JP2005201845A - マグネシウムイオン及びカルシウムイオン同時測定用プローブ - Google Patents

マグネシウムイオン及びカルシウムイオン同時測定用プローブ Download PDF

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鈴木  孝治
Hirokazu Komatsu
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Abstract

【課題】 複数の蛍光プローブを同時使用した場合の蛍光プローブ同士の会合、それぞれの濃度変化、および蛍光バックグラウンドの上昇による定量性の低下を伴うことなくマグネシウムイオン及びカルシウムイオンを同時に測定することができる手段を提供すること。
【解決手段】 マグネシウムイオン及びカルシウムイオン同時測定用プローブは、マグネシウムイオンと配位結合するマグネシウムイオン結合領域と、カルシウムイオンと配位結合するカルシウムイオン結合領域とを有する有機色素化合物から成る。
【選択図】 図2

Description

本発明は、マグネシウムイオン及びカルシウムイオン同時測定用プローブ並びにそれを用いた検体中のマグネシウムイオン及びカルシウムイオンの同時測定方法に関する。
生理学の分野では、蛍光プローブを用いた細胞内のイオンの動態解析・イメージングが高速、簡便、高感度であり、広く用いられている。カルシウムイオン及びマグネシウムイオンに対する蛍光プローブの開発がなされてきたが、その濃度の対向輸送に関する相関が注目されており、それらを同時に定量することが重要である。
カルシウムイオンを測定するための蛍光プローブ及びマグネシウムイオンを測定するための蛍光プローブは公知である。カルシウムイオン及びマグネシウムイオンを同時に測定するために、公知のカルシウムイオン測定用蛍光プローブ及びマグネシウムイオン測定用蛍光プローブの両者を同時に使用することが試されてきた。
国際公開公報WO 02/12867 Grynkiewicz, G.; Poenie,M.; Tsien, R.Y.; J.Biol.Chem. 1985, 260( 6), 3440-3450
公知のカルシウムイオン測定用蛍光プローブ及びマグネシウムイオン測定用蛍光プローブの両者を同時に使用する場合には、蛍光プローブ同士の会合、それぞれの濃度変化、および蛍光バックグラウンドの上昇が定量性を低下させると考えられる。
従って、本発明の目的は、複数の蛍光プローブを同時使用した場合の蛍光プローブ同士の会合、それぞれの濃度変化、および蛍光バックグラウンドの上昇による定量性の低下を伴うことなくマグネシウムイオン及びカルシウムイオンを同時に測定することができる手段を提供することである。
本願発明者らは、鋭意研究の結果、単一の分子でマグネシウムイオン及びカルシウムイオンを同時に測定可能な蛍光プローブを開発すれば上記課題を解決できると考えた。そして、有機色素化合物にマグネシウムイオン結合領域及びカルシウムイオン結合領域を設け、2種類の異なる波長の励起光を用いて蛍光を測定するか又は2種類の異なる波長における吸光度を測定することにより、単一の分子でもマグネシウムイオン及びカルシウムイオンを同時に測定可能であることに想到し、かつ、この考えが正しいことを実験的に確認し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、マグネシウムイオンと配位結合するマグネシウムイオン結合領域と、カルシウムイオンと配位結合するカルシウムイオン結合領域とを有する有機色素化合物から成るマグネシウムイオン及びカルシウムイオン同時測定用プローブを提供する。また、本発明は、上記本発明のプローブと、検体とを接触させ、異なる2種類の波長で励起した場合の蛍光を測定する又は異なる2種類の波長における吸光度を測定することを含む、検体中のマグネシウムイオン及びカルシウムイオンの同時測定方法を提供する。
本発明により、単一の分子でマグネシウムイオン及びカルシウムイオンを同時に測定可能なプローブが初めて提供された。本発明のプローブを用いることにより、複数のプローブを同時使用した場合のような、蛍光プローブ同士の会合、それぞれの濃度変化、および蛍光バックグラウンドの上昇による定量性の低下を伴うことなくマグネシウムイオン及びカルシウムイオンを同時に測定することが可能である。
上記の通り、本発明のマグネシウムイオン及びカルシウムイオン同時測定用プローブは、マグネシウムイオンと配位結合するマグネシウムイオン結合領域と、カルシウムイオンと配位結合するカルシウムイオン結合領域とを有する有機色素化合物から成る。一般に、有機色素化合物上のマグネシウム結合領域にマグネシウムイオンが配位結合した場合の蛍光特性又は吸光度特性の変化と、カルシウムイオン結合領域にカルシウムイオンが配位結合した場合の吸光特性又は蛍光特性の変化とが異なるため、異なる2種類の波長で励起した場合の蛍光を測定する又は異なる2種類の波長における吸光度を測定することにより、プローブが単一の分子から成っていてもマグネシウムイオンとカルシウムイオンを識別して同時測定することが可能であることを本願発明者らは見出した。
マグネシウムイオン結合領域としては、マグネシウムイオンに選択的に結合する構造が好ましく、例えば特許文献1に記載されている下記一般式[I]で表される構造を挙げることができる。
(但し、式中、R1は水素原子、金属原子又はエステル形成基、A1は式中の炭素原子1及び2と共に環式構造を形成する原子団を示し、A1を含む環式構造は前記有機色素化合物の一部を構成していてもよい)
上記一般式[I]中、Rは水素原子、金属原子又はエステル形成基である。金属原子の場合、水系媒体中で電離してCOO-基をもたらし、このCOO-基がマグネシウムイオンのキレート化の一翼を担うので、Rは任意の金属原子であってよく、例としてナトリウム及びカリウムのようなアルカリ金属等の1価の金属原子を挙げることができる。また、「エステル形成基」とは、カルボキシル基とエステルを形成してCOORのエステル構造を構成しているRのことを意味する。COORの構造は、生体内でエステラーゼの作用を受けてエステル結合が切断されてCOO-基が生成され、このCOO-基がマグネシウムイオンのキレート化の一翼を担うので、Rは何ら限定されるものではなく、任意の基であってよい。
プローブが一般式[I]に示される構造を有する場合、β−ジケトン構造(メチレン基を介して2つのカルボニル基が結合されている構造)が環式構造により堅固に支持されているので、より的確にマグネシウムイオンをキレート化することができる。なお、A1を含む環式構造は、β−ジケトン構造を環式構造上に支持するものであればいかなる環式構造であってもよいので、環式構造自体は何ら限定されない。通常、5員環〜7員環であり、ベンゼン環のような芳香環であってもよく、二重結合を含むことがあるシクロアルキルのような構造でもよく、複素環であってもよい。また、一般式[I]の構造では、一方のカルボニル基を、カルボキシル基由来のものとしているため、Rを任意に選択することが可能であり、例えば、細胞中のマグネシウムイオンを測定する場合には、Rとして、細胞膜を通過しやすくさせる構造を採用することができる。細胞膜を通過しやすくさせるRの構造として、一般式[XVI]
-R7-OCO-R8 [XVI]
(但し、R7は炭素数1〜4のアルキレン基、R8は炭素数1〜4のアルキル基を表す)
で示される構造を挙げることができる。なお、本明細書において、「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状アルキル基及び分枝状アルキル基の両者を包含する。一般式[XVI]において、R7及びR8の炭素数が少ない方が好ましく、従って、R7はメチレン基、R8はメチル基が最も好ましい。なお、Rについての上記説明は、以下に記載する他の全ての一般式中のRについてもあてはまる。
さらに、一般式[I]で示される構造のうち、下記、一般式[III]で示されるものが感度の点から好ましい。
(但し、式中、R1は、一般式[I]中のR1と同義であり、Y1は、-O-、-CH2-又は-NH-、Y2は-CH=又は-N=を表し、式[III]中の環構造を構成する任意の1又は2以上の炭素原子に結合している各水素原子は、マグネシウムイオンとの結合を妨害しない任意の基で置換されていてもよく、Y及びY'を含む6員環は前記有機色素化合物の一部を構成していてもよい)
一般式[III]中、Y’は−CH=であることが好ましい。また、Yは−O−であることが好ましい。また、環を構成する炭素原子に結合している各水素原子は、マグネシウムイオンとの結合を妨害しない任意の基で置換されていてもよい。
一般式[III]で表される構造のうち、感度の観点から、一般式[IV]で示されるクマリン(coumarin)誘導体が特に好ましい。
(但し、式中、R1は、一般式[I]中のR1と同義であり、式[IV]中の環構造を構成する任意の1又は2以上の炭素原子に結合している各水素原子は、マグネシウムイオンとの結合を妨害しない任意の基で置換されていてもよく、式中の縮合環は前記有機色素化合物又はその一部を構成していてもよい)
上記一般式[III]又は[IV]における、「マグネシウムイオンとの結合を妨害しない任意の基」の好ましい例としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、アミノ基、ハロゲン及びニトロ基から成る群より選ばれる1又は2以上のものを挙げることができる。
また、マグネシウムイオン結合領域としては、下記一般式[II]で示される構造も好ましい例として挙げることができる。
(但し、式中、R2は水素原子、金属原子又はエステル形成基、A2及びA3は互いに独立に式中の炭素原子3及び4と共にそれぞれ環式構造を形成する原子団を示し、炭素原子3と炭素原子4の間の結合は単結合又は二重結合(ベンゼン環のような、共鳴により非局在化している二重結合を包含する)であり、A2を含む環とA3を含む環は縮合しており、該縮合環は前記有機色素化合物又はその一部を構成していてもよい)
R2については、上記一般式[I]中のR1についての説明が適用できる。A2を含む環及びA3を含む環は、それぞれ=O及び-OR2を環式構造上に支持するものであればいかなる環式構造であってもよいので、環式構造自体は何ら限定されない。通常、5員環〜7員環であり、ベンゼン環のような芳香環であってもよく、二重結合を含むことがあるシクロアルキルのような構造でもよく、複素環であってもよい。なお、A2を含む環及びA3を含む環は互いに縮合している。
上記一般式[II]で表される構造の好ましい具体例として、下記式[XVII]で表される構造を挙げることができる。
カルシウムイオン結合構造自体も種々知られており、公知のカルシウムイオン結合構造を本発明におけるカルシウムイオン結合領域として採用することができる。好ましい例として、下記一般式[V]及び[VI]
(但し、式中、R3ないしR6は、それぞれ独立に水素原子、金属原子又はエステル形成基を示し、各式中の窒素原子とカルボキシル基又はその塩若しくはエステルとの間の各炭素原子に結合している各水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよい)
でそれぞれ表される2つの基を含むものを挙げることができる。R3ないしR6については、上記一般式[I]中のR1についての説明が適用できる。公知の通り、このような構造では4つの-COO-と2つのN原子によりカルシウムイオンが選択的にキレート結合される。
一般式[V]及び[VI]で表される2つの基を有するカルシウムイオン結合領域の好ましい例として、下記一般式[VII]で表される構造を挙げることができる。
(但し、式中、R3ないしR6は、一般式[V]及び[VI]中のR3ないしR6と同義、A4及びA5は互いに独立に式中の炭素原子5及び6、又は7及び8と共にそれぞれ環式構造を形成する原子団を示し、炭素原子5と炭素原子6の間の結合及び炭素原子7と炭素原子8の間の結合は単結合又は二重結合(ベンゼン環のような、共鳴により非局在化している二重結合を包含する)であり、A4を含む環及びA5を含む環は、それぞれ他の環と縮合していてもよく、また、これらの環は前記有機色素化合物の一部を構成していてもよく、式[VII]中の任意の1又は2以上の炭素原子に結合している各水素原子は、カルシウムイオンとの結合を妨害しない任意の基で置換されていてもよい)
A4を含む環及びA5を含む環は、それぞれ上記一般式[V]及び[VI]で表される基を環式構造上に支持するものであればいかなる環式構造であってもよいので、環式構造自体は何ら限定されない。通常、5員環〜7員環であり、ベンゼン環のような芳香環であってもよく、二重結合を含むことがあるシクロアルキルのような構造でもよく、複素環であってもよい。
上記一般式[VII]で示される構造のうち、好ましいものとして下記一般式[VIII]で表される構造を挙げることができる。
(但し、式中、R3ないしR6は、一般式[V]及び[VI]におけるR3ないしR6と同義、2つのベンゼン環は、それぞれ他の環と縮合していてもよく、また、これらの環は前記有機色素化合物の一部を構成していてもよく、式[VIII]中の任意の1又は2以上の炭素原子に結合している各水素原子は、カルシウムイオンとの結合を妨害しない任意の基で置換されていてもよい)
なお、上記例のように、マグネシウムイオン結合領域がアクセプターとしてマグネシウムイオンと配位結合し、カルシウムイオン結合領域がドナーとしてカルシウムイオンと配位結合する場合には、各イオンと結合した場合の蛍光又は吸光特性のシフトの方向が逆向きになる(例えば、蛍光波長が、マグネシウムイオンとの結合により長波長側にシフトし、カルシウムイオンとの結合により短波長側にシフトする等)ので、より明確に両イオンを同時測定することが可能になり好ましい。
有機色素化合物は、吸光性又は蛍光性を示すものであり、公知の種々のものが利用可能である。例えば、カルシウムイオン測定用の蛍光プローブ自体は、種々のものが公知であり、このような蛍光プローブに用いられている蛍光性原子団はいずれも本発明における有機色素化合物として採用することができる。このような有機色素化合物の例として、ローダミン、フルオレセイン、ナフタレン、アントラセン、ピレン、クマリン、キノリン、スチルベン、ベンゾチオゾール及びピラゾリン並びに蛍光を有するこれらの誘導体等を挙げることができるが、本発明において採用される有機色素化合物はこれらに限定されるものではない。
有機色素化合物は、通常、環状構造を有しているので、上記一般式[I]〜[IV]、[VII]及び[VIII]中の環式構造が有機色素化合物の一部又は全部を構成していてもよい。例えば、マグネシウムイオン結合領域の好ましい例として上記した一般式[IV]に示される構造は、クマリンを含んでおり、クマリンはそれ自体で蛍光性を有しているので、一般式[IV]に示される構造を、有機色素化合物にマグネシウム結合領域が結合した構造として利用することができる。また、例えば、一般式[IV]に示される構造のクマリン部分にさらに他の環が縮合して下記一般式[XIV]又は[XV]に示すような構造となっていてもよい。これらは、上記一般式[IV]に示す構造中のクマリン部分が有機色素化合物の一部を構成している例である。
(ただし、一般式[XIV]及び[XV]中のR1は、一般式[I]中のR1と同義)
いずれにせよ、本発明のプローブでは、有機色素化合物上に、上記したマグネシウムイオン結合領域及びカルシウムイオン結合領域が直接的又は間接的に結合される(もっとも、上記の通り、マグネシウムイオン結合領域及び/又はカルシウムイオン結合領域が有機色素化合物の一部又は全部を構成していてもよい)。従って、本発明のプローブでは、1個の分子中にマグネシウムイオン結合領域、カルシウムイオン結合領域及び有機色素化合物が含まれる。
本発明のプローブの好ましい例として、下記一般式[IX]ないし[XII]で表されるものを挙げることができる。
(但し、式中、R1は一般式[I]におけるR1と同義、R3ないしR6は、一般式[V]及び[VI]におけるR3ないしR6と同義、X1は-O-、-S-又は-CH2-を表し、式[IX]中の任意の1又は2以上の炭素原子に結合している各水素原子は、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンとの結合を妨害しない任意の基で置換されていてもよい)
(但し、式中、R1は一般式[I]におけるR1と同義、R3ないしR6は、一般式[V]及び[VI]におけるR3ないしR6と同義、X1は一般式[IX]におけるX1と同義、X2は=N-又は=CH-を表し、式[X]中の任意の1又は2以上の炭素原子に結合している各水素原子は、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンとの結合を妨害しない任意の基で置換されていてもよい)
(但し、式中、R1は一般式[I]におけるR1と同義、R3ないしR6は、一般式[V]及び[VI]におけるR3ないしR6と同義、X1は一般式[IX]におけるX1と同義、式[XI]中の任意の1又は2以上の炭素原子に結合している各水素原子は、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンとの結合を妨害しない任意の基で置換されていてもよい)
(但し、式中、R1は一般式[I]におけるR1と同義、R3ないしR6は、一般式[V]及び[VI]におけるR3ないしR6と同義、X1は一般式[IX]におけるX1と同義、式[XI]中の任意の1又は2以上の炭素原子に結合している各水素原子は、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンとの結合を妨害しない任意の基で置換されていてもよい)
上記一般式[VII]ないし[XII]における「任意の基」としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、アミノ基、ハロゲン及びニトロ基から成る群より選ばれる1又は2以上のものを挙げることができる。
本発明のプローブの特に好ましい例として、下記実施例で合成した下記式[XIII]に示される構造を有するものを挙げることができる。
本発明のプローブの構成要素であるマグネシウムイオン結合領域、カルシウムイオン結合領域及び有機色素化合物は、いずれも公知のものを利用できるので、本発明のプローブは、公知の構造を結合することで製造することができ、従って、有機合成の分野で周知の手法を用いて合成することが可能であり、その詳細な具体例が下記実施例に示されている。
一般に、有機色素化合物にマグネシウムイオンが結合した場合と、カルシウムイオンが結合した場合では蛍光特性又は吸光特性の変化が異なる。従って、検体に本発明のプローブを作用させ、異なる2種類の波長で励起した場合の蛍光を測定する又は異なる2種類の波長における吸光度を測定し、予め作成しておいた検量線に当てはめることにより検体中のマグネシウムイオン及びカルシウムイオンを同時測定することができる。例えば、下記実施例に具体的に記載するように、波長Ex1の励起光で励起した場合の波長Em1の蛍光強度を、種々の既知の濃度のマグネシウムイオン及びカルシウムイオンを含む標準溶液について測定し、その結果を、マグネシウムイオン濃度の対数をx軸に、カルシウムイオン濃度の対数をy軸に、蛍光強度をz軸にプロットすると、検量面1が得られる。同様に、波長Ex2の励起光で励起した場合の波長Em2の蛍光強度を、種々の既知の濃度のマグネシウムイオン及びカルシウムイオンを含む標準溶液について測定し、その結果を、上記と同様にプロットすると立体的な検量面2が得られる。未知濃度のマグネシウムイオン及びカルシウムイオンを含む検体について、励起波長Ex1で励起した場合の波長Em1における蛍光強度を測定する。その結果を検量面1に当てはめると、検量面1はxy平面に平行な平面で切断され、その切片は曲線1になる。一方、同じ未知の検体について励起波長Ex2で励起した場合の波長Em2における蛍光強度を測定する。その結果を検量面2に当てはめると、検量面2はxy平面に平行な平面で切断され、その切片は曲線2になる。曲線1も曲線2もx軸がマグネシウムイオン濃度の対数、y軸がカルシウムイオン濃度の対数であるから、これらを同一のxy座標軸に描く。その交点が検体中のマグネシウムイオン濃度及びカルシウムイオン濃度を示す。用いる励起波長及び蛍光波長は、両イオン濃度が0の場合、マグネシウムイオンのみが含まれる場合及びカルシウムイオンのみが含まれる場合について、種々の励起波長及び蛍光波長において蛍光を測定する予備実験により蛍光ピークを求め、各イオンに対する蛍光ピークを与える励起波長及び蛍光波長又はその近傍の波長を採用することが好ましい。蛍光ピークが各イオンについて複数存在する場合、必ずしも大きい方のピーク波長を採用する必要はなく、両イオン濃度が0の場合の蛍光波長と比較して、マグネシウムイオン存在下とカルシウムイオン存在下でシフトの方向(短波長側にシフトするか長波長側にシフトするか)が逆方向となるピーク又はその近傍の励起波長及び蛍光波長を採用することが好ましい。なお、測定操作を簡単にするために、マグネシウムイオンとカルシウムイオンで十分な蛍光強度の差が存在する場合には、蛍光波長は同一の波長を採用してもよい。吸光度の場合も全く同様に、種々の標準試料について2種類の測定波長における吸光度をプロットして2種類の検量面を作成し、未知の検体について2種類の測定波長で測定した吸光度を各検量面に当てはめ、それらの切片の曲線の交点から未知の検体中の両イオン濃度を求めることができる。この場合の測定波長も、予備実験により、各イオン単独存在下におけるピーク波長又はその近傍の波長を用いることができる。
検体に作用させるプローブの終濃度は、特に限定されないが、通常、1 nMないし10 mM程度、好ましくは、1μMから10μM程度である。インキュベーションの時間は、特に限定されず、検体に応じて適宜選択できるが、通常、1秒間〜1時間程度でよい。検体が溶液の場合には1秒〜数秒の反応時間で十分に反応するが、検体が生体組織や細胞等の場合には、5分間〜1時間程度インキュベートすることが好ましい。また、インキュベーションの温度は、特に限定されず、各検体に適した温度が適宜選択できるが、通常、0℃〜40℃程度であり、室温が簡便で好ましい。なお、本発明における「測定」には、定量と検出の両者が包含される。
検体としては、特に限定されず、その中に含まれるマグネシウムイオン及びカルシウムイオンを同時測定しようとするいずれのものであってもよく、好ましい例として、各種細胞や組織を挙げることができる。検体が細胞又は組織である場合には、細胞又は組織の培養液を、プローブ溶液に置換し、上記のようにインキュベートし、蛍光を測定することができる。この場合、プローブ溶液の溶媒としては、水系緩衝液又はDMSOやアセトニトリルのような極性溶媒と水系緩衝液の混合物が好ましい。
特に、生体組織や細胞中のイオンの測定に用いる場合、例えば、ジメチルスルフォキシド(DMSO)のような、極性有機溶媒にプローブを溶解したものを、緩衝液に加え、これを検体に加え(又は検体にこれを加え)てインキュベートし、励起光を当てて蛍光を測定することができる。極性有機溶媒中のプローブ濃度は、特に限定されないが、通常、0.1 mMないし10 mM程度、好ましくは、0.5 mMないし2 mM程度であり、また、緩衝液に添加した後のプローブ濃度は、特に限定されないが、通常、1 μMないし0.1 mM程度、好ましくは、5μMないし20μM程度である。インキュベーションの時間は、特に限定されず、検体に応じて適宜選択できるが、通常、5分間〜1時間程度でよい。また、インキュベーションの温度は、特に限定されず、各検体に適した温度が適宜選択できるが、通常、0℃〜40℃程度であり、検体が細胞又は組織である場合には、その培養に適した温度(例えば、ヒト由来の細胞又は組織であれば37℃)であることが好ましい。また、蛍光の測定は、市販の蛍光計を用いて行うこともできる。このような測定方法自体は公知である。また、検体としては、特に限定されず、その中に含まれるカルシウムイオン及びマグネシウムイオンを測定しようとするいずれのものであってもよく、好ましい例として、各種細胞や組織を挙げることができる。
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
上記式[XIII]で示される構造を有するプローブの合成
(1) 1,4-ビス-ベンジロキシ-2-ニトロ-ベンゼンの合成
130mlの酢酸中に1,4-ビス-ベンジロキシ-ベンゼン (25.53g, 87.92mmol, 1eq.)を含む溶液に、25mlの酢酸中にHNO3(70%, 8.13g, 90.31mmol, 1.03eq.)を含む溶液を加え、50℃で1時間撹拌した。反応混合物を氷浴中で冷却し、生成した沈殿をろ過、乾燥すると、96.2%の収率で1,4-ビス-ベンジロキシ-2-ニトロ-ベンゼンが得られた(28.35g, 84.53mmol, 96.1%)。
1H-NMR(300MHz, CDCl3)δ5.05(s, 2H), 5.18(s, 2H), 7.04(d, 1H, 9.0Hz), 7.12(d, 1H, 12.2Hz), 7.25-7.49(m, 11H)
(2) 4-ベンジロキシ-2-ニトロ-フェノールの合成
50mlのCDCl3中に1,4-ビス-ベンジロキシ-2-ニトロ-ベンゼン (26.52g, 79.08mmol, 1eq.)を含む溶液に、8mlのTFAを加え、室温で40時間撹拌した。反応混合物に水を加え、5N KOH水溶液で中和し、生成した沈殿をろ過し、有機層をK2CO3水溶液で抽出した。沈殿と水層を1つにまとめ、濃塩酸で酸性化し、酢酸エチルで2回抽出した。有機層を1つにまとめ、食塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、ろ過し、濃縮した。得られた粗生成物をメタノールから再結晶させることにより生成すると、4-ベンジロキシ-2-ニトロ-フェノールが黄色固体として得られた(19.609g, 79.96mmol, 101%)。
1H-NMR(300MHz, CDCl3) δ5.05(s, 2H), 7.09(d, 1H, 9.2Hz), 7.25-7.60(m, 6H), 10.34(s, 1H)
(3) 4-ベンジロキシ-1-(2-ブロモ-エトキシ)-2-ニトロ-ベンゼンの合成
50mlのジメチルホルムアミド(DMF)中に4-ベンジロキシ-2-ニトロ-フェノール (6.556g, 26.73mmol, 1eq.)を含む溶液にK2CO3(17g)を加え、15分間撹拌した。15mlのジブロモエタンを加え、70℃で18時間撹拌した。反応混合物に水を加え、エーテルで2回抽出した。1つにまとめた有機層をNaHCO3水溶液及び食塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、ろ過し、濃縮した。得られた粗生成物を、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で精製すると、4-ベンジロキシ-1-(2-ブロモ-エトキシ)-2-ニトロ-ベンゼンが橙色固体として得られた(4.932g, 14.00mmol, 52.4%)。
薄層クロマトグラフィー(TLC)(ヘキサン/酢酸エチル= 4/1): Rf = 0.4
(4) 2-[2-(2-ニトロ-4-ベンジロキシ-フェノキシ)-エトキシ]-3-フルオロ-ニトロベンゼンの合成
50mlのDMF中に3-フルオロ-6-ニトロフェノール (9.13g, 58.11mmol, 1.2eq.)を含む溶液に、K2CO3(34g)を加え、15分間撹拌した。50mlのDMF中に4-ベンジロキシ-1-(2-ブロモ-エトキシ)-2-ニトロ-ベンゼン (16.9g, 47.98mmol, 1eq.)を含む溶液をこれに加え、得られた混合物を70℃で38時間撹拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで2回抽出した。1つにまとめた有機層をNaHCO3水溶液及び食塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、ろ過し、濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=2/1からクロロホルム/酢酸エチル=1/1)で精製すると、2-[2-(2-ニトロ-4-ベンジロキシ-フェノキシ)-エトキシ]-3-フルオロ-ニトロベンゼンが黄色固体として得られた(15.6g, 36.41mmol, 75.9%)。
1H-NMR(300MHz, CDCl3) δ4.49(m, 3H), 4.54(m, 3), 5.07(s, 2H), 6.75-6.81(m, 1H), 6.89-6.96(m, 1H), 7.20(s, 1H), 7.35-7.45(m, 6H), 7.96(m, 1H)
(5) 2-[2-(2-アミノ-4-ベンジロキシ-フェノキシ)-エトキシ]-4-フルオロ-フェニルアミンの合成
2-[2-(2-ニトロ-4-ベンジロキシ-フェノキシ)-エトキシ]-4-フルオロ-ニトロベンゼン (6.68g, 15.59mmol, 1eq.) とPt/C (2g)を150mlの酢酸エチルで溶解し、水素ガス雰囲気下、室温で1日撹拌した。反応混合物をセライトろ過し、濃縮した。得られた粗生成物を再結晶(酢酸エチル)により精製すると、2-[2-(2-アミノ-4-ベンジロキシ-フェノキシ)-エトキシ]-4-フルオロ-フェニルアミンが白色固体として得られた(3.218mg, 8.735mmol, 56.0%)。
1H-NMR(300MHz, CDCl3) δ4.30-4.34(m, 8H), 4.99(s, 2H), 6.31(d, 1H, 8.6Hz), 6.40(s, 1H), 6.50-6.67(m, 3H), 6.77(d, 1H, 8.8Hz), 7.31-7.41(m, 5H),
ESI-MS 369.1(M-H+)
ESI-MS 391.1(M-Na+)
(6) [(5-ベンジロキシ-2-{2-[6-(ビス-メトキシカルボニルメチル-アミノ)-3-フルオロ -フェノキシ]-エトキシ}-フェニル)-メトキシカルボニルメチル-アミノ]-酢酸メチルエステルの合成
100mlのシアン化メチル中に2-[2-(2-アミノ-4-ベンジロキシ-フェノキシ)-エトキシ]-4-フルオロ-フェニルアミン (3.21g, 8.713mmol, 1eq.)を含む溶液に、1,8-ビス-ジメチルアミノ-ナフタレン (10.36g, 48.34mmol, 5.5eq.)、ブロモ酢酸メチル(8.00g, 52.29mmol, 6.0eq.) 及びNaI(7g)を加えた。反応混合物を還流下、4日間撹拌した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、ろ過し、NaHCO3水溶液及び食塩水で洗浄し、ろ過し、濃縮した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=2/1)で精製すると、[(5-ベンジロキシ-2-{2-[6-(ビス-メトキシカルボニルメチル-アミノ)-3-フルオロ-フェノキシ]-エトキシ}-フェニル)-メトキシカルボニルメチル-アミノ]-酢酸メチルエステルが黄色油状物として得られた(5.06g, 7.705mmol, 88.4%)。
ESI-MS 379.1(M-Na+)
(7) [(2-{2-[6-(ビス-メトキシカルボニルメチル-アミノ)-3-フルオロ-フェノキシ]-エトキシ}-5-ヒドロキシ-フェニル)-メトキシカルボニルメチル-アミノ]-酢酸メチルエステルの合成
Pd/C(10%, 200mg)を100mlの酢酸エチル中に[(5-ベンジロキシ -2-{2-[6-(ビス-メトキシカルボニルメチル-アミノ)-3-フルオロ-フェノキシ]-エトキシ}-フェニル)-メトキシカルボニルメチル-アミノ]-酢酸メチルエステル (2.00g, 3.045mmol, 1eq.)を含む溶液に加え、得られた混合物を水素ガス雰囲気下で3日間撹拌した。反応混合物をセライトろ過し、濃縮した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=2/1から酢酸エチル)により精製すると、[(2-{2-[6-(ビス-メトキシカルボニルメチル-アミノ)-3-フルオロ -フェノキシ]-エトキシ}-5-ヒドロキシ -フェニル)-メトキシカルボニルメチル -アミノ]-酢酸メチルエステルが白色固体として得られた(1.496g, 2.640mmol, 85.5%)。
1H-NMR(300MHz, CDCl3) 3.59(s, 2H), 4.11(s, 4H), 4.21(m, 2H), 4.28(m, 2H), 6.34-6.36(m, 2H), 6.58-6.62(m, 3H), 6.72(d, 2H, 9.5Hz), 6.83(m, 1H)

ESI-MS 567.0 (M-H+)
ESI-MS 588.9 (M-Na+)
(8) [(2-{2-[6-(ビス-メトキシカルボニルメチル-アミノ)-3-フルオロ-フェノキシ]-エトキシ}-4-ホルミル-5-ヒドロキシ-フェニル)-メトキシカルボニルメチル-アミノ]-酢酸メチルエステルの合成
2-{2-[6-(ビス-メトキシカルボニルメチル-アミノ)-3-フルオロ-フェノキシ]-エトキシ}-5-ヒドロキシ-フェニル)-メトキシカルボニルメチル-アミノ]-酢酸メチルエステル (1.496g, 2.64mmol)を20mlのDMFに溶解し、0℃に冷却し、2 mlのPOCl3を加え、18時間撹拌した。反応混合物を水で希釈し、酢酸エチルで2回抽出した。1つにまとめた有機層をNaHCO3水溶液及び食塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、ろ過し、濃縮すると[(2-{2-[6-(ビス-メトキシカルボニルメチル-アミノ)-3-フルオロ-フェノキシ]-エトキシ}-4-ホルミル-5-ヒドロキシ-フェニル)-メトキシカルボニルメチル-アミノ]-酢酸メチルエステルが白色固体として得られた(1.324g, 2.226mmol, 84.3%)。
(9) 7-(ビス-メトキシカルボニルメチル-アミノ)-6-{2-[6-(ビス-メトキシカルボニルメチル-アミノ)-3-フルオロ-フェノキシ]-エトキシ}-2-オキソ-2H-クロメン-3-カルボン酸ベンジルエステルの合成
20mlのベンゼン/MeCN (2/1)中に[(2-{2-[6-(ビス-メトキシカルボニルメチル-アミノ)-3-フルオロ-フェノキシ]-エトキシ}-4-ホルミル-5-ヒドロキシ-フェニル)-メトキシカルボニルメチル-アミノ]-酢酸メチルエステル (1.324g, 2.226mmol, 1eq.) を含む溶液に、マロン酸ジベンジルエステル(1.30g, 4.572mmol, 2.1eq.)及びピペリジン(800mg, 9.395mmol, 4.2eq.)を加え、還流下で1日撹拌した。反応混合物を酢酸エチルで2回抽出した。1つにまとめた有機層をNaHCO3水溶液及び食塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、ろ過し、濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/酢酸エチル=10/1)で精製すると、7-(ビス-メトキシカルボニルメチル-アミノ)-6-{2-[6-(ビス-メトキシカルボニルメチル-アミノ)-3-フルオロ-フェノキシ]-エトキシ}-2-オキソ-2H-クロメン-3-カルボン酸ベンジルエステルが黄色固体として得られた(786mg, 1.044mmol, 46.9%)。
(10) 7-(ビス-カルボキシメチル-アミノ)-6-{2-[6-(ビス-カルボキシメチル-アミノ)-3-フルオロ-フェノキシ]-エトキシ}-2-オキソ-2H-クロメン-3-カルボン酸の合成
10mlのエタノール中に7-(ビス-メトキシカルボニルメチル-アミノ)-6-{2-[6-(ビス-メトキシカルボニルメチル-アミノ)-3-フルオロ-フェノキシ]-エトキシ}-2-オキソ-2H-クロメン-3-カルボン酸ベンジルエステル (214.2mg, 0.2845mmol, 1eq.)を含む溶液にPd/C(10%, 100mg)及び10mlのシクロヘキセンを加え、50℃で1日撹拌した。反応混合物をセライトろ過し、濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2/MeOH/AcOH = 20/1/0から20/1/0/1)で精製すると、7-(ビス-カルボキシメチル-アミノ)-6-{2-[6-(ビス-カルボキシメチル-アミノ)-3-フルオロ-フェノキシ]-エトキシ}-2-オキソ-2H-クロメン-3-カルボン酸が黄色固体として得られた(106mg, 0.1599mmol, 56.2%)。
1H-NMR(300MHz, CDCl3) 3.61(s, 6H), 3.64(s, 6H), 4.09(s, 4H), 4.27-4.33(m, 8H), 6.60-6.65(m, 3H), 6.90(s, 1H), 7.08(s, 1H), 8.79(s, 1H)
(11) 7-(ビス-カルボキシメチル-アミノ)-6-{2-[6-(ビス-カルボキシメチル-アミノ)-3-フルオロ-フェノキシ]-エトキシ}-2-オキソ-2H-クロメン-3-カルボン酸の合成
16mlのシアン化メチル中に7-(ビス-メトキシカルボニルメチル-アミノ)-6-{2-[6-(ビス-メトキシカルボニルメチル-アミノ)-3-フルオロ-フェノキシ]-エトキシ}-2-オキソ-2H-クロメン-3-カルボン酸 (43.9mg, 0.06625mmol, 1eq.)を含む溶液に、LiI (600mg)を加え、5日間還流した。反応混合物をろ過し、生じた沈殿をアセトンで数回洗浄し、水に溶かした。得られた水溶液をpH1の塩酸で酸性化し、得られた沈殿を水で数回洗浄すると7-(ビス-カルボキシメチル-アミノ)-6-{2-[6-(ビス-カルボキシメチル-アミノ)-3-フルオロ-フェノキシ]-エトキシ}-2-オキソ-2H-クロメン-3-カルボン酸が黄色固体として得られた(18.3mg, 0.03017mmol, 45.5%)。
1H-NMR(300MHz, CD3OD) 4.00(s, 8H), 4.21(s, 2H), 4.28(s, 2H), 6.13(s, 1H), 6.60-6.70(m, 3H), 7.196(s, 1H), 9.70(s, 1H)

ESI-MS 605.5(M-)
実施例1で製造した上記プローブの、生体内条件に類似した緩衝液中での蛍光スペクトルを測定した。蛍光スペクトルは、マグネシウムイオンもカルシウムイオンも含まない条件下(ブランク)、500mMのマグネシウムイオン単独を含む条件下(ただし緩衝液中のカリウムイオン及びナトリウムイオンは含有)及び100mMのカルシウムイオン単独を含む条件下(ただし緩衝液中のカリウムイオン及びナトリウムイオンは含有)で測定した。詳細は次の通りであった。
緩衝液組成:Hepes 50mM, pH7.0, KCl 130mM, NaCl 20mM, KOHでpHを調整。
pH7.2
プローブ濃度:約5μM
測定イオンはMgCl26H2O、 CaCl22H2Oそれぞれ特級塩。

蛍光測定(三次元スペクトル):F-4500(日立製作所製)
スリット幅(励起):2.5nm
スリット幅(蛍光):2.5nm
ホトマル電圧:700V
スキャン速度:1200nm/min
x軸に励起波長、y軸に蛍光波長、z軸に蛍光強度をプロットして三次元スペクトルを描き、ピークを調べた。結果は次の通りであった。
長波長側の三次元ピークを見ると、
ブランク 励起極大 = 400nm、蛍光極大 = 475nm、蛍光強度 = 5〜6
Caイオン 励起極大 = 400nm、蛍光極大 = 465nm、蛍光強度 = 7〜8
Mgイオン 励起極大 = 420nm、蛍光極大 = 485nm、蛍光強度 = 8〜9
であり、カルシウム応答はブルーシフト(蛍光極大がブランクよりも短波長側にシフト)、マグネシウム応答はレッドシフト(蛍光極大がブランクよりも長波長側にシフト)であった。また、励起315nm付近にもピークが存在し、このピークは、マグネシウム応答では減少、カルシウム応答では増大しているのが分かった。
次に、上記と同じ組成(ただしpHは7.2)の緩衝液中での吸光特性を調べた。マグネシウムイオン濃度が100mM、および0mMの時に、カルシウム濃度を0-1mMまで変化させたときの吸収スペクトル変化を調べた。その結果、 [Mg2+] = 100mMでは、420nm付近の吸収極大が減少し、340nm付近で吸光度の増大が見られた。 [Mg2+] = 0mMでは、400nm付近の吸収極大が減少し、330nm付近で吸光度の増大が見られた。
一方、カルシウム濃度が1mM、および0mMの時に、マグネシウム濃度を0-100mMまで変化させたときの吸収スペクトル変化を調べた。その結果、 [Ca2+] = 0mMでは、吸収極大が400nmから420nmにシフトした。 [Ca2+] = 1mMでは、同様に吸収極大が400nmから420nmにシフトしたが、Ca2+が存在しないときに比べてモル吸光係数が少なかった。
以上の吸収スペクトル変化から、確かにカルシウム応答でブルーシフト、マグネシウム応答でレッドシフトを観測できているといえる。
実施例2において観測された蛍光強度のピークを与える、波長315nm及び400nmの励起光を用い、波長469nmにおける蛍光強度を測定した。標準溶液中のマグネシウムイオン濃度及びカルシウムイオン濃度は下記の通りに種々変えた。実験の詳細は次の通りであった。
蛍光メーター:SPECTRA MAX GEMINI XS(Molecular devices社)
緩衝液:pH7.20 KCl 130mM, NaCl 20mM, HEPES 50mM
Ca2+:1E-7, 3E-7, 1E-6, 3E-6, 1E-5, 3E-5, 1E-4, 3E-4, 1E-3 M
Mg2+:1E-4, 3E-4, 1E-3, 3E-3, 1E-2, 3E-2, 1E-1 M
(なお、例えば、「1E-7」は1 x 10-7を意味する)
プローブ濃度:10μM
溶液はウェルあたり:220μl
結果を図1及び図2に示す。図1は、励起315nm/測定469nmについての結果、図2は励起400nm/測定469nmについての結果を示す。各図のx軸は、マグネシウムイオン濃度の対数、y軸はカルシウムイオン濃度の対数、z軸は測定された蛍光強度である。図2に示されるとおり、励起400nm/測定469nmでは、測定された蛍光強度はカルシウムイオン濃度にほとんど影響されず、マグネシウムイオンのみを捉えて蛍光強度が変化していることがわかる。図1でも、図2ほど明瞭ではないが、測定された蛍光強度は、カルシウムイオン濃度により強く影響されて変化することがわかる。なお、図1及び図2に示される曲面は、検量面として用いることができる。
未知の検体中のマグネシウムイオン及びカルシウムイオンを同時測定する場合には、励起315nm/測定469nm及び励起400nm/測定469nmで蛍光強度を測定し、励起315nm/測定469nmの測定結果を図1の検量面に当てはめて(すなわち、測定された蛍光強度でz軸を切る)その切片の曲線をxy座標上に描き(x軸は、マグネシウムイオン濃度の対数、y軸はカルシウムイオン濃度の対数)、同様に、励起400nm/測定469nmの測定結果を図2の検量面に当てはめてその切片の曲線を上記と同じxy座標上に描き、その交点から検体中のマグネシウムイオン濃度及びカルシウムイオン濃度を求めることができる。
本発明の実施例1で作製したプローブを用い、種々の濃度のマグネシウムイオン及びカルシウムイオンを含む標準溶液について励起315nm/測定469nmで蛍光強度を測定した結果を示す図である。 本発明の実施例1で作製したプローブを用い、種々の濃度のマグネシウムイオン及びカルシウムイオンを含む標準溶液について励起400nm/測定469nmで蛍光強度を測定した結果を示す図である。

Claims (13)

  1. マグネシウムイオンと配位結合するマグネシウムイオン結合領域と、カルシウムイオンと配位結合するカルシウムイオン結合領域とを有する有機色素化合物から成るマグネシウムイオン及びカルシウムイオン同時測定用プローブ。
  2. 前記マグネシウムイオン結合領域が、下記一般式[I]
    (但し、式中、R1は水素原子、金属原子又はエステル形成基、A1は式中の炭素原子1及び2と共に環式構造を形成する原子団を示し、A1を含む環式構造は前記有機色素化合物の一部を構成していてもよい)
    又は下記一般式[II]
    (但し、式中、R2は水素原子、金属原子又はエステル形成基、A2及びA3は互いに独立に式中の炭素原子3及び4と共にそれぞれ環式構造を形成する原子団を示し、炭素原子3と炭素原子4の間の結合は単結合又は二重結合であり、A2を含む環とA3を含む環は縮合しており、該縮合環は前記有機色素化合物又はその一部を構成していてもよい)
    で表される構造を有する請求項1記載のプローブ。
  3. 前記マグネシウムイオン結合領域が、上記一般式[I]で表される構造を有する請求項2記載のプローブ。
  4. 前記マグネシウムイオン結合領域が、下記一般式[III]
    (但し、式中、R1は、一般式[I]中のR1と同義であり、Y1は、-O-、-CH2-又は-NH-、Y2は-CH=又は-N=を表し、式[III]中の環構造を構成する任意の1又は2以上の炭素原子に結合している各水素原子は、マグネシウムイオンとの結合を妨害しない任意の基で置換されていてもよく、Y及びY'を含む6員環は前記有機色素化合物の一部を構成していてもよい)
    で表される構造を有する請求項3記載のプローブ。
  5. 前記マグネシウムイオン結合領域が、下記一般式[IV]
    (但し、式中、R1は、一般式[I]中のR1と同義であり、式[IV]中の環構造を構成する任意の1又は2以上の炭素原子に結合している各水素原子は、マグネシウムイオンとの結合を妨害しない任意の基で置換されていてもよく、式中の縮合環は前記有機色素化合物又はその一部を構成していてもよい)
    で表される構造を有する請求項4記載のプローブ。
  6. 上記一般式[III]又は[IV]における、マグネシウムイオンとの結合を妨害しない任意の基は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、アミノ基、ハロゲン又はニトロ基である請求項4又は5記載のプローブ。
  7. 前記カルシウムイオン結合領域が、下記一般式[V]及び[VI]
    (但し、式中、R3ないしR6は、それぞれ独立に水素原子、金属原子又はエステル形成基を示し、各式中の窒素原子とカルボキシル基又はその塩若しくはエステルとの間の各炭素原子に結合している各水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよい)
    でそれぞれ表される2つの基を含む請求項1ないし5のいずれか1項に記載のプローブ。
  8. 前記カルシウムイオン結合領域が、下記一般式[VII]
    (但し、式中、R3ないしR6は、一般式[V]及び[VI]中のR3ないしR6と同義、A4及びA5は互いに独立に式中の炭素原子5及び6、又は7及び8と共にそれぞれ環式構造を形成する原子団を示し、炭素原子5と炭素原子6の間の結合及び炭素原子7と炭素原子8の間の結合は単結合又は二重結合であり、A4を含む環及びA5を含む環は、それぞれ他の環と縮合していてもよく、また、これらの環は前記有機色素化合物の一部を構成していてもよく、式[VII]中の任意の1又は2以上の炭素原子に結合している各水素原子は、カルシウムイオンとの結合を妨害しない任意の基で置換されていてもよい)
    で表される構造を有する請求項6記載のプローブ。
  9. 前記カルシウムイオン結合領域が、下記一般式[VIII]
    (但し、式中、R3ないしR6は、一般式[V]及び[VI]におけるR3ないしR6と同義、2つのベンゼン環は、それぞれ他の環と縮合していてもよく、また、これらの環は前記有機色素化合物の一部を構成していてもよく、式[VIII]中の任意の1又は2以上の炭素原子に結合している各水素原子は、カルシウムイオンとの結合を妨害しない任意の基で置換されていてもよい)
    で表される構造を有する請求項7記載のプローブ。
  10. 下記一般式[IX]ないし[XII]
    (但し、式中、R1は一般式[I]におけるR1と同義、R3ないしR6は、一般式[V]及び[VI]におけるR3ないしR6と同義、X1は-O-、-S-又は-CH2-を表し、式[IX]中の任意の1又は2以上の炭素原子に結合している各水素原子は、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンとの結合を妨害しない任意の基で置換されていてもよい)
    (但し、式中、R1は一般式[I]におけるR1と同義、R3ないしR6は、一般式[V]及び[VI]におけるR3ないしR6と同義、X1は一般式[IX]におけるX1と同義、X2は=N-又は=CH-を表し、式[X]中の任意の1又は2以上の炭素原子に結合している各水素原子は、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンとの結合を妨害しない任意の基で置換されていてもよい)
    (但し、式中、R1は一般式[I]におけるR1と同義、R3ないしR6は、一般式[V]及び[VI]におけるR3ないしR6と同義、X1は一般式[IX]におけるX1と同義、式[XI]中の任意の1又は2以上の炭素原子に結合している各水素原子は、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンとの結合を妨害しない任意の基で置換されていてもよい)
    (但し、式中、R1は一般式[I]におけるR1と同義、R3ないしR6は、一般式[V]及び[VI]におけるR3ないしR6と同義、X1は一般式[IX]におけるX1と同義、式[XI]中の任意の1又は2以上の炭素原子に結合している各水素原子は、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンとの結合を妨害しない任意の基で置換されていてもよい)
    のいずれかで表される構造を有する請求項1記載のプローブ。
  11. 上記一般式[VII]ないし[XII]における任意の基は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、アミノ基、ハロゲン又はニトロ基である請求項7ないし9のいずれか1項に記載のプローブ。
  12. 下記式[XIII]
    で表される構造を有する請求項9記載のプローブ。
  13. 請求項1ないし11のいずれか1項に記載のプローブと、検体とを接触させ、異なる2種類の波長で励起した場合の蛍光を測定する又は異なる2種類の波長における吸光度を測定することを含む、検体中のマグネシウムイオン及びカルシウムイオンの同時測定方法。

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