JP6646709B2 - マイクロ波加熱蒸留法を用いた果実および/または果皮スピリッツの製造方法 - Google Patents

マイクロ波加熱蒸留法を用いた果実および/または果皮スピリッツの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、マイクロ波加熱蒸留法を用いた果実および/または果皮特有の香味豊かな原酒を製造する方法に関する。
一般に、現在市場に流通している果汁含有アルコール飲料は、各種原料を混合した後、各種容器に充填し、その後、加熱殺菌処理を行うことにより製造されている。チューハイは、アルコール飲料にカーボネーションを施すことにより炭酸ガスを含有させた「発泡性アルコール飲料」の代表例でもある。チューハイなどの果汁含有アルコール飲料においては、果実の味わいや果実感を維持するためには、糖類を使用するか、糖類を使用しない場合は、果汁を高含有させるか或いは香料や甘味料、酸味料を用いて香味を改善する必要がある。
柑橘類またはリンゴの生の果実の皮を適度な濃度のアルコール水溶液に浸漬し、適度な減圧度で減圧蒸留して蒸留液を集めれば、生の果実の皮の持つフレッシュでみずみずしい芳香と自然な風味を持ち、香料の代わりやリキュールのベースとしても用いることができる蒸留酒が得られる方法(特許文献1)、果実の果肉に含まれる香気成分を該果実の濃縮果汁に混合して得られる風味強化果汁を使用して製造する方法(特許文献2)、さらに柑橘果実のパルプセルと、柑橘果実果皮より得られるピールオイルとを混合してなる組成物にアルコールを添加し、混合後、不溶性成分を除去したアルコール抽出液を用いる方法(特許文献3)などが提案されている。しかし、これらの文献には、糖質ゼロの果汁含有アルコール飲料に関する記載はない。
また、柑橘類由来の香気成分を配合した酒類、特にリキュール類などでは風味を向上させる目的で、糖類とともに酸味料としてクエン酸やリンゴ酸などの有機酸類を加えることが一般的に行われている。しかしながら、シトラールを初めとする柑橘類由来の香気成分はpH3以下の酸性領域では分解しやすく、極めて短期間に香気が失われるとともに、悪臭物質に変化することが知られている(非特許文献1)。
また、酒類に添加することによりナチュラルな風味及び呈味改善効果を発揮する風味呈味改善剤(香料)が提案されている(特許文献4)。すなわち、特許文献4には、柑橘類または柑橘類由来素材を原料とし、減圧装置により減圧下におかれた前記原料に対してマイクロ波発生装置により発生させたマイクロ波を導入、照射しつつ気化蒸気を得て、前記気化蒸気を凝縮することにより抽出処理を行う減圧マイクロ波照射抽出処理により得られた精油または水抽出物を有効成分とする、被添加物である飲食品の風味及び呈味の一部をマスキングして被添加物の風味及び呈味を改善する風味呈味改善剤が開示されている。
特許第4302871号公報 特開2009−11246号公報 特許第5178615号公報 特開2016−013976号公報 特許第3665193号公報
日本食品工業学会誌 第15巻 第7号 285―289頁 1968年)。
蒸留酒とは、醸造酒を蒸留して作った酒であり、スピリッツとも呼ばれる。蒸留酒にはウイスキー、ブランデー、焼酎、ジン、ウオッカなどがあり、それぞれ独自の芳香を持っている。
これらの蒸留酒に果実や野菜由来のフレッシュでみずみずしい芳香を持たせるために従来から種々の工夫がなされては来たが、これらのアルコール飲料はいずれも柑橘類などの特有の香味を有するものの、搾りたてのような新鮮な柑橘類などの香味に関しては十分でなく、近年ますます多様化し高級化する消費者のニーズを必ずしも満足させ得るものではなかった。
例えば、特許文献1では、柑橘類の果皮を大まかに破砕してアルコールに浸漬した後、減圧蒸留して柑橘系の香り豊かなスピリッツ原酒を得ていたが、果実・果皮の香気(油分)が十分には取れなかったし、浸漬後の果皮は廃棄していた。
特許文献4の風味呈味改善剤(香料)は、飲料、ゼリー、アイスクリーム、その他食品に添加することによりナチュラルな風味及び呈味改善効果を発揮するが、例えば、酒類に使用する際には、(1)冷蔵、冷凍にて保存する必要がある、(2)エキス分と精油分を別々に使用しなくてはならないなどの問題点があった。
糖質ゼロの果汁含有アルコール飲料ではなかったし、糖類とともにクエン酸やリンゴ酸などの酸味料を配合した酒類では、香気成分が分解しやすいpH3以下の酸性領域となり、配合された柑橘類由来の天然香気成分の劣化が進みやすく、しばしば、飲用に供される前に風味が失われるという問題点があった。
さらにまた、食品製造工程中で一般に行われている加熱殺菌工程によって、柑橘類由来の天然香気成分の劣化は加速度的に進み、天然の香気成分に特徴的な爽やかな風味が失われるという問題点があった。
そこで、本発明は、果実および/または果皮の内部に含まれる果実および/または果皮成分を抽出し、かつ、果実および/または果皮の香味を強く感じ、強い呈味性を示す新しい果実系スピリッツを製造すること、ならびに、それをブレンドして果実および/または果皮特有の香味豊かでバランスの良い呈味性を示す果実系スピリッツを製造することを目的とする。したがって、上記の果実および/または果皮の香味を強く感じ、強い呈味性を示す新しい果実系スピリッツとブレンドするための、果実および/または果皮の少し物足りない香味と呈味の果実系スピリッツを製造することをも目的とする。
すなわち、本発明の目的は、少し物足りない香味と呈味の原酒Aとをブレンドして果実および/または果皮特有の香味豊かでバランスの良い呈味性を示す原酒ABすることもできる、マイクロ波加熱蒸留法を用いた果実および/または果皮の香味を強く感じ、強い呈味性を示す原酒Bを製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、アルコール浸漬後の果皮をマイクロ波蒸留することで、果皮の香味を強く感じる新しい果実系スピリッツを製造することができることを見出し、この発見に基づいて本発明を完成するに至ったものである。
本発明は、以下の(1)ないし(4)の果実および/または果皮の香味を強く感じる原酒を製造する方法を要旨とする。
(1)アルコールと果物の果皮付きの果実および/または果皮を混合して、果物の果皮付きの果実および/または果皮にアルコールを浸漬する浸漬工程、その浸漬工程の後に浸漬液と浸漬後の果物の果皮付きの果実および/または果皮とを固液分離する固液分離工程、前記固液分離工程の後に、固液分離された浸漬後の果物の果皮付きの果実および/または果皮をマイクロ波蒸留する蒸留工程を有することを特徴とする、果物の果皮付きの果実および/または果皮特有の芳香と香味を強く感じ、強い呈味性を示すスピリッツ原酒を製造する方法。
(2)前記スピリッツ原酒が、前記固液分離工程で分離された浸漬液を減圧蒸留して得られる、果物の果皮付きの果実および/または果皮の少し物足りない香味と呈味の果実系スピリッツ原酒とブレンドするためのものである、上記(1)に記載の果物の果皮付きの果実および/または果皮特有の芳香と香味を強く感じ、強い呈味性を示すスピリッツ原酒を製造する方法。
(3)前記スピリッツ原酒が、アルコール濃度が20〜90v/v%であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の果物の果皮付きの果実および/または果皮特有の芳香と香味を強く感じ、強い呈味性を示すスピリッツ原酒を製造する方法。
(4)果物の果皮付きの果実および/または果皮は、柑橘類、リンゴ、ブドウからなる群から選ばれる果物の果皮付きの果実および/または果皮である、上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の果物の果皮付きの果実および/または果皮特有の芳香と香味を強く感じ、強い呈味性を示すスピリッツ原酒を製造する方法。
本発明により、果実および/または果皮の内部に含まれる果実および/または果皮成分を抽出し、かつ、アルコール浸漬後の果実および/または果皮をマイクロ波蒸留することで、果実および/または果皮の香味を強く感じ、強い呈味性を示す新しい果実系スピリッツを製造することができる。マイクロ波蒸留を用いると果皮の内部に含まれる果実および/または果皮成分を抽出することができる。これにより、従来は廃棄していた浸漬後の果実および/または果皮を原料に新しい柑橘系スピリッツを製造することができる。これまでは廃棄していた浸漬後の果実および/または果皮をマイクロ波蒸留し、果実および/または果皮に残留する成分とアルコールを抽出することで、従来の少し物足りない香味と呈味の果実系スピリッツ原酒Aとは異なる柑橘系特有の芳香と香味を有し、強い呈味性を有する新しいスピリッツ原酒Bを得ることができる。
果実および/または果皮を用いたスピリッツを製造する方法は従来であれば、果実および/または果皮を酒類に浸漬し、蒸留を行うといった方法で行われていた。従来の方法では「果実および/または果皮の香気(油分)が十分に取れない」といった課題があったが、これを果実および/または果皮の香味を強く感じ、強い呈味性を示すスピリッツ原酒Bとのブレンド用として用いるという新規な用途を見出し、その用途により、その課題を解決することができ、果実および/または果皮特有の香味豊かでバランスの良い呈味性を示すスピリッツ原酒ABを得ることができる。
従来の製造方法と本発明の新規手法の製造フロー。 (A)実施例の新規手法の製造フロー、(B)従来の製造方法と実施例の新規手法の製造フロー。 大まかに破砕した果皮の例として実施例で用いたレモンの皮の写真。 マイクロ波減圧蒸留装置(SVD−100型)の外観写真。
本発明において、果実および/または果皮とは、任意の芳香を持つ果実や野菜などの生の植物体を原材料として用いることができる。果実としては、みかん、オレンジ、レモン、夏みかん、ゆず、すだち、カボス、グレープフルーツなどの柑橘類や、リンゴ、なし、モモ、ブドウ、キウイ、バナナ、メロン、すいかなどをあげることができる。また、野菜類としては、トマト、ピーマン、セロリなどの他、セージ、シナモン、ラベンダー、パセリ、ローズマリー、ショウガ、ペッパー、ペパーミントなどの香辛野菜類をあげることができるが、特に香辛野菜類を好ましいものとして例示される。
果実や野菜は、乾燥によって本来持っていたみずみずしい風味を失うことから、果実および/または果皮は、乾燥させず生のまま用いる。生のまま用いるのであれば、冷蔵保存あるいは冷凍凍結したものでもよい。果実および/または果皮は大まかに破砕してアルコールに浸漬し、アルコールで芳香成分が抽出されやすいようにして用いる。浸漬時の果皮成分の抽出率を高めるために果皮を細かく破砕する必要があったが、作業上、大まかな粉砕しかできなかったため、果皮成分を効率よく抽出する技術が望まれていた。また浸漬後の果皮の有効利用が望まれていた。
本発明においては、果実および/または果皮の内部の成分を抽出することが可能なマイクロ波蒸留を用いる。例えば、柑橘類の果皮を大まかに破砕してアルコールに浸漬した後、果皮を取り除き、その浸漬後の果皮をマイクロ波蒸留して柑橘系の香味の強いスピリッツ原酒Bを得る。このスピリッツ原酒Bは、柑橘類果皮特有の芳香と香味を強く感じ、強い呈味性を示す。
果皮を取り除いた後の浸漬液は減圧蒸留して柑橘系の香り豊かなスピリッツ原酒Aを得る。このスピリッツ原酒Aは、柑橘類果皮特有の少し物足りない香味と呈味を有するものであり、これは上記のスピリッツ原酒Bとのブレンド用として用いる。このブレンドにより、柑橘類果皮特有の香味豊かでバランスの良い呈味性を示すスピリッツ原酒ABを得ることができる。
固形物の食品を蒸留する際に、全体を均一的に攪拌処理が必要であったり、攪拌翼やタンク内面の清掃が困難であったりなどの様々な課題を解決するために、マイクロ波蒸留装置が提案されている(特許文献5)。酒造副産物である酒粕から再利用可能なアルコールを分離回収する酒粕の真空蒸留装置であって、酒粕を収容する密閉タンクと、該密閉タンク内に電磁波を照射する電磁波発生装置と、密閉タンク内を真空雰囲気にする真空ポンプを具備したアルコール回収装置とからなる真空蒸留装置において、酒粕を収容し、耐熱性を有すると共に電磁波が透過する浅いトレイを密閉タンク内に収容すると共に、密閉タンク内にトレイの循環移動手段を設け、又密閉タンクにトレイの収容及び取出し手段を設けたことを特徴とする酒粕の真空蒸留装置である。
複数の果実および/または果皮を用いてもよい。特に野菜類は、それだけでは、独特の青臭さを強く感じさせるものも多いので、果実類と混合してもよい。また、リンゴとレモン、モモとオレンジのように複数の果実を同時に用いてもよい。果実類の芳香成分の多くは果皮とその近傍の果肉に多く存在しているので、生の果皮を原材料として用いることが好ましい。果皮はそれだけで用いてもよいが、果肉と混合して用いてもよい。果実の果皮、特に柑橘系の果実の果皮は、フレッシュな芳香と同時にナリンギンやリモノイドなどの苦味成分を大量に含んでおり、該果皮を大まかに破砕してアルコールに浸漬した後、果皮を取り除き、浸漬液を減圧蒸留してスピリッツ原酒Bとブレンドするための柑橘類果皮特有の少し物足りない香味と呈味を有するスピリッツ原酒Aを得た後、浸漬後の果皮をマイクロ波蒸留して特有の芳香と香味を強く感じ、強い呈味性を示すスピリッツ原酒Bを得る。果皮の添加量を調節することによって製造するスピリッツ原酒AおよびBの香味や苦味度を調節することができる。
アルコールと果実および/または果皮を混合後、果実および/または果皮にアルコールを浸漬して芳香成分を抽出する。その後で浸漬液と浸漬後の果実および/または果皮に分離し、浸漬後の果実および/または果皮をマイクロ波蒸留する。浸漬に用いるアルコールは、純粋な原料用アルコールが好適に用いられるが、アルコールを含んだ酒類も好適に用いることができる。そのような酒類としては、ウイスキー、ブランデー、焼酎、ジン、ウオッカなどをあげることができる。アルコール濃度も特に規定されないが、好ましくは20%から100%が用いられ、さらに好ましくは40%から100%濃度が用いられる。一般に芳香成分の多くはアルコールによく溶けるので、アルコール濃度が高いほど短時間の浸漬でよいが、低いアルコール濃度での浸漬でもよい成分もあるので、アルコール濃度によって芳香成分も変わってくる。したがって、所望の芳香成分を含んだがマイクロ波蒸留物が得られやすい濃度を選べばよい。
生の果実および/または果皮の添加量も原材料の持つ芳香成分の量やどのようなスピリッツ原酒AおよびBを所望するかによって異なるため一定ではない。一般には、アルコール量の10%から50%(W/V)添加すればよい。少ない添加量であれば、芳香の少ないスピリッツ原酒AおよびBが得られ、逆に大量の添加量であれば、芳香の多いスピリッツ原酒AおよびBが得られる。アルコールと果実および/または果皮を混合する条件も特に規定されないが、室温で1日から3日浸漬すればよい。浸漬温度は、好ましくは−10℃ないし室温の温度が用いられる。加温して浸漬を行えば短時間で済み有利であるが、温度が高すぎると加熱による芳香成分の変質が起こることがあるので高くても40℃以下が望ましい。また、生の原材料をおおまかに破砕し、アルコールと混合することによって浸漬効率をあげてやることもできる。冷凍した果皮を混和した際、−10℃程度となる。可能な限りこの温度を保持するのが望ましい。
果実および/または果皮にアルコールを浸漬し、その後で浸漬液と浸漬後の果実および/または果皮に分離し、浸漬後の果実および/または果皮をマイクロ波蒸留する。
マイクロ波加熱蒸留法では、原料としての浸漬後の果実および/または果皮をマイクロ波蒸留装置に投入して密封する。その後、真空ポンプを使用してマイクロ波蒸留装置内の圧力を50mmHgまで減圧して保持する。その後、1.2kw×4のマイクロ波にて電磁波を原料に照射して加熱することによって、原料を沸騰させて蒸留を行い、浸漬後の果実および/または果皮の芳香成分が含まれた蒸気を取り出す。なお、マイクロ波蒸留装置は減圧によって、マイクロ波蒸留装置内は40℃程度で沸騰することとなる。マイクロ波蒸留装置の減圧状態の程度は特に制限はないが、2kPa〜14kPa(20mmHg〜110mmHg)の減圧下に保持することにより蒸留を効率よく行うことができる。
マイクロ波蒸留装置内の原料は、減圧下に保持されて沸点が低下した状態で間接加熱されるため、浸漬後の果実および/または果皮の芳香成分を含む液状成分は、マイクロ波蒸留装置から蒸気となって外部に取り出される。
取り出された蒸気は、凝縮されて、再び液化され、所定の容器に貯留される。具体的には、蒸気を−5℃で冷却することによって再び液化し、1〜2時間程度で原料から浸漬液を減圧蒸留して得たスピリッツ原酒とは異なる果実および/または果皮特有の芳香と香味を強く感じ、強い呈味性を示すスピリッツ原酒を得ることができる。
マイクロ波蒸留して得たスピリッツ原酒Bとブレンドするためのスピリッツ原酒Aを得るために、併せて行う、浸漬液と浸漬後の果実および/または果皮とに分離した後の浸漬液のための減圧蒸留について説明する。
減圧蒸留する浸漬液のアルコール濃度も特には規定されないが、好ましくは20〜60%、特に好ましくは50〜60%になるように水を添加して調製するとよい。減圧蒸留は公知の蒸留器を用いて、公知の方法で行えばよい。具体的には、減圧度660mmHgから10mmHgでの蒸留が好適に用いられ、260mmHgから20mmHgの減圧度での蒸留が特に好適に用いられる。蒸留釜内容液温70℃以下で本溜液が得られるように蒸留を行うのが好ましい。減圧蒸留を行うことにより、浸漬液に付与されていた生の果実や野菜由来のフレッシュでみずみずしい芳香成分が変質することなく濃縮され、さらに高沸点な雑臭が除去される。
浸漬後の果実および/または果皮のマイクロ波加熱蒸留法でも、浸漬液の減圧蒸留法においても、本留液のアルコール濃度も特に限定されない。一般に、蒸留酒の製造においては、蒸留の開始直後に留出してくる液を前留液、蒸留の終了間近の留出液を余留液と呼び、本留液とは除外する。本発明においては、このように前留液や余留液を区別して蒸留してもよいが、アルコールを含有する全ての留出液を本留としてもよい。余留液は高沸点物質に富んでいるので、余留液を除いた本留液は特に雑味の少ないものとなる。
マイクロ波加熱蒸留法により得られた本留液はこのまま、あるいは水又はアルコールで希釈して飲用に供してもよいし、砂糖や液糖、酸味料などを添加し、味を調整して飲用に用いてもよい。浸漬液の減圧蒸留法により得られた本留液とブレンドして、果実および/または果皮特有の香味豊かでバランスの良い呈味性を示すスピリッツ原酒にしてもよい。本発明は、従来法によるスピリッツ原酒Aについて、スピリッツ原酒Bのブレンド用という新たな用途を見出した。スピリッツ原酒Bと従来法によるスピリッツ原酒Aとをブレンドすると、果実および/または果皮の香味が豊かでバランスの良い呈味性を示す個性を持った原酒ABを製造することができる。
マイクロ波加熱蒸留法により得られた本留液とブレンドするための、浸漬液の減圧蒸留法により得られた本留液も、再度減圧蒸留して所望する芳香成分を濃縮してもよい。さらにまた、得られた本留液に、再度生の果実や野菜類を浸漬し、減圧蒸留してもよい。
マイクロ波加熱蒸留法により得られた本留液、または浸漬液の減圧蒸留法により得られた本留液とブレンドしたものは、香料と同じように香り付け材料として用いることもできる。具体例としては、チューハイなどのアルコール飲料、炭酸飲料、果実飲料、乳酸菌飲料、紅茶などの飲料の他、アイスクリーム、ケーキ、飴、ガム、菓子、パンなどの食品への使用をあげることができる。本留液の使用量については特段の制限はないが、付与する芳香の程度と嗜好性によって決定される。
次に、本発明の具体例を、以下の実施例により説明するが、本発明がこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例で用いたマイクロ波加熱蒸留法とは、固体/液体兼用減圧蒸留装置SVD型(株式会社横山エンジニアリング)の密閉タンク内のトレイにアルコールを浸漬した果実・果皮を収容し、熱源としてマイクロ波(電磁波)を用いて真空条件下で蒸留を行う方法である(図11)。なお、減圧蒸留装置はこれに限定されるわけではない。
果実・果皮をマイクロ波によって内部から加熱すると、激しい分子振動を受けて温度が上昇する。すると、果実・果皮に含まれる水分やアルコール分、香気成分(油分)が果実・果皮の表面側へ移行して蒸発する。それを冷却することで、高い濃度のアルコール分、香気成分(油分)を回収することができる。
[試験方法]
製造フローと結果
従来の製造方法と新規手法の製造フローを図1および2に示す。試験ではレモン果皮を原料に製造を行った。浸漬に使用した果皮は、本試験では図3の写真に示されたような果皮を用いる。レモンはスライサーにより短冊加工したものも過去行っている。その場合は浸漬時間を2日とすることで本試験と同等の物を得ることができる。
みかん果皮は手剥きしたものをそのまま使用し3日間浸漬。
ゆず果皮はミンチ機にてダイス加工したものを1日浸漬。
どの果皮でも細かく加工するほど浸漬に必要な時間は短くなることを確認済みである。
〈従来の製造方法(従来法)〉
アルコール(酒類)と果皮(レモン果皮)を混合後、果皮にアルコールを浸漬し、その後で浸漬液と浸漬後の果皮に分離し、浸漬液を減圧蒸留して果皮スピリッツを得る。
レモンの果皮(ベルト式搾取汁機で搾汁、内皮除去後の果皮)100kgを、アルコール分57.7%の酒類263リットルと混合し、3日間果皮に酒類を浸漬し、その後で浸漬液と浸漬後の果皮に固液分離し、分離した浸漬液のみを減圧蒸留装置の蒸留槽内に投入し、蒸留槽内の圧力を約20kPaの減圧条件下に保持し(蒸気温度は約67℃)、1時間蒸留した。得られた蒸留物から約166Lの果皮スピリッツを採取した。
〈本発明の製造方法(新規法)〉
アルコール(酒類)と果皮(レモン果皮)を混合後、果皮にアルコールを浸漬し、その後で浸漬液と浸漬後の果皮に分離し、浸漬後の果皮をマイクロ波蒸留し、浸漬液を減圧蒸留して得た果皮スピリッツとは異なる芳香と強い呈味性を有する新規果皮スピリッツを得る。
レモンの果皮(ベルト式搾取汁機で搾汁、内皮除去後の果皮)100kgを、アルコール分57.7%の酒類263リットルと混合し、3日間果皮に酒類を浸漬し、その後で浸漬液と浸漬後の果皮に固液分離し、分離した浸漬後の果皮のみをマイクロ波加熱蒸留装置の蒸留槽内に投入し、20mmHgの真空度で2時間マイクロ波を照射した。得られた蒸留物から41Lの新規果皮スピリッツを採取した。
その製造結果を表1に示す。新規法での蒸留は、100kgの果皮を2回に分けて20mmHgの真空度で2時間マイクロ波を照射した。
[結果]
各原酒のレモンの特徴的な香気(油分)であるD-Limonene濃度を表2に示す。新規手法では従来法ではレモンの特徴的な香気(油分)を約3倍回収できることが分かった。
得られた果皮スピリッツについて、17名の専門のパネラーにより官能評価試験(きき酒:は酒の品質を判定すること。)を行った。その結果、表3に原酒を比較した「きき酒結果」を示す。
新規法と従来法の酒質はすべてのパネルで違いを認識できており、評価も新規法の物が高かった。新規法はD-Limonene濃度が高いためか、油分を嫌うパネルもいたものの、香りの強さや呈味を感じるパネルが多く、よりレモンらしいとしたパネルが14/17と多数を占めた。
パネルが使う用語の「甘み」、「苦味」、「酸味」、「口当たり」、「なめらかな味」、「後味」などは味を表現していることが、「香すっきり」、「フレッシュな香り」、「シャープな香」などは香りを表現していることが、それぞれ分かるが、「濃厚」、「丸み」、「普通」、「さらっと」、「さっぱり」、「まろやか」、「なめらか」、「フレッシュ感」、「すっきり」などはどちらを表現しているのか不明であるが、評点の平均値からはその評価は明確である。
[その他の原料を用いた試験結果]
カボス、みかん、ゆずを用いて上記[試験方法]と同様の方法でスピリッツを製造した結果を表4に示す。
どのスピリッツも原料の香味特徴を強く有する酒質であることが確認できた。
[まとめ]
アルコールを浸漬した果皮を新技術(マイクロ波加熱蒸留)を用いて蒸留することで、従来法に比べてより原料の特徴香味を強く感じるスピリッツを製造することができることが確認できた。製造されたスピリッツは香料を使用していないので、香料表示が不要である。
得られたスピリッツは常温での保存が可能で1年以上安定した状態を保っている(品質検査を実施済み)。試験方法にて製造したスピリッツを使用した商品にて実施した安定性の試験〔pH、導電率、アルコール度、日本酒度、光学密度(optical density、275、430、480nm)、酸度、濁度、アセトインの比色分析〕の結果を表5に、香気成分の結果を表6に、官能検査の結果を表7に示す。
貯蔵開始時と貯蔵3ヶ月で、表5の一般分析では顕著な差は確認されず、表6の香気成分でも低沸点、中高沸点、フェノールに大きな差は確認されなかった。
表7の官能検査においてもマイナスの評価もなく、3点識別で有意な差も確認されなかった(有意差なし)。
スピリッツ原酒Bと従来法によるスピリッツ原酒Aとをブレンドすると、果実および/または果皮の香味が豊かで個性を持った原酒を製造することができることを官能試験で裏付ける。
[官能検査結果報告]
従来法によるスピリッツA、新規法によるスピリッツ原酒B、スピリッツ原酒Aとスピリッツ原酒Bとをブレンドしたスピリッツ原酒ABの酒質を評価するために官能検査を行った。官能検査結果を表8に示す。
自社基準を合格したパネリストが個別のサンプルの香、味、総合を1点、2点、3点で評価した。評点は数値が少ないほど良好である。
官能検査の後に、スピリッツ原酒ABとスピリッツ原酒A、スピリッツ原酒ABとスピリッツ原酒Bの酒質を比較し、その差の有無と寸評を確認した。スピリッツ原酒Aとスピリッツ原酒ABの酒質比較を表9、スピリッツ原酒Bとスピリッツ原酒ABの酒質比較を表10に示す。その結果、スピリッツ原酒ABの評点が最もよく、バランスの良い酒である事が確認できた。
なお、参考値として、各スピリッツ原酒のアルコール回収率(%)を表11に示す。
本発明によれば、従来は廃棄していた浸漬後の果実および/または果皮を原料に、浸漬液を減圧蒸留して得たスピリッツ原酒とは異なる芳香と強い呈味性を有するスピリッツ原酒、例えば新しい柑橘系スピリッツを製造することができる。

Claims (4)

  1. アルコールと果物の果皮付きの果実および/または果皮を混合して、果物の果皮付きの果実および/または果皮にアルコールを浸漬する浸漬工程、その浸漬工程の後に浸漬液と浸漬後の果物の果皮付きの果実および/または果皮とを固液分離する固液分離工程、前記固液分離工程の後に、固液分離された浸漬後の果物の果皮付きの果実および/または果皮をマイクロ波蒸留する蒸留工程を有することを特徴とする、果物の果皮付きの果実および/または果皮特有の芳香と香味を強く感じ、強い呈味性を示すスピリッツ原酒を製造する方法。
  2. 前記スピリッツ原酒が、前記固液分離工程で分離された浸漬液を減圧蒸留して得られる、果物の果皮付きの果実および/または果皮の少し物足りない香味と呈味の果実系スピリッツ原酒とブレンドするためのものである、請求項1に記載の果物の果皮付きの果実および/または果皮特有の芳香と香味を強く感じ、強い呈味性を示すスピリッツ原酒を製造する方法。
  3. 前記スピリッツ原酒が、アルコール濃度が20〜90v/v%であることを特徴とする請求項1または2に記載の果物の果皮付きの果実および/または果皮特有の芳香と香味を強く感じ、強い呈味性を示すスピリッツ原酒を製造する方法。
  4. 果物の果皮付きの果実および/または果皮は、柑橘類、リンゴ、ブドウからなる群から選ばれる果物の果皮付きの果実および/または果皮である、請求項1ないし3のいずれかに記載の果物の果皮付きの果実および/または果皮特有の芳香と香味を強く感じ、強い呈味性を示すスピリッツ原酒を製造する方法。
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