JP6638193B2 - アルミニウム合金加工材及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アルミニウム合金加工材及びその製造方法に関する。
アルミニウム合金は、アルミニウムを主成分とする合金である。アルミニウム(Al)は比較的軽い金属であるが、純度の高いアルミニウムは非常に軟らかいため、Cu(銅)、Mn(マンガン)、Si(ケイ素)、Mg(マグネシウム)、Zn(亜鉛)、Ni(ニッケル)等の添加物によって合金にすることで、所望の強度、靱性、延性等の特性の向上が図られる。
アルミニウム合金の中でも、いわゆる7000番台のAl‐Zn‐Mg‐Cu系合金は強度の高い合金であり、アルミニウム合金の軽さと強度を生かして、種々の分野に利用されている。
特許文献1には、靱性と静的機械的特性とをバランスよく得ることを目的としたアルミニウム合金から構成される航空機用の製品が開示されている。この文献の技術では、靱性、静的機械的特性、耐食性、破断伸びをバランスよく得ることを目的として、添加元素の濃度等を調整することを開示している。特許文献1では、アルミニウム合金の添加元素について、Mg/Cu<2.4等の条件を満たすことで、靱性が向上することを開示している。
特許第4535731号公報
しかし一方で、アルミニウム合金が応用される分野によっては、高強度であることが求められるのと同時に、伸びの特性、すなわち延性を有する製品が求められることがある。例えば、軽量かつ高強度でありながらも延性を有する製品が求められることがある。
そこで、本発明は、高強度かつ伸びの特性を有するアルミニウム合金加工材及びその製造方法を提供することを主な目的とする。
本発明によれば、Zn;9質量%以上11質量%以下、Mg;1.2質量%以上2.0質量%以下、Cu;2.0質量%以上2.7質量%以下、Zr;0.04質量%以上0.25質量%以下、Cr;0.02質量%以上0.30質量%以下を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなり、ZnとMgの含有量が、Zn/Mg≧4.7の関係を満たし、MgとCuの含有量が、3.2質量%≦Mg+Cu≦4.7質量%の関係を満たし、塑性加工組織を有することを特徴とするアルミニウム合金加工材が提供される。
本発明の一態様によれば、上記のアルミニウム合金加工材において、更にMn;0.05質量%以上0.40質量%以下を含有することを特徴とする。
また本発明によれば、Zn;9質量%以上11質量%以下、Mg;1.2質量%以上2.0質量%以下、Cu;2.0質量%以上2.7質量%以下、Zr;0.04質量%以上0.25質量%以下、Cr;0.02質量%以上0.30質量%以下を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなり、ZnとMgの含有量が、Zn/Mg≧4.7の関係を満たし、MgとCuの含有量が、3.2質量%≦Mg+Cu≦4.7質量%の関係を満たし、塑性加工、溶体化処理、焼き入れ処理及び時効処理を順次施すことを特徴とするアルミニウム合金加工材の製造方法が提供される。
本発明の一態様によれば、上記のアルミニウム合金加工材の製造方法において、更にMn;0.05質量%以上0.40質量%以下を含有することを特徴とする。
本発明の一態様によれば、上記のアルミニウム合金加工材の製造方法において、塑性加工として、押出比が5から100、鋳塊温度が300℃から450℃の熱間押出し加工、440℃から470℃に保持する溶体化処理、450℃から100℃の範囲を1000℃/分以上の冷却速度で冷却する焼き入れ処理、100℃から180℃で10時間から30時間の時効処理を順次施すことを特徴とする。
一般的なアルミニウム材料は強度が高まると延性が低下する傾向にあるが、構造用材料は、強度のみでなく、高延性であることが求められる。引張試験等で破断させる場合に大きな塑性変形を伴い破壊するような材料、すなわち絞りの大きな材料は、エネルギー吸収量が大きい。高強度かつ高延性を得るには析出組織、晶出物組織および結晶組織を制御する必要がある。そこで本発明では、高強度かつ高延性を得るために成分範囲を規定した。
以下に、本発明の実施形態を説明する。
<アルミニウム合金加工材>
本発明の一実施形態は、Zn;9質量%以上11質量%以下、Mg;1.2質量%以上2.0質量%以下、Cu;2.0質量%以上2.7質量%以下、Zr;0.04質量%以上0.25質量%以下、Cr;0.02質量%以上0.30質量%以下を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなり、ZnとMgの含有量が、Zn/Mg≧4.7の関係を満たし、MgとCuの含有量が、3.2質量%≦Mg+Cu≦4.7質量%の関係を満たし、塑性加工組織を有することを特徴とするアルミニウム合金加工材である。本実施形態のアルミニウム合金加工材は、高強度かつ伸びの特性を有するアルミニウム合金加工材である。
更にMnを0.05質量%以上0.40質量%以下の範囲で含有させても良い。
(Zn、Mg、Cu)
本実施形態のアルミニウム合金加工材は、Zn(亜鉛)の含有量が、9質量%以上11質量%以下である。
本実施形態のアルミニウム合金加工材は、Mg(マグネシウム)の含有量が、1.2質量%以上2.0質量%以下である。より好ましくは、Mgの含有量が、1.4%質量%以上2.0質量%以下である。
本実施形態のアルミニウム合金加工材は、Cu(銅)の含有量が、2.0質量%以上2.7質量%以下である。
上記の元素を含有するアルミニウム合金を、溶体化後に時効処理することで、ZnとMgがZn‐Mg系析出物(MgZn等の化合物)を形成する。また、Mg、Cuは、Al‐Cu‐Mg系析出物(AlCuMg等の化合物)を形成する。これらの析出物による析出強化がアルミニウム合金の強度に寄与する。
上記の元素の含有量が、Znが9質量%未満、Mgが1.2質量%未満、Cuが2.0質量%未満であると、下限範囲外では十分に析出強化できず、アルミニウム合金が所望の強度に満たない。
上記の元素の含有量が、Znが11質量%より多く、Mgが2.0質量%より多く、Cuが2.7質量%より多いと、塑性加工時に粗大な析出物が形成され、溶体化処理で十分に固溶させることができない晶出物が熱処理後に存在するため、応力集中による破断の起点となり、アルミニウム合金の伸びを低下させる。
なお、Zn、Mg、Cuは上記の通り、強度に寄与する元素であるが、Zn‐Mg系析出物による強化が、Al合金の強度を最も高めることが確認された。
ただし、合金成分については、鋳造性や添加量当たりの強度の寄与も考慮する必要がある。Znは密度が高く、過剰に添加すると比強度を低下させる。よって、Zn量は鋳造性及び比強度の観点から、11質量%以下とすることが好ましい。
ZnとMgの含有量について、ZnとMgとの比であるZn/Mgは、Zn/Mg>4.7の関係を満たす。より好ましくは、4.7<Zn/Mg<9である。
Zn/Mgが4.7以下であると、析出相の影響や鋳造時に結晶粒界面に晶出したZn‐Mg系化合物やAl‐Cu‐Mg系化合物がAlの母相に固溶できず、結晶粒界面への応力集中により、高い延性が得られない。
Zn/Mgが9以上であると塑性加工時に粗大な析出物が形成され、溶体化処理で十分に固溶させることができない晶出物が熱処理後に存在するため、応力集中による破断の起点となり、アルミニウム合金の伸びを低下させる。また鋳造時に割れも発生しやすくなる。
MgとCuの含有量は、3.2質量%≦Mg+Cu≦4.7質量%であることが好ましい。
Mg+Cuの含有量が3.2質量%未満であるとZn-MgやAl‐Cu-Mg系析出物の量が不十分であり、析出強化が得られない。Mg+Cuの含有量が4.7%を超えると、Zn‐Mg系化合物やAl‐Cu‐Mg系化合物がAlの母相に固溶できず、界面への応力集中により、高い延性が得られない。
(Zr、Cr、Mn)
本実施形態のアルミニウム合金加工材は、Zr(ジルコニウム)の含有量が、0.04質量%以上0.25質量%以下である。より好ましくは、Zrの含有量が、0.10質量%以上0.20質量%以下である。本実施形態のアルミニウム合金加工材は、Cr(クロム)の含有量が、0.02質量%以上0.30質量%以下である。
更にMnを0.05質量%以上0.40質量%以下の範囲で含有させても良い。
上記の元素を含有するアルミニウム合金では、均質化処理時に、Al‐Zr系の分散粒子、又はAl‐Cr系の分散粒子、Al‐Mn系の分散粒子が形成され、結晶粒界の移動を抑制し、再結晶化を抑制する、いわゆるピン止め効果が生じる。これにより、再結晶化を抑制し、塑性加工時に形成された加工組織を、溶体化処理後も維持させることで、アルミニウム合金の強度に寄与する。
上記の元素の含有量が、Zrが、0.04質量%未満であり、Crが、0.02質量%未満であると、ピン止め効果が十分に得られず、強度に寄与できない。上記の元素の含有量が、Zrが、0.25質量%より多く、Crが、0.30質量%より多いと、鋳造時に上記の粗大な晶出物が形成され、アルミニウム合金の伸びが低下する。
また、CrとZrおよびMnを複合的に添加するとまた、Al‐Cr系の分散粒子およびAl‐Mn系の分散粒子は耐応力腐食割れ性を高める効果があるが、Crが、0.02質量%未満、Mnが0.05質量%未満であると、この効果が十分に得られない。この効果はAl‐Cr系分散粒子およびAl‐Mn系の分散粒子が、水素原子を補足することに起因すると考えられる。
本実施形態のアルミニウム合金加工材は、上記の元素以外の残部がAlと不可避的不純物からなる。アルミニウム合金中には、アルミニウム地金などに由来する不可避不純物として、その他の元素が含まれる。不可避的不純物の含有量は、Siが0.15質量%以下、Feが0.20質量%以下、更に好ましくは双方ともに0.10質量%以下であれば、本発明の効果を妨げることがなく好ましい。
TiとBは、鋳塊の割れ防止のために鋳造組織の微細剤として添加しても良い。
<アルミニウム合金加工材の製造方法>
本発明の一実施形態は、Zn;9質量%以上11質量%以下、Mg;1.2質量%以上2.0質量%以下、Cu;2.0質量%以上2.7質量%以下、Zr;0.04質量%以上0.25質量%以下、Cr;0.02質量%以上0.30質量%以下を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなり、ZnとMgの含有量が、Zn/Mg≧4.7の関係を満たし、MgとCuの含有量が、3.2質量%≦Mg+Cu≦4.7質量%の関係を満たし、塑性加工、溶体化処理、焼き入れ処理及び時効処理を順次施すことを特徴とするアルミニウム合金加工材の製造方法である。
更にMnを0.05質量%以上0.40質量%以下の範囲で含有させても良い。
本実施形態のアルミニウム合金加工材の製造方法によれば、上記の組成であり、かつ塑性加工、溶体化処理、焼き入れ処理及び時効処理が順次施されることにより、高強度かつ伸びの特性を有するアルミニウム合金加工材を製造することができる。
(塑性加工)
塑性加工としては、圧延加工、鍛造、押出加工、引き抜き加工等が挙げられる。塑性加工は、加工組織形成のため、熱間加工であることが好ましい。最も好ましい塑性加工は、押出比が5から100であり、鋳塊温度が300℃から450℃の条件の熱間押出加工である。これは、加工組織を熱処理後まで残存させるために適した条件であるという理由からである。
また、押出加工の後に、所定の形状や寸法にするために、引き抜き加工等の塑性加工や切削加工を行っても良い。
なお、塑性加工の前に、鋳造時に偏析した晶出物等を均質化するため、並びに、Al‐Zr系、Al‐Cr系およびAl‐Mn系の析出物を形成させるための均質化処理(HO処理)を施すのがより好ましい。この処理が塑性加工性および加工組織の形成に影響を与えるためである。
保持条件を460℃(450から470℃)で24時間とすることで、Zn、Mg、Cuなどの溶出元素を均質化させ、後の熱処理で十分な強度を得ることができる。一方で、保持温度を高め過ぎると過度に溶ける可能性がある。また、昇温速度は、50℃/h以下がより好ましい。昇温速度が速いとAl‐Zr系、Al‐Cr系およびAl‐Mn系析出物の粒子間隔が広くなり、溶体化処理時に再結晶化し易くなる。すなわち、溶体化処理後に加工組織を維持するために昇温速度を制御している。
(溶体化処理)
塑性加工の後で、溶体化処理を行う。溶体化処理では、塑性加工材を、高温に保持することにより、晶出物を母相中に固溶させる。
溶体化処理時の保持温度は、約440℃から約470℃の範囲であることが好ましい。保持温度が高すぎると局部溶融が発生し、塑性加工材の強度が低下する。一方で保持温度が低いと、Zn、Mg、Cuが十分に固溶できないため、後の時効処理で十分な析出強化が得られない。
(焼き入れ処理)
溶体化処理の後で、焼き入れ処理を行う。溶体化処理した塑性加工材を常温まで急冷することにより、母相中に固溶した晶出物が析出するのを抑制し、過飽和状態を維持する。
焼き入れ処理は、例えば、水冷で室温まで速やかに冷却する。冷却速度は450℃から100℃の範囲を1000℃/分以上の速度で冷却し、その後室温で2日間自然時効することが好ましい。このような条件で焼き入れ処理を行うことにより、良好な過飽和固溶体とすることができる。
(時効処理)
焼き入れ処理の後、時効処理を行う。時効処理として、焼き入れ後の塑性加工材を、約100℃から約180℃に加熱保持することにより、母相中に過飽和状態であったZn、Mg、Cuを、Zn‐Mg系化合物およびAl−Mg‐Cu系化合物として微細均一に析出させ、塑性加工材の強度を向上させる。溶体化処理や焼き入れ処理を行っていないと母相中に過飽和に固溶しているZn、Mg、Cu量が不足し、時効処理の際に析出する化合物の量が減少し、強度の向上が不足する。
最も高い強度を得るための時効処理条件(T6)は、例えば、100℃から130℃で10時間から30時間、より好ましくは、110℃から120℃で12時間から25時間である。耐食性を重視する場合は、T73、T74、T76の時効処理を選択できる。
また本発明の一実施形態では、上記のアルミニウム合金加工材の製造方法において、塑性加工として、押出比が5から100、鋳塊温度が300℃から450℃の熱間押出し加工、440℃から470℃に保持する溶体化処理、450℃から100℃の範囲を1000℃/分以上の冷却速度で冷却する焼き入れ処理、100℃から180℃で10時間から30時間の時効処理を順次施す。
本発明の一実施形態は、Zn;9質量%以上11質量%以下、Mg;1.2質量%以上2.0質量%以下、Cu;2.0質量%以上2.7質量%以下、Zr;0.04質量%以上0.25質量%以下、Cr;0.02質量%以上0.30質量%以下を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなり、ZnとMgの含有量が、Zn/Mg≧4.7の関係を満たし、MgとCuの含有量が、3.2質量%≦Mg+Cu≦4.7質量%の関係を満たし、塑性加工、溶体化処理、焼き入れ処理及び時効処理が順次施されていることを特徴とするアルミニウム合金加工材である。
本実施形態のアルミニウム合金加工材は、上記の組成であり、かつ塑性加工、溶体化処理、焼き入れ処理及び時効処理が順次施されることにより、高強度のアルミニウム合金加工材とすることができる。
また本発明の一実施形態では、上記のアルミニウム合金加工材において、塑性加工として、押出比が5から100、鋳塊温度300℃から450℃の熱間押出し加工、440℃から470℃に保持する溶体化処理、450℃から100℃の範囲を1000℃/分以上の冷却速度で冷却する焼き入れ処理、100℃から180℃で10時間から30時間の時効処理が順次施されている。
また、本発明の一実施形態では、アルミニウム合金加工材の主な結晶粒組織は、繊維状組織等の加工組織である。熱処理等を行うと再結晶化がおこり、外周部の組織に再結晶組織が生成する場合があるが、再結晶の厚さを1.0mm以下に制御することが好ましい。
上記の実施形態に係るアルミニウム合金加工材は、スポ‐ツ等のレジャー用品、産業機器、自動車用部品等の構成部材等として利用することができる。
以下に、本発明について実施例を用いて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(アルミニウム合金試験材の作製)
下記[表1]のA〜Iの成分の鋳塊を連続鋳造にて得た。鋳塊の直径は254mmである。これらの鋳塊をHO処理(460℃、24時間、昇温速度は50℃/h)した後、800mmの長さに切断した。
Figure 0006638193
上記のA〜Iの成分の各鋳塊を押出加工することにより供試材を得た。
押出材の直径は25mmで2本立、間接押出で実施した。押出条件は鋳塊温度380℃、押出速度は1m/minであった。押出比は52である。
次いで溶体化処理を行った。溶体化温度は460℃で2時間であった。その後、速やかに水冷し、室温で3日間自然時効した(焼き入れ処理)。その後、120℃、24時間で人工時効した。
表1から理解されるように、実施例A及びBの組成が、本発明の規定を満足するものである。実施例CからIの組成は、本発明の規定する範囲外のものである。
(アルミニウム合金試験材の特性評価)
アルミニウム合金試験材の強度を、引張試験により評価した。引張試験はJIS14A号の引張試験片に加工して実施した。試験片の平行部形状は径10mm、長さ60mmとし、標点間距離は50mmとした。引張試験はJIS2201に準拠して実施した。
引張試験の結果を[表2]に示す。
押出材の外周部に生成した再結晶組織は押出LT断面を研磨後に、改良タッカー液でエッチングし、実体顕微鏡で観察し、その厚さを測定した。
Figure 0006638193
引張試験では、引張強さ、0.2%耐力、破断伸び、絞り(断面減少率)を測定した。引張試験では、引張強さが720MPa以上、0.2%耐力が700MPa以上、破断伸びが13%以上、絞りが25%以上であることを基準として、これらを満たすものを合格(○)として、[表3]のような総合評価を得た。
下記の[表3]に、実施例AからIについての、特性評価の結果を示す。
Figure 0006638193
上記の結果によれば、A及びBでは、引張強さが720MPa以上、0.2%耐力が700MPa以上、伸びが13%以上、絞りが25%以上であるとの条件を満たし、総合評価が合格となった。この結果から、本発明で規定するアルミニウム合金加工材では、十分な強度が得られるとともに、伸びと絞りの特性も良好であることがわかる。
Cは、伸びと絞りが上記の基準を満たしていない。これは、CuとCrの添加量とZn/Mgが本発明で規定する下限値未満であり、かつMgの添加量が本発明で規定する上限値より多いために晶出物の増加や、析出組織に起因する結果と考えられる。
Dは、伸びと絞りが上記の基準を満たしていない。これは、Cuの添加量とZn/Mgが本発明で規定する下限値未満であり、かつMgの添加量が本発明で規定する上限値より多いためにしたことが原因だと考えられる。
Eは、伸びと絞りが上記の基準を満たしていない。これは、Zn/Mgが本発明で規定する下限値未満であり、かつMgの添加量が本発明で規定する上限値より多いために晶出物の増加や、析出組織に起因する結果と考えられる。
Fは、伸びと絞りが上記の基準を満たしていない。これは、Znの添加量とZn/Mgが本発明で規定する下限値未満であり、かつMgの添加量とCu+Mgが本発明で規定する上限値より多いために晶出物の増加や、析出組織に起因する結果と考えられる。
Gは、伸びと絞りが上記の基準を満たしていない。これは、ZnとMgの添加量が本発明で規定する上限値より多く、Cuの添加量が本発明で規定する下限値未満であるため、晶出物の増加や、析出組織に起因する結果と考えられる。
Hは、伸びと絞りが上記の基準を満たしていない。これは、Mgの添加量とCu+Mgが本発明で規定する上限値より多く、かつ、Zn/Mgが本発明で規定する下限値未満であるために、晶出物の増加や、析出組織に起因する結果と考えられる。
また、Iは、伸びと絞りは良好である反面、引張強さと0.2%耐力が上記の基準を満たしていない。Mgの添加量が本発明で規定する下限値未満であるため、析出強化が不十分となったことが原因であると考えられる。
上記の結果から、本発明で規定する組成を満たすアルミニウム合金加工材は、本発明で規定する組成を満たさないアルミニウム合金加工材に比べて、高強度かつ伸びの特性を有することがわかる。

Claims (3)

  1. Zn;9質量%以上11質量%以下、Mg;1.2質量%以上1.72質量%以下、Cu;2.0質量%以上2.7質量%以下、Zr;0.04質量%以上0.25質量%以下、Cr;0.02質量%以上0.30質量%以下を含有し、
    残部がAlと不可避的不純物からなり、
    ZnとMgの含有量が、Zn/Mg≧4.7の関係を満たし、
    MgとCuの含有量が、3.2質量%≦Mg+Cu≦4.7質量%の関係を満たし、塑性加工組織を有し、結晶粒組織が繊維状組織を含み、再結晶組織の再結晶の厚さが1.0mm以下であることを特徴とするアルミニウム合金加工材の製造方法であって、均質化処理、塑性加工、溶体化処理、焼き入れ処理及び時効処理を順次施すことを特徴とする、製造方法
  2. アルミニウム合金加工材が、更にMn;0.05質量%以上0.40質量%以下を含有することを特徴とする請求項に記載の製造方法
  3. 昇温速度50℃/h以下での均質化処理、
    塑性加工として、押出比が5から100、鋳塊温度が300℃から450℃の熱間押出し加工、
    440℃から470℃に保持する溶体化処理、
    450℃から100℃の範囲を1000℃/分以上の冷却速度で冷却する焼き入れ処理、
    100℃から180℃で10時間から30時間の時効処理を順次施すことを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法
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