以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明に係る液体吐出ヘッドの一例について図1ないし図3を参照して説明する。図1は同液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図、図2は図1の要部拡大断面説明図、図3は同じくノズル配列方向に沿う要部断面説明図である。
この液体吐出ヘッドは、ノズル板1と、流路板2と、振動板部材3と、圧力発生手段である圧電素子11と、溝部材を兼ねる保持基板50と、蓋部材を兼ねる上部流路形成部材60と、共通液室部材を兼ねるフレーム部材70とを備えている。
ノズル板1には、液体を吐出する複数のノズル4が形成されている。ここでは、ノズル4を配列したノズル列を2列配置した構成としているが、1列又は3列以上とすることもできる。
流路板2は、ノズル板1及び振動板部材3とともに、ノズル4が通じる個別液室6、個別液室6に通じる流体抵抗部7、流体抵抗部7が通じる液導入部(通路)8を形成している。なお、個別液室6、流体抵抗部7及び液導入部8で構成される個別流路5、5間は隔壁部5Aによって隔てられている。
そして、個別流路5は、振動板部材3の通路(開口部)9と、保持基板50の通路51と、詳細は後述するフィルタ部90のスリット溝91とを介して、フレーム部材70で形成される共通液室10に通じている。なお、フレーム部材70の共通液室10には外部から供給口部71を介して液体が供給される。
振動板部材3は、個別液室6の壁面の一部をなす変形可能な振動領域(振動板)30を形成する壁面部材である。本実施形態では、振動板部材3と流路板2を併せて流路部材20とする。
この振動板部材3の振動領域30の個別液室6と反対側の面には、振動領域30と一体的に圧電素子11が設けられ、振動領域30と圧電素子11によって圧電アクチュエータ構成している。
圧電素子11は、振動領域30側から下部電極13、圧電層(圧電体)12及び上部電極14を順次積層形成して構成している。この圧電素子11上には絶縁膜21が形成されている。
複数の圧電素子11の共通電極となる下部電極13は、共通電極配線15を介して共通電極電源配線パターン102に接続されている。
また、圧電素子11の個別電極となる上部電極14は、個別電極配線16を介して接続パッド101で駆動IC(ドライバIC)500に接続されている。ドライバIC500は、圧電素子列の列間の領域を覆うように流路部材20上にフリップチップボンディングにより実装されている。
保持基板50は、流路部材20上に接合され、前記通路51とともに、圧電素子11を収容する凹部52と、ドライバIC500を収容する開口部59が形成されている。
このように構成した液体吐出ヘッドにおいては、ドライバIC500から圧電素子11の上部電極14と下部電極13の間に電圧を与えることで、圧電層12が電極積層方向、すなわち電界方向に伸張し、振動領域30と平行な方向に収縮する。
このとき、下部電極13側は振動領域30で拘束されているため、振動領域30の下部電極13側に引っ張り応力が発生し、振動領域30が個別液室6側に撓み、内部の液体を加圧することで、ノズル4から液体が吐出される。
次に、本発明の第1実施形態について図4ないし図7も参照して説明する。図4は同実施形態の説明に供するノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図、図5は同じくノズル配列方向に沿う要部断面説明図である。図6は同じくノズル配列方向と直交する方向に沿う要部断面説明図、図7は同じく溝部材である保持基板の平面説明図、図8は同じく保持基板上に蓋部材である上部流路形成基板を重ねた状態の平面説明図である。なお、保持基板に付した面塗りは表面とその他の部分を区別するためのものであって断面を示しているものではない(以下でも同様である。)。
本実施形態では、共通液室10と個別液室6との間にフィルタ部90が配置されている。
フィルタ部90は、溝部材である保持基板50の共通液室側の面に形成された複数のスリット溝91を有している。スリット溝91はノズル配列方向と直交する方向に沿って形成され、複数のスリット溝91はノズル配列方向に並べて配置されている。
ここで、スリット溝91は、短手方向(ここでは、ノズル配列方向)の幅W1がノズル4の開口径D未満(W1<D)である。ここで、開口径とは、平面視でノズル4が円形状であるときには直径を意味し、円形状以外の形状であるときは開口の最小幅を意味する。
また、スリット溝91は、深さH1もノズル4の開口径D未満(H1<D)としている。スリット溝91の深さH1もノズル4の開口径D未満とすることで、球形から外れた形状、例えば棒状の異物も捕捉できるようになる。
なお、スリット溝91は例えばハーフエッチングで形成することができる。
そして、スリット溝91は、長手方向において、共通液室10に臨む上流側部分91aと、共通液室10に臨んでいない下流側部分91bに分かれている。
すなわち、溝部材としての保持基板50の共通液室10側には、蓋部材としての上部流路形成部材(上部流路形成基板)60を設けている。この上部流路形成部材60には、スリット溝91の上流側部分91aを共通液室10に通じる開口部92が形成され、開口部92以外の部分ではスリット溝91の下流側部分91bを含めて覆っている。
これにより、スリット溝91の上流側部分91aは開口部92を介して共通液室10に臨み、スリット溝91の下流側部分91bは上部流路形成部材60で覆われて共通液室10に臨んでいない構成となり、下流側部分91bが個別液室6に通じている。
このとき、上部流路形成部材60の開口部92の壁面92aがスリット溝91の上流側部分91aと下流側部分91bとを区画する境界となる。なお、境界位置は、スリット溝91の長手方向のいずれかの位置にあればよい。
また、本実施形態では、保持基板50には、各個別流路5(個別液室6)毎にスリット溝91を通じる通路51が形成され、各通路51は隔壁53で隔てられている。そして、1つの通路51には2本のスリット溝91が通じている。
このように構成した本実施形態の作用について図9及び図10も参照して説明する。図9は同説明に供するノズル配列方向と直交する方向に沿う要部断面説明図、図10は同じく平面説明図である。
共通液室10から個別液室6に供給する液体中にノズル径D以上の大きさ(最小長さ)の異物99が含まれているとき、異物99はノズル径Dよりも小さい幅のスリット溝91内に侵入することができない。
このとき、共通液室10内の液体は流れ300で示すように、共通液室10からスリット溝91内に液体が流れ込んで個別液室6側に流れるので、異物99も保持基板50のスリット溝91の開口側の面に沿って下流側に移動する。
そして、スリット溝91の下流側部分91bは上部流路形成部材60によって塞がれているので、図9及び図10に示すように、上部流路形成部材60の開口部92の壁面92aで異物99が堰き止められる。
したがって、スリット溝91の一部はトラップされた異物99によって塞がれるが、異物99がトラップされている部分以外の上流側部分91aは共通液室10に開口したままである。これにより、このスリット溝91のトラップされた異物99より上流側の部分を通じて、個別液室6への液体の供給が継続される。
そして、スリット溝91の共通液室10に開口している部分がすべて異物99で閉塞されることはなく、長期にわたり、共通液室10から個別液室6への供給流路を確保することができるので、リフィル不足による吐出不良を低減することができる。
また、本実施形態では、個別流路5毎に区画された1つの通路51に複数本のスリット溝91が通じているので、そのうちの一部のスリット溝91の全体が閉じられても他のスリット溝91を通じて通路51に液体を供給することができる。
したがって、より長期にわたり、共通液室10から個別液室6への供給流路を確保することができるので、リフィル不足による吐出不良を低減することができる。
なお、個別流路5毎に通路51を設けているので、流路が狭くなって液体の流速が上がり初期充填性が向上する。流速が上がることで液体中に気泡が混入したとしても、吸引や加圧によってノズル側へ気泡を流し易くなるためである。
次に、本発明の第2実施形態について図11も参照して説明する。図11は同実施形態の説明に供するノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図である。
本実施形態では、上部流路形成部材60の開口部92の異物を堰き止める下流側の壁面は共通液室10側に向けて広がる方向の傾斜面92bとしている。
これにより、共通液室10内に流入する液体による対流によって異物が共通液室10側に戻りやすくなり、上部流路形成部材60の開口部92の下流側の壁面でトラップされてスリット溝91を塞ぐ異物を低減できる。
次に、本発明の第3実施形態について図12ないし図14も参照して説明する。図12は同実施形態の説明に供する溝部材である保持基板の平面説明図、図13は同じく保持基板上に蓋部材である上部流路形成基板を重ねた状態の平面説明図、図14は同じく図13のA−A線に相当するノズル配列方向に沿う要部断面説明図である。
本実施形態では、保持基板50の通路51は、前記第1実施形態の隔壁53を設けないで、すべての個別液室6(個別流路5)に通じている。
また、保持基板50にはすべてのスリット溝91を通じる共通通路54を形成し、共通通路54は通路51に通じている。
このように構成したので、図13に示すように、異物99が一部のスリット溝91を集中的に閉塞しても、残りのスリット溝91から液体供給が継続される。これにより、図13及び図14に示すように、閉塞されているスリット溝91に近い個別流路5にも他のスリット溝91から流れ300で示すように液体が供給される。
したがって、長期にわたり、共通液室10から個別液室6への供給流路を確保することができるので、リフィル不足による吐出不良を低減することができる。
次に、本発明の第4実施形態について図15及び図16も参照して説明する。図15は同実施形態の説明に供する溝部材である保持基板の平面説明図、図16は同じく保持基板上に蓋部材である上部流路形成基板を重ねた状態の平面説明図である。
本実施形態では、上記第3実施形態において、上部流路形成部材60で覆われているスリット溝91の下流側部分91bに、すべてのスリット溝91を通じるノズル配列方向に沿った共通通路55、56を形成している。
これにより、前記第3実施形態よりも多くのスリット溝91間での液体の流れが生じる。
次に、本発明の第5実施形態について図17及び図18も参照して説明する。図17は同実施形態の説明に供する溝部材である保持基板の平面説明図、図18は同じく保持基板上に蓋部材である上部流路形成基板を重ねた状態の平面説明図である。
本実施形態では、保持基板50には、所定数(この例では2つ)の個別流路5毎に前記第1実施形態の隔壁53が設けられ、通路51は所定数毎の(この例では2つ)の個別流路5に通じている。
このように構成することで、液体供給を確保しつつ、通路51の大きさを小さくして流速を速め、気泡排出性を向上している。
次に、本発明の第6実施形態について図19も参照して説明する。図19は同実施形態の説明に供するノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図である。
本実施形態では、スリット溝91の上部流路形成部材60で覆われている下流側部分91bに流体抵抗部7を形成している。
すなわち、スリット溝91の深さを浅くして流体抵抗を高くすることで、上部流路形成部材60で覆われている下流側部分91bを流体抵抗部7とすることができる。
例えば、スリット溝91の上部流路形成部材60で覆われている下流側部分91bの長さを300μm、幅を16μm、深さ50μmとすれば、流体抵抗部7として機能させることができる。
これによって、前記第1実施形態の構成と比較して、前記第1実施形態の流体抵抗部7を省略できる分、ノズル配列方向と直交する方向のヘッドチップサイズを短くすることができる。
次に、本発明の第7実施形態について図20ないし図23を参照して説明する。図20は同実施形態の説明に供する溝部材である保持基板の平面説明図、図21は同じく蓋部材である上部流路形成基板の平面説明図、図22は同じく流路板の平面説明図、図23は同じく保持基板上に上部流路形成基板を重ねた状態の平面説明図である。
本実施形態では、ノズル配列方向の両端部に、1又は複数のダミー個別流路81を配置したものである。
そして、保持基板50の通路51及びスリット溝91はダミー個別流路81に通じる領域まで形成し、同様に、上部流路形成部材60の開口部92もダミー個別流路81に通じるスリット溝91が共通液室10に通じる領域まで形成している。
これによって、ダミー個別流路81まで共通液室10を通じさせることができ、ダミー個別流路81による気泡排出を行うことができる。
次に、本発明の第8実施形態について図24を参照して説明する。図24は同実施形態の説明に供する溝部材である保持基板上に蓋部材である上部流路形成基板を重ねた状態の平面説明図である。
本実施形態では、平面視において、上部流路形成部材60の開口部92は、ノズル配列方向の端部側のノズル配列方向と直交する方向の幅を中央部の幅よりも狭くしている。
このように、上部流路形成部材60の開口部92のノズル配列方向の端部を絞ることで、端部における流速を高めて気泡排出性を向上することができる。
次に、本発明の第9実施形態について図25も参照して説明する。図25は同実施形態の説明に供するノズル配列方向と直交する方向に沿う要部断面説明図である。
本実施形態では、前記第1実施形態において、上部流路形成部材60には、スリット溝91の下流側部分91bに対向する部分の内側に、保持基板50との間にすべてのスリット溝91に通じる凹み部61を形成している。
これにより、凹み部61が各スリット溝91相互間を通じる通路となるので、通路51相互間を通じることができ、異物99で一部のスリット溝91が閉塞されても、残りのスリット溝91から供給される液体が各通路51に供給される。
したがって、長期にわたり、共通液室10から個別液室6への供給流路を確保することができるので、リフィル不足による吐出不良を低減することができる。
すなわち、蓋部材としての上部流路形成部材60は、スリット溝91の下流側部分91b全体を閉じている必要はなく、上流側部分91aと下流側部分91bとを区画すればよい。
次に、本発明の第10実施形態について図26及び図27も参照して説明する。図26は同実施形態の説明に供する溝部材である保持基板上に蓋部材である上部流路形成基板を重ねた状態の平面説明図、図27は同実施形態の上部流路形成基板の平面説明図である。なお、図27のハッチング部分は開口部以外の部分(肉がある部分)を示すもので、断面を表すものではない。
である。
本実施形態では、異物を堰き止める開口部92の壁面92aに、平面視で、スリット溝91間に対応する部分に凹部94を形成している。
これにより、異物をスリット溝91間の凹部94に逃がすことができ、異物でスリット溝91の開口が塞がれることを低減できる。
次に、本発明の第11実施形態について図28も参照して説明する。図28は同実施形態の説明に供する溝部材である保持基板上に蓋部材である上部流路形成基板を重ねた状態の平面説明図である。
本実施形態では、異物を堰き止める開口部92の壁面92aを鋸刃状に形成し、平面視で、スリット溝91間に対応する部分が鋸刃先端になる凹部95を形成している。
このように、スリット溝91上方が鋸歯先端になるように形成することで、異物をより効率的にスリット溝91間に逃がすことができ、スリット溝91の開口が塞がれることを低減できる。
次に、本発明の第12実施形態について図29を参照して説明する。図29は同実施形態の説明に供するノズル配列方向と直交する方向に沿う要部断面説明図である。
前記各実施形態では保持基板50が溝部材を兼ねていたのに対し、本実施形態では、スリット溝91を形成する溝部材150を保持基板50と蓋部材である上部流路形成部材60との間に配置している。なお、溝部材150には保持基板50の通路51とスリット溝91を通じる通路151が形成されている。
この場合、本実施形態では、溝部材150には厚み方向に貫通するスリットを形成して、共通液室10と反対側を保持基板50で閉じてスリット溝91を形成しているが、溝部材150だけでスリット溝91を形成する形状とすることもできる。
このように構成すれば、保持基板50の設計自由度が高くなる。
次に、本発明の第13実施形態について図30を参照して説明する。図30は同実施形態の説明に供するノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図である。
前記各実施形態では、フレーム部材70とは別部材の蓋部材である上部流路形成部材60を設けていたのに対して、本実施形態では、フレーム部材70に蓋部材となる蓋部160を一体に形成している。
このように構成すれば、蓋部材とフレーム部材との接合工程を省略でき、組立工数を低減できる。
次に、本発明の第14実施形態について図31ないし図34を参照して説明する。図31は同実施形態の説明に供するノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図、図32は同じく保持基板の共通液室側から見た平面説明図、図33は図32のB−B線に沿う断面説明図、図34は同じく保持基板を振動板部材側から見た平面説明図である。
本実施形態でも、フィルタ部90は、ノズル配列方向に並べて配置された複数のスリット溝91を有している。そして、スリット溝91の一部、ここではスリット溝91の下流側端部は、保持基板50の通路51に臨み、共通液室10と個別液室側である通路51とを通じるフィルタ孔となる貫通穴93を構成している。この貫通穴93のノズル配列方向の幅(短手方向の幅)はスリット溝91と同じ幅としているが、ノズル4の開口径未満であれば、スリット溝91と同じ幅である必要はない。
つまり、本実施形態では、保持基板50には、共通液室10と個別液室6側を通じる通路51の共通液室側を、フィルタ孔となるノズル4の開口径未満の貫通穴93とし、この貫通穴93をスリット溝91に通じさせている。なお、ここでは保持基板50のスリット溝91などを形成しているが、前記第12実施形態と同様に、保持基板50とは別に、スリット溝91及び各スリット溝91毎に分割された貫通穴93を形成する部材(フィルタ部材)を用いることもできる。
なお、本実施形態では、保持基板50の通路51は、ノズル配列方向と直交する方向で1つの長穴形状をなし、すべての個別液室6に通じるとともに、すべての貫通穴93に通じている構成としている。
次に、このように構成した本実施形態の作用について図35及び図36も参照して説明する。図35は同説明に供する断面説明図、図36は同じく平面説明図である。
共通液室10側から個別液室6に供給する液体中にノズル径D以上の大きさ(最小長さ)の異物99が含まれているとき、異物99はノズル径Dよりも小さい幅のスリット溝91及び貫通穴93内に侵入することができない。
このとき、共通液室10内の液体は流れ300で示すように、共通液室10からスリット溝91内に液体が流れ込んで個別液室6側に流れるので、異物99も保持基板50のスリット溝91の開口側の面に沿って下流側に移動する。
そのため、下流側の貫通穴93の共通液室10側に異物99が溜まり、次第に貫通穴93の共通液室10側を塞ぐが、貫通穴93はスリット溝91に通じている。したがって、異物99がトラップされている部分以外のスリット溝91は共通液室10に開口したままである。これにより、貫通穴93及びスリット溝91の異物99がトラップされていない部分を通じて、個別液室6への液体の供給が継続される。
そして、貫通穴93及びスリット溝91の共通液室10に開口している部分がすべて異物99で閉塞されることはなく、長期にわたり、共通液室10から個別液室6への供給流路を確保することができるので、リフィル不足による吐出不良を低減することができる。
また、本実施形態では、貫通穴93はすべての個別液室6に通じる通路51に通じているので、一部のスリット溝91の全体が閉じられても他の貫通穴93やスリット溝91を通じて通路51に液体を供給することができる。
したがって、より長期にわたり、共通液室10から個別液室6への供給流路を確保することができるので、リフィル不足による吐出不良を低減することができる。
次に、本発明の第15実施形態の異なる例について図37を参照して説明する。図37は同実施形態の説明に供する保持基板を図32のC−C線に沿う断面説明図である。
図37(a)に示す第1例では、保持基板50の通路51を個別液室6毎に設けている。そして、1つの通路51に対して1(又は複数)の貫通穴93も配置している。
図37(b)に示す第2例では、保持基板50の通路51を複数の個別液室6毎に設け、そして、1つの通路51に対して複数の貫通穴93を配置している。
本実施形態でも、前記第14実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
次に、前記第14実施形態の保持基板の製造工程の一例について図38ないし図40を参照して説明する。図38は同説明に供する保持基板の共通液室側から見た平面説明図、図39は同じく図32のB−B線に沿う断面説明図、図40は同じく保持基板を振動板部材側から見た平面説明図である。
各図(a)に示すように、保持基板50となる基板600を準備する。そして、図39(b)及び図40(b)に示すように、保持基板50の振動板部材3側の面となる基板600の面から、圧電素子11を配置する凹部52、ドライバIC500を収容する開口部59の一部分59b、通路51の一部分51aをハーフエッチングする。
次いて、図38(c)及び図39(c)に示すように、保持基板50の共通液室10側の面となる基板600の面から、貫通穴93、開口部59の一部分59aをハーフエッチングする。さらに、各図(d)に示すように、スリット溝91をハーフエッチングする。このとき、通路51と貫通穴93とがつながり、開口部59が貫通して開口する。なお、基板600としてシリコンウエハを両面からハーフエッチングする場合には、KOH等によるウエットエッチングが好ましい。
なお、以上の各実施形態は相互に干渉しない範囲で組合せ可能である。
次に、本発明に係る液体吐出ユニットを備える本発明に係る液体を吐出する装置の一例について図41及び図42を参照して説明する。図41は同装置の機構部の側面説明図、図42は同機構部の要部平面説明図である。
この液体を吐出する装置は、シリアル型画像形成装置である。左右の側板421A、421Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド431、432でキャリッジ433を主走査方向(矢印方向)に往復移動可能に保持している。
このキャリッジ433には、本発明に係る液体吐出ヘッド434と液体吐出ヘッド434に液体を供給するヘッドタンク(サブタンクも同義)435とを一体にした2つの本発明に係る液体吐出ユニット430(430A、430B)を搭載している。液体吐出ヘッド434は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向にし、液体吐出方向を下方に向けて装着されている。
ここで、液体吐出ヘッド434は2つのノズル列を有する。そして、一方の液体吐出ユニット430Aの液体吐出ヘッド434の一方のノズル列はブラック(K)の液体を、他方のノズル列はシアン(C)の液体を吐出する。
また、他方の液体吐出ユニット430Bの液体吐出ヘッド434の一方のノズル列はマゼンタ(M)の液体を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液体を吐出する。
なお、ここでは2つの液体吐出ヘッドを使用して4色の液体を吐出する構成としているが、1つの液体吐出ヘッドに4つのノズル列を配置して、1個の液体吐出ヘッドから4色の各色を吐出させることもできる。
また、液体吐出ユニット430A、430Bにおける「一体化」は、液体吐出ヘッド434とヘッドタンク435とが直接、あるいは、フィルタ部材などを介して相互に締結部材や接着などで固定されていること、あるいは、チューブなどで相互に接続されていることなどを意味する。
装置本体側のカートリッジホルダ404には、各色の液体カートリッジであるメインタンク410(410k、410c、201m、210y)が着脱自在に装着される。そして、各液体吐出ユニット430A、430Bのヘッドタンク435には各色の供給チューブ436を介して、送液ポンプを含む送液ユニット424によって各色のメインタンク410から各色の液体が送液される。
一方、給紙トレイ402の用紙積載部(圧板)441上に積載した用紙442を給紙するための給紙部として、用紙積載部441から用紙442を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)443及び給紙コロ443に対向する分離パッド444を備えている。
そして、給送された用紙442を搬送及び案内するガイド445、カウンタローラ446、搬送ガイド部材447、先端加圧コロ449を有する押さえ部材448を備えている。さらに、搬送された用紙442を吸着して液体吐出ユニット430の液体吐出ヘッド434に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト451を備えている。
ここで、搬送ベルト451は、無端状ベルトであり、搬送ローラ452とテンションローラ453との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、ここでは、搬送ベルト451として帯電手段である帯電ローラ456で帯電される静電搬送ベルトを使用している。ただし、搬送ベルト451としてはエアー吸引で吸着する搬送ベルトでもよい。また、搬送手段としては、搬送ベルトを使用しないで、2つのローラによって搬送するものでもよい。
搬送ベルト451を掛け回したテンションローラ453の下流側には、搬送ベルト451から用紙442を分離するための分離爪461と、排紙ローラ462及び排紙コロ463とを備え、排紙ローラ462の下方に排紙トレイ403を備えている。
また、装置本体の背面部には両面ユニット471が着脱自在に装着されている。この両面ユニット471は搬送ベルト451の逆方向回転で戻される用紙442を取り込んで反転させて、再度、カウンタローラ446と搬送ベルト451との間に給紙する。また、この両面ユニット471の上面は手差しトレイ472としている。
さらに、キャリッジ433の走査方向一方側の非印字領域には、液体吐出ユニット430A、430Bの液体吐出ヘッド434のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構481を配置している。
この維持回復機構481には、液体吐出ヘッド434のノズル面をキャピングするための各キャップ482a、482bを備えている。また、維持回復機構481は、ノズル面をワイピングするためのブレード部材483を備えている。また、維持回復機構481は、増粘した液体を排出するために画像形成に寄与しない液体を吐出させる空吐出を行うときの液体を受ける空吐出受け484などを備えている。
また、キャリッジ433の走査方向他方側の非印字領域には、画像形成中などに空吐出を行うときの液体を受ける空吐出受け488を配置している。この空吐出受け488には液体吐出ヘッド434のノズル列方向に沿った開口部489などを備えている。
この画像形成装置においては、給紙トレイ402から用紙442が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙442はガイド445で案内され、搬送ベルト451とカウンタローラ446との間に挟まれて搬送される。更に、用紙442は、先端を搬送ガイド437で案内されて先端加圧コロ449で搬送ベルト451に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
そして、帯電した搬送ベルト451上に用紙442が給送されると、用紙442が搬送ベルト451に吸着され、搬送ベルト451の周回移動によって用紙442が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ433を移動させながら画像信号に応じて液体吐出ユニット430A、430Bの液体吐出ヘッド434を駆動することにより、停止している用紙442に液体を吐出して1行分の画像を記録する。そして、用紙442を所定量搬送後、次の行の画像形成を行う。記録終了信号又は用紙442の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙442を排紙トレイ403に排紙する。
このように、この画像形成装置では、本発明に係る液体吐出ヘッド又は液体吐出ヘッドユニットを備えるので、高画質画像を安定して形成することができる。
本願において、「液体を吐出する装置」とは、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置である。
この「液体を吐出する装置」には、液体を吐出する部分だけでなく、液体が付着する部材の給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
また、「液体を吐出する装置」には、従前の記録装置、印刷装置、画像形成装置、液滴吐出装置、液体吐出装置、処理液塗布装置、立体造形装置などと称される装置そのものが含まれる。
また、「液体を吐出する装置」は、吐出されて付着した液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
なお、上記「液体が付着するもの」とは液体が一時的にでも付着可能なものを意味する。そして、「液体が付着する部材」の用語に代えて、用紙、媒体、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙、粉体層(粉末層)などの代替用語を使用するとき、当該代替用語は、特に限定しない限り、すべての液体が付着する部材を含む意味であるものとする。
また、「液体が付着する部材」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
また、「液体」は、インク、処理液、DNA試料、レジスト、パターン材料、結着剤なども含まれる。
また、「液体を吐出する装置」には、特に限定しない限り、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
また、「液体吐出ユニット」とは、液体を吐出させる部分を一体化したものを意味する。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持機構、主走査移動機構の構成を任意に液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
例えば、「液体吐出ユニット」は、上記実施形態で説明した液体吐出ヘッドとヘッドタンクを一体化したもの、液体吐出ヘッドとキャリッジを一体化したもの、液体吐出ヘッド、ヘッドタンク及びキャリッジを一体化したものが含まれる。
また、これらの液体吐出ユニットにフィルタユニット(前述したフィルタ部材と分配流路を形成したもの)を追加したものが含まれる。
また、液体吐出ヘッドと維持機構を一体化したもの、液体吐出ヘッドと維持機構と主走査移動機構を一体化したもの、液体吐出ヘッド、主走査移動機構、供給機構を一体化したものなども含まれる。
上記主走査移動機構は、キャリッジ、キャリッジを案内するガイド部材、あるいは、これらに駆動源、キャリッジの移動機構を組み合わせて構成される。供給機構は、メインタンクを装着する装填部、チューブと、ヘッドタンクなどで構成される。維持機構は、キャップ、ワイパ部材、キャップに通じる吸引ポンプなどの吸引手段、空吐出受けのいずれか2以上を組み合わせたものである。
さらに、「液体吐出ユニット」には、前記実施形態で説明した機構部から液体が付着するものを搬送する機構を除いた部分で構成されるものを含む。
また、「液体吐出ヘッド」は、使用する圧力発生手段が限定されるものではない。例えば、上記実施形態で説明したような圧電アクチュエータ(積層型圧電素子を使用するものでもよい。)以外にも、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものでもよい。
また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。