JP6656677B2 - 化合物又はその塩、抗炎症剤、肺がんに対する抗がん剤、化合物又はその塩の製造方法、炎症性疾患の治療方法及び肺がんの治療方法 - Google Patents

化合物又はその塩、抗炎症剤、肺がんに対する抗がん剤、化合物又はその塩の製造方法、炎症性疾患の治療方法及び肺がんの治療方法 Download PDF

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Description

本発明は、化合物又はその塩、抗炎症剤、肺がんに対する抗がん剤、化合物又はその塩の製造方法、炎症性疾患の治療方法及び肺がんの治療方法に関する。
抗炎症剤及び肺がんに対する抗がん剤として、様々なものが提案されている(例えば、非特許文献1及び2参照)。
和田孝一郎、上崎善規著、「PPARγアゴニストの抗炎症作用 ―基礎・臨床研究の最新動向−」、日本臨牀、2010年、第68巻第2号、p.278−283 Vincent T. DeVita, Jr. and Edward Chu, "A History of Cancer Chemotherapy", Cancer Res, November 1, 2008, Vol.68, issue.21, p.8643-8653
しかしながら、抗炎症剤及び肺がんに対する抗がん剤等として使用可能な、安全性に優れる新たな化合物及びその製造方法が求められている。
そこで、本発明は、抗炎症剤及び肺がんに対する抗がん剤等として使用可能な、安全性に優れる新たな化合物及びその製造方法の提供を目的とする。
前記目的を達成するために、本発明の化合物又はその塩は、式(A)又は式(B)で表される化合物又はその塩であることを特徴とする。
式(A)及び式(B)において、
は、ヘキソース又は水酸基であり、
は、リン酸基又は水酸基である。
本発明の化合物又はその塩の製造方法は、ロドバクター・アゾトフォルマンス(Rhodobacter azotoformans)BP0899株(受託番号 NITE BP−644)及びその培養物の少なくとも一方から、式(A)又は式(B)で表される化合物又はその塩を含む粗抽出液を抽出する粗抽出工程と、
前記粗抽出液から式(A)又は式(B)で表される化合物又はその塩を単離する精製工程と、
を含むことを特徴とする。
前記目的を達成するために、本発明者らは、一連の研究を重ねたところ、ロドバクター・アゾトフォルマンス(Rhodobacter azotoformans)BP0899株(受託番号 NITE BP−644)又はその培養物から得られる式(A)又は式(B)で表される化合物又はその塩が、抗炎症効果及び肺がんに対する抗がん効果を有することを見出し、本発明に到達した。式(A)又は式(B)で表される化合物又はその塩は、安全性が高く、長期にわたり投与可能である。
図1は、本発明の製造方法における粗抽出工程の一例を示すフローチャートである。 図2は、本発明の製造方法における精製工程の一例を示すフローチャートである。 図3は、実施例3における被験液のIL−8濃度を示すグラフである。 図4は、実施例4における被験液の吸光度を示すグラフである。 図5は、実施例5における被験液の吸光度を示すグラフである。 図6は、実施例6における被験液のTNF−α濃度を示すグラフである。 図7は、実施例7における被験液のTNF−α濃度を示すグラフである。 図8は、実施例8−1における被験液のIL−6濃度を示すグラフである。 図9は、実施例9におけるマウスの腫瘍体積を示すグラフである。 図10は、実施例2において、メチルエステル化処理物をGC−MS分析に供した際のマススペクトルである。 図11は、実施例2において、加水分解メチルエステル化処理物をGC−MS分析に供した際のマススペクトルである。 図12は、実施例2において、ピロリジド化処理物をGC−MS分析に供した際のマススペクトルである。 図13は、実施例2において、加水分解ピロリジド化処理物をGC−MS分析に供した際のマススペクトルである。 図14は、実施例2において、図12におけるピーク4の化合物をGC−MS分析に供した際のマススペクトルである。 図15は、実施例2において、図13におけるピークDの化合物をGC−MS分析に供した際のマススペクトルである。 図16Aは、実施例2において、試料溶液をHNMR測定に供した際のスペクトルの一部である。 図16Bは、実施例2において、試料溶液をHNMR測定に供した際のスペクトルの一部である。 図16Cは、実施例2において、試料溶液をHNMR測定に供した際のスペクトルの一部である。 図16Dは、実施例2において、試料溶液をHNMR測定に供した際のスペクトルの一部である。 図17Aは、実施例2において、試料溶液を13CNMR測定に供した際のスペクトルの一部である。 図17Bは、実施例2において、試料溶液を13CNMR測定に供した際のスペクトルの一部である。 図17Cは、実施例2において、試料溶液を13CNMR測定に供した際のスペクトルの一部である。 図17Dは、実施例2において、試料溶液を13CNMR測定に供した際のスペクトルの一部である。 図18は、実施例2において、試料溶液を31PNMR測定に供した際のスペクトルである。 図19は、実施例2において、試料溶液をGC−MS分析に供した際のマススペクトルである。 図20は、実施例2において、図19における、m/z=1417.93のピークの化合物を、GC−MS/MS分析に供した際のマススペクトルである。 図21は、試料溶液をGC−MS分析に供した際のマススペクトルである。 図22は、実施例2において、図21におけるm/z=538.15のピークの化合物をGC−MS/MS分析に供した際のマススペクトルである。 図23は、実施例2において、図22におけるm/z=474.27のピークの化合物をGC−MS/MS/MS分析に供した際のマススペクトルである。 図24は、実施例2において、図22におけるm/z=601.17のピークの化合物をGC−MS/MS/MS分析に供した際のマススペクトルである。 図25は、実施例2において、図24におけるm/z=557.19のピークの化合物をGC−MS/MS/MS/MS分析に供した際のマススペクトルである。 図26は、実施例2において、図24におけるm/z=645.12のピークの化合物をGC−MS/MS/MS/MS分析に供した際のマススペクトルである。 図27は、実施例8−2において、PPARγ遺伝子の発現量を示すグラフである。 図28は、実施例2において、ヒドラジン分解物の4mol/LのKOH処理で遊離した糖鎖部分のゲルろ過パターンを示すグラフである。 図29は、実施例2において、試料AをHNMR測定に供した際のスペクトルである。 図30は、実施例2において、試料Aを2D DQF−COSY測定に供した際のスペクトルである。 図31は、実施例2において、試料Aを2D NOESY測定に供した際のスペクトルである。 図32は、実施例2において、試料Aを2D H−31P HMBC測定に供した際のスペクトルである。 図33は、実施例2における試料Aの模式図である。
本発明の製造方法において、前記粗抽出工程における前記抽出処理が、タンパク質を不溶化する有機溶媒による抽出処理であってもよい。この場合において、前記抽出溶媒は、フェノールであってもよい。
本発明の製造方法では、前記粗抽出工程において、前記抽出処理の前に、前記ロドバクター・アゾトフォルマンス(Rhodobacter azotoformans)BP0899株(受託番号 NITE BP−644)及びその培養物の少なくとも一方について、色素の脱色処理を行ってもよい。この場合において、前記色素の脱色処理は、アセトン、メタノール及びクロロホルムからなる群から選択される少なくとも一つによる脱色処理であってもよい。
本発明の製造方法では、前記粗抽出工程において、前記粗抽出液について濾過処理を行ってもよい。
本発明の製造方法では、前記精製工程において、前記粗抽出液について、酵素処理と、タンパク質を不溶化する有機溶媒による抽出処理とを行ってもよい。この場合において、前記酵素処理は、核酸分解酵素及びタンパク質分解酵素の少なくとも一方による酵素処理であってもよく、前記有機溶媒は、フェノールであってもよい。
本発明の製造方法では、前記精製工程において、前記抽出処理後の抽出液について濾過処理を行ってもよい。
本発明について、以下に詳細に説明する。
<新規化合物>
前述のとおり、本発明の化合物又はその塩は、式(A)又は式(B)で表される化合物又はその塩であることを特徴とする。式(A)及び式(B)において、XとXとの組合せは、ヘキソースとリン酸基、水酸基と水酸基、ヘキソースと水酸基、水酸基とリン酸基の4通りあり、ヘキソースとリン酸基、水酸基と水酸基の組合せが好ましい。Xがヘキソースの場合、例えば、その2位の炭素における水酸基の酸素が、Xの結合先であるヘキソースの4位の炭素に結合している。本発明の化合物又はその塩は、式(A)又は式(B)において、X及びXが、それぞれ、ヘキソース及びリン酸基であれば、式(A1)又は式(B1)で表される化合物又はその塩となり、式(A)又は式(B)において、X及びXが、いずれも水酸基であれば、式(A2)又は式(B2)で表される化合物又はその塩となる。本発明の化合物又はその塩は、以下、「本発明の新規化合物」ともいう。本発明の新規化合物は、例えば、後述の製造方法で得ることができる。ただし、後述の製造方法は例示に過ぎず、本発明を限定するものではない。
本発明の新規化合物において、ヘキソースは、例えば、グルコースであってもよい。
本発明の新規化合物は、いかなる用途に用いてもよいが、例えば、後述の抗炎症剤、肺がんに対する抗がん剤の材料等として利用可能である。本発明の新規化合物は、後述の実施例で実証されているように、NF−κB(Nuclear Factor-kappa B)、TNF−α(Tumor Necrosis Factor−α)及びIL−6(Interleukin−6)等の炎症性サイトカインの生産を抑制する機能を有する。また、本発明の新規化合物は、後述の実施例で実証されているように、Toll様受容体の一種であるTLR4(Toll-like receptor 4)を活性化する機能も有する。TLR4の活性化は、抗炎症作用を有するI型インターフェロンの産生を促すことが知られている(Nina Maeshima and Rachel C. Fernandez, “Recognition of lipid A variants by the TLR4-MD-2 receptor complex”, Frontiers in Cellular and Infection Microbiology, February 2013, volume3, Article3, p.2, FIGURE 2)。したがって、本発明の新規化合物は、抗炎症効果を有する。さらに、本発明の新規化合物は、後述の実施例で実証されているように、肺がんの増殖を抑える機能も有する。
<抗炎症剤及び炎症性疾患の治療方法>
本発明の抗炎症剤は、本発明の化合物又はその塩(前記新規化合物)が有する抗炎症効果により炎症を抑えるものであり、本発明の新規化合物を含んでいる以外は、何ら制限されない。本発明の抗炎症剤により炎症を抑えられる疾患としては、例えば、潰瘍性大腸炎及びクローン病等の炎症性腸疾患、乾癬及び皮膚炎等の炎症性皮膚疾患、脳炎、肝炎、腎炎、肺炎、気管支炎、脈管炎、髄膜炎、甲状腺炎、糖尿病、炎症性胆汁疾患、炎症を伴う癌等があげられ、特に限定されない。本発明の抗炎症剤によれば、本発明の新規化合物の有する抗炎症効果により、炎症に伴う疼痛の鎮痛効果も発揮される。
前記抗炎症剤の剤形は、例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、トローチ剤、液剤等が挙げられ、特に制限されない。また、前記抗炎症剤の組成は、特に制限されず、本発明の新規化合物以外に、例えば、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、吸収促進剤、乳化剤、安定化剤、防腐剤等の各種添加剤等を含んでいてもよい。また、前記抗炎症剤は、通常用いられる製剤化技術等により製造可能である。
本発明の炎症性疾患の治療方法は、前記新規化合物を含む本発明の抗炎症剤を投与する工程を含む。本発明において、「治療」とは、例えば、症状を改善する(良くする)こと、症状を解消(完治)すること、症状の悪化を防止すること、予防等が含まれ、後述の肺がんの治療方法において同様である。前記抗炎症剤を投与する動物種としては、特に制限されないが、例えば、ヒト、又は、サル、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ等の非ヒトの哺乳類、ニワトリ等の鳥類、魚介類等が挙げられる。前記投与方法としては、特に制限されず、例えば、経口投与又は非経口投与があげられ、前記非経口投与は、例えば、経皮吸収、注射、座薬投与等が挙げられる。前記抗炎症剤の投与量は、例えば、動物種、年齢等に応じて適宜設定でき、特に制限されない。
<肺がんに対する抗がん剤及び肺がんの治療方法>
本発明の肺がんに対する抗がん剤は、本発明の化合物又はその塩(前記新規化合物)の有する肺がんに対する抗がん効果により肺がんの増殖を抑えるものであり、本発明の新規化合物を含んでいる以外、何ら制限されない。また、本発明の肺がんの治療方法は、前記新規化合物を含む本発明の肺がんに対する抗がん剤を投与する工程を含む。前記抗がん剤の剤形、前記抗がん剤を投与する動物種及び前記抗がん剤の投与方法は、前記抗炎症剤の剤形、前記抗炎症剤を投与する動物種及び前記抗炎症剤の投与方法と同様である。
<新規化合物の製造方法>
前述のとおり、本発明の化合物又はその塩(前記新規化合物)の製造方法は、ロドバクター・アゾトフォルマンス(Rhodobacter azotoformans)BP0899株(受託番号 NITE BP−644)及びその培養物の少なくとも一方から、式(A)又は式(B)で表される化合物又はその塩を含む粗抽出液を抽出する粗抽出工程と、
前記粗抽出液から式(A)又は式(B)で表される化合物又はその塩を単離する精製工程と、
を含むことを特徴とする。
〔粗抽出工程〕
前述のとおり、前記粗抽出工程は、ロドバクター・アゾトフォルマンス(Rhodobacter azotoformans)BP0899株(受託番号 NITE BP−644)及びその培養物の少なくとも一方から、式(A)又は式(B)で表される化合物又はその塩を含む粗抽出液を抽出する工程である。
まず、前記ロドバクター・アゾトフォルマンス(Rhodobacter azotoformans)BP0899株(受託番号 NITE BP−644)及びその培養物の少なくとも一方について説明する。前記ロドバクター・アゾトフォルマンス(Rhodobacter azotoformans)BP0899株(受託番号 NITE BP−644)及びその培養物の少なくとも一方は、下記(1)〜(30)の菌学的特徴を有することが好ましい。なお、前記BP0899株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に受託番号 NITE P−644で寄託され(受託日:2008年 9月12日)、さらに、受託番号 NITE BP−644で国際寄託されている(移管日:2010年10月27日)。
(1)細胞の形:桿状形又は卵形
(2)多形性:なし
(3)細胞の大きさ:0.8μm×1.0μm
(4)運動性の有無:あり
(5)胞子の有無:なし
(6)普通寒天培養における光沢:あり
(7)普通寒天培養における色素産生:あり
(8)普通ブイヨン培養における表面発育の有無:なし
(9)普通ブイヨン培養における培地の混濁の有無:あり
(10)ゼラチン穿刺培養におけるゼラチン液化:陰性
(11)リトマス・ミルク培養における凝固:なし
(12)リトマス・ミルク培養における液化:なし
(13)グラム染色性:陰性
(14)硝酸塩の還元:なし
(15)脱窒反応:なし又はあり
(16)MRテスト:陰性
(17)インドール産生:なし
(18)硫化水素の生成:なし
(19)デンプンの加水分解:なし
(20)クエン酸の利用(Christensen):なし
(21)無機窒素源の利用(アンモニウム塩):あり
(22)カタラーゼの生成:陽性
(23)オキシダーゼの生成:陽性
(24)嫌気的生育性:あり
(25)O−Fテスト(酸化/発酵):陰性/陰性
(26)β−ガラクトシダーゼ活性:陰性
(27)アルギニンジヒドロラーゼ活性:陰性
(28)リジンデカルボキシラーゼ活性:陰性
(29)トリプトファンデアミナーゼ活性:陰性
(30)ゼラチナーゼ活性:陰性
前記BP0899株の16S rRNAの塩基配列は、配列番号1で表される塩基配列であることが好ましい。
前記BP0899株及びその培養物の少なくとも一方は、暗所での好気培養条件下で、さらに、例えば、下記(31)の表に示す性質を示してもよい。なお、同表において、「−」は産生なしを、「+」は産生ありを示す。
(31)糖類からの酸産生及びガス産生
基質 酸産生/ガス産生
L−アラビノース −/−
D−グルコース −/−
D−フラクトース −/−
マルトース −/−
ラクトース −/−
D−ソルビトール −/−
イノシトール −/−
D−キシロース −/−
D−マンノース −/−
D−ガラクトース −/−
サッカロース −/−
トレハロース −/−
グリセリン −/−
前記菌学的特徴は、例えば、前培養後、さらに本培養した結果から評価してもよい。前記前培養は、例えば、普通寒天培地に前記BP0899株を植菌し、30℃で24時間培養して行ってもよい。前記本培養の条件は、各菌学的特徴の評価方法に応じて、適宜設定できる。具体的には、前記(1)〜(5)の培養条件は、例えば、普通寒天培地を用い、30℃、暗所での好気培養であり、前記(6)〜(7)の培養条件は、例えば、普通ブイヨン培地を用い、30℃、明所での嫌気培養であり、前記(8)〜(12)の培養条件は、例えば、各培地を用い、30℃、暗所での好気培養であり、前記(13)、(14)、(16)、(17)、(19)〜(23)、(25)の酸化テスト、(26)、(29)、(30)及び(31)は、例えば、暗所での好気培養であり、(15)、(18)、(24)、(25)の発酵テスト、(27)及び(28)は、例えば、暗所での嫌気培養である。これらの菌学的特徴の試験方法としては、特に制限されず、従来公知の方法を採用できる。具体的には、例えば、Barrow G.I.及びFeltham R.K.A.著「Cowan and Steel‘s Manual for the Identification of Medical Bacteria.」(イギリス)3rd edition Cambridge University Press 1993年、坂崎ら著「新 細菌培地学講座・下」(東京)第二版 近大出版 1988年、長谷川編著「微生物の分類と同定(下)」(東京)学会出版センター 1985年、土壌微生物研究会編「新編 土壌微生物学実験」(東京)養賢堂 1992年等に記載の方法が挙げられる。前記(15)の試験方法は、例えば、前記「微生物の分類と同定(下)」記載の駒形らの方法、Giltay培地を用いた前記「新編 土壌微生物学実験」記載の方法、PYN培地を用いた下水法等を採用できる。前記駒形らの方法は、1%硝酸ナトリウム肉汁を用いた嫌気培養条件下で、生育及びガス形成が認められたものを脱窒反応陽性と判定する。前記Giltay培地を用いた方法は、ダーラム管入り前記Giltay培地(pH7.0〜7.2)を用いた嫌気培養条件下で、ガス発生及び濃青色に呈色したものを脱窒反応陽性と判定する。なお、前記Giltay培地は、A液(KNO 1g、アスパラギン1g、1%ブロモチモールブルー・アルコール溶液5mL及び蒸留水500mL)及びB液(クエン酸ナトリウム8.5g、MgSO・7HO 1g、FeCl・6HO 0.05g、KHPO 1g、CaCl・6HO 0.2g及び蒸留水500mL)を混合した培地である。また、前記試験方法には、例えば、市販の細菌同定キットを使用してもよい。前記キットとしては、特に制限されないが、例えば、細菌同定キット API20E(ビオメリュー社製)等を使用できる。
前記BP0899株及びその培養物の少なくとも一方は、例えば、さらに、下記(32)〜(40)の菌学的特徴を有してもよい。
(32)コロニーの色:赤色
(33)ゼラチン穿刺培養:生育しない
(34)VPテスト:陰性
(35)クエン酸の利用(Koser):あり
(36)無機窒素源の利用(硝酸塩):あり
(37)ウレアーゼ活性:陰性
(38)生育するpH範囲:5〜9
(39)D−マンニトールからの酸産生:産生あり
(40)D−マンニトールからのガス産生:産生なし
前記(32)〜(40)の菌学的特徴の試験方法としては、特に制限されず、従来公知の方法を採用できる。具体的には、例えば、前述の文献等に記載の方法が挙げられる。また、前記試験方法には、例えば、市販の細菌同定キットを使用してもよい。前記キットとしては、特に制限されないが、例えば、前述の細菌同定キット等を使用できる。
前記BP0899株の採取源としては、特に限定されず、例えば、土壌、海水、川水、湖水、沼水等が挙げられる。また、前記土壌としては、例えば、陸地、海底、川底、湖底及び沼底の土、砂及び泥土等が挙げられ、特に限定されない。
前記BP0899株の単離方法としては、例えば、従来公知の採取法、培養法等を用いることができ、特に制限されない。前記単離方法としては、例えば、採取源が湖水の場合、採取した湖水をフィルター等によりろ過し、このろ液を寒天培地等で培養し、得られたコロニーから前記BP0899株を単離してもよい。また、例えば、採取源が泥土の場合、採取した泥土を緩衝液等により懸濁後、この懸濁液を遠心分離し、得られた上清を寒天培地等で培養し、得られたコロニーから前記BP0899株を単離してもよい。前記単離したBP0899株は、さらに、例えば、液体培地中で培養してもよい。
前記BP0899株の培養において、培地は、特に限定されず、例えば、低級脂肪酸添加培地、リンゴ酸添加培地、L−乾燥標品復元用培養基802「ダイゴ」(日本製薬(株)製)、MYS培地(平石及び北川、Bulletin of the Japanese Society of Scientific Fisheries、1984年、50巻、11号、p.1929−1937)、改変MYS培地、生育用培地等が挙げられ、好ましくは、低級脂肪酸添加培地、リンゴ酸添加培地、L−乾燥標品復元用培養基802「ダイゴ」(日本製薬(株)製)である。
前記低級脂肪酸添加培地及び前記リンゴ酸添加培地としては、例えば、下記表1の基礎培地に、ビオチン、ビタミンB、ニコチン酸、低級脂肪酸又はリンゴ酸のナトリウム塩を添加した培地が挙げられる。前記低級脂肪酸としては、特に制限されないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、乳酸等が好ましい。
前記改変MYS培地、生育用培地としては、例えば、下記表2及び表3の組成の培地が挙げられる。
前記培養において、温度範囲は、特に限定されないが、例えば、23〜39℃、30℃である。
また、前記培養において、pH範囲は、特に限定されないが、例えば、pH5.5〜8.5、6.0〜8.5、7.0である。
前記培養は、例えば、好気的条件下で行ってもよく、嫌気的条件下で行ってもよく、特に制限されないが、好ましくは、嫌気的条件下である。また、前記培養時の光条件も、特に制限されず、例えば、暗黒条件でもよく、照明条件でもよいが、好ましくは、2000ルクス〜10000ルクスの照度下である。前記培養は、例えば、密閉照明式培養槽内で行ってもよい。また、前記密閉照明式培養槽内に備えられた撹拌装置を用いて、培養液を撹拌しながら培養してもよい。
前記培養時間は、特に制限されず、例えば、前記BP0899株の増殖が定常期に達するまでであってもよい。前記BP0899株の増殖が、約72時間以内に定常期に達する培養条件下の場合、前記培養時間は、例えば、72時間であってもよい。
前述のように、前記BP0899株の16S rRNAの塩基配列は、配列番号1で表される塩基配列であることが好ましい。
前記16S rRNAの塩基配列は、例えば、前述の方法等により、単離及び培養した前記BP0899株から、DNAを抽出し、プライマー等を用いて決定できる。前記DNAの抽出及び前記塩基配列の決定方法は、例えば、常法を用いることができ、特に制限されない。また、前記プライマーは、特に制限されないが、例えば、以下のプライマー等が挙げられる。
(プライマー)
9F (配列番号2)
5’−GAGTTTGATCCTGGCTCAG−3’
339F (配列番号3)
5’−CTCCTACGGGAGGCAGCAG−3’
785F (配列番号4)
5’−GGATTAGATACCCTGGTAGTC−3’
1099F (配列番号5)
5’−GCAACGAGCGCAACCC−3’
536R (配列番号6)
5’−GTATTACCGCGGCTGCTG−3’
802R (配列番号7)
5’−TACCAGGGTATCTAATCC−3’
1242R (配列番号8)
5’−CCATTGTAGCACGTGT−3’
1541R (配列番号9)
5’−AAGGAGGTGATCCAGCC−3’
前記BP0899株の培養物としては、例えば、前記BP0899株の菌体、前記BP0899株の培養上清、前記BP0899株の菌体抽出物等が挙げられ、特に限定されない。
前記培養物は、例えば、前記菌体の処理物、前記培養上清の処理物、前記菌体抽出物の処理物等でもよく、特に限定されない。前記処理物としては、特に限定されないが、例えば、前記培養物の濃縮物、乾燥物、凍結乾燥物、溶媒処理物、界面活性剤処理物、酵素処理物、タンパク質分画物、超音波処理物、磨砕処理物等が挙げられる。また、前記培養物は、例えば、前記菌体、前記培養上清、前記菌体抽出物、前記菌体の処理物、前記培養上清の処理物、前記菌体抽出物の処理物等の混合物でもよい。前記混合物としては、任意の組み合わせ及び比率で混合することができ、特に制限されない。前記組み合わせとしては、特に制限されないが、例えば、前記菌体及び前記培養上清の混合物等が挙げられる。
図1のフローチャートに、前記粗抽出工程の一例を示す。図示のとおり、本例の前記粗抽出工程は、脱色処理(ステップS11)と、抽出処理(ステップS12)と、濾過処理(ステップS13)と、を含む。
(1)脱色処理(ステップS11)
まず、前記ロドバクター・アゾトフォルマンス(Rhodobacter azotoformans)BP0899株(受託番号 NITE BP−644)又はその培養物について、色素の脱色処理を行う。前記色素の脱色処理は、特に制限されず、例えば、有機溶媒による脱色処理があげられる。前記有機溶媒は、例えば、アセトン、メタノール、クロロホルム及びそれらの混合溶媒等があげられる。前記脱色処理は、例えば、前記菌体又は前記培養物を前記有機溶媒と混合することによって行える。具体的には、例えば、ビーカー内の前記BP0899株の凍結乾燥菌体10g〜60gに対し、アセトン25mL〜150mLを加え、スターラーを用いて十分に撹拌する。つぎに、前記撹拌した溶液の上澄みを50mLコニカルチューブに移し、2000rpm〜5000rpm、5分〜10分の条件で遠心分離し、得られた上清を除去し、沈殿物にアセトン20mL〜40mLを加え、前記ビーカーに戻す。この操作を、前記BP0899株の色素の色(褐色)を目視で認められなくなるまで繰り返した後、前記沈殿物を、アスピレーターを用いて恒量になるまで減圧乾燥し、脱色された乾燥菌体を得る。
(2)抽出処理(ステップS12)
つぎに、前記脱色処理後の菌体又は培養物を、タンパク質を不溶化する有機溶媒で処理し、タンパク質の除去を行う。前記有機溶媒は、例えば、フェノール等があげられる。前記抽出処理は、例えば、前記菌体又は培養物を、前記有機溶媒及び水性溶媒と混合し、前記有機溶媒により不溶化したタンパク質を前記有機溶媒の相に分配させ、前記水性溶媒の相に、目的とする前記化合物を分配させる。具体的には、例えば、前記ビーカー内の脱色乾燥菌体10g〜60gに、前記脱色乾燥菌体の濃度が60mg/mL〜90mg/mLとなるように、注射用水を加える。つぎに、90%フェノールを前記注射用水と等量加え、ホットスターラー上で65℃〜70℃で20分〜40分撹拌し、これを初回の抽出とする。そして、前記撹拌した溶液を10℃以下になるまで冷却した後、遠心分離用チューブを用いて、8000rpm〜20000rpm、20分〜60分、2℃〜10℃の条件で遠心分離することにより、フェノール相と水相とに分離し、得られた前記水相を50mLコニカルチューブに回収し、前記遠心分離用チューブに残ったフェノール相に、回収した水相と等量の注射用水を入れ、前記初回の抽出と同様の操作を繰り返す(2回目の抽出)。さらに、前記初回の抽出と同様の操作をもう一度繰り返す(3回目の抽出)。このようにして、3回分の抽出により得られた水相500mL〜1000mLを回収する。
(3)濾過処理(ステップS13)
つぎに、抽出処理で得られた水相に、濾過処理を施し、前記水相に混入した有機溶媒(前記抽出処理で用いたフェノール等の有機溶媒)を除去する。前記濾過としては、例えば、限外濾過等があげられる。前記濾過における分画分子量は、例えば、7000であり、前記分画分子量未満の分子を除去することが好ましい。具体的には、例えば、前記回収した水相を、分画分子量7000の透析チューブに入れ、外液を蒸留水1L〜10Lとし、透析を行う。外液にフェノールの吸収波長である270nmにおける光の吸収が認められなくなるまで、前記透析を繰り返し行い、内液を、前記本発明の新規化合物を含む粗抽出液として回収する。
〔精製工程〕
図2のフローチャートに、前記精製工程の一例を示す。図示のとおり、本例の前記精製工程は、酵素処理(ステップS21)と、抽出処理(ステップS22)と、濾過処理(ステップS23)と、を含む。
(1)酵素処理(ステップS21)
前記粗抽出工程で得られた前記本発明の新規化合物を含む粗抽出液について、酵素処理を行う。前記酵素処理は、特に制限されず、例えば、核酸分解酵素による処理、タンパク質分解酵素による処理があげられ、いずれか一方の処理でもよいし、両方の処理でもよい。後者の場合、その順序は、特に制限されないが、例えば、核酸分解酵素による処理を行った後、タンパク質分解酵素による処理を行うことができる。
まず、前記粗抽出液について、核酸分解酵素による処理を施す。前記核酸分解酵素は、特に制限されず、例えば、RNA分解酵素、DNA分解酵素があげられる。前記RNA分解酵素としては、特に限定するものではないが、例えば、シグマ社製のRibonuclease A、和光純薬工業(株)製のRibonuclease A、ロシュ社製のRibonuclease A等を用い得る。前記DNA分解酵素としては、特に限定するものではないが、例えば、シグマ社製のDeoxyribonuclease I、和光純薬工業(株)製のDeoxyribonuclease I、ロシュ社製のDeoxyribonuclease I等を用い得る。具体的には、例えば、前記粗抽出液に、0.2mg/mL〜1mg/mLのRNA分解酵素と、1μg/mL〜10μg/mLのDNA分解酵素とを添加し、30℃〜40℃で4時間〜24時間インキュベートする。
つぎに、前記粗抽出液について、タンパク質分解酵素による処理を施す。前記タンパク質分解酵素としては、特に限定するものではないが、例えば、シグマ社製のProteinase K、和光純薬工業(株)製のProteinase K、ロシュ社製のProteinase K等を用い得る。具体的には、例えば、前記粗抽出液に、100μg/mL〜300μg/mLのタンパク質分解酵素を添加し、40℃〜50℃で2時間〜24時間インキュベートする。
(2)抽出処理(ステップS22)
つぎに、前記粗抽出液を、タンパク質を不溶化する有機溶媒で処理し、タンパク質の除去を行う。前記有機溶媒は、例えば、フェノール等があげられる。具体的には、例えば、前記酵素処理後の抽出液を、2000rpm〜5000rpm、20分〜60分の条件で遠心分離する。そして、得られた沈殿画分約1mL〜10mLと上清画分約50mL〜100mLとのうち、前記沈殿画分を、分画分子量50000〜100000の限外濾過チューブに入れ、外液を蒸留水5mL〜15mLとし、限外濾過を行う。得られた内液に、注射用水10mL〜60mLと90%フェノール10mL〜60mLとを加え、ホットスターラー上で65℃〜70℃で20分〜40分撹拌し、これを初回の抽出とする。そして、前記撹拌した溶液を10℃以下になるまで冷却した後、遠心分離用チューブを用いて、8000rpm〜20000rpm、20分〜60分、2℃〜10℃の条件で遠心分離することにより、フェノール相と水相とに分離し、得られた前記水相は、50mLコニカルチューブに回収し、前記遠心分離用チューブに残ったフェノール相に、回収した水相と等量の注射用水を入れ、前記初回の抽出と同様の操作を繰り返す(2回目の抽出)。さらに、前記初回の抽出と同様の操作をもう一度繰り返す(3回目の抽出)。このようにして、3回分の抽出操作の水相を、計60mL〜120mL回収する。
(3)濾過処理(ステップS23)
つぎに、抽出処理で得られた水相に、濾過処理を施し、前記水相に混入した有機溶媒(前記抽出処理で用いたフェノール等の有機溶媒)を除去する。前記濾過としては、例えば、限外濾過等があげられる。前記濾過における分画分子量は、例えば、50000〜100000であり、前記分画分子量未満の分子を除去することが好ましい。具体的には、例えば、前記回収した水相を、分画分子量7000の透析チューブに入れ、外液を蒸留水0.5L〜1Lとし、24時間〜96時間透析を行う。得られた内液を、分画分子量50000〜100000の限外濾過チューブに入れ、外液を蒸留水5mL〜15mLとし、限外濾過を行う。得られた内液を凍結乾燥することにより、本発明の新規化合物である、式(A)又は式(B)で表される化合物又はその塩が得られる。
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、下記の実施例に限定されない。市販の試薬は、特に示さない限り、それらのプロトコルに基づいて使用した。
〔実施例1〕
下記方法により、式(A)で表される化合物及び式(B)で表される化合物を製造した。
〔1.粗抽出工程〕
(1−1)脱色処理(ステップS11)
ビーカー内の前記BP0899株の凍結乾燥菌体20.03gに対し、アセトン50mLを加え、スターラーを用いて10分撹拌した。つぎに、前記撹拌した溶液の上澄みを50mLコニカルチューブに移し、2000rpm、5分の条件で遠心分離し、得られた上清は除去し、沈殿物には、アセトン20mLを加え、前記ビーカーに戻した。この操作を、前記BP0899株の色素の色(褐色)を目視で認められなくなるまで繰り返した。そして、脱色された沈殿物を、アスピレーターを用いて恒量になるまで減圧乾燥し、脱色乾燥菌体を得た。
(1−2)抽出処理(ステップS12)
ビーカーに入れた前記脱色乾燥菌体16gに、前記脱色乾燥菌体の濃度が75mg/mLとなるように、注射用水を加えた。つぎに、90%フェノールを前記注射用水と等量加え、ホットスターラー上で65℃〜70℃で30分撹拌し、これを初回の抽出とした。そして、前記撹拌した溶液を10℃以下になるまで冷却した後、遠心分離用チューブを用いて、15000rpm、40分、4℃の条件で遠心分離することにより、フェノール相と水相とに分離し、得られた前記水相は、50mLコニカルチューブに回収し、前記遠心分離用チューブに残ったフェノール相に、回収した水相と等量の注射用水を入れ、前記初回の抽出と同様の操作を繰り返した(2回目の抽出)。さらに、前記初回の抽出と同様の操作をもう一度繰り返した(3回目の抽出)。このようにして、3回分の抽出操作の水相450mLを回収した。
(1−3)濾過処理(ステップS13)
前記回収した水相450mLを、分画分子量7000の透析チューブに入れ、外液を蒸留水2.5Lとし、透析を行った。外液にフェノールの吸収波長である270nmにおける光の吸収が認められなくなるまで、前記透析を22回行い、式(A)で表される化合物及び式(B)で表される化合物を含む粗抽出液である内液75mLを回収した。
[2.精製工程]
(2−1)酵素処理(ステップS21)
まず、前記粗抽出工程で得た式(A)で表される化合物及び式(B)で表される化合物を含む粗抽出液に、0.5mg/mLのRNA分解酵素(商品名:シグマ社製のribonuclease A)と、5μg/mLのDNA分解酵素(シグマ社製のDeoxyribonuclease I)とを添加し、37℃で6時間インキュベートした。つぎに、前記粗抽出液に、200μg/mLのタンパク質分解酵素(シグマ社製のProteinase K)を添加し、50℃で4時間インキュベートした後、3000rpm、30分の条件で遠心分離した。
(2−2)抽出処理(ステップS22)
前記酵素処理における遠心分離により得られた、沈殿画分約3mL以下と上清画分約72mLとのうち、前記沈殿画分を、分画分子量100000の限外濾過チューブに入れ、外液を蒸留水15mLとし、限外濾過を行った。得られた内液に、注射用水30mLと90%フェノール30mLとを加え、ホットスターラー上で65℃〜70℃で30分撹拌し、これを初回の抽出とした。そして、前記撹拌した溶液を10℃以下になるまで冷却した後、遠心分離用チューブを用いて、15000rpm、40分、4℃の条件で遠心分離することにより、フェノール相と水相とに分離し、得られた前記水相は、50mLコニカルチューブに回収し、前記遠心分離用チューブに残ったフェノール相に、回収した水相と等量の注射用水を入れ、前記初回の抽出と同様の操作を繰り返した(2回目の抽出)。さらに、前記初回の抽出と同様の操作をもう一度繰り返した(3回目の抽出)。このようにして、3回分の抽出操作の水相80mLを回収した。
(2−3)濾過処理(ステップS23)
前記回収した水相を、分画分子量7000の透析チューブに入れ、外液を蒸留水1Lとし、72時間透析を行った。得られた内液を、分画分子量100000の限外濾過チューブに入れ、外液を蒸留水15mLとし、限外濾過を行った。得られた内液を凍結乾燥することにより、精製物164.53mgを得た。
〔実施例2〕
前記精製物を、質量分析(mass spectrometry)及び核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance、NMR)に供し、その構造を特定した。
(1)精製物の分解物の質量分析
前記精製物を以下のようにして分解し、前記精製物の分解物を調製した。まず、前記精製物を、10mg/mLの濃度となるように、0.1mol/Lの塩酸に溶解し、前記溶解液を水浴中で90分間加熱して、沈殿物と無色透明の上清とを得た。つぎに、前記沈殿物を回収し、クロロホルム抽出に供し、クロロホルム画分を回収した。前記クロロホルム画分に、38mg/mLの濃度となるように、クロロホルムを追加し、この溶解液6μLを、薄層クロマトグラフィー(TLC)に供した。なお、TLCプレートとしては、10cm×10cmのシリカゲル60F254TLCプレート(メルク社製)を、展開溶媒としては、クロロホルム:メタノール:蒸留水:トリエチルアミン=30:13:2:0.1(体積比)の溶液を使用した。そして、展開後の前記TLCプレートに、50%の硫酸を噴霧し、最も強く染まったスポットに対応するゲルをかき取り、再度前記展開溶媒に溶解した。そして、溶媒を取り除いた後に、溶媒以外の画分を回収し凍結乾燥し、これを前記精製物の分解物(以下、「分解物」という。)とした。
前記分解物を、それぞれ、以下の処理に供し、メチルエステル化処理物、ピロリジド化処理物、加水分解メチルエステル化処理物及び加水分解ピロリジド化処理物の4種類の試料溶液を調製した。
<メチルエステル化処理物の調製>
(I)前記分解物濃度が、30mg/mLとなるように調製したクロロホルム溶液0.1mLに、0.2mg/mL BHT(ジブチルヒドロキシトルエン) クロロホルム溶液1mLを添加し、乾固した。
(II)前記乾固物に、5%塩酸・メタノール1mLを添加し、85℃で24時間反応させた。
(III)前記反応物を放冷後、ヘキサン1mL、水0.5mLを添加し、ヘキサン相を回収した。
(IV)前記回収したヘキサン相を、窒素気流化で溶媒留去し、クロロホルム1mLに再溶解し、メチルエステル化処理物の試料溶液を得た。
<ピロリジド化処理物の調製>
(I)前記メチルエステル化処理物の試料溶液200μLをガラス試験管に採取した。
(II)前記ガラス試験管に、ピロリジン400μL及び酢酸40μLを添加して、100℃で30分間反応させた。
(III)反応終了後、前記反応物に、ジクロロメタン2mLと5%酢酸水溶液2mLを加えて振り混ぜた後、ジクロロメタン相を回収した。
(IV)前記回収したジクロロメタン相から、窒素気流下で溶媒を除去した後、クロロホルム200μLに再溶解し、ピロリジド化処理物の試料溶液を得た。
<加水分解メチルエステル化処理物の調製>
(I)前記分解物に対して、前記メチルエステル化処理物の調製における(I)と同様の処理を行い、乾固物を得た。
(II)前記乾固物に、0.5mol/L NaOH・メタノール1mLを添加し、50℃で1時間反応させた。
(III)前記反応物を放冷後、ヘキサン1mL、1mol/L塩酸試液0.5mLを添加し、ヘキサン相を回収した。
(IV)前記回収したヘキサン相に対して、前記メチルエステル化処理物の調製における(IV)と同様の処理を行い、加水分解メチルエステル化処理物の試料溶液を得た。
<加水分解ピロリジド化処理物の調製>
前記加水分解メチルエステル化処理物に対して、前記ピロリジド化処理物の調製における(I)〜(IV)と同様の処理を行い、加水分解ピロリジド化処理物の試料溶液を得た。
(1−1)メチルエステル化処理物及び加水分解メチルエステル化処理物のGC−MS
前記メチルエステル化処理物及び前記加水分解メチルエステル化処理物を、下記条件で、GC−MS(ガスクロマトグラフ−マススペクトロメトリー)分析に供した。
<GC−MS条件>
機器:JMS−700V(日本電子(株)製)
カラム:SPB−1 30m×0.25mm 膜厚0.25μm
カラム温度:50℃(1分保持)→300℃(+8℃/分で昇温、30分保持)
注入口温度:250℃
検出器:水素炎イオン化検出器(FID) 300℃
注入量:1μL(splitless注入)
キャリアガス:ヘリウム(線速度30cm/sec、定流量モード)
検出器:MS
イオン化法:EI(Electron Ionization)
イオン化電流:300μA
イオン化エネルギー:70eV
イオン化室温度:300℃
電子加速電圧:10kV
走査範囲:m/z=35〜500(sec/scan)
この結果を、図10及び図11に示す。図10は、前記メチルエステル化処理物をGC−MS分析に供した際のマススペクトルであり、図11は、前記加水分解メチルエステル化処理物をGC−MS分析に供した際のマススペクトルである。図10及び図11において、縦軸は、検出強度を示し、横軸は、検出時間(min)を示す。
図10に示すように、前記メチルエステル化処理物から、ピーク1〜11が得られた。これらの中で、検出強度が高かったピーク1、2、4、6及び7の化合物を、それぞれ、さらに、上記と同様の条件でGC−MS分析に供した。得られたマススペクトルに対して、形状が似ているマススペクトルを有する構造物を、データベース(The NIST MassSpectral Seach Program for the NIST/EPA/NIH Mass Spectral Library)のAuto Modeによりライブラリ検索した。その結果、ピーク1、2、4及び7の化合物は、それぞれ、式(2)〜(5)の化合物と、高い類似度を示した。また、本発明者らは、ピーク6の化合物のマススペクトルが、Strittmatterら(Strittmatter W. et al (1983), Journal of Bacteriology, Vol.155, No.1, p.153-p.158, Fig2)に記載の3-oxo-tetradecanoic acid methyl esterのマススペクトルと酷似していることを発見した。このため、ピーク6の化合物は、式(6)の3-oxo-tetradecanoic acid methyl esterであると推定した。
また、図11に示すように、前記加水分解メチルエステル化処理物から、ピークA〜Iが得られた。ここで、図10のマススペクトルと図11のマススペクトルを比較すると、図10のピーク1、2及び4に対応するピークとして、図11においては、それぞれ、ピークA、B及びDが確認された。これらのピークA、B及びDを、それぞれ、さらに、上記と同様の条件でGC−MS分析に供した。得られたマススペクトルに対して、形状が似ているマススペクトルを有する構造物を、前記データベースを用いて検索した。その結果、ピークA、B及びDは、それぞれ、式(7)、式(3)及び式(4)の化合物と、高い類似度を示した。
なお、図10のピーク6及び7に対応するピークは、図11においては確認されなかったが、これは、つぎの理由によるものと思われる。すなわち、図10は、前記分解物を加水分解せずにGC−MS分析に供した結果であるのに対し、図11は、前記分解物を加水分解し、加水分解により分離した物質のみをGC−MS分析に供した結果である。このため、図11において確認されるピークは、前記分解物中で加水分解されるエステル結合を有する化合物のピークであると考えられる。したがって、図11で対応するピークが確認されなかった図10のピーク6及び7の化合物は、加水分解されるエステル結合を有しない化合物であると推定される。
図10及び図11の結果をまとめて、図10において検出強度が高かったピーク1、2、4及び7の化合物を推定すると、つぎの説明及び表4に示すとおりとなる。まず、図10のピーク1の化合物は、前述のように、ライブラリ検索の結果、式(2)の化合物であると推定された。しかし、ピーク1の化合物が式(2)の化合物である場合、図10におけるピーク1よりも、短い保持時間(すなわち、左側)にピークが観察されるはずであり、整合がとれない。一方、図10のピーク1に対応する図11のピークAの化合物は、前述のように、ライブラリ検索の結果、式(7)の化合物であると推定された。ピークAの化合物が式(7)の化合物である場合、図11におけるピークAの結果とも整合がとれる。このため、図10におけるピーク1の化合物は、式(7)の化合物であると推定した。つぎに、図10におけるピーク2の化合物は、前述のように、ライブラリ検索の結果、式(3)のBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)であると推定された。また、図10のピーク2に対応する図11のピークBの化合物も、前述のように、ライブラリ検索の結果、式(3)のBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)であると推定され、図10と図11とで結果は一致した。このため、図10におけるピーク2の化合物は、式(3)のBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)であると推定されたが、これは、前記分解物に含まれる化合物ではなく、試料溶液の調製において添加したBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)であると推定された。そして、図10におけるピーク4の化合物は、前述のように、ライブラリ検索の結果、式(4)の化合物であると推定された。また、図10のピーク4に対応する図11のピークDの化合物も、前述のように、ライブラリ検索の結果、式(4)の化合物であると推定された。このため、図10におけるピーク4の化合物は、式(4)の化合物であると推定された。なお、式(4)の化合物の炭素間二重結合決定に関する考察は、以下の(1−2)において詳述する。さらに、図10のピーク7の化合物は、前述のように、ライブラリ検索の結果、式(5)の化合物であると推定された。
(1−2)ピロリジド化処理物及び加水分解ピロリジド化処理物のGC−MS
つぎに、式(4)の化合物における炭素間二重結合位置の決定を目的に、前記ピロリジド化処理物及び前記加水分解ピロリジド化処理物を、下記条件で、GC−MS分析に供した。
<GC−MS条件>
機器:JMS−700V(日本電子(株)製)
カラム:SPB−1 30m×0.25mm 膜厚0.25μm
カラム温度:100℃(1分保持)→300℃(+10℃/分で昇温、30分保持)
注入口温度:280℃
検出器:水素炎イオン化検出器(FID) 300℃
注入量:1μL(splitless注入)
キャリアガス:ヘリウム(線速度30cm/sec、定流量モード)
検出器:MS
イオン化法:EI
イオン化電流:300μA
イオン化エネルギー:70eV
イオン化室温度:300℃
電子加速電圧:10kV
走査範囲:m/z=35〜500(sec/scan)
この結果を、図12及び図13に示す。図12は、前記ピロリジド化処理物をGC−MS分析に供した際のマススペクトルであり、図13は、前記加水分解ピロリジド化処理物をGC−MS分析に供した際のマススペクトルである。図12及び図13において、縦軸は、検出強度を示し、横軸は、時間(min)を示す。
図12におけるピーク4及び図13におけるピークDの化合物を、それぞれ、さらに、上記と同様の条件でGC−MS分析に供した。その結果、ピーク4の化合物からは、図14に示すマススペクトルが得られ、ピークDの化合物からは、図15に示すマススペクトルが得られた。図14及び図15において、縦軸は、検出強度を示し、横軸は、m/z値を示す。ここで、式(8)に示すように、ヒドラジンが結合した炭素から数えて、4番目と5番目の炭素間で切断された場合、分子量は140となる。このため、ヒドラジンが結合した炭素から数えて、7番目と8番目の炭素間で切断された場合、二重結合がなければ、m/z=182が検出されるはずだが、この位置に二重結合があるため、m/z=180が検出された。以上より、式(4)の化合物における炭素間二重結合は、カルボニル結合の炭素から数えて7番目と8番目の間に存在すると推定された。
以上、前記(1−1)及び前記(1−2)の結果をまとめると、前記分解物中には、式(4)〜(7)の4種の化合物が含まれることが推定された。また、式(5)及び式(6)の化合物は、前述のとおり、前記分解物を加水分解により分離した物質のみをGC−MS分析したところ、図11においてピークが確認されなかったため、エステル結合を有しない化合物であると推定された。
(2)精製物の分解物の構造分析
前記(1)で得た分解物の濃度が、30mg/mLとなるように調製したクロロホルム溶液0.1mLから、溶媒を除去し、重DMSO600μLを添加し、5mm試験管に移し、これを試料溶液とした。
HNMR測定及び13CNMR測定>
前記試料溶液を、下記測定条件でHNMR測定及び13CNMR測定に供した。
(測定条件)
装置:UNITY INOVA 500型(バリアン社製)
観測周波数:499.8MHz(H核)
125.7MHz(13C核)
溶媒:重DMSO
基準(※):溶媒:H核(2.49ppm)、13C核(39.7ppm)
温度:70℃に設定
測定法:13CNMR、DEPT、NOESY、ROESY、COSY、TOCSY、HSQC、HMBC
※ 70℃での重DMSOでのケミカルシフトの値は、Albaら(Alba S. et al(2004), Glycobiology, vol.14, No.9, p.805-p.815)に記載の値を使用した。
31PNMR測定>
200μLの85%リン酸が入った3mm試験管を、前記試料溶液の入った前記5mm試験管に挿入した。この際、観測された85%リン酸由来のシグナルを0.000ppmに合わせ、その後、前記3mm試験管を抜き、前記試料溶液を、下記測定条件で31PNMR測定に供した。
(測定条件)
装置:UNITY INOVA 500型(バリアン社製)
観測周波数:499.8MHz(31P核)
溶媒:重DMSO
基準:85%リン酸(外部標準):0.000ppm
温度:25℃に設定
この結果を、図16〜図18に示す。図16A〜図16Dは、HNMR測定のスペクトルであり、図17A〜図17Dは、13CNMR測定のスペクトルであり、図18は、31PNMR測定のスペクトルである。図16〜図18において、縦軸は、検出強度を示し、横軸は、化学シフト値(ppm)を示す。
図16〜図18のスペクトルから、前記分解物は、前記4種の化合物とグルコサミン2分子とを含む式(9)の化合物であると推定された。式(9)において、2分子のグルコサミンに結合している前記4種の化合物は、左から順に、式(7)の化合物、式(5)の化合物、式(4)の化合物、式(7)の化合物及び式(6)の化合物である。なお、式(9)中の数字は、図16のHNMR測定のスペクトルにおけるピークの数字に対応し、式(9)中のアルファベット(大文字)は、図17の13CNMR測定のスペクトルにおけるピークのアルファベット(大文字)に対応し、式(9)中のアルファベット(小文字)は、図18の31PNMR測定のスペクトルにおけるピークのアルファベット(小文字)に対応する。
・・・(9)
(3)精製物の分解物の質量分析
前記分解物が、式(9)の化合物であることをさらに裏付けるべく、以下の分析を行った。
前記(1)で得た分解物の濃度が、30mg/mLとなるように調製したクロロホルム溶液を、メタノールにより40000倍希釈した溶液を試料溶液とし、下記条件で、GC−MS分析に供した。
<GC−MS条件>
機器:amaZon ETD (Bruker Daltonics社製)にESI interfaceを装着
測定モード:ESI−IT−MS、Negative mode
この結果を、図19に示す。図19は、前記試料溶液をGC−MS分析に供した際のマススペクトルである。図19において、縦軸は、検出強度を示し、横軸は、m/z値を示す。図19に示すように、複数のピークが確認されたが、前記分解物の推定化合物である式(9)の化合物の分子量に最も近いピークは、m/z=1417.93のピークである。このため、m/z=1417.93が前記分解物のピークであると判断し、このピークを、さらに、同様の条件で、GC−MS/MS分析に供した。
この結果を、図20に示す。図20は、図19における、m/z=1417.93のピークの化合物を、GC−MS/MS分析に供した際のマススペクトルである。図20において、縦軸は、検出強度を示し、横軸は、m/z値を示し、かっこ内の数値は、m/z値を示す。
図20から、つぎのことが推定された。ピーク1の化合物は、前述のとおり、式(9)の化合物であると推定された。ピーク2の化合物は、ピーク1のm/z値(1417)からピーク2のm/z値(1229)を引いた差分値が188であることから、前記分解物から分子量が約188である式(7)の化合物が分離した化合物であると推定された。ピーク3の化合物は、ピーク1のm/z値(1417)からピーク3のm/z値(1194)を引いた差分値が223であることから、前記分解物から分子量が約223である式(4)の化合物が分離した化合物であると推定された。ピーク4の化合物は、ピーク1のm/z値(1417)からピーク4のm/z値(1042)を引いた差分値が375であることから、前記分解物から分子量が約188である式(7)の化合物が2つ分離した化合物であると推定された。このように、式(9)の化合物から式(7)の化合物又は式(4)の化合物が分離した化合物を、ピーク2〜4として確認できた。このことから、前記分解物中には、少なくとも、式(7)の化合物及び式(4)の化合物の2つは含まれていることが確認でき、前記(2)において推定した前記分解物の推定構造式(9)をさらに支持する結果が得られた。
(4)精製物の質量分析
前記精製物を、Leoneら(Serena Leone et al, “ Structural elucidation of the core-lipid A backbone from the lipopolysaccharide of Acinetobacter radioresistens S13, an organic solvent tolerant Gram-negative bacterium”, Carbohydrate Research, April 10, 2006, Vol.341, issue.5, p.582-590)に記載の方法によりヒドラジン分解し、ヒドラジン分解物105.4mgを得た。前記ヒドラジン分解物濃度が、2.1mg/mLとなるように蒸留水に溶解し、メタノールにより200倍希釈した溶液を試料溶液とし、下記条件で、GC−MS分析に供した。
<GC−MS条件>
機器:amaZon ETD (Bruker Daltonics社製)にelectrospray ionization (ESI) interfaceを装着
測定モード:ESI−IT−MS、Negative mode
この結果を、図21に示す。図21は、前記試料溶液をGC−MS分析に供した際のマススペクトルである。図21において、縦軸は、検出強度を示し、横軸は、m/z値を示し、かっこ中の数値は、検出されるイオンの価数を示す。
図21に示す複数のピークのうち、最も大きなピーク(m/z=538.15)の化合物を、同様の条件で、GC−MS/MS分析に供し、図22に示すマススペクトルを得た。さらに、図22に示す複数のピークのうち、m/z=474.27のピークの化合物及びm/z=601.17のピークの化合物を、同様の条件で、それぞれさらに、GC−MS/MS/MS分析に供し、図23及び図24に示すマススペクトルを得た。さらに、図24に示す複数のピークのうち、m/z=557.19のピークの化合物及びm/z=645.12のピークの化合物を、同様の条件で、それぞれさらに、GC−MS/MS/MS/MS分析に供し、図25及び図26に示すマススペクトルを得た。図22〜図26において、縦軸は、検出強度を示し、横軸は、m/z値を示し、かっこ中の数値は、検出されるイオンの価数を示す。
図22〜図26には、マススペクトルに加えて、各ピークに対応すると推定される化合物の模式図を示した。前記模式図において、Pは、式(10)の構造式を、Hexは、式(11)の構造式を、Kdoは、式(12)の構造式を、HexUは、式(13)の構造式を、HexNは、式(14)の構造式を、Fは、前記(2)で推定した4種の化合物のいずれかを示す。なお、図22〜図26において、Hexは、グルコース(Glc)である。
(5)まとめ
前記(1)〜(4)の結果をまとめると、前記精製物は、式(A)及び式(B)において、X及びXが、それぞれ、ヘキソース及びリン酸基である化合物(式(A1)で表される化合物及び式(B1)で表される化合物)を含むことが特定された。なお、前記(2)においては、式(9)に示すように、β−1,6−ジグルコサミン骨格の1位の炭素には、ヒドロキシル基が結合していると推定された。一方、前記(4)においては、図21の模式図に示すように、β−1,6−ジグルコサミン骨格の1位の炭素には、リン酸基が結合していると推定された。これについては、つぎの理由により、後者のリン酸基が正しい構造であると特定した。すなわち、前記(2)においては、前記精製物に所定の処理を施し、前記分解物を得ているが、この過程で弱酸を用いる際、グルコサミン2分子の内の右側のグルコサミンに結合しているリン酸基が脱落し、−OH基に置き換わる頻度が高いことが一般的に知られているためである。
(6)糖鎖部分のNMR解析
前記(4)で得たヒドラジン分解物を、4mol/LのKOHで処理し、遊離した糖鎖部分を、ゲルろ過カラムクロマトグラフィー(Bio-Rad社製のBio-gel P4 media Extra fine <45μm(wet):#150-4128)により分画・精製した。図28のグラフに、そのゲルろ過パターンを示す。
図28におけるFraction No. 14-18をまとめたもの(乾燥重量4.8mg)を、500μLのDO(99.96% D)に溶解し、NMR測定用の試料(以下、「試料A」と言う。)とした。NMR測定は、下記条件で実施した。
(測定条件)
装置:DRX500及びADVANCE600分光器(BrukerBioSpin社製)
プローブ:cryogenic TXI probe、TXI probe及びBBO probe
プローブ温度:25℃
測定法:1D H、1D H−selective TOCSY、H−selective NOESY、H−selective ROSEY、1D 13C、1D 31P、2D H−H DQF−COSY、HOHANA、NOESY、ROESY、H−13C HSQC−TOCSY、H−13C HSQC−NOESY、H−13C HMBC、H−31P HMBC
まず、各糖残基のアノマー位に由来するシグナル(H1)を同定し、アノマー位のシグナルを拠点として、DQF−COSY、HOHANA、H−13C HSQC−TOCSYスペクトルから残基内のシグナル(グルコース残基及びグルコサミン残基の場合は、H2−H6、グルクロン酸残基の場合は、H2−H5)を同定した。この結果を、図29及び図30に示す。図29は、前記試料AをHNMR測定に供した際のスペクトルであり、図30は、前記試料Aを2D DQF−COSY測定に供した際のスペクトルである。なお、図29及び図30において、Glcは、図22〜図26におけるHexに、KDOは、図22〜図26におけるKdoに、GlcAは、図22〜26におけるHexUに、GlcNは、図22〜26におけるHexNに対応し、これ以降において同様である。KDOの場合は、3位のプロトン(H3ax、H3eq)を拠点にして、KDO残基内のシグナル(H4−H8)の帰属を行った。
糖残基間の結合については、NOESYスペクトル中で観測される糖残基間のNOEシグナル(図31)及びH−13C HMBCスペクトル中で観測される糖残基間の相関シグナルによって同定を行った。図31は、前記試料Aを2D NOESY測定に供した際のスペクトルである。
各糖残基の結合様式(α/β)については、J(C1,H1)によって、下記のとおり決定した。
J(C1,H1)
GlcN−1 174 Hz (α)
GlcN−2 164 Hz (β)
GlcA 171 Hz (α)
Glc−1 173 Hz (α)
Glc−2 171 Hz (α)
リン酸基の存在及び結合部位に関しては、1D 31P及びH−13C HMBCにより明らかとした。この結果を、図32に示す。図32は、試料Aを2D H−31P HMBC測定に供した際のスペクトルである。2つのリン酸基のうち、1つは、GlcN−1の1位に、もう1つは、GlcN−2の4位に結合していた。
以上の結果から、前記試料Aの構造は、図33の模式図に示すものと特定された。この結果から、前記(4)で得たヒドラジン分解物のヒドラジン分解前の化合物は、式(A)及び式(B)において、X及びXが、いずれも水酸基である化合物(式(A2)で表される化合物及び式(B2)で表される化合物)を含むことが特定された。これらの化合物の単糖類の記号を用いた構造式は、下記のとおりである。なお、図33には、イス型配座による糖鎖構造式を示している。
式(A2)で表される化合物
式(B2)で表される化合物
〔実施例3〕
式(A1)で表される化合物、式(B1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物及び式(B2)で表される化合物が、抗炎症効果を有することを確認した。
(1)被験液の調製
実施例1で得た精製物(式(A1)で表される化合物、式(B1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物及び式(B2)で表される化合物の混合物)を、2mg/mLの濃度となるように注射用水に溶解し4℃で保存した溶液を、37℃で5分加熱し、37℃、1分の条件で超音波処理した。前記超音波処理後の前記溶液10μLを、下記の組成の培養液990μLに添加して十分に混合し、前記精製物の濃度が、20000ng/mLの溶液を調製し、これを、前記培養液を用いて段階的に希釈することにより、2000ng/mL、200ng/mL、20ng/mL、2ng/mL及び0.2ng/mLである計6種類の被験液を得た。なお、前記6種類の被験液は、細胞への添加の際に2倍希釈されるため、前記精製物の終濃度は、それぞれ、10000ng/mL、1000ng/mL、100ng/mL、10ng/mL、1ng/mL及び0.1ng/mLとなる。
[培養液の組成]
DMEM培地 500mL
ウシ胎児血清 55.5mL
ペニシリン−ストレプトマイシン−グルタミン(100×) 5.6mL
(2)被験液の添加
ヒトTLR4遺伝子を導入したヒト胎児由来腎臓細胞(InvivoGen社製)に、前記培養液を添加し、前記細胞の濃度が、4×10細胞/mLとなる溶液を調製した。前記溶液を、96ウェル平底プレートに、100μLずつ(すなわち、4×10細胞/100μL/ウェル)となるように播種した。播種後、37℃、5%CO下で24時間培養した後、培養上清を除去し、新たな前記培養液を各ウェルに100μLずつ添加した。つぎに、前記被験液を各ウェルに100μLずつ添加した。前記被験液の添加後、37℃、5%CO下で24時間培養した。
(3)IL−8の濃度の測定
各ウェルの培養上清を回収し、Human IL-8 ELISA MAX(登録商標) Standard(Biolegend社製)を用い、インターロイキン−8(Interleukin-8:IL−8)の濃度を測定した。
測定結果を、図3のグラフに示す。図3において、縦軸は、IL−8の濃度を示し、横軸は、被験液の濃度を示す。図3に示すように、被験液の濃度依存的に、IL−8の濃度が上昇した。ここで、IL−8の生産量は、一般的に、TLR4活性化の指標となることが知られており、また、前述のとおり、TLR4の活性化は、抗炎症作用を有するI型インターフェロンの産生を促すことが報告されている。すなわち、IL−8の濃度の上昇は、抗炎症作用の活性化を意味する。このため、これらの結果から、前記精製物(式(A1)で表される化合物、式(B1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物及び式(B2)で表される化合物の混合物)が、抗炎症作用を有することが確認された。なお、前記精製物に代えて、式(A1)で表される化合物、式(B1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物又は式(B2)で表される化合物を用いても、同等の結果が得られた。
〔実施例4〕
式(A1)で表される化合物、式(B1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物及び式(B2)で表される化合物が、抗炎症効果を有することを確認した。
(1)被験液の調製
実施例3における「(1)被験液の調製」と同様にして、前記精製物の濃度が、20000ng/mLの溶液を調製し、これを、下記の組成の培養液を用いて段階的に希釈することにより、100ng/mL及び10000ng/mLである計2種類の被験液を得た。なお、前記2種類の被験液は、細胞への添加の際に100倍希釈されるため、前記精製物の終濃度は、それぞれ、1ng/mL及び100ng/mLとなる。
[培養液の組成]
RPMI1640培地 500mL
非動化ウシ胎児血清 55.5mL
ペニシリン−ストレプトマイシン−グルタミン(100×) 5.6mL
(2)被験液の添加
マウスマクロファージ細胞(RAW264.7、ATCC)に、前記培養液を添加し、前記細胞の濃度が、1.067×10細胞/mLとなる溶液を調製した。前記溶液を、6ウェルプレートに、3mLずつ(すなわち、3.2×10細胞/3mL/ウェル)となるように播種した。播種後、37℃、5%CO下で2時間培養した後、前記被験液を各ウェルに30μLずつ添加した。前記被験液の添加後、37℃、5%CO下で24時間培養した。つぎに、前記各ウェルの培養上清を、15mLチューブに回収した。そして、前記各ウェルに、新たな前記培養液1mLを添加し、ウェル全体に行き渡らせた後、前記15mLチューブに回収する作業を2回繰り返した。その後、前記15mLチューブに回収した前記培養液を、1000rpm、3分の条件で遠心分離した後、上清を除去し、さらに、37℃の新たな前記培養液3mLを添加して懸濁し、再度同様の条件で遠心分離した。遠心分離後、上清を除去し、沈殿に、37℃の新たな前記培養液2mLを添加して懸濁した。そして、前記懸濁液を、2mLずつ、新たな前記培養液1mLが予め添加してある状態の各ウェルに添加した。その後、新たな前記培養液30μLを添加した(以下、この工程を、「培養液添加工程」という。)。添加後、37℃、5%CO下で30分培養した後、前記各ウェルの培養上清を、15mLチューブに回収し、1000rpm、3分の条件で遠心分離し、上清をアスピレーターにより除去した。さらに、培養上清を除去した前記6ウェルプレートの各ウェルに、冷却したPBS(Phosphate buffered saline)/Phosphatase Inhibitors液3mLを添加し、ピペッティングにより細胞を剥がし、細胞懸濁液を前記15mLチューブに添加した。前記15mLチューブを、1000rpm、3分の条件で遠心分離し、上清をアスピレーターにより除去した後、前記15mLチューブに冷却した前記PBS/Phosphatase Inhibitors液0.5mLを添加して懸濁することにより、細胞懸濁液を調製した。前記細胞懸濁液から、Nuclear Extract キット(アクティブ モティフ社製)を用いて、核タンパク質を抽出した。
(3)核内NF−κB量の測定
Trans AM NF−κB p65キット(アクティブ モティフ社製)を用いて吸光度を測定することにより、前記核タンパク質中のNF−κB量を確認した。
確認結果を、図4のグラフに示す。図4において、縦軸は、吸光度を示し、横軸は、被験液の濃度を示す。図4に示すように、吸光度が、被験液の濃度が高い程、低い値となったことから、前記核タンパク質中のNF−κB量は、被験液の濃度が高い程、少なくなることがわかった。この結果から、前記精製物により、炎症性サイトカインの一種であるNF−κBの産生が抑制される、すなわち、前記精製物(式(A1)で表される化合物、式(B1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物及び式(B2)で表される化合物の混合物)が、抗炎症効果を有することが確認された。なお、前記精製物に代えて、式(A1)で表される化合物、式(B1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物又は式(B2)で表される化合物を用いても、同等の結果が得られた。
〔実施例5〕
式(A1)で表される化合物、式(B1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物及び式(B2)で表される化合物が、抗炎症効果を有することを確認した。
本例では、つぎの2点以外は、実施例4と同様にして実験を行い、吸光度を測定することにより、前記核タンパク質中のNF−κB量を確認した。すなわち、本例では、被験液として、前記精製物の濃度が、100ng/mL、10000ng/mL及び1000000ng/mLである3種類の被験液を用いた。なお、前記3種類の被験液は、細胞への添加の際に100倍希釈されるため、前記精製物の終濃度は、それぞれ、1ng/mL、100ng/mL及び10000ng/mLとなる。また、本例では、実施例3における前記培養液添加工程において、前記培養液30μLに代えて、終濃度100ng/mLのグラム陰性菌であるパントエア アグロメランス(Pantoea agglomerans)から精製したLPS(Lipopolysaccharide, Pantoea agglomerans、自然免疫応用技研(株)製、以下、「LPSp」という。)を含む前記培養液30μLを添加した。
確認結果を、図5のグラフに示す。図5において、縦軸は、吸光度を示し、横軸は、被験液の濃度を示す。図5に示すように、吸光度が、被験液の濃度が高い程、低い値となったことから、前記核タンパク質中のNF−κB量は、被験液の濃度が高い程、少なくなることがわかった。この結果から、前記精製物により、炎症性サイトカインの一種であるNF−κBの産生が抑制される、すなわち、前記精製物(式(A1)で表される化合物、式(B1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物及び式(B2)で表される化合物の混合物)が、抗炎症効果を有することが確認された。なお、前記精製物に代えて、式(A1)で表される化合物、式(B1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物又は式(B2)で表される化合物を用いても、同等の結果が得られた。
〔実施例6〕
式(A1)で表される化合物、式(B1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物及び式(B2)で表される化合物が、抗炎症効果を有することを確認した。
(1)被験液の調製
実施例3における「(1)被験液の調製」と同様にして、前記精製物の濃度が、20000ng/mLの溶液を調製し、これを、下記組成の培養液を用いて段階的に希釈することにより、2ng/mL、0.2ng/mL及び0.02ng/mLである計3種類の被験液を得た。なお、前記3種類の被験液は、細胞への添加の際に2倍希釈されるため、前記精製物の終濃度は、それぞれ、1ng/mL、0.1ng/mL及び0.01ng/mLとなる。
[培養液の組成]
RPMI1640培地 500mL
ウシ胎児血清 55.5mL
硫酸カナマイシン 0.11mL
アンピシリンナトリウム 0.134mL
(2)被験液の添加
マウスマクロファージ細胞(RAW264.7、ATCC)に、前記培養液を添加し、前記細胞の濃度が、4×10細胞/mLとなる溶液を調製した。前記溶液を、96ウェル平底プレートに、100μLずつ(すなわち、4×10細胞/100μL/ウェル)となるように播種した。播種後、37℃、5%CO下で、前記細胞がウェルの底に接着して伸展するまで2時間培養した。つぎに、前記被験液を各ウェルに100μLずつ添加した。前記被験液の添加後、37℃、5%CO下で24時間培養した。培養後、各ウェルの培養上清を除去し、新たに前記培養液150μLを添加し(以下、この工程を、「培養液添加工程」という。)、37℃、5%CO下で24時間培養した。
(3)TNF−α濃度の測定
培養後、各ウェルの培養上清50μLを回収し、新たな96ウェル平底プレートの各ウェルへと移し、mouse TNF−α測定キット(Biolegend社製)を用いて吸光度を測定し、TNF−α濃度に換算した。
測定結果を、図6のグラフに示す。図6において、縦軸は、TNF−α濃度を示し、横軸は、被験液の濃度を示す。図6に示すように、TNF−α濃度が、被験液の濃度が高い程、低い値となったことから、TNF−αの産生は、被験液の濃度が高い程、少なくなることがわかった。この結果から、前記精製物により、炎症性サイトカインの一種であるTNF−αの産生が抑制される、すなわち、前記精製物(式(A1)で表される化合物、式(B1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物及び式(B2)で表される化合物の混合物)が、抗炎症効果を有することが確認された。なお、前記精製物に代えて、式(A1)で表される化合物、式(B1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物又は式(B2)で表される化合物を用いても、同等の結果が得られた。
〔実施例7〕
式(A1)で表される化合物、式(B1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物及び式(B2)で表される化合物が、抗炎症効果を有することを確認した。
本例では、以下の2点以外は、実施例6と同様にして実験を行い、各ウェルの培養上清50μLを回収し、TNF−α濃度を測定した。すなわち、本例では、被験液として、前記精製物の濃度が、20μg/mL、2μg/mL、200ng/mL、20ng/mL及び2ng/mLである計5種類の被験液を用いた。なお、前記5種類の被験液は、細胞への添加の際に2倍希釈されるため、前記精製物の終濃度は、それぞれ、10μg/mL、1μg/mL、100ng/mL、10ng/mL及び1ng/mLとなる。また、本例では、実施例5における前記培養液添加工程において、前記培養液150μLに代えて、終濃度100ng/mLのLPSpを含む前記培養液150μLを添加した。
測定結果を、図7のグラフに示す。図7において、縦軸は、TNF−α濃度を示し、横軸は、被験液の濃度を示す。図7に示すように、TNF−α濃度が、被験液の濃度が高い程、低い値となったことから、TNF−αの産生は、被験液の濃度が高い程、少なくなることがわかった。この結果から、前記精製物により、炎症性サイトカインの一種であるTNF−αの産生が抑制される、すなわち、前記精製物(式(A1)で表される化合物、式(B1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物及び式(B2)で表される化合物の混合物)が、抗炎症効果を有することが確認された。なお、前記精製物に代えて、式(A1)で表される化合物、式(B1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物又は式(B2)で表される化合物を用いても、同等の結果が得られた。
〔実施例8〕
〔実施例8−1〕
式(A1)で表される化合物、式(B1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物及び式(B2)で表される化合物が、抗炎症効果を有することを確認した。
(1)被験液の調製
実施例3における「(1)被験液の調製」と同様にして、前記精製物の濃度が、20000ng/mLの溶液を調製し、これを、下記組成の培養液を用いて段階的に希釈することにより、400ng/mL、4000ng/mL及び40000ng/mLである計3種類の被験液を得た。なお、前記3種類の被験液は、細胞への添加の際に4倍希釈されるため、前記精製物の終濃度は、それぞれ、100ng/mL、1000ng/mL及び10000ng/mLとなる。
[培養液の組成]
RPMI1640培地 500mL
非動化ウシ胎児血清 55.5mL
ペニシリン−ストレプトマイシン−グルタミン(100×) 5.6mL
(2)被験液の添加
ヒト末梢血単球由来細胞(THP−1、DSファーマバイオメディカル(株)製)に、前記培養液を添加し、前記細胞の濃度が、4×10細胞/mLとなる溶液を調製した。前記溶液を、24ウェルプレートに、500μLずつ(すなわち、2.0×10細胞/500μL/ウェル)となるように播種した。播種後、前記培養液250μL、又は、40μmol/LのGW9662(和光純薬工業(株)製)を含有する前記培養液250μLを、各ウェルに添加した。なお、前記GW9662は、核内受容体の一種であるPPARγ(Peroxisome proliferator-activated receptor γ)の阻害剤である。添加後、37℃、5%CO下で1時間培養した。その後、前記被験液を各ウェルに250μLずつ添加し、37℃、5%CO下で22時間培養した。培養後、各ウェルの培養上清を、2mLチューブに回収した。また、各ウェルに新たな前記培養液0.5mLを添加し、ウェル全体に行き渡らせ、前記2mLチューブに回収した。空になった各ウェルには、新たな前記培養液0.49mLを添加しておいた。前記2mLチューブに回収した前記培養液を、1000rpm、5分の条件で遠心分離し、上清を除去し、さらに、新たな前記培養液1mLを添加して懸濁し、再度同様の条件で遠心分離した。遠心分離後、上清を除去し、各ウェル中の0.49mLの培養液を、前記2mLチューブに添加して懸濁し、各ウェルに再び戻した。そして、各ウェルに、培養液250μL、又は、40μmol/Lの前記GW9662を含有する培養液250μLを添加し、37℃、5%CO下で1時間培養した。培養後、各ウェルに対して、前記LPSpの終濃度が100ng/mLとなるように、LPSpを含む培養液250μLを添加して、37℃、5%CO下で22時間培養した。
(3)IL−の濃度の測定
培養後、各ウェルの培養上清をチューブに回収して遠心分離し、上清を1.5mLチューブに回収し、Human IL-6 ELISA MAX Deluxe(Biolegend社)を用いて吸光度を測定し、インターロイキン−6(Interleukin6:IL−6)の濃度を換算した。
測定結果を、図8のグラフに示す。図8において、縦軸は、IL−6の濃度を示し、横軸は、被験液の濃度を示す。図8に示すように、GW9662−の場合、すなわち、PPARγが阻害されていない時は、IL−6濃度が、被験液の濃度が高い程、低い値となったことから、IL−6の産生は、被験液の濃度が高い程、少なくなることがわかった。これに対して、GW9662+の場合、すなわち、PPARγが阻害されている時も、IL−6濃度が、被験液の濃度が高い程、低い値となったことから、IL−6の産生は、被験液の濃度が高い程、少なくなることがわかったものの、その減少の程度は、PPARγが阻害されていない時ほど顕著ではなかった。この結果から、前記精製物により、炎症性サイトカインの一種であるIL−6の産生が抑制される、すなわち、前記精製物(式(A1)で表される化合物、式(B1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物及び式(B2)で表される化合物の混合物)が、抗炎症効果を有することが確認された。また、前記精製物(式(A1)で表される化合物、式(B1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物及び式(B2)で表される化合物の混合物)によるIL−6の産生抑制には、PPARγが関与していることが示唆された。なお、前記精製物に代えて、式(A1)で表される化合物、式(B1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物又は式(B2)で表される化合物を用いても、同等の結果が得られた。
〔実施例8−2〕
式(A1)で表される化合物、式(B1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物及び式(B2)で表される化合物が、PPARγ遺伝子の発現を促進することを、理化学研究所が開発したCAGE(Cap Analysis of Gene Expression)法により確認した。
前記THP−1細胞に、実施例8−1(2)と同様の培養液を添加し、前記細胞の濃度が、5×10細胞/mLとなる溶液を調製した。この溶液のPPARγ遺伝子の発現量を、前記CAGE法により測定したところ、3.97TPM(Tags Per Million)であった。前記測定後、この細胞溶液を、つぎの4群に分けた。すなわち、前記細胞溶液に終濃度1μg/mLとなるように前記精製物の溶液を添加した群(実施例8−2A)、前記細胞溶液に終濃度10μg/mLとなるように前記精製物の溶液を添加した群(実施例8−2B)、前記細胞溶液に何も添加しなかった群(比較例8−2A)、及び、前記細胞溶液に100ng/mLとなるようにLPSp溶液を添加した群(比較例8−2B)の計4群である。前記4群を3時間培養後、前記CAGE法によりPPARγ遺伝子の発現量を測定した。この結果を、図27に示す。図27は、PPARγ遺伝子の発現量を示すグラフである。図27において、横軸は、培養時間を示し、縦軸は、PPARγ遺伝子の発現量(TPM)を示す。図27に示すように、実施例8−2Aでは、3時間の間に、PPARγ遺伝子の発現量が3.97TPMから5.86TPMに大幅に増加し、実施例8−2Bでも、3時間の間に、PPARγ遺伝子の発現量が3.97TPMから5.90TPMに大幅に増加した。これに対して、比較例8−2Aでは、3時間の間に、PPARγ遺伝子の発現量が3.97TPMから3.89TPMへと僅かに減少し、比較例8−2Bでは、3時間の間に、PPARγ遺伝子の発現量が3.97TPMから4.31TPMへと増加したものの、増加の程度は顕著ではなかった。この結果から、前記精製物(式(A1)で表される化合物、式(B1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物及び式(B2)で表される化合物の混合物)が、PPARγ遺伝子の発現を促進することが確認された。なお、前記精製物に代えて、式(A1)で表される化合物、式(B1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物又は式(B2)で表される化合物を用いても、同等の結果が得られた。
〔実施例9〕
式(A1)で表される化合物、式(B1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物及び式(B2)で表される化合物が、肺がんに対する抗がん効果を有することを確認した。
(1)担癌マウスの作製
ルイス肺がん由来細胞株(Lewis lung carcinoma:3LL、JCRB細胞バンクより入手)の懸濁液を、1匹当たりのがん細胞投与量が2.5×10cells/200μLとなるように、6週齢の雄性C57 BL/6Jマウス5匹の腹側部に皮下投与した。投与から2週間後、前記マウス1匹から腫瘍を摘出し、ディッシュ上でPBS(−)を用いて洗浄した。つぎに、洗浄した前記腫瘍を2mm角程度に細かくきざみ腫瘍断片とし、前記腫瘍断片を50mLチューブに移して、コラゲナーゼ液5mLを添加し、37℃で10分温めた。その後、前記腫瘍断片を含むコラゲナーゼ液をピペッティングすることにより、さらに細かい腫瘍断片とし、前記腫瘍断片を含むコラゲナーゼ液を別の50mLチューブに移し、氷上で冷却した。冷却後、前記腫瘍断片を含むコラゲナーゼ液にさらにコラゲナーゼ液5mLを添加し、同様の操作を、腫瘍断片を観察できなくなるまで5回繰り返した。その後、前記腫瘍断片を含むコラゲナーゼ液をセルストレイナー(メッシュサイズ70μm、BD社製)でろ過し、ろ過液を1200rpm、7分の条件で遠心分離した。遠心分離後、上清を除去し、沈殿に、RPMI1260培地(血清無添加)20mLを添加し、転倒混和による懸濁後、1200rpm、7分の条件で遠心分離した。遠心分離後、上清を除去し、沈殿に、PBS(−)を添加し2回洗浄した後、PBS(−)10mLを添加し懸濁し、がん細胞懸濁液を調製した。前記がん細胞懸濁液を、1匹当たりのがん細胞投与量が2.5×10cells/200μLとなるように、前記マウス12匹の腹側部に皮下投与した。投与から14日後、前記マウス10匹から腫瘍を摘出し、前述と同様の方法で、がん細胞懸濁液を調製した。前記がん細胞懸濁液を、1匹当たりのがん細胞投与量が2.5×10cells/50μLとなるように、前記マウス108匹の腹部皮内に投与した。投与後、各マウスの腫瘍サイズが直径5mm程度になった時点(投与後8日目)で、マウスを下記に示す6群(各群n=6)に分けた。
(2)薬剤の投与
群分けした後、各群に、前記表5に示す物質を投与した。前記精製物の投与は、実施例9−1及び実施例9−2の腹腔内投与(ip)においては、マウスにおける前記精製物の摂取量が0.5mg/10mL/kgとなるように、群分け直後に1回行い、実施例9−3及び実施例9−4の自由摂取(po)の場合は、前記精製物の濃度が1μg/mLの溶液が入った給水瓶を用いて、群分け直後から開始した。なお、給水瓶は3日ごとに新しいものへと交換した。比較例9−1の生理食塩水の投与は、ipにより、マウスの生理食塩水摂取量が10mL/kgとなるように、群分け直後に1回行った。実施例9−2、実施例9−4及び参考例9−1におけるCY(シクロフォスファミド、肺がんに対する抗がん剤、和光純薬工業(株)製)の投与は、ipにより、マウスのCY摂取量が100mg/10mL/kgとなるように、群分け直後に1回行った。
(3)腫瘍体積の計測
群分けした日を0日目として、3日目、6日目及び9日目に、ノギスを用いて腫瘍の長径及び短径を測定し、それを基に腫瘍体積を算出した。腫瘍体積の算出は、Shime ら(Shime H, et al, “ Toll-like receptor 3 signaling converts tumor-supporting myeloid cells to tumoricidal effectors”, Proc Natl Acad Sci USA, February 7, 2012, Vol.109, no.6, p.2066-2071)に記載の方法に従い、計算式:長径(mm)×短径(mm)2×0.4=腫瘍体積(mm3)により行った。
計測結果を、図9のグラフに示す。図9において、縦軸は、腫瘍体積(mm)を示し、横軸は、群分けした日を0日目とした時の、群分け後の経過日数を示す。図9に示すように、前記精製物を投与した実施例9−1及び実施例9−2では、生理食塩水を投与した比較例9−1と比較して、腫瘍体積が小さかった。このことから、前記精製物(式(A1)で表される化合物、式(B1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物及び式(B2)で表される化合物の混合物)は、肺がんに対する抗がん効果を有することが確認された。また、前記精製物に加え、CYを投与した実施例9−2及び実施例9−4では、CYのみを投与した参考例9−1と比較して、腫瘍体積が小さかった。このことから、前記精製物(式(A1)で表される化合物、式(B1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物及び式(B2)で表される化合物の混合物)は、CYの肺がんに対する抗がん効果を増強する効果を有することが確認された。なお、前記精製物に代えて、式(A1)で表される化合物、式(B1)で表される化合物、式(A2)で表される化合物又は式(B2)で表される化合物を用いても、同等の結果が得られた。
以上、実施形態及び実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態及び実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
この出願は、2016年9月23日に出願された日本出願特願2016−186116及び2016年12月8日に出願された日本特許出願2016−238863を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
以上のように、本発明の化合物又はその塩は、抗炎症剤及び肺がんに対する抗がん剤等として使用可能なものである。本発明の化合物又はその塩は、安全性が高いため、長期にわたり投与できる。

Claims (11)

  1. 式(A)又は式(B)で表されることを特徴とする、化合物又はその塩。
    式(A)及び式(B)において、
    は、ヘキソース又は水酸基であり、
    は、リン酸基又は水酸基である。
  2. ロドバクター・アゾトフォルマンス(Rhodobacter azotoformans)BP0899株(受託番号 NITE BP−644)及びその培養物の少なくとも一方から、式(A)又は式(B)で表される化合物又はその塩を含む粗抽出液を抽出する粗抽出工程と、
    前記粗抽出液から式(A)又は式(B)で表される化合物又はその塩を単離する精製工程と、
    を含むことを特徴とする、式(A)又は式(B)で表される化合物又はその塩の製造方法。
    式(A)及び式(B)において、
    は、ヘキソース又は水酸基であり、
    は、リン酸基又は水酸基である。
  3. 前記粗抽出工程における抽出処理が、タンパク質を不溶化する有機溶媒による抽出処理である、請求項記載の製造方法。
  4. 前記有機溶媒が、フェノールである、請求項記載の製造方法。
  5. 前記粗抽出工程において、前記抽出処理の前に、ロドバクター・アゾトフォルマンス(Rhodobacter azotoformans)BP0899株(受託番号 NITE BP−644)及びその培養物の少なくとも一方について、色素の脱色処理を行う、請求項からのいずれか一項に記載の製造方法。
  6. 前記色素の脱色処理が、アセトン、メタノール及びクロロホルムからなる群から選択される少なくとも一つによる脱色処理である、請求項記載の製造方法。
  7. 前記粗抽出工程において、前記粗抽出液について濾過処理を行う、請求項からのいずれか一項に記載の製造方法。
  8. 前記精製工程において、前記粗抽出液について、酵素処理と、タンパク質を不溶化する有機溶媒による抽出処理とを行う、請求項からのいずれか一項に記載の製造方法。
  9. 前記酵素処理が、核酸分解酵素及びタンパク質分解酵素の少なくとも一方による酵素処理である、請求項記載の製造方法。
  10. 前記有機溶媒が、フェノールである、請求項又は記載の製造方法。
  11. 前記精製工程において、前記抽出処理後の抽出液について濾過処理を行う、請求項から10のいずれか一項に記載の製造方法。
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