JP6635555B2 - 酵素特異的な細胞内滞留性蛍光化合物 - Google Patents

酵素特異的な細胞内滞留性蛍光化合物 Download PDF

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Description

本発明は、標的細胞に滞留し、該細胞にて特異的に作用し得る新規な蛍光化合物、及び当該化合物を用いて特定の酵素が発現している標的細胞を特異的にイメージングする方法、当該イメージングに使用するプローブ、及び当該プローブを含む検出キット、検出剤、診断薬またはキットに関する。より詳細には、β−ガラクトシダーゼ等のレポーター酵素を発現する細胞を選択的に可視化する蛍光化合物およびこれを用いたイメージング方法、イメージングプローブ、検出剤、診断薬またはキットに関する。
生命科学の発展に対するレポータータンパク質の寄与は計り知れない。レポータータンパク質の中で最も汎用されているものがβ−ガラクトシダーゼである。近年では老化と細胞のβガラクトシダーゼの発現に関連性があることが示唆されており(非特許文献1)、β−ガラクトシダーゼ酵素特異的なイメージングプローブは、細胞の老化機構を解明するための分子ツールとしても重要である。さらに、ある種の癌細胞においてはβガラクトシダーゼ活性が上昇していることが示されているため(非特許文献2、非特許文献3)、β−ガラクトシダーゼ酵素特異的なイメージングプローブは、癌細胞選択的な蛍光イメージングプローブとしても利用できると考えられる。
従来、X−Galを基質として酵素活性をイメージングする手法が広く利用されているが(非特許文献4)、X−Galは生細胞に適用することができないため、生細胞に適用可能な酵素活性イメージングプローブの開発が望まれている。現在までに多くの生細胞に適用可能なイメージングプローブが開発されてきた。例えば、分子内でスピロ環化反応を制御することにより可視光励起可能である、生細胞および生きた生体組織に適用可能なβガラクトシダーゼ蛍光プローブとして、HMDER−βGal等が開発されている(非特許文献5、特許文献1)。しかしながら、これらの蛍光プローブでは、いずれも酵素反応生成物が細胞から漏出してしまうため、あるいは細胞傷害性の紫外光を励起光に使用するため、生細胞等を単一細胞レベルで明確にイメージングすることが困難であった。また、これまでの癌プローブは、病理診断のために切片を固定化することにより、細胞外に漏れてしまい、病理診断に利用できないという問題点も存在していた。
国際公開2005/024049号
G. P. Dimri et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1995, 92, 9363−9367. H. B. Bosmann et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1974, 71, 1833−1837. S. K. Chatterjee et al., Cancer Res., 1979, 39, 1943−1951. F. D.−Chainiaux et al., Nat. Protoc., 2009, 4, 1798−1806. M.Kamiya et al., J.Am.Chem.Soc. 2011, 133, 12960−12963.
本発明の解決しようする課題は、酵素活性特異的に蛍光を発生すると同時に、当該酵素を有する細胞内に滞留することで、当該細胞を固定することなく、あるいは固定した状態で、単一細胞レベルで選択的に可視化可能な蛍光化合物、当該蛍光化合物を用いた蛍光イメージングプローブ、当該蛍光プローブを用いた検出方法、検出キット又は検出剤を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、キサンテン環を蛍光団とする蛍光色素に、レポーター酵素との反応後に、蛍光色素をキノンメチドに変化させる置換基を有する酵素基質を合成し、その構造の最適化を行うことにより、βガラクトシダーゼ等のレポーター酵素との反応によって、はじめて蛍光性を示すとともに、優れた細胞内滞留性を示す蛍光イメージングプローブを得られることを見出した。この知見に基づき、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、一態様において、以下の式(I)で表される化合物又はその塩を含む、酵素特異的滞留性蛍光化合物を提供するものである。
Figure 0006635555




(式中、Aは酵素によって切断される一価の基を表し;Rは水素原子又はベンゼン環に結合する1個ないし4個の同一又は異なる置換基を表し;R、R、R、及びRはそれぞれ独立に−CFR1011又は−CF12、若しくは、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、又はハロゲン原子を表し;R及びRはそれぞれ独立に水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、又はハロゲン原子を表し;R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し;R10、R11及びR12はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はアルケニル基を表し;Xは酸素原子、Se、CR1314、又はSiR1516を表し;R13、R14、R15及びR16はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し;YはC−Cアルキレン基を表し; Zは酸素原子、又はNR17を表し;R17は水素原子又はアルキル基を表し、ここで、R、R、R、及びRの少なくとも一つは、−CFR1011又は−CF12を表す。)
好ましい態様において、当該酵素特異的滞留性蛍光化合物は、以下の式で表される。
Figure 0006635555



(式中、A、R〜R9、X、Yは式(I)と同様である。)
好ましい態様において、R、R、R、及びRの少なくとも一つは、−CFR1011である。
好ましい態様において、R、R、R、及びRの少なくとも一つは、−CHFである。
好ましい態様において、Aはレポーター酵素を含む加水分解酵素、あるいは、癌細胞において特異的に発現又は活性化している酵素によって切断される基であり、より好ましくは、Aはガラクトピラノシル基であり、レポーター酵素はβ−ガラクトシダーゼである。
さらに好ましい態様において、酵素特異的滞留性蛍光化合物又はその塩は、(Ia)〜(Ic)で表される化合物又はその塩である。
Figure 0006635555



Figure 0006635555


別の態様において、本発明は、式(I)、(I’)又は(Ia)〜(Ic)で表される、酵素特異的滞留性蛍光化合物を含有する、蛍光プローブに関する。
別の態様において、本発明は、式(I)、(I’)又は(Ia)〜(Ic)で表される、酵素特異的滞留性蛍光化合物を含有する、特定の酵素が発現している標的細胞を検出するための、又は可視化するための、組成物又はキットに関する。好ましくは、当該標的細胞は、β−ガラクトシダーゼ発現細胞であり、さらに好ましくは、標的細胞は、癌細胞である。
別の態様において、本発明は、式(I)、(I’)又は(Ia)〜(Ic)で表される、酵素特異的滞留性蛍光化合物を用いて、特定の酵素が発現している標的細胞を検出する方法に関する。好ましくは、当該方法において、酵素特異的滞留性蛍光化合物と、当該標的細胞において特異的に発現する酵素とを、生体外又は生体内において接触させ、特定の酵素が発現している標的細胞を検出する。より好ましくは、酵素特異的滞留性蛍光化合物と当該標的細胞において特異的に発現する酵素とを、生体外又は生体内において接触させる工程、及び、励起光照射を行って蛍光を生じさせる工程を含むことを特徴とする、前記特定の酵素が発現している標的細胞を検出する方法に関する。より好ましくは、当該方法において、標的細胞は、β−ガラクトシダーゼ発現細胞であり、さらに好ましくは、標的細胞は、癌細胞である。
別の態様において、本発明は、式(I)を製造するために用いられる、以下の式(II)で表される化合物に関する。
Figure 0006635555


(式中、R、R、R、及びRはそれぞれ独立に−C(=O)H、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、又はハロゲン原子を表し;R及びRはそれぞれ独立に水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、又はハロゲン原子を表し;R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示し;Xは酸素原子又はSe、CR1314、又はSiR1516を表し;R13、R14、R15及びR16はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し;YはC−Cアルキレン基を表し、ここで、R、R、R、及びRの少なくとも一つは、−C(=O)Hを表す。)
より好ましい態様において、式(II)の化合物は、以下の式(IIa)又は(IIb)で表される化合物である。
Figure 0006635555


本発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物は、酵素反応によって可視光吸収を変化させること同時に、生成したキノンメチドを用いて、細胞内に共存するタンパク質に共有結合することにより、優れた細胞内滞留性を示す。これらの効果が組み合わさった結果、当該酵素を発現する標的細胞を、生細胞の状態で、あるいは固定した状態で、単一細胞レベルといった詳細なレベルで可視化することが可能となる。本発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物は、細胞の老化機構を解明するための分子ツールとして利用し得るほか、ある種の癌細胞においては選択的な蛍光イメージングプローブとしても利用できると考えられる。さらに、本発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物によるイメージング手法は、通常の細胞イメージングが行える顕微鏡で施行可能であり、特別な機器を必要としない。また単一細胞レベルでの蛍光イメージングが可能であることから、個々の細胞の経時的な変化を追跡可能であり、癌細胞選択的な蛍光イメージングを利用して癌組織を取り残さずに外科的に切除することも可能となる。このように、本発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物の産業上の利用価値、経済効果は、極めて大きいと考えられる。
図1は、本発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物である、2−CHF−HMDER−βGalと、β−ガラクトシダーゼとの酵素反応によって生じる蛍光の強度(a)、吸収スペクトル変化(b)、蛍光スペクトル(c)を示した図である。 図2は、本発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物である、4−CHF−HMDER−βGalと、β−ガラクトシダーゼとの酵素反応によって生じる蛍光の強度(a)、吸収スペクトル変化(b)、蛍光スペクトル(c)を示した図である。 図3は、本発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物である、4−CHF−HMDER−βGalと、β−ガラクトシダーゼとの酵素反応によって生じる蛍光強度(a)、吸収スペクトル変化(b)、蛍光スペクトル(c)を示した図である。 図4は、本発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物である、2−CHF−HMDER−βGal、4−CHF−HMDER−βGalおよび4−CHF−HMDER−βGalを、β−ガラクトシダーゼと酵素反応させることにより、溶液中に共存するタンパク質BSAを蛍光ラベル化し得ることを示した図である。(a)SDS−PAGEゲルを波長488nmの励起光で励起した際に得られた蛍光画像である。レーン1: 2.5μM 4−CHF−HMDER−βGal および0.5mg/mL BSA、レーン2: 2.5μM 4−CHF−HMDER−βGal,0.5mg/mL BSA および5U β−ガラクトシダーゼ、レーン3: 2.5 μM 4−CHF−HMDER−βGal,0.5mg/mL BSA および5U β−ガラクトシダーゼ、レーン4: 2.5μM 2−CHF−HMDER−βGal,0.5mg/mL BSA および5U β−ガラクトシダーゼ、レーン5: 2.5μM HMDER−βGal、0.5mg/mL BSA および5U β−ガラクトシダーゼ。(b)上記SDS−PAGEゲルをクマシー染色したもの。 図5は、本発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物である、2−CHF−HMDER−βGal、4−CHF−HMDER−βGalおよび4−CHF−HMDER−βGalが、細胞内タンパク質を酵素活性特異的に蛍光ラベル化することを示す図である。(a)SDS−PAGEゲルを波長488nmの励起光で励起した際に得られた蛍光画像である。レーン1:2.5μM 4−CHF−HMDER−βGal および20μL 1.5mg/mL HEK細胞ライセート、レーン2:2.5μM 4−CHF−HMDER−βGalおよび20μL 1.5mg/mL HEK−lacZ細胞ライセート、レーン3:2.5 μM 4−CHF−HMDER−βGalおよび20μL 1.5mg/mL HEK−lacZ細胞ライセート、レーン4:2.5μM 2−CHF−HMDER−βGalおよび20μL 1.5mg/mL HEK−lacZ細胞ライセート、レーン5:2.5μM HMDER−βGalおよび20μL 1.5mg/mL HEK−lacZ細胞ライセート。(b)上記SDS−PAGEゲルをクマシー染色したもの。 図6は、本発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物である4−CHF−HMDER−βGalを、単一細胞レベルの生細胞蛍光イメージングに利用可能であることを示す図である。 図7は、本発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物である4−CHF−HMDER−βGalが、優れた細胞内滞留性を有することを示す図である。 図8は、本発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物である4−CHF−HMDER−βGalを用いることにより、固定処理を行った試料においても、生細胞と同様の蛍光イメージングが可能であることを示す図である。 図9は、本発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物である4−CHF−HMDER−βGalを利用することで、酵素活性の異なる細胞を、フローサイトメトリーを用いて検出又は区別し得ることを示す図である。(a)4−CHF−HMDER−βGalと反応させた、HEK細胞、HEK−LacZ細胞、およびこれらの混合物のフローサイトメトリー結果。(b)HMDER−βGalと反応させた、HEK細胞、HEK−LacZ細胞、およびこれらの混合物のフローサイトメトリー結果。 図10は、本発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物である4−CHF−HMDER−βGalを、生体組織の蛍光イメージングに適用し得ることを示す図である。(a)4−CHF−HMDER−βGalと反応させた、ハエ羽根原基組織の画像。左から、蛍光画像、明視野画像、これらのマージ画像。(b)HMDER−βGalと反応させた、ハエ羽根原基組織の画像。左から、蛍光画像、明視野画像、これらのマージ画像。 図11は、本発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物である4−CHF−HMDER−βGalを、単一細胞蛍光イメージングに適用し得ることを示す図である。(a)4−CHF−HMDER−βGalと反応させた、ショウジョウバエ(esg−lacZ)の画像。左から、蛍光画像、明視野画像これらのマージ画像。(b)ショウジョウバエ腸幹細胞(esg−GFP)左から、蛍光画像、明視野画像これらのマージ画像。 図12は、本発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物である4−CHF−HMDER−βGalを、癌部位選択的な蛍光イメージングに適用し得ることを示す、蛍光スペクトル画像である。白い矢印は腫瘍の位置を示す。Unmixedは、蛍光スペクトルにより、自家蛍光と蛍光スペクトルを分離したもの。 図13は、本発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物である4−CHF−HMDER−βGalを、生体内の未固定細胞群の蛍光イメージングに適用し得ることを示す図である。 図14は、本発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物である4−CHF−HMDER−βGalを、生体組織内にランダムに発現したβガラクトシダーゼ活性の、単一細胞蛍光イメージングに適用し得ることを示す図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施することができる。
本明細書において、アルキル基またはアルケニル基は、直鎖状、分枝鎖状、環状、又はそれらの組み合わせからなるアルキル基またはアルケニル基のいずれであってもよい。アルキル基またはアルケニル基の炭素数は特に限定されないが、例えば炭素数1〜6個程度、好ましくは炭素数1〜4個程度、より好ましくは炭素数1または2個程度である。本明細書において、アルキル基又はアルケニル基は、任意の置換基を1個以上有していてもよい。該置換基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子のいずれであってもよい)、アミノ基、モノ若しくはジ置換アミノ基、置換シリル基、アシル基、又はアリール基などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。アルキル基又はアルケニル基が2個以上の置換基を有する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。アルキル部分またはアルケニル部分を含む他の置換基(例えばアルキルオキシ基やアラルキル基など)のアルキル部分またはアルケニル部分についても同様である。
(1)酵素特異的滞留性蛍光化合物
本発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物は、一態様において、以下の一般式(I)で表される構造を有する化合物である。
Figure 0006635555

上記一般式(I)において、Rは水素原子又はベンゼン環に結合する1個ないし4個の置換基を示す。置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、モノ若しくはジ置換アミノ基、置換シリル基、又はアシル基などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。ベンゼン環上に2個以上の置換基を有する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。Rとしては、水素原子、低級アルキル基又は低級アルコキシ基であることがより好ましい。水素原子が特に好ましい。
、R、R、及びRはそれぞれ独立に−CFR1011又は−CF12、若しくは、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、又はハロゲン原子を表し、R10、R11及びR12はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はアルケニル基を表し、さらにここで、R、R、R、及びRの少なくとも一つは、−CFR1011又は−CF12を表す。R、R、R、及びRの少なくとも一つは、−CFR1011であることが好ましい。R、R、R、及びRの少なくとも一つは、−CHFであることがさらに好ましい。
及びRはそれぞれ独立に水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、又はハロゲン原子を示す。R、Rが水素原子であることが好ましい。
及びRはそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示す。R及びRがともにアルキル基を示す場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。例えば、R及びRはそれぞれ独立に、メチル基又はエチル基であることが好ましく、R及びRがいずれもエチル基である場合がさらに好ましい。
Xは酸素原子、Se、CR1314、又はSiR1516を示す。R13、R14、R15及びR16はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表す。これらのうち酸素原子が好ましい。
YはC−Cアルキレン基を示す。アルキレン基は直鎖状アルキレン基又は分枝鎖状アルキレン基のいずれであってもよい。例えば、メチレン基(−CH−)、エチレン基(−CH−CH−)、プロピレン基(−CH−CH−CH−)のほか、分枝鎖状アルキレン基として−CH(CH)−、−CH−CH(CH)−、−CH(CHCH)−なども使用することができる。これらのうち、メチレン基又はエチレン基が好ましく、メチレン基がさらに好ましい。
Zは酸素原子、又はNR17を表し、R17は水素原子又はアルキル基を表す。これらのうち酸素原子が好ましい。
基Aは、酵素によって切断される一価の基を表し、具体的には、例えば、β−ガラクトピラノシル基、α−マンノシル基、β−N−アセチルグルコサミル基、β−ラクタム環、リン酸エステル、アミノフェノキシ基、ヒドロキシフェノキシ基、γ−グルタミン酸などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。
Aを切断するための酵素としては、例えば、還元酵素、酸化酵素、又は加水分解酵素などを挙げることができ、レポーター酵素や癌細胞において特異的に発現又は活性化する酵素、より具体的には、β−ガラクトシダーゼ、β−ラクタマーゼ、α−マンノシダーゼ、エステラーゼ、アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ、ペルオキシダーゼ、チトクロームP450酸化酵素、β−グルコシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、β−ヘキソサミニダーゼ、ラクターゼ、γ−グルタミルトランスフェラーゼなどを挙げることができるが、これらに限定されることはない。好ましくは、β−ガラクトシダーゼ、β−ラクタマーゼ、アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ、β−ヘキソサミニダーゼ、ペルオキシダーゼ、又はγ−グルタミルトランスフェラーゼである。最も好ましくは、β−ガラクトシダーゼである。
上記式(I)で表される化合物(式(I’)、(Ia)〜(Ic)の態様の場合を含む。以下の記載においても同じ。)は塩として存在する場合がある。塩としては、塩基付加塩、酸付加塩、アミノ酸塩などを挙げることができる。塩基付加塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などの金属塩、アンモニウム塩、又はトリエチルアミン塩、ピペリジン塩、モルホリン塩などの有機アミン塩を挙げることができ、酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩などの鉱酸塩、メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩などの有機酸塩を挙げることができる。アミノ酸塩としてはグリシン塩などを例示することができる。もっとも、本発明の化合物の塩はこれらに限定されることはない。
式(I)で表される化合物は、置換基の種類に応じて1個または2個以上の不斉炭素を有する場合があり、光学異性体又はジアステレオ異性体などの立体異性体が存在する場合がある。純粋な形態の立体異性体、立体異性体の任意の混合物、ラセミ体などはいずれも本発明の範囲に包含される。
式(I)で表される化合物又はその塩は、水和物又は溶媒和物として存在する場合もあるが、これらの物質はいずれも本発明の範囲に包含される。溶媒和物を形成する溶媒の種類は特に限定されないが、例えば、エタノール、アセトン、イソプロパノールなどの溶媒を例示することができる。
本明細書の実施例には、一般式(I)で表される本発明の化合物に包含される代表的化合物についての製造方法が具体的に示されているので、当業者は本明細書の開示を参照することにより、及び必要に応じて、出発原料や試薬、反応条件などを適宜選択することにより、一般式(I)に包含される任意の化合物を容易に製造することができる。
(2)本発明の化合物の蛍光発光および細胞内滞留の機構
本発明により提供される式(I)で表される酵素特異的滞留性蛍光化合物を細胞内に取り込ませた場合、Aで表される基を切断可能な酵素が発現している細胞では、該細胞内において、Aで表される基が切断されるとともに、R、R、R、又はRに位置する、−CFR1011又は−CF12からフッ化水素が離脱し、キノンメチドが生成される。キノンメチドは急速に周囲の求核剤による攻撃を受けることから、細胞内でキノンメチドを生成した場合、周囲のタンパク質がもつ求核基と速やかに反応し、タンパク質に不可逆的に結合するものと考えられる。
例えば、式(Ib)の化合物の場合には、以下のようにβ−ガラクトシダーゼによって基Aの切断とスピロ環の開環が生じ、細胞内タンパク質に共有結合した蛍光化合物(III)が生成する。式(III)に類する化合物が蛍光を発する機構については、国際公開2005/024049号に記載されるように、その詳細が当業者に知られている。
Figure 0006635555

一般式(I)で表される化合物又はその塩は、中性領域において例えば440〜550nm程度の励起光を照射した場合には、ほとんど蛍光を発しないが、酵素活性によって生じた開環化合物は、同じ条件下において極めて強い蛍光を発する性質を有している。したがって、式(I)で表される酵素特異的滞留性蛍光化合物を取り込んだ細胞が、Aで表される基を切断可能な酵素を発現していない場合には、式(III)で表されるような開環化合物は生成せず、蛍光物質が該細胞内で生成することはない。このように式(I)で表される酵素特異的滞留性蛍光化合物を用いることにより、Aで表される基を切断可能な酵素が発現および活性化している細胞のみにおいて、選択的に蛍光が生成される。さらに、式(III)などで表される反応生成化合物は、細胞内タンパク質に共有結合していることから、細胞外への漏出が抑制され、これにより、当該酵素が発現および活性化している細胞を特異的に、単一細胞レベルといった詳細なレベルで可視化することが可能となる。
上記特性から、本発明の式(I)で表される化合物は、細胞を固定処理することなく、あるいは固定処理後に、単一細胞レベルで詳細に可視化することを可能とするものであり、蛍光プローブとして細胞系における細胞生物学的研究用のツールに用いる他、癌などの手術現場における迅速な病理検査に用いる検査薬、診断薬などの、幅広い利用用途を有している。
(3)本発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物による選択的細胞可視化方法
上述の特性を示すため、本発明の細胞内滞留性蛍光化合物を、特定の酵素が発現している標的細胞の細胞を特異的に可視化する方法に用いることができる。具体的には、式(I)の酵素特異的滞留性蛍光化合物と標的細胞において特異的に発現するβ−ガラクトシダーゼ等の酵素とを接触させる工程、次いで、励起光照射を行うことで発生する蛍光を検出する工程を行うことによって、β−ガラクトシダーゼ等を発現している標的細胞のみを特異的に可視化することができる。
本発明の細胞内滞留性蛍光化合物と、標的細胞において特異的に発現する酵素とを接触させる手段としては、代表的には、酵素特異的滞留性蛍光化合物を含む溶液を試料添加、塗布、或いは噴霧することが挙げられるが、その用途に応じて適宜選択することが可能である。また、本発明の細胞内滞留性蛍光化合物を、動物個体における診断又は診断の補助、若しくは特定の細胞又は組織の検出に適用する際に、当該化合物と、標的細胞又は組織において発現する酵素とを接触させる手段としては、特に限定されることなく、例えば、静脈内投与等、当該分野において一般的な投与手段を用いることができる。
また、標的細胞に行う光照射は、当該細胞に対して光を直接或いは導波管(光ファイバー等)を介して照射することができる。光源としては、酵素切断を受けた後の、本発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物の吸収波長を含む光を照射できるものであれば、任意の光源を用いることができ、本発明の方法を実施する環境等に応じて適宜選択され得る。
本発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物としては、上記一般式(I)で表される化合物又はその塩をそのまま用いてもよいが、必要に応じて、試薬の調製に通常用いられる添加剤を配合して組成物として用いてもよい。例えば、生理的環境で試薬を用いるための添加剤として、溶解補助剤、pH調節剤、緩衝剤、等張化剤などの添加剤を用いることができ、これらの配合量は当業者に適宜選択可能である。これらの組成物は、一般的には、粉末形態の混合物、凍結乾燥物、顆粒剤、錠剤、液剤など適宜の形態の組成物として提供されるが、使用時に注射用蒸留水や適宜の緩衝液に溶解して適用することが可能である。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
(1)以下のスキーム1〜3に従って、本発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物である2−CHF−HMDER−βGal、4−CHF−HMDER−βGalおよび4−CHF−HMDER−βGalを合成した。
スキーム1:2−CHF−HMDER−βGalの合成
Figure 0006635555

スキーム2:4−CHF−HMDER−βGalの合成
Figure 0006635555

スキーム3:4−CHF−HMDER−βGalの合成
Figure 0006635555

以下に各合成反応の詳細を述べる。
○使用した合成試薬、装置等
市販の原料は試薬メーカー(和光純薬株式会社、東京化成工業株式会社、Sigma−Aldrich Co. Ltd.)より購入した。
高速液体クロマトグラフィーによる精製に用いた装置およびカラム。
・ポンプ:PU−2080およびPU−2087(日本分光株式会社)
・検出器:MD−2010(日本分光株式会社)
・カラム:Inertsil ODS−3
(10 x 250 mm or 20 x 250 mm,
GL Science Inc.)
HPLCによる分離精製用いた溶媒。
A: 100 mM トリエチルアミン酢酸塩
B: 99% アセトニトリル、 1% milliQ
HPLC分離における送液は、それぞれ
25mL/min(ポンプ:PU−2087,カラム:20x250mm)5 mL/min(ポンプ:PU−2080,カラム:10x250mm)にて行った。
中圧カラムクロマトグラフィーによる精製はYFLC−AI580(山善株式会社)を用いて行った。
NMR測定はAVANCE III 400 Nanobay(Bruker,Co. Ltd.)を用いて行った。(400MHz for H NMR、101MHz for 13C NMR)
質量分析測定はMicrOTOF(ESI−TOF,Bruker,Co. Ltd.)を用いて行った。High−resolution MS(HRMS)測定については、外部標準物質としてギ酸ナトリウムを使用した。
略語の説明
THF: テトラヒドロフラン
DMF: N,N−ジメチルホルムアミド
TFA: トリフルオロ酢酸
DAST:三フッ化N,N−ジエチルアミノ硫黄
PLC: 分取用薄層プレート
(合成例1)6−(diethylamino)−9−(2−(hydroxymethyl)phenyl)−9H−xanthen−3−ol(leuco−HMDER)の合成
Figure 0006635555

2−(4−diethylamino−2−hydroxybenzoyl)benzoic acid(2.54g,8.05mmol)、resorcinol(900mg,8.17mmol)、85% HPO(15mL)を90℃で42時間撹拌した。エバポレーションにより水分を除去した後、MeOH(60mL,47.5g,1483mmol)、HSO(13.5mL,24.8g,253mmol)を加え、70℃で終夜撹拌した。エバポレーションによりMeOHを除去し、飽和NaHCO水溶液を加えて中和した。CHClを加えて3回分液操作を行い、有機相にNaSOを加えて乾燥させ、溶媒をエバポレーションにより除去し、DER−Meを赤色固体として得た。アルゴン雰囲気下、LiAlH(1680mg,44.3mmol)、anhydrous THF(80mL)を加えて室温で20時間撹拌した。氷冷下で飽和ロシェル塩水溶液を加えて1時間撹拌し、EtOAcを加えて3回分液操作を行い、有機相にNaSOを加えて乾燥させ、エバポレーションにより溶媒を除去した。得られた残渣を中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:CHCl/MeOH = 98/2)により精製し、目的化合物leuco−HMDERをピンク色固体(2.40g,y.79% in 3 steps)として得た。
1H NMR (CDCl3): δ. 7.31-7.29 (m, 1H), 7.14 (brs, 3H), 6.61-6.56 (m, 2H), 6.48 (d, 1H, J = 2.0 Hz), 6.34 (d, 1H, J = 2.3 Hz), 6.23-6.21 (m, 2H), 5.25 (s, 1H), 4.55-4.45 (m, 2H), 3.23 (q, 4H, J = 7.0 Hz), 1.07 (t, 6H, J = 7.0 Hz). 13C NMR (CDCl3): δ. 155.8, 151.5, 151.3, 147.9, 144.7, 137.7, 131.4, 130.3, 130.0, 129.5, 128.3, 127.0, 116.3, 111.3, 111.0, 108.0, 103.3, 99.2, 62.9, 44.4, 39.8, 12.5. HRMS-ESI (m/z): [M + Na]+ calculated for 398.1727 (C24H25NNaO3), found 398.1722.
(合成例2)6−(diethylamino−3−hydroxy−9−(2−(hydroxymethyl)phenyl)−9H−xanthene−2−carbaldehyde(leuco−2−CHO−HMDER)の合成
Figure 0006635555

アルゴン雰囲気下でleuco−HMDER(2.20g,5.86mmol)、hexamethylenetetramine(838mg,5.98mmol)、TFA(10mL)を70℃で5時間、HO(10mL)を加え70℃で10分間撹拌した。エバポレーションによりTFAとHOを除去した。飽和NaHCO水溶液を加えて中和し、EtOAcを加えて3回分液操作を行い、有機相をエバポレーションにより濃縮した。中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:CHCl/MeOH = 98/2)により精製し、目的化合物leuco−2−CHO−HMDERをピンク色固体(344mg,y.15%)として得た。
1H NMR (CDCl3): δ. 11.09 (s, 1H), 9.53 (d, 1H, J = 0.4 Hz), 7.43-7.41 (m, 1H), 7.27-7.25 (m, 2H), 7.19-7.16 (m, 1H), 7.11 (d, 1H, J = 0.9 Hz), 6.67 (dd, 1H, J = 0.5 and 8.7 Hz), 6.64 (s, 1H), 6.39 (d, 1H, J = 2.6 Hz), 6.31 (dd, 1H, J = 2.6 and 8.7 Hz), 5.45 (s, 1H), 4.75-4.59 (m, 2H), 3.32 (q, 4H, J = 7.1 Hz), 1.15 (t, 6H, J = 7.1 Hz). 13C NMR (CDCl3): δ. 194.9, 161.9, 157.9, 150.8, 148.2, 144.4, 138.1, 136.1, 131.4, 130.0, 129.4, 128.8, 127.4, 118.2, 117.5, 110.2, 108.6, 104.2, 98.9, 63.3, 44.5, 38.8, 12.7. HRMS-ESI (m/z): [M + H]+ calculated for 404.1856 (C25H26NO4), found 404.1845.
(合成例3)(2S,3R,4S,5R,6R)−2−((6’−(diethylamino)−2’−(difluoromethyl)−3H−spiro[isobenzofuran−1,9’−xanthen]−3’−yl)oxy)−6−(hydroxymethyl)tetrahydro−2H−pyran−3,4,5−triol(2−CHF−HMDER−βGal)の合成
Figure 0006635555

2,3,4,6−tetra−O−acetyl−α−D−galactopyranosyl bromideの合成は既報(J.L.Montero et al.,Carbohydr.Res. 1997,297,175.)に従って行った。アルゴン雰囲気下、leuco−2−CHO−HMDER(210mg,0.520mmol)、2,3,4,6−tetra−O−acetyl−α−D−galactopyranosyl bromide(260mg,0.632mmol)、CsCO(293mg,0.899mmol)、NaSO(321mg,2.26mmol)、DMF(1mL)を室温で終夜撹拌した。エバポレーションによりDMFを除去し、CHClと飽和NHCl水溶液を加えて3回分液操作を行い、有機相にNaSOを加えて乾燥させ、エバポレーションにより濃縮した。得られた残渣を中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:CHCl/EtOAc = 98/2)により精製し、leuco−2−CHO−HMDER−βGal−Ac−Ac(137mg,0.177mmol)を得た。アルゴン雰囲気下でanhydrous CHCl(5mL)に溶解させ、DAST(300μL,366mg,2.27mmol)を加えて室温で2時間半撹拌した。氷冷下でMeOH(10mL)を加え、反応をクエンチし、エバポレーションにより溶媒を除去した。得られた残渣にMeOH(28mL)を加えて溶解させ、NaOMe(1.38g,25.5mmol)を加えて室温で30分間撹拌した。エバポレーションにより溶媒を除去し、残渣にCHClを加えてセライト濾過を行い、濾液をエバポレーションにより濃縮した。中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:CHCl/MeOH = 97/3 to 96/4)とPLC(溶離液:CHCl/MeOH = 9/1)により精製し、目的化合物2−CHF−HMDER−βGalを薄い紫色固体(15.2mg,y.5.1% in 3 steps)として得た。
1H NMR (CD3OD): δ. 7.46-7.39 (m, 2H), 7.30 (t, 1H, J = 7.3 Hz), 7.14 (s, 0.5H), 7.13 (s, 0.5H), 7.07 (s, 1H), 7.03 (t, 0.5H, J = 55.5 Hz), 7.02 (t, 0.5H, J = 55.5 Hz), 6.84 (d, 0.5H, J = 7.6 Hz), 6.83 (d, 0.5H, J = 7.6 Hz), 6.72 (d, 0.5H, J = 8.8 Hz), 6.72 (d, 0.5H, J = 8.8 Hz), 6.47-6.43 (m, 2H), 5.26 (s, 2H), 4.97 (dd, 1H, J = 7.8 and 11.5 Hz), 3.94 (d, 1H, J = 2.6 Hz), 3.86-3.78 (m, 4H), 3.63-3.60 (m, 1H), 3.38 (q, 4H, J = 7.0 Hz), 1.15 (t, 6H, J = 7.0 Hz). 13C NMR (CD3OD): δ. 157.2 (t, J = 5.5 Hz), 154.7, 154.6, 152.9, 152.9, 150.3, 145.8, 145.7, 140.4, 140.3, 130.7, 129.5, 129.4, 128.0-127.8 (m), 124.7, 124.7, 122.0, 121.0 (t, J = 22.9 Hz), 120.9 (t, J = 22.9 Hz), 120.7, 120.6, 112.5 (t, J = 234.2 Hz), 112.1, 109.9, 104.7, 104.6, 103.5, 103.4, 98.6, 85.2, 85.2, 77.3, 74.8, 72.7, 72.7, 72.1, 70.2, 62.4, 45.4, 12.8. HRMS-ESI (m/z): [M + Na]+ calculated for 608.2066 (C31H33F2NNaO8), found 608.2075.
(合成例4)3−(diethyliminio)−5−formyl−9−(2−(hydroxymethyl)phenyl)−3H−xanthen−6−olate(4−CHO−HMDER)の合成
Figure 0006635555

HMDERの合成は既報(M.Kamiya et al., J.Am. Chem.Soc. 2011,133,12960.)を参考に行った。HMDER(2.35g,6.29mmol)にhexamethylenetetramine(894mg,6.38mmol)とTFA(8mL)を加えて95℃で14時間撹拌し、HO(10mL)を加えて95℃で2時間撹拌した。エバポレーションによりTFAとHOを除去し、CHClと飽和NaHCO水溶液を加えて3回分液操作を行い、有機相をエバポレーションにより濃縮した。残渣を中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:CHCl/MeOH = 98/2)により精製し、目的化合物4−CHO−HMDERを赤色固体(963mg,y.38%)として得た。
1H NMR (CDCl3): δ 12.09 (s, 1H), 10.67 (s, 1H, CHO), 7.35-7.34 (m, 2H), 7.27-7.23 (m, 1H), 7.07 (d, 1H, J = 8.8 Hz), 6.91 (d, 1H, J = 7.6 Hz), 6.75 (d, 1H, J = 8.7 Hz), 6.57 (d, 1H, J = 8.8 Hz), 6.44 (d, 1H, J = 2.5 Hz), 6.41 (dd, 1H, J = 2.5 and 8.7 Hz), 5.25 (d, 2H, J = 5.4 Hz), 3.33 (q, 4H, J = 7.1 Hz), 1.15 (t, 6H, J = 7.1 Hz). 13C NMR (CDCl3): δ 193.9, 163.3, 152.6, 150.8, 148.8, 144.4, 139.5, 138.6, 129.6, 128.4, 128.2, 123.9, 120.8, 115.9, 112.5, 111.0, 109.0, 108.8, 97.4, 83.1, 71.7, 44.4, 12.6. HRMS-ESI (m/z): [M + H]+ calculated for 402.1700 (C25H24NO4), found 402.1684.
(合成例5)3−(diethyliminio)−5−(1,3−dioxan−2−yl)−9−(2−(hydroxymethyl)phenyl)−3H−xanthen−6−olate(4−acetal−HMDER)の合成
Figure 0006635555

4−CHO−HMDER(745mg,1.86mmol)にpropane−1,3−diol(12mL,12.7g,167mmol)とp−toluenesulfonic acid(27mg,0.157mmol)を加えて60℃で終夜撹拌した。飽和NaHCO水溶液を加えて中和し、CHClを加えて3回分液操作を行い、有機相をエバポレーションにより濃縮した。得られた残渣を中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:CHCl/MeOH = 98/2)により精製し、目的化合物4−acetal−HMDERを赤色固体(648mg,y.76%)として得た。
1H NMR (CDCl3):δ. 8.45 (s, 1H), 7.34-7.30 (m, 2H), 7.25-7.21 (m, 1H), 6.88 (d, 1H, J = 7.6 Hz), 6.79 (d, 1H, J = 8.7 Hz), 6.72 (d, 1H, J = 8.5 Hz), 6.56 (d, 1H, J = 8.7 Hz), 6.39-6.36 (m, 3H), 5.22 (s, 2H), 4.36-4.30 (m, 2H), 4.18-4.11 (m, 2H), 3.34 (q, 4H, J = 7.0 Hz), 2.36-2.24 (m, 1H), 1.52 (d, 1H, J = 13.7 Hz), 1.15 (t, 6H, J = 7.0 Hz). 13C NMR (CDCl3):δ. 156.9, 151.6, 148.7, 148.6, 145.0, 139.6, 131.0, 129.5, 128.2, 127.8, 124.1, 120.6, 116.6, 112.5, 111.6, 109.2, 108.6, 99.1, 97.8, 83.9, 71.5, 68.0, 67.8, 44.4, 25.9, 12.7. HRMS-ESI (m/z): [M + H]+ calculated for 460.2119 (C28H30NO5), found 460.2120.
(合成例6)6−(diethylamino)−4−(1,3−dioxan−2−yl)−9−(2−(hydroxymethyl)phenyl)−9H−xanthen−3−ol(leuco−4−acetal−HMDER)の合成
Figure 0006635555

アルゴン雰囲気下で4−acetal−HMDER(182mg,0.396mmol)にMeOH(5mL)とNaBH(81mg,2.14mmol)を加えて室温で1時間半撹拌した。エバポレーションにより溶媒を除去し、飽和NaHCO水溶液を加えて反応をクエンチし、CHClを加えて分液操作を2回行った。有機相をエバポレーションにより濃縮し、目的化合物leuco−4−acetal−HMDERを薄いピンク色固体(151mg,y.83%)として得た。
1H NMR (CDCl3):δ. 8.30 (s, 1H), 7.39-7.35 (m, 1H), 7.22-7.15 (m, 3H), 6.72 (d, 1H, J = 8.6 Hz), 6.65 (d, 1H, J = 8.6 Hz), 6.46 (d, 1H, J = 8.6 Hz), 6.35 (d, 1H, J = 2.5 Hz), 6.34 (s, 1H), 6.27 (dd, 1H, J = 2.5 and 8.6 Hz), 5.33 (s, 1H), 4.60-4.50 (m, 2H), 4.34-4.31 (m, 2H), 4.14 (t, 2H, J = 12.0 Hz), 3.30 (q, 4H, J = 7.0 Hz), 2.35-2.23 (m, 1H), 1.80 (brs, 1H), 1.52 (d, 1H, J = 13.7 Hz), 1.14 (t, 6H, J = 7.0 Hz). 13C NMR (CDCl3):δ. 155.8, 151.1, 148.3, 147.9, 144.5, 138.3, 131.4, 131.2, 129.9, 129.2, 128.2, 127.0, 115.9, 112.0, 111.2, 109.7, 108.2, 99.1, 98.9, 67.9, 67.9, 63.0, 44.3, 39.6, 25.9, 12.7. HRMS-ESI (m/z): [M + H]+ calculated for 462.2275 (C28H32NO5), found 462.2278.
(合成例7)6−(diethylamino)−3−hydroxy−9−(2−(hydroxymethyl)phenyl)−9H−xanthene−4−carbaldehyde(leuco−4−CHO−HMDER)の合成
Figure 0006635555

アルゴン雰囲気下でleuco−4−acetal−HMDER(151mg,0.327mmol)にTFA−HO(2/1,15mL)を加えて室温で3時間撹拌した。エバポレーションでTFAとHOを除去し、5% KCO水溶液とCHClを加えて分液操作を2回行い、有機相をエバポレーションにより濃縮した。得られた残渣にMeOH(5mL)とNaOMe(18mg,0.333mmol)を加えて室温で5分間撹拌した。エバポレーションにより溶媒を除去し、CHClと飽和NHCl水溶液を加えて分液操作を行い、有機相をエバポレーションにより濃縮した。得られた残渣を中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:CHCl/MeOH = 98/2)により精製し、目的化合物leuco−4−CHO−HMDERを薄いピンク色固体(134mg,y.quantative)として得た。
1H NMR (CDCl3): δ. 11.85 (s, 1H), 10.62 (s, 1H), 7.41-7.39 (m, 1H), 7.25-7.23 (m, 2H), 7.17-7.15 (m, 1H), 7.06 (d, 1H, J = 8.7 Hz), 6.71 (d, 1H, J = 8.7 Hz), 6.48 (d, 1H, J = 8.7 Hz), 6.39 (d, 1H, J = 2.6 Hz), 6.33 (dd, 1H, J = 2.6 and 8.7 Hz), 5.40 (s, 1H), 4.74-4.61 (m, 2H), 3.33 (q, 4H, J = 7.1 Hz), 1.16 (t, 6H, J = 7.1 Hz). 13C NMR (CDCl3): δ. 194.1, 162.2, 152.7, 150.5, 148.1, 144.5, 139.1, 138.1, 131.4, 130.2, 129.3, 128.7, 127.3, 115.3, 111.9, 110.4, 109.4, 108.7, 98.7, 63.3, 44.5, 38.8, 12.7. HRMS-ESI (m/z): [M + Na]+ calculated for 426.1676 (C25H25NNaO4), found 426.1670.
(合成例8)(2S,3R,4S,5R,6R)−2−((3’−(diethylamino)−5’−(difluoromethyl)−3H−spiro[isobenzofuran−1,9’−xanthen]−6’−yl)oxy)−6−(hydroxymethyl)tetrahydro−2H−pyran−3,4,5−triol(4−CHF−HMDER−βGal)の合成
Figure 0006635555

アルゴン雰囲気下、leuco−4−CHO−HMDER(134mg,0.332mmol)にanhydrous DMF(3mL)、2,3,4,6−tetra−O−acetyl−α−D−galactopyranosyl bromide(705mg,1.71mmol)、CsCO(970mg,2.98mmol)、NaSO(390mg,2.75mmol)を加えて室温で終夜撹拌した。エバポレーションにより溶媒を除去し、CHClと飽和NHCl水溶液を加えて3回分液操作を行い、有機相にNaSOを加えて乾燥させ、セライト濾過を行い、濾液をエバポレーションにより濃縮した。得られた残渣を中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:CHCl/EtOAc = 98/2)により精製し、leuco−4−CHO−HMDER−βGal−Ac−Acを得た。アルゴン雰囲気下でanhydrous CHCl(5mL)とDAST(200μL,244mg,1.51mmol)を加え、室温で4時間撹拌した。氷冷下でMeOH(10mL)を加えて反応をクエンチし、エバポレーションにより溶媒を除去した。得られた残渣にMeOH(40mL)とNaOMe(600mg,11.1mmol)を加えて室温で1時間撹拌し、エバポレーションにより溶媒を除去した。残渣に飽和NHCl水溶液を加えて中和し、CHClを加えて3回分液操作を行った。有機相にNaSOを加えて乾燥させ、セライト濾過を行い、濾液をエバポレーションにより濃縮し、得られた残渣をPLC(溶離液:CHCl/MeOH = 9/1)とHPLC(A/B = 50/50)により精製し、目的化合物4−CHF−HMDER−βGalを薄いピンク色固体(8.0mg,y.4.1% in 3 steps)として得た。
1H NMR (CD3CN):δ. 7.45 (t, 1H, J = 53.7 Hz), 7.42 (d, 1H, J = 7.6 Hz), 7.40-7.36 (m, 1H), 7.28-7.24 (m, 1H), 7.06-7.03 (m, 1H), 6.92 (d, 1H, J = 8.9 Hz), 6.83 (d, 0.5H, J = 7.6 Hz), 6.83 (d, 0.5H, J = 7.6 Hz), 6.74 (d, 0.5H, J = 8.8 Hz), 6.73 (d, 0.5H, J = 8.8 Hz), 6.48 (dd, 1H, J = 2.6 and 8.8 Hz), 6.44 (d, 1H, J = 2.6 Hz), 4.88 (dd, 1H, J = 7.7 and 12.9 Hz), 3.83 (d, 1H, J = 3.1 Hz), 3.72-3.58 (m, 4H), 3.53-3.48 (m, 1H), 3.37 (q, 4H, J = 7.0 Hz), 1.13 (t, 6H, J = 7.0 Hz). 13C NMR (100 MHz, CD3CN):δ. 157.1, 151.9, 151.9, 150.5, 149.9, 146.3, 146.2, 140.2, 140.2, 133.8, 133.8, 130.4, 129.3, 129.2, 129.1, 124.2, 122.1, 121.7, 112.7 (t, J = 233.5 Hz), 112.1, 111.8, 111.7, 110.7 (t, J = 22.0 Hz), 110.6 (t, J = 22.0 Hz), 109.8, 102.5, 102.4, 98.1, 83.9, 83.9, 76.5, 76.5, 74.1, 74.1, 72.9, 71.9, 71.9, 69.7, 62.2, 62.2, 45.0, 12.8. HRMS-ESI (m/z): [M + Na]+ calculated for 608.2066 (C31H33F2NNaO8), found 608.2064.
(合成例9)(2S,3R,4S,5R,6R)−2−((3’−(diethylamino)−5’−(fluoromethyl)−3H−spiro[isobenzofuran−1,9’−xanthen]−6’−yl)oxy)−6−(hydroxymethyl)tetrahydro−2H−pyran−3,4,5−triol(4−CHF−HMDER−βGal)の合成
Figure 0006635555


アルゴン雰囲気下でleuco−4−CHO−HMDER(249mg,0.616mmol)にanhydrous DMF(6mL)、2,3,4,6−tetra−O−acetyl−α−D−galactopyranosyl bromide(550mg,1.34mmol)、CsCO(1.50g,4.60mmol)、NaSO(400mg,2.82mmol)を加えて室温で2時間半撹拌した。反応液にAcO(100μL,108mg,1.06mmol)を加えて室温でさらに1時間撹拌した。エバポレーションにより溶媒を除去し、CHClと飽和NHCl水溶液を加えて3回分液操作を行い、有機相にNaSOを加えて乾燥させ、セライト濾過を行い、濾液をエバポレーションにより濃縮した。残渣を中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:CHCl/EtOAc = 98/2)により精製し、leuco−4−CHO−HMDER−βGal−Ac−Acを得た。アルゴン雰囲気下、anhydrous THF(5mL)と1.0 M LiAlH(OtBu) in THF(1mL,1.00mmol)を加えて0℃で50分間撹拌し、氷冷下で飽和NHCl水溶液(3mL)を加えて反応をクエンチした。EtOAc(7mL)を加えて室温で1時間撹拌し、有機相を抽出した。水相にCHClと飽和ロシェル塩水溶液を加えて撹拌し、有機相を抽出する操作を2回行った。有機相を合わせ、エバポレーションにより濃縮し、残渣を中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:CHCl/EtOAc = 98/2)により精製し、leuco−4−CHOH−HMDER−βGal−Ac−Acを得た。アルゴン雰囲気下でanhydrous CHCl(5mL)とDAST(200μL,244mg,1.51mmol)を加えて室温で30分間撹拌し、氷冷下でMeOH(10mL)を添加して反応をクエンチした。エバポレーションにより溶媒を除去し、得られた残渣にMeOH(20mL)とNaOMe(700mg,13.0mmol)を加えて室温で5分間撹拌し、飽和NHCl水溶液(2mL)を加えて反応をクエンチした。エバポレーションにより濃縮した後、CHClと飽和NaHCO水溶液を加えて分液操作を3回行った。水相にCHClを加えて分液し、有機相を合わせた。有機相にNaSOを加えて乾燥させ、セライト濾過を行い、濾液をエバポレーションにより濃縮した。残渣にMeOH(10mL)とp−chloranil(80mg,0.325mmol)を加えて室温で5分間撹拌した。エバポレーションにより溶媒を除去し、CHClと飽和NaHCO水溶液を加えて分液操作を3回行い、有機相に飽和NaCl水溶液を加えて洗浄操作を行った。有機相にセライト濾過を行い、濾液をエバポレーションにより濃縮した。得られた残渣を中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:CHCl/MeOH = 98/2 to 94/6)とHPLC(A/B = 50/50)により精製し、目的化合物4−CHF−HMDER−βGalを薄いピンク色固体(65.9mg,y.18% in 6 steps)として得た。
1H NMR (400 MHz, CD3CN):δ. 7.42 (d, 1H, J = 7.6 Hz), 7.37 (t, 1H, J = 7.4 Hz), 7.26 (t, 1H, J = 7.5 Hz), 6.97 (d, 0.5H, J = 8.9 Hz), 6.97 (d, 0.5H, J = 8.9 Hz), 6.90 (d, 0.5H, J = 8.9 Hz), 6.89 (d, 0.5H, J = 8.9 Hz), 6.82 (d, 0.5H, J = 7.6 Hz), 6.81 (d, 0.5H, J = 7.6 Hz), 6.74 (d, 0.5H, J = 8.8 Hz), 6.73 (d, 0.5H, J = 8.8 Hz), 6.52 (d, 1H, J = 2.5 Hz), 6.47 (dd, 1H, J = 2.5 and 8.8 Hz), 5.81 (d, 2H, J = 48.1 Hz), 5.25 (s, 2H), 4.86 (dd, 1H, J = 7.7 and 12.8 Hz), 3.83 (d, 1H, J = 3.2 Hz), 3.74-3.48 (m, 5H), 3.38 (q, 4H, J = 7.0 Hz), 1.14 (t, 6H, J = 7.0 Hz). 13C NMR (100 MHz, CD3CN):δ. 157.8, 157.7, 152.3, 152.2, 151.0, 149.8, 146.5, 146.3, 140.3, 140.2, 132.4 (d, J = 4.6 Hz), 132.3 (d, J = 4.7 Hz), 130.4, 129.2, 129.0, 124.2, 122.0, 121.1, 121.0, 113.0 (d, J = 15.1 Hz), 113.0 (d, J = 15.2 Hz), 112.4, 112.3, 111.5 (d, J = 8.6 Hz), 111.5 (d, J = 8.4 Hz), 109.6, 102.4, 102.3, 98.2, 98.2, 84.3, 84.2, 76.4, 76.3, 74.5 (d, J = 158.7 Hz), 74.2, 72.8, 72.7, 72.0, 72.0, 69.7, 62.2, 62.2, 45.0, 12.8. HRMS-ESI (m/z): [M + H]+ calculated for 568.2341 (C31H35FNO8), found 568.2343.
本願発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物が、蛍光イメージングプローブとして優れた性質を有することを、以下の試験例により確認した。
試験例1
β−ガラクトシダーゼとの酵素反応特異的な蛍光発光
2−CHF−HMDER−βGal、4−CHF−HMDER−βGalおよび4−CHF−HMDER−βGalが、β−ガラクトシダーゼによる酵素処理特異的に蛍光を発生することを確認した。
(材料と方法)
本発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物である2−CHF−HMDER−βGal、4−CHF−HMDER−βGalまたは4−CHF−HMDER−βGalと、β−ガラクトシダーゼを30分間酵素反応させることによって生じる、吸収スペクトル変化及び蛍光スペクトル変化(励起波長550nm)を、リン酸ナトリウム緩衝液200mM存在下(pH7.4)で測定した。測定は、Shimadzu UV−2450(島津製作所)およびHitachi F−7000(日立製作所)を用いて行った。
(結果)
2−CHF−HMDER−βGal、4−CHF−HMDER−βGalおよび4−CHF−HMDER−βGalは、β−ガラクトシダーゼと酵素反応することにより、蛍光を発生した(図1〜3)。
これらの結果から、2−CHF−HMDER−βGal、4−CHF−HMDER−βGalおよび4−CHF−HMDER−βGalが、β−ガラクトシダーゼの酵素活性特異的に、蛍光を発生することが示された。
試験例2
β−ガラクトシダーゼ酵素反応による、共存タンパク質への蛍光色素の結合
2−CHF−HMDER−βGal、4−CHF−HMDER−βGalおよび4−CHF−HMDER−βGalを用いて、β−ガラクトシダーゼによって切断されたこれらの化合物が、溶液中に共存するウシ血清アルブミンタンパク質(BSA)を蛍光ラベル化することを確認した。
(材料と方法)
(1)2.5μM 4−CHF−HMDER−βGal および0.5mg,/mL BSA、(2)2.5μM 4−CHF−HMDER−βGal,0.5mg/mL BSA および5U β−ガラクトシダーゼ (3)2.5 μM 4−CHF−HMDER−βGal,0.5mg/mL BSA および5U β−ガラクトシダーゼ (4)2.5μM 2−CHF−HMDER−βGal,0.5mg/mL BSA および5U β−ガラクトシダーゼ (5)2.5μM HMDER−βGal、0.5mg/mL BSA および5U β−ガラクトシダーゼを、それぞれ水溶液中(500mM リン酸ナトリウム緩衝液、pH7.4)にて反応させた後、反応産物をSDS−PAGE(ランニングゲル10%、スタッキングゲル4%、泳動電圧200V)に供した。SDS−PAGEによって得られたゲルに対して、488nm,の励起光を照射し、540−600nmの蛍光をPMT電圧 1000Vにて観察した(図4(a))。観察後、当該ゲルをクマシー染色し、ゲル上におけるBSAの位置を確認した(図4(b))。
(結果)
2−CHF−HMDER−βGal、4−CHF−HMDER−βGalおよび4−CHF−HMDER−βGalと、β−ガラクトシダーゼを、BSA存在下で反応させることにより、SDS泳動後のBSAの位置に蛍光が確認された(図4のレーン2〜4、75kDa付近のバンド)。β−ガラクトシダーゼを含まない試料(同レーン1)、またはHMDER−βGalを用いた試料(同レーン5)では、蛍光が確認されなかった。
以上の結果は、2−CHF−HMDER−βGal、4−CHF−HMDER−βGalおよび4−CHF−HMDER−βGalが、βガラクトシダーゼ活性特異的に変化することで、BSAに共有結合したことを示唆するものであり、本発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物を用いることで、酵素活性特異的に、溶液中に共存するタンパク質を蛍光ラベル化し得ることを実証するものである。
試験例3
β−ガラクトシダーゼ酵素反応による細胞内タンパク質への蛍光色素の結合
2−CHF−HMDER−βGal、4−CHF−HMDER−βGalおよび4−CHF−HMDER−βGalが、細胞内タンパク質を酵素活性特異的に蛍光ラベル化することを確認した。
(材料と方法)
β−ガラクトシダーゼを発現するHEK細胞(HEK−lacZ細胞)および通常のHEK細胞を用いた。
(1)2.5μM 4−CHF−HMDER−βGal および20μL 1.5mg/mL HEK細胞ライセート(2)2.5μM 4−CHF−HMDER−βGalおよび20μL 1.5mg/mL HEK−lacZ細胞ライセート(3)2.5 μM 4−CHF−HMDER−βGalおよび20μL 1.5mg/mL HEK−lacZ細胞ライセート(4)2.5μM 2−CHF−HMDER−βGalおよび20μL 1.5mg/mL HEK−lacZ細胞ライセート(5)2.5μM HMDER−βGalおよび20μL 1.5mg/mL HEK−lacZ細胞ライセートを、それぞれ、5%CO存在下で37℃30分間インキュベートした後、反応産物をSDS−PAGE(ランニングゲル10%、スタッキングゲル4%、泳動電圧200V)に供した。SDS−PAGEによって得られたゲルに対して、488nm,の励起光を照射し、540−600nmの蛍光をPMT電圧 1000Vにて観察した(図5(a))。観察後、当該ゲルをクマシー染色し、ゲル上におけるBSAの位置を確認した(図5(b))。
(結果)
2−CHF−HMDER−βGal、4−CHF−HMDER−βGalおよび4−CHF−HMDER−βGalを、HEK−lacZ細胞とインキュベートした試料において、細胞内タンパク質に蛍光が確認された(図5のレーン2〜4)。β−ガラクトシダーゼを発現しないHEK細胞を用いた試料(同レーン1)、またはHMDER−βGalを用いた試料(同レーン5)では、蛍光が確認されなかった。
以上の結果は、2−CHF−HMDER−βGal、4−CHF−HMDER−βGalおよび4−CHF−HMDER−βGalが、βガラクトシダーゼ活性特異的に変化し、細胞内タンパク質に共有結合したことを示唆するものであり、本発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物を用いることで、酵素活性特異的に、細胞内タンパク質を蛍光ラベル化し得ることを実証するものである。
試験例4
β−ガラクトシダーゼを発現している生細胞の蛍光イメージング
本願発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物が、生細胞の蛍光イメージングに利用可能であることを確認した。
(材料と方法)
HEK細胞、HEK−lacZ細胞、およびこれらの細胞の混合物を、1μMの4−CHF−HMDER−βGalまたはHMDER−βGalとともに、30分間インキュベート(37C、5% CO存在下)した後、そのまま、あるいは、培地により2回洗浄した後、共焦点顕微鏡を用いて、これらの細胞の蛍光画像および微分干渉画像(DIC)を取得した。また、4−CHF−HMDER−βGalとインキュベーションした後、4%PFAを加えて室温で10分間インキュベーションすることで固定した細胞も、同様に観察した。共焦点顕微鏡には、白色レーザー光、および対物レンズHCX PL APO CS 40x/1.25(Leica社製)を備えた、TCS SP5X(Leica社製)を用い、LAS AF softwareにて制御した。観察条件は以下のとおり: ホワイトライトレーザー(WLL): 80%−25%,励起波長: 525nm,観測波長: 535−595nm,ゲイン: 800 V (PMT1)/350V(Scan−DIC),オフセット: 0%,ピンホール:67.88μM(1エアリーディスク).
(結果)
試験化合物とインキュベートした後、細胞を培地で洗浄することなく観察した結果、4−CHF−HMDER−βGalでインキュベートされたHEK−LacZ細胞は、鮮明な蛍光を示した(図6左側)。また、HEK−LacZ細胞とHEK細胞の混合物においては、個々の細胞における蛍光レベルに明確な差異が観察され、細胞毎のβ−ガラクトシダーゼ活性を検出・蛍光イメージング可能であることが示された。一方、HMDER−βGalを用いた場合には、個々の細胞のβ−ガラクトシダーゼ活性を蛍光イメージングすることはできなかった(図6右側)。
さらに、試験化合物とインキュベート後、細胞を培地により2回洗浄した後に観察した場合においても、4−CHF−HMDER−βGalを用いた場合の蛍光強度には、ほとんど変化がなく、4−CHF−HMDER−βGalとβ−ガラクトシダーゼとの酵素反応後に生成する蛍光色素が、ほとんど細胞から漏出しないことが示された(図7)。
また、4−CHF−HMDER−βGalとインキュベーションした後に固定処理を行った試料においても、生細胞と同様の蛍光イメージングが可能であった(図8)。
以上の結果は、本発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物を用いることで、単一細胞レベルにおける詳細な生細胞蛍光イメージングを可能とし得ること、また、優れた細胞内滞留性が得られること、固定化処理を行っても、蛍光色素が細胞外にほとんど漏出しないことを実証するものである。
試験例5
フローサイトメトリーを用いた生細胞のβ−ガラクトシダーゼ活性の検出
本願発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物を利用することで、生細胞の細胞毎の酵素活性を、フローサイトメトリーを用いて検出し得ることを確認した。
(材料と方法)
HEK細胞、HEK−lacZ細胞、およびこれらの細胞の混合物を、1 μMの4−CHF−HMDER−βGalまたはHMDER−βGalとともに、30分間インキュベート(37C 、5% CO存在下)した。これらの細胞を、フローサイトメメーター Accuri C6(Accri Cytometers)を用いて、488nmの励起光で解析した。
(結果)
4−CHF−HMDER−βGalとインキュベートされたHEK−LacZ細胞とHEK細胞の混合物を、フローサイトメトリーを用いて解析したところ、HEK−LacZ細胞、HEK細胞のそれぞれに対応するピークが明瞭に観察され、これらの細胞を、蛍光強度の差に基づいて明確に区別して検出可能であった(図9(a))。一方、HMDER−βGalとインキュベートされたHEK−LacZ細胞とHEK細胞の混合物では、これらの細胞をフローサイトメトリーの結果上区別することはできなかった(図9(b))。
以上の結果は、本発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物を用いることで、異なる酵素活性を有する細胞を、フローサイトメトリーを用いて明確に検出および区別し得ることを実証するものである。
試験例6
β−ガラクトシダーゼ活性をもつ生体組織の非固定蛍光イメージング
本願発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物を、生体組織の蛍光イメージングに適用し得ることを確認した。
(材料と方法)
β−ガラクトシダーゼを発現する(en−lacZ)ショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の羽原基(wing discs)を、20μMの4−CHF−HMDER−βGal又はHMDER−βGalとともに、30分間室温にてインキュベーションした後、共焦点顕微鏡(TCS SP5:Leica社製、LAS AF software.にて制御)下で観察した。観察条件は以下のとおり;Ar:40%−25%,励起光:514nm,観測光:535−595nm(HyD2),20倍.
(結果)
4−CHF−HMDER−βGalを用いて蛍光イメージングを行った場合、酵素反応生成物である蛍光色素は拡散しないため、β−ガラクトシダーゼ活性をもつ部位(後部)を選択的に蛍光イメージング可能であった(図10(a))。一方、HMDER−βGalを用いて蛍光イメージングを行った場合は、経時的に酵素反応生成物である蛍光色素が拡散し、β−ガラクトシダーゼ活性をもつ部位が判別できなかった(図10(b))。
以上の結果は、本発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物を用いることで、蛍光色素の拡散が抑制され、生体組織における非固定蛍光イメージングが可能となることを実証するものである。
試験例7
β−ガラクトシダーゼ活性を発現する固定処理後のハエ腸管細胞の単一細胞蛍光イメージング
本願発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物を用いて、組織内の細胞を単一細胞レベルで蛍光イメージングすることが可能であることを確認した。
(材料と方法)
中腸にβ−ガラクトシダーゼを発現するショウジョウバエ(esg−lacZ)を作製した。当該ハエを解剖後4%FPAにより固定処理を行い、4−CHF−HMDER−βGalを添加して10分間反応させた後洗浄し、80%グリセロールにて透明化処理を行い、蛍光顕微鏡(TCS SP5:Leica社製、LAS AF software.にて制御)にて観察を行った。対照として、GFPを発現するショウジョウバエ腸幹細胞(esg−GFP)を観察した。観察条件は以下のとおり;励起光:514nm,観測光:535−595nm(HyD2),40倍.
(結果)
ショウジョウバエ(esg−lacZ)を4−CHF−HMDER−βGalと反応させることにより、組織内に蛍光を発する細胞を確認することができた(図11(a))。当該画像は、ショウジョウバエ腸幹細胞(esg−GFP)の蛍光画像(図11(b))と類似していた。
以上の結果は、本発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物を用いることで、単一細胞蛍光イメージングが可能であることを実証するものである。
なお、固定処理を行っていない、β−ガラクトシダーゼ発現腸管細胞でも、同様の蛍光イメージングが可能であることを確認している。
試験例8
卵巣癌播種モデルマウスのex vivo蛍光イメージング
本願発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物を用いて、癌部位を選択的に蛍光イメージング可能であることを確認した。
(材料と方法)
卵巣癌細胞SHIN3を播種して、癌モデルマウスを作製した。卵巣癌細胞においては、酸性β−ガラクトシダーゼ活性が上昇していることが知られている。当該癌モデルマウスに、4−CHF−HMDER−βGalを腹腔内注射して1時間後に、Maestro in−vivo imaging system(CRi)を用いて蛍光観察を行った。観察条件は以下のとおり;励起光:490−530nm,観測光:550−800nm
(結果)
蛍光観察の結果、癌部位と考えられる組織部位(白矢印で示す)から、酵素反応後に生成する蛍光色素由来の蛍光が観察された(図12)。蛍光スペクトルにより蛍光を分離する操作(unmix)を行ったところ、自家蛍光と蛍光スペクトルを分離することが可能であった。
以上の結果は、本発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物を用いることで、生体における癌部位を、選択的に蛍光イメージング可能であることを実証するものである。
試験例9
未固定ショウジョウバエ組織における、モザイク状に発現したβ−ガラクトシダーゼ活性の蛍光イメージング
本願発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物を用いて、生体組織内にモザイク状に分布するβ−ガラクトシダーゼ活性細胞群を未固定で蛍光イメージングすることが可能であることを確認した。
(材料と方法)
雄のHis2Av−mRFP1, FRT80B/TM6Bをもつショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)と雌のhs−flp;;arm−lacZ, FRT80Bをもつショウジョウバエを交配させ、その子が孵化して30時間後の一齢幼虫のときに37℃、1時間ヒートショックを与え、羽原基(wing discs)に以下の三種類の遺伝子型の細胞をモザイク状に発現させた;(1) β−ガラクトシダーゼのみが発現した細胞(arm−lacZ)、(2) 赤色蛍光タンパク質(mRFP1)のみが発現した細胞(His2Av−mRFP1)、(3) β−ガラクトシダーゼとmRFP1が共に発現した細胞(arm−lacZ/His2Av−mRFP1)。三齢(終齢)幼虫から解剖した羽原基を10 μMの4−CHF−HMDER−βGalを含む培地中に30分間浸し、共焦点蛍光顕微鏡(TCS SP5:Leica社製、LAS AF softwareにて制御)下で観察した。観察条件は以下の通り;(4−CHF−HMDER−βGal)励起光:514 nm、観測光:525−585 nm、(mRFP1)励起光:594 nm、観測光:610−700 nm、63倍。
(結果)
4−CHF−HMDER−βGalを用いて蛍光イメージングを行ったところ、上記三種類の遺伝子型をもつ細胞がモザイク状に存在する様子が鮮明に可視化された(図13)。
以上の結果は、本発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物を用いることで、生体組織に存在するβ−ガラクトシダーゼ発現細胞を非固定で明確に可視化・判別可能であることを実証するものである。
試験例10
β−ガラクトシダーゼ活性を発現するハエ脂肪体細胞の単一細胞蛍光イメージング
本願発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物を用いて、生体組織内にランダムに発現したβ−ガラクトシダーゼ活性を、単一細胞レベルで蛍光イメージングすることが可能であることを確認した。
(材料と方法)
ショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)脂肪体のクローン解析を行うため、フリップアウト技術を使ってUAS−lacZをhs−flp122;Actin>y>Gal4に掛け合わせることによってβ−ガラクトシダーゼを過剰発現させた。生細胞蛍光イメージングを行うため、三齢(終齢)のハエから脂肪体を解剖し、10 μMの4−CHF−HMDER−βGalと16 μMのHoechst 33342(細胞核染色剤)を含む培地に20分間インキュベーションし、PBSで洗浄し、80%グリセロール中に固定した。また、免疫化学染色を行うため、解剖した脂肪体を4%パラホルムアルデヒド(PFA)含有PBSに20分間浸し、固定処理を行った。ブロッキングの後、脂肪体をβ−ガラクトシダーゼに対するマウス由来モノクローナル抗体(1:250、プロメガ社)に30分間浸し、10 μMの4−CHF−HMDER−βGal、16 μMのHoechst 33342、Alexa 647修飾二次抗体を加え、共焦点蛍光顕微鏡(TCS SP5:Leica社製、LAS AF softwareにて制御)下で観察した。観察条件は以下の通り;(Hoechst 33342)励起光:405 nm、観測光:415−490 nm、(4−CHF−HMDER−βGal)励起光:514 nm、観測光:525−600 nm、(Alexa 647修飾二次抗体)励起光:633 nm、観測光:640−700 nm、40倍。
(結果)
4−CHF−HMDER−βGalを用いて蛍光イメージングを行い、生体組織内にランダムに発現したβ−ガラクトシダーゼ活性細胞を単一細胞ずつ蛍光イメージングすることが可能であることを確認した(図14)。
以上の結果は、本発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物を用いることで、生体組織内にランダムに発現したβ−ガラクトシダーゼ活性細胞を単一細胞ずつ可視化・判別可能であることを実証するものである。
本発明により、酵素活性特異的に蛍光を発すると同時に、当該酵素を有する生細胞内に滞留することで、当該細胞を固定することなく、あるいは固定した状態で、単一細胞レベルで選択的に可視化可能な蛍光化合物、当該蛍光化合物を用いた蛍光イメージングプローブ、当該蛍光プローブを用いた検出方法、検出キット又は検出剤が提供される。本発明の酵素特異的滞留性蛍光化合物およびこれを用いたイメージング手法は、細胞の老化機構を解明するための分子ツールとして利用し得るほか、癌細胞選択的な蛍光イメージングプローブとして、検査、診断などの分野において、幅広い利用用途を有している。

Claims (15)

  1. 以下の式(I’)で表される化合物又はその塩を含む、酵素特異的滞留性蛍光化合物:
    Figure 0006635555
    (式中、Aはβ−ガラクトピラノシル基、α−マンノシル基、又はβ−N−アセチルグルコサミル基を表し;Rは水素原子又はベンゼン環に結合する1個ないし4個の同一又は異なる置換基を表し、前記置換基は、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、モノ若しくはジ置換アミノ基、置換シリル基、及びアシル基よりなる群から選択される基であり;R、R、R、及びRはそれぞれ独立に−CFR1011又は−CF12、若しくは水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、又はハロゲン原子を表し;R及びRはそれぞれ独立に水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、又はハロゲン原子を表し;R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し;R10、R11及びR12はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はアルケニル基を表し;Xは酸素原子、Se、CR1314、又はSiR1516を表し;R13、R14、R15及びR16はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し;YはC−Cアルキレン基を表し、ここで、R、R、R、及びRの少なくとも一つは、−CFR1011又は−CF12を表す。)
  2. Aがβ−ガラクトピラノシル基である、請求項1に記載の酵素特異的滞留性蛍光化合物。
  3. 、R、R、及びRの少なくとも一つは、−CFR1011である、請求項1又は2に記載の酵素特異的滞留性蛍光化合物。
  4. 、R、R、及びRの少なくとも一つは、−CHFである、請求項1又は2に記載の酵素特異的滞留性蛍光化合物。
  5. 以下の式(Ia)〜(Ic)で表される化合物又はその塩を含む、酵素特異的滞留性蛍光化合物:
    Figure 0006635555
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の酵素特異的滞留性蛍光化合物を含有する蛍光イメージングプローブ。
  7. 請求項1〜のいずれかに記載の酵素特異的滞留性蛍光化合物を含有する、特定の酵素が発現している標的細胞を検出するための、又は可視化するための組成物又はキット。
  8. 前記標的細胞が、β−ガラクトシダーゼ発現細胞である、請求項7に記載の組成物又はキット。
  9. 前記標的細胞が、癌細胞である、請求項7に記載の組成物又はキット。
  10. 請求項1〜のいずれかに記載の酵素特異的滞留性蛍光化合物と、当該標的細胞において特異的に発現する酵素とを、生体外において接触させ、特定の酵素が発現している標的細胞を検出する方法。
  11. 前記酵素特異的滞留性蛍光化合物と、当該標的細胞において特異的に発現する酵素とを、生体外において接触させる工程、及び、励起光照射を行って蛍光を生じさせる工程を含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
  12. 前記標的細胞が、β−ガラクトシダーゼ発現細胞である、請求項10又は11に記載の方法。
  13. 前記標的細胞が、癌細胞である、請求項10〜12のいずれかに記載の方法。
  14. 以下の式(II)で表される化合物:
    Figure 0006635555
    (式中、R、R、R、及びRはそれぞれ独立に−C(=O)H、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、又はハロゲン原子を表し;R及びRはそれぞれ独立に水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、又はハロゲン原子を表し;R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示し;Xは酸素原子、Se、CR1314又はSiR1516を表し;R13、R14、R15又はR16はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示し;YはC−Cアルキレン基を表し、ここで、R、R、R、及びRの少なくとも一つは、−C(=O)Hを表す。)
  15. 以下の式(IIa)又は(IIb)で表される化合物:
    Figure 0006635555
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