JP6635735B2 - トナー、トナーの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真法、静電記録法、トナージェット法のような方法に用いられるトナー、およびトナーの製造方法に関する。
近年、プリンターや複写機では、カートリッジの交換頻度やトナーの補給頻度をより少なくすることが求められており、トナーの性能の改善が求められている。具体的には、より少量のトナーで所望の画像濃度が得られ、かつ長期にわたり安定した画質が維持できる耐久性に優れたトナーが求められている。
少量のトナーで所望の画像濃度を得るためには、トナー中の顔料を微分散させ、トナーの着色力を向上させることが効果的である。また、耐久性に優れたトナーを得るためには、長期にわたって安定した帯電性を有し、かつ、割れにくかったり潰れにくかったりする、靱性に優れた樹脂を用いることが効果的である。さらに、プリンターや複写機の省エネ化が求められており、トナーとしてはより低い温度で紙に定着する、低温定着性に優れたトナーが求められている。
特許文献1では、脂環族モノマー成分を含有したポリエステル樹脂を用いた懸濁重合トナーが記載され、環境安定性や部材へのトナー汚染が抑制されることが記載されている。特許文献2には、脂肪族ジオール成分および/または脂環族ジオール成分を含有したポリエステル樹脂を用いた粉砕トナーが記載されている。また、特許文献3には、特定量の脂環族ジカルボン酸成分と特定量の脂環族ジオール成分を含有したポリエステル樹脂を用いた粉砕トナーが記載されている。特許文献2及び3に記載のポリエステル樹脂を用いたトナーにより、低温定着性と耐オフセット性を向上させることが記載されている。特許文献4では、脂肪族モノマーを含有したポリエステル樹脂微粒子を、トナー表面に付着させたトナーが記載されている。
特開2000−305320号公報 特開2003−107798号公報 特表2011−504199号公報 特開2005−345861号公報
特許文献1から4には、顔料分散性、さらに着色力の向上についての検討はなされていない。本発明者らの検討の結果、特許文献1から4に記載されたトナーは、着色力と耐久性、低温定着性を両立させることについて、改良の余地があることがわかった。
本発明は、従来の問題点を解決したトナーを提供するものである。即ち、本発明の目的は、優れた着色力と耐久性を兼ね備え、かつ低温定着性に優れたトナー、及びその製造方法を提供することである。
本発明は、ポリエステル樹脂および顔料を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該ポリエステル樹脂が、下記式(3)で示されるユニットおよび二価アルコールに由来するユニットを有し、
該二価アルコールに由来するユニットが、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物に由来するユニットまたはビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物に由来するユニットのみであ
ことを特徴とするトナーに関する。

(式(3)中、aおよびbは、それぞれ独立に0以上4以下の整数である。R およびそれぞれ独立に、ハロゲン原子またはアルキル基である。)
また、本発明は、上記トナーを製造するトナーの製造方法であって、
該製造方法が、下記(i)または(ii)の工程:
(i)前記ポリエステル樹脂、前記結着樹脂を得るための重合性単量体および前記顔料を含有する組成物の粒子を水系媒体中で形成して懸濁液を得る造粒工程、ならびに、該懸濁液において、該組成物の該粒子に含まれる該重合性単量体を重合して前記結着樹脂を得る重合工程;
(ii)有機溶媒に、前記ポリエステル樹脂、前記結着樹脂および該顔料を溶解又は分散して樹脂溶液を調製する溶解工程、該樹脂溶液を水系媒体中に分散させ造粒する造粒工程、造粒された粒子中に含有される該有機溶媒を除去して樹脂粒子を製造する脱溶剤工程;
を有することを特徴とするトナーの製造方法に関する。
本発明によれば、優れた着色力と耐久性を兼ね備え、かつ低温定着性に優れたトナー、及びその製造方法を提供することができる。
本発明の帯電量測定に用いた装置の模式図である。 本発明の着色力評価に用いた画像パターンを示す模式図である。
本発明のトナーは、ポリエステル樹脂および顔料を含有するトナー粒子を有する。そして、ポリエステル樹脂が、下記式(1)〜(3)で示されるユニットのいずれかを有することを特徴とする。

(式(1)から(3)中、a、bは、それぞれ独立に0以上4以下の整数である。RからRはそれぞれ独立に、ハロゲン原子またはアルキル基である。)
ポリエステル樹脂と顔料の吸着性が高いと、トナーの製造時にトナー内部での材料分布が不均一になることに起因してトナー粒子中の顔料が凝集した状態となり、トナーの着色力が低下しやすい。
樹脂と顔料の吸着性は、ファンデルワールス力、水素結合力、酸塩基相互作用力が影響する(超微粒子の分散技術とその評価 サイエンス&テクノロジー社出版 第5章第1節)。特には、酸塩基相互作用力の寄与が大きいと考えられている。ポリエステル樹脂において酸塩基相互作用力に影響するのは、主に末端のカルボキシ基やヒドロキシ基である。そのため、ポリエステル樹脂のカルボキシ基やヒドロキシ基の量を増やした場合、酸塩基相互作用力が上昇してしまい、顔料に対する吸着性が大きくなる傾向にある。しかしながら、カルボキシ基やヒドロキシ基の量が少ない場合には、ポリエステル樹脂の帯電性が低下する。結果として、長期間トナーを使用してトナーの表面性に変化が生じた場合に、ポリエステル樹脂の帯電性の影響が大きくなるため、安定した帯電性を維持するのが困難である。そのため、耐久性に優れたトナーが得られにくい。
そこで、本発明者らは、ポリエステル樹脂のカルボキシ基及びヒドロキシ基の酸としての強さに着眼し、顔料に吸着しにくいポリエステル樹脂の分子構造について鋭意検討を重ねた。その結果、本発明のポリエステル樹脂の構造が、芳香環にカルボキシ基やヒドロキシ基が直接連結しておらず、かつカルボキシ基やヒドロキシ基からエステル結合までの分子間距離が十分に遠くなる構造を有する。これにより、ポリエステル樹脂と顔料の吸着性が十分に抑えられることを見出した。
芳香環にカルボキシ基やヒドロキシ基が直接連結していると、芳香環による電子の非局在化の影響によりカルボキシ基やヒドロキシ基の電子が求引され、プロトンが解離しやすくなるため、酸としての強さが上がる。また、エステル結合も同様に電子を求引するため、カルボキシ基やヒドロキシ基からエステル結合までの距離が近いほど、カルボキシ基やヒドロキシ基の酸としての強さは上がると考えられる。結果として、ポリエステル樹脂と顔料間の酸塩基相互作用力が大きくなってしまい、ポリエステル樹脂と顔料が吸着しやすくなってしまう。
しかしながら、本発明では、ポリエステル樹脂に上記式(1)〜(3)で示されるユニットのいずれかを有する。このように脂環式構造を有することにより、カルボキシ基やヒドロキシ基の酸の強さを低下させることができるため、ポリエステル樹脂の顔料に対する吸着性を大幅に低下させることができると推測している。
上記式(1)〜(3)で示されるユニット以外にも、シクロヘキサン構造を導入した場合にも、芳香環の影響を抑えることができるため、ポリエステル樹脂と顔料との吸着性を低下させることができる。しかしながら、カルボキシ基やヒドロキシ基とエステル基間の距離が近いため、上記式(1)〜(3)に示されるユニットを導入した場合よりも効果は小さい。また、脂肪族構造を導入した場合には、顔料に対する吸着性は低下できるが、該ポリエステル樹脂のガラス転移点や靱性が低下しやすいため、結果として優れた耐久性は得られない。
一方、本発明では、上記したように、該ポリエステル樹脂の帯電性を高めて耐久性を向上することも目的としている。該ポリエステル樹脂の帯電性を高めるためには、カルボキシ基やヒドロキシ基が存在することが好ましい。しかしながら、カルボキシ基やヒドロキシ基を増やしてしまうと、上記したように顔料分散への影響とのトレードオフとなる。本発明では、上記式(1)〜(3)で示されるユニットのいずれかをポリエステル樹脂に導入することで、カルボキシ基やヒドロキシ基による顔料分散への影響を大幅に低下できる。そのため、顔料分散と帯電性の両立が可能であり、優れた着色力と耐久性を兼ね備えたトナーが得られると推測している。
さらに、水系媒体中でトナー粒子を製造する場合には、該ポリエステル樹脂の極性が十分高いことに起因して明確なコアシェル構造が形成できるため、より好ましい。上記式(1)〜(3)で示されるユニットのいずれかをポリエステル樹脂に導入することで、良好な顔料分散状態とコアシェル形成の両立が可能であり、さらに優れた着色力と耐久性を兼ね備えたトナーが得られる。
また、ポリエステル樹脂の溶融時の粘度が高くなってしまうと、トナーのシャープメルト性が低下し、優れた低温定着性が得られない。本発明では、上記式(1)〜(3)で示されるユニットのいずれかを有することで、ポリエステル樹脂の分子の直線性を向上させ、シャープメルト性に優れた分子設計としている。そのため、耐久性と低温定着性の両立が可能である。上記式(1)〜(3)で示されるユニットに比べて、水素化ビスフェノールA構造は、分子の直線性が低いため、上記した効果は得られない。
以上により、上記式(1)〜(3)で示されるユニットのいずれかを有するポリエステル樹脂を用いることにより、トナーの着色力、耐久性、低温定着性を両立が可能である。
また、上記式(1)〜(3)で示されるユニットのいずれかを有することで、カルボキシ基の酸の強さが低下し、解離しにくくなるため、水分の影響を受けにくくなる。そのため、該ポリエステル樹脂にカルボキシ基を多く導入してトナーの帯電量を高めた場合でも、高湿環境下で帯電性が低下しにくく、より優れた現像性が得られる。
上記式(1)〜(3)のユニットを有する二価のアルコールまたは二塩基酸およびその誘導体としては、例えば、4,4’−ビシクロヘキサノール(1,1’−ビシクロヘキサン−4,4’−ジオール)、1,1’−ビシクロヘキサン−1,1’−ジオール、1,1’−ビシクロヘキサン−1,2’−ジオール、1,1’−ビシクロヘキサン−2,2’−ジオール、ビシクロヘキサン−4,4’−ジカルボン酸ジメチル、およびその誘導体(カルボン酸ハロゲン化物、エステル、酸無水物;以下、酸およびその誘導体と言った場合、誘導体としては、カルボン酸ハロゲン化物、エステル、酸無水物を指す)が挙げられる。
本発明において、該ポリエステル樹脂が有する該ユニットが下記式(4)から(6)で示されるユニットであることがより好ましい。

(式(4)〜(6)中、a、bは、それぞれ独立に0以上4以下の整数である。RからR12はそれぞれ独立に、ハロゲン原子またはアルキル基である。)
該ユニットが上記式(4)から(6)に示すように、パラ位でシクロヘキサン環と連結している事で、ポリエステル樹脂の分子の直線性が向上し、より優れた低温定着性が得られる。また、該ユニットは、4,4’−ビシクロヘキサノール、ビシクロヘキサン−4,4’−ジカルボン酸ジメチル、およびその誘導体に由来するユニットであることがより好ましい。
ポリエステル樹脂を構成する全ユニット数に対する、上記式(1)から(3)で示されるユニット数の比率が、0.1mol%以上70.0mol%以下であることが好ましい。0.1mol%以上であることで、カルボキシ基やヒドロキシ基の酸の強さを抑えることができるため、良好な顔料分散を維持しながら樹脂として十分な帯電性を維持できる。結果としてより優れた着色力と耐久性が得られる。70.0%以下であることでポリエステル樹脂の分子の直線性を向上させつつ、樹脂としての靱性も維持できるため、より優れた耐久性と低温定着性が得られる。より好ましくは、2.0mol%以上50.0mol%以下である。該ユニット数の比率は、樹脂を製造する際に用いる単量体の比率によって制御することができる。
ポリエステル樹脂は、上記式(1)〜(3)で示されるユニットに加えて、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物に由来するユニットまたはビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物に由来するユニットを有することが好ましい。上記式(1)〜(3)で示されるユニットは、十分な帯電量が得られる一方で、ポリエステル内での電荷が移動しにくく、摩擦帯電を続けた場合に帯電過多になりやすい傾向にある。そこで、さらにビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物またはビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物に由来するユニットを有することで、芳香環によってポリエステル内の電荷の移動を促すことができるため、より優れた帯電性が得られる。また、帯電性の環境依存性を、より小さくすることができる。ヒドロキノンのような、芳香環に直接極性基が結合したユニットでも効果は得られるが、顔料分散性への影響が生じる場合があるため、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物またはプロピレンオキサイド付加物に由来するユニットのほうが好ましい。ポリエステル樹脂を構成する全ユニット数に対する、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物またはビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物に由来するユニット数の比率は、20.0mol%以上50.0mol%以下であることがより好ましい。ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物またはプロピレンオキサイド付加物に由来するユニット数の比率は、樹脂を製造する際に用いる単量体の比率によって制御することができる。ポリエステル樹脂の組成の分析、及び、各ユニット数の比率の測定方法については後述する。
ポリエステル樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量分布において、ピーク分子量が、1000以上20000以下の範囲内にあることが好ましい。上記範囲にあることで、該ポリエステル樹脂と顔料の吸着性を低くしながら、樹脂の靱性を維持することができる。結果として、より優れた着色力と耐久性が得られる。
ポリエステル樹脂のピーク分子量は、樹脂を製造する際の重合温度や重合時間などの条件で制御することができる。ポリエステル樹脂のピーク分子量の測定方法については後述する。
ポリエステル樹脂の酸価は、1.0mgKOH/g以上30.0mgKOH/g以下であることが好ましい。上記範囲を満たすことで、トナーの帯電性を向上させながら、湿度の影響を低くすることができるため、長期にわたって優れた耐久性を維持することが出来る。また、水系でトナーを製造する場合には、明確なコアシェル構造を形成できるため、より優れた耐久性が得られる。ポリエステル樹脂の酸価は、該ポリエステル樹脂を製造する際の酸モノマーとアルコールモノマーの比率、分子量、一価の酸モノマー及び/またはアルコールモノマーの量、三価の酸モノマー及び/またはアルコールモノマーの量などの条件で制御することができる。ポリエステル樹脂の酸価の測定方法については後述する。
本発明に用いられるポリエステル樹脂は、必要に応じて芳香族、非環式の脂肪族および脂環族の二価アルコール;芳香族、非環式の脂肪族および脂環族の二塩基酸やその誘導体に由来するユニットを有してもよい。更に、必要に応じて、三価以上の多価アルコール、一価のアルコール、三官能以上の多塩基酸およびその誘導体、一塩基酸およびその誘導体等に由来するユニットを有してもよい。
上記二価のアルコ−ルとしては、例えば、エチレングリコ−ル、1,2−プロピレングリコ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、1,5−ペンタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、ジエチレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、トリエチレングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ル等の非環式の脂肪族ジオ−ル類;ビスフェノ−ルA、ビスフェノ−ルF等のビスフェノ−ル類;キシリレンジグリコ−ル等のアラルキレングリコ−ル類;1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、イソソルビド、スピログリコール、水素添加ビスフェノ−ルA、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、4−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキサノール、4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール、2−シクロヘキセン−1,4−ジオール、5−ノルボルネン−2,3−ジメタノール、5−ノルボルネン−2,3−ジオール、1,3−アダマンタンジオール、1,3−アダマンタンジメタノール、3−(ヒドロキシメチル)−1−アダマンタノール等の脂環式のジオール類等が挙げられる。
上記芳香族、非環式の脂肪族および脂環族の二塩基酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカン−1,10−ジカルボン酸等の非環式の脂肪族二塩基酸;フタル酸、テトラブロムフタル酸、テトラクロルフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族の二塩基酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、1,3−アダマンタンジカルボン酸、1,3−アダマンタンジ酢酸、およびその誘導体等の脂環式の二塩基酸等が挙げられる。
上記三官能以上の多塩基酸としては、例えば、トリメリット酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,3,4,5,6−シクロヘキサンヘキサカルボン酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
本発明のトナーは、さらに、結着樹脂を含有することが好ましい。結着樹脂としては、具体的には、ポリエステル樹脂;スチレンアクリル系樹脂;ポリアミド樹脂;フラン樹脂;エポキシ樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。この中でも特に、耐久性を向上させるために、スチレンアクリル系樹脂を含むことがより好ましい。
スチレンアクリル系樹脂とは、スチレン系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体の単独重合体または共重合体である。
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、及び、p−フェニルスチレン等のスチレン誘導体類が挙げられる。
アクリル系単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、及び、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレート等が挙げられる。
メタクリル系単量体としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、及び、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレート等が挙げられる。
さらに、多官能性モノマー(重合性不飽和基を複数有するモノマー)を添加しても良い。
多官能性モノマーとしては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−(アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、及び、ジビニルエーテルが挙げられる。
本発明のトナーに用いることができる顔料としては、以下に挙げるブラック顔料、イエロー顔料、マゼンタ顔料、シアン顔料などが用いられる。
ブラック顔料としては、具体的にはカーボンブラック等が挙げられる。
イエロー顔料としては、具体的には以下の、モノアゾ化合物;ジスアゾ化合物;縮合アゾ化合物;イソインドリノン化合物;イソインドリン化合物;ベンズイミダゾロン化合物;アンスラキノン化合物;アゾ金属錯体;メチン化合物;アリルアミド化合物等に代表されるイエロー顔料が挙げられる。より具体的には以下の、C.I.ピグメントイエロー74,93,95,109,111,128,155,174,180,185等が挙げられる。
マゼンタ顔料としては、具体的には以下の、モノアゾ化合物;縮合アゾ化合物;ジケトピロロピロール化合物;アントラキノン化合物;キナクリドン化合物;塩基染料レーキ化合物;ナフトール化合物:ベンズイミダゾロン化合物;チオインジゴ化合物;ペリレン化合物等に代表されるマゼンタ顔料が挙げられる。より具体的には以下の、C.I.ピグメントレッド2,3,5,6,7,23,48:2,48:3,48:4,57:1,81:1,122,144,146,150,166,169,177,184,185,202,206,220,221,238,254,269、C.I.ピグメントバイオレッド19等が挙げられる。
シアン顔料としては、具体的には以下の銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物;塩基染料レ−キ化合物等に代表されるシアン顔料が挙げられる。より具体的には以下の、C.I.ピグメントブルー1,7,15,15:1,15:2,15:3,15:4,60,62,66が挙げられる。
中でも、本発明のポリエステルによる顔料分散性の向上効果が高くなることから、構造中に芳香環を有する顔料を用いることが好ましい。より好ましくは、カーボンブラック、C.I.ピグメントイエロー74,93,95,109,128,155,174,180,185、C.I.ピグメントレッド2,3,5,6,7,23,48:2,48:3,48:4,57:1,122,144,146,150,177,184,185,202,221,238,269、C.I.ピグメントバイオレッド19、C.I.ピグメントブルー1,7,15,15:1,15:2,15:3,15:4,60,66である。
また、上記顔料とともに、着色剤として従来知られている種々の染料を用いる事も出来る。
顔料の含有量は、結着樹脂100質量部に対して1.0質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
本発明において、トナーは、必要に応じて流動性向上剤がトナー粒子に外部添加されていてもよい。流動性向上剤としては、シリカ微粉体、酸化チタン微粉体、又は酸化アルミニウム微粉体のような無機微粉体が好適に用いられる。これら無機微粉体は、シランカップリング剤、シリコーンオイル又はそれらの混合物のような疎水化剤で疎水化処理されていることが好ましい。
さらに、本発明のトナーは、必要に応じて上記流動性向上剤以外の外部添加剤をトナー粒子に混合されていてもよい。
無機微粉体の総添加量は、トナー粒子100質量部に対して、1.0質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。
本発明において、トナー粒子は、粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法、溶解懸濁法など公知の製造方法で製造することが可能であり、製造方法は特に限定されるものではない。この中でも、水系媒体中でトナーを製造する方法であることで、コアシェル構造を有するトナー粒子が得られるためより好ましい。すなわち、トナーの製造方法が、下記(i)または(ii)の工程を有することが好ましい。
(i)重合性単量体、顔料及びポリエステル樹脂を含有する重合性単量体組成物の粒子を水系媒体中で形成して懸濁液を得る造粒工程、及び、該重合性単量体組成物の該粒子に含まれる重合性単量体を重合して結着樹脂を得る重合工程。
(ii)結着樹脂、顔料及びポリエステル樹脂を有機溶媒に、溶解又は分散して樹脂溶液を調製する溶解工程、該樹脂溶液を水系媒体中に分散させ造粒する造粒工程、及び、造粒された粒子中に含有される有機溶媒を除去して樹脂粒子を製造する脱溶剤工程。
上記工程を経て得られたトナー粒子であることで、造粒工程中に形成される油水界面に、極性の高いポリエステル樹脂が偏在する。結果としてコアシェル構造を有するトナー粒子が得られるため、優れた耐久性が得られる。
以下、上記(i)の懸濁重合法を用いた製造方法を例示して、さらに説明するが、以下に限定されるわけではない。
重合性単量体、顔料、ポリエステル樹脂を混合し、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、又は超音波分散機のような分散機を用いて、これらを溶解又は分散させた重合性単量体組成物を調製する。このとき、上記重合性単量体組成物中には、必要に応じて公知の離型剤や荷電制御剤、粘度調整のための溶剤、結晶性樹脂、可塑剤、連鎖移動剤、さらに他の添加剤を適宜加えることができる。
次いで、上記重合性単量体組成物を、予め用意しておいた分散安定剤を含有する水系媒体中に投入し、高速攪拌機又は超音波分散機のような高速分散機を用いて懸濁させ、造粒を行う。
上記重合性単量体組成物の粒子に含まれる重合性単量体を重合する際に、重合開始剤を用いても良い。該重合開始剤は、重合性単量体組成物を調製する際に他の添加剤とともに混合してもよく、水系媒体中に懸濁させる直前に重合性単量体組成物中に混合してもよい。また、造粒中や造粒完了後、すなわち重合反応を開始する直前に、必要に応じて重合性単量体や他の溶媒に溶解した状態で加えることもできる。
造粒後の懸濁液を加熱し、懸濁液中の重合性単量体組成物の粒子が粒子状態を維持し、且つ粒子の浮遊や沈降が生じることがないよう、撹拌しながら重合反応を行って結着樹脂を生成する。必要に応じて脱溶剤処理を行うことでトナー粒子の水分散体が形成される。
その後、必要に応じて洗浄を行い、種々の方法によって乾燥、分級を行うことでトナー粒子を得ることができる。さらに、該トナー粒子に上記無機微粉体などを外添することでトナーを得ることができる。
本発明のトナーは、そのまま一成分系現像剤として、あるいは磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。
以下に、本発明で規定する各物性値の測定方法を記載する。
<ポリエステル樹脂の組成分析方法>
ポリエステル樹脂の組成の分析は、各材料のNMRスペクトル測定から行った。
ポリエステル樹脂のNMRスペクトル測定は、核磁気共鳴分光分析(1H−NMR)[400MHz、CDCl3、室温(25℃)]を用いて行った。
測定装置:FT NMR装置 JNM−EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数:64回
上記した手法で測定したNMRスペクトルから、組成分析を行った。
<ポリエステル樹脂及びトナーのピーク分子量の測定方法>
ポリエステル樹脂及びトナーのピーク分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
まず、室温で24時間かけて、サンプルをテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。尚、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム:Shodex KF−801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0ml/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:0.10ml
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソ−社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
<ポリエステル樹脂の酸価の測定方法>
ポリエステル樹脂の酸価はJIS K1557−1970に準じて測定される。具体的な測定方法を以下に示す。
試料の粉砕品2gを精秤する(W(g))。200mlの三角フラスコに試料を入れ、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mlを加え、5時間溶解する。この時、必要に応じて加熱してもよい。指示薬としてフェノールフタレイン溶液を加える。0.1モル/L規定のKOHもアルコール溶液を用いて上記溶液を、ビュレットを用いて滴定する。この時のKOH溶液の量をS(ml)とする。ブランクテストをし、この時のKOH溶液の量をB(ml)とする。
次式により酸価を計算する。尚、式中の“f”は、KOH溶液のファクターである。
酸価(mgKOH/g)=〔(S−B)×f×5.61〕/W
<トナーのガラス転移温度Tg(℃)の測定方法>
トナーのガラス転移温度Tg(℃)は示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。具体的には、測定サンプル2mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定範囲0℃から100℃の間で、昇温速度10℃/分の速度で昇温する。100℃で15分ホールドし、その後100℃から0℃の間で、降温速度10℃/分の速度で冷却する。0℃で10分ホールドし、その後0℃から100℃の間で、昇温速度10℃/分の速度で測定を行う。また、2回目の昇温過程における比熱変化曲線の比熱変化が出る前と出た後の、ベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点をTg(℃)とする。
<トナーの重量平均粒子径(D4)の測定方法>
トナーの重量平均粒子径(D4)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標商品名、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定および測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解させて濃度が1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように上記専用ソフトの設定を行う。
上記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
上記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下のとおりである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに上記電解水溶液200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに上記電解水溶液30mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を、イオン交換水で質量比で3倍に希釈した希釈液を0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを2mL添加する。
(4)上記(2)のビーカーを上記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)上記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー10mgを少量ずつ上記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した上記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散させた上記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の上記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒子径(D4)を算出する。なお、上記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒子径(D4)である。
<帯電量の測定方法>
図1に示す装置において、底に635メッシュのスクリーン3のある金属製の測定容器2に帯電量を測定しようとするトナーを0.1g入れ、金属製の蓋をする。このとき測定容器2全体の質量を量りW1(g)とする。次に吸引機(測定容器2と接する部分は少なくとも絶縁体)において、吸引口7から吸引し風量調節弁6を調整して真空計5の圧力を1.0kPaとする。この状態で1分間吸引を行い、トナーを吸引除去する。このときの電位計9の電位をV(ボルト)とする。ここで8はコンデンサーであり容量をC(mCF)とする。吸引後の測定容器全体の質量を量りW2(g)とする。このトナーの帯電量(mC/kg)は、下記式によって計算される。
帯電量(mC/kg)=(C×V)/(W1−W2)
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。実施例中で使用する部は全て質量部を示す。なお、実施例1〜10および14〜18は参考例である。
<ポリエステル樹脂1の製造>
撹拌機、温度計、窒素導入管、脱水管、及び、減圧装置を備えた反応容器に、原材料モノマーを表1に示したmol比率で混合した混合物100.0部を添加して撹拌しながら温度130℃まで加熱した。その後、エステル化触媒としてジ(2−エチルヘキサン酸)錫0.52部を加え、温度200℃に昇温し所望の分子量になるまで縮重合し、ポリエステル樹脂1を得た。前述の方法に従って測定したポリエステル樹脂1のピーク分子量は9000、酸価は8.0mgKOH/gであった。
<ポリエステル樹脂2から20の製造>
表1に示した原材料モノマーの種類とmol比率にて、ポリエステル樹脂1と同様の操作を行い、ポリエステル樹脂2から20を製造した。得られたポリエステル樹脂1〜20の物性を表1に示す。
表1中の略語の名称を以下に示す。TPAはテレフタル酸、IPAはイソフタル酸、BPA−PO2mol付加物はビスフェノールAのプロピレンオキサイド2mol付加物、BPA−PO3mol付加物はビスフェノールAのプロピレンオキサイド3mol付加物、BPA−EO3mol付加物はビスフェノールAのエチレンオキサイド3mol付加物、水素化ビスフェノールA−EO2mol付加物は水素化ビスフェノールAのエチレンオキサイド2mol付加物、EGはエチレングリコールを表わす。
<トナー1の製造>
・スチレン:60.0部
・カーボンブラック(Orion Engineered Carbons社製、商品名「NIPEX35」):8.0部
上記材料をアトライタ(三井三池化工機株式会社製)に投入し、さらに直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて、220rpmで5時間分散させて、顔料分散液を得た。
上記顔料分散液に
・スチレン:18.0部
・n−ブチルアクリレート:22.0部
・ポリエステル樹脂1:5.0部
・パラフィンワックス(HNP−9:日本精鑞製 融点75℃):7.0部
を加えた。上記材料を65℃に保温し、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、500rpmにて均一に溶解、分散し、重合性単量体組成物を調製した。
一方、高速撹拌装置クレアミックス(エム・テクニック社製)を備えた容器中に0.1mol/L−NaPO水溶液850.0部および10%塩酸8.0部を添加し、回転数を15000rpmに調整し、60℃に加温した。ここに1.0mol/L−CaCl水溶液68.0部を添加し、リン酸カルシウム化合物を含む水系媒体を調製した。
水系媒体中に重合性単量体組成物を投入し、重合開始剤であるt−ブチルパーオキシピバレート10.0部を添加した。撹拌装置にて、そのまま15000回転/分を維持しつつ10分間造粒した。その後、高速撹拌機からプロペラ撹拌翼に撹拌機を変え、還流しながら70℃で5時間反応させた後、液温85℃とし、さらに2時間反応させた。
重合工程終了後、スラリーを冷却し、冷却されたスラリーに塩酸を加えpHを1.4にし、1時間撹拌することでリン酸カルシウム塩を溶解させた。その後、スラリーの10倍の水量で洗浄し、ろ過、乾燥の後、分級によって粒子径を調整してトナー粒子を得た。
その後、トナー粒子100部に対して、流動性向上剤として、ジメチルシリコーンオイル(20質量%)で処理され、トナー粒子と同極性(負極性)に摩擦帯電する疎水化処理されたシリカ微粉体(1次粒子の個数平均粒径:10nm、BET比表面積:170m/g)2.0部を加えて三井ヘンシェルミキサ(三井三池化工機株式会社製)を用い、3000rpmで15分間混合してトナー1を得た。
<トナー2〜17、19〜25の製造>
表2に示すように、ポリエステル樹脂の種類と部数、顔料の種類と部数を変更すること以外はトナー1の製造方法と同様にしてトナー2〜17、19〜25を得た。
<トナー18の製造>
・ポリエステル樹脂1:50.0部
・ポリエステル樹脂16:50.0部
・カーボンブラック(商品名「NIPEX35」):8.0部
・パラフィンワックス(HNP−9):7.0部
上記材料を三井ヘンシェルミキサ(三井三池化工機社製)で前混合した後、PCM−30(池貝鉄工所社製)を用い、吐出口における溶融物温度が180℃になるように温度を設定し、溶融混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミル(ホソカワミクロン社製)にて1mm以下に粗粉砕した後、粉砕機としてターボミルT250(ターボ工業社製)を用いて微粉砕した。得られた微粉砕粉末を、コアンダ効果を利用した多分割分級機(日鉄鉱業社製:EJ−L−3型)を用いて分級した。その後、トナー1の製造例と同様にして外添工程を行い、トナー18を得た。
<トナー26の製造>
・ポリエステル樹脂16:100.0部
・カーボンブラック(商品名「NIPEX35」):8.0部
・パラフィンワックス(HNP−9):7.0部
上記材料を三井ヘンシェルミキサで前混合した後、PCM−30を用い、吐出口における溶融物温度が180℃になるように温度を設定し、溶融混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕した後、粉砕機としてターボミルT250を用いて微粉砕した。得られた微粉砕粉末を、コアンダ効果を利用した多分割分級機(EJ−L−3型)を用いて分級した。その後、トナー1の製造例と同様にして外添工程を行い、トナー26を得た。
得られたトナーの物性をまとめて表2に示した。
<実施例1〜18、比較例1〜8>
得られた各トナーについて以下の方法に従って性能評価を行った。
(着色力)
市販のカラーレーザープリンター Satera LBP7700C(キヤノン(株)製)用のカートリッジから中に入っているトナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、評価する各トナー(150g)を充填した。また、Satera LBP7700Cを一部改造し、定着機を外して未定着画像を出力できるように変更し、コントローラーにより画像濃度を調節可能にした。さらに、一色のプロセスカートリッジだけの装着でも作動するよう改造した。外した定着機は、定着機単体でも動作できるように改良し、さらにプロセススピードと温度を制御できるように外部定着機として改造した。
上記カートリッジをプリンターに装着し、図2に示すような転写材の上部に30mmの空白の後、横150mm×縦30mmの帯画像を作成した。さらに帯画像のトナー載り量が0.35mg/cmとなるようにコントローラーを設定した。転写材は、A4サイズのGF−C081(キヤノン(株)製、81.4g/m)を用いた。
この画像を10枚出力し、LBP7700Cの外部定着機を用いて、プロセススピード300mm/sec、180℃で定着した。この帯画像の画像濃度を測定して着色力を評価した。尚、画像濃度の測定には「マクベス反射濃度計 RD918」(マクベス社製)を用いて測定した。原稿濃度が0.00の白下地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定し、出力画像1枚に付き左部、中央部および右部の3点ずつ測定し出力画像10枚の平均値で評価した。評価基準は以下の通りである。
A:画像濃度が1.40以上。
B:画像濃度が1.30以上1.40未満。
C:画像濃度が1.20以上1.30未満。
D:画像濃度が1.10以上1.20未満。
E:画像濃度が1.10未満。
(耐久性)
市販のカラーレーザープリンター(HP Color LaserJet 3525dn、HP社製)を、一色のプロセスカートリッジだけの装着でも作動するよう改造して評価を行った。このカラーレーザープリンターに搭載されていたシアンカートリッジから中に入っているトナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、評価する各トナー(200g)を充填した。常温常湿下(23℃、60%RH)、受像紙として、キヤノン(株)製オフィスプランナー(64g/m)を用い、印字率1%チャートを50000枚連続して画出しした。画出し後、さらにハーフトーン画像を出力し、現像ローラ上およびハーフトーン画像における排紙方向の縦スジの有無について観察し、以下のように耐久性を評価した。なお、耐久性に優れるトナーは潰れたり割れたりしにくく、現像ローラに付着しにくいため、スジが生じにくい。
(評価基準)
A:現像ローラ上とハーフトーン部の画像上に、排紙方向の縦スジは見られない。
B:現像ローラ上に、細いスジが1乃至3本あるものの、ハーフトーン部の画像上に排紙方向の縦スジは見られない。
C:現像ローラ上に、細いスジが4乃至6本あるものの、ハーフトーン部の画像上に排紙方向の縦スジは見られない。
D:現像ローラ上に、細いスジが7乃至9本あり、ハーフトーン部の画像上に排紙方向の縦スジが見られる。
E:現像ローラ上とハーフトーン部の画像上に10本以上の顕著な排紙方向の縦スジが見られる。
(低温定着性)
定着ユニットを外したカラーレーザープリンター(HP Color LaserJet 3525dn)を用意し、シアンカートリッジからトナーを取り出して、評価する各トナーを充填した。次いで、受像紙(キヤノン(株)製オフィスプランナー 64g/m)上に、充填したトナーを用いて、縦2.0cm横15.0cmの未定着のトナー画像(0.7mg/cm)を、通紙方向に対し上端部から1.0cmの部分に形成した。次いで、取り外した定着ユニットを定着温度とプロセススピードを調節できるように改造し、これを用いて未定着画像の定着試験を行った。
まず、常温常湿環境下(23℃、60%RH)、プロセススピードを230mm/sに設定し、初期温度を120℃として設定温度を5℃ずつ順次昇温させながら、各温度で上記未定着画像の定着を行った。
低温定着性の評価基準は以下の通りである。低温側定着開始点とは、画像の表面を4.9kPa(50g/cm)の荷重をかけたシルボン紙(ダスパー K−3)で0.2m/秒の速度で5回摺擦したときに、直径150μm以上の画像剥がれが3個以内である最低温度のことである。定着がしっかり行われない場合には、上記画像剥がれは増える傾向にある。
(評価基準)
A:低温側定着開始点が130℃以下
B:低温側定着開始点が135℃或いは140℃
C:低温側定着開始点が145℃或いは150℃
D:低温側定着開始点が155℃或いは160℃
E:低温側定着開始点が165℃以上
(帯電性の環境安定性)
帯電性の環境安定性の評価を行うために以下のように二成分現像剤の調製を行った。磁性キャリアF813−300(パウダーテック社製)279gと評価用トナー21gを500ccの蓋付きプラスチックボトルに投入し、振とう器(YS−LD:(株)ヤヨイ製)で、1秒間に4往復のスピードで1分間振とうし、各トナーの二成分現像剤とした。
該二成分現像剤10gを50ccのポリ容器に入れ、常温常湿環境(23℃/60%)の環境下で1昼夜放置した。その後3分間かけて450回振とうさせる。次いで前述に記載の手段で摩擦帯電量を測定し、得られた帯電量を帯電量N(mC/kg)とした。
また、該二成分現像剤10gを50ccのポリ容器に入れ、高温高湿環境(30℃/80%)の環境下で1昼夜放置した。その後3分間かけて450回振とうさせ、同様の方法で測定した帯電量を帯電量H(mC/kg)とした。得られた帯電量Nと帯電量Hから
帯電保持率(%)=100×帯電量H(mC/kg)/帯電量N(mC/kg)
として高温環境下における帯電保持率(%)を計算し、以下の基準で帯電性の環境安定性評価を行なった。
(評価基準)
A:帯電保持率(%)が70%以上。
B:帯電保持率(%)が60%以上70%未満。
C:帯電保持率(%)が50%以上60%未満。
D:帯電保持率(%)が40%以上50%未満。
E:帯電保持率(%)が40%未満。
結果を表3に示す。

Claims (7)

  1. ポリエステル樹脂および顔料を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
    該ポリエステル樹脂が、下記式(3)で示されるユニットおよび二価アルコールに由来するユニットを有し、
    該二価アルコールに由来するユニットが、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物に由来するユニットまたはビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物に由来するユニットのみであ
    ことを特徴とするトナー。

    (式(3)中、aおよびbは、それぞれ独立に0以上4以下の整数である。R およびそれぞれ独立に、ハロゲン原子またはアルキル基である。)
  2. 前記式(3)で示されるユニットが、下記式(6)で示されるユニットである請求項1に記載のトナー。

    (式(6)中、aおよびbは、それぞれ独立に0以上4以下の整数である。R 11 および12それぞれ独立に、ハロゲン原子またはアルキル基である。)
  3. 前記(3)で示されるユニットが、ビシクロヘキサン−4,4’−ジカルボン酸ジメチルに由来するユニットである請求項1または2に記載のトナー。
  4. 前記ポリエステル樹脂を構成する全ユニット数に対する、前記(3)で示されるユニット数の比率が、0.1mol%以上70.0mol%以下である請求項13のいずれか1項に記載のトナー。
  5. 前記顔料が、芳香環を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のトナー。
  6. 前記トナー粒子が、さらに、結着樹脂を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載のトナー。
  7. 請求項に記載のトナーを製造するトナーの製造方法であって、
    該製造方法が、下記(i)または(ii)の工程:
    (i)前記ポリエステル樹脂、前記結着樹脂を得るための重合性単量体および前記顔料を含有する組成物の粒子を水系媒体中で形成して懸濁液を得る造粒工程、ならびに、該懸濁液において、該組成物の該粒子に含まれる該重合性単量体を重合して前記結着樹脂を得る重合工程;
    (ii)有機溶媒に、前記ポリエステル樹脂、前記結着樹脂および該顔料を溶解又は分散して樹脂溶液を調製する溶解工程、該樹脂溶液を水系媒体中に分散させ造粒する造粒工程、造粒された粒子中に含有される該有機溶媒を除去して樹脂粒子を製造する脱溶剤工程;
    を有することを特徴とするトナーの製造方法。
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