JP6633056B2 - 移植片対宿主病(gvhd)または表皮水疱症(eb)のエキソソームによる治療方法 - Google Patents

移植片対宿主病(gvhd)または表皮水疱症(eb)のエキソソームによる治療方法 Download PDF

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Description

本発明は、医薬、細胞生物学、分子生物学および遺伝学の分野に関する。本発明はまた、医薬の分野に関する。
恒常性は基本的に平衡状態であり、定義された物理的パラメータ、例えば、温度、圧力を有する微小環境における基質および生成物の相対的濃度によって決定される化学平衡とは異なる。恒常性において、平衡はそれぞれの生体系について定義され、生物の生存にとって最も適した点である。平衡はまた、様々な生物系がそれを実現および維持するために働く状態である。
恒常性とは、生物、系(例えば、循環器、免疫)、器官、組織または細胞内の安定した内部の生物学的微小環境を意味し得る。微小環境には、細胞の数、状態および種類、細胞外マトリックスの組成、生化学的および生物物理学的パラメータを含めることができる。生体系は、狭義の微小環境内でのみ最適に機能を果たす。定義された微小環境からの逸脱または恒常性の欠如は最適以下の機能を引き起こし、疾患または組織傷害を招く可能性がある。
反対に、疾患または組織傷害は恒常性を攪乱し、修復および回復には恒常性が戻る必要がある。例えば、血液の生理学的pHは7.4であるが、血液緩衝系は、pH7.4で平衡に達し、恒常的pHとして7.4を維持するように進化してきた。この緩衝系は、外的因子によって引き起こされる変化に対して恒常的pHを緩衝するための能力を有する。この能力が限界に達するか、または消耗してしまうと、生理学的pHを維持することはできず、pH恒常性が欠如してアシドーシスまたはアルカローシスのいずれかが引き起こされ悲惨な結果がもたらされる。
もう一つの例は、免疫恒常性である。免疫恒常性の制御は、病原体および病変組織に対して体を防御し、随伴する組織損傷を最小限に抑えるために無くてはならないものである。免疫恒常性の制御異常は、体の防御および自己対非自己認識を損ない、疾患または自己免疫を招く。したがって、恒常性を復活させるか、または維持することは、生物の健康または安寧の維持だけでなく、疾患および傷害の修復および回復にも重要である。
恒常性の制御または維持の主要な担い手は、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子ホルモン、それらの受容体およびシグナルを生理学的結果に変換する酵素などのシグナル伝達分子である。これらのホルモンおよびそれらの受容体の活性は、微小環境に感受性である正または負のフィードバックシステムによって高度に制御される。微小環境に対するこの感受性ならびに正および負のフィードバックシステムは、主に酵素によって支えられている。
酵素は本質的に、遺伝子複製および転写から連絡、代謝および細胞死への全生物学的活性のための中心的存在である。酵素は、恒常性に大きく寄与するように振る舞う。酵素活性は、基質、生成物および補因子の相対的濃度、ならびに温度、pHおよび組織または細胞構造などの外因子に左右され、すなわち、酵素は生化学的および生物物理学的微小環境に感受性であり、それらの平衡状態は徐々に恒常状態に調整される。
平衡状態からの逸脱は、平衡が復活するまで反応を阻害するか、助長するか、または逆行させる。触媒とは異なり、ほとんどの酵素、特に律速酵素は活性化されなければならず、それらの活性は、化学量論的平衡ではなく生理学的平衡を維持するためのフィードバック機構によって高度に制御される。
ここでは、間葉系幹細胞エキソソームなどのエキソソームが、細胞恒常性および免疫恒常性などの恒常性を復活させる能力を示す。
したがって、間葉系幹細胞エキソソームなどのエキソソームは、移植片対宿主病(GVHD)または表皮水疱症(EB)などの、恒常性が攪乱されているか、そうでなければ恒常性に異常をきたしている疾患の治療または予防において特に有用である。
本発明の第1の態様によれば、移植片対宿主病(GVHD)または表皮水疱症(EB)に罹患した個体における恒常性を促進、復活または増強する方法において使用するためのエキソソームを提供する。
恒常性には、免疫恒常性を含めてもよい。恒常性には、免疫応答の維持を含めてもよい。
この方法には、個体に治療有効量のエキソソームを投与することを含めてもよい。
疾患には、移植片対宿主病(GVHD)を含めてもよい。疾患には、急性移植片対宿主病(aGVHD)を含めてもよい。疾患には、慢性移植片対宿主病(cGVHD)を含めてもよい。疾患には、輸血関連移植片対宿主病を含めてもよい。
疾患には表皮水疱症(EB)を含めてもよい。疾患には単純型表皮水疱症を含めてもよい。疾患には接合部型表皮水疱症を含めてもよい。疾患には栄養障害型表皮水疱症を含めてもよい。疾患には致死性棘融解性表皮水疱症を含めてもよい。疾患には後天性表皮水疱症を含めてもよい。
エキソソームには、間葉系幹細胞エキソソームを含めてもよい。エキソソームは、間葉系幹細胞の少なくとも1つの生物学的特性を含んでいてもよい。エキソソームは、間葉系幹細胞馴化培地(MSC−CM)の生物学的活性を含んでいてもよい。
エキソソームは、心保護的活性を含んでいてもよい。エキソソームは、梗塞の大きさを低下させることができる。エキソソームは、心筋虚血および再灌流傷害のマウスまたはブタモデルでアッセイしたとき、梗塞サイズを低下させることができる。
エキソソームは酸化ストレスを低下させることができる。エキソソームは、過酸化水素(H)誘発細胞死のインビトロアッセイでアッセイしたとき、酸化ストレスを低下させることができる。
エキソソームの大きさは、電子顕微鏡によって測定すると50nmから100nmの間であってもよい。
本発明の第2の態様によれば、恒常性の変化によって特徴付けられる疾患の治療または予防の方法において使用するためのエキソソームを提供する。疾患には、移植片対宿主病(GVHD)を含めてもよい。疾患には表皮水疱症(EB)を含めてもよい。
本発明の第3の態様によれば、移植片対宿主病(GVHD)または表皮水疱症(EB)に罹患した個体における恒常性を促進、復活または増強するための医薬品の調製におけるエキソソームの使用を提供する。
本発明の第4の態様として、恒常性の変化によって特徴付けられる疾患の治療または予防のための医薬品の調製におけるエキソソームの使用を提供し、この疾患には移植片対宿主病(GVHD)または表皮水疱症(EB)が含まれる。
本発明の第5の態様によれば、移植片対宿主病(GVHD)または表皮水疱症(EB)に罹患した個体を治療する方法であって、エキソソーム、好ましくは間葉系幹細胞エキソソームを個体に投与することを含む方法を提供する。
本発明の実行は、特に指示しない限り、化学、分子生物学、微生物学、組換えDNAおよび免疫学の従来の技術を使用し、これらは当業者の能力の範囲内である。このような技術は、文献に説明されている。例えば、J.Sambrook,E.F.Fritsch,and T.Maniatis,1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Books 1−3,Cold Spring Harbor Laboratory Press;Ausubel,F.M.et al.(1995 and periodic supplements;Current Protocols in Molecular Biology,ch.9,13,and 16,John Wiley & Sons,New York,N.Y.);B.Roe,J.Crabtree,and A.Kahn,1996,DNA Isolation and Sequencing:Essential Techniques,John Wiley & Sons;J.M.Polak and James O’D.McGee,1990,In Situ Hybridization:Principles and Practice;Oxford University Press;M.J.Gait(Editor),1984,Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach, Irl Press;D.M.J.Lilley and J.E.Dahlberg,1992,Methods of Enzymology:DNA Structure Part A: Synthesis and Physical Analysis of DNA Methods in Enzymology,Academic Press;Using Antibodies:A Laboratory Manual:Portable Protocol NO.I by Edward Harlow,David Lane,Ed Harlow(1999,Cold Spring Harbor Laboratory Press,ISBN 0−87969−544−7);Antibodies:A Laboratory Manual by Ed Harlow(Editor),David Lane(Editor)(1988,Cold Spring Harbor Laboratory Press,ISBN 0−87969−314−2),1855.Ramakrishna Seethala、Prabhavathi B.Fernandesによって編集されたHandbook of Drug Screening(2001,New York,NY,Marcel Dekker,ISBN 0−8247−0562−9);ならびにJane RoskamsおよびLinda Rodgersによって編集されたLab Ref:A Handbook of Recipes,Reagents,and Other Reference Tools for Use at the Bench,2002,Cold Spring Harbor Laboratory,ISBN 0−87969−630−3を参照のこと。これらの一般的テキストはそれぞれ参照により本明細書の一部をなすものとする。
AMP濃度が増加するにつれてエキソソームによるERK1/2リン酸化の誘発が増加することを示した図である。 限定されないAMP濃度下でのERK1/2リン酸化の誘発がエキソソーム濃度の増加によって影響を受けないことを示した図である。 生理食塩水およびエキソソーム処置マウスにおける同種皮膚移植の平均拒絶スコアを示した図である。 生理食塩水およびエキソソーム処置マウスにおける代表的な皮膚移植を示した図である。 Tregレベルが、移植レシピエントにおいてはエキソソームに誘発されて上昇したが、移植していない動物では上昇しなかったことを示した図である。 エキソソームが、免疫学的に攻撃されていない動物におけるTregレベルには影響を及ぼさないことを示した図である。 MSCエキソソーム6.25、25および200μg/mlまたはゼラチン溶液1mg/mlでコーティングした組織培養プレートに単一細胞懸濁液を播種して2時間後および24時間後の細胞接着を示した図である。 処置群によって平均した握力測定値(kg)を示した図である。エラーバーは、平均の標準誤差(SEM)を表す。 細胞またはエキソソーム溶解物のコラーゲン7についてのウェスタンブロット分析を示した図である。レーンは左から右へ、分子量マーカー、コラーゲン7を過剰発現するRDEBヒト皮膚線維芽細胞、RDEBヒト皮膚線維芽細胞、正常ヒト皮膚線維芽細胞およびヒト間葉系幹細胞(MSC)エキソソームである。線維芽細胞溶解物は、初代ヒト皮膚線維芽細胞のコンフルエントなディッシュから培地を除去し、細胞溶解緩衝液をディッシュに添加することによって調製した。MSCエキソソームは既に記載されたように調製した(参考文献:Lai RC,Arslan F,Lee MM,Sze NS,Choo A,Chen TS,et al.Exosome secreted by MSC reduces myocardial ischemia/reperfusion injury.Stem Cell Res.2010;4:214−22)。線維芽細胞およびエキソソーム溶解物は、Abcam製の抗コラーゲンVII抗体[LH7.2](ab6312)を使用した標準免疫ブロッティングアッセイによって分析した。はコラーゲン7を示す。 正常ヒト皮膚線維芽細胞中のコラーゲン7濃度に対してMSCエキソソーム中のコラーゲン7の濃度を推定した図である。MSCエキソソーム溶解物の2倍段階希釈をタンパク質20μgから開始して調製し、線維芽細胞溶解物200μgと並列してローディングした。ブロットは、ローディング対照としてCD81に対するプローブでも行った。 エキソソーム処置した遅延リンパ球輸注(DLI)マウス(移植片対宿主病のモデル)の生存曲線を示した図である。 エキソソーム処置した栄養障害型表皮水疱症の低形質マウスモデルの生存曲線を示した図である。
[詳細な説明]
本開示は、疾患プロセスまたは傷害における恒常性を復活させるため、ならびに組織修復および再生を増強するためのMSCエキソソームの使用について記載する。
エキソソームは、恒常性が正常ではない疾患において恒常性を復活させるために使用することができる。疾患に罹患している患者では、恒常性は攪乱されていたり、影響を受けていたり、不完全であったりすることがある。
異常な恒常性が現れる疾患の例には、移植片対宿主病(GVHD)および表皮水疱症(EB)が含まれる。
したがって、移植片対宿主病(GVHD)および表皮水疱症(EB)の治療または予防における間葉系幹細胞から得られたエキソソームなどのエキソソームの使用を提供する。
本発明者等は、MSCエキソソームが種々の生化学的活性のあるプロテオームを有することを既に示した(参考文献1、参考文献2、参考文献3、参考文献4、参考文献5、参考文献6、国際特許公開第2012/108842号)。タンパク質の多くは、解糖酵素、プロテアソームなどのハウスキーピング酵素であり、多くの系、組織などにおいて恒常性を復活させる能力を有する。
したがって、間葉系幹細胞エキソソームなどのエキソソームは、恒常性を促進、復活または増強するために使用することができる。エキソソームは、例えば、このような必要性において、例えば、移植片対宿主病(GVHD)または表皮水疱症(EB)に罹患している患者において、生物学的環境の細胞恒常性および免疫恒常性を促進、復活または増強するために使用することができる。
間葉系幹細胞エキソソームなどのエキソソームはまた、異常な恒常性または恒常性の欠陥に関連したいかなる疾患も軽減、治療または予防するために使用することができる。
間葉系幹細胞エキソソームなどのエキソソームはまた、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、移植片対宿主病(GVHD)または表皮水疱症(EB)を軽減、治療または予防するために使用することができる。
<細胞恒常性の復活>
発達、成長、傷害または疾患の間に、細胞は迅速に増殖または死滅する。いずれのプロセスも新たな組織の再生、組織再構築、病変のある組織または傷害を受けた組織の除去および組織修復もしくは再生において重要である。
これらの2つのプロセスの相対比は、細胞恒常性を維持して、正常な機能のために各組織および器官における十分な細胞数および適切な細胞混合を確保するために注意深く制御されなければならない。この恒常性は、ストレスまたは外傷の間に、適切な防御および攻撃を開始しさらなる傷害から生物を防御するために、特定の細胞種が増殖または細胞死することによって一時的に攪乱される。攪乱が長引くと生物における正常な生物学的活性が損なわれ、組織修復および回復の欠乏を招く傾向がある。
したがって、ストレスまたは外傷の消散による細胞恒常性の速やかな回復は、修復および回復のために重要な必要条件である。幸運なことに、ほとんどの生物学的系のような細胞恒常性は、傷害の程度に応じて攪乱を調整し、傷害の消散によって恒常性を復活させるために、正または負のフィードバック機構を備えている。
本発明者等はここで、間葉系幹細胞エキソソームが、特に、傷害の程度に対するアポトーシスおよび増殖の調整において、細胞恒常性のより調整のとれた攪乱および復活を増強する能力を有することを示す。
間葉系幹細胞エキソソームは、移植片対宿主病(GVHD)を治療または予防するために使用することができることを示す。
間葉系幹細胞エキソソームは、表皮水疱症(EB)を治療または予防するために使用することができることも示す。
損傷した組織が出す古典的な危険信号は、細胞外ATPである(参考文献7、参考文献8に概括されている)。細胞外ATPは免疫原性細胞死を刺激し(参考文献9、参考文献10)、傷害を受けた、および死に瀕している細胞を除去する。組織外傷(例えば、剪断もしくは機械的ストレス(参考文献11、参考文献12)、化学療法(参考文献9)または低酸素症(参考文献13))の間に、傷害を受けた、および死に瀕している細胞は、ATPおよびADPを細胞外の空間に放出して、傷害を受けた、および死に瀕している細胞を除去する。細胞外ATPおよびADPの効果はそれぞれ1秒未満(参考文献14)および3.2分未満(参考文献15)の短い半減期によって厳しく制限されるが、傷害が持続すると細胞外ATPの蓄積が引き起こされ、過剰なATPシグナル誘発細胞死および健康な隣接細胞の「バイスタンダー効果」がもたらされ得る。
細胞外ATPは、いくつかのエクト酵素によってAMPに迅速に分解され、次いでアデノシンに分解される。細胞外AMPをアデノシンに加水分解することが知られている唯一の酵素は、CD73(BC065937.1)、エクト5’ヌクレオチダーゼである(参考文献16)。酵素活性のあるCD73は、MSCエキソソームの表面上に存在する(参考文献16)。アデノシンはAktおよびErk1/2などの生存促進性のタンパク質キナーゼのリン酸化を活性化して、抗アポトーシス効果を誘発し、心筋損傷を防御することが示されていることから(参考文献17、参考文献18)、MSCエキソソームは死滅促進性のATP分子を、AMPを介して生存促進性のアデノシン分子に変換する能力を有する。
<細胞接着恒常性>
多細胞組織および生物の構造完全性、組織化およびパターン形成は、細胞間および細胞と細胞外マトリックス(ECM)の間の接着に左右される。これらの接着は、細胞接着分子(CAM)によって媒介される。
CAMは主に、細胞表面に位置する糖タンパク質である。これらは、それ以外のCAMまたはECM成分との複合体および接合部を形成することによって細胞接着を媒介し、細胞と細胞、細胞とECMおよびECMと細胞骨格を結合させる。細胞接着は、多細胞組織、器官または生物内の細胞を配置し、組織化するために必要な構造支持をもたらす。多細胞体のこの構造組織化および完全性は本質的に、組織機能、形態形成、分化、修復および恒常性のための生化学的および生物物理学的シグナルを伝達する秩序だった経路である(Frantz、Stewart et al. 2010)。
しかし、多細胞組織、器官または生物の構造完全性は不変ではない。生きている生物における活性の非常に動的な流れに対応するため、適切な細胞遊走、細胞形状の変化および再配置を可能にするように、細胞接着を空間的および時間的の両面から協調させて制御しなければならない。
このような制御が細胞接着恒常性を攪乱することは避けられず、細胞接着恒常性の復活または維持は多細胞組織または生物の正常な機能に必須である。ECMまたはCAMにおいて遺伝または傷害によって誘発された欠陥のために細胞接着恒常性を復活または維持することができないと、多細胞組織の構造完全性、組織化およびパターン形成、したがってその正常な機能が極度に損なわれるだろう。
<細胞外マトリックス(ECM)>
ECMは本質的に、細胞によって分泌される細胞生成物複合体である。本質的に、水、タンパク質および多糖類から構成される。ECMの正確な組成および空間上の位置関係は、組織特異的で微小環境の変化に高感受性である。ECMは2つの基本的構造、上皮細胞および内皮細胞に固定支持をもたらす基底膜または細胞間の空間を満たす間質マトリックス中に存在する。両構造は、接着性糖タンパク質およびプロテオグリカンを結合するエラスチンおよびフィブリリンの割合が変化したコラーゲン足場を有する。
細胞上に存在するCAMとの相互作用によってECMは細胞の構造支持をもたらす。ECMは微小環境の変化または侵襲に対して細胞を防御するための物理的緩衝としても役立つ。より重要なのは、ECM成分は、増殖因子およびシグナル受容体と結合し、シグナル伝達において重要な役割を果たすことである(Kim,Turnbull et al.2011)。主なECM成分は、グリコサミノグリカン(GAG)および糖タンパク質である。
最も一般的なGAGは、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸およびヒアルロン酸である。ヒアルロン酸以外、ほとんどのGAGは通常、ECMタンパク質または細胞表面タンパク質に結合してプロテオグリカンを形成する。ヘパラン硫酸はタンパク質と結合してプロテオグリカンを形成する直鎖状多糖である。ECMでは、ヘパラン硫酸は主に基底膜ならびにパールカン、アグリンおよびコラーゲンXVIII等の多ドメインタンパク質に結合する。
コンドロイチン硫酸は、軟骨、腱、靱帯および大動脈壁などの高度の引っ張り強さを備えた組織において重要で、一方ケラタン硫酸は角膜、軟骨、骨において見出される。ヒアルロン酸は、天然に知られている最も親水性の分子の1つで、その主な機能は組織水和および水分輸送を制御することである。ヒアルロン酸はほとんどの組織において見出され、関節滑膜および目のガラス体液などの液体結合組織において最も豊富である。
ECMにおける主要な糖タンパク質は、2種類の機能型、構造(コラーゲン、エラスチン)および接着(例えば、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、トロンボスポンジンなど)からなる。
コラーゲンは、体内で最も豊富なタンパク質であり、ECMにおいても最も豊富である(Patino,Neiders et al.2002;Ricard−Blum 2011)。コラーゲンスーパーファミリーには、43個の遺伝子によってコードされる28種類のコラーゲンがある(Chan,Poon et al.2008)。このスーパーファミリーの多様性は代替可能なプロモーターまたはスプライシングおよび翻訳後修飾の使用によってさらに拡大する。コラーゲンの種類の組織分布も同様に多様で、I型などのいくつかのコラーゲンは遍在的に分布しているが、VII型は皮膚の基底膜に限定される。コラーゲンは、組織の組織化および形状に機械的な支持を提供する構造タンパク質である。コラーゲンはまた、細胞受容体との相互作用によって細胞増殖、遊走および分化などの細胞機能に対して生物学的効果を発揮する。いくつかのコラーゲンは組織分布が制限されているので、これらの生物学的効果は組織特異的である。
エラスチンは、機械的な支持を提供するコラーゲンとは異なり、組織が伸びたり、元の状態に戻ったりすることができる弾性を付与する。これらは血管、肺、皮膚および靱帯に非常に豊富に見出される。エラスチンは、ELN遺伝子によってコードされ、トロポエラスチンとしてフィブリリン線維上に沈着し、エネルギーを投入することなく長期に亘る変形および受動収縮を支持することができる弾性線維を形成する(Kielty,Sherratt et al.2002)。
ECMのその他の非構造成分は、フィブロネクチン、ラミニン、フィブリノーゲン、フィブリリン、フィビュリン、テネイシンおよびトロンボスポンジンである(Halper and Kjaer 2014)。これらのタンパク質のほとんどは、ECMの構造完全性に関与するだけでなく、細胞シグナル伝達、細胞運動性、形状および極性などの細胞活性を調節する。
<細胞接着分子(CAM)>
CAMは、細胞膜上に存在する糖タンパク質である。CAMは隣接する細胞上のその他のCAMまたは細胞外マトリックスのタンパク質と相互作用して、細胞と細胞、細胞とECMまたはECMと細胞骨格を結合する(Edelman and Crossin 1991)。そうする中で、CAMは組織構造を強化し、細胞間の細胞または細胞への微小環境シグナルの伝達を容易にする(Cavallaro and Dejana 2011)。
5つの主要なCAMファミリー、カドヘリンスーパーファミリー、セレクチン、免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリー、シンデカンおよびインテグリンがある。ECMとのCAMの相互作用は、分化、形態形成、細胞増殖、増殖などを含む多様な生物学的プロセスのために重要である。
カドヘリンは、カルシウム依存性膜貫通糖タンパク質である。カドヘリンは、一般的に細胞−細胞接着または細胞−細胞認識を媒介するカルシウム依存性膜貫通タンパク質である。カドヘリンは、保存されたカルシウム結合アミノ酸残基を有する2つの連続したカドヘリン反復を有する(http://www.genenames.org/genefamily/cdhsf.php)。カドヘリンスーパーファミリーは、系統学的に3つの主要なファミリー、主要なカドヘリンファミリー、プロトカドヘリンファミリーおよびカドヘリン関連ファミリーに分けることができる(http://www.genenames.org/genefamily/cdhsf.php)。このファミリーの構成要素は、N−カドヘリン、P−カドヘリン、E カドヘリンおよびL−CAMである。
インテグリンはまた、免疫グロブリンおよびカドヘリンスーパーファミリーとは異なり、ECM分子およびその他の細胞表面タンパク質の両方に結合する膜貫通糖タンパク質である。これらはまた、細胞骨格とECMタンパク質とを結合させる。
シンデカンは、多種多様な細胞内および細胞外タンパク質および増殖因子にも結合することができる膜貫通ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)である(Tkachenko,Rhodes et al.2005)。インテグリンが主にECM分子と相互作用する一方、セレクチンおよびその他のCAMは細胞−細胞相互作用に関与し、シンデカンはECM、細胞表面分子および可溶性リガンドと相互作用することができる。
セレクチンは、Ca2+依存性、炭水化物結合膜貫通タンパク質の1ファミリーである。3つのセレクチン、すなわち、内皮細胞中のE−セレクチン、白血球中のL−セレクチンならびに血小板および内皮細胞中のP−セレクチンがある。これらは組織炎症分散を媒介し、多くの病態生理学的プロセスにおいて重要な役割を担う。
CAMのIgスーパーファミリーは、その他のCAMと異なり、カルシウムに依存しない。これらは典型的にインテグリンまたはその他のIgスーパーファミリーCAMに結合する。CAMのいくつかの例は、細胞間接着分子(ICAM)、血管細胞接着分子(VCAM−1)、血小板内皮細胞接着分子(PECAM−1)および神経細胞接着分子(NCAM)である。CAMのIgスーパーファミリーの主要な役割は、一般的に免疫応答および炎症応答を媒介することが報告されている。
<細胞接着恒常性の重要性>
細胞接着は、多細胞生物における基本的な生理学的機能であり、生きている生物における活性の動的な流れを支える構造的支持となる。
これらの活性を効果的に支持するためには、細胞接着の状態は、細胞遊走、細胞形状の変化および細胞の再配置のために必要な、程度の異なる接着性を達成するように、ECMおよびCAM相互作用の配置において空間的にも時間的にも同様に動的でなければならない。
このように動的であるが生理学的なECMおよびCAM相互作用ではあるが、組織恒常性および正常な組織機能を復活させるためには、それらの相互作用と一緒に、適時において細胞接着恒常状態が戻る必要がある。これがうまくいかないと細胞接着恒常性が失われ、組織機能が損なわれる。
<ECMに関連した疾患>
多細胞組織および生物においてECMおよびCAMが非常に重要であることは、ECMまたはCAMの一見わずかな変化によって引き起こされる数多くの重篤な疾患によって最も良く実証される(Jarvelainen,Sainio et al.2009)。
ECM関連疾患には、遺伝性疾患だけでなく後天性疾患も含まれる。疾患のリストには、アルツハイマー病、循環器疾患(例えば、腹部大動脈瘤、大動脈瘤、アテローム性動脈硬化、アテローム性動脈硬化および再狭窄、遺伝性血管障害、高血圧症、高血圧性心疾患、大動脈弁上狭窄)、眼疾患(例えば、常染色体劣性遺伝網膜硝子体ジストロフィー、扁平角膜、角膜内皮ジストロフィー、先天性角膜実質ジストロフィー、フックス内皮ジストロフィー近視、甲状腺眼症状、びらん性硝子体網膜症およびワーグナー病、先天性停止性夜盲症、円錐角膜、Knobloch症候群、黄斑変性疾患、スティックラー症候群I型およびII型、ヴァイユ−マルサゲーニ症候群)、骨、軟骨および関節の疾患(例えば、軟骨無発生症、変形性関節症、骨形成不完全症、耳脊椎巨大骨端異形成症(otospondylomegaepiphyseal dysplasia)、脊椎骨端異形成症、椎間板変性症、突発性骨粗鬆症、分節異常骨異形成症、クニースト骨異形成症、マルファン症候群、マーシャル症候群、多発性骨端異形成症、先天性拘縮性クモ指症、ショイエルマン病、シュプリンツェン−ゴールドバーグ症候群、スティックラー症候群I型、II型およびIII型、合多指症、腱障害、偽性軟骨無形成症、多発性骨端異形成症、ヴァイユ−マルサゲーニ症候群)、がんおよびがんの進行(例えば、肝細胞がん、結腸腫瘍形成、胃がん、腫瘍形成および転移、乳がん、T細胞白血病、前立腺がん)、皮膚弛緩症、糖尿病合併症(例えば、腎障害、網膜症)、エーラース−ダンロス症候群(古典型および血管型)、表皮水疱症(例えば、後天性EB、栄養障害型EB、非ヘルリッツ接合部型EB)、線維性疾患(慢性腎疾患、肝線維症、突発性肺線維症、肝硬変)、肝炎、炎症性腸疾患、筋肉障害(例えば、筋硬化症、ミオパシー、先天性筋ジストロフィー、横紋筋肉腫、シュワルツ−ヤンペル症候群)、肺疾患(例えば、肺気腫、閉塞性細気管支炎症候群)、腎疾患(例えば、糸球体症、糸球体硬化症、アルポート症候群、コラーゲン線維性糸球体腎症)、ウィリアムス−ボイレン症候群が含まれる。
CAM関連疾患には、アルツハイマー病、多発性硬化症および統合失調症(Gnanapavan and Giovannoni 2013)、アテローム性動脈硬化、冠動脈血栓症、ウイルス性心筋炎、心筋症、再灌流傷害、心筋梗塞、同種移植脈管障害、炎症性心疾患(Jang,Lincoff et al.1994;Hillis and Flapan 1998;Golias,Tsoutsi et al.2007)、炎症性疾患、例えば、IBD、クローン病、セリアック病(Mishra,Mishra et al.1993;Nakamura,Ohtani et al.1993;Schuermann,Aber−Bishop et al.1993;Villanacci,Facchetti et al.1993;Schiller and Elinder 1999)、ケロイドおよび強皮症などの線維性皮膚障害(Halper and Kjaer 2014)、がんおよび転移(Johnson 1991;Johnson 1992)、神経内分泌がん(Deichmann,Kurzen et al.2003)、乾癬(Cagnoni,Ghersetich et al.1994)、炎症性筋疾患およびデュシェンヌ型ジストロフィー(De Bleecker and Engel 1994)、多発性硬化症(Vora,Kidd et al.1997;Ukkonen,Wu et al.2007)、肺炎症(Wegner,Gundel et al.1992;Hellewell 1993)などの多くのECM関連疾患が含まれる。
<細胞接着恒常性を復活させるための治療戦略>
細胞接着恒常性は、活性が基質および生成物の相対的濃度に依存する酵素および酵素阻害剤の複雑なネットワークによって維持される(Lu,Takai et al.2011)。
可逆性酵素反応において、基質および生成物の相対的濃度の不平衡は、その微小環境の平衡に都合のよい方向へ酵素活性を増大させる。一旦平行に達すると、酵素活性は停止する。
したがって、十分な基質の存在下で、酵素は基質および生成物の相対的濃度の平衡を復活させる生来の能力によって恒常性を媒介することができる。傷害または遺伝的欠陥によって恒常性が実現できないか、または喪失する場合、鍵となる重要な基質または酵素を一時的に補充すれば、一時的ではあるが、慢性的な不平衡状態を中断し、恒常性を内在的に回復する絶好の機会をもたらすために十分な長さの恒常性を復活させることができる。
細胞接着恒常性を復活させることができる治療薬候補は、間葉系幹細胞(MSC)である。MSCは、造血幹細胞、神経前駆細胞、心筋幹細胞などの幹細胞の生着を促進する幹細胞ニッチを生成し、調節することが知られている((Gotts and Matthay 2012)によって概括されている)。幹細胞ニッチは本質的に、幹細胞を支持する物理的および生物学的に明確化された微小環境である(Schofield 1978)。
ニッチの主要な機能は、安定した一定の、すなわち、恒常的状態を実現するために変数が調整された、制御された局所的微小環境内部に幹細胞を留めることである。MSCはパラ分泌因子の分泌によって生物学的効果を発揮するという報告がますます増えているので、MSCはまた、パラ分泌因子によって幹細胞ニッチの微小環境を調節することが論理的且つ直線的に推定される。
しかし、MSCによって分泌されることが知られている分子候補でMSCのニッチ調節効果を再現することはできなかった。本発明者等は以前に、MSCパラ分泌における活性因子はエキソソームであることを提案したことがあり、MSCエキソソームは細胞恒常性および免疫恒常性を復活させることができることも提案する。
MSCエキソソームは、細胞接着恒常性も復活させることができることを実証する。本発明者等は以前に、質量分析を使用して、MSCエキソソームのプロテオームはMMPファミリーの4つの構成要素、MMP1、2、3および10を有し、MMPの3つの組織阻害剤、TIMP1、2および3が存在することを示した。MSCエキソソームのプロテオームは報告されている(国際特許公開第2012/108842号、www.exocarta.comに寄託された)。MMP1および2はゼラチナーゼであり、MMP3および10はコラゲナーゼである(Clark,Swingler et al.2008;Bellayr,Mu et al.2009)。
MSCエキソソーム中でのそれらの存在および酵素活性は、酵素アッセイ法および免疫ブロッティングによって確認された(国際特許第2012/108842号に記載された通り)。TIMP1、2および3の存在も免疫ブロッティングによって確認された。これらに加えて、MSCエキソソームは多くのECMタンパク質およびCAM、ECM修飾酵素を保有した(表D1)。
ともに、これらのタンパク質は、残存する恒常性機構を補うために主要な基質および酵素を提供することによって、MSCエキソソームが細胞接着恒常性を復活させることができることを示している。ニッチ内の酵素的プロセスが平衡に達するとき、恒常性は実現する。
<移植片対宿主病(GVHD)>
間葉系幹細胞エキソソームなどのエキソソームは、以下に記載した移植片対宿主病の種類のいずれかを含む移植片対宿主病(GVHD)を治療または予防するために使用することができる。
[以下のテキストは、2015年3月10日07:46に検索したhttp://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Graft−versus−host_disease&oldid=649503786のフリー百科事典ウィキペディア中の移植片対宿主病(2015年3月2日)からの抜粋である]
移植片対宿主病としても知られている移植片対宿主病(GVHD)は、同種組織移植後に一般的な合併症である。通常、幹細胞または骨髄移植に随伴するが、この用語はその他の形態の組織移植にも適用される。組織(移植片)中の免疫細胞(白血球)は、レシピエント(宿主)を「外来物質」として認識する。移植した免疫細胞は、次に宿主の体細胞を攻撃する。使用した血液製剤が照射されていないか、または承認された病原体減少システムで処置されていないならば、GVHDは輸血後にも生じ得る。
<移植片対宿主病の原因>
Billingham基準下では、GVHDが生じるために3つの基準が満たされなければならない(Spiryda,L;Laufer,MR;Soiffer,RJ;Antin,JA(2003)“Graft−versus−host disease of the vulva and/or vagina:Diagnosis and treatment”Biology of Blood and Marrow Transplantation 9(12):760〜5)。
・生存可能な機能的免疫細胞を有する免疫適格移植片を投与する。
・レシピエントは、免疫学的に異種であり組織不適合性である。
・レシピエントは免疫無防備状態で、したがって移植した細胞を破壊したり、不活性化したりすることができない。
骨髄移植後、夾雑物として、または宿主に意図的に導入された移植片中に存在するT細胞は、宿主組織を抗原性外来物として感知した後、移植レシピエントの組織を攻撃する。T細胞は、TNF−αおよびインターフェロン−ガンマ(IFNγ)を含むサイトカインを過剰に産生する。多様な宿主抗原、中でもヒト白血球抗原(HLA)は、移植片宿主病を惹起し得る。しかし、移植片対宿主病は、HLAが同一の同胞がドナーであっても起こり得る。HLAが同一な同胞またはHLAは同一であるが血縁ではないドナーは、主要組織適合抗原複合体(MHC)分子によってドナーのT細胞に提示され得る遺伝的に異なるタンパク質(マイナー組織適合抗原と呼ばれる)を有することが多く、ドナーのT細胞はこれらの抗原を外来物と見なし免疫応答を開始する。
ドナーT細胞は、移植片対宿主病のエフェクター細胞としては望ましくないが、骨髄移植片の拒絶(宿主対移植片)からレシピエントの残存する免疫系を防御することによって生着のために有益である。さらに、骨髄移植はがん、主に白血病の治療に頻繁に使用されるので、ドナーT細胞は有益な移植片対腫瘍効果を有することがわかった。同種骨髄移植に関する現在の研究の多くは、所望する移植片対腫瘍効果からT細胞生理の所望しない移植片対宿主病の側面を分離する取り組みに関連する。
<移植片対宿主病の種類>
臨床の場では、移植片対宿主病は急性型および慢性型に分かれる。
急性または劇症性の疾患(aGVHD)は通常、移植後最初の100日以内に認められ、随伴する罹患率および死亡率のため移植にとって大きな難題である(Goker,H;Haznedaroglu,IC;Chao,NJ(2001).“Acute graft−vs−host disease Pathobiology and management”.Experimental Hematology 29(3):259〜77)。
慢性型の移植片対宿主病(cGVHD)は通常、100日後に生じる。cGVHDの中等度から重症までの出現は、長期生存に悪影響を及ぼす(Lee,Stephanie J.;Vogelsang,Georgia;Flowers,Mary E.D.(2003).“Chronic graft−versus−host disease”.Biology of Blood and Marrow Transplantation 9(4):215〜33)。
<移植片対宿主病の臨床所見>
古典的な意味では、急性移植片対宿主病の特徴は、肝臓、皮膚(発疹)、粘膜および胃腸管への選択的損傷である。新しい研究では、その他の移植片対宿主病標的器官には、免疫系(造血系、例えば、骨髄および胸腺)自体および免疫媒介間質性肺炎の形態の肺が含まれることが示された。バイオマーカーを使用して、皮膚におけるエラフィンなどのGVHDの特定の原因を同定することができる(Paczesny,S.;Levine,J.E.;Hogan,J.;Crawford,J.;Braun,T.M.;Wang,H.;Faca,V.;Zhang,Q. et al.(2009).“Elafin is a Biomarker of Graft Versus Host Disease of the Skin”.Biology of Blood and Marrow Transplantation 15(2):13〜4)。
慢性移植片対宿主病はまた、上記器官を攻撃するが、長期に亘って結合組織および外分泌腺の損傷を引き起こすこともあり得る。
胃腸管の急性GVHDは、重度の小腸炎、粘膜の脱落、重度の下痢、腹痛、悪心および嘔吐を引き起こし得る。これは典型的に小腸の生検によって診断される。肝臓GVHDは、急性患者のビリルビンレベルによって測定される。皮膚GVHDは、時々レースのようなパターンのびまん性斑状丘疹状皮疹を引き起こす。
膣の粘膜損傷は重度の疼痛および瘢痕を引き起こし、急性および慢性両方のGVHDにおいて出現する。これは、性交不能を引き起こし得る[1]。
急性GVHDは以下の通り、全体的なグレード(皮膚−肝臓−消化管)および各器官について段階付けられ、個々に低度1から高度4まで段階付けられる。GVHDグレードIVの患者は通常予後不良である。GVHDが重症で、コントロールするためにステロイドおよびさらなる薬剤を必要とする強い免疫抑制が必要である場合、患者は免疫抑制の結果として重度の感染を発症することがあり、感染症により死亡することがある。
口腔では、慢性移植片対宿主病は扁平苔癬として現れ、古典的な口腔扁平苔癬と比較して口腔の扁平上皮がんに悪性化する危険性が高い。移植片対宿主病関連口腔がんは、非造血幹細胞移植患者における口腔がんと比較してより悪性度が高くて予後不良である(Elad,Sharon;Zadik,Yehuda;Zeevi,Itai;Miyazaki,Akihiro;De Figueiredo,Maria A.Z.;Or,Reuven(2010).“Oral Cancer in Patients After Hematopoietic Stem−Cell Transplantation:Long−Term Follow−Up Suggests an Increased Risk for Recurrence”.Transplantation 90(11):1243−4)。
<輸血関連移植片対宿主病>
この種のGVHDは、非照射血液の免疫不全レシピエントへの輸血に付随する。HLAハプロタイプが血液ドナーではホモ接合体でレシピエントではヘテロ接合体である状況でも起こり得る。骨髄リンパ系組織の関与によって高い死亡率(80〜90%)が伴うが、臨床所見は骨髄移植から生じるGVHDに類似している。輸血関連GVHDは現代医学では稀である。内部の白血球細胞(リンパ球を含む)を不活性化するために血液製剤を制御照射することによってほとんど完全に防御することができる(Moroff,G;Leitman,SF;Luban,NL(1997).“Principles of blood irradiation,dose validation,and quality control”.Transfusion 37(10):1084−92)。
<胸腺移植における移植片対宿主病>
胸腺移植は、自己抗原を認識するためにネガティブ選択を受けるとき、レシピエント胸腺はモデルとしてドナー胸腺細胞を使用し、したがって、レシピエント胸腺は体の残部の自身の構造をまだ非自己と取り違えるので、特殊な種類のGVHDを引き起こし得ると言われている。直接的には、GVHDの原因となる移植片自体の細胞ではないが、レシピエントT細胞をドナーT細胞のように作用させる移植片中の細胞なので、これはどちらかといえば間接的なGVHDである。異種間の胸腺の異種移植実験における多臓器自己免疫と見なすことができる(Xia,G;Goebels,J;Rutgeerts,O;Vandeputte,M;Waer,M(2001).“Transplantation tolerance and autoimmunity after xenogeneic thymus transplantation”.Journal of immunology 166(3):1843−54)。
自己免疫疾患は、ヒトの同種胸腺移植後に頻繁に生じる合併症で、移植後1年を超えると患者の42%に認められる(Markert,M.Louise;Devlin,Blythe H.;McCarthy,Elizabeth A.;Chinn,Ivan K.;Hale,Laura P.(2008).“Thymus Transplantation”.In Lavini,Corrado;Moran,Cesar A.;Morandi,Uliano et al.Thymus Gland Pathology:Clinical,Diagnostic,and Therapeutic Features.pp.255−67)。
しかし、これは、この適応症自体、すなわち、完全なディ・ジョージ症候群が自己免疫疾患の危険性を増大させるという事実によって部分的に説明される(Markert,M.L.;Devlin,B.H.;Alexieff,M.J.;Li,J.;McCarthy,E.A.;Gupton,S.E.;Chinn,I.K.;Hale,L.P. et al.(2007).“Review of 54 patients with complete DiGeorge anomaly enrolled in protocols for thymus transplantation: Outcome of 44 consecutive transplants”.Blood 109巻(10):4539−47)。
<移植片対宿主病の予防>
DNAをベースにした組織適合検査は、ドナーと移植患者の間のより正確なHLA適合を可能にし、GVHDの発生率および重症度を低下させて、長期生存を増加させることがわかった(Morishima,Y.;Sasazuki,T;Inoko,H;Juji,T;Akaza,T;Yamamoto,K;Ishikawa,Y;Kato,S et al.(2002).“The clinical significance of human leukocyte antigen (HLA)allele compatibility in patients receiving a marrow transplant from serologically HLA−A、HLA−B,and HLA−DR matched unrelated donors”.Blood 99(11):4200−6)。
臍帯血(UCB)のT細胞は、本来免疫学的未熟であり(Grewal,S.S.;Barker,JN;Davies,SM;Wagner,JE(2003).“Unrelated donor hematopoietic cell transplantation:Marrow or umbilical cord blood?”.Blood 101(11):4233−44)、非血縁ドナー移植におけるUCB幹細胞の使用は、GVHDの発生率および重症度を低下させた(Laughlin,Mary J.;Barker,Juliet;Bambach,Barbara;Koc,Omer N.;Rizzieri,David A.;Wagner,John E.;Gerson,Stanton L.;Lazarus,Hillard M. et al.(2001).“Hematopoietic Engraftment and Survival in Adult Recipients of Umbilical−Cord Blood from Unrelated Donors”.New England Journal of Medicine 344(24):1815−22)。
肝由来造血幹細胞の骨髄再構成における使用は、最近の研究によれば最も高い成功率を収めている。
メトトレキセート、シクロスポリンおよびタクロリムスはGVHD予防のために使用される一般的な薬物である。移植片対宿主病は、T細胞除去骨髄移植を実施することによってほとんど回避することができる。しかし、これらの種類の移植は、移植片対腫瘍効果の減少、生着不全の危険性の増大またはがんの再発(Hale,G;Waldmann,H(1994).“Control of graft−versus−host disease and graft rejection by T cell depletion of donor and recipient with Campath−1 antibodies.Results of matched sibling transplants for malignant diseases”.Bone marrow transplantation 13(5):597−611)および患者がウイルス、細菌および真菌感染によりかかりやすくなる全身免疫不全という代償を払う。多施設における研究では、3年健存率はT細胞除去およびT細胞非除去移植の間で違いはなかった(Wagner,John E;Thompson,John S;Carter,Shelly L;Kernan,Nancy A;Unrelated Donor Marrow Transplantation Trial(2005).“Effect of graft−versus−host disease prophylaxis on 3−year disease−free survival in recipients of unrelated donor bone marrow(T−cell Depletion Trial):A multi−centre,randomised phase II−III trial”.The Lancet 366(9487):733−41)。
<移植片対宿主病の治療>
静脈内投与したプレドニゾンなどの糖質コルチコイドは、急性GVHDおよび慢性GVHDの標準的な治療である(Menillo,S A;Goldberg,S L;McKiernan,P;Pecora,A L(2001).“Intraoral psoralen ultraviolet a irradiation(PUVA) treatment of refractory oral chronic graft−versus−host disease following allogeneic stem cell transplantation”.Bone Marrow 28(8):807−8)。
これらの糖質コルチコイドの使用は、宿主組織でのT細胞媒介免疫の猛攻撃を抑制するように設計されているが、高用量では、この免疫抑制は感染およびがん再発の危険性を上昇させる。したがって、移植後の高濃度のステロイド投与は、特にHLAミスマッチ患者においは、典型的に移植片対腫瘍効果が随伴するので、軽いGVHDの出現が受け入れられるような低濃度まで徐々に減らすことが望ましい。
GVHDが原因で眼表面疾患に罹患している個体はしばしばPROSE(眼表面エコシステムの人工装具置換)治療を受けて徴候を軽減し、視覚機能を改善することができる(Takahide K,Parker PM,Wu M et al.(September 2007).“Use of fluid−ventilated,gas−permeable scleral lens for management of severe keratoconjunctivitis sicca secondary to chronic graft−versus−host disease”.Biology of Blood and Marrow Transplantation 13(9):1016−21 doi:10.1016/j.bbmt.2007.05.006.PMC 2168033.PMID 17697963;Jacobs DS, Rosenthal P(December 2007).“Boston scleral lens prosthetic device for treatment of severe dry eye in chronic graft−versus−host disease”.Cornea 26(10):1195−9)(PROSE治療で使用される人工器官は、以前はボストン角膜レンズおよびボストン眼表面装具として知られていた)。
<移植片対宿主病の調査的治療>
移植片対宿主病治療および予防の調査において、進行中または最近完了した臨床試験が多数ある。
2012年5月17日、Osiris Therapeutics社は、カナダの保険管理当局がステロイド治療に応答しなかった子どもにおいて急性移植片対宿主病の薬物、Prochymalを承認したことを公表した。Prochymalは、全身疾患のために承認された最初の幹細胞薬である(World’s First Stem−Cell Drug Approval Achieved in Canada,The National Law Review.Drinker Biddle & Reath LLP.2012−06−12)。
<輸血関連移植片対宿主病>
[以下のテキストは、2015年3月10日08:04に検索したhttp://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Transfusion−associated_graft_versus_host_disease&oldid=599310890のフリー百科事典ウィキペディア中の輸血関連移植片対宿主病(2014年3月12日)からの抜粋である]
輸血関連移植片対宿主病(TA−GvHD)は、輸血の稀な合併症であり、ドナーTリンパ球がレシピエントのリンパ組織に対して免疫応答を開始する(http://www.merckmanuals.com/professional/hematology_and_oncology/transfusion_medicine/complications_of_transfusion.htmlの“Complications of Transfusion:Transfusion Medicine: Merck Manual Professional”)。
ドナーリンパ球は通常外来物と識別され、レシピエントの免疫系によって破壊される。しかし、レシピエントが免疫不全(先天的免疫不全症、後天的免疫不全症、悪性腫瘍)の場合、またはドナーのHLAハロタイプがホモ接合体で、レシピエントがヘテロ接合体のとき(1等親血縁者指定の輸血において起こり得るように)、レシピエントの免疫系は、ドナーリンパ球を破壊することはできない。これによって移植片対宿主病が生じることがある。
<輸血関連移植片対宿主病の疫学および病理発生>
輸血を受けている免疫不全患者におけるTA−GvHDの発生率は0.1〜1.0%、死亡率は約80〜90%と推定される。死亡率は、骨髄移植に随伴するGvHDよりもTA−GvHDの方が高く、骨髄に移植したリンパ球はドナー由来で、したがって免疫反応はリンパ球に対するものではない。
TA−GvHDにおける死の最も一般的な原因は、汎血球減少症および肝機能障害に続発する感染症および出血である。
<輸血関連移植片対宿主病の提示および診断>
<輸血関連移植片対宿主病の臨床所見>
臨床像は、骨髄移植などのその他の場合に生じるGvHDと同じである。TA−GvHDは輸血して4日から30日後に発症し得る。典型的な徴候には、
・発熱
・全般性紅斑症に進行し得る紅斑性斑状丘疹状皮疹
・極端な場合、毒性のある表皮壊死融解症
が含まれる。
その他の徴候には、咳、腹痛、嘔吐および大量の下痢(最高8リットル/日)が含まれることがある。
<輸血関連移植片対宿主病の実験的現象>
実験的所見には、汎血球減少症、肝酵素異常および電解質平衡異常(下痢が存在するとき)が含まれる。
<輸血関連移植片対宿主病の診断>
TA−GvHDは、罹患した皮膚の生検から疑われ、循環するリンパ球のHLA分析によって確定することができる。この試験は、宿主の組織細胞とは異なるHLA型を有する循環リンパ球を同定することができる。
<輸血関連移植片対宿主病の治療および予防>
利用可能な形態の治療はTA−GvHDの治療に有効ではないことが分かっているので、支持治療を行うしかない。
予防には、リンパ球含有血液製剤のガンマ線照射が含まれる。この手法は、
・レシピエントが免疫不全であり、
・血液成分が家族ドナー由来であり、
・HLA適合血小板を移す
の場合に、輸血において実施するべきである。
予防の別の手段は、第3または第4世代白血球除去フィルターの使用であるが、この手法の有効性はまだ立証されたことがない。
<表皮水疱症(EB)>
間葉系幹細胞エキソソームなどのエキソソームは、以下に記載した表皮水疱症(EB)の種類のいずれかを含む表皮水疱症を治療または予防するために使用することができる。
表皮水疱症(EB)とは、皮膚非接着および創傷上皮化不良を特徴とする稀な遺伝性皮膚障害の一群である(Kopecki et al.2009)。根底にある遺伝性障害と相関して臨床的重症度は幅広い。
EBの主な遺伝性障害には、皮膚−上皮接合部(DEJ)で皮膚層を一緒に保持する構造タンパク質が主に関与する。
EBの最も重度の形態は、接合部型EB(JEB)または栄養障害型EB(DEB)である。これらのEBにおいて変異する遺伝子は同定されており、ラミニン−5、XVII型コラーゲン、インテグリンα6β4、VII型コラーゲン(以下の表D2)が含まれる。
以下に記載した、およびこの文書内の様々な種類の表皮水疱症のいずれかは、本明細書で記載した方法および組成物によってエキソソームで治療することができる。
<表皮水疱症(EB)>
[以下のテキストは、2014年9月11日、11:50に検索したhttp://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Epidermolysis_bullosa&oldid=615914312のフリー百科事典ウィキペディア中の表皮水疱症(EB)(2014年7月7日)からの抜粋である]。
表皮水疱症(EB)は、皮膚および粘膜の水疱を引き起こす遺伝性結合組織疾患で、発生率は1/50000である。表皮と真皮の間の固定不良の結果であり、摩擦および皮膚の脆弱性を引き起こす。その重症度の範囲は、軽度から致死までに亘る。
<表皮水疱症の分類>
表皮水疱症とは、些細な外傷の後の水疱形成が関与する遺伝性障害の一群を意味する。この症状には、300を上回る変異が同定されている。これらは、
・単純型表皮水疱症
・接合部型表皮水疱症
・栄養障害型表皮水疱症
・表皮水疱症、致死的棘融解性
・後天性表皮水疱症
の種類に分類される。
<表皮水疱症の病態生理>
ヒトの皮膚は2層から構成されており、最外層は表皮と呼ばれ、その下の層は真皮と呼ばれる。健康な皮膚を有する個体では、互いが独立して移動(剪断)するのを防ぐこれらの2層間を固定するタンパク質がある。生まれつきEBである人では、2つの皮膚層はそれらを一緒に保持するタンパク質アンカーが欠乏しており、極めて脆弱な皮膚が生じ、わずかな機械的摩擦(擦ったり、押したりのような)または外傷であっても皮膚の層が分離し、水疱および有痛性の傷が形成される。EBの患者にとっては、この傷は第3度熱傷に匹敵した。さらに、慢性皮膚障害の合併症として、EBに罹患している人々では、皮膚の悪性腫瘍(がん)の危険性が増加する。
<表皮水疱症の治療>
最近の研究は、皮膚で生成されるケラチンの混合を変化させることに焦点が当てられている。54個の公知のケラチン遺伝子があり、そのうちの28個はI型中間径線維遺伝子に属し、26個はII型に属し、ヘテロ二量体として作用する。これらの遺伝子の多くは、実質的構造および機能的類似性を共有しているが、それらが正常に生成される細胞種および/または条件に対して特殊化する。生成の平衡が、変異した機能障害性ケラチン遺伝子から完全なケラチン遺伝子へ移ることができれば、徴候は軽減するであろう。例えば、ブロッコリーに見出される化合物、スルホラファンは、妊娠したマウスに注射し(5μmol/日=0.9mg)、新生仔に局所的に塗布したとき(1μmol/日=ホホバオイル中0.2mg)、罹患した仔を視覚的に識別することができなくなる状態までマウスモデルの水疱形成を軽減することが見出された。
ミネソタ大学での最新の臨床研究には、EBの兄弟2人のうちの1人の2歳の子どもへの骨髄移植が含まれた。手術は成功し、治療法の発見が強く示唆された。2回目の移植もその子どもの兄に実施され、3回目の移植がカリフォルニアの乳児に計画されている。臨床試験には最終的に30人の患者への移植が含まれる。しかし、骨髄移植に必要な厳しい免疫抑制は、大規模な水疱および皮膚びらんを有する患者では深刻な感染症が引き起こされる危険性がかなり高い。実際に、少なくとも4人の患者が表皮水疱症のための骨髄移植の準備中または入院中に死亡しており、今まで治療された患者は少人数にとどまる。
<表皮水疱症の疫学>
生児出生100万人中推定50人がEBと診断され、一般集団において100万人中9人が患者である。これらの症例のうち、約92%が単純型表皮水疱症(EBS)、5%が栄養障害型表皮水疱症(DEB)、1%が接合部型表皮水疱症(JEB)、2%が未分類である。JEBキャリアの頻度は333人中1人、DEBは450人中1人で、EBSキャリアの頻度はJEBまたはDEBよりもずっと高いと考えられる。
この障害は世界中の全人種および全民族で生じ、男女とも罹患する。
<表皮水疱症のモニタリング>
表皮水疱症の活性および瘢痕指数(EBDASI)は、表皮水疱症(EB)の重症度を客観的に定量する採点法である。EBDASIは、医師および患者が疾患の重症度をモニターするための手段であり、EBを治療するための新たな療法に対する応答を評価するためにも設計されている。EBDASIは、オーストラリア、シドニーのSt George Hospital、University of New South WalesのDedee Murrell教授ならびに彼女の学生および研究者チームによって開発され検証された。2013年にエジンバラでの国際研究皮膚科学会(International Investigative Dermatology congress)で発表され、文献Journal of American Academy of Dermatologyに掲載された。
<単純型表皮水疱症>
[以下のテキストは、2014年9月11日11:54に検索したhttp://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Epidermolysis_bullosa_simplex&oldid=600649962のフリー百科事典ウィキペディア中の単純型表皮水疱症(2014年3月21日)からの抜粋である]
単純型表皮水疱症は、擦った部位に水疱を引き起こす表皮水疱症の1形態である。典型的には手足が冒され、典型的には常染色体の優性遺伝で、ケラチン遺伝子KRT5およびKRT14に影響を及ぼす。
<単純型表皮水疱症の分類>
単純型表皮水疱症は多くの種類に分けることができる。
遊走性輪状紅斑を伴う単純型表皮水疱症は、OMIM記載番号609352(遺伝子座および遺伝子12q13(KRT5))に記載されている。
斑点状の色素沈着を伴う単純型表皮水疱症はOMIM記載番号131960(遺伝子座および遺伝子12q13(KRT5))に記載されている。これにはKRT14における再発変異が随伴する。
単純型表皮水疱症、常染色体劣性はOMIM記載番号601001(遺伝子座および遺伝子17q12−q21(KRT14))に記載されている。
全身型単純型表皮水疱症は、OMIM記載番号131900(遺伝子座および遺伝子17q12−q21(KRT5)、12q13(KRT14))に記載されている。全身型単純型表皮水疱症はまた、「全身型単純型表皮水疱症のケブナー変種」として知られている。生下時から早期乳児期まで手、足および四肢に偏向して出現し、手掌足底角化症およびびらんが存在することもある。
局在型単純型表皮水疱症は、OMIM記載番号131800(遺伝子座および遺伝子17q12−q21(KRT5)、17q11−qter、12q13(KRT14))に記載されている。局在型単純型表皮水疱症はまた、「ウェーバー・コケイン症候群」および「全身型単純型表皮水疱症のウェーバー・コケイン変種」として知られている。これは、幼児期または後年に発症することが特徴で、単純型表皮水疱症の最も一般的な変種である。
ヘルペス型表皮水疱症は、OMIM記載番号131760(遺伝子座および遺伝子17q12−q21(KRT5)、12q13(KRT14))に記載されている。ヘルペス型単純型表皮水疱症はまた、「ダウリング・メアラ型単純型表皮水疱症」としても知られている。生下時に全身に分布して出現し、しばしば口腔粘膜に併発し、乳児期に様々な病変が伴う。
筋ジストロフィーを伴う単純型表皮水疱症はOMIM記載番号226670(遺伝子座および遺伝子8q24(PLEC1))に記載されている。稀な臨床的存在である単純型表皮水疱症は、ケラチン変異が原因ではないことが記載された唯一の表皮融解性表皮水疱症で、全身型単純型表皮水疱症のケブナー変種と類似した全身型表皮内水疱形成として出現するが、成人発症型筋ジストロフィーも付随する。
幽門閉鎖を伴う単純型表皮水疱症はOMIM記載番号612138(遺伝子座および遺伝子8q24(PLEC1))に記載されている。
Ogna型単純型表皮水疱症はOMIM記載番号131950(遺伝子座および遺伝子8q24(PLEC1))に記載されている。乳児期に発症し、夏期に末端部に季節性の水疱形成が生じる。
<接合部型表皮水疱症>
[以下のテキストは、2014年9月11日11:50に検索したhttp://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Junctional_epidermolysis_bullosa_(medicine)&oldid=591972576のフリー百科事典ウィキペディア中の接合部型表皮水疱症(医薬品)(2014年1月23日)からの抜粋である]
接合部型表皮水疱症は、ラミニンおよびコラーゲンに悪影響を及ぼす遺伝性疾患である。この疾患は、基底膜領域の透明帯内の水疱形成が特徴で、常染色体の劣性遺伝である。摩擦の部位、特に手および足に水疱が出現し、幼児および成人において生じ得る変種がある。100万人に1人未満が、この形態の表皮水疱症であると推定される。
<接合部型表皮水疱症の分類>
接合型表皮水疱症は多くの種類に分けることができる。
幽門閉鎖を伴う接合部型表皮水疱症はOMIM記載番号226730(遺伝子座および遺伝子17q11−qter、2q31.1 ITGB4、ITGA6)に記載されている。
ヘルリッツ型接合部型表皮水疱症は、OMIM記載番号226700(遺伝子座および遺伝子18q11.2、1q32、1q25−q31 LAMA3、LAMB3、LAMC2)に記載されている。
非ヘルリッツ型接合型表皮水疱症(全身型萎縮性良性表皮水疱症、Mitis接合部型表皮水疱症)は、OMIM記載番号226650(遺伝子座および遺伝子18q11.2、1q32、17q11−qter、1q25−q31、10q24.3 LAMA3、LAMB3、LAMC2、COL17A1、ITGB4)に記載されている。
<幽門閉鎖を伴う接合部型表皮水疱症>
幽門閉鎖を伴う接合部型表皮水疱症は、生下時に重度の皮膚粘膜脆弱性および胃流出路閉塞が出現する接合部型表皮水疱症の稀な常染色体劣性形態である。ITGB4またはITGA6を随伴することがある。
<グラヴィス型接合部型表皮水疱症(ヘルリッツ型)>
グラヴィス型接合部型表皮水疱症(「ヘルリッツ病」、「ヘルリッツ症候群」および「致死型接合部型表皮水疱症」としても知られている)は、最も致死性の表皮水疱症で、ほとんどの患者が幼児期を生存することができない皮膚症状で、生下時に重度の臨床的に特有な口周囲肉芽組織を伴う水疱形成が特徴である。
<非ヘルリッツ型>
これらには、以下が含まれる。
全身型萎縮性良性表皮水疱症は、生下時の発症、全身型水疱および萎縮、粘膜合併症ならびに肥厚、栄養障害または爪の欠損が特徴の皮膚症状である。
Mitis型接合部型表皮水疱症(「非致死性接合部型表皮水疱症」としても知られている)は、頭皮および爪の病変を特徴とする皮膚症状で、口周囲非治癒性びらんも付随する。Mitis型接合部型表皮水疱症は、4歳から10歳の間の年齢の子どもに最もよく見られる。
瘢痕型接合部型表皮水疱症は、瘢痕で治癒する水疱が特徴の皮膚症状であり、1985年に特徴付けられた。
<接合部型表皮水疱症の病態生理>
α6β4インテグリンは、ヘミデスモソームに見出される膜貫通タンパク質である。2本のポリペプチド鎖を含有するヘテロ二量体分子として、その細胞外ドメインは基底膜に入り、ヘミデスモソームの細胞外表面上のラミニン(ラミニン−5)、エンタクチン/ナイドジェンまたはパールカンを含有するIV型コラーゲン超構造と相互作用し、ラミニン−5分子はインテグリン分子から上皮接着の基底膜構造に伸びる糸状のアンカー線維を形成する。ラミニン−5鎖をコードする遺伝子の変異は、接合部型表皮水疱症を引き起こす。
<栄養障害型表皮水疱症>
[以下のテキストは、2014年9月11日、11:50に検索したhttp://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Epidermolysis_bullosa_dystrophica&oldid=591217345のフリー百科事典ウィキペディア中の栄養障害型表皮水疱症(EB)(2014年7月7日)からの抜粋である]
栄養障害型表皮水疱症は、皮膚およびその他の器官が冒される遺伝性変種である。「バタフライチルドレン」とは、皮膚が蝶の羽のように繊細で脆弱に見えるので、この疾患を伴って出生した子どもに与えられた用語である。栄養障害型表皮水疱症は、タンパク質VII型コラーゲン(コラーゲンVII)をコードするヒトCOL7A1遺伝子内の遺伝的欠陥(または変異)が原因である。DEBを引き起こす変異は、常染色体優性または常染色体劣性のいずれであってもよい。
<栄養障害型表皮水疱症の分類>
栄養障害型表皮水疱症は多くの種類に分けることができる。
優性型栄養障害型表皮水疱症(DDEB)はOHIM記載番号131750(遺伝子座および遺伝子3p21.3(COL7A1))に記載されている。
「Cockayne−Touraine疾患」としても知られているこの変種は、四肢の伸筋表面上の小胞および水疱が特徴で、OHIM記載番号に記載されている。
劣性型栄養障害型表皮水疱症(RDEB)はOHIM記載番号226600(遺伝子座および遺伝子3p21.3(COL7A1))に記載されている。
「表皮水疱症のアロポー・シーメンス変種」および「アロポー・シーメンス病」としても知られているこの変種は、VII型コラーゲン、COL7A1をコードする遺伝子の変異から生じ、疼痛、瘢痕および小口症を生じる衰弱性の口腔病変が特徴である。Francois Henri Hallopeau およびHermann Werner Siemensに由来して命名され、OHIM記載番号に記載されている。
脛骨前部の栄養障害型表皮水疱症はOHIM記載番号131850(遺伝子座および遺伝子3p21.3(COL7A1))に記載されている。
痒疹型表皮水疱症は、OHIM記載番号604129(遺伝子座および遺伝子3p21.3(COL7A1))に記載している。
先天的に皮膚が局所的に欠損し、爪が変形した表皮水疱症は、OHIM記載番号132000(遺伝子座および遺伝子3p21.3(COL7A1))に記載されている。
新生仔の一過性表皮水疱症(TBDN)は、OHIM記載番号131705(遺伝子座および遺伝子3p21.3(COL7A1))に記載されている。
<栄養障害型表皮水疱症の原因>
DEBは、タンパク質VII型コラーゲン(コラーゲンVII)をコードするヒトCOL7A1遺伝子内の遺伝的欠陥(または変異)によって引き起こされる。DEBを引き起こす変異は、優性または劣性のいずれであってもよい。
この症状を有する家族メンバーを含むほとんどの家族は、明確に区別できる変異を有する。
コラーゲンVIIは、二量体化して半円形のループ構造、係留線維を形成する非常に大きな分子(300kDa)である。アンカー線維は、真皮上層における上皮基底膜と繊維性コラーゲンの間の構造的結合を形成すると考えられる。
<栄養障害型表皮水疱症の症候および徴候>
アンカー線維の欠乏は、表皮と下にある真皮の間の接着を弱める。DEB患者の皮膚は、したがって重度の水疱形成を非常に起こしやすい。
コラーゲンVIIはまた、食道内壁の上皮に関連しており、DEB患者は慢性瘢痕化、ウェブ形成および食道閉塞を起こすことがある。罹患した個体は、口腔および食道粘膜への外傷のためしばしば重度の栄養不良で、栄養のために栄養管が必要である。原因不明の鉄欠乏性貧血にも罹患し、慢性疲労を引き起こす。
皮膚の開放創の治癒は遅いか、または治癒せず、しばしば広範囲に瘢痕化し、特に感染症にかかりやすい。これらの感染症に抵抗するために、多くの個体は漂白剤および水の混合物で入浴する。
慢性炎症は、罹患した皮膚細胞のDNA中にエラーを引き起こし、次に扁平上皮がん(SCC)の原因となる。これらの患者の大部分は30歳前にSCCまたはDEBに関連した合併症で死亡する。
<栄養障害型表皮水疱症の病態生理>
COL7A1遺伝子に変異がないと、VII型コラーゲンに対する自己免疫応答が後天型表皮水疱症と呼ばれる後天性の表皮水疱症を引き起こすことがある。
その他の種類の遺伝性表皮水疱症、接合部型表皮水疱症および単純型表皮水疱症が存在し、これらはVII型コラーゲン欠乏とは関係がない。これらは、表皮および真皮の間の接合部の表皮または基底膜のその他のタンパク質をコードする遺伝子の変異から生じる。
<エキソソーム>
エキソソームは、1983年に網状赤血球によって分泌されることが最初に報告され、その後様々な造血細胞、造血器もしくは非造血器由来の腫瘍および上皮細胞を含む多くの細胞種によって分泌されることが発見された、後期エンドサイトーシス区画(多胞体)において形成される小さな膜小胞である。これらは、エキソソームとも称されるごく最近報告された「リボヌクレアーゼ複合体」と明確に区別される。
エキソソームは、いくつかの形態学的および生化学的パラメータによって定義することができる。したがって、本明細書で記載したエキソソームには、これらの形態学的または生化学的パラメータの1つまたは複数を含めることができる。
エキソソームは、古典的に「受け皿のような」小胞または直径40〜100nmの脂質二重層に限定された平らな球と定義され、エンドソーム膜内への出芽によって形成される。あらゆる脂質小胞と同じように、しかしアポトーシス細胞によって放出されるタンパク質凝集またはヌクレオソーム断片とは異なり、エキソソームの密度は約1.13〜1.19g/mlであり、スクロース勾配上に浮遊する。エキソソームは、コレステロールおよびスフィンゴミエリンならびにGM1、GM3、フロチリンおよびsrcタンパク質キナーゼLynなどの脂質ラフトマーカーが豊富で、膜が脂質ラフトに富んでいることを示唆している。
様々な細胞種および様々な種のエキソソームの分子組成を調べた。一般的に、エキソソームは、エキソソーム全てに共通と考えられる遍在性タンパク質および細胞種特異的なタンパク質を含有する。また、同じ細胞種であるが異なる種のエキソソームにおけるタンパク質は、高度に保存されている。遍在性エキソソーム関連タンパク質には、細胞骨格中に見出される細胞質タンパク質、例えば、チューブリン、アクチンおよびアクチン結合タンパク質、細胞内膜融合および輸送、例えば、アネキシンおよびrabタンパク質、シグナル伝達タンパク質、例えば、タンパク質キナーゼ、14−3−3およびヘテロ三量体Gタンパク質、代謝酵素、例えば、ペルオキシダーゼ、ピルビン酸および脂質キナーゼおよびエノラーゼ−1ならびにテトラスパニンのファミリー、例えば、CD9、CD63、CD81およびCD82が含まれる。テトラスパニンは、エキソソーム中に非常に豊富で、高分子複合体および膜サブドメインの組織化に関与することが知られている。
エキソソームにおける細胞種特異的タンパク質の例は、MHCクラスII発現細胞由来のエキソソームにおけるMHCクラスII分子、樹状細胞由来エキソソームにおけるCD86、T細胞由来エキソソーム上のT細胞受容体などである。特に、エキソソームは核、ミトコンドリア、小胞体またはゴルジ体由来のタンパク質を含有しない。また、非常に豊富な細胞膜タンパク質もエキソソーム中に存在せず、エキソソームは単純に細胞膜の断片ではないことが示唆される。報告された遍在性エキソソーム関連タンパク質の多くはまた、hESC−MSC分泌のプロテオミックプロファイル中に存在する。
エキソソームはまた、別の細胞に送達することができ、その新たな位置で機能を果たすことができるmRNAおよびmicroRNAを含有することが知られている。エキソソームの生理学的機能は、未だにあまり確認されていない。使われなくなったタンパク質を一掃し、タンパク質を再生処理し、プリオンおよびウイルスなどの感染粒子の伝播を媒介し、補体耐性を誘導し、免疫細胞−細胞の連絡を容易にし、細胞シグナルを伝達するのを助けるものと考えられる。エキソソームは、がん治療のための免疫療法で使用されてきた。
<恒常性の促進、復活または増強のための組成物>
恒常性の促進、復活または増強のための組成物を提供する。このような組成物は、間葉系幹細胞由来のエキソソームなどのエキソソームを含むことができる。
間葉系幹細胞馴化培地を(または間葉系幹細胞自体も)含むことができる。
例えば、エキソソーム、馴化培地および/または間葉系幹細胞は、ヒトエキソソーム、馴化培地および/または間葉系幹細胞などのほ乳類エキソソーム、馴化培地および/または間葉系幹細胞であってもよい。
エキソソーム組成物は、エキソソームから作製することができる。エキソソームは、以下および国際公開第2009/105044号に記載されたように、間葉系幹細胞(MSC)などの幹細胞から得ることができる。
エキソソームは、いくつかの手段のいずれかによって、例えば、間葉系幹細胞からの分泌、出芽または分散によって間葉系幹細胞から得ることができる。例えば、エキソソームは、間葉系幹細胞から産生、浸出、放出または流出することができる。間葉系幹細胞が細胞培養中にある場合、エキソソームは細胞培養培地中に分泌することができる。
エキソソームは特に小胞を含む。
エキソソームは、脂質二重層によって限定された小胞または平らな球を含むことができる。エキソソームの直径は40〜100nmを含んでいてもよい。エキソソームは、エンドソーム膜の内部への出芽によって形成することができる。エキソソームの密度は約1.13〜1.19g/mlで、スクロース勾配上に浮遊していてもよい。エキソソームは、コレステロールおよびスフィンゴミエリンならびにGM1、GM3、フロチリンおよびsrcタンパク質キナーゼLynなどの脂質ラフトマーカーが豊富であってもよい。エキソソームは、MSCまたはMSC−CMに特徴的または特異的なタンパク質などの間葉系幹細胞または間葉系幹細胞馴化培地(MSC−CM)中に存在する1つまたは複数のタンパク質を含むことができる。エキソソームは、RNA、例えば、miRNAを含むことができる。
恒常性の促進、復活または増強に使用するために、間葉系幹細胞または間葉系幹細胞の培養によって馴化された培地において見出される1つまたは複数の遺伝子または遺伝子産物を含むエキソソームを提供する。エキソソームは、間葉系幹細胞によって分泌される分子を含んでいてもよい。このようなエキソソームおよび、特にタンパク質またはポリペプチドを含むエキソソームに含まれる分子のいずれかの組合せは、この文書に記載した方法のいずれかのために使用することができる。
エキソソームは、細胞骨格中に見出される細胞質タンパク質、例えば、チューブリン、アクチンおよびアクチン結合タンパク質、細胞内膜融合および輸送、例えば、アネキシンおよびrabタンパク質、シグナル伝達タンパク質、例えば、タンパク質キナーゼ、14−3−3およびヘテロ三量体Gタンパク質、代謝酵素、例えば、ペルオキシダーゼ、ピルビン酸および脂質キナーゼおよびエノラーゼ−1ならびにテトラスパニンのファミリー、例えば、CD9、CD63、CD81およびCD82を含むことができる。特に、エキソソームは1つまたは複数のテトラスパニンを含むことができる。エキソソームは、mRNAおよび/またはマイクロRNAを含むことができる。
エキソソームは、間葉系幹細胞(MSC)または間葉系幹細胞馴化培地(MSC−CM)から単離可能なものであってもよい。エキソソームは、少なくともMSCまたはMSC−CMの活性に関与することができる。エキソソームは、MSCまたはMSC−CMの機能の実質的にほとんどまたは全てに関与し、実施することができる。例えば、エキソソームは、MSCまたはMSC−CMの代替物(または生物学的代替物)であってよい。
エキソソームは、間葉系幹細胞の少なくとも1つの特性を有することが好ましい。エキソソームは、生物学的活性などの生物学的特性を有することができる。エキソソームは、間葉系幹細胞の生物学的活性のいずれかを有することができる。エキソソームは、例えば、恒常性を促進、復活または増強する活性などの間葉系幹細胞の治療活性または復活活性を有することができる。
エキソソームは、間葉系幹細胞馴化培地(MSC−CM)から単離することができる。
<間葉系幹細胞馴化培地(MSC−CM)>
間葉系幹細胞馴化培地(MSC−CM)などの馴化細胞培養培地は、間葉系幹細胞(MSC)、その子孫または細胞培養培地においてそれから得られた細胞株を培養し、細胞培養培地を単離することによって得ることができる。間葉系幹細胞は、胚性幹(ES)細胞コロニーを分散させることによって細胞を得ることを含むプロセスによって生成することができる。細胞またはその子孫は、FGF2を含む無血清培地において共培養せずに増殖させることができる。
<間葉系幹細胞エキソソーム>
間葉系幹細胞エキソソームは、国際特許公開第2009/105044号に詳細に記載されている。
エキソソームは、いくつかの方法で生成し、単離することができる。このような方法は、間葉系幹細胞(MSC)からエキソソームを単離することを含んでいてもよい。このような方法は、間葉系幹細胞馴化培地(MSC−CM)からエキソソームを単離することを含んでいてもよい。
エキソソームは、例えば、エキソソームの任意の特性に基づいて非関連成分から分離することによって単離することができる。例えば、エキソソームは、分子量、大きさ、形状、組成または生物学的活性に基づいて単離することができる。
馴化培地は、分離中、分離の前または後に濾過するか、もしくは濃縮するか、またはその両方を行ってもよい。例えば、膜、例えば、大きさまたは分子量カットオフがある膜によって濾過することができる。接線濾過または限外濾過を行うことができる。
例えば、この文書の他のところで分子量のアッセイにおいて記載したように、適切な分子量または大きさのカットオフがある膜による濾過を使用することができる。
場合によって濾過するか、もしくは濃縮するか、またはその両方を行った馴化培地に、さらにカラムクロマトグラフィーなどの分離手段を行ってもよい。例えば、様々なカラムを用いる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用してもよい。カラムは、サイズ排除カラムまたは結合カラムであってもよい。
エキソソームの1つまたは複数の特性または生物学的活性を使用して、間葉系幹細胞馴化培地(MSC−CM)の分画中にその活性を追跡することができる。一例として、光散乱、屈折率、動的光散乱またはUV−可視光検出器を使用してエキソソームを追求することができる。例えば、心保護的活性などの治療活性を使用して分画中の活性を追跡することができる。
以下の段落には、間葉系幹細胞エキソソームを取得することができる方法の特定の例を挙げる。
間葉系幹細胞エキソソームは、間葉系幹細胞を馴化させるための培地中で培養することによって生成することができる。間葉系幹細胞には、HuES9.E1細胞を含めることができる。培地にはDMEMを含めることができる。DMEMは、フェノールレッドを含まないようにすることができる。培地には、インスリン、トランスフェリンまたはセレノプロテイン(ITS)あるいはそれらの任意の組合せを補給することができる。FGF2を含めてもよい。PDGF ABを含めてもよい。FGF2の濃度は、FGF2約5ng/mlであってもよい。PDGF ABの濃度は、約5ng/mlであってもよい。培地には、グルタミン−ペニシリン−ストレプトマイシンもしくはb−メルカプトエタノールまたはそれらの任意の組合せを含めることができる。
細胞は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10日またはそれ以上、例えば、3日間培養することができる。馴化培地は、細胞を培地から分離することによって取得することができる。馴化培地は、例えば、500gで遠心分離することができる。膜による濾過によって濃縮することができる。膜には、>1000kDaの膜を含めることができる。馴化培地は、約50倍またはそれ以上濃縮することができる。
馴化培地には、HPLCなどの液体クロマトグラフィーを行うことができる。馴化培地は、サイズ排除によって分離することができる。セファロースなどのいかなるサイズ排除マトリックスも使用することができる。一例として、TSK GuardカラムSWXL、6×40mmまたはTSKゲルG4000 SWXL、7.8×300mmを使用することができる。溶出緩衝液は、生理食塩水などの生理学的溶媒を含むことができる。NaCl 150mMを含むリン酸緩衝液20mM、pH7.2を含むことができる。クロマトグラフィー系は流速0.5ml/分で平衡化することができる。溶出形式は単一組成であってもよい。220nmでのUV吸収を利用して、溶出の進行を追跡することができる。準弾性光散乱(QELS)検出器を使用して、画分の動的光散乱(DLS)を調べることができる。
動的光散乱を示すことが見出された画分を保持することができる。例えば、前述したような一般的方法によって生成し、保持時間11〜13分、例えば、12分で溶出する画分は動的光散乱を示すことが見出された。このピークにおけるエキソソームのrは約45〜55nmである。このような画分は間葉系幹細胞エキソソームを含む。
<エキソソームの分子量>
エキソソームの分子量は100kDaを上回ってもよい。エキソソームの分子量は500kDaを上回ってもよい。例えば、エキソソームの分子量は1000kDaを上回ってもよい。
分子量は、様々な手段によって測定することができる。原則として、分子量は、サイズ分画および適当な分子量カットオフを有する膜による濾過によって測定することができる。次に、エキソソームのサイズは、SDS−PAGEによる成分タンパク質の分離の追跡または生物学的アッセイによって測定することができる。
<SDS−PAGEによる分子量のアッセイ>
エキソソームの分子量は100kDaを上回ってもよい。例えば、エキソソームは、濾過を行ったとき、分子量100kDa未満のエキソソームのほとんどのタンパク質が分子量100kDaを上回る残余画分中に分離するようにしてもよい。同様に、500kDaカットオフの膜で濾過を行ったとき、分子量500kDa未満のエキソソームのほとんどのタンパク質が分子量500kDaを上回る残余画分中に分離するようにしてもよい。これは、エキソソームの分子量は500kDaを上回ってもよいことを示している。
<生物学的活性による分子量のアッセイ>
エキソソームの分子量は1000kDaを上回ってもよい。例えば、エキソソームは、分子量カットオフ1000kDaの膜で濾過を行ったとき、適切な生物学的活性が残余画分に実質的にまたは主に残存するようにしてもよい。代わりに,または追加して、生物学的活性は、濾液画分になくてもよい。生物学的活性は、この文書の他のところで記載したエキソソームの生物学的活性のいずれかを含んでいてもよい。
<梗塞サイズによる分子量のアッセイ>
例えば、生物学的活性は、心筋虚血および再灌流傷害の任意の適切なモデルでアッセイしたとき、梗塞サイズの縮小を含むことができる。例えば、生物学的活性は、国際公開第2009/105044号に記載されたように、マウスまたはブタモデルでアッセイすることができる。
要約すると、心筋虚血は縫合結紮によって左冠状動脈(LCA)を30分間閉塞することによって誘発され、再潅流は縫合の除去によって惹起される。マウスは、再潅流5分前にエキソソーム(未分画MSC−CMなど)、濾液(<100または1000kD画分など)、残余画分(>1000kD残余画分など)または生理食塩水を含有する液体を尾静脈に静脈内注射して処置する。24時間後、心臓を切除する。切除前に、危険な領域(AAR)を、LCAの再結紮およびその後の大動脈からのエバンスブルーの潅流によって測定する。
AARは、色素によって染色されない領域として定義され、左心室壁領域のパーセントとして表される。梗塞サイズは、エバンスブルーおよびTTCを使用して24時間後に評価する。相対的な梗塞サイズが、生理食塩水と比較したとき間葉系幹細胞馴化培地(MSC−CM)および残余画分(>1000kDなど)で処置した動物で有意に縮小した場合、エキソソームは膜の相対的カットオフよりも高い分子量(例えば、1000kDaより大きい)を有することを示している。
<エキソソームサイズ>
エキソソームのサイズは2nmを上回ってもよい。エキソソームのサイズは、5nm、10nm、20nm、30nm、40nmまたは50nmを上回ってもよい。エキソソームのサイズは100nm、例えば、150nmを上回ってもよい。エキソソームのサイズは実質的に200nm以上であってもよい。
エキソソームは一連のサイズ、例えば、2nmから20nm、2nmから50nm、2nmから100nm、2nmから150nmまたは2nmから200nmの間であってもよい。エキソソームのサイズは、20nmから50nm、20nmから100nm、20nmから150nmまたは20nmから200nmの間であってもよい。エキソソームのサイズは、50nmから100nm、50nmから150nmまたは50nmから200nmの間であってもよい。エキソソームのサイズは、100nmから150nmまたは100nmから200nmの間であってもよい。エキソソームのサイズは、150nmから200nmの間であってもよい。
サイズは、様々な手段によって測定することができる。原則として、サイズは、サイズ分画および適切なサイズカットオフ値の膜による濾過によって測定することができる。次に、エキソソームのサイズは、SDS−PAGEによる成分タンパク質の分離の追跡または生物学的アッセイによって測定することができる。
サイズはまた、電子顕微鏡によって測定することができる。
サイズは、水力学的半径を含んでいてもよい。エキソソームの水力学的半径は100nm未満であってもよい。約30nmと約70nmの間であってもよい。水力学的半径は、約40nmと約60nmの間、例えば、約45nmと約55nmの間であってもよい。水力学的半径は約50nmであってもよい。
エキソソームの水力学的半径は、任意の適切な手段、例えば、レーザー光回折または動的光散乱法によって測定することができる。水力学的半径を測定するための動的光散乱法の1例は、国際公開第2009/105044号に記載されている。
<エキソソームの取得>
エキソソームは、当業界で記載された様々な方法のいずれかによって取得することができる。エキソソームは、例えば、間葉系幹細胞、例えば、間葉系幹細胞によって馴化された培地から取得することができる。
<間葉系幹細胞(MSC)馴化培地からのエキソソームの取得>
エキソソームなどの間葉系幹細胞粒子は、本明細書で記載した方法を使用して、間葉系幹細胞馴化培地(MSC−CM)から単離または生成することができる。
馴化培地およびエキソソームの生成に使用するために適切なMSCは、当業界の公知の任意の方法によって作製することができる。
特に、MSCは、胚性幹(ES)細胞コロニーまたはその子孫を、FGF2を含む無血清培地中で共培養せずに分散させることによって得られた細胞を増殖させて作製することができる。これは、以下の項目で詳細に記載する。
間葉系幹細胞(MSC)またはMSC様の細胞をhESCから取得する方法は、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)遺伝子を分化しているhESCへのトランスフェクト(Xu et al.,2004)またはマウスOP9細胞株との共培養(Barberi et al.,2005)を必要とすることがある。これらの誘導方法において外来性遺伝物質およびマウス細胞を使用すると、腫瘍原性または異種動物の感染物質の感染といった許容できない危険性が導かれる。
したがって、分化しているhESCから類似または同一の(例えば、均一な)MSC集団を単離する臨床的に適当で再現性のある方法を使用することによって得られたMSCからエキソソームを作製することができる。一般的に、この方法には、胚性幹(ES)細胞コロニーを細胞中に分散させることが含まれる。次に、細胞を播種し、増殖させる。細胞は、間葉系幹細胞(MSC)を取得するために、線維芽細胞増殖因子2(FGF2)を含む無血清培地中で、共培養せずに増殖させる。
したがって、このプロトコルは血清、マウス細胞の使用または遺伝子操作を必要とせず、必要とする操作および時間は少なく、したがって高い拡張性がある。このプロトコルは、2つの異なるhESC株、HuES9およびH−1、および第3の株、Hes−3からMSCを単離するために使用することができる。本明細書で記載した方法および組成物によって取得したヒトES細胞由来MSC(hESC−MSC)は、骨髄由来MSC(BM−MSC)と極めて類似している。
胚性幹細胞培養には、ヒト胚性幹細胞(hESC)培養を含めることができる。
一実施形態では、間葉系幹細胞(MSC)を生成する方法には、CD105+CD24−細胞を分別する前に、hESCをトリプシン処理し、FGF2、場合によってPDGF ABを補給した培地中においてフィーダー支持無しに増殖させることが含まれる。
この方法は、FGF2および場合によってPDGF ABを補給した培地中でフィーダー細胞無しで1週間増殖させた後、トリプシン処理したhESCから、CD105+、CD24−細胞を分別することを含むことができ、少なくともいくつか、例えば、実質的に全て、または全ての細胞が互いに類似であるかまたは同一(例えば、均一)であるhESC−MSC細胞培養物を作出する。
この方法によって生成したMSCを使用して、間葉系幹細胞馴化培地(MSC−CM)を生成し、これからエキソソームを単離することができる。
<胚性幹細胞コロニーの脱凝集>
間葉系幹細胞を生成する1方法には、胚性幹細胞コロニーの細胞中への分散または脱凝集を含めることができる。
胚性幹細胞コロニーには、huES9コロニー(Cowan CA,Klimanskaya I,McMahon J,Atienza J,Witmyer J,et al.(2004) Derivation of embryonic stem−cell lines from human blastocysts.N Engl J Med 350:1353−1356)またはH1 ESCコロニー(Thomson JA,Itskovitz−Eldor J,Shapiro SS,Waknitz MA,Swiergiel JJ,et al.(1998)Embryonic stem cell Lines Derived from Human Blastocysts.Science 282:1145−1147)を含めることができる。
コロニー中の細胞は、かなりの範囲まで、すなわち、少なくとも凝集塊まで脱凝集または分散することができる。コロニーは、コロニー中の細胞全てが単一で、すなわちコロニーが完全に脱凝集する範囲まで脱凝集または分散することができる。
脱凝集は、分散剤によって実現することができる。
分散剤は、コロニー中の少なくともいくつかの胚性幹細胞を互いに切り離すことができるものであってもよい。分散剤には、コロニー中の細胞間、または細胞と基質の間、またはその両方の接着を分断する試薬を含めることができる。分散剤にはプロテアーゼを含めることができる。
分散剤には、トリプシンを含めることができる。トリプシン処理は、例えば、37℃でおよそ3分間継続することができる。次に、細胞は、播種する前に中和して、遠心分離して、培地中に再懸濁することができる。
この方法には、ヒト胚性幹細胞のコンフルエントプレートをトリプシンによって分散することおよび細胞を播種することを含めることができる。
脱凝集は、工程、吸引、洗浄、トリプシン処理、インキュベーション、剥離、停止、再接種および分注による一連のうちの少なくともいくつかを含むことができる。以下の方法は、Hedrick Lab、UC San Diego(http://hedricklab.ucsd.edu/Protocol/COSCell.html)から抜粋した。
吸引工程では、培地を吸引するか、または一般的にフラスコなどの容器から除去する。濯ぎ工程では、細胞を、一定量、例えば、5〜10mlのCa2+およびMg2+を含まない緩衝化した培地で濯ぐ。例えば、細胞は、カルシウムおよびマグネシウムを含まないPBSで洗浄してもよい。トリプシン処理工程では、緩衝液中一定量の分散剤を容器に添加し、成長表面を分散剤溶液でコーティングするために容器を回転させる。例えば、ハンクスBSSに溶かしたトリプシン1mlをフラスコに添加してもよい。
インキュベーション工程では、細胞を維持温度でしばらくの間放置する。例えば、細胞は37℃で数分間(例えば、2から5分間)放置してもよい。剥離工程では、細胞は機械的作用、例えば、掻き取るか、または容器の側面を手で打つことによって剥離することができる。細胞は、シートからはがれて、表面に滑り落ちる。
停止工程では、一定量の培地をフラスコに添加する。この培地は、分散剤の作用を停止するための中和剤を含んでいてもよい。例えば、分散剤がトリプシンなどのプロテアーゼである場合、培地は、プロテアーゼの活性を吸い取る血清タンパク質などのタンパク質を含有していてもよい。特定の例では、血清を含有する細胞培養培地3mlをフラスコに添加して、全体を4mlにする。細胞をピペットで取り、細胞を剥離するか、または分散させることができる。
再接種工程では、細胞は新鮮な培養容器に再接種し、新鮮な培地を添加する。いくつかの再接種物は、様々な分割比で作製することができる。例えば、細胞は、1/15希釈および1/5希釈で再接種してもよい。特定の例では、25cmフラスコに細胞を1滴、別の容器に3滴を添加して培養物を再接種することによって細胞を再接種し、培地7〜8mlをそれぞれに添加して、例えば、75cmフラスコから1/15希釈および1/5希釈を得る。分注工程では、細胞を新たなディッシュに、所望されるどんな分割比でも分注し、培地を添加することができる。
特定の実施形態では、本方法には、ヒトES細胞を最初に非接着方法で懸濁して増殖させて肺葉体(EB)を形成する工程と、次に、5〜10日齢EBをトリプシン処理してから、接着細胞としてゼラチンコーティングした組織培養プレートに播種する工程とが含まれる。
<細胞培養の維持>
脱凝集した細胞を播種し、細胞培養として維持することができる。
細胞は、培養容器またはゼラチン化プレートなどの基質に播種することができる。重要なことに、細胞は、非共培養で、例えば、フィーダー細胞を存在させなくても成長し増殖する。
細胞培養物中の細胞は、線維芽細胞増殖因子2(FGF2)および場合によって血小板由来増殖因子AB(PDGF AB)などの1つまたは複数の増殖因子を、例えば、5ng/mlで補給した無血清培地で増殖させてもよい。細胞培養物中の細胞は、トリプシンで処理して、洗浄し、再播種することによって、コンフルエント状態のときに1:4で分割するか、または継代することができる。
<非共培養>
細胞は、非共培養で培養することができる。「共培養」という用語は、一緒に増殖させる2種類以上の異なる細胞の混合物、例えば、間質フィーダー細胞を意味する。
したがって、典型的なES細胞培養では、培養皿の内面は通常、分裂しないように処理されたマウス胚性皮膚細胞のフィーダー層でコーティングする。フィーダー層は、ES細胞が結合して増殖することができるような接着面を提供する。さらに、フィーダー細胞はES細胞増殖に必要な栄養素を培地中に放出する。本明細書で記載した方法および組成物において、ESおよびMSC細胞は、このような共培養を行わずに培養することができる。
細胞は、単層として、またはフィーダー細胞の非存在下で培養することができる。胚性幹細胞は、フィーダー細胞の非存在下で培養して、間葉系幹細胞(MSC)を確立することができる。
分離した、または脱凝集した胚性幹細胞を培養基質上に直接播種してもよい。培養基質は、ペトリディッシュなどの組織培養容器を含むことができる。容器は前処理してもよい。細胞は、ゼラチン化した組織培養プレート上に播種し、増殖させることができる。
ディッシュのゼラチンコーティング法の一例は以下の通りである。蒸留水に溶かしたゼラチン0.1%溶液を作製し、加圧滅菌する。これは室温で保存してもよい。組織培養ディッシュの底面をゼラチン溶液で覆い、5〜15分インキュベートする。ゼラチンを除去するとプレートは使用できるようになる。低浸透圧溶解を防ぐために細胞を添加する前に培地を添加するべきである。
<無血清培地>
分離した、または脱凝集した胚性幹細胞は、無血清培地を含む培地中で培養することができる。
「無血清培地」という用語には、血清タンパク質、例えば、ウシ胎仔血清を含まない細胞培養培地を含めることができる。無血清培地は当業界で公知であり、例えば、米国特許第5,631,159号および同第5,661,034号に記載されている。無血清培地は、例えば、Gibco−BRL(Invitrogen)から市販されている。
無血清培地は、タンパク質、加水分解物および未知の組成物の成分が欠如していてもよいという点で、タンパク質を含んでいなくてもよい。無血清培地は、全成分の化学構造が公知である合成培地であってもよい。無血清合成培地は、ばらつきを排除し、再現性を向上させ、性能をより一貫させ、偶発的な物質による混入の可能性を低下させる、完全に定義された系を提供するので、有利である。
無血清培地には、ノックアウトDMEM培地(Invitrogen−Gibco、Grand Island、New York)を含めることができる。
無血清培地は、血清代替培地などの1つまたは複数の成分を、例えば、5%、10%、15%などの濃度で補給することができる。無血清培地には、Invitrogen−Gibco(Grand Island、New York)の10%血清代替培地を含めるか、または補給することができる。
<増殖因子>
分離した、または脱凝集した胚性幹細胞を培養する無血清培地は、1つまたは複数の増殖因子を含んでいてもよい。PDGF、EGF、TGF−a、FGF、NGF、エリスロポエチン、TGF−b、IGF−IおよびIGF−IIを含むいくつかの増殖因子が当業界では公知である。
増殖因子には、線維芽細胞増殖因子2(FGF2)を含めることができる。培地はまた、血小板由来増殖因子AB(PDGF AB)などのその他の増殖因子を含有することができる。これらの増殖因子はいずれも当業界では公知である。この方法には、FGF2およびPDGF ABの両方を含む培地中において細胞を培養することを含めることができる。
代わりに、または追加的に、培地は上皮増殖因子(EGF)を含むか、またはさらに含むことができる。EGFの使用は、MSCの増殖を増強することができる。EGFは、任意の適切な濃度、例えば、EGF 5〜10ng/mlで使用することができる。EGFは、PDGFの代わりに使用することができる。EGFは、当業界で周知のタンパク質で、Symbol EGF、Alt.Symbols URG、Entrez 1950、HUGO 3229、OMIM 131530、RefSeq NM_001963、UniProt P01133として表される。
このように、本発明者等は、(i)FGF2、(ii)FGF2およびPDGFならびに(iii)FGF2およびEGFならびにその他の組合せを含む培地の使用を開示する。
FGF2は、低レベルで多くの組織および細胞種において発現し、脳および下垂体では高濃度に達する、広範囲の分裂促進因子、血管新生因子および神経栄養因子である。FGF2は、四肢の発達、血管新生、創傷治癒および腫瘍増殖を含む数多くの生理学的および病理学的プロセスに関与している。FGF2は、例えば、Invitrogen−Gibco(Grand Island、New York)から商用に入手することができる。
血小板由来増殖因子(PDGF)は、線維芽細胞、平滑筋および結合組織を含む多種多様な細胞種に対する強力な分裂促進剤であり、PDGFはA鎖およびB鎖と呼ばれる2本鎖の二量体から構成され、AAもしくはBBホモ二量体またはABヘテロ二量体として存在することができる。ヒトPDGF−ABは、13.3kDaのA鎖および12.2のB鎖からなる25.5kDaホモ二量体タンパク質である。PDGF ABは、例えば、Peprotech(Rocky Hill、New Jersey)から商用に入手することができる。
FGF2および場合によってPDGF ABなどの増殖因子は、培地中に、約100pg/ml、例えば、約500pg/ml、例えば、約1ng/ml、例えば、約2ng/ml、例えば、約3ng/ml、例えば、約4ng/ml、例えば、約5ng/mlの濃度で存在することができる。いくつかの実施形態では、培地はFGF2を約5ng/mlで含有する。培地はまた、PDGF ABを約5ng/mlなどで含有することができる。
<細胞の分割>
培養中の細胞は一般的に、接触阻止により細胞分割および細胞増殖が停止するコンフルエンス状態になるまで増殖し続ける。次に、このような細胞は、基質またはフラスコから分離し、組織培養培地で希釈して、再播種することにとって「分割」、継代培養または継代することができる。
したがって、本明細書に記載した方法および組成物は、培養の間に継代または分割を含んでもよい。細胞培養中の細胞は、分割比1:2またはそれ以上、例えば、1:3、例えば、1:4、1:5またはそれ以上で分割することができる。「継代」という用語は、細胞株のコンフルエントな培養物の一定量を採取し、新しい培地に接種し、コンフルエンスまたは飽和状態が得られるまで細胞株を培養することからなるプロセスを指す。
<選択、スクリーニングまたは選別の工程>
方法にはさらに、間葉系幹細胞をさらに単離するか、または選択するための選択または選別工程を含めることができる。
選択または選別の工程は、1つまたは複数の表面抗原マーカーによって細胞培養物から間葉系幹細胞(MSC)を選択することを含んでいてもよい。選択または選別の工程の使用はさらに、MSCに対する選別および選択特異性の厳密さを増強し、さらに、hESCおよびその他の出発物質由来のhESC誘導物などの胚性幹細胞が夾雑する可能性を低下させることができる。次に、これは、テラトーマ形成の危険性をさらに低下させ、本発明者等が記載した方法の臨床的妥当性をさらに増加させるものである。
抗原発現に基づく選択または選別についてはいくつかの方法が知られており、これらのいかなる方法も本明細書で記載した選択または選別において使用することができる。選択または選別は、蛍光標示式細胞分取器(FACS)によって実現することができる。したがって、当業界では公知の通り、FACSには、細胞が発現する抗原に結合して標識する標識抗体などのレポーターに細胞を曝露することが必要である。レポーターを形成する抗体の作製およびそれらの標識の方法は当業界では公知であり、例えば、Harlow and Laneに記載されている。その後、FACS装置に細胞を通過させ、標識に基づいて細胞を互いに選別する。代わりに、または追加的に、細胞を選別するために、磁気細胞分離(MACS)を使用してもよい。
本発明者等は、いくつかの細胞表面抗原候補、例えば、CD105、CD73、ANPEP、ITGA4(CD49d)、PDGFRAがMSCと関連することが知られている一方で、MSC関連細胞表面抗原のいくつか、例えば、CD29およびCD49eは、hESCなどのES細胞でも高発現していることに気づき、それらの発現をFACS解析によって検証した。表面抗原とMSCとの関連は、MSCをhESCなどのES細胞から単離するための選択マーカーとしてその抗原が適格であるとみなすには十分ではない。したがって、選択または選別の工程では、MSCとES細胞との間で発現の異なる抗原を使用してもよい。
本発明の方法の選択または選別工程は、抗原の発現に基づいて間葉系幹細胞を陽性選択することができる。このような抗原は、例えば、hESCおよびhESCMSCの遺伝子発現プロファイルを比較することにより同定することができる。
本発明の方法の選択または選別工程は、MSC上で発現するがhESCなどのES細胞上で発現しないことが確認された抗原の発現に基づいて間葉系幹細胞を陽性選択することができる。
CD73はMSC上で高発現しているが、hESC上では高発現していない。CD73およびCD105はいずれもMSCで高発現している表面抗原であり、hESCと比べてhESC−MSCで高発現している表面抗原の上位20の中に入り、CD73またはCD105(またはその両方)の推定MSCの選択マーカーとしての使用は、hESCの分化により生成した推定MSCを選別するのに同様に効果的である。
代わりに、または追加的に、選択または選別工程は、hESCなどの胚性幹細胞(ES細胞)上で表面抗原として高発現し、間葉系幹細胞、例えば、hESC−MSCでは高発現していない表面抗原に基づいて抗原に対して陰性選択を行うことができる。選択または選別は、MIBP、ITGB1BP3およびPODXLおよびCD24などの公知の、または既に同定されているhESC特異的表面抗原に基づいて行ってもよい。
FACS解析によって、CD24の発現がhESC−MSC上にはなく、hESC上にあることを確認した。したがって、分化しているhESC培養物から推定MSCを単離するために、CD24は陰性選択または選別マーカーとしてそれ自体で、または陽性選択マーカーとしてのCD105と組み合わせて使用することができる。
<間葉系幹細胞馴化培地>
間葉系幹細胞によって馴化した培地の生成方法は当業界では公知で、例えば、国際特許公開第2008/020815号に記載されている。
馴化培地は、間葉系幹細胞を細胞培養培地などの培地中で所定の期間培養することによって作製してもよい。間葉系幹細胞は特に、本書類で記載した方法のいずれかによって、または当業界で公知の方法によって生成したものを含むことができる。
馴化培地は、治療において、そのままで、あるいは1つまたは複数の処理工程の後で使用することができる。例えば、馴化培地は、UV処理、濾過滅菌などを行ってもよい。1つまたは複数の精製工程を使用してもよい。エキソソームは、治療で使用するための馴化培地から取得してもよい。
特に、馴化培地は、例えば、透析または限外濾過によって濃縮することができる。例えば、培地は、例えば、公称分画分子量(NMWL)が3Kである限外濾過膜を使用して濃縮することができる。
<エキソソームの精製>
エキソソームは、当業界で公知の様々な方法、例えば、国際特許公開第2009/105044号(サイズ排除クロマトグラフィー)および国際公開第2012/087241号(イオン交換クロマトグラフィー)によって間葉系幹細胞から精製することができる。
<エキソソームの送達>
本書類で記載したようなエキソソームは、任意の適切な手段によってヒトまたは動物の体に送達することができる。
したがって、本発明者等は、生物学的環境における恒常性を促進、復活または増強するために、本書類で記載したエキソソームなどの粒子を、標的細胞、組織、器官、動物の体またはヒトの体に送達するための送達系、および粒子を標的に送達するための送達系を使用するための方法について記載する。
送達系には、粒子を含有する容器などのエキソソームなどの粒子の供給源を含めることができる。送達系には、粒子を標的に分配するためのディスペンサーを含めることができる。
したがって、生物学的環境において恒常性を促進、復活または増強するために、本明細書で記載したようなエキソソームなどの粒子を標的に送達するための送達系であって、粒子を標的に操作可能に送達するためのディスペンサーと共に、本書類で記載したような粒子の供給源を含む送達系を提供する。
さらに、生物学的環境において恒常性を促進、復活または増強するために、粒子を標的に送達する方法におけるこのような送達系の使用を提供する。
液体を体内に送達する送達系は当業界では公知で、注射、点滴(surgical drip)、米国特許第6,139,524号に記載されたものなどのカテーテル(潅流カテーテルを含む)、例えば、米国特許第7,122,019号に記載されたものなどの薬物送達カテーテルが含まれる。
鼻腔内送達を含む肺または鼻腔経路への送達は、例えば、当業界で公知の経鼻スプレー、パッファー、吸入器など(例えば、米国意匠特許第D544,957号に示されたように)を使用して実現することができる。
腎臓への送達は、米国特許第7,241,273号に記載されたものなどの大動脈内腎臓送達カテーテルを使用して実現することができる。
特定の送達は、最適な治療を実現するために、適切な間隔で必要量の粒子を送達するように構成するべきであることは明白である。
送達方法は、粒子を送達するべき特定の器官に左右されることは明白で、当業者であればそれに応じてどの手段を採用するかを決定することができよう。
皮膚科学的症状、例えば、表皮水疱症の治療または予防のために粒子を使用することができる。症状が治癒するまで、経皮マイクロインジェクションニードルを使用した粒子の長期送達を採用することができる。
<治療法>
エキソソームは、恒常性の復活、増強または促進の必要性が疑われる、または必要性を有する(本文書の他のところで記載したように、任意の関連する疾患を有するか、または有することが疑われることを含む)対象に経口的に、局所的に、または非経口的に投与することができる。
恒常性の復活、増強または促進の必要性が疑われる、または必要性を有する個々の対象は、移植片対宿主病(GVHD)または表皮水疱症(EB)を罹患していてもよく、または罹患が疑われてもよい。
したがって、エキソソームは、移植片対宿主病(GVHD)または表皮水疱症(EB)の疑いがある、または有する対象に、それらの治療または維持のために投与することができる。
当業者であれば、いくつかの考慮すべき点、例えば、吸収、代謝、送達方法、年齢、体重、疾患の重症度および治療に対する応答に基づいて、対象に投与する組成物の治療有効量を決定することができる。組成物の経口投与には、経口、頬側、経腸または胃内投与が含まれる。組成物は、食品添加物として使用することも考えられる。例えば、組成物は、摂取前に食品に振りかけるか、または液体に添加する。組成物の局所投与には、局所、経皮、上皮または皮下投与が含まれる。非経口投与には、限定はしないが、筋肉内、静脈内、腹腔内、眼内または関節内投与あるいは術野への投与が含まれる。
エキソソームは、恒常性を促進、復活または増強するため(または関連疾患を治療または予防するため)の有効量で投与することができる。
その上、治療計画は変化してもよく、症状の重症度、患者の健康状態および年齢などに左右されることが多い。明らかに、ある種の症状は、より侵襲性な治療を必要とするが、その一方で、ある種の患者は負荷の大きい方法に耐えることはできない。医師は、治療製剤の公知の有効性および毒性(もしあれば)に基づいて、このような決定を行うために一番ふさわしい。
組成物は、単回用量または複数回用量で投与することができる。単回用量は、毎日、または1日に複数回、または週に複数回、または毎月または月に複数回投与することができる。組成物は、一連の用量で投与することができる。一連の用量は、毎日、または1日に複数回、毎週、または週に複数回、または毎月、または月に複数回投与することができる。したがって、当業者であれば、症状、患者の健康状態などに応じて、本明細書で記載したエキソソーム組成物を、疾患が治療されるまで、または徴候が軽減するまで、または恒常性が少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%もしくは100%もしくはその間の任意の範囲で増強、促進または復活するまで、任意の所与の期間投与することができることを理解するであろう。
局所投与について、エキソソームを含むゲル製剤を使用してガーゼ包帯の繊維をコーティングして絆創膏を形成することができ、次に創傷または表皮水疱症などの皮膚症状に当てることができる。粘度の低い製剤を使用することもできる。絆創膏は、創傷治癒活性を有するエキソソームを含む水性ゲル溶液にガーゼ包帯を浸漬することによって準備することができる。次に、絆創膏は、ガーゼのコーティング繊維が創傷に接触して、創傷治癒の速度を刺激するように、創傷に適用することができる。
エキソソームを含むゲルを体内または切開の位置に適用する場合、ゲル形成ポリマーは生分解性であってもよい。天然に生じるポリマーは一般的に生分解性である。これらの例は、コラーゲン、グリコサミノグリカン、ゼラチンおよびデンプンである。セルロース性物質は生分解性ではない。ビニルポリマーなどの合成ポリマーは分解性ではない。本明細書で記載したポリマーの生分解性は、当業者には周知である。
恒常性を促進、復活または増強する(または任意の関連疾患を治療または予防する)方法であって、体循環におけるエキソソームの量を増加させることによって、全身性免疫系を補給する工程を含む方法も記載する。エキソソームは、限定はしないが、筋肉内、静脈内、腹腔内、眼内または関節内投与あるいは術野を含む非経口経路を介して投与することができる。
恒常性を促進、復活または増強する(または任意の関連疾患を治療または予防する)方法であって、対象の胃腸管におけるエキソソームの量を増加させることによって、粘膜免疫系を補給する工程を含む方法もさらに開示する。
対象にエキソソーム組成物を投与することによって、関連症状を罹患している対象の免疫系を増強する方法を記載する。投与形式に応じて、様々な部分の免疫系が増強される。例えば、組成物の局所投与によって、局所免疫系の増強が引き起こされる。組成物の非経口投与によって、全身免疫系の増強が引き起こされる。さらに、組成物の経口投与によって、粘膜免疫系の増強が引き起こされ、その上全身への効果をもたらすことができる。
免疫系は、局所であろうと、全身または粘膜であろうと、エキソソームがサイトカインおよび/またはケモカインを刺激することによって増強することができる。サイトカインの例には、胃腸管内のインターロイキン−18およびGM−CSFが含まれ、これらは免疫細胞を増強するか、または免疫細胞の産生を刺激することが知られている。例えば、インターロイキン−18はナチュラルキラー細胞またはTリンパ球を増強する。例えば、インターロイキン−18(IL−18)はCD4+、CD8+およびCD3+細胞を増強する。IL−18が、リンパ球IFN−ガンマ産生の刺激においてインターロイキン−12およびインターロイキン−2と相乗的に作用するTh.sub.1サイトカインであることは当業者には公知である。その他のサイトカインはまたはケモカイン、例えば、限定はしないが、IL−12、IL−1b、MIP−3α、MIP−1αまたはIFN−ガンマも増強することができる。その他のサイトカインまたは酵素、例えば、限定はしないが、IL−2、IL−4、IL−5、IL−10、TNF−αまたはマトリックスメタロプロテアーゼは阻害することができる。IL−18またはGM−CSFは、修復に関与する細胞、例えば、限定はしないが、表皮細胞、内皮細胞、樹状細胞、線維芽細胞および筋線維芽細胞の産生または活性を刺激することもさらに予期される。さらに、エキソソームは、TNF−アルファの産生を阻害し、これが炎症に関連する細胞を阻害することも考えられる。
対象における局所免疫系は、局所的に治療有効量のエキソソーム組成物を投与することによって強化することができる。エキソソーム組成物の局所投与は、サイトカインまたはケモカインの産生を刺激することができる。エキソソームによって刺激することができるサイトカインの例には、限定はしないが、インターロイキン−18(IL−18)、インターロイキン−12(IL−12)、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)およびガンマインターフェロン(IFN−γ)を含めることができる。ケモカインの例には、限定はしないが、マクロファージ炎症性タンパク質3アルファ(MIP−3α)、マクロファージ炎症性タンパク質1アルファ(MIP−1α)またはマクロファージ炎症性タンパク質ベータ(MIP−10)が含まれる。
エキソソーム組成物はまた、サイトカインまたはケモカインの阻害を引き起こすことができる。このようなサイトカインには、限定はしないが、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−4(IL−4)、インターロイキン−5(IL−5)、インターロイキン−10(IL−10)および腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)が含まれる。さらに、エキソソーム組成物はまた、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の産生を阻害することができる。
サイトカイン、例えば、インターロイキン−18または顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子は、免疫細胞の産生または活性を刺激することができる。免疫細胞には、限定はしないが、Tリンパ球、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、樹状細胞および多形核細胞が含まれる。より詳細には、多形核細胞は好中球であり、Tリンパ球はCD4+、CD8+およびCD3+T細胞からなる群から選択される。
サイトカイン、例えば、インターロイキン−18または顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子は、修復に関与する細胞の産生または活性を刺激することもできる。修復に関与する細胞には、限定はしないが、表皮細胞、内皮細胞、線維芽細胞、樹状細胞および筋線維芽細胞が含まれる。TNF−αの阻害はさらに、樹状細胞の遊走および成熟を阻害する。樹状細胞は、ランゲルハンス細胞であってもよい。
<投与>
恒常性を促進、復活または増強する(または任意の関連疾患を治療または予防する)方法であって、治療有効量のエキソソームを対象に投与して徴候の改善または治療をもたらすことを含む方法を開示する。
エキソソームは、任意の適切な量で適用することができる。例えば、10μg以下、例えば、5μg以下、例えば、2μg以下、例えば、1μg以下、例えば、0.5μg以下、例えば、0.3μgのエキソソームを含有する組成物を対象に適用することができる。
医薬組成物は、40μg/ml以下、20μg/ml以下、8μg/ml以下、4μg/ml以下、2μg/ml以下または1.2μg/ml以下のエキソソームを含むことができる。
組成物は、少なくとも1週間から12週間までなどの任意の適切な期間投与することができる。投与するエキソソームの量には、任意の適切な量、例えば、1日当たり約0.0001ミリグラムから約100gを含めることができる。
エキソソームは、それを必要とするほ乳類などの動物に投与することができる。動物は、家畜、例えば、ヤギ、ウマ、ブタまたはウシ、ペット動物、例えば、イヌまたはネコ、実験動物、例えば、マウス、ラットまたはモルモット、あるいは霊長類、例えば、サル、オランウータン、類人猿、チンパンジーまたはヒトであってもよい。例えば、ほ乳類はヒトであってもよい。
エキソソームは、ヒトまたは動物に使用するための医薬品として使用するのに適した医薬組成物に組み込むことができる。医薬組成物は、さらに以下に詳細に記載する。
医薬組成物においてなど、エキソソームの有効量は、いくつかの周知の方法のいずれかによってそれを必要とするヒトまたは動物に投与することができる。例えば、エキソソームは、例えば、注射によって、全身または局所的に投与することができる。
エキソソームの全身投与は、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、クモ膜下腔内または経口投与によって行うことができる。あるいは、エキソソームは適切な状況で局所的に適用することができる。
本明細書で記載した医薬組成物の有効量は、その目的を実現するために有効な任意の量を含むことができる。通常、mg/kgで表される有効量は、当業者によって前臨床試験および臨床試験中に所定の方法によって決定することができる。
<個体>
エキソソームは個体に送達する。本明細書で使用したように、用語「個体」とは、脊椎動物、特にほ乳類の仲間を意味する。この用語には、限定はしないが、飼育動物、競技用動物、霊長類およびヒトが含まれる。
<さらなる観点>
本発明のさらなる態様および実施形態を、以下の番号を付けた段落で説明し、本発明はこれらの態様を包含するものと理解されたい。
段落1。恒常性を促進、復活または増強することを必要とする生物学的環境において恒常性を促進、復活または増強する方法において使用するための間葉系幹細胞であって、前記方法が生物学的環境を間葉系幹細胞に曝露することを含む、間葉系幹細胞。
段落2。生物学的環境が細胞、組織、器官、系もしくは生物における環境、またはそれらの環境を含む、指定された使用のための段落1で記載した間葉系幹細胞。
段落3。生物学的環境が生物の循環器系または免疫系を含む、指定された使用のための段落1または2で記載した間葉系幹細胞。
段落4。恒常性が生化学的または生物物理学的パラメータまたはその両方の維持を含む、指定された使用のための段落1、2または3で記載した間葉系幹細胞。
段落5。恒常性が細胞恒常性、例えば、(a)細胞数、(b)細胞状態、(c)細胞型、および(d)細胞外環境、例えば、細胞外マトリックスの組成からなる群から選択されたパラメータの維持を含む、指定された使用のための前記段落で記載した間葉系幹細胞。
段落6。恒常性が生理学的pH、例えば、pH7.4の維持を含む、指定された使用のための前記段落で記載した間葉系幹細胞。
段落7。恒常性が、免疫恒常性、例えば、免疫応答の維持を含む、指定された使用のための前記段落で記載した間葉系幹細胞。
段落8。生物学的環境が、(a)自己免疫疾患、例えば、クローン病もしくは筋ジストロフィー、(b)病理に2次免疫応答が含まれる疾患、例えば、慢性心不全、アテローム性動脈硬化、冠疾患もしくは脳動脈疾患、(c)神経変性疾患、(d)老年医学的症状、または(e)免疫障害、例えば、慢性炎症もしくは自己対非自己の免疫認識の低下を罹患している個体を含む、指定された使用のための前記段落で記載した間葉系幹細胞。
段落9。疾患または組織傷害を罹患している個体において恒常性を促進、復活または増強する方法であって、間葉系幹細胞を個体に投与することを含む方法において使用するための間葉系幹細胞。
段落10。アデノシン1リン酸(AMP)からアデノシンを産生する方法における間葉系幹細胞の使用。
段落11。リン酸化または生存促進性のタンパク質キナーゼ、例えば、Akt、Erk1もしくはErk2の促進または増強のための方法における間葉系幹細胞の使用。
段落12。恒常性を促進、復活または増強することを必要とする生物学的環境において恒常性を促進、復活または増強する方法であって、生物学的環境を間葉系幹細胞に曝露することを含む方法。
段落13。生物学的環境が細胞、組織、器官、系、例えば、循環器系もしくは免疫系、または生物における環境、あるいはそれらの環境を含む、段落12で記載した方法。
段落14。恒常性が(a)生化学的パラメータの維持、(b)生物物理学的パラメータの維持、(c)細胞恒常性、(d)細胞数の維持、(e)細胞状態の維持、(f)細胞型の維持、(g)細胞外環境の組成の維持、(h)細胞外マトリックスの組成の維持、(i)生理学的pH、例えば、pH7.4の維持、(j)免疫恒常性および(k)免疫応答の維持からなる群から選択される、段落12または13で記載した方法。
段落15。個体における恒常性を促進、復活または増強することによって、疾患または組織傷害を罹患している個体を治療する方法であって、間葉系幹細胞を個体に投与することを含む方法。
段落16。個体が、(a)自己免疫疾患、例えば、クローン病もしくは筋ジストロフィー、(b)病理に2次免疫応答が含まれる疾患、例えば、慢性心不全、アテローム性動脈硬化、冠疾患もしくは脳動脈疾患、(c)神経変性疾患、(d)老年医学的症状、または(e)免疫障害、例えば、慢性炎症または自己対非自己の免疫認識の低下からなる群から選択された症状に罹患している、段落16で記載した方法。
段落A1。恒常性を促進、復活または増強することを必要とする生物学的環境において恒常性を促進、復活または増強する方法において使用するためのエキソソーム。
段落A2。生物学的環境が細胞、組織、器官、系もしくは生物における環境、またはそれらの環境を含み、方法が生物学的環境をエキソソームに曝露することを含む、指定された使用のための段落A1で記載したエキソソーム。
段落A3。恒常性が生化学的または生物物理学的パラメータまたはその両方の維持を含む、指定された使用のための段落A1またはA2で記載したエキソソーム。
段落A4。恒常性が循環器恒常性を含み、生物学的環境が生物の循環器系を含むか、または恒常性が免疫恒常性を含み、生物学的環境が生物の免疫系を含む、指定された使用のための段落A1、A2またはA3で記載したエキソソーム。
段落A5。恒常性が細胞恒常性、例えば、(a)細胞数、(b)細胞状態、(c)細胞型、および(d)細胞外環境、例えば、細胞外マトリックスの組成物からなる群から選択されたパラメータの維持を含む、指定された使用のための前記段落で記載したエキソソーム。
段落A6。恒常性が生理学的pH、例えば、pH7.4の維持を含む、指定された使用のための前記段落で記載したエキソソーム。
段落A7。恒常性が、免疫恒常性、例えば、免疫応答の維持を含む、指定された使用のための前記段落で記載したエキソソーム。
段落A8。疾患または組織傷害に罹患している個体において恒常性を促進、復活または増強する方法であって、エキソソームを個体に投与することを含む方法において使用するためのエキソソーム。
段落A9。生物学的環境が、(a)自己免疫疾患、例えば、クローン病もしくは筋ジストロフィー、(b)病理に2次免疫応答が含まれる疾患、例えば、慢性心不全、アテローム性動脈硬化、冠疾患もしくは脳動脈疾患、(c)神経変性疾患、(d)老年医学的症状、(e)免疫障害、例えば、慢性炎症もしくは自己対非自己の免疫認識の低下、(f)デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、(g)移植片対宿主病(GVHD)または(h)表皮水疱症(EB)に罹患している個体を含むか、あるいは、疾患が前記の疾患を含む、指定された使用のための前記段落で記載したエキソソーム。
段落A10。エキソソームが間葉系幹細胞エキソソームを含む、指定された使用のための前記段落で記載したエキソソーム。
段落A11。アデノシン1リン酸(AMP)からアデノシンを産生する方法におけるエキソソームの使用。
段落A12。リン酸化または生存促進性のタンパク質キナーゼ、例えば、Akt、Erk1もしくはErk2の促進または増強のための方法におけるエキソソームの使用。
段落A13。恒常性を促進、復活または増強することを必要とする生物学的環境において恒常性を促進、復活または増強する方法であって、生物学的環境をエキソソームに曝露することを含む方法。
段落A14。生物学的環境が細胞、組織、器官、系、例えば、循環器系もしくは免疫系、または生物における環境、あるいはそれらの環境を含む、段落A13で記載した方法。
段落A15。恒常性が(a)生化学的パラメータの維持、(b)生物物理学的パラメータの維持、(c)細胞恒常性、(d)細胞数の維持、(e)細胞状態の維持、(f)細胞型の維持、(g)細胞外環境の組成の維持、(h)細胞外マトリックスの組成の維持、(i)生理学的pH、例えば、pH7.4の維持、(j)免疫恒常性および(k)免疫応答の維持からなる群から選択される、段落A13またはA14で記載した方法。
段落A16。個体における恒常性を促進、復活または増強することによって、疾患または組織傷害に罹患している個体を治療する方法であって、エキソソームを個体に投与することを含む方法。
段落A17。個体が、(a)自己免疫疾患、例えば、クローン病もしくは筋ジストロフィー、(b)病理に2次免疫応答が含まれる疾患、例えば、慢性心不全、アテローム性動脈硬化、冠疾患もしくは脳動脈疾患、(c)神経変性疾患、(d)老年医学的症状、または(e)免疫障害、例えば、慢性炎症もしくは自己対非自己の免疫認識の低下からなる群から選択される症状を罹患している、段落A16で記載した方法。
[実施例1]
<MSCエキソソームは、AMPのCD73媒介性加水分解によって、アデノシンによるERKおよびAKT生存促進性シグナル伝達を誘発した − AMP濃度を増加させた場合>
H9C2心筋細胞(ATCC)を6ウェルプレートにウェル当たり200000個で、10%牛胎児血清、1%グルタミン−ペニシリン−ストレプトマイシンおよび1%ピルビン酸ナトリウム(いずれもInvitrogen製)を含有する高グルコース濃度ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)および一晩血清飢餓状態にした高グルコース濃度ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、1%グルタミン−ペニシリン−ストレプトマイシンおよび1%ピルビン酸ナトリウム(いずれもInvitrogen製)に播種した。次に、細胞を新鮮な無血清培地(高グルコース濃度ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、1%グルタミン−ペニシリン−ストレプトマイシンおよび1%ピルビン酸ナトリウム(いずれもInvitrogen製))でさらに1時間インキュベートした。
次に、培地を新鮮な無血清培地、Lai,R.C.,Arslan,F.,Lee,M.M.,Sze S.K.,Choo,A.,Chen,T.S.,Salto−Tellez,M.,Timmers,L.,Lee,C.N.,El Oakley,R.M.,Pasterkamp,G.,de Kleijn,D.P.V.,Lim S.−K.†(2010)Eexosome secreted by MSC reduces myocardial ischemia/reperfusion injury.Stem Cell Research 4:214−222に既に記載されたように調製したエキソソーム0.1μg/mlを含有し、AMP、100、10、1もしくは0.1μMを含む培地と交換した。
5分後、細胞を収集し、溶解してウェスタンブロットハイブリダイゼーションによって分析した。
全タンパク質10μgは、1:2000に希釈したウサギ抗pERK(Santa Cruz Biotechnology Inc)1/2、1:2000に希釈したウサギ抗ERK1/2(Santa Cruz Biotechnology Inc)、1:500に希釈したウサギ抗pAKT(Santa Cruz Biotechnology Inc)または1:500に希釈したウサギ抗AKT(Santa Cruz Biotechnology Inc)を使用して免疫ブロットした。
<結果>
結果を図1に示す。
図1に示したように、MSCエキソソームは、AMPのCD73 BC065937.1媒介性加水分解によって、アデノシンによるERK(ERK1−NM_001040056.2;ERK2−NM_138957.2)およびAKT NM_005163.2の生存促進性のシグナル伝達を誘発した。さらに、この誘導は、AMPの3−log濃度範囲に亘ってAMPの濃度に比例する。
[実施例2]
<MSCエキソソームは、AMPのCD73媒介性加水分解によって、アデノシンによるERKおよびAKT生存促進性シグナル伝達を誘発した − MSCエキソソーム濃度を増加させた場合>
<材料および方法>
H9C2心筋細胞(ATCC)は6ウェルプレートにウェル当たり200,000個で播種し、一晩血清飢餓にした。
次に、細胞を新鮮な無血清培地でさらに1時間インキュベートした。次に、培地を、Lai,R.C.,Arslan,F.,Lee,M.M.,Sze S.K.,Choo,A.,Chen,T.S.,Salto−Tellez,M.,Timmers,L.,Lee,C.N.,El Oakley,R.M.,Pasterkamp,G.,de Kleijn,D.P.V.,Lim S.−K.†(2010)Eexosome secreted by MSC reduces myocardial ischemia/reperfusion injury.Stem Cell Research 4:214−222に以前に記載されたように調製したエキソソーム1.0、0.1または0.01μg/mlを有し、AMP(Sigma Aldrich)100μMを含有する新鮮な無血清培地と交換した。
5分後、細胞を収集し、溶解してウェスタンブロットハイブリダイゼーションによって分析した。
全タンパク質10μgは、1:2000に希釈したウサギ抗pERK(Santa Cruz Biotechnology Inc)1/2、1:2000に希釈したウサギ抗ERL1/2(Santa Cruz Biotechnology Inc)または1:500に希釈したウサギ抗pAKT(Santa Cruz Biotechnology Inc)または1:500に希釈したウサギ抗AKT(Santa Cruz Biotechnology Inc)を使用して免疫ブロットした。
<結果>
結果は図2に示す。
図2は、一定のAMP濃度の存在下で、MSCエキソソーム濃度を3−log濃度範囲に亘って増加させると、ERKおよびAKT生存促進性のシグナル伝達の誘発にあまり変化を引き起こさなかったことを示している。
[実施例3]
<実施例1および実施例2の考察 − 細胞死恒常性>
MSCエキソソームは、3−log濃度範囲のAMPに比例的してアデノシン媒介応答を誘発することができるが、3−log濃度範囲のエキソソームでは誘発しないという所見は、この活性が傷害の重症度に依存しており、傷害の幅広い範囲に亘って有効であることを示唆している。AMPの濃度低下によって現れるような傷害の回復に比例してアデノシンシグナル伝達の低下が引き起こされ、これはエキソソーム濃度とは独立していることが重要である。実際に、これは過少量投与または過剰投与の危険性を大幅に軽減する。
アポトーシス促進性の微小環境の緩和におけるこの系のその他の利点は、ATPをAMPに、その後AMPをアデノシン加水分解するためにかかる時間によって引き起こされる、ATPによる細胞死促進性のシグナル伝達とアデノシンによる生存促進性のシグナル伝達の間の時間差である。この時間差の結果として、MSCエキソソームは、生物の攻撃および防御機構に必要な細胞外ATPの細胞死促進活性を妨害しないが、その活性を、その後のいかなる付帯的損害も最小限に抑え、細胞恒常性の復活を速める程度の活性にする。
概略すると、MSCエキソソームは、細胞増殖および細胞死の恒常的平衡の復活を容易にするために、遅延するがATP媒介性細胞死促進性シグナルに比例したアデノシン生存促進性応答を開始することができた。
[実施例4]
<MSCエキソソームおよび同種皮膚移植片の生存>
<材料および方法>
C57BL/6マウス(ASTAR Biological Resource Center)の尾皮膚をBALB/cマウス(ASTAR Biological Resource Center)に移植した。Lai,R.C.,Arslan,F.,Lee,M.M.,Sze S.K.,Choo,A.,Chen,T.S.,Salto−Tellez,M.,Timmers,L.,Lee,C.N.,El Oakley,R.M.,Pasterk AMP,G.,de Kleijn,D.P.V.,Lim S.−K.†(2010)Exosome secreted by MSC reduces myocardial ischemia/reperfusion injury.Stem Cell Research 4:214−222に既に記載されたように、PBS50μlに溶かしたエキソソーム0.3μgまたはPBS50μlを各レシピエントマウスに毎日4日間、その後隔日で15日間皮下注射した。
7日目に包帯を取り除き、移植片の拒絶反応を2日毎に記録し、1日おきに写真を撮影した。
2つの独立した実験、10匹の移植マウスおよび10匹の非移植マウスからなるエキソソーム処置群ならびに10匹の移植マウスおよび10匹の非移植マウスからなるPBS処置群それぞれを実施した。拒絶スコア平均を経時的に測定した。
各データ点は平均およびSEMを表した。P値はANOVAによって決定した。
<結果>
結果は図3A、図3B、図3Cおよび3Dに示す。
図3Bは、移植して9、11および15日後のPBSまたはMSCエキソソーム処置マウスにおける代表的な皮膚同種移植片を示す。
図3Cは、PBSまたはMSCエキソソーム処置マウスの脾臓におけるtregを示す。移植して15日後、脾細胞をPBSまたはMSCエキソソーム処置マウスから精製し、CD4、CD25およびFoxp3を染色した。Tregレベルは、PBSビヒクル対照のレベルで正規化し、3連試料の平均(±SD)として表した。
図3Dは、脾臓内注射実験を示す。MSCエキソソームを脾臓に0.3μg/マウスの用量で直接注射し、PBSはビヒクル対照とした。CD4+CD25+Foxp3+Treg分化をさらにFACS解析するために、3、6および9日後に、脾臓をPBSまたはMSCエキソソーム投与マウスそれぞれから単離した。データは、未処理対照で正規化し、3連試料の平均(±SD)として表した。
[実施例5]
<実施例4の考察 − 免疫恒常性>
免疫恒常性とは、病原体、外来物および疾患組織に対する「攻撃および防御」機構と自己に対する「寛容」との間の生理学的平衡を意味する。この平衡は、関連する多くの免疫細胞種および可溶性媒介物を点検し、調和させることによって維持される。免疫恒常性の制御異常は、体の防御および自己対非自己認識を損ない、疾患または自己免疫を招く。
本発明者等は、インビトロにおいて、MSCエキソソームが単球の活性化によってTreg集団を誘発することを以前に示した(国際特許公開第2012/108842号)。
BALB/cJマウスにC57BL/6Jマウスの尾皮膚を移植して、PBS50μlに溶かしたエキソソーム0.3μgまたはPBS50μlを皮下注射して処置すると、移植片を拒絶するのにエキソソーム処置マウスは13日、PBS処置マウスは11日を要した(図3Aおよび図3B)。
Tregのレベルは、生理食塩水で処置した動物と比較してエキソソームで処置した移植片のレシピエント動物の脾臓で有意に高かった(P=0.002、図3C)。
興味深いことに、エキソソームによって同じエキソソーム処置計画を行った非移植レシピエントマウスの脾臓ではTreg誘発は認められなかった(P>0.5、図3C)。マウスへのエキソソームまたはPBSの脾臓内注射はまた、エキソソーム処置マウスほど高いTregレベルを誘発しなかった(P>0.5、図3D)。
したがって、MSCエキソソームは免疫系が活性化したときのみTregを誘発する。Tregは免疫を抑制するので、活性化した免疫系におけるMSCエキソソームによるTregの誘発は、MSCエキソソームが免疫活性を減弱させることを示唆し、免疫恒常性の復活を増強させた。反対に、MSCエキソソームは免疫学的に攻撃されていないマウスではTreg誘発を惹起しなかったので、MSCエキソソームは免疫抑制を誘発し、免疫恒常性を攪乱することはないだろう。
概略すると、MSCエキソソームは免疫活性が刺激された動物においてTregの増大を誘発する。免疫刺激を受けていない動物では、MSCエキソソームはTreg増大に影響を及ぼさない。
したがって、MSCエキソソームは、Treg増大によって反応性を減弱することで免疫恒常性を促進することができ、免疫恒常性が復活すると、Treg増大に対するこの影響は消失する。
[実施例6]
<細胞接着恒常性>
細胞接着恒常性を復活される能力を示すために、コンフルエントMSC培養物をトリプシン処理して単一細胞懸濁液を作製した。中和して遠心分離した後、トリプシン処理した細胞を増殖培地に再懸濁した。同体積の細胞懸濁液を、同体積のコーティング溶媒、すなわち、PBS、MSCエキソソーム6.25、25および200μg/mlを含むPBSまたはゼラチン1mg/ml溶液で予めコーティングした組織培養プレートに播種した。2時間後および24時間後に、培養物を顕微鏡下で観察した。
より詳細には、MSCにおける細胞接着恒常性は、以前に記載したようにトリプシン処理によって攪乱した(Lian,Lye et al.2007)。
トリプシン処理した単一細胞MSC懸濁液をゼラチンまたはMSCエキソソームをコーティングしたプレートに播種した。細胞培養は、プレートへの細胞接着を確立するため、2および24時間後にモニターした。
2時間以内に、エキソソームコーティングプレート上に播種した細胞の>90%が接着したが、ゼラチンコーティングプレートには接着しなかった。これは、MSCエキソソームは細胞接着状態をトリプシン処理前の状態に復活させるのを助けることを示している(図4)。
[実施例7]
<マウスモデルにおけるデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に対する間葉系幹細胞エキソソームの治療有効性>
<背景>
MSCエキソソームが細胞、免疫および細胞接着恒常性を復活させる能力に基づいて、病理が二次免疫反応を含む疾患を治療するために間葉系幹細胞(MSC)エキソソームを使用することができた。このような疾患には、慢性心不全(Fildes et al.,2009)、アテローム性動脈硬化(Koltsova et al.,2012)、冠動脈および脳動脈疾患(Stollberger and Finsterer,2002)、神経変性疾患(Amor et al.,2010)、DMD(デュシェンヌ型筋ジストロフィー)(Evans et al.,2009)ならびに慢性炎症および自己対非自己の免疫認識低下などの免疫障害によって悪化する老年医学症状(Agrawal et al.,2011、Vasto and Caruso,2004)が含まれる。
<方法>
MSCエキソソームの有効性は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのマウスモデルで評価した。簡単に説明すると、16匹の4週齢ヘミ接合性雄C57BL/10ScSn−Dmdmdx/Jマウスを体重によって8匹ずつの2つの処置群に無作為化し、ビヒクルまたはエキソソーム(4μg)を2日毎に32日間腹腔内投与した。臨床的所見および体重は週2回遂行した。前腕握力試験は週に1回全部で5回実施した。研究35日目に、マウスを安楽死させて、血漿を調製し、長趾伸筋、前脛骨筋、横隔膜およびヒラメ筋を含む筋肉組織を収集し、中性緩衝ホルマリンで固定した。各マウスの血漿を32種のマウスサイトカインまたはケモカインイ(エオタキシン、G−CSF、GM−CSF、IFNγ、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−9、IL−10、IL−12(p40)、IL−12(p70)、IL−13、IL−15、IL−17A、IP−10、KC、LIF、LIX、MCP−1、M−CSF、MIG、MIP−1α、MIP−1β、MIP−2、RANTES、TNFα、VEGF)についてマルチプレックスビーズ技術を使用してアッセイした。http://www.evetechnologies.com/discoveryAssayListMouse.php。
<結果>
ビヒクルおよびエキソソーム処置動物の体重および握力において、有意な差は認められなかった。しかし、ビヒクル処置動物の握力は、エキソソーム処置動物の握力と比較して経時的に握力のゆっくりとした上昇傾向を示した(図5)。
マウスの左および右筋肉試料(長趾伸筋、前脛骨筋、横隔膜およびヒラメ筋)の萎縮、内部移行した核、肥大、変性/壊死および石灰化を含む栄養障害性病理の証拠を病理組織学的に調べた。顕微鏡による所見は、正常を「0」で、重度に病的を「6」として等級分けした。全体的に見て、ビヒクル処置動物の全組織学スコアは、エキソソーム処置動物と比較したとき、わずかに高かった(以下の表E1)。
分析したサイトカインのうち、GM−CSFおよびIP10はエキソソーム処置動物中で有意に上昇した(以下の表E2)。
GM−CSFは、結腸粘膜治癒、創傷治癒などの傷害後(Bernasconi et al.,2010)(Mann et al.,2001、Lim et al.,2013、Hu et al.,2011、Groves and Schmidt−Lucke、1999、Jorgensen et al.,2002)および細菌感染後(Steinwede et al.,2011)の組織治癒を促進することが示されている。
IP10は、創傷治癒の再生相の間に生じた新規血管の分離に重要である(Bodnar et al.,2009)。この分離は、無血管性の成熟した皮膚の形成に必須である。IP−10はまた、ブレオマイシン誘発肺線維症を減弱することも示されている(Keane et al.,1999)。
<結論>
MSCエキソソームは、DMD(デュシェンヌ型筋ジストロフィー)マウスにおいて筋肉組織病理を改善し、組織修復を増強することが知られているサイトカインの産生を誘発した。
[実施例8]
<GVHD(移植片対宿主病)のマウスモデルにおける間葉系幹細胞エキソソームの治療有効性>
<背景>
MSCエキソソームが細胞、免疫および細胞接着恒常性を復活させる能力に基づいて、病理が二次免疫反応を含む疾患を治療するために間葉系幹細胞(MSC)エキソソームを使用することができた。このような疾患には、慢性心不全(Fildes et al.,2009)、アテローム性動脈硬化(Koltsova et al.,2012)、冠動脈および脳動脈疾患(StollbergerおよびFinsterer,2002)、神経変性疾患(Amor et al.,2010)、DMD(デュシェンヌ型筋ジストロフィー)(Evans et al.,2009)ならびに慢性炎症および自己対非自己の免疫認識低下などの免疫障害によって悪化する老年医学症状(Agrawal et al.,2011、Vasto and Caruso,2004)が含まれる。
<方法>
MSCエキソソームの有効性は、GVHD(移植片対宿主病)のマウスモデルで評価した。簡単に説明すると、30匹の6〜8週齢の雌NSG(JAX Stock番号005557;Jax Laboratory)マウスを識別するために耳切して、HEPA濾過した空気で個別に陽圧換気したポリスルホンケージに、ケージ当たり最高5匹の密度で収容した。ケージは2週間毎に交換した。動物室は、完全に人工蛍光灯を用い明暗12時間サイクルで(6amから6pmまで点灯)照明した。動物室の通常の温度範囲は22±4℃、相対湿度範囲は50±15%であった。動物室の空気交換は、1時間当たり15回に設定した。pH2.5から3.0に酸性化した濾過水道水および標準研究室用固形飼料は自由に与えた。3〜7日間馴化した後、マウスを体重によって群分けし、研究0日目にX線照射源によって100RADを照射した。照射して4時間後、10×10個のヒトPBMCをマウスに腹腔内注射して投与した。マウスに、ビヒクル、エキソソーム(10μg)およびエンブレル(100μg)を1、4、7、10、55日目まで腹腔内注射した。臨床所見および体重測定は、週3回実施した。マウスは、
a)開始時の体重の>20%の体重減少、
b)触ると冷たい、
c)嗜眠、猫背および汚い被毛
のいずれかが示された場合、最後の試験を50日目に行う前に、CO2で窒息させることによって安楽死させた。
<結果>
55日目に、ビヒクル群では3匹が生存し、エキソソーム群では6匹が生存し、エンブレル群では4匹が生存した。
<結論>
MSCエキソソームは、GVHD(移植片対宿主病)のマウスの生存を増強した。
[実施例9]
<表皮水疱症(EB)における間葉系幹細胞エキソソームの治療有効性>
表皮水疱症の最も重篤な形態は、接合部型EB(JEB)または栄養障害型EB(DEB)である。
栄養障害型表皮水疱症(DEB)は、COL7A1遺伝子の変異が原因で、C7コラーゲンの減少もしくは欠損、またはC7コラーゲンの短縮が生じる。したがって、DEBの治療における治療標的は、機能的COL7A1遺伝子を置換もしくは送達する遺伝子治療によって、またはC7コラーゲンを投与することによってこの遺伝的欠陥を修正することである(Vanden Oever et al 2014)。遺伝子治療は、C7コラーゲン欠乏の永久的解決をもたらす可能性があるので有利であるが、遺伝子を十分標的細胞に送達するのに適切な戦略を得ることは依然として困難である。比較すると、C7コラーゲンの投与は比較的簡単で、マウスにおける疾患の表現型を修正することができるだろう(Remington et al 2009)。
間葉系幹細胞は、皮膚−上皮接合部に沈着するコラーゲン7を分泌することによって、Col7a1欠損マウスにおいてRDEB疾患表現型を軽減することが示されている(Alexeev et al 2011)。これらの研究を併せて考えると、間葉系幹細胞からのコラーゲン7含有分泌はRDEB疾患表現型を軽減することができることが示唆された。
<プロトコル>
本発明者等は、細胞またはエキソソーム溶解物のコラーゲン7についてのウェスタンブロット分析を実施し、図6Aに示した。
レーンは左から右へ、分子量マーカー、コラーゲン7を過剰発現しているRDEBヒト皮膚線維芽細胞、RDEBヒト皮膚線維芽細胞、正常ヒト皮膚線維芽細胞およびヒト間葉系幹細胞(MSC)エキソソームを示す。
線維芽細胞溶解物は、初代ヒト皮膚線維芽細胞のコンフルエントなディッシュから培地を除去し、細胞溶解緩衝液をディッシュに添加することによって調製した。MSCエキソソームは以前に記載したように調製した。
線維芽細胞およびエキソソーム溶解物は、Abcam製の抗コラーゲンVII抗体[LH7.2](ab6312)を使用して標準免疫ブロッティングアッセイによって分析した。はコラーゲン7を示す。
正常ヒト皮膚線維芽細胞中のコラーゲン7濃度に対してMSCエキソソーム中のコラーゲン7の濃度も推定した。結果は図6Bに示す。
MSCエキソソーム溶解物の2倍段階希釈をタンパク質20μgから開始して調製し、線維芽細胞溶解物200μgと並列してローディングした。ローディング対照としてのCD81に対してブロットもプローブした。
<結果>
結果は図6Aおよび図6Bに示す。
間葉系幹細胞によって分泌されたコラーゲン7のほとんどがエキソソームに関連していることを認めた(図6Aおよび図6B)。
エキソソームタンパク質μg当たりのコラーゲンの量は、正常ヒト線維芽細胞溶解物1μgによって産生される量の100倍を上回る。同種線維芽細胞の皮膚注射は安全であり、皮膚−上皮接合部におけるコラーゲン7の沈着を増加させることによって皮膚強度を改善し、水疱形成を低下させる可能性を有することが示されており(Wong et al 2008)、コラーゲン7注射単独でもRDEBが軽減することができ(Woodley et al.,2004,Remington et al.,2008)るので、コラーゲン7が非常に豊富なエキソソームを投与するとRDEB表現型は軽減するだろう。
[実施例10]
<移植片対宿主病(GVHD)における間葉系幹細胞エキソソームによる免疫恒常性の復活>
この実施例は、移植片対宿主病(GVHD)での免疫恒常性の復活における間葉系幹細胞エキソソームの使用を示す。
Choi,J.,et al.IFNgammaR signaling mediates alloreactive T cell trafficking and GVHD.Blood 120,4093−4103(2012)およびRettig,M.P.,et al.Kinetics of in vivo elimination of suicide gene−expressing T cells affects engraftment,graft−versus−host disease,and graft−versus−leukemia after allogeneic bone marrow transplantation.J Immunol 173、3620−3630(2004)に記載された遅延型リンパ球輸注(DLI)モデルのよく確立されたマウスモデルを使用した。
レシピエントBalb/cマウスに−1日目に900cGyを照射し、0日目にドナーB6 CD45.1+マウスのTCD−BM 5×10個を移植した。
11日目に、ドナーB6 CD45.2+T細胞 2×10個を注入した。移植して12日後(すなわち、DLIの1日後)、32日目まで、エキソソーム0.8μgまたはPBSをマウスに1日おきに投与した。
60日目に、生存したマウス全てを殺処分した。
<結果>
結果は図7に示し、DLIマウスの生存曲線を示す。
図7は、エキソソーム処置マウスの生存がPBS処置マウスよりも有意に高かったことを示している(p=0.0368)。
[実施例11]
<表皮水疱症(EB)における間葉系幹細胞エキソソームの細胞接着の増強および治療効果>
この実施例は、インビボにおける細胞接着の増強における間葉系幹細胞エキソソームの使用および表皮水疱症(EB)における治療効果の発揮を示している。
間葉系幹細胞由来のエキソソームを栄養障害型表皮水疱症の低形質マウスモデルに腹腔内投与した(Fritsch,A.、S.Loeckermann,et al.(2008).“A hypomorphic mouse model of dystrophic epidermolysis bullosa reveals mechanisms of disease and response to fibroblast therapy”.The Journal of Clinical Investigation 118(5):1669−1679に記載されている)。
マウスに生後すぐ2日おきに仔当たり25または50マイクログラムを投与した。
<結果>
結果は、図8に示し、エキソソーム処置した栄養障害型表皮水疱症の低形質マウスモデルの生存曲線を示す。
図8に示したように、25または50マイクログラムを投与されたマウス間の生存曲線は、ログランク検定P=0.0333に基づいて有意に異なっていた。
[参考文献]
本書類および特許請求の範囲において、動詞「含む(to comprise)」およびその活用形は、非限定的な意味で、その語に続くものが含まれることを意味するため使用されるが、明確に言及していないものは排除されない。さらに、不定冠詞「1つの(a)」または「1つの(an)」によってある要素を参照する場合、その要素の1つおよび1つのみが存在することを文脈が明らかに要求しない限り、2つ以上の要素が存在する可能性を排除しない。したがって、不定冠詞「1つの(a)」または「1つの(an)」は通常「少なくとも1つ」を意味する。
本書類で言及した出願および特許のそれぞれ、ならびに上記出願および特許それぞれの実行において参照したもの(「出願引用書類」)を含めた、上記出願および特許のそれぞれにおいて引用または参照した各書類、ならびに出願および特許それぞれにおいて、および出願引用書類のいずれかにおいて引用または言及した任意の製品の製造者の指示書またはカタログは、本明細書に参考として組み込まれる。さらに本文で引用した全書類および本文で引用した書類で引用または参照した全書類および本分で引用または参照した任意の製品の製造者の指示書またはカタログは、本明細書に参考として組み込まれる。
本発明の範囲および精神を逸脱しない、本発明で記載した方法および系の様々な改変および変更は、当業者には明らかであろう。本発明は、特定の好ましい実施形態に関連して記載したが、請求したような本発明は、このような特定の実施形態に必要以上に限定されるものではないことを理解されたい。実際に、分子生物学または関連分野の当業者には明らかな、本発明を実施するために記載された形態の様々な改変は、特許請求の範囲内にあるものとする。

Claims (8)

  1. 表皮水疱症(EB)、単純型表皮水疱症、接合部型表皮水疱症、栄養障害型表皮水疱症、致死性棘融解性表皮水疱症または後天性表皮水疱症に罹患した個体における恒常性を促進、復活または増強する方法において使用するための、間葉系幹細胞エキソソームを含む医薬組成物。
  2. 前記恒常性が、免疫恒常性、より好ましくは免疫応答の維持を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 前記方法が、治療有効量の間葉系幹細胞エキソソームを含む医薬組成物を個体に投与することを含む、請求項1または2に記載の医薬組成物。
  4. 間葉系幹細胞馴化培地(MSC−CM)の生物学的活性などの間葉系幹細胞の少なくとも1つの生物学的特性を含む、前記使用のための請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  5. 前記間葉系幹細胞エキソソームが、電子顕微鏡によって測定したとき、50nmと100nmの間のサイズである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  6. 表皮水疱症(EB)の治療または予防の方法で使用するための、間葉系幹細胞エキソソームを含む医薬組成物。
  7. 表皮水疱症(EB)に罹患した個体において恒常性を促進、復活または増強するための医薬品の調製における間葉系幹細胞エキソソームの使用。
  8. 表皮水疱症(EB)の治療または予防のための医薬品の調製における間葉系幹細胞エキソソームの使用。
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