以下、本発明に係るロープ振れ抑制ユニットの実施形態について図面を参照しながら説明する。
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係るロープ振れ抑制ユニットを含むロープ振れ抑制装置I、II、IIIを有するエレベータ10が収納された昇降路12内を乗り場(不図示)側から見た正面図であり、図2は、エレベータ10の右側面図である。なお、図1、図2は、ロープ振れ抑制装置I、II、IIIに関しては、その上下方向における設置位置を説明するのが主な目的であるため、ロープ振れ抑制装置I、II、IIIの構成要素の大部分は省略している。
図1、図2に示すように、エレベータ10は駆動方式としてトラクション方式を採用したロープ式エレベータである。昇降路12最上部よりも上の建物14部分に機械室16が設けられている。機械室16には、巻上機18とそらせ車20が設置されている。巻上機18を構成する綱車22とそらせ車20には、複数本のロープからなる主ロープ24が巻き掛けられている(なお、図1において、前記複数本のロープは正確な本数で記載していない。)。
主ロープ24の一端部にはかご26が連結されており、他端部には釣合いおもり28が連結されていて、かご26と釣合おもり28とが主ロープ24でつるべ式に吊り下げられている。
かご26と釣合おもり28との間には、最下端に釣合車30がかけられた複数本のロープからなる釣合ロープ32が垂下されている。本例では、主ロープ24を構成する前記複数本のロープと釣合ロープ32を構成する前記複数本のロープの本数とは同数(本例では、8本)である。
昇降路12内には、一対のかご用ガイドレール34,36と一対の釣合いおもり用ガイドレール38,40とが、上下方向に敷設されている(いずれも、図1、図2において不図示、図4(a)を参照)。
上記の構成を有するエレベータ10において、不図示の巻上機モータにより綱車22が正転または逆転されると、綱車22に巻き掛けられた主ロープ24が走行し、主ロープ24で吊り下げられたかご26と釣合おもり28が互いに反対向きに昇降する。また、これに伴って、かご26と釣合おもり28との間に垂下された釣合ロープ32は、釣合車30において折り返し走行する。
ここで、図2に示すように、主ロープ24において、かご26を吊り下げる部分をかご側主ロープ部分24Aと称し、釣合おもり28を吊り下げる部分を釣合おもり側主ロープ部分24Bと称することとする。また、釣合ロープ32において、かご26から垂下された部分(かご26と釣合車30との間の釣合ロープ32部分)をかご側釣合ロープ部分32Aと称し、釣合おもり28から垂下された部分(釣合おもり28と釣合車30との間の釣合ロープ32部分)を釣合おもり側釣合ロープ部分32Bと称することとする。上記の定義に従えば、主ロープ24に占めるかご側主ロープ部分24Aと釣合おもり側主ロープ部分24Bの長さ(範囲)、および、釣合ロープ32に占めるかご側釣合ロープ部分32Aと釣合おもり側釣合ロープ部分32B長さ(範囲)は、かご26および釣合おもり28の昇降位置によって伸縮(変動)する。
主ロープ24を構成する複数本(本例では8本)のロープM1〜M8の配列について、図3を参照しながら説明する。図3は、綱車22とかご26との間の主ロープ24部分、すなわち、かご側主ロープ部分24Aを表した概念図である。
図3(a)の上図は、綱車22およびかご側主ロープ部分24Aの一部を正面から見た図であり、図3(a)の下図は、かご26を上面から見た図である。図3(a)の下図は、主ロープ24を構成するロープM1〜M8のかご26に対する平面視における連結位置とロープM1〜M8との対応関係を示す図である。図3(b)は、綱車22、かご側主ロープ部分24A、およびかご26の一部を左側方から見た図である。
8本のロープM1〜M8は、図3(a)の上図に示すように、この順で、綱車22に水平方向(綱車22の軸心方向)に等間隔で巻き掛けられている。ロープM1〜M8の下端部は、図3(a)の下図に示すように、奇数番目のロープM1,M3,M5,M7と偶数番目のロープM2,M4,M6,M8とで2列に振り分けて、かご26に連結されている。
このように、2列に振り分けるのは、1列で連結すると、ロープM1〜M8端部をかご26へ連結する止め金具(シャックルロッド)の大きさ(外径)の影響により、綱車22におけるロープM1〜M8の間隔よりも大きくなり、かご26上部の限られたスペースを有効に用いるのに支障があるからである。
かご26への連結位置におけるロープM1,M3,M5,M7の間隔も、ロープM2,M4,M6,M8の間隔も等間隔であり、ロープM1〜M8の水平方向の間隔も等間隔である。よって、綱車22からかご26に至る主ロープ24部分(かご側主ロープ部分24A)のロープM1,M3,M5,M7、ロープM2,M4,M6,M8、およびロープM1〜M8の水平方向の間隔は、上下いずれの位置においても等間隔である。
なお、釣合おもり側主ロープ部分24BにおけるロープM1〜M8の配列の態様も、上記したかご側主ロープ部分24Aと基本的に同様である。また、釣合ロープ32に関しても、その折り返し位置が綱車22になるか釣合車30になるかが異なるだけで(すなわち、上下方向が反対になるだけで)、かご側釣合ロープ部分32A、釣合おもり側釣合ロープ部分32Bにおける複数本のロープの配列は、基本的に、それぞれ、かご側主ロープ部分24A、釣合おもり側主ロープ部分24Bと同様である。
上記の構成を有するエレベータ10が設置される建物14が高層建物であり、エレベータ10の昇降行程が、例えば、100mを超えるような場合、長周期地震や強風によって建物14が揺れた際に生じる主ロープ24や釣合ロープ32の横振れは、上述した理由等から抑制する必要がある。
このため、エレベータ10は、図1、図2に示すように、昇降路12内の上下方向における3箇所にロープ振れ抑制装置I、II、IIIを備えている。ロープ振れ抑制装置I、II、III各々の設置位置について図2を参照しながら説明する。
かご26が建物14の1階に着床しているときの主ロープ24の下端(前記止め金具によるかご26への連結位置)を基準位置Sとする。また、このときの、基準位置Sと綱車22(の軸心)との間の距離をDとする(Dは、かご16が建物14の1階に着床しているときの、かご側主ロープ部分24Aの略全長でもある。)。
ロープ振れ抑制装置Iは、基準位置Sから高さH1=(1/4)・Dとなる辺りに設置される。ロープ振れ抑制装置IIは、基準位置Sから高さH2=(1/2)・Dとなる辺りに設置される。ロープ振れ抑制装置IIIは、基準位置Sから高さH3=(3/4)・Dとなる辺りに設置される。
上記H1、H2、H3の高さに設置する理由は以下の通りである。かご26が建物14の1階に着床しているときに、かご側主ロープ部分24A(釣合おもり側釣合ロープ部分32B)の長さが建物14の高さに最も近くなり、建物14の横揺れに同調して、かご側主ロープ部分24A(釣合おもり側釣合ロープ部分32B)が横振れしやすくなる。
この場合、建物14が1次モードで横揺れするとかご側主ロープ部分24A、釣合おもり側釣合ロープ部分32Bも1次モードで横振れし、振動の腹(すなわち、振幅が最大となる部分)が、およそH2の位置に現れる。建物14が2次モードで横揺れするとかご側主ロープ部分24A、釣合おもり側釣合ロープ部分32Bも2次モードで横振れし、振動の節(すなわち、振幅が最小となる部分)は、およそH2の位置に現れ、振動の腹が、およそH1とH3の位置に現れる。また、建物14が1次モードで横揺れした場合でも、釣合ロープ32にかかっている張力は比較的小さいため、釣合おもり側釣合ロープ部分32Bは2次モードで横振れする可能性がある。
そこで、上記した最も横振れが大きくなる場合において、振動の腹の生じる可能性のある位置にロープ振れ抑制装置I、II、IIIを設置し、当該横振れを効果的に抑制することとしたのである。
もっとも、かご26の位置(着床階)によって、ロープ振れ抑制装置I、II、IIIの設置位置(高さH1、H2、H3)に出現する主ロープ24部分(かご側主ロープ部分24A、釣合おもり側主ロープ部分24B)と釣合ロープ32部分(かご側釣合ロープ部分32A、釣合おもり側釣合ロープ部分32B)が変動する。
表1は、かご26の位置と高さH1、H2、H3各々に出現するロープ部分との対応関係をまとめたものである。
表1において、記号A,B,C,Dの各々は、以下のかご位置を示している。
A:かご26が高さH1より低い位置にあるとき
B:かご26が高さH1と高さH2の間にあるとき
C:かご26が高さH2と高さH3の間にあるとき
D:かご26が高さH3より高い位置にあるとき
表1において、かご位置(A〜D)に対応して、各設置位置(H1〜H3)に出現するロープ部分に「○」を記入している。
ロープ振れ抑制装置I、II、IIIは、いずれも同様の構成なので、ロープ振れ抑制装置IIIを代表にして説明し、ロープ振れ抑制装置I、IIの詳細な説明については省略する。
図4(a)は、かご26が表1における「C」または「B」の位置で停止している状態を示している。すなわち、かご側主ロープ部分24Aと釣合おもり側主ロープ部分24Bが、ロープ振れ抑制装置IIIの振れ止めの対象となっている状態を示している。図4(a)において、かご26の間口方向にX軸を奥行方向にY軸を採って、以下説明する。
図4(a)に示すように、ロープ振れ抑制装置IIIは、4台のロープ振れ抑制ユニット100,200,300,400を有している。
ロープ振れ抑制ユニット100,200,300,400において、基本的に同じ構成部分を指し示す符号の下2桁には共通の番号を付して、その詳細については、いずれかのロープ振れ抑制ユニット100,200,300,400において説明し、それ以外のロープ振れ抑制ユニット100,200,300,400での説明については省略することとする。また、ロープ振れ抑制ユニット100,200,300,400の各々に関し、これらを昇降路12内に設置するための部材に付す符号についても同様とする。
ロープ振れ抑制ユニット100は振れ止めバー102を有する。振れ止めバー102は、本体104と緩衝部材106とを含む。本体104は金属製(例えば、ステンレス鋼やアルミニウム等)であり、例えば、角パイプが用いられる。緩衝部材106は、ウレタンゴムやシリコーンゴム等の弾性体からなる。
緩衝部材106は、帯状をしていて、一方の主面は平坦面に形成され、他方の主面は長さ方向に連続する凹凸形状(本例では、正弦波形状)に形成されている。このような凹凸形状とした理由については後述する。なお、ここで用いる「正弦波形状」は、厳密に正弦関数に従う形状を言うのではなく、単に滑らかに変化する山(凸)と谷(凹)が連続するような波の形状を意味している。
緩衝部材106は、前記平坦面が本体104の一側面に、接着剤(不図示)によって接着されて、本体104に固定されている(取り付けられている)。なお、緩衝部材106の本体104への取り付けは、接着に限らず、ねじを用いても構わない。
振れ止めバー102は、回転動力を発生するアクチュエータ108によって回動される。
図5(a)に示すように、アクチュエータ108は、振れ止めバー102の基端部に連結されている。
昇降路壁42にブラケット114が固定されており、ブラケット114にアクチュエータ108が取り付けられている。ここで、昇降路12は、図4(a)に示すように、本例では、四つの昇降路壁42で囲まれた空間であり、この四つの昇降路壁42を区別する必要のある場合は、符号「42」にアルファベットA,B,C,Dを付すこととする。アクチュエータ108は、釣合おもり28およびかご26の昇降経路外に設置されている。
図5に戻り、アクチュエータ108は、いわゆるスプリングリターン型の公知のアクチュエータである。すなわち、内蔵モータ(不図示)に電力を投入すると(すなわち、電源をオンすると)、当該内蔵モータの動力によって、内蔵スプリング(不図示)が変形されながら出力軸108Aが所定角度(本例では90度)分回動され、電源をオフすると、前記内蔵スプリングの復元力によって、出力軸108Aが前記所定角度分元に戻る(リターンする)構造を有している。
出力軸108Aにトルクリミッタ110を介して振れ止めバー102が連結されている。トルクリミッタ110は、いわゆるフランジタイプの公知のトルクリミッタである。トルクリミッタ110において原節であるボス部に開設された軸穴(いずれも不図示)に出力軸108Aが嵌入されている。
トルクリミッタ110において従節であるフランジ部(不図示)に、フランジ付きシャフト112(以下、単に「シャフト112」と言う。)のフランジが取り付けられている。
シャフト112には、振れ止めバー102の本体104が固定されている。この固定は、例えば、本体104に孔(不図示)を開設し、当該孔にシャフト112を挿入した状態で、シャフト112と本体104を溶接により接合することによりなされる。あるいは、シャフト112に全ネジボルトを用い、本体104に開設した貫通孔(不図示)に前記全ネジボルトを挿通し、本体104から当該突出した全ネジボルト部分にナット(不図示)を締め付けることにより固定しても構わない。
エレベータ10を通常運転している間は、アクチュエータ108の電源はオフされており、前記内蔵スプリング(不図示)の作用によって、振れ止めバー102は、図6(a)において実線で示すように、起立した待機状態に保持されている。
アクチュエータ108の電源をオンすると、振れ止めバー102は、起立した待機状態からアクチュエータ108で水平姿勢になるまで振り下ろされ、当該電源がオンされている間、図6(a)において一点鎖線で示すように、昇降路12内に横たわる作動状態となる。
作動状態からアクチュエータ108の電源がオフされると、振れ止めバー102は、前記内蔵スプリングの復元力によって回動され、待機状態に復帰する。
このように、振れ止めバー102は、アクチュエータ108で回動されて、起立した待機状態と横たわる作動状態とに切り換えられる。
作動状態において振れ止めバー102は、図4(a)に示すように、二つのロープ部分(図示例では、かご側主ロープ部分24Aと釣合おもり側主ロープ部分24B)の側方に横たわる。これにより、一台のロープ振れ抑制ユニット100で、かご側主ロープ部分24Aと釣合おもり側主ロープ部分24Bの一方向の(図示例では、X軸方向に主変位成分を有する)横振れをその抑制対象とすることができる。すなわち、かご側主ロープ部分24A、釣合おもり側主ロープ部分24Bが、X軸方向の主変位成分を有して横振れすると、かご側主ロープ部分24A、釣合おもり側主ロープ部分24Bは、作動状態の振れ止めバー102に当接して(衝突して)それ以上の振れが抑制されることとなる。ここで、X軸方向に主変位成分を有する横振れを、以下、単に「X軸方向の横振れ」と称する。
この場合、振れ止めバー102が二つのロープ部分(図示例では、かご側主ロープ部分24Aと釣合おもり側主ロープ部分24B)から水平方向に受ける衝撃の一部は、振れ止めバー102の一端部(基端部)に設けられたアクチュエータ108で受け止められる。
振れ止めバー102の他端部(先端部)においても前記衝撃を受け止めるべく、ロープ振れ抑制ユニット100は、バックアップ部材116を有している。
バックアップ部材116は、図7に示すように、アーム部116Aとアーム部116Aの先端に設けられた支持部116Bとを有している。バックアップ部材116は、本例では、金属材料(例えば、ステンレス鋼やアルミニウム等)からなる棒材の一端部が直角に屈曲されてなるものである。なお、アーム部と支持部とは、本例のように一体的に形成されたものに限らず、別個に作成されたものを溶接やボルト・ナットなどで接合することとしても構わない。
バックアップ部材116は、アーム部116Aの基端部が回動されて、図7(b)に示すように、昇降路壁42Aに沿って起立した、一点鎖線で示す待機姿勢と、支持部116Bが昇降路12中を振れ止めバー102の先端部の側方位置まで進出した、実線で示す作動姿勢とに切り換えられる。当該側方位置は、作動状態における振れ止めバー102のかご側主ロープ部分24A、釣合おもり側主ロープ部分24Bとは反対側の側方位置である。
バックアップ部材116を回動するため、昇降路壁42Aに固定されたブラケット118にアクチュエータ120が取り付けられており、バックアップ部材116は、トルクリミッタ122を介してアクチュエータ120に連結されている。アクチュエータ120は、図4に示すように、釣合おもり28およびかご26の昇降経路外に設置されている。
アクチュエータ120、トルクリミッタ122は、上述したアクチュエータ108、トルクリミッタ110と、サイズは異なるものの同種のものである。また、アクチュエータ120からトルクリミッタ122を介してバックアップ部材116に至る間の連結の態様も、上述した、アクチュエータ108からトルクリミッタ110を介して振れ止めバー102(本体104)に至る連結の態様と同様である。よって、アクチュエータ120、トルクリミッタ122の構成、およびこれらとバックアップ部材116の連結の態様についての説明は省略する。
エレベータ10を通常運転している間は、アクチュエータ120の電源はオフされており、内蔵スプリング(不図示)の作用によって、バックアップ部材116は、図7(b)において一点鎖線で示すように、昇降路壁42Aに沿って起立した待機姿勢に保持されている。
アクチュエータ120の電源をオンすると、バックアップ部材116は、起立した待機姿勢からアクチュエータ120で水平姿勢になるまで振り下ろされ、当該電源がオンされている間、図7(b)において実線で示すように、支持部116Bが振れ止めバー102の前記側方位置まで進出した作動姿勢となる。
作動状態からアクチュエータ120の電源がオフされると、バックアップ部材116は、前記内蔵スプリングの復元力によって回動され、待機姿勢に復帰する。
このように、バックアップ部材116は、アクチュエータ120で回動されて、上記待機姿勢と上記作動姿勢とに切り換えられる。
作動姿勢において、バックアップ部材116は、横振れするロープ部分(図4(a)の図示例では、かご側主ロープ部分24A、釣合おもり側主ロープ部分24B)の衝突によって水平方向に変位しようとする(図4(a)の図示例では、X軸方向に変位しようとする)振れ止めバー102の先端部を支持部116Bで受け止める。
上述の通り、ロープ振れ抑制ユニット100のバックアップ部材116は、可動式として、エレベータ10の通常運転中は、かご26の昇降経路から退避した待機姿勢とし、振れ止めバー102を支持する必要が生じたときに上記作動姿勢に切り換えた。バックアップ部材216を可動式としたのは、ロープ振れ抑制ユニット200も同様である。このようにした利点については後述する。
一方、ロープ振れ抑制ユニット300のバックアップ部材324は、図4(a)、図4(c)に示すように固定式としている。ロープ振れ抑制ユニット300は、Y軸方向に主変位成分を有して横振れするロープ部分(図4(a)の図示例では、かご側主ロープ部分24A)の振れを抑制するものである。ここで、Y軸方向に主変位成分を有する横振れを、以下、単に「Y軸方向の横振れ」と称する。
バックアップ部材324は、図4(a)に示すように作動状態にあるときの振れ止めバー302の先端部のかご側主ロープ部分24Aとは反対側の側方位置に存するように、昇降路壁42Aに固定されている。
バックアップ部材324は、図4(c)に示すように、頂部が平坦な山形をしており、当該頂部324Aで、Y軸方向に変位しようとする振れ止めバー302の先端部を受け止める。バックアップ部材324の上側の斜面324Bは、待機状態から作動状態に切り換えられる際に、振れ止めバー302が図4(c)の紙面に対し、右に振れた場合の案内面となる。また、下側の斜面324Cは、振れ止めバー302の先端部が下方へ行き過ぎ、かつ右に振れた場合に頂部324Aに戻る際の案内面となる。
図4(a)、図4(c)において、作動状態の振れ止めバー302にバックアップ部材324は、接触した状態で描いているが、実際には、若干の間隙が空いている。なお、若干の間隙が空いているのは、作動状態の振れ止めバー102とバックアップ部材116の支持部116Bとの間も同様である。バックアップ部材324、バックアップ部材116(の支持部116B)が受ける衝撃を考慮すると前記間隙は無いのが好ましいが、現実には隙間の無い状態(接触した状態)とするのは困難だからである。隙間が生じていても、当該隙間が少しであれば、振れ止めバー102、振れ止めバー302からの衝撃を受け止めるのに支障は無い。
上記の構成を有するロープ振れ抑制装置I、II、IIIの各々に対応させて、高さH1、H2、H3の位置に、主ロープ24または釣合ロープ32の横振れの振幅を検出する不図示のセンサーが設けられている。所定の閾値を越える振幅を検出したセンサーに対応するロープ振れ抑制装置が作動される。所定の閾値は、主ロープ24または釣合ロープ32が、長周期地震や強風に伴う建物14揺れに起因して横振れを開始したと認めるに足りる最小の振幅である。
この場合のロープ振れ抑制装置IIIにおけるロープ振れ抑制ユニット100,200,300,400の作動順は、以下の通りである。
(i)振れ止めバー102、202が待機状態から作動状態に切り換えられる。
(ii)バックアップ部材116、216が待機姿勢から作動姿勢に切り換えられる。
(iii)振れ止めバー302、402が待機姿勢から作動姿勢に切り換えられる。
なお、(ii)と(iii)は、上記の逆順でも構わないし、同時でも構わない。
(iii)が終了し、図4(a)に示す状態となった後の、ロープの横振れ抑制について、かご側主ロープ部分24Aを例に説明する。以下、図4(a)を用いる説明において、紙面に向かって左右上下方向(向き)等を指すときは、「紙面に向かって」の前置きは省略する。
長周期地震や強風に伴う建物14の揺れに起因してかご側主ロープ部分24Aが横振れする場合、かご側主ロープ部分24Aを構成するロープM1〜M8の各々は、独立して横振れするものの、障害物が無い場合には、基本的には同じ挙動で横振れする。すなわち、図4(a)に示す配列を維持したまま、横振れする。
Y軸方向の横振れは、振れ止めバー302によって抑制される。かご側主ロープ部分24AがY軸方向上向きに横振れして振れ止めバー302に当接すると、かご側主ロープ部分24Aのそれ以上のY軸方向の変位は阻止される。振れ止めバー302に当接した後、かご側主ロープ部分24AはY軸方向下向きに横振れするが、その変位量は、おおよそ上向きの変位量に止まる。これにより、Y軸方向の横振れの増大を抑制することができる。以上の説明から首肯されるように、主ロープ24または釣合ロープ32における一方向の横振れを抑制するためには、基本的に、主ロープ24または釣合ロープ32に対して当該一方向の片側に振れ止めバーを横たわらせれば足りる。
これに対し、かご側主ロープ部分24AのX軸方向の横振れを抑制するために、かご側主ロープ部分24Aに対して、X軸方向両側に一対の振れ止めバー102、202を設けている。このように両側に設けた理由について、振れ止めバー102のみを設け、振れ止めバー202を設けない場合を仮定し、かご側主ロープ部分24AがX軸に沿って横振れした場合を例に説明する。
かご側主ロープ部分24AがX軸に沿って左向きに横振れし、先ず、ロープM1が距離L1変位して振れ止めバー102に当接した後、ほぼL1の2倍の距離右向きに変位して再び左に向きを変える。ロープM1に続いて、ロープM2,M3,…,M8が次々に振れ止めバー102に当接する。(なお、このときは、ロープM1〜M8は、図4(a)に示す配列から崩れている。)
この場合、ロープM8は、左向きに横振れして振れ止めバー102に当接した後、ほぼL8の2倍の距離右向きに変位して再び左向に向きを変える。
建物14の揺れが続いていて、振動を生じさせるエネルギーが主ロープ24に加わっている間、高さH3の位置において、ロープM1はほぼL1の2倍の振幅で横振れし、ロープM8はほぼL8の2倍の振幅で横振れする。建物14の揺れが収まるとロープM1、ロープM8の横振れも次第に収束していくが、収束初期の振幅の大きさの違いから、ロープM1の横振れが先に収束し、これに大きく遅れてロープM8の横振れが収束する。この結果、かご側主ロープ部分24Aの収束に要する時間が長くなってしまう。そこで、振れ止めバー102に対向させて、もう一本の振れ止めバー202を設け、ロープM8の横揺れの収束時間をロープM1と同等にし、かご側主ロープ部分24Aの収束時間を、振れ止めバー102だけとした場合と比較して、短縮することとしたのである。
もっとも、主ロープや釣合ロープを構成するロープの本数やその配列によっては、一方向の横振れを抑制するため、必ずしも振れ止めバーを一対設ける必要は無く、1本のみでも構わない。すなわち、振れ止めバーを1本とした場合でも、主ロープや釣合ロープを構成する複数本のロープ各々から当該振れ止めバーまでの水平方向の距離に大差が無い場合である。
上記したように、ロープM1がX軸に沿って横振れした場合、すなわち、振れ止めバー102に直交する方向に横振れした場合は、左向きに変位したロープM1は、振れ止めバー102に当接したのち、距離L1のおおよそ2倍の距離右向きに変位する(すなわち、このときの振幅はL1の2倍となる。)。
ロープM1が振れ止めバー102に対し斜め向きに横振れした場合であって、仮に、振れ止めバー102が緩衝部材106を有していない場合(本体104だけの場合)を想定する。ロープM1は本体104に当接(衝突)後も本体104の長手方向に沿って滑るため、ロープM1が本体104に対し直交する向きに振れた場合と比較して、本体104に沿って滑る分、振れを抑制する効果が減殺されてしまう。
そこで、緩衝部材106を設け、その表面を長さ方向に連続する凹凸形状(本例では、波形)に形成した。これにより、ロープM1が振れ止めバー102に対して斜めに当接(衝突)しても、ロープM1は、いずれかの凹部(本例では、波の谷間)に嵌まって、それ以上長手方向に進行するのを可能な限り防止することができる。その結果、ロープM1の変位を振れ止めバー102に対する当接位置に止めることができることとなり、上記した滑りが生じる場合と比較して、ロープM1の横振れを効果的に抑制することができる。
以上の説明から分かるように、前記凹凸形状は、その凹部各々が、少なくともロープM1〜M8各々が嵌まる大きさを有するような形状となっている。
また、緩衝部材106を設けたことにより、ロープM1〜M8から受ける衝撃から本体104が保護されることとなる。
以上説明したように、ロープ振れ抑制装置IIIは、かご側主ロープ部分24AがY軸方向に横振れしたときはロープ振れ抑制ユニット300(振れ止めバー302)によって、X軸方向に横振れしたときはロープ振れ抑制ユニット100(振れ止めバー102)、ロープ振れ抑制ユニット200(振れ止めバー202)によって、横振れが抑制される。
ここで、図4(a)から分かるように、ロープ振れ抑制ユニット300の振れ止めバー302において、振れ止めバー102との交差(立体交差)位置から左側にはかご側主ロープ部分24Aは当接しないため、かご側主ロープ部分24Aの横振れ抑制の観点からは、当該左側の部分は不要である。すなわち、振れ止めバー302は必要以上に長くなっている。これは、振れ止めバー302の先端部を支持するバックアップ部材324を固定式にしているため、基端部からバックアップ部材324が設置されている昇降路壁42Aまで先端部を延ばす必要があるからである。
これに対し、ロープ振れ抑制ユニット100の振れ止めバー102は、かご側主ロープ部分24AのX軸方向の横振れを抑制するに足りるだけの長さとしていて、不必要に長くはなっていない。これは、振れ止めバー102の先端部を支持するバックアップ部材116を可動式にしたからである。すなわち、バックアップ部材116のアーム部116Aの基端部を回動させて支持部116Bを、作動状態にある振れ止めバー102の先端部の側方位置まで進出する構成としたため、振れ止めバー102の当該先端部を昇降路壁42Bまで延出させなくても済むからである。
上述したように、バックアップ部材を可動式にすることにより、固定式とした場合と比較して、振れ止めバーを短縮することができる。その結果、振れ止めバーをその基端部で回動するために必要なトルクが軽減されることとなり、当該振れ止めバーを回動するアクチュエータを小型化することができる。
振れ止めバー102,202,302,402が作動状態とされ、バックアップ部材116,216が作動姿勢とされた状態で、かご側主ロープ部分24A、釣合おもり側主ロープ部分24Bの横振れの大きさが前記所定の閾値以内になると、振れ止めバー102,202,302,402が待機状態に、バックアップ部材116,216が待機姿勢に、それぞれ切り換えられた後、エレベータ10の運転が再開される。切り換えの順序は、上記(i)、(ii)、(iii)の逆であり、以下の通りである。
(iv)振れ止めバー302、402が待機状態に切り換えられる。
(v) バックアップ部材116、216が待機姿勢に切り換えられる。
(vi)振れ止めバー102、202が待機状態に切り換えられる。
なお、(v)と(vi)は、上記の逆順でも構わないし、同時でも構わない。
待機状態の振れ止めバー102,202,302,402は、それぞれ、上記したように、アクチュエータ108,208,308,408の前記内蔵スプリング(不図示)の作用によって、起立した状態に保持されている。
このため、例えば、長周期地震動ではないためロープ振れ抑制ユニット100,200,300,400を作動する必要の無い短周期の地震動が生じた場合、待機状態の振れ止めバー102,202,302,402が倒立振子のように揺動してしまうおそれがある。振れ止めバー102,202,302,402は、狭い昇降路12内に設置されているため、少しの揺れでもその先端が、昇降体であるかご26または釣合おもり28の昇降経路中に進入してしまう。
この状態で、エレベータ10が運転されると、かご26または釣合おもり28が振れ止めバー102,202,302,402に衝突して、振れ止めバー102,202,302,402が破損したり、かご26または釣合おもり28が損傷したりするおそれがある。
そこで、振れ止めバー102,202,302,402が、かご26または釣合おもり28の昇降経路中に不測に進入することを防止するための遮断装置を設けている。
当該遮断装置について、ロープ振れ抑制ユニット100の有する遮断装置126を代表に説明し、ロープ振れ抑制ユニット200,300,400に備えられた遮断装置についての説明および図示は省略することとする。
図6に示すように、遮断装置には、公知の電磁アクチュエータ126が用いられる。電磁アクチュエータ126は、遮断部材であるプランジャ128と、プランジャ128を進退させる駆動部であるソレノイド(不図示)を収納したフレーム130を含む。電磁アクチュエータ126は、ブラケット132を介して昇降路壁42Dに取り付けられている。
電磁アクチュエータ126は、前記ソレノイドに通電することによりプランジャ128が図6(b)に示す状態から、図6(c)に示すようにフレーム130側へ後退し、通電を遮断する(非通電にすると)と図6(b)に示す状態に復帰する構成となっている。
前記ソレノイド(不図示)に非通電の間、プランジャ128は、振れ止めバー102の基端部から先端の間における、待機状態から作動状態へと振り出される(本例では、振り下ろされる)際の進路前方に進入した状態となる。これにより、待機状態において振れ止めバー102が、かご26または釣合おもり28の昇降経路中に不測に進入することが防止される。振れ止めバー102を待機状態から作動状態へ切り換える直前には、前記ソレノイドに通電される。これにより、プランジャ128が、前記進路から後退し、前記進路前方が開放される。
電磁アクチュエータ126によって、待機状態にある振れ止めバー102がかご26または釣合おもり28の昇降経路に不測に進入することが防止できるが、作動状態から待機状態に切り換えられる際に、アクチュエータ108の不具合等により、振れ止めバー102が釣合おもり28やかご26の昇降経路に進入したままとなってしまう事態が想定される。この万一の事態が起きた状態で、エレベータ10の運転が再開されると、かご26または釣合おもり28が振れ止めバー102に衝突し、振れ止めバー102が破損してしまう。
そこで、振れ止めバー102の破損を可能な限り防止するため、図5を参照して説明したように、振れ止めバー102は、アクチュエータ108の出力軸108Aにトルクリミッタ110を介して連結されている。
トルクリミッタ110は、予め設定された遮断トルク以下のトルクは伝達し、遮断トルクを超えるトルクの伝達は遮断する。遮断トルクは、作動状態における振れ止めバー102に上下方向の外力が作用して、出力軸108Aの軸心周りに、アクチュエータ108が振れ止めバー102を回動するのに要するトルクを超える過トルクが生じた場合、当該過トルクの出力軸108Aへの伝達を遮断するような大きさに設定されている。
これによって、昇降経路に進入したままとなった振れ止めバー102に昇降するかご26や釣合おもり28が衝突したとしても、昇降路壁42Dに取り付けられたアクチュエータ108(の出力軸108A)に対し、振れ止めバー102は空転するので、かご26や釣合おもり28から受ける衝撃力が緩和される。その結果、振れ止めバー102の破損が可能な限り防止される。
また、図7を参照して説明したように、バックアップ部材116(の支持部116B)は、作動状態の振れ止めバー102の側方から振れ止めバー102を支持するため(すなわち、バックアップ部材116が作動姿勢にあっても、振れ止めバー102の上下方向は開放されているため)、前記空転を阻害しない。
以上、ロープ振れ抑制装置について、ロープ振れ抑制装置IIIを例に説明してきたが、上記したように、ロープ振れ抑制装置I、IIはロープ振れ抑制装置IIIと同じ構成であり、図1、図2に示すように、昇降路12の上下方向における設置位置が異なるだけである。
この設置位置の違いによって、主ロープ24または釣合ロープ32において、振れ止め対象となる可能性のあるロープ部分が、表1に示したように異なってくる。すなわち、作動状態にある振れ止めバーの側方に存する、振れ止め対象となる対象ロープ部分が異なってくる。
また、図4(a)から明らかなように、ロープ振れ抑制装置I、II、IIIを構成するロープ振れ抑制ユニット100、200、300、400によっても上記対象ロープ部分は異なってくる。
ロープ振れ抑制ユニット300はかご側主ロープ部分24Aまたはかご側釣合ロープ部分32A(かご側ロープ部分)が、ロープ振れ抑制ユニット400は釣合おもり側主ロープ部分24Bまたは釣合おもり側釣合ロープ部分32B(釣合おもり側ロープ部分)が振れ止め対象となる。
また、ロープ振れ抑制ユニット100、200は、設置位置(ロープ振れ抑制装置I、II、IIIのいずれを構成するか)およびかご26の上下方向における位置によって、表1に示す組合せだけ、振れ止め対象となる。すなわち、作動状態において、振れ止めバー102,202は、かご側主ロープ部分24Aとかご側釣合ロープ部分32Aのいずれか一方のロープ部分(かご側ロープ部分)と、釣合おもり側主ロープ部分24Bと釣合おもり側釣合ロープ部分32Bのいずれか一方のロープ部分(釣合おもり側ロープ部分)の両方の側方に横たわって、当該両方のロープ部分を振れ止めの対象とする。
なお、上記の例では、図6に示すように、待機状態では、振れ止めバー102は、回動の中心となる基端部を下側、先端部を上側に向けた起立状態とし、作動状態に切り換えるときには、振れ止めバー102を振り下ろす構成としたが、これに限らず、待機状態では、基端部が上側、先端部が下側となる起立状態とし、作動状態に切り換えるときには、振れ止めバーを振り上げる構成としても構わない。
<実施形態2>
実施形態1において、可動式のバックアップ部材116は、図7を参照しながら説明したように、待機姿勢から、作動状態における振れ止めバー102の、振れ止め対象となる対象ロープ部分とは反対側の側方から支持部116Bが振れ止めバー102の先端部の側方位置まで進出して作動姿勢となった。
これに対し、実施形態2におけるロープ振れ抑制ユニットでは、可動式のバックアップ部材は、待機姿勢から、作動状態における振れ止めバーの先端方向から支持部が振れ止めバーの先端部の側方位置まで進入して作動姿勢となる構成としている。
図8に実施形態2におけるロープ振れ抑制装置IVの平面図を示す。ロープ振れ抑制装置IVは、ロープ振れ抑制装置I(図4)のロープ振れ抑制ユニット300,400に代えて、ロープ振れ抑制ユニット500,600を備えた構成としている。図8において、図4に示したのと実質的に同じ構成要素には、同じ符号を付して、必要に応じて言及するに止める。また、ロープ振れ抑制ユニット500,600において、ロープ振れ抑制ユニット100,200,300,400と基本的に同じ構成を指し示す符号の下2桁には共通の符号を付して、その詳細な説明については省略する。なお、図8においてロープ振れ抑制ユニット100,200の図示は省略している。
ロープ振れ抑制ユニット500,600は同様の構成なので、ロープ振れ抑制ユニット500を代表に説明し、ロープ振れ抑制ユニット600の説明については省略する。
ロープ振れ抑制ユニット500を構成するバックアップ部材534は、図9に示すように、アーム部536とアーム部536の先端に設けられた支持部538とを有している。アーム部536には、アーム部116A(図7)と同様、金属材料(例えば、ステンレス鋼やアルミニウム等)からなる棒材が用いられる。支持部538は、図9に示すように、長方形をした底板部538Aと底板部538Aの両短辺部の各々から直角に立ち上がった第1側壁部538Bおよび第2側壁部538Cとを有し、図9(a)に示す平面視で「コ」の字の形状をしている。支持部538は、金属材料(例えば、ステンレス鋼やアルミニウム等)からなり、底板部538Aがアーム部536の先端に溶接によって接合されている。なお、この接合が、溶接に限らず、例えば、ボルトによっても構わない。
バックアップ部材534は、アーム部536の基端部が回動されて、図9(b)に示すように、昇降路壁42Aに沿って起立した、一点鎖線で示す待機姿勢と、支持部538の第1側壁538Bと第2側壁部538Cとが昇降路12中を振れ止めバー502の先端部の側方位置まで進出した、実線で示す作動姿勢とに切り換えられる。第1側壁部538Bは、作動状態における振れ止めバー502のかご側主ロープ部分24Aとは反対側の側方位置へ進出する。第2側壁部538Cは、作動状態における振れ止めバー502のかご側主ロープ部分24Aが存する側の側方位置へ進出する。
エレベータ10を通常運転している間は、アクチュエータ520の電源はオフされており、内蔵スプリング(不図示)の作用によって、バックアップ部材534は、図9(b)において一点鎖線で示すように、昇降路壁42Aに沿って起立した待機姿勢に保持されている。
アクチュエータ520の電源をオンすると、バックアップ部材534は、起立した待機姿勢からアクチュエータ520で水平姿勢になるまで振り下ろされ、当該電源がオンされている間、図9(b)において実線で示すように、支持部538の第1および第2両側壁部538B、538Cが振れ止めバー502の前記側方位置まで進出した作動姿勢となる。
作動状態からアクチュエータ520の電源がオフされると、バックアップ部材534は、前記内蔵スプリングの復元力によって回動され、待機姿勢に復帰する。
このように、バックアップ部材534は、アクチュエータ520で回動されて、上記待機姿勢と上記作動姿勢とに切り換えられる。
作動姿勢において、バックアップ部材534は、横振れするロープ部分(図8の図示例では、かご側主ロープ部分24A)の衝突によって水平方向に変位しようとする(図8の図示例では、Y軸方向矢印Gの向き(図9(a))に変位しようとする)振れ止めバー502の先端部を支持部538の第1側壁部538Bで受け止める。
第2側壁部538Cは、横振れするロープ部分の衝突を受け、その反動で矢印Rの向き(図9(a))に変位しようとする振れ止めバー502の先端部を受け止める。
上述の通り、ロープ振れ抑制ユニット500のバックアップ部材534は、可動式として、エレベータ10の通常運転中は、かご26の昇降経路から退避した待機姿勢とし、振れ止めバー502を支持する必要が生じたときに上記作動姿勢に切り換えた。バックアップ部材534を可動式としたことにより、固定式とした場合と比較して、振れ止めバーを短縮できるのは、上述した通りである。実際、ロープ振れ抑制ユニット300,400の振れ止めバー302,402(図4(a))と比較して、ロープ振れ抑制ユニット500,600の振れ止めバー502,602は、図8に示すように、短縮されている。
なお、ロープの横振れを抑制するだけであれば(すなわち、図9(a)に示す矢印Gの向きの振れ止めバー502の変位を受け止めるだけであれば)、第2側壁部538Cは不要である。この場合、振れ止めバーは、ストレートの棒体とし、当該棒体の基端部をアクチュエータ520で回動させ、起立した待機姿勢から、水平姿勢に切り換えられたときに、前記棒体の先端部(当該先端部が支持部となる)が、振れ止めバー502の先端部の、作動状態における振れ止め対象となるロープ部分とは反対側の側方位置まで進出するように構成すれば良いのである。
以上、本発明を実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上記した形態に限らないことは勿論であり、例えば、以下のような形態としても構わない。
上記実施形態1、2では、図7(b)、図9(b)に示すように、待機姿勢では、バックアップ部材116,534のアーム部116A,536は、回動の中心となる基端部を下側、先端を上側に向けた起立姿勢(待機姿勢)とし、作動姿勢に切り換えるときには、アーム部116A、536を振り下ろす構成としたが、これに限らず、待機姿勢では、基端部が上側、先端が下側となる起立姿勢とし、作動姿勢に切り換えるときには、アーム部116A,536を振り上げる構成としても構わない。