JP6642800B2 - 誘電体薄膜、誘電体薄膜の製造方法、及び薄膜コンデンサ - Google Patents

誘電体薄膜、誘電体薄膜の製造方法、及び薄膜コンデンサ Download PDF

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Description

本発明は、誘電体薄膜、誘電体薄膜の製造方法、及び薄膜コンデンサに関し、より詳しくは薄膜コンデンサに使用される誘電体薄膜とその製造方法、及び該誘電体薄膜を使用した薄膜コンデンサに関する。
一般式ABOで表されるペロブスカイト型結晶構造のチタン酸バリウム系化合物は、高い誘電率を有することから、代表的な誘電体材料として広く知られている。そして、従来より、この種のチタン酸バリウム系化合物を使用したセラミックコンデンサも盛んに研究され、開発されている。
例えば、特許文献1には、主成分が、一般式{(Ba1-x-yCaxSny(Ti1-zZrz)O}で表されるペロブスカイト型化合物からなり、前記x、y、z、及びmが、それぞれ0.02≦x≦0.20、0.02≦y≦0.20、0≦z≦0.05、0.99≦m≦1.1を満足するように形成された誘電体セラミックが提案されている。
この特許文献1では、焼結法を使用して誘電体セラミックを作製しており、Caの配合モル比xを0.02、Snの配合モル比yを0.05とし、還元雰囲気下で焼成することにより、セラミック層(誘電体膜)の厚みを5μmに薄層化しても1600〜1700程度の高比誘電率を有する積層セラミックコンデンサを得ている。
また、特許文献1では、Aサイト中のSnの配合モル比を異ならせた場合についても誘電特性が記載されている。すなわち、特許文献1では、セラミック層の厚みが0.8mmの場合について、Aサイト中のSnの配合モル比を0.02としたときは、比誘電率は1300であるが、Snの配合モル比が増加すると比誘電率は略線形的に低下し、Snの配合モル比が0.30になると、比誘電率は700に低下することが記載されている。
一方、近年では、コンデンサの小型化・高性能化の要請から誘電体膜の更なる薄膜化が要請されており、誘電体膜を数100ナノレベルに薄膜化した薄膜コンデンサの研究・開発も試みられている。
例えば、特許文献2では、化学式ABOで表されるペロブスカイト型構造を有する(BaSrSn)TiO(0≦x<1、0≦y<1、0<z≦1、x+y+z=1)誘電体を製造するための方法であって、A原子のターゲットをSnOまたはSnOと、SrOおよびBaOからなる群から選択される少なくとも1種とをターゲットとし、B原子のターゲットをTiOとして、パルスレーザー堆積法(以下、「PLD法」という。)によりA原子のターゲットとB原子のターゲットを、ペロブスカイト型構造の単位格子の半分になるように交互に成膜するようにした誘電体の製造方法が提案されている。
特許文献2は、環境負荷の大きい鉛系やビスマス系の代替材料としてチタン酸スズ系化合物に着目している。そして、この特許文献2では、PLD法を使用し、レーザ光をターゲット粒子に照射し、例えばSnO/SrO/BaOとTiOとを交互に基板上にエピタキシャル成長させ、膜厚が約120nm(BaSrSn)TiO(0≦x<1、0≦y<1、0<z≦1、x+y+z=1)からなる三次元傾斜体積薄膜を作製し、Ba:Sr:Sn=0.25:0.25:0.5のときに1200の誘電率を得ている。
特許第5131595号公報(請求項1、段落[0082]、[0097]、表1、表2等) 特開2005−259393号公報(請求項2、段落[0011]、[0012]、[0026]、[0036]等)
コンデンサのより一層の小型化・高性能化の要請に応えるためには、膜厚を例えば200nm以下に薄膜化しても高比誘電率を有する誘電体薄膜の実現が望まれる。
しかしながら、特許文献1は、焼結法で作製しているため薄膜化には生産技術的に限界があり、200nm以下の誘電体薄膜を得るのは困難である。
また、特許文献1では、Snの含有量を増加させると比誘電率は略線形的に低下しているが、セラミック材料では結晶粒子の微細構造や製造方法が異なると、得られる特性を予測するのは困難である。したがって、たとえ膜厚を200nm以下に薄膜化できたとしても、特許文献1からは誘電特性を予測できず、チタン酸バリウム系化合物を薄膜材料に使用した場合の誘電特性は不明である。
一方、特許文献2では、Ba:Sr:Sn=0.25:0.25:0.5としたときに誘電率が1200の三次元傾斜体積薄膜を得ているものの、他の組成比については誘電特性が記載されておらず、特に、Aサイト中のSnの配合モル比を変化させた場合、誘電特性に及ぼす影響については記載されていない。
しかも、特許文献2では、PLD法を使用して成膜原料を基板上にエピタキシャル成長させていることから、原理的に基板の種類や成長方位が制約される上に、A原子(例えば、SnO/SrO/BaO)をターゲットとしたA層とB原子(例えば、TiO)をターゲットとしたB層とを交互に半格子ずつ積層しており、しかも、このような積層工程を多数回(例えば、300回)繰り返さなければならず、製造過程が煩雑であり実用性にも劣る。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、薄膜化しても実用的価値を有する所望の誘電特性を備えた誘電体薄膜、この誘電体薄膜を容易に作製することができる誘電体薄膜の製造方法、及びこの誘電体薄膜を使用した薄膜コンデンサを提供することを目的とする。
チタン酸バリウム系化合物は高比誘電率を有することから、誘電体薄膜の主原料として使用できれば、チタン酸バリウム系化合物の利用範囲も拡がり好都合である。
しかしながら、チタン酸バリウム系化合物は、膜厚を数100ナノレベルまで薄膜化すると、結晶粒子の微粒化に伴って結晶粒界の占める容量が増加するため、比誘電率の低下が顕著になる。
そこで、本発明者らは、チタン酸バリウム系化合物の薄膜化について鋭意研究したところ、チタン酸バリウム系化合物とスズ化合物の双方をターゲット物質とし、共スパッタリング処理(Co-Sputtering)を施すことにより、煩雑な製造工程を要することなく膜厚が200nm以下の誘電体薄膜を容易に得ることができ、しかもAサイト中のSnの配合モル比を0.01〜0.3とすることにより、特許文献1のような焼結法で作製した誘電体セラミックとは異なる誘電特性を得ることができ、実用的価値のある良好な比誘電率を有する誘電体薄膜の実現が可能であるという知見を得た。
本発明はこのような知見に基づきなされたものであって、本発明に係る誘電体薄膜は、主成分が、一般式{(Ba1-x-y SnxCay)TiO}で表されると共に、結晶粒子と結晶粒界とを備えた多結晶膜からなり、前記x及びyが、それぞれ0.01≦x≦0.30、及び0≦y≦0.20を満足し、かつ、膜厚が200nm以下であることを特徴としている。
また、本発明の誘電体薄膜は、前記結晶粒子が配向しているのが好ましい。
さらに、本発明の誘電体薄膜は、前記結晶粒子が、柱状乃至略柱状に形成されているのが好ましく、この場合、前記結晶粒子は、断面積径が円換算で直径30〜100nmであるのが好ましい。
また、本発明に係る誘電体薄膜の製造方法は、(Ba1-yCa)TiO(0≦y≦0.2)を主成分とする第1のターゲット物質と、Sn化合物を主成分とする第2のターゲット物質と、基板とを成膜室に配し、減圧下、電圧を印加しながら所定のガスを前記成膜室に供給して共スパッタリング処理を施し、主成分が一般式{(Ba1-x-y SnCa)TiO}(ただし、0.01≦x≦0.30、0≦y≦0.2)で表される膜厚が200nm以下の多結晶膜を前記基板上に成膜することを特徴としている。
また、本発明の誘電体薄膜の製造方法は、前記多結晶膜が配向膜であるのが好ましい。
本発明に係る薄膜コンデンサは、上記いずれかに記載の誘電体薄膜を備えていることを特徴としている。
また、本発明の薄膜コンデンサは、前記誘電体薄膜が、基板上に形成されているのが好ましい。
さらに、本発明の薄膜コンデンサは、前記誘電体薄膜の両主面に導電膜が形成されているのが好ましい。
本発明の誘電体薄膜によれば、主成分が、一般式{(Ba1-x-ySnCa)TiO}で表されると共に、結晶粒子と結晶粒界とを備えた多結晶膜からなり、前記x及びyが、それぞれ0.01≦x≦0.30、及び0≦y≦0.20を満足し、かつ、厚みが200nm以下であるので、薄膜化することにより特許文献1のような焼結法で作製したセラミック層とは異なる誘電特性を得ることができ、実用的価値のある良好な比誘電率を有する誘電体薄膜を得ることができる。
また、本発明の誘電体薄膜の製造方法によれば、上述した共スパッタリング法を使用して誘電体薄膜を製造しているので、エピタキシャル成長のように基板の種類や結晶方位に依存することもなく、また、製造工程の煩雑化を招くこともなく、所望の誘電特性を有する誘電体薄膜を容易に製造することができる。
また、本発明の薄膜コンデンサによれば、上記いずれかに記載の誘電体薄膜を備えているので、チタン酸バリウム系化合物を原材料に使用しても大規模な演算回路や大電流が流れる電源回路の管理に適した実用的価値のある良好な誘電特性を有する薄膜コンデンサを得ることができる。
本発明に係る薄膜コンデンサの一実施の形態を模式的に示す断面図である。 図1のA部拡大断面図である。 本発明に係る誘電体薄膜の製造方法に使用される薄膜形成装置の一例を模式的に示した内部構造図である。 実施例におけるSnの配合モル比xと比誘電率εrとの関係を示す図である。 試料番号17のSEM画像である。 試料番号6のX線回折プロファイルである。
次に、本発明の実施の形態を詳説する。
図1は、本発明に係る薄膜コンデンサの一実施の形態を模式的に示す断面図である。
この薄膜コンデンサは、基板1上に下部電極2が形成されると共に、該下部電極2の表面に誘電体薄膜3が形成され、かつ該誘電体薄膜3の表面に上部電極4が形成されている。
図2は、図1のA部拡大断面図である。
すなわち、誘電体薄膜3は、結晶粒子5と結晶粒界6とを備えており、誘電体薄膜3の膜厚tは200nm以下に形成されている。
誘電体薄膜3は、具体的には、主成分が下記一般式(1)で表されるチタン酸バリウム系化合物で形成されている。
(Ba1-x-ySnCa)TiO …(1)
ここで、x及びyは、下記数式(2)、(3)を満足している。
0.01≦x≦0.30…(2)
0≦y≦0.2…(3)
すなわち、本誘電体薄膜3は、主成分が、ペロブスカイト型結晶構造(一般式ABO)を有するBaTiO系化合物で形成されると共に、Aサイト中のBaの一部が所定モル範囲内でSn及びCaと置換されている。
以下、Aサイト中のSn及びCaの配合モル比x、yを上述の範囲に規定した理由を詳述する。
(1)Snの配合モル比x
Aサイト中のBaの一部を2価のSnと置換することにより、結晶構造が大きく歪み、これにより膜厚を200nm以下に薄膜化しても比誘電率の高い誘電体薄膜3を得ることができる。
すなわち、Baの一部を2価のSnで置換する場合、Ba欠損にSnが配位することになるが、Baのイオン半径が0.136nmであるのに対し、2価のSnのイオン半径は0.093nmであり、Snのイオン半径はBaのイオン半径よりも小さいことから、Ba欠損にSnが配位すると結晶構造が歪み、格子定数が小さくなる。そしてその結果、局所的に分極域を形成し、斯かる分極域が結晶粒子5全体の分極増加に寄与することから比誘電率が増加し、誘電特性が向上する。
そして、そのためにはAサイト中のSnの配合モル比xは、少なくとも0.01以上は必要である。一方、Snの配合モル比xが0.30を超えると、固溶限界を超えてSnが結晶粒界6に偏析し、却って比誘電率が低下することから、好ましくない。
そこで、本実施の形態では、Snの配合モル比xを0.01≦x≦0.30としている。
(2)Caの配合モル比y
上述したようにBaの一部をモル比換算で0.01〜0.30の範囲でSnと置換することにより、誘電特性を向上させることができる。そして、Caはイオン半径が0.112nmであり、Baのイオン半径よりも小さいことから、Baの一部をCaで置換することにより、結晶格子の格子定数がより小さくなり、結晶構造の安定性が向上する。
しかしながら、Caの配合モル比yが0.20を超えると、固溶限界を超えてCaが結晶粒界6に偏析し、誘電特性の低下を招くことから好ましくない。
そこで、本実施の形態では、Caの配合モル比yを0≦x≦0.20としている。
そして、結晶粒子5は、上記図2に示すように、柱状乃至略柱状に形成されているのが好ましい。この場合、結晶粒子5の幅寸法dは特に限定されるものではないが、断面積径が円換算で直径30〜100nmが好ましく、幅寸法dと厚みtとの比d/tは1/1が好ましい。
さらに、結晶粒子5は、結晶軸のc軸方向に配向しているのが好ましく、これにより誘電特性の一層の向上が可能となる。
尚、上記誘電体薄膜3の形成方法としては、後述する共スパッタリング法を使用するのが好ましい。
基板1を形成する基板材料としては、特に限定されるものではなく、Si、サファイア等を使用することができるが、通常はSiを好んで使用することができ、またSi等の素材上に酸化チタン等の薄膜を形成したものを基板1として使用するのも好ましい。
また、上部電極4及び下部電極2に使用される電極材料も特に限定されるものではなく、例えばPt、SrRuO等を使用することができる。
次に、誘電体薄膜3を含む上記薄膜コンデンサの製造方法を詳述する。
図3は、本薄膜コンデンサの製造に使用されるRFマグネトロンスパッタリング装置の概略を示す内部構造図である。
このRFマグネトロンスパッタリング装置は、RF周波数帯域(例えば、13.56MHz)の高周波電力を出力する一対の高周波電源7a、7bが成膜室8の外部に設けられている。
成膜室8は、永久磁石が内蔵された第1及び第2のカソード9a、9bが配設されると共に、第1のカソード9aには第1のターゲット物質としての(Ba1-yCa)TiO(0≦y≦0.2)材10aが載置され、第2のカソード9bには第2のターゲット物質としてのSnO材10bが載置され、第1及び第2のカソード9a、9bは高周波電源7a、7bに接続されている。また、成膜室8は、回転軸11aを備えかつヒータを内蔵した基板ホルダー11が、前記第1及び第2のカソード9a、9bと略対向状に配され、下部電極2を形成した基板1が、基板ホルダー11に保持されるように構成されている。尚、下部電極2は、別途、Pt等の電極材料をターゲットとして基板1にスパッタリング処理を施すことにより形成される。
また、成膜室8の側壁にはAr等の不活性ガスやO等の反応性ガスが供給されるガス供給口12及び真空ポンプ(不図示)に接続された排気口13が設けられている。
このように構成されたRFマグネトロンスパッタリング装置では、真空ポンプを駆動させて成膜室8内を所定圧力(例えば、0.4〜0.8Pa)に減圧すると共に、カソード9a、9bと基板ホルダー11との間に電圧を印加して高周波電源7a、7bからの電力(例えば、50〜300W)を第1及び第2のカソード9a、9bに供給し、さらに、基板ホルダー11を介して基板1を所定温度(例えば、500〜600℃)に加熱する。
次いで、不活性ガスと反応性ガスとの比率が所定比率(例えば、不活性ガス/反応性ガス=9/1)に制御されたガスをガス供給口12から成膜室8に供給すると共に、回転軸10aを矢印B方向に回転させながら、共スパッタリング処理を行い、基板1上に誘電体薄膜3を成膜する。
すなわち、高周波電源7a、7bによりカソード9a、9bに電圧が印加されると、該カソード9a、9bに内蔵された永久磁石により磁界が発生し、電圧印加によりプラズマ化された不活性ガスイオンが加速されて(Ba1-yCa)TiO材10a及びSnO材10bの表面に衝突する。そして、(Ba1-yCa)TiO材10a及びSnO材10b中の金属原子(Ba、Ca、Ti、Sn)は、(Ba1-yCa)TiO材10a及びSnO材10bから飛び出し、基板1に吸引される。この際、Baのイオン半径は0.136nmでありTiのイオン半径は0.0605nmであり、BaはTiに比べてイオン半径が大きく、このためBaは不活性ガスと衝突し易い。すなわち、BaはTiに比べて基板1に到達し難く、このため基板1上に成膜される結晶粒子にはBa欠損が生じ、斯かるBa欠損にSnO材10bからのSnが配位する。しかも、Snは、上述したようにBaよりもイオン半径が小さいことから、結晶格子に歪みが生じて格子定数が小さくなり、局所的に分極域が増加する結果、分極が増加し、これにより誘電率も増加し、誘電特性を向上させることが可能となる。また、(Ba1-yCa)TiO材10aにCaを含む場合は格子定数が更に小さくなることから、結晶構造の安定性を向上させることができる。
尚、誘電体薄膜3中のSnやCaの配合モル比x、yは、成膜室8の真空度や第1及び第2のカソード10a、10bの印加電圧、成膜室8に供給されるガス流量などのスパッタ条件を調整することにより制御することができる。
そして、このようにして誘電体薄膜3を形成した後、スパッタリング処理を施し、誘電体薄膜3の表面に上部電極4を形成し、これにより薄膜コンデンサが作製される。
このように本製造方法によれば、(Ba1-yCa)TiO(0≦y≦0.2)材10aと、SnO材10bと、基板1とを成膜室8に配し、減圧下、電圧を印加しながら所定のガスを前記成膜室8に供給して共スパッタリング処理を施しているので、BaとTiとのイオン半径の相違から基板1上に成膜される結晶粒子にはBa欠損が生じ、該Ba欠損にSnO材10bからのSnが配位する。そして、これによりエピタキシャル成長のように基板の種類や結晶方位に依存することもなく、また、製造工程の煩雑化を招くこともなく、主成分が一般式{(Ba1-x-y SnCa)TiO}(ただし、0.01≦x≦0.30、0≦y≦0.2)で表される膜厚が200nm以下の多結晶膜からなる所望の誘電特性を有する誘電体薄膜を容易に製造することができる。
そして、上述したようにBa欠損にSnが配位する結果、結晶粒子5の結晶格子が歪み、比誘電率が増加し、誘電特性を向上させることができる。すなわち、チタン酸バリウム系化合物を主原料に使用しても大規模な演算回路や大電流が流れる電源回路の管理に適した実用的価値のある良好な誘電特性を有する薄膜コンデンサを得ることができる。
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で変形可能なことはいうまでもない。例えば、本誘電体薄膜3は、主成分(例えば、80wt%以上)が(Ba1-x-ySnCa)TiO( 0.01≦x≦0.30、0≦y≦0.2)であればよく、必要に応じてMnO等の各種添加物を含有させてもよい。
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
[試料の作製]
まず、第1のターゲット物質としての(Ba1-yCa)TiOを作製した。
すなわち、セラミック素原料としてBaCO、TiO、及びCaCOを用意した。そして、Aサイト中のCaの配合モル比yが0〜0.20となるように、これらセラミック素原料を秤量した。次いで、これら秤量物をPSZボール及び純水と共にボールミルに投入し、湿式で十分に混合粉砕し、乾燥させて混合粉体を得た。
次に、この混合粉体を、大気雰囲気下、1000℃の温度で2時間熱処理を施して仮焼し、その後乾式で粉砕し、セラミック原料粉末を作製した。
次に、このセラミック原料粉末に、エタノール及びアクリル系有機バインダを加えて湿式混合し、その後乾燥し造粒した。そして、この造粒物に196MPaの圧力を負荷してプレス成形し、円板状のセラミック成形体を得た。
次に、このセラミック成形体を加熱してバインダを燃焼除去し、その後、大気雰囲気下、1200℃の温度で2時間焼成処理を施し、これにより(Ba1-yCa)TiO材を得た。
また、第2のターゲット物質としてのSnO材を用意した。
さらに、表面に膜厚10nmのTiO膜が形成された厚みが525μmのSi基板を用意した。そして、Ptをターゲット物質としてSi基板にスパッタリング処理を施し、Si基板上に膜厚100nmの下部電極を作製した。
次に、RFマグネトロンスパッタリング装置(図3参照)を使用し、下部電極が形成されたSi基板を基板ホルダーに装着し、(Ba1-yCa)TiO材を第1のターゲット物質、SnO材を第2のターゲット物質とし、共スパッタリング処理を行った。
すなわち、高周波電源から第1及び第2のカソードに50〜300Wの電力を供給して電圧を印加すると共に、基板温度が570℃となるように基板を加熱し、成膜室内を0.4〜0.8Paに減圧し、ArとOとの混合ガスを成膜室に供給し、0.75〜1.67時間成膜処理を行い、試料番号1〜34の誘電体薄膜を作製した。尚、前記混合ガスは、流量比がAr/O=9/1となるように調整した。
次いで、誘電体薄膜の表面にPtをターゲット物質にしてスパッタリング処理を施し、膜厚が100nmの上部電極を誘電体薄膜上に作製し、これにより試料番号1〜34の試料を得た。
[試料の評価]
試料番号1〜34の各試料について、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して観察した。その結果、誘電体薄膜の膜厚は、成膜時間が0.75時間で90nm、成膜時間が1時間で120nm、成膜時間が1.67時間で200nmであった。
試料番号1〜34の各試料についてX線回折法を使用し、X線回折プロファイルを測定した。その結果、いずれの試料においても、BaTiO(以下、「BTO」という。)に特有の強度ピークが検出された。また、SnやCaを含む結晶相の強度ピークは観察されなかったことから、SnやCaを含有した試料は、これらSnやCaがBTOに固溶されていると判断した。
また、試料番号1〜34の各試料について、SEM/EDX(走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光法)を使用し、特性X線のプロファイルを作成し、点分析を行った。その結果、Ba、Ti、Ca、Si、Pt、及びSnの強度ピークが観測された。そして、Ba(特性X線:Lα)、Ti(特性X線:Kα)の強度ピークが重なっていたことから解析ソフトを使用してピーク分離し、各元素の量を算出し、この算出結果からAサイト中のSnの配合モル比x及びCaの配合モル比yを求めた。
また、試料番号1〜34の各試料について、LCRメータを使用して静電容量を測定し、測定結果と試料寸法から比誘電率εrを求めた。
表1は、試料番号1〜34の膜厚、組成成分、及び比誘電率εrを示している。
Figure 0006642800
試料番号1〜8は、膜厚が90nmの試料である。
試料番号1は、比誘電率εrが123と低かった。これは誘電体薄膜中にSnが含まれていないため、結晶格子が歪まず、比誘電率εrを増加させることができなかったものと思われる。
試料番号4は、比誘電率εrが212と低かった。これはSnの配合モル比xが0.342と過剰であり、固溶限界を超えてSnの一部が結晶粒界に偏析し、このため比誘電率εrを向上させることができなかったものと思われる。
試料番号5は、誘電体薄膜中にCaが含有されているため、比誘電率εrは試料番号1に比べると増加しているものの、Snが含有されていないため、比誘電率εrは164と低かった。
試料番号8は、誘電体薄膜中にCaが含有されているため、比誘電率εrは試料番号4に比べると増加しているものの、Snの配合モル比xが0.348と過剰であるため、比誘電率εrは224と低かった。
これに対し試料番号2、3、6、7は、Snの配合モル比xは0.051〜0.141であり、Caの配合モル比yは0〜0.150であり、いずれも本発明範囲内であるので、比誘電率εrは312〜482であり、膜厚を90nmに薄膜化しても300以上の比誘電率εrが得られることが分かった。
試料番号9〜27は、膜厚が120nmの試料である。
試料番号9は、誘電体薄膜中にSnが含まれていないため、比誘電率εrは288であった。
試料番号14は、Snの配合モル比xが0.348と過剰であり、比誘電率εrが393であった。
試料番号15は、誘電体薄膜中にCaが含有されているものの、Snが含有されていないため、比誘電率εrは373であった。
試料番号23は、誘電体薄膜中にCaが含有されているものの、Snの配合モル比xが0.349と過剰であり、比誘電率εrは361であった。
これに対し試料番号10〜13、16〜22、及び24〜27は、Snの配合モル比xは0.011〜0.299であり、Caの配合モル比yは0〜0.200であり、いずれも本発明範囲内であるので、比誘電率εrは512〜808であり、膜厚が120nmの場合は500以上の比誘電率εrが得られることが分かった。
試料番号28〜34は、膜厚が200nmの試料である。
試料番号28は、誘電体薄膜中にSnが含まれていないため、比誘電率εrは321であった。
試料番号31は、Snの配合モル比xが0.343と過剰であり、比誘電率εrが510であった。
試料番号34は、誘電体薄膜中にCaが含有されているものの、Snの配合モル比xが0.347と過剰であり、比誘電率εrは472であった。
これに対し試料番号29,30、32、及び33は、Snの配合モル比xは0.051〜0.143であり、Caの配合モル比yは0〜0.150であり、いずれも本発明範囲内であるので、比誘電率εrは692〜923であり、膜厚が200nmの場合は600以上の比誘電率εrが得られることが分かった。
以上より、Snの配合モル比xを0.01〜0.30、Caの配合モル比yを0〜0.2とすることにより、同一膜厚で比較するといずれも比誘電率εrが改善されることが分かった。具体的には、Sn及びCaを誘電体薄膜中に本発明範囲内で含有させることにより、膜厚90nmの場合で比誘電率εrは300以上、膜厚120nmの場合で比誘電率εrは500以上、膜厚200nmの場合で比誘電率εrは600以上に誘電特性を改善できることが分かった。
図4は膜厚120nmの場合におけるSnの配合モル比xと比誘電率εrとの関係を示し、横軸がSnの配合モル比x(−)、縦軸が比誘電率εrである。◆印は各試料番号を示している。
この図4から明らかように、Snには比誘電率εrが極大となる配合モル比xが存在することが分かる。一方、焼結法で誘電体膜を形成した場合は、[発明が解決しようとする課題]の項で述べたように、Snの配合モル比が増加するのに伴い、比誘電率εrは線形的に低下する(特許文献1、表2参照)。すなわち、本発明のような共スパッタリング法で誘電体薄膜を形成した場合は、焼結法でセラミック層を作製した場合とは異なる誘電特性が得られることが分かった。
図5は、試料番号17のSEM画像である。
すなわち、下部電極51の表面に誘電体薄膜52が形成され、該誘電体薄膜52の表面に上部電極53が形成されている。そして、誘電体薄膜52は柱状乃至略柱状であって、その膜厚は120nmであることが確認された。
尚、他の本発明試料についても、略同様の構造を有することが、SEM画像により確認された。
図6は、試料番号6のX線回折プロファイルであり、横軸が回折角2θ(°)、縦軸はX線強度(a.u.)を示している。
この図6から明らかなように、回折角2θが22°近辺でBTO(001)面に特有のX線ピークが生じており、他に顕著なX線ピークが生じていないことから、試料はBTOを主成分としていることが確認された。
また、BTOでは回折角2θが32°近辺で(101)面に特有のX線ピークが生じ、回折角2θが39°近辺で(111)面に特有のX線ピークが生じるが、(001)面のX線強度は、(101)面及び(111)面のX線強度よりも遥かに大きく、これらの強度比から試料は(001)面、すなわちc軸方向に配向していることが分かった。
尚、他の本発明試料についても、X線プロファイルは略同様であることが確認された。すなわち、本発明試料はBTOを主成分とし、c軸方向に配向していることが確認された。
チタン酸バリウム系化合物を主成分とする誘電体薄膜であっても比誘電率εrを増加させることができ、大規模集積回路や大電流が流れる電源回路の回路管理用に対し実用的価値のある薄膜コンデンサを実現できる。
1 基板
2 下部電極(導電膜)
3 誘電体薄膜
4 上部電極(導電膜)
5 結晶粒子
6 結晶粒界
8 成膜室
10a (Ba1-yCa)TiO(第1のターゲット物質)
10b SnO材(第2のターゲット物質)

Claims (9)

  1. 主成分が、一般式{(Ba1-x-ySnCa)TiO}で表されると共に、
    結晶粒子と結晶粒界とを備えた多結晶膜からなり、
    前記x及びyが、それぞれ
    0.01≦x≦0.30、及び
    0≦y≦0.2
    を満足し、
    かつ、膜厚が200nm以下であることを特徴とする誘電体薄膜。
  2. 前記結晶粒子が配向していることを特徴とする請求項1記載の誘電体薄膜。
  3. 前記結晶粒子が、柱状乃至略柱状に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の誘電体薄膜。
  4. 前記結晶粒子は、断面積径が円換算で直径30〜100nmであることを特徴とする請求項3記載の誘電体薄膜。
  5. (Ba1-yCa)TiO(0≦y≦0.2)を主成分とする第1のターゲット物質と、Sn化合物を主成分とする第2のターゲット物質と、基板とを成膜室に配し、減圧下、電圧を印加しながら所定のガスを前記成膜室に供給し、共スパッタリング処理を施し、主成分が一般式{(Ba1-x-y SnCa)TiO}(ただし、0.01≦x≦0.30、0≦y≦0.2)で表される膜厚が200nm以下の多結晶膜を前記基板上に成膜することを特徴とする誘電体薄膜の製造方法。
  6. 前記多結晶膜は配向膜であることを特徴とする請求項5記載の誘電体薄膜の製造方法。
  7. 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の誘電体薄膜を備えていることを特徴とする薄膜コンデンサ。
  8. 前記誘電体薄膜は、基板上に形成されていることを特徴とする請求項7記載の薄膜コンデンサ。
  9. 前記誘電体薄膜の両主面に導電膜が形成されていることを特徴とする請求項7又は請求項8記載の薄膜コンデンサ。
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