以下に、本発明の実施の形態に係る信号処理方法及び信号処理装置を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施の形態の説明は、本発明を限定するものではなく、適宜変更して実施可能である。
図1は、本発明の実施の形態に係る信号処理方法を実行する信号処理装置10と、センサアレイA1,A2,…,AM及びセンサアレイA1,A2,…,AMが受信する信号との関係を示す模式図である。図2は、本発明の実施の形態に係る信号処理装置10の主要構成の一例を示すブロック図である。図3は、本発明の実施の形態に係る信号処理装置10のデータフローを示す図である。図4は、本発明の実施の形態に係る信号処理方法及び信号処理装置10における到来方向θ(k)、到来方向θ(k)の角度広がりW(k)及び発信源Pの散乱波源を説明する説明図である。図5は、本発明の実施の形態に係る信号処理方法及び信号処理装置10における位相差τを説明する説明図である。図6は、本発明の実施の形態に係る信号処理方法及び信号処理装置10におけるスペクトラム関数PIMU(θ,W,τ)の一例を示す図である。以下、図1から図6を用いて、信号処理装置について説明する。
信号処理装置10は、複数のセンサが並べられ、指向性を有する所定数、すなわち1つ又は複数のセンサアレイにより受信される信号を処理する。信号処理装置10は、本実施形態では、例えば複数であるM個のセンサアレイA1,A2,…,AMにより受信される信号を処理する。具体的には、例えば図1に示すように、信号処理装置10は、複数のセンサアレイと接続される。本実施の形態の複数のセンサアレイは、少なくとも一方向に沿って等間隔で並ぶように設けられて、例えばアレイアンテナのような受信部12を構成する。具体的には、受信部12は、例えば複数のセンサアレイが行列方向に沿って二次元的に配置されたアレイアンテナである。行方向及び列方向のセンサアレイ同士の間隔は、等間隔である。信号処理装置10が処理する信号は、レーダー等に使用される電波及び超音波探傷装置等に使用される超音波が例示されるが、本発明はこれに限定されることはなく、いかなる種類の伝播信号でもよい。
複数のセンサアレイで構成される受信部12と信号処理装置10とは、例えばA/D変換器14を介して接続される。A/D変換器14は、センサアレイにより得られるアナログ信号x(t)をデジタル信号x(k)に変換する。tは、時間であり、kは、離散時間のインデクスである。以下、このデジタル信号を「受信信号」とする。すなわち、受信信号は、複数のセンサアレイにより得られる信号である。このデジタル信号x(k)には、検出対象の信号Sigのアナログ信号がデジタル化された信号と、不要信号Noiのアナログ信号がデジタル化された信号と、が混在する。
複数のセンサアレイは、そのセンサアレイにより構成されるものに応じた信号を受信する。具体的には、例えばアレイアンテナを構成する複数のセンサアレイは、所定の帯域の電波を受信する。図1に示すように、複数のセンサアレイにより受信される信号には、受信することが意図された信号である検出対象の信号Sigと、意図に反して受信されるノイズとしての信号である不要信号Noiと、が混在している。図1では、検出対象の信号Sigの発信源P及び不要信号Noiの発信源P*がそれぞれ一つであるが、一例であってこれに限られるものでなく、一方又は両方が二つ以上であり得る。図1では、センサアレイA1,A2,…,AMに対する検出対象の信号Sigの到来方向を、アナログ信号においてはθ(t)とし、デジタル信号においてはθ(k)としている。また、センサアレイA1,A2,…,AMに対する不要信号Noiの到来方向を、アナログ信号においてはθ*(t)とし、デジタル信号においてはθ*(k)としている。本実施の形態では、信号処理装置10は、到来方向θ(k)を推定する。なお、これらの到来方向は、例えば受信部12等に設けられたセンサアレイA1,A2,…,AMの角度により定められた基準軸Fに対する角度で表される。図1では、θ(t),θ(k),θ*(t),θ*(k)は2次元的な角度であるが、実際には3次元的角度である。θ(t),θ(k),θ*(t),θ*(k)はいずれも不変でなく、複数のセンサアレイ若しくは各々の信号の発信源又はその両方の移動により変化し得る。
信号処理装置10は、複数のセンサアレイの各々により得られる信号を個別に取り扱う。図1では、M個のセンサアレイA1,A2,…,AMにより得られるアナログ信号をx1(t),x2(t),…,xM(t)としている。ここで、Mは2以上の整数である。また、本実施の形態では、これらのアナログ信号がA/D変換器14により変換された後のデジタル信号をx1(k),x2(k),…,xM(k)としている。x(t)は、x1(t),x2(t),…,xM(t)を全て含む表記として用いる。x(k)は、x1(k),x2(k),…,xM(k)を全て含む表記として用いる。
信号処理装置10は、図1に示すように、複数のセンサアレイの各々にウェイトを設定することができる。具体的には、信号処理装置10は、例えば図1に示すウェイトw1 *,w2 *,…,wM *を設定することができる。ウェイトw1 *,w2 *,…,wM *を設定することで、複数のセンサアレイの指向性を任意に設定することができる。すなわち、信号処理装置10は、複数のセンサアレイに指向性を設定することで、複数のセンサアレイにより受信される信号に対して空間的なフィルタリングを施すことができる。具体的には、ウェイトは、センサアレイによる受信信号の振幅及び位相を調節する。受信信号に対してウェイトを適用すると、受信信号の振幅及び位相が調節されることで、ウェイトに対応した角度に対する信号の重み付けが得られる。このように、ウェイトは、センサアレイによる信号の受信角度の調節要素として機能する。
信号処理装置10は、複数のセンサアレイにより得られる信号に基づいた出力を行う。具体的には、信号処理装置10は、例えば図1に示すように、到来方向及び到来方向の角度広がりの推定値として、到来方向θ(k)及び角度広がりW(k)を出力する。すなわち、信号処理装置10は、受信信号に基づいて検出対象の信号Sigの到来方向θ(k)及び到来方向の角度広がりW(k)を推定する機能を有する。
信号処理装置10は、図2に示すように、記憶部16と、演算部20とを備える。記憶部16は、例えばRAM、ROM及びフラッシュメモリー等の記憶装置を有し、演算部20により処理されるソフトウェア・プログラム及びこのソフトウェア・プログラムにより参照されるデータ等を記憶する。図2では、便宜上、これらのソフトウェア・プログラム及びこのソフトウェア・プログラムにより参照されるデータ等をまとめて「プログラムPro」と図示している。また、記憶部16は、演算部20が処理結果等を一時的に記憶する記憶領域としても機能する。演算部20は、記憶部16からソフトウェア・プログラム等を読み出して処理することで、ソフトウェア・プログラムの内容に応じた機能を発揮する。具体的には、演算部20は、位相差設定部22、スペクトラム算出部24、ピーク探索部26、パラメータ算出部28及び推定部30として機能する。位相差設定部22、スペクトラム算出部24、ピーク探索部26、パラメータ算出部28及び推定部30は、図3に示すデータフローを経て、到来方向θ(k)及び角度広がりW(k)を出力する。
本実施の形態に係る信号処理装置10は、演算部20が、発信源Pを複数の散乱波源の集合体とみなして受信信号を処理する。受信信号に含まれる検出対象の信号Sigは、複数のセンサアレイA1,A2,…,AMに対して検出対象の信号Sigの発信源Pがある到来方向θから、複数のセンサアレイA1,A2,…,AMによって受信される。検出対象の信号Sigの発信源Pは、各センサアレイから送波された送信信号を散乱させて、検出対象の信号Sigを構成する信号を発信する複数の散乱波源を有する。具体的には、発信源Pは、図4に示すように、センサアレイA1,A2,…,AMからそれぞれ送波された送信信号を散乱させて、検出対象の信号Sigを構成する信号を発信するP個の散乱波源p1,p2,…,pp,…,pP−1,pPを有する。そのため、検出対象の信号Sigは、発信源Pにおける散乱波源の分布に応じて、すなわち発信源Pの大きさ及び形状に応じて、到来方向の角度広がりWを有する。ここで、到来方向θは、到来方向θ(t),θ(k)を含む概念として後述する受信信号モデルでパラメータとして導入するものであり、複数の散乱波源の方向の中心として定義される。角度広がりWは、到来方向θを中心にW/2広がっている場合の角度広がりとして定義される。角度広がりWは、散乱波源ごとにも存在し、各散乱波源p1,p2,…,pp,…,pP−1,pPにおける角度広がりをそれぞれW1,W2,…,Wp,…,WP−1,WPとしている。角度広がりWは、角度広がりW(t),W(k)を含む概念として後述する受信信号モデルでパラメータとして導入するものであり、角度広がりW1,W2,…,Wp,…,WP−1,WPをすべて含む。
本実施の形態に係る信号処理装置10は、信号の位相差を表す位相差パラメータを受信信号モデル関数に導入して受信信号を処理する。受信信号は、受信部12に含まれる複数のセンサアレイから発せられるアナログ信号である送信信号に対し、受信部12に含まれる複数のセンサアレイから送信信号が発せられてから、送信信号が各散乱波源で散乱して、複数のセンサアレイに受信されるまでの時間である伝播時間だけ遅れた信号となる。そのため、この伝播時間は、受信信号の位相差τに相当する。そこで、信号処理装置10は、この伝播時間を位相差τとみなして受信信号を処理する。位相差τは、散乱波源ごとに決まるパラメータであり、散乱波源p1,…,pp,…,pP−1,pPに対応する位相差をそれぞれτ1,…,τp,…,τP−1,τPとしている。位相差τは、位相差τ1,…,τp,…,τP−1,τPをすべて含む。散乱波源p1,…,pp,…,pP−1,pPから受信するアナログ信号s1(t),…,sp(t),…,sP−1(t),sP(t)は、それぞれ、時間tの関数で表され、同じく時間tの関数で表される送信信号s(t)から位相差τ1,…,τp,…,τP−1,τPだけ遅れた信号であるので、以下の式1のように表される。
位相差τ1,…,τp,…,τP−1,τPは、送信信号が各散乱波源p1,…,pp,…,pP−1,pPに散乱されて受信されるまでの伝播時間であるので、送信信号が各散乱波源p1,…,pp,…,pP−1,pPに散乱されて受信されるまでのそれぞれの距離である、図5に示す各伝播距離l1,…,lp,…,lP−1,lPを、送信信号の伝播速度vで割ることで求められる。位相差τ1,…,τp,…,τP−1,τPは、それぞれ、以下の式2のように表される。
位相差設定部22は、複数のセンサアレイの中心と検出対象の発信源の各散乱波源との伝播距離に応じて、散乱波源ごとに決まる受信信号の位相差を設定する。具体的には、位相差設定部22は、例えばセンサアレイA1,A2,…,AMの中心と検出対象の発信源Pの散乱波源p1,…,pp,…,pP−1,pPのそれぞれとの伝播距離l1,…,lp,…,lP−1,lPに応じて、散乱波源p1,…,pp,…,pP−1,pPごとに決まる受信信号の位相差τ1,…,τp,…,τP−1,τPを設定する。位相差設定部22は、図3に示すように、受信信号x(k)の情報及び送信信号s(t)に関する情報を取得し、これらに基づいて、受信信号モデルに導入する受信信号の位相差τ1,…,τp,…,τP−1,τPを設定する。具体的には、位相差設定部22は、まず、受信信号x(k)の情報及び送信信号s(t)に関する情報を取得し、これらに基づいて、伝播距離lの分布を算出する。伝播距離lは、l1,…,lp,…,lP−1,lPを全て含む表記として用いている。位相差設定部22は、次に、算出した伝播距離lの分布の情報と、送信信号の伝播速度vの情報とに基づいて、具体的には、式2と同様に伝播距離lを伝播速度vで割ることで、位相差τの分布を算出する。位相差設定部22は、算出した位相差τの分布の情報に基づいて、受信信号の位相差τ1,…,τp,…,τP−1,τPを設定し、それぞれ受信信号の位相差を表す位相差パラメータとして、受信信号モデルに導入する。位相差τ1,…,τp,…,τP−1,τPを表す位相差パラメータを、それぞれ位相差パラメータτ1,…,τp,…,τP−1,τPと記載する。位相差設定部22は、デジタル信号である受信信号を処理するために用いる受信信号モデルに、以下の式3で表される位相差関数β1,…,βp,…,βP−1,βPの形で、位相差パラメータτ1,…,τp,…,τP−1,τPを導入する。
式3において、jは虚数単位であり、ωはA/D変換器14によってアナログ信号からデジタル信号に変換する際に用いられる角周波数である。
位相差設定部22は、位相差パラメータτ1,…,τp,…,τP−1,τPを種々の方法で設定することができる。位相差設定部22は、例えば、位相差パラメータτ1,…,τp,…,τP−1,τPを散乱波源p1,…,pp,…,pP−1,pPの位置の関数に近似して設定することができる。位相差設定部22は、具体的には、位相差パラメータτ1,…,τp,…,τP−1,τPを散乱波源p1,…,pp,…,pP−1,pPの位置に線形な関数または散乱波源p1,…,pp,…,pP−1,pPの位置の2次以上の関数に近似して設定することができる。位相差設定部22は、位相差パラメータτ1,…,τp,…,τP−1,τPを散乱波源p1,…,pp,…,pP−1,pPの位置に線形な関数または2次以上の関数に近似して設定することが、後述するスペクトラム算出部24が受信信号モデル関数x(k)の解を求めることを容易にするという点で、好ましい。
スペクトラム算出部24は、受信信号モデルの関数である受信信号モデル関数から、受信信号のスペクトラムを表し、到来方向パラメータθ、角度広がりパラメータW及び位相差パラメータτの関数であるスペクトラム関数PIMU(θ,W,τ)を算出する。図4のように角度広がりを有する受信信号x(k)を表す受信信号モデル関数x(k)は、位相差設定部22が設定した位相差パラメータτの関数として表される位相差関数βpを含む。スペクトラム算出部24は、図3に示すように、位相差パラメータτの関数として表される位相差関数βpの情報を位相差設定部22より取得し、位相差関数βpが導入された受信信号モデル関数x(k)から、以下に述べる過程を経て、スペクトラム関数PIMU(θ,W,τ)を算出する。
受信信号モデル関数x(k)は、具体的には、検出対象の信号Sigに由来する第1項と、不要信号Noiに由来する第2項と、を加算した関数で表される。受信信号モデル関数x(k)の第1項は、各センサアレイからの送信信号を表す送信信号関数s(k)に、到来方向θ(k)を表す到来方向パラメータθ及び到来方向θ(k)の角度広がりW(k)を表す角度広がりパラメータWの関数として表される方向ベクトル関数a(θ+Wp)と、位相差τを表す位相差パラメータτの関数として表される位相差関数βpと、を乗じたものを、全ての散乱波源p1,…,pp,…,pP−1,pPについて足し合わせたものである。受信信号モデル関数x(k)の第2項は、不要信号Noiを表す不要信号関数n(k)である。ここで、送信信号関数s(k)は、送信信号s(t)をA/D変換器14によってアナログ信号からデジタル信号に変換した関数である。方向ベクトル関数a(θ+Wp)は、センサアレイ間の位相差を表現する複素ベクトルであり、散乱波源間の位相差を表現する位相差関数βpとは別の概念の位相差を表現する関数である。方向ベクトル関数a(θ+Wp)及び位相差関数βpは、散乱波源p1,…,pp,…,pP−1,pPごとに表される関数である。この受信信号モデル関数x(k)は、以下の式4で表される。
受信信号モデル関数x(k)は、センサアレイに受信された受信信号のベクトル、すなわちアレイ受信信号ベクトルを表す。式4において、Mはセンサアレイの素子数であり、図1及び図4に示されているMと同じである。また、式4において、Pは散乱波源数であり、図4及び図5に示されているPと同じである。
スペクトラム算出部24は、受信信号モデル関数x(k)において、各散乱波源p1,…,pp,…,pP−1,pPの大きさを極小近似することで、すなわち、発信源Pの大きさ及び形状を一定に保持しつつ、散乱波源数Pを無限大(+∞)に近似することで、pについて1からPまで足し合わせる総和関数を、変数xについて角度広がりパラメータWの範囲、すなわち−W/2から+W/2の範囲まで足し合わせる積分関数に置き換えることができる。各散乱波源p1,…,pp,…,pP−1,pPの大きさを極小近似した受信信号モデル関数x(k)は、以下の式5で表される。
式5において、b(θ,W)は、方向ベクトル関数a(θ+Wp)の要素と位相差関数βpの要素とを含む拡張モードベクトル関数である。
スペクトラム算出部24は、各散乱波源p1,…,pp,…,pP−1,pPの大きさを極小近似した受信信号モデル関数x(k)から、位相差設定部22が位相差パラメータτ1,…,τp,…,τP−1,τPを設定した方法に応じて、拡張モードベクトル関数b(θ,W)の解を求めることができる。スペクトラム算出部24は、例えば位相差設定部22が位相差パラメータτ1,…,τp,…,τP−1,τPを散乱波源p1,…,pp,…,pP−1,pPの位置に線形な関数に近似して設定した場合、すなわち以下の式6で表されるように位相差パラメータτを変数xに線形な関数に近似して設定した場合、受信信号モデル関数x(k)を容易に解くことができ、以下の式7で表されるように拡張モードベクトル関数b(θ,W)の解としての拡張モードベクトルの要素関数bm(θ,W,τ)を求めることができる。
スペクトラム算出部24は、この拡張モードベクトルの要素関数bm(θ,W,τ)から、周知のMUSICのアルゴリズムと同様の方法を用いて、以下の式8で表されるスペクトラム関数PIMU(θ,W,τ)を算出する。
式8において、b(θ,W,τ)は式7のbm(θ,W,τ)を要素とする拡張モードベクトル関数であり、ENは受信信号の空間自己相関行列の固有ベクトルの中で雑音の固有値に対応するものを抽出した行列であり、b(θ,W,τ)の右肩及びENの右肩に記載されたHはエルミート転置を表す。
ピーク探索部26は、スペクトラム算出部24が算出したスペクトラム関数PIMU(θ,W,τ)の到来方向パラメータθ及び角度広がりパラメータWを走査して、スペクトラム関数PIMU(θ,W,τ)が最大となるときの到来方向パラメータθ及び角度広がりパラメータWを求めることで、検出対象の信号Sigを表すピークを探索する。すなわち、ピーク探索部26は、図3に示すように、スペクトラム関数PIMU(θ,W,τ)の情報をスペクトラム算出部24より取得し、スペクトラム関数PIMU(θ,W,τ)の到来方向パラメータθ及び角度広がりパラメータWを走査して、スペクトラム関数PIMU(θ,W,τ)が最大となるときの到来方向パラメータθ及び角度広がりパラメータWを求める。ピーク探索部26は、例えばスペクトラム算出部24が算出したスペクトラム関数PIMU(θ,W,τ)が図6に示すような形状で表される場合、スペクトラム関数PIMU(θ,W,τ)が最大となるときの到来方向パラメータθ及び角度広がりパラメータWを、それぞれ到来方向パラメータθが−9.7度、角度広がりパラメータWが6.5度、と求めることができる。
ピーク探索部26は、検出対象の信号Sigを表すピークを探索する際、位相差パラメータτを種々の方法で処理することができる。ピーク探索部26は、例えば、到来方向パラメータθ及び角度広がりパラメータWに加えて、位相差パラメータτも走査して、ピークを探索することができる。この位相差パラメータτの処理方法では、到来方向パラメータθ及び角度広がりパラメータWの真値が存在していると想定される範囲を位相差パラメータτの走査させる範囲とすることで、到来方向パラメータθ及び角度広がりパラメータWを精度よく算出することができる。
また、ピーク探索部26は、例えば、予め記憶部16に記憶させておいた位相差パラメータτの複数の候補の中から位相差パラメータτを選択し、位相差パラメータτを選択した所定の値に固定して、到来方向パラメータθ及び角度広がりパラメータWを走査して、ピークを探索することもできる。この場合、ピーク探索部26は、位相差パラメータτの全ての候補について、1つずつ、到来方向パラメータθ及び角度広がりパラメータWを走査して、ピークを探索してもよい。この位相差パラメータτの処理方法では、到来方向パラメータθ及び角度広がりパラメータWの真値が存在していると想定される範囲に位相差パラメータτを固定することで、到来方向パラメータθ及び角度広がりパラメータWを素早く算出することができる。
パラメータ算出部28は、受信信号モデル関数x(k)を近似計算することで、第1方程式を算出する。パラメータ算出部28は、具体的には、式7で表される拡張モードベクトルの要素関数bm(θ,W,τ)から、以下に述べる過程を経て、第1方程式を算出する。
パラメータ算出部28は、式7で示される拡張モードベクトルの要素関数bm(θ,W,τ)から、周知のroot−MUSICと同様の方法を適用して、sinc関数の外にある角度広がりパラメータWを除去する近似をすることで、以下の式9で表される拡張モードベクトルの要素関数bm(θ,W,τ)の近似式を導出する。
パラメータ算出部28は、以下の式9で表される拡張モードベクトルの要素関数bm(θ,W,τ)の近似式に、sinc関数に対するマクローリン展開を用いることで、第1方程式である、以下の式10で表される拡張モードベクトルの要素関数bm(θ,W,τ)の近似式を導出する。
パラメータ算出部28は、式8で表されるスペクトラム関数PIMU(θ,W,τ)の分母の成分を0とした、以下の式11で表される第2方程式を算出する。
パラメータ算出部28は、式10で表される第1方程式及び式11で表される第2方程式を解くことで、スペクトラム関数PIMU(θ,W,τ)が最大となるとき、すなわち検出対象の信号Sigを表すピークにおける到来方向パラメータθ及び角度広がりパラメータWを算出する。
パラメータ算出部28は、第1方程式及び第2方程式を解く際、例えば、位相差パラメータτを所定の値に固定して、到来方向パラメータθの初期値を設定して角度広がりパラメータWを算出し、算出した角度広がりパラメータWに基づく到来方向パラメータθの算出と、算出した到来方向パラメータθに基づく角度広がりパラメータWの算出と、を逐次繰り返すことで、検出対象の信号Sigを表すピークにおける到来方向パラメータθ及び角度広がりパラメータWを算出することができる。
パラメータ算出部28は、第1方程式及び第2方程式を解く際に位相差パラメータτを所定の値に固定する場合、例えば、ピーク探索部26と同様に、予め記憶部16に記憶させておいた位相差パラメータτの複数の候補の中から位相差パラメータτを選択し、位相差パラメータτを選択した所定の値に固定することができる。この場合、パラメータ算出部28は、ピーク探索部26と同様に、位相差パラメータτの全ての候補について、1つずつ、検出対象の信号Sigを表すピークにおける到来方向パラメータθ及び角度広がりパラメータWを算出してもよい。この位相差パラメータτの処理方法では、到来方向パラメータθ及び角度広がりパラメータWの真値が存在していると想定される範囲に位相差パラメータτを固定することで、到来方向パラメータθ及び角度広がりパラメータWを素早く算出することができる。
パラメータ算出部28は、第1方程式及び第2方程式を解く際に到来方向パラメータθの初期値を設定する場合、例えば、周知のMUSICと同様の方法を用いて算出される簡易到来方向パラメータ、すなわち、角度広がりパラメータWを用いない簡易受信信号モデル関数と簡易受信信号モデル関数から算出される簡易スペクトラム関数とから算出される簡易到来方向パラメータを、到来方向パラメータθの初期値に設定することができる。この到来方向パラメータθの初期値の設定方法では、周知のMUSICと同様の方法を用いて算出される簡易到来方向パラメータが到来方向パラメータθをパラメータ算出の初期値とすることで、到来方向パラメータθの初期値を真値に近い値に設定することができるので、到来方向パラメータθ及び角度広がりパラメータWを少ない処理量で算出することができる。
推定部30は、ピーク探索部26で求めた到来方向パラメータθ及び角度広がりパラメータW、または、パラメータ算出部28で算出した到来方向パラメータθ及び角度広がりパラメータWに基づいて、到来方向θ(k)及び角度広がりW(k)を推定する。
以上のような構成を有する実施の形態に係る信号処理装置10の作用について以下に説明する。信号処理装置10は、本発明の第1の実施の形態に係る信号処理方法を実行する。図7は、本発明の第1の実施の形態に係る信号処理方法のフローチャートである。信号処理装置10によって実行される本発明の第1の実施の形態に係る信号処理方法について、図7を用いて説明する。
本発明の第1の実施形態に係る信号処理方法では、パラメータ算出部28を用いないので、パラメータ算出部28を有さない信号処理装置10でも実行することができる。本発明の第1の実施形態に係る信号処理方法は、図7に示すように、位相差設定ステップS12と、スペクトラム算出ステップS14と、ピーク探索ステップS16と、推定ステップS18と、を有する。まず、信号処理装置10は、センサアレイA1,A2,…,AMを含む受信部12が受信する信号を、A/D変換器14を介して、受信信号x(k)として取得する。
位相差設定部22は、複数のセンサアレイの中心と検出対象の発信源の各散乱波源との伝播距離に応じて、散乱波源ごとに決まる受信信号の位相差を設定する。具体的には、位相差設定部22は、受信信号モデル関数x(k)に、式3で表される位相差関数β1,…,βp,…,βP−1,βPの形で、位相差パラメータτ1,…,τp,…,τP−1,τPを導入する(ステップS12)。
位相差設定部22は、位相差設定ステップS12において、位相差パラメータτを、角度広がりパラメータWに対して線形近似することが好ましい。具体的には、位相差設定部22は、位相差パラメータτを式6で表されるように線形近似することが好ましい。これにより、スペクトラム算出部24は、受信信号モデル関数x(k)を容易に解くことができる。
スペクトラム算出部24は、位相差設定ステップS12で位相差パラメータが導入された受信信号モデル関数から、信号のスペクトラムを表し、到来方向パラメータ、角度広がりパラメータ及び位相差パラメータの関数であるスペクトラム関数を算出する。具体的には、スペクトラム算出部24は、位相差パラメータτ1,…,τp,…,τP−1,τPが導入された式4で表される受信信号モデル関数x(k)から、式8で表されるスペクトラム関数PIMU(θ,W,τ)を算出する(ステップS14)。
ピーク探索部26は、スペクトラム算出ステップS14で算出されたスペクトラム関数の到来方向パラメータ及び角度広がりパラメータを走査して、スペクトラム関数が最大となるときの到来方向パラメータ及び角度広がりパラメータを求めることで、検出対象の信号を表すピークを探索する。具体的には、ピーク探索部26は、式8で表されるスペクトラム関数PIMU(θ,W,τ)の到来方向パラメータθ及び角度広がりパラメータWを走査して、スペクトラム関数PIMU(θ,W,τ)が最大となるときの到来方向パラメータθ及び角度広がりパラメータWを求めることで、検出対象の信号Sigを表すピークを探索する(ステップS16)。
ピーク探索部26は、ピーク探索ステップS16において、さらに、スペクトラム関数の位相差パラメータを走査することが好ましい。具体的には、ピーク探索部26は、ピーク探索ステップS16において、さらに、式8で表されるスペクトラム関数PIMU(θ,W,τ)の位相差パラメータτを走査することが好ましい。これにより、ピーク探索部26は、到来方向θ(k)の推定精度を高めることができる。
あるいは、ピーク探索部26は、ピーク探索ステップS16において、位相差パラメータを所定の値に固定して、スペクトラム関数の到来方向パラメータ及び角度広がりパラメータを走査することが好ましい。具体的には、ピーク探索部26は、ピーク探索ステップS16において、位相差パラメータτを記憶部16に予め記憶された複数の候補のいずれか1つの所定の値に固定して、スペクトラム関数PIMU(θ,W,τ)の到来方向パラメータθ及び角度広がりパラメータWを走査することが好ましい。この場合、ピーク探索部26は、位相差パラメータτの全ての候補について、1つずつ、到来方向パラメータθ及び角度広がりパラメータWを走査して、ピークを探索してもよい。これにより、ピーク探索部26は、ピーク探索ステップS16を素早く実行することができる。
推定部30は、ピーク探索ステップS16で求めた到来方向パラメータθ及び角度広がりパラメータWに基づいて、到来方向θ(k)及び角度広がりW(k)を推定する。すなわち、推定部30は、ピーク探索ステップS16で求めた到来方向パラメータθ及び角度広がりパラメータWを、それぞれ検出対象の信号Sigの到来方向θ(k)及び角度広がりW(k)として推定する(ステップS18)。
推定部30は、推定ステップS18で推定した検出対象の信号Sigの到来方向θ(k)及び角度広がりW(k)を、記憶部16に記憶させることができる。また、推定部30は、推定ステップS18で推定した検出対象の信号Sigの到来方向θ(k)及び角度広がりW(k)を、信号処理装置10に接続された表示部に表示させることができる。この場合、推定部30は、推定ステップS18で推定した検出対象の信号Sigの到来方向θ(k)及び角度広がりW(k)を、単に数値で表示部に表示させても良いし、情報処理されて作成された画像又は動画等で表示部に表示させても良い。
第1の実施の形態に係る信号処理方法は、以上のように、信号の位相差を表す位相差パラメータτを受信信号モデル関数x(k)に導入しているので、受信信号の発信源Pが大きさを持つ場合に、到来方向θ(k)の推定精度が悪くなることを低減することができる。
信号処理装置10は、本発明の第2の実施の形態に係る信号処理方法を実行する。図8は、本発明の第2の実施の形態に係る信号処理方法のフローチャートである。図9は、本発明の第2の実施の形態に係る信号処理方法におけるパラメータ算出ステップS26に関するフローチャートである。信号処理装置10によって実行される本発明の第2の実施の形態に係る信号処理方法について、図8及び図9を用いて説明する。第2の実施の形態に係る信号処理方法は、第1の実施の形態と同様の処理に第1の実施の形態と同一の符号群を用い、その詳細な説明を省略する。
本発明の第2の実施の形態に係る信号処理方法では、ピーク探索部26を用いないので、ピーク探索部26を有さない信号処理装置10でも実行することができる。本発明の第2の実施の形態に係る信号処理方法は、図8に示すように、位相差設定ステップS12と、スペクトラム算出ステップS14と、第1方程式算出ステップS22と、第2方程式算出ステップS24と、パラメータ算出ステップS26と、推定ステップS18と、を有する。信号処理装置10は、本発明の第2の実施の形態に係る信号処理方法を実行する場合、受信信号x(k)を取得し、位相差設定ステップS12及びスペクトラム算出ステップS14を実行するところまでは、第1の実施の形態に係る信号処理方法と同様の処理をする。
パラメータ算出部28は、スペクトラム算出ステップS14で用いた受信信号モデル関数を近似計算することで、第1方程式を算出する。具体的には、パラメータ算出部28は、スペクトラム算出ステップS14で用いた関数のうち、式7で示される拡張モードベクトルの要素関数bm(θ,W,τ)から、周知のroot−MUSICと同様の方法を適用してsinc関数の外にある角度広がりパラメータWを除去する近似をし、さらにsinc関数に対するマクローリン展開を用いることで、式10で表される拡張モードベクトルの要素関数bm(θ,W,τ)の近似式を導出する。パラメータ算出部28は、この式10で表される拡張モードベクトルの要素関数bm(θ,W,τ)の近似式を、第1方程式とする(ステップS22)。
パラメータ算出部28は、スペクトラム算出ステップS14で算出されたスペクトラム関数の分母を0とおくことで、第2方程式を算出する。具体的には、パラメータ算出部28は、式8で表されるスペクトラム関数PIMU(θ,W,τ)の分母を0とおくことで、式11を算出する。パラメータ算出部28は、この式11を、第2方程式とする(ステップS24)。
パラメータ算出部28は、第1方程式算出ステップS22と第2方程式算出ステップS24とを、この順番で実行しても良いし、逆の順番で実行しても良い。
パラメータ算出部28は、第1方程式算出ステップS22で算出された第1方程式及び第2方程式算出ステップS24で算出された第2方程式を解くことで、式8で表されるスペクトラム関数PIMU(θ,W,τ)が最大となるときの到来方向パラメータθ及び角度広がりパラメータWを算出する(ステップS26)。
推定部30は、パラメータ算出ステップS26で算出した到来方向パラメータθ及び角度広がりパラメータWに基づいて、到来方向θ(k)及び角度広がりW(k)を推定する。すなわち、推定部30は、パラメータ算出ステップS26で算出した到来方向パラメータθ及び角度広がりパラメータWを、それぞれ検出対象の信号Sigの到来方向θ(k)及び角度広がりW(k)として推定する(ステップS18)。
第2の実施の形態に係る信号処理方法は、以上のように、信号の位相差を表す位相差パラメータτを受信信号モデル関数x(k)に導入しているので、受信信号の発信源Pが大きさを持つ場合に、到来方向θの推定精度が悪くなることを低減することができる。また、第2の実施の形態に係る信号処理方法は、第1の実施の形態に係る信号処理方法におけるピーク探索ステップS16を行わないので、高速に到来方向θ(k)及び角度広がりW(k)を推定することができる。
本発明の第2の実施の形態に係る信号処理方法におけるパラメータ算出ステップS26は、図9に示すように、位相差パラメータ固定ステップS32と、到来方向パラメータ初期値設定ステップS34と、角度広がりパラメータ初期値算出ステップS36と、到来方向パラメータ算出ステップS42と、角度広がりパラメータ算出ステップS44と、繰り返し処理回数判定ステップS46と、を有することが好ましい。この場合、パラメータ算出部28は、パラメータ算出ステップS26を素早く実行することができる。
パラメータ算出部28は、パラメータ算出ステップS26において、位相差パラメータτを所定の値に固定する。具体的には、パラメータ算出部28は、パラメータ算出ステップS26において、予め記憶部16に記憶させておいた位相差パラメータτの複数の候補の中から位相差パラメータτを選択し、位相差パラメータτを選択した所定の値に固定する(ステップS32)。パラメータ算出部28は、位相差パラメータτの全ての候補について、1つずつ固定して、パラメータ算出ステップS26を実行してもよい。
パラメータ算出部28は、パラメータ算出ステップS26において、到来方向パラメータθの初期値を設定する。具体的には、パラメータ算出部28は、パラメータ算出ステップS26において、周知のMUSICと同様の方法を用いて算出される簡易到来方向パラメータ、すなわち、角度広がりパラメータを用いない簡易受信信号モデル関数と簡易受信信号モデル関数から算出される簡易スペクトラム関数とから算出される簡易到来方向パラメータを、到来方向パラメータθの初期値に設定することが好ましい(ステップS34)。これにより、パラメータ算出部28は、パラメータ算出ステップS26を真値に近い初期値から実行することができ、パラメータ算出にかかる処理量を少なくすることができる。
パラメータ算出部28は、位相差パラメータ固定ステップS32と到来方向パラメータ初期値設定ステップS34とを、この順番で実行しても良いし、逆の順番で実行しても良い。
パラメータ算出部28は、パラメータ算出ステップS26において、位相差パラメータ固定ステップS32で固定した位相差パラメータτと、到来方向パラメータ初期値設定ステップS34で設定した到来方向パラメータθの初期値と、に基づいて、角度広がりパラメータWを算出する。具体的には、パラメータ算出部28は、パラメータ算出ステップS26において、位相差パラメータ固定ステップS32で固定した位相差パラメータτと、到来方向パラメータ初期値設定ステップS34で設定した到来方向パラメータθの初期値と、を第1方程式及び第2方程式に代入することで、角度広がりパラメータWを算出する(ステップS36)。
パラメータ算出部28は、パラメータ算出ステップS26において、位相差パラメータ固定ステップS32で固定した位相差パラメータτと、直前の処理で算出した角度広がりパラメータWと、に基づいて、到来方向パラメータθを算出する。具体的には、パラメータ算出部28は、パラメータ算出ステップS26において、位相差パラメータ固定ステップS32で固定した位相差パラメータτと、直前の処理で算出した角度広がりパラメータWと、を第1方程式及び第2方程式に代入することで、到来方向パラメータθを算出する(ステップS42)。
パラメータ算出部28は、パラメータ算出ステップS26において、位相差パラメータ固定ステップS32で固定した位相差パラメータτと、直前の処理で算出した到来方向パラメータθと、に基づいて、角度広がりパラメータWを算出する。具体的には、パラメータ算出部28は、パラメータ算出ステップS26において、位相差パラメータ固定ステップS32で固定した位相差パラメータτと、直前の処理で算出した到来方向パラメータθと、を第1方程式及び第2方程式に代入することで、角度広がりパラメータWを算出する(ステップS44)。
パラメータ算出部28は、到来方向パラメータ算出ステップS42及び角度広がりパラメータ算出ステップS44を実行した回数を、繰り返し処理回数としてカウントすることができる。パラメータ算出部28は、カウントした繰り返し処理回数が、予め設定した繰り返し処理回数に到達しているか否かを判定する(ステップS46)。パラメータ算出部28は、カウントした繰り返し処理回数があらかじめ設定した繰り返し処理回数に到達していない場合(ステップS46でNo)、到来方向パラメータ算出ステップS42及び角度広がりパラメータ算出ステップS44をさらに1回ずつ追加で実行する。パラメータ算出部28は、カウントした繰り返し処理回数があらかじめ設定した繰り返し処理回数に到達している場合(ステップS46でYes)、パラメータ算出ステップS26の処理を終了する。
本実施の形態では、パラメータ算出部28は、繰り返し処理回数によってパラメータ算出ステップS26における処理を制御しているが、本発明はこれに限定されることなく、その時点における到来方向パラメータθ及び角度広がりパラメータWの算出結果と、その時点から繰り返し処理回数が1回前の到来方向パラメータθ及び角度広がりパラメータWの算出結果と、の差分によってパラメータ算出ステップS26における処理を制御してもよい。具体的には、パラメータ算出部28は、この差分が所定の閾値より大きい場合、到来方向パラメータ算出ステップS42及び角度広がりパラメータ算出ステップS44をさらに1回ずつ追加で実行し、この差分が所定の閾値以下の場合、パラメータ算出ステップS26の処理を終了することとしてもよい。
信号処理装置10は、本発明の第1の実施の形態に係る信号処理方法の変形例及び第2の実施の形態に係る信号処理方法の変形例を実行することができる。信号処理装置10は、本発明の第1の実施の形態に係る信号処理方法及び第2の実施の形態に係る信号処理方法を実行する場合、位相差設定部22が位相差設定ステップS12において受信信号モデル関数x(k)に、式3で表される位相差関数β1,…,βp,…,βP−1,βPの形で、位相差パラメータτ1,…,τp,…,τP−1,τPを導入しているが、これに限定されることなく、以下の式12で表される位相差関数β1,…,βp,…,βP−1,βPの形で、位相差パラメータτ1,…,τp,…,τP−1,τPを導入してもよい。
式12において、α1,…,αp,…,αP−1,αPは、各散乱波源p1,…,pp,…,pP−1,pPに応じた信号のレベルを表す信号レベル関数である。位相差設定部22は、信号レベル関数α1,…,αp,…,αP−1,αPを位相差関数β1,…,βp,…,βP−1,βPに導入することで散乱波源p1,…,pp,…,pP−1,pPごとに信号レベルを設定することができる。信号レベル関数α1,…,αp,…,αP−1,αPは、一般に未知の関数であるが、探索対象の形状に関する事前知識又は事前情報がある場合、探索対象の形状から推定される送信信号の反射特性を含む関数とすることができる。信号処理装置10は、位相差設定部22が探索対象の形状に関する事前知識又は事前情報を信号レベル関数α1,…,αp,…,αP−1,αPに反映させることで、より精度よく角度広がりW(k)を推定することができる。