1.第1実施形態
(セルスタック装置10の構成)
図1は、第1実施形態に係るセルスタック装置10の側面図である。図2は、第1実施形態に係るセルスタック装置10の上面図である。セルスタック装置10は、セルスタック11と、マニホールド12とを備える。
セルスタック11は、複数の燃料電池1と、複数の集電部材2とを有する。
複数の燃料電池1は、配列方向に沿って一列に並べられる。各燃料電池1は、略平行に配置される。各燃料電池1の基端部は、マニホールド12に固定される。各燃料電池1の先端部は、自由端である。このように、各燃料電池1は、マニホールド12によって片持ち状態で支持される。各燃料電池1は、いわゆる縦縞型の固体酸化物型燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)である。
複数の燃料電池1は、中央部燃料電池1aと、中央部燃料電池1aの配列方向両側に配置された端部燃料電池1b,1bとを含む。
中央部燃料電池1aは、複数の燃料電池1のうち配列方向中央部に配置された燃料電池1である。具体的には、複数の燃料電池1の配列方向中央を中心として、配列方向における全長の1/3程度の領域に配置された燃料電池1を、中央部燃料電池1aとすることができる。図1に示すように、本実施形態では、9個の燃料電池1が中央部燃料電池1aとされているが、中央部燃料電池1aの個数は、複数の燃料電池1の全長と各燃料電池1のサイズに応じて適宜変更できる。
端部燃料電池1b,1bは、配列方向において中央部燃料電池1aの両側に配置される。端部燃料電池1b,1bは、複数の燃料電池1のうち配列方向端部に配置された燃料電池1である。具体的には、複数の燃料電池1の配列方向両端から全長の1/3程度までの領域に配置された燃料電池1を、端部燃料電池1bとすることができる。図1に示すように、本実施形態では、9個の中央部燃料電池1aの両側に配置された8個の燃料電池1が端部燃料電池1bとされているが、端部燃料電池1bの個数は、複数の燃料電池1の全長と各燃料電池1のサイズに応じて適宜変更できる。
なお、中央部燃料電池1aと端部燃料電池1bとの間には、中央部燃料電池1aと端部燃料電池1bの両方に属さない燃料電池1が配置されていてもよい。
各燃料電池1は、一対の主面を有する板状に形成される。隣接する2つの燃料電池1は、各燃料電池1の主面同士が対向するように配置される。隣接する2つの燃料電池1それぞれの主面の間には、酸化剤ガス(例えば、空気)が流れる空間が形成される。酸化剤ガスは、隣接する2つの燃料電池1間において、燃料電池1の配列方向に略垂直な流通方向に沿って流れる。本実施形態において、酸化剤ガスの流通方向は、セルスタック11の側面視において、マニホールド12から離れる方向である。隣接する2つの燃料電池1間には集電部材2が配置されているため、酸化剤ガスは、集電部材2の隙間を縫うように流れる。
ここで、隣接する2つの燃料電池1間を流れる酸化剤ガスは、各燃料電池1から放出されるジュール熱や反応熱によって徐々に加熱されるため、流通方向の上流から下流に向かうほど高温になる。従って、集電部材2のうち下流側の部位は、上流側の部位に比べて高温になるため、下流側の部位には大きな熱応力が生じやすい。そこで、本実施形態に係る集電部材2は、下流側の部位を保護するように構成されている。集電部材2の構成については後述する。
(燃料電池1の構成)
各燃料電池1は、支持体4、燃料極5、固体電解質6、空気極7、及びインターコネクタ8を有する。
支持体4は、板状に形成される。支持体4の内部には、燃料ガス(例えば、水素)が流れるガス流路9が形成される。ガス流路9は、燃料電池1の長手方向に沿って形成される。本実施形態において、燃料電池1の長手方向は、2つの燃料電池1間を流れる酸化剤ガスの流通方向と略平行である。ガス流路9の一端はマニホールド12内に開口し、ガス流路9の他端は開放されている。燃料ガスは、マニホールド12からガス流路9の一端に流入し、残燃料ガスは、ガス流路9の他端から外部に放出される。本実施形態では、円柱状のガス流路9が6本設けられているが、ガス流路9の形状及び本数は適宜変更可能である。支持体4は、燃料ガスを燃料極5に供給するためのガス透過性と、インターコネクタ8を介した集電のための導電性とを有している。支持体4は、例えば導電性セラミックスやサーメット等によって構成することができる。
燃料極5は、内側電極層である。燃料極5は、支持体4上に形成される。燃料極5の両端は、インターコネクタ8の両端に接続される。燃料極5は、周知の電気化学セル用燃料極に使用される多孔質の導電性セラミックス材料によって構成することができる。多孔質の導電性セラミックスとしては、例えば希土類元素が固溶したZrO2(安定化ジルコニア)とNi及び/又はNiOとを用いることができる。
固体電解質6は、燃料極5上に形成される。固体電解質6の両端は、インターコネクタ8の両端に接続される。固体電解質19は、酸化剤ガスと燃料ガスとの混合を防止するためのガス遮断性を有している。固体電解質19は、例えば3〜15モル%の希土類元素が固溶したZrO2によって構成することができる。
空気極7は、外側電極層である。空気極7は、固体電解質6上に形成される。空気極7は、は、一方の集電部材2に接続される。空気極7の両端は、インターコネクタ8の両端に接続される。空気極7は、周知の電気化学セル用酸素極に使用される多孔質の導電性セラミックス材料によって構成することができる。多孔質の導電性セラミックスとしては、例えばABO3型のペロブスカイト型酸化物を用いることができ、BサイトにMn、Fe、Coなどが導入されたるランタンマンガナイト(LaSrMnO3)、ランタンフェライト(LaSrFeO3)、ランタンコバルタイト(LaSrCoO3)などが挙げられる。
インターコネクタ8は、支持体4上に形成される。インターコネクタ8は、他方の集電部材2に接続される。インターコネクタ8は、緻密質の導電性セラミックス材料によって構成することができる。緻密質の導電性セラミックス材料としては、例えばランタンクロマイト(LaCrO3)を用いることができる。インターコネクタ8の相対密度は、93%以上であることが好ましい。
(集電部材2の構成)
集電部材2は、導電性接合材13を介して、燃料電池1と電気的に接続される。導電性接合材13は、導電性セラミックス材料などによって構成することができる。導電性セラミックス材料としては、後述する空気極20の構成材料と同様、LSCF((La,Sr)(Co,Fe)O3:ランタンストロンチウムコバルトフェライト)、LSF((La,Sr)FeO3:ランタンストロンチウムフェライト)、LSC((La,Sr)CoO3:ランタンストロンチウムコバルタイト)、LNF(La(Ni,Fe)O3:ランタンニッケルフェライト)、LSM((La,Sr)MnO3:ランタンストロンチウムマンガネート)などから選択される少なくとも1種を用いることができるが、これに限られるものではない。
集電部材2は、複数の第1接続部a1、複数の第2接続部a2、第1連結部b1、及び第2連結部b2を有する。
各第1接続部a1と各第2接続部a2とは、酸化剤ガスの流通方向において交互に配置される。各第1接続部a1は、導電性接合材13を介して、隣接する2つの燃料電池1のうち一方の燃料電池1に接続される。具体的には、集電部材2は、導電性接合材13を介して、隣接する2つの燃料電池1のうち一方の燃料電池1のインターコネクタ8に接続される。各第1接続部a1は、燃料電池1の幅方向に沿って延びる板状又は棒状の部材である。燃料電池1の幅方向とは、燃料電池1の配列方向及び長手方向に直交する方向である。各第2接続部a2は、導電性接合材13を介して、隣接する2つの燃料電池1のうち他方の燃料電池1に接続される。具体的には、集電部材2は、導電性接合材13を介して、隣接する2つの燃料電池1のうち他方の燃料電池1の空気極7に接続される。各第2接続部a2は、燃料電池1の幅方向に沿って延びる板状又は棒状の部材である。
第1連結部b1は、酸化剤ガスの流通方向に沿って配置される。第1連結部b1は、酸化剤ガスの流通方向において、各第1接続部a1の一端部と各第2接続部a2の一端部とに交互に接続される。第2連結部b2は、酸化剤ガスの流通方向に沿って配置される。第2連結部b2は、酸化剤ガスの流通方向において、各第1接続部a1の他端部と各第2接続部a2の他端部とに交互に接続される。
図3は、図2に示す集電部材2をX方向から見た図である。図3に示すように、集電部材2は、上流部位21と、下流部位22とを有する。
上流部位21は、集電部材2のうち酸化剤ガスの流通方向において上流側に位置する部位である。上流部位21は、集電部材2の流通方向中央より上流側に設定される。従って、上流部位21には、複数の第1接続部a1のうち集電部材2の流通方向中央より上流側に配置された第1接続部a1と、複数の第2接続部a2のうち集電部材2の流通方向中央より上流側に配置された第2接続部a2とが含まれる。また、上流部位21には、第1連結部b1のうち集電部材2の流通方向中央より上流側に配置された部位と、第2連結部b2のうち集電部材2の流通方向中央より上流側に配置された部位とが含まれる。
下流部位22は、集電部材2のうち酸化剤ガスの流通方向において下流側に位置する部位である。下流部位22は、上流部位21の下流側に位置する。下流部位22は、集電部材2の流通方向中央より下流側に設定される。従って、下流部位22には、複数の第1接続部a1のうち集電部材2の流通方向中央より下流側に配置された第1接続部a1と、複数の第2接続部a2のうち集電部材2の流通方向中央より下流側に配置された第2接続部a2とが含まれる。また、下流部位22には、第1連結部b1のうち集電部材2の流通方向中央より下流側に配置された部位と、第2連結部b2のうち集電部材2の流通方向中央より下流側に配置された部位とが含まれる。
図4は、集電部材2の表面に垂直な断面図である。図4に示される構成は、第1接続部a1、第2接続部a2、第1連結部b1、及び第2連結部b2において、上流部位21か下流部位22かを問わず全体に共通する構成である。図4に示すように、集電部材2は、基材210、酸化クロム膜211、及び被覆膜212によって構成される。
基材210は、板状に形成される。基材210は、平板状であってもよいし、曲板状であってもよい。基材210の厚みは特に制限されないが、例えば0.1〜2.0mmとすることができる。
基材210は、Cr(クロム)を含有する合金材料によって構成される。このような金属材料としては、Fe−Cr系合金鋼(ステンレス鋼など)やNi−Cr系合金鋼などを用いることができる。基材210におけるCrの含有率は特に制限されないが、4〜30質量%とすることができる。
基材210は、Ti(チタン)やAl(アルミニウム)を含有していてもよい。基材210におけるTiの含有率は特に制限されないが、0.01〜1.0at.%とすることができる。基材210におけるAlの含有率は特に制限されないが、0.01〜0.4at.%とすることができる。基材210は、TiをTiO2(チタニア)として含有していてもよいし、AlをAl2O3(アルミナ)として含有していてもよい。
酸化クロム膜211は、基材210の表面210a上に形成される。酸化クロム膜211は、基材210の表面210aのうち少なくとも一部を覆う。酸化クロム膜211は、基材210の表面210aのうち少なくとも一部を覆っていればよいが、表面210aの略全面を覆っていてもよい。酸化クロム膜211は、酸化クロムを主成分として含有する。本実施形態において、組成物Xが物質Yを「主成分として含む」とは、組成物X全体のうち、物質Yが70重量%以上を占めることを意味する。酸化クロム膜211の厚みは特に制限されないが、例えば0.1〜20μmとすることができる。
被覆膜212は、酸化クロム膜211の表面211a上に形成される。被覆膜212は、酸化クロム膜211の表面211のうち少なくとも一部を覆う。被覆膜212は、酸化クロム膜211の表面211aのうち少なくとも一部を覆っていればよいが、表面211aの略全面を覆っていてもよい。特に、被覆膜212は、酸化クロム膜211の表面211aのうちセルスタック装置10の運転中に酸化剤ガスと接触する領域を覆っていることが好ましい。被覆膜212の厚みは特に制限されないが、例えば1〜200μmとすることができる。
被覆膜212は、基材210からCrが揮発することを抑制する。これにより、各燃料電池セル2の電極(本実施形態では、空気極7)がCr被毒によって劣化することを抑制できる。
被覆膜212を構成する材料としては、導電性のセラミックス材料を用いることができる。導電性のセラミックス材料としては、例えば、LaおよびSrを含有するペロブスカイト形複合酸化物、Mn,Co,Ni,Fe,Cu等の遷移金属から構成されるスピネル型複合酸化物などを用いることができる。
ここで、セルスタック装置10の作動開始時、集電部材2は室温から作動温度まで昇温し、セルスタック装置10の作動停止時、集電部材2は作動温度から室温まで降温する。この際、基材210と被覆膜212との熱膨張係数が異なることに起因して、集電部材2の内部に熱応力が発生する。
そこで、集電部材2の上流部位21及び下流部位22それぞれには、「剥離抑制部」が少なくとも1つずつ設けられている。剥離抑制部は、集電部材2の内部に発生する熱応力によって、被覆膜212が酸化クロム膜211とともに基材210から剥離することを抑制する機能を有する。
また、上述のとおり、集電部材2のうち下流部位22は、上流部位21に比べて高温の酸化剤ガスに曝されるため、上流部位21よりも下流部位22において被覆膜212の剥離が特に生じやすい。
そこで、本実施形態に係る集電部材2では、下流部位22が有する剥離抑制部の数は、上流部位21が有する剥離抑制部の数より多い。これにより、大きな熱応力がかかりやすい下流部位22における被覆膜212の剥離を特に抑制できるため、集電部材2全体としての耐久性を向上させることができる。
剥離抑制部は、被覆膜212が酸化クロム膜211とともに基材210から剥離することを抑制する機能を有している限り、その構成は特に制限されない。例えば、剥離抑制部は、基材210に対する酸化クロム膜211の密着力を高めるものであってもよいし、集電部材2の内部に発生する熱応力を緩和するものであってもよい。
(剥離抑制部の具体例)
以下、剥離抑制部の具体例について、図5〜図7を参照しながら説明する。図5〜図7は、集電部材2の表面に垂直な断面図である。
[具体例1]
図5は、基材210に対する酸化クロム膜211の密着力を高める機能を有する剥離抑制部の一例である「アンカー部213」を示す断面図である。
アンカー部213は、基材210の表面210aに形成された凹部210b内に配置される。アンカー部213は、凹部210bの開口部付近において酸化クロム膜211に接続される。このようなアンカー部213が凹部210bに係止されることで生じるアンカー効果によって、基材210に対する酸化クロム膜211の密着力を高めることができる。その結果、被覆膜212が酸化クロム膜211とともに基材210から剥離することを抑制することができる。
そして、本実施形態では、集電部材2の下流部位22に設けられたアンカー部213の数が、上流部位21に設けられたアンカー部213の数よりも多い。これにより、大きな熱応力がかかりやすい下流部位22における被覆膜212の剥離を特に抑制できるため、集電部材2全体としての耐久性を向上させることができる。
上流部位21及び下流部位22それぞれが有する「アンカー部213の数」とは、基材210を断面観察した場合に、表面210aの10mm軌跡長(延長長さ)当たりに存在するアンカー部213の数を意味する。基材210の断面観察は、FE−SEM(Field Emission − Scanning Electron Microscope:電界放射型走査型電子顕微鏡)によって1000−20000倍に拡大した画像において行うものとする。
上流部位21におけるアンカー部213の数は特に制限されないが、被覆膜212の剥離抑制効果を考慮すると、アンカー部213の数は、1個/10mm以上が好ましく、3個/10mm以上がより好ましく、5個/10mm以上が特に好ましい。下流部位22におけるアンカー部213の数は特に制限されないが、被覆膜212の剥離抑制効果を考慮すると、アンカー部213の数は、3個/10mm以上が好ましく、5個/10mm以上がより好ましく、10個/10mm以上が特に好ましい。
アンカー部213は、Cr(クロム)よりも平衡酸素圧の低い元素の酸化物(以下、「低平衡酸素圧酸化物」という。)を含有する。すなわち、アンカー部213は、Crよりも酸素との親和力が大きく酸化しやすい元素の酸化物を含有する。そのため、セルスタック装置10の運転中、被覆膜212を透過してくる酸素をアンカー部213に優先的に取り込むことによって、アンカー部213を取り囲む基材210が酸化することを抑制できる。これにより、アンカー部213の形態を維持できるため、アンカー部213によるアンカー効果を長期間に亘って得ることができる。その結果、基材210に対する酸化クロム膜211の密着力を長期間維持させることができる。
Crよりも平衡酸素圧の低い元素としては、Al(アルミニウム)、Ti(チタン)、Ca(カルシウム)、Si(シリコン)、Mn(マンガン)などが挙げられるが、これに限られるものではない。低平衡酸素圧酸化物としては、Al2O3、TiO2、CaO、SiO2、MnO、Mn3O4、MnCr2O4などが挙げられるが、これに限られるものではない。
アンカー部213におけるCrよりも平衡酸素圧の低い元素の含有率は、全構成元素のうち酸素を除く元素の総和に対する各元素のモル比をカチオン比と定義した場合、カチオン比で0.01以上が好ましい。これにより、アンカー部213を取り囲む基材210の酸化をさらに抑制できるため、基材210に対する酸化クロム膜211の密着力をさらに長期間維持させることができる。アンカー部213におけるCrよりも平衡酸素圧の低い元素の含有率は、カチオン比で0.05以上がより好ましく、0.10以上が特に好ましい。
アンカー部213におけるCrよりも平衡酸素圧の低い元素の含有率は、以下のように得られる。まず、上述したFE−SEM画像上において無作為に選出した20個のアンカー部213ごとに、EDS(エネルギー分散型X線分光器)を用いて、アンカー部213の実長さを11等分する10点におけるCrよりも平衡酸素圧の低い元素の含有率をカチオン比で測定する。次に、20個のアンカー部213ごとに10点で測定された含有率から最大値を選択する。次に、20個のアンカー部213ごとに選択された最大値を算術平均する。この算術平均によって得られた値が、アンカー部213におけるCrよりも平衡酸素圧の低い元素の含有率である。一断面において20個のアンカー部213を観察できない場合には、複数断面から20個のアンカー部213を選択すればよい。なお、アンカー部213の実長さとは、基材210の表面210aに平行な面方向におけるアンカー部213の中点を、基端部から先端部まで連ねた線の全長である。アンカー部213の実長さは特に制限されないが、例えば0.2μm以上600μm以下とすることができる。
アンカー部213は、1種の低平衡酸素圧酸化物を含有していてもよいし、2種以上の低平衡酸素圧酸化物を含有していてもよい。例えば、アンカー部213は、Al2O3によって構成されていてもよいし、Al2O3とTiO2の混合体によって構成されていてもよい。
また、アンカー部213は、酸化クロムを部分的に含有していてもよい。ただし、アンカー部213におけるクロムの含有率は、カチオン比で0.95以下が好ましく、0.90以下がより好ましい。
アンカー部213の垂直深さLは特に制限されず、0.5〜15μmとすることができるが、十分なアンカー効果を考慮すれば、1.0〜12μmが好ましく、1.5〜10μmがより好ましい。アンカー部213の幅Wは特に制限されず、0.1〜3.5μmとすることができるが、十分なアンカー効果を考慮すれば、0.15〜3.0μmが好ましく、0.2〜2.5μmがより好ましい。また、十分なアンカー効果を考慮すれば、垂直深さLは幅Wよりも小さいことが好ましく、深さLに対する幅Wの比(W/L)は、0.5以下が好ましく、0.3以下がより好ましい。なお、垂直深さLとは、基材210の厚み方向におけるアンカー部213の深さである。幅Wとは、基材210の表面210aに平行な方向におけるアンカー部213と酸化クロム膜211との接合幅である。
アンカー部213の断面形状は特に制限されず、例えば、楔形、半円形、矩形、及びその他の複雑形状であってもよい。図5では、断面形状が楔形のアンカー部213が図示されており、アンカー部213の最深部が鋭角状であるが、鈍角状であってもよいし、丸みを帯びていてもよい。また、アンカー部213は、基材210の内部に向かって真っ直ぐに延びていなくてもよく、例えば、厚み方向に対して斜めに形成されていてもよいし、全体的或いは部分的に曲がっていてもよい。
なお、アンカー部213の垂直深さL、幅W及び断面形状は、アンカー部213ごとに異なっていてもよい。
具体例1に係る集電部材2は、以下の手順で形成することができる。
まず、ショットピーニング又はサンドブラストを用いて、基材210の表面210aに凹部210bを形成する。この際、上流部位21よりも下流部位22に多くの凹部210bを形成することによって、後工程にて凹部210b内に形成されるアンカー部213の数を調整する。
次に、低平衡酸素圧酸化物粉末にエチルセルロースとテルピネオールを添加したペーストを凹部210b内に充填して、基材210を大気雰囲気で熱処理(800〜900℃、5〜20時間)する。これによって、凹部210bにアンカー部213が形成されるとともに、基材210の表面210aに酸化クロム膜211が形成される。
次に、酸化クロム膜211上にセラミックス材料ペーストを塗布して、熱処理(800〜900℃、1〜5時間)する。これによって、被覆膜212が形成される。
[具体例2]
図6は、基材210に対する酸化クロム膜211の密着力を高める機能を有する剥離抑制部の一例である「埋設部211b」を示す断面図である。
埋設部211bは、基材210の表面210aに形成された凹部210b内に配置される。埋設部211bは、凹部210bの全体に充填されていてもよいし、凹部210bの一部分に配置されていてもよい。
埋設部211bは、凹部210bの開口S2においてくびれている。すなわち、埋設部211bは、開口S2付近で局所的に細くなっている。このようなボトルネック構造によって、埋設部211bが凹部210bに係止されて生じるアンカー効果によって、基材210に対する酸化クロム膜211の密着力を高めることができる。その結果、被覆膜212が酸化クロム膜211とともに基材210から剥離することを抑制することができる。
そして、本実施形態では、集電部材2の下流部位22に設けられた埋設部211bの数が、上流部位21に設けられた埋設部211bの数よりも多い。これにより、大きな熱応力がかかりやすい下流部位22における被覆膜212の剥離を特に抑制できるため、集電部材2全体としての耐久性を向上させることができる。
上流部位21及び下流部位22それぞれが有する「埋設部211bの数」とは、基材210を断面観察した場合に、表面210aの10mm軌跡長(延長長さ)当たりに存在する埋設部211bの数を意味する。基材210の断面観察は、FE−SEMによって1000−20000倍に拡大した画像において行うものとする。
上流部位21における埋設部211bの数は特に制限されないが、被覆膜212の剥離抑制効果を考慮すると、埋設部211bの数は、1個/10mm以上が好ましく、3個/10mm以上がより好ましく、5個/10mm以上が特に好ましい。下流部位22における埋設部211bの数は特に制限されないが、被覆膜212の剥離抑制効果を考慮すると、埋設部211bの数は、3個/10mm以上が好ましく、5個/10mm以上がより好ましく、10個/10mm以上が特に好ましい。
本実施形態において、「埋設部211bが開口S2においてくびれている」とは、基材210の表面210aに垂直な断面において、埋設部211bの幅W2が開口S2の開口幅W1よりも大きいことを意味する。埋設部211bの幅W2とは、開口S2の開口幅W1を規定する直線CLに平行な方向における埋設部211bの最大寸法である。
埋設部211bの深さD1は特に制限されないが、例えば0.5〜300μmとすることができる。埋設部211bの深さD1とは、図6に示すように、開口S2の開口幅W1を規定する直線CLに垂直な方向における埋設部211bの最大寸法である。十分なアンカー効果を考慮すれば、深さD1は、0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましく、1.5μm以上が更に好ましい。
埋設部211bの幅W2は特に制限されないが、例えば0.5〜35μmとすることができる。十分なアンカー効果を考慮すれば、埋設部211bの幅W2は、開口S2の開口幅W1の101%以上が好ましく、105%以上がより好ましく、110%以上が特に好ましい。
埋設部211bの断面形状は特に制限されず、例えば、楕円状、楔形、半円形、矩形、及びその他の複雑形状であってもよい。図6では、断面形状が略楕円状の埋設部211bが図示されており、埋設部211bの最深部が湾曲状に丸みを帯びているが、屈曲状であってもよい。また、埋設部211bは、基材210の内部に向かって真っ直ぐに延びていてもよいし、全体的或いは部分的に曲がっていてもよい。
なお、埋設部211bの深さD1、幅W2及び断面形状は、埋設部211bごとに異なっていてもよい。
具体例2に係る集電部材2は、以下の手順で形成することができる。
まず、ショットピーニング又はサンドブラストを用いて、基材210の表面210aに凹部210bを形成する。この際、上流部位21よりも下流部位22に多くの凹部210bを形成することによって、後工程にて凹部210b内に形成される埋設部211bの数を調整する。
次に、基材210の表面210a上でローラーを転がすことによって、凹部210bの開口S2を狭くする。
次に、酸化クロムペーストを基材210の表面210a上に塗布しつつ凹部210b内に酸化クロムペーストを充填した後、基材210を大気雰囲気で熱処理(800〜900℃、5〜20時間)する。これによって、基材210の表面210a上に酸化クロム膜211が形成されるとともに、凹部210b内に埋設された埋設部211bが形成される。
次に、酸化クロム膜211上にセラミックス材料ペーストを塗布して、熱処理(800〜900℃、1〜5時間)する。これによって、被覆膜212が形成される。
[具体例3]
図7は、集電部材2の内部に発生する熱応力を緩和する機能を有する剥離抑制部の一例である「気孔210c」を示す断面図である。
基材210は、表面210aから30μm以内の領域である表面領域210bにおいて、気孔210cを有する。気孔210cの円相当径は、0.5μm以上20μm以下である。これによって、基材210の表面領域210bの柔軟性を向上させることができるため、集電部材2の内部に発生する熱応力を表面領域210bによって緩和することができる。その結果、被覆膜212が酸化クロム膜211とともに基材210から剥離することを抑制することができる。
そして、本実施形態では、集電部材2の下流部位22に設けられた気孔210cの数が、上流部位21に設けられた気孔210cの数よりも多い。これにより、大きな熱応力がかかりやすい下流部位22における被覆膜212の剥離を特に抑制できるため、集電部材2全体としての耐久性を向上させることができる。
上流部位21及び下流部位22それぞれが有する「気孔210cの数」とは、基材210を断面観察した場合に、表面210aの10mm軌跡長(延長長さ)当たりに存在する気孔210cの数を意味する。基材210の断面観察は、FE−SEMによって1000〜20000倍に拡大した画像において行うものとする。また、「気孔210cの円相当径」とは、「気孔210cの数」を計測する対象とした気孔210cと同じ面積を有する円の直径である。
上流部位21における気孔210cの数は特に制限されないが、被覆膜212の剥離抑制効果を考慮すると、気孔210cの数は、5個/10mm以上が好ましく、10個/10mm以上がより好ましく、15個/10mm以上が特に好ましい。下流部位22における気孔210cの数は特に制限されないが、被覆膜212の剥離抑制効果を考慮すると、気孔210cの数は、10個/10mm以上が好ましく、20個/10mm以上がより好ましく、30個/10mm以上が特に好ましい。
気孔210cのアスペクト比は、3以下であることが好ましい。これによって、気孔210cをより変形しやすくすることができるため、集電部材2の内部に発生する熱応力を表面領域210bによって緩和することができる。気孔210cのアスペクト比とは、気孔210cの最大フェレー径を最小フェレー径で除した値である。最大フェレー径とは、上述したFE−SEM画像上において、平行な2本の直線間の距離が最大になるように気孔210cを挟んだときの当該2本の直線間の距離である。最小フェレー径とは、上述したFE−SEM画像上において、平行な2本の直線間の距離が最小になるように気孔210cを挟んだときの当該2本の直線間の距離である。
なお、図7に示す例では、各気孔210cの内部が空孔になっているが、各気孔210cの内部には、酸化クロム、アルミナ、チタニア、又はこれらの混合物が配置されていてもよい。
具体例3に係る集電部材2は、以下の手順で形成することができる。
まず、ショットピーニング又はサンドブラストを用いて、基材210の表面210aに凹部を形成する。この際、上流部位21よりも下流部位22に多くの凹部を形成することによって、後工程にて形成される気孔210cの数を調整する。
次に、基材210の表面210a上でローラーを転がすことによって、凹部の開口を塞いで、気孔213を形成する。狭くする。
次に、酸化クロムペーストを基材210の表面210a上に塗布した後、基材210を大気雰囲気で熱処理(800〜900℃、5〜20時間)する。これによって、基材210の表面210a上に酸化クロム膜211が形成される。
次に、酸化クロム膜211上にセラミックス材料ペーストを塗布して、熱処理(800〜900℃、1〜5時間)する。これによって、被覆膜212が形成される。
2.第2実施形態
(セルスタック100の構成)
次に、第2実施形態に係るセルスタック100の構成について説明する。図8は、第2実施形態に係るセルスタック100の構成を模式的に示す断面図である。
セルスタック100は、複数の燃料電池20と、複数の集電構造30と、複数の枠体40とを備える。
各燃料電池20と各集電構造30とは、配列方向において交互に配列されている。各枠体40は、各燃料電池20を取り囲むように配置される。各集電構造30と各枠体40とは、配列方向において交互に配列されている。集電構造30と枠体40との間には、絶縁材料が挿入されている。
各燃料電池20は、いわゆる平板型の固体酸化物型燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)である。
複数の燃料電池20は、中央部燃料電池20aと、中央部燃料電池20aの配列方向両側に配置された端部燃料電池20b,20bとを含む。
中央部燃料電池20aは、複数の燃料電池20のうち配列方向中央とその近傍に配置された燃料電池20である。具体的には、複数の燃料電池20の配列方向中央を中心として、配列方向における全長の1/3程度の領域に配置された燃料電池20を、中央部燃料電池20aとすることができる。図8に示すように、本実施形態では、2個の燃料電池20が中央部燃料電池20aとされているが、中央部燃料電池20aの個数は、複数の燃料電池20の全長と各燃料電池20のサイズに応じて適宜変更できる。
端部燃料電池20b,20bは、配列方向において中央部燃料電池20aの両側に配置される。端部燃料電池20b,20bは、複数の燃料電池20のうち配列方向両端とその近傍に配置された燃料電池20である。具体的には、複数の燃料電池20の配列方向両端から全長の1/3程度までの領域に配置された燃料電池20を、端部燃料電池20bとすることができる。図8に示すように、本実施形態では、2個の中央部燃料電池20aの両側に配置された2個の燃料電池20が端部燃料電池20bとされているが、端部燃料電池20bの個数は、複数の燃料電池20の全長と各燃料電池20のサイズに応じて適宜変更できる。
なお、中央部燃料電池20aと端部燃料電池20bとの間には、中央部燃料電池20aと端部燃料電池20bの両方に属さない燃料電池20が配置されていてもよい。
燃料電池20の一方側と対向するインターコネクタ33と当該燃料電池20との間には、酸化剤ガスが流れる空間が形成され、燃料電池20の他方側と対向するインターコネクタ33と当該燃料電池20との間には、燃料ガスが流れる空間が形成される。酸化剤ガスは、インターコネクタ33と燃料電池20と間において、配列方向に対して略垂直な流通方向に沿って流れる。インターコネクタ33と燃料電池20と間には、後述する空気極集電部32が配置されているため、酸化剤ガスは、空気極集電部32の隙間を縫うように流れる。
ここで、インターコネクタ33と燃料電池20と間を流れる酸化剤ガスは、燃料電池20から放出されるジュール熱や反応熱によって徐々に加熱されるため、流通方向の上流から下流に向かうほど高温になる。従って、「集電部材」の一例であるインターコネクタ33のうち下流側の部位は、上流側の部位に比べて高温になるため大きな熱応力が生じやすい。そこで、本実施形態に係るインターコネクタ33は、上記第1実施形態に係る集電部材2と同様、下流側の部位を保護するように構成されている。インターコネクタ33の構成については後述する。
(燃料電池20の構成)
燃料電池20は、燃料極21と、固体電解質層22と、空気極23とを有する。燃料極21と固体電解質層22と空気極23は、配列方向においてこの順に配列されている。
燃料極21は、燃料電池20のアノードとして機能する。燃料極21は、燃料ガス透過性に優れた多孔質体である。燃料極21の厚みは、0.2mm〜5.0mmとすることができる。燃料極21は、例えばNiO(酸化ニッケル)-8YSZ(8mol%のイットリアで安定化されたジルコニア)によって構成することができる。燃料極21がNiOを含んでいる場合、NiOの少なくとも一部は、燃料電池20の稼働時にNiに還元されてもよい。
固体電解質層22は、枠体40に固定されている。固体電解質層22は、燃料極21と空気極23の間に配置される。固体電解質層22の厚みは、3μm〜30μmとすることができる。固体電解質層22は、ジルコニア系材料を主成分として含有する。本実施形態において、組成物Xが物質Yを「主成分として含む」とは、組成物X全体のうち、物質Yが70重量%以上を占めることを意味する。
空気極23は、固体電解質層22上に配置される。空気極23は、燃料電池20のカノードとして機能する。空気極23は、酸化剤ガス透過性に優れた多孔質体である。空気極23の厚みは、5μm〜50μmとすることができる。
空気極23は、一般式ABO3で表され、AサイトにLa及びSrの少なくとも一方を含むペロブスカイト型複合酸化物を主成分として含有することができる。このようなペロブスカイト型複合酸化物としては、LSCF((La,Sr)(Co,Fe)O3)、LSF((La,Sr)FeO3)、LSC((La,Sr)CoO3)、LNF(La(Ni,Fe)O3)、LSM((La,Sr)MnO3)などが挙げられるが、これに限られるものではない。
(集電構造30の構成)
集電構造30は、燃料電池20同士を電気的に接続する。集電構造30は、燃料極集電部31と、空気極集電部32と、インターコネクタ33(「集電部材」の一例)とを有する。
燃料極集電部31は、燃料極21とインターコネクタ33の間に配置される。燃料極集電部31は、燃料極21とインターコネクタ33とを電気的に接続する。燃料極集電部31は、導電性接合剤を介して燃料極21及びインターコネクタ33と機械的に接続されていてもよい。燃料極集電部31は、導電性を有する材料によって構成される。燃料極集電部31は、燃料ガスを燃料極21に供給可能な形状を有する。燃料極集電部31としては、例えばニッケル製のメッシュ部材を用いることができる。
空気極集電部32は、インターコネクタ33を挟んで燃料極集電部31の反対側に配置される。空気極集電部32は、空気極23とインターコネクタ33の間に配置される。空気極集電部32は、空気極23とインターコネクタ33とを電気的に接続する。空気極集電部32は、空気極23と電気的に接続される複数の接続部32aを有する。複数の接続部32aは、マトリクス状に配列されている。各接続部32aは、空気極23側に突出する。接続部32aは、導電性接合剤を介して空気極23に接続されていてもよい。酸化剤ガスは、各接続部32aの周囲を流通方向に沿って流れる。空気極集電部32は、導電性を有する材料によって構成される。空気極集電部32には、例えば鉄とクロムを含有するステンレス(SUS430等)製の板状部材を用いることができる。
インターコネクタ33は、燃料極集電部31と空気極集電部32の間に配置される。インターコネクタ33の燃料極集電部31側には燃料ガスが流れ、インターコネクタ33の空気極集電部32側には酸化剤ガスが流れる。インターコネクタ33は、導電性を有する材料によって構成される。
(各インターコネクタ33の構成)
各インターコネクタ33は、第2実施形態に係る「集電部材」である。図8に示すように、各インターコネクタ33は、上流部位331と、下流部位332とを有する。
上流部位331は、インターコネクタ33のうち酸化剤ガスの流通方向において上流側に位置する部位である。上流部位331は、インターコネクタ33(ただし、酸化剤ガスと接触する領域に限る。)の流通方向中央より上流側に設定される。
下流部位332は、インターコネクタ33のうち酸化剤ガスの流通方向において下流側に位置する部位である。下流部位332は、上流部位331の下流側に位置する。下流部位332は、インターコネクタ33(ただし、酸化剤ガスと接触する領域に限る。)の流通方向中央より下流側に設定される。
インターコネクタ33は、上記第1実施形態に係る集電部材2と同様、基材210、酸化クロム膜211、及び被覆膜212によって構成される(図4参照)。
そして、インターコネクタ33の上流部位331及び下流部位332それぞれには、「剥離抑制部」が少なくとも1つずつ設けられている。剥離抑制部は、インターコネクタ33の内部に発生する熱応力によって、被覆膜212が酸化クロム膜211とともに基材210から剥離することを抑制する機能を有する。
また、本実施形態に係るインターコネクタ33では、下流部位332が有する剥離抑制部の数は、上流部位331が有する剥離抑制部の数より多い。これにより、大きな熱応力がかかりやすい下流部位332における被覆膜212の剥離を特に抑制できるため、インターコネクタ33全体としての耐久性を向上させることができる。
剥離抑制部は、被覆膜212が酸化クロム膜211とともに基材210から剥離することを抑制する機能を有している限り、その構成は特に制限されない。例えば、剥離抑制部は、基材210に対する酸化クロム膜211の密着力を高めるものであってもよいし、インターコネクタ33の内部に発生する熱応力を緩和するものであってもよい。剥離抑制部の具体例は、上記第1実施形態の具体例1〜3にて説明したとおりである(図5〜図7参照)。
3.他の実施形態
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の変形又は変更が可能である。
(変形例1)
上記第1及び第2実施形態では、本発明にかかる集電部材を電気化学セルの一例である燃料電池のセルスタックに適用した場合について説明したが、本発明にかかる集電部材は、水蒸気から水素と酸素を生成する電解セルを含む電気化学セルのセルスタックに適用可能である。
(変形例2)
上記第1実施形態では、複数の集電部材2のすべてにおいて、下流部位22が有する剥離抑制部の数は、上流部位21が有する剥離抑制部の数より多いこととしたが、これに限られない。セルスタック11が備える少なくとも1つの集電部材2において、下流部位22に多くの剥離抑制部が形成されていれば、当該集電部材2の耐久性を向上させることができる。
同様に、上記第2実施形態では、複数のインターコネクタ33のすべてにおいて、下流部位332が有する剥離抑制部の数は、上流部位331が有する剥離抑制部の数より多いこととしたが、これに限られない。セルスタック100が備える少なくとも1つのインターコネクタ33において、下流部位332に多くの剥離抑制部が形成されていれば、当該インターコネクタ33の耐久性を向上させることができる。
(変形例3)
上記第1実施形態では、図3を参照しながら集電部材2の構成について説明したが、上流部位21と下流部位22とを有する限り、集電部材2の形状は特に制限されない。
同様に、上記第2実施形態では、図8を参照しながらインターコネクタ33の構成について説明したが、上流部位331と下流部位332とを有する限り、インターコネクタ33の形状は特に制限されない。
(変形例4)
上記第2実施形態では、本発明にかかる集電部材の構成をインターコネクタ33に適用した場合について説明したが、本発明にかかる集電部材の構成は、燃料極集電部31或いは空気極集電部32にも適用することができる。従って、燃料極集電部31、空気極集電部32及びインターコネクタ33の少なくとも1つに本発明にかかる集電部材の構成を適用することによって、被覆膜の剥離を抑制可能なセルスタックを提供することができる。