JP6642916B2 - フライアッシュの活性度指数予測方法、およびフライアッシュ混合セメントの製造方法 - Google Patents

フライアッシュの活性度指数予測方法、およびフライアッシュ混合セメントの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、フライアッシュの活性度指数を予測する方法と、該方法を用いたフライアッシュ混合セメントの製造方法に関する。
セメントの一部をフライアッシュで置換したフライアッシュ混合セメントは、フライアッシュから溶出するSiやAlがフライアッシュ粒子の近傍にあるセメント水和物の中に取り込まれ、低Ca型のC−S−H(カルシウムシリケート水和物)相を生成する。この生成反応はポゾラン反応と呼ばれ、C−S−H相がアルカリシリカ反応(ASR)を抑制するなど、コンクリートの耐久性を高める効果がある。
ところで、一般社団法人石炭エネルギーセンターのフライアッシュ全国実態調査報告書によれば、平成25年度のフライアッシュの発生量は1289万トン(該発生量の内訳は、電気事業で993万トン、一般産業で296万トンである。)に達した。しかも、電源を火力発電に大きく依存せざるを得ない我が国では、フライアッシュが多量に発生する状況が、今後もしばらく続くと予想される。
このフライアッシュの内、セメント混合材やコンクリート混和材として有効活用された量は約18万トンであり、これはフライアッシュの発生量全体の1.4%に過ぎない。このように、フライアッシュのポゾラン反応性を積極的に活用する分野で、フライアッシュの利用率が低い理由の一つに、フライアッシュの化学組成や粉体特性に強く影響する炭種や燃焼プロセス等の因子が、石炭火力発電所のライン毎に異なるため、発生し供給されるフライアッシュの品質が安定しないことが挙げられる。
このような状況から、フライアッシュをセメント混合材等として利用する場合、ロット毎にフライアッシュが要求品質を満たすか否か確認する必要があった。通常、フライアッシュのポゾラン反応性は、JIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」に規定されている活性度指数の試験方法を用いて評価されるが、この試験結果が得られるまでに28日間または91日間もの長期間を要するため、実用的な品質評価試験方法とは言い難かった。したがって、以前から、フライアッシュのポゾラン反応性を早期に判定できる効率的な方法が求められていた。
かかる状況を受けて、フライアッシュのポゾラン反応性の判定方法がいくつか提案されている。
例えば、非特許文献1に記載の研究は、温度80℃で12〜24時間反応させて得られる下記(1)式のAPI値と活性度指数との間の相関係数(R)が、0.78〜0.93と高いため、API値を用いてフライアッシュのポゾラン反応性を評価できるとしている。
API(%)=((Ca(C)−Ca(F+C))/Ca(C))×100・・・(1)
ここで、Ca(C)はセメント試料単独が水和した液相(基準用試料)中のCa2+濃度を表し、Ca(F+C)はフライアッシュとセメントの混合物が水和した液相(評価用試料)中のCa2+濃度を表す。
非特許文献2に記載の研究は、フライアッシュの鉱物組成とポゾラン反応性の関係に関するものである。そして、ポゾラン反応性に関係するガラス相量と粉末度がほぼ同等なフライアッシュでは、ガラス相中の修飾酸化物を考慮した下記(2)式のM値が、ポゾラン反応性の評価の指標になるとしている。
M=(CaO+MgO+RO)/SiO ・・・(2)
さらに、特許文献1に記載のコンクリート用フライアッシュの活性度指数の予測方法は、フライアッシュのポゾラン反応により得られたフライアッシュ硬化体の材齢7日以内の電気抵抗値を計測し、予め求めておいた活性度指数と電気抵抗値との相関関係に基づいてフライアッシュの活性度指数を予測する方法である。しかし、前記予測方法は、試験方法が特殊であるほか、予測結果を得るまでに最長で7日間程度を要するため、実用的とは言い難い。
ところで、近年、粉末X線回折を用いて複数の混合相中の構成相を定量分析する、新たな方法が開発された。例えば、PONKCS(Partial Or No Known Crystal Structure)法は、内部標準物質を用いることなく、フライアッシュのような非晶質相を含む複数の混合相について構成相の定量分析ができるデータ解析方法である。そして、非特許文献3は、これをさらに発展させて、PONKCS法とリートベルト解析法を組み合わせれば、複数の混合相における構成相の定量分析が短時間でできると報告している。さらに、非特許文献4は、この組み合わせによる方法は、高炉セメント中の高炉スラグ量の定量分析にも有用であると報告している。
山本武志ほか、「フライアッシュのポゾラン反応に関する研究 −ポゾラン反応機構の解明と促進化学試験法(API法)の最適化−」、電力中央研究所報告、N04008(2004) 大塚拓ほか、「フライアッシュの鉱物組成とポゾラン反応性」、セメント・コンクリート論文集、No.63、pp.16−21(2009) N.V.Y.Scarlett et al.;Quantification of phases with partial or no known crystal structures,Powder Diffraction,Vol.21,No.4,pp.278-284(2006) BRUKER社ホームページ;QPA with Partial or No Known Crystal Structures(PONKCS),BRUKER Advanced XRD Workshop(2011)
特開2012−47587号公報
したがって、本発明は、フライアッシュの活性度指数を、短時間で精度よく予測できる方法を提供することを目的とする。
そこで、本発明者はフライアッシュの活性度指数の予測方法について鋭意検討した結果、下記の(3)式および(4)式を用いれば、フライアッシュの活性度指数を、迅速かつ定量的に評価できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は下記の構成を有するフライアッシュの活性度指数の予測方法等である。
[1]フライアッシュのブレーン比表面積(cm/g)、フライアッシュ中のSOの含有率(質量%)、フライアッシュ中のムライトの含有率(質量%)、およびフライアッシュ中の非晶質相の含有率(質量%)を用いて、フライアッシュの活性度指数の予測値を算出して予測する、フライアッシュの活性度指数予測方法。
[2]前記のフライアッシュの活性度指数の予測値を、下記(3)式および(4)式を用いて算出して予測する、前記[1]に記載のフライアッシュの活性度指数予測方法。
28日材齢の活性度指数=12.95
+0.005×(フライアッシュのブレーン比表面積)
+4.51×(フライアッシュ中のSOの含有率)
+0.60×(フライアッシュ中のムライトの含有率)
+0.57×(フライアッシュ中の非晶質相の含有率)…(3)
91日材齢の活性度指数=1.88
+0.008×(フライアッシュのブレーン比表面積)
+13.53×(フライアッシュ中のSOの含有率)
+0.78×(フライアッシュ中のムライトの含有率)
+0.70×(フライアッシュ中の非晶質相の含有率)…(4)
ただし、前記式中の変数の単位は、ブレーン比表面積がcm/g、SOの含有率、ムライトの含有率、および非晶質相の含有率が質量%である。
[3]前記フライアッシュの非晶質相の含有率を、PONKCS法を組み合わせた粉末X線回折−リートベルト解析法を用いて求める、前記[1]または[2]に記載のフライアッシュの活性度指数予測方法。
[4]前記[1]〜[3]のいずれかに記載のフライアッシュの活性度指数予測方法を用いて求めた活性度指数に基づき、1種のフライアッシュ、または活性度指数が異なる2種以上のフライアッシュの、基材セメントに対する混合率を決め、該混合率に従いフライアッシュと基材セメントを混合して、フライアッシュ混合セメントを製造する、フライアッシュ混合セメントの製造方法。
ここで、前記の混合率とは、1種のフライアッシュ、または活性度指数が異なる2種以上のフライアッシュと基材セメントの合計量を100とした場合の、フライアッシュの含有率(質量%)を意味する。
本発明のフライアッシュの活性度指数予測方法は、フライアッシュの活性度指数を、短時間で精度よく予測することができる。また、該活性度指数予測方法を用いた本発明のフライアッシュ混合セメントの製造方法は、粉末X線回折計、蛍光X線分析装置、およびブレーン比表面積自動測定装置を備えたオンライン分析システムを有するセメント製造現場で用いれば、フライアッシュ混合セメントの製造工程における品質管理の要員を最小化することができる。
フライアッシュの活性度指数の予測値と実測値の相関を示す図であり、(a)は28日材齢における相関を示し、(b)は91日材齢における相関を示す。
本発明のフライアッシュの活性度指数予測方法は、前記のとおり、フライアッシュのブレーン比表面積、SOの含有率、非晶質相の含有率、およびムライトの含有率を用いてフライアッシュの活性度指数の予測値を算出して予測する方法である。
以下、本発明について、フライアッシュの活性度指数予測方法と、フライアッシュ混合セメントの製造方法に分けて具体的に説明する。
1.フライアッシュの活性度指数予測方法
(1)フライアッシュとそのブレーン比表面積の測定
本発明の評価の対象であるフライアッシュは、特に限定されず、石炭火力発電所、石油精製工場、その他の化学工場等で微粉炭を燃焼したときに発生する燃焼ガスから、集塵器により捕集された微粉末である。
フライアッシュのブレーン比表面積の測定は、通常、JIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」に準拠して行う。
(2)フライアッシュのSO量の定量
フライアッシュは、好ましくは事前に乾燥するとよい。フライアッシュの乾燥方法は、特に限定されないが、例えば、JIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」に準拠して、フライアッシュが恒量になるまで105℃で加熱する方法が挙げられる。
フライアッシュのSO量の定量方法は、特に限定されないが、短時間で定量できるため、好ましくは、蛍光X線分析法(検量線法、またはファンダメンタルパラメーター法)により行う。
なお、フライアッシュのSOは、フライアッシュが集塵器によって捕集された際に、その表面に凝集した燃焼ガス中のSO成分に由来すると推定する。また、フライアッシュのSO成分がフライアッシュのポゾラン反応性を高める作用機構は、ポゾラン活性の刺激材である石膏の作用機構と同じと考える。しかし、外部から添加した石膏と比べ、明らかに少量のSO量で同じポゾラン反応性が得られることから、SO成分がフライアッシュの粒子表面に効果的に存在していると予想する。
(3)フライアッシュ中のムライトおよび非晶質相の定量
フライアッシュ中のムライト等の鉱物組成(含有率)の定量方法は、特に限定されないが、短時間で定量できるため、好ましくは、下記文献Aに記載の粉末X線回折−リートベルト解析法により行なう。この定量方法により、予測式におけるフライアッシュ中のムライトの含有率、および非晶質相の含有率が得られる。
文献A:星野清一ほか「非晶質混和材を含むセメントの鉱物の定量におけるX線回折/リートベルト法の適用」、セメント・コンクリート論文集、第59号、pp.14−21(2005)
また、粉末X線回折装置は、例えば、D8 ADVANCE(ブルカー・エイエックスエス社製)が挙げられ、解析ソフトウェアは、例えば、DIFFRACplusTOPAS(Ver.3)(ブルカー・エイエックスエス社製)が挙げられる。
さらに、非晶質相の含有率の定量精度を向上させるために、前記リートベルト解析にPONKCS法を組み合わせた方法(以下「リートベルト解析−PONKCS法」という。)を用いることがより好ましい。
リートベルト解析−PONKCS法を用いた非晶質相の定量は、具体的には下記(i)〜(iii)の手順に従い行う。
(i)フライアッシュの粉末X線回折を測定し、得られたハローパターンと同じX線回折プロファイルを示す、仮想的な結晶構造モデルを計算し、その仮想結晶の単位格子体積Vを求める。
(ii)内部標準法、外部標準、またはダミーピーク法等を用いて予め定量した、非晶質相の含有率が既知のフライアッシュを準備して、そのフライアッシュのX線回折パターンを取得する。そして、前記(i)で求めたVと、非晶質相の含有率から、下記(5)式で表されるリートベルト解析法の定量式における非晶質相の定数Z×Mを求める。この(ii)で用いるフライアッシュは、(i)で単位格子体積Vを求めたフライアッシュと同じあることが好ましいが、フライアッシュの銘柄間で、X線回折プロファイルのハローパターンの相違は無視できる程度に小さいので、(i)で使用したフライアッシュと異なるフライアッシュを使用することも可能である。
Figure 0006642916
(iii)前記(ii)で求めたZ×Mは、フライアッシュにほぼ固有の値であって、フライアッシュの銘柄間の相違は、非晶質相の定量精度に影響しないため、一度求めたZ×Mは銘柄の異なるフライアッシュにも使用できるから、前記(ii)で求めたZ×Mを、前記(5)式に代入して、非晶質相の含有率が未知であるフライアッシュのWの計算に使用する。
なお、フライアッシュ中のα-石英やムライト等の非晶質相以外の鉱物は、公知の結晶構造データを用いることにより前記(5)式中のZ、M、およびVの各定数を算出できる。
リートベルト解析−PONKCS法による解析は、市販のX線回折解析ソフトウェアを用いることができ、例えば、前記DIFFRACplusTOPAS(Ver.3)(ブルカー・エイエックスエス社製)が挙げられる。
(4)活性度指数の予測式の導出
本発明で用いる活性度指数の予測式(前記(3)式および(4)式)は、後掲の表1に記載の活性度指数を目的変数に用い、ブレーン比表面積、SOの含有率、非晶質相の含有率、およびムライトの含有率を説明変数に用いて、重回帰分析により得られた重回帰式である。なお、表1に記載のフライアッシュ以外のフライアッシュ(群)に対しても同様の重回帰式が得られるから、フライアッシュ(群)の違いによる重回帰式中の定数や係数の変動は小さい。
2.フライアッシュ混合セメントの製造方法
本発明のフライアッシュ混合セメントの製造方法は、前記のとおり、前記[1]〜[3]のいずれかに記載のフライアッシュの活性度指数予測方法を用いて求めた活性度指数に基づき、1種のフライアッシュ、または、活性度指数が異なる2種以上のフライアッシュの、基材セメントに対する混合率を決め、該混合率に従いフライアッシュと基材セメントを混合して、フライアッシュ混合セメントを製造する方法であり、以下の(a)の方法と(b)の方法が挙げられる。
すなわち、前記フライアッシュの活性度指数予測方法を用いて求めたフライアッシュの活性度指数の予測値を基にして、
(a)フライアッシュ混合セメント中のフライアッシュの混合率が固定されている場合は、活性度指数予測値が異なる複数のフライアッシュを、フライアッシュ混合セメントに要求される強度発現性を満たす活性度指数を有するフライアッシュとなるように、各フライアッシュの混合比率を設定した後に、該混合比率と混合率に従い、各フライアッシュと基材セメントを混合する製造方法と、
(b)フライアッシュ混合セメント中のフライアッシュの混合率が任意の場合は、フライアッシュ混合セメントの強度発現性を満たすように、フライアッシュの混合比率を設定した後に、該混合比率と混合率に従い、フライアッシュと基材セメントを混合する製造方法である。
ここで、前記(a)フライアッシュ混合セメントのフライアッシュの混合率が固定されている場合において、1種類で、フライアッシュ混合セメントの強度発現性を満たす活性度指数を有するフライアッシュがある場合は、当該1種類のフライアッシュを基材セメントと混合すれば足りる。
なお、本発明のフライアッシュ混合セメントの製造方法で用いる基材セメントは、特に制限されず、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、エコセメント、および高炉セメントから選ばれる1種以上が挙げられる。
以下、フライアッシュ混合セメントの前記2つの製造方法について、さらに具体的に説明する。
(a)フライアッシュ混合セメント中のフライアッシュの混合率が固定されている場合
アルカリシリカ反応の抑制効果を確保する等の目的から、フライアッシュ混合セメント中のフライアッシュの混合率が既に固定(設定)されている場合は、例えば、以下の(i)〜(iv)に記載した手順に従って、フライアッシュ混合セメントを製造する。
(i)フライアッシュ混合セメントの製造現場に受入れたフライアッシュを、受入ロット等の適当な区分毎に、別々の保管設備に保管しておき、前記フライアッシュの活性度指数予測方法を用いて、それぞれの保管設備毎に、フライアッシュの活性度指数の予測値を求める。
(ii)次いで、フライアッシュ混合セメントに固定(設定)されているフライアッシュの混合率の下で、フライアッシュ混合セメントに要求される強度発現性を満たすように、フライアッシュの活性度指数の目標値を、実績値等に基づき設定する。
(iii)前記(ii)で設定したフライアッシュの活性度指数の目標値を満たすように、前記(i)で求めた保管設備毎に各フライアッシュの混合比率を設定する。具体的には、例えば、前記(i)で求めた保管設備毎の各フライアッシュの活性度指数の予測値を、各フライアッシュの混合比率に基づいて加重平均した値が、前記(ii)で設定したフライアッシュの活性度指数の目標値を満たすようにすればよい。
(iv)次いで、フライアッシュと基材セメントを混合して、フライアッシュ混合セメントとする。この工程では、前記(iii)で設定した各フライアッシュの混合比率に従って、各保管設備から抜き取ったフライアッシュを混合してフライアッシュの混合物を調製した後に、該混合物と基材セメントを混合するか、または、基材セメントと複数のフライアッシュを同時に混合してもよい。なお、後述する(b)の場合も含め、フライアッシュ同士あるいはフライアッシュと基材セメントの混合に用いる装置は、セメント工場において混合セメントの製造に通常用いる装置、すなわち、連続式またはバッチ式を問わず、容器回転型、容器固定型、粒体運動型等の各種混合装置を使用することができる。
(b)フライアッシュ混合セメント中のフライアッシュの混合率が任意の場合
性能規定型の品質規格を準用した場合等の、フライアッシュ混合セメント中のフライアッシュの混合率の変動が許容される場合は、以下の(v)〜(viii)に記載した手順に従って、フライアッシュ混合セメントを製造する。なお、(b)の場合でも、前記(a)の場合と同様に、複数のフライアッシュを混合して使用することも可能であるが、説明を明瞭にするために、フライアッシュは1種類として以下に説明する。
(v)前記(i)と同様にして、フライアッシュの活性度指数の予測値を求める。
(vi)次いで、フライアッシュ混合セメントに要求される強度発現性を実績上満たすフライアッシュ混合セメント(以下「基準フライアッシュ混合セメント」という。)を選定し、該セメントに使用されたフライアッシュの活性度指数(P)とフライアッシュの混合率(F)を確認し、製造するフライアッシュ混合セメントの目標値として設定する。
(vii)下記(6)式を用いて、製造するフライアッシュ混合セメントのフライアッシュの混合率(F)を算出する。なお、下記(6)式では、基準フライアッシュ混合セメントおよび製造するフライアッシュ混合セメント中の基材セメントの強度発現性は同じであることを前提にする。
=(P−100)/(P−100)×F ・・・(6)
ただし、前記(6)式中、Fは製造するフライアッシュ混合セメントのフライアッシュの混合率(質量%)、Pは基準フライアッシュ混合セメントに使用されたフライアッシュの活性度指数の実測値(%)、Pは製造するフライアッシュ混合セメントのフライアッシュの予測値(%)、Fは基準フライアッシュ混合セメントのフライアッシュの混合率の実測値(質量%)を表す。また、前記(6)式中の100は、基材セメントの強度発現性に関連する値で、フライアッシュの活性度指数に相当するものであり、便宜上、100とする。
(viii)前記(vii)で得られたフライアッシュの混合率(F)に従い、基材セメントと当該フライアッシュを混合する。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
1.フライアッシュの物理化学的特性値
(1)フライアッシュのブレーン比表面積および活性度指数の測定
使用したフライアッシュは、異なる火力発電所から採取した14銘柄のフライアッシュA〜Nであり、JIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」に記載のフライアッシュII種〜IV種に相当する。そして、該フライアッシュのブレーン比表面積および活性度指数は、前記JISに準拠して測定した。その結果を表1に示す。
(2)フライアッシュのSOの含有率の定量
前記JISに準拠して、フライアッシュA〜Nを105℃で恒量になるまで加熱して湿分を除去した後、該フライアッシュ(以下「乾燥フライアッシュ」という。)のSOの含有率を蛍光X線分析法(検量線法)を用いて定量した。その結果を表1に示す。
(3)フライアッシュのムライトおよび非晶質相の含有率の定量
該乾燥フライアッシュの鉱物組成を、PONKCS法を組み合わせた粉末X線回折−リートベルト解析法を用いて求めた。用いたX線回折装置は、D8 ADVANCE(ブルカー・エイエックスエス社製)であり、解析ソフトウェアは、DIFFRACplusTOPAS(Ver.3)(ブルカー・エイエックスエス社製)である。その結果を表1に示す。
Figure 0006642916
2.セメントの特性
使用した普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)のブレーン比表面積と化学組成を表2に示し、その鉱物組成を表3に示す。
なお、ブレーン比表面積はJIS R 5201「セメントの物理試験方法」に準拠して、LOI(強熱減量)はJIS R 5202「セメントの化学分析方法」に準拠して、また化学組成はJIS R 5204「セメントの蛍光X線分析方法」に準拠して測定した。また、鉱物組成は前記文献Aに記載の粉末X線回折−リートベルト解析法を用いて求めた。用いたX線回折装置は、D8 ADVANCE(ブルカー・エイエックスエス社製)であり、解析ソフトウェアは、DIFFRACplusTOPAS(Ver.3)(ブルカー・エイエックスエス社製)である。
Figure 0006642916
Figure 0006642916
3.予測式の導出
活性度指数の予測式(前記(3)式および(4)式)は、表1に記載の活性度指数を目的変数に用い、ブレーン比表面積、SOの含有率、非晶質相の含有率、およびムライトの含有率を説明変数に用いて、重回帰分析を行なって求めた。
4.フライアッシュの活性度指数の予測
(1)本発明のフライアッシュの活性度指数予測方法により求めた活性度指数の予測精度の評価
表1に記載のフライアッシュのブレーン比表面積、フライアッシュ中のSOの含有率、ムライトの含有率、および非晶質相の含有率を前記(3)式および(4)式に代入して、フライアッシュの活性度指数の予測値を算出した。その結果を表4に示す。また、表1に記載のフライアッシュの活性度指数の実測値と、表4に記載の前記予測値との相関を図1に示す。
Figure 0006642916
図1に示すように、フライアッシュの活性度指数の実測値と、本発明の予測方法で得られた予測値の間の相関は、28日材齢の決定係数が0.86、91日材齢の決定係数が0.89と、いずれも高い。したがって、試験終了まで数ヶ月を要していた従来の試験に比べ、算出時間が1時間で済む本発明のフライアッシュの活性度指数の予測方法は、有用性が高く、従来の試験に代えて用いることができる。そして、X線回折装置等を備えたセメント工場において、本発明のフライアッシュの活性度指数の予測方法を用いて、目標とする強度発現性を有するフライアッシュ混合セメントを容易に製造することができる。

Claims (4)

  1. フライアッシュのブレーン比表面積(cm/g)、フライアッシュ中のSOの含有率(質量%)、フライアッシュ中のムライトの含有率(質量%)、およびフライアッシュ中の非晶質相の含有率(質量%)を用いて、フライアッシュの活性度指数の予測値を算出して予測する、フライアッシュの活性度指数予測方法。
  2. 前記のフライアッシュの活性度指数の予測値を、下記(3)式および(4)式を用いて算出して予測する、請求項1に記載のフライアッシュの活性度指数予測方法。
    28日材齢の活性度指数=12.95
    +0.005×(フライアッシュのブレーン比表面積)
    +4.51×(フライアッシュ中のSOの含有率)
    +0.60×(フライアッシュ中のムライトの含有率)
    +0.57×(フライアッシュ中の非晶質相の含有率)…(3)
    91日材齢の活性度指数=1.88
    +0.008×(フライアッシュのブレーン比表面積)
    +13.53×(フライアッシュ中のSOの含有率)
    +0.78×(フライアッシュ中のムライトの含有率)
    +0.70×(フライアッシュ中の非晶質相の含有率)…(4)
    ただし、前記式中の変数の単位は、ブレーン比表面積がcm/g、SOの含有率、ムライトの含有率、および非晶質相の含有率が質量%である。
  3. 前記フライアッシュの非晶質相量を、PONKCS法を組み合わせた粉末X線回折−リートベルト解析法を用いて求める、請求項1または2に記載のフライアッシュの活性度指数予測方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のフライアッシュの活性度指数予測方法を用いて求めた活性度指数に基づき、1種のフライアッシュ、または活性度指数が異なる2種以上のフライアッシュの、基材セメントに対する混合率を決め、該混合率に従いフライアッシュと基材セメントを混合して、フライアッシュ混合セメントを製造する、フライアッシュ混合セメントの製造方法。

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