JP2009118587A - 電力伝送装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】負荷の破損を防止できるようにした電力伝送装置を提供する。
【解決手段】電力伝送装置は、送電コイル1と受電コイル2とを対向させて送電部から受電部に電力を伝送する。受電部は受電コイル2で受電した交流電力をダイオードブリッジ43と平滑キャパシタ44とからなる整流回路で整流して直流電力を負荷回路である受電側機器50に出力する。整流回路から受電側機器50に印加される負荷電圧を負荷電圧検知回路40dで検知し、過大電圧が印加されたことを検知すると、Pch−MOSFET46をオフにして、負荷電圧の供給を遮断し、過大電流が流れたことをヒューズ42が検知すると、溶断して負荷への直流電力の供給を遮断する。
【選択図】図91

Description

この発明は、分離可能な送電部と受電部とから成り、送電部の送電用コイルと受電部の受電コイルとの間に生じる相互誘導作用により電力を伝送する電力伝送装置に関する。
送電用コイルと、受電用コイルとが分離可能な電力伝送装置は、電力伝送を行っていない場合には両コイル間の距離が離れた分離状態にある。例えば、電力伝送時には、図93に示すように、送電用コイル1と、受電用コイル2とを対向させて構成される。送電制御回路3から送電用コイル1に交流電流を流すと、相互誘導作用により受電用コイル2に起電力が誘起され、前記起電力による交流電流が受電制御回路4を通じて負荷RLに流れ、電力伝送が行われる。
送電用コイル1あるいは受電用コイル2は、例えば、図94(A)の平面図に示す導体1xを渦巻状に巻回して構成され、図94(A)の線6B−6Bに沿う図94(B)に示す断面図のように、間隔βを介して対向して配置される。導体1xを渦巻状に巻回して構成される2個のコイルを図94(B)のように対向させるのは、両コイルを誘導結合させるのと同義であるので、「対向」という表記は、両コイルが誘導結合状態にあることを示しているものとする。
図94(B)では、送電用コイル1と受電用コイル2に同一のものを用いている。これは、以下に引用する従来例において、誘導結合を示す対向状態が送電用コイル1と受電用コイル2とに同一のコイルを用いているからである。当然ながら、送電用コイル1と受電用コイル2とが異なるコイルを用いることもできる。以降、従来例を含め、単に「コイル」と表記されている場合、送電用コイル1または受電用コイル2、あるいは双方のコイルを指すものとする。また、本願では、引用する文献によって、使用されている用語が異なるため、用語について説明しておく。図93の送電制御回路3、送電用コイル1を含む部分を、送電側、1次側、入力側等と表記し、送電用コイル1を、送電コイル、送電用コイル、1次コイル、1次側コイル等と表記する。また、図93の受電制御回路4、受電用コイル2を含む部分を、受電側、2次側、出力側等と表記し、受電用コイル2を、受電コイル、受電用コイル、2次コイル、2次側コイル等と表記する。次に、コイルやキャパシタの等価回路中に直列に存在する抵抗成分は、通常ESRと表記され、日本語では等価直列抵抗(Equivalent Series Resistance)と呼ばれている。本願では、ESRの周波数特性に言及するので「実効直列抵抗」(Effective Series Resistance)に表記を統一しておく。
図94のような構成を持つコイルを使用した電力伝送装置が、特開平8−148360号公報(特許文献1)に記載されている。この特許文献1には、比較例1として、ドーナツ状の平面渦巻型コイルが記載されている。すなわち、このコイルは、直径100μmの絶縁被覆が施された銅線を100本束ねたものを5ターン巻線して、外径30mm、内径15mm、厚さ1.5mmに作成したものであり、磁性材料を装備していない。これらを対向させて電源に接続される方を1次側(入力側)、相互誘導作用により出力が発生する方を2次側(出力側)としている。
また、特許文献1の実施例においては、電力伝送周波数が100kHzでの実測データが記載されており、電力伝送周波数が100kHzに限定されないと記載されている。すなわち、特許文献1の段落番号0040には、電力伝送周波数が任意に選べると記載されている。
このような構成を持つコイルの他の例が、特開平4−122007号公報(特許文献2)に記載されている。この特許文献2に、比較例1として、平面渦巻型コイルであって、直径1mmのエナメル銅線を25ターン巻線し、外径80mm、内径24mmに作成し、磁心部を設けていないコイルが記載されている。これらを対向させて電源に接続される方を1次側(入力側)とし、相互誘導作用により出力が発生する方を2次側(出力側)としている。
なお、空芯コイルは、金属の近接により、コイルの特性(インダクタンスや実効直列抵抗)が変化する。この影響を防止するため、コイル状アンテナに、磁性材料と金属板を組み合わせて装備する発明は多数出願されている。しかし、コイル状アンテナは、電磁波によりエネルギーを伝達するもので、相互誘導作用を用いるものでは無い。相互誘導作用を用いた電力伝送装置において、特開2006−42519号公報(特許文献3)には、不要輻射の排除を目的とし、平面渦巻き状コイルの対向面と反対側に、磁性材料で形成されるシートを装備した構成のコイル、そして、磁性材料で形成されるシートのコイル装備面の反対面側に金属板を貼り付ける構成のコイルが記載されている。
さらに、コイルに金属材料が近接したときの影響を排除する金属材料として、反磁性金属を使うことが、特開2002−353050号公報(特許文献4)に記載されている。特許文献4においても、コイルを「磁界型空中線」と記載し、相互誘導作用に用いられるコイルと電磁波を送受信するアンテナを混同している。
また、相互誘導作用に基づく電力伝送装置において、送電部のコイルに近接した金属体の発熱を防止する手法、送電部と受電部の信号伝送方式を設けて伝送電力を制御する手法が、特開平10−271713号公報:米国特許5,896,278(特許文献5)に記載されている。
特開平8−148360号公報(段落番号0027) 特開平4−122007号公報(第1表、第2表) 特開2006−42519号公報(段落番号0019、0020、請求項1、請求項2、図2、図3) 特開2002−353050号公報(段落番号0015、0019、請求項5) 特開平10−271713号公報(段落番号0005、0009等)
送電部と、受電部とが分離可能な電力伝送装置は、電線や機械的な接点を用いずに電力を電気機器や電子機器に送ることができる。電気機器や電子機器が動作するのに必要な電力を、電線や機械的な接点を用いずに送ることができるようになると、様々な応用用途や利点がある。しかし、従来の技術では、相互誘導作用を利用して電力を伝送する電力伝送用コイルの構成と特性、および作用効果が明確にされていない。そこで、送電用コイルと、受電用コイルが分離可能な電力伝送装置、および電力伝送装置のコイルに関する従来例について考察してみる。
まず、特許文献1には、電力伝送周波数が任意に選べると記載されている。しかし、電力伝送手段は、変成器(変圧器)である。1次コイルと2次コイルが分離不能ではあるが、50Hz〜60Hzの商用電源用に設計された変圧器が、任意の周波数、例えば、5Hz、あるいは、10kHzで使用できないことは明らかである。すなわち、電力伝送手段である変成器には、使用可能な周波数の下限および上限が存在する。しかし、電力伝送用コイルとして使用可能な周波数範囲について考察した従来技術は存在しない。
また、1次コイルと2次コイルが分離不能な変圧器では、両コイル間の結合係数がほぼ1の密結合状態である。一方、1次コイルと2次コイルが分離可能な変成器では、両コイル間の結合係数が最大でも0.9程度の疎結合状態である。したがって、特許文献1、特許文献2に実施例として記載されたコイルは、平面渦巻き状に巻回したコイルに磁性材を装備して、両コイル間の結合係数を確保するようにしている。すなわち、特許文献1、特許文献2に記載されているコイルは、どちらも比較例であり、空芯の平面渦巻型コイルを用いた場合には、磁性材料を装備しないと性能向上が図れない旨の記載が見られる。
しかしながら、平面渦巻き状コイルの利点は、その形状にあり、特に機器側に装備される受電用コイルは、薄くないと実装上の問題が発生する。特に、2次電池を内蔵した小型の携帯機器などでは、スペースの制約上、コイル体積をできる限り小さくすることが要求されている。電力伝送性能を向上させるためには、例えば特許文献1に記載されているように、磁性材料で構成された板材をコイルの対向面の反対側に装備しないといけないことになる。しかし、この場合は、コイルの体積が増加し、機器に内蔵するのが困難になるという問題がある。
特許文献1、特許文献2共に、比較例と実施例を対比し、空芯の平面渦巻き状コイルでは効率よく電力が伝送できないことが記載されている。しかし、その理由については明記されていない。
そこで、特許文献1において、比較例1として挙げられている空芯コイルに関する開示データについて検討してみる。まず、本願発明者は、特許文献1に開示されているコイルと同一のコイルを作成し、前記コイルの特性を計測した。特許文献1に比較例として記載されているコイルは、直径100μmの絶縁被覆銅線を100本束ねた線径が1.5mmの太い導線を5ターン巻線しているだけである。このため、自己インダクタンスが約0.8μHと小さく、コイル形状により相互インダクタンスも小さくなる。そのため、力率が低下し、皮相電力、無効電力が大きくなる。また、線径が太く、ターン数が少ないので、特許文献1の段落番号0051に記載されている周波数100kHzにおいては、コイルの実効直列抵抗が、約17mΩと小さくなりすぎるという問題がある。
図95は、図92に示した1次側コイルと2次側コイルとが分離可能な電力伝送装置の等価回路図である。前記コイルを2個用い、図95に示すように、送電用コイル1と受電用コイル2とからなる変成器を構成する。その場合、周波数100kHzでは、負荷抵抗RLを10Ωとしたときの、交流電源V側から見た1次側コイルのインピーダンスZは、Z=約0.6Ωと非常に小さい値となっている。本願の図95において、R3で示される交流電源Vの内部抵抗は、通常0.5Ω〜数十Ωである。よって、交流電源Vに、前記1次側コイルが接続されると、交流電源Vは短絡された状態に近くなってしまう。このため、交流電源Vの内部抵抗R3が相当の電力を消費し、電力を効率よく伝送できなくなってしまう上、伝送可能な電力値も少なくなる。
もともと、特許文献1に記載されているコイルは、コイル対向面の反対側に磁性材を装備することにより、自己インダクタンスを確保し、コイルが対向したときに磁束を閉じ込め、結合係数を増加させる意図で作成されている。このため、空芯コイルとして最適化されたものではない。
次に、特許文献2に開示されている比較例1のコイルにおいて、空芯では性能が劣る理由を説明する。特許文献2に開示されている比較例1のような構成のコイルでは、周波数が上昇すると、表皮効果および渦電流損により、コイルの実効直列抵抗が増加する。この特性は、単導線の線径が太いほど、顕著な影響があることが知られている。本願発明者は、特許文献2に比較例1として記載されているコイルとほぼ同等のコイルを試作して追試を行なってみた。その結果、50kHzになると、コイルの実効直列抵抗は、コイルの直流抵抗約0.08Ωの、約3倍以上の、0.266Ωになることが分かっている。
図93の送電制御回路3は、図95において、交流電源Vで示され、R3は交流電源Vの内部抵抗である。R1は送電用コイル1の実効直列抵抗である。R2は受電用コイル2の実効直列抵抗である。RLは受電制御回路4に接続される負荷抵抗である。
1次側および2次側コイルの双方に、特許文献2の比較例1として記載されたコイルを使うと、図95に示すように、実効直列抵抗R1が交流電源Vに直列に接続される。そして、実効直列抵抗R2が負荷抵抗RLに直列に接続されることにより、少なくともR1、R2の2箇所で電力損失が発生する。これを回避するには、周波数を下げ、前記した表皮効果、渦電流損の影響を低減するしかない。
だが、周波数を下げると、コイルのリアクタンスが減少する。その結果、送電コイルのインピーダンスZが低下し、送電用コイル1に過大な皮相電力が投入されてしまう。そして、前記皮相電力による過大電流が送電用コイル1に流れ、実効直列抵抗R1と、交流電源の内部抵抗R3による電力損失が発生する。そのため、特許文献2の実施例では、コイルのインダクタンスとリアクタンスを確保し、皮相電力を低減するため磁性材を装備している。空芯でコイルを使用するには、リアクタンスを確保できるよう、高い周波数で作動させることが可能なコイルを実現しなければならない。すなわち、高い周波数で実効直列抵抗R1が低いコイルを実現すればよい。
特許文献1とは逆に、特許文献2の比較例1に記載のコイルは、インダクタンスは高いが、コイルの実効直列抵抗も高い。そのため、空芯で使うには適していないのは、上記に説明した通りである。すなわち、特許文献1の比較例に記載のコイルも、特許文献2の比較例1に記載のコイルも、後述するように、高周波数領域でのコイルのQが低い。
一方で、コイルの構成は異なるものの、コイルの実効直列抵抗の周波数特性を改善する発明は、多数出願されている。これは、周波数の上昇による実効直列抵抗の増加を抑え、コイルのリアクタンスが大きくなる高周波数領域で、コイルのQを増加させることを意図している。しかし、従来例は、コイルの構成を規定しているだけで、コイルの重要な特性であるインダクタンスについての記載が殆ど見られない。コイルの構成を規定し、実効直列抵抗の増加を抑えても、インダクタンスが減少すれば、場合によってはコイルのQが低下する。Qが低下する構成規定では、性能のよいコイルが実現できたとは言えない。後述するが、コイルのQは周波数によっても変動する。したがって、前述したように、コイルを使用可能な周波数領域を見出し、電力伝送に適したコイルを選ばなければならない。
特許文献1、特許文献2においては、上述した実効直列抵抗を低減する手法とは逆の手法を採用し、透磁率の高い磁性材料をコイルに装備することにより、周波数の上昇による実効直列抵抗の増加率よりもインダクタンスを増加させて、コイルのQを上げる手法を使っているものと推察される。
すなわち、電力伝送用の性能がよいコイルを実現するには、自己インダクタンス、相互インダクタンス(結合係数)を確保でき、かつ実効直列抵抗による電力損失がもたらすコイルの発熱を回避するために、適切な構成のコイルを選ばねばならない。そして、コイルの特性規定を行ってコイルの作動条件を定めなければならず、単にコイルの実効直列抵抗の周波数特性を改善するだけでは不十分である。
上記に説明してきたように、平板に導線を単層渦巻状に巻回した空芯の電力伝送用コイルは、電力伝送性能が悪いというのが従来の定説となっている。そのため、磁性材料等を装備することによって、電力伝送性能の向上が図られている。そして、電力伝送性能を左右する1つの要因である前述した電力伝送用コイルの実効直列抵抗と周波数との関係を、電力伝送用コイルの構成と共に考察した従来技術は存在しない。すなわち、従来の技術では、電力伝送装置に用いるのに適切な渦巻状に巻回した電力伝送用コイルが実現できていない。また、渦巻状に巻回した電力伝送用コイルの作動条件が規定されていない。そのために、電力伝送性能のよい電力伝送装置が実現できていない。前述した電力伝送装置に用いる最適な電力伝送用コイルが実現できていないことが、本分野における第1の課題となっている。
一方、特許文献3の段落番号0021には、磁性シートが、コイルの発生する「磁界」による不要輻射を排除すると記載されている。そして、金属シートが、コイルの発生する「電界」による不要輻射を排除すると記載されている。
前述したように、相互誘導作用を用いた場合には、エネルギーを伝達するのは電磁波ではなく「磁束」である。すなわち、誘導結合している送電コイルと受電コイルとは変成器を構成している。変成器は、コアを装備することにより、結合係数をほぼ1にでき、この場合は力率もほぼ1である。一方、送電コイルと受電コイルが分離可能な電力伝送装置においては、両コイル間の結合係数が最大でも0.9の疎結合状態である。よって、力率も0.2程度まで低下する。結合係数が1よりも小さいことによって、漏洩磁束が発生するが、後述するように、漏洩磁束の存在自体はエネルギーの損失を起さない。しがたって、特許文献3も、相互誘導作用による電力伝送と電磁波による電力伝送を混同している。
磁性材シートは、変成器のコアと同じく、磁束を閉じ込め、結合係数を上昇させる作用を持つ。そのことは特許文献2の2ページ右下の(作用)にも明記されている。本願発明者が検証した限りにおいて、磁性材板をコイルに装備すると、コイルのインダクタンスが上昇し、実効直列抵抗も上昇するのが確認されている。そして、少なくとも磁性材粉をモールドして構成した磁性材板は、コイルの対向面と反対側に金属材料が近接すると、コイルの特性(インダクタンスや実効直列抵抗)が変化する。すなわち、空芯コイルに金属板が近接したときには、コイルが変成器として作動しようと、アンテナとして作動しようと、コイル特性が変化するという本分野における他の課題となっている。
さらに、特許文献4の段落番号0019には、1次コイルと2次コイルの間に金属板を配置すると記載されているが、これは、コイル対向面の反対側の誤りと推察される。そして、特許文献4の段落番号0020には、コイル(磁界型空中線)に金属体が近接すると、電力伝送性能に影響が出るという空芯コイルの課題が記載されている。その課題を解決するために使用する金属板の材質として、特許文献4の段落番号0019には、反磁性金属である銅(Cu)、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)が記載されている。しかし、原子番号83の希土類元素で、1つを除く同位体が全て放射性元素であり、通常は使用されることが無いビスマスが記載されているのに、反磁性金属である原子番号57のランタン(La)や、原子番号79の一般に知られている貴金属である金(Au)が記載されていない。
本願発明者が追試したところ、コイル特性に影響を及ぼすのは、強磁性体の金属を除き、金属の磁気的性質では無く、単に金属板の厚さであることが分かっている。その詳細については後述するが、上記のような課題を解決した、性能のよい電力伝送装置は、まだ実現できていない。しかし、これらの課題は、第1の課題である空芯で電力伝送性能のよいコイルが実現できないと解決できない。その意味では、特許文献1、特許文献2に記載の解決手段は、実用的な電力伝送装置を実現するものであるとは言えない。
さらに、特許文献5の段落番号0005に記載のように、送電コイルに交流電流が流れているときに、送電コイルに金属体が近接すると、特許文献4の段落番号0019に記載された渦電流により、前記金属体が発熱する。これは電磁調理器と同じ原理である。
特許文献5では、送電部が待機状態のときには、間欠的に送電コイルに電力を供給している。送電部に正規の受電部が装着されたときに、受電部からの信号により、送電部は連続的に送電コイルに電力を供給するようにしている。しかし、特許文献5では、送電コイルと受電コイルにコアを装備している。後述するように、コアを装備した電力伝送用のコイルでは結合係数が低下する。そのために力率も低下してしまう。平面空芯状のコイルを用いた電力伝送装置において、特許文献5と同一の手法を採用した特許文献も存在はする。また、送電部単体で金属体を検知する手段を備えた特許文献もある。
上記のように、送電コイルに金属体が近接したときに、過電流損やヒシテリシス損により、金属体が発熱することが、本分野におけるその他の課題となっている。さらに、送電部は、金属体が近接したときと、負荷が接続された正規の受電コイルが対向したときとを判別しなければならず、そのことも、本分野におけるその他の課題となっている。
しかし、根本的な課題は、特許文献1から特許文献4のように、コイルの特定的構成を規定するだけでは、電力伝送性能のよいコイルが実現できないことにある。特許文献1、特許文献2では、コイルの特定的構成を規定した一実施例を示すことにより、効果を主張している。しかし、コイルの特定的構成以外の構成要因が変化したときにまで、同等の効果が得られるとは限らない。すなわち、単にコイルの特定的構成を規定するのみではなく、種々の構成を持つコイルの特性規定を行い、電力伝送性能のよいコイルを選ばない限り、電力伝送性能のよいコイルおよび電力伝送装置を実現することはできない。
例えば、特許文献2に記載の非接触トランスにおいて、特許文献5のような実施例が適用できないことは明白である。すなわち、電力伝送性能のよい電力伝送用コイル、電力伝送性能のよい電力伝送装置、そして、金属体の近接により特性が変動しない電力伝送用コイルが実現できてこそ、特許文献5のような安全対策の意味がある。換言すれば、まず、前記した第1の課題を解決する必要がある。
この発明は、負荷の破損を防止できるようにした電力伝送装置を提供することを目的とする。
この発明は、交流電源と、送電コイルとを少なくとも含む送電部と、受電コイルと、負荷とを少なくとも含む受電部とが分離可能に構成され、送電コイルと受電コイルとを対向させて、送電部から受電部に電力を伝送する電力伝送装置において、受電部は、交流電力を直流電力に変換して負荷回路に出力する整流回路を含むとともに、整流回路から負荷回路に流れる負荷電流を検知する負荷電流検知手段、整流回路から負荷回路に印加される負荷電圧を検知する負荷電圧検知手段、のいずれかと、負荷電流検知手段および負荷電圧検知手段のいずれかの検知出力に基いて、整流回路と負荷回路とを切断する保護手段を含む。
この発明は、電力伝送性能が従来よりも向上した電力伝送装置において、負荷回路に過大電圧が印加されたとき、あるいは負荷回路に過大電流が流れたときに、負荷回路を整流回路から切断することにより、負荷回路である2次側機器の破損を防止できる。
さらに、好ましくは、負荷回路に過大電流が流れたときには、負荷回路の電流を低下させる負荷電流低減手段と、負荷回路に過大電圧が発生したときには、負荷回路の電圧を低下させる負荷電圧低下手段と、のうち、少なくとも一方の手段を含む。
負荷回路に過大電流が流れたときには負荷電流を低減し、あるいは負荷回路に過大電圧が発生したときには負荷電圧を低下させる回路を受電部に装備することにより、負荷回路である2次側機器の破損を防止できる。
好ましくは、負荷電圧には、それぞれが異なる複数の所定レベルが設定されており、保護手段は、所定レベルに応じて、負荷電圧低下手段によって負荷電圧を低下させ、その後整流回路と負荷回路とを切断する。
この例では、過大電流あるいは過大電圧による負荷回路である2次側機器の破損を防止できる。
好ましくは、負荷電流検知手段によって、負荷回路に過大電流が流れたことが検知されたとき、負荷電圧検知手段によって、負荷回路に過大電圧が印加される可能性が検知されたとき、の少なくとも一方のときに、負荷回路が破損する前に、保護手段が破損して、負荷回路の破損を防止する。
過大電圧の発生あるいは過大電流が流れることによる負荷回路である2次側機器の破損対策を施すことができる。
好ましくは、保護手段が、受電部または受電部を含む機器より着脱可能なように構成される。
保護手段を着脱可能なように構成することにより、異常時に保護手段を迅速に交換でき、負荷回路である2次側機器を正常状態に復帰させることができる。
さらに、好ましくは、保護手段の少なくとも1個の予備を、受電部または受電部を含む機器に内蔵する。
予備の保護手段を設けることにより、異常時に保護手段を迅速に交換できるので、負荷回路である2次側機器を正常状態に復帰させることができ、電力伝送装置のいかなる異常に対しても迅速に対応することができる。
好ましくは、保護手段は、複数の保護回路より構成されており、受電部が、通常作動状態から逸脱したときに、通常作動状態からの逸脱状態に応じ、複数の保護回路が、順次破損して、負荷回路の破損を防止する。
複数の保護回路を順次破損させることにより、異常状態の程度に応じ、復帰に要する時間を短縮でき、かつ負荷回路である2次側機器の破損を防止できる。
好ましくは、複数の保護回路は、階層状態に構成されており、下位の階層にある保護回路が上位の階層にある保護回路に含まれる。
保護回路を階層構造に構成し、下位の階層にある保護回路が上位の階層にある保護回路に含まれるように構成することにより、さらに、異常時に保護回路を迅速に交換できるとともに、負荷回路である2次側機器の破損を確実に防止できる。
好ましくは、複数の保護回路は、上位から下位の階層状態に構成されており、下位の階層にある保護回路が上位の階層にある保護回路に含まれ、下位の階層にある保護回路が上位の階層にある保護回路より着脱可能である。
保護回路を階層構造に構成し、かつ、下位の階層にある保護回路が上位の階層にある保護回路より着脱可能なように構成されることにより、下位の階層にある保護回路が破損した場合に、簡便に復帰ができ、かつ負荷回路である2次側機器の破損を防止できる。
好ましくは、複数の保護回路は、上位から下位の階層状態に構成されており、下位の階層にある保護回路が上位の階層にある保護回路に含まれ、少なくとも最上位の階層にある保護回路が受電部を含む機器より着脱可能である。
保護回路を着脱可能なように構成することにより、異常時に保護回路を迅速に交換でき、負荷回路である2次側機器を正常状態に復帰させることができる。
好ましくは、複数の保護回路は、階層状態に構成されており、下位の階層にある保護回路が上位の階層にある保護回路に含まれ、少なくとも最上位の階層にある予備の保護回路を、少なくとも1個、受電部を含む機器に内蔵する。
予備の保護回路を負荷回路である2次側機器に内蔵しておくことにより、異常時に保護回路が破損した場合、保護回路を迅速に交換でき、負荷回路である2次側機器を正常状態に復帰させることができ、いかなる異常に対しても迅速に対応することができる。
好ましくは、送電部から受電部に信号を伝送する第1の信号伝送手段、受電部から送電部に信号を伝送する第2の信号伝送手段、のうち、少なくとも一方の手段を備える。
送電部から受電部に信号を伝送するか、または受電部から送電部に信号を伝送する手段を設けることにより、送電部と受電部との間で信号伝送を行うことができるようになる。これにより、例えば、送電部に装着された受電部が送電部に適合するか、受電部を装着するする送電部が受電部に適合するものかなどを判断できるようになる。あるいは、受電部から送電部への帰還制御などが実現できる。
好ましくは、第1の信号伝送手段は、送電部に含まれる送電側信号送信回路と、受電部に含まれる受電側信号受信回路と、送電側信号送信回路と受電側信号受信回路間を接続する第1通信ラインとから成り、送電部が保持している情報から成る信号を送電部から受電部に伝送することにより、少なくとも送電部から受電部に受電部の動作指令信号を与える送電制御回路を含み、、第2の信号伝送手段は、受電部に含まれる受電側信号送信回路と、送電部に含まれる送電側信号受信回路と、受電側信号送信回路と送電側信号受信回路間を接続する第2通信ラインとから成り、受電部は、受電部を識別するための識別情報を保持する受電側識別情報保持手段と、識別情報を含む信号を受電部から送電部に伝送することにより、受電部から送電部に送電電力を制御する信号を与える受電制御回路を含む。
好ましくは、受電部は、記記憶手段を含み、記憶手段に、少なくとも、第1の信号伝送手段を介して与えられた送電部の識別情報、受電部が電力を受電した日付および時刻情報、受電時の受電電力情報、のいずれかを記憶する。
これにより、複数の種類の送電部に対応している受電部の稼動状態を記録でき、各受電部1台の故障原因を追跡可能となる。受電部内の記憶手段に記憶された情報は例えばカードメモリーとして取り出し、パソコンなどに差し込むことで、簡単に可視化できる。
好ましくは、送電部は、送電部のコイルのインピーダンスを検知するインピーダンス検知手段と、インピーダンス検知手段によって検知されたインピーダンスに応じて、送電部から受電部への送電を制御する送電制御手段と、を備える。
送電コイルのインピーダンスを検知することにより、送電コイルに受電部が装着されていない場合、送電コイルに金属体が接近している場合、送電コイルに受電部が装着されている場合は、受電側の動作状態などを判断できる。これにより、送電コイルに近接した金属体異物の発熱を防止できる。あるいは、受電部が送電部に適合するものであるかを判断できる。また、受電部の異常を送電部で検知できる。
好ましくは、インピーダンス検知手段は、送電コイルに流れる交流電流を検知する電流検知手段を含み、電流検知手段は、送電コイルと直列に接続された抵抗素子またはリアクタンス性素子と、抵抗素子またはリアクタンス性素子の両端電圧を検出し、その両端電圧と抵抗素子またはリアクタンス性素子の値とに基づいて電流を検知する回路素子と、を含む。
この例では、抵抗素子またはリアクタンス性素子など、比較的簡単な回路素子を送電コイルに直列接続することにより交流電流を検知することができる。リアクタンス性素子に交流電流が流れても、リアクタンス性素子は電力を消費しない。したがって、抵抗値の小さい抵抗素子またはリアクタンス性素子を使用することにより、電流検知回路による電力損失を防止できる。
好ましくは、対向するコイルの内、一方のコイル単体の実効直列抵抗をRw(Ω)、一方のコイルに対向する他方のコイルが短絡されたときの、一方のコイルの実効直列抵抗をRs(Ω)、一方のコイルが、Rs>Rw、を満足する最高周波数をf1(Hz)、としたときに、f1が100kHz以上となるように、一方のコイルと他方のコイルが選ばれており、f1(Hz)未満の周波数で、送電部から受電部に電力を伝送する。
一方のコイルが、Rs>Rw、を満足する最高周波数をf1(Hz)、とすると、f1(Hz)が100kHz以上となるコイルを選び、コイルをf1以下で使用することにより、電力伝送性能を向上できる。
さらに、好ましくは、直流電力を交流電力に変換する電力変換手段を含み、電力変換手段の出力周波数をfa(Hz)、としたときに、faをf1未満の周波数に設定する。
fa<f1、の条件を満足する周波数領域で一方のコイルを使用することにより、一方のコイルは理論上の関係を満足する。これにより、電力伝送性能を、従来よりも向上させることが可能になる。
さらに、好ましくは、一方のコイルに対向する他方のコイルを開放したときの、一方のコイルの実効直列抵抗をRn(Ω)、一方のコイルが、Rs>Rn≧Rw、を満足する最高周波数をf2(Hz)、としたときに、fa(Hz)をf2(Hz)未満の周波数に設定する。
この例では、電力を伝送する周波数において、Rs>Rn≧Rw、を満足することにより、さらに実効直列抵抗Rwの小さい送電コイルを選別でき、かつ電力伝送に最適な周波数範囲を規定できる。また、電力を伝送する周波数において、Rs>Rn≧Rw、の条件を満足する送電コイルを使用することにより、送電コイル単体、送電コイルと受電コイルを対向させた変成器、のいずれもが理想的な理論上の特性に近づき、電力伝送性能を、従来よりも向上させることが可能となる。
さらに、好ましくは、一方のコイルの熱抵抗をθi(℃/W)、一方のコイルの許容動作温度をTw(℃)、一方のコイルが設置される場所の周囲温度をTa(℃)、電力を伝送しているときに、一方のコイルに流れる交流電流をIa(A)、としたときに、faにおいて、Rw≦(Tw−Ta)/(Ia×θi)、なる関係を一方のコイルが満足するように、送電部から受電部に電力を伝送する。
このように、実効直列抵抗Rwと交流電流Iaによる熱条件を規定することで、少なくとも一方のコイルの交流電流Iaの上限、あるいは一方のコイルの実効直列抵抗Rwを決めるターン数の上限と、実効直列抵抗Rwが小さい周波数領域を規定できる。
この発明によれば、負荷回路に過大電圧が印加されたとき、あるいは負荷回路に過大電流が流れたときに、保護手段によって負荷回路を整流回路から切断することにより、負荷回路である2次側機器の破損を防止できる。
(電力伝送装置の説明)
図1はこの発明の一実施形態に係る電力伝送装置100のブロック図である。図1において、電力伝送装置100は、送電装置として作動する送電部30と、受電装置として作動する受電部40とを含む。送電部30は、直流電源Vdと、送電制御回路30aと、送電コイル1とを含む。受電装置40は、受電コイル2と、受電制御回路40aと、負荷RLとを含む。送電コイル1と、受電コイル2とは対向して配置される。
なお、送電部30と、受電部40とは分離可能に構成されている。送電部30と、受電部40とが結合されたときには、送電コイル1と受電コイル2とが対向して配置されるので、送電コイル1と受電コイル2とは変成器として作用する。
送電部30の送電制御回路30aは、直流電源Vdを交流電力に変換するインバータ回路などの電力変換手段30bを少なくとも含む。交流電力により送電コイル1を好ましくは交流正弦波、あるいは交流正弦波に近い階段波等により後述する所定の周波数未満で駆動して受電部40に電力を伝送する。受電部40は受電コイル2により送電コイル1から送電された電力を受電する。受電制御回路40aは受電した電力を負荷RLに供給する。受電制御回路40aには、交流電力を直流電力に変換する整流回路等が含まれている。負荷RLが白熱電球、LEDなどの交流電力で動作するものは、受電制御回路40aを省略し、負荷RLを受電コイル2に直結することもできる。
なお、ここで交流とは、出力端子に接続されたコイルに、正方向、逆方向に電流が流せるものを言う。以降、直流電源Vdを交流電力に変換する電源変換手段を交流電源30bと表記する。そして、交流電源30bの出力周波数をfa(Hz)と表記する。さらに、送電コイル1が交流電源30bによって駆動される周波数をfd(Hz)と表記する。また、受電コイル2が電力を受電する周波数をfj(Hz)と表記する。この場合、当然、fa=fd=fj(Hz)である。fa、fd、fjは全て電力伝送に使用される周波数である。faとfdは、どちらも送電部の周波数であり、作用効果も駆動部と被駆動部の違いだけである。しかし、fdとfjの作用効果は異なるので、以下に説明しておく。
(電力伝送装置の動作の説明)
図1に示す対向する送電コイル1および受電コイル2は空芯コイルであり、そのうち、一方のコイル単体の実効直列抵抗をRw(Ω)、とする。一方のコイルに対向する他方のコイルを短絡したときの、一方のコイルの実効直列抵抗をRs(Ω)とする。後述するが、周波数が低い場合、RwとRsの関係は、Rs>Rw、となっている。一方で、周波数が高くなると、RwとRsの関係は、Rs<Rw、となっている。Rs<Rw、となる周波数は、コイルにより異なる。すなわち、Rs>Rw、の関係を満足する周波数には上限が存在し、コイルによって上限値は異なる。前述したが、この上限値が、電力伝送性能のよいコイルを選ぶ基準となり、電力伝送装置を構成するコイルを使用可能な周波数領域を規定でき、電力伝送性能のよい電力伝送装置を実現できるものである。
そこで、この発明の一実施形態に係る電力伝送装置100は、一方のコイルが、Rs>Rw、を満足する最高周波数をf1(Hz)、としたときに、送電部30に含まれる交流電源の出力周波数fa(Hz)をf1(Hz)未満の周波数領域に設定し、受電部40に電力を伝送する。fa(Hz)を上記のように設定すると、送電コイル1である一方のコイルまたは他方のコイルが、周波数fd=fa(Hz)で駆動される。すなわち、送電コイル1は、fd<f1、の条件を満足する。当然のことながら、送電コイル1は、fd(Hz)にて、Rs>Rw、の関係を満足する。また、受電コイル2が電力を受電する周波数fj(Hz)は、f1(Hz)未満であることを条件とする。すなわち、受電コイルは、fj<f1、の条件を満足する。当然のことながら、受電コイル2は、fj(Hz)にて、Rs>Rw、の関係を満足する。
前述したように、送電コイルの「駆動周波数fd(Hz)はf1(Hz)未満に設定される」という表記は、送電コイルの駆動周波数fd(Hz)が、「fd<f1、の条件を満足する」と同義である。「fd<f1、の条件を満足する」という表記は、送電コイルが、「fd(Hz)にて、Rs>Rw、の関係を満足している」という表記と同義である。また、受電コイルが「電力を受電する周波数fj(Hz)は、f1(Hz)未満であることを条件とする」という表記は、受電コイルが電力を受電する周波数fj(Hz)が、「fj<f1、の条件を満足する」という表記と同義である。
「fj<f1、の条件を満足する」という表記は、受電コイル2が、「fj(Hz)にて、Rs>Rw、の関係を満足している」という表記と同義である。受電部40においては、受電電力の周波数を設定できないので、受電コイル2が電力を受電する周波数fj(Hz)を定義し、受電コイル2と送電コイル1とにより決まる受電コイル2のf1が、fjを超えていることを条件としている。以降、上記のいずれかの表記により、電力伝送装置が満足すべき条件を規定する。
さらに、一方のコイルに対向する他方のコイルを開放したときの、一方のコイルの実効直列抵抗をRn(Ω)とする。そして、Rs>Rn≧Rw、を満足する最高周波数をf2(Hz)とする。後述するが、f2(Hz)は、f1(Hz)よりも低くなる。電力伝送装置100は、送電制御回路30aに含まれる交流電源30bの出力周波数fa(Hz)をf2(Hz)未満の周波数領域に設定し、電力を受電部40に伝送する。fa(Hz)を上記のように設定すると、送電コイル1である一方のコイルまたは他方のコイルが、周波数fd=fa(Hz)で駆動される。すなわち、送電コイル1は、fd<f2、の条件を満足する。当然のことながら、送電コイル1は、fd(Hz)にて、Rs>Rn≧Rw、の関係を満足する。このときの、受電コイル2である一方のコイルまたは他方のコイルが電力を受電する周波数fj(Hz)は、f2(Hz)未満であることを条件とする。すなわち、受電コイル2は、fj<f1、の条件を満足する。当然のことながら、受電コイル2は、fj(Hz)にて、Rs>Rn≧Rw、の関係を満足する。以下、前述したf1とfdの関係、またはf1とfjの関係と同様にして、いずれかの表記にて、f2とfdの関係、またはf2とfjの関係を規定する。
(コイルの具体例の説明)
以下、本発明の実施形態における電力伝送装置に使用されるコイルの具体的な構成について説明する。以下に説明する各実施形態のコイルは、電力伝送装置100の送電コイル1または受電コイル2として使われる。
図2は、空芯コイルの一例を示す図であり、図2(A)は平面図を示し、図2(B)は図2(A)の線1B−1Bに沿う断面を拡大して示す。
この発明の一実施形態のコイル1aは、図2(A)に示すように、導線11を平板で空芯の単層渦巻状に、隣接する導線11同士が密接するように巻回して構成される。導線11は図2(B)に示すように、断面が円形であり、最大径d1(mm)は特に限定されないが、好ましくは、例えば線径が0.2mm以上の単導線12単体に絶縁被覆13を施して構成されている。絶縁被覆13としては、ホルマル線のように厚みが薄くても強い被膜や、ビニール線のように厚い被膜のいずれであってもよい。
さらに、コイル1aの自己インダクタンスが少なくとも2μH以上である。さらに、図2(A)に示したコイル1a単体での実効直列抵抗をRw(Ω)とする。コイル1aに対向する他方のコイルを短絡したときの、コイル1aの実効直列抵抗を、Rs(Ω)、とする。このときに、Rs>Rw、を満足する最高周波数をf1(Hz)とする。送電コイルであるコイル1a、または他方のコイルは、交流電源30bにより、f1(Hz)未満の周波数であるfd(Hz)にて駆動される。図1に示す交流電源30bの出力周波数であるfa(Hz)は、f1(Hz)未満の周波数に設定される。また、受電コイル1であるコイル1a、または他方のコイルが電力を受電する周波数fj(Hz)は、f1(Hz)未満であることを条件とする。好ましくは、コイル1aを一方のコイルと他方のコイルの双方に使用した場合、100kHzにて、Rs>Rw、を満足している。
コイル外径D(mm)を単導線12の最大径d1(mm)の25倍以上に選んだのは、必要な結合係数を確保するためである。導線11のターン数を8以上になるように選んだのは、2μH以上の自己インダクタンスが得られるようにするためである。なお、この実施形態のみならず、他の実施形態においても共通するが、コイルには、導線が巻かれない所定の内径を設けるのが望ましい。内径は、外径Dの規定を満足していれば、任意の寸法でよい。
さらに、対向する他方のコイルを開放したときの、コイル1dの実効直列抵抗を、Rn(Ω)、とする。このときに、Rs>Rn≧Rw、を満足する最高周波数をf2(Hz)とする。送電コイルであるコイル1a、または他方のコイルは、交流電源30bにより、f2(Hz)未満の周波数fd(Hz)にて駆動される。図1に示す交流電源30bの出力周波数であるfa(Hz)は、f2(Hz)未満の周波数に設定される。また、受電コイル1であるコイル1a、または他方のコイルが電力を受電する周波数fj(Hz)は、f2(Hz)未満であることを条件とする。
さらに、コイル1aの熱抵抗をθi(℃/W)、コイル1aの許容動作温度をTw(℃)、コイル1aが設置される場所の周囲温度をTa(℃)、電力を伝送しているときにコイル1aに流れる交流電流をIa(A)、としたときに、Rw≦(Tw−Ta)/(Ia×θi)なる関係を、コイル1aが、電力を伝送しているときに満足する。
このように構成されたコイル1aは、図1に示した、送電部30と受電部40が分離可能な電力伝送装置の送電用コイル1、または受電用コイル2として用いることができる。
なお、図2(A)の実施形態においては、導線を円形に巻回している。しかし、円形に限らず、図3(A)に示す長円形、図3(B)に示す楕円形、図3(C)に示す正方形、図3(D)に示す長方形、図3(E)に示す六角形などの多角形のように、任意の形状で巻回することができる。これは、後述する他の実施形態でも同様である。ただし、コイルの形状が円形以外の場合、コイル外径Dは、図3(A)〜図3(E)に示すように、コイルの最小外寸D´を規定する。
次に、前述した関係、Rs>Rw、Rs>Rn≧Rw、Rw≦(Tw−Ta)/(Ia×θi)、について説明する。なお、この説明は、後述する他のコイルの実施形態においても同じ作用効果をもつので、以降に記載の実施形態においては、説明を省略する。
(コイルで構成した変成器の説明)
図4は、変成器の等価回路を表す図であり、図5は、コイル単体の等価回路を示し、図6は従来例で説明した図93のように構成された変成器単体の等価回路を表す図である。図7は、2次側コイルが短絡されたときの変成器の等価回路を表す図であり、図8は、2次側コイルに負荷抵抗RLが接続されたときの変成器の等価回路を表す図である。
送電コイル1と、受電コイル2とが対向して配置されると、変成器として作用する。ここでは、回路理論を参照するため、送電コイルを1次側コイル、受電コイルを2次側コイルと表記する。Rw、Rn、Rsの理論上の関係を求めるため、変成器の1次側のインピーダンスZ1を求めておく。図4において、L1(H)は1次側コイルのインダクタンス、L2(H)は2次側コイルのインダクタンス、M(H)は1次側コイルと2次側コイル間の相互インダクタンス、V1(V)は1次側コイルの両端電圧、V2(V)は2次側コイル(負荷抵抗RL)の両端電圧、I1(A)は1次側コイルに流れる電流、I2(A)は2次側コイルに流れる電流、RLは負荷抵抗(純抵抗)、Z1(Ω)は1次側の入力インピーダンス(複素インピーダンス)を表す。図4において、下記の回路方程式が成立し、下記の連立方程式を解くことにより、Z1の純抵抗成分(実効直列抵抗)と、リアクタンス成分(インダクタンス)を求めることができる。下記に、図4の回路方程式を記す。なお、j=−1、であり、ωは角周波数で、ω=2πf(fは周波数、Hz)である。
V1=jωL1・I1+jωM・I2…(1)
V2=jωM・I1+jωL2・I2…(2)
V2=−RL・I2…(3)
求めたいのは、Z1=V1/I1、であるので、上記の3つの連立方程式から、V2、I2を消去すればよい。上記の連立方程式の(3)式を(2)式に代入し、V2を消去すると、
0=jωM・I1+(jωL2+RL)I2
となり、上式をI2について解き、上記連立方程式の(1)式に代入し、I2を消去すると、
V1=(jωL1+ω/(jωL2+RL))I1
となり、Z1=V1/I1、であるので、上式より、Z1は、
Z1=jωL1+ω/(jωL2+RL)
となる。実際の変成器は、1次側コイルに実効直列抵抗R1、2次側コイルに実効直列抵抗R2を持つので、図6の回路を考え、RL=R2とすると、
Z1=R1+jωL1+ω/(jωL2+R2)
となる。上式の、ω/(jωL2+R2)に、
(−jωL2+R2)/(−jωL2+R2)=1を掛けると、
Z1=R1+jωL1+ω(−jωL2+R2)/(ωL2+R2
となり、実数項と虚数項を整理すると、
Z1=R1+R2・ω/(ωL2+R2)+jω(L1−L2・ω/(ωL2+R2))
となって、A=ωM2/(ωL2+R2)とすると、Z1は、
Z1=(R1+AR2)+jω(L1−AL2)…(4)
となる。ω>0、M≧0、L2>0、R2>0、であるので、明らかに、A≧0である。すなわち、図6において、1次側コイルの入力インピーダンスZ1は、
Z1=R1+jωL1…(5)
であり、(5)式と(4)式を比較すれば明らかなように、図7のように、変成器の2次側コイルが短絡されたときには、1次側コイルの実効直列抵抗R1が増加し、インダクタンスL1が減少するのが分かる。これらは既知の回路理論である。
上記(4)式と(5)式は、Rs>Rw、Rs>Rn≧Rw、の関係を説明するのに引用する基本式である。
次に、図2(A)に示したコイル1aに関して、具体的な例について説明する。一部重複するが、記号の定義を明確にしておく。Rwは、コイル1a単体の実効直列抵抗(図5のR1)、Rnは、コイル1aに他のコイルが対向し、対向したコイルが開放されているときのコイル1aの実効直列抵抗(図6のR1)、Rsは、コイル1aに他のコイルが対向し、対向したコイルが短絡されているときのコイル1aの実効直列抵抗(図7のR1)、krは、RwとRsより近似的に求めた両コイル間の結合係数である。
また、コイル1a単体のインダクタンスをLw、コイル1aに他のコイルが対向し、対向したコイルが短絡されているときのコイル1aのインダクタンスをLsとしたときに、LwとLsから近似的に求められる結合係数をkiと表記する。krと、kiの近似的な求め方については後述する。
L1がコイル自体を示すときには、L1は記号とし、インダクタンスの数値を示すときは、L1(H)として単位を付記する。これは、R1、Rw等の抵抗についても同様とする。ただし、Rs>Rw、など等号や不等号で記載されている場合、Rw等を数式中に記載したときや計算に用いている旨の記載があるときの前後にRw等が記載してある場合、「Rwは、2Ω」等の具体的な数値と単位がRw等の直後に記載されている場合、特性図の説明等で数値であることが明らかな場合等は、単位の付記を省略している。
なお、以下の説明では、コイルを対向させた変成器の1次側と2次側を区別しているが、変成器は1次側と2次側を反転させることができるので、図6のR1、L1は、2次側のR2、L2として考えても同様の結果が得られる。すなわち、本発明の実施形態における電力伝送用のコイルは、1次側、2次側の少なくとも一方に装備されていればよい。例えば、2次側(機器側)にコイル1aと同じ構成のものを使用し、1次側(送電側)にソレノイド状のコイルや後述するハネカム状の多層巻コイルを使うこともできる。コイル1a単体の実効直列抵抗をRwとする。コイル1aに短絡したソレノイド状やハネカム状の多層巻コイルが対向したときのコイル1aの実効直列抵抗をRs(Ω)とする。この場合においても、送電コイルであるソレノイド状やハネカム状の多層巻コイルは、コイル1aが、Rs>Rw、を満足する最高周波数f1(Hz)未満の周波数、fd(Hz)にて交流電源30bにより駆動される。図1に示す交流電源30bの出力周波数であるfa(Hz)は、f1(Hz)未満の周波数に設定される。また、受電コイル2にソレノイド状やハネカム状の多層巻コイルを使用し、送電コイル1にコイル1aを使用した場合は、受電コイル2が電力を受電する周波数fj(Hz)は、f1(Hz)未満であることを条件とする。
以下、コイル1aの具体的な構成例について説明する。
(コイル1aの具体的な構成例1Aの説明)
図9は、銅線径1mmのホルマル線を、外径70mmで25ターン(T)密接巻きしたコイル1AのRw、Rn、Rs、およびコイル1Aに10Ωの負荷抵抗を接続したときの実効電力伝送効率ηと周波数との関係を表す図である。
本願発明者は、図2(A)に示したコイル1aとして、特許文献2に記載されたコイル(以下、従来例と称する。)を参考にして、平板で空芯の単層渦巻状に、ホルマル線を使い、隣接する導線同士が密接するように巻回してコイル1Aを形成した。その結果、コイル1Aを送電コイルと受電コイルの双方に使用すると、所定の電力伝送性能しか達成できないことを見出した。
そこで、本願発明者は、コイル1Aに比べて、伝送性能を向上させた図10〜図17に示すコイル1B〜コイル1Gを見出した。各コイル1B〜1Gは、図2(A)のコイル1aのように平板で空芯の単層渦巻状に、ホルマル線を使って構成されている。
(コイル1aの具体的な構成例1Bの説明)
図10は、コイル1Bを説明するための特性図である。
コイル1Bは、銅線径0.6mmのホルマル線を、外径70mmで40ターン密接巻きしたものである。コイル1BのRw、Rn、Rs、kr、kiと周波数との関係が図10に示されている。
(コイル1aの具体的な構成例1Cの説明)
図11は、コイル1Cを説明するための特性図である。
コイル1Cは、銅線径0.3mmのホルマル線を、直径70mmで70ターン密接巻きしたものである。コイル1CのRw、Rn、Rs、後述する位相角θと周波数との関係が図11に示されている。
(コイル1aの具体的な構成例1Dの説明)
図12は、コイル1Dを説明するための特性図である。
コイル1Dは、銅線径0.3mmのホルマル線を、直径30mmで31ターン密接巻きしたものである。コイル1DのRw、Rn、Rsと周波数の関係が図12に示されている。
(コイル1aの具体的な構成例1Eの説明)
図13は、コイル1Eを説明するための特性図である。
コイル1Eは、銅線径1mmのホルマル線を、外径70mmに、約1mmの空隙を設けて14ターン疎巻きしたものである。コイル1EのRw、Rn、Rs、krと周波数との関係が図13に示されている。
(コイル1aの具体的な構成例1Fの説明)
図14は、コイル1Fを説明するための特性図である。
コイル1Fは、銅線径0.05mmのホルマル線を75本束ねた電線(リッツ線)を、外径70mmに30ターン密接巻きしたものである。コイル1FのRw、Rn、Rs、kr、kiと周波数との関係が図14に示されている。
(コイル1aの具体的な構成例1Gの説明)
図15は、コイル1Gを説明するための特性図である。
コイル1Gは、銅線径0.05mmのホルマル線を75本束ねた電線(リッツ線)を、外径50mmに20ターン密接巻きしたものである。コイル1GのRw、Rn、Rs、kr、kiと周波数との関係が図15に示されている。
(各コイルについての検討)
なお、図10〜図15に示す特性図は、コイル1B〜コイル1Gに関して、いずれも、Rs>Rw、を満足する最高周波数f1(Hz)と、Rs>Rn≧Rw、を満足する最高周波数をf2(Hz)とが共通的に示されている。ただし、最高周波数f1(Hz)、f2(Hz)は、各コイル1B〜コイル1Gのそれぞれによって異なっている。
また、図10〜図15に示す特性図は、全て対向するコイル間の距離をゼロで測定したものである。コイル間の対向距離が離れても、Rs(Ω)、Rn(Ω)は、対向距離がゼロのときよりもわずかに低下するが、対向する距離がコイル外径Dの1/10程度までは殆ど変化しない。実際には、対向距離が増加すると、両コイル間の結合係数が低下し、1次側コイルのリアクタンスが増大して皮相電力が増加するので、力率が低下する。
コイルの実効直列抵抗による電力損失は、後述する、Rw≦(Tw−Ta)/(Ia×θi)の規定で抑えることができ、後述するように、図8における、R1、R2の値が不明な点と、Tw(℃)、Ta(℃)、はコイルの使用条件によって異なるので、本発明の実施形態においては、前述の、Rw、Rs、Rnを、対向距離ゼロか、あるいは実際に使用するコイルの対向距離において計測し、Rs>Rw、を満足する最高周波数f1(Hz)、Rs>Rn≧Rw、を満足する最高周波数f2(Hz)を求めればよい。
まず、Rs>Rw、を満足している場合と、満足していない場合の違いについて説明する。上記に説明したように、コイル単体の実効直列抵抗Rw(Ω)は、周波数が上昇すると共に増加することが知られており、その原因として、表皮効果や渦電流損などが知られている。
さらに、上述の回路理論によると、図7に示すように、2次側コイルを短絡すると、1次側の純抵抗値は、(R1+AR2)Ω、に増加することが知られている。R2を2次側コイルの実効直列抵抗値とし、Mを1次側コイルと2次側コイル間の相互インダクタンスの値、ωを角周波数(ω=2πf、fは周波数、Hz)、L2を2次側コイルの自己インダクタンスの値とすると、A=ω/(ωL2+R2)であり、ω>0、M≧0、L2>0、R2>0、であるので、明らかに、A≧0、である。そして、1次側のインダクタンスについては、L1を1次側コイルの自己インダクタンスの値とすると、図7に示すように、2次側コイルを短絡すると、1次側のインダクタンスは、(L1−AL2)H、に減少することが知られている。
ところが、図9〜図11を参照すると、周波数が高い領域では、Rs(Ω)がRw(Ω)より小さくなる場合が見られる。Rs<Rw、となる周波数は、比較例としてのコイル1Aでは、約67kHz以上になるのに対して、コイル1Bでは、約208kHz以上になる。コイル1Cでは、約820kHz以上になる。平板渦巻状に密接してホルマル線を巻いたコイルでは、このように、ホルマル線の線径が太くなるほど、Rs>Rw、を満足する最高周波数f1(Hz)は低くなる。また、図12より、コイル1Cと同じ単導線を使い、外径30mmに31ターン巻回したコイル1Dでは、Rs>Rw、を満足する最高周波数f1(Hz)は、コイル1Cに比べ高くなっている。
(線径による周波数特性の変動の説明)
図16は、銅線径、0.2mm、0.4mm、0.8mm、1mmの各ホルマル線を平板状に25ターン密接巻きしたコイルの、周波数と各コイルの実効直列抵抗Rw(Ω)の関係を示している。
図9〜図12から明らかなように、Rs>Rw、を満足する最高周波数f1(Hz)が低いコイルは、周波数の上昇に伴う実効直列抵抗Rw(Ω)の増加率も高い。図16より、0.2mm、0.4mm、0.8mm、1.0mmの各異なる線径のホルマル線を、同じ25回のターン数にしたコイル外径の異なるコイルでも、この特性は同じある。すなわち、ホルマル線の線径が太くなるほど、周波数の上昇に伴う実効直列抵抗Rw(Ω)の増加率も高いことが分かる。また、同一の線径で巻回したコイルでは、巻回数が少なく、外形が小さい方が、Rs>Rw、を満足する最高周波数f1(Hz)が高く、周波数の上昇による実効直列抵抗Rw(Ω)の増加率も小さいのが分かる。
すなわち、回路理論に従うなら、Rs>Rn=Rw、の関係を満足しないといけないが、コイル1A〜コイル1Dを使用し、図6、図7のように構成された変成器では、周波数が高い領域では、Rs>Rw、の関係を満足していない。例えば、コイル1Bでは、周波数208kHz以上の点で、Rs<Rw、となっているのが、図10より分かる。
RwとRsの関係が、Rs<Rw、となるような周波数領域では、正でないとならないA2が、負になってしまう。図9〜図12で、Rs<Rw、となるような周波数領域では、図8に示す、実効直列抵抗R1およびR2の実際の値を求めることはできない。その一例を以下に示す。なお、ここでは実効直列抵抗から近似的に結合係数を求めるので、結合係数をkrと表記する。後述するように、インダクタンスから求めた結合係数をkiと表記する。
既知の回路理論によれば、結合係数をkrとすると、相互インダクタンスをM(H)、1次側コイルの自己インダクタンスをL1(H)、2次側コイルの自己インダクタンスをL2(H)、としたときに、M=kr・L1・L2の関係が成り立つ。1次側コイルと2次側コイルに同一のコイルを使うなら、R1=R2=Rw、L1=L2=Lw、となるので、ωL2>>R2を満足するときには、A=ω/(ωL2+R2)≒ω/(ωL2)=kr・L1/L2=kr、となる。そこで、(R1+AR2)から、(Rw+krRw)=Rs、となり、kr≒(Rs−Rw)/Rw、として近似的にkrを求められ、kr=√((Rs−Rw)/Rw)となる。
なお、両コイルが同一の場合、R1=R2=Rw、L1=L2=Lw、である。したがって、ωL2>>R2を満足しているかは、ωLw/Rw、の値を計算し、この値が50以上の時に求めた結合係数の値は、誤差2%程度以下と判断している。図9〜図15においては、10kHz〜30kHz以上になると、ωLw/Rw>50、となっている。Rs>Rw、を満足する周波数領域では、このようにして、Rw、Rsより結合係数krを近似的に求めることができる。
しかし、Rs<Rw、となるような周波数領域では、正でないとならないAが、負になってしまい、正であるべき結合係数krの二乗であるkrも負になるので、結合係数を実効直列抵抗Rw,Rsより求めることはできず、(4)式から明らかなように、図8において、R1、R2の実際の値を求めることはできなくなる。Rs=Rwの場合なら、結合係数krはゼロとなってしまうし、Rs<Rw、となると、数学的には結合係数krは虚数になる。実際に2個のコイルが対向しており、相互インダクタンスMが、M≠0であるのに、両コイル間の結合係数がゼロになることや、あるいは虚数になることは、理論上あり得ない。
Rs>Rw、の条件を満足しない周波数領域では、上記のように、図8の実効直列抵抗R1とR2の値が不明になる。さらに、コイルの実効直列抵抗Rw(Ω)が大きくなり、1次側、2次側のいずれのコイルに電流Iを流しても、R1×I(W)、R2×I(W)、による電力損失が過大となって、コイルが発熱する。その電力損失のため、実効電力伝送効率ηが低下する。なお、同一のコイルを、1次側、2次側ともに使用した場合、2×Rw=Rs(Ω)、となると、結合係数krが1となるので、Rsは、2×Rw(Ω)、に近いほどよい。
(コイル1Aと、コイル1Fとの組合せの説明)
図17は、コイル1Aを一方のコイルとし、後述するコイル1Fを他方のコイルとしたときの、コイル1AのRw、Rn、Rs、およびコイル1Fに10Ωの負荷抵抗を接続したときの実効電力伝送効率と周波数との関係を示す特性図である。
図9において、コイル1Aを送電コイルと受電コイルの双方に使用すると、所定の電力伝送性能しか達成でききないことを説明したが、これについて説明する。コイル1Aを一方のコイルと他方のコイルの双方に使用すると、図9から、コイル1Aが、Rs>Rw、を満足する最高周波数f1は、約67kHzとなっている。すなわち、コイル1Aのf1は、100kHz未満となっている。したがって、1mmのホルマル線を使ったコイル1Aを送電コイルと受電コイルの双方に使用すると、従来例のコイルと同じ電力伝送性能しか達成できない。
図9に示したコイル1Aを、一方のコイルとして使い、他方のコイルとして、図14に示すコイル1Fを使ってみた。すると、コイル1Aは、少なくとも、Rs>Rw、を満足する最高周波数f1が、67kHzから110kHzに上昇した。その結果、電力伝送性能を向上させることができた。したがって、図9のコイル1Aであっても、対向する他方のコイルを選ぶことにより、磁性材等を使用することなく、空芯のままで電力伝送性能を向上させることができる。
実測によると、コイル1Aにつき、Rs>Rw、の条件を満足する最高周波数f1は、対向するコイルが、コイル1Aの場合には、図9より、約67kHz、対向するコイルが、コイル1Fの場合には、図17より、約110kHz、対向するコイルが、コイル1Gの場合には、図示していないが150kHz、となっている。対向する他方のコイルを選ぶことにより、コイル1Aが、Rs>Rw、の条件を満足する最高周波数f1(Hz)を上昇させることができる。なお、コイル1Fにコイル1Aを対向させた場合に、コイル1Fが、Rs>Rw、の条件を満足する最高周波数f1は、約2MHzとなる。このような周波数領域では、コイル1A単体の実効直列抵抗Rwが、10Ω以上と高い数値となるので、後述するRwによる熱条件の規定、Rw≦(Tw−Ta)/(Ia×θi)、により、2次側コイルであるコイル1Aに流すことが可能な電流を規定できる。
好ましくは、コイル1Aとコイル1Fを組み合わせて使用する場合は、前述したように、f1=110kHz未満の周波数領域で電力を伝送するために、交流電源の出力周波数fa(Hz)をf1(Hz)未満に設定する。当然、fa(Hz)では、コイル1A、コイル1Fの双方が、Rs>Rw、を満足している。コイル1Aが、Rs>Rw、を満足する最高周波数f1は、約67kHzである。しかし、コイル1Aとコイル1Fを組み合わせて使用することにより、コイル1Aを、送電コイル、受電コイルのいずれに使用しても、67kHz以上で電力を伝送できるようになる。
本発明の実施形態においては、一方のコイルのf1(Hz)が低いときに、他方のコイルとして、一方のコイルのf1(Hz)が所定周波数として、図17に示す110kHz、約10%の余裕を見て100kHzよりも高くなるコイルを選ぶ。このようにして選んだ一方のコイルと他方のコイルを組み合わせて電力伝送装置を構成する。このような構成とすることにより、高い周波数でコイルを使用できる。そして、電力伝送装置の電力伝送性能が改善できるようになる。
すなわち、まず、一方のコイルと、他方のコイルを選ぶ。一方のコイルにおいて、Rw、Rs、Rn、の各周波数特性を計測する。計測データに基づき、一方のコイルが、Rs>Rw、を満足する最高周波数f1(Hz)を求める。f1(Hz)の高いコイルの組合せでは、電力伝送性能の周波数特性がよいことが、図9と比較すれば、図17より分かる。そして交流電源30bの出力周波数fa(Hz)をf1(Hz)未満に設定する。このようにして、電力伝送性能のよい電力伝送装置が実現できる。
(コイル1B〜コイル1Dの組合せの説明)
単導線を使用したコイル1B〜コイル1Dは、いずれも、Rs>Rw、を満足する最高周波数f1が100kHzを越えている。コイル1B〜コイル1Dを一方のコイルとし、他方のコイルをコイル1B〜コイル1Dのいずれかとする。一方のコイルにおいて、Rs>Rw、を満足する最高周波数f1(Hz)を求める。電力伝送装置に含まれる交流電源30bの出力周波数fa(Hz)をf1(Hz)未満に設定する。このようにして、電力伝送性能がよい電力伝送装置が実現できる。
(Rs>Rn≧Rwを満足している場合の説明)
次に、Rs>Rn≧Rw、を満足している場合と、満足していない場合の違いについて説明する。前述したように、コイル単体では、この実効直列抵抗Rwを、計測によって正確に求められるが、図6のように構成された変成器においては、図9〜図13に示すように、単に2次側コイルが対向しただけで、周波数が高い領域では、R1が、RwからRnに上昇する。R1は1次側コイルの実効直列抵抗であるが、図5のR1(Rwと同じ)の周波数特性と、図6のR1(Rnと同じ)の周波数特性とは異なっているのが、図9〜図13にプロットされたRwとRnの周波数特性図にて分かる。
さらに、RwとRsよりAを求め、Aの平方根を取ることにより、近似的に結合係数krを求めることができるのは上述したとおりである。
図13にはコイル1Eの、図14にはコイル1Fの、RwとRsより求めた結合係数krがプロットしてある。コイル1Eでは、図13のように、周波数の上昇とともにRn(Ω)が増加する割合が低く、約3.7MHzまで、Rs>Rn≧Rw、を満足している。コイル1Fでは、図14に示すように、周波数の上昇とともにRn(Ω)が急激に増加し、780kHz以上の周波数領域になると、Rs<Rn、となっている。
RwとRsより近似的に求めた両コイル間の結合係数krと周波数の関係を見ると、コイル1Eは、約2MHzまで、結合係数krがほぼ0.8以上の値を保持しているのに対し、コイル1Fでは、結合係数krは、100kHzのときの0.9程度から、周波数が上昇するに従い低下し、1MHzでは0.65程度まで低下しているのが分かる。したがって、Rs>Rn≧Rw、を満足する最高周波数f2は、できる限り高い方が好ましい。
Rs>Rn≧Rw、の条件を満足する周波数領域でコイルを使用することにより、図5のコイル単体および図6に示すように構成された変成器、のいずれもが理論上の理想的な特性に近づくので、電力伝送性能を、従来よりも向上させることが可能となる。
(Rs>Rn≧Rwを満足していない場合の説明)
しかしながら、周波数領域によっては、Rn=Rw、は満足せず、Rn>Rw、となり、Rnの影響を受けるので、図8において、R1とR2の値を正確に求めることはできない。また、R1、R2は、図1に示すRLの値によって変動する。すなわち、R1、R2に流れる電流により、R1、R2は変動し、当然、周波数によっても変動するので、図8において、電力伝送時の、R1、R2の実際の正確な値は求められない。
なお、本実施形態において、Rs>Rw、Rs>Rn≧Rw、の2つの条件を満足するかの測定には、同一のコイルを対向させた場合を記載している。しかし、図17に示すように、構造、構成、外径などが異なる任意のコイル2個を対向させ、1次側コイル、2次側コイルのいずれかで計測してもよく、同一のコイルを対向させて測定しなくてもよい。
また、Rs>Rn≧Rw、の関係に関する詳細な作用効果については、コイル1F、コイル1Gを参照し、後述する。
(熱抵抗θi(℃/W)、温度Tw(℃)、周囲温度Ta(℃)の説明)
次に、Rw≦(Tw−Ta)/(Ia×θi)、の関係について説明する。上述したように、図8にて、実際に負荷抵抗RLに電力を伝送しているときの、コイルの実効直列抵抗R1、R2の値は不明である上、図7において、回路理論上は、R1>Rw、になる。すなわち、最低限、Rwを基準にする以外、コイルの熱条件を規定することができない。したがって、最低限、Rwを基準にしてコイルの熱条件を規定することが必要となる。
この発明を実施する場合において、コイルの熱抵抗θi(℃/W)は、コイルの構造や設置条件により決まる。例えば、コイルが空芯単体の場合は、θiは高く、コイルが熱抵抗の小さい樹脂内に固定され、かつ水中に設置されるような場合は、θiは低くなる。コイルが動作可能な温度Tw(℃)は、コイルの構造や用途により決まり、断熱性のよいケース内に組み込まれているか、変圧器のように機器内部に組み込まれている場合などでは、例えば50℃〜80℃、人体、動物などが触れるところに設置されているような場合などでは、例えば40℃程度となる。コイルが設置される場所の周囲温度Ta(℃)は、屋外などでは、例えば−20℃〜40℃、室内などでは、例えば15℃〜30℃、機器内部などでは、例えば40℃〜50℃となる。
通常、物体は、温度が高くなるほど、周囲に多くの熱を放散するため、正確には熱拡散方程式を解く必要がある。しかし、種々の構造を持つコイルについて、比熱等の熱定数を加味して熱拡散方程式を解くのは困難であるので、下記の方法により簡易的に熱抵抗θi(℃/W)を求める。
まず、1次側、または2次側コイルが設置される場所にて、初期状態のコイル温度T1(℃)を求めておく。コイルに、直流の定電流Id(A)を流して、コイルの両端電圧Vd(V)を計測し、Pd=Vd×Id(W)として、コイルの消費電力を求める。金属導線は温度が上がると抵抗値が増加し、コイルの両端電圧Vdが上昇するので、Vdはペンレコーダー等で記録して平均値を求めるか、A/D変換器等で逐次Vdをモニターし、平均値を取るのが望ましい。熱平衡に達したら、コイル温度T2(℃)を測定する。熱抵抗θi(℃/W)は、θi=(T2−T1)/Pd(℃/W)として求められる。この測定は、Idの電流値を変えて数回測定し、平均値として求めるのが好ましい。
このようにして求められた熱抵抗θi(℃/W)に、実際の使用条件下でのコイルの実効直列抵抗Rw(Ω)とコイルに流れる電流Ia(A)により決まる、実効直列抵抗Rw(Ω)が消費する電力、Rw×Ia(W)を掛けると、実際の使用条件下でのコイルの温度上昇値、Tr(℃)が求められる。Tr=θi×Rw×Ia(℃)となり、コイルが動作可能な温度をTw(℃)、コイルが設置される場所の周囲温度をTa(℃)とすると、Tr=Tw−Taとなり、不等式、(Tw−Ta)≧θi×Rw×Ia(℃)を満足しないと、コイルの使用可能温度を越えるので、本発明の実施が困難になる。
実効直列抵抗Rw(Ω)に関する条件、Rw≦(Tw−Ta)/(Ia×θi)は、前記不等式を変形し、Rw(Ω)またはIa(A)の条件を規定している。電力が伝送される周波数において、実効直列抵抗Rw(Ω)は、1次側または2次側コイル単体で実測して求められる変数、1次側または2次側コイルに流れる電流Ia(A)も実測して求められるか、1次側においては電源条件により決まり、2次側においては負荷条件により決まる変数で、他の、Tw(℃)、Ta(℃)、θi(℃/W)は既知の定数となる。したがって、Rw(Ω)が求められれば、Ia(A)の上限値が規定され、逆にIa(A)が決められれば、Rw(Ω)の上限値が規定される。
Rw(Ω)は、直流抵抗Rd(Ω)と交流抵抗Ra(Ω)の和であり、RdとRwは直接実測することが可能なので、Ia(A)を決定することにより、巻き数により増加する、RdとRaの和である実効直列抵抗Rw(Ω)の上限値を規定でき、実効直列抵抗Rw(Ω)と周波数の関係から、電力が伝送可能な周波数範囲を規定することができる。
1V×10Aと、10V×1Aは、どちらも同じ10Wの電力であるが、コイルの実効直列抵抗による電力損失は、10Aの場合には、1Aの場合の100倍となる。電力ではなく、1次側、2次側を問わず、コイルに流れる電流Ia(A)を考慮し、コイルの実効直列抵抗による電力損失を規定しないと、2個のコイル間での電力伝送性能を改善することはできない。
(Rs>Rn≧Rw、の関係についての説明)
ここで、コイル1F、コイル1Gを参照し、Rs>Rn≧Rw、の関係に関する詳細な作用効果について説明する。リッツ線は、リッツ線を構成する各素線の自己インダクタンスを並列に接続し、各素線の間に相互インダクタンスを有する、図18のような等価回路を持つものと考えられる。リッツ線を平板単層渦巻状に空隙を設けて巻いても、コイル単体の実効直列抵抗Rw(Ω)の周波数特性は余り改善されず、逆にコイル単体の自己インダクタンスが低下するところから、リッツ線は、各ホルマル線間、および導線間の相互インダクタンスにより、コイルとして形成したときの自己インダクタンスが変化するものと考えられる。すなわち、撚り方や撚りのピッチ、巻き方(密接巻き、疎巻き、多層巻き)、ターン数、外形などにより、コイルとして形成したときの特性が変わってくる。
図14に示したコイル1Fと、図15に示したコイル1Gに使われている導線は、どちらも同じ、導体外径が0.05mm、絶縁被覆の厚さが5μm、導線外径が0.06mmのホルマル線を75本束ねたリッツ線で、コイル1Fは外形70mmに30回ターン密接巻きされ、コイル1Gは外形50mmに20回密接巻きされている。
コイル1Fと、コイル1Gの、Rw、Rn、Rsの周波数特性を、図14、図15で比較すると、コイル1Fでは、Rs<Rn、となる周波数領域が、780kHz以上に存在するが、コイル1Gでは、約2.1MHzまで、Rs>Rn≧Rw、の条件を満足している。この原因が、撚り方や、撚りのピッチに関係しているのか、あるいはターン数や外径、巻き方に関係するものなのかは断定できない。しかし、少なくともコイルのRw、Rn、Rsの周波数特性を測定すれば、該コイルが電力伝送装置用に適しているかどうかの判断ができる。その具体的な方法を以下に述べる。
(インダクタンスと結合計数の説明)
表1は、5.0kHzから1.0MHzの各周波数における、コイル1B、コイル1F、コイル1Gの、単体インダクタンスLw(μH)と、短絡した同一のコイルが距離ゼロで対向したときの、インダクタンスLs(μH)の値、および下記に示す計算法により近似的に求めた結合係数kiを記載したものである。この表の各kiが、図10、図14、図15にプロットされたkiである。
Figure 2009118587
まず、コイルのインダクタンス変化から結合係数kiを近似的に求める方法を説明する。上述のように、図5のときのコイルの自己インダクタンスをLw(H)、図6のときの1次側コイルのインダクタンスをLn(H)、とすると、図5,図6において、L1=Lw=Ln(H)、の関係が成り立つ。また、図7のように、1次側コイルに対向している2次側コイルが短絡されているときの1次側のインダクタンスをLs(H)、とすると、Ls=(L1−AL2)H、の関係が成り立つ。実効直列抵抗Rw(Ω)やRn(Ω)とは異なり、実測上も、L1=Lw=Ln(H)、となっている。L1、L2、A、については、前述したとおりである。
1次側と2次側に同一のコイルを使った場合は、L1=L2=Lw、R1=R2=Rwなので、Ls=(Lw−ALw)の関係が成り立つ。前述したが、10kHz〜30kHz以上では、ωL2/R2=ωLw/Rw、の値が50以上なので、A≒ki、とみなせる。したがって、ki=(Lw−Ls)/Lw、ki=√((Lw−Ls)/Lw)として近似的に結合係数kiが求められる。前述したとおり、このようにして、インダクタンスの変化、Lw、Ls、より求めた結合係数をkiと表記している。図14と図15にプロットされたkrとkiを比較すると、図15においては、krとkiが、ほぼ一致しているのが分かる。
しかし、図14においては、krとkiの一致は見られない。さらに、コイル1Bにおいて、図10にkrとkiがプロットしてあるが、図10において、Rn>Rsとなる周波数を境に、krが急激に減少しているのが分かる。実際に、図15に示すコイル1Gを2個使用した場合は、2.1MHzまで、Rs>Rn≧Rw、を満足しており、10MHz以上まで、Rs>Rwを満足しているので、高い周波数、高い力率、高い実効電力効率で電力を伝送でき、電力伝送性能が非常によい。
すなわち、Rs>Rn≧Rw、を満足する最高周波数f2(Hz)が高く、高い周波数で、Rn/Rw、の値が1に近いほど、コイルの性能はよく、周波数の上昇によるRw(Ω)の増加も少ない。このように、周波数と、Rw、Rn、Rsの関係を見ることにより、あるいは、RwとRsより求めた結合係数krの周波数特性と、LwとLsより求めた結合係数kiの周波数特性を比較することにより、コイル単体の実効直列抵抗の周波数特性だけでは判断できない、コイルを対向させた電力伝送手段である変成器としての性能を予測することが可能となる。
したがって、コイルを構成するリッツ線の適切な撚り方や撚りピッチ、巻き方は、複数のコイルを形成して、コイルのRw、Rn、Rsの周波数特性を測定し、好ましくはLw,Lsの周波数特性も測定して、krとkiの周波数特性を比較すれば、最適なコイルを見つけることが可能になる。この手法は、リッツ線に限らず、単銅線、ビニール線、その他後述する他の実施形態の電線にも適用でき、電力伝送に適したコイルを選ぶことができる。すなわち、線材、線径、寸法、形状、巻き方などを変えることにより、コイル単体の実効直列抵抗の周波数特性だけでは判断できない、コイルを対向させた電力伝送手段である変成器としての性能を判断することが可能となり、従来の技術では実現できなかった電力伝送性能の良いコイルが提供できる。
例えば、1mmの単導線を用い、空隙を設けて巻いたコイル1Eは、Rs>Rn≧Rw、を満足する最高周波数f2が、3.7MHzであり、Rs>Rw、を満足する最高周波数f1が、7.7MHzなので、コイル1Gに比べ、Rs>Rn≧Rw、の規定に関しては余り差がない。しかし、4MHzにおける、コイル1E単体のRwは、0.87Ω、コイル1G単体のRwは、約2Ω、10MHzにおける、コイル1E単体のRwは、2.9Ω、コイル1G単体のRwは、17Ω、となっており、コイル1Eは、コイル1Gよりもコイル単体の実効直列抵抗Rw(Ω)の高周波特性がよくなっている。
そのため、Rw≦(Tw−Ta)/(Ia×θi)、の規定により、単導線にて形成したコイル1Eは、リッツ線にて形成したコイル1Gよりも高い周波数で使用可能となる。このように、本発明の実施形態は、Rs>Rw、を満足する最高周波数f1(Hz)、Rs>Rn≧Rw、を満足する最高周波数f2(Hz)、Rw≦(Tw−Ta)/(Ia×θi)、の各規定により、従来の技術では実現できないコイルを実現したうえで、該コイルを使用するのに最適な周波数領域を規定することにより、従来の技術に比べ、電力伝送性能のよい電力伝送装置が実現できるという、優れた効果を奏するものである。
前述の引用文献を含む従来技術では、コイルの特定的な構成を規定しているのみである。そして、特定的構成の一実施例のみを示すことにより、着目する特性、例えば、電力伝送性能が改善できていることを主張している。しかし、上述してきたように、外径や内径を同一にしても、線径、ターン数によりコイルの特性は全く異なってくる。また、全く同一の導線を用いても、構成(外径、ターン数等)が異なると、コイルの特性が異なってくる。すなわち、線材や巻き方などの特定的構成を規定しても、実際に作成されるコイルは種々の構成を持ち、それらが同じ効果を奏することは、何ら保証されていない。
したがって、コイルの特定的構成を規定するのみでは、電力伝送装置のコイルとしての要件を充足するコイルを実現するのは不可能である。現に、従来例に記載されているような、実効電力伝送効率80%で、20Wの電力を伝送可能な電力伝送装置は、今日に至るも実施はされていない。
本願のように、コイルの特定的構成以外の構成が変化したときの特性変化までも明確化し、コイルの作動条件を規定しない限り、電力伝送性能のよいコイル、および電力伝送性能のよい電力伝送装置は実現できない。その一方で、本発明の実施形態は、誘導結合可能な種々の構成を持つコイルにおいて、各コイルの作動条件を規定することにより、電力伝送性能のよい電力伝送装置が実現できる。このように、本発明の実施形態は、従来の技術では実現することが不可能であった極めて優れた効果を奏するものである。
(コイルの力率の説明)
本発明の各実施形態では、磁性材料を装備していないコイルにより、結合係数が0.9程度以下の疎結合状態にて、2個のコイル間で、従来では困難であった大電力を伝送できるコイルを実現するものである。既述したように、力率は0.5以上ではあるが、疎結合状態では、1次側コイルに投入される無効電力が、実効電力を上回る場合もある。
力率が1から0.5に低下すると、皮相電力により1次側コイルに流れる電流は、√2倍になり、1次側コイルの実効直列抵抗Rw(Ω)による電力損失は2倍になる。そのうえ、2次側コイルに接続された負荷抵抗に電流が流れると、2次側コイルに流れる電流により発生する磁束が1次側コイルを形成する導線を貫き、渦電流損を発生させ、1次側コイルが発熱する。したがって、前述の不等式、Rw≦(Tw−Ta)/(Ia×θi)は、本発明の実施形態を実施するのに満足するのが好ましく、満足していないと、本発明の実施が困難になる。
なお、一方のコイルが駆動される周波数fd(Hz)において、Rs>Rn≧Rw、を満足している場合、図95に示す、電源の内部抵抗R3の値が、Rw(Ω)と同等以下の値であれば、負荷抵抗RLから見た2次側コイルは、1次側が短絡されていると見なせるので、R2(Ω)は、Rs(Ω)とほぼ同等の値になる。したがって、2次側コイルにおいては、電力を受電する周波数fj(Hz)において、Rs≦(Tw−Ta)/(Ia×θi)、の関係を満足していれば、さらに好ましい。また、図95において、R1の値は不明ではあるが、1次側コイルにおいても、コイルが駆動される周波数fd(Hz)において、Rs≦(Tw−Ta)/(Ia×θi)、の関係を満足していれば、より好ましい。
ただし、一般の変成器において、鎖交磁束Φc、漏洩磁束Φgと、結合係数kの関係は、k2=Φc/(Φc+Φg)、1−k=Φg/(Φc+Φg)となっており、既知のとおり、鎖交磁束Φcが実効電力を伝達している。漏洩磁束Φgは、既知のとおり、リアクタンス性素子に印加されている電圧Vと、流れている電流Iの積である無効電力をもたらすものである。
コイルにおいては、Iの位相はVの位相よりも90度遅れているため、Vの瞬間値とIの瞬間値を掛けて、1周期積分すれば電力はゼロになるので、リアクタンス性素子であるコイルは電力を消費しない。この分野においては、漏洩磁束がエネルギー損失を起こすと明記し、鎖交磁束比率を上げるためにコイル形状を規定している文献が多数見られるが、上記したように、漏洩磁束は電力を消費しない。
したがって、仮に実効直列抵抗Rw(Ω)が無視できるほど小さければ、漏洩磁束の比率には関係なく、大電力を伝送できる。しかしながら、特許文献1に開示されているような構成のコイルでは、実効直列抵抗Rw(Ω)は小さいものの、コイルの自己インダクタンスや結合係数が小さいので、力率が著しく小さい。このため、大きな皮相電力を1次コイルに供給しなければならなくなるので、電力伝送に適したコイルを実現するには、コイルの構成を定め、全てのパラメータを適切に設定し、なおかつ実効直列抵抗Rw(Ω)を可能な限り小さくしなければならない。
(電力伝送に使用可能な周波数の説明)
なお、本発明の実施形態のコイルを電力伝送に使用可能な周波数の上限は、Rs>Rw、を満足する最高周波数であるf1(Hz)、Rs>Rn≧Rw、を満足する最高周波数であるf2(Hz)、の規定により求めることができるが、コイルを電力伝送に使用可能な周波数の下限は、コイル単体に印加される電圧Vと、コイル単体に流れる電流Iの位相差を、80度以上と規定することにより求められる。
なお、図示しないが、Rs>Rw、を満足する最高周波数f1(Hz)が低いコイル1Bでは、5kHz未満まで、VとIの位相差が80度以上になっているが、Rs>Rw、を満足する最高周波数f1が10MHzを超えるコイル1Gでは、20kHz未満になると、VとIの位相差が80度以下となっている。
前述したように、図10を参照すると、コイル1Bが、Rs>Rw、を満足する最高周波数f1は、約210kHz、Rs>Rn≧Rw、を満足する最高周波数f2は、約75kHzである。Rs>Rw、を満足する最高周波数f1(Hz)、の規定によるコイル1Bを使用可能な周波数領域は5〜210kHz、Rs>Rn≧Rw、を満足する最高周波数f2(Hz)、の規定によるコイル1Bを使用可能な周波数領域は5〜75kHzとなる。このようにして、本発明の実施形態におけるコイルを、理論上の理想的な特性に近い周波数領域で使用することが可能となる。図11には、コイル1Cの位相角θがプロットしてある。コイル1Bのf1(Hz)よりも、f1(Hz)が高いコイル1Cでは、位相角θが80度となる周波数は、約8kHzとなっており、5kHzより若干高い。
上述のごとく、この実施形態によれば、コイル1aの導線11の線径とコイル外径とターン数とを規定することで、必要な自己インダクタンスと結合係数kを確保できる。また、コイル1aの電流値Iaの上限、あるいはコイル1aの実効直列抵抗Rw(Ω)を決めるターン数の上限を規定でき、負荷抵抗を接続したときのリアクタンスXと純抵抗Rの比、X/R、およびコイルに印加される交流電圧とコイルに流れる交流電流の位相差φが極小、力率cosφが極大となり、かつ実効直列抵抗Rw(Ω)が小さい周波数近辺でコイル1aを使用することにより、電力伝送時の無効電力、皮相電力を低減することができる。さらに、実効電力効率を、例えば85%以上に高めることができる。
(コイル1Aと、1Eの周波数特性の比較の説明)
図19は、図9に示した密接巻のコイル1A単体の実効直列抵抗Rw(Ω)と、図13に示した疎巻のコイル1E単体のコイル実効直列抵抗Rw(Ω)の周波数特性を比較した図である。図19に示すように、周波数が上昇したときに、疎巻のコイル1Eの方が密接巻のコイル1Aに比べて、コイルの実効直列抵抗Rw(Ω)の増加を抑えることができる。また、同一外径のコイルでは、巻線の総延長が短くなるので、直流抵抗を低く抑えることができる。
(空隙の幅により実効直列抵抗の周波数特性が変化する例の説明)
図20は、0.4mmのホルマル線を25ターン巻いた場合、空隙の幅により、コイルの実効直列抵抗の周波数特性が、どのように変化するかを示す図である。空隙の幅は、0mm、0.2mm、0.4mmに設けてあるが、広い空隙の方が、周波数の上昇に伴う実効直列抵抗の増加が抑制できるのが分かる。なお、ターン数を同一としているので、空隙の幅が広くなるほどコイル外径は大きくなっており、コイルを構成する銅線の総延長が長くなっているので、低い周波数では、空隙を設けない方が、実効直列抵抗は低くなっている。
ただし、渦電流損は、磁束が貫く導体体積に比例するので、単導線の最大径が0.2mm以上でないと、導線間に空隙t(mm)を設けても、周波数の上昇によるコイル単体の実効直列抵抗Rwの増加率はそれほど低下しない。図15の、線径0.2mmの単導線を密接巻きしたコイル単体の周波数と実効直列抵抗Rwの関係から見ても、線径0.2mmでは、周波数の上昇による実効直列抵抗の増加率は少なく、線径0.2mmの単導線では、空隙を設けても、実効直列抵抗Rwの周波数特性は余り改善できないのが分かる。
図12に示すコイル1Dの自己インダクタンスは、約19μHとなっている。コイル1Dを2層に巻いたコイルの自己インダクタンスは、約76μHとなっており、自己インダクタンスがターン数の2乗に比例するという理論とほぼ同等の結果が得られている。2層に巻いたコイルの実効直列抵抗の周波数特性は単層巻に比べ悪くなっており、Rs>Rw、を満足する最高周波数f1(Hz)も低い。しかし、実効直列抵抗が低い低周波数領域においては、リアクタンスを確保できるので、2層巻とし、低周波数で使用する方が有利な場合もある。
なお、コイル1Dを2層に巻いたコイルを一方のコイルおよび他方のコイルに用いる。コイル1Dを2層に巻いたコイルが、Rs>Rw、を満足する最高周波数f1は、550kHzであり、コイル1Dを2層に巻いたコイルは、インダクタンスが高いので、250kHz未満の周波数で使用しても、所要のリアクタンスを確保できる。
図16において、線径0.2mmの単導線を密接巻きしたときの、5kHzでの実効直列抵抗Rwは、0.83Ωになっている。1MHzでの実効直列抵抗は、2.16Ωとなっており、実効直列抵抗Rwの増加率は、2.16/0.83=2.60で、前述した線径1mmの単導線を、空隙を設けて巻いたコイル1Eの増加率、7.6よりも小さくなっている。ただし、線径0.2mmのコイルでは、Rw(Ω)の絶対値が大きくなり、熱抵抗θi(℃/W)が小さくなるので、Rw≦(Tw−Ta)/(Ia×θi)の関係を満足するように、伝送する電力値に適合する導線径を選択しないとならない。
(コイルのターン数と、インダクタンスの説明)
次に、コイルのターン数8回、インダクタンスの最低値2μHにつき説明しておく。従来例のコイルは5回のターン数で、1MHzにおける、コイルのLwは、0.79μH、Lsは、0.45μH、Lw、Lsから近似的に計算した結合係数kiは、0.66となっており、電力伝送性能も著しく悪い。前記コイルと同じ導線を使って同形状に8回巻回したコイルは、Lwが、約2.1μH、Lsが、約0.7μH、近似的に計算した結合係数kiは、約0.83となっている。
従来例のコイルの導線を8回巻回したコイルは、前述したように、実際には実効直列抵抗が過小なうえ、Rw(Ω)の周波数特性も悪く、かつ十分なリアクタンスを確保できる高周波数領域で、Rs>Rw、を満足していない。このために、導線の適切な撚り方および巻き方を選ぶ必要があるが、高周波領域で使用する最低のインダクタンスと結合係数が確保できるので、上記の実測結果から最低限8回の巻回数を規定するとともに、インダクタンスの最低値として、2μHを規定している。
そして、前述したように、従来例のコイルの導線の直径は1.5mmであり、5回巻回したコイルの最外周部に、さらに導線を3回巻回し、ターン数を8回とすると、外径は、3回×2倍×1.5mm+30mm=39mmとなる。したがって、従来例のコイルの導線を使用して構成したコイルにおいて、インダクタンスの最低値2μHと結合係数を確保するには、コイル外径Dと線径d3の比が、39/1.5=26、となり、コイル外径Dは線径d3の少なくとも25倍は必要となる。
ただし、前述したように、「Dがd3の少なくとも25倍は必要」、という特定的構成は、線材やターン数という別の構成要因を変えることにより、インダクタンスの最低値2μHと結合係数を確保できなくなることも有り得る。例えば、線材の直径を細くして、線間に空隙を設ける場合などが考えられる。したがって、インダクタンスの最低値2μHを確保するには、8回以上の巻き数が必要となる可能性もある。インダクタンスの最低値2μHを確保するように、使用される線材と巻回数を選び、最終的に構成が一義的に特定されたコイルにおいて、Rw、Rs、Rn、の周波数特性を計測する。構成が一義的に特定されたコイルとは、実際にコイルとして作成されたものを意味するのは言うまでも無い。そこで、実際にコイルとして作成されたものを計測して求められた特性から導かれる前述したコイルの作動条件である交流電源の周波数fa(Hz)を規定する。
繰り返しになるが、コイルは、例えば特定的な構成を規定するだけでは、他の構成要因を変化させることにより、実質的には無限の構成を持つ。特定的な構成を規定したコイルが、その他の特定的構成規定を要旨とする発明よりも、常に優れた電力伝送性能を発揮する効果を奏することは証明されていない。また、証明するのは実質的に不可能である。
本発明の実施形態によってのみ、上述したインダクタンスの最低値2μHと結合係数を確保するように構成を規定し、それらの特性条件を満足するコイルの中から、電力伝送に適したコイルを選ぶことができるようになる。このように、本発明の実施形態は、従来例のコイルとは異なり、種々の実施形態における実測特性のデータを示している。誘導結合可能な構成を持つコイルは、特定不能なバリエーションを持つ。そのため、任意の構成のコイルにおいて電力伝送性能を確保することは不可能である。また、従来の技術では、構成が一義的に特定されたコイルが、電力伝送性能を確保可能という判断すらできない。
前述した方法により選ばれたコイルを、本発明の実施形態の要旨である特性規定による作動条件を規定することによってのみ、種々の構成を持つ電力伝送装置のコイルを使用した性能のよい電力伝送装置が実現できる。この極めて優れた効果は、コイルの特定的構成のみを規定した従来例のコイルでは実現することが不可能であった。
また、一方のコイルが、Rs>Rw、を満足する最高周波数f1は、500kHz以上であることが好ましい。同一のコイルを使用し、Rs>Rw、を満足する最高周波数f1(Hz)が高いコイルを、リアクタンスが確保可能な周波数で使用する。例えば、250kHz未満で駆動することにより、電力伝送性能を確保できることが確認できている。あるいは、一方のコイルが、Rs>Rn≧Rw、を満足する最高周波数f2が、500kHz以上であるとより好ましい。
(負荷抵抗値と力率に関する説明)
図21、図22は、負荷抵抗RLを変動させたときの力率と周波数との関係を示す図である。なお、前述した図9には、送電コイル、受電コイル共に、コイル1Aを用いた場合の実効電力伝送効率ηと周波数との関係も図示してある。また、図17にも、送電コイルにコイル1A、受電コイルにコイル1Fを用いた場合の実効電力伝送効率ηと周波数との関係を図示してある。いずれも負荷抵抗RL=10Ωのときの周波数特性である。力率は1次側のインピーダンスを計測して位相角φを求め、cosφから計算してある。cos60度=0.5である。φ<60度となる周波数領域では、力率は50%以上となる。
図21、図22から分かるように、負荷抵抗値が低いと力率が最高となる周波数は低い。負荷抵抗値が高いと力率が最高となる周波数は高い。また、負荷抵抗値が低いと力率の極大値は大きい。負荷抵抗値が高いと力率の極大値は小さい。一般に使用される最小の負荷抵抗値である5Ω以下では、力率が最高となる周波数は、一方のコイルのf2(Hz)未満になっている。
図21で、コイル1Aを2個使用した場合には、Rs>Rw、を満足する最高周波数f1=67kHz未満において、力率50%以上を満足する負荷抵抗値は、10Ω以下である。図22で、送電コイルにコイル1Aを、受電コイルにコイル1Fを使用すると、Rs>Rw、を満足する最高周波数f1=110kHz未満において、力率50%以上を満足する負荷抵抗値は、50Ωまで対応している。また、図21と図22とを比較すれば分かるが、図22では、f1(Hz)の上昇と共に、力率の極大値も上昇している。
図17の電力伝送効率ηと周波数との関係を、図9と比較すると、f1(Hz)が上昇すると共に、電力伝送性能が向上していることが分かる。図9、図17ともに、周波数がf1(Hz)以上となると、電力伝送効率ηが極端に悪化する。したがって、コイル1Aにコイル1Fを対向させることにより、電力伝送性能を改善できることが分かる。
従来例のコイルの特定的構成の一例を記載した電力伝送装置では、特定の周波数100kHzでの実施例を記載しているのみである。そして、周波数は100kHzに限定されないと明記されている。しかし、上記のように、周波数により力率とコイルの実効直列抵抗Rw(Ω)は変化する。負荷抵抗RLの最小値Rm(Ω)における力率最大点に周波数を設定しないと、無効電力により、実効直列抵抗Rw(Ω)による電力損失が発生する。前述したように、Rw、Rs、Rnの周波数特性を計測し、f1(Hz)とf2(Hz)を求める。力率が最高となる周波数fφ(Hz)が、f1(Hz)よりも小さいことが好ましい。しかし、負荷RLの抵抗値が大きくなると、コイルの実効直列抵抗Rw(Ω)とRL(Ω)の比、Rw/RLが小さくなる。そのため、Rw(Ω)による電力損失が負荷が消費する電力に比べ相対的に小さくなる。したがって、負荷抵抗値が大きい場合でも、力率は小さくなるが、f1(Hz)未満の周波数で電力伝送を行なえる。
(実効電力伝送効率ηの周波数特性についての説明)
なお、図9、図17における実効電力伝送効率ηの周波数特性について説明しておく。受電コイルに10Ωの無誘導負荷抵抗を接続し、送電側でインピーダンスを計測する。インピーダンス計測により送電側にて位相角φを求め、各周波数での力率cosφを計算しておく。送電コイルには0.2Aの一定電流Iaが流れるよう、送電コイルに印加する電圧V(V)を設定する。送電側の実効電力Prは、Pr=cosφ×V×Ia(W)、として求められる。2次側の実効電力Ps(W)は、10Ωの無誘導負荷抵抗の両端電圧の実効値Veを求め、Ps=Ve/10(W)、として求められる。各周波数における実効電力伝送効率ηは、η=Ps/Pr、として求められる。この計測法は、負荷抵抗値や周波数により力率が変動することを勘案していない従来例とは異なっている。
実際の電気機器が必要とする電力から、負荷抵抗値を求めてみる。電気機器が必要とする電力は、電圧Vs=5V、電流Is=0.5A、電力2.5W程度が下限であるため、負荷抵抗値RLの最小値は10Ω程度となる。10W以上の電力を必要とする電気機器では、電圧Vsを上げ、電流Isを下げている。実際の回路電圧は5V程度であっても、降圧式のPWM降圧コンバータを使っている場合が多い。例えば、30W程度の電力を必要とするパソコンなどでは、15V、2Aの電源を使っている。この場合の負荷抵抗値RLの最小値は、15/2=7.5Ω程度になる。さらに、電圧Vsを上げ、電流Isを下げ、30V、1A程度とすると、負荷抵抗値RLの最小値は、30/1=30Ω程度になる。大体の目安として、負荷抵抗RLの最小値は、2〜50Ω程度になる。したがって、コイルの実効直列抵抗による電力損失を受電電力の20%程度以下に抑えるには、負荷RLの最小値をRm(Ω)、とすると、受電コイルの実効直列抵抗Rwは、Rw×5≦Rm(Ω)、を満足している必要がある。すなわち、交流電源の出力周波数fa(Hz)において、受電コイルのRwは、0.4〜10Ω以下であることが望ましい。
実測によると、送電コイル側の抵抗成分は、前述した実施形態においては、周波数にもよるが、通常、負荷抵抗値RL以下となる。したがって、負荷RLの最小値をRm(Ω)、とすると、送電コイル、受電コイル共に、実効直列抵抗Rwは0.4〜10Ω以下であることが望ましい。
実効直列抵抗Rw(Ω)の上限が決まると、Rs(Ω)、Rn(Ω)は実測して求められる。f1(Hz)において、実効直列抵抗Rwは0.4〜10Ω以下であることが望ましい。したがって、実際にコイルが使用される周波数では、Rs、Rnともに、10Ω以下であることが望ましい。
図2に示し、前述したが、実際に電力伝送を行なうと、送電コイルと受電コイルに流れる電流が発生する磁束が他方のコイルを貫通することによる渦電流損による損失が発生し、電力損失は増加する。前述したように、実際に電力伝送を行なっている場合、図8におけるR1、R2の値は不明である。よって、上記に述べた実際の実効直列抵抗値Rw(Ω)は、Rw≦(Tw−Ta)/(Ia×θi)、の規定と同じように、受電側機器の使用条件によって決定されるものである。
(コイルを構成する導線の説明)
図23(A)は、図1に示したコイルに用いられる他の導線の断面図である。図2(A)では、単導線12として断面が円形のものを用いたが、図23(A)に示した例のように断面が楕円形の単導線12aに絶縁被覆13aを施したものや、図23(B)に示すように断面が多角形の単導線12bに絶縁被覆13bを施したものなどを用いることができる。この例においても、絶縁被覆13a,13bとしては、例えば、ホルマル線のように厚みが薄くても強い被覆や、ビニール線のように厚い被覆のいずれであってもよい。
ただし、図23(A)および図23(B)において、最大外寸d1を示す線は、導線が巻回される面と平行になっていることが好ましい。これは、本発明の他の実施形態においても同様である。また、隣接している導線が密接している場合には、導線の接点が点になるように、巻回面に対して、導線断面の方向を決定するのが好ましい。
(断面傘型のコイルの例の説明)
図24は導線を断面傘型に巻回したコイルの断面図である。図2(A)に示したコイル1aは、導線11を平板空芯単層渦巻状に巻回したのに対して、図24に示したコイル1bは、断面が傘型となるように空芯単層渦巻状に形成したものである。
この場合、図24の巻き線幅D1、内径D2とし、2×D1+D2が、導線の最大外形d1の25倍以上であることを条件としている。なお、2つの巻き線幅D1を示す線がなす角度θは、180度から90度の間に設定するのが好ましい。ただし、図23において、巻き線幅D1が内径D2の概ね1/4以下で、かつ短絡したコイルが対向したときに、Rs>Rw、を満足している場合には、θがゼロに近いソレノイド形状とすることもできる。
図25(A)および図25(B)は、図24に示した断面傘型に巻回したコイル1bと、図2(A)に示した断面平面型のコイル1aの磁場強度を対比して説明するための図である。図2(A)に示したコイル1aは、図25(B)に示すように、平面位置における磁場強度が、中央部分が強くなって周辺に行くほど磁場強度が弱くなっている。これに対して、図25(A)では図24に示した断面傘型に巻回したコイル1bの上下を反対にしたときの平面位置における磁場強度を示している。図25(A)に示すように、断面傘型に巻回したコイル1bは、コイル対向面上の全面で、ほぼ均一の磁場強度を得ることができる。
また、コイル1bは、断面が波線を描くように巻回してもよい。
(絶縁材上に導線を巻回したコイルの例の説明)
図26は、絶縁材上に導線を巻回したコイルの断面図である。この例は図2(A)に示したコイル1aを絶縁材5上に配置し、コイル1aの単導線11上に絶縁性樹脂6を塗布したものである。この例では、絶縁部材としての絶縁性樹脂6が導線11間に入り込んで固定されるので、コイル1aの変形を防止することができる。絶縁性樹脂6に代えて接着剤でコイル1aを絶縁材5上に固定してもよい。このような構成とすることにより、熱抵抗θiを低減でき、コイルの発熱を抑えることができる。
具体的には5mm程度の絶縁材5を両コイル間に設置することにより、1次側と2次側の間に1万V程度の電位差があっても問題ない。また、熱抵抗θiを低下させ、コイルの発熱を低減できるので、大電力を伝送できる。
(コイルの他の実施例の説明)
図27は、この発明の他の実施形態における電力伝送装置のコイルを示す図であり、図27(A)は平面図を示し、図27(B)は図27(A)の線2B−2Bに沿う断面を拡大して示す。
図27(B)に示した実施形態では、単導線12として最大径d1が0.4mm以上の単導線12に絶縁被覆13を施した導線11を平板空芯単層渦巻状に巻回し、図27(B)に示すように、コイル1cの隣接する各導線11間に、0.2mm以上の空隙tを設けて疎巻きするようにしたものである。この例においても、絶縁被覆13としては、ホルマル単導線のように厚みが薄くても強い被覆や、ビニール線のように厚い被覆のいずれであってもよい。また、隣接する導線11間に空隙t(mm)を設けているので、絶縁被覆13を施していない裸導線を用いてもよい。最大外径d1が、0.4mm未満のときには、t=d1/2(mm)、の空隙を設けるようにする。なお、この実施形態は、後述する他の実施形態の導線についても同様で、最大外径d1(mm)をdと表記する。
この実施形態においても、コイル1cは、コイル外径をDとしたとき、少なくともコイル外径Dが単導線12の最大径d1の25倍以上であり、かつ導線11の巻き数が8以上になるように構成される。さらに、コイル1cの自己インダクタンスが少なくとも2μH以上を満足することを条件としている。
また、図27(A)に示した、コイル1c単体での実効直列抵抗を、Rw(Ω)、コイル1cに対向する他方のコイルを短絡したときの、コイル1cの実効直列抵抗を、Rs(Ω)、としたときに、Rs>Rw、を満足する最高周波数をf1(Hz)とすると、送電コイルであるコイル1c、または他方のコイルは、f1(Hz)未満の周波数であるfd(Hz)にて駆動される。図1に示す交流電源30bの出力周波数であるfa(Hz)は、f1(Hz)未満の周波数に設定される。また、受電コイル2であるコイル1c、または他方のコイルが電力を受電する周波数fj(Hz)は、f1(Hz)未満であることを条件とする。好ましくは、コイル1cを一方のコイルと他方のコイルの双方に使用した場合、100kHzにて、Rs>Rw、を満足している。
さらに、対向する他方のコイルを開放したときの、コイル1cの実効直列抵抗を、Rn(Ω)、としたときに、Rs>Rn≧Rw、を満足する最高周波数をf2(Hz)とすると、送電コイルであるコイル1c、または他方のコイルは、f2(Hz)未満の周波数であるfd(Hz)にて駆動される。図1に示す交流電源30bの出力周波数fa(Hz)は、f2(Hz)未満の周波数に設定される。また、受電コイ2ルであるコイル1c、または他方のコイルが電力を受電する周波数fj(Hz)は、f2(Hz)未満であることを条件とする。
さらに、コイル1cの熱抵抗をθi(℃/W)、コイル1cの許容動作温度をTw(℃)、コイル1cが設置される場所の周囲温度をTa(℃)、電力を伝送しているときにコイル1cに流れる交流電流をIa(A)、としたときに、Rw≦(Tw−Ta)/(Ia×θi)、なる関係を満足する。
図2(B)に示したように、単導線を密接して巻いた場合には、導線を流れる電流により発生する磁束Φが、隣接する導線を貫き、隣接する導線内に渦電流を発生させるとともに、渦電流により、導線中を流れる電流が影響を受け、実効直列抵抗Rw(Ω)が増加する。この実施形態では、空隙を設けることで、図27(B)に示すように、隣接する一方の導線を流れる電流により導線近傍に発生する磁束Φが、隣接する導線を貫かなくなり、隣接する導線を磁束Φが貫くことにより、隣接する導線内に発生する渦電流損を抑えることができる。
渦電流損は周波数に比例して増加するので、隣接する導線間に空隙を設けることにより、周波数の上昇による実効直列抵抗Rw(Ω)の増加を防止できる。なお、導線11の近傍の磁束Φは強く、導線11から少しでも離れると磁束Φは急激に弱くなるので、わずかな空隙でも効果があり、空隙の幅は任意の寸法に広げることができるが、余り広げすぎると、8回の巻線回数を確保できなくなる場合や、コイルの自己インダクタンスが2μH以下となる場合がある。
(コイルの他の例の説明)
図28は、この発明のさらに他の実施形態における電力伝送装置のコイルを示す図であり、図28(A)は平面図を示し、図28(B)は図28(A)の線3B−3Bに沿う断面を拡大して示す。
この実施形態は、コイル1dの外周部における隣接する導線11は密接して密巻きされ、内周部における隣接する導線11は空隙を有して疎巻きされて平板空芯単層渦巻状に巻回されている。その結果、図28(B)に示すように、コイル1dの外周部に設けられる隣接する導線間の空隙の幅t1は、コイル1dの内周部に設けられる隣接する導線間の空隙の幅t2よりも狭くなっている。
この実施形態においても、コイル1dは、コイル外径をDとしたとき、少なくともコイル外径Dが単導線12の最大径d1の25倍以上であり、かつ導線11の巻き数が8以上になるように構成される。さらに、コイル1dの自己インダクタンスが少なくとも2μH以上であることを条件としている。
また、図28(A)に示した、コイル1d単体での実効直列抵抗を、Rw(Ω)、コイル1dに対向する他方のコイルを短絡したときの、コイル1dの実効直列抵抗を、Rs(Ω)、としたときに、Rs>Rw、を満足する最高周波数をf1(Hz)とすると、送電コイルであるコイル1d、または他方のコイルは、f1(Hz)未満の周波数であるfd(Hz)にて駆動される。図1に示す交流電源30bの出力周波数fa(Hz)は、f1(Hz)未満の周波数に設定される。また、受電コイルであるコイル1d、または他方のコイルが電力を受電する周波数fj(Hz)は、f1(Hz)未満であることを条件とする。好ましくは、コイル1dを一方のコイルと他方のコイルの双方に使用した場合、100kHzにて、Rs>Rw、を満足している。
さらに、対向する他方のコイルを開放したときの、コイル1dの実効直列抵抗を、Rn(Ω)、としたときに、Rs>Rn≧Rw、を満足する最高周波数をf2(Hz)とすると、送電コイルであるコイル1d、または他方のコイルは、f2(Hz)未満の周波数であるfd(Hz)にて駆動される。図1に示す交流電源30bの出力周波数fa(Hz)は、f2(Hz)未満の周波数に設定される。また、受電コイル2であるコイル1d、または他方のコイルが電力を受電する周波数fj(Hz)は、f2(Hz)未満であることを条件とする。
さらに、コイル1dの熱抵抗をθi(℃/W)、コイル1dの許容動作温度をTw(℃)、コイル1dが設置される場所の周囲温度をTa(℃)、電力を伝送しているときにコイル1dに流れる交流電流をIa(A)、としたときに、Rw≦(Tw−Ta)/(Ia×θi)を満足する。
上記実施形態のコイルは、広い周波数範囲で実効直列抵抗Rw(Ω)が低く、Rs>Rn≧Rw、を満足している最高周波数f2(Hz)も高いので、電力伝送特性がよい。
図29は、図28(B)において、最外周部の巻線が生成する磁束分布をコンピュータでシミュレーションした図である。コイル内径は5mm、導線径は1mm、巻数は25ターン、導線間隔1.7mmのコイルが生成する磁束分布を示しており、導線間隔は導線の中心と中心の間隔である。
図29を参照すると、最外周部の巻線が生成する磁束は内周部に歪んでいる。さらに、最外周から1周内周部に入った巻線も同様の磁束分布をする。内周部になると、ほぼ円形状の磁束分布となる。このコンピュータシミュレーションの結果からも、内周部の磁束密度が高く、外周部の磁束密度が低いのが分かる。これは、図25にも示してある。
上述したコンピュータシミュレーションの結果からも明らかなように、平面渦巻き状に密接巻きされたコイルが生成する磁束密度は、外周部近辺では低く、内周部では高い。そのため、外周部を蜜巻きし、内周部を疎巻きするようにコイル1dを構成することによって、できる限りコイル対向面上の磁束密度を一定にし、コイル1dに対向しているコイルとの相対位置が変動したときの伝送可能電力の低下を軽減できる。内周部は磁束密度が高いので、空隙を設けることにより、渦電流損を防止できる。空隙の作用効果は前述したとおりである。
図30は、この発明のさらに他の実施形態における電力伝送装置のコイルに用いられる裸単導線の集合体を示す断面図である。前述の実施形態は、導線11として、単導線12に絶縁被覆13を施したものを用いたのに対して、この実施形態は、図30に示すように、最大径d2が0.3mm以下の裸単導線14の集合体を絶縁被覆13cで覆ったいわゆるビニール線と称される導線11cを用いる。裸単導線14の集合体である導線11は、撚らないで構成する方が好ましい。なお、表皮効果と過電流損の影響を示す図16の線径より、裸単導線14の最大径d2を0.3mm以下に選んでいる。
裸単導線の集合体は、裸単導線の集合のみでは、撚らないと、その集合体が電線としての形状を保持できない。避雷針の接地線は鬼撚り線と呼ばれ、複数の裸単導線を単方向のピッチに撚らず、ランダムに撚って、実効直列抵抗を下げていることが知られている。
また、複数の裸単導線14の集合体に強い撚りピッチを加えると、裸単導線14同士が密接し、図28の導体断面が、図2(B)の単導線12と同じになるので、表皮効果や渦電流損の影響を低減できなくなる。ただし、1mmの単導線を用いて形成したコイル1Eを参照し、後述するが、コイルを形成する導線として裸単導線の集合体を使用し、導線間に空隙を設けて巻回する場合においては、適切な撚りを施した方が、高周波数での特性がよい場合もある。実際にビニール線を巻いて作成したコイルは、殆どの場合、1MHz以上の周波数帯域において、Rs>Rn≧Rw、の関係を満足している。
巻回方法としては、図2(A)に示したように、隣接する導線11を密着させて巻回する方法や、図27Aに示したように、隣接する導線11間に空隙を設けて巻回する方法を適用可能である。いずれも平板空芯単層渦巻状に巻回することでコイルを形成できる。なお、導線11cを密接巻したとき、隣接する導線との間に絶縁被覆13cによる空隙を設けることができ、図27(A)に示した実施形態と同様にして、空隙を設けることで、図27(B)に示すように、隣接する一方の導線を流れる電流により、導線近傍に発生する磁束Φが、隣接する導線を貫かなくなり、隣接する導線を磁束Φが貫くことにより、隣接する導線内に発生する渦電流損を抑えるとともに、渦電流により、導線中を流れる電流が影響されるのを防ぎ、実効直列抵抗の増加を低減できる。なお、表皮効果の影響も低減できる。
上記実施形態のコイルは、広い周波数範囲で実効直列抵抗Rw(Ω)が低く、Rs>Rn≧Rw、を満足している最高周波数f2(Hz)も高いので、電力伝送特性がよい。
(導体内部に絶縁層を有するコイルの例の説明)
図31は、この発明のさらに他の実施形態におけるコイルを形成する導体内部に絶縁層を有する電力伝送装置のコイルを示す図であり、図31(A)は平面図を示し、図31(B)は図31(A)の線4B−4Bに沿う断面を拡大して示す。図32は、図31に示したコイルに用いられる導線の断面図である。
この実施形態は、図32(B)に示す単導線15に、ポリウレタンなどの透明樹脂を絶縁被覆16として施した、例えば、図32(A)に示す断面構造を持つ導線8の集合体導線である11d(通称リッツ線とも称される)を、コイルを形成する導線として用いる。
図32(A)に示す導線11dにおいて、導体15の断面積と、絶縁被覆16の断面積との比率は、導線径や導線内部の導体分割数などにより決まるので、一概にはいえないが、導線11dは、それぞれに絶縁被覆16が施された、例えば7本の単導線8の集合体で構成されている。単導線8は、絶縁被覆16を除く導体15の最大径をd4(mm)としたときに、d4が0.3mm以下であって、絶縁被覆16の厚さαを(d4)/30以上に選ぶのが好ましい。また、絶縁被覆16以外の空気層も絶縁体層であるところから、図30(A)のように、単導線8が7本含まれる最小の円を描き、その円に内接する正六角形を考え、正六角形の面積と、線径d4の導体15の7本の合計断面積を計算すると、導線断面中の絶縁体層の比率は、空気層も含め、約11%になる。なお、表皮効果と過電流損の影響を示す図16の線径より、単導線8の最大径d4を0.3mm以下に選んでいる。
コイル1eは、図31(A)に示すように、絶縁性樹脂で形成されたボビン7に導線11dを図31(B)に示すように、多層密接巻きして構成される。コイル1eは、コイル外径をDとしたとき、少なくともコイル外径Dがリッツ線11dの最大径d3の25倍以上であり、かつ導線11dの巻き数が8以上になるように構成される。さらに、コイル1eの自己インダクタンスが少なくとも2μH以上を満足することを条件としている。
また、電力を伝送する周波数における、コイル1e単体での実効直列抵抗をRw(Ω)、図31(A)に示したコイル1eを2個対向させ、対向する一方のコイルを短絡したときの、他方のコイルの実効直列抵抗をRs(Ω)、としたときに、Rs>Rw、を満足する最高周波数をf1(Hz)とすると、送電コイルである一方のコイルまたは他方のコイルは、f1(Hz)未満の周波数fd(Hz)にて駆動される。図1に示す交流電源30bの出力周波数fa(Hz)は、f1(Hz)未満の周波数に設定される。また、受電コイル2であるコイル1e、または他方のコイルが電力を受電する周波数fj(Hz)は、f1(Hz)未満であることを条件とする。好ましくは、コイル1eを一方のコイルと他方のコイルの双方に使用した場合、100kHzにて、Rs>Rw、を満足している。
さらに、対向するコイルの一方を開放したときの他方のコイルの実効直列抵抗をRn(Ω)、としたときに、Rs>Rn≧Rw、を満足する最高周波数をf2(Hz)とすると、送電コイルである一方のコイルまたは他方のコイルは、f2(Hz)未満の周波数fd(Hz)にて駆動される。図1に示す交流電源30bの出力周波数であるfa(Hz)は、f2(Hz)未満の周波数に設定される。また、受電コイル2であるコイル1e、または他方のコイルが電力を受電する周波数fj(Hz)は、f2(Hz)未満であることを条件とする。
さらに、コイル1eの熱抵抗をθi(℃/W)、コイル1eの許容動作温度をTw(℃)、コイル1eが設置される場所の周囲温度をTa(℃)、電力を伝送しているときにコイル1eに流れる交流電流をIa(A)、としたときに、Rw≦(Tw−Ta)/(Ia×θi)、を満足する。
図31に示した実施形態は、図32(A)に示した複数の単導線8の集合体からなる導線11dをボビン7に多層密接巻きしたが、これに限ることなく、図2(A)に示した単層密接巻きや、図27(A)に示した単層疎巻き、図29(A)に示した外周部における隣接する導線は密接して密巻きし、内周部における隣接する導線は空隙を有して疎巻きしてもよい。
上記実施形態のコイルは、広い周波数範囲で実効直列抵抗Rw(Ω)が低く、Rs>Rn≧Rw、を満足している最高周波数f2(Hz)も高いので、電力伝送特性がよい。また、本実施形態においては、リッツ線を数本撚って1本の撚り線とし、さらに撚り線を数本まとめて撚り、太い電線としてもよい。
(導線の構造の説明)
図33、図34、図35、図36、図37(A)〜図37(C)は、この発明のその他の実施形態における電力伝送装置のコイルを構成する導線の構造を示す図である。
図33は、パイプ状の導体17内に絶縁材料18が充填されており、パイプ内が空洞である場合に、パイプが折れて、曲げ加工ができなくなるのを防止している。なお、パイプの材質やパイプの肉厚により、パイプ自体が可撓性を持つ場合は、パイプ内が空洞であってもよい。
図34は、絶縁材料19上に、分割して導体20を形成したものの一例を示す。
図35は、絶縁材料21上に、分割して導体22を形成し、絶縁材料21の内部にも導体23を形成したものの一例を示す。
図36は、断面十字状の絶縁材料26に、分割して導体27を形成したものの一例を示す。
図37(A)〜図37(C)は、箔状導体と絶縁材料を重ね、断面が螺旋状で、導体と絶縁体が交互に存在するように導線を形成したものである。すなわち、図37(A)に示すように箔状導体24と絶縁材料25とを積層し、図37(B)に示すように積層した箔状導体24と絶縁材料とを巻回し、図37(C)に示すように断面が螺旋状となる導線を形成したものである。
図33〜図36は、導線を構成する単導線の周上に導体層が有るが、導体層に絶縁被覆を施しても、施さなくても、実施形態に適合するなら、いずれでもよい。
上述のごとく、図33〜図37は、コイルを形成する導体内部に絶縁層を有する実施形態で、絶縁材料は導線内部に絶縁層を設けるとともに、導線に可撓性を持たせ、導線の曲げ加工を容易にするものである。
また、図32(A)に示す単導線を束ねて形成した導線内に存在する空気層、図32(A)、図33〜図37に示す導線を多層巻きする場合において、コイル断面に存在する空気層も、絶縁材とみなせる。
図32(A)、図33〜図37の実施形態では、導線を構成する導体の表面積を増加させることができ、導体を貫通する磁束による渦電流損は、導体の体積に比例して増加する。このため、導線内の導体を貫く磁束経路に存在する導体体積を減少させることができるので、表皮効果および渦電流損による実効直列抵抗Rw(Ω)の増加を防止できる。
図32(A)、図33〜図37の実施形態は、導線を構成する導体を分割し、導線内部に絶縁層を設ける一例に過ぎず、その他の実施形態が存在することは言うまでもない。
上述の各コイルは、1次側コイルと2次側コイルが分離可能な電力装置における送電コイルや受電コイルのみならず、2つのコイルが分離不能な変圧器(変成器)として使用することも可能である。
上述した各実施形態に示すコイルは、各実施形態のものを1次側コイル、2次側コイルとして同一のコイルを使用する必要はなく、例えば図2(A)の実施形態に示すコイル1aであっても、ターン数や外形が異なるコイルを、1次側コイル、2次側コイルとして用いてもよく、あるいは、図2(A)の実施形態のコイル1aと、図27Aの実施形態のコイル1cを組み合わせることもできる。このような構成とすることにより、巻線比を任意に設定可能となる。そして、昇圧、降圧が可能な、コイルを使った電力伝送手段が実現できる。
このような場合、Rw(Ω)は、各コイル単体で計測し、Rn(Ω)、Rs(Ω)は、両コイルを対向させ、各コイルにおいて計測し、Rs>Rw、Rs>Rn≧Rw、の関係を満足するかを確認すればよい。1次側、2次側の各コイルにて、Rw、Rn、Rs、の周波数特性を見ることにより、両コイルを組み合わせたときの電力伝送性能が予測できることは、上述したとおりである。
あるいは、異なる数種のコイルを作成し、各コイルにおいて、同一のコイルを対向させ、Rw、Rn、Rsの周波数特性を計測した後に、特性の良いコイルを組み合わせて使ってもよい。組合せ後に、1次側コイル、2次側コイルにおいて、Rw、Rn、Rsの周波数特性を計測すれば、より好ましい。
(不要輻射を防止するコイルの構成について)
図38は、不要輻射を防止するコイル1fの構造を示す図である。
図38において、磁性材板51は、コイル50に対向する一方面側に、少なくとも1枚装備される。このようにコイル50の一方面側に磁性材板51を少なくとも1枚装備することにより、不要輻射を防止するコイル1fが実現できる。従来例では、コイル1fと同等の構成を持つコイルは、電力伝送性能を向上させる作用効果を持つと記載されている。しかし、後述する本発明の実施形態における磁性材板を装備した各種構成の電力伝送装置のコイルは、従来例に比べ、さらに電力伝送性能を向上させると共に、不要輻射を軽減し、磁性材板のコイル装備面の反対面に金属体が近接したときの、コイル特性の変動を防ぐ作用効果を持つ。さらに、後述する本発明の実施形態における各種構成の電力伝送装置のコイルは、導線の種類、外径など他の構成要因が変化しても、同じ作用効果を持つ。
上述したように、コイル1fにおいて、コイル50には、空芯状態での一方のコイル単体の実効直列抵抗をRwa(Ω)、空芯状態での一方のコイルに対向する他方のコイルを短絡したときの、一方のコイルの実効直列抵抗をRsa(Ω)、とすると、100kHzにて、Rsa>Rwa、を満足する一方のコイルを使用する。例えば、コイル50には、上述してきた本発明の実施形態であるコイル1Bからコイル1Gを使用する。
さらに、図38〜図49に示す磁性材板51または511,512と金属板55を装備したコイル1fからコイル1tを一方のコイルとしたときに、100kHzにてコイル1fからコイル1tが、Rsa>Rwa、を満足しているのが好ましい。
さらに、磁性材板51を装備したコイル1fを一方のコイルとしたときに、100kHzにて、コイル1fが、Rsa>Rwa、を満足しているのが好ましい。
コイル1fが、Rsa>Rwa、を満足する最高周波数をf1(Hz)とすると、コイル1fを装備した電力伝送装置100は、f1(Hz)未満の周波数で電力を伝送する。
コイル1fが、電力伝送装置100の送電コイル1である場合、コイル1fは、図1に示した交流電源30bにより、f1(Hz)未満の周波数fd(Hz)で駆動される。
電力伝送装置100の送電部30に含まれる交流電源30bの出力周波数fa(Hz)は、f1(Hz)未満の周波数に設定される。
さらに、コイル1fが、電力伝送装置100の受電コイル2である場合、コイル1fが電力を受電する周波数fj(Hz)は、f1(Hz)未満であることを条件とする。
電力伝送装置100の送電部30が、コイル1fを含む場合、コイル1fを含む送電部30は、本発明の電力伝送装置の送電装置になる。
電力伝送装置100の受電部が40、コイル1fを含む場合、コイル1fを含む受電部40は、本発明の電力伝送装置の受電装置になる。
(不要輻射を防止するコイルの他の構成について)
図39は、コイル50と磁性材板51との間に、絶縁板52を設けたコイル1gを示す図である。図39において、絶縁板52は、周波数が高くなったときのコイル1gの実効直列抵抗Rwa(Ω)の増加を抑えることができる。また、周波数が高くなったときのコイル1gのQの低下を防止できる。
図40は、コイル50の一方面側に2層の磁性材板511と磁性材板512を設けたコイル1hを示す図である。図40において、コイル1hは磁性材板511と磁性材板512とを設けたことによって、コイル1fの構成に比べ、コイルのインダクタンスを高め、コイルのQを高くすることができる。
図41は、図40に示すコイル1hを構成する2枚の磁性材板511,512の間に、厚みがI(mm)の絶縁板52を設けたコイル1jを示す図である。図41において、絶縁板52は、周波数が高くなったときのコイル1jの実効直列抵抗Rwa(Ω)の増加を抑えることができる。また、周波数が高くなったときのコイル1jのQの低下を防止できる。このような構成は、コイルの厚さが増すが、送電コイルに使うのに適している。特に、送電コイルは、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換しており、不要輻射の原因を除去するのには、送電コイルにて対応するのが好ましい。絶縁板52の厚さI(mm)は、磁性材板511または512の厚さの半分以上であるのが好ましい。絶縁板52の作用効果については、前述した通りである。
(金属体が近接したときに、コイルの特性変動を防止するコイルの構成について)
図42は、コイルに金属体が近接したときに、コイルの特性変動を防止するコイル1kの構造を示す図である。図42において、金属板55は厚みM(mm)を有し、コイル50の一方面側に絶縁板54を、所定距離G(mm)を介してコイル50に対向して装備される。金属板55の寸法は、コイル50の寸法と同等以上で、コイル50の全面に対向するように配置される。コイル50には、例えば、上述してきた本発明の実施形態であるコイル1Bからコイル1Gが使用される。所定距離G(mm)は、絶縁板54の厚みと同じであり、コイル外径Dの10%以上に選ばれている。コイルの50の特性変動が少ないので所定距離G(mm)は長いほど好ましい。一方のコイルに、図42のように金属板55を装備することにより、コイル50に他の金属体が近接したときに、特性変動を防止可能なコイルが実現できる。
なお、絶縁板54には、前述した図26に示す絶縁材5を使用し、図26のように、コイル1aを絶縁性樹脂6に固定してもよい。図26に示す絶縁材5には、金属板、磁性材板の少なくとも一方が装備されていればよい。したがって、図42に示すコイル1kのみならず、図39に示すコイル1g、図44に示すコイル1n、図45に示すコイル1p、図48に示すコイル1s、図49に示すコイル1tにおいても、図26の構成を適用できる。
(金属体の近接影響と、不要輻射の双方を防止するコイルの構成について)
図43は、金属体の近接影響と、不要輻射の双方を防止するコイル1mの構成を示す図である。図43では、図42において、絶縁板54のコイル50に対向する面の反対側に配置される金属板55との間に設けられる所定距離G(mm)の間隔に代わって、磁性材板51が設けられる。コイル50には、例えば、上述してきた本発明の実施形態であるコイル1Bからコイル1Gが使用される。金属板55は、反磁性または常磁性の磁気的性質を持つ金属または合金であって、厚さが0.1mm以上に選ばれている。金属板55は、磁性材板51と同等の寸法である。特許文献3に記載のように、金属板55を磁性材板51の寸法よりも大きくすると、対向するコイルの導線巻回外径が、コイル1mの導線巻回外径よりも大きい場合に不都合が生じる。対向するコイルの導線巻回外径が、コイル1mの導線巻回外径よりも大きい場合のコイル構成については後述する。
図44は、本発明のその他の実施形態である金属体の近接影響と、不要輻射の双方を防止するコイル1nの構成を示す図である。図44においては、絶縁板52が、磁性材板51と金属板55との間に設けられる。絶縁板52の作用効果については、前述した通りである。金属板55は、反磁性または常磁性の磁気的性質を持つ金属または合金であって、厚さが0.1mm以上に選ばれている。
図45は、本発明のその他の実施形態である金属体の近接影響と、不要輻射の双方を防止するコイル1pの構成を示す図である。図45においては、絶縁板52が、コイル50と磁性材板51との間に設けられる。絶縁板52の作用効果については、前述した通りである。金属板55は、反磁性または常磁性の磁気的性質を持つ金属または合金であって、厚さが0.1mm以上に選ばれている。
図46は、本発明のその他の実施形態である金属体の近接影響と、不要輻射の双方を防止するコイル1qの構成を示す図である。図46においては、コイル50の一方面側に、磁性材板511、磁性材板512が設けられる。2枚の磁性材板511,512を設けることにより、コイル50のインダクタンスを高め、コイル50のQを高くできる。また、2枚の磁性材板511,512を設けることにより、磁性材板512側に設ける金属板55の種類や厚さによるコイル特性の変動を軽減できる。そのため、金属板55は、前述してきたコイル1kからコイル1pとは異なり、その磁気的性質や厚さは任意のものが選べる。金属板55に、反磁性または常磁性の磁気的性質を持つ金属または合金であって、厚さが0.01mm以上のものを使用すれば、より好ましい。コイル50には、例えば、上述してきた本発明の実施形態であるコイル1Bからコイル1Gが使用される。
図47は、本発明のその他の実施形態である金属体の近接影響と、不要輻射の双方を防止するコイル1rの構成を示す図である。図47においては、コイル50の一方側に磁性材板511が設けられる。絶縁板52が、磁性材板511と磁性材板512との間に設けられ、磁性材板512側に金属板55が設けられる。絶縁板52の作用効果については、前述した通りである。金属板55は、磁性材板511,512と同等の寸法である。絶縁板52の厚さI(mm)は、コイル1jと同様に選ばれる。
図48は、本発明のその他の実施形態である金属体の近接影響と、不要輻射の双方を防止するコイル1sの構成を示す図である。図48においては、絶縁板52が、磁性材板512と金属板55との間に設けられる。絶縁板52の作用効果については、前述した通りである。金属板55は、磁性材板512と同等の寸法である。
図49は、本発明のその他の実施形態である金属体の近接影響と、不要輻射の双方を防止するコイル1tの構成を示す図である。図49においては、絶縁板52が、コイル50の一方面側に設けられる。絶縁板52に磁性材板511,512、金属板55に設けられる。絶縁板52の作用効果については、前述した通りである。金属板55は、磁性材板511,512と同等の寸法である。
3枚以上の磁性材板を使用した場合も、絶縁材を装備する場所は、図47に示すように複数の磁性材板511,512の間、コイル50と磁性材板51の間、磁性材板51と金属板55の間など、種々の実施形態がある。絶縁板52の作用効果は、前述した通りである。
上述したように、コイル1gからコイル1tにおいて、コイル50には、空芯状態での一方のコイル単体の実効直列抵抗をRwa(Ω)、空芯状態での一方のコイルに対向する他方のコイルを短絡したときの、一方のコイルの実効直列抵抗をRsa(Ω)、とすると、100kHzにて、Rsa>Rwa、を満足する一方のコイルを使用する。例えば、コイル50には、上述してきた本発明の実施形態であるコイル1Bからコイル1Gを使用する。
さらに、磁性材板51または511,512と金属板55を装備したコイル1gからコイル1tを一方のコイルとしたときに、100kHzにてコイル1gからコイル1tが、Rsa>Rwa、を満足しているのが好ましい。
コイル1gからコイル1tが、Rsa>Rwa、を満足する最高周波数をf1(Hz)とすると、コイル1gからコイル1tを装備した電力伝送装置100は、f1(Hz)未満の周波数で電力を伝送する。
コイル1gからコイル1tが、電力伝送装置100の送電コイル1である場合、コイル1gからコイル1tは、図1に示した交流電源30bにより、f1(Hz)未満の周波数fd(Hz)で駆動される。
電力伝送装置100の送電部30に含まれる交流電源30bの出力周波数fa(Hz)は、f1(Hz)未満の周波数に設定される。
さらに、コイル1gからコイル1tが、電力伝送装置100の受電コイル2である場合、コイル1gからコイル1tが電力を受電する周波数fj(Hz)は、f1(Hz)未満であることを条件とする。
電力伝送装置100の送電部30が、コイル1gからコイル1tを含む場合、コイル1gからコイル1tを含む送電部30は、本発明の電力伝送装置の送電装置になる。
電力伝送装置100の受電部40が、コイル1gからコイル1tを含む場合、コイル1gからコイル1tを含む受電部40は、本発明の電力伝送装置の受電装置になる。
上述してきた金属板55か、磁性材板51または511,512の少なくとも一方を装備したコイルである、コイル1gからコイル1tの詳細な作用効果については、以降に詳述する。
(対向するコイル外径が異なる場合について)
図50は、対向する双方のコイルを構成する要素の立体図である。図50に示すように対向するコイル1ma,1mbは、図43に示すコイル1mと同等にして、コイル50a,50bと、磁性材板51a,51bと、金属板55a,55bとで構成されている。
図51と図52は、図43に示すコイル1mと同等に構成され、コイル50aとコイル50bとの外径が異なる場合の対向状態を示す図である。導線巻回外径が大きいコイル50bを送電コイル、導線巻回外径が小さいコイル50aを受電コイルとする。
図51は、対向する送電コイル1mbと受電コイル1maの中心が一致している場合を示す。図51において、一方のコイルを構成する受電コイル導線の巻回面の中心から巻回面の端までの最大距離をDaとし、一方のコイルに対向する他方のコイルを構成する送電コイル導線の巻回面の中心から巻回面の端までの最小距離をDb、とし、Db>Da、のときに、受電コイル導線の巻回面の中心から磁性材板51bの端までの最小距離が、少なくとも、Db+(Db−Da)×2、に設定されている。
図52は、対向する受電コイル1maの導線巻回面が、点線で示す送電コイル1mbの導線巻回面内にあって、かつ、受電コイル1maの導線巻回面の端と、送電コイル1mbの導線巻回面の端が同じ位置にある状態を示す。対向する送電コイル1mbと受電コイル1aの相対位置は、図52に示すように、受電コイル導線巻回面の端が送電コイル導線巻回面の端内にある場合まで許容できる。特許文献3に記載のように、受電コイル1maの導線巻回面と同等寸法の磁性材板が装備され、磁性材板よりも大きい金属板が装備されているとすると、図52の場合において、送電コイル1mbの導線巻回面に金属板が対向してしまう。送電コイル1mbの導線巻回面に金属板が対向すると、当然、送電コイル1mbの特性は変化する。さらに、導線巻回面と同等の寸法の磁性材板が装備されていても、磁性材板の裏面に金属板が存在する場合、送電コイル1mbと受電コイル1maの相対位置によっては、送電コイル1mbの導線巻回面に金属板が対向してしまう。したがって、導線巻回面に他方のコイルの磁性材が対向するよう、磁性材板の形状、寸法を決めなければならない。
図52の場合において、送電コイル1mbの外径をD1、受電コイル1maの外径をD2とすると、受電コイル1maの磁性材板の外径は、Y=D1−D2、とすると、D2+2×Yの寸法が必要となる。または、2(D1―D2)+D2=2×D1−D2の寸法が必要となる。
図53は、送電コイル1mb、受電コイル1ma共に楕円形である場合の、送電コイル1mbと受電コイル1maの相対位置関係を示す図である。図53において、送電コイル1mbの最小外径をD11、送電コイル1mbの最大外形をD12、受電コイル1maの最小外径をD21、受電コイル1maの最大外形をD22、Y1=D11−D22、Y2=D12−D21とすると、コイル50の最小外径よりも最低でも2×Y1は大きい最小外形の磁性板でなければならない。また、コイル50の最大外径より2×Y2以下の最大外径を持つ磁性材板であって、受電コイル1maの導線巻回面が送電コイル1mbの導線巻回面内にあるときに、受電コイル1maに装備された磁性材板51aが、必ず送電コイル1mbの導線巻回面に対向するよう、磁性材板51aの寸法と形状を選ぶ。
上記は、以下のように一般化できる。「コイル」とは、導線巻回面を指すものとする。対向するコイルの寸法と形状が異なるとき、大きい方のコイルの中心または重心からコイル端面までの最大距離をLa、小さい方のコイルの中心または重心からコイル端面までの最小寸法をLbとする。La、Lbは、前述のD1等の直径に対し、半径に相当する。よって、小さいほうのコイルは、4(La−Lb)+2×Lb=4×La−2×Lb、の寸法以下であって、小さいほうのコイル対向面が大きい方のコイル対向面内に入っているときには、必ず大きい方のコイル対向面に磁性材板が対向するような寸法、形状の磁性材板を小さいほうのコイルが装備しなければならない。
図54は、コイル対向面が円形以外の場合に、対向する送電コイル1と受電コイル2の一例を示す図である。例えば、図54(A)に示すように、受電コイル2が一辺40mmの正方形であったとする。受電コイル1maは、送電コイル1mbの面内に完全に入っている。この場合、受電コイル1maの最小外径D2は40mm、送電コイル1mbの最大外径D1は57×√2≒80mmとなる。したがって、受電コイル1maに装備される磁性材板51は、図54(A)に示すように、一辺が80mmの正方形であればよい。
前述した図52のYを図54(A)に適用すると、Y=D1−D2=80−40=40mmである。受電コイル1maに、D2+Y×2の外径を持つ磁性材板を装備している。したがって、図52において、受電コイル1maは、対角線が、D2+Y×2=40+40×2=120mm(最大外寸)、一辺が、120/√2≒85mm(最小外寸)である正方形の磁性材板51を少なくとも装備しないとならない。しかし、図54(B)に示すように、受電コイル1maと送電コイル1mbの相対角度を変え、受電コイル1maが送電コイル1mbの面内に完全に入っている場合においても、送電コイル1mbに磁性材板51が完全に対向しているのが分かる。
図51〜図54の説明により、送電コイル1mbの磁性材板51の面積は、コイルの面積と同等またはそれ以上であり、コイルは磁性材板51の面積内にあり、受電コイル1maの磁性材板は、送電コイル1mbの面積内にあり、送電コイル1mb側の磁性材板に関係しない。また、送電コイル1mbと受電コイル1maの外径は、同一ないし受電コイル1maの外径のほうが小さく、受電コイル1maの導線巻回面は、送電コイル1mbの導線巻回面からはみ出ていない、というこれらの条件を満たしていれば、コイル、磁性材板の外径形状は問わない。
ただし、小さい方のコイル端が大きい方のコイルの端内に完全に入っているときに、小さい方のコイルに装備する磁性板として、大きい方のコイルに対向するように寸法、形状の磁性板を選び、かつ、小さい方のコイルに装備する磁性板の装備位置が選ばれてなくてはならない。
(コイル1fからコイル1tの特性について)
図55は、図38に示すコイル1f、図39に示すコイル1g、図40に示すコイル1h、図41に示すコイル1jとして、それぞれ図15に示したコイル1Gを使用したときの各コイルにおける実効直列抵抗Rw(Ω)の周波数との関係を示す図である。
図56は、コイル1f,1g,1h,1jとして、それぞれコイル1Gを使用したときにおける各コイルのQの周波数との関係を示す図である。
図55より明らかなように、コイル50に絶縁板52と磁性材板51を装備したコイル1gとコイル1fを比較すれば、例えば、1MHzにおける実効直列抵抗Rw(Ω)は、コイル1gの方が低い。このように、絶縁板52をコイル50に装備することにより、高周波数領域でのコイルの実効直列抵抗Rw(Ω)を低くすることができる。この傾向は、コイル50に磁性材板511,絶縁板53、磁性材板512を装備したコイル1jと、コイル50に磁性材板511,512を装備したコイル1hとを比較しても同じである。
また、図56より明らかなように、コイル50に絶縁板52を装備したコイル1gは、例えば、1MHzにおけるコイルのQが、磁性材板51のみを装備したコイル1fよりも高い。図55、図56から明らかなように、絶縁板52をコイル50に装備しても、100kHzの周波数では、実効直列抵抗Rw(Ω)やQの差異は殆ど無い。このように、絶縁板52をコイル50に装備することにより、高周波数領域でのコイルのQを高くすることができる。この絶縁板の作用効果は、前述した磁性材板51または511,512を装備しているコイル1mからコイル1tにおいても同様である。よって、コイル1mからコイル1tについては、絶縁板に関する説明を省略する。
(各種金属板がコイルに対向したときの説明)
図57は、コイル1Gを使用して各種の金属板を近接対向させたときの、コイル1G単体の実効直列抵抗Rw(Ω)と、コイル1G単体のインダクタンスLw(μH)を示す特性図である。
図57に表記してあるが、構成(1)のコイルは、コイル1G単体の実効直列抵抗Rw(Ω)と、インダクタンスLw(μH)を表している。構成(2)のコイルは、後述する磁性材板を装備した場合に使用するので空欄としている。構成(3)のコイルは、コイル1Gに厚さ12μmのアルミ(Al)ホイルを近接させた状態である。構成(4)のコイルは、コイル1Gに厚さ0.1mmのアルミ板を近接させた状態である。構成(5)のコイルは、コイル1Gに厚さ0.5mmのアルミ板を近接させた状態である。構成(6)のコイルは、コイル1Gに厚さ3mmのアルミ板を近接させた状態である。構成(7)のコイルは、コイル1Gに厚さ35μmの銅箔(Cu)を近接させた状態である。構成(8)のコイルは、コイル1Gに厚さ0.1mmの銅板を近接させた状態である。構成(9)のコイルは、コイル1Gに厚さ0.5mmの銅板を近接させた状態である。構成(10)のコイルは、コイル1Gに厚さ0.5mmの鉄板(Fe)を近接させた状態である。図57には、構成(1)のコイル1G単体の特性と比較するため、構成(3)から構成(10)のコイルの、100kHzにおける実効直列抵抗Rw(Ω)と、インダクタンスLw(μH)が棒グラフで示してある。
(金属板近接影響を排除したコイルの構成と特性について)
図58は、コイル1Gに10mmの間隔を設けて各種の金属板を近接させたときの、コイル1Ga単体の実効直列抵抗Rw(Ω)と、コイル1Ga単体のインダクタンスLw(μH)を示す特性図である。その他の構成で、コイル1Gaに装備する金属板は、前述したものと同じである。コイル1Gaは、図40に示すコイル1kの一実施形態である。
図59は、1枚の磁性材板51を設けたコイル1Gに各種の金属板を近接させたときの、コイル1Gb単体の実効直列抵抗Rw(Ω)と、コイル1Gb単体のインダクタンスLw(μH)を示す特性図である。構成(2)のコイルは、コイル1Gbに磁性材板51を1枚装備し、金属板を近接させていない状態である。その他の構成で、コイル1Gに装備する金属板は、前述したものと同じである。コイル1Gbは、図38に示すコイル1fの一実施形態である。
図60は、コイル1Gに2枚の磁性材板511,512を設けたコイル1Gcに各種の金属板を近接させたときの、コイル1Gc単体の実効直列抵抗Rw(Ω)と、コイル1G単体のインダクタンスLw(μH)を示す特性図である。構成(2)のコイルは、コイル1Gcに2枚の磁性材板511,512を装備し、金属板を近接させていない状態である。その他の構成で、コイル1Gcに装備する金属板は、前述したものと同じである。コイル1Gcは、図44に示すコイル1qの一実施形態である。
図61は、前述したコイル1Ga、コイル1Gb、コイル1Gcの、100kHzにおける各コイルのQを示す特性図である。
図57から図61は、図15に示すコイル1G単体の実効直列抵抗Rw(Ω)の周波数特性を参考にし、実効直列抵抗Rw(Ω)がコイル1Gの直流抵抗とほぼ等しい100kHzを選んで計測してある。
まず、図57に示す特性図を検討する。コイル1G単体の構成では、実効直列抵抗Rwは約0.2Ω、インダクタンスLwは約14μHであることが、図57より分かる。12μmのアルミホイルを近接対向させた構成(3)のコイル1Gでは、実効直列抵抗Rwが3Ω以上となり、インダクタンスLwは約5.5μHに減少している。常磁性金属である各種の厚さのアルミニウム板をコイル1Gに対向させた、構成(4)から構成(6)の特性図を見ると、アルミニウムの厚さが0.1mm以上では、厚さが増加するに従い、コイルの実効直列抵抗Rw(Ω)は減少し、インダクタンスLw(μH)が増加しているのが分かる。この傾向は、反磁性金属である銅をコイル1Gに対向させた、構成(8)、構成(9)のコイルでも同じである。銅板の厚さが薄いと、コイルの実効直列抵抗Rw(Ω)は減少し、インダクタンスLw(μH)も低下する。銅板の厚さが0.5mm程度になると、コイルの実効直列抵抗Rw(Ω)は構成(5)の0.5mmのアルミ板と大差ない特性になっている。強磁性金属である0.5mmの鉄板をコイル1Gに近接対向させた場合は、構成(3)のアルミホイルを近接対向させたときと同じく、空芯状態に比べ、実効直列抵抗Rw(Ω)が10倍以上となり、インダクタンスLwは約8.5μHに減少している。すなわち、特許文献4に記載のような金属の磁気的な性質により、コイル特性が変動するのではなく、平面空芯渦巻状に巻回されたコイルに近接対向する金属板の厚さによって、コイル特性が変動する。
図57に示す構成(3)から構成(10)の各コイルは、空芯状態と比べ、実効直列抵抗Rw(Ω)が過大となり、インダクタンスLw(μH)は過小となる。したがって、図57に示す構成(3)から構成(10)の各コイルは、実際には電力伝送装置のコイルとしては使用できない。図57は、以降に示す図58から図61と比較するデータである。なお、厚さが12μmのアルミホイルでは、インダクタンスの減少率は少ないものの、実効直列抵抗Rw(Ω)の増加率は、コイル1G単体の15倍以上になっている。構成(4)のアルミ板の厚さが0.1mmになると、インダクタンスが増加しているところから見て、10μmと100μm(0.1mm)の間に、何らかの遷移点が存在するものと推察できる。構成(7)から構成(9)の銅板のデータを見ると、構成(4)から構成(6)とほぼ同等の傾向が見られる。銅は反磁性金属なので、断定はできないが、30μm前後の厚さを境にして、それよりも薄い金属板は、インダクタンスLw(μH)の減少率は少なくなり、実効直列抵抗Rw(Ω)の増加率が急上昇するものと推察される。これは、構成(4)と構成(8)の0.1mmの厚さのアルミ板と銅板、構成(5)と構成(9)の0.5mmの厚さのアルミ板と銅板が、共に近い特性を示していることからも推察できる。構成(7)の35μm厚の銅箔の実効直列抵抗Rw(Ω)の増加率が、構成(3)の厚さが12μmのアルミホイルの実効直列抵抗Rw(Ω)の増加率よりも少ないのは、厚さが原因と推察される。
図58は、図42に示すコイル1kとして、コイル1Gに10mmの絶縁物を介して、図57に示した各種の金属板を対向させた前述のコイル1Gaの特性である。図57と比較しても明らかなように、図58では、実効直列抵抗Rw(Ω)の増加率、インダクタンスLw(μH)の減少率も少ない。コイル1Gaの特性は、10mmの絶縁物を介することにより、大きく改善されているのが分かる。特にインダクタンスLwの値は、空芯状態の約13.7μHに比べ、約11.7μHにまでしか低下していない。Lw(μH)の値は、各構成ともにほぼ同一となっており、電力伝送装置に使用可能である。しかし、構成(3)の12μm厚のアルミホイルや、構成(7)の35μm厚の銅箔、構成(10)の強磁性体である0.5mmの鉄板がコイル1Gに対向したときには、コイル1Gの実効直列抵抗Rw(Ω)の増加率が大きく、Rw(Ω)による電力損失が発生するので、このような構成は、電力伝送装置に使用するのに適していない。
すなわち、図58を参照すると、コイルと金属間に一定の所定距離G(mm)を設ける手段を装備し、金属板として、0.1mm以上の、反磁性または常磁性の磁気的性質を持つ金属または合金を使用することにより、空芯コイルに近接する金属体の影響を排除できる。なお、図58に示す構成(1)および構成(2)以外の構成において、金属板のコイル対向面と反対側に、鉄などの強磁性金属を含む各種金属を近接させたが、インダクタンスLw(μH)の変化も、実効直列抵抗Rw(Ω)の変化も全く観測されていない。また、電力伝送性能に変化も無い。
特許文献4の段落番号0022には、磁界型空中線(コイル)よりも寸法が小さい金属板を使用してもよいと記載されている。しかし、導線を平面渦巻き状に巻回して構成されるコイルの金属体近接影響を排除するには、前述した所定距離G(mm)を設け、強磁性体以外であって、厚さが0.1mm以上であるコイルの寸法と同等の寸法の金属または合金の板材を装備しなければならない。
なお、特許文献4の段落番号0022には金属板を分割する旨の記載がある。本願発明者が、コイル1Gaを使用した構成(8)のコイルにて、0.1mmの銅箔を分割して特性を計測したところ、Lw=12.3μH、Rw=0.23Ωであった。この構成は、銅板を分割しないときの、Lw=11.7μH、Rw=0.29Ωに比べると特性はよい。これは、前述したが、金属体の体積に比例して増加する渦電流損が減少するためと推察される。そのことは、特許文献4の段落番号0022にも記載されている。しかし、前記の0.1mmの銅箔を分割して装備した構成では、銅板のコイルの反対面に0.5mm厚の鉄板を近接させると、Lwが11.2μHに減少し、Rwが0.38Ωに増加した。銅板を分割しないと、銅板を分割した場合に比べ、インダクタンスLw(μH)の値は小さいが、実効直列抵抗Rw(Ω)の値が小さく、銅板のコイルの反対面に0.5mm厚の鉄板を近接させても、Lw(μH)、Rw(Ω)共に全く変化はなかった。したがって、特許文献4の段落番号0022に記載されている金属板を分割するような実施形態、金属板の寸法をコイルの寸法よりも小さくする実施形態では、特許文献4の段落番号0022に記載されているコイルに金属体が近接したときのコイル特性の変動を排除するという作用効果は期待できない。
以上のように、図42に示すコイル1kの実施形態では、コイルと金属板の間に、コイルと金属板の距離を一定とする手段を備えることにより、金属板の裏面に他の金属体が近接しても、コイル1kのインダクタンスLw、実効直列抵抗Rwの変動を排除できる。図42に示すコイル1kは、コイルの裏面に一定間隔で金属板を設置できる送電部に適している。送電部がスチール製机上に置かれたときに、コイル1kのインダクタンスLw、実効直列抵抗Rwの変動を排除し、所定の電力伝送性能を維持できる。所定距離Gは、コイル1Gにおいては、10mmで良好な結果が得られている。しかし、所定距離G(mm)は、コイルの外径Dにより異なってくる。コイル1Gの外径Dは50mmなので、余裕を見て、例えば、G≧D/10=5mm、として所定距離G(mm)を決める。
次に、図43に示すコイル1mの実施形態の特性図である図59について考察する。図59の構成(2)は、コイル1Gに0.3mm厚の磁性材板を取り付けたコイル1Gb単体の実効直列抵抗Rw(Ω)とインダクタンスLw(μH)を示している。コイル1Gb単体では、空芯状態のコイル1G単体に比べ、インダクタンスLw(μH)が増加しており、実効直列抵抗Rw(Ω)は殆ど変化していない。コイル1Gbのコイルの反対面に図57、図58と同等の金属板を装備した構成(3)から構成(10)の各コイルの実効直列抵抗Rw(Ω)とインダクタンスLw(μH)が図示されている。構成(3)から構成(10)において、インダクタンスLwの値はほぼ同一となっている。しかし、図59を見れば明らかなように、図58と同等にして、12μmの厚さのアルミホイルを装備した構成(3)、35μmの厚さの銅箔を装備した構成(7)、0.5mmの厚さの鉄板を装備した構成(10)のコイルは、実効直列抵抗Rw(Ω)が高くなっている。
さらに、本発明のその他の実施形態である図46に示す構成のコイル1qの各構成の特性を、図60を参照して検討してみる。図46に示す構成のコイル1qには、2枚の磁性材板511,512が装備されている。2枚の磁性材板511,512は、絶縁層を設けて重ねるのが好ましい。図60を参照すると、コイル1Gに磁性材板2枚を装備したコイル1Gc単体の特性は、構成(2)で示され、インダクタンスLwは、約22.5μHと、空芯状態の約14μHに比べ、約1.6倍になっている。図59と比較すると、構成(3)から構成(10)の全てにおいて、インダクタンスLwは20μHを越えている。さらに、構成(3)から構成(10)の全てにおいて、インダクタンスLw(μH)の値は、ほぼ同一である。そして、図59と比較すると、構成(3)の12μm厚のアルミホイルや、構成(7)の35μm厚の銅箔、構成(10)の強磁性体である0.5mmの鉄板がコイル1Gcに対向しても、実効直列抵抗Rw(Ω)の変化が殆ど無いという特徴が見られる。すなわち、磁性材板を2枚重ねて装備することにより、コイルは、磁性材板のコイル対向面の反対側に装備する金属の磁気的性質や厚さの影響を受けなくなる。図46に示す構成のコイル1qのような構成とすることにより、アルミ箔のような薄い金属で、前述した金属体の近接影響を排除できる。
なお、磁性材板としては、厚さが0.01mmから1.5mm、構成としては、磁性材粉をバインダーで固めたもの、アモルファス系、フェライト系等、種々のものを試験した。金属板の違いによる特性は、前述した図58から図60と同一であった。また、コイル1f、コイル1qの構成で、インダクタンスの増加が大きいものは、実効直列抵抗の増加も大きかった。100kHzにおいて、いずれの磁性材板でも、インダクタンスの増加率と実効直列抵抗の増加率は、ほぼ同等であった。後述するように、これらの実測結果は、この構成規定が、一般性を持つことを示している。
以上の結果は、図61にまとめてある。まず、コイル1kの一例であるコイル1Ga、コイル1fの一例であるコイル1Gbの、構成(5)と構成(9)を比較してみる。0.5mmの厚さの常磁性金属であるアルミニウム板がコイル1Gaに装備された場合と、反磁性金属である銅板がコイル1Gaに装備された場合のQの値は、殆ど変わらない。コイル1Gbにおいても、0.5mmの厚さの常磁性金属であるアルミニウム板がコイル1Gbに装備された場合と、反磁性金属である銅板がコイル1Gbに装備された場合のQの値は、殆ど変わらない。すなわち、特許文献4に記載のように、反磁性金属が、コイルに近接する金属体によるコイル特性の影響排除に適しているのではない。コイルに装備される金属で、コイル特性を劣化させるのは、強磁性金属と、強磁性以外の金属では、金属板の厚さのみであることが、図61より分かる。さらに、磁性材板を2枚以上装備したコイル1qの構成のコイル1Gcでは、金属の磁気的性質、金属板の厚さに関係なく、コイルの対向面の反対側に近接する金属体によるコイル特性の変動を防止できるのが分かる。
なお、図61に図示してあるが、構成(1)のコイル1G空芯単体のQは、約42.5である。図61に記載の各構成のコイルで、電力伝送用コイルとして適していないのは、コイル1k、コイル1mであって、構成(3)、構成(7)、構成(10)になる。この規定は、コイル1G空芯単体のQ、約42.5の70%であるQ=30を基準とし、基準値以上のQを持つコイルを選んでいる。図61に図示してあるQ=30の線以上のQを持つコイルならよい。ただし、図61は、各構成のコイルのQを比較するものである。実際には、図58から図60に示す、実効直列抵抗Rw(Ω)の周波数特性を計測し、実効直列抵抗Rw(Ω)の過大なコイル、実効直列抵抗Rw(Ω)の周波数特性が悪いコイルは除外しないとならない。コイルのQと実効直列抵抗Rw(Ω)の双方から判断するのが好ましい。基準値Q=30は、実際に空芯のコイル1Gを使用して電力伝送を行なったときと比較し、90%以上の電力伝送性能を持つ条件として規定している。
(電力伝送用コイルの構成規定が一般性を持つことについての説明)
前述したように、コイルの特定的構成を規定するだけでは、性能のよいコイルを実現できない。しかし、本実施形態におけるコイルの特定的構成は、コイルの線種、巻き方、外径などにかかわらず、同じ作用効果を呈する。すなわち、本実施形態におけるコイルの特定的構成は、コイルの線種、巻き方、外径などにかかわらず、コイル裏面に金属体が近接したときの、コイル特性の変動を抑える効果がある。その例を以下に示す。
図62は、図12に示したコイル1Dを、図42に示すコイル1kと同等の構成において、図58と同じく、実効直列抵抗Rw(Ω)とインダクタンスLw(μH)を計測した特性図である。図62においては、コイル1Dと金属板間の距離は5mmに設定して計測してある。
図63は、図13に示したコイル1Eを、図42に示すコイル1kと同等の構成において、図62と同じく、実効直列抵抗Rw(Ω)とインダクタンスLw(μH)を計測した特性図である。図63においては、コイル1Eと金属板間の距離は10mmに設定して計測してある。
図58、図62、図63を比較すると、図42に示す構成のコイル1kにおいて、金属板55として、アルミホイルを用いて構成した例(3)、銅箔を用いて構成して例(7)、鉄板を用いて構成した例(10)のコイルでは、いずれも実効直列抵抗Rw(Ω)が、他の構成のコイルよりも増加しているのが分かる。
この傾向は、コイル1D、コイル1E共に、図43に示すコイル1mの構成、図46に示すコイル1qの構成においても同様である。すなわち、コイルと金属板の間に所定距離G(mm)のみを設けた場合、コイル50と金属板55の間に磁性材板を1枚設けた場合では、金属板55としてアルミホイルを用いて構成した例(3)、銅箔を用いて構成した例(7)、鉄板を用いて構成した例(10)のコイルでは、いずれも実効直列抵抗Rw(Ω)が、他の構成のコイルよりも増加する。コイル50と金属板55の間に磁性板を2枚以上設けた場合は、金属板55の種類や厚さにより、実効直列抵抗Rw(Ω)の増加率が図60のように殆ど無い。
図42に示す構成のコイル1kの作用効果は、特許文献4に記載のように、コイルの対向面と反対側に金属体が近接したときに、コイル特性の変動を防ぐものである。図43に示す構成のコイル1m、図46に示す構成のコイル1qの作用効果も、コイルの対向面と反対側に金属体が近接したときの、コイル特性の変動を防ぐものである。図43に示す構成のコイル1m、図46に示す構成のコイル1qの他の作用効果として、不要輻射の防止がある。不要輻射防止のためには、図46に示すコイル1qの構成が好ましい。前述したように、コイル1qは、金属板の材質や厚さの影響を殆ど受けない。したがって、図38に示すコイル1hであっても、金属体の近接影響を排除可能である。
図58から図60においては、金属板と磁性材板、および絶縁板から構成されるコイル1n、コイル1p、コイル1r、コイル1s、コイル1tのデータは省略してある。これは、図58から図60に示すのと同様に、絶縁材板52の作用効果が同一だからである。このような構成のコイルは、図55、図56に示すように、高周波数領域での実効直列抵抗Rw(Ω)の増加を抑え、Qを高める作用効果がある。実測上も、高周波数領域になると、前述した各コイルの実効直列抵抗Rw(Ω)が、コイル1n、コイル1qに比べ、低下し、各コイルのQが、コイル1n、コイル1qに比べ、上昇するのが確認されている。
なお、前述したように、コイル1G2組のRw、Rs、Rnの周波数特性は極めてよい。図15によると、Rs>Rw、を満足する最高周波数f1は、10MHz以上、Rs>Rn≧Rw、を満足する最高周波数f2は、約2.2MHzとなっている。しかし、前述した構成のコイル1mとコイル1qは、特にf2(Hz)が低下する。この点について、以下に考察してみる。
(磁性材板を装備したコイルの説明)
図64は、コア53に導線56を巻回したコイル1Hの一例を示す図である。図64(A)はコイル1Hの単体の構成図、図64(B)は2個のコイル1Ha、1Hbが誘導結合している状態を表す図である。
図64(B)においては、2個のコイル1Ha,1Hbのコア53a,53bを直接接触させず、図示しない両面テープなどを介して接着する。
図65は、図64の構成を持つコイル1Hのコイル単体の実効直列抵抗Rw(Ω)と、2個のコイル1Ha,1Hbを誘導結合させ、他方のコイルの両端を短絡したときの、一方のコイルの実効直列抵抗Rs(Ω)、他方のコイルの両端を開放したときの、一方のコイルの実効直列抵抗をRn(Ω)、としたときの、Rw、Rs、Rnと周波数との関係を示す図である。
図66は、コイル1H単体のインダクタンスLw(μH)と、2個のコイル1Ha,1Hbを誘導結合させ、他方のコイルを短絡したときの一方のコイルのインダクタンスLs(μH)、他方のコイルを開放したときの一方のコイルのインダクタンスをLn(μH)、としたときの、Lw、Ls、Lnと周波数との関係を示す図である。
図65を参照する限りにおいて、コイル1Hは、Rw(Ω)とRs(Ω)の乖離が小さい。これは、両コイル間の結合係数が、約0.3程度と小さいからである。前述した方法で近似的に求めた結合係数krも、約0.3程度になっている。さらに、図66を参照すると、1kHzから10MHzまでの周波数領域で、Ln>Ls>Lw、となっている。
前述した(4)式は、Z=(R1+AR2)+jω(L1−AL2)、
前述した(5)式は、Z=R1+jωL1、かつ、A≧0であるので、一方のコイルと誘導結合している他方のコイルが短絡されると、一方のコイルのインダクタンスは減少しなければならない。すなわち、Lw=Ln>Ls、の関係を満足しないといけない。
図67は、コイル1Gが空芯状態のときに計測した、Lw、Ls、Ln、およびLwとLsより近似的求められる結合係数kiと周波数との関係を示す図である。
図67においては、前述したように、コイル1Gに印加される電圧Vとコイル1Gに流れる電流Iの位相差φが、80度以下となる20kHz以下の周波数を除き、20kHz以上の周波数では、Lw=Ln>Ls、なる回路理論上の関係を、少なくとも4MHzまで満足しているのが分かる。図66と図67の差異は、以下のように推測される。図66においては、図64(A)のようなコイル単体のときに比べ、図64(B)のように同一の2個のコイルが誘導結合すると、双方のコイルに比透磁率の高いコア61a,61bが磁気的に結合されるので、Ln(μH)が上昇する。しかし、他方のコイルを短絡すると、Ls(μH)は、Ln(μH)よりも低くなる。この場合、Ls>Lw、となるのは、コアの材質、コアの比透磁率、導線の線材や線径、コイルの構成によって決まるものと思われる。本願発明者が、図64(B)のような構成を持つ種々のコイルについて、Lw、Ls、Lnを計測してみたところ、Ls<Lw、となるコイルは存在した。しかし、Ln=Lw、となるコイルは存在せず、必ず、Ln>Ls、となっていた。前述した変成器の構成と回路理論から、図64(A)のような構成を持つコイルを、図64(B)のように誘導結合させると、両コイルが分離不能な変成器と同じ状態であると考えられる。
図68は、トロイダルコア73に1次コイル71と2次コイル72とを巻回した1次コイルと2次コイルが分離不能な変成器70の構成を示す図である。
本願発明者は、確認のため、図68に示す構成の変成器70を用いて、Rn(変成器は両コイルが分離不能のため、Rw、Lwは計測できない)、Rs、Ln、Lsを周波数100kHzにて計測してみた。Ln=2.83mH、Ls=23.4μH、Rn=603Ω、Rs=0.56Ω、となった。比透磁率の高いコアを装備した変成器においても、やはり、Rn>Rs、という回路理論に反する計測結果が得られている。上記のLn、Lsから、近似的に結合係数kiを求めると、ki=√((Ln−Ls)/Ln)、であるので、ki=√((2830−0.0234)/2830)=√(0.99999)
=0.999995≒1
となり、ほぼ密結合状態であった。このように、図68の変成器おいては、LnとLsから近似的に結合係数kiを求めればよい。したがって、前述した図43のコイル1m、図46のコイル1qにおいては、低い周波数においても、Ln>Lw、となることが想定される。また、Rs>Rw、を満足する最高周波数f1(Hz)、Rs>Rn≧Rw、を満足する最高周波数f2(Hz)も低下することが想定される。
図69は、図38に示すコイル1fであるコイル1Gbにおいて、コイル1Gbを2個使用したときの、Lw、Ls、Ln、ki、ki2と周波数との関係を示す図である。
図69において、ki2は、LwとLsではなく、LnとLsから求めてある。
ki2=√((Ln−Ls)/Ln)である。これは、前述した図68に示す変成器と同じ結合係数kiの近似的な求め方である。前述したLwとLsより近似的に求めた結合係数kiとki2の双方がプロットされている。Ln(μH)はLw(μH)の倍近くになっているが、平方根を取るので、kiとki2には余り差が無く、いずれも0.9以上になっている。これは、図15にプロットされたkr、kiの値、約0.84に比して、いずれも大きい値となっている。このように、磁性材板は、両コイル間の結合係数を上昇させる作用を持っている。
図69では、図66の、Ln>Ls>Lw、とは異なり、Ln>Lw>Ls、の関係となっている。本願では、誘導結合可能な構成のコイルについて電力伝送性能のよいコイルに着目して種々のコイル特性や構成を規定してきた。しかし、図64に示すように、同一のコイル2個間で誘導結合が可能な構成を持つコイルであって、Rs>Rw、の関係を、100kHzにて満足しているコイルであるならば、電力伝送装置のみならず、受動部品であるコイルとしての性能がよい。さらに、Lw>Ls、の関係を、100kHzにて満足しているコイルであるならば、受動部品であるコイルとしての性能がよい。そして、図64に示す構成のコイルは、コアを装備しているので、金属体の近接影響は無いものと従来では考えられていた。
図70は、図64の構成を持つコイルであって、図65、図66の特性を持つコイル1Hに、図59のように、各種の金属板を図64(A)のA面に近接させたときの、100kHzにおける実効直列抵抗Rw(Ω)と、インダクタンスLw(μH)を示す特性図である。
図70を図59と比べて見ると、インダクタンスLw(μH)の減少率は小さいものの、実効直列抵抗Rw(Ω)の増加率とともに、図59とほぼ同一の傾向にある。すなわち、以上に説明してきたように、誘導結合が可能な構成のコイルは、金属体の近接影響を受け、実効直列抵抗Rw(Ω)が上昇する。12μmの厚さのアルミホイルが近接した構成(3)、35μmの厚さの銅箔が近接した構成(7)、0.5mmの厚さの鉄板が近接した構成(10)のコイルは、実効直列抵抗Rw(Ω)が、図59と同様に高くなっている。また、図59と同様、構成により、インダクタンスLw(μH)が減少している。あるいは、誘導結合が可能な構成のコイル1Hを2個使用し、両コイルを誘導結合させると、Ln>Lw、となる。コイル全体の構成によっては、Ln>Ls>Lw、という回路理論に反するものも有る。
図71は、コイル1Gに図38に示すコイル1fのように磁性材板を備えたコイル1Gbにおいて、コイル1Gbを2個使用したときの、Rw、Rs、Rnと周波数との関係を示す図である。
図71に示す、Rw、Rs、Rnの周波数特性を見ると、図15に示す、Rs>Rw、を満足する最高周波数f1>10MHzが、f1=1.35MHzにまで低下してきているのが分かる。さらに、図15に示す、Rs>Rn≧Rw、を満足する最高周波数f2は、2.15MHzから、150kHzにまで低下しているのが分かる。
一方で、コイル1Hは、図65に示すように、Rs>Rn≧Rw、を満足する最高周波数f2は1.3MHzと高い。これは、コイル1H2個間の結合係数が0.3程度と低く、コイル1Gb2個間の結合係数が0.9以上と高いためと考えられる。そこで、100kHzにおける両コイル間の結合係数をkとし、コイル1Gb2個が、Rs>Rn≧Rw、を満足する最高周波数f2である、150kHzを基準とする。そして、150kHzを、k2で割る。ki=0.27のコイル1Hの場合、f2(Hz)の規定値を計算すると、f2=150/0.272≒2.05MHzとなる。図65より、コイル1Hの前記f2は、約1.3Mzであり、f2≧2.05MHzを満足していない。
また、コイル1Hは、Ln>Ls>Lw、という回路理論に反する特性を持ち、図66に示すように、Ln>Lw>Ls、の関係も満足していない。さらに、図70を参照すると、コイル1Hは、図64(A)に示すA面に、任意の金属体が近接したときに、インダクタンスLw(μH)の低下が、15%を越えている。換言すれば、Lw(μH)の低下率が85%以下である。また、同一条件で、実効直列抵抗Rw(Ω)の増加が、単体時よりも5倍以上となっている構成がある。
図72は、図64の構成を持つコイル1Jにおいて、コイル単体の実効直列抵抗Rw(Ω)と、2個のコイル1Ja,1Jbを誘導結合させ、他方のコイルを短絡したときの、一方のコイルの実効直列抵抗Rs(Ω)、他方のコイルを開放したときの、一方のコイルの実効直列抵抗をRn(Ω)、としたときの、Rw、Rs、Rnと周波数との関係を示す図である。
図73は、コイル1J単体のインダクタンスLw(μH)と、コイル1J2個を誘導結合させ、他方のコイルを短絡したときの一方のコイルのインダクタンスLs(μH)、他方のコイルを開放したときの一方のコイルのインダクタンスをLn(μH)、としたときの、Lw、Ls、Lnと周波数との関係を示す図である。
図74は、コイル1Jに、図57のように、各種の金属板を図64(A)のA面に近接させたときの、100kHzにおける実効直列抵抗Rw(Ω)と、インダクタンスLw(μH)を示す特性図である。
図72を参照すると、Rs>Rn≧Rw、を満足する最高周波数f2は、2MHz以上である。100kHzにおける両コイル間の結合係数kは、ki=0.37、である。したがって、150/ki=150/0.3722=1095kHzとなる。よって、コイル1Jは、f2>1095kHz、を満足する。そして、図73を参照すると、Ln>Lw>Ls、となっており、Lw>Ls、の関係も満足している。さらに、図74を参照すると、コイル1Jは、100kHzにおいて、厚さ12μmのアルミホイル、あるいは厚さ0.5mm(この場合厚さは問わない)の鉄板が近接したときの、実効直列抵抗Rw(Ω)の増加率が5倍以下である。また、コイル1Jは、100kHzにおいて、任意の金属体が近接したときに、インダクタンスLw(μH)の減少率が85%以上でもある。図2、図38から図49に示すような構成を持つコイルの他に、同一のコイル2個間で誘導結合可能な構成のコイルであれば、上記の計測を行ない、特性規定を行なうことにより、性能の良いコイルを特定でき、性能の良いコイルを実現できる。
(コイルの対向距離と、結合係数、f1(Hz)、f2(Hz)の関係の説明)
上述した実験結果から、コイル1Jは、コイルとしての性能は良いものの、結合係数が低く、力率が低下する。また、図70より、実効直列抵抗Rw(Ω)が高周波数領域になると高くなる。一方で、コイル1Jが、Rs>Rn≧Rw、を満足する最高周波数f2は、2MHz以上となっており、コイル1Gbが、Rs>Rn≧Rw、を満足する最高周波数f2である150kHzよりも遥かに高い。そこで、結合係数を下げるため、コイル1Gb2個間の距離を3mm取って、Rw、Rs、Rnの周波数特性を計測してみた。
図75は、コイル1Gb2個間の距離TKを3mmとしたときの、Rw、Rs、Rnと周波数との関係を示す図である。
図75と、図71とを比較すれば分かるように、コイル1Gbが、Rs>Rn≧Rw、を満足する最高周波数f2は、約500KHzに上昇している。コイル1Gbを2個使い、対向距離TKを3mmとしたときに、100kHzにおいて、RsとRwより近似的に計算した結合係数krは、0.89、LnとLsより近似的に計算した結合係数kiは、0.91となっている。このように、コイル1Gb2個間の対向距離をゼロとした場合も、コイル1Gb2個間の距離を3mmとした場合も、結合係数に関しては大差無い。しかし、前記f2は、500kHzに大きく上昇している。
図76は、コイル1Gbに、さらに、0.5mm厚のアルミニウム金属板を装備したコイル1Gdを2個使い、対向距離をゼロとした場合の、Rw、Rs、Rnと周波数との関係を示す図である。
コイル1Gdが、Rs>Rn≧Rw、を満足する最高周波数f2は、約80kHzにまで低下している。
図77は、コイル1Gdを2個使い、対向距離TKを3mmとした場合の、Rw、Rs、Rnと周波数との関係を示す図である。
図75とを比較すると分かるが、コイル1Gdが、Rs>Rn≧Rw、を満足する最高周波数f2は、約500kHzにまで上昇している。金属板を装備していないコイル1Gbを2個使い、対向距離TKを3mmとした場合も、コイル1Gdを2個使い、対向距離TKを3mmとした場合も、両コイルのf2は同等である。
上述のコイル1Aからコイル1Gまでの実施形態では、コイル間の対向距離TKが変化しても、Rs>Rw、を満足する最高周波数f1(Hz)、Rs>Rn≧Rw、を満足する最高周波数f2(Hz)に余り変化が無いことは既述した。しかし、コイル1Gb、コイル1Gdは、コイル間隔TKによって、Rs>Rw、を満足する最高周波数f1(Hz)、Rs>Rn≧Rw、を満足する最高周波数f2(Hz)が著しく変化する。コイル1Gb、コイル1Gc、コイル1Gdを例にすれば、両コイル間に少なくとも2mmの対向距離を設けるのが好ましい。対向距離はコイル外径Dの関数となるので、コイル外径をDとし、対向距離TKは、TK≧D/50、であれば好ましい。なお、TKは、図51から図53に図示してあるもので、導線端間の距離である。
これは、図46に示す2枚の磁性材板511,512を重ねてコイル50に装備し、磁性材板512側に金属板55を備えたコイル1qにおいても同様である。さらに、図46に示コイル1qにおいて、対向距離TKがゼロとなるときに、Rs>Rn≧Rw、を満足する最高周波数f2(Hz)が高い磁性材板を選ぶ。特にコイル1qでは、2枚の磁性材板511,512を、厚さや材質が異なる構成とし、比透磁率が異なる磁性材板を使い、できる限りf2(Hz)を高くするように構成するのが好ましい。磁性材板511,512は、実際には磁性材粉をバインダーで固めたシートであるので、比透磁率を実際に計測することは困難である。メーカーの資料を参照する限りにおいて、コイル50に近い磁性材板511の比透磁率を低くし、コイル50から離れた磁性材板512の比透磁率を高くした方が、f2(Hz)の低下率は少ないようである。ただし、磁性材板511,512については、絶縁物52の比誘電率のような、確立された基準が無く、あくまで参考である。本発明の実施形態にて述べた構成規定を優先すべきである。
通常、導線を巻回して構成する電力伝送装置のコイルは、双方のコイルの対向距離TKがゼロで使用されることは無く、所定距離、例えば上述したように、3mmなどの間隔を必要とする。上述してきたように、図38に示すコイル1fから図49に示すコイル1tは、所定距離TKを設けても、結合係数が低下しない。したがって、高い力率を維持でき、電力伝送性能がよい電力伝送用コイルが実現できる。この電力伝送用コイルを使用し、電力伝送性能がよい電力伝送装置を実現することができる。このように、図38に示すコイル1fから図49に示すコイル1tは、金属体の近接による特性変動を回避できる。また、不要輻射を低減できる。さらに、両コイル間に所定距離TKを設けても、結合係数が低下しないという極めて優れた効果を奏するものである。
なお、図42に示すコイル1kの一例であるコイル1Gaは、Rs>Rw、を満足する最高周波数f1は、10MHz以上、Rs>Rn≧Rw、を満足する最高周波数f2は、2MHz以上であり、磁性材板の影響が無く、金属体近接によるコイル特性の変化防止以外の作用効果は、コイル1Aからコイル1Gと全く同じなので、対向するコイルの間隔TKに関する説明を省略する。
なお、言うまでもないが、コイル1fからコイル1tのコイル50には、空芯状態での一方のコイル単体の実効直列抵抗をRw(Ω)、空芯状態での一方のコイルに対向する他方のコイルを短絡したときの、一方のコイルの実効直列抵抗をRs(Ω)、とすると、100kHzにて、Rs>Rw、を満足する一方のコイルを使用する。例えば、コイル50には、上述してきた本発明の実施形態であるコイル1Bからコイル1Gを使用する。
さらに、磁性材板51または511,512を装備したコイル1fからコイル1tを一方のコイルとしたときに、100kHzにてコイル1fからコイル1tが、Rs>Rw、を満足しているのが好ましい。
コイル1fからコイル1tが、Rs>Rw、を満足する最高周波数をf1(Hz)とすると、コイル1fからコイル1tを装備した電力伝送装置100は、f1(Hz)未満の周波数で電力を伝送する。
コイル1fからコイル1tが、電力伝送装置100の送電コイル1である場合、コイル1fからコイル1tは、図1に示した交流電源30bにより、f1(Hz)未満の周波数であるfd(Hz)で駆動される。
電力伝送装置100の送電部30に含まれる交流電源30bの出力周波数fa(Hz)は、f1(Hz)未満の周波数に設定される。
さらに、コイル1fからコイル1tが、電力伝送装置100の受電コイル2である場合、コイル1fからコイル1tが電力を受電する周波数fj(Hz)は、f2(Hz)未満であることを条件とする。
さらに、前述してきた実施形態のコイル1m、コイル1qを一方のコイルとし、同一のコイルを他方のコイルとして、一方のコイル単体のインダクタンスをLwa(H)、両コイルを誘導結合させたときに、他方のコイルが短絡されているときの、一方のコイルのインダクタンスをLsa(H)、とすると、コイル1m、コイル1qが、100kHzにて、Lwa>Lsa、を満足しており、かつ、f1(Hz)未満の周波数領域であって、電力伝送に使用される周波数にて、Lwa>Lsa、を満足しているのが好ましい。
前述してきたコイル1fからコイル1tを一方のコイルとし、対向している他方のコイルを開放したときの各コイルの実効直列抵抗をRna(Ω)、Rsa>Rna≧Rwa、を満足する最高周波数f2a(Hz)とすると、一方のコイルは、f2a(Hz)未満の周波数領域で使用されるのが好ましい。
そして、前述してきたコイル1m、コイル1qを一方のコイルとし、対向している他方のコイルを開放したときの一方コイルのインダクタンスをLn、とすると、少なくとも、Ln>Lw>Ls、の関係を100kHzにて満足し、f1(Hz)未満の周波数領域であって、電力伝送に使用される周波数fa(Hz)にて、コイル1m、コイル1qが、Ln>Lw>Ls、の関係を満足しているのが好ましい。
より好ましくは、コイル1fからコイル1tが、Rs>Rn≧Rw、を満足する最高周波数f2(Hz)とすると、コイル1fからコイル1tは、f2(Hz)未満の周波数領域で使用され、f2(Hz)未満の周波数領域において、Ln>Lw>Ls、の関係を満足している。
なお、前述した熱条件の規定は、前述した方法と同様の手法にて熱抵抗θiを求めることにより満足できる。
電力伝送装置100の送電部30が、コイル1fからコイル1tを含む場合、コイル1fからコイル1tを含む送電部30は、本発明の電力伝送装置の送電装置になる。
電力伝送装置100の受電部40が、コイル1fからコイル1tを含む場合、コイル1fからコイル1tを含む受電部40は、本発明の電力伝送装置の受電装置になる。
(金属板をコイル中心の線に接続する場合の説明)
図78は、図42に示すコイル1kから図49に示すコイル1tにおいて、コイル内周部から取り出す線を、コイルに装備された金属板を使用する図である。
コイル1aからコイル1jの構成のコイル50では、コイル50の中心から外へ取り出す導線は、導線の太さ分厚くなる。図78においては、図42に示すコイル1kの絶縁板54の中心に、導線貫通穴を設け、コイル内周部の導線501を金属板55に接続してある。コイル50の外周部の端部552を一方の端子とし、金属板55の端部551を他方の端子とする。導線501と金属板55との接続方法は、半田付け、溶接など種々の手法が使用できる。この構成は、絶縁板のみならず、磁性材板にも適用可能である。
(コイルに結合線を設ける実施例)
図79は、図38から図49に示す各構成のコイルに使用される導線に、リッツ線を用い、リッツ線の一端は全ての素線を接続し、リッツ線の他端から、リッツ線を構成する素線の内、少なくとも一本を結合線10aとして取り出した場合の等価回路図である。
図79に示す、結合線10aは、コイルの作動状態を検知するのに用いることができる。あるいは、信号伝送用に使用することができる。また、反転アンプを使用して正帰還をかけることにより、自励発振を行なうことができる。
結合線10aは、送電コイル1または受電コイル2とほぼ密結合状態にある。また巻線比は1:1である。よって、結合線10aには、送電コイル1または受電コイル2と同一の振幅、位相の交流電圧が現れる。この結合線10aは後述する本発明のその他の実施形態における送電部と受電部間の信号伝送機能、送電コイルに金属体が近接したときの検知、負荷が接続された受電コイルが近接したときの判別に利用できる。
前述した図78の実施形態をリッツ線に適用する場合には、内周部の導線を全ての素線をまとめて金属板55に接続し、外周部から取り出す素線の内、少なくとも一本を結合線10aにする。結合線10aは、共通線と接続せずに素線として取り出し、4端子構成のコイルとしてもよい。この場合、送電コイルと結合線が絶縁されているので、信号検知、自励発振などに用いる場合、回路構成の自由度が増す。
(電力伝送用コイルの実施例)
図38に示すコイル1gから図49に示すコイル1tは、前述した電力伝送装置に使用される電力伝送用コイルの実施例でもある。
(電力伝送用コイルの駆動条件)
空芯コイルであっても、磁性材板を装備していても、上述したf1(Hz)、f2(Hz)が高くなるようにして、f1(Hz)またはf2(Hz)未満で送電コイルを駆動するコイルの駆動条件を規定しないと、性能のよい電力伝送装置は実現できない。
(コイル単体の実施例)
さらに、上記に説明してきた、特性規定が行なわれた本発明の実施形態の電力伝送装置に使用されるコイルは、同一の2個のコイル間で誘導結合可能な構成を持つコイルの発明でもある。
(本発明に用いる金属に関する説明)
なお、空芯コイルに金属体が近接した場合、コイルの性能が劣化することは上述した通りである。また、空芯コイルに磁性材を近接させた場合も、磁性材がコイルの電力伝送性能を劣化させるときがある。例えば、図31(A)の実施形態において、ボビン状の内径空洞内に、透磁率の低い磁性材料を装備する場合などである。このように、前述してきた本発明の各実施形態以外の構成規定や特性規定によらず、磁性材をコイルに装備しても、本発明におけるコイルの性能を改善できるものではない。
コイルに磁性材を装備する場合においても、まず本発明の空芯コイルで特性のよいものを選ばねばならない。上述した実施形態では最も性能の良い空芯コイルであるコイル1Gを選んで、磁性材板を装備した。しかし、上述したように、コイル1Gの電力伝送性能を維持したまま、金属体近接影響の排除を実現するのが簡単ではないことを説明してきた。特許文献2の実施例に示されているコイルでは、金属体近接影響の排除できず、高周波数での動作も難しい。不要輻射の関係上、250kHz以上の周波数を使用するのは困難である。しかし、最低でも、100kHzでの動作を実現しなければならない。そのためには、上述してきた規定に基づき、できる限り性能のよい空芯コイルを選ぶ必要がある。
この発明の実施形態において、導線を形成する導体の材質は特に限定されないが、本実施形態にて述べている各コイルは、全て導体に銅を用いている。導体として比抵抗が小さい銅を使うのが好ましいが、比抵抗が小さい他の金属、あるいは合金を導体として使うこともできる。
また、金属の磁気的性質には、反磁性、常磁性、強磁性以外にも、反強磁性などがある。しかし、本願において着目しているのは、コイルの実効直列抵抗Rw(Ω)を増加させる磁気的性質である。コイルに装備する金属板は、単に永久磁石に吸着する金属または合金以外のものであればよい。
本願発明者は、チタン、真鍮、ステンレスなどの各種金属を使用して実測を行なった。0.1mmの厚さのチタン板は、0.1mm厚のアルミ板と同じ特性変動を示した。0.5mmの厚さの真鍮板は、0.5mm厚の銅板と同じ特性変動を示した。0.5mmの厚さの永久磁石に吸着するステンレス板は、0.5mm厚の鉄板よりも特性劣化を起した。このように、永久磁石に吸着するか、吸着しないかで金属板を選べばよい。
(コイルの特性計測に用いた計測器)
なお、上記に説明した各コイルの実効直列抵抗やインダクタンスの測定には、1MHzまでは、アジレント社のLCRメータ、4284A、1〜10MHzの測定には、ヒューレットパッカード社のLCRメータ、4275Aを使用した。なお、1〜10MHzの計測は、1、2、4、10MHzの各点でしか計測できないので、例えば、4MHzにて、Rs>Rwを満足し、10MHzにて、Rs>Rw、を満足しない場合は、補間により、Rs>Rw、を満足する最高周波数f1(Hz)を推定している。
(電力伝送装置の電力伝送特性)
図80は、密結合状態に構成された通常の変圧器(変成器)における2次側巻線の負荷電流と2次側巻線の両端電圧の関係、本発明の実施形態における電力伝送装置100の受電コイル2の負荷電流と受電コイルの両端電圧の関係を示す特性図である。図80において、一般の変成器の特性は実線で示してあり、本発明の実施形態における電力伝送装置の特性は破線で示してある。
密結合状態に構成された通常の変圧器では、2次側巻線の負荷電流値が変圧器の定格値Im(A)以下なら、2次側巻線の両端電圧は、ほぼ一定である。一般の電気機器、電子機器は、定電圧で動作する。そのため、図80に示す変圧器の定格値Im(A)以下の定電圧領域で使用する。しかし、商用電源に用いられているような変圧器とは異なり、一般の電気機器、電子機器に用いられる変圧器は、機器が消費する最大電流よりも前記定格値Im(A)が、若干高いものが使われる。これは、過剰な余裕を持たせると、変圧器の体積が大きくなり、コストも高くなってしまうからである。
一方、本発明の実施形態における電力伝送装置の受電コイルの負荷電流と2次側巻線の両端電圧の関係を見ると、負荷電流の増加に従い、2次側巻線の両端電圧が降下しているのが分かる。この特性図は、特許文献2の第8図から数値を読み取って計算し、若干の補正をして正規化したものである。本願発明者の追試では、負荷電流の増加による2次側巻線の両端電圧降下率は、特許文献2よりもさらに大きくなっている。
このような特性を持つ本発明の実施形態における電力伝送装置において、機器が必要とする最大電流に負荷を設定すると、電源電圧が低下する。機器が消費する電流が低下すると、電源電圧が上昇する。さらに、前述した図51から図54のように、送電コイルと受電コイルの寸法、形状が異なる場合や、使用状況によりコイル間の距離TKが異なる場合がある。このような場合に、図52の状態で、最大のコイル間距離TKにて受電部の負荷電流を確保するように調整をしたとする。前述した(4)式で説明するまでもなく、コイルの相対位置が図51のようになるか、コイル間の距離TKが短くなった場合には、受電側の電圧が上昇するのは容易に推察できる。すなわち、本発明の電力伝送装置は、受電コイル出力が定電圧特性ではない。受電側の電圧が上昇すると、受電部が含まれる機器本体が破損する可能性がある。また、受電部に過大電流が流れる可能性もある。負荷抵抗値は異なるが、負荷電流を2Aから1Aに低下させると、負荷電圧は約1.6倍になるのが、図80より分かる。少なくとも、これらの過大電圧、過大電流対策も考慮しておかないとならない。
また、上述してきたように、本発明の実施形態における電力伝送装置、電力伝送装置の送電装置、電力伝送装置の受電装置は、電力伝送性能が極めてよい。送電コイル1、受電コイル2に流れる電流にもよるが、前述した直径5cmのコイル1Gを、送電コイル1、受電コイル2の双方に使用することにより、最大で40W前後の電力を伝送可能である。このような電力伝送性能が達成されると、送電コイル1は誘導加熱器の過熱コイルと同じく、金属加熱作用を持つ。そこで、特許文献5に記載のように、送電コイルにクリップなどの金属体が近接したときに、金属体の発熱を防止しなければならなくなる。あるいは、正規の受電部を判別する必要がでてくる。そこで、これらの課題を解決する具体例を以下に説明してゆく。
(信号伝送手段を装備した実施例)
図81は、送電部30と受電部40との間で情報を伝送できるようにした例である。
図81では、送電部30は、送電側の信号受信回路30cを装備しており、受電部40は受電側の信号送信回路40bを装備している。信号ライン61は受電部40から送電部30への信号伝送ラインを示す。これにより、受電部40から送電部30に信号を送ることが可能になる。
送電制御回路30aには、受電部個別の識別情報であるIDコードを保持する送電側識別情報保持手段30hと、受電制御回路40aからIDコードが送られてきて送電側識別情報保持手段30hに保持されているIDコードとが一致しており、受電側の動作状態が正常であれば送電電力を制御する送電電力制御手段30iと、送電時の識別情報、日付および時刻情報、送電電力情報などを記憶する記憶手段30jと、外部機器51と通信を行なう外部機器信号伝送手段として作動する信号通信手段30kとが設けられている。
送電側識別情報保持手段は30hは、日付時刻を保持するための計時手段が含まれており、受電部40に識別信号送信要求などの指令を行なう指令信号情報も保持されている。送電電力制御手段30iは、送電電力を変化可能な送電電力可変手段および送電周波数を変更可能とする送電周波数可変手段としても作動する。記憶手段30jは、受電部40から送られてくるIDコードを含む指令信号、例えば、送電電力制御情報なども記憶する。あるいは、受電部40を含む機器が保持している任意の情報を記憶する。例えば、後述するように、携帯電話の電話帳などの情報を記憶する。任意の情報を記憶する場合、記憶手段30jには、不揮発性のメモリ、例えば、フラッシュメモリが使われる。これにより、送電部が非稼動状態でも、記憶手段30jに記憶された情報は消失しない。
受電制御回路40aには、交流電力を直流電力に変換する整流回路が装備される。受電制御回路40aは、この整流回路により変換された直流電力で動作する受電部個別の識別情報であるIDコードを保持する受電側識別情報保持手段40hと、受電電力を検知する受電電力検知手段40iと、受電部40の動作状態を検知する受電動作状態検知手段40jと、受電部40が含まれる装置の温度を検知する温度検知手段40kと、受電時に送電部30の識別情報、受電部40が受電した日付および時刻情報、受電時の受電電力情報などを記憶する記憶手段40l、受電部40に2次電池が含まれる場合に2次電池の充放電状態を検知する回路などが含まれる。
受電部40から送電部30に信号を送ることにより、受電部40に異常が起こったときに、送電部30で電力送電を中止するなどの異常対策が取れる。また、特定の受電部40が保有するIDコードの認証を行なうことにより、特定の受電部40以外には送電を行わないこともできる。あるいは、受電部40が必要とする電力情報信号を、送電部30に送り、送電部30の送電電力を増減する帰還制御を行なうことができる。
帰還制御を行なう場合、IDコードには、受電部40個別の識別情報以外に、受電部40が必要とする送電電力情報等が含まれる。受電部40が複数の送電部30に適合している場合は、受電部40個別の識別情報であるIDコードから、受電部40が必要とする送電電力情報等を判断できるよう、送電制御回路30aに含まれる送電電力制御手段30i、または、記憶手段30jが、当該IDコードを保有する受電部40が必要とする電力の対応関係の情報を保持していてもよい。これらにより、後述する利便性の高い実施形態が実現可能となる。
さらに、本発明の実施形態における電力伝送装置100は、送電部30と受電部40とが分離可能である。大電力を送電可能な送電部30は、本発明の実施形態における受電部40を内蔵した小電力を必要とする機器から、本発明の実施形態における受電部40を内蔵した大電力を必要とする機器まで、幅広い機器に対応できる。従来から提案されていない用途として、同一の送電部で、携帯電話などの2W前後の電力を必要とする機器、PDAなどの10W前後の電力を必要とする機器、パソコンなどの50W前後の電力を必要とする機器の全てに電力を伝送可能である。
受電部40が含まれる機器に対応するIDコードを受電部40が保有し、機器から送電部30に伝送されたIDコードを読み取ることにより、送電部30は受電部40が必要とする電力を伝送できる。それによって、2Wしか必要としない小型機器に、10Wの電力を伝送してしまい、前記小型機器が破損に至るのを防止できる。後述するが、本発明の実施形態では、送電部30が誤動作して過大電力を受電部40に送った場合、受電部40での安全対策も考慮してある。
さらに、IDコードが、機種のみならず、送電部30および受電部40の各機器1台に1個のコードが設定されることにより、不特定多数の人が利用する送電部30が、各機器1台に対し、いつどのような状態で作動したかの稼動状況を送電部30で記録できる。また受電部40は最初に送電部30からのIDコードを受信し、機器が破損しても情報を保持できる手段、例えば不揮発性メモリに保存しておく。このようにして、送電側機器、受電側機器の双方で、各個別機器の故障原因を追跡可能となる。従来では、電力伝送性能が達成されていないため、上記のような使用法は発想もされていなかった。
図82は、送電電力を制御するための、PWM制御の基本波形を示す図である。図82(A)はゲートタイミングを示し、図82(B)はバースト波形を示している。図82(A)のゲートタイミングにおいて、周期T(S)と周期T1(S)の関係は、T1≦T、となっている。ただし、周期T(S)を変動させたときに、(T1/T)は一定でないといけない。通常、このようなPWM制御回路は、鋸波発生器とコンパレータから構成されており、このような回路構成では、周期T(S)を変動させても、(T1/T)は一定となる。
図82において、送電コイル1に供給する交流電力を時分割し、デューティーを変化させる方法について説明する。周期T(S)は、受電部40の最小負荷抵抗値RL(Ω)と、平滑用キャパシタ31dの静電容量C1(F)との積である時定数により決められる。周期T(S)は、T≦RL・C1(S)、に設定するのが好ましい。最大送電可能電力をPm(W)とすると、T1とTの比が、実際の送電電力P1(W)となり、P1=Pm・T1/T(W)、となる。T1=T、のときは、P1=Pm(W)、T1=0、のときは、P1=0(W)となる。従来の技術では、受電部に十分な電力を送れなかったため、図82に示すようなバースト波の周期T(S)を考慮する必要はなかった。
図83は、図81に示す送電部30の送電電力を制御するための、他の実施形態であるPWM回路の一例を示す図である。
図83において、PWM降圧コンバータ30fは、内部に鋸波の発振器とコンパレータとを有しており、図82(A)のゲートタイミングに示す周期Tを一定にし、周期T1を変動させて出力電圧を変動させる。PWM降圧コンバータ30fの出力は、パルス波であるため、平滑して直流にする必要がある。このため、PWM降圧コンバータ30fの出力には、回生ダイオード31bとコイル31cと平滑キャパシタ31dとからなる整流回路が接続される。PWM降圧コンバータ30fの出力OUTがVdのときは、コイル31cに電流I(A)が流れ、コイル31cのインダクタンスをL(H)とすると、コイル31cは、U=LI/2(J)のエネルギーを蓄積している。PWM降圧コンバータ30fの出力がゼロ(実際には開放状態)になると、自己誘導作用により、コイル電流の時間変化に比例する起電力、V=dI/dt(V)、の高電圧がコイル31cの両端に現れ、エネルギーU(J)が解放される。そのため、PWM降圧コンバータ30fの出力が開放状態になったときに、コイル31cに蓄積されているエネルギーU(J)を、回生ダイオード31bにより、平滑用キャパシタ31dに移動させ、電圧変換効率の低下を防ぐ。
送電制御回路30aとPWM降圧コンバータ30fとを接続する制御信号ライン63は、パルス幅の制御(PWM)を行なうための制御信号を出力する。この制御信号に基づいて、PWM降圧コンバータ30fは、内部のコンパレータの一端に電圧を与えてPWM制御を行なう。送電制御回路30aは、PWM降圧コンバータ30fの出力に基づいて、電力伝送用に必用な電圧(受電部より送られてきた信号、あるいは送電部で検知した信号等に基づき)を生成する。
送電電力を増減するその他の実施形態は、図83に示す、直流電源Vdを所定電圧Vb(V)に降圧するPWM式のコンバータと、前述した図82に示す、バースト波で送電コイル1を駆動する方法を併用する。図80を参照すると明らかなように、通常の変圧器とは異なり、交流電力を調整することにより、受電側の電圧を変化させることができる。
受電部40に受電電力P2(W)を検知する回路を設け、受電部40より受電電力P2(W)の値を送電部30に送ることにより、送電部30では、送電電力P1(W)と受電電力P2(W)の比から電力伝送効率η、η=P2/P1、を求めることができる。さらに、前述した受電部40の動作状態を検知する回路により、負荷電圧VL(V)と負荷電流IL(A)が求まり、受電部40にて負荷抵抗値RL、RL=VL/IL(Ω)、が求まる。送電制御回路40aが送電周波数fa(Hz)を変化させる回路を含む場合、送電制御回路40aは、受電部30からの信号に基づき、例えば、電力伝送効率ηが極大となる点にfa(Hz)を調整する。あるいは、受電部30からの負荷抵抗値RL(Ω)信号に基づき、力率が最大となる点にfa(Hz)を調整する。
なお、信号伝送経路は、前述した方式により、図81に示す信号伝送ライン61、62を必ず使用する必要はない。送電電力を搬送波として、送電部30で振幅変調や周波数変調を行い、該信号を受電部40で復調できる。または、受電部40の負荷抵抗値を変動させて、前述の(4)式により、送電コイル1のインピーダンスを変動させる。送電部30にて送電コイル1のインピーダンス変化を検知し、受電部40からの信号を復調できる。
あるいは、特許文献5に記載のように、電力伝送周波数fa(Hz)よりも信号伝送周波数fb(Hz)を数十倍以上に高く設定し、信号をフィルタで取り出してもよい。この場合において、信号伝送周波数fb(Hz)は、前述した、送電コイル1が、Rs>Rw、を満足する最高周波数であるf1(Hz)以上であってもよい。一方、電力伝送を行なう周波数fa(Hz)は、fa<f1、を満足していなければならない。上記のように、送電コイル1と受電コイル2を信号伝送ライン61、62として使用することもでき、コストも低減できる。ただし、信号伝送周波数fb(Hz)は、電力伝送周波数fa(Hz)の整数倍の値から離れたところに設定しないと、信号伝送周波数fb(Hz)が、電力伝送周波数fa(Hz)の高調波による妨害を受けるので、fb(Hz)の設定には注意を要す。
このため、fb(Hz)はfa(Hz)よりも低くし、fa(Hz)を減衰させるノッチフィルタとローパスフィルタを併用し、fb(Hz)のみを取り出せるようにしてもよい。この場合、fa(Hz)を100kHz程度とすると、fb(Hz)は、少なくともfa(Hz)の1/4である25kHz以下に設定する。これは、ローパスフィルタの特性限界であり、かつ、ローパスフィルタによって、波形が鈍ってしまうからである。この波形を復調するには、25kHzの正弦波が25波程度は必要となり、信号伝送レートは、1KBPS程度にまで低下する。しかし、仮に64ビットの信号を伝送するとしても、伝送時間は64mSで済む。上述した各動作情報などは、128ビット程度あれば足りるので、本用途における信号伝送時間は、特に問題にはならない。
上記のような方式は、特許文献5に限らず、従来から種々提案されているが、従来の技術では、そもそも受電部40が必要とする電力を送れていない。このような機能は、本発明の各実施形態ように、電力伝送性能が確保できてこそ、効果を発揮するものである。
信号伝送方法としては、種々の方式がある。上記のように、信号伝送手段に、送電コイル1と受電コイル2を用いても、従来技術よりも高精度に信号を伝送できる。あるいは、MHz帯域、GHz帯域の通信手段を使うこともできる。プラスチックを透過する赤外線LEDにより信号を送信し、赤外線フォトダイオードにより信号を受信して用いてもよい。このように、従来と比較して電力伝送性能が向上すると、送電部30と受電部40間の信号伝送が、種々の方式を用いて実現できるようになる。
また、図81では、送電部30が送電側の信号送信回路30bを装備しており、受電部40は受電側の信号受信回路40cを装備している。信号は、信号伝送ライン62を介して伝送される。近年、携帯電話にキャッシュカードと同じように決済用の金銭、あるいは航空券などをデータ化して保持する機能を持たせている。なお、信号伝送ライン61は第2通信ラインとして作動し、信号伝送ライン62は第1通信ラインとして作動する。また、信号送信回路30b信号,信号受信回路40c,信号伝送ライン62は第1の信号伝送手段として作動し、信号送信回路40b,信号受信回路30c,信号伝送ライン61は第2の信号伝送手段として作動する。
しかし、行楽、スポーツなど、データ化された金銭や航空券を保持した携帯電話を紛失する可能性が高い場合がある。行楽、スポーツなどに出かける場合、信号伝送ライン61を介して、送電部30に金銭や航空券のデータを送信し、送電部30がデータ化された金銭や航空券を保持しておく。行楽、スポーツなどが終了後、信号伝送ライン62を介して、送電部30よりデータ化された金銭や航空券を携帯電話に送る。送電部30と受電部40が分離可能な電力伝送装置100では、送電部30と受電部40間の信号伝送機能を持たせることにより、上記のように様々な利便性の高い機能を実現できる。
なお、上記に挙げた、送電部30と受電部40間の信号伝送機能の利用法は、ごく一例に過ぎない。図81は、送電制御回路30aに外部通信手段30kを備え、外部機器51との信号伝送が可能となっている。これにより、受電部と送電部間のデータ伝送のみならず、受電部→送電部→外部機器へのデータ伝送、外部機器→送電部→受電部へのデータ伝送ができる。送電部30と外部機器51間の信号伝送には、信号受信回路31a、信号送信回路31bを使用してもよい。
したがって、携帯電話の電話番号帳等の、携帯電話内に蓄積されているデータを送電部30に保存しておく。あるいはPDAのデータをパソコンに備えた送電部へ取り込みパソコンに保存するなど、様々な応用用途が実現できる。これらの機能が実現できていないのは、上述したように、従来の技術では、電力伝送性能が確保できていないからである。
上述した送電部30と受電部40との信号伝送機能は、必要に応じ、受電部40から送電部30への信号伝送機能、送電部30から受電部40への信号伝送機能、の少なくとも一方を備えていればよい。受電部40に受電側の送信手段として作動する信号送信回路40bが含まれている場合、電力伝送装置の送電部30は、送電側の受信手段として作動する信号受信回路30cが備えられていればよい。送電部30に信号送信回路30bが含まれている場合、電力伝送装置の受電部40は、信号受信回路40cが備えられていればよい。信号送信回路30bと信号受信回路40cは、伝送手段として作動する信号伝送ライン62により接続される。
すなわち、本発明の実施形態の受電部40との信号伝送手段を含む送電部30は、本発明の電力伝送装置100の送電部の発明にもなる。また、本発明の実施形態の電力伝送装置100の送電部30との信号伝送手段を含む受電部40は、本発明の電力伝送装置の受電部の発明にもなる。
(制御回路の実施例)
図84は、送電コイル1のインピーダンスZの変化を、送電コイル1に流れる電流を計測することにより検知して、送電コイル1に金属体が近接しているかを判断するか、あるいは2次側の動作状態等を判断するため、送電部30に装備される回路の一例を示すブロック図である。
図84においては、送電コイル1に交流定電圧Vを印加し、送電コイルに流れる交流電流Iを検知して、Z=V/I、として複素インピーダンスZを求めている。送電コイル1の複素インピーダンスZを求めるには、送電コイル1に交流定電流Iを流し、送電コイル両端の交流電圧Vを計測し、Z=V/I、として複素インピーダンスZを求める方法もある。後者の場合は、送電コイル1両端の交流電圧を検知する手段が必要となるが、送電コイル1の複素インピーダンスZは同様に求められる。あるいは送電コイル1にリアクタンス性素子を直列接続し、前記リアクタンス性素子の電圧を計測することにより、送電コイル1の複素インピーダンスZを求めることができる。ここでは、送電コイル1に流れる交流電流に基づき、送電コイル1の複素インピーダンスZを求める方法について説明する。
図84において、送電コイル1の一端には電流検出用の抵抗Riが直列接続される。送電コイル1の他端は送電制御回路30aのOUTHに接続される。抵抗Riは、0.05Ω程度の値で、抵抗Riと送電コイル1との接続点をオペアンプ36aで構成される非反転増幅器の非反転端子に接続する。オペアンプ36aの出力と反転端子との間には、帰還抵抗Rfが接続されている。オペアンプ36aの反転端子は、抵抗R10を介して、送電制御回路30aのOUTLと、信号処理回路と共通の参照電位であるGNDに、抵抗Riのもう一方の端子と共に接続される。オペアンプ36aのゲインGは、G=Rf/R10+1、になる。オペアンプ36aは、数十〜1000倍のゲインを持つように、RfとR10の抵抗値が選ばれている。オペアンプ36aで構成される非反転増幅器は、抵抗Riの両端に生じる数mV〜数十mVの交流電圧を、数V程度に増幅し、電流検知手段として作動する。
オペアンプ36aの出力は、アナログスイッチ32a,32bに入力される。アナログスイッチ32a,32bは、送電制御回路30aが生成する位相が90度異なる制御信号により、ON,OFFされる。アナログスイッチ32a,32bが、ON,OFFされるタイミングは、sin検波信号と、cos検波信号のように、sinとcosの関係になっている。アナログスイッチ32aの出力は、検波器sin出力となり、アナログスイッチ32bの出力は、検波器cos出力となる。アナログスイッチ32aの出力は、積分器(LPF:ローパスフィルタ)33aに入力され、積分器33aの出力は、積分器sin出力となる。アナログスイッチ32bの出力は、積分器33bに入力され、積分器33bの出力は、積分器cos出力となる。積分器33a,33bの出力は、切換器34によって切換えられてA/D変換回路35に入力され、アナログ信号からデジタル信号に変換されて送電制御回路30aに与えられる。
なお、アナログスイッチ32a,32bと、積分器33a,33bと、A/D変換回路35は制御信号出力手段として作動する。また、アナログスイッチ32a,32bと、積分器33a,33bは、位相差が90度のsin検波信号とcos検波信号とに基づいて、オペアンプ36aの出力を同期検波する同期検波手段として作動する。さらに、アナログスイッチ32a,32bと、積分器33a,33bは、位相と振幅を同時に検知しており、位相検知手段および振幅検知手段としても作動する。
図85〜図87は、図84における回路の動作状態を表す波形図であり、特に、図85は無負荷時の波形図であり、図86は有負荷時の波形図であり、図87は金属体が接近したときの波形図である。図88は送電コイル電流の同期検波後の信号出力を説明するための図である。
まず、図85を参照して、無負荷時の動作について説明する。図85(A)には、無負荷時の送電コイル1単体に流れる電流Iと電圧Vとを図示してある。送電コイル1単体の場合、送電コイル1に印加される電圧Vの位相に対し、送電コイル1に流れる電流Iの位相は、90度遅れている。無負荷時においても送電コイル1には所定の電流が流れ、電流検出用抵抗Riの両端に電圧が発生し、その電圧がオペアンプ36aに入力され、オペアンプ36aの出力はアナログスイッチ32a、32bに与えられる。
アナログスイッチ32aは、図85(B)に示すsin検波信号によりONし、検波器sin出力信号を出力する。検波器sin出力信号は、図85(C)に示すような正弦波を半波整流した波形である。アナログスイッチ32aの出力を積分器33aに与えると、図85(D)の積分器sin出力のように、1Vの直流電圧となる。切換スイッチ34がBの位置にあり、A/D変換回路35の入力が積分器33aの出力側に接続されているときは、積分器33aの出力がA/D変換回路35に与えられて、図85(D)に示す積分器sin出力1VをA/D変換したデジタル信号が送電制御回路30aに出力される。
一方、アナログスイッチ32bは、図85(F)に示すcos検波信号によりONし、検波器cos出力信号を出力する。検波器cos出力信号は、図85(G)に示す正弦波の極小値から始まり、極大値で終る波形である。図85(G)に示す検波器cos出力において、Cの部分は負であり、Dの部分は正であり、CとDの面積は等しい。
アナログスイッチ32bの出力を積分器33bに通すと、積分器33bの出力は、図85(H)に示す積分器cos出力のように、ゼロ(V)の直流電圧となる。切換スイッチ34がAの位置にあり、A/D変換回路35の入力が積分器33bの出力側に接続されているときは、積分器33bの出力がA/D変換回路35に与えられて、図85(H)に示す積分器cos出力(0V)をA/D変換したデジタル信号が送電制御回路30aに出力される。
なお、上述した1Vは、後述する負荷が接続された受電コイル2が送電コイル1に対向したときと比較するため、正規化した値であり、実測値では無い。また、図85(E)、図86(E)、図87(E)は、同期検波後の直流信号であるsin出力の値を比較するための基準点0Vを示している。同じく図85(I)、図86(I)、図87(I)は、同期検波後の直流信号であるcos出力の値を比較するための基準点0Vを示している。図85(E)、図86(E)、図87(E)は、図88のXY平面におけるY軸、X=0に相当し、図85(I)、図86(I)、図87(I)は、図88のXY平面におけるX軸、Y=0に相当している。
このように、無負荷時において、図85(D)に示す積分器sin出力である積分器33aの出力電圧をY軸、図85(H)に示す積分器cos出力である積分器33bの出力電圧をX軸とすると、sin(Y)の電圧値は1V、cos(X)の電圧値は0Vであるので、図88のXY平面にて、信号はY軸上に出てくる。
次に、図86を参照して、有負荷時の動作について説明する。前述したように、負荷が接続された受電コイル2が送電コイル1と誘導結合すると、送電コイル1のインダクタンスは、送電コイル1単体のインダクタンスよりは低くなる。そして、送電コイル1の複素インピーダンスZの純抵抗成分が増加し、リアクタンス成分が減少する。そのため、コイルに印加される電圧Vに対し、コイルに流れる電流Iの位相差θは、90度よりも小さくなる。また、送電コイル1の複素インピーダンスZの絶対値が減少するため、コイルに流れる電流Iの振幅は増加する。図86(A)には、送電コイル1に印加される電圧Vと、送電コイル1に流れる電流Iの波形を図示してある。有負荷時には無負荷時に比べて、流れる電流Iが大きくなり、電流検出抵抗Riの両端に発生する電圧も高くなる。
アナログスイッチ32aが図86(B)に示すsin検波信号によりONになっているときは、アナログスイッチ32aの出力は、図86(C)に示す検波器sin出力のように、正弦波の一部を取り出した波形となっている。正の部分の面積Aは負の部分の面積Bよりも大きい。アナログスイッチ32aの出力を積分器33aに通すと、図86(D)に示す積分器sin出力のように、0.86Vの直流電圧となる。A/D変換回路35の出力には、図86(D)に示す信号が出力される。
一方、アナログスイッチ32bが図86(F)に示すcos検波信号によりONになっているときは、アナログスイッチ32bの出力も、図86(G)に示す検波器cos出力のように、正弦波の一部を取り出した波形となっている。図86(G)における負の部分の面積Cは正の部分の面積Dよりも小さい。アナログスイッチ32bの出力を積分器33bに通すと、積分器33bの出力は、図86(H)に示す積分器cos出力のように、1.31Vの直流電圧となる。
このように、有負荷時には、図86(D)に示す積分器sin出力である積分器33aの出力電圧をY軸、図86(H)に示す積分器cos出力である積分器33bの出力電圧をX軸とすると、図88のXY平面にて、信号はY軸上のB点に出てくる。したがって、XYの信号は、図88に示すXY平面上の有負荷エリア内で出力される。
次に、図87を参照して、送電コイル1に金属体が近接したときの動作について説明する。送電コイル1に金属体が近接すると、送電コイル1のインダクタンスが減少し、純抵抗成分が増加する。そのため、送電コイル1に印加される電圧Vに対する、コイルに流れる電流Iの位相差θは、90度よりも小さくなる。また、送電コイル1のインピーダンスが変化するため、送電コイル1に流れる電流Iの振幅も変化する。図87(A)には、送電コイル1に印加される電圧Vと、送電コイル1に流れる電流Iが図示してある。図87(A)に示す電流Iの振幅は、図85の電流Iの振幅よりも若干大きい。
金属体が近接したときの、アナログスイッチ32aの出力は、図85(C)に示した無負荷時における、検波器sin出力の正弦波を半波整流した波形に比べて、図87(C)に示すようにわずかにずれている。Bの部分には、若干の負の部分が含まれる。アナログスイッチ32aの出力を積分器33aに通すと、図87(D)に示す積分器sin出力のように、1.13Vの直流電圧となる。
一方、アナログスイッチ32bの出力は、図85(G)に示した無負荷時における、検波器cos出力のように、正弦波の極小値から始まり、極大値で終るような波形に比べて、図87(G)に示すようにわずかにずれている。図87(G)において、検波器cos出力に示すように、Cの部分は負であり、Dの部分は正であり、Cの面積はDの面積よりわずかに小さい。よって、アナログスイッチ32bの出力を積分器33bに通すと、積分器33bの出力は、図87(H)に示す積分器cos出力のように、0.21Vの直流電圧となる。
このように、金属体近接時には、図87(D)の積分器sin出力である、積分器33aの出力電圧をY軸、図87(H)の積分器cos出力である、積分器33bの出力電圧をX軸とすると、XYの信号は図88のXY平面にて、小型金属異物近接エリア内に信号が出力される。
ただし、金属体の大きさにもよるが、小さい金属体の近接では、実際の電力伝送時とは異なり、送電コイルのリアクタンスが若干減少し、純抵抗成分が若干増加するため、送電コイル1のインピーダンスZの絶対値は若干増加する。よって、送電コイルに流れる電流の振幅にはほぼ変化が無く、位相角θが若干減少するため、図88に示すXY平面において、無負荷状態に比較して検知信号は、Y軸から少し右へシフトする。このようにして、金属体の近接を検知し、図85に示す制御信号を、送電制御回路30aに送ることにより、送電コイル1に供給する電力を調整できる。その結果、送電コイル1に近接する金属板異物の発熱を防止できる。
金属体が大きいときは、送電コイルのリアクタンスが減少し、純抵抗成分が大きく増加するため、送電コイル1のインピーダンスZの絶対値は低下する。よって、送電コイルに流れる電流の振幅と位相角θの双方が減少するため、図88に示すXY平面上において、無負荷状態に比較し、検知信号はY軸から右下の方向へシフトする。ただし、金属体の形状、材質、送電コイル上に置かれる位置により、図88に示すXY平面において、検知信号が現れる位置は、無負荷状態に比較し、上下に移動する。また、Y軸から右方向への移動距離、検出信号の原点からの距離である振幅Eも変化する。
図88に示す小型金属異物検出エリアは、あくまで目安である。送電コイル50に大きい金属板が近接した場合などは、コイルのリアクタンスが大幅に減少し、純抵抗成分が大幅に増加する。そして、送電コイルのインピーダンスZの絶対値が大幅に低下する。よって、送電コイル1に流れる電流の振幅Eは大幅に増加し、位相角θは大幅に減少し、検出信号は、場合によっては、図88に示す有負荷エリアのさらに右に現れることもある。
なお、図84の回路で、送電コイルに流れる交流電流Iの振幅Eは、図88に示すXY平面上の原点(X=0、Y=0)から信号(■の点)までの距離で表される。例えば、図86で、出力(D)であるXは0.86V、出力(H)であるYは1.31Vであるから、振幅Eは、E=√(0.862+1.312)=1.57(V)となる。送電コイル1に印加される電圧Vと、送電コイル1に流れる電流Iの位相差θは、図88に示す有負荷信号(■の点)のX軸との傾きで表される。このようにして、図84の回路で、振幅E、位相差θのみを検知し、送電電力等を制御してもよい。送電制御回路30aによる送電電力の調整方法については、先の発明の実施形態にて既述した通りである。
前述した本発明の実施形態であるコイル1Gb、コイル1Gc、コイル1Gdは、開放した同一のコイルが対向するだけで、インダクタンスLnが増加する。しかし、構成規定を行なっているコイル1Gb、コイル1Gc、コイル1Gdは、実効直列抵抗Rnの増加が小さい。したがって、金属体の近接と同様、信号は図88に示すXY平面で、Y軸上の■点から右側に少し下がったところへシフトする。ただし、コイル対向面への金属体の近接では、実効直列抵抗Rw(Ω)の増加率が大きい。よって、コイル対向面への金属体の近接と、コイル1Gaからコイル1Gdのコイル対向面に、開放した同一のコイルが対向したときとの違いを判別できる。
一般に、金属異物の検知に適した周波数fc(Hz)と、電力伝送に適した周波数fa(Hz)は異なっている。送電部30が待機状態のときは、金属異物検知に適した周波数fc(Hz)にて送電コイル1を駆動しておく。このように、金属異物検知に適した周波数fc(Hz)と、電力伝送に適した周波数fa(Hz)を変えることにより、金属異物検知と、電力伝送双方の性能がよい電力伝送装置が実現できる。
さらに、金属異物の寸法、形状、材質などにより、金属異物の検知感度が最適な周波数fc(Hz)は異なってくる。したがって、fc1(Hz)、fc2(Hz)等、複数の周波数を足し算回路で合成し、金属異物の検知用として使うとより好ましい。この場合、図84に示すアナログスイッチ32aと32b、LPF33aとLPF33bを、使用する周波数の数だけ設ける。sin検波信号とcos検波信号は各周波数に対応して図55から図57に示すようなタイミングで出力される。fc1(Hz)、fc2(Hz)等、複数の周波数は、高い周波数が低い周波数の奇数倍にならないように設定する。このように周波数を設定すれば、fc1(Hz)以外の周波数成分はゼロとなり、fc1(Hz)に対応する周波数成分のみが取り出せる。
上記の場合において、金属異物検知に使用する周波数fc(Hz)は、前述した、送電コイル1が、Rs>Rw、を満足する最高周波数f1(Hz)以上であってもよい。ただし、電力伝送を行なう周波数fa(Hz)は、fa<f1、を必ず満足していなければならない。あるいは、金属異物検知に使用する周波数fc(Hz)は、電力伝送に適した周波数fa(Hz)以下であってもよい。勿論、周波数fa(Hz)を金属異物検知用に使用してもよい。
周波数fa(Hz)を金属異物検知用に使用する場合、送電コイルの電流の位相変化をコンパレータで検知する場合、ピークホールドアンプで振幅を検知する場合は、図82(B)に示すようなバースト波でも問題無い。しかし、送電電力を、このようなバースト波や、出力振幅の増減で調整する場合、図84に示す同期検波回路では、検波信号が送電電力により変化してしまう。この回避策は種々ある。しかし、同期検波回路は精度がよく、送電制御回路30aは、図82(A)に示すT1(S)とT(S)を設定する機能を持っている。また、送電制御回路30aは、図83に示すPWM回路の出力電圧Vb(V)と最大直流入力電圧Vm(V)を設定する機能を持っている。したがって、送電制御回路30a内部で、図86(D)に示す積分器sin出力を、T/T1倍にする演算処理を行なえる。また、図86(D)に示す積分器sin出力を、Vm/Vb倍にする演算処理も行なえる。これは、図86(H)に示す積分器cos出力についても同様である。
図84には図示していないが、図85から図87に示すように、オペアンプ36a、アナログスイッチ32a、32b等には、正負の信号が入力される。したがって、オペアンプ36a、アナログスイッチ32a、32b等には、±の電源が供給されている。マイナス側電源は、例えば、VdよりDC/DCコンバータ等により生成される。
図84においては、同期検波を行なうことにより、送電コイル1に流れる交流電流の位相と振幅を同時に検知しているが、図84の方法に限らず、コンパレータで位相差θの検出のみを行なうこともできる。あるいは、ピークホールドアンプにて尖頭値を保持し、尖頭値を、A/D変換して送電コイル1に流れる交流電流の振幅を検出してもよい。送電電力が数W以下のような場合は、特に図84のような精密な回路構成とせず、送電コイル1に流れる電流の位相、振幅の少なくとも一方を検出する手段を備えていればよい。
図89は、図84における送電コイルの電流検出回路に関する他の実施形態を表す回路図である。図89には、図84に示す送電コイルの電流検出用抵抗Riから、同期検波用アナログスイッチ32a、32bの入力に接続されているオペアンプ出力までが図示してある。その他の回路構成は、図84と同じである。この場合は、送電コイルの両端電圧を計測し、送電コイルの両端電圧の振幅計測、送電コイルの両端電圧と交流電源の出力電圧の位相比較を行なって、送電コイルのインピーダンスを検知しているとも言える。
図89(A)において、リアクタンス性素子31eは、インダクタやキャパシタである。リアクタンス性素子31eは、図84に示す送電コイルの電流検出用抵抗Riと同様に、送電コイル1に直列接続される。図84において、電流検出用抵抗Riの両端電圧は数十mV程度なので、前述したように、オペアンプ36aは、ゲインが数十から数百倍の非反転増幅器として構成されている。一方、図89(A)においては、リアクタンス性素子31bの両端電圧は、リアクタンス性素子の種類と作用にもよるが、数Vから数十Vになることがある。したがって、送電コイル1とリアクタンス性素子31bの接続点Fの電圧は、図84を構成している回路の電源電圧を越えることもある。そのため、分圧抵抗R11、R12により、F点の電圧を、回路の電源電圧以下に低下させる。
オペアンプ36aの出力は、反転端子に接続されており、ゲイン+1の増幅器となっている。分圧抵抗R11、R12は、少なくとも10kΩ以上の値にしないと、送電コイル1の作動状態に影響する。よって、分圧抵抗R11とR12の接続点のインピーダンスは高い。分圧抵抗R11とR12の接続点のインピーダンスが低い場合は、オペアンプ36aを省略し、分圧抵抗R11とR12の接続点を、アナログスイッチ32a、32bの入力にそのまま接続してもよい。しかし、分圧抵抗R11とR12の接続点のインピーダンスが高いので、オペアンプ36aによるゲイン+1の増幅器により、アナログスイッチ32a、32bの入力に接続されるインピーダンスを低くしている。換言すれば、オペアンプ36aによるゲイン+1の増幅器は、インピーダンス変換回路として動作する。
次に、リアクタンス性素子の作用効果について説明する。例えば、リアクタンス性素子に力率改善用キャパシタを用い、力率改善用キャパシタと送電コイル1の接続点から電流検出信号を取り出してもよい。この場合、前述したように、力率改善用キャパシタの両端電圧Vc(V)は、共振作用により昇圧され、電源電圧を越える。よって、力率改善用キャパシタと送電コイル1の接続点の最大電圧Vf(V)が、電源電圧を越えないよう、分圧抵抗R11、R12により、Vf(V)を降圧する。
この場合においては、力率改善用キャパシタと送電コイル1の接続点の電圧位相は、図85から図87の電流位相とは異なってくる。したがって、図88のように、無負荷時の信号がY軸上に現れ、有負荷時の信号、金属異物近接時の信号もXY平面上の第1象限に出てくるとは限らない。しかし、無負荷時の信号がXY平面上に現れる位置が分かっていれば、そこからの相対変動(絶対値、移動角)により、有負荷時、無負荷時を検出できる。あるいは、図85から図87に示す、(B)のsin検波信号、(F)のcos検波信号を、双方の位相差を90度に保ったまま、電源波形との位相差を、図85から図87より変動させることにより、図88と同じ信号が得られる。また、前述した電流検出用抵抗Riの代わりに、リアクタンス性素子であるインダクタを用いてもよい。前記インダクタは、前述したコイルの実施形態を参照し、実効直列抵抗の低いものを選ぶ。前記電流検出信号は、前記インダクタと送電コイル1の接続点から取り出す。
あるいは、図89(B)に示すようにリアクタンス性素子31fを接続してもよい。図84では、オペアンプ36aのゲイン抵抗R10の一端は、送電制御回路30aのOUT Lに接続されており、OUTLは、図84に示す信号処理回路と共通の参照電位であるGNDに接続されていることを前述した。しかし、図84、図89(A)、図89(B)のいずれの場合においても、OUTLは、信号処理回路と共通の参照電位であるGNDに接続されていなくてもよい。例えば、OUTHとOUTLが差動出力であり、OUTHとOUTL間の電圧Vの波形が、図85から図87(A)に示すようなものでもよい。
言うまでも無いが、送電コイル1のインピーダンスを検知するのは、送電コイル1のインダクタンスLwと周波数で決まるリアクタンス(虚数成分)と、実効直列抵抗Rwで決まる純抵抗成分(実数成分)を検知しているのと同義である。平面渦巻き状コイルを送電部にそのまま装備すると、木製机上とスチール製机上で、送電コイル1のインピーダンスが変化する。送電コイル1のインピーダンスが変化すれば、本方式を使用しても、無負荷状態の信号は変わってくる。送電コイル1のインピーダンスは種々の変化をし、このようなインピーダンス変化にまでに対応している従来技術は存在しない。
なお、上述した実施形態の電力伝送装置は、前述した電力伝送装置の送電部に上記機能を装備するので、電力伝送装置の送電装置の実施形態にもなる。
(電力伝送装置の動作説明)
図90は、図81に示した信号伝送回路と、図84に示した送電コイルのインピーダンス検知回路を併用した電力伝送装置の動作を表すフロー図である。
図90に示すSP(ステップ)1におけるSTARTは、送電部30の電源投入時で、送電制御回路30aの初期化完了後、SP2で送電コイル1に、金属異物検知用の交流電圧が印加され、待機状態に入る。図88に示す無負荷状態の信号は予め送電制御回路30aに記憶されている。送電制御回路30aが無負荷状態を検知すると、SP3で送電コイル1のインピーダンスZの変化を検知するモードに入る。送電制御回路30aが無負荷状態以外の状態を検知するか、送電コイル1のインーダンスZの変化を検知すると、SP4で受電部40から信号伝送に必要な電力を連続送電する。受電部40が送電部30に受電部40のIDコードを送信する回路は消費電力が少ない。SP3〜5では、送電部30が送電電力を増加させず、受電部40で受電コイル2に送電部30から電力が送られてきたことを検知して送電部30にIDコードを送信してもよい。このときに、SP5で受電部40から全く信号が返ってこないと、SP6で繰り返し数NをN+1にし、SP7でNが所定値よりも小さければ、待機状態SP2に戻る。これを所定回数、例えば10回繰り返し、正常動作に入らないときは、SP14で異常状態と判断してLEDランプやブザー等で異常を知らせるようにしてもよい。
SP5で受電部40から信号が送られてきたことを検知すると、SP8でその信号を復調して正規の信号であるかを確認する。正規の信号で無い場合は、SP6,SP7を介して再び待機状態SP2に戻る。正規の信号を確認するとSP9で、当該信号により指定された所定電力を所定時間連続送電する。連続送電時も、SP10でコイルのインピーダンスZが検知されている。連続送電中にSP10で送電コイル1のインピーダンスZが検知され、かつ、SP11でコイルのインピーダンスZが初期状態(無負荷状態)以外であったら、送電部30から受電部40へ、負荷RLを所定時間切り離した後、SP17で信号を送るように要求する。あるいは、連続送電中にSP16で送電コイル1のインピーダンスZの変化が無くとも、受電部40にて異常が発生すると、SP17で送電部30から受電部40へ負荷を所定時間切り離した後、信号を送るように要求する。さらに、連続送電が所定時間、例えば1分間経過すると、SP17で、送電部30から受電部40へ負荷を所定時間切り離した後、信号を送るように要求する。
送電コイル1のインピーダンスZが変化するのは、送電コイル1と受電コイル2の相対位置が変動した場合、受電部40の負荷抵抗値が変わった場合、送電コイル1と受電コイル2間に金属異物が入り込んだ場合などがある。送電コイル1と受電コイル2間に金属異物が入り込んだ場合を検知するため、受電部40はSP17で所定時間負荷を切り離し、この間に送電部30にて異物検知を行なう。その後に受電部40から送られてくるIDコードが正規のものであれば、送電部30は所定電力を受電部40に連続送電する。
SP9で、信号に、受電部40が要求する最大電力が含まれている場合、その信号に従って、送電部30は送電電力を調整する。送電部30の信号受信回路30cは、常に受電部40からの信号を受信可能なように設定されている。SP16で、受電部40は、任意の時間に、受電部40の異常や、その他の情報を送電部30に伝えることができる。SP16で受電部40に異常が無いことが判別された場合は、受電部40が送電部30に装着されている間、送電部30は受電部40に連続して電力を送る。受電部40に異常が起こると、SP16にて、受電部40から送電部30に信号が送られる。その信号に基づき、送電部30はSP17で、送電部30から受電部40へ負荷を所定時間切り離した後、信号を送るよう、前述した指令信号にて要求する。通常SP16で異常が起こると、SP18の信号は異常信号となるので、SP14の異常終了へ移行する。ただし、受電部40より送電電力を増減する信号が送られてきた場合は、SP18にて継続信号を確認し、SP9にて所定電力を調整し、連続送電を行なう。
受電部40が送電部30より分離されると、送電コイル1のインピーダンスZが変動して元に戻り、かつ受電部40よりIDコードが送られてこないので、送電部30は送電を中止し、SP19で正常終了する。あるいは、受電部40に2次電池が含まれる場合、2次電池の充電が完了したら、SP18で受電部40は終了信号を送電部30に送り、正常終了する。連続送電中に送電コイル1のインピーダンスZが変化し、かつ受電部40から正規のIDコードが送り返されてこない場合は、異常状態と判断し、送電部30は送電を中止して異常終了する。この場合、前述したように、異常信号を出してもよい。
正常終了した場合でも、送電部30に電源が供給されている場合は、SP19からSP2の待機状態に戻る。SP14にて異常終了した場合、SP20にて異常状態(送電コイル1上に金属異物が存在した場合など)を確認し、正常状態に復帰させれば、送電部30に装備されている図示しないリセットボタン等を押して、SP2の待機状態に戻れる。この場合、異常状態が解消されていないか、受電部40自体が送電部30に適合するものでは無い場合などは、上述したフローに従い、再びSP14の異常終了にたどり着くため、送電部30がリセットボタンを装備していても、特に問題は無い。むしろ、異常状態が解消されるか、誤って送電部30に適合しない受電部40を送電部30に装着した場合など、異常終了を解除できない方が不便である。なお、上述したフローは、ごく一例であり、種々の組合せにより、多岐にわたる機能が実現できる。
(受電部保護手段の実施例)
図91は、この発明の最も好ましい実施形態の電力伝送装置における受電部の保護手段の一例を示す回路図である。一般の電気機器、電子機器でも、電源投入時に、回路電源の電圧が安定するまでに、過渡的に回路動作が不安定となる。このために、図91に示す電圧検知回路40dを使用する。
受電制御回路40aは、+電源VSの電圧を検知する負荷電圧検知手段として作動する電圧検知回路40dを備えている。受電コイル2は、保護手段として作動するヒューズ42を介して、4個の高周波整流用ダイオードD1〜D4で構成されたダイオードブリッジ43に接続されている。ダイオードブリッジ43の+側出力は、+電源VSとなり、−側出力はGNDになる。+電源VSとGND間には、平滑用キャパシタ44が接続されている。Nch‐MOSFET45aのソースはGNDに接続されており、ゲートは電圧検知回路40dの制御出力であるOUT1に接続されており、ドレインは+電源VSに接続されている。Nch‐MOSFET45aのゲート・ソース間には、抵抗46aが接続されている。
さらに、Pch‐MOSFET46bのソースは+電源VSに接続されており、ゲートは電圧検知回路40dの制御出力であるOUT2に接続されており、ドレインは電源回路40eに接続されている。Pch‐MOSFET46bのゲート・ソース間には、抵抗45bが接続されている。抵抗45b,46aの作用については後述する。
図91に示す保護手段のブロック図の動作を説明するため、まず、+電源VSのレベルを以下のように定義する。
V1(V):電源回路40eが動作する最低電圧
V2(V):電源回路40eの通常動作電圧
V3(V):電源回路40eの動作可能最大電圧
V4(V):電源回路40eの最大定格電圧
V5(V):電源回路40eが破損する電圧
受電コイル2で受電され、ダイオードブリッジ43で整流され、平滑用キャパシタ44で平滑された電源電圧が所定電圧以上になると、電圧検知回路40dは+電源VSの電圧のモニターを開始する。それまでの間は、電圧検知回路40dのOUT1、OUT2の両制御出力はハイインピーダンス状態を保つ。+電源VSの電圧がV1(V)より上昇すると、電圧検知回路40dの制御出力OUT2はGNDレベルとなって、Pch‐MOSFET46bをONにし、+電源VSを電源回路40eに供給する。
この段階で、電源回路40eから受電側機器50に+電源VSが供給されるので、受電側機器50が動作可能となる。+電源VSの電圧がV2(V)からV3(V)の間にあるときには、電圧検知回路40dのOUT1の制御出力はハイインピーダンス状態を保ち、OUT2の制御出力はGNDレベルである。この間、Pch‐MOSFET46bはON、Nch‐MOSFET45aはOFFである。
+電源VSの電圧がV3(V)以上になったことを検知すると、電圧検知回路40dは制御出力OUT1を出力し、Nch‐MOSFET45aをONにする。電圧検知回路40dとNch‐MOSFET45aはシャントレギュレータとして働き、+電源VSの電圧をV3(V)以下に制御する。電圧検知回路40dの制御出力OUT1が出力されているにもかかわらず、+電源VSの電圧がV4(V)を越えると、制御出力OUT2は+電源VSのレベルとなり、Pch‐MOSFET46bをOFFにする。
この状態になると、+電源VSと電源回路40eは切断され、少なくとも電源回路40eの破損は防止される。したがって、Pch‐MOSFET46bは、電源遮断手段として作動する。さらに、電圧検知回路40dとNch‐MOSFET45aから成るシャントレギュレータの動作によっても、+電源VSの電圧がV5(V)を越えると、制御出力OUT1は+電源VSのレベルに固定となり、Nch‐MOSFET45aは完全なON状態となる。この場合、受電コイル2からダイオードブリッジ43を介し、受電コイル2からNch‐MOSFET45aに大電流を強制的に流して、負荷電流検知手段および保護手段として作動するヒューズ42を切断する。ヒューズ42が切断されれば、+電源VSはゼロとなり、受電側機器50に電力は供給されなくなるが、過大電圧による破損から、受電側機器50は守られる。
何らかの原因で、ヒューズ42が切断される前に、ダイオードブリッジ43を構成する各ダイオードD1〜D4が短絡モードで破損したときは、やはり、ヒューズ42に大電流が流れ、ヒューズ42が切断される。ダイオードブリッジ43を構成する各ダイオードが開放モードで破損したときには、受電部40の電力が低下するか、あるいは+電源VSがゼロになるので、ヒューズ42が切断された場合と同じ効果を持つ。
なお、ヒューズ42は、+電源VSが所定値V1(V)以下であっても、過大電流が回路に流れたときには、当然切断されて回路を保護する。図91において、電源回路40eは、電流検知機能を備えており、信号ライン64を介して、電流検知信号を電圧検知回路40dに送る。電圧検知回路40dは、その信号に基づき、Nch‐MOSFET45aをONにして、大電流をNch‐MOSFET45aに流す。あるいは、Pch‐MOSFET46bをOFFにして、過大電流から電源回路40eを保護する。
なお、前述した抵抗46aと45bは、Nch‐MOSFET45aとPch‐MOSFET46bのゲートに、Nch‐MOSFET45aとPch‐MOSFET46bがONとなる信号が印加されていないときに、ゲート・ソース間の電圧をゼロとし、Nch‐MOSFET45aとPch‐MOSFET46bがOFF状態を保つために設けられる。これは、前述した電源の立ち上がり時に、Nch‐MOSFET45aとPch‐MOSFET46bがOFF状態を保つように働く。抵抗45a、45bはこのような目的で装備される。
何らかの原因で、電圧検知回路40dが破損に至るときには、OUT1はGNDと短絡状態になり、OUT2は+電源VSと短絡状態になるか、OUT1,OUT2共にハイインピーダンス状態となるように構成される。したがって、電圧検知回路40dの破損時にPch‐MOSFET46bはOFFになり、+電源VSの電圧がPch‐MOSFET45bのドレイン・ソース間の耐電圧(高耐圧のものは200V以上)を越えない限り、Pch‐MOSFET45bは破損しない。一方、MOSFETのゲート・ソース間の耐電圧は±10〜20Vなので、OUT1が+電源VSに短絡されて破損し、+電源VSが20Vを越えると、Nch‐MOSFET45aは破損に至る。また、OUT2がGNDに短絡されて破損し、+電源VSが20Vを越えると、Pch‐MOSFET45bも破損に至る。よって、電圧検知回路40dが破損に至るときには、OUT1とOUT2は上述したような破壊モードとなるように構成される。
このような保護手段は、送電コイル1と受電コイル2間の相対位置が変動して伝送電力が変化したときや、前述した図91の受電制御回路40aが誤動作を起したときに、受電側機器50本体の破損を防止できる。しかし、保護手段が動作すると、受電側機器50本体に電力が供給できなくなり、復帰に手間がかかるようになる。そこで、少なくともヒューズ42を簡単に交換可能なようにしておくのが望ましい。すなわち、ヒューズ42を小型モジュール41aにし、簡単に交換できるように構成しておく。
Pch‐MOSFET46bをOFFにして電源回路40eが切り離された場合は、過大電圧による破損から電源回路40e、および機器本体は守られる。しかし、一般に高速整流ダイオードは逆耐電圧が低く、Pch‐MOSFET46bがOFFになると、ダイオードブリッジ43が過大電圧により破損する可能性がある。このような場合、ダイオードブリッジ43を含む回路の部分を全て交換できるように、小型モジュール41bとしておくのが好ましい。すなわち、ダイオードブリッジ43を含む回路を小型モジュール41bにし、簡単に交換できるように構成しておく。
さらに、保護回路40bが正常に動作せず、電圧検知回路40dまでが破損してしまった場合を想定して、保護回路40bの一部を小型モジュール41cとしておく。保護回路40bの小型モジュール41c内に、ダイオードブリッジとヒューズから構成されるモジュール41bを交換可能なように装備してもよい。モジュール41b内に、ヒューズから構成されるモジュール41aを交換可能なように装備してもよい。このように、保護手段として作動する各モジュールは、階層構造で構成されており、下位の階層にある保護手段が上位の階層にある保護手段に含まれ、かつ着脱可能に構成される。
さらに、ヒューズ42、モジュール41a、モジュール41b、モジュール41cの各予備を、少なくとも1個、受電側機器50の本体内に内蔵しておくと、より好ましい。図91では、前述したモジュール41a、モジュール41b、モジュール41cは、交換が簡単なように、全て2端子または4端子のモジュールとなるように構成してある。現状の実装技術では、モジュール40aが、3φ×5mm程度にまで小型化可能と思われる。ヒューズ42は、半導体素子中に作り込むこともできる。
図91の実施形態では、保護手段を3つ装備しているが、機器の仕様によっては、少なくとも1つの保護手段を装備していればよい。例えば、電圧検知回路40dとPch‐MOSFET46bを装備すれば、低電圧回路なら対応可能である。受電側機器50の破損を絶対に防がないといけない場合は、少なくとも電圧検知回路40dとヒューズ42を装備するのが好ましい。
従来の技術では、受電部40が過大電流、過大電圧で破損するような大電力を受電部40に送れない。したがって、上述した受電部保護手段について検討はなされていない。
なお、上述した実施形態の電力伝送装置は、前述した電力伝送装置の受電部に上記機能を装備するので、電力伝送装置の受電装置の実施形態にもなる。
(信号伝送方式の他の実施例)
図92は、負荷変調にて受電部から送電部に信号を伝送する他の方式を示すブロック図である。
図92に示す実施形態は、主たる構成として、負荷変調駆動部47と、2次電池充放電・負荷制御部48とを含む。この実施形態では、送電コイル1と受電コイル2を用いて、受電部40から送電部30へ信号伝送を行なうには、Nch‐MOSFET45cまたはPch‐MOSFET45dを負荷変調駆動部47で駆動する。図81の実施形態で、送電コイルと受電コイルが対向しているときには、送電コイルのインピーダンスZが、受電コイルに接続された負荷抵抗値により変動することを説明した。よって、図92では、Pch−MOSFET45dのON、OFFに応じて、送電コイルのリアクタンスと純抵抗成分が変動する。このリアクタンスと純抵抗成分の変化は、例えば、図88に示すX−Y平面上の信号変化として現れる。このようにして、受電部40から送電部30へ、受電コイル2と送電コイル1を用いて、負荷変調による信号伝送が行なえる。
より具体的に説明すると、図92において、Nch‐MOSFET45cのソースはGNDに接続されており、ゲートは負荷変調駆動部47の出力端子Nに接続されており、ドレインは抵抗R30を介してダイオードブリッジ43bの+側出力に接続されている。抵抗R30の抵抗値は通常負荷の抵抗値の約2倍を目安に選ぶ。Pch‐MOSFET45dのソースはダイオードブリッジ43bの+側出力に接続されており、ゲートは負荷変調駆動部47の出力端子Pに接続されており、ドレインは+電源VSに接続されている。
好ましい実施形態では、図92に示すように、受電側に2次電池60が含まれる場合、充電制御手段として作動する2次電池充放電・負荷電圧制御部48にて、2次電池60の充放電状態を検知する。2次電池60の充放電状態の検知情報は、2次電池充放電・負荷電圧制御部48から信号ライン65を通じ、負荷変調駆動部47に送られる。2次電池60が満充電に近いときは、負荷変調駆動部47のN出力をHI/LOにして、Nch‐MOSFET45cをON/OFF駆動し、負荷変調を行なう。したがって、負荷変調駆動部47とNch‐MOSFET45cは負荷変調駆動手段として作動する。
2次電池充放電・負荷電圧制御部48は、2次電池60の放電を制御する機能や、負荷(受電側機器)の電圧や電流を制御する機能なども含んでいる。電圧VSにより与えられる受電電力Ps(W)が、2次電池60を充電する電力Pc(W)、受電側機器が作動する電力Pw(W)の双方を供給する場合、Psを、2次電池充放電・負荷電圧制御部48の内部で、PcとPwに分配する。通常、Pwが優先され、(Ps−Pw)W、の余剰電力がPcに回される。図80に示すように、電力伝送装置の受電コイルの出力電圧は定電圧ではなく、出力電流により変動する。一方、2次電池の両端電圧は、放電時にはほぼ一定である。よって、Pwは、2次電池60から2次電池充放電・負荷電圧制御部48を介して、受電側機器に与えられる。このように構成された2次電池充電制御部48は、2次電池30を付加し、図91に示す電源回路40eにも使うことができる。
2次電池60が完全放電に近いときは、負荷変調駆動部47のP出力をHI/LOにして、Pch‐MOSFET45dをOFF、ON駆動し、負荷変調を行なう。このように、2次電池60の充電状況に応じ、負荷抵抗値を小さくする負荷変調と、負荷を開放状態とする負荷変調を切換える。このような負荷変調方式を採用することにより、電力伝送性能を損なうことなく、受電コイル2と送電コイル1とを用いて受電部40から送電部30へ信号伝送が行なえる。
Pch‐MOSFET45dがOFFになっている間、負荷変調駆動部47の電源は、キャパシタ44bから供給される。また、2次電池60は、完全放電する前に、2次電池充放電・負荷電圧制御部48により放電が停止される。そこで、信号伝送期間中は、2次電池60の残電圧を、2次電池充放電・負荷電圧制御部48を介して電源VSに与えるようにしてもよい。負荷変調駆動部47の消費電力は少なく、Pch‐MOSFET45dがOFFになる時間を含む信号伝送期間も短いので、キャパシタ44bに蓄積された電荷か、2次電池60の残量で、負荷変調駆動部47を作動させることができる。
このようにして受電コイル2の負荷を変動させると、送電コイル1のインピーダンスZが、図88のXY図に示すように変動する。このインピーダンスZの変動は、図84に示すような回路により、前述した方法で検知できる。そして、受電部40で負荷変調された信号は送電部30で復調される。金属体の近接と、正規の受電部40の負荷が変動したときでは、図88のXY図に示す変動が異なることは上述した通りである。仮に金属体が送電コイル1上にあっても、送電部30が金属体を検知して送電が停止される。
この場合、図84に示す、積分器33aであるLPF1とは別に、図示しないが信号検出用のLPF1aが、同様に、積分器33bであるLPF2とは別に、信号検出用のLPF2aが追加で装備される。LPF1a、またはLPF2aの出力は、受電部40から負荷変調により送られてきた信号の復調出力になり、コンパレータ等で、0と1のシリアル信号に変換される。同期検波回路が送電コイルのわずかなインピーダンス変化を検知可能なことは、図87を参照して前述した通りである。
なお、上述した実施形態の電力伝送装置は、前述した電力伝送装置の受電部40に上記機能を装備するので、電力伝送装置の受電装置の発明にもなる。
以上に述べてきた、信号伝送手段を装備した実施例、制御回路の実施例、受電部保護手段の実施例、信号伝送方式の他の実施例は、上述してきた電力伝送装置の各実施形態の全てに適用可能である。また、信号伝送手段の実施例、制御回路の実施例は、電力伝送装置の送電装置の各実施形態の全てに適用可能である。信号伝送手段の実施例、受電部保護手段の実施例、信号伝送方式の他の実施例は、電力伝送装置の受電装置の各実施形態の全てに適用可能である。
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
この発明の電力伝送装置は、電線や機械的な接点を用いることなく送電部から受電部へ、受電部が必要とする電力を伝送するのに利用できる。
この発明の一実施形態に係る電力伝送装置のブロック図である。 図1に示した電力伝送装置の送電コイルまたは受電コイルとして使用されるコイルを示す図である。 図2に示したコイルの外形形状の変形例を示す図である。 変成器の入力インピーダンスを求める等価回路である。 この発明の一実施形態における電力伝送装置のコイルにおけるコイル単体の等価回路を示す図である。 従来例で説明した図95のように構成された電力伝送装置の変成器部分の等価回路を表す図である。 2次側コイルを短絡したときの変成器の等価回路を表す図である。 2次側コイルに負荷抵抗RLが接続されたときの変成器の等価回路を表す図である。 線径1mmの単導線を、外径70mmで25ターン密接巻きしたコイル1Aの、Rw、Rn、Rs、および負荷抵抗値RL=10Ωとしたときの実効電力伝送効率ηと周波数の関係を示す図である。 線径0.6mmの単導線を、外径70mmで40ターン密接巻きしたコイル1Bの、Rw、Rn、Rs、kr、kiと周波数の関係を示す図である。 線径0.3mmの単導線を、直径70mmで70ターン密接巻きしたコイル1Cの、Rw、Rn、Rs、コイル1C単体の位相角と周波数の関係を示す図である。 線径0.3mmの単導線を、直径30mmで31ターン密接巻きしたコイル1Dの、Rw、Rn、Rsと周波数の関係を示す図である。 線径1mmの単導線を、外径70mmで空隙を設けて14ターン巻いたコイル1Eの、Rw、Rn、Rs、krと周波数の関係を示す図である。 銅線径0.05mmのホルマル単導線を75本束ねたリッツ線を、外径70mmで30ターン密接巻きしたコイル1Fの、Rw、Rn、Rs、kr、kiと周波数の関係を示す図である。 銅線径0.05mmのホルマル単導線を75本束ねたリッツ線を、外径50mmで20ターン密接巻きしたコイル1GのRw、Rn、Rs、kr、kiと周波数の関係を表す図である。 0.2mm、0.4mm、0.8mm、1mmのホルマル単導線を平板状に25回巻いたコイルの周波数と、各コイルの実効抵抗Rwの関係を示す図である。 図9に示したコイル1Aに、コイル1Fを対向させたときのRw、Rn、Rs、および負荷抵抗値RL=10Ωとしたときの実効電力伝送効率ηと周波数との関係を表す図である。 リッツ線の等価回路図である。 図9に示した密接巻のコイル1Aと、図13に示した疎巻のコイル1Eとのコイル実効直列抵抗Rwが増加する状態を比較して示した図である。 線径0.4mmのホルマル線を、0、0.2mm、0.4mmの空隙幅を設けて25ターン巻いた各コイルのRwと周波数との関係を示す図である。 コイル1Aを送電コイル、受電コイルに使用し、負荷抵抗値RLを変化させたときの、各抵抗値と力率の周波数特性を示す実測図である。 コイル1Aを送電コイル、コイル1Fを受電コイルに使用し、負荷抵抗値RLを変化させたときの、各抵抗値と力率の周波数特性を示す実測図である。 図2に示したコイルに用いられる導線の他の例を示す断面図である。 導線を断面傘型に巻回したコイルの断面図である。 図24および図2のコイルの水平位置と磁場強度を表す図である。 絶縁材上に導線を巻回したコイルの断面図である。 この発明の他の実施形態における電力伝送装置のコイルを示す図である。 この発明のさらに他の実施形態における電力伝送装置のコイルを示す図である。 図27に示したコイルにおいて、最外周部の巻線が生成する磁束分布をコンピュータでシミュレーションした図である。 この発明のさらに他の実施形態における電力伝送装置のコイルに用いられる導線の一例である裸単銅線の集合体の断面図である。 この発明のさらに他の実施形態における電力伝送装置のコイルを示す図である。 図31に示したコイルに用いられる導線であるリッツ線の断面の一例を示す図である。 パイプ状の導体内に絶縁材料が充填されている導体の断面図である。 絶縁材料上に、分割して導体を形成した導線の断面図である。 絶縁材料上に、分割して導体を形成し、絶縁体内部にも導体を形成した導線の断面図である。 断面十字状の絶縁材料に、分割して導体を形成した導線の断面図である。 箔状導体と絶縁材料を重ね、断面が螺旋状で、導体と絶縁体が交互に存在するように形成した導線の断面図である。 不要輻射を防止するコイル1fの構造を示す図である。 コイルと磁性材板との間に、絶縁板を設けたコイル1gを示す図である。 コイルの一方面側に磁性材板と磁性材板の2層の磁性材板を設けたコイル1hを示す図である。 図39に示すコイル1hを構成する2枚の磁性材板の間に、厚みがIの絶縁板を設けたコイル1jを示す図である。 コイルに金属体が近接したときに、コイルの特性変動を防止するコイル1kの構造を示す図である。 金属体の近接影響と、不要輻射の双方を防止するコイル1mの構成を示す図である。 金属体の近接影響と、不要輻射の双方を防止するコイル1nの構成を示す図である。 金属体の近接影響と、不要輻射の双方を防止するコイル1pの構成を示す図である。 金属体の近接影響と、不要輻射の双方を防止するコイル1qの構成を示す図である。 金属体の近接影響と、不要輻射の双方を防止するコイル1rの構成を示す図である。 金属体の近接影響と、不要輻射の双方を防止するコイル1sの構成を示す図である。 金属体の近接影響と、不要輻射の双方を防止するコイル1tの構成を示す図である。 対向する双方のコイルを構成する要素の立体図である。 2つのコイルの外径が異なる場合にそれぞれの中心が一致して対向している状態を示す図である。 2つのコイルの外径が異なる場合にそれぞれの中心がずれて対向している状態を示す図である。 送電コイル、受電コイル共に楕円形である場合の、送電コイルと受電コイルの相対位置関係を示す図である。 コイル対向面が円形以外の場合に、対向する送電コイル1と受電コイル2の一例を示す図である。 図38〜図41に示す各コイルの実効直列抵抗Rwと周波数の関係を示す図である。 図38〜図41に示す各コイルのQと周波数の関係を示す図である。 コイル1G単体の実効直列抵抗Rwと、コイル1G単体のインダクタンスLwを示す特性図である。 コイル1Gに10mmの絶縁物を介して、各種の金属板を対向させたコイル1Gaの特性である。 コイル1Gに1枚の磁性材板を設けたコイル1Gbに各種の金属板を近接させたときの、実効直列抵抗Rwと、インダクタンスLwを示す特性図である コイル1Gに2枚の磁性材板を設けたコイル1Gcに各種の金属板を近接させたときの、実効直列抵抗Rwと、インダクタンスLwを示す特性図である。 各コイルの構成とQの関係を示す特性図である。 図12に示したコイル1Dを、図42に示すコイル1kと同等の構成において、実効直列抵抗RwとインダクタンスLwを計測した特性図である。 図13に示したコイル1Eを、図42に示すコイル1kと同等の構成において、実効直列抵抗RwとインダクタンスLwを計測した特性図である。 コアを装備している同一のコイル2個間で誘導結合が可能なコイルの構成の一例を示す図である。 図64の構成を持つコイル1Hのコイル単体のRw、Rs、Rnと周波数の関係を示す図である。 コイル1H、2個のコイル1Ha,1Hbの、Lw、Ls、Lnと周波数の関係を示す図である。 コイル1Gが空芯状態のときに計測した、Lw、Ls、Lnと、LwとLsより近似的求められる結合係数kiと周波数の関係を示す図である。 トロイダルコアに1次コイルと2次コイルとを巻回した分離不能な変成器の構成を示す図である。 コイル1Gbにおいて、コイル1Gbを2個使用したときの、Lw、Ls、Ln、ki、ki2と周波数の関係を示す図である。 コイル1Hに、各種の金属板を近接させたときの、100kHzにおける実効直列抵抗Rwと、インダクタンスLwを示す特性図である。 コイル1Gに磁性材板を備えたコイル1Gdにおいて、コイル1Gdを2個使用したときの、Rw、Rs、Rnと周波数の関係を示す図である。 コイル1Hのコイル単体の実効直列抵抗Rw(Ω)と、コイル1H2個を誘導結合させ、他方のコイルを短絡したときの、一方のコイルの実効直列抵抗Rs(Ω)、他方のコイルを開放したときの、一方のコイルの実効直列抵抗をRn(Ω)、としたときの、Rw、Rs、Rnと周波数の関係を示す図である。 コイル1H単体のインダクタンスLw(μH)と、コイル1H2個を誘導結合させ、他方のコイルを短絡したときの一方のコイルのインダクタンスLs(μH)、他方のコイルを開放したときの一方のコイルのインダクタンスをLn(μH)、としたときの、Lw、Ls、Lnと周波数の関係を示す図である。 コイル1Hに、各種の金属板を近接させたときの、100kHzにおける実効直列抵抗Rwと、インダクタンスLwを示す特性図である。 コイル1Gbを2個使い、対向距離Zを3mmとした場合の、Rw、Rs、Rnと周波数の関係を示す図である。 コイル1Gbに、さらに、0.5mm厚のアルミニウム金属板を装備したコイル1Gdを2個使い、対向距離をゼロとした場合の、Rw、Rs、Rnと周波数の関係を示す図である。 コイル1Gdを2個使い、対向距離を3mmとした場合の、Rw、Rs、Rnと周波数の関係を示す図である。 図42に示すコイル1kから図49に示すコイル1tにおいて、コイル内周部から取り出す線として、コイルに装備された金属板を使用する図である。 図38から図49に示す各構成のコイルに使用される導線に、リッツ線を用い、リッツ線の一端は全ての素線を接続し、リッツ線の他端から、リッツ線を構成する素線の内、少なくとも一本を共通線として取り出した場合の等価回路図である。 密結合状態に構成された通常の変圧器(変成器)における2次側巻線の負荷電流と2次側巻線の両端電圧の関係、本発明の実施形態における電力伝送装置の受電コイルの負荷電流と2次側巻線の両端電圧の関係を示す特性図である。 送電部30と受電部40に信号伝送手段を装備した例を示す図である。 送電電力を制御するための、PWM制御の基本波形を示す図である。 図81に示す送電部30の送電電力を制御するためのPWM回路の一例を示す図である。 送電コイル1に流れる電流を計測し、送電コイル1に金属体が近接しているかを判断するか、あるいは2次側の動作状態等を判断するため、送電部に装備される回路の一例を示すブロック図である。 図84における回路の動作状態を表す波形図である。 図84における回路の動作状態を表す波形図である。 図84における回路の動作状態を表す波形図である。 送電コイル電流の同期検波後の信号出力を説明するための図である。 図84における送電コイルの電流検出回路に関する他の実施形態を表す回路図である。 信号伝送回路と、送電コイルのインピーダンス検知回路を併用した電力伝送装置の動作を表すフローチャートである。 この発明の最も好ましい実施形態の電力伝送装置における受電部の保護手段の一例を示す回路図である。 受電負荷変調にて受電部から送電部に信号を伝送する他の方式を示すブロック図である。 1次側コイルと2次側コイルとが分離可能な電力伝送装置の概略ブロック図である。 送電コイルまたは受電コイルの平面図および断面図である。 図92に示した1次側コイルと2次側コイルとが分離可能な電力伝送装置の等価回路図である。
符号の説明
1 送電コイル、1a〜1e,1A〜1G コイル、2 受電コイル、5 絶縁材、6 絶縁性樹脂、7 ボビン、8 リッツ線、11,56 導線、12 単導線、13 絶縁被覆、14 裸単導線、15 導体、18,19,21,24 絶縁材料、30送電部、30a 送電制御回路、30b 交流電源、30b,40b 信号送信回路、30c,40c 信号受信回路、30e 電圧制御回路、30f PWM降圧インバータ、30h 送電側識別情報保持手段、30i 送電電力制御手段、30j 記憶手段、30k 信号通信手段、31b 回生ダイオード、31c コイル、31a,32b アナログスイッチ、31d,44 平滑キャパシタ、31e,31f リアクタンス性素子、33a,33b 積分器、35 A/D変換回路、36a オペアンプ、40 受電部、40a 受電制御回路、40d 電圧検知回路、40e 電源回路、40h 受電側識別情報保持手段、40j 受電動作状態検知手段、40k 温度検知手段、41a,43b ダイオードブリッジ、41b 整流ダイオードブリッジ、42 ヒューズ、45a,45c Nch‐MOSFET、45d,46b Pch‐MOSFET、47 負荷変調駆動部、48 2次電池充放電・負荷電圧制御部、50 受電側機器、51,511,512 磁性材板、52 絶縁板、53,53a,53b コア、55 金属板、60 2次電池、61,62,63,65 信号伝送ライン、R11,R12 分圧抵抗。

Claims (20)

  1. 交流電源と、送電コイルとを少なくとも含む送電部と、
    受電コイルと、負荷回路とを少なくとも含む受電部とが分離可能に構成され、
    前記送電コイルと前記受電コイルとを対向させて、前記送電部から前記受電部に交流電力を伝送する電力伝送装置において、
    前記受電部は、
    前記交流電力を直流電力に変換して前記負荷回路に出力する整流回路を含むとともに、
    前記整流回路から前記負荷回路に流れる負荷電流を検知する負荷電流検知手段、
    前記整流回路から前記負荷回路に印加される負荷電圧を検知する負荷電圧検知手段、
    のいずれかと、
    前記負荷電流検知手段および前記負荷電圧検知手段のいずれかの検知出力に基づいて、前記負荷回路を保護する保護手段を含む、電力伝送装置。
  2. さらに、前記整流回路から前記負荷回路に過大電流が流れたときには、前記負荷回路の電流を低下させる負荷電流低減手段、
    前記整流回路から前記負荷回路に過大電圧が印加されたときには、前記負荷回路の電圧を低下させる負荷電圧低下手段、
    のうち、少なくとも一方の手段を含む、請求項1に記載の電力伝送装置。
  3. 前記負荷電圧には、それぞれが異なる複数の所定レベルが設定されており、
    前記保護手段は、前記所定レベルに応じて、
    前記負荷電圧低下手段によって前記負荷電圧を低下させ、その後
    前記整流回路と前記負荷回路とを切断する、請求項1または2に記載の電力伝送装置。
  4. 前記負荷電流検知手段によって、前記負荷回路に過大電流が流れる可能性が検知されたとき、
    前記負荷電圧検知手段によって、前記負荷回路に過大電圧が印加される可能性が検知されたとき、
    の少なくとも一方のときに、前記負荷回路が破損する前に、前記保護手段が破損して、前記負荷回路の破損を防止する、請求項1から3のいずれかに記載の電力伝送装置。
  5. 前記保護手段が、前記受電部または前記受電部を含む機器より着脱可能なように構成された、請求項1から4のいずれかに記載の電力伝送装置。
  6. さらに、前記負荷回路を正常状態へ復帰するために、少なくとも1個の予備の保護手段を前記受電部または前記受電部を含む機器に内蔵した、請求項1から4のいずれかに記載の電力伝送装置。
  7. 前記保護手段は、複数の保護回路より構成されており、
    前記受電部が、通常作動状態から逸脱したときに、
    前記通常作動状態からの逸脱状態に応じ、
    前記複数の保護回路が、順次破損して、負荷回路の破損を防止する、請求項1から6のいずれかに記載の電力伝送装置。
  8. 前記複数の保護回路は、階層状態に構成されており、
    下位の階層にある保護回路が上位の階層にある保護回路に含まれる、請求項7に記載の電力伝送装置。
  9. 前記複数の保護回路は、上位から下位の階層状態に構成されており、
    下位の階層にある保護回路が上位の階層にある保護回路に含まれ、
    下位の階層にある保護回路が上位の階層にある保護回路より着脱可能である、請求項7に記載の電力伝送装置。
  10. 前記複数の保護回路は、上位から下位の階層状態に構成されており、
    下位の階層にある保護回路が上位の階層にある保護回路に含まれ、
    少なくとも最上位の階層にある保護回路が前記受電部を含む機器より着脱可能である、請求項7に記載の電力伝送装置。
  11. 前記複数の保護回路は、階層状態に構成されており、
    下位の階層にある保護回路が上位の階層にある保護回路に含まれ、
    少なくとも最上位の階層にある予備の保護回路を、少なくとも1個、前記受電部を含む機器に内蔵した、請求項7に記載の電力伝送装置。
  12. 前記送電部から前記受電部に信号を伝送する第1の信号伝送手段、
    前記受電部から前記送電部に信号を伝送する第2の信号伝送手段、
    のうち、少なくとも一方の手段を備える、請求項1から11のいずれかに記載の電力伝送装置。
  13. 前記第1の信号伝送手段は、
    前記送電部に含まれる送電側信号送信回路と、
    前記受電部に含まれる受電側信号受信回路と、
    前記送電側信号送信回路と前記受電側信号受信回路間を接続する第1通信ラインとから成り、
    前記送電部は、前記送電部が保持している情報から成る信号を前記送電部から前記受電部に伝送することにより、少なくとも前記送電部から前記受電部に前記受電部の動作指令信号を与える送電制御回路を含み、
    前記第2の信号伝送手段は、
    前記受電部に含まれる受電側信号送信回路と、
    前記送電部に含まれる送電側信号受信回路と、
    前記受電側信号送信回路と前記送電側信号受信回路間を接続する第2通信ラインとから成り、
    前記受電部は、
    前記受電部を識別するための識別情報を保持する受電側識別情報保持手段と、
    前記識別情報を含む信号を前記受電部から前記送電部に伝送することにより、前記受電部から前記送電部に送電電力を制御する信号を与える受電制御回路を含む、請求項12に記載の電力伝送装置。
  14. 前記受電部は、記記憶手段を含み、
    前記記憶手段に、少なくとも、
    前記第1の信号伝送手段を介して与えられた前記送電部の識別情報、
    前記受電部が電力を受電した日付および時刻情報、
    受電時の受電電力情報、
    のいずれかを記憶する、請求項12に記載の電力伝送装置。
  15. 前記送電部は、
    前記送電部のコイルのインピーダンスを検知するインピーダンス検知手段と、
    前記インピーダンス検知手段によって検知されたインピーダンスに応じて、前記送電部から前記受電部への送電を制御する送電制御手段と、を備えた、請求項1から14のいずれかに記載の電力伝送装置。
  16. 前記インピーダンス検知手段は、前記送電コイルに流れる交流電流を検知する電流検知手段を含み、
    前記電流検知手段は、
    前記送電コイルと直列に接続された抵抗素子またはリアクタンス性素子と、
    前記抵抗素子またはリアクタンス性素子の両端電圧を検出し、その両端電圧と前記抵抗素子またはリアクタンス性素子の値とに基づいて前記電流を検知する回路素子と、
    を含む、請求項15に記載の電力伝送装置。
  17. 前記対向するコイルの内、一方のコイル単体の実効直列抵抗をRw(Ω)、
    前記一方のコイルに対向する他方のコイルが短絡されたときの、前記一方のコイルの実効直列抵抗をRs(Ω)、
    前記一方のコイルが、Rs>Rw、を満足する最高周波数をf1(Hz)、としたときに、
    前記f1(Hz)が100kHz以上となるように、前記一方のコイルと前記他方のコイルが選ばれており、
    前記f1(Hz)未満の周波数で、前記送電部から前記受電部に電力を伝送する、請求項1から16のいずれかに記載の電力伝送装置。
  18. さらに、直流電力を交流電力に変換する電力変換手段を含み、
    前記電力変換手段の出力周波数をfa(Hz)、としたときに、
    前記fa(Hz)を前記f1(Hz)未満の周波数に設定した、請求項1から17のいずれかに記載の電力伝送装置。
  19. さらに、前記一方のコイルに対向する他方のコイルを開放したときの、前記一方のコイルの実効直列抵抗をRn(Ω)、
    前記一方のコイルが、Rs>Rn≧Rw、を満足する最高周波数をf2(Hz)、としたときに、
    前記fa(Hz)を前記f2(Hz)未満の周波数に設定した、請求項18に記載の電力伝送装置。
  20. さらに、前記一方のコイルの熱抵抗をθi(℃/W)、
    前記一方のコイルの許容動作温度をTw(℃)、
    前記一方のコイルが設置される場所の周囲温度をTa(℃)、
    電力を伝送しているときに、前記一方のコイルに流れる交流電流をIa(A)、としたときに、
    前記faにおいて、
    Rw≦(Tw−Ta)/(Ia×θi)、
    なる関係を前記一方のコイルが満足するように、前記送電部から前記受電部に電力を伝送する、請求項18または19に記載の電力伝送装置。
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