JP2007137722A - セメント組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 塩素バイパスダストを有効利用し、長期強度、流動性に優れたセメント組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 塩素バイパス装置を備えたセメント製造プラントにおいて生成されたセメントクリンカーと、抽気されたキルン排ガスに存在するダストを集塵して回収された塩素バイパスダストと、石膏と、石灰石とを混合して、セメント組成物を製造する。塩素バイパスダストには塩素が含まれており、セメント組成物の石灰石量Y質量%と塩化物イオン量X質量%との関係が0<Y<−54X+4.5を満足し、かつクリンカーのCA量とCAF量との合量が18〜23質量%、CS量とCS量との質量比が2.0〜5.0である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、塩素バイパス装置を備えたセメント製造プラントにおいて回収される塩素バイパスダストを有効利用したセメント組成物に関するものである。
従来より、塩素バイパス装置を備えたセメント製造プラントにおいて回収された塩素バイパスダストのセメント組成物への利用方法が種々検討されている。
例えば、特許文献1に示されるセメント原料焼成装置のように、塩素バイパス装置によってセメントキルン内の排ガスの一部を抽気した後、その排ガスに含まれる塩化アルカリ等の揮発性成分を系外で固定化処理して、セメント原料焼成系内における塩化アルカリ等の量を低減させる技術がある。この塩素バイパス装置は、セメント原料焼成系内におけるコーチングトラブルを防止したり、セメントクリンカー中の塩素などを抜き出したりする目的で、セメントキルンに付加的に設置されている。
この塩素バイパス装置によって抽気されたガス成分は、集塵機を経て再びセメント原料系内に戻されたり大気中に放出されたりするが、窯尻で1000℃以上の熱履歴を経たKCl等の塩化物やセメント原料の仮焼物とそれらの硫酸塩等から成る固形物が発生する。
この固形物のことを塩素バイパスダストといい、水洗処理することにより塩素濃度を低減したスラッジ等にする場合もある。
また、特許文献2には、高炉スラグまたはフライアッシュを含むセメント90〜99.7質量%と塩素バイパスダスト0.3〜10質量%からなるセメント組成物とその製造方法が開示されている。この製造方法によれば、塩素バイパスダストを添加することにより、材齢3日および7日の初期強度を増大させる効果があり、初期強度改善剤の欠点である材齢28日強度の低下がないことが示されている。また、ここで塩素バイパスダスト添加量を0.3〜10質量%としたのは、0.3質量%より少ないと、高炉スラグまたはフライアッシュを含むセメントの初期強度を増大させる効果がなく、10質量%より多いと、塩分が多くなり、コンクリートとしての用途が制限されると示されている。
また、特許文献3には、セメントに塩素バイパスダスト及び石灰石を添加するセメント組成物が開示されている。この文献には、セメント組成物にポリカルボン酸等のセメント分散剤を添加し流動性を付与する場合、更に石灰石及び塩素バイパスダストを適量添加することにより、石膏やセメント分散剤によって供給される硫酸イオンの阻害による流動性の低下を防止することが記載されている。
特開平10−330136号公報 特開平10−218657号公報 特開2000−281417号公報 一方で、最近のセメント製造においては、廃棄物有効利用の観点から、石炭灰や建設発生土などのAlを多く含む廃棄物を多量に処理するケースが増加しており、クリンカーおよびセメントの化学組成設計においてAlを多く、またその結果としてクリンカー鉱物設計において間隙相の合量、すなわちC3AおよびC4AFの合量を増加させるここととなり、これに伴ってC3S量およびC2S量が減少するため、材齢28日以降の長期強度が出難くなる傾向にあった。
塩素バイパスダストは、キルンの特性によりその組成が異なるが、上記文献には、塩素バイパスダストの組成がセメント組成物に与える影響に関して何ら言及されていない。また、間隙相合量を多く含むセメントへの塩素バイパスダストの有効利用技術については開示されていない。
そこで、本発明は、間隙相合量が多いポルトランドセメントクリンカーを対象に、石膏および塩素バイパスダストを含むセメント組成物において、長期強度および流動性が低下しない適正条件を見出し、強度発現性および流動性に優れるセメント組成物を提供することを目的とした。
本発明者らは、間隙相合量を多く含むポルトランドセメントクリンカーへの塩素バイパスダストの添加が強度発現性に及ぼす影響を、様々な塩素バイパスダストおよび様々な添加量で鋭意研究した結果、石灰石の添加が有効で、かつ塩素バイパスダストの添加量はこのダスト中に含まれる塩化物イオン量によって制限され、モルタルやコンクリートの流動性あるいは強度発現性から、石灰石量および塩化物量との間に適正範囲が存在することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係るセメント組成物は、セメントクリンカーと、石膏と、石灰石と、塩素バイパスダストとを組成成分とし、石灰石量Y質量%と塩化物イオン量X質量%との関係が0<Y<−54X+4.5を満足し、かつクリンカーのCA量とCAF量との合量が18〜23質量%、CS量とCS量との質量比が2.0〜5.0であることを特徴とする。
この発明に係るセメント組成物にあっては、硬化させたときに、Y≧−54X+4.5のセメント組成物を硬化させたときよりも、優れた初期強度及び長期強度を発現する。また、本発明に係るセメント組成物は、Y=0のセメント組成物よりも、適切なスランプフローで十分な流動性を有する。これにより、塩素バイパスダストを有効利用して、品質が安定したセメント組成物を製造することができる。
さらに、上記セメント組成物は、高炉スラグを1質量%〜5質量%含有していることが好ましい。これにより、高炉スラグの潜在水硬性を適度に利用したセメント組成物とすることができる。
また、セメント組成物のブレーン比表面積は2500cm/g〜4000cm/gであることが好ましい。この範囲のブレーン比表面積であれば、セメント組成物に十分な初期強度及び長期強度を発現させることができる。
本発明によれば、塩素バイパスダストを有効利用することができ、長期強度、流動性に優れている。
以下、図面を参照して本発明に係るセメント組成物の好適な実施形態について詳細に説明する。
セメント組成物は、ポルトランドセメントクリンカーと石膏と石灰石と塩素バイパスダストとを含む。ポルトランドセメントクリンカーは、間隙相合量(C3AおよびC4AF)が18〜23質量%であることが前提条件である。この場合、キルン内の排ガスの一部を抽気する塩素バイパス装置を備えたセメント製造プラントを用いて製造される。塩素バイパスダストは、塩素バイパス装置によって抽気された排ガスから集塵されたダストであり、通常は固形物であるが、水洗処理してなる塩素濃度が低減されたスラッジ等であっても良い。この塩素バイパスダストの固形物は、KCl、NaCl、CaCl等の塩化物やセメント原料の仮焼物、それらの硫酸塩等から成る。塩素バイパスダストは塩化物イオン含有量(γ)が1〜40質量%のものが使用できる。
そのような塩素バイパス装置を備えたセメント製造プラントを用いてセメント組成物を製造するにあたって、塩素バイパスダストに由来する塩化物イオン量X質量%に対して石灰石量Y質量%が、次式(1)の関係を満足するようにする。
0<Y<−54X+4.5 (1)
塩素バイパスダストに由来するセメント組成物中の塩化物イオン量の許容限界(上限値)は、それが多ければ塩素バイパスダストの有効活用量が増大するので好ましいこととなるが、反面セメント物性への影響が大きくなるため、総括的には0.07質量%以内が好ましく、より好ましくは0.05質量%に限定される。
組成物中の塩化物イオン量X質量%は、塩素パイパスダスト中の塩化物イオン物含有量γ質量%と塩素バイパスダストの添加量δ質量%から、X=γ×δ÷100で計算される。勿論、X>0である。なお、塩化物イオン量はJIS R 5202:1999「ポルトランドセメントの化学分析方法」に準じて測定される値である。また、塩素バイパスダストの塩化物イオン含有量を除く化学成分は、JIS M 8853:1998「セラミックス用アルミノけい酸塩質原料の化学分析方法」に準じて測定する。
本発明のセメント組成物中の石灰石の含有は必須要件の一つであるが、その適正量は塩化物イオン量X質量%との関係で決定される。この条件を満たすセメント組成物により作製された硬化モルタルやコンクリートの圧縮強度が十分確保される。また、モルタルやコンクリートの流動性もよい。Yが−54X+4.5を超えると、セメント組成物の圧縮強度性が低下する。また、石灰石量Y質量%が0(無添加)であると、塩素バイパスダストの添加によるセメント分散剤の性能低下や石膏由来の硫酸イオンとの相互作用によってモルタルやコンクリートの流動性を阻害するため好ましくない。石灰石量(Y)の許容上限値(質量%)は塩素バイパスダストから持ち込まれる塩化物量にとって一義的に決定されるが、0.5質量%以上である。
セメント組成物中の石灰石の効果は、塩素バイパスダストによる初期強度の発現を助長するが、塩素バイパスダストの添加量が過多になるとセメント組成物に水を加え練混ぜているとき、または練混ぜを終えて間もない時期に、一時的にこわばり、または流動性を失った状態となる偽凝結を起こし、強度発現性が低下するうえ、鉄筋の発錆の原因となるおそれがある。なお、塩素バイパスダスト中に含まれる塩化カリウムは、セメントの初期強度を増大させる作用を有する。
セメント組成物に用いるセメントクリンカーは、特に限定されず、JIS R 5210:2003「ポルトランドセメント」用のものが使用できる。
これらのクリンカーを用い、石膏、石灰石および塩素バイパスダストとともに粉砕することにより、セメント組成物が得られる。
セメント組成物の製造に用いる石膏の種類は、天然石膏、排脱石膏、フッ酸石膏、燐酸石膏等が挙げられ、それら石膏の形態は、二水石膏、半水石膏、無水石膏の何れの形態であっても良い。
セメント組成物の製造に用いる石灰石は、CaCO量がCaO換算量で53%以上含有しているものが好ましい。なお、CaO換算量はJIS M 8850:1994「石灰石分析方法」に準じて測定される値である。
セメント組成物に高炉スラグ粉末を添加する場合には、高炉スラグ粉末は、急冷砕されたものであって、セメント組成物に1質量%〜5質量%含有させることが好ましい。これにより、高炉スラグの潜在水硬性を適度に活用したセメント組成物とすることができる。また、高炉スラグの塩基度は1.4以上、好ましくは1.7以上のものを使用する。ここで塩基度とはCaO量、MgO量、及びAl量の合計量をSiO量で割って算出される。なお、これらの含有量はJIS R 5202:1999「ポルトランドセメントの化学分析方法」に準じて測定される。
セメント組成物は、ブレーン比表面積は、2500cm/g〜4000cm/gであることが好ましい。この範囲のブレーン比表面積であれば、セメント組成物に十分な初期強度及び長期強度を発現させることができる。なお、流動性および経済性を考慮すると、セメント組成物のブレーン比表面積は、3000cm/g〜3500cm/gであることがより好ましい。
なお、本発明のセメント組成物は、高炉セメント(高炉スラグ含有量 70質量%以内)、フライアッシュセメント(フライアッシュ含有量 30質量%以内)あるいはセメント系固化材(SO5〜20質量%)のベースセメントととしても好適に使用できる。フライアッシュを添加する場合には、JIS A 6201:1999「コンクリート用フライアッシュ」に規定されるI種、II種、III種、或いはIV種のフライアッシュを用いると良い。
以下、実施例を用いて、本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
使用した材料を以下に示す。
(1)セメント
使用したセメントは、実機キルンで実験的に焼成したポルトランドセメントクリンカーに、セメントのSO含有量が2.0±1.0%となるように石膏を添加すると共に、石灰石及び高炉スラグを添加し、仕上粉砕ミルで粉砕することによって製造した。使用するセメントの作製条件を表1に示す。表1に示すように、(1)〜(9)の9種類のセメントを作製した。なお、表中の石灰石、高炉スラグは、製造したセメント中に占める含有量である。
Figure 2007137722

ここで、ポルトランドセメントクリンカーは、A、B、Cの3種類を使用した。各ポルトランドセメントクリンカーA、B、Cの鉱物組成を表2に示す。なお、これらポルトランドセメントクリンカー中の塩化物イオン量は、いずれも0.0055〜0.0224質量%である。また、セメント組成物はブレーン比表面積が3100〜3400cm2/gになるように製造した。
Figure 2007137722
なお、ポルトランドセメントクリンカーの鉱物組成は、JIS R 5202:1999「ポルトランドセメントの化学分析方法」に準じて化学成分を定量し、C3S量、CS量、C3A量、C4AF量は次式(2)〜(5)により求めた。
C3S量=4.071×CaO量−7.600×SiO2量−6.718×Al2O3量−1.430×Fe2O3量−2.852×SO3量 (2)
C2S量=2.876×SiO2量−0.7544×C3S量 (3)
C3A量=2.650×Al2O3量−1.692×Fe2O3量 (4)
C4AF量=3.043×Fe2O3 (5)

また、石膏の化学成分はJIS R 9101:1995「セッコウの分析方法」に準じ、石灰石の化学成分はJIS M 8850:1994「石灰石分析方法」に準じ、高炉スラグの化学成分はJIS R 5202:1999「ポルトランドセメントの化学分析方法」に準じて測定した。
次に、ポルトランドセメントクリンカーに添加する石膏、石灰石及び高炉スラグの化学成分を表3に示す。
Figure 2007137722
(2)塩素バイパスダスト
セメント組成物に添加する塩素バイパスダストは塩化物イオン量の異なるa,bの2種類を用いた。各塩素バイパスダストa,bの化学成分を表4及び表5に示す。なお、塩化物イオン量はJIS R 5202:1999「ポルトランドセメントの化学分析方法」に準じて測定した。また、塩素バイパスダストの塩化物イオン含有量を除く化学成分はJIS M 8853:1998「セラミックス用アルミノけい酸塩質原料の化学分析方法」に準じて測定した。
Figure 2007137722
Figure 2007137722
[ 試料調製 ]
セメント組成物(1)〜(9)に、さらに塩素バイパスダスト及び高炉スラグ粉末を添加して、複数の試料を作製した(試料No.1〜19)。各試料における各組成物の量、ブレーン比表面積を表6に示す。
Figure 2007137722
表6に示すように、セメント(1)をベースとしたものは、塩素バイパスダストaによってセメント組成物に付加的に含有されることとなる塩化物イオン量が0、0.006、0.021、0.036質量%となるように、塩素バイパスダストaをそれぞれ0、0.17、0.61、1.05質量%の割合でセメントに添加し、混合して試料とした(試料No.1〜4)。
セメント(2)をベースとしたものは、塩素バイパスダストaよってセメント組成物に付加的に含有されることとなる塩化物イオン量が0.010、0.024、0.041、0.062質量%となるように、塩素バイパスダストaをそれぞれ0.29、0.70、1.19、1.80質量%の割合で添加し、混合して試料とした(試料No.5〜8)。
また、セメント(3)をベースとしたものは、塩素バイパスダストaを1.19質量%添加することによって、セメント組成物に付加的に含有されることとなる塩化物イオン量を0.041質量%とした(試料No.9)。セメント(4)をベースとしたものは、塩素バイパスダストaを0.70質量%添加することによって、付加的な塩化物イオン量を0.024質量%とした(試料No.10)。セメント(5)では、塩素バイパスダストaを1.19、1.80質量%添加することによって、付加的な塩化物イオン量をそれぞれ0.041、0.062質量%とした(試料No.11,12)。セメント(6)では、塩素バイパスダストbを0.00、0.07、0.18質量%添加することによって、付加的な塩化物イオン量をそれぞれ0.000、0.024、0.062質量%とした(試料No.13、14,15)。セメント(7)では、塩素バイパスダストbを0.07、0.18質量%添加することによって、付加的な塩化物イオン量をそれぞれ0.024、0.062質量%とした(試料No.16,17)。セメント(8)では、塩素バイパスダストbを0.00、0.18質量%添加することによって、付加的な塩化物イオン量をそれぞれ0.000、0.062質量%とした(試料No.18,19)。(9)では、塩素バイパスダストbを0.18質量%添加することによって、付加的な塩化物イオン量をそれぞれ0.062質量%とした(試料No.20)。
[ モルタル圧縮強さ試験とその評価 ]
次に、JIS R 5201:1997に規定された「セメントの物理試験方法」に従って、各試料から供試体を作製し、モルタル圧縮強さ試験を行った。結果を表7に示す。
表7の「モルタル圧縮強さ」の欄には、供試体の圧縮強さの値を示している。また、「モルタル圧縮強さ変化比」の欄には、基準(塩素バイパスダスト無添加品、試料No.1、No.13、No.18)とした供試体の圧縮強さを100とした場合の各供試体の圧縮強さの割合を示している。
すなわち、ポルトランドセメントクリンカーAを使用したセメント組成物で作製した供試体については、セメント(1)−1で作製した供試体を基準とし、その基準供試体のモルタル圧縮強さに対するモルタル圧縮強さの変化の比率(百分率)を示した。
ポルトランドセメントクリンカーBを使用したセメント組成物で作製した供試体については、セメント(6)−1で作製した供試体を基準とし、その基準供試体のモルタル圧縮強さに対するモルタル圧縮強さの変化の比率(百分率)を示した。
ポルトランドセメントクリンカーCを使用したセメント組成物で作製した供試体については、セメント(8)−1で作製した供試体を基準とし、その基準供試体のモルタル圧縮強さに対するモルタル圧縮強さの変化の比率(百分率)を示した。
そして、材齢28日のモルタル圧縮強さ変化比が100%以上となる場合を良好(○)、材齢28日のモルタル圧縮強さ変化比が100%未満となる場合を不良(×)と判定した。
Figure 2007137722
表7における塩化物イオン量と石灰石添加量と判定結果との関係を図2に示す。図2に示すように、CA量とCAF量の合量が18〜23質量%と多いクリンカーを用いたセメント組成物において、石灰石の添加量Y質量%と、塩素バイパスダストによってセメント組成物に含有されることとなった塩化物イオン量X質量%との関係が、0≦Y<−54X+4.5を満足する領域(実施例1〜5)であれば、材齢3日、7日、28日を経てもモルタル圧縮強さ変化比は100%以上となることが分かった。
[ コンクリートのスランプフロー試験とその評価 ]
次に、コンクリートのスランプフロー試験について説明する。各試料No.1〜19に、細骨材、粗骨材、分散剤及び水を加え、表8に示す水セメント比(W/C)、スランプフロー、及び空気量で、50Lのパン型強制練りミキサを使用してコンクリートを調製した。練混ぜ量は1バッチ30Lとした。各材料は以下のものを使用した。なお、スランプフローの測定は、JIS A 1150:2001「コンクリートのスランプフロー試験方法」に従って測定した。
(1)骨材
(i)細骨材(S):
海砂:密度2.59g/cm、粗粒率2.71、北九州市若松産
(ii)粗骨材(G):
・砕石(2005):密度2.58g/cm、粗粒率6.58、山口市宮野産
(2)練混ぜ水(W):水道水
(3)分散剤:ポリカルボン酸系分散剤((株)エヌエムビー社製、商品名:レオビルドSP8S)
なお、「コンクリートのスランプフロー試験方法」は、JIS A 1101:2005 「コンクリートのスランプ試験方法」に規定された円錐台形状カップのスランプコーンに、各試料No.1〜19で調整されたコンクリートを詰めて平板に載置し、スランプコーンを鉛直方向に引き上げて、コンクリートをスランプコーンから開放し、平板上に広がったコンクリートの径を測定する試験である。表8に配合条件を示す。
Figure 2007137722
また、この試験結果を表9に示す。なお、コンクリートのスランプフロー評価では、スランプフローが目標の60±2.5cm範囲内であって適度の流動性を有するものを良好(○)、この範囲外で実用上遜色があるものを不良(×)とした。
表9の結果より、石灰石をセメント組成物に添加しなかった試料No.16,17(使用セメント種別(7):参照表1)は、目標スランプフロー値を下回り、十分なスランプフローが得られなかったが、他の石灰石をセメント組成物に添加した試料No.1〜15,18,19は、目標スランプフロー範囲内となり、十分なスランプフローが得られた。
[ 圧縮強さ試験とスランプフロー試験の総合評価 ]
上記のモルタル圧縮強さ試験とスランプフロー試験とを総合的に評価すると、CA量とCAF量の合量が18〜23質量%、CS量とCS量の質量比が2.0〜5.0のクリンカーを用いたセメント組成物において、モルタル圧縮強さ試験でも十分な圧縮強度が得られ、且つスランプフロー試験でも十分な流動性が得られたのは、セメント組成物における石灰石量Y質量%と、塩化物イオン量X質量%との関係が、0≦Y<−54X+4.5であって、且つ石灰石を添加したものであった。したがって、0<Y<−54X+4.5を満足するセメント組成物が、初期強度、長期強度及び流動性の観点から適正であることがわかった。
Figure 2007137722
塩化物イオン量と石灰石添加量とモルタル圧縮強さ試験の判定結果との関係を示すグラフである。

Claims (4)

  1. セメントクリンカーと、石膏と、石灰石と、塩素バイパスダストとを含有するセメント組成物であって、
    石灰石量Y質量%と塩化物イオン量X質量%との関係が0<Y<−54X+4.5を満足し、かつクリンカーのCA量とCAF量との合量が18〜23質量%、CS量とCS量との質量比が2.0〜5.0であることを特徴とするセメント組成物。
  2. さらに高炉スラグを1質量%〜5質量%含有していることを特徴とする請求項1に記載のセメント組成物。
  3. ブレーン比表面積が2500cm/g〜4000cm/gであることを特徴とする請求項1又は2に記載のセメント組成物。
  4. 請求項1〜3の何れか一項に記載のセメント組成物と、粗骨材と、細骨材と、分散剤を含むことを特徴とするコンクリート組成物。

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