JP6662300B2 - 摩擦材用ラテックスおよび摩擦材 - Google Patents

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Description

本発明は、耐熱性および摩擦特性に優れた摩擦材を与えることのできる摩擦材用のラテックス、および該ラテックスを用いて得られる摩擦材に関する。
自動車用、産業機械用のブレーキライニング、ディスクパッド、およびクラッチフェーシングなどの摩擦材においては、従来石綿(アスベスト)が基材として使用されていたが、アスベスト公害の問題から非アスベスト系摩擦材の開発が望まれている。現在、アスベストの代替材としてガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ロックウール、セラミック繊維、各種のスチールファイバー等の繊維基材を使用した摩擦材が開発され、使用されている。このような繊維基材を使用した摩擦材は、摩擦特性などを向上させるために、通常、繊維基材に、熱硬化性樹脂やゴム成分などを含んでなる樹脂組成物を付着させることにより製造されている。
たとえば、特許文献1では、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂に、ゴム成分を配合してなる熱硬化性樹脂組成物を、基材繊維に付着させた後、ゴム剤を含む結着剤組成物をさらに付着させ、次いでこの基材繊維をうず巻状あるいは積層体状に予備成形した後、得られる予備成形品を加熱圧縮することを特徴とするクラッチフェーシングの製造方法が開示されている。
しかしながら、上記特許文献1の技術により得られるクラッチフェーシングは、耐熱性が十分でなく(たとえば、熱老化させた後の摩擦特性の変化量が大きく)、そのため、耐熱性の向上が望まれていた。
特開昭61−218636号公報
本発明は、耐熱性および摩擦特性に優れた摩擦材を与えることのできる摩擦材用のラテックス、および該ラテックスを用いて得られる摩擦材を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を10〜60重量%の割合で含有し、ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムからなるゴム粒子を含有し、かつ、該ゴム粒子の体積積算90%粒子径(d90)と、体積積算50%粒子径(d50)との差Δdを所定の範囲に制御してなるラテックスにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明によれば、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を10〜60重量%の割合で含有し、ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムからなるゴム粒子を含有する摩擦材用のラテックスであって、光散乱法により測定した、前記ゴム粒子の体積積算90%粒子径(d90)と、体積積算50%粒子径(d50)との差Δd(Δd=d90−d50)が、0.0240μm以上であることを特徴とする摩擦材用ラテックスが提供される。
本発明の摩擦材用ラテックスにおいて、前記カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムが、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位10〜60重量%、カルボキシル基含有単量体単位0.1〜20重量%、および共役ジエン単量体単位(水素化されたものも含む)20〜90重量%を含有するものであることが好ましく、前記カルボキシル基含有単量体単位が、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体単位であることが好ましい。
また、本発明によれば、上記の摩擦材用ラテックスと、熱硬化性樹脂とを含有する摩擦材用ラテックス組成物が提供される。
本発明の摩擦材用ラテックス組成物において、前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂から選択される1種以上であることが好ましい。
本発明の摩擦材用ラテックス組成物において、前記カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム100重量部に対する、前記熱硬化性樹脂の含有量が40〜500重量部であることが好ましい。
さらに、本発明によれば、上記の摩擦材用ラテックス組成物を、基材に付着させてなる摩擦材が提供される。
本発明によれば、耐熱性および摩擦特性に優れた摩擦材を与えることのできる摩擦材用のラテックス、および該ラテックスを用いて得られる摩擦材を提供することができる。
摩擦材用ラテックス
本発明の摩擦材用ラテックスは、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を10〜60重量%の割合で含有し、ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムからなるゴム粒子を含有し、
光散乱法により測定した、前記ゴム粒子の体積積算90%粒子径(d90)と、体積積算50%粒子径(d50)との差Δd(Δd=d90−d50)が、0.0240μm以上であることを特徴とする。
本発明によれば、摩擦材用ラテックスを、上記構成を有するカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムを含有するものとし、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのゴム粒子の体積積算粒子径を上記特定の範囲とすることにより、該ラテックスを熱硬化性樹脂と混合し、摩擦材用ラテックス組成物とし、これを基材に付着させて摩擦材を得た際における、得られる摩擦材の耐熱性および摩擦特性を優れたものとすることができるものである。
ここで、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムにおいて、水素添加反応を行い、ヨウ素価を低減することで、耐熱性の向上が可能となることは一般に知られている。その一方で、本発明者等の知見によると、水素添加反応を行い、ヨウ素価を低減した場合には、熱硬化性樹脂との相溶性が落ちる場合があり、結果として、熱硬化性樹脂と混合して、基材に付着させて摩擦材を得た際における、耐熱性の改善効果が十分に得られないことがあった。
これに対し、本発明によれば、上記構成を有するカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムを含有するものとし、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのゴム粒子の体積積算粒子径を上記特定の範囲とすることにより、熱硬化性樹脂との相溶性を向上させることができ、結果として、得られる摩擦材の耐熱性および摩擦特性を優れたものとすることができることを見出したものである。
以下においては、まず、本発明の摩擦材用ラテックスを構成する、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムについて説明する。本発明の摩擦材用ラテックスを構成する、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムは、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を10〜60重量%の割合で含有し、ヨウ素価が120以下である、カルボキシル基を含有するニトリルゴムである。
本発明の摩擦材用ラテックスを構成する、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムは、たとえば、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体と、カルボキシル基含有単量体と、必要に応じて用いられる、これらと共重合可能な単量体とを共重合することにより得ることができる。
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、特に限定されないが、炭素数3〜18のものが好ましく、炭素数3〜9のものが特に好ましい。その具体例としてはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等が挙げられ、なかでもアクリロニトリルが好ましい。これらのα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体は一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム中における、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量は、10〜60重量%であり、好ましくは12〜58重量%、より好ましくは16〜50重量%である。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量が少なすぎると、熱硬化性樹脂と混合した際における相溶性が悪化し、結果として、得られる摩擦材の耐熱性が低下してしまう。一方、多すぎると弾性や耐寒性が低下してしまう。
カルボキシル基含有単量体としては、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体と共重合可能であり、かつ、エステル化等されていない無置換の(フリーの)カルボキシル基を1個以上有する単量体であれば特に限定されない。カルボキシル基含有単量体を用いることにより、ニトリルゴムに、カルボキシル基を導入することができる。
本発明で用いるカルボキシル基含有単量体としては、たとえば、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸単量体、およびα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体などが挙げられる。また、カルボキシル基含有単量体には、これらの単量体のカルボキシル基がカルボン酸塩を形成している単量体も含まれる。さらに、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸の無水物も、共重合後に酸無水物基を開裂させてカルボキシル基を形成するので、カルボキシル基含有単量体として用いることができる。
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などが挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸単量体としては、フマル酸やマレイン酸などのブテンジオン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アリルマロン酸、テラコン酸などが挙げられる。また、α,β−不飽和多価カルボン酸の無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などが挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体としては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノn−ブチルなどのマレイン酸モノアルキルエステル;マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘプチルなどのマレイン酸モノシクロアルキルエステル;マレイン酸モノメチルシクロペンチル、マレイン酸モノエチルシクロヘキシルなどのマレイン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノn−ブチルなどのフマル酸モノアルキルエステル;フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘプチルなどのフマル酸モノシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチルシクロペンチル、フマル酸モノエチルシクロヘキシルなどのフマル酸モノアルキルシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、シトラコン酸モノプロピル、シトラコン酸モノn−ブチルなどのシトラコン酸モノアルキルエステル;シトラコン酸モノシクロペンチル、シトラコン酸モノシクロヘキシル、シトラコン酸モノシクロヘプチルなどのシトラコン酸モノシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチルシクロペンチル、シトラコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのシトラコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、イタコン酸モノn−ブチルなどのイタコン酸モノアルキルエステル;イタコン酸モノシクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキシル、イタコン酸モノシクロヘプチルなどのイタコン酸モノシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチルシクロペンチル、イタコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのイタコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;などが挙げられる。
カルボキシル基含有単量体は、一種単独でも、複数種を併用してもよい。これらの中でも、本発明の効果がより一層顕著になることから、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体が好ましく、アクリル酸、またはメタクリル酸が好ましく、メタクリル酸がより好ましい。
カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム中における、カルボキシル基含有単量体単位の含有量は、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.5〜15重量%、さらに好ましくは1〜10重量%である。カルボキシル基含有単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、熱硬化性樹脂との混和性(相溶性)および基材に対する接着性を良好なものとすることができる。一方で、カルボキシル基含有単量体単位を含有しない場合には、基材に対する接着性や、耐屈曲疲労性に劣るものとなってしまう。
また、本発明の摩擦材用ラテックスを構成する、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムは、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体と、カルボキシル基含有単量体とともに、ゴム弾性を発現するという点より、共役ジエン単量体を共重合したものであることが好ましい。
共役ジエン単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、クロロプレンなどの炭素数4〜6の共役ジエン単量体が好ましく、1,3−ブタジエンおよびイソプレンがより好ましく、1,3−ブタジエンが特に好ましい。共役ジエン単量体は一種単独でも、複数種を併用してもよい。
カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム中における、共役ジエン単量体単位の含有量は、好ましくは20〜90重量%、より好ましくは35〜85重量%、さらに好ましくは50〜80重量%である。共役ジエン単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、耐熱性や耐化学的安定性を良好なものとしながら、ゴム弾性を適切に向上させることができる。なお、上記共役ジエン単量体単位の含有量は、後述する水素化を行った場合には、水素化された部分も含めた含有量である。
また、本発明の摩擦材用ラテックスを構成する、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムは、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、カルボキシル基含有単量体、および共役ジエン単量体とともに、これらと共重合可能なその他の単量体を共重合したものであってもよい。このようなその他の単量体としては、エチレン、α−オレフィン単量体、芳香族ビニル単量体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体(上述の「カルボキシル基含有単量体」に該当するものを除く)、フッ素含有ビニル単量体、共重合性老化防止剤などが例示される。
α−オレフィン単量体としては、炭素数が3〜12のものが好ましく、たとえば、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが挙げられる。
芳香族ビニル単量体としては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体としては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(「メタクリル酸エステル及びアクリル酸エステル」の略記。以下同様。);アクリル酸メトキシメチル、アクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシエチルなどの炭素数2〜12のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;アクリル酸α−シアノエチル、メタクリル酸α−シアノエチル、メタクリル酸α−シアノブチルなどの炭素数2〜12のシアノアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの炭素数1〜12のヒドロキシアルキル基を有する(メタ) アクリル酸エステル;アクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸テトラフルオロプロピルなどの炭素数1〜12のフルオロアルキル基を有する(メタ) アクリル酸エステル;マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチルなどのα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル;ジメチルアミノメチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレートなどのジアルキルアミノ基含有α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル;などが挙げられる。
フッ素含有ビニル単量体としては、たとえば、フルオロエチルビニルエーテル、フルオロプロピルビニルエーテル、o−トリフルオロメチルスチレン、ペンタフルオロ安息香酸ビニル、ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
共重合性老化防止剤としては、たとえば、N−(4−アニリノフェニル)アクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)メタクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)シンナムアミド、N−(4−アニリノフェニル)クロトンアミド、 N−フェニル−4−(3−ビニルベンジルオキシ)アニリン、N−フェニル−4−(4−ビニルベンジルオキシ)アニリンなどが挙げられる。
これらの共重合可能なその他の単量体は、複数種類を併用してもよい。その他の単量体の単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。
本発明の摩擦材用ラテックスを構成する、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのヨウ素価は、好ましくは120以下であり、より好ましくは60以下、さらに好ましくは40以下、特に好ましくは30以下である。ヨウ素価を120以下とすることにより、耐熱性の向上が可能となる。
本発明の摩擦材用ラテックスを構成する、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのポリマームーニー粘度(ML1+4、100℃)は、好ましくは10〜200、より好ましくは15〜150、さらに好ましくは15〜100、特に好ましくは30〜70である。ポリマームーニー粘度を上記範囲とすることにより、機械特性を良好なものとしながら、加工性を向上させることが可能となる。
また、本発明の摩擦材用ラテックスを構成する、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムにおけるカルボキシル基の含有量、すなわち、カルボキシル基含有ニトリルゴム100g当たりのカルボキシル基のモル数は、好ましくは5×10−4〜5×10−1ephr、より好ましくは1×10−3〜1×10−1ephr、特に好ましくは5×10−3〜6×10−2ephrである。カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのカルボキシル基含有量を上記範囲とすることにより、基材に対する接着性を良好なものとすることができる。
本発明の摩擦材用ラテックスは、上述したカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムからなるゴム粒子を含有するものであり、該ゴム粒子の体積積算90%粒子径(d90)と、体積積算50%粒子径(d50)との差Δd(Δd=d90−d50)が、0.0240μm以上である。体積積算90%粒子径(d90)と、体積積算50%粒子径(d50)との差Δd(Δd=d90−d50)を、0.0240μm以上とすることにより、熱硬化性樹脂との相溶性を高くすることができ、熱硬化性樹脂と混合し、摩擦材用ラテックス組成物とし、これを基材に付着させて摩擦材を得た際における、得られる摩擦材の耐熱性および摩擦特性を優れたものとすることができる。
本発明において、摩擦材用ラテックスを構成するゴム粒子の体積積算90%粒子径(d90)と、体積積算50%粒子径(d50)との差Δd(Δd=d90−d50)は、摩擦材用ラテックスについて、光散乱回折粒径測定装置などを用いて、体積積算50%粒子径(d50)と、体積積算90%粒子径(d90)とを測定し、これらの差Δdを算出することにより得ることができる。本発明の摩擦材用ラテックスは、これらの差Δdが、0.0240μm以上であり、好ましくは0.0260μm以上、より好ましくは0.0280μm以上である。また、差Δdの上限は特に限定されないが、好ましくは2.0μm以下、より好ましくは1.1μm以下である。差Δdが、0.0240μm未満であると、熱硬化性樹脂との相溶性が低くなり、熱硬化性樹脂と混合し、摩擦材用ラテックス組成物とし、これを基材に付着させて摩擦材を得た際に、得られる摩擦材の耐熱性および摩擦特性が悪化してしまうこととなる。
なお、本発明の摩擦材用ラテックスは、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムからなるゴム粒子の体積積算90%粒子径(d90)と、体積積算50%粒子径(d50)との差Δd(Δd=d90−d50)が上記範囲にあるものであればよいが、得られる摩擦材の耐熱性および摩擦特性をより高めることができるという観点より、体積積算90%粒子径(d90)は、Δd(Δd=d90−d50)が上記範囲にある条件において、好ましくは0.05〜10μmであり、より好ましくは0.06〜5μmであり、体積積算50%粒子径(d50)は、Δd(Δd=d90−d50)が上記範囲にある条件において、好ましくは0.04〜8μmであり、より好ましくは0.05〜4μmである。
本発明において、本発明の摩擦材用ラテックスを構成する、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムからなるゴム粒子の体積積算90%粒子径(d90)と、体積積算50%粒子径(d50)との差Δd(Δd=d90−d50)を上記範囲とする方法としては、特に限定されないが、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムの組成を調整する方法や、摩擦材用ラテックスを構成するカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムの重合条件を調整する方法などが挙げられる。たとえば、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムを重合する際における、重合転化率を、好ましくは60〜95%、より好ましくは75〜93%、特に好ましくは75%〜87%、に制御する方法や、pH調整剤などを用いて、水素添加反応時におけるpHを、好ましくは4〜8の範囲、より好ましくは5〜7.5の範囲に制御する方法、水素添加後のpHを7.0〜11.5に制御する方法、重合時に用いる乳化剤量を制御する方法、製造時における転送乳化条件を調整する方法などが挙げられるが、これらの方法に特に限定されるものではない。
また、本発明の摩擦材用ラテックスは、pHが7.0〜11.5の範囲であることが好ましく、7.5〜11.0の範囲であることがより好ましく、7.5〜9.4の範囲であることが特に好ましい。pHを上記範囲とすることで、熱硬化性樹脂との相溶性をより高めることができ、これにより、得られる摩擦材を、耐熱性および摩擦特性により優れたものとすることができる。
本発明の摩擦材用ラテックスの製造方法は、特に限定されないが、上述した単量体を共重合し、必要に応じて、得られる共重合体中の炭素−炭素二重結合を水素化することによって得られる。重合方法は、特に限定されず公知の乳化重合法や溶液重合法によればよいが、工業的生産性の観点から乳化重合法が好ましい。乳化重合に際しては、乳化剤、重合開始剤、分子量調整剤に加えて、通常用いられる重合副資材を使用することができる。
乳化剤としては、特に限定されないが、たとえば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等の非イオン性乳化剤;ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸及びリノレン酸等の脂肪酸の塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン性乳化剤;α,β−不飽和カルボン酸のスルホエステル、α,β−不飽和カルボン酸のサルフェートエステル、スルホアルキルアリールエーテル等の共重合性乳化剤;などが挙げられる。乳化剤の添加量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。
重合開始剤としては、ラジカル開始剤であれば特に限定されないが、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物;等を挙げることができる。これらの重合開始剤は、単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤としては、無機または有機の過酸化物が好ましい。重合開始剤として過酸化物を用いる場合には、重亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄等の還元剤と組み合わせて、レドックス系重合開始剤として使用することもできる。重合開始剤の添加量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは0.01〜2重量部である。
分子量調整剤としては、特に限定されないが、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、塩化メチレン、臭化メチレン等のハロゲン化炭化水素;α−メチルスチレンダイマー;テトラエチルチウラムダイサルファイド、ジペンタメチレンチウラムダイサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンダイサルファイド等の含硫黄化合物等が挙げられる。これらは単独で、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、メルカプタン類が好ましく、t−ドデシルメルカプタンがより好ましい。
乳化重合の媒体には、通常、水が使用される。水の量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは80〜500重量部、より好ましくは80〜300重量部である。
乳化重合に際しては、さらに、必要に応じて安定剤、分散剤、pH調整剤、脱酸素剤、粒子径調整剤等の重合副資材を用いることができる。これらを用いる場合においては、その種類、使用量とも特に限定されない。
乳化重合における重合転化率は、得られる摩擦材用ラテックスを構成する、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムからなるゴム粒子の体積積算90%粒子径(d90)と、体積積算50%粒子径(d50)との差Δd(Δd=d90−d50)を上記範囲に制御できるという点より、60〜95%の範囲とすることが好ましく、75〜93%の範囲とすることがより好ましい。
また、本発明においては、得られた共重合体について、必要に応じて、共重合体の水素化(水素添加反応)を行ってもよい。水素添加は公知の方法によればよく、乳化重合で得られた共重合体のラテックスを凝固した後、油層で水素添加する油層水素添加法や、得られた共重合体のラテックスをそのまま水素添加する水層水素添加法などが挙げられる。
水層水素添加法においては、好適には上記乳化重合により調製した共重合体のラテックスに、必要に応じて水を加えて希釈し、水素添加反応を行う。水層水素添加法は、水素化触媒存在下の反応系に水素を供給して水素化する水層直接水素添加法と、酸化剤、還元剤および活性剤の存在下で還元して水素化する水層間接水素添加法とが挙げられるが、これらの中でも、水層直接水素添加法が好ましい。
水層直接水素添加法において、水層における共重合体の濃度(ラテックス状態での濃度)は、凝集を防止するため40重量%以下であることが好ましい。水素化触媒は、水で分解しにくい化合物であれば特に限定されない。その具体例として、パラジウム触媒では、ギ酸、プロピオン酸、ラウリン酸、コハク酸、オレイン酸、フタル酸などのカルボン酸のパラジウム塩;塩化パラジウム、ジクロロ(シクロオクタジエン)パラジウム、ジクロロ(ノルボルナジエン)パラジウム、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸アンモニウムなどのパラジウム塩素化物;ヨウ化パラジウムなどのヨウ素化物;硫酸パラジウム・二水和物などが挙げられる。これらの中でもカルボン酸のパラジウム塩、ジクロロ(ノルボルナジエン)パラジウムおよびヘキサクロロパラジウム(IV)酸アンモニウムが特に好ましい。水素化触媒の使用量は、適宜定めればよいが、重合により得られた共重合体に対し、好ましくは5〜6000重量ppm、より好ましくは10〜4000重量ppmである。
水層直接水素添加法においては、水素添加反応終了後、ラテックス中の水素化触媒を除去する。その方法として、たとえば、活性炭、イオン交換樹脂などの吸着剤を添加して攪拌下で水素化触媒を吸着させ、次いでラテックスをろ過または遠心分離する方法を採ることができる。水素化触媒を除去せずにラテックス中に残存させることも可能である。また、水素添加反応終了後、必要に応じて、pH調整剤などを添加することにより、ラテックスのpHを調整してもよい。
摩擦材用ラテックス組成物
本発明の摩擦材用ラテックス組成物は、上述した本発明の摩擦材用ラテックスと、熱硬化性樹脂とを含有してなるものである。
熱硬化性樹脂としては、加熱により硬化する樹脂であればよく、特に限定されないが、上述した本発明の摩擦材用ラテックスに対する相溶性の観点より、水溶性の熱硬化性樹脂が好ましく、たとえば、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのなかでも、本発明の作用効果をより顕著なものとすることができるという点より、フェノール樹脂またはエポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂としては、エポキシ基を有し、水溶性を呈する樹脂であればよく特に限定されず、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、α−ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂などを制限なく用いることができるが、これらのなかでも、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
フェノール樹脂としては、フェノール類とアルデヒド類とを、酸性触媒下または塩基性触媒下に、縮合した汎用のフェノール樹脂をいずれも用いることができる。
フェノール樹脂の調製に用いられるフェノール類としては、石炭酸、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、p−アルキルフェノールなどが好適に用いられ、それらの混合物も用いることができる。また、フェノール樹脂の調製に用いられるアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどが好適に用いられ、それらの混合物も用いることができる。
また、フェノール樹脂としては、レゾール型のフェノール樹脂、ノボラック型のフェノール樹脂のいずれをも使用可能であり、さらには、各種の変性フェノール樹脂を使用することもでき、これらは互いにブレンドして用いてもよい。さらに、用いるフェノール樹脂としては、フェノール類のアルデヒド類との縮合の程度、分子量、残存モノマーの残留率など、目的に応じて選択して使用すればよく、また、これらの物性が異なる種々のグレードのものが市販されているため、このような市販品を適宜使用してもよい。
なお、ここでいうフェノール樹脂とは、3次元架橋して硬化型フェノール樹脂となる前のいわゆるフェノール樹脂前駆体を含むものである。また、変性フェノール樹脂としては、各種熱可塑性樹脂で変性されたレゾール型のフェノール樹脂、またはノボラック型のフェノール樹脂が挙げられる。変性フェノール樹脂の変性に用いられる、熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、ニトリルゴム、イソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、アクリルゴム、エチレンアクリルゴムなどのエラストマーや、ポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、メチルメタクリレート系共重合体、ポリエステル樹脂、セルロースアセテート重合体、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
本発明の摩擦材用ラテックス組成物中における、熱硬化性樹脂の配合量は、摩擦材用ラテックス中に含有されるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム100重量部に対して、好ましくは40〜500重量部、より好ましくは50〜450重量部、さらに好ましくは60〜400重量部である。熱硬化性樹脂の配合量を上記範囲とすることにより、本発明の摩擦材用ラテックス組成物を基材に付着させて摩擦材を得た際に、得られる摩擦材の耐熱性および摩擦特性をより高めることができる。
また、本発明の摩擦材用ラテックス組成物は、さらに摩擦調整剤を含有していることが好ましい。摩擦調整剤としては、公知の炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、クレー、タルク、カーボンブラック、黒鉛、アルミナ、マイカ、螢石、ジルコニア、ヘマタイト、シリカ、硫化アンチモン、硫化鉄、硫化モリブデン、硫黄等の無機物の粉末、鉄、鉛、銅等の金属の粉末、カシューダスト、ゴムダスト、各種樹脂硬化物の粉末等の有機物の粉末、珪酸カルシウム短繊維などが使用される。これらのなかでも、摩擦特性をより向上させることができるという点より、カーボンブラックが好ましい。
本発明の摩擦材用ラテックス組成物中における、摩擦調整剤の配合量は、摩擦材用ラテックス中に含有されるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム100重量部に対して、好ましくは10〜1000重量部、より好ましくは20〜800重量部、さらに好ましくは30〜500重量部である。摩擦調整剤の配合量を上記範囲とすることにより、摩擦特性を適切に向上させることができる。
また、本発明の摩擦材用ラテックス組成物は、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテルなどの分散剤;グリコール類などの可撓化剤;界面活性剤;などをさらに含有していてもよい。
本発明の摩擦材用ラテックス組成物の調製方法は、特に限定されないが、たとえば、上述した本発明の摩擦材用ラテックスに、熱硬化性樹脂、および必要に応じて配合される摩擦調整剤等を混合することにより調製することできる。この際において、熱硬化性樹脂は、そのまま配合してもよいし、水に溶解あるいは分散させて、溶液あるいは分散液の状態で配合してもよい。
摩擦材
本発明の摩擦材は、上述した本発明の摩擦材用ラテックス組成物を、基材に付着させることにより得られるものである。
基材としては、特に限定されず、通常、繊維基材が用いられる。繊維基材としては、銅、ステンレス、真ちゅう、アラミド、カーボン、ガラス、チタン酸カリ、ロックウール、セラミック等の無機繊維または有機繊維などが挙げられる。
本発明の摩擦材の製造方法としては特に限定されないが、たとえば、基材を、上述した本発明の摩擦材用ラテックス組成物に浸漬させ、これにより、基材表面に本発明の摩擦材用ラテックス組成物を付着させ、必要に応じて乾燥させることにより製造することができる。また、この際において、本発明の摩擦材用ラテックス組成物に含有される熱硬化性樹脂の硬化を促進するために、乾燥を行った後に、必要に応じて加熱を行ってもよい。硬化のための加熱温度は、使用する熱硬化性樹脂の種類に応じて適宜選択すればよいが、通常、120〜240℃であり、加熱時間は、通常、30分〜8時間である。
本発明の摩擦材は、上述した本発明の摩擦材用ラテックスを含有する組成物を用いて得られるものであるため、耐熱性および摩擦特性に優れるものである。そのため、このような特性を活かし、自動車用、産業機械用のブレーキライニング、ディスクパッド、およびクラッチフェーシングなどの各種摩擦材として好適である。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」は、特に断りのない限り重量基準である。また、試験および評価は下記によった。
ヨウ素価
カルボキシル基含有(高飽和)ニトリルゴムのヨウ素価は、JIS K6235に準じて測定した。
アクリロニトリル単位の含有量測定
アクリロニトリル単位の含有割合は、JIS K6384に従い、ケルダール法により、カルボキシル基含有(高飽和)ニトリルゴム中の窒素含量を測定することにより算出した。
ラテックス中のゴム粒子の測定
カルボキシル基含有(高飽和)ニトリルゴムのラテックスを構成する、カルボキシル基含有(高飽和)ニトリルゴムのゴム粒子の体積平均粒子径の測定は、光散乱回折粒径測定装置(ベックマン・コールター(株)製LS−230)を用いて行った。そして、測定結果より、体積積算90%粒子径(d90)、および体積積算50%粒子径(d50)を求め、これらの結果を用いて、これらの差Δd(Δd=d90−d50)を演算した。
ラテックス中の金属量測定
カルボキシル基含有(高飽和)ニトリルゴムのラテックスを酸分解した後、ICP−AES法により定量分析を行うことで、ラテックス中の金属量を測定した。なお、測定には、ICP発光分析計(「Optima4300DV」、パーキンエルマー社製)を使用した。
摩擦安定性試験
摩擦材様試験片について、ヘイドン式表面性測定機(商品名「HEIDON−38」、新東科学社製)を用いて、表面摩擦抵抗の測定を行なった。なお、測定は、測定治具として、ボール圧子(SUSφ10)を用いて行い、試験加重200g(垂直荷重N)、試験速度1000mm/min、移動距離15.0mm、往復回数5回の条件にて試験片を水平に移動させた際に、ヘイドン式表面性測定機の動歪みアンプにかかる摩擦力F(単位:gf)を計測し、下記式に基づいて、摩擦係数μを計算した。
μ=F/N
本試験では、試験片が静止している状態から、試験速度1000mm/minの一定速度となるまでの間、連続的に摩擦係数μの値を記録し、この間における摩擦係数μの最大値を「静摩擦係数μs」、摩擦係数μが一定状態となった時の値を「動摩擦係数μk」とした。
また、本試験においては、150℃、96時間の条件で熱老化させた際の熱老化前後で上記摩擦係数の測定を行い、下記式にしたがい、静摩擦係数μsの変化量Δμs、および動摩擦係数μkの変化量Δμkを算出した。変化量Δμs、Δμkが小さいほど、耐熱性および摩擦特性に優れると評価することができる。なお、摩擦安定性試験は、後述する実施例1〜4、比較例1〜5について行った。
静摩擦係数の変化量Δμs=熱老化前の静摩擦係数μs−熱老化後の静摩擦係数μs
動摩擦係数の変化量Δμk=熱老化前の動摩擦係数μk−熱老化後の動摩擦係数μk
硬度安定性試験
摩擦材様試験片について、JIS K3253−4に準拠して、測定装置として、Micro−IRHD SYSTEM(Hildebrand社製)を用いて、150℃、96時間の条件で熱老化させた際の熱老化前後における硬度を測定することで、熱老化による硬度変化量を測定した。なお、熱老化による硬度変化量は、下記式にしたがって求めた絶対値である。硬度変化量が小さいほど、耐熱性に優れると評価することができる。なお、硬度安定性試験は、後述する実施例1〜4、比較例1〜5について行った。
硬度変化量=|熱老化前の硬度−熱老化後の硬度|
硬度変化バラツキ測定
上記した硬度安定性試験と同様の試験を、試験片の3か所について行い、得られた3か所の硬度変化量の測定結果のうちの最大値と、最小値との差を算出し、これを硬度変化バラツキとした。硬度変化バラツキが小さいほど、ムラがなく安定性に優れると評価することができる。なお、硬度変化バラツキの測定は、後述する実施例1〜4、比較例1〜5について行った。
薄膜形成性試験
カルボキシル基含有(高飽和)ニトリルゴムのラテックスと、エポキシ樹脂とを混合することにより得られた相溶性試験用組成物を用いて、solvent−cast法により、ガラス板の上に、相溶性試験用組成物の薄膜を形成した。そして、得られた薄膜の外観を観察した後、得られた薄膜を引っ張ることで、薄膜の保持力を確認し、以下の基準で評価を行った。なお、カルボキシル基含有(高飽和)ニトリルゴムのラテックスと、エポキシ樹脂との相溶性が高いほど、得られる薄膜は良好となり、また、引張強度も十分なものとなるため、下記の評価点数が高いほど、カルボキシル基含有(高飽和)ニトリルゴムのラテックスと、エポキシ樹脂との相溶性が高いものと判断できる。なお、薄膜形成性試験は、後述する実施例1〜4、比較例1〜5について行った。
3点 得られた薄膜の形成性が良好で、かつ、引っ張り保持力も良好
2点 薄膜の形成が可能だが、引っ張り保持力が低い
1点 薄膜の形成が可能だが、引っ張り保持力が無い
0点 薄膜の形成が不能
なお、上記評価のうち、引っ張り保持力が「良好」とは、引っ張った時に十分な弾力を示し、容易には破断しない状態を意味する。また、引っ張り保持力が「低い」とは、引っ張った時に、容易に破断してしまう状態を意味し、引っ張り保持力が「無い」とは、引っ張った時に、即座に破断してしまう状態を意味する。
線膨張係数
フィルム状摩擦材様試験片を用いて、JIS K 7197に従って、セイコーインスツル社製「TMA300」を用いて、線膨張係数を測定した。なお、線膨張係数の測定は、後述する実施例5〜8、比較例6〜9について行った。
20%応力変化率の測定(耐熱老化性)
フィルム状摩擦材様試験片を、JIS K6257(ノーマルオーブン法)に従い、150℃において70時間熱負荷をかけた場合における、負荷印加前後の20%引張応力を次の方法で測定した。フィルム状摩擦材様試験片を、変形3号ダンベルで打ち抜いて引張試験用のサンプルを作製した。この引張試験用のサンプルを用いて、JIS K6251に準拠して、引張速度200mm/minで、引張強度の測定を行い、得られた引張強度の測定結果より、20%引張応力の変化率を求めた。なお、20%応力変化率の測定は、後述する実施例5〜8、比較例6〜9について行った。
分散性評価
フィルム状摩擦材様試験片を、目視で観察し、3cm四方以上の海島様の色ムラが発生しているもの「不良」、発生していないものを「良好」として、分散性の評価を行った。分散性の評価が良好であるものは、カルボキシル基含有(高飽和)ニトリルゴムのラテックスと、フェノール樹脂との相溶性が高いものと判断できる。なお、分散性評価試験は、後述する実施例5〜8、比較例6〜9について行った。
製造例1(カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−1)の製造)
反応器に、イオン交換水180部、濃度10重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液25部、アクリロニトリル35部、メタクリル酸6部、およびt−ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)0.5部を、この順に仕込み、内部の気体を窒素で3回置換した後、1,3−ブタジエン59部を仕込んだ。反応器を5℃に保ち、クメンハイドロパーオキサイド(重合開始剤)0.1部、還元剤、およびキレート剤を適量仕込み、攪拌しながら重合反応を継続した。次いで、濃度10重量%のハイドロキノン水溶液(重合停止剤)0.1部を加えて重合転化率85.0%で重合反応を停止した後、水温60℃のロータリーエバポレータを用いて残留単量体を除去し、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(固形分濃度約30重量%)を得た。
次いで、ラテックスに含有されるゴムの乾燥重量に対して、パラジウム量が2000重量ppmになるように、オートクレーブ中に、ラテックスおよびパラジウム触媒(1重量%酢酸パラジウムアセトン溶液と等重量のイオン交換水を混合した溶液)とpH調整剤とを添加して、水素圧3MPa、温度50℃で6時間水素添加反応を行い、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−1)を得た。なお、本製造例においては、得られる水素添加後のラテックスのpHが9となるように、pH調整剤の添加量を調整した。
そして、得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−1)のうちの一部を取り出し、2倍容量のメタノールを加えて凝固した後、ろ過して固形物(クラム)を取り出し、これを60℃で12時間真空乾燥することにより、固形状のカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a−1)を得た。得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a−1)の組成は、アクリロニトリル単位34.0重量%、ブタジエン単位(飽和化されている部分を含む)60.6重量%、メタクリル酸単位5.4重量%であり、ヨウ素価は10であった。また、上記方法にしたがって測定した体積積算90%粒子径(d90)、体積積算50%粒子径(d50)、および、これらの差Δd(Δd=d90−d50)を表1に示す。
製造例2(カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−2)の製造)
反応器に、イオン交換水180部、濃度10重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液25部、アクリロニトリル39部、メタクリル酸5部およびt−ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)0.5部を、この順に仕込み、内部の気体を窒素で3回置換した後、1,3−ブタジエン56部を仕込んだ。反応器を5℃に保ち、クメンハイドロパーオキサイド(重合開始剤)0.1部、還元剤、およびキレート剤適量を仕込み、攪拌しながら重合反応を継続した。次いで、濃度10重量%のハイドロキノン水溶液(重合停止剤)0.1部を加えて重合転化率86.2%で重合反応を停止した後、水温60℃のロータリーエバポレータを用いて残留単量体を除去し、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(固形分濃度約30重量%)を得た。
次いで、ラテックスに含有されるゴムの乾燥重量に対して、パラジウム量が1000重量ppmになるように、オートクレーブ中に、ラテックスおよびパラジウム触媒(1重量%酢酸パラジウムアセトン溶液と等重量のイオン交換水を混合した溶液)とpH調整剤を添加して、水素圧3MPa、温度50℃で6時間水素添加反応を行い、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−2)を得た。なお、本製造例においては、得られる水素添加後のラテックスのpHが8となるように、pH調整剤の添加量を調整した。
そして、得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−2)のうちの一部を取り出し、2倍容量のメタノールを加えて凝固した後、ろ過して固形物(クラム)を取り出し、これを60℃で12時間真空乾燥することにより、固形状のカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a−2)を得た。得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a−2)の組成は、アクリロニトリル単位38.2重量%、ブタジエン単位(飽和化されている部分を含む)56.4重量%、メタクリル酸単位5.4重量%であり、ヨウ素価は50であった。また、上記方法にしたがって測定した体積積算90%粒子径(d90)、体積積算50%粒子径(d50)、および、これらの差Δd(Δd=d90−d50)を表1に示す。
製造例3(カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−3)の製造)
反応器に、イオン交換水180部、濃度10重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液25部、アクリロニトリル41部、メタクリル酸4部およびt−ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)0.5部を、この順に仕込み、内部の気体を窒素で3回置換した後、1,3−ブタジエン55部を仕込んだ。反応器を10℃に保ち、クメンハイドロパーオキサイド(重合開始剤)0.1部、還元剤、およびキレート剤適量を仕込み、攪拌しながら重合反応を継続した。次いで、濃度10重量%のハイドロキノン水溶液(重合停止剤)0.1部を加えて重合転化率88.9%で重合反応を停止した後、水温60℃のロータリーエバポレータを用いて残留単量体を除去し、ニトリルゴムのラテックス(固形分濃度約30重量%)を得た。
次いで、ラテックスに含有されるゴムの乾燥重量に対して、パラジウム量が1500重量ppmになるように、オートクレーブ中に、ラテックスおよびパラジウム触媒(1重量%酢酸パラジウムアセトン溶液と等重量のイオン交換水を混合した溶液)とpH調整剤を添加して、水素圧3MPa、温度50℃で6時間水素添加反応を行い、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−3)を得た。なお、本製造例においては、得られる水素添加後のラテックスのpHが9となるように、pH調整剤の添加量を調整した。
そして、得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−3)のうちの一部を取り出し、2倍容量のメタノールを加えて凝固した後、ろ過して固形物(クラム)を取り出し、これを60℃で12時間真空乾燥することにより、固形状のカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a−3)を得た。得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a−3)の組成は、アクリロニトリル単位40.9重量%、ブタジエン単位(飽和化されている部分を含む)55.2重量%、メタクリル酸単位3.9重量%であり、ヨウ素価は23であった。また、上記方法にしたがって測定した体積積算90%粒子径(d90)、体積積算50%粒子径(d50)、および、これらの差Δd(Δd=d90−d50)を表1に示す。
製造例4(カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−4)の製造)
反応器に、イオン交換水180部、濃度10重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液25部、アクリロニトリル21部、メタクリル酸6部およびt−ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)0.3部を、この順に仕込み、内部の気体を窒素で3回置換した後、1,3−ブタジエン73部を仕込んだ。反応器を10℃に保ち、クメンハイドロパーオキサイド(重合開始剤)0.1部、還元剤、およびキレート剤適量を仕込み、攪拌しながら重合反応を継続した。次いで、濃度10重量%のハイドロキノン水溶液(重合停止剤)0.1部を加えて重合転化率86.6%で重合反応を停止した後、水温60℃のロータリーエバポレータを用いて残留単量体を除去し、ニトリルゴムのラテックス(固形分濃度約30重量%)を得た。
次いで、ラテックスに含有されるゴムの乾燥重量に対して、パラジウム量が2100重量ppmになるように、オートクレーブ中に、ラテックスおよびパラジウム触媒(1重量%酢酸パラジウムアセトン溶液と等重量のイオン交換水を混合した溶液)とpH調整剤を添加して、水素圧3MPa、温度50℃で6時間水素添加反応を行い、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−4)を得た。なお、本製造例においては、得られる水素添加後のラテックスのpHが8となるように、pH調整剤の添加量を調整した。
そして、得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−4)のうちの一部を取り出し、2倍容量のメタノールを加えて凝固した後、ろ過して固形物(クラム)を取り出し、これを60℃で12時間真空乾燥することにより、固形状のカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a−4)を得た。得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a−4)の組成は、アクリロニトリル単位20.6重量%、ブタジエン単位(飽和化されている部分を含む)73.0重量%、メタクリル酸単位6.4重量%であり、ヨウ素価は20であった。また、上記方法にしたがって測定した体積積算90%粒子径(d90)、体積積算50%粒子径(d50)、および、これらの差Δd(Δd=d90−d50)を表1に示す。
製造例5(カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(A−5)の製造)
反応器に、イオン交換水180部、濃度10重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液25部、アクリロニトリル42部、メタクリル酸6部およびt−ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)0.5部を、この順に仕込み、内部の気体を窒素で3回置換した後、1,3−ブタジエン52部を仕込んだ。反応器を10℃に保ち、クメンハイドロパーオキサイド(重合開始剤)0.1部、還元剤、およびキレート剤適量を仕込み、攪拌しながら重合反応を継続した。次いで、濃度10重量%のハイドロキノン水溶液(重合停止剤)0.1部を加えて重合転化率95.5%で重合反応を停止した後、水温60℃のロータリーエバポレータを用いて残留単量体を除去し、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(A−5)(固形分濃度約30重量%)を得た。また、得られた水素添加後のラテックスのpHは10であった。
そして、得られたカルボキシル基含有ニトリルゴム(A−5)のラテックスのうちの一部を取り出し、2倍容量のメタノールを加えて凝固した後、ろ過して固形物(クラム)を取り出し、これを60℃で12時間真空乾燥することにより、固形状のカルボキシル基含有ニトリルゴム(a−5)を得た。得られたカルボキシル基含有ニトリルゴム(a−5)の組成は、アクリロニトリル単位41.3重量%、ブタジエン単位(飽和化されている部分を含む)52.8重量%、メタクリル酸単位5.9重量%であり、ヨウ素価は253であった。また、上記方法にしたがって測定した体積積算90%粒子径(d90)、体積積算50%粒子径(d50)、および、これらの差Δd(Δd=d90−d50)を表1に示す。
製造例6(カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−6)の製造)
反応器に、イオン交換水180部、濃度10重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液25部、アクリロニトリル31部、メタクリル酸5部およびt−ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)0.3部を、この順に仕込み、内部の気体を窒素で3回置換した後、1,3−ブタジエン64部を仕込んだ。反応器を10℃に保ち、クメンハイドロパーオキサイド(重合開始剤)0.1部、還元剤、およびキレート剤適量を仕込み、攪拌しながら重合反応を継続した。次いで、濃度10重量%のハイドロキノン水溶液(重合停止剤)0.1部を加えて重合転化率95.3%で重合反応を停止した後、水温60℃のロータリーエバポレータを用いて残留単量体を除去し、ニトリルゴムのラテックス(固形分濃度約30重量%)を得た。
次いで、ラテックスに含有されるゴムの乾燥重量に対して、パラジウム量が1500重量ppmになるように、オートクレーブ中に、ラテックスおよびパラジウム触媒(1重量%酢酸パラジウムアセトン溶液と等重量のイオン交換水を混合した溶液)とpH調整剤を添加して、水素圧3MPa、温度50℃で6時間水素添加反応を行い、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−6)を得た。なお、本製造例においては、得られる水素添加後のラテックスのpHが12となるように、pH調整剤の添加量を調整した。
そして、得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−6)のうちの一部を取り出し、2倍容量のメタノールを加えて凝固した後、ろ過して固形物(クラム)を取り出し、これを60℃で12時間真空乾燥することにより、固形状のカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a−6)を得た。得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a−6)の組成は、アクリロニトリル単位30.7重量%、ブタジエン単位(飽和化されている部分を含む)64.4重量%、メタクリル酸単位4.9重量%であり、ヨウ素価は20であった。また、上記方法にしたがって測定した体積積算90%粒子径(d90)、体積積算50%粒子径(d50)、および、これらの差Δd(Δd=d90−d50)を表1に示す。
製造例7(カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−7)の製造)
反応器に、イオン交換水180部、濃度10重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液25部、アクリロニトリル9部、メタクリル酸7部およびt−ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)0.45部を、この順に仕込み、内部の気体を窒素で3回置換した後、1,3−ブタジエン84部を仕込んだ。反応器を10℃に保ち、クメンハイドロパーオキサイド(重合開始剤)0.1部、還元剤、およびキレート剤適量を仕込み、攪拌しながら重合反応を継続した。次いで、濃度10重量%のハイドロキノン水溶液(重合停止剤)0.1部を加えて重合転化率96.2%で重合反応を停止した後、水温60℃のロータリーエバポレータを用いて残留単量体を除去し、ニトリルゴムのラテックス(固形分濃度約30重量%)を得た。
次いで、ラテックスに含有されるゴムの乾燥重量に対して、パラジウム量が2000重量ppmになるように、オートクレーブ中に、ラテックスおよびパラジウム触媒(1重量%酢酸パラジウムアセトン溶液と等重量のイオン交換水を混合した溶液)とpH調整剤を添加して、水素圧3MPa、温度50℃で6時間水素添加反応を行い、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−7)を得た。なお、本製造例においては、得られる水素添加後のラテックスのpHが8となるように、pH調整剤の添加量を調整した。
そして、得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−7)のうちの一部を取り出し、2倍容量のメタノールを加えて凝固した後、ろ過して固形物(クラム)を取り出し、これを60℃で12時間真空乾燥することにより、固形状のカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a−7)を得た。得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a−7)の組成は、アクリロニトリル単位9.0重量%、ブタジエン単位(飽和化されている部分を含む)84.4重量%、メタクリル酸単位6.6重量%であり、ヨウ素価は15であった。また、上記方法にしたがって測定した体積積算90%粒子径(d90)、体積積算50%粒子径(d50)、および、これらの差Δd(Δd=d90−d50)を表1に示す。
製造例8(カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−8)の製造)
反応器に、イオン交換水180部、濃度10重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液25部、アクリロニトリル32部、メタクリル酸5部およびt−ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)0.45部を、この順に仕込み、内部の気体を窒素で3回置換した後、1,3−ブタジエン63部を仕込んだ。反応器を10℃に保ち、クメンハイドロパーオキサイド(重合開始剤)0.1部、還元剤、およびキレート剤適量を仕込み、攪拌しながら重合反応を継続した。次いで、濃度10重量%のハイドロキノン水溶液(重合停止剤)0.1部を加えて重合転化率84.0%で重合反応を停止した後、水温60℃のロータリーエバポレータを用いて残留単量体を除去し、ニトリルゴムのラテックス(固形分濃度約30重量%)を得た。
次いで、ラテックスに含有されるゴムの乾燥重量に対して、パラジウム量が1500重量ppmになるように、オートクレーブ中に、ラテックスおよびパラジウム触媒(1重量%酢酸パラジウムアセトン溶液と等重量のイオン交換水を混合した溶液)とpH調整剤を添加して、水素圧3MPa、温度50℃で6時間水素添加反応を行い、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−8)を得た。なお、本製造例においては、得られる水素添加後のラテックスのpHが12となるように、pH調整剤の添加量を調整した。
そして、得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−8)のうちの一部を取り出し、2倍容量のメタノールを加えて凝固した後、ろ過して固形物(クラム)を取り出し、これを60℃で12時間真空乾燥することにより、固形状のカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a−8)を得た。得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a−8)の組成は、アクリロニトリル単位31.3重量%、ブタジエン単位(飽和化されている部分を含む)63.9重量%、メタクリル酸単位4.8重量%であり、ヨウ素価は35であった。また、上記方法にしたがって測定した体積積算90%粒子径(d90)、体積積算50%粒子径(d50)、および、これらの差Δd(Δd=d90−d50)を表1に示す。
実施例1
ガラス容器に、製造例1で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a−1)のラテックス100部(固形分量換算)、イオン交換水1部、カーボンブラック(商品名「Aqua−Black(R)162」 東海カーボン社製)20部(固形分換算)、およびエポキシ樹脂(商品名「エピコート5003W55」 三菱化学社製)100部(固形分換算)を配合し、混合することで、ラテックス組成物を得た。そして、得られたラテックス組成物に7cm×4cmのアラミド繊維基材(平織、厚み0.7mm)を25℃、1分間含浸させ、ラテックス組成物を付着させ110℃、10分間の条件で、送風乾燥機で乾燥し、その後160℃、30分の熱処理を行い硬化させることで、ラテックス組成物の硬化物の付着した摩擦材様試験片を得た。そして、得られた試験片を用いて、上記方法にしたがい、摩擦安定性試験、硬度安定性試験、および、硬度変化バラツキ測定を行った。結果を表1に示す。
また、上記とは別に、ガラス容器に、製造例1で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−1)100部(固形分量換算)、およびエポキシ樹脂(商品名「エピコート5003W55」 三菱化学社製)100部(固形分量換算)を配合し、混合することで相溶性試験用組成物を得た。そして、得られた相溶性試験用組成物を用いて、上記方法にしたがい、薄膜形成性試験を行った。結果を表1に示す。
実施例2〜4
製造例1で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−1)に代えて、製造例2で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−2)(実施例2)、製造例3で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−3)(実施例3)、および、製造例4で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−4)(実施例4)を使用した以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物および相溶性試験用組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
比較例1〜4
製造例1で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−1)に代えて、製造例5で得られたカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(A−5)(比較例1)、製造例6で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−6)(比較例2)、製造例7で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−7)(比較例3)、および、製造例8で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−8)(比較例4)を使用した以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物および相溶性試験用組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
比較例5
製造例1で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−1)を配合しなかった以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物を得て、同様に評価を行った。また、比較例5においては、エポキシ樹脂(商品名「エピコート5003W55」 三菱化学社製)100部(固形分量換算)を、相溶性試験用組成物として、上記方法に従って、薄膜形成性試験を行った。結果を表1に示す。
Figure 0006662300
表1に示すように、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を10〜60重量%の割合で含有し、ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムからなるゴム粒子を含有し、ゴム粒子の体積積算90%粒子径(d90)と、体積積算50%粒子径(d50)との差Δd(Δd=d90−d50)が、0.0240μm以上であるラッテクスを用いた場合には、得られる摩擦材は、熱老化前後における、静摩擦係数の変化量Δμsおよび動摩擦係数の変化量Δμkがともに小さく、熱老化前後の硬度変化量および硬度変化バラツキが小さく、安定性が高く、耐熱性および摩擦特性に優れるものであった(実施例1〜4)。また、上記条件を満足するラテックスを、エポキシ樹脂と混合して組成物を得て、これを用いて得られる薄膜は、外観が良好であり、薄膜形成性に優れるものであり、この結果から、上記条件を満足するラテックスは、エポキシ樹脂との相溶性に優れたものであることが確認できる。
一方、ラテックス中に含まれるカルボキシル基含有ニトリルゴムのヨウ素価が高すぎる場合には、熱老化前後における、静摩擦係数の変化量Δμsおよび動摩擦係数の変化量Δμkが大きくなり、さらには、熱老化前後の硬度変化量も大きくなる結果となり、耐熱性に劣るものであった(比較例1)。
ゴム粒子の体積積算90%粒子径(d90)と、体積積算50%粒子径(d50)との差Δd(Δd=d90−d50)が、0.0240μm未満であるラテックスを用いた場合には、静摩擦係数の変化量Δμsが大きくなり、さらには、熱老化前後の硬度変化バラツキも大きくなり、耐熱性に劣るものであった(比較例2,4)。
また、ラテックス中に含まれるカルボキシル基含有ニトリルゴムのα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量が少なすぎる場合には、静摩擦係数の変化量Δμsが大きくなり、熱老化前後の硬度変化量および硬度変化バラツキも大きくなり、耐熱性に劣るものであった(比較例3)。
さらに、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスを使用しなかった場合には、摩擦係数の変化量Δμsおよび動摩擦係数の変化量Δμkが顕著に大きくなり、さらには、熱老化前後の硬度変化量および硬度変化バラツキも顕著に大きくなり、耐熱性に著しく劣るものであった(比較例5)。
製造例9(カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−9)の製造)
反応器に、イオン交換水180部、濃度10重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液25部、アクリロニトリル21部、メタクリル酸8部、およびt−ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)0.5部を、この順に仕込み、内部の気体を窒素で3回置換した後、1,3−ブタジエン71部を仕込んだ。反応器を5℃に保ち、クメンハイドロパーオキサイド(重合開始剤)0.1部、還元剤、およびキレート剤を適量仕込み、攪拌しながら重合反応を継続した。次いで、濃度10重量%のハイドロキノン水溶液(重合停止剤)0.1部を加えて重合転化率85.0%で重合反応を停止した後、水温60℃のロータリーエバポレータを用いて残留単量体を除去し、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(固形分濃度約30重量%)を得た。
次いで、ラテックスに含有されるゴムの乾燥重量に対して、パラジウム量が1500重量ppmになるように、オートクレーブ中に、ラテックスおよびパラジウム触媒(1重量%酢酸パラジウムアセトン溶液と等重量のイオン交換水を混合した溶液)とpH調整剤とを添加して、水素圧3MPa、温度50℃で水素添加反応を行い、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−9)を得た。なお、本製造例においては、得られる水素添加後のラテックスのpHが8となるように、pH調整剤の添加量を調整した。また、上記方法にしたがって測定したラテックスの金属量を表2に示す。
そして、得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−9)のうちの一部を取り出し、2倍容量のメタノールを加えて凝固した後、ろ過して固形物(クラム)を取り出し、これを60℃で12時間真空乾燥することにより、固形状のカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a−9)を得た。得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a−9)の組成を表2に示す。また、上記方法にしたがって測定した体積積算90%粒子径(d90)、体積積算50%粒子径(d50)、および、これらの差Δd(Δd=d90−d50)を表2に示す。
製造例10(カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−10)〜(A−12)の製造)
アクリロニトリル、メタクリル酸、および1,3−ブタジエンの使用量、水素化条件、pH調整条件を変更した以外は、製造例9と同様にして、表2に示す組成、ヨウ素価およびpHを有するカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−10)〜(A−12)を得た。また、表2には、上記方法にしたがって測定した体積積算90%粒子径(d90)、体積積算50%粒子径(d50)、および、これらの差Δd(Δd=d90−d50)についても示した。
製造例11(カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−13)、(A−14)の製造)
アクリロニトリル、メタクリル酸、および1,3−ブタジエンの使用量、およびpH調整条件を変更するとともに、水素添加反応を行わなかった以外は、製造例9と同様にして、表2に示す組成、ヨウ素価およびpHを有するカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−13)、(A−14)を得た。また、表2には、上記方法にしたがって測定した体積積算90%粒子径(d90)、体積積算50%粒子径(d50)、および、これらの差Δd(Δd=d90−d50)についても示した。
製造例12(カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−15)、(A−16)の製造)
アクリロニトリル、メタクリル酸、および1,3−ブタジエンの使用量、水素化条件、pH調整条件を変更した以外は、製造例9と同様にして、表2に示す組成、ヨウ素価およびpHを有するカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(A−15)、(A−16)を得た。また、表2には、上記方法にしたがって測定した体積積算90%粒子径(d90)、体積積算50%粒子径(d50)、および、これらの差Δd(Δd=d90−d50)についても示した。
実施例5
耐熱バットに、製造例9で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムラテックス(A−9)100部(固形分量換算)、フェノール樹脂(商品名「スミライトレジンPR−14170」 住友ベークライト社製)100部(固形分換算)を混合することで、ラテックス組成物を得た。そして、得られたラテックス組成物を1晩風乾させた後、110℃、10分間の条件で、送風乾燥機で乾燥した。その後5mm厚の金型枠を用いて160℃、30分でプレスを行い硬化させることで、ラテックス組成物のフィルム状摩擦材様試験片を得た。そして、得られたフィルム状摩擦材様試験片を用いて、上記方法にしたがい、線膨張係数、20%応力変化率、分散性評価、引張試験の各測定・評価を行った。結果を表2に示す。
実施例6
製造例9で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムラテックス(A−9)に代えて、製造例10で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムラテックス(A−10)を使用するとともに、フェノール樹脂の配合量を100部から250部に変更した以外は、実施例5と同様に、ラテックス組成物およびフィルム状摩擦材様試験片を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
実施例7
製造例9で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムラテックス(A−9)に代えて、製造例10で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムラテックス(A−11)を使用するとともに、フェノール樹脂の配合量を100部から250部に変更した以外は、実施例5と同様に、ラテックス組成物およびフィルム状摩擦材様試験片を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
実施例8
製造例9で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムラテックス(A−9)に代えて、製造例10で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムラテックス(A−12)を使用した以外は、実施例5と同様に、ラテックス組成物およびフィルム状摩擦材様試験片を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
比較例6
製造例9で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムラテックス(A−9)に代えて、製造例11で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムラテックス(A−13)を使用するとともに、フェノール樹脂の配合量を100部から230部に変更した以外は、実施例5と同様に、ラテックス組成物およびフィルム状摩擦材様試験片を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
比較例7
製造例9で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムラテックス(A−9)に代えて、製造例11で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムラテックス(A−14)を使用した以外は、実施例5と同様に、ラテックス組成物およびフィルム状摩擦材様試験片を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
比較例8
製造例9で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムラテックス(A−9)に代えて、製造例12で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムラテックス(A−15)を使用した以外は、実施例5と同様に、ラテックス組成物およびフィルム状摩擦材様試験片を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
比較例9
製造例9で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムラテックス(A−9)に代えて、製造例12で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムラテックス(A−16)を使用した以外は、実施例5と同様に、ラテックス組成物およびフィルム状摩擦材様試験片を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 0006662300
表2に示すように、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を10〜60重量%の割合で含有し、ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムからなるゴム粒子を含有し、ゴム粒子の体積積算90%粒子径(d90)と、体積積算50%粒子径(d50)との差Δd(Δd=d90−d50)が、0.0240μm以上であるラッテクスを用い、かつ、熱硬化性樹脂としてフェノール樹脂を配合した場合には、得られる摩擦材は、線膨張係数および熱老化前後の20%応力変化率が小さく、耐熱性に優れるものであり、さらには、上記ラテックスは、フェノール樹脂に対する分散性が良好であり、これらは相溶性に優れるものであることから、得られる摩擦材は、耐熱性および摩擦特性に優れるものとなるといえる(実施例5〜8)。
一方、ラテックス中に含まれるカルボキシル基含有ニトリルゴムのヨウ素価が高すぎる場合には、線膨張係数および熱老化前後の20%応力変化率が大きく、耐熱性に劣るものであり、また、フェノール樹脂との相溶性に劣るものであった(比較例6,7)。
ゴム粒子の体積積算90%粒子径(d90)と、体積積算50%粒子径(d50)との差Δd(Δd=d90−d50)が、0.0240μm未満であるラテックスを用いた場合には、熱老化前後の20%応力変化率が大きく、耐熱性に劣るものであり、また、フェノール樹脂との相溶性に劣るものであった(比較例8,9)。

Claims (7)

  1. α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を10〜60重量%の割合で含有し、ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムからなるゴム粒子を含有する摩擦材用のラテックスであって、
    光散乱法により測定した、前記ゴム粒子の体積積算90%粒子径(d90)と、体積積算50%粒子径(d50)との差Δd(Δd=d90−d50)が、0.0240μm以上であることを特徴とする摩擦材用ラテックス。
  2. 前記カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムが、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位10〜60重量%、カルボキシル基含有単量体単位0.1〜20重量%、および共役ジエン単量体単位(水素化されたものも含む)20〜85重量%を含有する請求項1に記載の摩擦材用ラテックス。
  3. 前記カルボキシル基含有単量体単位が、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体単位である請求項2に記載の摩擦材用ラテックス。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の摩擦材用ラテックスと、熱硬化性樹脂とを含有する摩擦材用ラテックス組成物。
  5. 前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂から選択される1種以上である請求項4に記載の摩擦材用ラテックス組成物。
  6. 前記カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム100重量部に対する、前記熱硬化性樹脂の含有量が40〜500重量部である請求項4または5に記載の摩擦材用ラテックス組成物。
  7. 請求項5または6に記載の摩擦材用ラテックス組成物を、基材に付着させてなる摩擦材。
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