しかしながら、特許文献1では動作状態でブレーキをかけるため摩擦により電磁ブレーキに負荷を与え、電磁ブレーキ寿命が著しく低下するおそれがある。これにより、ロボット停止時の姿勢維持ができなくなるため、部品交換スパンが短くなる問題がある。
また、非常停止においてロボットが停止してから電磁ブレーキ実行指令を与えた場合、アーマチュア釈放時間(ブレーキがかかるまでの時間)の間に、重力によるロボットの落下や慣性による目標位置行き過ぎが起きるおそれがある。
さらに、電磁ブレーキを与えるタイミングは全軸一定の速度閾値を用いており、速度が一定の速度閾値以下になった時に電磁ブレーキを与えていた。この方法では、ロボットの軸によって電磁ブレーキのアーマチュア釈放時間が異なるものを使用している場合、電磁ブレーキが作動するタイミングが異なり、電磁ブレーキをロボットが引きずる軸もあれば、電磁ブレーキの作動が遅く、目標位置を行き過ぎるおそれがあった。また、同じ軸でも非常停止時の減速度が異なると、非常停止の動作終了前に電磁ブレーキが作動しブレーキを引きずることや、非常停止動作終了と同時に電磁ブレーキが作動せず目標位置を行き過ぎるおそれがあった。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
[適用例1]本適用例に係るロボットシステムは、可動部を駆動する駆動部と、前記駆動部の動作を制動する電磁ブレーキと、を有するロボットと、前記ロボットを制御する制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記可動部に対する動作指令を行う動作指令部を有し、前記制御装置は、非常停止信号を受け付けた場合、前記動作指令に含まれる速度が、所定の閾値より小さくなった後に、前記電磁ブレーキにより前記駆動部を制動させることを特徴とする。
本適用例によれば、電磁ブレーキがかかってもロボットが動作して摩擦負荷を与えてしまうおそれを低減でき、電磁ブレーキが遅くかかることによる重力落下や目標位置行き過ぎも低減できる。
[適用例2]上記適用例に記載のロボットシステムにおいて、前記所定の閾値は、ゼロであることが好ましい。
本適用例によれば、動作指令に含まれる速度がゼロになるタイミングで電磁ブレーキを作動させることができる。また、ロボットへの重力や慣性により本来の停止位置を越えてしまうことも回避できる。
[適用例3]上記適用例に記載のロボットシステムにおいて、前記動作指令は、速度指令を含むことが好ましい。
本適用例によれば、可動部の加減速が大きい場合には可動部の振動が大きくなり、加減速が小さい場合には可動部の振動が小さくなる。よって、動作指令に含まれる速度が大きい場合には電磁ブレーキ実行指令開始閾値も大きくし、動作指令に含まれる速度が小さい場合には電磁ブレーキ実行指令開始閾値も小さくすれば、可動部の加減速に合わせた適切な非常停止動作を行うことができる。
[適用例4]上記適用例に記載のロボットシステムにおいて、前記制御装置は、非常停止信号を受け付けた場合、前記所定の閾値よりも高い速度で、前記電磁ブレーキに対する制動を開始させる電磁ブレーキ実行指令を行うことが好ましい。
本適用例によれば、電磁ブレーキが遅くかかることによる重力落下や目標位置行き過ぎを低減できる。
[適用例5]上記適用例に記載のロボットシステムにおいて、前記電磁ブレーキ実行指令を行う時の前記動作指令に含まれる速度は、前記電磁ブレーキのアーマチュア釈放時間と前記動作指令とに基づいて決定されることが好ましい。
本適用例によれば、電磁ブレーキ実行指令から実際にブレーキが実行されるまでの遅延(アーマチュア釈放時間)を見越して電磁ブレーキの実行指令を与えることができる。また、ロボットの非常停止において、電磁ブレーキが大きいほど遅延時間(ブレーキがかかり始めるまでの時間=アーマチュア釈放時間)が大きいが、電磁ブレーキに摩擦負荷を与えず、ロボットの落下及び目標位置行き過ぎを起こさないように電磁ブレーキ指令タイミングを与えることができる。
[適用例6]上記適用例に記載のロボットシステムにおいて、前記駆動部は、前記制御装置が前記非常停止信号を受け付けた場合、一定の減速度で減速することが好ましい。
本適用例によれば、ロボットは非常停止動作において、減速軌道が直線状になり停止までの時間を短縮することができる。
[適用例7]上記適用例に記載のロボットシステムにおいて、前記動作指令は、前記制御装置が前記非常停止信号を受け付けた場合、位置指令を含まないことが好ましい。
本適用例によれば、ロボットは非常停止動作において、減速軌道が直線状になり停止までの時間を短縮することができる。
[適用例8]上記適用例に記載のロボットシステムにおいて、前記電磁ブレーキは、複数であり、前記電磁ブレーキごとにアーマチュア釈放時間が異なることが好ましい。
本適用例によれば、ロボットの各軸を独立制御可能としており、軸ごとに電磁ブレーキのアーマチュア釈放時間が異なっていても対応可能である。
[適用例9]上記適用例に記載のロボットシステムにおいて、前記駆動部の動作を制動する回生ブレーキを有することが好ましい。
本適用例によれば、非常停止動作において速度指令がゼロになるタイミングで回生ブレーキとサーボオフとを操作するため、非常停止の目標位置行き過ぎ量を低減できる。また、非常停止動作終了と同時に回生ブレーキとサーボ電源OFFとを操作し、目標位置行き過ぎ量を低減できる。
[適用例10]本適用例に係る制御装置は、可動部を駆動する駆動部と、前記駆動部の動作を制動する電磁ブレーキと、を有するロボットを制御する制御装置であって、前記可動部に対する動作指令を行う動作指令部を有し、非常停止信号を受け付けた場合、前記動作指令に含まれる速度が、所定の閾値より小さくなった後に、前記電磁ブレーキにより前記駆動部を制動させることを特徴とする。
本適用例によれば、電磁ブレーキがかかってもロボットが動作して摩擦負荷を与えてしまうおそれを低減でき、電磁ブレーキが遅くかかることによる重力落下や目標位置行き過ぎも低減できる。
[適用例11]本適用例に係るロボットは、上記に記載の制御装置に基づいて制御されることを特徴とする。
本適用例によれば、電磁ブレーキがかかってもロボットが動作して摩擦負荷を与えてしまうおそれを低減でき、電磁ブレーキが遅くかかることによる重力落下や目標位置行き過ぎも低減できる。
[適用例12]本適用例に係る制御方法は、可動部を駆動する駆動部と、前記駆動部の動作を制動する電磁ブレーキと、を有するロボットを制御する制御方法であって、前記可動部に対する動作指令を行うこと、非常停止信号を受け付けた場合、前記動作指令に含まれる速度が、所定の閾値より小さくなった後に、前記電磁ブレーキにより前記駆動部を制動させること、を含むことを特徴とする。
本適用例によれば、電磁ブレーキがかかってもロボットが動作して摩擦負荷を与えてしまうおそれを低減でき、電磁ブレーキが遅くかかることによる重力落下や目標位置行き過ぎも低減できる。
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大又は縮小して表示している。
(モーターユニット)
最初に、モーターユニット1について、図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るモーターユニット1の構成を示す説明図である。図1に示すように、モーターユニット1は、モーター(駆動部)11と、エンコーダー15と、電磁ブレーキ21と、プーリー31と、モータープレート3とを備えている。モーター11と電磁ブレーキ21とは、モータープレート3に固定されており、モーターユニット1は、モータープレート3をロボット51(図7参照)に固定することによって、ロボット51に取り付けられている。
モーター11は、略円柱形状の外形を有し、出力軸12を備えている。出力軸12は、モーター11の略円柱形状の一端から突出している。モータープレート3には、軸孔3aが形成されている。出力軸12が軸孔3aを貫通する状態で、モーター11の端面がモータープレート3に当接しており、図示省略した固定部材によって、モーター11がモータープレート3に固定されている。モーター11のモータープレート3に固定されている端面の反対側の端面には、エンコーダー15が固定されている。
モータープレート3におけるモーター11が固定されている反対面には、電磁ブレーキ21が配設されている。電磁ブレーキ21は、電磁ブレーキ21を構成する部材が、モータープレート3又は軸孔3aを貫通して突出した出力軸12に固定されることによって、モータープレート3に固定されている。電磁ブレーキ21の構成の詳細は、後述する。
プーリー31は、プーリーハブ33と、プーリー体34とを備えている。プーリーハブ33は、外径が異なる2枚の円板が中心軸を合わせて一体にされ、中心位置に取付け孔が形成された形状を有している。プーリーハブ33は、取付け孔が出力軸12に勘合して、図示省略した固定部材によって、出力軸12に固定されている。プーリー体34は、プーリーディスク34aと、プーリー輪34bとを有している。プーリーディスク34aは、中央に勘合孔が形成された円板形状を有している。プーリー輪34bは、円筒形状を有している。プーリー輪34bの円筒形状の一端がプーリーディスク34aに外嵌して、プーリーディスク34aとプーリー輪34bとが一体にされて、プーリー体34が形成されている。一体にされたプーリーディスク34aとプーリー輪34bとで略円柱形状の空間を形成している。プーリーディスク34aの勘合孔がプーリーハブ33に外嵌した状態で、図示省略した固定部材によって、プーリー輪34bがプーリーハブ33に固定されて、プーリー31が形成されている。
プーリー31は、略円柱形状の空間の開口をモータープレート3に向けた状態で、出力軸12に固定されている。プーリー31は、略円柱形状の空間には、電磁ブレーキ21が配設されている。
(電磁ブレーキ)
次に、モーターユニット1を構成する電磁ブレーキ21について、図2を参照して説明する。
図2は、本実施形態に係る電磁ブレーキ21の構成を示す模式断面図である。図2(A)は制動している(ブレーキを掛けている)状態の電磁ブレーキ21を示す模式断面図であり、図2(B)は制動をしていない(ブレークを掛けていない)状態の電磁ブレーキ21を示す模式断面図である。
図2に示すように、電磁ブレーキ21は、ブレーキ板22と、可動板26と、電磁石28と、ブレーキばね29とを備えている。固定枠27は、円筒の一端が円板で塞がれて、一方が開口した円柱形状の円柱空間27bが形成された形状を有している。固定枠27における円板部分の、円柱空間27bの臨む面を、固定面27aと表記する。円板の中央には穴が形成されており、固定枠27は、当該穴を出力軸12が貫通し、円筒空間の開口がモータープレート3で塞がれる状態で、モータープレート3に固定されている。固定枠27がモータープレート3に固定された状態で、固定面27aの面方向は、出力軸12の軸方向に略直交する方向である。
ブレーキ板22は、ブレーキハブ23と、摩擦板24とを有している。ブレーキハブ23は、外径が異なる2枚の円板が中心軸を合わせて一体にされ、中心軸に係合孔が形成された形状を有している。摩擦板24は、中央に勘合孔が形成された円柱形状を有している。摩擦板24は、勘合孔がブレーキハブ23の外径に外嵌して、ブレーキハブ23と一体にされている。ブレーキハブ23は、係合孔を出力軸12が貫通して、出力軸12に係止されている。係合孔と出力軸12とには、図示省略したキー溝が形成されている。両方のキー溝に係合したキーによって、ブレーキハブ23は、出力軸12に対して、出力軸12の軸方向に摺動可能であり、出力軸12の周方向への回動を略禁止されて、出力軸12に係止されている。ブレーキハブ23に固定されている摩擦板24は、板面の面方向が出力軸12の軸方向に略直交する方向である。ブレーキ板22は、モータープレート3に固定された固定枠27の円柱空間27bに位置しており、摩擦板24の一面は、固定枠27の固定面27aに対向している。
電磁石28は、円筒形状を有している。電磁石28は、円柱空間27bに位置しており、中央の穴を出力軸12が貫通しており、円筒形状の一端がモータープレート3に当接して、モータープレート3に固定されている。電磁石28におけるモータープレート3に当接した反対側の端は、電磁石28の吸着面である。
可動板26は、中央に穴が形成された円板形状を有している。可動板26は、電磁石28と摩擦板24との間に位置しており、円板の両面が、それぞれ電磁石28の吸着面又は摩擦板24に対向している。円柱空間27bの側壁の近くには、複数の案内軸25が固定枠27における円板部分の周辺近くから電磁石28の枠体に差し渡されている。可動板26は、周辺近くに形成された孔が、それぞれ案内軸25に係合して、出力軸12の軸方向に摺動自在に、支持されている。可動板26は、磁性材料で構成されており、電磁石28によって吸着可能である。磁性材料は、例えば、鉄や、鉄系の合金や、磁性を有するステンレス鋼などである。
ブレーキばね29は、複数のブレーキばね29が、電磁石28の吸着面の周囲に配設されている。ブレーキばね29は、一端が電磁石28の吸着面の周囲の枠体に形成された凹部に勘合して固定されている。ブレーキばね29のもう一端は、可動板26に当接しており、可動板26を、摩擦板24の方に付勢している。
図2(A)は電磁ブレーキ21が制動を実施している(ブレーキを掛けている)状態を示している。図2(A)に示すように、ブレーキばね29が、可動板26を摩擦板24の方に付勢している。可動板26及び摩擦板24を有するブレーキ板22は、出力軸12の軸方向に摺動可能である。可動板26が摩擦板24の方に付勢されることにより、可動板26が移動して摩擦板24に当接し、摩擦板24(ブレーキ板22)が、固定枠27における円板部分の固定面27aに当接して、ブレーキばね29の付勢力に応じた力で押し付けられる。固定枠27とモーター11との相対位置は、モータープレート3を介して固定されている。摩擦板24が固定されているブレーキハブ23は、出力軸12に対して、出力軸12の周方向への回動を略禁止されて、出力軸12に係止されている。摩擦板24が、固定枠27の固定面27aに、ブレーキばね29の付勢力に応じて力で押し付けられることで、出力軸12の回動が制動される。
図2(B)は電磁ブレーキ21が制動を実施していない(ブレーキを掛けていない)状態を示している。図2(B)に示すように、電磁石28が、ブレーキばね29の付勢力に抗して、可動板26を吸着している。摩擦板24が固定面27aに、ブレーキばね29の付勢力によって押し付けられる状態が解除されているため、出力軸12の回動が制動される状態が解除されている。
機械系非常停止手段は、機械抵抗、コイルとソレノイドとからなる電磁ブレーキ、ロボットを駆動するモーターの回生電流による回生ブレーキのいずれか又はこれらを組み合わせたものである。
図3は、本実施形態に係る制御装置52の主要構成を示す構成説明図である。
制御装置52は、動作指令部40と、電磁ブレーキ制御部45と、回生ブレーキ制御部46と、を備えている。動作指令部40は、モーター11に対する動作指令を行う。
動作指令は、位置指令と、速度指令と、電流指令と、を含んでもよい。動作指令は、速度指令を備えることが好ましい。これによれば、アームの加減速が大きい場合にはアームの振動が大きくなり、加減速が小さい場合にはアームの振動が小さくなる。よって、速度指令が大きい場合には電磁ブレーキ実行指令開始閾値も大きくし、速度指令が小さい場合には電磁ブレーキ実行指令開始閾値も小さくすれば、アームの加減速に合わせた適切な非常停止動作を行うことができる。
動作指令は、制御装置52が非常停止信号を受け付けた場合、位置指令を含まないことが好ましい。これによれば、ロボット51は非常停止動作において、減速軌道が直線状になり停止までの時間を短縮することができる。
動作指令部40は、位置制御器41と、速度制御器42と、電流制御器43と、を備えている。
位置制御器41は、入力される位置指令とエンコーダー15が検出した現在位置との差分を基に速度指令を生成する。
速度制御器42は、位置制御器41から入力された速度指令とエンコーダー15が検出した現在位置を微分したモーター角速度とに応じた、速度指令に基づく速度になるよう電流指令を生成する。
電流制御器43は、速度制御器42から入力された電流指令とモータードライバー44からの実際の駆動電流との差分に対し、比例制御及び積分制御を行い、モーター11に電流指令に基づく電流が供給されるように制御する。
このように制御されることにより、モーター11は位置指令及び速度指令に合った駆動状態となる。
制御装置52は、非常停止信号を受け付けた場合、速度指令が、所定の閾値より小さくなった後に、電磁ブレーキ21によりモーター11を制動させる。
所定の閾値は、ゼロであることが好ましい。これによれば、速度指令がゼロになるタイミングで電磁ブレーキ21を作動させることができる。また、ロボット51への重力や慣性により本来の停止位置を越えてしまうことも回避できる。
所定の閾値は、ブレーキに負担を与えない速度であってもよい。例えば、最高速度(各関節ごとに決まっている)の1%程度である。
モーター11は、制御装置52が非常停止信号を受け付けた場合、一定の減速度で減速することが好ましい。これによれば、ロボット51は非常停止動作において、減速軌道が直線状になり停止までの時間を短縮することができる。
電磁ブレーキ制御部45は、入力される電磁ブレーキ実行指令を基に電磁ブレーキ21の作動を実施する。回生ブレーキ制御部46は、モータードライバー44を介してモーター11を、入力される回生ブレーキ実行指令を基に設定された回生レベルに応じた回生比率に制御して回生ブレーキ力を得る。
モーター11の動作を制動する回生ブレーキをさらに有することが好ましい。これによれば、非常停止動作において速度指令がゼロになるタイミングで回生ブレーキとサーボ電源OFFとを操作するため、非常停止の目標位置行き過ぎ量を低減できる。また、非常停止動作終了と同時に回生ブレーキとサーボ電源OFFとを操作し、目標位置行き過ぎ量を低減できる。
図4は、本実施形態に係るロボット51(図7参照)の非常停止の主たる工程を示すフローチャートである。図5及び図6は、本実施形態に係る制御装置52の一実施形態を示す図である。図5(A)は速度指令、図5(B)は電磁ブレーキ実行指令、図5(C)は回生ブレーキ実行指令、図5(D)はサーボ電源の各動作のタイミングを示す。
非常停止時のブレーキ制御方法は以下の手順で行う。
先ず、ステップS10において、図5(A)に示すように、外部から非常停止開始(減速開始)が制御装置52に入力される。
非常停止要請時にロボット51をサーボ制御することにより制動する。モーター11をサーボ制御し続けてロボット51を制動する。例えば、ロボット51の動作中に急停止事態など非常停止要請が生じた場合はその時点でサーボ電源(一次電源)を切り、残留電荷を利用してモーター11をサーボ制御し続けてロボット51を制動する。この間、ロボット51は一定の加速度で減速し、その後停止する。これと同時に速度指令を止め、サーボ制御を終えるとともに、電磁ブレーキ21及び回生ブレーキを作用させてロボット51の停止状態を保つ。
具体的には、位置制御器41は、入力される位置指令とエンコーダー15が検出した現在位置との差分を基に速度指令を生成する。
位置制御器41から入力された速度指令とエンコーダー15が検出した現在位置を微分したモーター角速度とに応じた、速度指令に基づく速度になるよう電流指令を速度制御器42が生成する。
速度制御器42から入力された電流指令とモータードライバー44からの実際の駆動電流との差分に対し、比例制御及び積分制御を行い、モーター11に電流指令に基づく電流が供給されるように電流制御器43が制御する。
このように制御されることにより、モーター11は位置指令及び速度指令に合った駆動状態となる。この間、ロボット51は一定の加速度で減速する。
次に、ステップS20において、制御装置52は、図6に示すように、1制御周期の減速度を取得する。例えば、減速度を10[m/s2]とする。
次に、ステップS30において、制御装置52は、電磁ブレーキ実行指令開始閾値を算出する。
電磁ブレーキ実行指令開始閾値は、次式で算出される。
「電磁ブレーキ実行指令開始閾値」=「1制御周期の減速度」×「アーマチュア釈放時間」
例えば、減速度(10[m/s2])×アーマチュア時間(0.1[s])=10×0.1=1[m/s]
電磁ブレーキ実行指令開始閾値は、1[m/s]になる。
制御装置52は、非常停止信号を受け付けた場合、所定の閾値よりも高い速度で、電磁ブレーキ21に対する制動を開始させる電磁ブレーキ実行指令を行うことが好ましい。これによれば、電磁ブレーキ21が遅くかかることによる重力落下や目標位置行き過ぎを低減できる。
電磁ブレーキ実行指令を行う時の速度指令は、電磁ブレーキ21のアーマチュア釈放時間と動作指令とに基づいて決定されることが好ましい。これによれば、電磁ブレーキ実行指令から実際にブレーキが実行されるまでの遅延(アーマチュア釈放時間)を見越して電磁ブレーキ21の実行指令を与えることができる。また、ロボット51の非常停止において、電磁ブレーキ21が大きいほど遅延時間(ブレーキがかかり始めるまでの時間=アーマチュア釈放時間)が大きいが、電磁ブレーキ21に摩擦負荷を与えず、ロボット51の落下及び目標位置行き過ぎを起こさないように電磁ブレーキ指令タイミングを与えることができる。
電磁ブレーキ21は、複数であることが好ましい。電磁ブレーキ21は、電磁ブレーキ21ごとにアーマチュア釈放時間が異なることが好ましい。これによれば、ロボット51の各軸を独立制御可能としており、軸ごとに電磁ブレーキ21のアーマチュア釈放時間が異なっていても対応可能である。
次に、ステップS40において、制御装置52は、速度指令が電磁ブレーキ実行指令開始閾値以下(例えば、1[m/s]以下)か判断する。
次に、ステップS50において、制御装置52は、速度指令が電磁ブレーキ実行指令開始閾値以下(例えば、1[m/s]以下)となったら、図5(B)に示すように、電磁ブレーキ実行指令により電磁ブレーキ21をOFFからON(制動をしている(ブレーキを掛けている)状態)にする。電磁ブレーキ21は、アーマチュア釈放時間経過後に、作動状態になる。
次に、ステップS60において、制御装置52は、速度指令がゼロか判断する。
次に、ステップS70において、制御装置52は、速度指令がゼロとなったら、図5(C)に示すように、回生ブレーキ実行指令により回生ブレーキをOFFからON(制動にする(ブレーキを掛けている)状態)する。及び図5(D)に示すように、サーボ電源をONからOFFにする。なお、回生ブレーキによる制動は電磁ブレーキ21による制動より先であってもよい。
本実施形態によれば、ロボット51の非常停止時、速度指令がゼロになるタイミングで電磁ブレーキ21を作動させることができる。これにより、実速度値と閾値とを比較すると、自重によりロボット51の速度が閾値以上を維持して、電磁ブレーキがかからない状態が発生することがあるが、速度指令と閾値との比較では、この問題は発生しない。その結果、電磁ブレーキ21がかかってもロボット51が動作して摩擦負荷を与えてしまうことはなく、電磁ブレーキ21が遅くかかることによる重力落下や目標位置行き過ぎも低減できる。
(ロボット)
次に、ロボットシステム50を構成するロボット51の構成について、図7及び図8を参照して説明する。
図7は、本実施形態に係るロボットシステム50の全体構成を示す説明図である。図7に示すように、ロボットシステム50は、ロボット51と、制御装置52とを備えている。制御装置52は、予め入力されたプログラムに従ってロボット51を制御して、プログラムで規定された所定の作業を実施させる。
ロボット51は、いわゆる垂直多関節ロボットである。ロボット51は、基台53と、回動基部54と、第1アーム(可動部)55と、アーム揺動基部56と、第2アーム(可動部)57と、先端揺動基部58と、先端アーム(可動部)59とを備えている。
ロボット51は、基台53に他の部材が組み上げられて構成されている。基台53を床などに固定することで、ロボット51が当該床などの上に設置される。回動基部54は、基台53に、設置面に略垂直な基部回動軸54aを中心に回動自在に、支持されている。第1アーム55は、一方の端が、回動基部54に支持されている。第1アーム55は、回動基部54に、軸方向が基部回動軸54aの軸方向と略直角な第1揺動軸55aを中心に、揺動可能に支持されている。第1アーム55における第1揺動軸55aを中心に揺動させられる先端側には、アーム揺動基部56が支持されている。アーム揺動基部56は、第1アーム55に、第1揺動軸55aと略平行な第2揺動軸56aを中心に回動可能に支持されている。アーム揺動基部56には、第2アーム57の一端が支持されている。アーム揺動基部56が第2揺動軸56aを中心に回動することで、第2アーム57が第2揺動軸56aを中心に揺動する。第2アーム57は、アーム揺動基部56に、軸方向が第2揺動軸56aの軸方向と略直角な第2回動軸57aを中心に、回動可能に支持されている。第2アーム57の延在方向は、略第2回動軸57aの軸方向である。
第2アーム57における第2揺動軸56aを中心に揺動させられる先端側には、先端揺動基部58が支持されている。先端揺動基部58は、第2アーム57に、軸方向が第2回動軸57aの軸方向と略直角な先端揺動軸58aを中心に、回動可能に支持されている。先端揺動基部58には、先端アーム59の一端が支持されている。先端揺動基部58が先端揺動軸58aを中心に回動することで、先端アーム59が先端揺動軸58aを中心に揺動する。先端アーム59は、先端揺動基部58に、軸方向が先端揺動軸58aの軸方向と略直角な先端回動軸59aを中心に回動可能に支持されている。先端アーム59の延在方向は、略先端回動軸59aの軸方向である。先端アーム59の先端には、図示省略した取付け機構が配設されており、当該取付け機構を介して、エンドエフェクターが、ロボット51に取り付けられる。
基台53には、基部回動軸54aを中心に回動基部54を回動させるためのモーターユニット(図示省略)が配設されている。第1アーム55には、第1揺動軸55aを中心に第1アーム55を揺動させるためのモーターユニット(図示省略)と、第2揺動軸56aを中心にアーム揺動基部56を回動させて、第2揺動軸56aを中心に第2アーム57を揺動させるためのモーターユニット(図示省略)と、第2回動軸57aを中心に第2アーム57を回動させるためのモーターユニット(図示省略)とが配設されている。それぞれのモーターユニットは、モーターユニット1と、基本的に同様の構成を有している。
図8は、本実施形態に係るアーム部分におけるモーターユニット60,70の配置列を示す説明図である。図8に示すように、第2アーム57を構成するアーム枠571には、モーターユニット60と、モーターユニット70とが配設されている。モーターユニット60は、先端揺動軸58aを中心に先端揺動基部58を回動させて、先端揺動軸58aを中心に先端アーム59を揺動させるための揺動ユニット60Aを構成する。モーターユニット70は、先端回動軸59aを中心に先端アーム59を回動させるための回動ユニット70Aを構成する。モーターユニット60及びモーターユニット70は、モーターユニット1と基本的に同様の構成を有している。
揺動ユニット60Aは、モーターユニット60と、揺動体プーリー62と、揺動ベルト65と、揺動基部軸64とを備えている。モーターユニット60は、揺動モーター(駆動部)61と、揺動プーリー63と、図示省略した電磁ブレーキ21とを備えている。モーターユニット60は、モーターユニット60が備える出力軸12の軸方向が先端揺動軸58aの軸方向と略平行になる方向で、アーム枠571に固定されている。揺動体プーリー62は、揺動基部軸64を介して、先端揺動基部58に、先端揺動軸58aを中心に回動する位置に固定されている。揺動体プーリー62とモーターユニット60の揺動プーリー63とは、先端揺動軸58aの軸方向において、略同一の位置に位置している。揺動体プーリー62と揺動プーリー63とには、揺動ベルト65が掛け渡されている。
揺動モーター61が稼働すると、揺動プーリー63が回動させられる。揺動プーリー63の回動が揺動ベルト65を介して揺動体プーリー62に伝えられ、揺動プーリー63の回動に同期して揺動体プーリー62が回動させられる。揺動体プーリー62が回動させられることで、揺動体プーリー62が固定された先端揺動基部58が先端揺動軸58aを中心に回動する。先端揺動基部58に支持されている先端アーム59が、先端揺動軸58aを中心に揺動させられる。
回動ユニット70Aは、モーターユニット70と、回動体プーリー72と、回動ベルト75と、回動伝達軸74と、回動伝達歯車76aと、回動伝達歯車76bと、先端アーム軸79とを備えている。モーターユニット70は、回動モーター(駆動部)71と、回動プーリー73とを備えている。モーターユニット70は、モーターユニット70が備える出力軸12の軸方向が先端揺動軸58aの軸方向と略平行になる方向で、アーム枠571に固定されている。モーターユニット70は、モーターユニット60と並べて配設されている。モーターユニット70とモーターユニット60とは、モーターユニット70における回動プーリー73と、モーターユニット60の揺動プーリー63とが、先端揺動軸58aの軸方向において、反対側に位置する方向で配設されている。
回動伝達軸74は、先端揺動基部58において、揺動体プーリー62が固定された側と先端揺動軸58aの軸方向における反対側に配設されている。回動伝達軸74は、先端揺動基部58の内部からアーム枠571の先端にかけて、延在している。回動伝達軸74は、回動中心が先端揺動軸58aと略一致しており、アーム枠571に対して先端揺動基部58を支持する軸とは独立して、回動可能に支持されている。回動体プーリー72は、回動伝達軸74のアーム枠571側の先端に、先端揺動軸58aを中心に回動する位置に固定されている。回動体プーリー72とモーターユニット70の回動プーリー73とは、先端揺動軸58aの軸方向において、略同一の位置に位置している。回動体プーリー72と回動プーリー73とには、回動ベルト75が掛け渡されている。回動伝達歯車76aは、回動伝達軸74における先端揺動基部58の内部側の先端に、固定されている。回動伝達歯車76bは、先端アーム軸79の先端に固定されており、回動伝達歯車76aと噛合っている。先端アーム軸79は、回動伝達歯車76bが固定された反対側の一端が先端アーム59に固定されており、回動中心が先端回動軸59aと略一致している。回動伝達歯車76a及び回動伝達歯車76bは、笠歯車であり、先端アーム軸79の軸と回動伝達軸74の軸とは、略直交している。
回動モーター71が稼動すると、回動プーリー73が回動させられる。回動プーリー73の回動が回動ベルト75を介して回動体プーリー72に伝えられ、回動プーリー73の回動に周期して回動体プーリー72が回動させられる。回動体プーリー72が回動させられることで、回動体プーリー72が固定された回動伝達軸74が先端揺動軸58aを中心に回動する。回動伝達軸74が回動することで、回動伝達歯車76a及び回動伝達歯車76bを介して、先端アーム軸79が回動し、先端アーム軸79が固定されている先端アーム59が、先端回動軸59aを中心に回動させられる。先端揺動基部58と先端アーム59とは、被駆動体に相当する。
回動基部54を回動させるためのモーターユニットを備える回動ユニット、及び第2アーム57を回動させるためのモーターユニットを備える回動ユニットは、回動ユニット70Aと同様の構成を備えている。第1アーム55を揺動させるためのモーターユニットを備える揺動ユニット、及びアーム揺動基部56を回動させて第2アーム57を揺動させるためのモーターユニットを備える揺動ユニットは、揺動ユニット60Aと同様の構成を備えている。
本発明のロボットは、垂直多関節ロボットに限らず、水平多関節ロボットやパラレルリンクロボット、双腕ロボットなども同様の効果が得られる。また、本発明のロボットは、6軸ロボットに限らず、7軸以上のロボットや5軸以下のロボットでも同様の効果が得られる。また、本発明のロボットは、アームを有していれば、アーム型ロボット(ロボットアーム)に限定されず、他の形式のロボット、例えば、脚式歩行(走行)ロボット等であってもよい。