JP6636358B2 - フライアッシュセメントの品質または製造条件の予測方法 - Google Patents

フライアッシュセメントの品質または製造条件の予測方法 Download PDF

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Description

本発明は、ニューラルネットワークを用いたフライアッシュセメントの品質または製造条件の予測方法に関する。
セメントの一部を石炭灰で置換したフライアッシュセメントは、石炭灰から溶出するSiやAlがフライアッシュ粒子の近傍にあるセメント水和物の中に取り込まれ、低Ca型のC−S−H(カルシウムシリケート水和物)の相を生成する。この生成反応はポゾラン反応と呼ばれ、アルカリシリカ反応(ASR)を抑制するなど、コンクリートの耐久性を高める効果がある。
一般社団法人石炭エネルギーセンターの石炭灰全国実態調査報告書によれば、平成25年度の石炭灰の発生量は1289万トン(該発生量の内訳は、電気事業で993万トン、一般産業で296万トンである。)に達した。しかも、電源を火力発電に大きく依存せざるを得ない我が国では、石炭灰が多量に発生する状況が、今後もしばらく続くと予想される。
発生した石炭灰の内、セメント混合材やコンクリート混和材(フライアッシュ)として有効活用された量は約18万トンであり、これは石炭灰の発生量全体の1.4%に過ぎない。
このように、セメントおよびコンクリートの分野において、フライアッシュの利用率が低い理由の一つに、フライアッシュの化学組成や粉体特性に強く影響する炭種や燃焼プロセス等の因子が、石炭火力発電所のライン毎に異なるため、発生するフライアッシュの品質が安定しないことが挙げられる。
このため、フライアッシュをセメント混合材等として利用する場合、フライアッシュが要求品質を満たすか否かをロット毎に確認する必要があった。
フライアッシュのポゾラン反応性は、「JIS A 6201(コンクリート用フライアッシュ)」に規定されている活性度指数の試験方法を用いて評価される。しかし、この試験方法は、試験結果が得られるまでに28日間または91日間もの長期間を要するため、実用的な品質評価試験方法とは言い難かった。
したがって、以前から、フライアッシュのポゾラン反応性を早期に判定できる効率的な方法が求められていた。
かかる状況を受けて、フライアッシュのポゾラン反応性の判定方法がいくつか提案されている。
例えば、非特許文献1には、温度80℃で12〜24時間反応させて得られる下記(1)式のAPI値と活性度指数との間の相関係数(R)が、0.78〜0.93と高いため、API値を用いてフライアッシュのポゾラン反応性を評価できることが記載されている。
API(%)=((Ca(C)−Ca(F+C))/Ca(C))×100 ・・・(1)
ここで、Ca(C)はセメント試料単独が水和した液相(基準用試料)中のCa2+濃度を表し、Ca(F+C)はフライアッシュとセメントの混合物が水和した液相(評価用試料)中のCa2+濃度を表す。
また、非特許文献2には、フライアッシュの鉱物組成とポゾラン反応性の関係が記載されており、ポゾラン反応性に関係するガラス相量と粉末度がほぼ同等であるフライアッシュでは、ガラス相中の修飾酸化物を考慮した下記(2)式のM値が、ポゾラン反応性の評価の指標になることが記載されている。
M=(CaO+MgO+RO)/SiO ・・・(2)
さらに、特許文献1に記載されたコンクリート用フライアッシュの活性度指数の予測方法によれば、フライアッシュのポゾラン反応により得られたフライアッシュ硬化体の材齢7日以内の電気抵抗値を計測し、予め求めておいた活性度指数と電気抵抗値との相関関係に基づいてフライアッシュの活性度指数を予測することができる。しかし、前記予測方法は、試験方法が特殊であるほか、予測結果を得るまでに最長で7日間程度を要する。
特開2012−47587号公報
山本武志ほか、「フライアッシュのポゾラン反応に関する研究 −ポゾラン反応機構の解明と促進化学試験法(API法)の最適化−」、電力中央研究所報告、N04008(2004) 大塚拓ほか、「フライアッシュの鉱物組成とポゾラン反応性」、セメント・コンクリート論文集、No.63、pp.16−21(2009)
本発明の目的は、学習データの数が少なくても、短時間でかつ高い精度でフライアッシュセメントの品質または製造条件(具体的には、適正な品質を有するフライアッシュセメントを製造するために必要な製造上の諸条件)を予測することができる方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ニューラルネットワークを用いたフライアッシュセメントの品質または製造条件の予測方法であって、学習データとモニターデータを用いて、σ<σ(この式の意味は後で説明する。)となるような、十分に大きい学習回数でニューラルネットワークの学習を行った後に、今度は、学習回数を減らしながらニューラルネットワークの学習をσ≧σとなるまで繰り返し、かつ、解析度判定値が第一の設定値未満である場合、ニューラルネットワークの学習を終了し、ニューラルネットワークの入力層に監視データの実測値を入力し、出力層から評価データの推測値を出力し、解析度判定値が第一の設定値以上でありかつ第二の設定値未満である場合、ニューラルネットワークの入力層に特定の監視データの実測値を入力し、出力層から評価データの推測値を出力する方法によれば、上記目的を達成しうることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[4]を提供するものである。
[1] 入力層及び出力層を有するニューラルネットワークを用いたフライアッシュセメントの品質または製造条件の予測方法であって、上記入力層は、フライアッシュセメント製造における監視データの実測値を入力するためのものであり、上記出力層は、フライアッシュセメントの品質または製造条件の評価に関連する評価データの推測値を出力するためのものであり、上記監視データと上記評価データの組み合わせが、
(i)上記監視データが、フライアッシュに関するデータ、基材セメントに関するデータ、基材セメントの物理特性に関するデータ、フライアッシュの混合率、フライアッシュセメントの化学成分の中から選ばれる一種以上のデータであり、かつ、上記評価データが、フライアッシュセメントの品質に関するデータである組み合わせ、または、
(ii)上記監視データが、フライアッシュに関するデータ、基材セメントに関するデータ、基材セメントの物理特性に関するデータ、フライアッシュの混合率、フライアッシュセメントの化学成分、及びフライアッシュセメントの品質に関するデータの中から選ばれる一種以上のデータであり、かつ、上記評価データが、フライアッシュセメントの製造条件に関するデータである組み合わせ、であり、
(A)学習回数の初期設定を行う工程と、
(B)監視データの実測値と評価データの実測値の組み合わせである学習データを複数用いて、ニューラルネットワークの学習を、前工程で設定された学習回数行う工程と、
(C)学習データの監視データの実測値を、直近の工程(B)の学習で得られたニューラルネットワークの入力層に入力して得られた評価データの推測値と学習データの評価データの実測値との平均2乗誤差(σ)、及び、ニューラルネットワークの学習結果の信頼性を確認するための監視データの実測値と評価データの実測値の組み合わせであるモニターデータの中の監視データの実測値を、直近の工程(B)の学習で得られたニューラルネットワークの入力層に入力して得られた評価データの推測値とモニターデータの中の評価データの実測値との平均2乗誤差(σ)を算出し、算出されたσとσの関係がσ≧σである場合、工程(D)を実施し、算出されたσとσの関係がσ<σである場合、工程(E)を実施する工程と、
(D)直近の工程(A)で設定された学習回数および再設定された直近のニューラルネットワークの学習回数のいずれの学習回数よりも大きい学習回数を新たな学習回数として再設定し、再度工程(B)〜(C)を実施する工程と、
(E)直近のニューラルネットワークの学習で実施された学習回数を減らした学習回数を、新たな学習回数として再設定する工程と、
(F)直近の工程(B)で用いられた学習データを用いて、ニューラルネットワークの学習を直近の工程(E)で設定された学習回数行う工程と、
(G)学習データの監視データの実測値を、直近の工程(F)の学習で得られたニューラルネットワークの入力層に入力して得られた評価データの推測値と学習データの評価データの実測値との平均2乗誤差(σ)、及び、モニターデータの中の監視データの実測値を、直近の工程(F)の学習で得られたニューラルネットワークの入力層に入力して得られた評価データの推測値とモニターデータの中の評価データの実測値との平均2乗誤差(σ)を算出し、算出されたσとσの関係がσ≧σである場合、工程(I)を実施し、算出されたσとσの関係がσ<σである場合、工程(H)を実施する工程と、
(H)直近の工程(F)におけるニューラルネットワークの学習回数が予め定めた数値を超えている場合、再度工程(E)〜(G)を実施し、直近の工程(F)におけるニューラルネットワークの学習回数が予め定めた数値以下の場合、工程(J)を実施する工程と、
(I)下記式(1)を用いて解析度判定値を算出し、該解析度判定値が予め定めた第一の設定値未満である場合、ニューラルネットワークの学習を終了し、学習済みのニューラルネットワークの入力層に、フライアッシュセメント製造における監視データの実測値を入力して、上記ニューラルネットワークの出力層から、フライアッシュセメントの品質または製造条件の評価に関連する評価データの推測値を出力してフライアッシュセメントの品質または製造条件を予測し、上記解析度判定値が予め定めた第一の設定値以上である場合、工程(J)を実施する工程と、
(J)工程(A)を実施した回数の大きさについての判定を行い、該回数が予め設定した回数以下である場合、学習条件の初期化を行って、再度工程(A)〜(I)を行い、該回数が予め設定した回数を超える場合、工程(K)を実施する工程と、
(K)工程(I)において算出した全ての解析度判定値のうち、最も小さい解析度判定値が予め定めた第二の設定値未満である場合、最も小さい解析度判定値を得ることができた工程(I)におけるニューラルネットワークを、学習済みのニューラルネットワークとした後、工程(L)を実施し、最も小さい解析度判定値が予め定めた第二の設定値以上である場合、フライアッシュセメントの品質または製造条件を予測することはできないと判断して予測を終了する工程と、
(L)工程(I)において算出した全ての解析度判定値のうち、最も小さい解析度判定値を得ることができた工程(I)において、学習データとして使用した監視データの実測値と評価データの実測値の組み合わせについて無相関検定を行い、5%の有意水準で有意であると判断された監視データの種類が2種以上である場合、5%の有意水準で有意であると判断された監視データの全種類を座標軸とする座標空間に学習データとして使用した監視データの実測値をプロットし、座標空間において、プロットされた監視データ同士を結ぶことで形成される監視データの全てを包含する領域であって、該領域が最大となるように監視データ同士を結ぶことで形成される領域を、予測可能監視データ領域として設定した後、工程(M)を実施し、5%の有意水準で有意であると判断された監視データが0または1種類である場合、フライアッシュセメントの品質または製造条件を予測することはできないと判断して予測を終了する工程と、
(M)フライアッシュセメント製造における監視データの実測値が、上記予測可能監視データ領域に含まれるかどうかを判定し、フライアッシュセメント製造における監視データの実測値が、上記予測可能監視データ領域に含まれる場合、工程(K)で得た学習済みのニューラルネットワークの入力層に、フライアッシュセメント製造における監視データの実測値を入力して、上記ニューラルネットワークの出力層から、フライアッシュセメントの品質または製造条件の評価に関連する評価データの推測値を出力してフライアッシュセメントの品質または製造条件を予測し、フライアッシュセメント製造における監視データの実測値が、上記予測可能監視データ領域に含まれない場合、フライアッシュセメントの品質または製造条件を予測することはできないと判断して予測を終了する工程と、
を含むことを特徴とするフライアッシュセメントの品質または製造条件の予測方法。
Figure 0006636358
(上記式(1)中、学習データの平均2乗誤差(σ)とは、学習データの監視データの実測値を学習後のニューラルネットワークの入力層に入力して得られた評価データの推測値と学習データの評価データの実測値との平均2乗誤差(σ)である。評価データの推測値の平均値とは、学習データの監視データの実測値を学習後のニューラルネットワークの入力層に入力して得られた評価データの推測値の平均値である。)
[2] 上記解析度判定値の予め定めた第一の設定値が6%以下であり、上記解析度判定値の予め定めた第二の設定値が上記第一の設定値よりも大きくかつ20%以下である前記[1]に記載のフライアッシュセメントの品質または製造条件の予測方法。
[3] 上記ニューラルネットワークが、上記入力層と上記出力層の間に中間層を有する階層型のニューラルネットワークである前記[1]または[2]に記載のフライアッシュセメントの品質または製造条件の予測方法。
[4] 上記監視データの値を人為的に変動させて得られた上記評価データの推測値に基づいて、フライアッシュセメントの製造条件を最適化する前記[1]〜[3]のいずれかに記載のフライアッシュセメントの品質または製造条件の予測方法。
本発明のフライアッシュセメントの品質または製造条件の予測方法を用いれば、学習データの数が少なくても、短時間でかつ高い精度でフライアッシュセメントの品質または製造条件を予測することができる。
また、得られた推測値を基にリアルタイムで製造条件を最適化することが可能であり、フライアッシュセメントの品質安定化の向上を図ることができる。
さらに、ニューラルネットワークの学習を継続することによって、高い予測の精度を維持することができる。
本発明の予測方法の一例を示すフロー図である。 工程(L)において設定された予測可能監視データ領域を示す図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の予測方法は、フライアッシュセメント製造における監視データの実測値を入力するための入力層と、フライアッシュセメントの品質または製造条件の評価に関連する評価データの推測値を出力するための出力層を有するニューラルネットワークを用いて、フライアッシュセメントの品質または製造条件を予測する方法である。
本発明のニューラルネットワークは、入力層と出力層の間に中間層を有する階層型のニューラルネットワークであってもよい。
上記監視データと上記評価データの組み合わせとしては、以下の(i)または(ii)が挙げられる。
(i)上記監視データが、フライアッシュに関するデータ、基材セメントに関するデータ、基材セメントの物理特性に関するデータ、フライアッシュの混合率、フライアッシュセメントの化学成分の中から選ばれる一種以上のデータであり、かつ、上記評価データが、フライアッシュセメントの品質に関するデータである組み合わせ
(ii)上記監視データが、フライアッシュに関するデータ、基材セメントに関するデータ、基材セメントの物理特性に関するデータ、フライアッシュの混合率、フライアッシュセメントの化学成分、及びフライアッシュセメントの品質に関するデータの中から選ばれる一種以上のデータであり、かつ、上記評価データが、フライアッシュセメントの製造条件に関するデータである組み合わせ
前記(i)の組み合わせにおける監視データの一つである「フライアッシュに関するデータ」としては、フライアッシュの化学組成、鉱物組成、各鉱物(非晶質相を含む)の鉱物学的、結晶学的、及び化学的性質、強熱減量、不溶残分量、密度、ブレーン比表面積、ふるい試験残分量、粒度分布、フロー値比、活性度指数、色調等が挙げられる。
ここで、フライアッシュの化学組成としては、フライアッシュ中のSiO、Al、Fe、CaO、MgO、SO、NaO、KO、NaOeq(全アルカリ)、TiO、P、MnO、Cl、Cr、Zn、Pb、Cu、Ni、V、As、Zr、Mo、Sr、Ba、F等の含有率が挙げられる。
これらのうち、SiOの含有率は、「JIS A 6201(コンクリート用フライアッシュ)」に準拠して得ることができる。また、その他の化学組成は、「JIS R 5213(フライアッシュセメント)」の化学組成分析方法によって得ることができる。
フライアッシュの鉱物組成としては、石英、ムライト、ヘマタイト、マグネタイト、生石灰、水酸化カルシウム、石炭、非晶質相等の含有率が挙げられる。
これらは、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡の観察像を用いた測定;「JIS K 0131(X線回折分析通則)」に記載された各種鉱物組成定量方法を用いた分析;「JIS K 0129(熱分析通則)」に記載された各種熱分析法を用いた分析等によって得ることができる。
各鉱物(非晶質相を含む)の鉱物学的、結晶学的、及び化学的性質としては、各鉱物のテクスチャー(組織)、大きさ、色、複屈折等の光学特性、格子定数、結晶子径、格子ひずみ、化学組成等の評価値、測定値または計算値が挙げられる。
これらは、光学顕微鏡法、各種電子顕微鏡法または粉末X線回折法等によって得ることができる。
強熱減量、密度、ブレーン比表面積、ふるい試験残分量、フロー値比、及び活性度指数は、「JIS A 6201(コンクリート用フライアッシュ)」等に準拠して得られる測定値である。
不溶残分量は、「JIS R 5202(セメントの化学分析方法)」に準拠して得られる測定値である。
粒度分布は、「JIS Z 8815(ふるい分け試験方法通則)」に準拠して得られる試験値、またはレーザー回折・散乱法によって得られる粒度分布測定値である。
色調(色調L値、色調a値、色調b値)は、「JIS Z 8722(色の測定方法−反射及び透過物体色)」の方法等によって得られる測定値である。
前記(i)の組み合わせにおける監視データの一つである「基材セメントに関するデータ」としては、基材セメントの化学組成、鉱物組成、各鉱物の鉱物学的及び結晶学的性質、強熱減量、ブレーン比表面積、粒度分布、ふるい試験残分量、色調、及び石膏の半水化率等が挙げられる。
また、基材セメントに含まれるセメントクリンカーの原料に関するデータ、セメントクリンカーの焼成条件に関するデータ、セメントの粉砕条件に関するデータ、及びセメントクリンカーに関するデータも、基材セメントに関するデータとして使用することができる。
基材セメントは、特に限定されず、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント等の混合セメントや、ポルトランドセメントに石灰石粉末やシリカフューム等の混和材を添加したセメント等が挙げられる。
基材セメントの化学組成としては、基材セメントのSiO、Al、Fe、CaO、MgO、SO、NaO、KO、NaOeq(全アルカリ)、TiO、P、MnO、Cl、Cr、Zn、Pb、Cu、Ni、V、As、Zr、Mo、Sr、Ba、F等の含有率が挙げられる。
これらは、「JIS R 5202(セメントの化学分析方法)」や「JIS R 5204(セメントの蛍光X線分析方法)」等の化学組成分析方法によって得ることができる。
基材セメントの鉱物組成としては、3CaO・SiO(CS)、2CaO・SiO(CS)、3CaO・Al(CA)、4CaO・Al・Fe(CAF)、フリーライム、ペリクレース、二水石膏、半水石膏、無水石膏、石灰石粉、高炉スラグ、製鋼スラグ、フライアッシュ、天然ポゾラン、シリカフューム、珪石粉等のセメントクリンカー鉱物、石膏類、「JIS R 5210(ポルトランドセメント)」に記載されている少量混合成分、セメント混和材等の含有率が挙げられる。
これらは、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡の観察像を用いた測定;「JIS K 0131(X線回折分析通則)」に記載された各種鉱物組成定量方法を用いた分析;「JIS K 0129(熱分析通則)」に記載された各種熱分析法を用いた分析;ボーグの方法等による化学組成分値を用いた推測;セメント色調等の化学組成以外のセメントの特性値を用いた推測;セメント製造工程での計量等の方法によって得ることができる。
各鉱物の鉱物学的性質及び結晶学的性質としては、各鉱物のテクスチャー(組織)、大きさ、色、複屈折等の光学特性、格子定数、結晶子径、格子ひずみ等の評価値、測定値または計算値が挙げられる。
これらは、光学顕微鏡法、各種電子顕微鏡法または粉末X線回折法等によって得ることができる。
強熱減量は、「JIS R 5202(セメントの化学分析方法)」に記載された強熱減量の定量方法等による、湿分や石灰石の熱分解による乖離二酸化炭素等の揮発性成分の質量の測定値である。
ブレーン比表面積、粒度分布、及びふるい試験残分量は、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」の比表面積試験または網ふるい試験によって得られる試験値、または、「JIS Z 8815(ふるい分け試験方法通則)」の方法によって得られる試験値若しくはレーザー回折・散乱法によって得られる粒度分布測定値である。
色調は、「JIS Z 8722(色の測定方法−反射及び透過物体色)」の方法等によって得られる測定値である。
「セメントクリンカーの原料に関するデータ」とは、セメントクリンカーの調合原料の化学組成、水硬率、ふるい試験残分量、ブレーン比表面積(粉末度)、強熱減量;キルンへの投入時から所定の時間前の時点(例えば、5時間前の1つの時点や、3時間前、4時間前、5時間前、及び6時間前の4つの時点のような複数の時点)のセメントクリンカーの原料(搬送中に向流する空気流によって微粒分等が抜き取られたセメントクリンカーの調合原料。以後、セメントクリンカーの窯入原料と称す。)の化学組成、水硬率、供給量;廃棄物のような特殊な原料からなるセメントクリンカーの副原料の供給量;調合原料のブレンディングサイロの貯留量(残量);調合原料のストレージサイロの貯留量(残量);原料ミルと調合原料のブレンディングサイロの間に位置するサイクロンの電流値(サイクロンの回転数を表し、サイクロンを通過する原料の速度と相関関係があるもの);セメントクリンカーの窯入原料と副原料を混合してなる原料の化学組成、水硬率、ブレーン比表面積、ふるい試験残分量、脱炭酸率、水分量等が挙げられる。
ここで、セメントクリンカーの原料(調合原料または窯入原料)の化学組成とは、セメントクリンカーの原料中のSiO、Al、Fe、CaO、MgO、SO、NaO、KO、NaOeq(全アルカリ)、TiO、P、MnO、Cl、Cr、Zn、Pb、Cu、Ni、V、As、Zr、Mo、Sr、Ba、F等の含有率である。
「セメントクリンカーの焼成条件に関するデータ」としては、セメントクリンカーの原料の挿入量、キルン回転数、落口温度、焼成帯温度、セメントクリンカー温度、キルン平均トルク、O濃度、NO濃度、クリンカークーラー温度、プレヒーターのガスの流量(プレヒーターの温度と相関関係があるもの)等が挙げられる。
「セメントの粉砕条件に関するデータ」としては、粉砕温度、仕上ミル内の散水量、セパレーター風量、石膏の種類、石膏の添加量、セメントクリンカーの投入量、仕上ミルの回転数、仕上ミルから排出される粉体の温度、仕上ミルから排出される粉体の量、仕上ミルから排出されない粉体の量等が挙げられる。
「セメントクリンカーに関するデータ」としては、セメントクリンカーの鉱物組成、各鉱物の結晶学的性質(格子定数や結晶子径など)、2種以上の鉱物組成の比、化学組成、湿式f.CaO(フリーライム)、容重等が挙げられる。
ここで、セメントクリンカーの鉱物組成とは、3CaO・SiO(CS)、2CaO・SiO(CS)、3CaO・Al(CA)、4CaO・Al・Fe(CAF)、f.CaO、f.MgO等の含有率である。また「2種以上の鉱物組成の比」としては、例えば、CS/CSの比が挙げられる。
なお、セメントクリンカーの鉱物組成は、例えばXRD−リートベルト法によって得ることができる。
セメントクリンカーの化学組成とは、セメントクリンカー中のSiO、Al、Fe、CaO、MgO、SO、NaO、KO、NaOeq(全アルカリ)、TiO、P、MnO、Cl、Cr、Zn、Pb、Cu、Ni、V、As、Zr、Mo、Sr、Ba、F等の含有率である。
前記(i)の組み合わせにおける監視データの一つである「基材セメントの物理特性に関するデータ」としては、基材セメントの密度、粉末度、凝結時間、安定性、強さ(モルタル圧縮強さ、曲げ強度等)、流動性(フロー値等)、水和熱等が挙げられる。
基材セメントの密度、粉末度、凝結時間、安定性、強さ(モルタル圧縮強さ、曲げ強度等)、及び流動性は、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」に記載された試験方法に準拠して得ることができる。また、流動性としては、二重円筒型回転粘度計等による降伏値や、塑性粘度等のレオロジー特性の測定値や、セメントペーストまたはモルタルに関する各種流動性試験の測定値等が挙げられる。
基材セメントの水和熱としては、「JIS R 5203(セメントの水和熱測定方法(溶解熱方法))」に記載の試験方法による測定値等が挙げられる。
前記(i)の組み合わせにおける監視データの一つである「フライアッシュの混合率」は、フライアッシュセメント100質量部に対する、混合されたフライアッシュの質量部の割合である。該混合量は、フライアッシュセメントの製造における混合工程での計量値、または、フライアッシュセメントに関する種々の分析、測定から得られた分析値または測定値である。
前記(i)の組み合わせにおける監視データの一つである「フライアッシュセメントの化学成分」としては、SiO、Al、Fe、CaO、MgO、SO、NaO、KO、NaOeq(全アルカリ)、TiO、P、MnO、Cl、Cr、Zn、Pb、Cu、Ni、V、As、Zr、Mo、Sr、Ba、F等の含有率が挙げられる。該含有率は、「JIS R 5202(セメントの化学分析方法)」、「JIS R 5204(セメントの蛍光X線分析方法)」や、JIS R 5213(フライアッシュセメント)」等に記載された化学組成分析方法によって得ることができる。
前記(i)の組み合わせにおける評価データの一つである「フライアッシュセメントの品質に関するデータ」としては、フライアッシュセメントの密度、粉末度、凝結時間、安定性、強さ(モルタル圧縮強さ、曲げ強度)、流動性等が挙げられる。
フライアッシュセメントの密度、粉末度、凝結時間、安定性、強さ(モルタル圧縮強さ、曲げ強度)、及び流動性は、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」、「JIS R 5213(フライアッシュセメント)」に記載された試験方法によって得ることができる。
また、フライアッシュセメントの流動性は、二重円筒型回転粘度計等による降伏値や塑性粘度等のレオロジー特性の測定値や、セメントペーストまたはモルタルに関する各種流動性試験によっても得ることができる。
前記(ii)の組み合わせにおける監視データである、「フライアッシュに関するデータ」、「基材セメントに関するデータ」、「基材セメントの物理特性に関するデータ」、「フライアッシュの混合率」、及び「フライアッシュセメントの化学成分」は、各々、前記(i)の組み合わせにおける監視データである、「フライアッシュに関するデータ」、「基材セメントに関するデータ」、「基材セメントの物理特性に関するデータ」、「フライアッシュの混合率」、及び「フライアッシュセメントの化学成分」と同様である。
また、前記(ii)の組み合わせにおける監視データである「フライアッシュセメントの品質に関するデータ」は、前記(i)の組み合わせにおける評価データである、「フライアッシュセメントの品質に関するデータ」と同様である。
前記(ii)の組み合わせにおける評価データである、「フライアッシュセメントの製造条件に関するデータ」としては、フライアッシュの混合率等が挙げられる。
フライアッシュセメントの製造工程は、基材セメントとフライアッシュの混合工程を示す。該混合工程は、専用の混合機(連続式、バッチ式)にそれぞれ計量された基材セメント及びフライアッシュを投入するか、定量で搬送される基材セメントまたはフライアッシュに、フライアッシュまたは基材セメントを一定量で添加した後に専用の保管設備に投入する工程である。
評価データの変動を把握するためには、監視データ用の試料の採集間隔はできるだけ短い方が好ましい。しかしながら、採取間隔を短くすると、労力等が増大する。したがって、実用的には、採取間隔は、好ましくは30分間〜3時間である。
本発明において、監視データ(例えば、フライアッシュの混合率)の値を人為的に変動させて得られた評価データの推測値(例えば、材齢28日におけるモルタル圧縮強さ)に基づいて、フライアッシュセメントの製造条件を最適化することができる。
例えば、学習済みのニューラルネットワークに、人為的に変動させた複数の監視データの実測値(例えば、フライアッシュの混合率)を入力して、評価データの推測値(例えば、材齢28日におけるモルタル圧縮強さ)を得た後、監視データの実測値と評価データの推測値の組み合わせから、重回帰分析等を行うことで、監視データの実測値と評価データの推測値の関係式を得ることができる。
得られた関係式に、目標とする評価データの推測値(例えば、材齢28日におけるモルタル圧縮強さ)を入力することで、目標とする評価データの推測値を得ることができるフライアッシュセメントの製造条件(例えば、フライアッシュの混合率)を求めることができる。
なお、上記関係式に対して、誤差を考慮した修正を行ってもよい。
本発明では、フライアッシュセメント製造における監視データと、フライアッシュセメントの品質または製造条件の評価に関連する評価データの関係を、ニューラルネットワークによって予め学習し、その学習結果を用いて、上記監視データのみに基づいて、上記評価データを予測する。
以下、本発明の予測方法について、図1を参照しながら詳しく説明する。
[工程(A)]
工程(A)において、学習回数の初期設定を実施する。設定される学習回数は、特に限定されるものではないが、好ましくは、ニューラルネットワークの過学習(オーバーラーニング)が発生する程度に、十分に大きな回数である。具体的には、通常5千〜100万回、好ましくは1万〜10万回である。
工程(A)では、ニューラルネットワークの過学習が発生する学習回数、具体的にはσ<σ(詳しくは後述する)となるような学習回数を設定することが好ましいが、後の工程において、学習回数の増減が行われるため、工程(A)において最初に設定される学習回数は、ニューラルネットワークの学習に通常行われる学習回数を用いても問題ない。
工程(A)終了後、工程(B)を実施する。
[工程(B)]
工程(B)では、学習用の監視データの実測値と評価データの実測値の組み合わせ(以下、「学習データ」ともいう。)を複数用いて、ニューラルネットワークの学習を、前工程で設定された学習回数行う。上記組み合わせの数は、例えば、5以上である。上記組み合わせの数の上限は、特に限定されないが、例えば、1,000である。
ここで、「前工程で設定された学習回数」とは、工程(A)において設定される学習回数、または、工程(D)において再設定された新たな学習回数であって、直近の工程(工程(A)または工程(D))で設定された学習回数である。
具体的には、学習用の複数のサンプルを用意し、該サンプルの監視データの実測値、及び目的とする評価データの実測値を測定して、これらを学習データとして用いる。該学習データのうち、監視データの実測値をニューラルネットワークの入力層に入力して、出力層から出力された評価データの推測値と、該評価データの推測値に対応する学習データの評価データの実測値を比較評価してニューラルネットワークの修正することを、設定された学習回数行うことで、ニューラルネットワークの学習が行われる。
学習用のサンプルの数は、より高い精度で予測を行う観点から、好ましくは10以上、より好ましくは20以上である。サンプル数の上限は、特に限定されるものではないが、作業性の観点から、例えば、10,000である。
なお、学習回数を変更して、ニューラルネットワークの再学習を行う際には、前回の学習の結果得られたニューラルネットワークは初期化され、再度学習が行われる。
工程(B)終了後、工程(C)を実施する。
[工程(C)]
工程(C)では、σとσが算出される。σとσの大小関係から、学習がニューラルネットワークの過学習が発生する程度に十分に大きな回数行われたか否かを判断することができる。
具体的には、学習データの監視データの実測値を、直近の工程(B)において学習が行われたニューラルネットワークの入力層に入力して得られた評価データの推測値と学習データの評価データの実測値との平均2乗誤差(σ)を算出する。次いで、モニターデータの監視データの実測値を、直近の工程(B)において学習が行われたニューラルネットワークの入力層に入力して得られた評価データの推測値とモニターデータの評価データの実測値との平均2乗誤差(σ)を算出する。その後、算出されたσとσの数値を比較することで、ニューラルネットワークの学習が十分に大きな回数で行われたか判断することができる。
ここで、モニターデータとは、学習データを得るために用いられたサンプルとは別のサンプルから得られた、監視データの実測値及び評価データの実測値の組み合わせであり、ニューラルネットワークの信頼性を確認するためのデータである。
モニターデータ(監視データの実測値及び評価データの実測値の組み合わせ)のサンプルの数は、作業性の観点から、学習データのサンプル数の好ましくは5〜50%、より好ましくは10〜30%である。
工程(C)で算出されたσとσの関係が、σ≧σである場合(図1の過学習判定における「No」)、直近に行った工程(B)の学習回数は、十分に大きな回数ではないと判断することができる。この場合、工程(D)を実施する。工程(C)で算出されたσとσの関係が、σ<σである場合(図1の過学習判定における「Yes」)、直近に行った工程(B)の学習回数は、十分に大きな回数であったと判断することができる。この場合、工程(E)を実施する。
[工程(D)]
工程(D)では、直近の工程(A)で設定された学習回数および再設定された直近のニューラルネットワークの学習回数のいずれの学習回数よりも大きい学習回数を新たな学習回数として再設定する(例えば、直近の工程(B)で実施された学習回数に2.0を乗じた数を新たな学習回数として設定する。)。新たな学習回数を再設定した後、再度工程(B)〜(C)を実施する。
[工程(E)]
工程(E)では、直近のニューラルネットワークの学習で実施された学習回数を減らした学習回数を、新たな学習回数として再設定する(例えば、直近の工程(B)または工程(F)で実施された学習回数に0.95を乗じた数を新たな学習回数として設定する。)。
なお、直近のニューラルネットワークの学習とは、より近い過去に実施された学習を指す。具体的には、工程(B)もしくは後述の工程(F)のうち、より近い過去に実施された学習を指す。
工程(E)終了後、工程(F)を実施する。
[工程(F)]
工程(F)では、直近の工程(B)で用いられた学習データを用いて、ニューラルネットワークの学習を直近の工程(E)で設定された学習回数行う。
工程(F)で実施する内容は、ニューラルネットワークの学習を工程(E)において新たに設定された学習回数行う以外は、工程(B)と同じである。
工程(F)終了後、工程(G)を実施する。
[工程(G)]
工程(G)では、直近の工程(F)の学習において得られたニューラルネットワークを用いて終了判定を行う。具体的には学習データの監視データの実測値を、直近の工程(F)の学習で得られたニューラルネットワークの入力層に入力して得られた評価データの推測値と学習データの評価データの実測値との平均2乗誤差(σ)、及び、モニターデータの中の監視データの実測値を、直近の工程(F)の学習で得られたニューラルネットワークの入力層に入力して得られた評価データの推測値とモニターデータの中の評価データの実測値との平均2乗誤差(σ)を算出し、算出されたσとσの関係が、σ≧σである場合(図1の終了判定における「Yes」)、直近に行った工程(F)の学習回数は、もはや十分に大きな回数ではないと判断することができる。この場合、後述する工程(I)を実施する。算出されたσとσの関係がσ<σである場合(図1の終了判定における「No」)、直近に行った工程(F)の学習回数は、いまだ十分に大きな回数であったと判断することができる。この場合、後述する工程(H)を実施する。
[工程(H)]
工程(H)では、直近の工程(F)におけるニューラルネットワークの学習回数が予め定めた数値を超えていたかどうかの判定を行う。工程(H)は、工程(E)から工程(G)を無限に繰り返すことを回避するために行われる。工程(H)において直近に行った工程(F)におけるニューラルネットワークの学習回数が予め定めた数値を超えていた場合(図1における「Yes」)は、再度工程(E)〜(G)を実施する。工程(H)において直近に行った工程(F)の学習回数が予め定めた数値以下場合(図1における「No」)は、後述の工程(J)または(K)を実施する。
なお、上記予め定めた数値とは、特に限定されず、例えば、工程(E)で設定された学習回数の100分の1の数値以下、もしくは、1以下または0以下等が挙げられる。
[工程(I)]
工程(I)では解析度判定値が予め定めた第一の設定値未満であるか否かによって、解析度の判定を行うことができる。解析度判定値は下記式(1)を用いて算出される。
Figure 0006636358
上記式(1)中、学習データの平均2乗誤差(σ)とは、直近の工程(G)で算出された平均2乗誤差(σ)と同じである。評価データの推測値の平均値とは、学習データの監視データの実測値を、直近の工程(F)にて得られたニューラルネットワークの入力層に入力して得られた評価データの推測値の平均値である。
解析度の判定を行うことで学習を行ったニューラルネットワークを用いて、フライアッシュセメントの品質等の予測を高い精度で行うことができるか否かを判断することができる。
解析度判定値が予め定めた第一の設定値未満(図1の第一の解析度判定における「Yes」)であれば、解析は十分であると判断され、ニューラルネットワークの学習は終了する。
解析は十分であると判断された学習済みのニューラルネットワークは、本発明の予測方法に用いられる。
具体的には、学習済みのニューラルネットワークの入力層に、フライアッシュセメント製造における監視データの実測値を入力して、学習済みのニューラルネットワークの出力層から、フライアッシュセメントの品質または製造条件の評価に関連する評価データの推測値を出力することで、フライアッシュセメントの品質または製造条件を予測することができる。
解析度判定値が予め定めた第一の設定値以上(図1の第一の解析度判定における「No」)であれば、学習データを用いて学習を行ったニューラルネットワークをそのまま用いて、フライアッシュセメントの品質等の予測を高い精度で行うことはできないと判断され、工程(J)を実施する。
予め定めた第一の設定値は、特に限定されないが、より高い精度で予測を行う観点から、好ましくは6%以下、より好ましくは5%以下、特に好ましくは3%以下の値である。
なお、工程(A)〜(I)は、工程(I)において解析度判定値が予め定めた第一の設定値未満となるか、工程(J)において該回数が予め設定した回数を超えるまで繰り返される。工程(I)を実施するたびに得られる、解析度判定値及び学習済みのニューラルネットワークは、工程(K)において使用される。
[工程(J)]
工程(J)では、工程(A)を実施した回数が予め設定した数値以下であるかどうかの判定を実施する。判定を実施することによって、工程(A)から工程(I)を無限に繰り返すことを回避することができる。
工程(J)において、工程(A)を実施した回数が予め設定した回数以下(図1の回数判定における「Yes」)である場合、学習条件の初期化を行って、再度工程(A)〜(I)を行い、該回数が予め設定した回数を超える場合(図1の回数判定における「No」)、工程(K)を実施する。
予め設定した回数は、特に限定されないが、通常、5回以上である。予め設定した回数の上限は、工程(A)から工程(I)を多大に繰り返すことを防ぐ観点から、好ましくは100回以下である。
学習条件の初期化の方法としては、例えば、ニューラルネットワークを構成するユニットの閾値やユニットを結合している重みをランダムで変更した上で、学習データを再入力する方法、学習データを得るためのサンプルの数を増やす、使用する監視データの種類を変更する、又は不適切な学習データを除外する等を行った上で、新たな学習データを入力する方法等が挙げられる。
[工程(K)]
工程(K)では、工程(I)において算出した全ての解析度判定値のうち、最も小さい解析度判定値が予め定めた第二の設定値未満であるか否かによって、次の予測の実施の可否の判定を行うことができる。
工程(K)の判定を追加することで、工程(I)において、セメントの品質等の予測を高い精度で行うことはできないと判断された学習済みのニューラルネットワークであっても、後述する工程(L)〜(M)を実施することによって、フライアッシュセメントの品質等の予測を高い精度で行うことができるか否かを判断することができる。
最も小さい解析度判定値が予め定めた第二の設定値未満(図1の第二の解析度判定における「Yes」)である場合、最も小さい解析度判定値を得ることができた工程(I)におけるニューラルネットワークを、学習済みのニューラルネットワークとして得た後、工程(L)を実施する。
最も小さい解析度判定値が予め定めた第二の設定値以上(図1の第二の解析度判定における「No」)であれば、学習データを用いて学習を行ったニューラルネットワークを用いて、フライアッシュセメントの品質等の次の予測を高い精度で行うことはできないと判断して予測を終了する。
予め定めた第二の設定値は、上記第一の設定値よりも大きいものである。また、上限は、より高い精度で予測を行う観点から、好ましくは30%以下、より好ましくは20%である。
[工程(L)]
工程(L)では、工程(M)で用いられる予測可能監視データ領域を設定する。
最初に、工程(I)において算出した全ての解析度判定値のうち、最も小さい解析度判定値を得ることができた工程(I)において、学習データとして使用した監視データの実測値と評価データの実測値の組み合わせについて無相関検定を実施する。無相関検定において5%の有意水準で有意であると判断された監視データの種類が2種以上である場合(図1の無相関検定における「Yes」)、5%の有意水準で有意であると判断された監視データの全種類を座標軸とする座標空間を作成する。
例えば、5%の有意水準で有意であると判断された監視データが、フライアッシュの密度とフライアッシュのブレーン比表面積の二種類である場合、フライアッシュの密度をx軸とし、フライアッシュのブレーン比表面積をy軸とする座標空間を作成する(図2参照)。
次いで、学習データとして使用した監視データの実測値のうち、5%の有意水準で有意であると判断された種類の監視データの実測値を全て、座標空間にプロットし、座標空間においてプロットされた監視データ同士を結ぶことで予測可能監視データ領域を設定する。該予測可能監視データ領域は、プロットされた監視データの全てを包含する領域であって、該領域が最大となるように監視データ同士を結ぶことで形成される領域である(図2参照)。
予測可能監視データ領域を設定した後、工程(M)を実施する。
5%の有意水準で有意であると判断された監視データが0または1種類である場合(図1の無相関検定における「No」)、フライアッシュセメントの品質または製造条件を予測することはできないと判断して予測を終了する。
[工程(M)]
工程(M)では、フライアッシュセメント製造における監視データの実測値と工程(L)で作成された座標空間を用いて、フライアッシュセメント製造における監視データの実測値と工程(K)で得た学習済みのニューラルネットワークによって、フライアッシュセメントの品質等の予測を高い精度で行うことができるか否かを判定することができる。
フライアッシュセメントの品質等の予測に使用される、フライアッシュセメント製造における監視データの実測値が、工程(L)で設定した予測可能監視データ領域に含まれる場合(図1の座標判定における「Yes」)、フライアッシュセメントの品質等の予測を高い精度で行うことができると判断し、工程(K)で得た学習済みのニューラルネットワークの入力層に、フライアッシュセメント製造における監視データの実測値を入力して、上記ニューラルネットワークの出力層から、フライアッシュセメントの品質または製造条件の評価に関連する評価データの推測値を出力することで、フライアッシュセメントの品質または製造条件を予測することができる。
フライアッシュセメント製造における監視データの実測値が、上記予測可能監視データ領域に含まれない場合(図1の座標判定における「No」)、フライアッシュセメントの品質または製造条件を予測することはできないと判断して予測を終了する。
なお、フライアッシュセメント製造における監視データが、工程(L)で作成された座標空間の座標軸として用いられていない種類の監視データの実測値(無相関検定において5%の有意水準で有意であると判断されなかった監視データの種類)を含む場合、当該の座標軸として用いられていない種類の監視データからは、監視データの実測値に何ら制限は与えない。
本発明の予測方法によれば、より高い精度でフライアッシュセメントの品質または製造条件を予測することができる。
本発明において、ニューラルネットワークの学習は、最初に十分に大きな学習回数(σ<σとなる程度の学習回数)で学習を行った後、学習回数を減らしながら、ニューラルネットワークの学習をσ≧σとなるまで繰り返すものである。該方法によれば、学習データにおいて評価データが不足している場合等の要因によって、σ、σの数値にばらつきがある場合であっても、該ばらつきを修正することができ、ニューラルネットワークの学習を適切に行うことができる。
また、学習データのサンプル数が少ない等の理由により、工程(I)において、解析度判定値が所定の基準値を満たしていない場合であっても、入力層に入力されるフライアッシュセメント製造における監視データが座標判定領域に含まれる場合、この監視データと学習済みのニューラルネットワークを用いて、高い精度でフライアッシュセメントの品質等の予測を行うことができる。
ニューラルネットワークは、予測の精度を高い状態に維持するために、評価データの推測値と、該推測値に対応する実測値の乖離の大きさを定期的に点検し、その点検結果に基づいて、ニューラルネットワークを更新することが好ましい。更新の周期は、前記(i)の組み合わせ(フライアッシュセメントの品質の予測に関するニューラルネットワーク)では、好ましくは2時間に一回、より好ましくは1時間に一回である。前記(ii)の組み合わせ(フライアッシュセメントの製造条件の予測に関するニューラルネットワーク)では、好ましくは1か月に一回、より好ましくは1週間に一回、特に好ましくは1日に一回である。
本発明のフライアッシュセメントの品質または製造条件の予測方法によれば、ニューラルネットワークを用いることによって、監視データを入力するだけで、モルタルの圧縮強さ等の評価データの推測値を、1時間以内に得ることができる。
また、得られた評価データの推測値に基づいて、フライアッシュセメントの製造工程においてフライアッシュセメントの品質異常を早期に察知し、混合工程の運転条件の最適化を行うことにより、適正な品質のフライアッシュセメントを製造することができる。
具体的には、モルタルの圧縮強さの推測値に異常が認められた場合、フライアッシュ混合率の調整等を行うことで、モルタルの圧縮強さを目的のものにすることができる。
また、評価データの推測値に基いて、製造上の目標を修正することも可能である。
例えば、モルタルの圧縮強さが目標値に達しないと予測される場合、学習に用いた監視データ(因子)とモルタルの圧縮強さの関係を解析して、最適な是正処方を確認することで、フライアッシュセメントの品質を目的のものにすることができる。
また、本発明のフライアッシュセメントの品質または製造条件の予測方法において、監視データの値を人為的に変動させて得られた評価データの推測値に基づいて、フライアッシュセメントの製造条件を予測することができる。
具体的には、一旦、上述したフライアッシュセメントの品質または製造条件の予測に用いられるニューラルネットワーク(学習済みのニューラルネットワーク)を構築した後、該ニューラルネットワークにおいて、監視データ(フライアッシュセメントの製造条件:例えば、フライアッシュの混合率)を段階的に変更した場合の評価データ(フライアッシュセメントの品質:例えば、材齢28日におけるモルタル圧縮強さ)の推測値を求め、得られた監視データと評価データの推測値の複数の組合せから、監視データと評価データの関係式を求めることによって、所望の品質のフライアッシュセメント(例えば、材齢28日におけるモルタル圧縮強さが特定の値であるフライアッシュセメント)を得ることが、高い確度で可能と予測されるフライアッシュセメントの製造条件(例えば、フライアッシュの混合率)の推測値を得ることができる。
さらに、フライアッシュセメント製造を制御するコンピュータと、本発明のフライアッシュセメントの品質または製造条件の予測方法を実施するために用いるコンピュータを接続することによって、評価データに基づいて監視データを人為的に変動させるための制御システムを自動化することもできる。
本発明において、ニューラルネットワークによる演算を行うためのソフトウェアとしては、例えば、OLSOFT社製の「Neural Network Library」(商品名)等が挙げられる。
以下、実施例により本発明を説明する。
<フライアッシュセメントの品質の予測方法>
[実施例1]
学習用のサンプルとしてサンプリング日の異なる25個のフライアッシュセメントを、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」に準じて混練し、材齢28日におけるモルタルの圧縮強さを測定して、学習データ(評価データの実測値)とした。
また、上記25個のフライアッシュセメントについて、フライアッシュの密度、ブレーン比表面積、45μm網ふるい試験残分量;基材セメント(普通ポルトランドセメント)の密度、ブレーン比表面積;フライアッシュセメントの密度;及びフライアッシュの混合率を測定して、学習データ(監視データの実測値)とした。
なお、フライアッシュの混合率は、フライアッシュセメント製造現場における計量値に基づく値を使用した。
また、モニター用のサンプルとして、前記25個のサンプルとはサンプリング日の異なる3個のフライアッシュセメントを用いて、材齢28日におけるモルタル圧縮強さを学習データと同様に測定して、モニターデータ(評価データの実測値)とした。
さらに、上記3個のフライアッシュセメントについて、フライアッシュの密度、ブレーン比表面積、45μm網ふるい試験残分量;基材セメント(普通ポルトランドセメント)の密度、ブレーン比表面積;フライアッシュセメントの密度;及びフライアッシュの混合率を学習データと同様に測定および計算して、モニターデータ(監視データの実測値)とした。
上記学習データを用いて、ニューラルネットワークの学習を行った。ニューラルネットワークとしては、入力層、中間層及び出力層を有する階層型のニューラルネットワークを用いた。
ニューラルネットワークの学習は、最初に上記学習データとモニターデータを用いて10,000回行った。得られたニューラルネットワークを用いて、σとσを算出したところ、σとσの関係はσ<σであった。
その後、ニューラルネットワークを初期化し、上記学習データとモニターデータを用いて、ニューラルネットワークの学習を前記学習回数に0.95を乗じた数の学習回数(端数切捨て)行うことを、学習後のニューラルネットワークを用いて算出されたσとσの関係がσ≧σとなるまで繰り返した。次いで、上記式(1)を用いて解析度判定値を算出した結果、得られた解析度判定値は、予め定めた第一の設定値(6%)未満である0.74%であったので、学習を終了した。
上記サンプルとは異なるフライアッシュセメントを用いて、上記学習プロセスで使用したフライアッシュセメントと同一の条件で、材齢28日におけるモルタル圧縮強さを測定した。その結果は、45.1N/mmであった。
一方、得られた学習済みのニューラルネットワークの入力層に、フライアッシュの密度、ブレーン比表面積、及び45μm網ふるい試験残分量;基材セメント(普通ポルトランドセメント)の密度、及びブレーン比表面積;フライアッシュセメントの密度;及びフライアッシュの混合率を入力して得られた材齢28日におけるモルタル圧縮強さの推測値は、45.3±1.1N/mm(偏差は3σを示す。)であり、実測値と推測値はほぼ一致した。
[比較例1]
実施例で使用した28個(学習用サンプル25個とモニター用サンプル3個の合計)のフライアッシュセメントを母集団とし、材齢28日におけるモルタル圧縮強さの重回帰分析を行い、下記回帰式(決定係数R=0.35)を得た。
(材齢28日におけるモルタル圧縮強さ(N/mm))=11×(フライアッシュの密度(g/cm))+0.002×(フライアッシュのブレーン比表面積(cm/g))+0.3×(フライアッシュの45μm網ふるい試験残分量(質量%))+91×(基材セメントの密度(g/cm))+0.003×(基材セメントのブレーン比表面積(cm/g))+(−31)×(フライアッシュセメントの密度(g/cm))+(−0.1)×(フライアッシュの混合率(質量%))−180
上記回帰式に、実施例1で使用した28個のフライアッシュセメントのフライアッシュの密度、ブレーン比表面積、及び45μm網ふるい試験残分量;基材セメント(普通ポルトランドセメント)の密度、及びブレーン比表面積;フライアッシュセメントの密度;及びフライアッシュの混合率を代入して得られた材齢28日におけるモルタルの圧縮強さの推測値は、46.5±3.4N/mm(偏差は3σを示す。)であった。
実施例1で得られた評価データの推測値(45.3±1.1N/mm)と、比較例1で得られた評価データの推測値(46.5±3.4N/mm)を比較すると、実施例1は比較例1よりも、評価データの実測値(45.1N/mm)に近く、また、信頼性が高いことがわかる。
<フライアッシュセメントの製造方法の予測方法>
[実施例2]
学習用のサンプルとしてサンプリング日の異なる57個のフライアッシュセメントを使用し、モニター用のサンプルとして、前記57個のサンプルとはサンプリング日の異なる6個のフライアッシュセメントを使用した以外は、実施例1と同様にして、ニューラルネットワークの学習を行った。
最初の学習によって得られたニューラルネットワークを用いて、σとσを算出したところ、σとσの関係はσ<σであった。
その後、ニューラルネットワークを初期化し、上記学習データとモニターデータを用いて、ニューラルネットワークの学習を、前回の学習回数に0.95を乗じた数の学習回数(端数切捨て)行うことを、学習後のニューラルネットワークを用いて算出されたσとσの関係がσ≧σとなるまで繰り返した。次いで、上記式(1)を用いて解析度判定値を算出した結果、得られた解析度判定値は、予め定めた第一の設定値(6%)未満である0.74%であったので、学習を終了した。
上記サンプルとは異なるフライアッシュセメントを用いて、上記学習プロセスで使用したフライアッシュセメントと同一の条件で、材齢28日におけるモルタル圧縮強さを測定した。その結果モルタル圧縮強さは、48.2N/mmであった。
一方、得られた学習済みのニューラルネットワークの入力層に、フライアッシュの密度、ブレーン比表面積、及び45μm網ふるい試験残分量;基材セメント(普通ポルトランドセメント)の密度、及びブレーン比表面積;フライアッシュセメントの密度;及びフライアッシュの混合率を入力して得られた材齢28日におけるモルタル圧縮強さの推測値は、47.1±1.5N/mm(偏差は3σを示す。)であり、実測値と推測値はほぼ一致した。
次に、上記信頼性の高い学習済みのニューラルネットワークを使用して、フライアッシュセメントの製造条件(フライアッシュの混合率)の予測を行った。
上記ニューラルネットワークの学習に使用した、サンプリング日の異なる63個(学習用サンプル57個とモニター用サンプル6個の合計)のフライアッシュセメントの、フライアッシュの混合率以外の監視データ(フライアッシュの密度、ブレーン比表面積、45μm網ふるい試験残分量;基材セメント(普通ポルトランドセメント)の密度、ブレーン比表面積;フライアッシュセメントの密度)の実測値の平均値を算出した。
フライアッシュの密度の実測値の平均値は、2.21g/cmであり、フライアッシュのブレーン比表面積の実測値の平均値は、3,010cm/gであり、フライアッシュの45μm網ふるい試験残分量の実測値の平均値は、19.8質量%であり、基材セメントの密度の実測値の平均値は、3.14g/cmであり、基材セメントのブレーン比表面積の実測値の平均値は、3,150cm/gであり、フライアッシュセメントの密度の実測値の平均値は、2.75g/cmであった。
次いで、実施例2において得られた学習済みのニューラルネットワークの入力層に、フライアッシュの混合率以外の監視データの実測値の平均値と、表1に示すフライアッシュの混合率を入力して、各フライアッシュの混合率に対する材齢28日におけるモルタル圧縮強さの推測値を得た。結果を表1に示す。
なお、フライアッシュの混合率は、上記63個のフライアッシュセメントのフライアッシュの混合率の実測値の範囲内で、任意に設定した数値である。
Figure 0006636358
フライアッシュの混合率と材齢28日におけるモルタル圧縮強さの推測値との組み合わせから、重回帰分析を行い、フライアッシュの混合率と材齢28日におけるモルタル圧縮強さの推測値との関係を示す下記式(2)を導き出した。なお、得られた式(2)の決定係数Rは0.9959であった。
材齢28日におけるモルタル圧縮強さの推測値=−0.176×(フライアッシュの混合率)+48.62 ・・・(2)
式(2)から、安全側に考慮して誤差を修正した以下の式(3)を得た。修正は、材齢28日におけるモルタル圧縮強さの実測値が、材齢28日におけるモルタル圧縮強さの推測値と比べて、過少になることを防ぐ目的で、誤差1.0N/mm(2σの値)を、式(2)の右辺から減算することで行った。
材齢28日におけるモルタル圧縮強さの推測値=−0.176×(フライアッシュの混合率)+47.62 ・・・(3)
得られた式(3)を用いて、フライアッシュセメントの材齢28日におけるモルタル圧縮強さの目標値に対するフライアッシュの混合率の最大許容値を求めた。
具体的には、フライアッシュセメントの材齢28日におけるモルタル圧縮強さの目標値を42.5N/mmと定め、上記式(3)に該目標値を代入することで、フライアッシュの混合率の最大許容値 (29.1%)を得た。該値は、フライアッシュの製造において、フライアッシュの混合率を最大許容値(29.1%)以下にすれば、得られるフライアッシュセメントの材齢28日におけるモルタル圧縮強さが、目標値(42.5N/mm)を下回ることはないと推測できる値である。
なお、上記63個のサンプルとは異なるフライアッシュセメントであって、フライアッシュの混合率以外の監視データの実測値が上記63個のサンプルの実測値の平均値に近く、且つ、材齢28日におけるモルタル圧縮強さが42.5N/mmに近いフライアッシュセメント(材齢28日におけるモルタル圧縮強さの実測値が41.5N/mmであるフライアッシュセメント)のフライアッシュの混合率の実測値は31.2%であった。
[比較例2]
実施例2で使用した63個(学習用サンプル57個とモニター用サンプル6個の合計)のフライアッシュセメントを母集団とし、材齢28日におけるモルタル圧縮強さの重回帰分析を行い、下記回帰式(決定係数R=0.67)を得た。
(材齢28日におけるモルタル圧縮強さ(N/mm))=−30.2×(フライアッシュの密度(g/cm))+2.3×10−3×(フライアッシュのブレーン比表面積(cm/g))+0.21×(フライアッシュの45μm網ふるい試験残分量(質量%))−46.1×(基材セメントの密度(g/cm))+3.2×10−3×(基材セメントのブレーン比表面積(cm/g))+79.3×(フライアッシュセメントの密度(g/cm))+6.2×10−2×(フライアッシュの混合率(質量%))+29.0
上記回帰式に、実施例2で使用した、サンプルとは異なるフライアッシュセメント(材齢28日におけるモルタル圧縮強さの実測値が48.2N/mmであったフライアッシュセメント)の、フライアッシュの密度、ブレーン比表面積、及び45μm網ふるい試験残分量;基材セメント(普通ポルトランドセメント)の密度、及びブレーン比表面積;フライアッシュセメントの密度;及びフライアッシュの混合率を代入して得られた材齢28日におけるモルタルの圧縮強さの推測値は、46.1±7.2N/mm(偏差は3σを示す。)であった。
学習済みのニューラルネットワークの入力層に、フライアッシュの混合率以外の監視データの実測値の平均値と、表1に示すフライアッシュの混合率を入力する代わりに、上記回帰式に、フライアッシュの混合率以外の監視データの実測値の平均値と、表1に示すフライアッシュの混合率を代入して、各フライアッシュの混合率に対する材齢28日におけるモルタル圧縮強さの推測値を得る以外は実施例2と同様にして、フライアッシュの混合率と材齢28日におけるモルタル圧縮強さの推測値との関係を示す下記式(4)を導き出した。なお、得られた式(4)の決定係数Rは0.67であった。
材齢28日におけるモルタル圧縮強さの推測値=−0.073×(フライアッシュの混合率)+47.93 ・・・(4)
式(4)から、安全側に考慮して誤差を修正した以下の式(5)を得た。修正は、誤差4.8N/mm(2σの値)を、式(4)の右辺から減算することで行った。
材齢28日におけるモルタル圧縮強さの推測値=−0.073×(フライアッシュの混合率)+43.13 ・・・(5)
得られた式(5)を用いて、フライアッシュセメントの材齢28日におけるモルタル圧縮強さの目標値(42.5N/mm)に対するフライアッシュの混合率の最大許容値を求めたところ、8.6%であった。
実施例2で求めたフライアッシュの混合率の最大許容値(29.1%)と、比較例2で求めたフライアッシュの混合率の最大許容値(8.6%)は大きく乖離していた。
材齢28日におけるモルタル圧縮強さが、42.5N/mm(実施例2または比較例2で定めた目標値)に近いフライアッシュセメント(材齢28日におけるモルタル圧縮強さの実測値が41.5N/mmであるフライアッシュセメント)のフライアッシュの混合率の実測値は31.2%であった。該数値は、実施例2で求めたフライアッシュの混合率の最大許容値(29.1%)と同程度であり、信頼性が高いことがわかる。
なお、フライアッシュセメントの混合率が31.2%であるフライアッシュセメントの材齢28日におけるモルタル圧縮強さの実測値は41.5N/mmであることから、該フライアッシュセメントにおいて、材齢28日におけるモルタル圧縮強さを、42.5N/mmにするためには、フライアッシュの混合率を31.2%よりも小さくする必要がある。

Claims (4)

  1. 入力層及び出力層を有するニューラルネットワークを用いたフライアッシュセメントの品質または製造条件の予測方法であって、
    上記入力層は、フライアッシュセメント製造における監視データの実測値を入力するためのものであり、上記出力層は、フライアッシュセメントの品質または製造条件の評価に関連する評価データの推測値を出力するためのものであり、
    上記監視データと上記評価データの組み合わせが、
    (i)上記監視データが、フライアッシュに関するデータ、基材セメントに関するデータ、基材セメントの物理特性に関するデータ、フライアッシュの混合率、フライアッシュセメントの化学成分の中から選ばれる一種以上のデータであり、かつ、上記評価データが、フライアッシュセメントの品質に関するデータである組み合わせ、または、
    (ii)上記監視データが、フライアッシュに関するデータ、基材セメントに関するデータ、基材セメントの物理特性に関するデータ、フライアッシュの混合率、フライアッシュセメントの化学成分、及びフライアッシュセメントの品質に関するデータの中から選ばれる一種以上のデータであり、かつ、上記評価データが、フライアッシュセメントの製造条件に関するデータである組み合わせ、であり、
    (A)学習回数の初期設定を行う工程と、
    (B)監視データの実測値と評価データの実測値の組み合わせである学習データを複数用いて、ニューラルネットワークの学習を、前工程で設定された学習回数行う工程と、
    (C)学習データの監視データの実測値を、直近の工程(B)の学習で得られたニューラルネットワークの入力層に入力して得られた評価データの推測値と学習データの評価データの実測値との平均2乗誤差(σ)、及び、ニューラルネットワークの学習結果の信頼性を確認するための監視データの実測値と評価データの実測値の組み合わせであるモニターデータの中の監視データの実測値を、直近の工程(B)の学習で得られたニューラルネットワークの入力層に入力して得られた評価データの推測値とモニターデータの中の評価データの実測値との平均2乗誤差(σ)を算出し、算出されたσとσの関係がσ≧σである場合、工程(D)を実施し、算出されたσとσの関係がσ<σである場合、工程(E)を実施する工程と、
    (D)直近の工程(A)で設定された学習回数および再設定された直近のニューラルネットワークの学習回数のいずれの学習回数よりも大きい学習回数を新たな学習回数として再設定し、再度工程(B)〜(C)を実施する工程と、
    (E)直近のニューラルネットワークの学習で実施された学習回数を減らした学習回数を、新たな学習回数として再設定する工程と、
    (F)直近の工程(B)で用いられた学習データを用いて、ニューラルネットワークの学習を直近の工程(E)で設定された学習回数行う工程と、
    (G)学習データの監視データの実測値を、直近の工程(F)の学習で得られたニューラルネットワークの入力層に入力して得られた評価データの推測値と学習データの評価データの実測値との平均2乗誤差(σ)、及び、モニターデータの中の監視データの実測値を、直近の工程(F)の学習で得られたニューラルネットワークの入力層に入力して得られた評価データの推測値とモニターデータの中の評価データの実測値との平均2乗誤差(σ)を算出し、算出されたσとσの関係がσ≧σである場合、工程(I)を実施し、算出されたσとσの関係がσ<σである場合、工程(H)を実施する工程と、
    (H)直近の工程(F)におけるニューラルネットワークの学習回数が予め定めた数値を超えている場合、再度工程(E)〜(G)を実施し、直近の工程(F)におけるニューラルネットワークの学習回数が予め定めた数値以下の場合、工程(J)を実施する工程と、
    (I)下記式(1)を用いて解析度判定値を算出し、該解析度判定値が予め定めた第一の設定値未満である場合、ニューラルネットワークの学習を終了し、学習済みのニューラルネットワークの入力層に、フライアッシュセメント製造における監視データの実測値を入力して、上記ニューラルネットワークの出力層から、フライアッシュセメントの品質または製造条件の評価に関連する評価データの推測値を出力してフライアッシュセメントの品質または製造条件を予測し、上記解析度判定値が予め定めた第一の設定値以上である場合、工程(J)を実施する工程と、
    (J)工程(A)を実施した回数の大きさについての判定を行い、該回数が予め設定した回数以下である場合、学習条件の初期化を行って、再度工程(A)〜(I)を行い、該回数が予め設定した回数を超える場合、工程(K)を実施する工程と、
    (K)工程(I)において算出した全ての解析度判定値のうち、最も小さい解析度判定値が予め定めた第二の設定値未満である場合、最も小さい解析度判定値を得ることができた工程(I)におけるニューラルネットワークを、学習済みのニューラルネットワークとした後、工程(L)を実施し、最も小さい解析度判定値が予め定めた第二の設定値以上である場合、フライアッシュセメントの品質または製造条件を予測することはできないと判断して予測を終了する工程と、
    (L)工程(I)において算出した全ての解析度判定値のうち、最も小さい解析度判定値を得ることができた工程(I)において、学習データとして使用した監視データの実測値と評価データの実測値の組み合わせについて無相関検定を行い、5%の有意水準で有意であると判断された監視データの種類が2種以上である場合、5%の有意水準で有意であると判断された監視データの全種類を座標軸とする座標空間に学習データとして使用した監視データの実測値をプロットし、座標空間において、プロットされた監視データ同士を結ぶことで形成される監視データの全てを包含する領域であって、該領域が最大となるように監視データ同士を結ぶことで形成される領域を、予測可能監視データ領域として設定した後、工程(M)を実施し、5%の有意水準で有意であると判断された監視データが0または1種類である場合、フライアッシュセメントの品質または製造条件を予測することはできないと判断して予測を終了する工程と、
    (M)フライアッシュセメント製造における監視データの実測値が、上記予測可能監視データ領域に含まれるかどうかを判定し、フライアッシュセメント製造における監視データの実測値が、上記予測可能監視データ領域に含まれる場合、工程(K)で得た学習済みのニューラルネットワークの入力層に、フライアッシュセメント製造における監視データの実測値を入力して、上記ニューラルネットワークの出力層から、フライアッシュセメントの品質または製造条件の評価に関連する評価データの推測値を出力してフライアッシュセメントの品質または製造条件を予測し、フライアッシュセメント製造における監視データの実測値が、上記予測可能監視データ領域に含まれない場合、フライアッシュセメントの品質または製造条件を予測することはできないと判断して予測を終了する工程と、
    を含むことを特徴とするフライアッシュセメントの品質または製造条件の予測方法。
    Figure 0006636358
    (上記式(1)中、学習データの平均2乗誤差(σ)とは、学習データの監視データの実測値を学習後のニューラルネットワークの入力層に入力して得られた評価データの推測値と学習データの評価データの実測値との平均2乗誤差(σ)である。評価データの推測値の平均値とは、学習データの監視データの実測値を学習後のニューラルネットワークの入力層に入力して得られた評価データの推測値の平均値である。)
  2. 上記解析度判定値の予め定めた第一の設定値が6%以下であり、上記解析度判定値の予め定めた第二の設定値が上記第一の設定値よりも大きくかつ20%以下である請求項1に記載のフライアッシュセメントの品質または製造条件の予測方法。
  3. 上記ニューラルネットワークが、上記入力層と上記出力層の間に中間層を有する階層型のニューラルネットワークである請求項1または2に記載のフライアッシュセメントの品質または製造条件の予測方法。
  4. 上記監視データの値を人為的に変動させて得られた上記評価データの推測値に基づいて、フライアッシュセメントの製造条件を最適化する請求項1〜3のいずれか1項に記載のフライアッシュセメントの品質または製造条件の予測方法。
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