JP6646311B2 - 多能性幹細胞から中胚葉前駆細胞および血液血管前駆細胞への分化誘導法 - Google Patents

多能性幹細胞から中胚葉前駆細胞および血液血管前駆細胞への分化誘導法 Download PDF

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Description

本発明は、多能性幹細胞からの胚葉前駆細胞および血液血管前駆細胞の製造方法に関する。
胚性幹細胞(ES細胞)や体細胞へ未分化細胞特異的遺伝子を導入することで得られる
人工多能性幹細胞(iPS細胞)など多能性を有する細胞がこれまでに報告されている(特
許文献1または2)。そこで、これらの多能性幹細胞から分化誘導された細胞を移植する再生医療やin vitroでの病態モデルの作製に注目されている。
胚性幹細胞から内皮細胞や血球系細胞を作製するためには、発生を模して、中胚葉前駆細胞を作製し、各細胞へと分化誘導する多段階工程が試みられている(非特許文献1、2または3)。また、この工程において、異種細胞や生物由来原料を用いることでは安定的な収量が得られないことから、限定された成分のみを用いて多能性幹細胞から中胚葉前駆細胞、さらには、各分化細胞へと誘導する方法が提示されている(特許文献3、非特許文献4)。
USP 5,843,780 WO 2007/069666 WO 2011/115308
Lu SJ, et al, Nat Methods. 4:501-509, 2007 Nishikawa SI, et al, Development. 125:1747-1757, 1998 Sumi T, et al, Development. 135:2969-2979, 2008 Niwa A, et al, PLoS One.6:e22261, 2011
本発明の目的は、多能性幹細胞から効率よく中胚葉前駆細胞および血液血管前駆細胞を製造することである。したがって、本発明の課題は、ヒト多能性幹細胞、特にヒト人工多能性幹細胞を中胚葉前駆細胞および血液血管前駆細胞へ効率よく分化誘導する方法を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、多能性幹細胞から中胚葉前駆細胞へと誘導する工程において、ラミニン511をコートした培養容器を用いてBMP、GSK3β阻害剤およびVEGFを含む培養液中で培養することで、短期間で高分化能を有する中胚葉前駆細胞を製造することに成功した。さらに、得られた中胚葉前駆細胞を、VEGF、SCF、bFGFおよびTGFβ阻害剤を含む培養液中で接着培養することで、高分化能な血液血管前駆細胞を製造することに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]多能性幹細胞から中胚葉前駆細胞を製造する方法であって、
多能性幹細胞を、ラミニン(LM)511またはその断片でコーティングされた培養器材上にて、BMP(Bone Morphogenetic Protein)、VEGF(Vascular Endothelial Gro
wth Factor)およびGSK(Glycogen Synthase Kinase)3β阻害剤を含む培養液中で接着培養する工程を含む方法。
[2]前記ラミニン511の断片がラミニン511E8である、[1]に記載の方法。
[3]前記GSK3β阻害剤がCHIR99021である、[1]または[2]に記載の方法。
[4]前記工程が2日間以上行われる、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の方法。
[5]中胚葉前駆細胞から血液血管前駆細胞を製造する方法であって、
中胚葉前駆細胞をVEGF、SCF(Stem Cell Factor)、bFGF(basic Fibroblast
Growth Factor)およびTGF(Transforming Growth Factor)β阻害剤を含む培養液中で接着培養する工程を含む方法。
[6]前記培養液がTGFβを含有しない培養液である、[5]に記載の方法。
[7]前記中胚葉前駆細胞が、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の方法で製造された細胞である、[5]または[6]に記載の方法。
[8]前記TGFβ阻害剤がSB431542である、[5]〜[7]のいずれか1項に記載の方法。
[9]前記工程が2日間以上行われる、[5]〜[8]のいずれか1項に記載の方法。
[10]次の工程を含む多能性幹細胞から、血液血管前駆細胞を製造する方法であって、(1)多能性幹細胞を、ラミニン511またはその断片でコーティングされた培養器材上にて、BMP、VEGFおよびGSK3β阻害剤を含む培養液中で接着培養する工程、および
(2)前記工程(1)で得られた細胞をVEGF、SCF、bFGFおよびTGFβ阻害剤を含む培養液中で接着培養する工程。
[11]前記ラミニン511の断片がラミニン511E8である、[10]に記載の方法。
[12]前記GSK3β阻害剤がCHIR99021である、[10]または[11]に記載の方法。
[13]前記工程(2)で用いる培養液がTGFβを含有しない培養液である、[10]〜[12]のいずれか1項に記載の方法。
[14]前記TGFβ阻害剤がSB431542である、[10]〜[13]のいずれか1項に記載の方法。
[15]前記工程(1)が2日間以上行われる、[10]〜[14]のいずれか1項に記
載の方法。
[16]前記工程(2)が2日間以上行われる、[10]〜[15]のいずれか1項に記
載の方法。
本発明によれば、中胚葉前駆細胞および血液血管前駆細胞を得ることができる。
図1は、ES細胞から誘導された血液血管前駆細胞の培養10日目の顕微鏡像を示す(写真)。 図2は、ES細胞から誘導された血液血管前駆細胞の培養10日目の細胞群のFACSの結果を示す。図2Aの横軸は、CD34抗体の蛍光強度を示し、縦軸は、KDR抗体の蛍光強度を示す。図2Bの横軸は、CD34抗体(左図および中央図)またはCD43抗体(右図)の蛍光強度を示し、縦軸は、CD43抗体(左図)またはCD45抗体(中央図および右図)の蛍光強度を示す。 図3は、iPS細胞から誘導された細胞を解離し、CD34陽性細胞を単離した後、再培養した10日目の細胞の顕微鏡像(A)およびメイギムザ染色像(B)を示す(写真)。図3Bの右図は、左図の一部の拡大図を示す。
本発明を以下で詳細に説明する。
<多能性幹細胞>
本発明で使用可能な多能性幹細胞は、生体に存在するすべての細胞に分化可能である多能性を有し、かつ、増殖能をも併せもつ幹細胞であり、それには、特に限定されないが、例えば胚性幹(ES)細胞、核移植により得られるクローン胚由来の胚性幹(ntES)細胞、精子幹細胞(「GS細胞」)、胚性生殖細胞(「EG細胞」)、人工多能性幹(iPS)細胞、培養線
維芽細胞や骨髄幹細胞由来の多能性細胞(Muse細胞)などが含まれる。好ましい多能性幹細胞は、ES細胞、ntES細胞、およびiPS細胞である。
(A) 胚性幹細胞
ES細胞は、ヒトやマウスなどの哺乳動物の初期胚(例えば胚盤胞)の内部細胞塊から樹立された、多能性と自己複製による増殖能を有する幹細胞である。
ES細胞は、受精卵の8細胞期、桑実胚後の胚である胚盤胞の内部細胞塊に由来する胚由
来の幹細胞であり、成体を構成するあらゆる細胞に分化する能力、いわゆる分化多能性と、自己複製による増殖能とを有している。ES細胞は、マウスで1981年に発見され(M.J. Evans and M.H. Kaufman (1981), Nature 292:154-156)、その後、ヒト、サルなどの霊長類でもES細胞株が樹立された (J.A. Thomson et al. (1998), Science 282:1145-1147; J.A. Thomson et al. (1995), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92:7844-7848;J.A. Thomson et al. (1996), Biol. Reprod., 55:254-259; J.A. Thomson and V.S. Marshall (1998), Curr. Top. Dev. Biol., 38:133-165)。
ES細胞は、対象動物の受精卵の胚盤胞から内部細胞塊を取出し、内部細胞塊を線維芽細胞のフィーダー上で培養することによって樹立することができる。また、継代培養による細胞の維持は、白血病抑制因子(leukemia inhibitory factor (LIF))、塩基性線維芽細胞成長因子(basic fibroblast growth factor (bFGF))などの物質を添加した培養液を用い
て行うことができる。ヒトおよびサルのES細胞の樹立と維持の方法については、例えばUSP5,843,780; Thomson JA, et al. (1995), Proc Natl. Acad. Sci. U S A. 92:7844-7848;Thomson JA, et al. (1998), Science. 282:1145-1147; H. Suemori et al. (2006), Biochem. Biophys. Res. Commun., 345:926-932; M. Ueno et al. (2006), Proc. Natl.
Acad. Sci. USA, 103:9554-9559; H. Suemori et al. (2001), Dev. Dyn., 222:273-279;H. Kawasaki et al. (2002), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99:1580-1585;Klimanskaya I, et al. (2006), Nature. 444:481-485などに記載されている。
ES細胞作製のための培養液として、例えば0.1mM 2-メルカプトエタノール、0.1mM 非必須アミノ酸、2mM L-グルタミン酸、20% KSRおよび4ng/ml bFGFを補充したDMEM/F-12培養
液を使用し、37℃、2% CO2/98% 空気の湿潤雰囲気下でヒトES細胞を維持することができ
る(O. Fumitaka et al. (2008), Nat. Biotechnol., 26:215-224)。また、ES細胞は、3〜4日おきに継代する必要があり、このとき、継代は、例えば1mM CaCl2および20% KSRを含
有するPBS中の0.25% トリプシンおよび0.1mg/mlコラゲナーゼIVを用いて行うことができ
る。
ES細胞の選択は、一般に、アルカリホスファターゼ、Oct-3/4、Nanogなどの遺伝子マーカーの発現を指標にしてReal-Time PCR法で行うことができる。特に、ヒトES細胞の選択
では、OCT-3/4、NANOG、ECADなどの遺伝子マーカーの発現を指標とすることができる(E. Kroon et al. (2008), Nat. Biotechnol., 26:443-452)。
ヒトES細胞株は、例えばWA01(H1)およびWA09(H9)は、WiCell Reserch Instituteから
、KhES-1、KhES-2およびKhES-3は、京都大学再生医科学研究所(京都、日本)から入手可能である。
(B) 精子幹細胞
精子幹細胞は、精巣由来の多能性幹細胞であり、精子形成のための起源となる細胞である。この細胞は、ES細胞と同様に、種々の系列の細胞に分化誘導可能であり、例えばマウス胚盤胞に移植するとキメラマウスを作出できるなどの性質をもつ(M. Kanatsu-Shinohara et al. (2003) Biol. Reprod., 69:612-616; K. Shinohara et al. (2004), Cell, 119:1001-1012)。神経膠細胞系由来神経栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor (GDNF))を含む培養液で自己複製可能であるし、またES細胞と同様の培養条件下で
継代を繰り返すことによって、精子幹細胞を得ることができる(竹林正則ら(2008),実験医学,26巻,5号(増刊),41〜46頁,羊土社(東京、日本))。
(C) 胚性生殖細胞
胚性生殖細胞は、胎生期の始原生殖細胞から樹立される、ES細胞と同様な多能性をもつ細胞であり、LIF、bFGF、幹細胞因子(stem cell factor)などの物質の存在下で始原生殖
細胞を培養することによって樹立しうる(Y. Matsui et al. (1992), Cell, 70:841-847; J.L. Resnick et al. (1992), Nature, 359:550-551)。
(D) 人工多能性幹細胞
人工多能性幹(iPS)細胞は、ある特定の再プログラミング因子を、DNA又はタンパク質の形態で体細胞に導入することによって作製することができる、ES細胞とほぼ同等の特性、例えば分化多能性と自己複製による増殖能、を有する体細胞由来の人工の幹細胞である(K. Takahashi and S. Yamanaka (2006) Cell, 126:663-676; K. Takahashi et al. (2007), Cell, 131:861-872; J. Yu et al. (2007), Science, 318:1917-1920; Nakagawa, M.
ら,Nat. Biotechnol. 26:101-106 (2008);国際公開WO 2007/069666)。再プログラム化
因子は、ES細胞に特異的に発現している遺伝子またはES細胞の未分化維持に重要な役割を果たす遺伝子もしくはその遺伝子産物であれば良く、特に限定されないが、例えばOCT3/4、SOX2及びKLF4; OCT3/4、KLF4及びC-MYC; OCT3/4、SOX2、KLF4及びC-MYC; OCT3/4及
びSOX2; OCT3/4、SOX2及びNANOG; OCT3/4、SOX2及びLIN28; OCT3/4及びKLF4などの組
み合わせである。
これらの因子は、タンパク質の形態で、例えばリポフェクション、細胞膜透過性ペプチドとの結合、マイクロインジェクションなどの手法によって体細胞内に導入してもよいし、あるいは、DNAの形態で、例えば、ウイルス、プラスミド、人工染色体などのベクター
、リポフェクション、リポソーム、マイクロインジェクションなどの手法によって体細胞内に導入することができる。ウイルスベクターとしては、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター(以上、Cell, 126, pp.663-676, 2006; Cell, 131, pp.861-872, 2007; Science, 318, pp.1917-1920, 2007)、アデノウイルスベクター(Science, 322, 945-949, 2008)、アデノ随伴ウイルスベクター、センダイウイルスベクターなどが例示され
る。また、人工染色体ベクターとしては、例えばヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC、PAC)などが含まれる。プラスミドとしては、哺乳動物細胞用プラスミドを使用しうる(Science, 322:949-953, 2008)。ベクターには、核初期化物質が発現可能なように、プロモーター、エンハンサー、リボゾーム結合配列、ターミネーター、ポリアデニル化サイトなどの制御配列を含むことができるし、さらに、必要に応じて、薬剤耐性遺伝子(例えばカナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ピューロマ
イシン耐性遺伝子など)、チミジンキナーゼ遺伝子、ジフテリアトキシン遺伝子などの選択マーカー配列、緑色蛍光タンパク質(GFP)、βグルクロニダーゼ(GUS)、FLAGなどのレポーター遺伝子配列などを含むことができる。また、上記ベクターには、体細胞への導入後、再プログラミング化因子をコードする遺伝子もしくはプロモーターとそれに結合する再
プログラミング化因子をコードする遺伝子を共に切除するために、それらの前後にLoxP配列を有してもよい。
再プログラム化に際して、誘導効率を高めるために、上記の因子の他に、例えば、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤[例えば、バルプロ酸 (VPA)(Nat. Biotechnol., 26(7): 795-797 (2008))、トリコスタチンA、酪酸ナトリウム、MC 1293、M344等の低分子阻
害剤、HDACに対するsiRNAおよびshRNA(例、HDAC1 siRNA Smartpool (登録商標:Millipore)、HuSH 29mer shRNA Constructs against HDAC1 (OriGene)等)等の核酸性発現阻害剤など]、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば5’-azacytidine)(Nat. Biotechnol., 26(7): 795-797 (2008))、G9aヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤[例えば
、BIX-01294 (Cell Stem Cell, 2: 525-528 (2008))等の低分子阻害剤、G9aに対するsiRNAおよびshRNA(例、G9a siRNA(human) (Santa Cruz Biotechnology)等)等の核酸性発現
阻害剤など]、L-channel calcium agonist (例えばBayk8644) (Cell Stem Cell, 3, 568-574 (2008))、p53阻害剤(例えばp53に対するsiRNAおよびshRNA (Cell Stem Cell, 3, 475-479 (2008))、UTF1(Cell Stem Cell, 3, 475-479 (2008))、Wnt Signaling(例えばsoluble Wnt3a)(Cell Stem Cell, 3, 132-135 (2008))、2i/LIF (2iはmitogen-activated protein kinase signallingおよびglycogen synthase kinase-3の阻害剤、PloS Biology, 6(10), 2237-2247 (2008))、miR-291-3p、miR-294、miR-295などのmiRNA(R.L. Judson
et al., Nat. Biotech., 27:459-461) (2009)等を使用することができる。
iPS細胞誘導のための培養培地としては、例えば(1) 10〜15%FBSを含有するDMEM、DMEM/F12又はDME培地(これらの培地にはさらに、LIF、penicillin/streptomycin、puromycin、L-グルタミン、非必須アミノ酸類、β-メルカプトエタノールなどを適宜含むことがで
きる。)、(2) bFGF又はSCFを含有するES細胞培養用培地、例えばマウスES細胞培養用培
地(例えばTX-WES培地、トロンボX社)又は霊長類ES細胞培養用培地(例えば霊長類(ヒト&サル)ES細胞用培地、リプロセル、京都、日本)、などが含まれる。
培養法の例としては、たとえば、37℃、5%CO2存在下にて、10%FBS含有DMEM又はDMEM/F12培地上で体細胞と再プログラム化因子(DNA又はタンパク質)を接触させ約4〜7日間培養し、その後、細胞をフィーダー細胞(たとえば、マイトマイシンC処理STO細胞、SNL細胞等)上にまきなおし、体細胞と再プログラム化因子の接触から約10日後からbFGF含有霊長類ES細胞培養用培地で培養し、該接触から約30〜約45日又はそれ以上ののちにiPS様コロニーを生じさせることができる。
あるいは、その代替培養法として、37℃、5% CO2存在下にて、フィーダー細胞(たとえ
ば、マイトマイシンC処理STO細胞、SNL細胞等)上で10%FBS含有DMEM培地(これにはさら
に、LIF、ペニシリン/ストレプトマイシン、ピューロマイシン、L-グルタミン、非必須アミノ酸類、β-メルカプトエタノールなどを適宜含むことができる。)で培養し、約25〜
約30日又はそれ以上ののちにES様コロニーを生じさせることができる。望ましくは、フィーダー細胞の代わりに、初期化される体細胞そのものを用いる(Takahashi K, et al. (2009), PLoS One. 4:e8067またはWO2010/137746)、もしくは細胞外基質(例えば、Laminin-5(WO2009/123349)およびマトリゲル(BD社))を用いる方法が例示される。
この他にも、血清を含有しない培地を用いて培養する方法も例示される(Sun N, et al. (2009), Proc Natl Acad Sci U S A. 106:15720-15725)。さらに、樹立効率を上げる
ため、低酸素条件(0.1%以上、15%以下の酸素濃度)によりiPS細胞を樹立しても良い(Yoshida Y, et al. (2009), Cell Stem Cell. 5:237-241またはWO2010/013845)。
上記培養の間には、培養開始2日目以降から毎日1回新鮮な培養液と培養液交換を行う。また、核初期化に使用する体細胞の細胞数は、限定されないが、培養ディッシュ100cm2
たり約5×103〜約5×106細胞の範囲である。
iPS細胞は、形成したコロニーの形状により選択することが可能である。一方、体細胞
が初期化された場合に発現する遺伝子(例えば、Oct3/4、Nanog)と連動して発現する薬
剤耐性遺伝子をマーカー遺伝子として導入した場合は、対応する薬剤を含む培養液(選択培養液)で培養を行うことにより樹立したiPS細胞を選択することができる。また、マー
カー遺伝子が蛍光タンパク質遺伝子の場合は蛍光顕微鏡で観察することによって、発光酵素遺伝子の場合は発光基質を加えることによって、また発色酵素遺伝子の場合は発色基質を加えることによって、iPS細胞を選択することができる。
本明細書中で使用する「体細胞」なる用語は、卵子、卵母細胞、ES細胞などの生殖系列細胞または分化全能性細胞を除くあらゆる動物細胞(好ましくは、ヒトを含む哺乳動物細胞)をいう。体細胞には、非限定的に、胎児(仔)の体細胞、新生児(仔)の体細胞、および成熟した健全なもしくは疾患性の体細胞のいずれも包含されるし、また、初代培養細胞、継代細胞、および株化細胞のいずれも包含される。具体的には、体細胞は、例えば(1)
神経幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、歯髄幹細胞等の組織幹細胞(体性幹細胞)、(2)組織前駆細胞、(3)リンパ球、上皮細胞、内皮細胞、筋肉細胞、線維芽細胞(皮膚細胞等)、毛細胞、肝細胞、胃粘膜細胞、腸細胞、脾細胞、膵細胞(膵外分泌細胞等)、脳細胞、肺細胞、腎細胞および脂肪細胞等の分化した細胞などが例示される。
また、iPS細胞を移植用細胞の材料として用いる場合、拒絶反応が起こらないという観
点から、移植先の個体のHLA遺伝子型が同一もしくは実質的に同一である体細胞を用いる
ことが望ましい。ここで、「実質的に同一」とは、移植した細胞に対して免疫抑制剤により免疫反応が抑制できる程度にHLA遺伝子型が一致していることであり、例えば、HLA-A、HLA-BおよびHLA-DRの3遺伝子座あるいはHLA-Cを加えた4遺伝子座が一致するHLA型を有す
る体細胞である。
(E) 核移植により得られたクローン胚由来のES細胞
nt ES細胞は、核移植技術によって作製されたクローン胚由来のES細胞であり、受精卵
由来のES細胞とほぼ同じ特性を有している(T. Wakayama et al. (2001), Science, 292:740-743; S. Wakayama et al. (2005), Biol. Reprod., 72:932-936; J. Byrne et al. (2007), Nature, 450:497-502)。すなわち、未受精卵の核を体細胞の核と置換することによって得られたクローン胚由来の胚盤胞の内部細胞塊から樹立されたES細胞がnt ES(nuclear transfer ES)細胞である。nt ES細胞の作製のためには、核移植技術(J.B. Cibelli et al. (1998), Nature Biotechnol., 16:642-646)とES細胞作製技術(上記)との組み合
わせが利用される(若山清香ら(2008),実験医学,26巻,5号(増刊), 47〜52頁)。核移植においては、哺乳動物の除核した未受精卵に、体細胞の核を注入し、数時間培養することで初期化することができる。
<中胚葉前駆細胞>
本発明において、中胚葉とは、発生の過程で体腔及びそれを裏打ちする中皮、筋肉、骨格、皮膚真皮、結合組織、心臓・血管(血管内皮も含む)、血液(血液細胞も含む)、リ
ンパ管や脾臓、腎臓及び尿管、性腺(精巣、子宮、性腺上皮)をつくる能力を有した細胞から構成される胚葉を包含する。本発明において、中胚葉前駆細胞は、例えば、T(Brachyuryと同義)、KDR、FOXF1、FLK1、BMP4、MOX1及びSDF1から成るマーカー遺伝子から選択される少なくとも一つのマーカー遺伝子が発現する細胞である。中胚葉前駆細胞には、中胚葉細胞と区別されるものではなく、上記マーカー遺伝子の発現が弱いものを中胚葉前駆細胞と称してもよい。本発明において製造される、中胚葉前駆細胞は他の細胞種が含まれる細胞集団として製造されてもよく、例えば、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上または90%以上の中胚葉前駆細胞が含ま
れる細胞集団である。
<血液血管前駆細胞>
本発明において、血液血管前駆細胞とは、血液系細胞または血管内皮細胞へ誘導される能力を有した細胞から構成される細胞であり、血管芽細胞またはヘマンジオブラストとも称される。本発明において、血液血管前駆細胞は、CD34及びKDRを発現する細胞として例示される。本発明において製造される、血液血管前駆細胞は他の細胞種が含まれる細胞集団として製造されてもよく、例えば、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上または90%以上の血液血管前駆細胞が含まれる細胞集団である。
<中胚葉前駆細胞の製造工程>
本発明は、多能性幹細胞を、ラミニン511またはその断片でコーティングされた培養器材上にて、BMP、GSK3β阻害剤およびVEGFを含む培養液中で接着培養する工程を含む多能性幹細胞から中胚葉前駆細胞を製造する方法を提供する。
本発明において、接着培養とは、細胞接着に適した表面加工をした培養容器または細胞外基質でコーティング処理された培養容器を用いて足場依存的に培養することを意味する。
本発明において、細胞外基質として、ラミニン511(α5鎖、β1鎖、γ1鎖からなるラミニン)またはその断片が好適に用いられる。本発明においてラミニンとは、基底膜の主要な細胞接着分子であり、α鎖、β鎖、及びγ鎖の3本のサブユニット鎖からなるヘテロ3量体で、分子量80万Daの巨大な糖タンパク質である。3本のサブユニット鎖がC末端側で会合してコイルドコイル構造を作りジスルフィド結合によって安定化したヘテロ3量体分子を言う。従って、ラミニン511とは、α鎖がα5であり、β鎖がβ1であり、ならびにγ鎖がγ1であるラミニンを意味する。さらに、ラミニンは、変異体であってもよく、インテグリン結合活性を有している変異体であれば、特に限定されない。ラミニンはヒト由来のものが好ましい。
本発明において、ラミニン断片は、エラスターゼにて消化して得られる断片であるE8フラグメント(ラミニン511のE8フラグメント(ラミニン511E8ともいう))(Ido H, et al, J Biol Chem. 2007, 282, 11144-11154)であってもよい。ラミニン51
1E8は、例えば、ニッピ社から入手可能である。
コーティング処理は、ラミニン511またはその断片を含有する溶液を培養容器に入れた後、当該溶液を適宜除くことによって行い得る。
中胚葉前駆細胞の製造工程で用いるBMPは、BMP2、BMP4およびBMP7から成る群より選択される少なくとも一つのBMPであり、好ましくは、BMP4である。BMPはヒト由来のものが好ましい。
本発明において、中胚葉前駆細胞の製造工程にBMP4を用いる場合、培養液中におけるBMP4の濃度は、特に限定されないが、5 ng/mlから200 ng/ml、10 ng/mlから100 ng/ml、20 ng/mlから80 ng/mlが例示される。好ましくは、80 ng/mlである。
本発明において、GSK3β阻害剤とは、GSK-3βタンパク質のキナーゼ活性(例えば、β
カテニンに対するリン酸化能)を阻害する物質として定義され、既に多数のものが知られているが、例えば、インジルビン誘導体であるBIO(別名、GSK-3β阻害剤IX;6-ブロモインジルビン3'-オキシム)、マレイミド誘導体であるSB216763(3-(2,4-ジクロロフェニル)-4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-1H-ピロール-2,5-ジオン)、フェニルαブロモメ
チルケトン化合物であるGSK-3β阻害剤VII(4-ジブロモアセトフェノン)、細胞膜透過型のリン酸化ペプチドであるL803-mts(別名、GSK-3βペプチド阻害剤;Myr-N-GKEAPPAPPQpSP-NH2(配列番号1))および高い選択性を有するCHIR99021(6-[2-[4-(2,4-Dichlorophenyl)-5-(4-methyl-1H-imidazol-2-yl)pyrimidin-2-ylamino]ethylamino]pyridine-3-carbonitrile)が挙げられる。これらの化合物は、例えばCalbiochem社やBiomol社等から市販
されており容易に利用することが可能であるが、他の入手先から入手してもよく、あるいはまた自ら作製してもよい。本発明で使用されるGSK-3β阻害剤は、好ましくは、CHI
R99021であり得る。
本発明の培養液中におけるCHIR99021の濃度は、例えば、1nM、10nM、50nM、100nM、500nM、750nM、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM
、15μM、20μM、25μM、30μM、40μM、50μMまたはこれらの間の濃度であるがこれらに限定されない。好ましくは、2μMである。
中胚葉前駆細胞の製造工程の培養液中におけるVEGFの濃度は、特に限定されないが、5 ng/mlから200 ng/ml、10 ng/mlから100 ng/ml、または20 ng/mlから80 ng/mlが例示され
る。好ましくは、80 ng/mlである。VEGFはヒト由来のものが好ましい。
中胚葉前駆細胞の製造工程で用いる培養液は、動物細胞の培養に用いられる培地を基礎培地として、適宜BMP、GSK3β阻害剤およびVEGFを添加することによって調製することができる。基礎培地としては、例えば、Glasgow's Minimal Essential Medium(GMEM)培地、IMDM培地、Medium 199培地、Eagle's Minimum Essential Medium (EMEM)培地
、αMEM培地、Dulbecco's modified Eagle's Medium (DMEM)培地、Ham's F12培地、RPMI 1640培地、Fischer's培地、Neurobasal Medium(ライフテクノロジーズ)、mTesR1培地(ライフテクノロジーズ)、Essential 8(ライフテクノロジーズ)、Stempr
o34SFM培地(ライフテクノロジーズ)およびこれらの混合培地などが包含される。基礎培地には、必要に応じて、例えば、アルブミン、トランスフェリン、Knockout Serum
Replacement(KSR)(ES細胞培養時のFBSの血清代替物)、N2サプリメント(Invitrogen)、B27サプリメント(Invitrogen)、脂肪酸、インスリン、コラーゲン前駆体、微量元素、2-メルカプトエタノール、3'-チオールグリセロールなどの1つ以上の血清代替物を含んで
もよいし、脂質、アミノ酸、L-グルタミン、Glutamax(Invitrogen)、非必須アミノ酸、ビタミン、増殖因子、低分子化合物、抗生物質、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類などの1つ以上の物質も含有し得る。好ましい基礎培地は、mTesR1培地またはEssential 8である。
中胚葉前駆細胞の製造工程の培養条件について、培養温度は、特に限定されないが、約30〜40℃、好ましくは約37℃であり、CO2含有空気の雰囲気下で培養が行われ、CO2濃度は、好ましくは約2〜5%である。培養期間は、2日以上であり、2日〜3日間が好ましい。
<血液血管前駆細胞の製造工程>
本発明は、中胚葉前駆細胞をVEGF、SCF、bFGFおよびTGFβ阻害剤を含む培養液中で接着培養する工程を含む中胚葉前駆細胞から血液血管前駆細胞を製造する方法を提供する。
血液血管前駆細胞の製造工程では、接着培養に用いる培養容器のコーティング剤は特に制限されず、ラミニンまたはその断片、Matrigel、コラーゲン、およびフィブロネクチンが例示されるが、簡便には前述した中胚葉前駆細胞の製造工程と同じくラミニン511またはその断片を用いることができる。前述した中胚葉前駆細胞の製造工程に引き続き、血液血管前駆細胞の製造工程を行う場合、適宜培養液を交換することで実施し得る。
血液血管前駆細胞の製造工程の培養液中におけるVEGFの濃度は、特に限定されないが、5 ng/mlから200 ng/ml、10 ng/mlから100 ng/ml、または20 ng/mlから80 ng/mlが例示さ
れる。好ましくは、80 ng/mlである。
血液血管前駆細胞の製造工程の培養液中におけるSCFの濃度は、特に限定されないが、5 ng/mlから200 ng/ml、10 ng/mlから100 ng/ml、または20 ng/mlから80 ng/mlが例示
される。好ましくは、50 ng/mlである。SCFはヒト由来のものが好ましい。
血液血管前駆細胞の製造工程の培養液中におけるbFGFの濃度は、特に限定されないが、5 ng/mlから200 ng/ml、10 ng/mlから100 ng/ml、または20 ng/mlから80 ng/mlが例
示される。好ましくは、50 ng/mlである。bFGFはヒト由来のものが好ましい。
本発明において、TGFβ阻害剤とは、TGFβとその受容体の結合を阻害する物質、またはTGFβが受容体に結合後の下流シグナルを阻害する物質として定義され、、当該下
流シグナルとは、TGFβII型受容体によるTGFβI型受容体をリン酸化、このTGFβI型受容
体によるSmad(R-Smad)のリン酸化などが例示される。TGFβ阻害剤として既に多数のものが知られているが、例えば、SB431542、SB202190(R.K.Lindemann et al., Mol. Cancer
2:20 (2003))、SB505124 (GlaxoSmithKline)、NPC30345 、SD093、SD908、SD208 (Scios)、LY2109761、LY364947、LY580276 (Lilly Research Laboratories)、A-83-01 (WO 2009146408)などが挙げられる。これらの化合物は、例えばSTEMGENT社等から市販されており
容易に利用することが可能であるが、他の入手先から入手してもよく、あるいはまた自ら作製してもよい。本発明で使用されるTGFβ阻害剤は、好ましくは、SB431542であり得る。
血液血管前駆細胞の製造工程の培養液中におけるSB431542の濃度は、例えば、1nM、10nM、50nM、100nM、500nM、750nM、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9
μM、10μM、15μM、20μM、25μM、30μM、40μM、50μMまたはこれらの間の濃度であるがこれらに限定されない。好ましくは、2μMである。
血液血管前駆細胞の製造工程で用いる培養液は、動物細胞の培養に用いられる培地を基礎培地として、適宜VEGF、SCF、bFGFおよびTGFβ阻害剤を添加することによって調製することができる。基礎培地としては、例えば、Glasgow's Minimal Essential Medium(GMEM)培地、IMDM培地、Medium 199培地、Eagle's Minimum Essential Medium (EMEM)培地、αMEM培地、Dulbecco's modified Eagle's Medium (DMEM)培地、Ham's F12培地、RPMI 1640培地、Fischer's培地、Neurobasal Medium(ライフテクノロジーズ)、m
TesR1培地(ライフテクノロジーズ)、Essential 8(ライフテクノロジーズ)、Essential 6(ライフテクノロジーズ)、Stempro34SFM培地(ライフテクノロジーズ)およびこれらの混合培地などが包含される。基礎培地には、必要に応じて、例えば、アルブミン、トランスフェリン、Knockout Serum Replacement(KSR)(ES細胞培養時のFBSの血清代替物)、N2サプリメント(Invitrogen)、B27サプリメント(Invitrogen)、脂
肪酸、インスリン、コラーゲン前駆体、微量元素、2-メルカプトエタノール、3'-チオー
ルグリセロールなどの1つ以上の血清代替物を含んでもよいし、脂質、アミノ酸、L-グル
タミン、Glutamax(Invitrogen)、非必須アミノ酸、ビタミン、増殖因子、低分子化合物、抗生物質、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類などの1つ以上の物質も含有し得
る。好ましい基礎培地は、TGFβを含有しない基礎培地であり、このような培地として例えば、Essential 6が挙げられる。
血液血管前駆細胞の製造工程の培養条件について、培養温度は、特に限定されないが、約30〜40℃、好ましくは約37℃であり、CO2含有空気の雰囲気下で培養が行われ、CO2濃度
は、好ましくは約2〜5%である。培養期間は、2日以上であり、2日〜3日間が好ましい。
<キット>
本発明での他の実施態様において、多能性幹細胞から中胚葉前駆細胞を作製するキットおよび/または中胚葉前駆細胞から血液血管前駆細胞を作製するキットが含まれる。当該
キットには、上述した中胚葉前駆細胞を作製する各工程に使用する培養液、添加剤または培養容器等が含まれる。本キットには、さらに製造工程の手順を記載した書面や説明書を含んでもよい。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されないことは言うまでもない。
細胞および培養
ヒトES細胞(KhES1)は、京都大学再生医科学研究所より受領し、従来の方法で培養した(Suemori H, et al. Biochem Biophys Res Commun. 345:926-32, 2006)。ヒトiPS細胞は、臍帯血単核球に4因子をエピソーマルベクター(Okita K, et al, Nat Methods. 8, 409-412, 2011)により導入して作製した(CB-iPSCと言う)。
ヒトES細胞およびヒトiPS細胞の維持培養はSNLフィーダー上で、5mg/mLのbFGF (WAKO)を添加したES培地(ReproCELL)を用いて行った。また、継代はCTK溶液(
0.25%トリプシン(Life technologies)、0.1%コラゲナーゼIV(Life technologies),、20%KSR、及び1mMCaCl)によって約30秒間室温で処理して細胞を解離させ、既存の方法(Suemori, H. et al. Biochemical and Biophysical Research Communications 345, 926932 (2006))により、SNL細胞を除去した。
多能性幹細胞から中胚葉前駆細胞への分化誘導
ヒトES細胞をLM511 (Biolamina)でコーティングしたプレートに5 colonies/cm2の密
度で播種し、mTeSR1で培養した。コロニーの直径が750μmになるまで増殖させた後、2 μM CHIR99021 (Wako), 80 ng/mL BMP4 (R&D Systems(RSD)), 80 ng/mL VEGF (RSD)を含
むEssential 8 (Life technologies)培地に交換し、2日培養し、KDR陽性の中胚葉前駆細
胞を得た。
中胚葉前駆細胞から血液血管前駆細胞への分化誘導
上記の方法で得られた中胚葉前駆細胞の培地を吸引除去し、2 μM SB431542 (STEMGENT), 80 ng/mL VEGF (RSD), 50 ng/mL bFGF (WAKO)および50 ng/mL SCF (RSD)を含むEssential 6 (Life technologies)培地(TGFβの除去)に交換し、2日培養し、CD34陽性の
血液血管前駆細胞を得た。
血液血管前駆細胞の評価
上記の方法で得られた血液血管前駆細胞の培地を吸引除去し、20ng/mL VEGF, 50ng/mL SCF, 50ng/mL IL(Interleukin)3 (RSD), 50ng/mL FL(Flt-3 Ligand Protein)(RSD), 50ng/mL IL6 (RSD), 10U/mL EPO(Erythropoietin)(Merk)およびITSX(Insulin-transferrin-sodium selenite-X:Life technologies)を含むStemline II (SIGMA)培地に交換し、2日培養した。
さらに、培地を吸引除去し、50ng/mL SCF, 50ng/mL IL6 (RSD), 10U/mL EPO (Merk)お
よびITSXを含むStemline II (SIGMA)培地に交換し、4日培養した。培養2日目に同じ培地へ交換を行った。
その結果、接着した細胞は、内皮細胞様に分化していることが確認された(図1)。さらに、得られた細胞を回収し、FACS解析を行ったところ、KDR+CD34+を示す内皮細胞への
分化(図2A)およびCD34+CD43+細胞、CD34+CD45+細胞またはCD43+CD45+細胞を示す造血
細胞への分化(図2B)が得られることが確認された。
この結果から、上述の方法で多能性幹細胞から得られた細胞は、内皮細胞および造血細胞といった中胚葉系細胞への誘導能を有する中胚葉前駆細胞であることが確認され、さらに、当該中胚葉前駆細胞から得られた細胞は、内皮細胞および造血細胞への誘導能を有する血液血管前駆細胞であることが確認された。
同様に、CB-iPSCを用いて上記の方法で中胚葉前駆細胞を経て血液血管前駆細胞集団を
作製した。この血液血管前駆細胞集団からCD34陽性細胞をMACS(磁気細胞分離装置)(ミルテニー社)を用いて単離し、Matrigel (BD Biosciences)上に播種し、上記と同様の方
法にて分化誘導行ったところ、接着した細胞は、内皮細胞様に分化していることが確認され(図3A)、浮遊した細胞をメイギムザ染色したところ、血球系細胞が存在しているこ
とが確認された(図3B)。
この結果から、上記の方法で分化誘導した4日目細胞中のCD34陽性分画が、血液血管前駆細胞であることが示された。
中胚葉前駆細胞への分化誘導において、LM511をLM511E8(iMatrix-511、ニッピ)に置
き換えたところ、同様の結果が得られた。
本発明により、ES細胞やiPS細胞などの多能性幹細胞から、血液血管前駆細胞を作製することが可能になる。血液血管前駆細胞は、血液系細胞または血管内皮細胞を誘導することが可能であり、当該細胞は、血液製剤の製造または血管再生医療の分野で使用することができる。

Claims (9)

  1. 多能性幹細胞から中胚葉前駆細胞を製造する方法であって、多能性幹細胞を、ラミニン511またはラミニン511E8でコーティングされた培養器材上にて、BMP、VEGFおよびGSK3β阻害剤を含む培養液中で接着培養する工程を含む方法。
  2. 前記GSK3β阻害剤がCHIR99021である、請求項に記載の方法。
  3. 前記工程が2日間以上行われる、請求項1または2に記載の方法。
  4. 次の工程を含む多能性幹細胞から血液血管前駆細胞を製造する方法であって、
    (1)多能性幹細胞を、ラミニン511またはラミニン511E8でコーティングされた培養器材上にて、BMP、VEGFおよびGSK3β阻害剤を含む培養液中で接着培養する工程、および
    (2)前記工程(1)で得られた細胞をVEGF、SCF、bFGFおよびTGFβ阻害
    剤を含む培養液中で接着培養する工程。
  5. 前記GSK3β阻害剤がCHIR99021である、請求項に記載の方法。
  6. 前記工程(2)で用いる培養液がTGFβを含有しない培養液である、請求項4または5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記TGFβ阻害剤がSB431542である、請求項4〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記工程(1)が2日間以上行われる、請求項4〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記工程(2)が2日間以上行われる、請求項4〜8のいずれか1項に記載の方法。
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