以下、本実施形態のポータブルトイレについて図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明では便宜上、便座に腰掛けた使用者から見た方向を基準にして前後、左右及び上下を示している。図中に示すF,B,R,Lは、それぞれ、ポータブルトイレの前方、後方、右側、左側を表す。本実施形態のポータブルトイレは、例えば介護用であり、ベッド脇等の室内に置かれて用いられる。なお、このポータブルトイレは、介護用トイレや簡易トイレ等とも称される。本実施形態のポータブルトイレは折り畳み可能であり、開脚した状態で使用され、不使用時には折り畳んでコンパクトにすることが可能である。
ポータブルトイレ10は、図1〜図7に示すように、脚体部11と、脚体部11によって支持されるトイレ本体部40と、を備える。以下においては、特に説明がない場合、開脚状態のポータブルトイレ10の構成をいうものとする。
≪脚体部11≫
脚体部11は、左右一対の前脚部12と、左右一対の後脚部13とを備える。前脚部12は、前方に傾斜するように形成されている。本実施形態では、前脚部12は、木製の長尺板材からなる前脚本体21を備えている。前脚部12は、互いの前脚本体21の板面を向き合わせた状態で左右に離間して配置されている。
前脚部12の下端よりも上には、各前脚部12を連結する板状の連結部23が設けられている。連結部23は、トイレ本体部40の下方に配置されている。この連結部23によって各前脚部12が連結されることで、使用者の着座等によって前脚部12に力が掛かった場合にも、ポータブルトイレ10の開脚状態をより安定に保持できる。連結部23は、ポータブルトイレ10の開脚状態において、連結部23の板面のうち前面23aが斜め下方に向き、後面23bが斜め上方を向いた状態で前脚本体21に取り付けられている。
前脚部12は、高さ調整部24を有している。高さ調整部24は、木製の長尺板材からなり、各前脚部12の下部に、前脚本体21に対して着脱可能に取り付けられている。この高さ調整部24の前脚本体21に対する高さ方向の位置を調整することにより、トイレ本体部40の床面からの高さを調整可能になっている。本実施形態では、前脚本体21の下部の板面に、複数個のネジ孔21cが上下に並べて所定間隔で設けられている。これら複数個のネジ孔21cのいずれかに対して、高さ調整部24の板面に形成されたネジ孔24aが重なるように、かつトイレ本体部40が所望の高さになるように、高さ調整部24を前脚本体21の外側から位置決めした上でネジ止め等することにより、トイレ本体部40の高さが調整される。
後脚部13は、後方へ傾斜するように形成されている。本実施形態では、後脚部13は、木製の長尺板材からなる後脚本体22を備えている。各後脚部13は、その上端部が、前脚部12の高さ方向の中間部に回動軸25を介して連結されている。これにより、脚体部11は、前脚部12の下部と後脚部13の下部とが離間した開脚状態と、前脚部12の下部と後脚部13の下部とが接近した閉脚状態との間で変形可能になっている。閉脚状態では、前脚部12の下部と後脚部13の下部とが接近することにより、脚体部11が折り畳まれた状態となる。後脚部13の下端よりも上には、各後脚部13を連結する板状の連結部27が設けられている。
後脚部13は、高さ調整部26を有している。高さ調整部26は、木製の長尺板材からなり、各後脚部13の下部に、後脚本体22に対して着脱可能に取り付けられている。この高さ調整部26の後脚本体22に対する高さ方向の位置を調整することにより、トイレ本体部40の床面からの高さを調整可能になっている。本実施形態では、前脚部12と同じく、後脚本体22の下部に上下に並べて形成された複数個のネジ孔のいずれかと、高さ調整部26に形成されたネジ孔とが重なるように高さ調整部26の高さ方向の位置を調整し、ネジ止め等することにより、トイレ本体部40の高さが調整される。
図7に示すように、後脚部13は、下側部分13aと上側部分13bとを有しており、これらが弧状につながっている。具体的には、後脚部13は、開脚状態で側方視したとき、下側部分13aは直線的であり、上側部分13bは上方へ凸となる緩やかな弧状であり、これら両者が、上側部分13bよりも湾曲された弧状部分でつながっている。また、上側部分13bの鉛直方向に対する傾斜は、下側部分13aよりも大きい。これにより、ポータブルトイレ10の閉脚状態では後脚部13の下端の前後幅が小さくなり、コンパクトに折り畳むことができるようになっている。また、閉脚状態では、前脚部12及び後脚部13は、前後に並んで略平行に配置される(図12参照)。
脚体部11の各脚の下面には、開脚状態での接地面である第1接地面39aと、閉脚状態での接地面である第2接地面39bとが形成されている。本実施形態では、側方視において、高さ調整部24,26の下面が前脚本体21及び後脚本体22の下面よりも下方に位置しており、高さ調整部24,26側に第1接地面39a及び第2接地面39bが形成されている。
<規制部>
脚体部11には、所定の開脚状態において前脚部12の下部と後脚部13の下部とがそれ以上離間しないように規制する規制部が設けられている。本実施形態では、規制部として、前脚部12と後脚部13との間に前後方向に架け渡された連結アーム28と、前脚部12及び後脚部13の一方の脚に設けられ、他方の脚に当接する脚当接部18と、が設けられている。
連結アーム28は、第1連結バー28aと第2連結バー28bとを有している。第1連結バー28aの一端は、前脚部12に回動可能に連結されており、第2連結バーの一端は後脚部13に回動可能に連結されている。第1連結バー28aの他端と、第2連結バー28bの他端とは、前脚部12と後脚部13との間の前後方向の中間部で回動可能に連結されている。この連結アーム28により、ポータブルトイレ10が開脚した状態では、前脚部12と後脚部13とが所定の角度以上に開かないようになっている。
脚当接部18は、図7に示すように、後脚部13の内側板面に所定高さで取り付けられており、前脚部12の後部に当接する当接面18aを有する。脚当接部18は、例えばネジ止め等により後脚部13に固定されている。ポータブルトイレ10の開脚状態では、前脚部12の後面と、脚当接部18に設けた当接面18aとが当接する。この当接により、前脚部12の下部と後脚部13の下部とがそれ以上離間しないように規制される。
≪トイレ本体部40≫
トイレ本体部40は、各前脚部12及び各後脚部13で挟まれた位置に配置されている。トイレ本体部40は、バケツ50を受けることが可能な受け部60と、受け部60の上方に配置される便座70と、便座70の上方に重ねられて便座70を覆う座部80とを備えている。
<受け部60>
受け部60は、本体フレーム61と、バケツ50を収容する収容部62と、収容部62の上部に配置されるトレイ63とを備える。
(本体フレーム61)
本体フレーム61は、収容部62及びトレイ63を支持する部材であり、本実施形態では、図6に示すように、前後及び左右のそれぞれに上方に向けて立ち上がる側壁61aを有する平面視四角形の木製の枠である。本体フレーム61は、脚体部11に対して回動可能に支持されている。本実施形態では、本体フレーム61は、左右両側で、前脚部12及び後脚部13のそれぞれに対して回動可能に連結されている。
図8は、脚体部11と本体フレーム61との連結部分を拡大した斜視図である。なお、図8では便宜上、前脚部12及び後脚部13を二点鎖線で示している。図8に示すように、本体フレーム61は、前脚部12の高さ方向の中間部において、連結板64を介して各前脚部12に連結されている。連結板64は、本体フレーム61の左右側面にそれぞれ設けられている。具体的には、連結板64の一端は、本体フレーム61の左右の側壁61aに回動軸64aを介して連結されており、連結板64の他端は、前脚部12の内側板面に回動軸64bを介して連結されている。連結板64の両端の回動軸64a,64bの高さ位置は略同じとなっている。
本体フレーム61は、連結部材65を介して、各後脚部13に対し回動可能に連結されている。連結部材65は、本体フレーム61の両側面に設けられている。本実施形態では、連結部材65は、上下方向に延びる形状を有し、その上端部は、本体フレーム61の側面に回動軸65aを介して連結され、下端部は、ネジ止め等によって後脚部13に固定されている。連結部材65の回動軸65aの高さ位置は、連結板64の両端の回動軸64a,64bと略同じ高さ位置となっている。
本体フレーム61は、連結板64の回動軸64a,64b及び連結部材の回動軸65aにより、本体フレーム61が前後方向に延びる横向きの状態と、本体フレーム61が上下方向に延びる縦向きの状態とに姿勢の変更が可能になっている。本体フレーム61の側面には、連結部材65の後方位置に、側方に突出する突出部66が形成されている。本体フレーム61が縦向きに配置されると、連結部材65の後面と突出部66とが当接する。これにより、本体フレーム61が縦向きに配置されたときに本体フレーム61がそれ以上回動しないように、本体フレーム61の回動が規制される。
ポータブルトイレ10には、開脚した状態において、本体フレーム61の横向きの状態が保持されるように本体フレーム61を支持する本体支持部67が設けられている。本実施形態では、本体支持部67は、本体フレーム61を下方から支持する部材であり、左右側方にそれぞれ設けられている。図7及び図8に示すように、本体支持部67は、前脚部12の内側板面に、例えばネジ止め等により取り付けられている。本体支持部67の取付け高さは、本体支持部67の上部の水平面67aが、本体フレーム61が水平な状態で、本体フレーム61の左右の側壁61aの下面に当接可能な高さ位置となっている。脚体部11の開脚状態では、本体フレーム61の下面と、本体支持部67の上部の水平面67aとが当接することにより、本体フレーム61の横向きの状態が保持される。
本体フレーム61には、本体フレーム61が縦向きに配置された状態を保持するストラップ55が取り付けられている。ストラップ55は、帯部56と、帯部56の一端に設けられ本体フレーム61に固定される固定部57と、帯部56の他端に設けられ先端を折り返して形成された輪部58とを備えている。ストラップ55は、本体フレーム61のうち左右いずれかの側壁61aに取り付けられている。なお、便宜上、図1にのみストラップ55を図示している。本体フレーム61が縦向きに配置された状態で、ストラップ55の輪部58を、脚体部11の上部に設けられた突出部59に引っ掛けることにより、本体フレーム61の下方への回動が規制され、本体フレーム61が縦向きに配置された状態が保たれる。
(収容部62)
収容部62は、上部が開口した有底の容器であり、バケツ50を収容可能な大きさを有している。収容部62は「汚水受け」とも称される。図5に示すように、本実施形態では、収容部62は、矩形の底部62aと、底部62aの周縁部から立ち上がる側壁部62bとを有する例えば樹脂製の箱型容器である。側壁部62bの上部には、開口部62cが形成されている。側壁部62bは、底部62aに向かうにつれて内側に傾斜した形状となっている。
収容部62は、本体フレーム61の内側に配設され、その配設状態で着脱可能に支持されている。本実施形態では、収容部62の上部の周縁の左右のそれぞれに、側方に突出する爪部62dが複数個ずつ(図5では2個ずつ)所定間隔をあけて設けられている。また、本体フレーム61には、左右の側壁61aの上面であって、収容部62の爪部62dに対応する位置に、爪部62dを引っ掛けることが可能な引っ掛け部61eが設けられている。爪部62dを引っ掛け部61eに引っ掛けるようにして、収容部62を本体フレーム61の内側に上方から配設することにより、収容部62が本体フレーム61に組み付けられる。これにより、収容部62は、本体フレーム61が横向きの状態では開口部62cを上方に向けた状態で本体フレーム61に支持される。収容部62が本体フレーム61に支持された状態で、本体フレーム61が上方へ回動して縦向きの状態になると、受け部60が収容部62の開口部62cを後方に向けた状態に変化する。
(トレイ63)
トレイ63は、収容部62の開口部62cを覆うようにして、収容部62の上部に配設される。その配設状態では、トレイ63は、収容部62によって着脱可能に支持されている。トレイ63は「受け板」とも称される。トレイ63の中央部には開口部63aが形成されており、開口部63aの周縁及びトレイ63の外縁に、トレイ63の上面63bから上方に向けて周方向に連続して立ち上がる内側壁63c、外側壁63dがそれぞれ設けられている。トレイ63の前面中央には、下方に垂れる下垂部63eが設けられている。この下垂部63eが、収容部62の前面上端に形成された凹み部と上下に組み合わされることで、収容部62に対してトレイ63が位置決めされる。
トレイ63の周縁部には、外側底面から下方に向かって突出するピンが複数箇所(本実施形態では、トレイ63の外側底面の前部左右の隅に1個ずつ)に設けられている。各ピンが、本体フレーム61の上面に設けられたピン穴61fに挿入されることで、トレイ63が本体フレーム61に対して着脱可能に組み付けられる。トレイ63の後部には、便座70のヒンジ71を取り付ける基部68が設けられている。
(バケツ50)
バケツ50は、使用者の排泄物を受ける容器であり、本実施形態では上部が開口した有底の容器である。バケツ50は「汚物受け」とも称される。バケツ50の上縁には、周方向に連続して外側に突出するフランジ51が設けられている。バケツ50は、トレイ63の開口部62cを通じて収容部62に収容される。バケツ50は、その収容状態で、フランジ51がトレイ63の内側壁63cに引っ掛けられることで、トレイ63に支持されている。バケツ50が収容部62に収容された状態では、トレイ63の上面63bは、バケツ50の上端よりも低い位置に配置されている。バケツ50の外側へ漏れた汚水は、内側壁63cの外面を介してトレイ63の上面63bに受けられる。
バケツ50の上縁には、傾倒可能な取っ手52が取り付けられている。バケツ50が収容部62に収容された状態では、取っ手52は、後方に倒されることによってバケツ50の後方へ配置される。バケツ50の開口部53には、開口部53を覆う蓋54が上方から装着される。
<便座70>
便座70は、開口部72を有し、その開口部72が、トレイ63の開口部63aと重なるようにして、受け部60の上方、より具体的にはトレイ63の上面に配置される。便座70は、後方位置に設けられたヒンジ71を介してトレイ63に取り付けられている。これにより、便座70は、図2に示すように、収容部62の上面に横向きに配置された状態と、図3に示すように、収容部62の上方に縦向きに配置された状態との間で回動可能になっている。なお、便座70をトレイ63に取り付ける構成に代えて、収容部62又は本体フレーム61に取り付ける構成としてもよい。
<座部80>
座部80は、便座70の上方に重ねられた状態で上面81が座面として使用されるものである。本実施形態では、座部80は、クッション性を有して形成された矩形の部材である。座部80は、トイレ本体部40の後方位置で上方へ回動可能に支持されている。具体的には、座部80は、本体フレーム61にアーム86を介して連結されている。このアーム86の一端は、座部80の後端部に回動軸を介して連結され、他端は、本体フレーム61の後部に回動軸87を介して連結されている。この回動軸87により、座部80は、上面81が前後方向に延びている横向きの状態と、上面81が上下方向に延びている縦向きの状態との間で姿勢変更が可能になっている。座部80を上方へ回動すると、便座70が露出し、トイレとしての使用状態となる。
図1に示すように、座部80は、前後に分割された前部82と後部83とを有する。前部82と後部83とは、蝶番84によって裏面で連結されている。これにより、座部80は、前後方向の中間位置で、座部80の上面81を前後に向けた状態で折り畳み可能になっている。折り畳まれた状態の座部80は、図2に示すように、トイレ本体部40の後方位置で、座部80の上面81を前後に向けた状態で起立するようにして配置される。本実施形態では、後述する背もたれ部90の下方に形成された空間部91に、折り畳まれた座部80が配置される。
座部80の上面81には取っ手85が取り付けられている。本実施形態では、取っ手85は、前後方向に延びる帯状の部材であり、座部80の前部82に設けられている。使用者は、取っ手85を片手で持つか又は取っ手85と上面81との間に片手を挿入して座部80を中間位置で折り畳み、そのまま後方に移動させることができる。つまり、使用者は片手での操作によって、便座70やトレイ63に手が触れないようにして、椅子としての使用状態からトイレとしての使用状態にすることができる。
トイレ本体部40においては、本体フレーム61が脚体部11に回動可能に支持されており、その本体フレーム61に、収容部62及びトレイ63が着脱可能に配設されているとともに、便座70及び座部80が回動可能に支持されている。これにより、トイレ本体部40の回動により、トイレ本体部40が横向きに配置される状態と、トイレ本体部40が縦向きに配置される状態との間で姿勢変更が可能になっている。
ポータブルトイレ10は、更に、着座した使用者の背中が当接される背もたれ部90と、使用者の手や腕が載置される肘掛け部92と、閉脚状態で受け部60がバケツ50を受けた状態を保持する保持部75と、を備えている。
≪背もたれ部90≫
背もたれ部90は、各前脚部12の上端部の間に架け渡されている。背もたれ部90は、開脚状態においてトイレ本体部40の後方位置で上方に配置されている。本実施形態では、背もたれ部90は、少なくとも前面がクッション性を有して形成された長尺形状の部材が、各前脚部12の内側板面のそれぞれに対してネジ止め等により固定されている。背もたれ部90の下方には空間部91が形成されている。この空間部91は、背もたれ部90と各前脚部12と座部80とにより囲まれた内側空間となっている。また、空間部91は、前部82と後部83との間で折り畳まれた状態の座部80が入り込むことが可能な大きさとなっている。
≪肘掛け部92≫
肘掛け部92は、前後方向に沿って延びる肘掛け本体93と、肘掛け本体93を回動可能に支持する回動支持部94とを備えている。肘掛け本体93は、トイレ本体部40の後方位置から前方に延びる断面矩形の細長い木製の部材であり、左右両側に設けられている。肘掛け本体93の上面93aは、使用者の手や腕が載置される載置面となっている。図1〜図7に示す例では、右側の肘掛け本体93の下面には、下方に突出する支柱99が設けられており、この支柱99にトイレットペーパーホルダー95が取り付けられている。
回動支持部94は、前脚部12の左右の外側板面に取り付けられている。図2に示すように、回動支持部94の上面は略水平面であり、前後方向に沿って延びている。回動支持部94の上面は、肘掛け本体93の下面が当接される当接面となっており、その当接状態において肘掛け本体93を下方から支持する。
回動支持部94の後部には、肘掛け本体93が回動軸96を介して支持されている。本実施形態では、肘掛け本体93は、肘掛け本体93の下面が回動支持部94の上面に当接した状態から、回動軸96を中心に回動することによって、肘掛け本体93の前端部93bが上方に位置した状態に跳ね上げられる。また、その跳ね上げ状態からさらに回動可能になっている。より具体的には、肘掛け本体93の前端部93bが下方に位置した状態になるまで回動可能になっている。肘掛け本体93の前端部93bが下方に位置した状態では、肘掛け本体93の上面93aが、回動支持部94の後面94aに当接し、それ以上の回動が規制される。回動支持部94によって肘掛け本体93が跳ね上げ可能になっていることにより、使用者が例えばベッドからポータブルトイレ10の座部80又は便座70に側方から腰掛けたり、座部80又は便座70から側方に立ち上がったりする、いわゆる横移乗が容易となっている。
図2に示すように、肘掛け本体93の下面には、回動支持部94の前端部に設けられた被係止部97に係止可能なロック機構98が設けられている。このロック機構98により、肘掛け本体93の回動が規制された固定状態と、肘掛け本体93が回動可能な非固定状態との間で変更可能になっている。回動支持部94は、前脚部12の外側板面に対して着脱可能に取り付けられている。したがって、回動支持部94の前脚部12に対する高さ方向の位置を調整することにより、肘掛け本体93の高さを調整可能になっている。本実施形態では、前脚部12の板面において異なる高さ位置に形成された複数のネジ孔のいずれかと、回動支持部94に設けられたネジ孔とが重なるように回動支持部94の高さ方向の位置を調整し、ネジ止め等することにより肘掛け本体93の高さが調整される。
≪保持部75≫
保持部75は、受け部60に収容されたバケツ50が開口部53を後方に向けた状態となったときに、受け部60がバケツ50を受けた状態を保持する。こうした保持部75を備えることにより、トイレ本体部40を縦向きに配置した状態では、バケツ50が後ろ方向に飛び出るのを抑制することができる。
保持部75は、トイレ本体部40の後方に設けられており、開脚状態では座部80の座面の下方に位置している。本実施形態では、図9に示すように、保持部75は、各前脚部12の間に設けられた線条体76と、線条体76に設けられた回転体77と、を有している。
線条体76は、例えば金属製又は樹脂製であり、図9に示すように、各前脚部12から後ろ斜め下方に延びる側方部76a,76bと、側方部76b,76bの下端を連結する連結部76cと、を有している。側方部76a,76bの上端は、前脚部12の板面に外側から回動可能に取り付けられている。側方部76a,76bは、回動範囲が規制されており、前脚部12に対して上方へ所定位置まで回動すると、それ以上回動しないようになっている。連結部76cは、ポータブルトイレ10の開脚状態では、座部80が便座70の上方に重ねられた状態において座部80の座面よりも下方に位置している。
回転体77は、例えば樹脂製であり、連結部76cに回動可能に取り付けられている。図7に示すように、回転体77は、開脚状態では自重によって座部80の座面に対して後方下方の位置に位置している。なお、本実施形態では、連結部76cには2個の回転体77を設けているが、回転体77は1個でもよく、3個以上としてもよい。
≪ポータブルトイレ10の動作≫
次に、ポータブルトイレ10の動作について説明する。図10は、折り畳み状態のポータブルトイレ10を左斜め前方から見た斜視図であり、図11は、折り畳み状態のポータブルトイレ10を左斜め後方から見た斜視図である。図12は、折り畳み状態のポータブルトイレ10の右側面図である。
上述したように、脚体部11は、前脚部12の下部と後脚部13の下部とが離間した開脚状態から、前脚部12の下部と後脚部13の下部とが接近した閉脚状態へ折り畳み可能である。また、トイレ本体部40は、受け部60がバケツ50の開口部53を上方に向けた状態でバケツ50を受ける横向きの状態と、受け部60がバケツ50の開口部53を後方に向けた状態でバケツ50を受ける縦向きの状態との間で姿勢を変更可能である。本実施形態では、トイレ本体部40が横向きの状態から縦向きの状態になる動作と、脚体部11が開脚状態から閉脚状態になる動作とが連動して行われる。
具体的には、図8に示すように、前脚部12は連結板64を介して本体フレーム61に連結されており、後脚部13は回動軸65aを介して本体フレーム61に連結されている。本体フレーム61が上方に回動されて縦向きの配置になると、それに連動して、前脚部12の下部と後脚部13の下部とが互いに引き寄せられ、両者は接近する。その結果、ポータブルトイレ10は、図10〜図12に示す折り畳み状態となる。ポータブルトイレ10が折り畳まれた状態では、脚体部11の各脚では第2接地面39bがそれぞれ接地することにより、バケツ50や収容部62を備えたままの状態で安定して自立する。
ここで、ポータブルトイレ10においては、トイレ本体部40の回動経路にトイレ本体部40の障害物となる部材は存在せず、バケツ50を受け部60により受けている状態でのトイレ本体部40の回動経路が確保されている。そのため、バケツ50や収容部62を取り外さずに折り畳み状態とすることができる。
図11に示すように、脚体部11が閉脚した状態では、トイレ本体部40の少なくとも一部が、背もたれ部90の下方の空間部91に入り込んだ状態となる。これにより、折り畳み状態での前後方向の厚みをできるだけ薄くすることができる。脚体部11が折り畳まれた状態では、便座70と共に受け部60の上部に重ねられた状態の座部80が、背もたれ部90の下方を通過可能になっている。本実施形態では、図11に示すように、折り畳み状態では、保持部75によって座部80が押さえられることで、受け部60がバケツ50を受けたまま、かつ座部80が便座70に重ねられたままの状態が保持される。保持部75の作用については後に詳述する。
ポータブルトイレ10を折り畳む際には、使用者や介助者は、まず、図1に示すように、便座70及び座部80を受け部60の上方に重ねた状態とする。続いて、肘掛け本体93を跳ね上げ、さらに後ろ下方に回動させることにより、肘掛け本体93を水平の状態から、トイレ本体部40の後方位置で下方を向いた状態とする。次に、使用者等は、片方の手を背もたれ部90の後方に回し、背もたれ部90の後面に片手を添えるとともに、もう一方の手を、本体フレーム61の前方の側壁61aの下部に添え、背もたれ部90とトイレ本体部40の前方とを接近させるようにトイレ本体部40を上方へ回動させる。これにより、トイレ本体部40が縦向きになるとともに、その動作に連動して脚体部11が折り畳まれる。ポータブルトイレ10が折り畳まれた状態でストラップ55を突出部59に引っ掛けることにより、折り畳み状態が安定に保持される。
折り畳み状態のポータブルトイレ10を開脚するときには、使用者や介護者は、まず、ストラップ55の輪部58を突出部59から取り外す。次に、背もたれ部90と本体フレーム61の前方とを離間させるように、トイレ本体部40を下方へ回動させる。このとき、本体フレーム61の前方の側壁61cの下部に添えるか、あるいはストラップ55を掴んだ状態で、トイレ本体部40の下方への回動がゆっくりと行われるように補助するとよい。開脚した後では、自重により、便座70及び座部80が受け部60の上方に重ねられた状態が自然に形成される。したがって、開脚した後に直ちに椅子として機能させることができる。また、座部80を回動させて後方へ退避させれば、トイレとして機能させることができる。
≪保持部75の作用≫
次に、保持部75の作用について詳しく説明する。図13は、ポータブルトイレ10を折り畳む際の保持部75の座部80に対する位置の推移を示す図である。なお、図13では、ポータブルトイレ10を右側方から見ている。図13中、(a)は開脚状態、(b)及び(c)は開脚状態から閉脚状態への途中の状態、(d)は閉脚状態をそれぞれ示す。
保持部75は、脚体部11が開脚状態から閉脚状態になることに伴い、座部80に対する相対位置が、座部80の後方下方の非保持位置から、座部80の座面の上方の保持位置に移動する。具体的には、図13(a)に示すように、開脚状態では、保持部75の自重により、回転体77が座部80の座面よりも下方に位置している。この位置が、保持部75の非保持位置となっている。
この状態から、トイレ本体部40が上方に回動されて、脚体部11が開脚状態から閉脚状態に姿勢変更する過程では、図13(b)に示すように、回転体77が座部80の後端部に当接し、そのまま座部80の後方から座面に乗り上げ、その後、図13(c)に示すように、線条体76の回動が規制された状態で、回転体77が座部80の座面に沿って、座面に接触した状態のまま、かつ前方に回転しながら移動する。これにより、折り畳みの動作中では、座部80が便座70の上方を覆った状態が保持される。
そして、トイレ本体部40が縦向きの状態となり、折り畳み状態となると、回転体77が座面に接触したまま、より具体的には、回転体77が座面を上から抑えた状態で、座部80の座面の上方の所定位置に留まる(図13(d)参照)。本実施形態では、回転体77が座部80の中間位置、より具体的には前部82側になる位置が、保持部75の保持位置となっている。こうした保持部75による座面上方からの抑えにより、折り畳み後に座部80が後方に展開してしまうのが抑制され、バケツ50やトレイ63、収容部62が後方に飛び出ることが抑制される。なお、回転体77が、閉脚状態で座部80の座面に接触する接触部に相当する。
≪脚体部11の下端部の構成≫
次に、脚体部11の下端部の構成について詳しく説明する。図14は、開脚状態での脚体部11の下端部の右側面図であり、図15は、脚ゴム30の斜視図である。図14に示すように、前脚部12及び後脚部13のそれぞれの下面には、第1面29aと、第1面29aに対し交差する角度をなす第2面29bとが設けられている。第1面29aと第2面29bとは、前後方向に隣接して配置されている。第2面29bは、第1面29aに対して前後方向の外側に配置されている。
第1面29a及び第2面29bの下面には、脚ゴム30が取り付けられている。脚ゴム30は、前脚部12及び後脚部13のそれぞれの下面に対し、第1面29aと第2面29bとに跨って設けられている。本実施形態では、前脚部12及び後脚部13のうち、高さ調整部24,26の下面に脚ゴム30が取り付けられている。
脚ゴム30は、長尺板状のゴム部材である。脚ゴム30の一方の板面は、脚体部11の各脚の第1面29a及び第2面29bに当接される当接面31であり、他方の板面は、当接面31が第1面29a及び第2面29bに当接された状態で床面に接地される接地面39となっている。接地面39は、脚ゴム30が前脚部12及び後脚部13の下面に取り付けられた状態で、第1面29aと平行な第1接地面39aと、第2面29bと平行な第2接地面39bとを有している。第1接地面39aは、脚体部11の第1面29aが床面に対向配置されたときに床面に接地され、第2接地面39bは、第2面29bが床面に対向配置されたときに床面に接地される。第1接地面39aと第2接地面39bとは隣接して配置されており、第1接地面39aは、第2接地面39bよりも面積が大きくなっている。
第1接地面39aには、第2接地面39b側の端部に、第1接地面39aから突出する突部32が形成されている。本実施形態では、図15に示すように、突部32は、第2接地面39側の端部において、第1接地面39aと第2接地面39bとの境界の長さ方向に沿って延びる突条部となっている。突条部は、第1接地面39aと第2接地面39bとの境界の長さ方向の全域に亘って延びている。
図15に示すように、脚ゴム30の接地面39には、第1接地面39aと第2接地面39bとの境界に、当該境界の長さ方向へ延びる溝部33が形成されている。溝部33は、第1接地面39aと第2接地面39bとの境界の長さ方向の全域に亘って形成されており、その溝部33に隣接して突部32が第1接地面39aに配置されている。脚ゴム30は、当接面31が内側になるように溝部33で折り曲げられて、第1面29a及び第2面29bに取り付けられる。こうした溝部33が板面に形成されていることにより、第1接地面39aと第2接地面39bとの境界で脚ゴム30を容易に折り曲げて、第1面29a及び第2面29bに取り付け可能になっている。
接地面39には、厚み方向に貫通する貫通孔34が形成されている。本実施形態では、貫通孔34は、第1接地面39a及び第2接地面39bのそれぞれに1個ずつ設けられている。脚体部11の第1面29a及び第2面29bには、下方に突出する突出部(図示略)がそれぞれ形成されている。突出部の高さは、脚ゴム30の本体35の厚みよりも小さくなっている。この突出部に対して、脚ゴム30の貫通孔34を嵌め込むことにより、前脚部12及び後脚部13の下面に脚ゴム30を着脱可能になっている。
≪脚ゴム30の作用≫
次に、脚ゴム30を脚体部11の各脚に取り付けたときの作用について説明する。
図14に示すように、ポータブルトイレ10には、第1接地面39aの前後方向の外側縁部に突部32が設けられている。そのため、ポータブルトイレ10が接地されていない状態で、開脚状態で側方視したとき、第1接地面39aにおける前後方向の外側縁部38Aの下端が、内側縁部38Bの下端よりも下方に位置している。より具体的には、脚体部11の前後両方の脚で、第1接地面39aにおける前後方向の外側縁部38Aの下端が、内側縁部38Bの下端よりも下方に位置している。なお、図14中の二点鎖線Lは、外側縁部38Aの下端の高さ位置を表している。
上記のように、外側縁部38Aの下端が、内側縁部38Bの下端よりも下方に位置している場合には、開脚した状態では、第1接地面39aのうち前後方向の外側縁部38Aが接地されやすくなる。また、第1接地面39aの前後方向の外側縁部38Aが接地されやすいことによって、前後方向における接地部分の離間距離をできるだけ長くできる。よって、ポータブルトイレ10の重心を低い位置に定めることができ、開脚状態での安定性の向上に寄与する。また、製品ばらつき等に起因して脚のがたつきが生じる場合にも、第1接地面39aのうち前後方向の外側縁部38Aを優先的に接地させることができる。その結果、開脚状態でのがたつきを抑制しつつ、安定性の向上を図ることができる。
図16は、閉脚状態から開脚状態に姿勢変更するときの脚体部11の下面の接地状態の推移を示す拡大側面図である。ここでは、後脚部13について説明しているが、前脚部12についても同様である。なお、図16中、(a)は閉脚状態、(b)は閉脚状態から開脚状態に姿勢変更する途中の状態、(c)は閉脚状態をそれぞれ示している。
閉脚状態では、図16(a)に示すように、第2接地面39bが床面Gに接地された状態となる。この状態から開脚状態とするときには、第2接地面39bとの接地状態から、第1接地面39aとの接地状態になる。ポータブルトイレ10においては、第1接地面39aの前後方向の外側縁部38Aに突部32が設けられているため、第1接地面39aが非接地状態から接地状態になるときには、第1接地面39aの外側縁部38Aが最初に接地されやすい(図16(b)参照)。また、開脚状態において使用者が着座している状態では、図16(c)に示すように、ゴムの弾性変形によって突部32が潰れて、第1接地面39aが面で受けた状態で安定する。ただし、ポータブルトイレ10の自重によって突部32が潰れて第1接地面39aが面で受けた状態になってもよい。
以上詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
ポータブルトイレ10には、バケツ50を受け部60により受けている状態でのトイレ本体部40の回動経路が確保されているため、バケツ50を備えた状態で折り畳むことができる。また、閉脚状態では前脚部12と後脚部13とで自立可能であることから、折り畳み状態において、バケツ50や収容部62を備えたままの状態でも安定して自立することができる。
開脚状態においてトイレ本体部40の横向きの状態が保持されるようにトイレ本体部40を支持する本体支持部67をポータブルトイレ10に設けた。これにより、トイレ本体部40を回動可能にしつつ、開脚状態としたときには、トイレ本体部40の横向きの状態を安定に維持することができる。また、トイレ使用時に使用者によってトイレ本体部40に上方から力が加えられた場合にも、本体支持部67によって下方から支持されることにより、トイレ本体部40の横向きの姿勢を安定に保持することができる。特に本実施形態では、本体支持部67を前脚部12の内側板面に設けたことから、本体フレーム61をより前方位置で支持することができる。これにより、開脚状態においてトイレ本体部40をより安定な横向き状態にしておくことができる。また、本体支持部67を前脚部12の内側板面に設けたことから、本体支持部67が外から目立ちにくく外観も良好である。
所定の開脚状態において前脚部12の下部と後脚部13の下部とがそれ以上離間しないように規制する規制部として、連結アーム28及び脚当接部18を設けた。こうした規制部を有することにより、脚体部11の最大開脚位置を定めることができる。これにより、使用者が着座してトイレ本体部40に力が掛かった場合にも、ポータブルトイレ10を所定の開脚状態で安定に維持することができる。
特に、脚当接部18は、後脚部13の内側板面に設けられており、前脚部12の後面が当接面18aに当接することによって、前脚部12の下部と後脚部13の下部とがそれ以上離間しないように規制するため、所定の開脚状態から更に開脚することをより確実に規制することができ、安全性の面でも好ましい。また、後脚部13の板面に固定したため、安定性及び耐久性にも優れている。さらに、脚当接部18を後脚部13の内側板面に設けたことから、外から目立ちにくく外観も良好である。
折り畳み時には、トイレ本体部40の少なくとも一部が背もたれ部90の下方の空間部91に入り込むようにした。この場合、折り畳み状態では、背もたれ部90の下方の空間部91にトイレ本体部40の少なくとも一部が入り込むため、折り畳んだ状態で前後方向の厚みをできるだけ薄くすることができる。これにより、折り畳んだ状態ではよりコンパクトにすることができる。
閉脚状態で受け部60がバケツ50を受けた状態を保持する保持部75をポータブルトイレ10に設けた。これにより、折り畳み状態としたときにバケツ50が後方に飛び出るのを抑制することができる。また、開脚状態から閉脚状態になることに伴い、保持部75が非保持位置から保持位置に移動するため、保持部75の上記機能を折り畳みの動作に連動して発揮させることができる。これにより、使用者がわざわざ保持部75を操作しなくても、折り畳み状態でバケツ50が後方に飛び出ないようにすることができる。
ポータブルトイレ10に座部80を設けたため、トイレとして機能させるだけでなく、椅子としても機能させることができる。また、座部80を回動させて後方へ退避させれば、直ちにトイレとして機能させることができる。また、保持部75は、閉脚状態において座部80を便座70と重ねられた状態で保持するため、便座70やバケツ50の開口部53が露出することなく、清潔感のある折り畳み状態とすることができる。
保持部75は、少なくとも閉脚状態において座部80の座面に接触する接触部として回転体77を有し、開脚状態から閉脚状態に姿勢変更する過程において、回転体77が座面に沿って移動することにより座部80を便座70と重ねられた状態で保持する。この場合、折り畳み状態となった後だけでなく、折り畳み状態になるまでの動作中も、座部80が便座70を覆った状態を保持することができる。これにより、トイレ使用時以外は終始、便座70やバケツ50の開口部53を座部80で覆っておくことができ、清潔感のある状態を保持することができる。
また、保持部75に回転体77を設け、回転体77を接触部として機能させることから、開脚状態から閉脚状態に姿勢変更する過程において、接触部が座面に沿ってスムーズに移動することができる。これにより、保持部75が座部80の姿勢を保持する状態をスムーズに形成することができる。
保持部75を線条体76と回転体77とを有する構成とし、線条体76の回動を所定の回動範囲で規制するため、保持部75が非保持状態から保持状態に移動する過程において、線条体76の回動が許容されている初期では、回転体77が座面上にスムーズに乗り上げるのを可能にしつつ、回転体77が座面上に乗り上げた後では、線条体76の回動を規制することにより、回転体77が座部80の座面を上から抑えた状態を維持させるようにすることができる。
各前脚部12を連結する連結部23を前脚部12の下端よりも上に設け、かつ開脚状態において連結部23の板面のうち前面23aは斜め下方に向いている。こうした構成とすることで、脚体部11の強度を高めつつ、前脚部12の下部に、より広い空間を確保することができる。これにより、トイレの使用者や介助者がトイレ前方から後ろ方向に足を踏み入れやすくすることができる。
また、開脚状態では、連結部23の板面のうち前面23aが斜め下方に向いた状態とすることで、連結部23の板面のうち後面23bが斜め上方を向くため、トイレ本体部40の設置領域を確保したり、トイレ本体部40の回動経路を確保しやすくなったりすることにも寄与することができる。
収容部62の側壁部62bを、底部62aに向かうにつれて内側に傾斜した形状としたため、トイレ本体部40を上方へ回動したときに、トイレ本体部40が連結部23に接触しにくくなる。よって、トイレ本体部40の回動経路の確保に寄与することができる。
脚体部11は、各脚の下端に、開脚状態での接地面である第1接地面39aと、閉脚状態での接地面である第2接地面39bとを有する。この場合、トイレ使用時には、各脚の第1接地面39aが床面に接地されるため、使用者がトイレ本体部40に体重を掛けた場合の安定性を確保できる。また、折り畳み状態では、各脚の第2接地面39bが床面に接地されるため、前後左右の脚で安定して自立することができる。したがって、開脚状態及び閉脚状態の双方で安定性の高いポータブルトイレとすることができる。
開脚状態で側面視したときに、第1接地面39aにおける前後方向の外側縁部38Aの下端が、内側縁部38Bの下端よりも下方に位置している。この場合、開脚状態では、第1接地面39aの少なくとも外側縁部38Aが接地された状態を形成することができ、重心をより低い位置に定めることができる。これにより、開脚状態での安定性を確保することができる。
特に、前脚部12及び後脚部13の開閉方向について、第1接地面39aの外側縁部の下端が内側縁部の下端よりも下方に位置している構成としたことから、脚の動きが許容されている方向に対する安定性を確保できる点で好適である。
製品ばらつき等による脚体部11のがたつきは、第1接地面39aを広くすることによって大きくなりやすい。この点、第1接地面39aにおける前後方向の外側縁部38Aの下端を、内側縁部38Bの下端よりも下方に位置するものとすることにより、重心をより低い位置に定めることができる。これにより、脚体部11のがたつきを抑えることができる。
第2接地面39bを第1接地面39aよりも前後方向の外側に設けたため、閉脚時により安定して自立させることができる。また、第1接地面39aは、脚体部11が接地されていない状態で側面視して、外側縁部38Aの下端が、内側縁部38Bの下端よりも下方に位置しているため、開脚時には重心を低い位置に定めることができ、使用者が着座したときの安定性を確保することができる。つまり、開脚時の安定性と閉脚時の安定性とを両立させることができる。
脚体部11は、各脚の下端に板状の脚ゴム30を有し、脚ゴム30の下面によって第1接地面39a及び第2接地面39bが形成されている。別部材である脚ゴム30を用いることにより、第1接地面39aにおける前後方向の外側縁部38Aの下端が、内側縁部38Bの下端よりも下方に位置する状態を容易に形成することができる。また、ゴム部材とすることにより、安定性確保の機能と滑り止め機能との両者を有するものとすることができる。
脚ゴム30は、第1接地面39aの前後方向の外側縁部38Aに、下方に突出する突部32を有する。ゴムによって形成された突部32を第1接地面39aの前後方向の外側縁部38Aに設けることで、開脚するときに第1接地面39aの外側縁部38Aを最初に床面に接地させやすくすることができる。これにより、閉脚状態から開脚状態への過程のできるだけ早い段階から安定性を確保することができる。また、開脚して第1接地面39aに上から力が掛かっている状態では、ゴムが弾性変形するため、突部32を設けた場合にも、がたつきの発生を抑えながらトイレ本体部40を脚体部11で支持することができる。
ポータブルトイレ10の折り畳み及び開脚の動作時には、接地面39が床面に擦られたり当接されたりしやすく、経年に伴い突部32が小さくなることが考えられる。この点、突部32を、第1接地面39aの前後方向の外側縁部38Aにおいて左右方向に延びる突条部としたため、強度や耐久性の点で優れている。よって、脚ゴム30による開脚状態での安定性確保の機能を長期間維持することができる。
脚ゴム30の下面のうち第1接地面39aと第2接地面39bとの境界に溝部33を設けたため、脚ゴム30を第1接地面39aと第2接地面39bとの境界位置で曲げやすく、前脚部12及び後脚部13の下面の形状に沿うようにして簡単に取り付けることができる。
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の内容に限定されず、例えば以下のように構成してもよい。
・上記実施形態では、第1面29aに平行な第1当接面39aに対し、当該第1当接面39aの前後方向の外側縁部38Aに突部32を設けることにより、開脚状態で側面視したときに、第1接地面39aにおける前後方向の外側縁部38Aの下端が、内側縁部38Bの下端よりも下方に位置している状態としたが、当該状態を実現する構成はこれ以外であってもよい。例えば、脚ゴム30に突部32を設けずに、外側縁部38A側が内縁端部38B側よりも厚くなるように脚ゴム30の厚みを変えてもよいし、あるいは、脚ゴム30の厚みを変えずに、各脚の第1面29aを、開脚状態で前後方向の外側が内側より地面に近くなるように傾斜させてもよい。また、脚ゴム30の厚みと各脚の第1面29aとの両方を上記のようにすることにより、外側縁部38Aの下端が内側縁部38Bの下端よりも下方に位置するようにしてもよい。また、脚ゴム30に突部32を設けるとともに、各脚の第1面29aを、開脚状態で前後方向の外側が内側より地面に近くなるように傾斜させる構成としてもよいし、当該構成に対して更に、外側縁部38A側が内縁端部38B側よりも厚くなるように脚ゴム30の厚みを変える構成を採用してもよい。
・上記実施形態では、突部32を、第1接地面39aと第2接地面39bとの境界の長さ方向へ延びる突条部としたが、突部32の構成はこれに限定されない。例えば、第1接地面39aと第2接地面39bとの境界の長さ方向に沿って配置された複数の突起部としもよい。また、第1接地面39aと第2接地面39bとの境界の長さ方向へ延びる突条部を、前後方向に並べて複数設けてもよい。あるいは、下面全体に突起部や突条部が存在し、全体として面接触しない構成としてもよい。この場合、突起部及び突条部の下方への突出量を、少なくとも第1接地面39aの外側縁部38Aで高くすることによって、外側縁部38Aの下端が内側縁部38Bの下端よりも下方に位置するようにしてもよい。こうした構成によれば、滑り止め機能を十分に発揮させるようにしつつ、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
・上記実施形態では、開脚状態で側面視したときに、第1接地面39aにおける前後方向の外側縁部38Aの下端が、内側縁部38Bの下端よりも下方に位置している状態としたが、図17に示すように、開脚状態で正面視したときに、第1接地面39aにおける左右方向の外側縁部37Aの下端が、内側縁部37Bの下端よりも下方に位置している状態としてもよい。この場合、開脚状態では、第1接地面39aのうち左右方向の外側縁部37Aを接地させやすくすることができる。これにより、左右方向における接地部分の離間距離をできるだけ長くすることができ、ポータブルトイレの重心を低い位置に定めることができる。その結果、開脚状態での安定性を確保することができる。
・開脚状態で側面視したときに、第1接地面39aにおける前後方向の外側縁部38Aの下端が、内側縁部38Bの下端よりも下方に位置し、かつ、開脚状態で正面視したときに、第1接地面39aにおける左右方向の外側縁部37Aの下端が、内側縁部37Bの下端よりも下方に位置している状態としてもよい。
・上記実施形態では、溝部33を、脚ゴム30の接地面39に形成したが、第1面29a及び第2面29bに当接される当接面31に形成してもよい。また、接地面39と当接面31との両方に形成してもよい。
・脚ゴム30を設けずに、各脚の第1面29aを、開脚状態で前後方向の外側が内側より地面に近くなるように傾斜させることによって、外側縁部38Aの下端が内側縁部38Bの下端よりも下方に位置する状態としてもよい。この場合、第1面29aが第1接地面39a、第2面29bが第2接地面39bとなる。
・上記実施形態では、第1接地面39aを前後方向の内側に配置し、第2接地面39bを前後方向の外側に配置したが、逆の配置であってもよい。つまり、第1接地面39aを前後方向の外側に配置し、第2接地面39bを前後方向の内側に配置してもよい。また、第1接地面39aと第2接地面39bとの面積比は上記実施形態のものに限定されず、第1接地面39aと第2接地面39bとを同じ大きさとしてもよいし、あるいは第2接地面39bを第1接地面39aよりも大きくしてもよい。
・上記実施形態では、トイレ本体部40の回動によって、閉脚状態では、受け部60がバケツ50の開口部53を後方に向けた状態でバケツ50を受けるようにトイレ本体部40が縦向きに配置される構成としたが、ポータブルトイレ10の折り畳み状態はこれに限定されない。例えば、トイレ本体部40の縦向きの配置では、バケツ50の開口部53が前方を向けた状態になるように、トイレ本体部40を回動させることによって折り畳む構成としてもよい。