本実施形態に係るセルスタック装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
[セルスタック装置100]
図1は、セルスタック装置100の斜視図である。セルスタック装置100は、マニホールド200と、セルスタック250とを備える。
[マニホールド200]
図2は、マニホールド200の斜視図である。マニホールド200は、「合金部材」の一例である。
マニホールド200は、燃料ガス(例えば、水素など)を各燃料電池セル300に分配するように構成されている。マニホールド200は、中空状であり、内部空間を有している。マニホールド200の内部空間には、導入管204を介して燃料ガスが供給される。
マニホールド200は、天板201と、容器202とを有する。天板201は、平板状に形成される。容器202は、コップ状に形成される。天板201は、容器202の上方開口を塞ぐように配置される。
天板201は、接合材103(図2では不図示、図6参照)によって容器202に接合される。接合材103としては、例えば、結晶化ガラス、非晶質ガラス、ろう材、及びセラミックスなどが挙げられる。本実施形態において、結晶化ガラスとは、全体積に対する「結晶相が占める体積」の割合(結晶化度)が60%以上であり、全体積に対する「非晶質相及び不純物が占める体積」の割合が40%未満のガラスである。このような結晶化ガラスとしては、例えば、SiO2−B2O3系、SiO2−CaO系、又はSiO2−MgO系が挙げられる。
天板201には、複数の挿入孔203が形成されている。各挿入孔203は、燃料電池セル300の配列方向(z軸方向)に並べられる。各挿入孔203は、互いに間隔をあけて配置される。各挿入孔203は、マニホールド200の内部空間と外部に連通する。
マニホールド200の詳細な構成については後述する。
[セルスタック250]
図3は、セルスタック装置100の断面図である。セルスタック250は、複数の燃料電池セル300と、複数の集電部材301とを有する。
各燃料電池セル300は、マニホールド200から延びている。詳細には、各燃料電池セル300は、マニホールド200の天板201から上方(x軸方向)に延びている。すなわち、各燃料電池セル300の長手方向(x軸方向)は、上方に延びている。各燃料電池セル300の長手方向(x軸方向)の長さは、100〜300mm程度とすることができるが、これに限られるものではない。
各燃料電池セル300の基端部は、マニホールド200の挿入孔203に挿入されている。各燃料電池セル300は、接合材101によって挿入孔203に固定されている。燃料電池セル300は、挿入孔203に挿入された状態で、接合材101によってマニホールド200に固定されている。接合材101は、燃料電池セル300と挿入孔203の隙間に充填される。接合材101としては、例えば、結晶化ガラス、非晶質ガラス、ろう材、及びセラミックスなどが挙げられる。
各燃料電池セル300は、長手方向(x軸方向)及び幅方向(y軸方向)に広がる板状に形成されている。各燃料電池セル300は、配列方向(z軸方向)に間隔をあけて配列されている。隣り合う2つの燃料電池セル300の間隔は特に制限されないが、1〜5mm程度とすることができる。
各燃料電池セル300は、内部にガス流路11を有している。セルスタック装置100の運転中、マニホールド200から各ガス流路11に燃料ガス(水素など)が供給されるとともに、各燃料電池セル300の外周に酸化剤ガス(空気など)が供給される。
隣接する2つの燃料電池セル300は、集電部材301によって電気的に接続されている。集電部材301は、接合材102を介して、隣接する2つの燃料電池セル300それぞれの基端側に接合される。接合材102は、例えば、(Mn,Co)3O4、(La,Sr)MnO3、及び(La,Sr)(Co,Fe)O3などから選ばれる少なくとも1種である。
[燃料電池セル300]
図4は、燃料電池セル300の斜視図である。図5は、図4のQ−Q断面図である。
燃料電池セル300は、支持基板10と、複数の発電素子部20と有する。
(支持基板10)
支持基板10は、支持基板10の長手方向(x軸方向)に沿って延びる複数のガス流路11を内部に有している。各ガス流路11は、支持基板10の基端側から先端側に向かって延びている。各ガス流路11は、互いに実質的に平行に延びている。
図5に示すように、支持基板10は、複数の第1凹部12を有する。本実施形態において、各第1凹部12は、支持基板10の両主面に形成されているが、一方の主面にだけ形成されていてもよい。各第1凹部12は支持基板10の長手方向において互いに間隔をあけて配置されている。
支持基板10は、電子伝導性を有さない多孔質の材料によって構成される。支持基板10は、例えば、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、支持基板10は、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とY2O3(イットリア)とから構成されてもよいし、MgO(酸化マグネシウム)とMgAl2O4(マグネシアアルミナスピネル)とから構成されてもよい。支持基板10の気孔率は、例えば、20〜60%程度である。
(発電素子部20)
各発電素子部20は、支持基板10に支持されている。本実施形態において、各発電素子部20は、支持基板10の両主面に形成されているが、一方の主面にだけ形成されていてもよい。各発電素子部20は、支持基板10の長手方向において、互いに間隔をあけて配置されている。すなわち、本実施形態に係る燃料電池セル300は、いわゆる横縞型の燃料電池セルである。長手方向に隣り合う発電素子部20は、インターコネクタ31によって互いに電気的に接続されている。
発電素子部20は、燃料極4、電解質5、空気極6及び反応防止膜7を有する。
燃料極4は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。燃料極4は、燃料極集電部41と燃料極活性部42とを有する。
燃料極集電部41は、第1凹部12内に配置されている。詳細には、燃料極集電部41は、第1凹部12内に充填されており、第1凹部12と同様の外形を有する。燃料極集電部41は、第2凹部411及び第3凹部412を有している。第2凹部411内には、燃料極活性部42が配置されている。また、第3凹部412には、インターコネクタ31が配置されている。
燃料極集電部41は、電子伝導性を有する。燃料極集電部41は、燃料極活性部42よりも高い電子伝導性を有していることが好ましい。燃料極集電部41は、酸素イオン伝導性を有していてもよいし、有していなくてもよい。
燃料極集電部41は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極集電部41は、NiO(酸化ニッケル)とY2O3(イットリア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とCSZ(カルシア安定化ジルコニア)とから構成されてもよい。燃料極集電部41の厚さ、及び第1凹部12の深さは、50〜500μm程度である。
燃料極活性部42は、酸素イオン伝導性を有するとともに、電子伝導性を有する。燃料極活性部42は、燃料極集電部41よりも酸素イオン伝導性を有する物質の含有率が大きい。詳細には、燃料極活性部42における、気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合は、燃料極集電部41における、気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合よりも大きい。
燃料極活性部42は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極活性部42は、NiO(酸化ニッケル)とGDC(ガドリニウムドープセリア)とから構成されてもよい。燃料極活性部42の厚さは、5〜30μmである。
電解質5は、燃料極4上を覆うように配置されている。詳細には、電解質5は、あるインターコネクタ31から隣のインターコネクタ31まで長手方向に延びている。すなわち、支持基板10の長手方向(x軸方向)において、電解質5とインターコネクタ31とが交互に連続して配置されている。電解質5は、支持基板10の両主面を覆うように構成されている。
電解質5は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料から構成される焼成体である。電解質5は、例えば、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、電解質5は、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。電解質5の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
空気極6は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極6は、電解質5を基準にして、燃料極4と反対側に配置されている。空気極6は、空気極活性部61と空気極集電部62とを有している。
空気極活性部61は、反応防止膜7上に配置されている。空気極活性部61は、酸素イオン伝導性を有するとともに、電子伝導性を有する。空気極活性部61は、空気極集電部62よりも酸素イオン伝導性を有する物質の含有率が大きい。詳細には、空気極活性部61おける、気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合は、空気極集電部62における、気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合よりも大きい。
空気極活性部61は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、空気極活性部61は、LSF=(La,Sr)FeO3(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O3(ランタンニッケルフェライト)、又は、LSC=(La,Sr)CoO3(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。空気極活性部61は、LSCFから構成される第1層(内側層)とLSCから構成される第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極活性部61の厚さは、例えば、10〜100μmである。
空気極集電部62は、空気極活性部61上に配置されている。また、空気極集電部62は、空気極活性部61から、隣の発電素子部に向かって延びている。燃料極集電部41と空気極集電部62とは、発電領域から互いに反対側に延びている。発電領域とは、燃料極活性部42と電解質5と空気極活性部61とが重複する領域である。
空気極集電部62は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極集電部62は、空気極活性部61よりも高い電子伝導性を有していることが好ましい。空気極集電部62は、酸素イオン伝導性を有していてもよいし、有していなくてもよい。
空気極集電部62は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、空気極集電部62は、LSC=(La,Sr)CoO3(ランタンストロンチウムコバルタイト)から構成されてもよい。或いは、空気極集電部62は、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。空気極集電部62の厚さは、例えば、50〜500μm程度である。
反応防止膜7は、緻密な材料から構成される焼成体である。反応防止膜7は、電解質5と空気極活性部61との間に配置されている。反応防止膜7は、電解質5内のYSZと空気極6内のSrとが反応して電解質5と空気極6との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するために設けられている。
反応防止膜7は、希土類元素を含むセリアを含んだ材料から構成されている。反応防止膜7は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O2(ガドリニウムドープセリア)から構成され得る。反応防止膜7の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
インターコネクタ31は、支持基板10の長手方向(x軸方向)に隣り合う発電素子部20を電気的に接続するように構成されている。詳細には、一方の発電素子部20の空気極集電部62は、他方の発電素子部20に向かって延びている。また、他方の発電素子部20の燃料極集電部41は、一方の発電素子部20に向かって延びている。そして、インターコネクタ31は、一方の発電素子部20の空気極集電部62と、他方の発電素子部20の燃料極集電部41とを電気的に接続している。インターコネクタ31は、燃料極集電部41の第3凹部412内に配置されている。詳細には、インターコネクタ31は、第3凹部412内に埋設されている。
インターコネクタ31は、電子伝導性を有する緻密な材料から構成される焼成体である。インターコネクタ31は、例えば、LaCrO3(ランタンクロマイト)から構成され得る。或いは、インターコネクタ31は、(Sr,La)TiO3(ストロンチウムチタネート)から構成されてもよい。インターコネクタ31の厚さは、例えば、10〜100μmである。
[マニホールド200の詳細構成]
次に、マニホールド200の詳細構成について、図面を参照しながら説明する。図6は、図2のP−P断面図である。図7は、図6の領域Aの拡大図である。
天板201と容器202は、接合材103によって接合されている。天板201と容器202の間には、燃料ガスが供給される内部空間S1が形成されている。
天板201は、基材210と、コーティング膜211と、複数の埋設部213とを有する。容器202は、基材220と、コーティング膜221と、複数の埋設部223とを有する。コーティング膜211は、酸化クロム膜211aと被覆膜211bとを含む。コーティング膜221は、酸化クロム膜221aと被覆膜221bとを含む。
天板201及び容器202は、それぞれ「合金部材」の一例である。基材210及び基材220は、それぞれ「基材」の一例である。コーティング膜211及びコーティング膜221は、それぞれ「コーティング膜」の一例である。埋設部213及び埋設部223は、それぞれ「埋設部」の一例である。
容器202の構成は、天板201の構成と同様であるため、以下においては、図7を参照しながら、天板201の構成について説明する。
基材210は、板状に形成される。基材210は、平板状であってもよいし、曲板状であってもよい。基材210の厚みは特に制限されないが、例えば0.5〜4.0mmとすることができる。
基材210は、Cr(クロム)を含有する合金材料によって構成される。このような金属材料としては、Fe−Cr系合金鋼(ステンレス鋼など)やNi−Cr系合金鋼などを用いることができる。基材210におけるCrの含有割合は特に制限されないが、4〜30質量%とすることができる。
基材210は、Ti(チタン)やAl(アルミニウム)を含有していてもよい。基材210におけるTiの含有割合は特に制限されないが、0.01〜1.0at.%とすることができる。基材210におけるAlの含有割合は特に制限されないが、0.01〜0.4at.%とすることができる。基材210は、TiをTiO2(チタニア)として含有していてもよいし、AlをAl2O3(アルミナ)として含有していてもよい。
基材210は、表面210aと複数の凹部210bとを有する。表面210aは、基材210の外側の表面である。基材210は、表面210aにおいてコーティング膜211に接合される。図7において、表面210aは略平面状に形成されているが、微小な凹凸が形成されていてもよいし、全体的或いは部分的に湾曲又は屈曲していてもよい。
各凹部210bは、表面210aに形成される。各凹部210bは、表面210aから基材210の内部に向かって延びる。各凹部210b内には、後述する各埋設部213が埋設される。
凹部210bの個数は特に制限されないが、表面210aに広く分布していることが好ましい。また、凹部210bどうしの間隔は特に制限されないが、均等な間隔で配置されていることが特に好ましい。これによって、各埋設部213によるアンカー効果を、コーティング膜211全体に対して均等に発揮させることができるため、基材210からコーティング膜211が剥離することを特に抑制できる。
凹部210bの断面形状は特に制限されず、例えば、楔形、半円形、矩形、及びその他の複雑形状であってもよい。凹部210bは、基材210の内部に向かって真っ直ぐに延びていなくてもよいし、表面210aに垂直な厚み方向に対して斜めに形成されていてもよいし、部分的に曲がっていてもよい。凹部210bの最深部は、鋭角状であってもよいし、鈍角状であってもよいし、丸みを帯びていてもよい。図7では、基材210の内部に向かって真っ直ぐに延びる楔形の凹部210b(図7の左側)と、基材210の内部に向かって湾曲しながら延びる楔形の凹部210b(図7の右側)とが例示されている。
コーティング膜211は、基材210の少なくとも一部を覆い、各埋設部213に接続される。本実施形態において、コーティング膜211は、酸化クロム膜211aと被覆膜211bとを含む。
酸化クロム膜211aは、基材210の表面210a上に形成される。酸化クロム膜211aは、基材210の表面210aの少なくとも一部を覆う。酸化クロム膜211aは、各埋設部213に接続される。酸化クロム膜211aは、各埋設部213を覆うように形成される。酸化クロム膜211aは、各埋設部213に接続される。酸化クロム膜211aの厚みは特に制限されないが、0.5〜10μmとすることができる。
被覆膜211bは、酸化クロム膜211aの少なくとも一部を覆う。詳細には、被覆膜211bは、酸化クロム膜211aのうちセルスタック装置100の運転中に酸化剤ガスと接触する領域の少なくとも一部を覆う。被覆膜211bは、酸化クロム膜211aのうち酸化剤ガスと接触する領域の全面を覆っていることが好ましい。被覆膜211bの厚みは特に制限されないが、例えば3〜200μmとすることができる。
被覆膜211bは、基材210からCrが外部に揮発することを抑制する。これにより、各燃料電池セル300の電極(本実施形態では、空気極6)がCr被毒によって劣化することを抑制することができる。
被覆膜211bは、セラミックス材料によって構成される。被覆膜211bを構成するセラミックス材料は、適用箇所に応じて好適なものが選択される。本実施形態のように、本発明に係る合金部材をマニホールド200に適用する場合には、被覆膜211bに絶縁性が求められるため、セラミックス材料としては、アルミナ、シリカ、ジルコニア、結晶化ガラスなどが挙げられる。一方、本発明に係る合金部材を集電部材301に適用する場合には、被覆膜211bに導電性が求められるため、セラミックス材料としては、LaおよびSrを含有するペロブスカイト形複合酸化物やMn,Co,Ni,Fe,Cu等の遷移金属から構成されるスピネル型複合酸化物が挙げられる。ただし、被覆膜211bは、Crの揮発を抑制できればよく、被覆膜211bの構成材料は上記セラミックス材料に限られるものではない。
各埋設部213は、基材210の各凹部210b内に配置される。各埋設部213は、凹部210bの開口部付近においてコーティング膜211に接続される。本実施形態では、各埋設部213と被覆膜211bとの間に酸化クロム膜211aが介挿されているため、各埋設部213は酸化クロム膜211aに接続される。ただし、各埋設部213と被覆膜211bとの間に酸化クロム膜211aが介挿されていない場合、各埋設部213は被覆膜211bに接続される。
基材210の厚み方向の断面において、基材210の表面210aに垂直な厚み方向における複数の埋設部213の平均垂直長さは、15μm以上である。これにより、複数の埋設部213が十分なアンカー効果を発揮して、コーティング膜211の基材210に対する密着力が向上するため、コーティング膜211が基材210から剥離することを抑制できる。
複数の埋設部213の平均垂直長さとは、各埋設部213の垂直長さL1の平均値である。垂直長さL1とは、図7に示すように、基材210の表面210aに垂直な厚み方向における、埋設部213のうち凹部210bに埋設された部分の全長である。垂直長さL1は、図7に示すように埋設部213ごとに異なっていてもよいし、埋設部213どうし同じであってもよい。
埋設部213の平均垂直長さは、基材210の断面をFE−SEM(電界放射型走査型電子顕微鏡)で1000倍−20000倍に拡大した画像から無作為に選出した20個の埋設部213それぞれの垂直長さL1を算術平均することによって求められる。なお、1つの断面において20個の埋設部213を観察できない場合には、複数の断面から20個の埋設部213を選択すればよい。ただし、垂直長さL1が0.1μm未満の埋設部213は、アンカー効果が軽微でありコーティング膜211の剥離抑制効果への寄与が小さいため、埋設部213の平均垂直長さの平均深さを算出する際には除外するものとする。
複数の埋設部213の平均垂直長さの上限値は特に制限されないが、300μm以下とすることが好ましい。これにより、基材210の強度が低下することを抑制できる。
基材210の厚み方向の断面において、複数の埋設部213の平均実長さは特に制限されないが、例えば0.5μm以上600μm以下とすることができる。
複数の埋設部213の平均実長さとは、各埋設部213の実長さL2の平均値である。実長さL2とは、図7に示すように、厚み方向に垂直な面方向において、埋設部213のうち凹部210bに埋設された部分の中点を連ねた線分の長さである。実長さL2は、埋設部213の延在方向に沿った全長を示す。図7に示すように、基材210の内部に向かって真っ直ぐに延びる凹部210b(図7の左側)では、実長さL2は、垂直長さL1と実質的に同じである。一方、基材210の内部に向かって湾曲しながら延びる凹部210b(図7の右側)では、実長さL2は、垂直長さL1よりも長い。実長さL2は、図7に示すように埋設部213ごとに異なっていてもよいし、埋設部213どうし同じであってもよい。
複数の埋設部213の平均実長さは、上述の平均垂直長さを求めるために選出した20個の埋設部213それぞれの実長さL2を算術平均することによって求められる。
また、基材210の厚み方向の断面において、複数の埋設部213とコーティング膜211との平均接合幅は、0.1μm以上であることが好ましい。これにより、各埋設部213とコーティング膜211との接合強度が向上するため、コーティング膜211から埋設部213自体が離脱することを抑制できる。その結果、コーティング膜211が基材210から剥離することをより抑制できる。
複数の埋設部213の平均接合幅とは、各埋設部213の接合幅W1の平均値である。接合幅W1とは、基材210の厚み方向の断面における、埋設部213とコーティング膜211との接線の全長である。埋設部213とコーティング膜211との接線は、直線状のほか、湾曲状、波線状などであってもよい。
複数の埋設部213の平均接合幅は、上述の平均垂直長さを求めるために選出した20個の埋設部213それぞれの接合幅W1を算術平均することによって求められる。
なお、接合幅W1の上限値は特に制限されず、例えば100μm以下とすることができる。
平均垂直長さに対する平均接合幅の比は特に制限されないが、0.5以下であることが好ましい。これにより、埋設部213を急峻に突出させることができるため、基材210に対する埋設部213のアンカー力をより向上させることができる。
埋設部213は、Cr(クロム)よりも平衡酸素圧の低い元素(以下、「低平衡酸素圧元素」という。)の酸化物を含有する。低平衡酸素圧元素は、Crよりも酸素との親和力が大きく酸化しやすい元素であるため、セルスタック装置100の運転中、コーティング膜211を透過してくる酸素を埋設部213に優先的に取り込むことによって、埋設部213を取り囲む基材210が酸化することを抑制できる。これにより、埋設部213の形態を維持することができるため、埋設部213によるアンカー効果を長期間にわたって得ることができる。その結果、コーティング膜211が基材210から剥離することを長期間にわたって抑制することができる。
低平衡酸素圧元素としては、Al(アルミニウム)、Ti(チタン)、Ca(カルシウム)、Si(シリコン)、Mn(マンガン)などが挙げられ、その酸化物としては、Al2O3(アルミナ)、TiO2(チタニア)、CaO(酸化カルシウム)、SiO2(シリカ)、MnO(酸化マンガン)、MnCr2O4(マンガンクロムスピネル)などが挙げられるが、これに限られるものではない。
埋設部213は、低平衡酸素圧元素の酸化物を1種だけ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。例えば、埋設部213は、Al2O3によって構成されていてもよいし、Al2O3とTiO2との混合物によって構成されていてもよいし、TiO2とMnOとMnCr2O4との混合物によって構成されていてもよい。
複数の埋設部213における低平衡酸素圧元素の平均含有率は、全構成元素のうち酸素を除く元素の総和に対する各元素のモル比をカチオン比と定義した場合、カチオン比で0.05以上であることが好ましい。これにより、埋設部213を取り囲む基材210の酸化をより抑制できるため、埋設部213によるアンカー効果をより長期間にわたって得ることができる。
複数の埋設部213における低平衡酸素圧元素の平均含有率の上限値は特に制限されず、大きいほど好ましい。
複数の埋設部213における低平衡酸素圧元素の平均含有率は、以下の手法で求められる。まず、上述の平均垂直長さを求めるために選出した20個の埋設部213それぞれにおいて、実長さL2を11等分する10点における低平衡酸素圧元素の含有率をカチオン比で測定する。次に、各埋設部213について10点で測定した含有率の中から最大値を選択する。そして、20個の埋設部213ごとに選択された20個の最大値を算術平均することによって、低平衡酸素圧元素の平均含有率が求まる。
なお、埋設部213は、酸化クロムを含有していてもよい。ただし、各埋設部213におけるクロムの平均含有率は、カチオン比で0.95以下が好ましく、0.90以下がより好ましい。
埋設部213は、凹部210bの内表面の少なくとも一部と接触していることが好ましい。埋設部213は、凹部210bの全体に充填されて、凹部210bの内表面の略全面と接触していることが特に好ましい。
埋設部213の個数は特に制限されないが、基材210の断面観察において、表面210aの10mm長さ当たりに10個以上観察されることが好ましく、10mm長さ当たりに20個以上観察されることがより好ましい。これによって、埋設部213によるアンカー効果を広い範囲に発揮させることができるため、コーティング膜211が基材210から剥離することを特に抑制できる。
[マニホールド200の製造方法]
マニホールド200の製造方法について、図面を参照しながら説明する。なお、容器202の製造方法は、天板201の製造方法と同様であるため、以下においては、天板201の製造方法について説明する。
まず、図8に示すように、基材210の表面210aに複数の凹部210bを形成する。例えばショットピーニング、サンドブラスト又はウェットブラストを用いることによって、凹部210bを効率的に形成することができる。この際、研磨剤の粒径を調整したり、或いは、ローラーで表面を均したりすることによって、凹部210bの深さ及び幅を調整する。これにより、後に形成される複数の埋設部213の平均垂直長さ、平均実長さ及び平均接合幅を調整することができる。
次に、図9に示すように、低平衡酸素圧元素の酸化物にエチルセルロースとテルピネオールとを添加した埋設部用ペーストを、基材210の表面210a上に塗布することによって、凹部210b内に埋設部用ペーストを充填する。
次に、図10に示すように、基材210の表面210a上に塗布された埋設部用ペーストを、例えばスキージを用いて除去する。
次に、図11に示すように、基材210を大気雰囲気で熱処理(800〜900℃、1〜20時間)することによって、凹部210bに充填された埋設部用ペーストを固化して埋設部213を形成するとともに、埋設部213を覆う酸化クロム膜211aを形成する。
次に、図12に示すように、酸化クロム膜211a上にコーティング膜用のセラミックス材料を含むコーティング膜用ペーストを塗布して熱処理(800〜900℃、1〜5時間)することによって、被覆膜211bを形成する。
(他の実施形態)
本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の変形又は変更が可能である。
[変形例1]
上記実施形態では、本発明に係る合金部材をマニホールド200に適用することとしたが、これに限られるものではない。本発明に係る合金部材は、セルスタック装置100及びセルスタック250の一部を構成する部材として用いることができる。例えば、本発明に係る合金部材は、燃料電池セル300と電気的に接続された集電部材301に適用することができる。
[変形例2]
上記実施形態において、セルスタック250は、横縞型の燃料電池を有することとしたが、いわゆる縦縞型の燃料電池を有していてもよい。縦縞型の燃料電池は、導電性の支持基板と、支持基板の一主面上に配置される発電部(燃料極、固体電解質層及び空気極を含む)と、支持基板の他主面上に配置されるインターコネクタとを備える。
[変形例3]
上記実施形態では、凹部210b内に埋設部213が配置されることとしたが、基材210が複数の凹部210bを有する場合、埋設部213が配置されていない凹部210bが存在していてもよい。
[変形例4]
上記実施形態では、埋設部213がコーティング膜211に接続されることとしたが、複数の埋設部213が存在する場合、コーティング膜211に接続されていない埋設部212が存在していてもよい。
[変形例5]
上記実施形態では、本発明にかかる合金部材を電気化学セルの一例である燃料電池のセルスタックに適用した場合について説明したが、本発明にかかる合金部材は、水蒸気から水素と酸素を生成する電解セルを含む電気化学セルのセルスタックに適用可能である。
[変形例6]
上記実施形態において、コーティング膜211は、酸化クロム膜211aと被覆膜211bとを含むこととしたが、少なくとも被覆膜211bを含んでいればよい。例えば、図13に示すように、コーティング膜211は、実質的に被覆膜211bのみを含んでいてもよい。各埋設部213の垂直長さL1、実長さL2及び接合幅W1は、上記実施形態にて説明したとおりである。ただし、各埋設部213は、被覆膜211bに接続されているので、接合幅W1は、埋設部213と被覆膜211bとの接線の全長である。図13に示す構成であっても、低平衡酸素圧元素の酸化物を含有する各埋設部213の平均垂直長さを15μm以上とすることによって、被覆膜211が基材210から剥離することを長期間にわたって抑制することができる。被覆膜211bのみを含むコーティング膜211は、埋設部用ペーストを凹部210bに埋設した後、被覆膜用ペーストを塗布して熱処理することによって形成することができる。
[変形例7]
上記実施形態において、各埋設部213は、コーティング膜211のうち酸化クロム膜211aに接続されることとしたが、図14に示すように、各埋設部213は、コーティング膜211のうち被覆膜211bに接続されていてもよい。この場合、各埋設部213の一部は、基材210の凹部210bの外に突出し、各埋設部213の残りの部分が、基材210の凹部210bに埋設される。基材210に対してアンカー効果を発揮するのは、各埋設部213のうち凹部210bに埋設された部分である。そのため、図14に示すように、各埋設部213の垂直長さL1は、凹部210bに埋設された部分の厚み方向における全長であり、各埋設部213の実長さL2は、凹部210bに埋設された部分の延在方向における全長である。また、図14では図示されていないが、各埋設部213は、酸化クロム膜211aと被覆膜211bとの両方に接続されているので、接合幅W1は、埋設部213と酸化クロム膜211a及び被覆膜211bそれぞれとの接線の全長である。図14に示す構成であっても、低平衡酸素圧元素の酸化物を含有する各埋設部213の平均垂直長さを15μm以上とすることによって、被覆膜211が基材210から剥離することを長期間にわたって抑制することができる。各埋設部213をコーティング膜211のうち被覆膜211bに接続させるには、埋設部用ペーストを凹部210bに埋設した後、基材210上に被覆膜用ペーストを塗布して熱処理することによって、被覆膜211bを形成するとともに、基材210と被覆膜211bとの間に酸化クロム膜211aを析出させればよい。
以下において本発明に係る合金部材の実施例について説明するが、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではない。
[実験1]
埋設部の平均垂直長さとコーティング膜の密着力との関係を確認するための実験を行った。
(実施例1〜32及び比較例1〜2の作製)
以下のようにして、図7に示した構成を有する合金部材を作製した。
まず、表1に示される材質の基材を準備した。
次に、基材の表面にサンドブラスト加工を施すことによって、基材の表面に複数の凹部を形成した。この際、研磨剤の粒径を調整することによって、凹部の深さ及び幅を調整した。これによって、表1に示すように、後に形成される複数の埋設部の平均垂直長さ及び平均接合幅を、実施例1〜32及び比較例1〜2ごとに調整した。
次に、表1に示す低平衡酸素圧元素の酸化物粉末にエチルセルロースとテルピネオールを添加することによって埋設部用ペーストを調製した。この際、低平衡酸素圧元素の酸化物の含有量を調整することによって、表1に示すように、後に形成される複数の埋設部における低平衡酸素圧元素の平均含有率を、実施例1〜32及び比較例1〜2ごとに調整した。
次に、調製した埋設部用ペーストを基材の表面上に塗布することによって、各凹部に埋設部用ペーストを充填した後、表面上の余分な埋設部用ペーストをスキージで除去した。
次に、基材を大気雰囲気で熱処理(800℃〜900℃1〜500時間)することによって、凹部に充填された埋設部用ペーストを固化して埋設部を形成するとともに、埋設部に接続された酸化クロム膜を形成した。
次に、表1に示す被覆膜用のセラミックス材料粉末にエチルセルロースとテルピネオールを添加することによって被覆膜用ペーストを調製した。
次に、調製した被覆膜用ペーストを酸化クロム膜上に塗布して熱処理(850℃、2時間)することによって、被覆膜を形成した。
(実施例33〜42及び比較例3〜4の作製)
上記実施例1〜32及び比較例1〜2では、各埋設部が酸化クロム膜に接続されることとしたが、実施例33〜42及び比較例3〜4では、図13に示すように、被覆膜211bのみを含むコーティング膜211を形成した。
具体的には、基材の凹部に埋設部用ペーストを充填した後、基材上に被覆膜用ペーストを塗布して熱処理(850℃、2時間)することによって、埋設部を固化させるとともに埋設部に接続されたコーティング膜を形成した。
(埋設部の平均垂直長さ及び平均接合幅)
実施例1〜42及び比較例1〜4について、埋設部の平均垂直長さ及び平均接合幅を測定した。
まず、基材の断面をFE−SEMで1000倍−20000倍に拡大した画像上において、20個の埋設部を無作為に選出し、各埋設部の垂直長さL1及び接合幅W1を測定した。そして、20個の垂直長さL1を算術平均することによって平均垂直長さを求め、また、20個の接合幅W1を算術平均することによって平均接合幅を求めた。
(低平衡酸素圧元素の平均含有率)
実施例1〜42及び比較例1〜4について、埋設部における低平衡酸素圧元素の平均含有率を測定した。
まず、上述の平均垂直長さを求めるために選出した20個の埋設部それぞれにおいて、実長さL2を11等分する10点における低平衡酸素圧元素の含有率をカチオン比で測定した。次に、埋設部213ごとに含有率の最大値を選択し、20個の最大値を算術平均することによって低平衡酸素圧元素の含有率を求めた。測定結果は、表1に示すとおりである。
(剥離観察)
実際の使用環境を模して、実施例1〜42及び比較例1〜4について、実際の使用環境を模して剥離観察を実施した。
まず、作製した合金部材を電気炉に投入し、大気雰囲気中で加熱・冷却サイクルを50回繰り返した。加熱・冷却サイクルは、昇温速度200℃/hで850℃まで昇温して、850℃で30min保持する加熱工程と、その後、降温速度200℃/hで100℃まで降温して、100℃で30min保持する冷却工程とを含む。
そして、合金部材の外観を目視することによって、外観上で確認できる剥離の有無を確認するとともに、合金部材の表面を電子顕微鏡で観察することによって、微視的な剥離の有無を確認した。表1では、この段階で微視的な剥離のみが観察されたものを△と評価し、外観上の剥離が観察されたものを×と評価している。剥離が確認されなかったものについては、後述する試験を継続して実施した。
続いて、剥離が観察されなかった合金部材を850℃に加熱された炉中で1000時間保持した後、更に冷却・加熱サイクルを50回繰り返した。この冷却・加熱サイクルは、上述した冷却工程と加熱工程とを含む。
そして、合金部材の外観を目視することによって、外観上で確認できる剥離の有無を確認するとともに、合金部材の断面を電子顕微鏡で観察することによって、微視的な剥離の有無を確認した。表1では、この段階で外観上の剥離及び微視的な剥離の両方が観察されなかったものを◎と評価し、微視的な剥離のみが観察されたものを○と評価している。
表1に示すように、埋設部の平均垂直長さを15μm以上とした実施例1〜42では、埋設部の平均垂直長さを15μm未満とした比較例1〜4に比べて、コーティング膜の剥離を抑制することができた。これは、埋設部のアンカー効果を向上させることによって、コーティング膜の基材に対する密着力を向上させることができたためである。
また、埋設部の平均接合幅を0.1以上とした実施例1〜22、27〜32では、平均接合幅を0.1未満とした実施例23〜26に比べてコーティング膜の剥離をより抑制することができた。同様に、埋設部の平均接合幅を0.1以上とした実施例33〜35、37〜42では、平均接合幅を0.1未満とした実施例36に比べてコーティング膜の剥離をより抑制することができた。これは、平均接合幅を0.1以上とすることにより各埋設部とコーティング膜との接合強度が向上したことによって、コーティング膜から埋設部自体が離脱することを抑制できたためである。
また、埋設部の平均接合幅を0.1以上とし、かつ、低平衡酸素圧元素の平均含有率を0.05以上とした実施例1〜20、27〜32では、平均含有率を0.05未満とした実施例21,22に比べて、コーティング膜の剥離を更に抑制することができた。同様に、埋設部の平均接合幅を0.1以上とし、かつ、低平衡酸素圧元素の平均含有率を0.05以上とした実施例33,34、37〜42では、平均含有率を0.05未満とした実施例35に比べて、コーティング膜の剥離を更に抑制することができた。これは、上述のとおりコーティング膜から埋設部自体が離脱することを抑制でき、かつ、埋設部を取り囲む基材の酸化をより抑制することによって、埋設部によるアンカー効果をより長期間にわたって得ることができたためである。
さらに、以上の効果は、基材の材質に関わりなく得られること、被覆膜の材質に関わりなく得られること、さらに、基材と被覆膜との熱膨張率差(表1の右から2列目を参照)の大小に関わりなく得られることが表1から確認された。なお、表1に記載の熱膨張率差は、室温〜850℃における基材及び被覆膜それぞれの熱膨張率から算出した値である。
[実験2]
上述した実施例1〜42において確認された剥離抑制効果が、埋設部の個数に関わりなく得られることを確認するための実験を行った。
(実施例23−1〜23−6の作製)
表1に示した実施例23について、埋設部の個数を変更した実施例23−1〜23−7を作成した。
実施例23−1〜23−7では、サンドブラスト加工における研磨剤の投射量および加工時間を調整することによって、表2に示すように、基材表面における10mm長さ当たりの埋設部の個数を変更した。
10mm長さ当たりの埋設部の個数は、基材断面における任意の10箇所をFE−SEM(3000倍)で拡大した10枚の画像において観察された埋設部の合計個数を基材表面の合計長さで除した値から換算した。
(剥離観察)
実施例1〜42について行ったのと同じ剥離観察を実施例23−1〜23−7についても行った。表2に記載の剥離評価は、上述した表1に記載の剥離評価と同じである。
表2に示すように、10mm長さ当たりの埋設部の個数が1個以上であれば、表1に示した比較例1〜4に比べて、コーティング膜の剥離を抑制できることが確認された。
10mm長さ当たりの埋設部の個数を10個以上とすることによってコーティング膜の剥離をより抑制でき、また、10mm長さ当たりの埋設部の個数を20個以上とすることによってコーティング膜の剥離を更に抑制できることが確認された。
以上より、実施例1〜42において確認された剥離抑制効果は、埋設部の個数に関わりなく得られることが確認できた。