JP6637097B2 - 導電性ペースト - Google Patents

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Description

本発明は、導電性ペーストに関する。より詳細には、本発明は、積層セラミック電子部品の内部電極層の形成に好適な導電性ペーストに関する。
積層セラミックコンデンサ(Multi-Layer Ceramic Capacitor:MLCC)は、セラミックからなる誘電体層と内部電極層とが多数積層された構造を有している。このMLCCは、一般に、誘電体粉末とバインダ等からなる誘電体グリーンシートに、導電性粉末を含む内部電極用の導電性ペーストを印刷して内部電極層を形成し、この内部電極層が印刷された誘電体グリーンシートを多数積層して圧着し、焼成することで作製されている。ここで、例えば特許文献1には、導電性粒子と、誘電体粒子からなる共材とを含有し、共材が非導電性被覆部を備えている導電性ペーストが開示されている。かかる構成によると、導電性粒子が焼結して内部電極層を形成する際に、導電性粒子間に介在した共材同士が反応することなく、導電性粒子の異常粒成長を好適に抑制できることが記載されている。
特開2007-123198号公報
ところで、電子機器の小型・軽量化に伴い、電子機器を構成する各電子部品についても小型薄層化が求められている。MLCCでは、誘電体層をさらに薄くし積層数をさらに増やして電極面積を拡大することにより、MLCCの体積を小型化しつつ静電容量を増大することが求められている。このような誘電体層および内部電極層の薄層化に応じて、例えば内部電極層を形成するために用いる粉末の平均粒子径は、共材で10nmレベルに、導電性粒子で数100nmレベルにまで微細化されている。したがって、特許文献1に開示された非導電性被覆部を備える共材を用意することは極めて困難となっている。
その一方で、誘電体層および内部電極層の薄層化に伴い、これまでは問題にはならなかったレベルでの導電性粒子の粒成長が問題となっている。例えば、導電性粒子が焼成時に過剰に粒成長することで、内部電極層が膨れて誘電体層が圧迫され、誘電体層の耐電圧の低下や信頼性の低下が引き起こされるという問題がある。また、導電性粒子がさらに粗大に粒成長すると、薄層化された誘電体層を突き破り、製品不良となって歩留まりの低下を引き起こすという問題がある。このような導電性粒子の粒成長は、焼成前の導電性ペースト塗膜において導電性粒子と誘電体粒子が均一に存在しておらず、導電性粒子同士の接点が多い箇所(すなわち、誘電体粒子が存在しない部分)が多数存在して、誘電体粒子による焼結抑制効果が発揮されないことにより生じると考えられる。また、このような導電性粒子と誘電体粒子の不均一性は、これらの粉末が微細になって表面活性が高まると、より一層顕著になり得る。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、導電性粉末と誘電体粉末との分散安定性が良好なために焼成時の異常粒成長等の問題が抑制されている導電性ペーストを提供することにある。
本発明者らの検討によると、導電性ペーストは、たとえ使用する原料が同じであっても、ペースト調製条件を調整することで、ペースト中での導電性粉末および誘電体粉末の分散状態を変化させることができる。そして、下記のとおり規定される「透過率変化速度」が0.003以下を実現するように、ペースト調製条件を様々に制御することで、これまでにない高いレベルの分散安定性を備える導電性ペーストが得られることを知見した。本技術は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、ここに開示される技術によって、導電性粉末と誘電体粉末と有機成分とを含む、導体膜の形成に用いられる導電性ペーストが提供される。ここで当該導電性ペーストに対して遠心沈降処理を施したときの上記導電性粉末および上記誘電体粉末の遠心沈降挙動を、上記遠心沈降方向に沿う透過率分布に基づいて算出される積分透過率の単位時間当たりの変化量として定義される透過率変化速度により評価したとき、上記透過率変化速度が0.003以下となるように調製されている。
上記構成によれば、導電性粉末と誘電体粉末が有機成分中に極めて安定に分散されているとともに、その分散状態を長期間維持できる導電性ペーストが実現される。この導電性ペーストによると、有機成分中に導電性粉末と誘電体粉末とが良好な分散状態で存在していることから、塗膜を形成したときにも導電性粉末同士が凝集したり接触したりすることが好適に抑制され、当該塗膜を焼成したときの粒成長が大幅に抑制される。このことにより、焼成後の導体膜における導電性粒子および誘電体粒子の寸法を小さく維持し、例えば導電性粒子の異常成長による誘電体層の突き破りを抑制することができる。その結果、品質と信頼性に優れた電子部品を作成することができる。
なお、本明細書において「透過率変化速度」とは、導電性ペーストについての光透過率分布プロファイルを経時的に取得することによって得られる、積分光透過率(T)の単位時間あたりの変化量(ΔT/Δt)を意味する。光透過率分布プロファイルは、導電性ペーストを遠心沈降処理したときのペースト中に含まれる粒子の沈降状態を、光透過法または光反射法等の光学的検知手段を利用して、ペーストの全領域に亘って遠心沈降方向に沿って光透過率または光反射率をリアルタイムにかつ直接的に測定することで得ることができる。ここに開示される発明では、この透過率変化速度を、導電性ペーストの分散安定性を評価する指標として採用している。このような粒子の遠心沈降状態は、後述の実施例に具体的に示す手法によって正確かつ定量的に計測することができる。
ここで開示される導電性ペーストの好ましい一態様では、上記導電性粉末のBET法に基づく平均粒子径をD、上記誘電体粉末のBET法に基づく平均粒子径をDとしたとき、0.03×D≦D≦0.4×Dを満たす。これにより、薄い導電膜を形成する場合でも、導電性粒子の隙間に誘電体粒子が好適に配置されて、焼成時の導電性粒子の異常粒成長を誘電体粉末によって好適に抑制することができる。
ここで開示される導電性ペーストの好ましい一態様では、上記導電性粉末のBET法に基づく前記平均粒子径Dは、0.5μm以下である。これにより、例えば厚みが約3μm以下程度の導体膜を高精度に形成することができる。
ここで開示される導電性ペーストの好ましい一態様では、上記導電性粉末が、ニッケル、白金、パラジウム、銀および銅のうちの少なくとも1つである。これにより、電気伝導性に優れた導体膜を好適に実現することができる。
ここで開示される導電性ペーストの好ましい一態様では、上記誘電体粉末が、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、およびジルコン酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つである。これにより、高誘電率の誘電体層との接合性に優れた導体膜を好適に実現することができる。
ここで開示される導電性ペーストの好ましい一態様では、積層セラミック電子部品の内部電極層を形成するために用いることができる。例えばチップタイプのMLCCは、誘電体層の更なる薄層化と高積層化とが求められている。このような薄い(例えば1μm以下)誘電体層の間に配置される内部電極層は、ここに開示される導電性ペーストを用いることで、表面平坦性が高く、電気的に連続でかつ均質なものとして好適に形成することができる。その結果、誘電体層の短絡やクラック等の発生が抑制された、小型・大容量で、かつ、高品質なMLCCを好適に実現することができる。
MLCCの構成を概略的に説明する断面模式図である。 未焼成のMLCC本体の構成を概略的に説明する断面模式図である。 (t)〜(t)は、導電性ペーストに対して遠心沈降処理を施したときの透過率分布とその時間変化の様子を説明する図である。 (a)導電性ペーストの透過率分布の時間変化と、(b)積分透過率の時間変化と、(c)透過率変化速度とについて説明する図である。 各例の導電性ペーストを焼成した導電膜において、SEM観察に基づき計測した(a)ニッケル粒子と(b)チタン酸バリウム粒子の粒度分布である。 例1および例4の導電膜の表面のSEM観察像である。 例4の導電膜についてニッケル(Ni)粒子とチタン酸バリウム(BT)粒子の粒径測定の様子を説明する図である。
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば、導電性ペーストの構成やその性状)以外の事柄であって、本発明の実施に必要な事柄(例えば、当該ペーストの原料の調製および基材への適用についての具体的手法、電子部品の構成等)は、本明細書により教示されている技術内容と、当該分野における当業者の一般的な技術常識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書において数値範囲を示す「A〜B」との表記は、A以上B以下を意味する。
[導電性ペースト]
ここで開示される導電性ペーストは、主たる構成成分として、(A)導電性粉末と、(B)誘電体粉末と、有機成分と、を含む。有機成分とは、典型的には(C)バインダおよび(D)分散媒からなるビヒクルと呼ばれる媒質である。そしてこの導電性ペーストは、焼成することによって、有機成分が消失し、(A)導電性粉末および(B)誘電体粉末が焼結されて導電性の焼結体(典型的には、導体膜)を形成する。導体膜を構成する主体である(A)導電性粉末と(B)誘電体粉末とは、通常、有機成分たるビヒクル中に分散されることでペーストを形成し、適度な粘性と流動性が付与されている。
さらに、ここに開示される導電性ペーストは、透過率変化速度が0.003以下となるように調製されている。このことにより、ビヒクル中に(A)導電性粉末と(B)誘電体粉末とが高度に分散されており、長期にわたって高い分散性が維持され得る。例えば、後述の4000rpmの遠心沈降処理が100分間施された場合であっても、(A)導電性粉末と(B)誘電体粉末とはその沈降が抑制されて、(A)導電性粉末および(B)誘電体粉末と、有機成分との完全分離は起こらない。このようなこれまでにない高い分散安定性は、導電性ペーストの構成材料の単独の性状というよりは、導電性ペーストにおける各構成材料の存在状態によって実現されていると考えられる。以下、ここに開示される導電性ペーストについて要素ごとに説明する。
(A)導電性粉末
導電性粉末は、電子素子等における電極、導線や電導膜等の電気伝導性(以下、単に「導電性」という。)の高い導体物(導体膜であり得る。)を主として形成するため材料である。したがって、導電性粉末は、所望の導電性を備える各種の材料の粉末を特に制限することなく用いることができる。このような導電性材料としては、例えば、具体的には、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)等の金属の単体、およびこれらの金属を含む合金等が例示される。導電性粉末は、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、特に限定されるものではないが、例えばMLCCの内部電極層を形成する用途で用いられる導電性ペーストについては、導電性粉末の融点が、誘電体層の焼結温度(例えば約1300℃)よりも低い金属種の使用が好ましい。そのような金属種の一例として、ロジウム、白金、パラジウム、銅、金等の貴金属と、ニッケルなどの卑金属とが挙げられる。なかでも、融点および導電性の観点では白金やパラジウム等の貴金属の使用が好ましいが、さらに安定して低価格である点を考慮するとニッケルを用いることが好ましい。
導電性粉末の製法や、導電性粉末を構成する粒子の寸法や形状等の性状は特に制限されない。たとえば、焼成収縮率を考慮して、目的とする電極の最小寸法(典型的には、電極層の厚みおよび/または幅)に収まる範囲であるとよい。例えば、導電性粉末の平均粒子径は、数nm〜数十μm程度、例えば10nm〜10μm程度であるとよい。
なお、本明細書において導電性粉末および誘電体粉末についての「平均粒子径(D)」とは、特にことわりのない限り、BET法に基づき測定された比表面積Sと当該粉末の比重ρとに基づき、次式:D=6/(S×ρ);により算出される値をいう。比表面積については後述する。
また、例えば、小型・大容量MLCCの内部電極層を形成する用途では、導電性粉末の平均粒子径は、内部電極層の厚み(積層方向の寸法)よりも小さいことが重要となる。換言すれば、内部電極層の厚みを超える粗大粒子を実質的に含有しないことが好ましい。かかる観点から、導電性粉末は、一例として、累積90%粒子径(D90)が3μm超過とならないことが好ましく、より好ましくは1μm超過、例えば0.5μm超過とならないことが好ましい。また平均粒子径(D50)については、凡そ1μm以下を目安とすることができ、典型的には0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.25μm以下、例えば0.2μm以下であるとよい。平均粒子径が所定値以下であると、導体膜を安定的に形成することができる。また、形成される導体膜の表面粗さを好適に抑えることができる。例えば、算術平均粗さRaを5nm以下のレベルにまで抑制することができる。
導電性粉末の平均粒子径の下限も特に制限されず、例えば0.005μm以上であってよく、概ね0.01μm以上、典型的には0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上、例えば0.12μm以上であるとよい。平均粒子径が小さすぎないことで、導電性粉末を構成する粒子の表面エネルギー(活性)を抑制でき、導電性ペースト中での粒子の凝集を抑制することができる。また、ペースト塗布層の密度を高めて、電気伝導性や緻密性の高い導体膜を好適に形成することができる。
導電性粉末の比表面積は特に限定されないが、概ね10m/g以下、好ましくは1〜8m/g、例えば2〜6m/gであるとよい。これにより、ペースト中での凝集が好適に抑えられ、ペーストの均質性や分散性、保存安定性をより良く向上することができる。また、電気伝導性に優れた導体膜をより安定して実現することができる。なお、比表面積は、例えば吸着質として窒素(N)ガスを用いたガス吸着法(定容量吸着法)によって測定されたガス吸着量に基き、BET法(例えばBET一点法)により算出された値をいう。
導電性粉末の形状は特に限定されない。例えばMLCC内部電極等の一部の電極形成用途の導電性ペーストにおける導電性粉末の形状は、真球状または略球状であるとよい。導電性粉末の平均アスペクト比は、典型的には1〜2、好ましくは1〜1.5であるとよい。これにより、ペーストの粘度を低めに維持して、ペーストのハンドリング性や、導体膜形成のための成膜時の作業性を向上することができる。また、ペーストの均質性をも向上することができる。
なお、本明細書における「アスペクト比」は、電子顕微鏡観察に基づいて算出され、粉末を構成する粒子に外接する矩形を描いたときの、短辺の長さ(a)に対する長辺の長さ(b)の比(b/a)を意味する。平均アスペクト比は、100個の粒子について得られたアスペクト比の算術平均値である。
導電性粉末の含有割合は特に限定されず、導電性ペーストの全体を100質量%としたときに、概ね30質量%以上、典型的には40〜95質量%、例えば45〜60質量%であるとよい。上記範囲を満たすことで、電気伝導性や緻密性の高い動体層を好適に実現することができる。また、ペーストのハンドリング性や、成膜時の作業性を向上することができる。
(B)誘電体粉末
ここに開示される導電性ペーストは、焼成後の導体膜を主として構成する成分として、上記の(A)導電性粉末に加え、(B)誘電体粉末を含むことができる。誘電体粉末は、導電性粉末を構成する粒子の間に配置されることで、例えば、導電性ペーストの焼成時に導電性粉末の低温からの焼結を抑制したり、熱収縮率および焼成収縮履歴や、焼成後の導電性膜の熱膨張係数を調整し得る成分である。誘電体粉末の作用は様々であってよいが、とりわけ、MLCCの内部電極層用の導電性ペーストに含まれる誘電体粉末は、誘電体層と共通または類似の組成であることで、誘電体層と内部電極層との焼結接合性を向上させる共材として好適に機能するために好ましい。
誘電体粉末についての誘電率は特に制限されず、目的の用途に応じて適宜選択することができる。一例として、高誘電率系のMLCCの内部電極層形成用の導電性ペーストに用いられる誘電体粉末については、比誘電率は、典型的には100以上であり、好ましくは1000以上、例えば1000〜20000程度である。このような誘電体粉末の組成については特に限定されず、各種の無機材料の中から用途等に応じて1種または2種以上を適宜用いることができる。誘電体粉末としては、具体的には、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ジルコニウム、チタン酸亜鉛、ニオブ酸マグネシウム酸バリウム、ジルコン酸カルシウム等のABOで表されるペロブスカイト構造を有する金属酸化物や、二酸化チタン(ルチル)、五酸化チタン、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、フォルステライト、酸化ニオブ、チタン酸ネオジウム酸バリウム、希土類元素酸化物等のその他の金属酸化物が典型例として挙げられる。上記内部電極層用途のペーストにおいては、誘電体粉末は、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸ストロンチウム、および、ジルコン酸カルシウム(CaZrO)等から好適に構成することができる。一方で、比誘電率が100未満の誘電体材料(延いては、絶縁性材料)を使用してもよいことはいうまでもない。
誘電体粉末を構成する粒子の性状、例えば粒子のサイズや形状等は、電極層の断面における最小寸法(典型的には、電極層の厚みおよび/または幅)に収まる限りにおいて、特に限定されない。誘電体粉末の平均粒子径は、例えばペーストの用途や電極層の寸法(微細度)等に応じて適宜選択することができる。目的の導電層について所定の導電性を確保しやすいとの観点から、誘電体粉末の平均粒子径は、上記導電性粉末の平均粒子径よりも小さいことが好ましい。誘電体粉末の平均粒子径をD、導電性粉末の平均粒子径をDとするとき、DおよびDは、通常はD>Dであることが好ましく、D≦0.5×Dがより好ましく、D≦0.4×Dがより好ましく、例えばD≦0.3×Dであってよい。また、誘電体粉末の平均粒子径Dが小さすぎると、誘電体粉末の凝集も生じやすくなるために好ましくない。かかる点において、凡その目安として、0.03×D≦Dが好ましく、0.05×D≦Dがより好ましく、例えば0.1×D≦Dであってよい。例えば、具体的には、誘電体粉末の平均粒子径は、概ね数nm以上が適切であり、5nm以上が好ましく、10nm以上であってよい。また、誘電体粉末の平均粒子径は、概ね数μm以下程度、例えば1μm以下、好ましくは0.3μm以下であってよい。一例として、MLCCの内部電極層を形成するための導電性ペーストにおいては、誘電体粉末の平均粒子径は、概ね数nm〜数百nm程度、例えば5〜100nmであってよい。
誘電体粉末の含有割合は特に限定されない。例えばMLCCの内部電極層を形成する用途等では、導電性ペーストの全体を100質量%としたときに、概ね1〜20質量%、例えば3〜15質量%であるとよい。また、導電性粉末100質量部に対する誘電体粉末の割合としては、例えば、概ね3〜35質量部、好ましくは5〜30質量部、例えば10〜25質量部であるとよい。これにより、導電性粉末の低温からの焼成を適切に抑制するとともに、焼成後の導体膜の電気伝導性、緻密性等を高めることができる。
(C)バインダ
バインダは、ここに開示される導電性ペーストにおける有機成分のうち、結着剤として機能する材料である。このバインダは、典型的には、導電性ペーストに含まれる粉末と基材との接合と、当該粉末を構成する粒子同士の結合とに寄与する。また、バインダは、後述の分散媒に溶解されてビヒクル(液相媒体であり得る)として機能する。このことにより、導電性ペーストの粘性を高めて粉末成分を均一かつ安定にビヒクル中に懸濁させ、粉末に対して流動性を付与するとともに、取り扱い性の向上に寄与する。このバインダは、焼成により消失されることを前提とした成分である。したがって、バインダは、導体膜の焼成時に燃え抜ける化合物であることが好ましい。典型的には、雰囲気によらず分解温度が500℃以下であることが好ましい。バインダの組成等については特に限定されず、この種の用途に使用されている公知の各種の有機化合物を適宜用いることができる。
このようなバインダとしては、例えば、ロジン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン系樹脂等の有機高分子化合物が挙げられる。使用する溶剤との組み合わせにもよるために一概には言えないが、例えば、無機酸化物粉末を含み、焼成温度が比較的高温となる導電性ペーストのバインダとしては、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、アクリル系樹脂等が好適である。
セルロース系樹脂は、無機酸化物粉末の分散性の向上に寄与し、また、導電性ペーストを印刷等に供した場合に印刷体(配線膜)の形状特性や印刷作業への適応性に優れることなどから好ましい。セルロース系樹脂は、β−グルコースを少なくとも繰り返し単位として含む重合体およびその誘導体の全般を意味する。典型的には、繰り返し単位であるβ−グルコース構造におけるヒドロキシ基の一部または全部をアルコキシ基に置換した化合物およびその誘導体であり得る。アルコキシ基(RO−)におけるアルキル基またはアリール基(R)は、その一部または全部が、カルボキシル基などのエステル基、ニトロ基、ハロゲン、他の有機基に置換されていてもよい。セルロース系樹脂としては、具体的には、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、プロポキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、カルボキシエチルメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ニトロセルロース等が挙げられる。
ポリビニルアルコール系樹脂は、無機酸化物粉末の分散性を良好にし、柔軟であるため導電性ペーストを印刷等に供した場合に印刷体(配線膜)の密着性、印刷性等に優れることなどから好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂は、ビニルアルコール構造を少なくとも繰り返し単位として含む重合体およびその誘導体の全般を意味する。典型的には、ビニルアルコールが重合した構造からなるポリビニルアルコール(PVA)や、このようなPVAをアルコールでアセタール化したポリビニルアセタール樹脂、およびこれらの誘導体等であってよい。なかでもPVAをブタノールでアセタール化した構造を有するポリビニルブチラール系樹脂(PVB)は、印刷体の形状特性が向上されるためにより好ましい。またこれらのポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアセタールを主モノマーとし、当該主モノマーに共重合性を有する副モノマーを含む共重合体(グラフト共重合を含む)などであってよい。副モノマーとしては、例えば、エチレン、エステル、(メタ)アクリレート、酢酸ビニルなどが挙げられる。ポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール化の割合は特に制限されず、例えば、50%以上が好ましい。
アクリル系樹脂は、粘着性および柔軟性に富み、焼成雰囲気に因らずに焼成残渣がより少ない点において好ましい。アクリル系樹脂としては、例えば、少なくともアルキル(メタ)アクリレートを構成モノマー成分として含む重合体およびその誘導体の全般を意味する。典型的には、構成モノマー成分としてアルキル(メタ)アクリレートを100質量%含むホモポリマーや、アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとし、当該主モノマーに共重合性を有する副モノマーを含む共重合体(グラフト共重合を含む)などであってよい。副モノマーとしては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、ビニルアルコール系モノマー、ジアルキルアミノ基,カルボキシル基,アルコキシカルボニル基等が導入された共重合性モノマーが挙げられる。アクリル系樹脂としては、具体的には、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、塩化ビニル/アクリルグラフト共重合樹脂、ビニルアセタール/アクリルグラフト共重合樹脂等が挙げられる。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」等の表記は、アクリレートおよび/またはメタクリレートを包括的に意味する用語として使用される。
上記のバインダは、いずれか1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また明示的に記載していないが、上記のいずれか2以上の樹脂のモノマー成分を共重合させた共重合体、ブロック共重合体などを用いてもよい。また、バインダの含有量は特に制限されない。バインダの含有量は、導電性ペーストの性状や、ペースト印刷体(乾燥膜を含む)の性状とを良好に調整するために、例えば、導電性粉末100質量部に対して、0.5質量部以上、好ましくは1質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上、例えば2質量部以上の割合であってよい。一方で、バインダ樹脂は焼成残渣が増大する可能性があることから過剰な含有は好ましくない。かかる観点から、バインダの含有量は、導電性粉末100質量部に対して、10質量部以下、好ましくは7質量部以下、より好ましくは5質量部以下、例えば4質量部以下とすることができる。
(D)分散媒
分散媒は、ここに開示される導電性ペーストにおける有機成分のうち、粉末を分散状態にするための液状媒体であり、例えば当該分散性を保ったまま優れた流動性を付与するための要素である。また、分散媒は、上記のバインダを溶解して、ビヒクルとして機能する。この分散媒も、乾燥、焼成により消失されることを前提とした成分である。分散媒については特に制限はなく、この種の導電性ペーストに用いられる有機溶剤を適宜用いることができる。例えば、バインダとの組み合わせにもよるが、成膜安定性等の観点からは、沸点が約180℃以上300℃以下程度、例えば、200℃以上250℃以下程度の高沸点有機溶剤を主成分(50体積%以上を占める成分。)とするとよい。
分散媒としては、例えば、具体的には、スクラレオール、シトロネロール、フィトール、ゲラニルリナロオール、テキサノール、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、イソボルネオール、ブチルカルビトール、ジエチレングリコール等のアルコール系溶剤;ターピネオールアセテート、ジヒドロターピネオールアセテート、イソボルニルアセテート、カルビトールアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート等のエステル系溶剤;ミネラルスピリット等が挙げられる。なかでも、アルコール系溶剤やエステル系溶剤を好ましく用いることができる。
導電性ペーストにおける(C)分散媒の割合は特に限定されないが、ペースト全体を100質量%としたときに、概ね70質量%以下、典型的には5〜60質量%、例えば30〜50質量%であるとよい。上記範囲を満たすことで、ペーストに適度な流動性を付与することができ、成膜時の作業性を向上することができる。また、ペーストのセルフレベリング性を高めて、より滑らかな表面の導体膜を実現することができる。
(E)その他添加剤
なお、ここに開示される導電性ペーストは、ここに開示される技術の効果を著しく損ねない範囲において、一般的な導電性ペーストに使用し得ることが知られている各種の有機添加剤を含むことができる。このような有機添加剤とは、例えば、分散剤、増粘剤、可塑剤、pH調整剤、安定剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、防腐剤、着色剤(顔料、染料等)等である。例えば、導体膜を構成する主体である、導電性粉末および誘電体粉末等の粉末を用いる場合、平均粒子径が1μm未満程度になると、当該粉末は特別な表面処理等を施していない限り、ペースト調製中およびペースト調製直後において凝集してしまうことがある。この傾向は、導電性粉末等として、表面活性が顕著に高まり得る超微粉やナノ粒子(例えば、平均粒子径が0.5μm以下の粉末)を用いた場合等にさらに顕著となる。したがって、ここに開示される導電性ペーストは、その他の添加剤として、分散剤を好ましく含むことができる。
分散剤は、粉末を分散媒中に分散させたときに、粉末を構成する粒子同士の凝集を抑制し、粒子を分散媒中に均一に分散させる成分である。分散剤は、粒子の固体表面に直接的に吸着して、粒子と分散媒との間の固液界面を安定化させる機能を備えている。分散剤は、導電性ペーストの焼成時に燃え抜けることが好ましい。換言すると、分散剤は、分解温度が導電性ペーストの焼成温度よりも十分に低い(典型的には600℃以下)ことが好ましい。
分散剤の種類等については特に限定されず、公知の各種の分散剤の中から必要に応じて1種または2種以上を用いることができる。典型的には、後述するビヒクル(バインダおよび分散媒の混合物)対して十分な相溶性を有するものを適宜選択して用いることができる。分散剤の分類の仕方は様々であり得るが、分散剤としては、いわゆる界面活性剤型分散剤(低分子型分散剤ともいう。)、高分子型分散剤、無機型分散剤等のいずれのものであってもよい。また、これらの分散剤は、アニオン性、カチオン性、両性または非イオン性のいずれであってもよい。換言すれば、分散剤は、分子構造中に、アニオン性基、カチオン性基、両性基およびノニオン性基の少なくとも1種の官能基を有する化合物であり、典型的にはこの官能基が粒子の固体表面に直接的に吸着し得る化合物であるとよい。なお、界面活性剤とは、分子構造内に親水性部位と親油性部位を備え、これらが共有結合で結合した化学構造を有する両親媒性物質をいう。
分散剤としては、界面活性剤型分散剤として、例えば、具体的には、アルキルスルホン酸塩を主体とする分散剤、第四級アンモニウム塩を主体とする分散剤、高級アルコールのアルキレンオキサイド化合物を主体とする分散剤、多価アルコールエステル化合物を主体とする分散剤、アルキルポリアミン系化合物を主体とする分散剤等が挙げられる。高分子型分散剤として、例えば、カルボン酸あるいはポリカルボン酸等の脂肪酸塩を主体とする分散剤、およびその一部のカルボン酸基における水素原子がアルキル基によって置換されたポリカルボン酸部分アルキルエステル化合物を主体とする分散剤、ポリカルボン酸アルキルアミン塩を主体とする分散剤、ポリカルボン酸の一部にアルキルエステル結合を有するポリカルボン酸部分アルキルエステル化合物を主体とする分散剤、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリイソプレンスルホン酸塩、ポリアルキレンポリアミン化合物を主体とする分散剤、ナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩等のスルホン酸系化合物を主体とする分散剤、ポリエチレングリコール等の親水性ポリマーを主体とする分散剤、ポリエーテル化合物を主体とする分散剤、ポリ(メタ)アクリル酸塩、ポリ(メタ)アクリルアミドなどのポリ(メタ)アクリル系化合物を主体とする分散剤、等を挙げることができる。無機型分散剤として、例えば、オルトリン酸塩、メタリン酸塩、ポリリン酸塩、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、および有機リン酸塩等のリン酸塩、硫酸第二鉄、硫酸第一鉄、塩化第二鉄、および塩化第一鉄等の鉄塩、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、およびアルミン酸ナトリウム等のアルミニウム塩、硫酸カルシウム、水酸化カルシウム、および第二リン酸カルシウム等のカルシウム塩を主体とする分散剤等が挙げられる。
なお、上記の分散剤は、いずれか1種が単独で含まれていてもよく、2種以上が組み合わせて含まれていてもよい。また分散剤の種類は特に限定されず、より微細な導電性粉末および誘電体粉末を、少量の分散剤の添加で長期にわたって効果的に分散させるとの目的からは、立体障害による反発効果を発現し得る高分子型分散剤を使用すると好適である。この場合の分散剤の重量平均分子量は特に制限されないが、好適な一例として、300〜50000程度、例えば500〜20000とすることが好ましい。
なお、上記の有機添加剤は、いずれか1種が単独で含まれていてもよく、2種以上が組み合わせて含まれていてもよい。また上記有機添加剤の含有量は、ここに開示される導電性ペーストの性状を著しく阻害しない範囲において適宜調整することができる。例えば、当該有機添加剤の性状とその目的とに応じて適切な割合で含有することができる。大まかには、例えば、分散剤は、一般的には、粉末成分の総質量に対して約5質量%以下、例えば3質量%以下、典型的には1質量%以下であって、約0.01質量%以上の割合で含まれる。なお、導電性粉末や無機粉末の焼結性等を阻害する成分や、これらを阻害するような量での添加剤の含有は好ましくない。かかる観点から、有機添加剤を含む場合は、これらの成分の総含有量が、導電性ペースト全体の約10質量%以下であるのが好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が特に好ましい。
導電性ペーストは、一般的には、有機成分である(C)バインダと(D)分散媒とを予め混合してビヒクルを調製したのち、このビヒクルに(A)導電性粉末と(B)誘電体粉末とを混合、混練することで調製される。ここに開示される導電性ペーストにおいては、透過率変化速度を0.003以下に抑え、ペースト中での(A)導電性粉末および(B)誘電体粉末の高分散安定性を実現するように、上記構成材料を混ぜ合わせることが肝要となる。このような導電ペーストの調製法は、上記の透過率変化速度を実現できる範囲において特に制限されない。導電ペーストの調製法の一例としては、後述の実施例で詳細に説明するが、(A)導電性粉末と(B)誘電体粉末とを予め別々の(D)分散媒中に分散させてスラリー状に調製しておき、その後、導電性粉末と誘電体粉末とをスラリーの形態で混合することで、両者を分散性よく混ぜ合わせることができる。
なお、有機成分のうちの(C)バインダは、最初から(A)導電性粉末を含むスラリー(以下、導電性粉末スラリーという。)や(B)誘電体粉末を含むスラリー(以下、誘電体粉末スラリーという。)中に添加すると、これらの粉末を高分散させることの妨げになり得る。そこで、(C)バインダについては、(D)分散媒の一部と混合することで予めビヒクルを調製しておき、導電性粉末スラリーと誘電体粉末スラリーとの混合スラリーに対してビヒクルの状態で混合することが好適である。このようにして調製される導電性ペーストの透過率変化速度は、0.003未満が好ましく、0.0025以下がより好ましく、0.002以下が特に好ましい。このような導電性ペースト(混合スラリー)は、その高分散状態を長期にわたって強く維持することができるために好ましい。
ここで、予め調製しておく導電性粉末スラリーと誘電体粉末スラリーとは、それぞれのスラリー中に導電性粉末または誘電体粉末を従来に無いほど好適な状態で高度に分散させておくことが好ましい。このような分散条件とは、対象とする導電性粉末および誘電体粉末の材質(組成等)や平均粒子径、ペースト濃度、使用する撹拌装置または分散装置等の構成にもよるために一概には言えない。例えば、一例として、従来行っていた撹拌処理における撹拌強度を1とすると、ここに開示される技術において導電性粉末スラリーおよび誘電体粉末スラリーを調製する際の撹拌強度は、例えば、0.1(倍)以上とすることができ、0.5以上であってよく、例えば1以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、1.8以上がさらに好ましく、2以上が特に好ましい。撹拌強度の上限は装置構成の上限とすることができ、例えば、従来行っていた撹拌処理における撹拌強度を1とすると5程度を目安とすることができる。そして透過率変化速度の調整に際しては、例えば、予め所望の配合の導電性ペーストを作製して透過率変化速度を確認し、その透過率変化速度が0.003以下となるように当該導電性ペーストの撹拌条件を少しずつ調整してゆくとよい。より具体的には、例えば従来法で撹拌強度を30m/s程度に設定してペーストを調製していた場合、30〜60m/s程度の範囲、例えば45〜60m/s程度の範囲に撹拌強度を高めることが例示される。また一方で、従来法で撹拌強度を7m/sに程度に設定してペーストを調製していた場合、7〜20m/s程度の範囲、例えば10〜20m/s程度の範囲に撹拌強度を高めることが例示される。
またこのとき、少なくとも導電性粉末スラリーについては、媒体レスの撹拌装置または分散装置を用いて撹拌・分散処理を行うとよい。なお、媒体レスの撹拌装置または分散装置とは、撹拌または分散対象である流体に衝撃等の撹拌・分散作用を及ぼすための硬質媒体(例えば、粉砕部材、可動部材、メディアなどともいう。)を備えていない撹拌または分散装置をいう。この媒体レスの撹拌または分散装置の駆動力は、例えば、圧縮空気、スチーム、加熱気流等の高速流体、超音波、キャビテーションバブル等であり、かかる駆動力による衝撃や衝動、粒子の相互衝突、相互摩擦等によって、撹拌または分散作用が発現される。例えば、気流粉砕式ミル、ジェットミル、超音波ジェットミル、クロスジェットミルなどが例示される。この媒体レスの撹拌・分散装置によると、撹拌・分散対象である流体に含まれる固体一次粒子に、硬質媒体が直接的に接触するなどして作用し、一次粒子の変形、例えば箔化等をもたらすことがない。
一方の誘電体スラリーについては、撹拌装置または分散装置になんら制限はない。たとえば上記の媒体レスの撹拌装置または分散装置を用いてもよいし、媒体式の撹拌装置または分散装置を用いてもよい。改めて例示するまでも無いが、媒体式の撹拌・分散装置としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、コロイドミル、ハンマーミル、乳鉢、ディスク粉砕機、ローラーミル等が挙げられる。
このように予め導電性粉末と誘電体粉末とを分けて高分散なスラリーを調製しておくことで、両者を混合したときにいずれかの粒子の凝集が好適に抑制されて、高い分散状態を実現することができる。その結果、例えば導電性ペーストに遠心沈降処理を施して加速的に沈降を促した場合であっても、ここに開示される導電性ペーストについては導電性粉末および誘電体粉末の沈降が高度に抑制される。なお、分散剤を含む態様では、導電性粉末スラリー、誘電体粉末スラリーおよび導電性ペーストのいずれについても、分散剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。分散剤を含むスラリーについては、粉体材料と分散剤とを同一のタイミングで、あるいは異なるタイミングで、分散媒中に撹拌・分散させることができる。
ここに開示される導電性ペーストは、上述のとおり、導電性粉末および誘電体粉末の分散安定性が極めて高い。したがって、導電性ペーストの基材への供給は、公知の各種の供給手法を特に制限することなく採用することができる。このような供給手法としては、例えばスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷およびインクジェット印刷等の印刷法や、スプレー塗布法、ディップコーティング法等が挙げられる。特にMLCCの内部電極層を形成する場合、高速印刷が可能なグラビア印刷法、スクリーン印刷法等を好適に採用することができる。
[用途]
ここに開示される導電性ペーストは、上述のように、例えば、4000rpmでの遠心沈降処理を100分間連続して施した場合であっても、導電性ペーストに含まれる粒子が完全に沈降して分散媒と分離することなく、その沈降が抑制されている。この遠心沈降処理の条件は、例えば、導電性ペーストを静置することによる沈降処理プロセスの数ヶ月〜数年分程度に相当する加速試験である。したがって、この導電性ペーストは、ペースト調製後の長期保管性に優れており、例えば、量産工程において一度に多量のペーストを調製して長時間にわたって使用する(印刷に供する)こともできる。このような特徴は、この導電性ペーストを使用して形成される印刷塗膜の印刷性を安定させることにも繋がり、例えば、印刷塗膜の厚み、密度等の均質性の向上にも寄与する。また、印刷塗膜においても、導電性粉末と誘電体粉末とが高度に分散した状態を維持しうる。その結果、かかる印刷塗膜を焼成しても、導電性粒子の焼結および異常粒成長が好適に抑制される。この点においても、この導電性ペーストは、焼成後の導体膜の均質性や表面平滑性等が特に要求される用途で好ましく用いることができる。代表的な用途としては、積層セラミック電子部品における電極層の形成が挙げられる。ここで開示される導電性ペーストは、例えば、各辺が5mm以下、例えば1mm以下の小型のMLCCの内部電極層の形成に好適に用いることができる。とりわけ、誘電体層の厚みが1μm以下レベルの小型・大容量タイプのMLCCの内部電極の作成に好適に用いることができる。
なお、本明細書において、「セラミック電子部品」とは、結晶質のセラミック基材あるいは非晶質のセラミック(ガラスセラミック)基材を有する電子部品一般を意味する用語である。例えば、セラミック製の基材を含むチップインダクタ、高周波フィルター、セラミックコンデンサ、高温焼成積層セラミック基材(High Temperature Co-fired Ceramics:HTCC)基材、低温焼成積層セラミック(Low Temperature Co-fired Ceramics:LTCC)基材等は、ここでいう「セラミック電子部品」に包含される典型例である。
セラミック基材を構成するセラミック材料としては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)、酸化ジルコニウム(ジルコニア:ZrO)、酸化マグネシウム(マグネシア:MgO)、酸化アルミニウム(アルミナ:Al)、二酸化ケイ素(シリカ:SiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(チタニア:TiO)、酸化セリウム(セリア:CeO)、酸化イットリウム(イットリア:Y)等の酸化物系材料;コーディエライト(2MgO・2Al・5SiO)、ムライト(3Al・2SiO)、フォルステライト(2MgO・SiO)、ステアタイト(MgO・SiO)、サイアロン(Si−AlN−Al)、ジルコン(ZrO・SiO)、フェライト(MO・Fe)等の複合酸化物系材料;窒化ケイ素(シリコンナイトライド:Si)、窒化アルミニウム(アルミナイトライド:AlN)、窒化ホウ素(ボロンナイトライド:BN)等の窒化物系材料;炭化ケイ素(シリコンカーバイド:SiC)、炭化ホウ素(ボロンカーバイド:BC)等の炭化物系材料;ハイドロキシアパタイト等の水酸化物系材料;などが挙げられる。これらは1種を単独で含んでもよいし、2種以上を混合た混合物として、あるいは2種以上を複合化した複合体として含んでもよい。
[積層セラミックコンデンサ]
図1Aは、積層セラミックコンデンサ(MLCC)1を模式的に示した断面図である。MLCC1は、多数の誘電体層20と内部電極層30とが、交互にかつ一体的に積層されて構成された、チップタイプのコンデンサである。誘電体層20と内部電極層30とからなる積層チップ10の側面に、一対の外部電極40が設けられている。一例として、内部電極層30は、積層順で交互に異なる外部電極40に接続される。このことにより、誘電体層20とこれを挟む一対の内部電極層30とからなるコンデンサ構造が、並列に接続された、小型大容量のMLCC1が構築される。MLCC1の誘電体層20は、セラミックにより構成されている。内部電極層30は、ここに開示される導電性ペーストの焼成体によって構成される。このようなMLCC1は、例えば、以下の手順によって好適に製造される。
図1Bは、未焼成の積層チップ10(未焼成の積層体10’)を模式的に示した断面図である。MLCC1の製造に際しては、まず、基材としてのセラミックグリーンシート(誘電体グリーンシート)を用意する。ここでは、例えば、誘電体材料としてのセラミック粉末とバインダと有機溶剤等とを混合して誘電体層形成用のペーストを調製する。次に、調製したペーストをドクターブレード法等によりキャリアシート上に薄層状に供給することで、未焼成のセラミックグリーンシート20’を複数枚用意する。
次に、ここに開示される導電性ペーストを用意する。具体的には、少なくとも導電性粉末(A)と誘電体粉末(B)とバインダ(C)と分散媒(D)とを準備し、これらを所定の割合で配合し、透過率変化速度が0.003以下となるように撹拌、混合することで導電性ペーストを調製する。そして調製したペーストを、用意したセラミックグリーンシート20’上に所定のパターンかつ所望の厚み(例えば、1μm以下)になるように供給し、導電性ペースト塗布層30’を形成する。ここに開示される導電性ペーストは、分散安定性が顕著に高められている。したがって、MLCCの量産に際し、セラミックグリーンシート20’への導電性ペースト塗布層30’の形成(印刷)が連続して長時間にわたっても、導電性ペーストの性状が安定しているために印刷品質も良好に安定させることができる。
用意した塗布層30’付きのセラミックグリーンシート20’は、複数枚(例えば、数百〜数千枚)を積層して圧着する。この、積層圧着体は、必要に応じてチップ形状に切断する。これにより、未焼成の積層体10’を得ることができる。次いで、作製した未焼成積層体10’を、適当な加熱条件(例えば、窒素含有雰囲気中、約1000〜1300℃程度の温度)で焼成する。これにより、セラミックグリーンシート20’と導電性ペースト塗布層30’とは同時に焼成される。セラミックグリーンシートは焼成されて、誘電体層20となる。導電性ペースト塗布層30’は、焼成されて内部電極層30となる。誘電体層20と電極層30とは一体的に焼結されて、焼結体(積層チップ10)を得ることができる。なお、上記焼成に先行して、バインダおよび分散媒等の有機成分を消失させるために、脱バインダ処理(例えば、酸素含有雰囲気中、焼成温度よりも低い温度:例えば約250〜700℃;での加熱処理)を施してもよい。その後、積層チップ10の側面に外部電極材料を塗布して焼き付けることにより、外部電極40を形成する。これにより、MLCC1を製造することができる。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明を係る実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
[導電性ペーストの調製]
(例1)
以下の手順で、下記の表1に示す配合Aの例1の導電性ペーストを調製した。
すなわち、まず、(1)ニッケル粉末と有機溶剤と分散剤とを配合し、無媒体式高速分散装置を用いて分散処理を行うことでニッケルスラリーを用意した。
次いで、(2)チタン酸バリウム粉末と有機溶剤と分散剤とを配合し、媒体式ミルで分散処理を行うことでチタン酸バリウムスラリーを用意した。
そして、(3)用意したニッケルスラリーとチタン酸バリウムスラリーと分散剤とを、無媒体式高速分散装置を用いて分散・混合することで、ニッケル・チタン酸バリウム混合スラリーとした。
その後、(4)このニッケル・チタン酸バリウム混合スラリーに、別途調製したビヒクルと有機溶剤とを加え、無媒体式高速分散装置で混合することで導電性ペーストを得た。
なお、ペーストの調製に際し、配合Aでは、ニッケル粉末(Ni)は平均粒子径が180nmのものを、チタン酸バリウム粉末(BT)は平均粒子径が10nmのものを用い、ニッケル粉末に対するチタン酸バリウム粉末の割合が10質量%となるようにしている。なお、これらのニッケル粉末およびチタン酸バリウム粉末に対しては、特別な表面処理等の分散処理は施していない。また、有機溶剤としてはジヒドロターピネオールを、分散剤としてはカルボン酸系分散剤を用いた。ビヒクルについては、定法に従い、バインダとしてのエチルセルロースと有機溶剤とを予め加熱混合したものを用いた。
(例2〜4)
次いで、例1の導電性ペーストの調製に際し、(1)ニッケルスラリーと(2)チタン酸バリウムスラリーの調製時の分散処理の強度(周速や回転数)を変化させ、分散剤の割合を変更することで、ペースト中でのニッケル粉末やチタン酸バリウム粉末の分散態様を変化させた。そしてその他の条件は例1と同様にすることで、例2〜4の導電性ペーストを得た。
ただし、例1〜4の導電性ペーストは、分散処理条件として、撹拌速度を約8〜60m/sの範囲で変化させている。
(例5)
例1の導電性ペーストの調製に際し、配合Aに代えて表1に示す配合Bを採用し、分散処理条件およびその他の条件は例1と同様にして、例5の導電性ペーストを得た。なお、配合Bでは、ニッケル粉末は平均粒子径が300nmのものを、チタン酸バリウム粉末は平均粒子径が50nmのものを用いた。使用する粉体の粒径を大きくしたため、ニッケル粉末に対するチタン酸バリウム粉末の割合を15質量%と増加させ、分散剤量は減少させるようにしている。
(例6)
例4の導電性ペーストの調製に際し、配合Aに代えて表1に示す配合Bを採用し、分散処理条件およびその他の条件は例4と同様にして、例6の導電性ペーストを得た。
例5と例6の導電性ペーストは、配合はほぼ同じであるが、分散処理の条件がそれぞれ例1と例4とに対応して異なっている。
[透過率変化速度の測定]
用意した例1〜6の導電性ペーストについて、以下の手順で透過率変化速度を測定した。
まず、各例の導電性ペーストを、この種の導電性ペーストについての分散安定性の評価に適した濃度である、固形分濃度10質量%に希釈した。希釈には、有機溶剤としてのジヒドロターピネオールを用いた。なお、希釈に際しては、いわゆるソルベントショックが生じないように、導電性ペーストを撹拌しながら有機溶剤をビュレットで滴下して混合するようにした。具体的には、100mLのビーカーに導電性ペーストを10g測りとり、小型撹拌機(6枚羽根使用、回転数約200rpm)を用いてビーカー中の導電性ペーストを撹拌しながら、有機溶剤を約2mLずつ、約5秒間隔で添加するようにした。有機溶剤の添加量は、例えば、例1の導電性ペースト10gについては45gであった。
用意した希釈ペーストについて、分散安定性分析装置(LUM GmbH社製、ルミフュージ(LUMiFuge))を用いて、透過率特性を測定した。測定には分析装置用のポリアミド製の角管状の使い捨てサンプルセル(セルコード3、LUM 2mmPA、測定容量0.4〜0.5mL、測定光路長2mm)を用いた。このサンプルセルは、0.4mLの試料を収容して測定に供するように構成されており、0.4mLの試料の上面は、全長82mmのサンプルセルの底から23mmの地点に位置する。希釈ペーストは、シリンジを用いて0.4mLを秤量して、セルの底からゆっくりとセルに充填したのち、キャップをして測定に供した。
サンプルセルは、分散安定性分析装置のローターに水平に(セルの長手方向が遠心方向と一致するように)セットして測定を開始した。
この分散安定性分析装置は、ローターを回転させることでサンプルセルに収容したスラリーに対して遠心沈降処理を施し、同時に、スラリーの液面およびスラリー中の粒子の沈降状態を光学的に検知することによってその場で直接測定することができる。なお、粒子沈降状態の光学的検知は、近赤外レーザーを発振するライン光源によってサンプルセルに対して長手方向に沿って平行となるようにレーザー光を照射し、その透過光の強度をCCDラインセンサによって検出することで実施する。本実施形態では、遠心状態でサンプルセルの底から23mmの範囲に存在する試料のうち、スラリーの液面から19mmの領域を含むように透過光強度の測定を行った。また、本実施形態では、サンプルセルの位置情報と、その位置における透過率のプロファイルを、所定の測定期間、リアルタイムで取得することで、透過率の時間プロファイルを得た。測定条件は、以下のとおりとした。
測定温度:25.0℃
透過率測定波長:865nm
光源強度:1(標準)
回転数:4000rpm
測定間隔:10秒
測定時間:6200秒間(ただし、分析対象は6000秒まで)
例えば図2の(t)に示すように、サンプルセルに収容されたスラリーは、最初は均一な濃度で粒子が分散しており、透過率も一定である。しかしながら、(t)、(t)に示すように、遠心沈降が進むにつれてスラリー中の粒子はセル底面(回転半径方向の外側)に向けて移動(沈降)する。このことにより、回転半径方向の内側からサンプルセルの所定の位置のスラリー濃度は徐々に低くなってゆき、当該位置におけるスラリーの透過率は徐々に高くなってゆく。上記測定では、サンプルセルの全測定長に亘る透過率分布の時間変化プロファイルを得ることができる。
そこで、図3の(a)に示すようにサンプルセルの所定の測定領域について透過率(光透過率)を積分し、例えば(b)に示すようにその積分透過率と測定時間との関係をプロットしたときの傾きを「透過率変化速度」と定義する。粒子の沈降は、遠心沈降処理の当初は定常的に進行するが、粒子がセル底面に到達するとそれ以上は進まず飽和状態となる。ここに開示される技術においては、(c)に示すように、この種のペーストについて粒子の沈降がおおよそ定常的に進行すると考えることができる0〜6000秒までの測定期間における積分透過率(T)の単位時間当たりの変化量(ΔT/Δt)を「透過率変化速度」として採用するようにしている。透過率変化速度は、値が大きいほど沈降が速く分散安定性が悪いことを意味し、値が小さいほど沈降が遅く分散安定性が良好なことを意味する。また、本実施形態では、サンプルセルの試料上面(液面)から19mmまでの領域について透過率変化速度を算出した。これに従い、各導電性ペーストについて透過率変化速度を算出した結果を、下記の表2に示した。なお、透過率の測定に用いる光(ここではレーザー光)の波長は、上記の例に制限されない。
[焼結性の評価]
次いで、用意した例1〜6の導電性ペーストにおける粒子の分散状態が焼結性に与える影響を確認するために、各導電性ペースト導電性膜を作製し、焼結性の評価を行った。
まず、各例の導電性ペースト約3gを、フィルムアプリケーターにより膜厚250μmでPET製フィルム上に塗布した。その後、温風乾燥機にて、設定温度を100℃、乾燥時間を15分間として処理することで乾燥塗膜を得た。次いで、乾燥塗膜をPET製フィルムから剥離し、N雰囲気中で、昇温速度200℃/hで加熱し、到達温度600℃で20分間保持することで、脱バインダ処理を行った。そして引き続き、(N+1%H)雰囲気中で、昇温速度200℃/hで加熱し、到達温度1200℃で10分間保持することで本焼成を行い、導電性膜を得た。
走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて焼成後の導電性膜の表面(PET製フィルムに接していなかった側の表面)を観察し、焼成後のニッケル粒子とチタン酸バリウム粒子との焼結後平均粒子径を測定した。
具体的には、まず焼成後の導電性膜の表面を30秒間ほどAu蒸着することでSEM観察用試料を用意した。そして観察倍率を10000倍に設定して得られたSEM像に基づき、ニッケル粒子およびチタン酸バリウム粒子の面積円相当径(Heywood径)を求めた。円相当径は、約4〜6視野のSEM像のなかから粒界が識別できる約70個のニッケル粒子およびチタン酸バリウム粒子をそれぞれ選出し、画像処理ソフトを用いて各粒子の輪郭を設定することで円相当径を算出した(図6参照)。そして、約70個の各粒子について得た面積円相当径の個数基準の粒度分布における積算50%粒子径(D50)を、当該導電性膜におけるニッケル粒子またはチタン酸バリウム粒子の平均粒子径とした。また個数基準の粒度分布における積算90%粒子径(D90)についても同様に算出し、これらの結果を以下の表3と図4に示した。
また参考のために、図5に、例1および例4の導電性ペーストを用いて作製した導電性膜のSEM観察像(20000倍)を示した。加えて、図6に、例4に係る導電性膜のSEM観察像(10000倍)について、ニッケル粒子(Ni)およびチタン酸バリウム粒子(BT)の平均粒子径を測定するために粒子の輪郭をトレースする様子を併せて示した。
表2に示されるように、用いる原料は同じであっても、その調製方法を変化させることで、得られる導電性ペーストの透過率変化速度が大きく異なり得ることがわかった。本実施形態においては、例1〜4のニッケルスラリーおよびチタン酸バリウムスラリーの撹拌強度を8〜60m/sの範囲でそれぞれ変化させた。同様に、例5〜6のニッケルスラリーおよびチタン酸バリウムスラリーの撹拌強度も8〜60m/sの範囲でそれぞれ変化させた。その結果、例えば例1および例5の導電性ペーストについては透過率変化速度が小さくなって分散安定性が高められ、例4および例6の導電性ペーストについては透過率変化速度が大きくなって分散安定性が低くなることがわかった。このように、得られた導電性ペーストにおけるNi粒子とBT粒子の分散状態および分散安定性が変化されたとき、これらの粒子の分散安定性は、透過率変化速度を指標として用いることで好適に表現(数値化)できると考えられる。
その一方で、表2、3に示されるように、透過率変化速度が小さいペーストほど焼成後に得られる導体膜におけるNi粒子およびBT粒子のD50およびD90が小さく、例えば図5の例1に示されるように、焼成による各粒子の粒成長が抑制されていることがわかった。また、透過率変化速度が大きいペーストほど、焼成後に得られる導体膜におけるNi粒子およびBT粒子のD50およびD90が大きく、例えば図5の例4に示されるように、焼成による粒成長が抑制されないことがわかった。このことから、ここに開示される導電性ペーストについての透過率変化速度は、当該導電性ペーストの焼成時の粒成長挙動をあらかじめ把握する指標としても好適に使用できることがわかった。
より具体的には、図4(a)に示すように、例1、5の導体膜におけるNi粒子の粒度分布は最大頻度が高くて極めてシャープである。例1および例5については、原料として用いたNi粉末の平均粒子径が180nmと300nmとで異なっているにもかかわらず、焼結後のNi粒子の粒度分布はほぼ同じ形状となり、透過率変化速度が小さいとNi粒子の成長がいずれも高いレベルで抑制されていることがわかる。例2の導体膜のNi粒子の粒度分布については、最大頻度はやや低くなるものピーク幅は例1と同様の狭さを維持している。これに対し、例えば、例3および例4の導電膜におけるNi粒子の粒度分布については、粗大な粒子の存在が増えてブロードになってしまい、例4に至っては粗大粒子の数が大幅に増えて粒度分布に左肩(第二ピーク)が形成されることがわかった。例6の導電膜におけるNi粒子は、例4のNi粒子よりも焼結によって著しく粒成長することがわかった。また、図4(b)に示すように、BT粒子はNi粒子よりも微細なために焼成による粒成長が顕著になるものの、表3に示すように、Ni粒子と概ね同様の挙動を示すことがわかった。
以上のことから、透過率変化速度が小さい例1の導電性ペーストを用いて形成された導体膜は、原料粒子の焼成時の粒成長が抑制されて、より厚みが薄く表面が平坦で、均質な導体膜を形成し得ることがわかった。詳細は明らかではないが、例えば例1、5の導電性ペーストについては、例えばNi粒子および微細なBT粒子が凝集することなく、ペースト状態でも、塗膜形成時においても、Ni粒子同士の間にBT粒子が好適に配置されていると考えられる。そしてこのことにより、焼成時のNi粒子の焼結および粒成長を好適に抑制できるものと考えられる。これに対し、透過率変化速度が大きい例4、6の導電性ペーストについては、例えば微細なBT粒子が凝集するなどして、Ni粒子同士の接触を好適に抑制できていないものと考えられる。このことにより、焼成時にNi粒子およびBT粒子がそれぞれ著しく粒成長してしまうものと考えられる。例えば、導電性ペーストの透過率変化速度が0.003以下であれば、ペースト中での粒子の分散安定性が高く、より微細な焼結粒子によって構成される導体膜が得られるといえる。また、導電性ペーストの透過率変化速度が0.003よりも高いと、ペースト中での粒子の分散安定性が低く、塗膜を形成したときに同種の粒子同士がより高い頻度で接触して、焼成により容易に粒成長してしまうと考えられる。
ここに開示される導電性ペーストを用いることで、導電性粒子の異常粒成長を抑制して導体膜を形成することができる。これにより、例えばMLCCの製造において内部電極層の膨れや、導電性粒子による薄層化された誘電体層の突き破りを抑制し、耐電圧および信頼性の高いMLCCを製造することができる。
以上、本発明を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、本発明はその主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
1 MLCC
10 積層コンデンサ部分
10’ 未焼成の積層体
20 誘電体層
20’ セラミックグリーンシート
30 内部電極層
30’ 導電性ペースト塗布層
40 外部電極

Claims (6)

  1. 導体膜の形成に用いられる導電性ペーストであって、導電性粉末と誘電体粉末と有機成分とを含み、
    当該導電性ペーストを固形分濃度10質量%に希釈した希釈ペーストに対して、次の条件、
    回転数:4000rpm、
    測定時間:少なくとも6000秒間、
    で回転させる遠心沈降処理を施したときの前記導電性粉末および前記誘電体粉末の遠心沈降挙動を、遠心沈降方向に沿う透過率分布に基づいて算出される積分透過率の単位時間当たりの変化量として定義される透過率変化速度により評価したとき、
    前記透過率変化速度は、0.003以下となるように調製されている、導電性ペースト。
  2. 前記導電性粉末のBET法に基づく平均粒子径をD、前記誘電体粉末のBET法に基づく平均粒子径をDとしたとき、0.03×D≦D≦0.4×Dを満たす、請求項1に記載の導電性ペースト。
  3. 前記導電性粉末のBET法に基づく平均粒子径は、0.5μm以下である、請求項1または2に記載の導電性ペースト。
  4. 前記導電性粉末が、ニッケル、白金、パラジウム、銀および銅からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
  5. 前記誘電体粉末が、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、およびジルコン酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
  6. 積層セラミック電子部品の内部電極層を形成するために用いられる、請求項1から5のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
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