以下、エレベータ用制動装置及びエレベータにおける一実施形態について、図1〜図9を参照しながら説明する。なお、各図(図10〜図13も同様)において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
図1に示すように、本実施形態に係るエレベータ1は、ユーザが乗るためのかご1aと、一端部がかご1aに接続されるロープ1bと、ロープ1bの他端部に接続される釣合錘1cとを備えている。また、エレベータ1は、ロープ1bを駆動してかご1aを昇降させる巻上機2を備えており、巻上機2は、ロープ1bが外周に巻き掛けられる回転可能な綱車2aを備えている。
図2に示すように、巻上機2は、綱車2aに回転駆動を与える電動機2bと、綱車2aを回転可能に支持する機枠2c,2cと、綱車2aと一体となって回転する回転体2dと、綱車2aを制動するために、回転体2dを制動する制動装置3とを備えている。なお、回転体2dは、綱車2aと一体的に形成されている。具体的には、回転体2dは、綱車2aに連結されている。また、巻上機2は、電動機2bの駆動を綱車2aに伝える軸部2eを備えている。
図3及び図4に示すように、制動装置3は、回転体2dの外周部の一部を囲うように配置されるキャリパー4を備えている。また、制動装置3は、回転体2dに接することで回転体2dを制動する第1及び第2制動部5,6を備えている。そして、制動装置3は、所謂、ディスクブレーキであって、第1及び第2制動部5,6が回転体2dを挟むようにして接することで、回転体2dを制動する。
第1制動部5は、キャリパー4に対して移動可能であり、第2制動部6は、固定部材3aにより、キャリパー4に固定されている。そして、制動部5,6は、回転体2dの側平面に接する接触面51,61を備えている。具体的には、第1制動部5は、回転体2dの第1側平面(図3及び図4においては、左側の側面)に接する平面状の接触面51を備え、第2制動部6は、回転体2dの第2側平面(図3及び図4においては、右側の側面)に接する平面状の接触面61を備えている。
キャリパー4は、第2制動部6が固定されるキャリパー本体部41と、第1制動部5が移動するように、第1制動部5に力を与える駆動部42とを備えている。また、キャリパー4は、第1制動部5を支持する支持部43と、所定方向D1(図3及び図4においては、左右方向)に延びて、キャリパー本体部41と支持部43とを連結する連結部44とを備えている。
これにより、第1制動部5は、キャリパー4及び回転体2dに対して、移動可能であり、第2制動部6は、キャリパー4と一体になって、回転体2dに対して移動可能である。また、キャリパー本体部41は、第1制動部5に対して、回転体2d側に配置されるベース部41aを備えている。
駆動部42は、支持部43へ近づく方向(図3及び図4においては、左方向)の力を第1制動部5に与える第1駆動源42aと、支持部43から離れる方向(図3及び図4においては、右方向)の力を第1制動部5に与える第2駆動源42bとを備えている。本実施形態においては、第1駆動源42aは、電磁コイルであり、第2駆動源42bは、弦巻バネである。
なお、第1制動部5は、第1駆動源42aから力を受けるために磁性を有する磁性部52を備えている。そして、磁性部52の外幅寸法は、支持部43の外幅寸法よりも大きくなっていると共に、ベース部41aの外幅寸法よりも大きくなっている。
支持部43は、第1制動部5を支持するために、第1制動部5と接する平面状の支持面43aを備えている。なお、第1制動部5は、支持部43の支持面43aと接する平面状の被支持面52aを備えている。また、支持部43は、駆動部42、具体的には、第1駆動源42a及び第2駆動源42bを収容している。
そして、第1駆動源42aは、電気が供給された際に、第1制動部5に力を与え、第2駆動源42bは、常時、収縮弾性変形をすることで、第1制動部5に力を与えている。なお、第1駆動源42aが第1制動部5に与える力は、第2駆動源42bが第1制動部5に与える力よりも、大きくなっている。
したがって、第1駆動源42aへの通電が実施されている際には、第1駆動源42aの力が、第2駆動源42bの力よりも大きいため、図3に示すように、第1制動部5は、支持部43と接触する。これにより、制動部5,6は、それぞれ回転体2dから離れる位置、即ち、待機位置に位置する。
一方、第1駆動源42aへの通電が停止されている際には、第2駆動源42bの力だけが第1制動部5に与えられるため、図4に示すように、第1制動部5は、支持部43から離れる。これにより、制動部5,6は、それぞれ回転体2dに接する位置、即ち、制動位置に位置する。
このように、制動部5,6は、駆動部42から力を受けることで、回転体2dと対面する方向D1で回転体2dに対して移動する。具体的には、制動部5,6は、駆動部42から力を受けることで、回転体2dに接する制動位置と回転体2dから離れる待機位置との間で移動する。
このとき、第1制動部5は、キャリパー4に対して所定方向D1(図3及び図4においては、左右方向)に沿って移動するように、連結部44に案内されている。本実施形態においては、第1制動部5は、連結部44が挿し込まれる開口を有しており、当該開口の内周面は、連結部44の外周面上をスライドする。
なお、制動部5,6が待機位置に位置する際に、第1制動部5は、支持部43と接しており、制動部5,6が制動位置に位置する際に、第1制動部5は、支持部43と離れている。また、制動部5,6が待機位置から制動位置に向けて移動する際に、第1制動部5は、ベース部41aに近づく。即ち、第1制動部5が待機位置から制動位置に向けて移動する際に、第1制動部5とベース部41aとの距離は、小さくなる。
また、制動装置3は、第1制動部5が制動位置から待機位置に向けて移動して支持部43に当たる際に、駆動部42が第1制動部5に与える力に対して平行な力(図3及び図4においては、左右方向)を第1制動部5に与える第1加力部7を備えている。また、制動装置3は、第1制動部5が待機位置から制動位置に向けて移動して回転体2dに当たる際に、駆動部42が第1制動部5に与える力に対して平行な力を第1制動部5に与える第2加力部8を備えている。
なお、駆動部42が第1制動部5に与える力(駆動力)に対して平行な力とは、当該駆動力の方向と完全に平行な方向の力だけでなく、当該駆動力の方向の成分を含む方向の力も含む。例えば、当該平行な力の方向が当該駆動力の方向に対して交差する角度は、45°以下であることが好ましく、30°以下であることがより好ましく、10°以下であることがさらに好ましく、5°以下であることが非常に好ましい。
第1加力部7は、複数備えられている。そして、複数の第1加力部7は、第1制動部5が移動する方向D1と交差する方向で、互いに離れて配置されている。本実施形態においては、複数の第1加力部7は、第1制動部5の外周部に、間隔を有して並列されている。なお、第1加力部7の数量は、特に限定されず、複数備えられていればよく、例えば、三つ以上備えられることがより好ましい。
第2加力部8は、複数備えられている。そして、複数の第2加力部8は、第1制動部5が移動する方向D1と交差する方向で、互いに離れて配置されている。本実施形態においては、複数の第2加力部8は、第1制動部5の外周部に、間隔を有して並列されている。なお、第2加力部8の数量は、特に限定されず、複数備えられていればよく、例えば、三つ以上備えられることがより好ましい。
図5に示すように、第1制動部5は、第1及び第2加力部7,8からの力を受けるために、第1及び第2加力部7,8に接する当接部53を備えている。当接部53は、円板状に形成される磁性部52の外周部に固定され、第1及び第2加力部7,8と対面するように配置されている。なお、当接部53は、磁性部52と一体に形成されていてもよく、また、磁性部52の全周に亘って配置されていてもよい。
第1加力部7は、弾性変形することで第1制動部5に力を与える第1弾性部71と、第1制動部5が制動位置から待機位置に向けて移動して支持部43に当たる際の、第1弾性部71が弾性変形する量を調節可能な第1調節部72とを備えている。本実施形態においては、第1弾性部71は、ゴム部材としている。
第1加力部7は、第1制動部5が支持部43に当たる際に、第1弾性部71が収縮の弾性変形をしているため、第1弾性部71の弾性復元力により、第1制動部5が支持部43から離れる方向(図5においては、右方向)の力を、第1制動部5に与えている。そして、第1加力部7による力の方向は、第1制動部5が支持部43に当たる際に、駆動部42(図5においては、図示していない)が第1制動部5に与える駆動力の方向に対して、反対方向となる。
即ち、第1加力部7は、第1制動部5が支持部43に当たる際に、駆動部42が第1制動部5に与える駆動力に対する抗力を、第1制動部5に与えている。なお、第1制動部5が支持部43に当たる際の、駆動部42が第1制動部5に与える駆動力の方向は、第1駆動源42a(図5においては、図示していない)が第1制動部5に与える力の方向である。
また、第1制動部5が支持部43に当たる際に、第1加力部7による抗力の大きさは、駆動部42による駆動力の大きさよりも、小さくなっている。なお、第1制動部5が支持部43に当たる際の、駆動部42による駆動力の大きさは、第1駆動源42aによる駆動力から、第2駆動源42b(図5においては、図示していない)による駆動力を引いた力の大きさである。
第1調節部72は、第1弾性部71の第1端部71aを支持部43に対して固定する第1固定部72aを備えている。そして、第1固定部72aは、支持部43に連結される本体部72bと、第1弾性部71の第1端部71aの位置を支持部43に対して変更可能な変更部72cと、第1弾性部71の第1端部71aを支持するプレート72dとを備えている。そして、本体部72bは、第1弾性部71の第1端部71a側を収容している。なお、本体部72bは、支持部43の外周部に連結されている。
このように、第1弾性部71が支持部43に固定されているため、第1制動部5が制動位置から待機位置に向けて移動することに伴って、第1弾性部71の第2端部71bと第1制動部5との間の距離が小さくなる。そして、第1制動部5が第1弾性部71に当たった後は、第1制動部5が制動位置から待機位置に向けて移動することに伴って、第1弾性部71の収縮する弾性変形量が大きくなるため、第1制動部5に与える力が大きくなる。
変更部72cの一端部は、プレート72dに回転可能に連結されており、また、変更部72cは、本体部72bと螺合する螺子を備えている。そして、変更部72cの螺子が本体部72bと螺合する位置が、変更されることで、第1弾性部71の第1端部71aの位置が支持部43に対して変更される。なお、第1調節部72は、螺子を有する構成に限られず、例えば、締結手段や挟持手段により、第1弾性部71の第1端部71aが固定される位置を変更可能な構成としてもよい。
これにより、第1制動部5が制動位置から待機位置に向けて移動して支持部43に当たる際の、第1弾性部71が弾性変形する量を調節することができるため、第1加力部7が第1制動部5に与える力を調節することができる。なお、第1固定部72aは、第1制動部5が制動位置に位置する際に第1弾性部71が弾性変形することなく復元するように、第1弾性部71の第1端部71aの位置が支持部43に対して変更可能に構成されている。
本実施形態においては、第1制動部5が制動位置に位置する際に、第1弾性部71の第2端部71bが第1制動部5から離れて自由となるように、第1弾性部71の第1端部71aの位置が、支持部43に対して調節されている。したがって、第1制動部5が制動位置に位置する際には、第1加力部7による抗力は、ゼロ(第1制動部5の動作に影響がない程度に僅かに生じる場合も含む)となっている。図5は、第1制動部5が待機位置と制動位置との間に位置している状態を示している。
なお、第1制動部5が制動位置に位置する際に、第1弾性部71が第1制動部5と接して弾性変形するように、第1弾性部71の第1端部71aの位置が支持部43に対して調節されていてもよい。これによれば、第1制動部5の位置に関わらず、第1弾性部71が常に第1制動部5と接して弾性変形するため、例えば、第1制動部5が回転体2dと当たった際に、第1制動部5の振動を第1弾性部71で吸収することができる。
第2加力部8は、弾性変形することで第1制動部5に力を与える第2弾性部81と、第1制動部5が待機位置から制動位置に向けて移動して回転体2dに当たる際の、第2弾性部81が弾性変形する量を調節可能な第2調節部82とを備えている。本実施形態においては、第2弾性部81は、ゴム部材としている。
第2加力部8は、第1制動部5が回転体2dに当たる際に、第2弾性部81が収縮の弾性変形をしているため、第2弾性部81の弾性復元力により、第1制動部5が回転体2dから離れる方向(図5においては、左方向)の力を、第1制動部5に与えている。そして、第2加力部8による力の方向は、第1制動部5が回転体2dに当たる際に、駆動部42(図5においては、図示していない)が第1制動部5に与える駆動力の方向に対して、反対方向となる。
即ち、第2加力部8は、第1制動部5が回転体2dに当たる際に、駆動部42が第1制動部5に与える駆動力に対する抗力を、第1制動部5に与えている。なお、第1制動部5が回転体2dに当たる際の、駆動部42が第1制動部5に与える駆動力の方向は、第2駆動源42bが第1制動部5に与える力の方向である。
また、第1制動部5が回転体2dに当たる際に、第2加力部8による抗力の大きさは、駆動部42による駆動力の大きさよりも、小さくなっている。なお、第1制動部5が回転体2dに当たる際の、駆動部42による駆動力の大きさは、第2駆動源42bによる駆動力の大きさである。
第2調節部82は、第2弾性部81の第1端部81aをベース部41aに対して固定する第2固定部82aを備えている。そして、第2固定部82aは、ベース部41aに連結される本体部82bと、第2弾性部81の第1端部81aの位置をベース部41aに対して変更可能な変更部82cと、第2弾性部81の第1端部81aを支持するプレート82dとを備えている。そして、本体部82bは、第2弾性部81の第1端部81a側を収容している。なお、本体部82bは、ベース部41aの外周部に連結されている。
このように、第2弾性部81がベース部41aに固定されているため、第1制動部5が待機位置から制動位置に向けて移動することに伴って、第2弾性部81の第2端部81bと第1制動部5との間の距離が小さくなる。そして、第1制動部5が第2弾性部81に当たった後は、第1制動部5が待機位置から制動位置に向けて移動することに伴って、第2弾性部81の収縮する弾性変形量が大きくなるため、第1制動部5に与える力が大きくなる。
変更部82cの一端部は、プレート82dに回転可能に連結されており、また、変更部82cは、本体部82bと螺合する螺子を備えている。そして、変更部82cの螺子が本体部82bと螺合する位置が、変更されることで、第2弾性部81の第1端部81aの位置がベース部41aに対して変更される。なお、第2調節部82は、螺子を有する構成に限られず、例えば、締結手段や挟持手段により、第2弾性部81の第1端部81aが固定される位置を変更可能な構成としてもよい。
これにより、第1制動部5が待機位置から制動位置に向けて移動して回転体2dに当たる際の、第2弾性部81が弾性変形する量を調節することができるため、第2加力部8が第1制動部5に与える力を調節することができる。なお、第2固定部82aは、第1制動部5が待機位置に位置する際に第2弾性部81が弾性変形することなく復元するように、第2弾性部81の第1端部81aの位置がベース部41aに対して変更可能に構成されている。
本実施形態においては、第1制動部5が待機位置に位置する際に、第2弾性部81の第2端部81bが第1制動部5から離れて自由となるように、第2弾性部81の第1端部81aの位置が、ベース部41aに対して調節されている。したがって、第1制動部5が待機位置に位置する際には、第2加力部8による抗力は、ゼロ(第1制動部5の動作に影響がない程度に僅かに生じる場合も含む)となっている。
なお、第1制動部5が待機位置に位置する際に、第2弾性部81が第1制動部5と接して弾性変形するように、第2弾性部81の第1端部81aの位置がベース部41aに対して調節されていてもよい。これによれば、第1制動部5の位置に関わらず、第2弾性部81が常に第1制動部5と接して弾性変形するため、例えば、第1制動部5が支持部43と当たった際に、第1制動部5の振動を第2弾性部81で吸収することができる。
なお、図6及び図7に示すように、キャリパー4は、機枠2cに取り付けられる取付機構45を備えている。また、キャリパー4は、制動部5,6を待機位置で保持させる保持機構46を備えている。
取付機構45は、機枠2cから所定方向D1(図6及び図7においては、上下方向)に延びる柱状部45aと、柱状部45aに装着される装着部45bとを備えている。なお、柱状部45aは、機枠2cに固定されており、装着部45bは、キャリパー4のキャリパー本体部41に固定されている。本実施形態においては、装着部45bは、キャリパー本体部41と一体に形成されている。
そして、装着部45bは、柱状部45aが延びる方向D1に沿って柱状部45aに案内される。本実施形態においては、装着部45bは、柱状部45aが挿し込まれる開口を有しており、装着部45bの内周面は、柱状部45aの外周面上をスライドする。
保持機構46は、機枠2cから離れる方向(図6及び図7においては、下方向)の力をキャリパー4に与える押し部46aと、機枠2cに当たることで、キャリパー4が押し部46aから受ける力により機枠2cから離れる方向に所定距離以上移動することを止める止め部46bとを備えている。本実施形態においては、押し部46aは、キャリパー4の装着部45bと機枠2cとの間に配置される弦巻バネである。
そして、第1駆動源42aへの通電が実施されている際には、図6に示すように、止め部46bが機枠2cに当たることで、制動部5,6は、待機位置で保持される。また、第1駆動源42aへの通電が停止され、図7に示すように、制動部5,6が制動位置に位置している際には、止め部46bは、機枠2cから離れている。
本実施形態に係るエレベータ1及び制動装置3の構成については以上の通りであり、次に、本実施形態に係る制動装置3の作用効果について、図8及び図9を参照しながら説明する。なお、図8及び図9は、制動装置3の構造を簡素化して示している共に、作用効果を誇張して示している。
まず、第1加力部7の作用効果について、説明する。
図8に示すように、第1制動部5が制動位置に位置している際に、第1制動部5の被支持面52aと支持部43の支持面43aとが傾斜して交差するように配置されていたとする。斯かる状態から、第1制動部5が待機位置に向けて移動して、被支持面52aと支持面43aとが傾斜して当たると、大きな衝突音が発生したり、衝突音が複数回発生したりする。
そこで、図8においては、第1制動部5が制動位置に位置している際に、被支持面52aと支持面43aとの距離は、上方側ほど小さくなっている。これに対して、第1制動部5が支持部43に当たる際においては、上方側の第1加力部7が第1制動部5に与える力は、下方側の第1加力部7が第1制動部5に与える力よりも大きくなっている。具体的には、第1制動部5が支持部43に当たる際においては、上方側の第1弾性部71の収縮弾性変形量は、下方側の第1弾性部71の収縮弾性変形量よりも大きくなるように調節されている。
これにより、第1制動部5が待機位置に向けて移動することに伴って、被支持面52aと支持面43aとの距離においては、上方側と下方側との差が小さくなる。そして、図9に示すように、被支持面52aと支持面43aとが平行になった状態で、第1制動部5が支持部43に当たることになる。したがって、第1制動部5が支持部43に当たる際の衝突音を小さくすることができる。
また、第1加力部7は、第1制動部5が駆動部42から受ける力と反対の抗力を、第1制動部5に与えている。これにより、第1制動部5が支持部43に当たる際の力を小さくすることができている。したがって、第1制動部5が支持部43に当たる際の衝突音をさらに小さくすることができる。
ところで、第1制動部5が制動位置に位置する際には、第1弾性部71が第1制動部5と離れているため、第1加力部7は、第1制動部5に不必要な抗力を与えていない。一方、第1制動部5が支持部43に当たる際には、第1弾性部71は、第1制動部5と当たり弾性変形することで、第1制動部5に必要な抗力を与えている。
したがって、第1制動部5は、制動位置から待機位置に移動する際において、移動開始時には、第1加力部7からの抗力を受けておらず、支持部43に当たる時には、第1加力部7からの抗力を受けている。これにより、第1制動部5が制動位置から待機位置に移動する時間が不必要に長くなることもなく、第1制動部5は、円滑に移動する。
次に、第2加力部8の作用効果について、説明する。なお、第2加力部8の作用効果は、第1加力部7の作用効果から理解できるため、簡易に説明する。
図9に示すように、第1制動部5が待機位置に位置している際に、第1制動部5の接触面51と回転体2dの側平面とが傾斜して交差するように配置されていたとする。図9においては、第1制動部5が待機位置に位置している際に、第1制動部5の接触面51と回転体2dの側平面との距離は、上方側ほど小さくなっている。
これに対して、第1制動部5が回転体2dに当たる際においては、上方側の第2加力部8が第1制動部5に与える抗力は、下方側の第2加力部8が第1制動部5に与える抗力よりも大きくなっている。具体的には、第1制動部5が回転体2dに当たる際においては、上方側の第2弾性部81の収縮弾性変形量は、下方側の第2弾性部81の収縮弾性変形量よりも大きくなるように調節されている。
これにより、第1制動部5が制動位置に向けて移動することに伴って、第1制動部5の接触面51と回転体2dの側平面との距離においては、上方側と下方側との差が小さくなる。そして、図8に示すように、第1制動部5の接触面51と回転体2dの側平面とが平行になった状態で、第1制動部5が回転体2dに当たることになる。したがって、第2加力部8も、同様に、第1加力部7が有する上記作用効果を奏している。
以上より、本実施形態に係るエレベータ1は、かご1aに接続されるロープ1bが外周に巻き掛けられる綱車2aと、前記綱車2aと一体となって回転する回転体2dと、エレベータ用制動装置3と、を備える。
そして、本実施形態に係るエレベータ用制動装置3は、かご1aに接続されるロープ1bが外周に巻き掛けられる綱車2aと一体となって回転する回転体2dに対して、接することで前記回転体2dを制動するために、前記回転体2dに接する制動位置と前記回転体2dから離れる待機位置との間で移動可能な制動部5と、前記制動部5が移動するように、前記制動部5に力を与える駆動部42と、前記制動部5が待機位置に位置する際に前記制動部5と接し、前記制動部5が制動位置に位置する際に前記制動部5と離れる支持部43と、前記制動部5が制動位置から待機位置に向けて移動して前記支持部43に当たる際に、前記駆動部42が前記制動部5に与える力に対して平行な力を前記制動部5に与える複数の加力部7と、を備え、前記加力部7は、弾性変形することで前記制動部5に力を与える弾性部71と、前記制動部5が前記支持部43に当たる際の、前記弾性部71が弾性変形する量を調節可能な調節部72と、を備える。
斯かる構成によれば、制動部5は、駆動部42から力を与えられることにより、制動位置から待機位置に向けて移動する。そして、加力部7は、弾性部71を備えており、弾性部71は、制動部5が制動位置から待機位置に向けて移動して支持部43に当たる際に、弾性変形している。これにより、弾性部71は、駆動部42が制動部5に与える力に対して平行な力を制動部5に与える。
また、加力部7は、調節部72を備えており、調節部72は、制動部5が支持部43に当たる際の、弾性部71が弾性変形する量を調節することで、制動部5に与える力を調節することができる。これにより、複数の加力部7のそれぞれの調節部72が個別に操作されることで、制動部5は、支持部43に当たる際に、支持部43と平行になれる。したがって、例えば、制動部5が支持部43と平行に当たるため、制動部5が支持部43に当たる際の衝突音を小さくすることができる。
また、本実施形態に係るエレベータ用制動装置3においては、前記弾性部71は、前記制動部5が制動位置から待機位置に向けて移動して前記支持部43に当たる際に、前記駆動部42が前記制動部5に与える力に対する抗力を前記制動部5に与えるように、弾性変形する、という構成である。
斯かる構成によれば、弾性部71が弾性変形することで、制動部5が制動位置から待機位置に向けて移動して支持部43に当たる際に、駆動部42が制動部5に与える力に対する抗力が、制動部5に与えられる。これにより、制動部5が支持部43に当たる際の衝突力が小さくなるため、制動部5が支持部43に当たる際の衝突音を小さくすることができる。
また、本実施形態に係るエレベータ用制動装置3においては、前記調節部72は、前記弾性部71の第1端部71aを前記制動部5又は前記支持部43(本実施形態においては、前記支持部43)に対して固定する固定部72aを備え、前記固定部72aは、前記制動部5が制動位置に位置する際に前記弾性部71が弾性変形することなく復元するように、前記弾性部71の第1端部71aの位置が前記制動部5又は前記支持部43(本実施形態においては、前記支持部43)に対して変更可能に構成される、という構成である。
斯かる構成によれば、調節部72は、弾性部71の第1端部71aを制動部5又は支持部43(本実施形態においては、支持部43)に対して固定する固定部72aを備えている。そして、弾性部71の第1端部71aの位置が、固定部72aにより、制動部5又は支持部43(本実施形態においては、支持部43)に対して変更されることで、制動部5が制動位置に位置する際に、弾性部71が弾性変形することなく復元することもできる。
また、本実施形態に係るエレベータ用制動装置3は、かご1aに接続されるロープ1bが外周に巻き掛けられる綱車2aと一体となって回転する回転体2dに対して、接することで前記回転体2dを制動するために、前記回転体2dに接する制動位置と前記回転体2dから離れる待機位置との間で移動可能な制動部5と、前記制動部5が移動するように、前記制動部5に力を与える駆動部42と、前記制動部5が待機位置から制動位置に向けて移動して前記回転体2dに当たる際に、前記駆動部42が前記制動部5に与える力に対して平行な力を前記制動部5に与える複数の加力部8と、を備え、前記加力部8は、弾性変形することで前記制動部5に力を与える弾性部81と、前記制動部5が前記回転体2dに当たる際の、前記弾性部81が弾性変形する量を調節可能な調節部82と、を備える。
斯かる構成によれば、制動部5は、駆動部42から力を与えられることにより、待機位置から制動位置に向けて移動する。そして、加力部8は、弾性部81を備えており、弾性部81は、制動部5が待機位置から制動位置に向けて移動して回転体2dに当たる際に、弾性変形している。これにより、弾性部81は、駆動部42が制動部5に与える力に対して平行な力を制動部5に与える。
また、加力部8は、調節部82を備えており、調節部82は、制動部5が回転体2dに当たる際の、弾性部81が弾性変形する量を調節することで、制動部5に与える力を調節することができる。これにより、複数の加力部8のそれぞれの調節部82が個別に操作されることで、制動部5は、回転体2dに当たる際に、回転体2dと平行になれる。したがって、制動部5が回転体2dと平行に当たるため、例えば、制動部5が回転体2dに当たる際の衝突音を小さくすることができる。
また、本実施形態に係るエレベータ用制動装置3においては、前記弾性部81は、前記制動部5が待機位置から制動位置に向けて移動して前記回転体2dに当たる際に、前記駆動部42が前記制動部5に与える力に対する抗力を前記制動部5に与えるように、弾性変形する、という構成である。
斯かる構成によれば、弾性部81が弾性変形することで、制動部5が待機位置から制動位置に向けて移動して回転体2dに当たる際に、駆動部42が制動部5に与える力に対する抗力が、制動部5に与えられる。これにより、制動部5が回転体2dに当たる際の衝突力が小さくなるため、制動部5が回転体2dに当たる際の衝突音を小さくすることができる。
また、本実施形態に係るエレベータ用制動装置3は、前記制動部5が待機位置から制動位置に向けて移動する際に、前記制動部5との距離が小さくなるベース部41aを備え、前記調節部82は、前記弾性部81の第1端部81aを前記制動部5又は前記ベース部41a(本実施形態においては、前記ベース部41a)に対して固定する固定部82aを備え、前記固定部82aは、前記制動部5が待機位置に位置する際に前記弾性部81が弾性変更することなく復元するように、前記弾性部81の第1端部81aの位置が前記制動部5又は前記ベース部41a(本実施形態においては、前記ベース部41a)に対して変更可能に構成される、という構成である。
斯かる構成によれば、調節部82は、弾性部81の第1端部81aを制動部5又はベース部41a(本実施形態においては、ベース部41a)に対して固定する固定部82aを備えている。そして、弾性部81の第1端部81aの位置が、固定部82aにより、制動部5又はベース部41a(本実施形態においては、ベース部41a)に対して変更されることで、制動部5が待機位置に位置する際に、弾性部81は、弾性変形することなく、復元することもできる。
なお、エレベータ用制動装置3及びエレベータ1は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、エレベータ用制動装置3及びエレベータ1は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
上記実施形態に係る制動装置3は、制動部5が支持部43に当たる際に制動部5に力を与える第1加力部7と、制動部5が回転体2dに当たる際に制動部5に力を与える第2加力部8とを備えている、という構成である。しかしながら、制動装置3は、斯かる構成に限られない。例えば、制動装置3は、制動部5が支持部43に当たる際に制動部5に力を与える加力部7と、制動部5が回転体2dに当たる際に制動部5に力を与える加力部8とのうち、一方のみ備えられている、という構成でもよい。
また、上記実施形態に係る制動装置3においては、第1弾性部71は、第1制動部5が支持部43に当たる際に、駆動部42が第1制動部5に与える力と反対方向の抗力を第1制動部5に与えるように、弾性変形する、という構成である。しかしながら、制動装置3は、斯かる構成に限られない。例えば、第1弾性部71は、第1制動部5が支持部43に当たる際に、駆動部42が第1制動部5に与える力と同じ方向の力を第1制動部5に与えるように、弾性変形する、という構成でもよい。
また、上記実施形態に係る制動装置3においては、第2弾性部81は、第1制動部5が回転体2dに当たる際に、駆動部42が第1制動部5に与える力と反対方向の抗力を第1制動部5に与えるように、弾性変形する、という構成である。しかしながら、制動装置3は、斯かる構成に限られない。例えば、第2弾性部81は、第1制動部5が回転体2dに当たる際に、駆動部42が第1制動部5に与える力と同じ方向の力を第1制動部5に与えるように、弾性変形する、という構成でもよい。
また、上記実施形態に係る制動装置3においては、第1調節部72は、第1弾性部71の第1端部71aを支持部43に対して固定すると共に、該第1端部71aの位置を支持部43に対して変更できる、という構成である。しかしながら、制動装置3は、斯かる構成に限られない。例えば、第1調節部72は、第1弾性部71の第1端部71aを第1制動部5に対して固定すると共に、該第1端部71aの位置を第1制動部5に対して変更できる、という構成でもよい。
また、上記実施形態に係る制動装置3においては、第2調節部82は、第2弾性部81の第1端部81aをベース部41aに対して固定すると共に、該第1端部81aの位置をベース部41aに対して変更できる、という構成である。しかしながら、制動装置3は、斯かる構成に限られない。例えば、第2調節部82は、第2弾性部81の第1端部81aを第1制動部5に対して固定すると共に、該第1端部81aの位置を第1制動部5に対して変更できる、という構成でもよい。
また、上記実施形態に係る制動装置3においては、第1弾性部71の第1端部71aは、支持部43に対して固定されている、という構成である。しかしながら、制動装置3は、斯かる構成に限られない。例えば、第1弾性部71の第1端部71aは、巻上機2の機枠2cに対して固定されている、という構成でもよい。
一例として、第1弾性部71の第1端部71aが巻上機2の機枠2cに対して固定され、制動部5が制動位置から待機位置に向けて移動することに伴って、第1弾性部71の弾性変形量が変更される、という構成でもよい。要するに、第1弾性部71は、制動部5が制動位置から待機位置に向けて移動して支持部43に当たる際に、駆動部42が第1制動部5に与える力に対して平行な力を第1制動部5に与えるように、固定されていればよい。
また、上記実施形態に係る制動装置3においては、第2弾性部81の第1端部81aは、ベース部41aに対して固定されている、という構成である。しかしながら、制動装置3は、斯かる構成に限られない。例えば、第2弾性部81の第1端部81aは、巻上機2の機枠2cに対して固定されている、という構成でもよい。
一例として、第2弾性部81の第1端部81aが巻上機2の機枠2cに対して固定され、制動部5が待機位置から制動位置に向けて移動することに伴って、第2弾性部81の弾性変形量が変更される、という構成でもよい。要するに、第2弾性部81は、制動部5が待機位置から制動位置に向けて移動して回転体2dに当たる際に、駆動部42が第1制動部5に与える力に対して平行な力を第1制動部5に与えるように、固定されていればよい。
また、上記実施形態に係る制動装置3においては、第1固定部72aは、第1制動部5が制動位置に位置する際に第1弾性部71が弾性変形しないように、第1弾性部71の第1端部71aの位置が支持部43に対して変更可能に構成される、という構成である。しかしながら、制動装置3は、斯かる構成に限られない。例えば、第1固定部72aは、第1制動部5の位置に関わらず弾性変形するように、第1弾性部71の第1端部71aの位置が支持部43に対して変更可能に構成される、という構成でもよい。
また、上記実施形態に係る制動装置3においては、第2固定部82aは、第1制動部5が待機位置に位置する際に第2弾性部81が弾性変更しないように、第2弾性部81の第1端部81aの位置がベース部41aに対して変更可能に構成される、という構成である。しかしながら、制動装置3は、斯かる構成に限られない。例えば、第2固定部82aは、第1制動部5の位置に関わらず第2弾性部81が弾性変更するように、第2弾性部81の第1端部81aの位置がベース部41aに対して変更可能に構成される、という構成でもよい。
また、上記実施形態に係る制動装置3においては、弾性部71,81は、ゴム部材である、という構成である。しかしながら、制動装置3は、斯かる構成に限られない。例えば、弾性部71,81は、例えば、弦巻バネ、板バネ、皿バネといったバネ部材である、という構成でもよい。
また、上記実施形態に係る制動装置3においては、弾性部71,81は、第1端部71a,81aのみ固定されている、という構成である。しかしながら、制動装置3は、斯かる構成に限られない。例えば、図10及び図11に示すように、弾性部71は、第1端部71a及び第2端部71bの両方とも固定されている、という構成でもよい。
また、上記実施形態に係る制動装置3においては、弾性部71,81は、収縮の弾性変形をすることにより、第1制動部5に力を与える、という構成である。しかしながら、制動装置3は、斯かる構成に限られない。例えば、図11に示すように、弾性部71は、伸長の弾性変形をすることにより、第1制動部5に力を与える、という構成でもよい。
図10に係る第1弾性部71の第1端部71aは、第1調節部72(第1固定部72a)により、支持部43に対して固定されており、第2端部71bは、固定部材73により、第1制動部5に対して不動に固定されている。そして、第1制動部5が支持部43に当たる際に、第1弾性部71は、収縮の弾性変形をしている。
これにより、第1制動部5が支持部43に当たる際に、第1弾性部71は、伸長しようとする弾性復元力により、駆動部42が第1制動部5に与える力に対する抗力(図10においては、右方向の力)を、第1制動部5に与えている。なお、図10に係る第1弾性部71は、バネ部材(弦巻バネ)としている。
また、図11に係る第1弾性部71の第1端部71aは、第1調節部72(第1固定部72a)により、ベース部41aに対して固定されており、第2端部71bは、固定部材73により、第1制動部5に対して不動に固定されている。そして、第1制動部5が支持部43に当たる際に、第1弾性部71は、伸長の弾性変形をしている。
これにより、第1制動部5が支持部43に当たる際に、第1弾性部71は、収縮しようとする弾性復元力により、駆動部42が第1制動部5に与える力に対する抗力(図11においては、右方向の力)を、第1制動部5に与えている。なお、図11に係る第1弾性部71は、バネ部材(弦巻バネ)としている。
また、上記実施形態に係る制動装置3は、キャリパー4が回転体2dに対して移動する浮動型キャリパーのディスクブレーキである、という構成である。しかしながら、制動装置3は、斯かる構成に限られない。例えば、図12に示すように、制動装置3は、キャリパー4が回転体2dに対して固定される固定型キャリパー(対向型キャリパー)のディスクブレーキである、という構成でもよい。
斯かる構成においては、制動装置3は、回転体2d及びキャリパー4に対して移動可能な第1制動部5に力を与える加力部7,8だけでなく、回転体2d及びキャリパー4に対して移動可能な第2制動部6に力を与える加力部7,8を備えている。なお、第1制動部5に対して力を与える加力部7,8と、第2制動部6に対して力を与える加力部7,8とのうち、一方のみを備える、という構成でもよい。
また、上記実施形態に係るエレベータ1においては、回転体2dは、綱車2aに連結されている、という構成である。しかしながら、エレベータ1は、斯かる構成に限られない。例えば、図13に示すように、回転体2dは、綱車2aが連結される軸部2eに連結されることで、綱車2aと一体となって回転する、という構成でもよい。