JP6631218B2 - 凝固物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば、手袋や皮革様シート等の製造に好適に使用可能な凝固物の製造方法に関する。
ウレタン樹脂が水性媒体中に分散した水性ウレタン樹脂組成物は、従来の有機溶剤系ウレタン樹脂組成物と比較して、環境への負荷を低減できることから、人工皮革、合成皮革等の皮革様シート、手袋、コーティング剤、接着剤などを製造する材料として、近年好適に使用され始めている。
前記皮革様シートとしては、不織布等の繊維基材、必要に応じて多孔層等からなる中間層、表皮層及びトップコート層によって構成されるものが一般的である。この中で、水性ウレタン樹脂組成物は、含浸層(前記繊維基材に水性ウレタン樹脂組成物を含浸し凝固したもの)の形成に使用されたり、表皮層やトップコート層の形成に使用されることが多く(例えば、特許文献1を参照。)、多孔層への適用はこれまで検討されていなかった。これは、水性ウレタン樹脂組成物が従来の有機溶剤系ウレタン樹脂組成物とは異なり、多孔構造の形成が困難であると考えられてきたためである。
特開2005−113318号公報
本発明が解決しようとする課題は、水性ウレタン樹脂組成物を使用して、多孔構造を有する凝固物を製造する方法を提供することである。
本発明は、水性ウレタン樹脂(A)、水性媒体(B)、及びカルボジイミド化合物(C)を含有する水性ウレタン樹脂組成物を、基材に塗工し、次いで金属塩及び炭素原子数1〜6の範囲のアルコール溶媒を含有する凝固浴に含浸する工程を有することを特徴とする凝固物の製造方法を提供するものである。
本発明の製造方法によれば、ウレタン樹脂による多孔構造が形成されるため、風合いに優れる凝固物が得られる。また、凝固剤として、炭素原子数が小さいアルコール溶媒を使用するため、環境への負荷も小さいものである。よって、本発明の製造方法により得られる凝固物は、手袋、皮革様シート等の製造に好適に使用することができる。
実施例1で得られた凝固物を有する積層体の断面図の電子顕微鏡写真を示すものである(倍率200倍) 実施例4で得られた凝固物を有する積層体の断面図の電子顕微鏡写真を示すものである(倍率200倍)。 比較例3で得られた凝固物を有する積層体の断面図の電子顕微鏡写真を示すものである(倍率200倍)。
本発明である凝固物の製造方法は、水性ウレタン樹脂(A)、水性媒体(B)、及びカルボジイミド化合物(C)を含有する水性ウレタン樹脂組成物を、基材に塗工し、次いで金属塩及び炭素原子数1〜6の範囲のアルコール溶媒を含有する凝固浴に含浸する工程を有することを特徴とするものである。
本発明においては、前記製造方法を使用することにより、ウレタン樹脂による多孔構造が形成できることが分かった。これまで、ウレタン樹脂により多孔構造を形成する方法としては、溶剤系ウレタン樹脂組成物を湿式成膜法により成膜した場合に多孔構造が形成されることが知られていたが、水性ウレタン樹脂組成物を用いて多孔構造を形成することは困難であると考えられてきた。
なお、本発明において、前記「多孔」とは、多数の細かい孔を有することを示す。
前記水性ウレタン樹脂組成物を塗工する基材としては、例えば、不織布、織布、編み物等の繊維基材:離型処理が施されたプラスチックフィルムなどを使用することができる。前記繊維基材を構成するものとしては、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、アセテート繊維、レーヨン繊維、ポリ乳酸繊維、綿、麻、絹、羊毛、それらの混紡繊維等を使用することができる。
前記水性ウレタン樹脂組成物を前記基材に塗工する方法としては、例えば、ナイフコーター法、スプレー法、カーテンコーター法、フローコーター法、ロールコーター法、刷毛塗り法等が挙げられる。なお、本発明においては、前記水性ウレタン樹脂組成物を塗工するものであり、含浸とは全く異なる。例えば、前記基材として繊維基材を用いた場合において、前記水性ウレタン樹脂組成物を含浸した場合には、繊維基材の内部にまでウレタン樹脂による多孔構造が形成されるが、前記水性ウレタン樹脂組成物を塗工した場合には、繊維基材の表面上にウレタン樹脂による多孔構造が形成され、繊維基材の内部には実質的にウレタン樹脂による多孔構造は形成されない。
前記水性ウレタン樹脂組成物が塗工された基材は、次いで、金属塩及び炭素原子数1〜6の範囲のアルコール溶媒を含有する凝固浴に含浸される。本発明においては、凝固剤として、金属塩及び炭素原子数1〜6の範囲のアルコール溶媒を使用することが必須であり、アニオン成分である金属塩と、ノニオン成分である前記アルコール溶媒を組合わせ用いることにより、水性ウレタン樹脂組成物に対する貧溶媒となることから、ウレタン樹脂の凝固性と多孔構造の形成に寄与するものである。また、前記特定のアルコール溶媒は、疎水性が適度に強く、かつ樹脂配合液への浸透性が高いため、水性ウレタン樹脂組成物を凝固でき、更に風合いに優れた凝固物が得られる。
前記金属塩としては、例えば、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化ナトリウム等を用いることができる。これらの金属塩は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、電気二重層圧縮効果の大きさにより凝固性を一層向上できる点から、硝酸カルシウムを用いることが好ましい。
前記アルコール溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、シクロヘキサノール、2−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール等を用いることができる。これらの溶媒は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、樹脂配合液への浸透性が高く、かつ適度な疎水性を持つイソプロピル基を有するため、凝固性、及び凝固物の風合いをより一層向上できる点から、2−プロパノールを用いることが好ましい。
前記金属塩の含有量としては、前記金属塩と前記アルコール溶媒との合計質量に対して、1〜50質量%の範囲であることが好ましく、2〜20質量%の範囲であることがより好ましい。
前記水性ウレタン樹脂組成物が塗工された基材を、前記凝固浴に含浸する方法としては、例えば、前記基材を、前記凝固浴を貯留した槽に直接含浸し、水性ウレタン樹脂組成物を凝固する方法が挙げられる。この際の含浸・凝固時間としては、例えば1〜30分の範囲である。また、含浸する際の前記凝固浴は、常温であってもよいが、例えば30〜70℃に加温されていてもよい。
得られた凝固物を有する基材は、必要に応じて、前記含浸・凝固後に例えば10分〜2時間の間流水に浸し、不要な凝固剤を洗浄除去することができる。更に、その後、例えば60〜120℃で1分〜1時間の間熱風乾燥させてもよい。
本発明で用いる前記水性ウレタン樹脂組成物は、水性ウレタン樹脂(A)、水性媒体(B)及びカルボジイミド化合物(C)を含有するものである。
前記水性ウレタン樹脂(A)は、後述する水性媒体(B)中に分散等し得るものであり、例えば、アニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基等の親水性基を有する水性ウレタン樹脂;乳化剤で強制的に水性媒体(B)中に分散した水性ウレタン樹脂などを用いることができる。これらの水性ウレタン樹脂(A)は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、製造安定性の点から、親水性基を有する水性ウレタン樹脂を用いることが好ましく、本発明で用いる前記凝固剤で凝固しやすい点から、アニオン性基を有する水性ウレタン樹脂を用いることがより好ましい。
前記アニオン性基を有する水性ウレタン樹脂を得る方法としては、例えば、カルボキシル基を有する化合物及びスルホニル基を有する化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を原料として用いる方法が挙げられる。
前記カルボキシル基を有する化合物としては、例えば、2,2’−ジメチロールプロピオン酸、2,2’−ジメチロールブタン酸、2,2’−ジメチロール酪酸、2,2’−ジメチロールプロピオン酸、2,2’−吉草酸等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記スルホニル基を有する化合物としては、例えば、3,4−ジアミノブタンスルホン酸、3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸、2,6−ジアミノベンゼンスルホン酸、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルスルホン酸等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記カルボキシル基及びスルホニル基は、水性ウレタン樹脂組成物中で、一部又は全部が塩基性化合物に中和されていてもよい。前記塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン等の有機アミン;モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等のアルカノールアミン;ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム等を含む金属塩基化合物などを用いることができる。
前記カチオン性基を有する水性ウレタン樹脂を得る方法としては、例えば、アミノ基を有する化合物の1種又は2種以上を原料として用いる方法が挙げられる。
前記アミノ基を有する化合物としては、例えば、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン等の1級及び2級アミノ基を有する化合物;N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン等のN−アルキルジアルカノールアミン、N−メチルジアミノエチルアミン、N−エチルジアミノエチルアミン等のN−アルキルジアミノアルキルアミンなどの3級アミノ基を有する化合物などを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記ノニオン性基を有する水性ウレタン樹脂を得る方法としては、例えば、オキシエチレン構造を有する化合物の1種又は2種以上を原料として用いる方法が挙げられる。
前記オキシエチレン構造を有する化合物としては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレングリコール等のオキシエチレン構造を有するポリエーテルポリオールを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記強制的に水性媒体(B)中に分散する水性ウレタン樹脂を得る際に用いることができる乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体等のノニオン性乳化剤;オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルカンスルフォネートナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸ナトリウム塩等のアニオン性乳化剤;アルキルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等のカチオン性乳化剤などを用いることができる。これらの乳化剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記水性ウレタン樹脂(A)としては、具体的には、ポリイソシアネート(a1)、ポリオール(a2)、前記した親水性基を有する水性ウレタン樹脂を製造するために用いる原料、及び必要に応じて鎖伸長剤(a3)を原料として得られるものを用いることができる。これらの反応は公知のウレタン化反応を用いることができる。
前記水性ウレタン樹脂(A)としては、本発明で用いる前記凝固剤への溶解性が低く、良好な凝固状態を維持しやすい点から、芳香環を有する水性ウレタン樹脂を用いることが好ましい。
前記水性ウレタン樹脂(A)の芳香環の含有量としては、0.8〜8mol/kgの範囲であることが好ましく、1〜6mol/kgの範囲であることがより好ましい。
前記芳香環は、原料であるポリイソシアネート(a1)、及びポリオール(a2)のいずれかから供給されるが、原料入手の容易性、及び製造安定性の点から、ポリイソシアネート(a2)から供給されることが好ましく、すなわち芳香族ポリイソシアネートを原料として用いることが好ましい。
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート等を用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、原料入手の容易性、及び風合いの点から、ジフェニルメタンジイソアシアネートを用いることが好ましい。
前記ポリイソシアネート(a1)に用いることができるその他のポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂肪族または脂環式ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記ポリオール(a2)としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記ポリオール(a2)の数平均分子量としては、得られる皮膜の機械的強度の点から、500〜8,000の範囲であることが好ましく、800〜4,000の範囲であることがより好ましい。なお、前記ポリオール(a2)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定し得られた値を示す。
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
前記鎖伸長剤(a3)は数平均分子量が50〜450の範囲のものであり、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、ヒドラジン等のアミノ基を有する鎖伸長剤;エチレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、トリメチロールプロパン等の水酸基を有する鎖伸長剤などを用いることができる。これらの鎖伸長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、凝固物の風合いを損なわず、更に継時的な変色を抑制できる点から、水酸基を有する鎖伸長剤を用いることが好ましい。
前記鎖伸長剤(a3)を用いる場合の使用量としては、皮膜の耐久性をより一層向上できる点から、前記ポリイソシアネート(a1)、前記ポリオール(a2)及び前記鎖伸長剤(a3)の合計に対して、0.5〜20質量%の範囲であることが好ましく、1〜10質量%の範囲であることがより好ましい。
前記水性ウレタン樹脂(A)としては、風合いを損なわず、更に継時的な変色を制御できる点から、尿素結合の含有量が1.2mol/kg以下であることが好ましい。
前記尿素結合は、前記アミノ基を有する鎖伸長剤又はイソシアネートが水と反応し生成したアミンと前記ポリイソシアネートが反応した場合に生成するものであるから、アミノ基を有する鎖伸長剤の使用量を調整し、さらに乳化操作をする前にイソシアネートを全てウレタン化させることにより、水性ウレタン樹脂(A)の尿素結合の含有量を調整することができる。なお、前記尿素結合の含有量は、下記一般式(1)で計算した値を示す。
Figure 0006631218
前記水性ウレタン樹脂(A)の製造方法としては、例えば、前記ポリイソシアネート(a1)と前記ポリオール(a2)とを反応させることによって、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを製造し、次いで、必要に応じて前記ウレタンプレポリマーと、前記鎖伸長剤(a3)とを反応させることによって製造する方法;前記ポリイソシアネート(a1)、前記ポリオール(a2)及び必要に応じて前記鎖伸長剤(a3)を一括に仕込み反応させる方法等が挙げられる。これらの反応は、例えば50〜100℃で3〜10時間行うことが挙げられる。
前記ポリオール(a2)が有する水酸基並びに前記鎖伸長剤(a3)が有する水酸基及び/又はアミノ基の合計と、前記芳香族ポリイソシアネート(a1)が有するイソシアネート基とのモル比[(イソシアネート基)/(水酸基及び/又はアミノ基)]としては、0.8〜1.2の範囲であることが好ましく、0.9〜1.1の範囲であることがより好ましい。
前記水性ウレタン樹脂(A)を製造する際には、前記水性ウレタン樹脂(A)に残存するイソシアネート基を失活させることが好ましい。前記イソシアネート基を失活させる場合には、メタノール等の水酸基を1個有するアルコールを用いることが好ましい。前記アルコールの使用量としては、水性ウレタン樹脂(A)100質量部に対し、0.001〜10質量部の範囲であることが好ましい。
また、前記ウレタン樹脂(A)を製造する際には、有機溶剤を用いてもよい。前記有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル化合物;アセトニトリル等のニトリル化合物;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド化合物などを用いることができる。これらの有機溶媒は単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、前記有機溶剤は、水性ウレタン樹脂組成物を得る際には蒸留法等によって除去されることが好ましい。
前記水性媒体(B)としては、例えば、水、水と混和する有機溶剤、これらの混合物等を用いることができる。前記水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−及びイソプロパノール等のアルコール溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶媒;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール溶媒;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル溶媒;N−メチル−2−ピロリドン等のラクタム溶媒等を用いることができる。これらの水性媒体は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、安全性及び環境負荷の軽減化の点から、水のみ、又は、水及び水と混和する有機溶剤との混合物を用いることが好ましく、水のみ用いることがより好ましい。
前記水性ウレタン樹脂(A)と前記水性媒体(B)との質量比[(A)/(B)]としては、作業性の点から、10/80〜70/30の範囲であることが好ましく、20/80〜60/40の範囲であることがより好ましい。
前記カルボジイミド化合物(C)は、ウレタン樹脂の多孔構造を得る上で必須の成分である。前記カルボジイミド化合物(C)を用いることにより多孔構造が得られた理由としては、ウレタン粒子の粒子間架橋により強靭なゲル構造を形成したことが考えられる。
前記カルボジイミド化合物(C)としては、例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−N’−エチルカルボジイミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−N’−エチルカルボジイミドメチオジド、N−tert−ブチル−N’−エチルカルボジイミド、N−シクロヘキシル−N’−(2−モルホリノエチル)カルボジイミドメソ−p−トルエンスルホネート、N,N’−ジ−tert−ブチルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−トリルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物;カルボジイミド化触媒の存在下でポリイソシアネートを公知の縮合反応により得られるポリカルボジイミド;これらの水分散体などを用いることができる。これらの中でも、水性ウレタン樹脂組成物への分散安定性の点から、前記ポリカルボジイミドの水分散体を用いることが好ましい。
前記カルボジイミド化触媒としては、例えば、1−フェニル−1−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド等を用いることができる。これらの触媒は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記ポリイソシアネートとしては、前記水性ウレタン樹脂(A)の原料に用いることができる前記ポリイソシアネート(a1)と同様のものを用いることができる。
前記好ましいカルボジイミド化合物(C)としては、例えば、日清紡ケミカル株式会社製「カルボジライトSV−02」、「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−02−L2」、「カルボジライトV−04」、「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」等を市販品として入手することができる。
前記カルボジイミド化合物(C)の含有量としては、良好な多孔構造が得られる点から、前記水性ウレタン樹脂(A)100質量部に対して、1〜20質量部の範囲であることが好ましく、2〜10質量部の範囲であることがより好ましい。
本発明で用いる水性ウレタン樹脂組成物は、前記ウレタン樹脂(A)、前記水性媒体(B)及び前記カルボジイミド化合物(C)の他に、必要に応じて、その他の添加剤を含有してもよい。
前記その他の添加剤としては、例えば、乳化剤、中和剤、増粘剤、ウレタン化触媒、シランカップリング剤、充填剤、チキソ付与剤、粘着付与剤、ワックス、熱安定剤、耐光安定剤、蛍光増白剤、発泡剤、顔料、染料、導電性付与剤、帯電防止剤、透湿性向上剤、撥水剤、撥油剤、中空発泡体、難燃剤、吸水剤、吸湿剤、消臭剤、整泡剤、ブロッキング防止剤、加水分解防止剤等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記乳化剤は、前記強制的に水性媒体(B)中に分散する水性ウレタン樹脂を得る際に用いることができる乳化剤と同様のものを用いることができる。これらの乳化剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水性ウレタン樹脂(A)の水分散安定性を向上できる点、及び風合いがより一層向上する点から、ノニオン性乳化剤を用いることが好ましい。
前記乳化剤を用いる場合の使用量としては、水分散安定性及び風合いの点から、前記水性ウレタン樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜30質量部の範囲であることが好ましく、1〜10質量部の範囲であることがより好ましい。
前記中和剤は、前記水性ウレタン樹脂(A)として、アニオン性の水性ウレタン樹脂を用いた場合に、そのカルボキシル基を中和するものであり、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の不揮発性塩基;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノール等の三級アミン化合物などを用いることができる。これらの中和剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記中和剤の使用量としては、前記水性ウレタン樹脂(A)に含まれるカルボキシル基のモル数に対して0.8〜1.2倍の範囲であることが好ましい。
以上、本発明で使用する水性ウレタン樹脂組成物としては、前記凝固剤により凝固しやすい点、多孔構造を形成しやすい点、風合いがより一層向上する点、及び水分散安定性が向上する点から、芳香族ポリイソシアネート、ポリオール及び水酸基を有する鎖伸長剤を反応させて得られたアニオン性基を有する水性ウレタン樹脂、水性媒体、及びポリカルボジイミドの水分散体を含有する水性ウレタン樹脂組成物を用いることが好ましい。
以上、本発明の製造方法によれば、ウレタン樹脂による多孔構造が形成されるため、風合いに優れる凝固物が得られる。また、凝固剤として、炭素原子数が小さいアルコール溶媒を使用するため、環境への負荷も小さいものである。よって、本発明の製造方法により得られる凝固物は、手袋、皮革様シート等の製造に好適に使用することができる。
本発明の製造方法により得られる凝固物が手袋の製造に使用される場合の手袋の製造方法としては、例えば、手型、管型等に前記水性ウレタン樹脂組成物を浸漬させ、手形、管型の周りを前記水性ウレタン樹脂組成物でコーティングし、その後、前記金属塩及び炭素原子数1〜6の範囲のアルコール溶媒を含有する凝固浴に含浸し、ウレタン樹脂を凝固する。次いで、その表面を水で洗浄し、乾燥することで、前記手型等の表面に凝固皮膜が形成される。次いで、前記手型等から前記凝固皮膜を剥離することで、前記手型等に応じた形状をした凝固皮膜を有する手袋を得ることができる。前記管を製造する場合も、前記管型を使用すること以外は前記と同様の方法で製造することができる。
また、前記手型や管型には、予めナイロン繊維等の編み物からなる手袋状物や管状物が装着されていてもよい。具体的には、はじめに、前記編み物からなる手袋状物等が装着された手型等に前記水性ウレタン樹脂組成物を浸漬させ、手形、管型の周りを前記水性ウレタン樹脂組成物でコーティングし、その後、前記金属塩及び炭素原子数1〜6の範囲のアルコール溶媒を含有する凝固浴に含浸し、ウレタン樹脂を凝固する。次いで、その表面を水で洗浄し、乾燥することで、前記手袋状物等の表面に凝固した皮膜からなる手袋等が形成し、前記手型及び手袋状物等から前記手袋等を剥離することで、前記手型等に応じた形状をした凝固皮膜からなる手袋等を得ることができる。前記管型を製造する場合も、前記管型、及び、ナイロン繊維等の編み物からなる管状物を用いること以外は、前記と同様の方法で製造することができる。
前記編み物は、前記ナイロン繊維に限らず、ポリエステル繊維やアラミド繊維、綿等によって構成されたものを用いることができる。また、前記編み物の代わりに、前記繊維からなる織物を用いることもできる。また、前記編み物の代わりに、塩化ビニル、天然ゴム、合成ゴム等の樹脂材料からなる手袋状物や管状物を用いることもできる。
また、本発明の製造方法により得られる凝固物が皮革様シートの製造に使用される場合の皮革様シートの製造方法としては、例えば、前記水性ウレタン樹脂組成物を前記繊維基材に塗工し、次いで前記金属塩及び炭素原子数1〜6の範囲のアルコール溶媒を含有する凝固浴に含浸し、ウレタン樹脂を凝固する。次いで、その表面を水で洗浄し、乾燥することで、繊維基材上にウレタン樹脂の凝固層からなる多孔層を有する皮革様シートを製造することができる。前記多孔層の上には、必要に応じて、表皮層及びトップコート層を更に設けてもよい。
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
[合成例1]水性ウレタン樹脂組成物(X−1)の調製
メチルエチルケトン3,281質量部及びオクチル酸第一錫0.1質量部の存在下、ポリカーボネートポリオール(「ニッポラン980R」日本ポリウレタン株式会社製、数平均分子量;2,000)1,000質量部と、2,2’−ジメチロールプロピオン酸17質量部と、エチレングリコール47質量部と、ジフェニルメタンジイソシアネート344質量部とを溶液粘度が20,000mPa・sに達するまで70℃で反応させた後、メタノール3質量部を加えて反応を停止させて水性ウレタン樹脂(A−1)のメチルエチルケトン溶液を得た。このウレタン樹脂溶液にポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(Hydrophile−Lipophile Balance(以下、「HLB」と略記する);14)70質量部と、トリエチルアミン13質量部を混合させた後に、イオン交換水800質量部を加えて転相乳化させることで前記水性ウレタン樹脂(A−1)が水に分散した乳化液を得た。
次いで、前記乳化液からメチルエチルケトンを留去することによって、不揮発分40質量%の水性ウレタン樹脂組成物(X−1)を得た。
[合成例2]水性ウレタン樹脂組成物(X−2)の調製
メチルエチルケトン3,281質量部及びオクチル酸第一錫0.1質量部の存在下、ポリエーテルポリオール(「PTMG2000」三菱化型株式会社製、数平均分子量;2,000)1,000質量部と、2,2’−ジメチロールプロピオン酸17質量部と、エチレングリコール47質量部と、ジフェニルメタンジイソシアネート344質量部とを溶液粘度が20,000mPa・sに達するまで70℃で反応させた後、メタノール3質量部を加えて反応を停止させて水性ウレタン樹脂(A−2)のメチルエチルケトン溶液を得た。このウレタン樹脂溶液にポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(HLB;14)70質量部と、トリエチルアミン13質量部を混合させた後に、イオン交換水800質量部を加えて転相乳化させることで前記水性ウレタン樹脂(A−2)が水に分散した乳化液を得た。
次いで、前記乳化液からメチルエチルケトンを留去することによって、不揮発分40質量%の水性ウレタン樹脂組成物(X−2)を得た。
[合成例3]水性ウレタン樹脂組成物(X−3)の調製
メチルエチルケトン3,281質量部及びオクチル酸第一錫0.1質量部の存在下、ポリエステルポリオール(「プラクセル220」株式会社ダイセル製、数平均分子量;2,000)1,000質量部と、2,2’−ジメチロールプロピオン酸17質量部と、エチレングリコール47質量部と、ジフェニルメタンジイソシアネート344質量部とを溶液粘度が20,000mPa・sに達するまで70℃で反応させた後、メタノール3質量部を加えて反応を停止させて水性ウレタン樹脂(A−3)のメチルエチルケトン溶液を得た。このウレタン樹脂溶液にポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(HLB;14)70質量部と、トリエチルアミン13質量部を混合させた後に、イオン交換水800質量部を加えて転相乳化させることで前記水性ウレタン樹脂(A−3)が水に分散した乳化液を得た。
次いで、前記乳化液からメチルエチルケトンを留去することによって、不揮発分40質量%の水性ウレタン樹脂組成物(X−3)を得た。
[合成例4]水性ウレタン樹脂組成物(X−4)の調製
温度計、窒素ガス、導入管、及び撹拌機を備えた窒素置換された容器中で、前記ポリオキシテトラメチレングリコール(数平均分子量;2,000)を895.3質量部、エチレングリコールを18質量部、2,2’−ジメチロールプロピオン酸を25.5質量部、ジフェニルメタンジイソシアネートを224質量部、及びメチルエチルケトンを487質量部の存在下、70℃で反応させた。
反応物が規定粘度に達した時点でメタノール2.9質量部を加えて1時間撹拌して反応を終了し、更に希釈溶剤としてメチルエチルケトンを1257質量部追加することでアニオン性ポリウレタンの有機溶剤溶液を得た。
次いで、前記アニオン性ポリウレタンの有機溶剤溶液に、中和剤としてトリエチルアミンを19.2質量部加えて攪拌し、更に水を3,638質量部加え撹拌することにより、アニオン性ポリウレタンの水分散体を得た。次いで、この水分散体を脱溶剤することにより、不揮発分40質量%の水性ウレタン樹脂組成物(X−4)を得た。
[実施例1]
合成例1で得られた水性ウレタン樹脂組成物(X−1)100質量部、増粘剤(Borcher社製「Borch Gel L75N」)5質量部、カルボジイミド架橋剤(日清紡ケミカル株式会社製「カルボジライトSV−02」)4質量部、イオン交換水200質量部をメカニカルミキサーにて2,000rpmで2分間撹拌し、次いで真空脱泡機で脱泡させることで、配合液を調製した。
次いで、ナイフコーターを使用して、不織布上に前記配合液を塗工した。これを硝酸カルシウムを5質量%含む2−プロパノール(以下、「IPA」と略記する。)溶液の凝固浴に3分間浸漬させて配合液を凝固させた。その後、取出した不織布を1時間流水に浸し、不要な凝固浴薬剤を洗浄除去した。最後に、100℃の熱風乾燥機にて30分乾燥させて凝固物を有する繊維基材を得た。
[実施例2〜4]
用いる水性ウレタン樹脂組成物の種類を表に示す通り変更した以外は、実施例1と同様にして凝固物を有する繊維基材を得た。
[比較例1]
実施例1において、硝酸カルシウムを5質量%含むIPA溶液の凝固浴に代えて、メタノールの凝固浴を使用した以外は実施例1と同様にして繊維基材の含浸工程を行ったが、水性ウレタン樹脂組成物(X−1)は凝固しなかった。
[比較例2]
実施例1において、配合液として、カルボジイミド架橋剤(日清紡ケミカル株式会社製「カルボジライトSV−02」)を使用しない以外は、実施例1と同様にして、凝固物を有する繊維基材を得た。
[比較例3]
合成例1で得られた水性ウレタン樹脂組成物(X−1)100質量部、増粘剤(Borcher社製「Borch Gel L75N」)5質量部、カルボジイミド架橋剤(日清紡ケミカル株式会社製「カルボジライトSV−02」)4質量部、イオン交換水200質量部をメカニカルミキサーにて2,000rpmで2分間撹拌し、泡を含んだ配合液を調製した。
これをナイフコーターを使用して離型処理されたポリプロピレンフィルム上に前記配合液を塗工し、100℃の100℃の熱風乾燥機にて30分乾燥させてウレタン樹脂層を有する積層体を得た。
[凝固物の多孔構造の形成状態の評価方法]
凝固物の多孔構造の形成状態を確認しやすい様、実施例1〜4、及び比較例2において水性ウレタン樹脂組成物を塗工する基材を、不織布から離型処理されたポリプロピレンフィルムに代え、同様に凝固物を作製し、試験片とした。この試験片を日立ハイテクテクノロジー株式会社製走査型電子顕微鏡「SU3500」(倍率:200倍)を使用して観察し、以下のように評価した。
「T」;電子顕微鏡写真のウレタン樹脂層の断面図において、横方向の径の最長の長さが50μm以下である孔が多数確認される。
「F」;上記以外のもの。
Figure 0006631218
表1中の略語について説明する。
「IPA」;2−プロパノール
「MDI」;ジフェニルメタンジイソシアネート
「SV−02」;日清紡ケミカル株式会社製「カルボジライトSV−02」
本発明である実施例1〜4は、例えば図1〜2においても確認できる通り、多孔構造を有する凝固物が得られることが分かった。
一方、比較例1は、本発明で用いる特定の凝固浴に代えて、メタノールを凝固浴として使用した態様であるが、凝固しなかった。
比較例2は、カルボジイミド化合物(C)を用いない態様であるが、多孔構造を有する凝固物が得られなかった。
比較例3は、凝固浴を使用せず、機械発泡により発生させた泡をウレタン樹脂層に残存させた態様であるが、図3でも確認できる通り、泡が大きく、多孔構造が得られなかった。

Claims (5)

  1. 水性ウレタン樹脂(A)、水性媒体(B)、及びカルボジイミド化合物(C)を含有する水性ウレタン樹脂組成物を、基材に塗工し、次いで金属塩及び炭素原子数1〜6の範囲のアルコール溶媒を含有する凝固浴に含浸する工程を有することを特徴とする多孔構造を有する凝固物の製造方法。
  2. 前記水性ウレタン樹脂(A)が、芳香環を有するものである請求項1記載の多孔構造を有する凝固物の製造方法。
  3. 前記水性ウレタン樹脂(A)の芳香環の含有量が、0.8〜8mol/kgの範囲である請求項2記載の多孔構造を有する凝固物の製造方法。
  4. 前記水性ウレタン樹脂(A)が、芳香族ポリイソシアネートを原料とするものである請求項2記載の多孔構造を有する凝固物の製造方法。
  5. 前記芳香族ポリイソシアネートが、ジフェニルメタンジイソシアネートである請求項4記載の多孔構造を有する凝固物の製造方法。
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