次に、本発明の実施形態のドラム式洗濯乾燥機(ドラム式洗濯機)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。まず、主に図1〜図5を参照しながらドラム式洗濯乾燥機Sの全体構成について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るドラム式洗濯乾燥機の外観図である。図2は内部の構造を示すために筐体の一部を切断して示した斜視図である。図3は内部の構造を示すために背面カバーを取り外した背面図である。図4は内部の構造を示す側面図である。図5は内部の構造を示すために筐体の一部を切断して示した平面図である。
図1に示すように、筐体1は、外郭を構成するものである。筐体1は、ベース1hの上に取り付けられており、左右の側板1a,1b,全面カバー1c,背面カバー1d,上面カバー1e,下部前面カバー1fで構成されている。また、筺体1は、左右の側板1a,1bが、コの字型の上補強材(図示せず)、前補強材(図示せず)、後補強材(図示せず)で結合しており、ベース1hを含めて箱形状を呈している。
前面カバー1cの略中央には、衣類を出し入れするための投入口を塞ぐドア9が設けられている。このドア9は、前補強材(図示せず)に設けたヒンジで開閉可能に支持されている。ドア解放ボタン9dを押すことでロック機構(図示せず)が外れてドアが開き、ドアを前面カバー1cに押し付けることでロックされて閉じる。前補強材は、後述する外槽の開口部と同心に、衣類を出し入れするための円形の開口部を有している。
また、筐体1の上部中央には、電源スイッチ39、操作スイッチ12,13,表示器14と、を備えた操作パネル6が設けられている。操作パネル6は、筐体1下部に設けた制御装置38と電気的に接続されている。
ドラム3は、回転可能に支持された円筒状の洗濯兼脱水槽であり、その外周壁および底壁に通水および通風のための多数の貫通孔を有し、前側端面に衣類を出し入れするための開口部3aを設けてある。開口部3aの外側には洗濯兼脱水槽3と一体の流体バランサ3cを備えている。外周壁の内側には軸方向に延びるリフタ3bが複数個設けてあり、洗濯,乾燥時に洗濯兼脱水槽3を回転すると、衣類はリフタ3bと遠心力で外周壁に沿って持ち上がり、重力で落下するように動きを繰り返す。ドラム3の回転中心軸は、水平または開口部3a側が高くなるように傾斜している。
外槽2は、円筒形状を呈し、ドラム3を同軸上に内包し、前側は開口し、後側端面の外側中央にモータ4を取り付ける。モータ4の回転軸は、外槽2を貫通し、ドラム3と結合している。前面の開口部には外槽カバー2dを設け、該槽内へ跳水を可能としている。外槽カバー2dの前側中央には、衣類を出し入れするための開口部2cを有している。本開口部2cと前補強材(図示せず)に設けた開口部は、ゴム製のベローズ10で接続しており、ドア9を閉じることで外槽2を水封する。外槽2底面最下部には、排水口2bが設けてあり、排水ホース26が接続している。排水ホース26の途中には排水弁(図示せず)が設けてあり、排水弁を閉じて給水することで外槽2に水を溜め、排水弁を開いて外槽2内の水を機外へ排出する。
外槽2は、下側をベース1hに固定されたサスペンション5(コイルばねとダンパで構成)で防振支持されている。また、外槽2の上側は上部補強部材に取り付けた補助ばね(図示せず)で支持されており、外槽2の前後方向へ倒れを防ぐ。
19は、筐体1内の上部左側に設けた洗剤容器で、前部開口から引き出し式の洗剤トレイ7を装着する。洗剤類を入れる場合は、洗剤トレイ7を図1の二点鎖線で示すように引き出す。洗剤容器19は、筐体1の上補強材に固定されている。
洗剤容器19の後ろ側には、給水電磁弁16や風呂水給水ポンプ17,水位センサ(図示せず)など給水に関連する部品を設けてある。給水電磁弁16は、洗剤給水電磁弁16b、仕上剤給水電磁弁16c、外槽給水電磁弁16d、冷却水給水電磁弁16eなどを備えている。上面カバー1eには、水道栓からの給水ホース接続口16a、風呂の残り湯の給水ホース接続口17aが設けてある。
洗剤給水電磁弁16bは、給水ホース接続口17aからの水道水を、洗剤容器19に通して、外槽2に給水する。
仕上剤給水電磁弁16cは、給水ホース接続口17aからの水道水を、図示しない給水経路を通って、洗剤容器19のソフナー投入室(図示せず)に給水する。ソフナー投入室に注水された水道水は、投入されたソフナーと共に蛇腹ホース(図示せず)を介して、外槽2内に注水される。
外槽給水電磁弁16dは、給水ホース接続口17aからの水道水を、図示しない給水経路を通って、外槽2内に給水する。
冷却水給水電磁弁16eは、給水ホース接続口17aからの水道水を、図示しない給水経路を通って、乾燥ダクト29の水冷除湿機構(図示せず)に給水する。
乾燥ダクト29は筐体1の背面内側に縦方向に設置され、ダクト下部は外槽2の背面下方に設けた吸気口2aにゴム製の蛇腹管B29aで接続される。冷却水給水電磁弁16eから給水された冷却水は乾燥ダクト29の壁面を伝わって流下し吸気口2aから外槽2に入り排水口2bから排出される。
乾燥ダクト29の上部は、筐体1内の上部右側に前後方向に設置したフィルタダクト27に接続している。フィルタダクト27の前面には開口部を有しており、この開口部に引出し式の乾燥フィルタ8を挿入してある。乾燥ダクト29からフィルタダクト27へ入った空気は、乾燥フィルタ8のメッシュフィルタ8aに流入し糸くずが除去される。乾燥フィルタ8の掃除は、乾燥フィルタ8を引き出してメッシュ式のフィルタ8aを取り出して行う。また、フィルタダクト27の乾燥フィルタ8挿入部の下面には開口部が設けてあり、この開口部は吸気ダクト33が接続しており、吸気ダクト33の他端は送風ユニット28の吸気口と接続している。
本実施例では、ドラム3内に風を吹き付ける手段が、外槽カバー2dの開口部であってドア9の前側から見てドラム3の回転軸に対し右上に設けており、モータ4により洗濯兼脱水槽3を右回りに回転させたりを繰り返しているときに、洗濯兼脱水槽3の回転によって持ち上げられた衣類に風を吹き付けて乾燥させる。ここで、上記風を吹き付ける手段は、送風ユニット28と、この送風ユニット28の吐き出し側に設けられて風を加熱するヒータ31と、ヒータ31の下流に設けられたノズル32dと、これらを接続する風路とで構成されている。
送風ユニット28は、駆動用のファンモータ28a、ファン羽根車(図示せず)、ファンケース28bで構成されている。ファンケース28bにはヒータ31が内蔵されており、ファン羽根車から送られる空気を加熱する。送風ユニット28の吐出口は温風ダクト30に接続されている。温風ダクト30は、ゴム製の蛇腹管30a、蛇腹管継ぎ手30bを介して外槽カバー2dに設けた吹き出し口32に接続している。本実施例では、送風ユニット28が筐体1内の上部右側に設けてあるので、吹き出し口32は外槽カバー2dの右斜め上の位置に設け、吹き出し口32までの距離を極力短くするにようにしてある。このため、圧力損失の増加を防ぐことができ、効率よく高速の風を吹き付けることが可能となる。
次に、送風ユニット28で発生させた高速風を直接衣類に当てるための温風吹き出し口32の詳細について、図6、図7を用いて説明する。図6は温風吹き出し口32設置部の外槽カバー2dの正面図、図7は図6の二点鎖線A−Aで切断して示した温風吹き出し口32の断面図である。
温風吹き出し口32は、外槽カバー2dの前側から開口部2cに沿って設けてあり、内部に流路32b、32cが形成されている。温風吹き出し口32の入口には蛇腹管継ぎ手30bが取り付けてあり、流路32cの出口にはノズル32dが形成されている。洗濯兼脱水槽3と外槽カバー2dとのすき間に衣類が入り込まないよう、外槽カバー2dの開口部2cの内径とドラム3の開口部3aの内径は、ほぼ同一に設定されている。
このため、温風吹き出し口32の出口部32aを開口部2cの内周面より内側に飛び出すように形成し、ノズル32dが洗濯兼脱水槽3内に向かって開口するようにしてある。このようにすることで、ノズル32dから出た温風は直接ドラム3内の衣類に当てることができる。
なお、出口部32aの飛び出し量が多すぎると、洗濯や乾燥時に衣類の動きを阻害するため、図6に示すようにノズル32dを扁平のスリット形状として飛び出し量を小さくし、かつ開口部2cと出口部32aの表面形状がスムーズに変化するようにしてある。また、流路32bと流路32cは無駄な突起や、急激な流れ方向の変化が無いようにし、かつノズル32dに向かい流路面積が徐々に小さくなるようにしてある。こうすることで、高速の風が流路32b、32cを流れるときに発生する圧力損失や流体音を小さくすることが出来る。
また、排水口2b、送風ユニット28の吸気口及び吐出口には温度センサ(図示せず)が設けてある。
本実施例では、このようにして、衣類のしわを伸ばす風量及び風速を有する風を直接衣類に吹き付けることにより、風の力で、衣類に発生するしわを伸ばすことができる。また、脱水によりドラム3に張り付いた衣類を剥がし落とすこともできる。
図8は、本実施形態に係る洗濯機Sの制御装置38のブロック図である。50はマイクロコンピュータで、各スイッチ12,13,13aに接続される操作ボタン入力回路51や水位センサ34,温度センサ52と接続され、使用者のボタン操作や洗濯工程,乾燥工程での各種情報信号を受ける。マイクロコンピュータ50からの出力は、駆動回路54に接続され、給水電磁弁16,排水弁25,モータ4,送風ファン28,ヒータ31などに接続され、これらの開閉や回転,通電を制御する。また、使用者に洗濯機の動作状態を知らせるための7セグメント発行ダイオード表示器14や発行ダイオード56,ブザー57に接続される。
≪本実施形態の運転工程≫
次に、図9を用いて、本実施形態に係る洗濯機Sの運転工程について説明する。図7は、本実施形態に係る洗濯機Sにおける乾燥工程を実施しない洗濯運転(洗い〜すすぎ〜脱水〜ほぐし)の運転工程を説明する工程図である。なお、以下では、洗剤給水電磁弁16bを第1電磁弁、仕上剤給水電磁弁16cを第2電磁弁、外槽給水電磁弁16dを第3電磁弁、冷却水給水電磁弁16eを第4電磁弁として説明する
図9に示すように、ステップS1において、制御装置38は、ドラム式洗濯乾燥機Sの運転工程のコース選択の入力を受け付ける(コース選択)。ここで、使用者は、ドア9を開けて、ドラム3の内部に洗濯する衣類を投入し、ドア9を閉じる。そして、使用者は、操作スイッチ12,13を操作することにより、脱水の回転数や時間等を設定し、運転工程のコースを選択し入力する。操作スイッチ12,13が操作されることにより、選択された運転工程のコースが制御装置38に入力される。制御装置38は、入力された運転工程のコースに基づいて、運転パターンデータベースから対応する運転パターンを読み込み、ステップS2に進む。なお、以下の説明において、標準コース(洗い〜すすぎ2回〜脱水)が選択されたものとして説明する。
ステップS2において、制御装置38は、ドラム3に投入された衣類の重量(布量)を検出する工程を実行する(布量センシング)。具体的には、制御装置38は、モータ4を正方向に所定の回転速度(例えば、180rpm)で駆動してドラム3を回転させるとともに、注水前の衣類の重量(布量)を算出する。
ステップS3において、制御装置38は、洗剤量・運転時間を算出する工程を実行する。具体的には、制御装置38は、給水電磁弁16を制御して(例えば、第3電磁弁を開弁して)、外槽2の給水口2aに直接給水する。なお、図示していないが、制御装置38は、外槽2の内底部に配置された電気伝導度センサ(不図示)を介して、給水された水の電導度(硬度)を検出する。また、温度センサ(図示せず)で、給水された水の温度を検出する。その後、給水電磁弁16を制御して(例えば、第3電磁弁を閉弁して)、外槽2への給水を終了する。
制御装置38は、ステップS2で検出した布量、水の電導度(硬度)、水の温度に基づいて、マップ検索により、投入する洗剤量と運転時間を決定する。そして、制御装置38は、決定された洗剤量・運転時間を表示器14に表示する。なお、外槽2に給水して水の電導度(硬度)および水温を検出するものとして説明したが、これに限られるものではない。例えば、前回運転時の水の電導度(硬度)および水温をマイクロコンピュータの記憶部(図示せず)に記憶しておき、それを用いてもよい。
ステップS4において、制御装置38は、洗剤投入待ち工程を実行する。例えば、制御装置38は、所定時間待機して、ステップS5に進む。使用者は、待機中に表示器14に表示された洗剤量を参考に、洗剤トレイ7内に洗剤類を入れる。なお、制御装置38は、洗剤トレイ7の開閉を検知する手段(図示せず)により、洗剤トレイ7が開けられた後に閉じられた場合、洗剤類が投入されたものとして、ステップS5に進む構成であってもよい。
ステップS5において、制御装置38は、洗剤溶かし工程を実行する。例えば、制御装置38は、給水電磁弁16を制御して(例えば、第1電磁弁を開弁して)、給水管を介して洗剤投入室に給水する。洗剤投入室の洗剤と水は、洗剤送出管(図示せず)、蛇腹ホース(図示せず)、外槽2の底壁内面に形成された給水経路を介して、その出口から外槽2の底部に流入する。所定水量まで給水すると、制御装置38は、給水電磁弁16を制御して(例えば、第1電磁弁を閉弁して)、給水を停止させる。そして、制御装置38は、洗剤溶かし動作を実行する。具体的には、制御装置38は、モータ4を制御して、ドラム3を所定の回転速度(例えば、60rpm)で正逆回転させる。これにより、水と洗剤が攪拌され、洗剤が水に溶かされるようになっている。所定時間(例えば、1分)が経過すると、制御装置38は、ドラム3を停止させ、ステップS6に進む。
ステップS6において、制御装置38は、回転給水工程を実行する。具体的には、制御装置38は、給水電磁弁16を制御して(例えば、第1電磁弁と第3電磁弁を開弁して)、外槽2内の洗い水の水位を上昇させるとともに、ドラムモータ4を制御してドラム3を所定の回転速度(例えば、40rpm[r/min])で正逆方向に回転させ、衣類の入れ替えを行う。そして、外槽2内の洗い水の水位が、所定の水位まで上昇すると、給水を停止させる(例えば、第1電磁弁と第3電磁弁を閉弁する)。回転給水工程を開始して所定時間が経過すると回転給水工程を終了し、ステップS7に進む。
ステップS7において、制御装置38は、洗い工程を実行する。洗い工程とは、ドラム3の回転によりドラム3内の下方に溜まった衣類を持ち上げて、衣類に対する遠心力よりも重力が勝ることで、衣類をドラム3内の上方から落下させることにより、衣類に機械的な力を与える工程である。洗い工程を開始して所定時間(例えば、10分)が経過すると洗い工程を終了し、すすぎ1工程(ステップS8〜ステップS11)に進む。
ステップS8において、制御装置38は、排水工程を実行する。制御装置38は、ドラムモータ4を停止させ、排水弁25を開弁して外槽2内の洗濯水を排水する。水位センサ34は、排水中の外槽2内の洗濯水の水位を監視し続ける。水位センサ34の検出値が所定の水位を下回ると、制御装置38は、排水工程を終了し、ステップS9に進む。
ステップS9において、制御装置38は、脱水1工程を実行する。制御装置38は、排水弁25の開弁を維持した状態において、ドラム3を逆方向へ高速で回転させて(例えば、1250rpm)、衣類に含まれる洗濯水を脱水する。所定の時間が経過すると、制御装置38は、脱水1工程を終了し、ステップ10に進む。
ステップS10において、制御装置38は、回転シャワー工程を実行する。制御装置38は、ドラム3を逆方向へ低速で回転させつつ(例えば、100rpm)、排水弁25を閉弁し、給水電磁弁16を制御して(例えば、第3電磁弁を開弁して)、衣類に水を散布する。このときの給水電磁弁16(第3電磁弁)の制御時間は、ステップS2で検出した布量に基づいて決定される。所定の時間が経過すると、給水を停止させる(例えば、第3電磁弁を閉弁する)。制御装置38は、回転シャワー工程を終了し、ステップ11に進む。
ステップS11において、制御装置38は、脱水2工程を実行する。制御装置38は、排水弁25の開弁を維持した状態において、ドラム3を逆方向へ高速で回転させて(例えば、1250rpm)、衣類に含まれる洗濯水を脱水する。所定の時間が経過すると、制御装置38は、脱水2工程を終了し、すすぎ2工程(ステップS12〜ステップS15)に進む。
ステップS12において、制御装置38は、給水工程を実行する。制御装置38は、排水弁25を閉弁し、給水電磁弁16を制御して(例えば、第1電磁弁を開弁して)、外槽2内にすすぎ水を供給する。所定の水位まで上昇すると、給水を停止させ(例えば、第1電磁弁を閉弁して)、制御装置38は、給水工程を終了し、ステップS13に進む。
ステップS13において、制御装置38は、仕上剤(ソフナー)給水工程を実行する。制御装置38は、給水電磁弁16を制御して(例えば、第2電磁弁を開弁して)、外槽2内に柔軟仕上剤を含んだすすぎ水を供給し、ステップS15で外槽2内に供給されたすすぎ水と柔軟仕上剤を混ぜ合わせる。
ステップS14において、制御装置38は、回転給水・補給水工程を実行する。制御装置38は、給水電磁弁16を制御して(例えば、第1電磁弁と第3電磁弁を開弁して)、外槽2に給水する。所定の水位まで給水すると、給水を停止させる(例えば、第1電磁弁と第3電磁弁を閉弁する)。また、制御装置38は、給水しつつモータ4を制御してドラム3を正逆方向に回転させ(例えば、40rpm)、衣類に柔軟仕上剤を染み込ませる。
ステップS15において、制御装置38は、すすぎ攪拌工程を実行する。すすぎ攪拌工程とは、洗いと同様に、ドラム3の回転によりドラム3内の下方に溜まった衣類を持ち上げて、衣類に対する遠心力よりも重力が勝ることで、衣類をドラム3内の上方から落下させる工程である。
具体的には、制御装置38は、モータ4を制御してドラム3を回転させ(例えば、40rpm)、衣類をすすぐ。そして、所定の時間(例えば、2分)が経過すると、制御装置38は、すすぎ2工程を終了し、脱水工程(ステップS16〜ステップS23)に進む。
ステップS16において、制御装置38は、排水工程を実行する。制御装置38は、モータ4を停止させ、排水弁25を開弁して外槽2内のすすぎ水を排水する。水位センサ34は、排水中の外槽2内の洗濯水の水位を監視し続ける。水位センサ34の検出値が所定の水位を下回ると、制御装置38は、排水工程を終了し、ステップS17に進む。
ステップS17において、制御装置38は、柔らか脱水1工程を実行する。具体的には、制御装置38は、排水弁25を開弁させるとともに、モータ4を制御してドラム3を中速で回転させ(例えば、240rpm)、衣類を遠心脱水する。そして、所定の時間が経過すると、制御装置38は、モータ4を停止させ、排水弁25を開弁したまま、柔らか脱水1工程を終了し、ステップ18に進む。
ステップS18において、制御装置38は、中断ほぐし1工程(第1のほぐし工程)を実行する。具体的には、制御装置38は、モータ4を制御してドラム3を正逆方向に低速で回転させて(例えば40rpm)、衣類を剥がし落として衣類をほぐす。所定の時間(例えば40秒)が経過すると、制御装置38は、中断ほぐし1工程を終了し、ステップS19に進む。
ステップS19において、制御装置38は、柔らか脱水2工程を実行する。具体的には、制御装置38は、排水弁25を開弁させるとともに、モータ4を制御してドラム3を中速で回転させ(例えば、430rpm)、衣類を遠心脱水する。そして、所定の時間が経過すると、制御装置38は、モータ4を停止させ、排水弁25を開弁したまま、柔らか脱水2工程を終了し、ステップ20に進む。
ステップS20において、制御装置38は、中断ほぐし2工程(第1のほぐし工程)を実行する。具体的には、制御装置38は、モータ4を制御してドラム3を正逆方向に低速で回転させて(例えば40rpm)、衣類を剥がし落として衣類をほぐす。所定の時間(例えば40秒)が経過すると、制御装置38は、中断ほぐし2工程を終了し、ステップS21に進む。
ステップS21において、制御装置38は、柔らか脱水3工程を実行する。具体的には、制御装置38は、排水弁25を開弁させるとともに、モータ4を制御してドラム3を中速で回転させ(例えば、700rpm)、衣類を遠心脱水する。そして、所定の時間が経過すると、制御装置38は、モータ4を停止させ、排水弁25を開弁したまま、柔らか脱水3工程を終了し、ステップ22に進む。
ステップS22において、制御装置38は、中断ほぐし3工程(第1のほぐし工程)を実行する。具体的には、制御装置38は、モータ4を制御してドラム3を正逆方向に低速で回転させて(例えば40rpm)、衣類を剥がし落として衣類をほぐす。所定の時間(例えば40秒)が経過すると、制御装置38は、中断ほぐし3工程を終了し、ステップS23に進む。
ステップS23において、制御装置38は、最終脱水工程を実行する。具体的には、制御装置38は、排水弁25を開弁させるとともに、モータ4を制御してドラム3を高速で回転させ(例えば、1000rpm)、衣類を遠心脱水する。そして、所定の時間が経過すると、制御装置38は、モータ4を停止させ、排水弁25を開弁したまま、最終脱水工程を終了し、ほぐし工程(ステップS24〜ステップS25)に進む。
ステップS17〜ステップS22において、制御装置38は、柔らか脱水の後に中断ほぐし(第1のほぐし工程)を実行する。中断ほぐし工程は、柔らか脱水でドラム3の内周面に張り付いた衣類を剥がし落とし、衣類の絡まりをほぐすことで、ドラム3内に衣類を均一に散りばめる。これにより、衣類同士の絡みによるアンバランスを解消し、脱水振動を抑制することができる。
本実施形態では、制御装置38は、柔らか脱水を3回実施する。3回の柔らか脱水のそれぞれの間には中断ほぐしが実行される。このとき、柔らか脱水のドラム3の回転速度は、外槽2や筐体1の共振周波数を避けることで、振動を抑制している。また、中断ほぐし工程を挟んで段階的にドラム3の回転速度は高く、最終脱水(ステップ23)より低くしている。これにより、衣類に含まれる洗濯液が段階的に脱水されるため、洗濯液を含む衣類の重量が段階的に減少し、衣類にはたらく遠心力を低減できる。従って、衣類がドラム3内周面に張り付く力が低下するため、中断ほぐし工程で衣類を容易にはがすことができ、最終脱水(ステップ23)終了後においても、衣類をドラム3内周面から容易に剥がすことができる。
また、本実施形態では、柔らか脱水を3回実行するが、これに限るものではなく、最終脱水工程後の衣類の脱水率によって、柔らか脱水の回数や回転速度を調整するようにしても良い。例えば、ステップ1で入力された最終脱水工程のドラム3の回転速度が高い場合(例えば1300rpm)や脱水時間が長い場合(例えば9分)、制御装置38は、柔らか脱水の回数を増やしても良い。これにより衣類にはたらく遠心力を更に低減できる。逆に、最終脱水後の衣類の脱水率が低い場合は、柔らか脱水の回数を減らしても良い。
ステップS24において、制御装置38は、布はがし工程(第2のほぐし工程)を実行する。具体的には、制御装置38は、ドラム3を超低速で正逆方向に回転及び停止させる(例えば、10rpm、1秒停止)。同時に、ファンモータ28aを高速で回転させて(例えば、14500rpm)送風ユニット28より高速風を発生させ、吹き出し口32より、ドラム3の内周面に張り付いた衣類に直接高速の風を吹き付ける。
これにより、最終脱水工程(ステップ23)でドラム3の内周面に張り付いた衣類に、ドラム3の回転による慣性力と重力に加え、衣類に直接吹き付けられる高速風による外力が追加され、該張り付いた衣類を剥がし落とすことができる。また、次工程の布ほぐし工程(ステップ25)において、衣類に高速風を満遍なく吹き付けることができるため、脱水工程時に付いた衣類の折り目やしわを効率よく伸ばすことができる。所定の時間が経過すると(例えば1分)、制御装置38は、モータ4を停止させ、布はがし工程を終了し、ステップS25へ進む。
ステップS25において、制御装置38は、布ほぐし工程(第3のほぐし工程)を実行する。具体的には、制御装置38は、ドラム3を低速で正逆方向に回転させる(例えば、50rpm)。同時に、ファンモータ28aを高速で回転させて(例えば、14500rpm)、送風ユニット28より高速風を発生させ、吹き出し口32より、ドラム3内の衣類に直接高速の風を吹き付ける。
これにより、衣類がドラム3の最上部を過ぎてから落下を開始させるようなタイミングで高速風を衣類に直接吹き付けることができ、脱水時に付いた折り目やしわを伸ばすとともに、衣類同士の絡みを解消および軽減させながら衣類をほぐすことができる。また、洗濯終了後、ドラム3から衣類を容易に取り出すことができ、手でしわ・絡みを伸ばすことをしなくても衣類の折り目やしわがほぐれている状態であるため、干す際までの手間を大幅に低減でき、干した後も良好な仕上がりにできる。所定の時間が経過すると(例えば4分)、制御装置は、モータ4,ファンモータ28aを停止させ、排水弁25を閉弁して、洗濯コース(洗い〜すすぎ〜脱水〜ほぐし)を終了する。
図9のステップS17〜ステップS22における柔らか脱水工程後の中断ほぐし工程(第1のほぐし工程)、ステップS24における最終脱水工程後の布はがし工程(第2のほぐし工程)、ステップS25における布ほぐし工程(第3のほぐし工程)、これら一連のほぐし工程を経時的に実施することで、はがれにくい条件(例えば、綿繊維でかつ衣類の量が少ない場合)の衣類でも、より確実にドラム3の内周面から剥がし落として、効率良くほぐすことができる。特に、第2のほぐし工程において、該張り付いた衣類をドラム3から剥がす力は、従来技術のようなドラム3の回転制御による慣性力と重力に加え、高速の風による強い外力を新たに加えることができる。
我々の検討によれば、前述のようなドラム3の内周面に強く張り付いている衣類に対して、手で軽く触れる、または部分的にドラム3から剥がれる程度の僅かな外力で刺激を与えて、該張り付いた衣類の一部にドラム3から剥がれた箇所を発生させた状態で、ドラム3を超低速(例えば10rpm)で正逆に回転及び停止をさせる動作を繰り返すと、ドラム3から剥がれた箇所を起点に徐々に剥がれ、最終的に剥がれ落ちる。あるいは即座に剥がれ落ちる場合がある。
また、外力を加えなくても、長時間ドラムを超低速で回転及び停止させる動作を繰り返していれば、張り付いた衣類の一部がドラム3から剥がれだす状況に発展することがあり、前述と同様に、ドラム3から剥がれた部分を起点に、最終的に剥がれ落ちる場合がある。
つまり、前述のような衣類がドラム3から剥がれにくい状況下において、従来技術のようなドラムの回転制御による慣性力と重力だけで剥がす手段では、ドラム3の内周面に張り付いた衣類の一部がドラム3から剥がれる、すなわち、剥がれるきっかけとなる現象が発生し難い。また、衣類の一部がドラム3から剥がれてからも、衣類をドラム3から継続的に剥がす外力が無いため、短時間で剥がし落とすことが困難となる。より確実に衣類がドラム3から剥がれる構成を実現するには、布はがし工程(第2のほぐし工程)の運転時間を長くする必要がある(例えば10〜30分)。
本実施形態のドラム式洗濯乾燥機Sでは、ドラム3の回転と停止による慣性力と重力に加えて、高速の風による強い外力を衣類に与える。これにより、衣類の一部をドラム3から剥がし、高速の風による強い外力を継続的に衣類に与え、該剥がれた部分を拡大させ、短時間(例えば1分以内)で剥がし落とすことができる。
図9のステップS24における布はがし工程(第2のほぐし工程)、またステップS25における布ほぐし工程(第3のほぐし工程)において、脱水工程中についた衣類の折り目やしわを効率よく伸ばすための風量・風速・ノズル面積などの検討結果を以下に示す。
風速と風量はファンモータ28aの回転数とノズル32dの面積を変えることで調整した。なお、風速は、送風ユニット28の風量圧力特性を測定した結果から計算した値である。風量圧力特性は、図10に示す装置で測定を行った。均圧箱の吸気口と送風ユニット28の吐出口にオリフィスを取り付け、オリフィスの直径とファンモータ28aの回転数を種々変えながら風量と送風ユニット28の吸気口及び吐出口の圧力を測定し、風量圧力特性を求めた。そして、送風ユニット28を洗濯乾燥機へ実装した時の送風ユニット28の吸気口と吐出口の圧力を測定し、上記の風量圧力特性から風量を求め、この風量をノズル面積で割った値を風速とした。
実験条件は、図11に示すとおりであり、試験機は、直径600mmで容積75Lのドラムを有するドラム式洗濯乾燥機で、布量は2kgである。仕上がりの評価は各種衣類で行ったが、最もしわ付きが顕著だった薄手の綿パジャマズボンの結果を示している。評価は目視による5段階の官能評価であるが、官能評価値に対する仕上がり具合の例を図12に示す。ノズルは、前述した位置にノズル32dを設けた場合(外槽カバー2dの右斜め上の位置)である。ノズル32dからの風の吹き出し方向は、略ドラム3の背面d中央に向くようにした。結果は、評価者3名の平均値である。
図11から、
(A)風速が早くなるにつれて仕上がりがよくなる。しかし、風速に対して仕上がりは飽和し、風速が高すぎると逆に仕上がりが悪化する傾向もみられる。また、風量が多いほど、仕上がりが飽和する風速は低くなる。
風量0.8m3/minの場合、風速約140m/sで官能評価値は約3.0、
風量1.0m3/minでは、風速約130m/sで官能評価値は約3.3、
風量1.3m3/minでは、風速約120m/sで官能評価値は約3.9、
風量1.5m3/minでは、風速約110m/sで官能評価値は約4.0、
風量1.7m3/minでは、風速約110m/sで官能評価値は約4.2、となり、
これ以上、風速を増しても仕上がりはほとんど向上しない。例えば、風量1.5m3/min以上においては、脱水によるシワや絡みを十分に伸ばして吊り干し乾燥した場合と同様の仕上がりを得られる。
(B)同じ風速であれば風量が多い方が仕上がりはよいが、風量1.5m3/minから1.7m3/minに上昇した場合の仕上がりの改善度合いは小さくなっている。このことから、必要以上に風量を増しても、仕上がりの改善は期待できない。
このように、風速,風量が大きいほど仕上がりが良くなる。どちらか一方を大きくするのではなく、両者のバランスを考えて設定するのが望ましい。具体的には、仕上がりだけでなく、電流値(家庭用の商用電源の場合は、送風ユニット28とヒータ31、モータ4,制御装置38の合計で15A以下)や乾燥運転時の乾燥性能,風が循環するダクトの流路面積,洗濯乾燥機への実装などを考慮して風速と風量を決定する必要がある。
官能評価値が3以上であれば、吊り干し乾燥後にアイロンをかける場合でも簡単に仕上げることができ、官能評価値4以上であれば、乾燥後の衣類をそのまま着用しても不満が少ない。
官能評価値3以上とするためには、
風量0.8m3/minで風速約140m/s以上、
風量1.0m3/minで風速約110m/s以上、
風量1.3m3/minで風速約92m/s以上、
風量1.5m3/minで風速約75m/s以上、
風量1.7m3/minで風速約70m/s以上となり、最低でも0.8m3/minの風量が必要である。
本実施形態のドラム式洗濯乾燥機Sでは、ノズル面積280mm2(幅56×高さ5mmのスリット状)で、送風ユニット28はファン羽根車径140mm,羽根厚さ8.1mmで回転数を毎分14500回転で運転している。これにより、ファン吐出圧力が約7500Pa(空気湿度30℃時)となり、風量約1.5m3/minで風速約100m/sを得ている。
しわがつきにくい衣類の場合は、上記の風速より低い値でも官能評価値4以上の仕上がりが得られるが、種々の衣類を同時に、洗濯および乾燥するのが一般的であり、しわになりやすい衣類に合わせて風速を決定するほうが良い。
ノズル32dは、図13に示すような扁平のスリット形状としている。ノズル32d面積は、前述したような風量・風速が得られる面積であれば良く、断面形状も流れの抵抗にならないような形状であれば、どのような形状でもかまわない。しかし、出口部32aが開口部2cの内側に多く飛び出しすぎると、衣類の出し入れの邪魔になったり、洗濯や乾燥時に衣類の動きを阻害したりする。そこで、ノズル32dを扁平のスリット形状にして飛び出し量を小さくした。また、開口部2cと出口部32aの表面形状がスムーズに変化するようにして、布動きを阻害しないようにしてある。
ノズル32dの高さを小さくしすぎるとゴミが詰まりやすく、ノズルでの風切り音の増加に繋がるので、最低でも3mm程度あった方が好ましい。また、流路32bと流路32cは無駄な突起や、急激な流れ方向の変化が無いようにし、かつノズル32dに向かい流路面積が徐々に小さくなるようにしてある。こうすることで、高速の風が流路32b,32cを流れるときに発生する圧力損失や流体音を小さくすることができる。
布ほぐし工程(ステップS25)における風の流れを図2〜5を参照しながら説明する。送風ユニット28を運転すると、ノズル32dからドラム3内に高速の風を吹き込み(矢印41)、湿った衣類に当たり、衣類のシワを伸ばし始める。該布ほぐし工程中は、ドラム3を正逆回転させているので、リフター3bにより衣類がノズル32dの付近まで持ち上がった状態で、衣類に高速の風が当たる。このときノズル32dと衣類との距離が最も短くなるので、高速の風で衣類のしわを伸ばすことができる。ドラム3内に流入した空気は、ドラム3に設けた貫通孔から外槽2に流れ、吸気口2aから乾燥ダクト29に吸い込まれ、乾燥ダクト29を下から上へ流れ(矢印42)、フィルタダクト27へ入る。フィルタダクト27に設けられたメッシュフィルタ8aを通り糸屑が取り除かれ(矢印43)、吸気ダクト33に入り、送風ユニット28に吸い込まれ(矢印44)、ドラム3内に吹き込むように循環する。
高速の風を衣類に当てることにより、衣類のしわが減少する理由について図14を用いて述べる。図14(a)はノズル32dから出た高速の風41が衣類に当たった時の模式図である。ここでは衣類の背面に他の衣類がある場合を示している。風が衣類に当たると、衣類に風で押し広げられる力(矢印(1))と、衣類い当たった後流れ方向を変え衣類表面に沿って流れる風で左右に引っ張られる力(矢印(2))が作用する。この(1)と(2)の力で衣類のしわは伸ばされる。ドラム3内の衣類の量が多い場合は、直接風が当たる衣類の周囲に他の衣類が多く自由に動きにくいため、主に(1)の力でしわが伸ばされる。衣類の量が少ない場合は、衣類が自由に動き、風が当たった衣類は風の流れ方向に押されながら吹き流しのようになり、衣類表面に沿って流れる風による(2)の力も作用ししわが伸ばされる。衣類の量が少ない場合は、乾燥中に衣類が広がりしわは発生しにくいので、ここでは(1)の力について考える。
(1)の力Fは、図14(b)に示すように、ノズル32dから吹き出す風の風量をQ、風速をVとすると、QとVの積で表すことができる。また、ノズルか32dから吹き出す風(噴流)は、周囲の空気との大きな速度差と空気の粘性の作用で、周囲の空気を巻き込み、流れの幅を広げながら、またその際噴流自身は速度Vを減少させながら下流方向へ流れていく(ただし、ノズル32dからの距離Xが非常に小さい場合(噴流のコア領域,円形ノズルの場合でノズルからノズル径の約6倍の位置まで)は、速度Vはほぼ一定である)。すなわち、ノズル32dからの距離Xが増加するに従い、単位面積当たりの衣類が受ける力(衣類が風から受ける圧力)は減少していく。従って、ノズル32dに衣類を近づけるほど、しわを伸ばす効果は大きくなる。図11で示した仕上がりの結果は、これで説明できる。
風量Qを増やすためには、送風ユニット28のファンの回転数を高めたり、ファンの外径や羽根高さを増やしたりする必要がある。また温風が通るダクトの流路面積を大きくして圧力損失を小さくした方が良い。特に、乾燥運転において、除湿に水を使用する水冷方式の場合、乾燥ダクト29を流れる空気の流速が速すぎると、冷却水が風に吹き飛ばされる現象が発生する。冷却水がフィルタ8aやヒータ31まで到達すると、乾燥効率の大幅な低下につながるため、乾燥ダクト29の流路面積を大きくすることが必須である。このため、風量を大幅に増やすと、ダクトや送風ユニットのサイズが大型化し、筐体1のサイズの大型化につながり、洗濯乾燥機を家庭へ設置しにくくなる。
一方、風速Vを増やすためには、送風ユニット28を高圧力タイプのものにしてノズル面積を小さくすればよい。送風ユニット28として、一般的なターボファンを使用した場合、低い回転数でファン羽根車を大径化する方法と、ファン羽根車の径は小さいままで回転数を高くする方法とあるが、高速回転化は、従来と同一の筐体に実装できる利点がある。
本実施例では、ノズル32dが外槽カバー2dの開口部であってドア9の前側から見てドラム3の回転軸に対し右上(略45度の場所)に設けてあり、右上からドラム3の背面3dの略中心部のやや上部に向かって高速の風が吹き出している。布ほぐし工程中(ステップS25)にドラム3を正逆回転させながら、衣類を持ち上げてノズル32dに近付けることで、ノズル32dからの高速の風を衣類に当てている。そして、ドラム3の回転数は、持ち上げられた衣類がドラム3の最上部を超えてから落下を開始するように設定する。この回転数は、衣類の量やドラム3の直径などにより異なる。
図15は、布ほぐし工程中(ステップS25)において、ドラム3内での衣類の動きを矢印で示した模式図である。図15(a)はドラム3が正面から見て右回転している場合を、図15(b)は、ドラム3が左回転している場合を示す。2本の矢印は、ドラム3の外周付近に位置する衣類の代表的な軌跡(矢印I)とそれより内側に位置する衣類の軌跡(矢印II)を示す。
右回転の場合、衣類が持ち上げられ最上部に達し、右方向に移動しノズル32dに近づ
いて行くところで高速の風41が当たるため、衣類は風の力で押され、後方下向きに運動方向を変える。そして、ドラム3の最下部より手前に落下し、最下部を通り再び持ち上げられる。ドラム3の運動方向とドラム3に落下する衣類の運動方向が鋭角をなしているため、衣類が転がるような動きを発生し難く、絡みや捩じれを抑えることができ、しわの少ない仕上がり(洗濯後のほぐれ具合)を実現できる。
一方、左回転の場合は、衣類が持ち上げられ最上部に達する前にノズル32dに近づく。衣類は上向きの速度を有しているため、風が当たることでドラム3の上側を後方(奥側)左方向に向かい流された後、ドラム3の回転に沿って落下し、最下部を通り再び持ち上げられる。この場合、ドラム3の運動方向と落下する衣類の運動方向はほぼ同じであり、衣類が転がるような動きはほとんど発生せず、しわの発生を防止できる。
布ほぐし工程(ステップS25)においては、本実施例のようにドラム3の回転数を設定すると(従来技術のほぐし工程より回転数が高い)、ドラム3の外周側にある衣類とそれより内側にある衣類はほぼ一体的に動き、相互の速度差に起因する絡みの発生も防止または軽減できるため、さらにしわの少ない仕上がりを実現できる。
このように、一体的な布動きとすると、衣類の入れ替わりが少なくなるため、仕上がりむら(例えば、しわの伸ばし具合)の増大が懸念される。また、従来のドラムの回転数では、左回転の場合は高速の風が衣類に当たるが、右回転時にはノズルから離れた位置を衣類が通過するため、高速の風が当たらない衣類の割合が多く、仕上がりむらの要因となっていた(図16参照)。しかし、本実施例では、図15中に楕円で示すように、ドラム3が右回転でも左回転でも、高速の風が衣類に直接あたるように、ドラム3の回転数と風の吹き出し方向を設定してある。このため、高速の風が満遍なく衣類にあたるため、仕上がりむらの増加を抑制できる。
さらに、前述のように高速の風の力で衣類がドラム3内の奥側に押されるため、手前側と奥側の衣類の入れ替わりも促進されるため、仕上がりむらと、しわの少ない乾燥を実現できる。
また、図17の布ほぐし工程(ステップ25)は、ドラム3を所定の回転速度(例えば、50rpm)で、所定の時間(例えば、3秒間)停止を挟みながら、所定の時間(例えば、6秒間)正逆方向に回転させている。このとき、ドラム3が回転を開始してから停止するまでの時間(例えば、6秒間)に、ドラム3が1周する回数を4.5回以下(例えば、4回)となるように、回転速度及び回転時間を設定している。
我々の検討によれば、ドラム3が回転開始してから停止するまでの間に、ドラム3が1周する回数を正逆ともに4.5回以下にすることで、衣類の絡みを抑制し、深いしわにはならない。なお、ドラム3が回転開始してから停止するまでの間にドラム3が1周する回数は、少ないほど衣類の絡まりを防止できる。しかしながら、比較的短時間(例えば2〜4分)の間で効率良く衣類をほぐすには、ドラム3の回転を止めずに衣類を動かしたほうが良く、これを考慮すると、3〜4.5回とすることが望ましい。
図17の従来技術の洗濯コースにおけるほぐし工程では、ドラム3が回転開始してから停止するまでの間に、ドラム3が1周する回数を19.5回(例えば、回転速度を45rpm、回転時間を30秒間)としている。我々の検討によれば、ドラム3が1周する回数が4.5回より多い回転動作では、衣類は多数回の反転落下を続けることで衣類が相互に絡みあい、衣類に深いしわが生じることを確認している。
また、脱水工程後の衣類は含水量が多いため重く、乾燥運転時のような衣類の重さが軽い状態と比較すると、衣類が相互に絡みやすい。絡んでしまった衣類をドラム3の回転制御のみで即座に解消させることが困難であることも確認している。
つまり、衣類を効率良くほぐすには、衣類が絡む前にドラム3を停止させるのが望ましい。特に、洗濯コースにおけるほぐし工程では、含水によって衣類重量が重いため、衣類の絡みを抑制するためには、ドラム3が回転開始してから停止するまでの間にドラム3が1周する回数を4.5回以下にすることが望ましい。
本実施形態における布ほぐし工程では、ドラム3を50rpmの回転速度で、正逆方向に6秒間ずつ回転させることで、一度の回転動作におけるドラム3の回転回数は正逆ともに4回となるよう設定した。これにより、衣類同士の絡みやしわを一層少なくすることができる。
図9のステップS24における布はがし工程、またステップS25における布ほぐし工程において、送風ユニット28を運転すると同時に、ヒータ31に通電して温風をドラム3内に吹き込み衣類の温度を上昇させても良い(図9の※1参照)。
一般的に繊維は約30〜40℃で性質が変化し柔らかくなる性質を有している。なお、洗濯時の水温より5〜10℃程度高くするだけでも、衣類は柔らかくしなやかになり、十分な効果を得ることができることができる。
なお、本実施例では、温風を供給する設定にした場合、布はがし工程(ステップS24)から、布ほぐし工程(ステップS25)における5分間の間、ヒーター31に通電して温風をドラム3内に吹き込む。このとき、衣類の温度上昇具合としては、洗濯時の水温に対し、温風供給開始3分経過後には約4℃、4分経過後には約5℃高く、5分経過時点で、約8〜10℃高く上昇できるような設定にした。
したがって、本実施例では、最終脱水工程の後、ドラム3内に収容されている衣類に直接温風を吹き付けて、加熱することで、該衣類の繊維が柔らかくしなやかになり、ドラム3内に張り付いた衣類は落下しやすくなるとともに、脱水時に付いた折り目やしわをより一層少なくすることができる。また、タオル等のパイル生地を有した衣類に対し、高速風による力に加えて前述の効果が追加されることで、脱水時の遠心力によって寝てしまったパイルを立て直す効果を促進させ、ごわつきを解消及び軽減することができる。また、冬の時期等の低温環境で運転する場合、洗濯終了後、衣類をドラムから取り出す際、温風により衣類が温められている状態とすることで、温かい触感で取り出せるため、取り出す際の不快感も軽減できる。