JP6651876B2 - リアクトル - Google Patents

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Description

本発明は、ハイブリッド自動車などの車両に搭載される車載用DC−DCコンバータや電力変換装置の構成部品などに利用されるリアクトルに関する。
電圧の昇圧動作や降圧動作を行う回路の部品の一つに、リアクトルがある。例えば特許文献1には、コイルと、コイルが配置される磁性コアとを備えるリアクトルに関する技術が開示されている。
特許文献1には、コイルと、コイルの内部に配置される内側コア部及びコイルから露出される外側コア部を有する環状の磁性コアと、コイルと磁性コアとの組合体を収納するケースとを備えるリアクトルが開示されている。内側コア部は、分割コア(コア片)とセラミックスや樹脂などのギャップ板とを交互に積層した積層体である。このリアクトルでは、ケースの底板部と、底板部に接触する外側コア部の下面とを接着剤で接着して接着層が形成され、外側コア部の下面がケース(底板部)に対して固定されている。
特開2013−4931号公報
リアクトル駆動時の振動による騒音を低減することが望まれている。
リアクトルは、コイルに所定周波数の電流を通電して、磁性コアが励磁されることによって駆動する。磁性コアが複数のコア片で構成され、コア片間にギャップが設けられている場合、リアクトル駆動時に、ギャップを挟んで隣り合うコア片間に電磁吸引力が作用して磁性コアが振動し、騒音が発生することがある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、駆動時の振動を抑制でき、騒音を低減できるリアクトルを提供することにある。
本発明の一態様に係るリアクトルは、巻回部を有するコイルと、前記巻回部の内側に配置される内側コア部及び前記巻回部の外側に配置される外側コア部を有する磁性コアと、前記コイルと前記磁性コアとの組合体が載置される載置部材と、を備える。前記磁性コアは、複数のコア片と、前記コア片間に設けられるギャップとを有する。前記外側コア部は、前記載置部材に載置される下面と、その反対側の上面とを有する。そして、前記外側コア部の下面及び上面がそれぞれ、前記載置部材に対して固定されている。
上記リアクトルは、駆動時の振動を抑制でき、騒音を低減できる。
実施形態1のリアクトルの概略斜視図である。 実施形態1のリアクトルの概略分解斜視図である。 実施形態1のリアクトルにおける組合体の概略分解斜視図である。 図1に示すIV−IV線で切断したリアクトルの概略側面断面図である。 実施形態1のリアクトルにおける外側コア部の固定構造の別の一例を示す概略側面断面図である。 実施形態2のリアクトルの概略上面断面図である。 実施形態2のリアクトルの別の一例を示す概略上面断面図である。
本発明者らは、リアクトルの駆動周波数と固有周波数との関係に着目し、リアクトルの振動特性(振動・騒音)に及ぼす駆動周波数の影響について検討した。その結果、以下の知見を得た。
ハイブリッド自動車や電気自動車などに搭載される電力変換装置に利用されているリアクトルでは、コイルに通電される電流の駆動周波数が5kHz〜10kHz程度である。このリアクトルの駆動周波数帯域とリアクトルの固有周波数が重なる場合、共振現象が生じ、共振することで振動・騒音が大きくなる。従来のように、コア片間にギャップ板を介在させた磁性コアを備えるリアクトルでは、ギャップ板が介在することでコア片が振動し難く、固有周波数が高くなる傾向がある。そのため、リアクトルの固有周波数が駆動周波数に対して高く設定され、共振現象が生じ難く、リアクトル駆動時の振動・騒音の問題が起き難い。しかし、コア片間にギャップを設け、ギャップ板を介在させない場合はコア片が振動し易く、固有周波数が低くなる傾向がある。そのため、リアクトルの固有周波数が駆動周波数帯域と重なる可能性があり、共振現象が生じて、振動・騒音が顕著となる。
本発明者らは、磁性コアの固定構造を工夫して、リアクトルの固有周波数を駆動周波数帯域外にすることで、駆動時の振動を抑制でき、振動による騒音を低減できることを見出した。本発明は以上の知見に基づいてなされたものである。最初に、本発明の実施態様を列記して説明する。
[本発明の実施形態の説明]
(1)本発明の一態様に係るリアクトルは、巻回部を有するコイルと、前記巻回部の内側に配置される内側コア部及び前記巻回部の外側に配置される外側コア部を有する磁性コアと、前記コイルと前記磁性コアとの組合体が載置される載置部材と、を備える。前記磁性コアは、複数のコア片と、前記コア片間に設けられるギャップとを有する。前記外側コア部は、前記載置部材に載置される下面と、その反対側の上面とを有する。そして、前記外側コア部の下面及び上面がそれぞれ、前記載置部材に対して固定されている。
上記リアクトルによれば、外側コア部の下面及び上面の両面が載置部材に対して固定されていることで、電磁吸引力による外側コア部(磁性コア)の振動を効果的に抑制できる。外側コア部の下面及び上面の両面が固定されていることで、片面のみ固定されている場合に比較して、リアクトルの固有周波数が高くなり、固有周波数を高域側にシフトさせることができる。したがって、リアクトルの固有周波数を駆動周波数(5kHz〜10kHz)よりも高くすることが可能で、固有周波数を駆動周波数帯域外にすることができ、固有周波数と駆動周波数とが共振することを回避できる。よって、上記リアクトルは、固有周波数と駆動周波数との共振現象を回避して、駆動時の振動を抑制でき、振動による騒音を低減できる。
また、上記リアクトルは、磁性コアを構成するコア片間にセラミックスなどのギャップ板が介在していない。そのため、ギャップ板を用意する必要がなく、従来に比較して部品点数を削減したり、コア片とギャップ板とを接着剤で接着する工程を省略したりできるので、低コスト化と生産性の向上を図ることができる。
(2)上記リアクトルの一形態として、前記リアクトルの固有周波数が、駆動周波数よりも高く、10kHz超であることが挙げられる。
リアクトルの固有周波数が10kHz超であることで、駆動周波数(5kHz〜10kHz)よりも十分高くすることができるため、駆動時の振動を効果的に抑制でき、振動による騒音をより低減できる。より好ましいリアクトルの固有周波数は11kHz以上である。
(3)上記リアクトルの一形態として、前記載置部材が、前記組合体が載置される底板部と、前記組合体の周囲を囲む側壁部とを有するケースであることが挙げられる。この場合、前記ケース内に充填され、前記組合体を封止する封止樹脂を備え、前記ギャップに前記封止樹脂が充填されていることが挙げられる。
組合体がケースに収納され、封止樹脂で封止されることで、封止樹脂によって組合体を一体化できる。また、外部環境から組合体を保護できる。この場合では、製造過程において、ケース内に封止樹脂を充填した際に未固化の樹脂がコア片間のギャップに流入して、ギャップに封止樹脂を充填することができる。
(4)上記リアクトルの一形態として、前記外側コア部の下面と前記載置部材とを接着する接着層と、前記外側コア部の上面に配置され、前記外側コア部の上面を前記載置部材に対して固定する固定具と、を備えることが挙げられる。
外側コア部の下面と載置部材との間に接着層を備えることで、外側コア部の下面を載置部材に固定できる。外側コア部の上面に固定具を備えることで、固定具を介して外側コア部の上面を載置部材に固定できる。固定具としては、例えば、外側コア部の上面に配置され、載置部材に固定されるステーや板バネなどが挙げられる。板バネであれば、外側コア部の上面を載置部材側に押圧して、外側コア部の上面を載置部材に対してより強固に固定できる。また、外側コア部の上面にステーや板バネを配置すると共に、外側コア部の上面とステーや板バネとを接着層により接着することで、外側コア部の上面を載置部材に対してより強固に固定できる。その他、載置部材がケースであり、ケースに取り付けられるカバーを有する場合は、このカバーを固定具に利用できる。例えば、外側コア部の上面とケースとを接着剤で接着して接着層を形成することで、外側コア部の上面をカバーを介してケース(載置部材)に固定できる。
(5)上記リアクトルの一形態として、前記載置部材が、前記組合体が載置される底板部と、前記組合体の周囲を囲む側壁部とを有するケースであり、前記磁性コアは、一対の前記内側コア部と、これら内側コア部の両端部に配置される一対の前記外側コア部とを有する環状の磁性コアであることが挙げられる。この場合、前記ケースは、前記側壁部の内面から突出して設けられ、前記外側コア部の前記内側コア部に対向する内端面に接触する突起部を有することが挙げられる。
ケースの側壁部に内面から突出して突起部が設けられ、この突起部が外側コア部の内端面に接することで、電磁吸引力による外側コア部の振動をより抑制できる。よって、駆動時の外側コア部の振動を効果的に抑制でき、振動による騒音をより低減できる。
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係るリアクトルの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
[実施形態1]
<リアクトルの構成>
図1〜図5を参照して、実施形態1のリアクトルを説明する。実施形態1のリアクトル1は、図1〜図4に示すように、巻回部2cを有するコイル2と、巻回部2cの内側に配置される内側コア部31及び巻回部2cの外側に配置される外側コア部32を有する磁性コア3と、コイル2と磁性コア3との組合体10が載置される載置部材(この例では、ケース4)とを備える。内側コア部31は、図3,図4に示すように、複数の内コア片31mと、内コア片31m間に設けられるギャップ31gとを有する。リアクトル1の特徴の1つは、外側コア部32における載置部材(ケース4の底板部40)に載置される下面とその反対側の上面とがそれぞれ、載置部材(ケース4)に対して固定されている点にある。以下の説明において、載置部材(ケース4の底板部40)側を「下」、その反対側を「上」として説明する。以下、リアクトルの構成について詳しく説明する。
(コイル)
コイル2は、図1〜図3に示すように、巻線を巻回してなる一対の巻回部2c,2cと、両巻回部2cを繋ぐ連結部2rとを有する。巻回部2cは巻線を螺旋状に巻回して筒状に形成され、両巻回部2cは互いに軸が平行するように横並び(並列)に配置されている。巻線は、平角線の導体(銅など)と、導体の外周に絶縁被覆(ポリアミドイミドなど)とを有する被覆平角線(いわゆるエナメル線)である。また、コイル2は、1本の連続する巻線で形成され、巻回部2cが四角筒状に形成されたエッジワイズコイルである。
巻線端部2eは、巻回部2cから適宜な方向に引き出され、その先端の絶縁被覆が剥されて、導体に端子金具(図示せず)が接続される。コイル2は、端子金具を介して電源などの外部装置(図示せず)に電気的に接続される。
(磁性コア)
磁性コア3は、図2,図3に示すように、コイル2(巻回部2c)の内側に配置される一対の内側コア部31と、コイル2(巻回部2c)の外側に配置される一対の外側コア部32とを有する。各内側コア部31はそれぞれ、横並びに配置された各巻回部2cの内側に位置し、コイル2が配置される部分である。内側コア部31は、その軸方向の端部の一部が巻回部2cから突出していてもよい。各外側コア部32は、両巻回部2cの外側に位置し、コイル2が実質的に配置されない(即ち、巻回部2cから突出(露出)する)部分である。磁性コア3は、横並びに配置された両内側コア部31を両端から挟むように各外側コア部32が配置され、各内側コア部31の両端面が外側コア部32の内端面32eにそれぞれ対向して接続されることによって環状に形成されている。磁性コア3には、コイル2に通電して励磁した際に磁束が流れ、閉磁路が形成される。
(内側コア部)
内側コア部31は、図3に示すように、複数の内コア片31mを有し、各内コア片31m間にギャップ31g(図4参照)が設けられている。この例では、ギャップ31gに後述する封止樹脂6が充填されている。ギャップ31gは、封止樹脂6が充填されず、空間(エアギャップ)であってもよい。
内側コア部31の形状は、巻回部2cの形状に対応した形状である。この例では、内側コア部31は四角柱状体であり、内コア片31mは四角柱状片である。また、内側コア部31は、複数の内コア片31mの間にギャップ31gが設けられた状態で配置されている。この例では、内コア片31mの個数が3個である。内コア片31mの個数やギャップ31gの長さ(内コア片31m間の間隔)は、所望の磁気特性が得られるように適宜設定すればよい。
内コア片31mは、軟磁性材料を含有する材料で形成されている。内コア片31mとしては、例えば、鉄又は鉄合金(Fe−Si合金、Fe−Ni合金など)といった軟磁性粉末や更に絶縁被覆を有する被覆軟磁性粉末などを圧縮成形した圧粉成形体、軟磁性粉末と樹脂とを含む複合材料などが挙げられる。この例では、内コア片31mは圧粉成形体である。
(外側コア部)
外側コア部32は、図3に示すように、内側コア部31の両端部に配置され、内側コア部31と共に環状の磁性コア3を形成する。この例では、外側コア部32は、ブロック状の1つのコア片で構成されている。つまり、磁性コア3は、図3に示すように、内側コア部31を構成する内コア片31mと、外側コア部32を構成するコア片との複数のコア片で構成されている。外側コア部32の形状は、特に限定されない。この例では、外側コア部32は、平面視で(上面から見て)ドーム状をなし、内端面32eが平坦面になっている。また、外側コア部32を構成するコア片は、軟磁性材料を含有する材料で形成されており、上述した圧粉成形体や複合材料などが利用できる。この例では、外側コア部32は圧粉成形体である。
図4に示すように、内側コア部31の両端に位置する各内コア片31mと両外側コア部32との間にもギャップ31gが設けられており、後述する封止樹脂6が充填されている。内側コア部31と外側コア部32との間のギャップ31gは、封止樹脂6が充填されずに空間(エアギャップ)であってもよい。
(絶縁介在部材)
この例に示すリアクトル1(組合体10)は、図3に示すように、コイル2と磁性コア3との間に介在される絶縁介在部材5を備える。絶縁介在部材5は、電気絶縁材料で形成され、コイル2と磁性コア3との間の電気的絶縁を確保する機能を有する。
図3に示す絶縁介在部材5は、コイル2の巻回部2cの内周面と内側コア部31の外周面との間に介在され、巻回部2c内に内側コア部31を位置決めして、巻回部2cと内側コア部31との間の絶縁を確保する。絶縁介在部材5は、各内側コア部31にそれぞれ配置されている。この例では、絶縁介在部材5は、内側コア部31の軸方向に沿って分割された一対の分割片5A,5Bで構成されている。以下、主に図3を参照して、絶縁介在部材5(分割片5A,5B)の構成について説明する。
分割片5A,5Bは、その断面形状(内側コア部31の軸方向と直交する方向の断面形状)が]状であり、内側コア部31(内コア片31m)の上面側及び下面側から挟み込むように配置される。具体的には、分割片5A(5B)は、内側コア部31の上面(下面)の全面に配置される平板部51と、平板部51の両側縁から立設され、内側コア部31の角部から側面の一部に亘って配置される一対の側面部52とを有する。平板部51と側面部52とは一体に成形されている。分割片5A,5Bは、内側コア部31の上面側及び下面側に配置した際にそれぞれの側面部52の端縁同士が互いに接触せず、その間に間隙が形成される。そのため、内側コア部31の側面の全面が側面部52で覆われず、その側面の一部(上下方向の中間部)が露出している。
分割片5A,5Bは、隣り合う内コア片31m間の間隔を保持して各内コア片31mを位置決めする仕切り部53を有する。仕切り部53は、側面部52の内面から突出して一体に設けられている。また、分割片5A,5Bの両端部に位置する仕切り部53は、内側コア部31の両端部に外側コア部32を配置して磁性コア3を構成する際に、内側コア部31の両端に位置する各内コア片31mと両外側コア部32との間の間隔を保持する。仕切り部53の厚さ(内側コア部31の軸方向に沿った厚さ)は、ギャップ31g(図4参照)の厚さに対応する。よって、分割片5A,5Bが仕切り部53を有することで、各内コア片31mを所定の間隔をあけて配置できると共に、各内コア片31mの間、並びに、内側コア部31(内コア片31m)と外側コア部32との間にギャップ31gの厚さに対応した隙間を形成することができる。
また、分割片5A,5Bには、後述する封止樹脂6を充填した際に未固化の樹脂を、各内コア片31mの間、並びに、内側コア部31と外側コア部32との間に形成された隙間に流入させるための流路となる貫通孔54が形成されている。この例では、平板部51に貫通孔54が形成されており、この貫通孔54はギャップ31g(図4参照)となる隙間に対応する位置に設けられている。
絶縁介在部材5の形成材料としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ナイロン6やナイロン66などのポリアミド(PA)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。絶縁介在部材5は、射出成形など、公知の方法によって作製できる。
(ケース)
この例に示すリアクトル1は、図1,図2及び図4に示すように、組合体10が載置される載置部材として、組合体10を収納するケース4を備える。ケース4は、組合体10が載置される底板部40と、組合体10の周囲を囲むように底板部40から立設される側壁部41とを有し、底板部40とは反対側(上方)が開口している。この例では、側壁部41の形状が矩形枠状である。ケース4に組合体10が収納されることよって、組合体10を外部環境(粉塵や腐食など)から保護したり、機械的に保護できる。この例では、ケース4の底板部40の下面が冷却ベースといった設置対象(図示せず)の上面に接するように固定され、リアクトル1が設置対象上に設置される。図1では、底板部40が下方となる設置状態を示すが、底板部40が上方、又は側方となる設置状態もあり得る。ケース4の開口部にカバー(図示せず)を取り付けてもよい。
図1,図2に示すケース4は、底板部40と側壁部41とが一体に成形された金属製のケースである。一般に、金属は熱伝導率が比較的高いので、金属製のケースであれば、その全体を放熱経路に利用でき、組合体10に発生した熱を外部の設置対象(例えば冷却ベースなど)に効率良く放熱できる。つまり、リアクトル1の放熱性を高められる。ケース4の形成材料としては、例えば、アルミニウムやその合金、マグネシウムやその合金、銅やその合金、銀やその合金、鉄や鋼、オーステナイト系ステンレス鋼などが挙げられる。アルミニウムやマグネシウム、これらの合金で形成した場合、ケース4を軽量にできる。
(封止樹脂)
この例に示すリアクトル1では、図1,図4に示すように、ケース4内に組合体10を封止する封止樹脂6を備える。封止樹脂6は、ケース4内に組合体10を収納した後、未固化の封止樹脂を充填して固化させることで形成されている。この例では、コイル2の巻線端部2eを除く、組合体10の略全体が封止樹脂6に埋設されるように、封止樹脂6がケース4内に充填されている。組合体10が封止樹脂6で封止されることよって、組合体10の電気的・機械的保護、外部環境からの保護などを図ることができる。
封止樹脂6には、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、PPS樹脂などが好適に利用できる。放熱性を高める観点から、封止樹脂6にアルミナやシリカなどの熱伝導率の高いセラミックスのフィラーを混合してもよい。
この例では、図4に示すように、封止樹脂6を充填した際に未固化の樹脂が、各内コア片31mの間、並びに、内側コア部31と外側コア部32との間の隙間(ギャップ31g)に流入して、ギャップ31gに封止樹脂が充填されている。
<外側コア部の上下面の固定構造>
リアクトル1は、外側コア部32の下面及び上面がそれぞれ、載置部材であるケース4に対して固定されている。以下、主に図2,図4を参照して、外側コア部32の固定構造について詳しく説明する。
〈外側コア部の下面の固定構造〉
(接着層)
リアクトル1では、図4に示すように、外側コア部32の下面とケース4の底板部40との間に、外側コア部32の下面と底板部40とを接着する接着層70を備える。この接着層70によって外側コア部32の下面が底板部40に固定されている。この例では、接着層70が、組合体10(外側コア部32及びコイル2)の下面とケース4の底板部40との間に形成されており、コイル2の下面も底板部40に固定されている。接着層70の形成材料としては、リアクトル駆動時の最高到達温度に対して軟化しない程度の耐熱性を有する樹脂(接着剤)が好ましく、更に電気絶縁性を有する樹脂が好ましい。具体的には、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステルなどの熱硬化性樹脂や、PPS樹脂、LCPなどの熱可塑性脂が挙げられる。接着層70は、例えば接着剤を塗布して形成する他、基材の両面に接着剤を塗布した接着シートを用いることも可能である。この例では、接着層70は、エポキシ系接着剤で形成されている。
〈外側コア部の上面の固定構造〉
(固定具)
リアクトル1では、図2,図4に示すように、外側コア部32の上面に配置され、外側コア部32の上面をケース4に対して固定する固定具を備える。この例では、固定具として、ステー80を用いている。ステー80は、帯状の部材であり、外側コア部32の上面に幅方向(内側コア部31が並ぶ方向)に沿って架け渡され、その両端部がそれぞれケース4内の四隅に設けられたステー取付部45にネジ801で取り付けられている。このステー80によって外側コア部32の上面がステー80を介してケース4に固定されている。ステー80は、例えば、アルミニウムやその合金、マグネシウムやその合金、銅やその合金、銀やその合金、鉄や鋼、オーステナイト系ステンレス鋼などの金属で形成することが挙げられる。
更に、図5に示すように、外側コア部32の上面とステー80との間に、外側コア部32の上面とステー80とを接着する接着層71を備えていてもよい。この接着層71により外側コア部32の上面がステー80に固定され、外側コア部32の上面をステー80を介してケース4により強固に固定できる。
固定具として、ステー80に替えて、外側コア部32の上面を下方(ケース4の底板部40側)に押圧する板バネを用いることが挙げられる。板バネは、ステー80と同様に、外側コア部32の上面に配置すると共に、両端部をそれぞれケース4にネジなどで取り付ければよい。板バネであれば、外側コア部の上面を下方に押圧して、外側コア部32の上面をケース4に対してより強固に固定できる。
<固有周波数の試算例>
上述した実施形態1と同様の構成のリアクトルについて、外側コア部の下面のみを固定した場合(片端固定)と外側コア部の上下面を固定した場合(両端固定)のそれぞれの固有周波数を試算した。ここでは、次式により固有周波数f(Hz)を算出した(添え字のnはモード次数を表す)。また、外側コア部の高さ(上下方向の長さ)を変え、それぞれの場合における固有周波数を試算した。その結果を表1に示す。
[式1]
Figure 0006651876
:係数
E:ヤング率(MPa)
I:断面二次モーメント(mm
ρ:密度(kg/mm
A:断面積(mm
L:外側コア部の高さ(mm)
の値は、片端固定の場合と両端固定の場合とで異なり、ここでは、n=1の1次モードを扱い、片端固定の場合を1.875、両端固定の場合をπとした。また、E、I、ρ及びAは、次のように設定した。
E=40000(MPa)
I=13500(mm
ρ=7.2×10−6(kg/mm
A=720(mm
Figure 0006651876
表1の結果から、外側コア部の上下面が固定されていることで、下面のみ固定されている場合に比較して、固有周波数が高くなることが分かる。ここで、ハイブリッド自動車や電気自動車などに搭載される電力変換装置に利用されているリアクトルでは、外側コア部の高さが24mm以上40mm以下に設計されている場合が多い。表1から分かるように、この試算例では、両端固定の場合、外側コア部の高さが40mm以下のとき、固有周波数が10kHz超を達成でき、38mm以下では更に、11kHz以上を達成できる。一方で、片端固定の場合、外側コア部の高さが24mm以上40mm以下のとき、固有周波数が10kHz未満であり、10kHz超を達成できない。
<作用効果>
実施形態1のリアクトル1は、次の効果を奏する。
(1)外側コア部32の下面及び上面の両面が載置部材(ケース4)に対して固定されていることで、リアクトルの固有周波数が高くなり、固有周波数を高域側にシフトさせることができる。その結果、リアクトルの固有周波数を駆動周波数(5kHz〜10kHz)よりも高くすることが可能であり、例えば、固有周波数が10kHz超、更には11kHz以上である。したがって、リアクトルの固有周波数を駆動周波数帯域外にすることができ、固有周波数と駆動周波数とが共振することを回避できる。よって、固有周波数と駆動周波数との共振現象を回避して、リアクトル駆動時の振動を抑制でき、振動による騒音を低減できる。
[変形例1]
上述した実施形態1では、載置部材がケース4(図2参照)である場合を例に挙げて説明したが、載置部材が平板状の部材であってもよい。この場合、外側コア部の下面と載置部材の平板とを接着層によって接着して、外側コア部の下面を平板に固定することが挙げられる。一方、固定具のステー(板バネ)を、外側コア部の上面に配置すると共に平板に取り付けることで、外側コア部の上面を平板に対して固定することが挙げられる。載置部材に用いる平板状の部材は、ケース4と同様に、アルミニウムやその合金などの金属で形成することが挙げられる。また、この場合、組合体の少なくとも一部をモールド樹脂で被覆してもよい。モールド樹脂としては、エポキシ樹脂、PPS樹脂、PA樹脂などが好適に利用できる。組合体をモールド樹脂で一体化する場合、ギャップ31g(図4参照)にモールド樹脂を充填してもよい。
[変形例2]
上述した実施形態1では、図4に示すように、ギャップ31gに封止樹脂6が充填されている場合を例に挙げて説明したが、ギャップ31gがエアギャップであってもよい。実施形態1では、図3に示す絶縁介在部材5(分割片5A,5B)を用い、仕切り部53によってコア片間の間隔を保持しつつ、貫通孔54によって樹脂の流路を確保している。エアギャップとする場合は、例えば絶縁介在部材5の形状を筒状にして、ギャップ31gに樹脂が充填されないようにすればよい。具体的には、分割片5A,5Bにおいて、側面部52を延長して、分割片5A,5Bを内側コア部31の上面側及び下面側に配置した際にそれぞれの側面部52の端縁同士が互いに接触するようにすると共に、樹脂の流路となる貫通孔54を形成しないようにする。これにより、封止樹脂6を充填した際に未固化の樹脂がギャップ31gに流入することが防止され、コア片間にエアギャップを形成できる。
[実施形態2]
図6,図7を参照して、実施形態2のリアクトルを説明する。実施形態2のリアクトルは、載置部材であるケース4において、側壁部41の内面から突出して設けられ、外側コア部32の内側コア部31に対向する内端面32eに接触する突起部46を有する点が、実施形態1と主に相違する。以下の説明においては、上述した実施形態1との相違点を中心に説明し、実施形態1と同様の構成については重複する説明を省略する。
図6,図7に示す突起部46は、ケース4の側壁部41の内面に高さ方向(上下方向)に沿って一体に形成されている。図6に示すリアクトル1Aでは、側壁部41の内面から突出する突起部46が、内側コア部31と外側コア部32との間に侵入して、外側コア部32の内端面32eと接触している。一方、図7に示すリアクトル1Bでは、外側コア部32を幅方向(内側コア部31が並ぶ方向)に拡張して、外側コア部32の内端面32eの両側縁が内側コア部31の幅方向外側の側面よりも外側に位置している。リアクトル1Bでは、突起部46が、内側コア部31と外側コア部32との間に侵入せずに、外側コア部32の内端面32eと接触している。
図6,図7に示すリアクトル1A,1Bのいずれの場合も、突起部46が外側コア部32の内端面32eに接することで、突起部46によって外側コア部32が支持されている。そのため、外側コア部32が電磁吸引力によって内側コア部31側に傾いたり、動いたりすることを抑制できる。したがって、実施形態1のリアクトル1に比較して、電磁吸引力による外側コア部32の振動をより抑制できる。よって、リアクトル駆動時の外側コア部32の振動を効果的に抑制でき、振動による騒音をより低減できる。
図6に示すリアクトル1Aの場合は、金属製のケース4に一体に設けられた突起部46が内側コア部31と外側コア部32との間に侵入している。コイル2への通電により磁性コア3に形成される磁路の途中に突起部46があるため、損失が増加する可能性がある。これに対し、図7に示すリアクトル1Bの場合は、突起部46が内側コア部31と外側コア部32との間に侵入しておらず、磁路の途中に突起部46が存在しないので、損失が増加することがない。
本発明のリアクトルは、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車などの車両に搭載される車載用コンバータ(代表的にはDC−DCコンバータ)や空調機のコンバータなどの種々のコンバータ、電力変換装置の構成部品に利用することができる。
1,1A,1B リアクトル 10 組合体
2 コイル
2c 巻回部 2r 連結部
2e 巻線端部
3 磁性コア
31 内側コア部
31m 内コア片 31g ギャップ
32 外側コア部
32e 内端面
4 ケース(載置部材)
40 底板部 41 側壁部
45 ステー取付部
46 突起部
5 絶縁介在部材
5A,5B 分割片
51 平板部 52 側面部
53 仕切り部 54 貫通孔(流路)
6 封止樹脂
70 接着層 71 接着層
80 ステー(固定具) 801 ネジ

Claims (3)

  1. 巻回部を有するコイルと、
    前記巻回部の内側に配置される内側コア部及び前記巻回部の外側に配置される外側コア部を有する磁性コアと、
    前記コイルと前記磁性コアとの組合体が載置される載置部材と、を備えるリアクトルであって、
    前記磁性コアは、複数のコア片と、前記コア片間に設けられるギャップとを有し、
    前記外側コア部は、前記載置部材に載置される下面と、その反対側の上面とを有し、
    前記外側コア部の下面と前記載置部材とを接着する接着層と、
    前記外側コア部の上面に配置され、前記外側コア部の上面を前記載置部材に対して固定する固定具と、
    前記外側コア部の上面と前記固定具とを接着する接着層と、を備え、
    前記外側コア部の下面及び上面がそれぞれ、前記載置部材に対して固定されており、
    前記リアクトルの固有周波数が、駆動周波数よりも高く、10kHz超であるリアクトル。
  2. 前記載置部材が、前記組合体が載置される底板部と、前記組合体の周囲を囲む側壁部とを有するケースであり、
    前記ケース内に充填され、前記組合体を封止する封止樹脂を備え、
    前記ギャップに前記封止樹脂が充填されている請求項に記載のリアクトル。
  3. 前記載置部材が、前記組合体が載置される底板部と、前記組合体の周囲を囲む側壁部とを有するケースであり、
    前記磁性コアは、一対の前記内側コア部と、これら内側コア部の両端部に配置される一対の前記外側コア部とを有する環状の磁性コアであり、
    前記ケースは、前記側壁部の内面から突出して設けられ、前記外側コア部の前記内側コア部に対向する内端面に接触する突起部を有する請求項1又は請求項2に記載のリアクトル。
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