JP6640438B2 - 非水電解質二次電池用正極活物質およびその製造方法 - Google Patents
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Description
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本明細書では、「非水電解質二次電池用正極活物質」を単に「正極活物質」と、「非水電解質二次電池用正極」を単に「正極」と、「非水電解質二次電池」を単に「二次電池」または「電池」とも称する。
本発明の一実施形態は、非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法に関する。当該製造方法は、下記特定の原料を水系溶媒に溶解させた原料混合溶液を、噴霧乾燥させて、乾燥物を得る第1工程;第1工程で得られた乾燥物中に含まれる塩の少なくとも一部を、熱分解させて、前駆体を得る第2工程;および、第2工程で得られた前駆体を、400〜1000℃で焼成する第3工程を含む。そして、上記第1工程において、原料として、Snのクエン酸塩、Ni、MnおよびCoからなる群から選択される少なくとも1種の硝酸塩および/または分解温度が100℃〜350℃である、Ni、MnおよびCoからなる群から選択される少なくとも1種の有機酸塩、ならびに、硝酸リチウムおよび/または分解温度(分解点とも称される)が100℃〜350℃であるリチウムの有機酸塩を用いることを特徴とする。
第1工程では、特定の原料を水系溶媒に溶解させた原料混合溶液を、噴霧乾燥(スプレードライ)させて、乾燥物を得る。そして原料として、以下の(1)〜(3)の塩を必須に用いることを特徴とする。(1)Snのクエン酸塩;(2)Ni、MnおよびCoからなる群から選択される少なくとも1種の硝酸塩および/または分解温度が100℃〜350℃である、Ni、MnおよびCoからなる群から選択される少なくとも1種の有機酸塩;ならびに、(3)硝酸リチウムおよび/または分解温度が100℃〜350℃であるリチウムの有機酸塩。
本形態の製造方法では、正極活物質中に含まれる置換元素の原料として、Snのクエン酸塩(クエン酸錯体あるいはクエン酸錯塩とも称される)を用いることを特徴とする。Snのクエン酸塩は、分解温度が約130℃であるため、後述の第2工程で容易に熱分解されうる。
また、本形態の製造方法では、正極活物質中に含まれる遷移金属(Ni、MnまたはCo)の原料として、これらの元素の硝酸塩および/または分解温度が100℃〜350℃である有機酸塩を用いることを特徴とする。
また、本形態の製造方法では、正極活物質中に含まれるリチウムの原料として、硝酸リチウム(LiNO3)および/または分解温度が100℃〜350℃であるリチウムの有機酸塩が用いることを特徴とする。
第2工程では、上記第1工程で得られた乾燥物中に含まれる塩の少なくとも一部を、熱分解させ、正極活物質の前駆体を得る。熱分解させる際の温度(熱処理温度)は、原料となる塩の熱分解温度により異なるが、150〜400℃であることが好ましく、200〜400℃であることがより好ましく、200〜350℃であることがより好ましい。また、熱処理時間も、原料となる塩の種類により異なるが、1〜48時間が好ましく、4〜12時間であることがより好ましい。なお、本工程では、乾燥物中に含まれる塩の全てを熱分解させる必要はなく、原料として、硝酸リチウム(分解温度:約600℃)を用いる場合は、本工程においても熱分解されずに残りうる。一方、Snのクエン酸塩、遷移元素(Ni、MnまたはCo)の硝酸塩および/または分解温度が100℃〜350℃である有機酸塩、分解温度が100℃〜350℃であるリチウムの有機酸塩は本工程により熱分解され、不要な、硝酸(NO3)や、有機物(クエン酸、酢酸等)が除かれる。
第3工程では、上記第2工程で得られた前駆体を焼成することによって、結晶構造が構築・安定化され、正極活物質が得られる。本工程における焼成は、特に制限されないが、焼成温度(熱処理温度)400〜1200℃で、焼成時間1〜48時間の範囲内で行うことが好ましい。また、焼成温度を低い温度から高い温度へと、段階的に、あるいは、連続的に上げながら焼成を行うことが好ましい。例えば、400〜600℃で1〜24時間仮焼成した後に、700〜1000℃で1〜24時間本焼成することが好ましい。このような焼成工程を経ることで、安定な結晶構造を有する正極活物質を得ることができる。
上述の正極活物質は、非水電解質二次電池に適用することにより、電池のサイクル特性を向上させることができる。したがって、本発明の他の一形態によると、集電体の表面に、上述の正極活物質を含む正極活物質層が形成されてなる、非水電解質二次電池用正極が提供される。さらに、本発明の他の一形態によると、当該正極と、電解質層と、集電体の表面に、負極活物質を含む負極活物質層が形成されてなる負極とを含む発電要素を有する、非水電解質二次電池が提供される。
本発明の一形態に係る正極は、上記正極活物質を含む正極活物質層が形成されてなる。正極は、負極とともにリチウムイオンの授受により電気エネルギーを生み出す機能を有する。正極は、集電体および正極活物質層を必須に含み、集電体の表面に正極活物質層が形成されてなる。
集電体は導電性材料から構成され、その一方の面または両面に正極活物質層が配置される。集電体を構成する材料に特に制限はなく、例えば、金属や、導電性高分子材料または非導電性高分子材料に導電性フィラーが添加された導電性を有する樹脂が採用されうる。
正極活物質層は上述の正極活物質を必須に含み、これ以外に、他の正極活物質や、導電助剤、バインダ等の添加剤をさらに含んでもよい。
負極は、正極とともにリチウムイオンの授受により電気エネルギーを生み出す機能を有する。負極は、集電体および負極活物質層を必須に含み、集電体の表面に負極活物質層が形成されてなる。
負極に用いられうる集電体は、正極に用いられうる集電体と同様であるため、ここでは説明を省略する。
負極活物質層は負極活物質を含む。前記負極活物質層は、導電助剤、バインダ等の添加剤をさらに含んでもよい。
電解質層は、正極と負極との間の空間的な隔壁(スペーサ)として機能する。また、これと併せて、充放電時における正負極間でのリチウムイオンの移動媒体である電解質を保持する機能をも有する。電解質層を構成する電解質に特に制限はなく、液体電解質、ならびに高分子ゲル電解質および高分子固体電解質などのポリマー電解質が適宜用いられうる。本形態では、液体電解質が好ましい。
リチウムイオン二次電池においては、電池外部に電流を取り出す目的で、集電体に電気的に接続された集電板(タブ)が外装材であるラミネートフィルムの外部に取り出されている。
負極および正極端子リードの材料は、公知の積層型二次電池で用いられるリードを用いることができる。なお、電池外装材から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆するのが好ましい。
外装材としては、従来公知の金属缶ケースを用いることができる。そのほか、図6に示すようなラミネートフィルム22を外装材として用いて、発電要素17をパックしてもよい。ラミネートフィルムは、例えば、ポリプロピレン、アルミニウム、ナイロンがこの順に積層されてなる3層構造として構成されうる。このようなラミネートフィルムを用いることにより、外装材の開封、容量回復材の添加、外装材の再封止を容易に行うことができる。
<正極活物質C1(Li1.5[Ni0.375Mn0.825[Li]0.25Sn0.05]Oz)の調製>
(スズクエン酸錯体水溶液の調製)
クエン酸1水和物(分子量210.14g/mol)21g(0.1mol)を純水1000mlに加え、溶解した。次いで、シュウ酸スズ(II)(分子量206.73g/mol、純度98%)10.5g(0.05mol)を加え、約10分間攪拌した。これに、5.6体積%アンモニア水(約100ml)をゆっくり加えて、pH=6に調整し可溶化させた。この溶液を濾紙で濾過し、不溶物を除去することにより、スズクエン酸錯体水溶液を得た。なお、当該スズクエン酸錯体水溶液に含まれるSnの濃度は、Snとして0.05mol/Lであった。
純水2500mlに、上記スズクエン酸錯体水溶液(Snとして0.05mol/L)全量、酢酸マンガン・4水和物(分子量245.09g/mol)172.0g、酢酸ニッケル・4水和物(分子量248.84g/mol)62.0g、酢酸リチウム・2水和物(分子量102.02g/mol)153.0gを順に溶解させた。さらに、無水クエン酸183gを加えた。これに、5.6体積%アンモニア水をゆっくり加えて、pH=6に調整し、原料混合溶液を得た。
上記原料混合溶液を、不活性ガス(N2)を用いたスプレー装置で、熱風温度250℃〜350℃で噴霧乾燥して水分を除去し、原料の混合物である乾燥物(粉末)を得た。
上記乾燥物(粉末)を、5体積%−O2/N2バランスガス流通下、流動焼成炉を用い、300℃〜400℃で4時間有機酸塩の熱分解を行い、前駆体を得た。
上記前駆体を、大気雰囲気下、900℃で12時間焼成を行い、正極活物質C1を得た。
組成式:Li1.5[Ni0.375Mn0.825[Li]0.25Sn0.05]Oz
(組成式(1)において、a+b+c+d+e=1.5,d=0.25,a+b+c+e=1.25,e=0.05)。
(正極用スラリーの調製)
下記組成の正極用スラリーを調製した。
20μm厚のアルミニウム箔集電体を走行速度1m/分で走行させながら、集電体の一方の面に、上記正極用スラリーを、ダイコーターを用いて塗布した。続いて、この正極用スラリーを塗布した集電体を、熱風乾燥炉にて乾燥(100℃〜110℃、3分間)させ、正極活物質層に残留するNMP量を0.02重量%以下とした。さらに集電体の他方の面にも上記と同様に正極用スラリーを塗布し、乾燥させ、集電体の両面に正極活物質層を有するシート状正極を作製した。
上記シート状正極を、ローラープレスをかけて圧縮成形し、切断して、片面の正極活物質層の重量約11.0mg/cm2、密度2.70g/cm3とした。
次に、プレス後の正極を、真空乾燥炉にて乾燥処理した。乾燥炉内部に正極を設置した後、室温(25℃、以下同様)にて減圧(100mmHg(1.33×104Pa))し乾燥炉内の空気を除去した。続いて、窒素ガスを流通(100cm3/分)しながら、10℃/分で120℃まで昇温し、120℃で再度減圧して炉内の窒素を排気したまま12時間保持した後、室温まで降温した。こうして正極C11を完成させた。
(負極用スラリーの調製)
下記組成の正極用スラリーを調製した。
10μm厚の電解銅箔集電体を走行速度1.5m/分で走行させながら、集電体の一方の面に、上記負極用スラリーを、ダイコーターを用いて塗布した。続いて、この負極用スラリーを塗布した集電体を、熱風乾燥炉にて乾燥(100℃〜110℃、2分間)させ、負極活物質層に残留するNMP量を0.02重量%以下とした。さらに集電体の他方の面にも上記と同様に負極用スラリーを塗布し、乾燥させ、集電体の両面に負極活物質層を有するシート状負極を作製した。
上記シート状負極を、ローラープレスをかけて圧縮成形し、切断して、片面の負極活物質層の重量約9.50mg/cm2、密度1.45g/cm3とした。なお、プレス後の負極活物質層の表面を観察したところ、クラックの発生は見られなかった。
次に、プレス後の負極を、真空乾燥炉にて乾燥処理した。乾燥炉内部に負極を設置した後、室温にて減圧(100mmHg(1.33×104Pa))し乾燥炉内の空気を除去した。続いて、窒素ガスを流通(100cm3/分)しながら、10℃/分で135℃まで昇温し、135℃で再度減圧して炉内の窒素を排気したまま12時間保持した後、室温まで降温した。こうして負極A11を完成させた。
上記正極C11(正極活物質層面積 縦3.6cm×横5.3cm)と、負極A11(負極活物質層面積 縦3.8cm×横5.5cm)の集電体部分にタブを溶接した。これらタブを溶接した負極A11と正極C11との間に多孔質ポリプロピレン製セパレータ(S)(縦4.5cm×横6.0cm、厚さ25μm、空孔率55%)を挟んで5層からなる積層体(A11−S−C11−S−A11)を作製した。次いで、アルミラミネートフィルムからなる外装体(縦5.0cm×横6.5cm)で積層体の両面を挟み込み、外装体の3辺を熱圧着封止して積層体を収納した。
上記「(原料混合溶液の調製)」において、原料の配合量を変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で正極活物質C2および電池を作製した。上記正極活物質C2の組成を確認したところ、以下の通りであった。
組成式:Li1.5[Ni0.375Mn0.845[Li]0.25Sn0.03]Oz
(組成式(1)において、a+b+c+d+e=1.5,d=0.25,a+b+c+e=1.25,e=0.03)。
上記「(原料混合溶液の調製)」において、原料の配合量を変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で正極活物質C3および電池を作製した。上記正極活物質C3の組成を確認したところ、以下の通りであった。
組成式:Li1.5[Ni0.375Mn0.795[Li]0.25Sn0.10]Oz
(組成式(1)において、a+b+c+d+e=1.5,d=0.25,a+b+c+e=1.25,e=0.10)。
上記「(原料混合溶液の調製)」において、無水クエン酸を加えなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で正極活物質C4および電池を作製した。上記正極活物質C4の組成を確認したところ、以下の通りであった。
組成式:Li1.5[Ni0.375Mn0.825[Li]0.25Sn0.05]Oz
(組成式(1)において、a+b+c+d+e=1.5、d=0.25、a+b+c+e=1.25、e=0.05)。
上記「(原料混合溶液の調製)」において、無水クエン酸を加えなかったこと以外は、実施例2と同様の方法で正極活物質C5および電池を作製した。上記正極活物質C5の組成を確認したところ、以下の通りであった。
組成式:Li1.5[Ni0.375Mn0.845[Li]0.25Sn0.03]Oz
(組成式(1)において、a+b+c+d+e=1.5,d=0.25,a+b+c+e=1.25,e=0.03)。
上記「(原料混合溶液の調製)」において、無水クエン酸を加えなかったこと以外は、実施例3と同様の方法で正極活物質C5および電池を作製した。上記正極活物質C5の組成を確認したところ、以下の通りであった。
組成式:Li1.5[Ni0.375Mn0.795[Li]0.25Sn0.10]Oz
(組成式(1)において、a+b+c+d+e=1.5,d=0.25,a+b+c+e=1.25,e=0.10)。
上記「(スズクエン酸錯体水溶液の調製)」および「(原料混合溶液の調製)」において、スズクエン酸錯体水溶液および原料混合溶液をpH=4に調整したこと以外は、実施例1と同様の方法で正極活物質C7および電池を作製した。上記正極活物質C7の組成を確認したところ、以下の通りであった。
組成式:Li1.5[Ni0.375Mn0.825[Li]0.25Sn0.05]Oz
(組成式(1)において、a+b+c+d+e=1.5、d=0.25、a+b+c+e=1.25、e=0.05)。
上記「(スズクエン酸錯体水溶液の調製)」および「(原料混合溶液の調製)」において、スズクエン酸錯体水溶液および原料混合溶液をpH=8に調整したこと以外は、実施例1と同様の方法で正極活物質C8および電池を作製した。上記正極活物質C8の組成を確認したところ、以下の通りであった。
組成式:Li1.5[Ni0.375Mn0.825[Li]0.25Sn0.05]Oz
(組成式(1)において、a+b+c+d+e=1.5、d=0.25、a+b+c+e=1.25、e=0.05)。
上記「(原料混合溶液の調製)」において、原料として、酢酸リチウム・2水和物に代えて、クエン酸リチウム・4水和物(分子量281.98g/mol)141.0gを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で正極活物質C9および電池を作製した。上記正極活物質C9の組成を確認したところ、以下の通りであった。
組成式:Li1.5[Ni0.375Mn0.825[Li]0.25Sn0.05]Oz
(組成式(1)において、a+b+c+d+e=1.5、d=0.25、a+b+c+e=1.25、e=0.05)。
上記「(原料混合溶液の調製)」において、無水クエン酸を加えなかったこと以外は、実施例9と同様の方法で正極活物質C10および電池を作製した。上記正極活物質C10の組成を確認したところ、以下の通りであった。
組成式:Li1.5[Ni0.375Mn0.825[Li]0.25Sn0.05]Oz
(組成式(1)において、a+b+c+d+e=1.5、d=0.25、a+b+c+e=1.25、e=0.05)。
上記「(原料混合溶液の調製)」において、純水2500mlに、上記スズクエン酸錯体水溶液(Snとして0.05mol/L)全量、硝酸マンガン・6水和物(分子量287.04g/mol)126.6g、硝酸ニッケル・6水和物(分子量290.79g/mol)33.8g、硝酸コバルト・6水和物(分子量291.03)34.2g、硝酸リチウム(分子量68.945g/mol)74.5gを順に溶解させた。さらに、無水クエン酸126gを加えた。これに、5.6体積%アンモニア水をゆっくり加えて、pH=6に調整し、原料混合溶液を得た。これ以外は、実施例1と同様の方法で正極活物質C11および電池を作製した。上記正極活物質C11の組成を確認したところ、以下の通りであった。
組成式:Li1.5[Ni0.225Mn0.750Co0.225[Li]0.25Sn0.05]Oz
(組成式(1)において、a+b+c+d+e=1.5、d=0.25、a+b+c+e=1.25、e=0.05)。
上記「(原料混合溶液の調製)」において、無水クエン酸を加えなかったこと以外は、実施例11と同様の方法で正極活物質C12および電池を作製した。上記正極活物質C12の組成を確認したところ、以下の通りであった。
組成式:Li1.5[Ni0.225Mn0.750Co0.225[Li]0.25Sn0.05]Oz
(組成式(1)において、a+b+c+d+e=1.5、d=0.25、a+b+c+e=1.25、e=0.05)。
<共沈法を用いた正極活物質D1(Li1.5[Ni0.375Mn0.875[Li]0.25]Oz)の調製>
硫酸ニッケルおよび硫酸マンガンの2mol/L水溶液をそれぞれ調製した。次いで、これらを所定量秤量して、混合溶液を調製した。更に、混合溶液を攪拌しながら、アンモニア水をpH7になるまで滴下した。更に、2mol/L炭酸ナトリウム水溶液を滴下して、ニッケル−マンガンの複合炭酸塩を沈殿させた。得られた沈殿物を吸引ろ過した後、水洗して、120℃で12時間乾燥した。この乾燥粉末に所定のモル比(Li/[Ni+Mn]=1.5)で水酸化リチウムを加え、自動乳鉢で約2時間混合した。次いで、500℃で6時間仮焼成した後、900℃で12時間本焼成を行い、正極活物質D1および電池を作製した。
組成式:Li1.5[Ni0.375Mn0.875[Li]0.25]Oz(組成式(1)において、a+b+c+d+e=1.5、d=0.25、a+b+c+e=1.25、e=0)。
実施例1〜12、比較例1で得られた、正極活物質C1〜C12、D1について、窒素吸着BET一点法により比表面積を測定した。なお、測定には、マウンテック製の比表面積測定装置(MacLab1208)を使用した。
上記実施例1、3、比較例1で得られた、正極活物質C1、C3、D1、の結晶構造および結晶性を、X線回折測定により評価した。なお、測定には、リガク社製X線回折装置(SmartLab9kW)を使用し、X線源にはCu−Kα線を用い、測定条件は管電圧45KV、管電流200mA、走査速度2°/分、発散スリット幅0.5°、受光スリット幅0.15°で行った。それぞれのX線回折パターンを図1〜3に示す。
上記実施例1、比較例1で得られた、正極活物質C1、D1について、走査型電子顕微鏡(SEM)観察をおこなった。前処理として、粉末を導通テープに固定した後、導通処理を施した。このとき、電界放射型走査電子顕微鏡(日立製作所製 S−4700)を用い、加速電圧3kVとした。結果を図4、5に示す。
上記実施例1〜12ならびに比較例1で得られた各電池を、評価セル取り付け冶具にセットし、正極リードと負極リードを電池の各タブ端部に取り付け、試験を行った。以下の条件で初充電処理及び活性化処理を行い、電池性能を評価した。
電池の初充電処理は、以下のように実施した。室温にて、定電流充電法で0.05C、4時間の充電(SOC約20%)を行った。次いで、充電を止め、その状態(SOC約20%)で約1日間(24時間)保持した。
初充電処理が終わった後、室温にて、定電流充電法で0.1Cで電圧が4.75Vとなるまで充電した後、2.0Vまで0.1Cで放電するサイクルを1回行った。
熱圧着で仮封止した一辺を開封し、10±3hPaで5分間ガス除去を行った後、当該一片を再度熱圧着し、仮封止した。さらに、ローラーで加圧成形し(面圧0.5±0.1MPa)、電極とセパレータとを十分に密着させた。
電池性能の評価を、室温下で以下のようにして行った。まず、1.0Cレートにて最高電圧が4.45Vとなるまで充電し(定電流定電圧充電法)、その後、約0.5時間〜1.0時間保持し、電池の最低電圧が2.0Vとなるまで0.2Cレートで放電した(定電流放電法)。このときの0.2Cレートでの放電容量を「0.2C放電容量(mAh/g)」とした。
電池のサイクル特性試験は、上記1.0Cでの充放電を、室温下で300サイクル繰り返すことにより行った。そして、1サイクル後と、300サイクル後との電池性能を以下の条件で評価した。1.0Cレートにて最高電圧が4.45Vとなるまで充電し(定電流定電圧充電法)、その後、約0.5時間〜1.0時間保持し、電池の最低電圧が2.0Vとなるまで0.2Cレートで放電した(定電流放電法)。いずれも、室温下で行った。
11 負極集電体、
11a 最外層負極集電体、
12 負極活物質層、
13 電解質層、
14 正極集電体、
15 正極活物質層、
16 単電池層、
17 発電要素、
18 負極集電板、
19 正極集電板、
20 負極端子リード、
21 正極端子リード、
22 ラミネートフィルム。
Claims (5)
- 組成式(1):Li1.5[NiaMnbCoc[Li]dSne]Oz
(式中、0<a、0<b、0.01≦e≦0.15、a+b+c+d+e=1.5、0.1≦d≦0.4、1.1≦[a+b+c+e]≦1.4であり、zは、原子価を満足する酸素数を表す)
で表される非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法であって、
Snのクエン酸塩、
Ni、MnおよびCoからなる群から選択される少なくとも1種の硝酸塩および/または分解温度が100℃〜350℃である、Ni、MnおよびCoからなる群から選択される少なくとも1種の有機酸塩、ならびに
硝酸リチウムおよび/または分解温度が100℃〜350℃であるリチウムの有機酸塩、
を水系溶媒に溶解させた原料混合溶液を、噴霧乾燥させて、乾燥物を得る第1工程と、
前記第1工程で得られた乾燥物中に含まれる少なくとも一部の塩を、熱分解させて、前駆体を得る第2工程と、
前記第2工程で得られた前駆体を、400〜1000℃で焼成する第3工程と、を含む、非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法。 - 前記非水電解質二次電池用正極活物質は、X線回折測定において、20−23°、35−40°(101)、42−45°(104)および64−65(108)/65−66(110)に、岩塩型層状構造を示す回折ピークを有する、請求項1に記載の製造方法。
- 前記非水電解質二次電池用正極活物質は、X線回折測定において、35−40°(101)に3つの回折ピークを有し、42−45°(104)に1つの回折ピークを有する、請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記非水電解質二次電池用正極活物質は、X線回折測定において、20−23°、35.5−36.5°(101)、43.5−44.5°(104)および64−65(108)/65−66(110)に回折ピークを有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- クエン酸およびシュウ酸スズ(II)を含む水溶液と、アンモニア水とを混合し、pH4〜8とすることにより前記Snのクエン酸塩を得る工程をさらに含み、かつ
前記原料混合溶液を調製する際に無水クエン酸を添加することをさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
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