以下、図面を参照して本発明の実施の形態例を説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。なお、図において、同一又は類似のものには同一の参照番号又は参照記号を付して説明する。
図1は、本発明を適用した電子機器保持スタンドの実施の形態例に係る斜視図である。図1に示す本実施の形態例に係る電子機器保持スタンド1は、電子機器4を保持する保持部2と保持部2を支持する基部3を有し、保持部2が電子機器保持スタンド1(基部3)の設置面に水平(平行)な軸の周りに無負荷で回転でき、所定の複数の回転位置で歯部の嵌合により固定できる回転機構200を備える。これにより、保持した電子機器4を狭いスペースで、力をかけずに回転でき、かつ、確実に固定することができる。
図2は、本電子機器保持スタンド1の使用例を示した図である。図2に示す例は、タブレット端末である電子機器4を店舗等での料金精算に用いる場合であり、専用のレジシステムを導入することなく、汎用のタブレット端末を用いて簡易にレジシステムを構築する例である。当該レジシステムは、タブレット端末(電子機器4)、それを保持する本実施の形態例に係る電子機器保持スタンド1、レシートやクーポンを印刷するプリンター5等で構成される。図示していないが、更に、カードリーダー(スキャナー)などの入力装置が備えられていてもよい。また、レジシステムは、例えば図2に示されるように、設置ラック6の上に配置され、電源につながれる元電源コード8、ACアダプター7を介して電力が供給される。(図2では、ACアダプター7以降の電源コードは図示していない。)
電子機器4は、従前のタブレット型端末(コンピューター)であり、表示画面4aに接
触することによって各操作をすることができる。電子機器4には、レジ用のアプリケーション(精算用のアプリケーション)がインストールされており(備えられており)、オペレーターは当該アプリケーションを起動して精算処理を実行する。
電子機器保持スタンド1は、当該電子機器4を保持する、いわゆるスタンド(モノを支える台、器具、装置)であり、図2に示されるような状態で電子機器4を保持する。電子機器保持スタンド1は、後述する回転機構200により、電子機器4を回転させて保持(固定)することができ、精算処理の際にカスタマーによる承認等の操作が必要な際には、電子機器4の表示画面4aをカスタマー側(図2において、電子機器4の背面側)に向けることができる。
プリンター5は、電子機器4(レジ用のアプリケーション)からの指示により精算処理に関するレシート等を印刷する印刷装置である。
図3は、本電子機器保持スタンド1の電子機器4を保持していない状態での斜視図である。電子機器保持スタンド1は、電子機器4を所定の向きて固定して保持する保持部2と、保持部2を支持する基部3とを備える。
保持部2は、電子機器4を支持する保持板235のほか、電子機器4を回転させるための回転機構200、電子機器4を固定するためのスライダー230、下側アーム260(a、b)、緩衝材265等、及び、電子機器4へ電力を供給するケーブル用の貫通孔270等、を備える。
基部3は、電子機器保持スタンド1の台座部分であり、その底面が電子機器保持スタンド1の設置面に置かれる。また、基部3は、後述するが、その内部の空間に分電部31を備え、分電部31からの電源ケーブルが上述したケーブル用貫通孔270を通って電子機器4に案内される。
このような構成の本電子機器保持スタンド1では、回転機構200、電子機器を保持(固定)するための機構、及び、ケーブルを案内するための機構に特徴があり、以下、これらの各機構について説明する。
[回転機構について]
本電子機器保持スタンド1の回転機構200は、保持した電子機器4を電子機器保持スタンド1の設置面に水平な軸の周りに回転させる機構であり、操作者が電子機器4を回転させる際には、概ね無負荷な状態で回動させることができ、また、所定の複数の回転角度(回転位置)で固定することができる。
図4は、回転機構200を例示する斜視図である。図4に示すシャフト202は、保持部2の回転軸であり、上述した電子機器保持スタンド1の設置面に水平な軸に沿って設けられる。シャフト202は、基部3に固定された2つの支持部210で支えられる。また、それらの支持位置には、それぞれ、軸受211が設けられており、概ね負荷がかからずにシャフト202が回転できる。
シャフト202には、保持部側歯部203がシャフト202に対して回転不可に取り付けられる。また、基部3には、基部側歯部204が基部3に固定されて取り付けられる。保持部側歯部203の下側先端には下側凸部203bが設けられ、基部側歯部204の上面には凹部が設けられ、これらが嵌合することによって、シャフト202、すなわち、保持部2が回転不可に固定される。
また、図4に示す回転用レバー201(操作レバー)は、保持部2、すなわち、電子機器4を回転する際に、操作者(オペレーター)が操作する部分である。
図5は、回転機構200の断面図である。図5は、シャフト202に垂直な面で切った断面図である。図5に示すように、上述した保持部側歯部203の上端部には、両サイドに上側凸部がある。また、保持部側歯部203の両サイドには、歯部用バネ207が取り付けられており、こられのバネ力により保持部側歯部203は上側(図5の矢印Cの方向)に常に付勢されている。また、保持部側歯部203には、中央に移動穴203cが設けられており、基部3に固定された上下2つのポール208に沿って、保持部側歯部203の上下動(図5の矢印C及びDの方向への移動)がなされる。
上述した回転用レバー201は、図5に示されるように、レバー側押え部材205が連結している。操作者(オペレーター)の回転用レバー201を押し込む操作に従って、回転用レバー201が保持部側歯部203に近づく方向(図5の矢印Aの方向)に移動すると、レバー側押え部材205もその移動に伴って同方向に移動する。また、レバー側押え部材205にはレバー用バネ206が取り付けられており、回転用レバー201及びレバー側押え部材205を、保持部側歯部203から遠ざかる方向(図5の矢印Bの方向)に、常に付勢している。
回転用レバー201が操作されていない状態では、図5に示されるように、レバー側押え部材205の2つの凸部205aが、それぞれ、保持部側歯部203の上側凸部203aと当接し、レバー側押え部材205が、保持部側歯部203を歯部用バネ207のバネ力に反して下方向(図5の矢印Dの方向)へ押し下げている。この状態では、保持部側歯部203の下側凸部203bが、基部側歯部204の凹部に嵌合し、シャフト202、すなわち、保持部2及び電子機器4が回転不可に固定される。
一方、回転用レバー201が操作されて押し込まれている状態では(図5の矢印Aの方向へ移動している状態では)、上述した凸部205aと上側凸部203aの当接がはずれ、各上側凸部203aの位置に、それぞれ、レバー側押え部材205の凹部205bが来るので、保持部側歯部203が歯部用バネ207のバネ力によって上昇し(図5の矢印Cの方向に移動し)、上述した下側凸部203bと基部側歯部204の凹部との嵌合がはずれ、シャフト202、すなわち、保持部2及び電子機器4が回転可能となる。
このような原理により、保持部2及び電子機器4の回転と所定位置での固定ができる。本実施の形態例では、4つの回転位置(回転角度)で保持部2及び電子機器4を固定することができる。具体的には、オペレーターが電子機器の表示画面4aを見る側(操作する側、第1の側)で3つの位置、カスタマーが表示画面4aを見る側(操作する側、第2の側)で1つの位置、で固定することができる。
図6は、第1の位置で固定された保持部2の側面図である。第1の位置は、表示画面4aがオペレーター側(図6の矢印Eの方向)を向く回転位置であり、図6に示すように、設置面と保持板235が45°をなす位置である。
図7は、第1の位置で固定された保持部2の断面図である。図7に示す状態では、第1の位置で保持部2が固定されているので、上述の通り、回転用レバー201は、保持部側歯部203から遠ざかる方向(図7の矢印Bの方向)に移動している。そして、レバー側押え部材205の凸部205aが保持部側歯部203の上側凸部203aと当接し、レバー側押え部材205が下方向(図7の矢印Dの方向)へ押し下げられて、保持部側歯部203の下側凸部203bが基部側歯部204の凹部に嵌合している。この第1の位置では、下側凸部203bは、図7において一番左側の凹部204aから嵌合している。
図8は、第1の位置で回転用レバー201が操作された状態の保持部2の断面図である。上述の通り、回転用レバー201が操作されて押し込まれると(図8の矢印Aの方向へ移動すると)、凸部205aと上側凸部203aの当接がはずれ、保持部側歯部203が上昇し(図8の矢印Cの方向に移動し)、下側凸部203bと基部側歯部204の凹部との嵌合がはずれ、保持部2が回転可能となる。従って、オペレーターは、保持部2を回転させて、所望の回転位置で回転用レバー201から手を放すことにより、位置を変更することが可能である。
図9は、第2の位置で固定された保持部2の側面図である。第2の位置は、表示画面4aがオペレーター側(図9の矢印Eの方向)を向く回転位置であり、図9に示すように、設置面と保持板235が38°をなす位置である。
図10は、第2の位置で固定された保持部2の断面図である。図10に示す状態では、第2の位置で保持部2が固定されているので、上述の通り、回転用レバー201は、保持部側歯部203から遠ざかる方向(図10の矢印Bの方向)に移動している。そして、レバー側押え部材205の凸部205aが保持部側歯部203の上側凸部203aと当接し、レバー側押え部材205が下方向(図10の矢印Dの方向)へ押し下げられて、保持部側歯部203の下側凸部203bが基部側歯部204の凹部に嵌合している。この第2の位置では、下側凸部203bは、図10において左側から2番目の凹部204bから嵌合している。
図11は、第3の位置で固定された保持部2の側面図である。第3の位置は、表示画面4aがオペレーター側(図11の矢印Eの方向)を向く回転位置であり、図11に示すように、設置面と保持板235が31°をなす位置である。
図12は、第3の位置で固定された保持部2の断面図である。図12に示す状態では、第3の位置で保持部2が固定されているので、上述の通り、回転用レバー201は、保持部側歯部203から遠ざかる方向(図12の矢印Bの方向)に移動している。そして、レバー側押え部材205の凸部205aが保持部側歯部203の上側凸部203aと当接し、レバー側押え部材205が下方向(図12の矢印Dの方向)へ押し下げられて、保持部側歯部203の下側凸部203bが基部側歯部204の凹部に嵌合している。この第3の位置では、下側凸部203bは、図12において左側から3番目の凹部204cから嵌合している。
図13は、第3の位置から第4の位置へ移動中の保持部2の断面図である。図13に示す状態は、回転中なので、上述の通り、回転用レバー201が押し込まれており(図13の矢印Aの方向へ移動しており)、凸部205aと上側凸部203aの当接がはずれ、保持部側歯部203が上昇し(図13の矢印Cの方向に移動し)、下側凸部203bと基部側歯部204の凹部との嵌合がはずれている。
図14は、第4の位置で固定された保持部2の側面図である。第4の位置は、表示画面4aがカスタマー側(図14の矢印Fの方向)を向く回転位置であり、図14に示すように、設置面と保持板235が32°をなす位置である。
図15は、第4の位置で固定された保持部2の断面図である。図15に示す状態では、第4の位置で保持部2が固定されているので、上述の通り、回転用レバー201は、保持部側歯部203から遠ざかる方向(図15の矢印Bの方向)に移動している。そして、レバー側押え部材205の凸部205aが保持部側歯部203の上側凸部203aと当接し、レバー側押え部材205が下方向(図15の矢印Dの方向)へ押し下げられて、保持部
側歯部203の下側凸部203bが基部側歯部204の凹部に嵌合している。この第4の位置では、下側凸部203bは、図15において右側から4番目の凹部204dから嵌合している。
なお、上記実施の形態例では、保持部2が4つの異なる位置で固定される態様であったが、保持部2が固定される位置の数及び角度は、当該態様と異なるものであってもよい。また、上記実施の形態例では、保持部2が固定される位置の数がオペレーター側とカスターマー側で異なっていたが、保持部2が固定される位置の数がオペレーター側とカスターマー側で同じであってもよい。後者の場合、例えば、表示画面4aがオペレーター側を向く1つの回転位置と、表示画面4aがカスタマー側を向く1つの回転位置で固定する態様にしてもよい。この場合、具体的には、一例として、オペレーター側及びカスターマー側で、設置面と保持板235がなす角度を45°とすることができる。
以上説明したように、本電子機器保持スタンド1の回転機構200では、設置面と水平な回転軸で保持した電子機器4を回転させるので、スペースを取らずに、電子機器4の表示画面4aをオペレーター側とカスタマー側に切り換ることができる。
また、その回転は概ね無負荷の状態で行われるので、オペレーターは力をかけずに素早く電子機器4の向きを変えることができる。
また、所望の回転位置にした場合に、歯の嵌合により保持部2が固定されるので、電子機器4が確実に固定され、オペレーターやカスタマーの表示画面4a上への操作がしやすい。
また、複数の回転位置で電子機器4を固定できるので、利便性が高い。
なお、保持部2の回転操作を安定して行えるようにするために、シャフト202に軽い負荷のロータリーダンパーを設けてもよい。
[ロック機構について]
本電子機器保持スタンド1には、保持する電子機器4をしっかりと固定すると共に、電子機器4の盗難を防止する、ロック機能が備えられる。そのために、電子機器保持スタンド1は、上側フック231を含むスライダー230、下側アーム260(a、b)、緩衝材265、及び、ロックプレート240などを備える。上述した図3では、電子機器4を固定する前の状態が示され、上述した図1では、電子機器4を固定した状態が示される。
まず、スライダー230について説明する。スライダー230は、保持する電子機器4を上側から押える上側フック231を上下に移動させると共に、任意の位置で上側フック231を確実に固定する機構である。更に、盗難防止のために、上側フック231の上記上下移動をロックする機能を備える。
図16は、スライダー230の外観斜視図である。図16では、保持した電子機器4を固定した状態を示しており、上側フック231が電子機器4を上から押えている。上側フック231には、その左右に、それを上下動させるための部材であるフック側歯部233が取り付けられている。また、フック側歯部233の内側には、オペレーターが上側フック231を上下動させるためのスライダーレバー232が設けられる。
図17は、保持部2の背面カバーを除いた状態での斜視図である。上述した左右のフック側歯部233の内側には、それぞれ、それらと嵌合する左右の保持板側歯部234が設けられる。また、スライダー230は、盗難防止のためにロック部236を備える。
図18は、スライダー230の固定状態を示す拡大図である。上述の通り、上側フック231は左右のフック側歯部233に固定されており、保持板235に対して上下方向(図18の矢印J及び矢印Kの方向)に移動可能である。
一方、上述した左右の保持板側歯部234は、それぞれ、回動軸234a及び234bの周りに回動可能に保持板235に取り付けられている。また、上述した左右のスライダーレバー232a及び232bは、それぞれ、左右の保持板側歯部234に取り付けられている。また、左右の保持板側歯部234には、それぞれ、歯部用バネ238a及び238bが設けられ、それらのバネ力により、保持板歯部234は常に外側に付勢されている。すなわち、左側の保持板歯部234は図18の矢印Iaの方向に、右側の保持板歯部234は図18の矢印Ibの方向に、付勢されている。
従って、図18に示す、スライダーレバー232が操作されていない状態では、左右の保持板側歯部234は、それぞれ、左右のフック側歯部233側に移動し、縁部の凸部がフック側歯部233の凹部に嵌合する。すなわち、フック側歯部233と保持板側歯部234が歯合する。この状態では、上側フック231とフック側歯部233は上下動できず、固定される。
なお、保持板側歯部234の縁部に形成される凸部(歯)は、図18に示す通り、その先端がその付け根よりも下がった位置になるように形成され(歯が下(図18の矢印Kの方向)を向くように形成され)、フック側歯部233の凹部もその形状に相応するように形成されているので、この固定状態で、上側フック231を上方向(図18の矢印Jの方向)に引っ張ると、凸部(歯)の下面と凹部の下面の傾斜角により、両者(凸部と凹部)はより深く嵌合される方向に移動し、フック側歯部233と保持板側歯部234の嵌合が外れることはない。
また、図18に示されるように、上述したロック部236に対して、保持板235にはロック部材237が上下動可能(図18の矢印J及び矢印Kの方向に移動可能)に取り付けられている。ロック部材237には、ロック部材用バネ239が取り付けられ、そのバネ力により、ロック部材237は、常に上方向(図18の矢印Jの方向)に付勢されている。図18に示す状態は、上側フック231の固定状態ではあるものの、後述するロック状態ではないので、ロック部材237は、ロック部236と接触せず、上記バネ力で上方向(図18の矢印Jの方向)に移動しており、その上端左右に設けられる突起部237aが、左右の保持板側歯部234よりも上方向(図18の矢印Jの方向)に位置する。従って、図18からわかるように、この状態では、左右のスライダーレバー232a、232bを内側(それぞれ、図18の矢印Ha及び矢印Hbの方向)に移動可能(操作可能)である。
図19は、スライダー230の解放状態を示す拡大図である。上述した固定状態であって、ロック状態でない場合には、上述した通り、左右のスライダーレバー232a、232bを内側(それぞれ、図18の矢印Ha及び矢印Hbの方向)に操作可能であるので、オペレーターがその操作を行うと、この図19に示す解放状態となる。
この状態では、上記操作によって、左右の保持板側歯部234が、それぞれ、図19の矢印Ha及び矢印Hbの方向に回動し、左右のフック側歯部233との嵌合が外れる。従って、この状態では、オペレーターは上側フック231を上下(図19の矢印J及び矢印Kの方向)に移動させることができる。なお、その移動操作の後、オペレーターがスライダーレバー232から手を放すと、上述した歯部用バネ238のバネ力により、再び、保持板側歯部234はフック側歯部233と嵌合する。
図20は、スライダー230のロック状態を示す拡大図である。ロック状態とは、上述した固定状態で、ロック部236のキー250を有する者以外は、上述した解放状態にすることができない状態である。
図20に示されるように、ロック状態では、ロック部236の突起部236aが下方(図20の矢印Jの方向)に位置し、ロック部材237の上部と当接している。当該当接により、ロック部材237は、ロック部材用バネ239のバネ力に反して、図18に示す状態から下方(図20の矢印Jの方向)に移動する。これにより、突起部237aの上下位置が左右の保持板側歯部234と同じ位置まで下がり、図20に示される通り、突起部237aと保持板側歯部234との隙間が殆どなくなる。
従って、このロック状態では、スライダーレバー232を内側(図20の矢印Ha及びHbの方向)に移動させられない。すなわち、オペレーターは、解放状態にする操作を行えない。よって、電子機器4を保持し、上側フック231で電子機器4を押えている固定状態で、このロック状態にすれば、スライダー230に関しては、電子機器4を電子機器保持スタンド1から取り外すことはできない。
なお、ロック状態にする場合には、ロック部236に設けられたカギ穴236bにキー250を挿入してロック部236を図20に示す位置まで回転させる。
次に、下側アーム260について説明する。図3に示されるように、下側アーム260a、260bは、保持部2の底板261上の左右に2つ設けられる。図21は、下側アーム260周辺の構造を説明するための図である。下側アーム260a、260bは、保持される電子機器4の下側を左右で支持する部材であり、底板261の上面に沿って左右(図21の矢印Nの方向)に移動可能に保持板235に取り付けられている。従って、保持する電子機器4のサイズや仕様に応じて適切な位置で電子機器4を支持することができる。
また、図21に示されるように、下側アーム260a、260bが摺動する底板261の上面には凹凸部262が設けられ、下側アーム260a、260bの下面には下側アーム凸部263が設けられる。電子機器4を保持し、上述した上側フック231で上から電子機器4が押し込まれている状態では、下側アーム凸部263が凹凸部262の凹部に嵌合し、容易に左右に移動できない、固定された状態となる。
次に、緩衝材265について説明する。図3に示されるように、上側フック231、保持板235、下側アーム260には、それぞれ、緩衝材265が取り付けられている。この緩衝材265には、弾力性があると共に表面の摩擦係数が高い材質の材料が用いられる。例えば、摩擦係数が1以上(μ≧1)のポリウレタンフォームを用いることができる。
図22は、緩衝材265と電子機器4の接触状態を示す図である。図22では、電子機器4を上側フック231によりしっかりと押さえ付けた固定状態を示している。図22のx部は、上側フック231の下面に取り付けられた緩衝材265と電子機器4の上部の状態を示しており、電子機器4の上部が緩衝材265に喰い込んでいる。また、図22のy部は、下側アーム260の上面に取り付けられた緩衝材265と電子機器4の下部の状態を示しており、電子機器4の下部が緩衝材265に喰い込んでいる。
このような状態では、電子機器4は、その厚み方向(図22の矢印Oの方向)にも動くことができず固定される。また、緩衝材265は表面の摩擦係数が高いので、電子機器4を横方向(図21の矢印Nの方向)にも動かすことは困難である。従って、電子機器4は
、保持された状態で各方向にしっかりと固定される。
なお、上側フック231と下側アーム260に取り付けられる緩衝材265の厚み(図21のd)は、フック側歯部233の凹凸のピッチに相応した適切な値とされる。例えば、フック側歯部233の凹凸のピッチが3mmの際に、緩衝材265の厚み(d)は5mmとされる。
次に、ロックプレート240について説明する。ロックプレート240は、保持する電子機器4に貼付する板状の部材である。電子機器保持スタンド1が電子機器4を保持した際にこのロックプレート240の先端部が保持部2と嵌合し、電子機器4を容易には取り外せなくなる。
次に、以上説明した構成を備えるロック機構を用いて、オペレーターが電子機器4を取り付ける(保持する)際の手順について説明する。
図23−図27は、電子機器4を取り付ける際の手順について説明するための図である。まず、図23に示されるように、電子機器4の背面にロックプレート240を両面テープなどで貼付する。図24は、ロックプレート240が貼付された状態を示す。この状態で、ロックプレート先端部240aが電子機器4から下側に出ている。
次に、電子機器4を保持部2の保持板235に置くが、図25に示すように、ロックプレート先端部240aを底板261の上に設けられたロックプレート用穴部264に差し込みながら置く。また、電子機器4を置く前、あるいは、置いた後に下側アーム260を適切な位置にスライド(移動)させる。
その後、図26に示すように、上側フック231を下げて、電子機器4を上から押える。上側フック231を下げる操作は、そのまま上側フック231を押し下げて行う。この際、上側フック231はラチェット音を発しながら下方に押し下がる事が可能である。これにより、上述した緩衝材265の作用もあり、電子機器4がしっかりと固定されて電子機器保持スタンド1に保持される。
その後、盗難防止等の目的で、図27に示されるように、スライダー230をロックする。すなわち、上述したように、キー250でロック部236を回転させ、上述したロック状態とする。これで、電子機器4の取り付けが完了する。
なお、電子機器4を取り外す際には、キー250でロック部236を回転させ、スライダー230のロック状態を解除して、上側フック231を上げる。図28は、その操作を示す図である。オペレーターは、左右のスライダーレバー232a、232bを矢印Lの方向に操作し、上記解放状態とした後に、上側フック231を矢印Mの方向に引き上げる。
以上説明したように、本電子機器保持スタンド1では、上側フック231を備えるスライダー230と2つの下側アーム260a、260bによって、電子機器4を上下から挟んで保持するので、電子機器4をしっかりと固定することができる。
更に、上側フック231及び下側アーム260等には、電子機器4との接触面に緩衝材265が設けられ、電子機器4をどちらの方向にも動かないように確実に固定することができる。これにより、オペレーター及びカスタマーの電子機器4への操作がしやすくなる。
また、下側アーム260と底板261との凹凸部による嵌合によって、更にしっかりと固定される。
また、ロックプレート240の使用により、電子機器4を保持した状態では電子機器4を取り外すことが出来なくなり、電子機器4の盗難を防止できる。更に、ロックプレート240という電子機器4から着脱可能な部材で構成したことにより、電子機器4の任意の位置に取り付け可能であり、用途に応じて、電子機器4の保持位置を適切に選ぶことができる。
また、2つの下側アーム260a、260bは移動可能であり、様々なサイズや仕様の電子機器4に対応することができるので、本電子機器保持スタンド1では、多種の電子機器4を保持することができる。
[ケーブルの案内機構]
本電子機器保持スタンド1では、電源ケーブル等を収容し使用先まで案内する構造にも特徴がある。
図29は、本電子機器保持スタンド1をレジシステムに適用した場合の配電経路図である。図29に示すレジシステムの例では、元電源である電源10から元電源コード8、ACアダプター7を介して、電力(24Vと5V)が分電部31に供給される。分電部31は、電子機器保持スタンド1の基部3内に収容される。
分電部31からは、電子機器4へ5Vの電力が電子機器用ケーブル11で供給される。また、同様に、分電部31から、プリンター5へは24Vの電力が供給され、スキャナー9にも電力が供給される。
分電部31とつながる各ケーブルの貫通孔として、基部3の底部の四隅には、図3、図29に示されるように、4つのケーブル用開放孔33が設けられる。
次に、分電部31から保持する電子機器4へ電子機器用ケーブル11を案内する構造について説明する。図30は、ケーブル用貫通孔270を示す斜視図である。ケーブル用貫通孔270は、保持部2の保持板235を貫通する孔であり、基部3に収容された配電部31からつながる電子機器用ケーブル11を電子機器4に案内するために設けられる。
電子機器用ケーブル11を電子機器4につなぐ際には、電子機器4を保持板235に置く前に、図30に示すような状態とする。すなわち、基部3の中に収容される配電部31につながった電子機器用ケーブル11を、ケーブル用貫通孔270に通して、保持板235の前面(図30において手前側)に出す。
次に、その電子機器用ケーブル11を、ケーブル用貫通孔270に設けられた開口部271の中へ曲げる。図31は、曲げた後の状態を示す。開口部271は、ケーブル用貫通孔270を外側に開口する部分であり、保持板235の前面(保持する電子機器4と接する面)の位置から、上述した回転機構200の回転軸(シャフト202)の位置までの間を開口する、概ねU字形の開口部である。なお、電子機器用ケーブル11は、図31に示されるように、回転機構200の回転軸(シャフト202)の位置に来るまで曲げられる。
その後、保持する電子機器4を上述した手順で取り付け、開口部271から出ている電子機器用ケーブル11を電子機器4に接続する。図32及び図33は、その状態を示す斜視図である。図32及び図33に示さるように、電子機器用ケーブル11は、回転機構2
00の回転軸(シャフト202)に沿って外に導かれた後、電子機器4の接続部に至る。
このような状態で電子機器用ケーブル11が電子機器4に接続されているので、回転機構200を使って電子機器4の位置を変更しても、電子機器用ケーブル11が引っ張られることがない。
図34は、電子機器4と電子機器用ケーブル11の位置関係を説明するための図である。図34は、電子機器4を保持した電子機器保持スタンド1の側面図であり、(A)で示す回転位置と、(B)で示す回転位置にある二つの状態を合わせて示している。
上述の通り、電子機器用ケーブル11は、回転機能200の回転軸の位置から外に出ているため、(A)で示す位置にあっても、(B)に示す位置にあっても、電子機器用ケーブル11が開口部271から出てから電子機器4に接続されるまでの距離は等しい。このことは、図34に示す距離L1とL2が等しいことからもわかる。従って、電子機器4を回転機構200を用いてどの位置に回転させても(図34の矢印Gの方向に回転させても)、必要なケーブルの長さは変わらない。よって、電子機器4を回転させても、ケーブルが引っ張られてしまうことがなく、ケーブルの接続部が抜けてしまうという虞がない。
更に、電子機器用ケーブル11の多くの部分が装置内部にあり、装置の外部に出る部分が少ないので、邪魔にならない。
また、ケーブル用貫通孔270には、別の特徴がある。図35及び図36は、ケーブル用貫通孔270の基部3側の縁部において何ら工夫をしなかった場合の断面図である。図35及び図36に示されるように、電子機器用ケーブル11を基部3の内部からケーブル用貫通孔270に通すために、基部側穴部32が基部3の上面に設けられ、電子機器用ケーブル11は基部側穴部32を通った後にケーブル用貫通孔270に入る。そして、保持部2が電子機器4の位置を変えるために回転されると、ケーブル用貫通孔270の基部3側の開口位置と、基部側穴部32の相対位置が変化し、電子機器用ケーブル11が通れる面積も変化する。従って、その面積が小さくなっている場合、電子機器4を回転している場合などに、ケーブル用貫通孔270の縁部270a及び基部側穴部32の縁部32aに、電子機器用ケーブル11が接触する場合がある。当該接触は、電子機器用ケーブル11を痛める虞があり好ましくない。
そこで、本実施の形態例に係る電子機器保持スタンド1では、ケーブル用貫通孔270の縁部270A及び基部側穴部32の縁部32Aを、ケーブルを痛めづらい構造としている。図37及び図38は、本実施の形態例に係るケーブル用貫通孔270及び基部側穴部32の断面図である。図37及び図38に示されるように、ケーブル用貫通孔270の縁部270A及び基部側穴部32の縁部32Aに壁を設けて、上述した縁部270a及び縁部32aの場合よりも、電子機器用ケーブル11との接触面積を大きくしている。これにより、電子機器用ケーブル11を破損する可能性を抑えることができる。
以上説明したように、本電子機器保持スタンド1におけるケーブルを取り扱う構造では、電子機器4の回転によってケーブルが抜けたり、破損する危険がなく、また、電源系統が装置内部に収められて邪魔にならない。
以上、本実施の形態例に係る電子機器保持スタンド1について説明したが、本発明を適用した電子機器保持スタンド1は、レジシステムだけでなく、タブレット端末等の電子機器を固定して使用し、その電子機器の向きを容易に変更したい用途に適用することができる。
本発明の保護範囲は、上記の実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。