドライバーDR1、DR2に供給する電源電圧VDRVを高くし、送電電力を低くする場合には、電源電圧VDRVを低くする。
報知部16(表示部)は、無接点電力伝送システムの各種状態(電力伝送中、ID認証等)を、光や音や画像などを用いて報知(表示)するものであり、例えばLEDやブザーやLCDなどにより実現できる。
送電側の制御装置20は、ドライバー制御回路22、制御部24、通信部30、クロック生成回路37、発振回路38を含む。ドライバー制御回路22(プリドライバー)は、送電ドライバーDR1、DR2を制御する。例えばドライバー制御回路22は、送電ドライバーDR1、DR2を構成するトランジスターのゲートに対して制御信号(駆動信号)を出力し、送電ドライバーDR1、DR2により1次コイルL1を駆動させる。発振回路38は、例えば水晶発振回路などにより構成され、1次側のクロック信号を生成する。クロック生成回路37は、送電周波数(駆動周波数)を規定する駆動クロック信号等を生成する。そしてドライバー制御回路22は、この駆動クロック信号や制御部24からの制御信号などに基づいて、所与の周波数(送電周波数)の制御信号を生成し、送電部12の送電ドライバーDR1、DR2に出力して、制御する。
受電側の制御装置50は、受電部52、制御部54、負荷変調部56、電力供給部57、不揮発性メモリー62、検出部64を含む。
受電部52は、複数のトランジスターやダイオードなどにより構成される整流回路53を含む。整流回路53は、2次コイルL2の交流の誘起電圧を直流の整流電圧VCCに変換して、出力する。
負荷変調部56(広義には通信部)は負荷変調を行う。例えば負荷変調部56は電流源ISを有し、この電流源ISを用いて負荷変調を行う。具体的には、負荷変調部56は電流源IS(定電流源)とスイッチ素子SWを有する。電流源ISとスイッチ素子SWは、例えば整流電圧VCCのノードNVCとGND(広義には低電位側電源)のノードとの間に直列に設けられる。そして、例えば制御部54からの制御信号に基づいてスイッチ素子SWがオン又はオフにされ、ノードNVCからGNDに流れる電流源ISの電流(定電流)をオン又はオフにすることで、負荷変調が実現される。
なお、ノードNVCにはキャパシターCMの一端が接続される。このキャパシターCMは例えば制御装置50の外付け部品として設けられる。またスイッチ素子SWはMOSのトランジスターなどにより実現できる。このスイッチ素子SWは、電流源ISの回路を構成するトランジスターとして設けられるものであってもよい。また負荷変調部56は図8の構成に限定されず、例えば電流源ISの代わりとして抵抗を用いるなどの種々の変形実施が可能である。
電力供給部57は充電部58と放電部60を含む。充電部58はバッテリー90の充電(充電制御)を行う。例えば充電部58は、受電部52からの整流電圧VCC(広義には直流電圧)に基づく電圧が供給されて、バッテリー90を充電する。この充電部58は、電力供給スイッチ42とCC充電回路59を含むことができる。CC充電回路59は、バッテリー90のCC(Constant-Current)充電を行う回路である。
放電部60はバッテリー90の放電動作を行う。例えば放電部60は、バッテリー90の放電動作を行って、バッテリー90からの電力を電力供給対象100に対して供給する。例えば放電部60は、バッテリー90からのバッテリー電圧VBATが供給され、出力電圧VOUTを電力供給対象100に供給する。この放電部60はチャージポンプ回路61を含むことができる。チャージポンプ回路61は、バッテリー電圧VBATを降圧(例えば1/3降圧)して、出力電圧VOUT(VBAT/3)を電力供給対象100に対して供給する。この放電部60(チャージポンプ回路)は、例えばバッテリー電圧VBATを電源電圧として動作する。
不揮発性メモリー62(広義には記憶部)は、各種の情報を記憶する不揮発性のメモリーデバイスである。この不揮発性メモリー62は例えば受電装置40のステータス情報等の各種の情報を記憶する。不揮発性メモリー62としては、例えばEEPROMなどを用いることができる。EEPROMとしては例えばMONOS(Metal-Oxide-Nitride-Oxide-Silicon)型のメモリーを用いることができる。例えばMONOS型のメモリーを用いたフラッシュメモリーを用いることができる。或いはEEPROMとして、フローティングゲート型などの他のタイプのメモリーを用いてもよい。
検出部64は各種の検出処理を行う。例えば検出部64は、整流電圧VCCやバッテリー電圧VBAT等を監視して、各種の検出処理を実行する。具体的には検出部64はA/D変換回路65を有し、整流電圧VCCやバッテリー電圧VBATに基づく電圧や、不図示の温度検出部からの温度検出電圧などを、A/D変換回路65によりA/D変換し、得られたデジタルのA/D変換値を用いて検出処理を実行する。検出部64が行う検出処理としては、過放電、過電圧、過電流、或いは温度異常(高温、低温)の検出処理を想定できる。
そして図8では、負荷変調部56は、受電部52の出力電圧VCCが第1の電圧(VST)よりも高くなって着地が検出された場合に、負荷変調を開始し、取り去りが検出された場合に、負荷変調を停止する。具体的には負荷変調部56は、電子機器510の着地が検出された場合に、負荷変調を開始する。送電装置10(制御部24)は、例えば受電装置40(負荷変調部56)が負荷変調を開始したことを条件に、送電部12による通常送電を開始させる。そして電子機器510の取り去りが検出された場合に、負荷変調部56は負荷変調を停止する。送電装置10(制御部24)は、負荷変調が継続されている間は、送電部12による通常送電を継続させる。即ち、負荷変調が非検出となった場合に、通常送電を停止させ、例えば着地検出用の間欠送電を送電部12に行わせる。この場合に受電側の制御部54は、受電部52の出力電圧VCCに基づいて、着地検出、取り去り検出を行うことができる。
また図8では、図2の通信部46が、負荷変調により通信データを送信する負荷変調部56により実現されている。具体的には、負荷変調部56は、送電装置10(制御装置20)に送信する通信データ(通信データのビット)の第1の論理レベル(例えば「1」)については、第1の負荷状態と第2の負荷状態で構成される負荷変調パターンが第1のパターン(第1のビットパターン)となる負荷変調を行う。一方、送電装置10に送信する通信データ(通信データのビット)の第2の論理レベル(例えば「0」)については、負荷変調パターンが第1のパターンとは異なる第2のパターン(第2のビットパターン)となる負荷変調を行う。
一方、送電側の通信部30は、負荷変調パターンが第1のパターンである場合には、第1の論理レベルの通信データであると判断し、負荷変調パターンが第2のパターンである場合には、第2の論理レベルの通信データであると判断する。
ここで第1のパターンは、例えば第1の負荷状態の期間の幅が第2のパターンに比べて長くなるパターンである。例えば通信部30は、第1のパターンにおける第1の負荷状態の期間内に設定された第1のサンプリングポイントから、所与のサンプリング間隔で負荷変調パターンのサンプリングを行って、所与のビット数(例えば16ビット、64ビット)の通信データを取り込む。
このような負荷変調パターンを用いた手法によれば、負荷変調による負荷変動についての検出感度や検出のノイズ耐性の向上を図れる。これにより、通信開始電圧(負荷変調開始電圧)である第1の電圧を低い電圧に設定することが可能になる。この結果、広い距離範囲で着地を検出して、通信を開始し、バッテリー90の充電のための制御(例えば送電電力制御)を送電側に行わせることが可能になる。
また電力供給部57は、受電部52が受電した電力に基づいて、バッテリー90を充電する充電部58と、バッテリー90の放電動作を行って、バッテリー90からの電力を電力供給対象100に対して供給する放電部60を含む。
そして制御部54(放電系の制御部)は、着地が検出された場合に、放電部60の放電動作を停止する。即ち図1Aにおいて電子機器510の着地が検出された場合に、放電部60の放電動作(VOUTの供給)を停止して、バッテリー90の電力が電力供給対象100に放電されないようにする。そして制御部54は、取り去り期間(電子機器510が取り去られている期間)において、放電部60に放電動作を行わせる。この放電動作により、バッテリー90からの電力が放電部60を介して電力供給対象100に供給されるようになる。
5.無接点電力伝送システムの動作シーケンス
次に本実施形態の無接点電力伝送システムの動作シーケンスの一例について説明する。図9は動作シーケンスの概要を説明する図である。
図9のA1では、受電装置40を有する電子機器510が、送電装置10を有する充電器500に上に置かれておらず、取り去り状態になっている。この場合にはスタンバイステートとなる。このスタンバイステートでは、送電装置10の送電部12は、着地検出のための間欠送電を行って、電子機器510の着地を検出する状態になる。またスタンバイモードでは、受電装置40では、電力供給対象100への放電動作がオンになっており、電力供給対象100への電力供給がイネーブルになっている。これにより、処理部等の電力供給対象100は、バッテリー90からの電力が供給されて動作可能になる。
図9のA2に示すように、電子機器510が充電器500に上に置かれ、着地が検出されると、通信チェック&充電ステートになる。この通信チェック&充電ステートでは、送電装置10の送電部12は、連続送電である通常送電を行う。この際に、電力伝送の状態などに応じて電力が可変に変化する電力制御を行いながら、通常送電を行う。またバッテリー90の充電状態に基づく制御も行われる。電力伝送の状態は、例えば1次コイルL1、2次コイルL2の位置関係(コイル間距離等)などにより決まる状態であり、例えば受電部52の整流電圧VCCなどの情報に基づいて判断できる。バッテリー90の充電状態は、例えばバッテリー電圧VBATなどの情報に基づいて判断できる。
また通信チェック&充電ステートでは、受電装置40の充電部58の充電動作がオンになり、受電部52が受電した電力に基づいてバッテリー90の充電が行われる。また放電部60の放電動作がオフになり、バッテリー90からの電力が、電力供給対象100に供給されなくなる。また通信チェック&充電ステートでは、負荷変調部56の負荷変調により、通信データが送電側に送信される。例えば電力伝送状態情報(VCC等)や、充電状態情報(VBATや各種のステータスフラグ等)や、温度などの情報を含む通信データが、通常送電期間中の常時の負荷変調により、受電側から送電側に送信される。
図9のA3に示すように、バッテリー90の満充電が検出されると、満充電スタンバイステートになる。この満充電スタンバイステートでは、送電部12は、例えば取り去り検出のための間欠送電を行って、電子機器510の取り去りを検出する状態になる。また放電部60の放電動作はオフのままとなり、電力供給対象100への電力供給もディスエーブルのままとなる。
図9のA4に示すように電子機器510の取り去りが検出されると、A5に示すように電子機器510が使用状態になり、受電側の放電動作がオンになる。具体的には、放電部60の放電動作がオフからオンに切り替わり、バッテリー90からの電力が放電部60を介して電力供給対象100に供給される。これにより、バッテリー90からの電力が供給されて、処理部等の電力供給対象100が動作し、ユーザーが電子機器510を通常に使用できる状態となる。
以上のように本実施形態では図9のA1に示すように、電子機器510の着地が検出されると、通常送電が行われ、この通常送電期間において常時の負荷変調が行われる。また着地が検出されると、放電部60の放電動作が停止する。そして、この常時の負荷変調では、送電側の電力制御のための情報や受電側のステータスを表す情報を含む通信データが、受電側から送電側に送信される。例えば電力制御のための情報(電力伝送状態情報)を通信することで、例えば1次コイルL1と2次コイルL2の位置関係等に応じた最適な電力制御を実現できる。また受電側のステータスを表す情報を通信することで、最適で安全な充電環境を実現できる。そして本実施形態では、負荷変調が継続している間は、通常送電も継続され、放電部60の放電動作もオフのままになる。
また本実施形態では図9のA3に示すように、バッテリー90の満充電が検出されると、通常送電が停止し、取り去り検出用の間欠送電が行われる。そしてA4、A5に示すように、取り去りが検出されて、取り去り期間になると、放電部60の放電動作が行われる。これによりバッテリー90からの電力が電力供給対象100に供給されて、電子機器510の通常動作が可能になる。なお、着地検出や取り去り検出は、受電部52の出力電圧VCCに基づいて行われる。
このように本実施形態では、電子機器510のバッテリー90の充電期間(通常送電期間)においては、電力供給対象100への放電動作がオフになるため、充電期間において電力供給対象100により無駄に電力が消費されてしまう事態を抑制できる。
そして、電子機器510の取り去りが検出されると、通常送電から間欠送電に切り替わると共に、電力供給対象100への放電動作がオンになる。このように放電動作がオンになることで、バッテリー90からの電力が電力供給対象100に供給されるようになり、処理部(DSP)等の電力供給対象100の通常動作が可能になる。このようにすることで、例えば電子機器510が充電器500の上に置かれる充電期間においては動作しないようなタイプの電子機器510(例えば、補聴器、ウェアラブル機器等のユーザーが装着する電子機器)において、好適な無接点電力伝送の動作シーケンスを実現できる。
図10、図11、図12は本実施形態の無接点電力伝送システムの動作シーケンスの詳細を説明するための信号波形図である。
図10のB1は、図9のA1のスタンバイステートであり、着地検出用の間欠送電が行われている。即ち、期間TL1の間隔毎に期間TL2の間隔の送電が行われる。TL1の間隔は例えば3秒であり、TL2の間隔は例えば50ミリ秒である。そして図10のB2、B3では、整流電圧VCCは電圧VST以下(第1の電圧以下)であるため、負荷変調による通信は行われない。
一方、B4では整流電圧VCCが電圧VST(例えば4.5V)を超えたため、B5に示すように負荷変調部56が負荷変調を開始する。即ち、B2、B3ではL1、L2のコイルが十分には電磁的結合状態になっていないが、B4ではL1、L2のコイルが図1Bに示すように適正な電磁的結合状態になっている。このため、整流電圧VCCが上昇して、電圧VSTを超え、B5に示すように負荷変調が開始する。そして、この負荷変調により、B6に示すような通信データが送電側に送信される。このB5の負荷変調は、B7に示す着地検出用の間欠送電により整流電圧VCCが上昇したことにより開始している。
具体的には、受電側は、着地検出用のダミーデータ(例えば64ビットの「0」)を送信する。送電側は、このダミーデータを検出(例えば8ビットの「0」の検出)することで、受電側の着地を検出して、B7に示すように通常送電(連続送電)を開始する。
次に受電側は、ID情報や整流電圧VCCの情報を送信する。前述したように、ID情報の送信に対して送電側が応答を行うことで、簡易的な認証処理が実現される。
また送電側は、整流電圧VCCの情報である送電電力設定情報を受信して、送電電力の制御を行う。この送電側の送電電力の制御により、B8に示すように整流電圧VCCが上昇する。そしてB9に示すように、VCCが電圧VCCL(第2の電圧)を超えると、バッテリー90の充電が開始する。
このように本実施形態では、負荷変調(通信)を開始する電圧VSTを低く設定できる。これにより送電側の駆動電圧が高く設定されることによる耐圧異常等の不具合の発生を抑制できる。そして、開始した負荷変調により、送電電力設定情報(VCC)を送電側に送信することで、送電側の送電電力の制御が行われ、この送電電力の制御により、B8に示すように整流電圧VCCが上昇する。そして、整流電圧VCCが上昇して、B9に示すように充電可能電圧である電圧VCCLを超えると、バッテリー90の充電が開始するようになる。従って、広い距離範囲での着地検出と、耐圧異常等の不具合の発生の抑制とを、両立して実現できるようになる。
図11のC1では、バッテリー90の充電が行われる通常送電期間において、電子機器510が取り去られている。このC1の取り去りは、C2、C3に示すように、バッテリー90の満充電前(満充電フラグ=Lレベル)の取り去りである。
このように電子機器510の取り去りが行われると、送電側の電力が受電側に伝達されなくなり、整流電圧VCCが低下する。そしてC4に示すように例えばVCC<3.1Vになると、C5に示すように負荷変調部56による負荷変調が停止する。負荷変調が停止すると、C6に示すように送電部12による通常送電が停止する。
また、整流電圧VCCが低下し、判定電圧である例えば3.1Vを下回ると、不図示の受電側のスタートキャパシターの放電が開始する。このスタートキャパシターは、受電側の放電動作の起動用(起動期間の計測用)のキャパシターであり、例えば受電側の制御装置50の外付け部品として設けられる。そして、整流電圧VCCが判定電圧(3.1V)を下回ってから、起動期間TSTが経過すると、C8に示すように放電部60の放電動作がオフからオンに切り替わり、バッテリー90からの電力が電力供給対象100に供給されるようになる。また送電部12は、通常送電を停止した後、C9に示すように、着地検出用の間欠送電を行うようになる。
なお本実施形態では受電側の制御部54として、充電系の制御部と、放電系の制御部が設けられている。充電系の制御部は、受電部52の整流電圧VCC(出力電圧)による電源電圧が供給されて動作する。一方、放電系の制御部や放電部60は、バッテリー電圧VBATによる電源電圧が供給されて動作する。そしてスタートキャパシターの充放電の制御や、放電部60の放電動作の制御(オン・オフ制御)は、放電系の制御部が行うことになる。
図12のD1では、満充電フラグがアクティブレベルであるHレベルになっており、バッテリー90の満充電が検出されている。このように満充電が検出されると、D2に示すように満充電後の取り去り検出用の間欠送電が行われる。即ち、期間TR1の間隔毎に期間TR2の間隔の送電が行われる。TR1の間隔は例えば1.5秒であり、TR2の間隔は例えば50ミリ秒である。取り去り検出用の間欠送電の期間TR1の間隔は、着地検出用の間欠送電の期間TL1の間隔に比べて、短くなっている。
この取り去り検出用の間欠送電により、図12のD3、D4に示すように整流電圧がVCC>VSTとなり、D5、D6に示すように負荷変調が行われる。送電側は、この負荷変調(空の通信データ等)を検出することで、電子機器510が未だ取り去られていないことを検出できる。
そして、前述のスタートキャパシターにより設定されるD7に示す起動期間TSTの間隔(例えば3秒より長い)に比べて、取り去り検出用の間欠送電の期間TR1の間隔(例えば1.5秒)は短い。従って、電子機器510が取り去られていない状態では、スタートキャパシターの電圧(充電電圧)は、放電動作オンのための閾値電圧VTを下回らず、D8に示すように放電動作のオフからオンへの切り替わりは行われない。
一方、D9では、電子機器510が取り去られている。そして、D4に示す取り去り検出用の間欠送電の期間TR2の終了後に、D10に示すように、整流電圧VCCは判定電圧である3.1Vを下回るため、D7に示す起動期間TSTの計測がスタートする。そしてD11では、スタートキャパシターの電圧が放電動作オンのための閾値電圧VTを下回っており、起動期間TSTの経過が検出されている。これにより、放電部60の放電動作がオフからオンに切り替わり、バッテリー90からの電力が電力供給対象100に供給されるようになる。またD12に示すように、電子機器510の着地検出用の間欠送電が行われるようになる。
以上のように本実施形態では、図10のB5に示すように受電装置40が負荷変調を開始したことを条件に、B7に示すように送電部12による通常送電が開始する。そしてB5の負荷変調が継続されている間は、B7に示す通常送電は継続する。具体的には図11のC5に示すように負荷変調が非検出となった場合に、C6に示すように送電部12による通常送電が停止する。そしてC9に示すように送電部12による着地検出用の間欠送電が行われるようになる。
このように本実施形態では、負荷変調の開始を条件に通常送電を開始し、負荷変調が継続されている間は通常送電を継続し、負荷変調が非検出になると通常送電を停止するという動作シーケンスを採用している。このようにすれば、シンプルで簡素な動作シーケンスで、無接点電力伝送と、負荷変調による通信を実現できるようになる。また、通常送電期間中において、常時の負荷変調による通信を行うことで、電力伝送の状態等に応じた効率的な無接点電力伝送も実現できるようになる。
6.通信手法
図13は、負荷変調による通信手法を説明する図である。図13に示すように、送電側では、送電ドライバーDR1、DR2が、電源電圧制御部14から供給された電源電圧VDRVに基づいて動作して、1次コイルL1を駆動する。
一方、受電側(2次側)では、2次コイルL2のコイル端電圧を受電部52の整流回路53が整流し、ノードNVCに整流電圧VCCが出力される。なお、1次コイルL1とキャパシターCA1により送電側の共振回路が構成され、2次コイルL2とキャパシターCA2により受電側の共振回路が構成されている。
受電側では、負荷変調部56のスイッチ素子SWをオン・オフさせることで、電流源ISの電流ID2をノードNVCからGND側に間欠的に流して、受電側の負荷状態(受電側の電位)を変動させる。
送電側では、負荷変調による受電側の負荷状態の変動により、電源ラインに設けられたセンス抵抗RCSに流れる電流ID1が変動する。例えば送電側の電源(例えば図1Aの電源アダプター502等の電源装置)と電源電圧制御部14との間に、電源に流れる電流を検出するためのセンス抵抗RCSが設けられている。電源電圧制御部14は、このセンス抵抗RCSを介して電源から電源電圧が供給される。そして負荷変調による受電側の負荷状態の変動により、電源からセンス抵抗RCSに流れる電流ID1が変動し、通信部30が、この電流変動を検出する。そして通信部30は、検出結果に基づいて、負荷変調により送信される通信データの検出処理を行う。
図14に通信部30の具体的な構成の一例を示す。通信部30は、電流検出回路32、比較回路34、復調部36を含む。また信号増幅用のアンプAP、フィルター部35を含むことができる。
電流検出回路32は、電源(電源装置)から電源電圧制御部14を介して送電部12に流れる電流ID1を検出する。この電流ID1は、例えばドライバー制御回路22等に流れる電流を含んでいてもよい。電流検出回路32は、IV変換用アンプIVCにより構成される。IV変換用アンプIVCは、センス抵抗RCSに微少の電流ID1が流れることで生成される微少の電圧VC1−VC2を増幅して、検出電圧VDTとして出力する。アンプAPは、基準電圧VRFを基準として検出電圧VDTを増幅した検出電圧VDTAの信号を、比較回路34に出力する。
比較回路34は、電流検出回路32による検出電圧VDTAと、判定用電圧VCP=VRF+VOFFとの比較判定を行い、比較判定結果CQを出力する。比較回路34は、コンパレーターCPにより構成できる。この場合に、例えば判定用電圧VCP=VRF+VOFFの電圧VOFFは、コンパレーターCPのオフセット電圧などにより実現できる。
復調部36は、比較回路34の比較判定結果CQ(フィルター処理後の比較判定結果FQ)に基づいて負荷変調パターンの復調処理を行うことで、通信データを検出し、検出データDATとして出力する。比較回路34と復調部36との間にはフィルター部35が設けられており、復調部36は、フィルター部35によるフィルター処理後の比較判定結果FQに基づいて、負荷変調パターンの復調処理を行う。
フィルター部35、復調部36は、例えば駆動クロック信号FCKが供給されて動作する。駆動クロック信号FCKは、送電周波数を規定する信号であり、ドライバー制御回路22は、この駆動クロック信号FCKが供給されて、送電部12の送電ドライバーDR1、DR2を駆動する。
図15は、受電側の通信構成を説明する図である。受電部52は、2次コイルL2のコイル端信号を整形することで、送電信号波形に対応する矩形波信号を抽出して、通信データ生成部43に供給する。通信データ生成部43は制御部54に設けられており、送電周波数測定部44を含む。送電周波数測定部44は、送電信号波形に対応する矩形波信号の周期を、発振回路45で生成されたクロック信号を用いてカウントすることで、送電周波数を測定する。そして通信データ生成部43は、測定された送電周波数に基づいて、通信データを送信するための制御信号CSWを生成して、負荷変調部56に出力する。そして、制御信号CSWにより例えばスイッチ素子SWのオン・オフ制御を行って、通信データに対応する負荷変調を負荷変調部56に行わせる。
負荷変調部56は、例えば第1の負荷状態、第2の負荷状態というように、受電側の負荷状態(負荷変調による負荷)を変化させることで、負荷変調を行う。第1の負荷状態は、例えばスイッチ素子SWがオンになる状態であり、受電側の負荷状態(負荷変調の負荷)が高負荷(インピーダンス小)になる状態である。第2の負荷状態は、例えばスイッチ素子SWがオフになる状態であり、受電側の負荷状態(負荷変調の負荷)が低負荷(インピーダンス大)になる状態である。
そして、これまでの負荷変調手法では、例えば第1の負荷状態を、通信データの論理レベル「1」(第1の論理レベル)に対応させ、第2の負荷状態を、通信データの論理レベル「0」(第2の論理レベル)に対応させて、受電側から送電側への通信データの送信を行っていた。即ち、通信データのビットの論理レベルが「1」である場合には、スイッチ素子SWをオンにし、通信データのビットの論理レベルが「0」である場合には、スイッチ素子SWをオフにすることで、所定のビット数の通信データを送信していた。
しかしながら、例えばコイル間の結合度が低かったり、コイルが小型であったり、送電電力も低パワーであるような用途では、このような従来の負荷変調手法では、適正な通信の実現が難しい。即ち、負荷変調により受電側の負荷状態を、第1の負荷状態、第2の負荷状態というように変化させても、ノイズ等が原因で、通信データの論理レベル「1」、「0」のデータ検出エラーが発生してしまう。つまり、受電側で負荷変調を行っても、この負荷変調により、送電側のセンス抵抗RCSに流れる電流ID1は、非常に微少な電流となる。このため、ノイズが重畳すると、データ検出エラーが発生し、ノイズ等を原因とする通信エラーが発生してしまう。
例えば図16は、検出電圧VDTA、比較回路34の判定用電圧VCP及び比較判定結果CQの信号波形を模式的に示した図である。図16に示すように、検出電圧VDTAは、基準電圧VRFを基準にして変化する電圧信号になっており、判定用電圧VCPは、この基準電圧VRFにコンパレーターCPのオフセット電圧VOFFを加算した電圧信号になっている。
そして図16に示すように、例えば検出電圧VDTAの信号にノイズが重畳すると、F1、F2に示すように比較判定結果CQの信号のエッジの位置が変化し、期間TM1の幅(間隔)が長くなったり、短くなるというように変動してしまう。例えば期間TM1が論理レベル「1」に対応する期間であるとすると、期間TM1の幅が変動すると、通信データのサンプリングエラーが発生してしまい、通信データの検出エラーが生じる。特に、通常送電期間において常時の負荷変調を行って通信を行う場合には、通信データに重畳されるノイズが多くなる可能性があり、通信データの検出エラーが発生する確率が高くなってしまう。
そこで本実施形態では、通信データの各ビットの論理レベル「1」(データ1)、論理レベル「0」(データ0)を、負荷変調パターンを用いて、受電側から送信し、送電側において検出する手法を採用している。
具体的には図17に示すように、受電側の負荷変調部56は、送電装置10に送信する通信データの第1の論理レベル「1」については、負荷変調パターンが第1のパターンPT1となる負荷変調を行う。一方、通信データの第2の論理レベル「0」については、負荷変調パターンが第1のパターンPT1とは異なる第2のパターンPT2となる負荷変調を行う。
そして送電側の通信部30(復調部)は、負荷変調パターンが第1のパターンPT1である場合には、第1の論理レベル「1」の通信データであると判断する。一方、負荷変調パターンが第1のパターンPT1とは異なる第2のパターンPT2である場合には、第2の論理レベル「0」の通信データであると判断する。
ここで負荷変調パターンは、第1の負荷状態と第2の負荷状態で構成されるパターンである。第1の負荷状態は、負荷変調部56による受電側の負荷が、例えば高負荷になる状態である。具体的には、図17において、第1の負荷状態の期間TM1は、負荷変調部56のスイッチ素子SWがオンになって、電流源ISの電流がノードNVCからGND側に流れる期間であり、第1、第2のパターンPT1、PT2のHレベル(ビット=1)に対応する期間である。
一方、第2の負荷状態は、負荷変調部56による受電側の負荷が、例えば低負荷になる状態である。具体的には、図17において第2の負荷状態の期間TM2は、負荷変調部56のスイッチ素子SWがオフになる期間であり、第1、第2のパターンPT1、PT2のLレベル(ビット=0)に対応する期間である。
そして図17において、第1のパターンPT1は、第1の負荷状態の期間TM1の幅が第2のパターンPT2に比べて長くなるパターンとなっている。このように第1の負荷状態の期間TM1の幅が、第2のパターンPT2に比べて長い第1のパターンPT1については、論理レベル「1」であると判断される。一方、第1の負荷状態の期間TM1の幅が、第1のパターンPT1に比べて短い第2のパターンPT2については、論理レベル「0」であると判断される。
図17に示すように、第1のパターンPT1は、例えば(1110)のビットパターンに対応するパターンである。第2のパターンPT2は、例えば(1010)のビットパターンに対応するパターンである。これらのビットパターンにおいて、ビット=1は、負荷変調部56のスイッチ素子SWがオンになる状態に対応し、ビット=0は、負荷変調部56のスイッチ素子SWがオフになる状態に対応する。
例えば受電側は、送信する通信データのビットが論理レベル「1」である場合には、第1のパターンPT1に対応する(1110)のビットパターンで、負荷変調部56のスイッチ素子SWをオン又はオフにする。具体的には、スイッチ素子SWを、順に、オン、オン、オン、オフにするスイッチ制御を行う。そして送電側は、負荷変調パターンが、(1110)のビットパターンに対応する第1のパターンPT1であった場合には、通信データのビットの論理レベルは「1」であると判断する。
一方、受電側は、送信する通信データのビットが論理レベル「0」である場合には、第2のパターンPT2に対応する(1010)のビットパターンで、負荷変調部56のスイッチ素子SWをオン又はオフにする。具体的には、スイッチ素子SWを、順に、オン、オフ、オン、オフにするスイッチ制御を行う。そして送電側は、負荷変調パターンが、(1010)のビットパターンに対応する第2のパターンPT2であった場合には、通信データのビットの論理レベルは「0」であると判断する。
ここで、送電部12の送電周波数(駆動クロック信号FCKの周波数)をfckとし、送電周期をT=1/fckとした場合には、第1、第2のパターンPT1、PT2の長さは、例えば512×Tと表すことができる。この場合に、1つのビット区間の長さは、(512×T)/4=128×Tと表される。従って、受電側は、通信データのビットが論理レベル「1」である場合には、例えば128×Tの間隔で、第1のパターンPT1に対応する(1110)のビットパターンで、負荷変調部56のスイッチ素子SWをオン又はオフにする。また受電側は、通信データのビットが論理レベル「0」である場合には、例えば128×Tの間隔で、第2のパターンPT2に対応する(1010)のビットパターンで、負荷変調部56のスイッチ素子SWをオン又はオフにする。
一方、送電側は、例えば図18に示す手法で通信データの検出処理及び取り込み処理を行う。例えば通信部30(復調部)は、第1のパターンPT1における第1の負荷状態の期間TM1内に設定された第1のサンプリングポイントSP1から、所与のサンプリング間隔SIで負荷変調パターンのサンプリングを行って、所与のビット数の通信データを取り込む。
例えば図18のサンプリングポイントSP1、SP2、SP3、SP4、SP5、SP6は、サンプリング間隔SI毎に設定されるサンプリングポイントである。このサンプリング間隔SIは、負荷変調パターンの長さに対応する間隔である。例えば図17では、第1、第2のパターンPT1、PT2の長さは512×T(=512/fck)となっているため、サンプリング間隔SIの長さも512×Tになる。
そして図18では、期間TS1、TS2、TS3、TS4、TS5、TS6での負荷変調パターンは、各々、PT1、PT2、PT1、PT2、PT2、PT2になっている。従って、図18の場合には、第1のサンプリングポイントSP1から、サンプリング間隔SIで負荷変調パターンのサンプリングを行うことで、例えばビット数=6である通信データ(101000)が取り込まれることになる。
具体的には、第1の負荷状態の期間TM1の幅が、第1の範囲幅内(220×T〜511×T)である場合に、図18に示すように、第1の負荷状態の期間TM1内に、第1のサンプリングポイントSP1を設定する。即ち、信号レベルがHレベルとなる期間TM1の幅が、第1の範囲幅内である場合に、ビット同期を行い、その期間TM1内の例えば中心点に、第1のサンプリングポイントSP1を設定する。そして、設定された第1のサンプリングポイントSP1から、サンプリング間隔SI毎にサンプリングを行う。そして取り込んだ信号のレベルが、Hレベル(第1の負荷状態)であれば、論理レベル「1」(第1のパターンPT1)であると判断し、Lレベル(第2の負荷状態)であれば、論理レベル「0」(第2のパターンPT2)であると判断する。
ここで第1の範囲幅(220×T〜511×T)は、第1のパターンPT1における第1の負荷状態の期間TM1(384×T)に対応して設定される範囲幅である。即ち、図16で説明したように、ノイズ等が原因となって、期間TM1の幅は変動してしまう。そして第1のパターンPT1における期間TM1の幅のティピカル値は、3ビット分(111)に対応する幅である128×3×T=384×Tである。従って、この384×Tを含むような第1の範囲幅220×T〜511×Tを設定する。そして、第1の範囲幅220×T〜511×T内であるHレベルの期間については、第1のパターンPT1の期間TM1であると判断し、第1のサンプリングポイントSP1を設定するためのビット同期を行う。このようにすることで、図16に示すようにノイズが信号に重畳している場合にも、適正なビット同期を行って、適切な第1のサンプリングポイントSP1を設定できるようになる。
そして、このように第1のサンプリングポイントSP1を設定した後は、サンプリング間隔SI毎にサンプリングを行い、各サンプリングポイントでの負荷状態(信号レベル)に基づいて、第1、第2のパターンPT1、PT2のいずれなのかを判断する。
例えば図18では、サンプリングポイントSP2での負荷状態は第2の負荷状態(Lレベル)であるため、第2のパターンPT2であると判断され、論理レベルが「0」であると判断される。サンプリングポイントSP3での負荷状態は第1の負荷状態(Hレベル)であるため、第1のパターンPT1であると判断され、論理レベルが「1」であると判断される。サンプリングポイントSP4、SP5、SP6での負荷状態は第2の負荷状態(Lレベル)であるため、第2のパターンPT2であると判断され、論理レベルが「0」であると判断される。
なお、図18の各サンプリングポイントSP2〜SP6において、そのサンプリングポイントを含む負荷状態の期間の幅が、所定の範囲幅内であるか否かを確認するようにしてもよい。
例えば第2のサンプリングポイントSP2において、負荷状態が第1の負荷状態(Hレベル)であり、且つ、第2のサンプリングポイントSP2を含む第1の負荷状態の期間TM1の幅が、第1の範囲幅内(220×T〜511×T)である場合には、第2のサンプリングポイントSP2での負荷変調パターンが第1のパターンPT1(論理レベル「1」)であると判断する。
一方、第2のサンプリングポイントSP2において、負荷状態が第2の負荷状態(Lレベル)であり、且つ、第2のサンプリングポイントSP2を含む第2の負荷状態の期間TM2の幅が、第2の範囲幅内(例えば80×T〜150×T)である場合には、第2のサンプリングポイントSP2での負荷変調パターンが第2のパターンPT2(論理レベル「0」)であると判断する。
ここで第2の範囲幅(80×T〜150×T)は、第2のパターンPT2における第2の負荷状態の期間TM2(128×T)に対応して設定される範囲幅である。期間TM2のティピカル値は、1ビットに対応する幅である128×Tとなるため、この128×Tを含むような第2の範囲幅80×T〜150×Tが設定される。
以上のように本実施形態では、負荷変調パターンを判別して通信データの論理レベルを判定している。例えば従来では、負荷変調部56のスイッチ素子SWがオンになる第1の負荷状態を論理レベル「1」と判断し、スイッチ素子SWがオフになる第2の負荷状態を論理レベル「0」と判断するような手法を採用している。しかしながら、この従来例の手法では、図16で説明したように、ノイズ等が原因で通信データの検出エラーが発生してしまうおそれがある。
これに対して本実施形態では、負荷変調パターンが、例えば図17に示すような第1、第2のパターンPT1、PT2のいずれであるかを判別することで、通信データの各ビットの論理レベルを検出している。従って、図16のようなノイズが多いような状況においても、通信データの適正な検出が可能になる。即ち、図17の第1、第2のパターンPT1、PT2では、例えば第1の負荷状態(Hレベル)の期間TM1の幅が大きく異なっており、本実施形態では、この期間TM1の幅の違いを判別することで、パターンを判別して、通信データの各ビットの論理レベルを検出している。例えば図18の最初のビット同期において、期間TM1の幅が第1の範囲幅内(220×T〜511×T)である場合に、その期間TM1の中心点にサンプリングポイントSP1を設定し、その後のサンプリングポイントSP2、SP3、SP4・・・での信号の取り込みを行っている。従って、例えばノイズが原因でサンプリングポイントSP1での期間TM1の幅等が変動した場合にも、通信データの適正な検出が可能になる。また、以降のサンプリングポイントSP2、SP3、SP4・・・は、サンプリング間隔SIに基づき簡素な処理で設定できるため、通信データの検出処理の処理負荷も軽減できるという利点がある。
図19A、図19Bに、本実施形態で用いられる通信データのフォーマットの例を示す。
図19Aでは、通信データは64ビットで構成され、この64ビットで1つのパケットが構成される。一番目の16ビットは0000hとなっている。例えば受電側の負荷変調を検出して送電側が通常送電(或いは間欠送電)を開始する場合に、通信部30の電流検出回路32等が動作して、通信データを適正に検出できるようになるまでに、ある程度の時間が必要になる。このため、一番目の16ビットには、ダミー(空)のデータである0000hを設定する。送電側は、この1番目の16ビットの0000hの通信期間において、例えばビット同期のために必要な種々の処理を行うことになる。
次の2番目の16ビットには、データコードと、整流電圧(VCC)の情報が設定される。データコードは、図19Bに示すように、次の3番目の16ビットで通信されるデータを特定するためのコードである。整流電圧(VCC)は、送電装置10の送電電力設定情報として用いられる。
3番目の16ビットには、データコードでの設定に従って、温度、バッテリー電圧、バッテリー電流、ステータスフラグ、サイクル回数、IC番号・充電実行・オフスタート、或いはIDなどの情報が設定される。温度は例えばバッテリー温度などである。バッテリー電圧、バッテリー電流は、バッテリー90の充電状態を表す情報である。ステータスフラグは、例えば温度エラー(高温異常、低温異常)、バッテリーエラー(1.0V以下のバッテリー電圧)、過電圧エラー、タイマーエラー、満充電(ノーマルエンド)などの受電側のステータスを表す情報である。サイクル回数(サイクルタイム)は充電回数を表す情報である。IC番号は、制御装置のICを特定するための番号である。充電実行のフラグ(CGO)は、認証した送電側が適正であり、送電側からの送電電力に基づいて充電を実行することを示すフラグである。4番目の16ビットにはCRCの情報が設定される。
なお本実施形態の通信手法は、図17〜図19B等で説明した手法に限定されず、種々の変形実施が可能である。例えば図17では第1のパターンPT1に論理レベル「1」を対応づけ、第2のパターンPT2に論理レベル「0」を対応づけているが、この対応づけは逆であってもよい。また、図17の第1、第2のパターンPT1、PT2は負荷変調パターンの一例であり、本実施形態の負荷変調パターンはこれに限定されず、種々の変形実施が可能である。例えば図17では、第1、第2のパターンPT1、PT2は同じ長さに設定されているが、異なる長さに設定してもよい。また図17では、ビットパターン(1110)の第1のパターンPT1と、ビットパターン(1010)の第2のパターンPT2を用いているが、これらとは異なったビットパターンの第1、第2のパターンPT1、PT2を採用してもよい。例えば第1、第2のパターンPT1、PT2は、少なくとも第1の負荷状態の期間TM1(或いは第2の負荷状態の期間TM2)の長さが異なるパターンであればよく、図17とは異なる種々のパターンを採用できる。また、通信データのフォーマットや通信処理も本実施形態で説明した手法に限定されず、種々の変形実施が可能である。
7.送電電力の制御
本実施形態では、送電側は受電側からの通信データに基づいて送電制御を行う手法を採用している。具体的には、制御部24は、通常送電の期間では、通信データが含む送電電力設定情報に基づき可変に変化する電源電圧VDRVを、電源電圧制御部14から送電ドライバーDR1、DR2に供給させる。これにより、送電部12の送電電力が、送電電力設定情報に基づき可変に制御されるようになる。
一方、制御部24は、着地検出用、取り去り検出用の間欠送電の期間では、着地検出用、取り去り検出用の電源電圧VDRVを、電源電圧制御部14から送電ドライバーDR1、DR2に供給させる。
ここで、着地検出用、取り去り検出用の電源電圧は、図10、図11、図12の1次コイル駆動電圧の信号波形において、高電位側の電圧レベルに対応する電圧である。これらの着地検出用の電源電圧と取り去り検出用の電源電圧は同じ電圧であってもよいし、異なる電圧であってもよい。例えば、取り去り検出用の電源電圧を、着地検出用の電源電圧よりも高い電圧に設定してもよい。取り去り検出用の電源電圧を高い電圧に設定することで、電子機器510が実際には取り去られていないのに、取り去られたと誤検出されるような事態を抑制できる。
或いは制御部24は、着地検出用又は取り去り検出用の電源電圧として、可変の電圧を、電源電圧制御部14から送電ドライバーDR1、DR2に供給させてもよい。
着検出用の電源電圧として、例えば6V、9Vというように2種類の電源電圧を用意することで、広い範囲での着地検知が可能となる。例えばL1、L2のコイル間が近い場合に、いきなり高い電圧(例えば9V)の電源電圧を印加すると、受電側(2次側)の耐圧を超えてしまい、問題が生じる可能性がある。一方、低い電圧(例えば6V)の電源電圧では、L1、L2のコイル間の距離が遠い場合などに、適切な着地検出等を実現できなくなるという問題がある。
この点、着地検出用又は取り去り検出用の電源電圧を可変に制御すれば、上記の問題を解決できる。例えば着地検出用又は取り去り検出用の間欠送電において、送電期間(TL2、TR2)の前半期間で、例えば6Vの電圧で駆動した後に、当該送電期間(TL2、TR2)の後半の期間で、9V(TL2=50msec)の電圧で駆動する。こうすることで、より広い範囲の着地が可能になる。この場合に、例えば6Vから9Vというように、着地検出用又は取り去り検出用の電源電圧等を徐々に上昇させる制御を行ってもよい。
図20A、図20Bは、送電電力設定情報(整流電圧VCC等)に基づいて送電電力を制御する手法を説明する図である。
図20Aは、L1、L2のコイル間の距離を近づけた場合の例を示している。この場合には9Vの電源電圧VDRVでの着地検出が行われた後、コイル間の距離が近づくにつれて、電源電圧VDRVが徐々に低下する制御が行われる。即ち、電源電圧制御部14は、制御部24の制御の下で、送電ドライバーDR1、DR2に供給される電源電圧VDRVを低下させる制御を行う。つまり、受電部52の出力電圧である整流電圧VCCが一定になるように電源電圧VDRVが制御される。これにより、L1、L2のコイル間の距離が近づいた場合にも、受電装置40の受電電力が一定になるような電力制御が行われ、最適で安定した電力制御を実現できる。
図20Bは、L1、L2のコイル間の距離を離した場合の例を示している。この場合には、コイル間の距離が離れるにつれて、電源電圧VDRVが徐々に上昇する制御が行われる。即ち、電源電圧制御部14は、制御部24の制御の下で、送電ドライバーDR1、DR2に供給される電源電圧VDRVを上昇させる制御を行う。つまり、受電部52の出力電圧である整流電圧VCCが一定になるように電源電圧VDRVが制御される。これにより、L1、L2のコイル間の距離が離れた場合にも、受電装置40の受電電力が一定になるような電力制御が行われ、最適で安定した電力制御を実現できるようになる。
8.受電部、充電部
図21に、受電部52、充電部58等の詳細な構成例を示す。図21に示すように、受電部52の整流回路53は、整流用のトランジスターTA1、TA2、TA3、TA4と、これらのトランジスターTA1〜TA4を制御する整流制御部51を有する。トランジスターTA1〜TA4の各々のドレイン・ソース間にはボディーダイオードが設けられている。整流制御部51は、トランジスターTA1〜TA4のゲートに対して制御信号を出力して、整流電圧VCCを生成するための整流制御を行う。
整流電圧VCCのノードNVCとGNDのノードとの間には抵抗RB1、RB2が直列に設けられている。整流電圧VCCを、抵抗RB1、RB2で電圧分割した電圧ACH1が、例えばA/D変換回路65に入力される。これにより整流電圧VCCの監視が可能になり、VCCに基づく電力制御や、VCCに基づく通信開始や充電開始の制御を実現できる。
レギュレーター67は、整流電圧VCCの電圧調整(レギュレート)を行って、電圧VD5を出力する。この電圧VD5は、トランジスターTC1を介して、充電部58のCC充電回路59に供給される。トランジスターTC1は、例えばバッテリー電圧VBATが所与の電圧を超える過電圧の検出時において、制御信号GC1に基づいてオフになる。なお制御装置50の各回路(放電部60等の放電系の回路を除く回路)は、この電圧VD5に基づく電圧(VD5をレギュレートした電圧等)を電源電圧として動作する。
CC充電回路59は、トランジスターTC2と、演算増幅器OPCと、抵抗RC1と、電流源ISCを有する。演算増幅器OPCの仮想接地により、抵抗RC1の一端の電圧(非反転入力端子の電圧)と、外付け部品であるセンス抵抗RSの他端の電圧VCS2(反転入力端子の電圧)とが等しくなるように、トランジスターTC2が制御される。信号ICDAの制御により電流源ISCに流れる電流をIDAとし、センス抵抗RSに流れる電流をIRSとする。すると、IRS×RS=IDA×RC1となるように、制御される。即ち、このCC充電回路59では、センス抵抗RSに流れる電流IRS(充電電流)が、信号ICDAにより設定される一定の電流値になるように制御される。これにより、CC(Constant-Current)充電が可能になる。
トランジスターTC3は、CC充電回路59の出力ノードと、バッテリー電圧VBATの供給ノードNBATとの間に設けられる。P型のトランジスターTC3のゲートには、N型のトランジスターTC4のドレインが接続されており、トランジスターTC4のゲートには、制御部54からの充電の制御信号CHONが入力されている。また、トランジスターTC3のゲートとノードNBATの間には、プルアップ用の抵抗RC2が設けられ、トランジスターTC4のゲートとGND(低電位側電源)のノードの間には、プルダウン用の抵抗RC3が設けられている。トランジスターTC3(TC4)により、図2の電力供給スイッチ42が実現される。
充電時には、制御部54が、制御信号CHONをアクティブレベル(Hレベル)にする。これにより、N型のトランジスターTC4がオンになって、P型のトランジスターTC3のゲート電圧がLレベルになる。この結果、トランジスターTC3がオンになり、バッテリー90の充電が行われるようになる。
一方、制御部54が、制御信号CHONを非アクティブレベル(Lレベル)にすると、N型のトランジスターTC4がオフになる。そしてP型のトランジスターTC3のゲート電圧が、抵抗RC2によりバッテリー電圧VBATにプルアップされることで、トランジスターTC3がオフになり、バッテリー90の充電が停止する。
また、充電系の電源電圧が回路の動作下限電圧よりも低くなった場合には、トランジスターTC4のゲート電圧が、抵抗RC3によりGNDにプルダウンされることで、トランジスターTC4がオフになる。そしてトランジスターTC3のゲート電圧が、抵抗RC2によりバッテリー電圧VBATにプルアップされることで、トランジスターTC3がオフになる。このようにすれば、例えば受電側が取り去られ、電源電圧が動作下限電圧よりも低くなった場合に、トランジスターTC3がオフになることで、CC充電回路59の出力ノードとバッテリー90のノードNBATとの間の経路が電気的に遮断される。これにより、電源電圧が動作下限電圧以下になった場合におけるバッテリー90からの電流の逆流が防止されるようになる。
またノードNBATとGNDのノードとの間には抵抗RC4、RC5が直列に設けられており、バッテリー電圧VBATを、抵抗RC4、RC5で電圧分割した電圧ACH2が、A/D変換回路65に入力される。これによりバッテリー電圧VBATの監視が可能になり、バッテリー90の充電状態に応じた各種の制御を実現できる。またバッテリー90の近くには、サーミスターTH(広義には温度検出部)が設けられている。このサーミスターTHの一端の電圧RCTが制御装置50に入力され、これによりバッテリー温度の測定が可能になる。
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本発明の範囲に含まれる。また送電側、受電側の制御装置、送電装置、受電装置の構成・動作等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。