JP6521191B2 - 多孔体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば、合成皮革等の製造に使用可能な多孔体の製造方法に関する。
ウレタン樹脂が水性媒体中に分散した水性ウレタン樹脂組成物は、従来の有機溶剤系ウレタン樹脂組成物と比較して、環境負荷を低減できることから、合成皮革、コーティング剤、接着剤などを製造する材料として、近年好適に使用され始めている。
前記皮革様シートは、一般に、不織布等の繊維基材と、必要に応じて多孔層等からなる中間層と、表皮層とによって構成されるものが多く、前記繊維基材としては、皮革様シートの耐屈曲性や風合いの向上を目的として、不織布等の繊維基材に水性ウレタン樹脂組成物を含浸し感熱凝固したもの(含浸層)が使用されている。
前記繊維基材の含浸用の水性ウレタン樹脂組成物としては、例えば、カルボキシル基及び/又はスルホン酸基を有するポリウレタン樹脂、感熱凝固剤、及び水性媒体を含有する水性ウレタン樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。
しかしながら、感熱凝固による水性ウレタン樹脂組成物の凝固では、ウレタン樹脂の配合液が加熱により一旦低粘度化し、繊維基材に中間層塗工液が吸収され、さらに毛細管現象により繊維交洛点に樹脂が付着しやすく、樹脂が繊維を拘束するため、得られる皮膜は柔軟性や屈曲性に劣り、破損しやすいとの指摘があった。
特開2015−7172号公報
本発明が解決しようとする課題は、有機溶剤を使用せず、風合いに優れる多孔体が得られる製造方法を提供することである。
本発明は、水性ウレタン樹脂組成物を基材に塗工し、40℃以上に加熱した金属塩水溶液に浸漬させることを特徴とする多孔体の製造方法を提供するものである。
本発明の製造方法によれば、風合いに優れる多孔体が得られる。よって、前記多孔体は、合成皮革の製造に好適に使用することができる。
本発明の多孔体の製造方法は、水性ウレタン樹脂組成物を基材に塗工し、40℃以上に加熱した金属塩水溶液に浸漬させることを必須の要件とするものである。
本発明においては、凝固剤として金属凝固剤水溶液を用いることが必須である。前記凝固剤を使用することにより、樹脂付着状態の均一性が向上し、多孔化するため、優れた風合いを有する多孔体が得られる。また、凝固剤を40℃以上に加熱することにより、凝固速度が向上するため、水性ウレタン樹脂を凝固させることができ、更に優れた風合いを有する凝固物が得られる。なお、凝固剤の温度が40℃未満であると、水性ウレタン樹脂を凝固することができない。前記凝固剤の加熱温度としては、40〜100℃、さらには40〜80℃の範囲であることが好ましい。なお、本発明において、「多孔体」とは、多数の孔を有するものを示す。
前記金属塩としては、例えば、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化ナトリウム等を用いることができる。これらの金属塩は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水性ウレタン樹脂組成物の増粘、及び凝固速度が速く、毛細管現象による樹脂の繊維付着・拘束を抑制できるため、より一層優れた風合いが得られる点から、塩化ナトリウムを用いることが好ましい。
前記凝固剤に用いる水としては、例えば、イオン交換水、蒸留水、水道水等を用いることができる。これらの水は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記金属塩の含有量としては、前記金属塩水溶液中、1〜50質量%の範囲であることが好ましく、2〜20質量%の範囲であることがより好ましい。
前記基材としては、例えば、基布;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンエチレンビニルアルコール、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミドなどを用いて得られるシート又はフィルムなどを用いることができる。これらの中でも、本発明で得られる多孔体が合成皮革として使用される場合には、優れた風合いが得られることから、基布を用いることが好ましい。
前記基布としては、例えば、不織布、織布、編み物等を使用することができる。前記繊維基材を構成するものとしては、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、アセテート繊維、レーヨン繊維、ポリ乳酸繊維、綿、麻、絹、羊毛、それらの混紡繊維等を使用することができる。
前記多孔体は、水性ウレタン樹脂組成物を基材に塗工し、40℃以上に加熱した前記金属塩水溶液に浸漬することにより形成される。
前記水性ウレタン樹脂組成物を基材に塗工する方法としては、例えば、例えば、ロールコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、グラビアコーター、コンマコーター、T−ダイコーター、アプリケーター等を使用する方法が挙げられる。
次いで、塗工物を更に前記40℃以上に加熱した前記金属塩水溶液を含む凝固浴に浸漬することで、水性ウレタン樹脂組成物中のウレタン樹脂が凝固され、多孔体が得られる。この際の浸漬・凝固時間としては、例えば1〜30分の範囲である。
多孔体を得た後は、必要に応じて、凝固後に例えば10分〜2時間の間流水に浸し、不要な凝固剤を洗浄除去することができる。
本発明において用いることができる水性ウレタン樹脂組成物としては、例えば、水性ウレタン樹脂(A)、及び水性媒体(B)を含有するものを用いることができる。
前記水性ウレタン樹脂(A)は、後述する水性媒体(B)中に分散等し得るものであり、例えば、アニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基等の親水性基を有する水性ウレタン樹脂;乳化剤で強制的に水性媒体(B)中に分散した水性ウレタン樹脂などを用いることができる。これらの水性ウレタン樹脂(A)は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、製造安定性の点から、親水性基を有する水性ウレタン樹脂を用いることが好ましく、電気二重層圧縮効果により前記凝固剤に対する凝固性がより一層向上する点、及び風合いがより一層向上する点から、アニオン性基を有する水性ウレタン樹脂を用いることがより好ましい。
前記アニオン性基を有する水性ウレタン樹脂を得る方法としては、例えば、カルボキシル基を有する化合物及びスルホニル基を有する化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を原料として用いる方法が挙げられる。
前記カルボキシル基を有する化合物としては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記スルホニル基を有する化合物としては、例えば、3,4−ジアミノブタンスルホン酸、3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸、2,6−ジアミノベンゼンスルホン酸、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルスルホン酸等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記カルボキシル基及びスルホニル基は、水性ウレタン樹脂組成物中で、一部又は全部が塩基性化合物に中和されていてもよい。前記塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン等の有機アミン;モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等のアルカノールアミン;ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム等を含む金属塩基化合物などを用いることができる。
前記カチオン性基を有する水性ウレタン樹脂を得る方法としては、例えば、アミノ基を有する化合物の1種又は2種以上を原料として用いる方法が挙げられる。
前記アミノ基を有する化合物としては、例えば、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン等の1級及び2級アミノ基を有する化合物;N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン等のN−アルキルジアルカノールアミン、N−メチルジアミノエチルアミン、N−エチルジアミノエチルアミン等のN−アルキルジアミノアルキルアミンなどの3級アミノ基を有する化合物などを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記ノニオン性基を有する水性ウレタン樹脂を得る方法としては、例えば、オキシエチレン構造を有する化合物の1種又は2種以上を原料として用いる方法が挙げられる。
前記オキシエチレン構造を有する化合物としては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレングリコール等のオキシエチレン構造を有するポリエーテルポリオールを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記強制的に水性媒体(B)中に分散する水性ウレタン樹脂を得る際に用いることができる乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体等のノニオン性乳化剤;オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルカンスルフォネートナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸ナトリウム塩等のアニオン性乳化剤;アルキルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等のカチオン性乳化剤などを用いることができる。これらの乳化剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記水性ウレタン樹脂(A)としては、具体的には、ポリイソシアネート(a1)、ポリオール(a2)、前記した親水性基を有する水性ウレタン樹脂を製造するために用いる原料、及び必要に応じて鎖伸長剤(a3)を原料として得られるものを用いることができる。これらの反応は公知のウレタン化反応を用いることができる。
前記水性ウレタン樹脂(A)としては、本発明で用いる前記凝固剤への溶解性が低く、良好な凝固状態を維持しやすく多孔化しやすい点、及び風合いがより一層向上する点から、芳香環を有する水性ウレタン樹脂を用いることが好ましい。
前記水性ウレタン樹脂(A)の芳香環の含有量としては、0.8〜8mol/kgの範囲であることが好ましく、1〜6mol/kgの範囲であることがより好ましい。
前記芳香環は、原料であるポリイソシアネート(a1)、及びポリオール(a2)のいずれかから供給されるが、原料入手の容易性、及び製造安定性の点から、ポリイソシアネート(a1)から供給されることが好ましく、すなわち芳香族ポリイソシアネートを用いることが好ましい。
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート等を用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、原料入手の容易性、及び風合いの点から、ジフェニルメタンジイソアシアネートを用いることが好ましい。
前記ポリイソシアネート(a1)に用いることができるその他のポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂肪族または脂環式ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記ポリオール(a2)としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記ポリオール(a2)の数平均分子量としては、得られる皮膜の機械的強度の点から、500〜8,000の範囲であることが好ましく、800〜4,000の範囲であることがより好ましい。なお、前記ポリオール(a2)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
前記鎖伸長剤(a3)としては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、ヒドラジン等のアミノ基を有する鎖伸長剤;エチレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、トリメチロールプロパン等の水酸基を有する鎖伸長剤などを用いることができる。これらの鎖伸長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、オイルグリップ性及び耐薬品性をより一層向上できる点から、水酸基を有する鎖伸長剤を用いることが好ましい。
前記鎖伸長剤(a3)を用いる場合の使用量としては、皮膜の耐久性をより一層向上できる点から、前記ポリイソシアネート(a1)、前記ポリオール(a2)及び前記鎖伸長剤(a3)の合計質量中0.5〜20質量%の範囲であることが好ましく、1〜10質量%の範囲であることがより好ましい。
前記水性ウレタン樹脂(A)としては、風合いを損なわず、更に継時的な変色を制御できる点から、尿素結合の含有量が1.2mol/kg以下であることが好ましい。
前記尿素結合は、前記アミノ基を有する鎖伸長剤又はイソシアネートが水と反応し生成したアミンと前記ポリイソシアネートが反応した場合に生成するものであるから、アミノ基を有する鎖伸長剤の使用量を調整し、さらに乳化操作をする前にイソシアネートを全てウレタン化させることにより、水性ウレタン樹脂(A)の尿素結合の含有量を調整することができる。なお、前記尿素結合の含有量は、下記一般式(1)で計算した値を示す。
Figure 0006521191
前記水性ウレタン樹脂(A)の製造方法としては、例えば、前記ポリイソシアネート(a1)と前記ポリオール(a2)とを反応させることによって、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを製造し、次いで、必要に応じて前記ウレタンプレポリマーと、前記鎖伸長剤(a3)とを反応させることによって製造する方法;前記ポリイソシアネート(a1)、前記ポリオール(a2)及び必要に応じて前記鎖伸長剤(a3)を一括に仕込み反応させる方法等が挙げられる。これらの反応は、例えば50〜100℃で3〜10時間行うことが挙げられる。
前記ポリオール(a2)が有する水酸基並びに前記鎖伸長剤(a3)が有する水酸基及びアミノ基の合計と、前記芳香族ポリイソシアネート(a1)が有するイソシアネート基とのモル比[(イソシアネート基)/(水酸基及びアミノ基)]としては、0.8〜1.2の範囲であることが好ましく、0.9〜1.1の範囲であることがより好ましい。
前記水性ウレタン樹脂(A)を製造する際には、前記水性ウレタン樹脂(A)に残存するイソシアネート基を失活させることが好ましい。前記イソシアネート基を失活させる場合には、メタノール等の水酸基を1個有するアルコールを用いることが好ましい。前記アルコールの使用量としては、水性ウレタン樹脂(A)100質量部に対し、0.001〜10質量部の範囲であることが好ましい。
また、前記ウレタン樹脂(A)を製造する際には、有機溶剤を用いてもよい。前記有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル化合物;アセトニトリル等のニトリル化合物;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド化合物などを用いることができる。これらの有機溶媒は単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、前記有機溶剤は、水性ウレタン樹脂組成物を得る際には蒸留法等によって除去されることが好ましい。
前記水性媒体(B)としては、例えば、水、水と混和する有機溶剤、これらの混合物等を用いることができる。前記水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−及びイソプロパノール等のアルコール溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶媒;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール溶媒;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル溶媒;N−メチル−2−ピロリドン等のラクタム溶媒等を用いることができる。これらの水性媒体は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、安全性及び環境負荷の軽減化の点から、水のみ、又は、水及び水と混和する有機溶剤との混合物を用いることが好ましく、水のみ用いることがより好ましい。
前記水性ウレタン樹脂(A)と前記水性媒体(B)との質量比[(A)/(B)]としては、作業性の点から、10/80〜70/30の範囲であることが好ましく、20/80〜60/40の範囲であることがより好ましい。
本発明で用いる水性ウレタン樹脂組成物は、前記ウレタン樹脂(A)、及び前記水性媒体(B)の他に、必要に応じて、その他の添加剤を含有してもよい。
前記その他の添加剤としては、例えば、乳化剤、中和剤、増粘剤、架橋剤、ウレタン化触媒、シランカップリング剤、充填剤、チキソ付与剤、粘着付与剤、ワックス、熱安定剤、耐光安定剤、蛍光増白剤、発泡剤、顔料、染料、導電性付与剤、帯電防止剤、透湿性向上剤、撥水剤、撥油剤、中空発泡体、難燃剤、吸水剤、吸湿剤、消臭剤、整泡剤、ブロッキング防止剤、加水分解防止剤等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記乳化剤は、前記強制的に水性媒体(B)中に分散する水性ウレタン樹脂を得る際に用いることができる乳化剤と同様のものを用いることができる。これらの乳化剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水性ウレタン樹脂(A)の水分散安定性を向上できる点、及び風合いがより一層向上する点から、ノニオン性乳化剤を用いることが好ましい。
前記乳化剤を用いる場合の使用量としては、水分散安定性及び風合いの点から、前記水性ウレタン樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜30質量部の範囲であることが好ましく、1〜10質量部の範囲であることがより好ましい。
前記中和剤は、前記水性ウレタン樹脂(A)として、アニオン性の水性ウレタン樹脂を用いた場合に、そのカルボキシル基を中和するものであり、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の不揮発性塩基;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノール等の三級アミン化合物などを用いることができる。これらの中和剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記中和剤の使用量としては、前記水性ウレタン樹脂(A)に含まれるカルボキシル基のモル数に対して0.8〜1.2倍の範囲であることが好ましい。
以上、本発明で使用する水性ウレタン樹脂組成物としては、前記凝固剤により一層凝固しやすくなる点、風合いがより一層向上する点、及び水分散安定性が向上する点から、芳香族ポリイソシアネート、ポリオール及び鎖伸長剤を反応させて得られたアニオン性基を有する水性ウレタン樹脂(A)、水性媒体(B)、及び、ノニオン性乳化剤を含有する水性ウレタン樹脂組成物を用いることが好ましい。
本発明の多孔体が、合成皮革として使用される場合には、前記基材として基布を使用することにより、基布、及び、多孔体による中間層を有する合成皮革を得ることができる。また、前記中間層の上には、必要に応じて、表皮層を設けてもよい。前記中間層上に、表皮層を作製する方法としては、例えば、前記中間層上に、表皮層を形成する材料を塗工し、乾燥させる方法;離型紙上に作製した表皮層を前記中間層と貼り合わせる方法等が挙げられる。
前記表皮層を形成する材料としては、例えば、公知の水性ウレタン樹脂、溶剤系ウレタン樹脂、無溶剤ウレタン樹脂、水性アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂等を用いることができる。これらの樹脂は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記合成皮革を製造した後は、必要に応じて、例えば、30〜100℃で1〜10日エージングしてもよい。
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
[合成例1]水性ウレタン樹脂組成物(X−1)の調製
メチルエチルケトン3,281質量部及びオクチル酸第一錫0.1質量部の存在下、ポリカーボネートポリオール(「ニッポラン980R」日本ポリウレタン株式会社製、数平均分子量;2,000)1,000質量部と、2,2−ジメチロールプロピオン酸17質量部と、エチレングリコール47質量部と、ジフェニルメタンジイソシアネート344質量部とを溶液粘度が20,000mPa・sに達するまで70℃で反応させた後、メタノール3質量部を加えて反応を停止させて水性ウレタン樹脂(A−1)のメチルエチルケトン溶液を得た。このウレタン樹脂溶液にポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(Hydrophile−Lipophile Balance(以下、「HLB」と略記する);14)70質量部と、トリエチルアミン13質量部を混合させた後に、イオン交換水800質量部を加えて転相乳化させることで前記水性ウレタン樹脂(A−1)が水に分散した乳化液を得た。
次いで、前記乳化液からメチルエチルケトンを留去することによって、不揮発分40質量%の水性ウレタン樹脂組成物(X−1)を得た。
[合成例2]水性ウレタン樹脂組成物(X−2)の調製
メチルエチルケトン3,281質量部及びオクチル酸第一錫0.1質量部の存在下、ポリエーテルポリオール(「PTMG2000」三菱化型株式会社製、数平均分子量;2,000)1,000質量部と、2,2−ジメチロールプロピオン酸17質量部と、エチレングリコール47質量部と、ジフェニルメタンジイソシアネート344質量部とを溶液粘度が20,000mPa・sに達するまで70℃で反応させた後、メタノール3質量部を加えて反応を停止させて水性ウレタン樹脂(A−2)のメチルエチルケトン溶液を得た。このウレタン樹脂溶液にポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(HLB;14)70質量部と、トリエチルアミン13質量部を混合させた後に、イオン交換水800質量部を加えて転相乳化させることで前記水性ウレタン樹脂(A−2)が水に分散した乳化液を得た。
次いで、前記乳化液からメチルエチルケトンを留去することによって、不揮発分40質量%の水性ウレタン樹脂組成物(X−2)を得た。
[合成例3]水性ウレタン樹脂組成物(X−3)の調製
メチルエチルケトン3,281質量部及びオクチル酸第一錫0.1質量部の存在下、ポリエステルポリオール(「プラクセル220」株式会社ダイセル製、数平均分子量;2,000)1,000質量部と、2,2−ジメチロールプロピオン酸17質量部と、エチレングリコール47質量部と、ジフェニルメタンジイソシアネート344質量部とを溶液粘度が20,000mPa・sに達するまで70℃で反応させた後、メタノール3質量部を加えて反応を停止させて水性ウレタン樹脂(A−3)のメチルエチルケトン溶液を得た。このウレタン樹脂溶液にポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(HLB;14)70質量部と、トリエチルアミン13質量部を混合させた後に、イオン交換水800質量部を加えて転相乳化させることで前記水性ウレタン樹脂(A−3)が水に分散した乳化液を得た。
次いで、前記乳化液からメチルエチルケトンを留去することによって、不揮発分40質量%の水性ウレタン樹脂組成物(X−3)を得た。
[実施例1]
合成例1で得られた水性ウレタン樹脂組成物(X−1)100質量部、増粘剤(Borcher社製「Borch Gel L75N」)5質量部、カルボジイミド架橋剤(日清紡ケミカル株式会社製「カルボジライトSV−02」)4質量部、イオン交換水100質量部をメカニカルミキサーにて2,000rpmで2分間撹拌し、次いで真空脱泡機で脱泡させることで、配合液を調製した。
次いで、不織布基材表面にナイフコーティング(クリアランス100μm)にて前記配合液を塗工した。続いて、60℃に加熱した塩化ナトリウム20質量%水溶液へコーティング基材を3分間浸漬し、コーティング皮膜を凝固させた。その後、水に60分間浸漬させて余分な凝固剤を洗浄し、120℃で30分間乾燥させることにより、多孔体を得た。
[実施例2〜3]
用いる水性ウレタン樹脂組成物の種類を表に示す通り変更した以外は、実施例1と同様にして多孔体を得た。
[比較例1]
合成例1で得られた水性ウレタン樹脂組成物(X−1)100質量部、増粘剤(Borcher社製「Borch Gel L75N」)5質量部、カルボジイミド架橋剤(日清紡ケミカル株式会社製「カルボジライトSV−02」)4質量部、イオン交換水100質量部をメカニカルミキサーにて2,000rpmで2分間撹拌し、次いで真空脱泡機で脱泡させることで、配合液を調製した。
次いで、不織布基材表面にナイフコーティング(クリアランス100μm)にて前記配合液を塗工した。次いで、それを前記ギアー式熱風乾燥機により100℃で10分乾燥することによって、感熱凝固による物品を得た。
[比較例2]
実施例1において、60℃に加熱した塩化ナトリウム20質量%水溶液の凝固浴に代えて、10℃の塩化ナトリウム20質量%水溶液の凝固浴を使用した以外は実施例1と同様にして行ったが、水性ウレタン樹脂組成物(X−1)は凝固しなかった。
[数平均分子量の測定方法]
合成例で用いたポリオール等の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件により測定した値を示す。
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
[加工時の臭気の評価方法]
加工中の凝固浴層の1m上方にて、臭いを嗅ぎ、以下のように評価した。
「T」;臭気を感じる。
「F」;臭気を感じない。
[繊維基材への水性ウレタン樹脂の付着状態の評価方法]
実施例及び比較例で得られた物品を、日立ハイテクテクノロジー株式会社製走査型電子顕微鏡「SU3500」(倍率200倍)を使用して観察し、以下のように評価した。
「T」;基布表面に形成した水性ウレタン樹脂層に多孔構造が確認される。
「F」;基布表面に形成した水性ウレタン樹脂層に多孔構造が確認されない。
[風合いの評価方法]
実施例及び比較例で得られた物品を、手で触った際の触感により以下のように評価した。
「A」;張り腰感、充実感共に優れている。
「B」;張り腰感、充実感が感じられる。
「C」;張り腰感、充実感がやや劣る。
「D」;張り腰感、充実感が全く感じられない。
Figure 0006521191
表1中の略語について説明する。
「MDI」;ジフェニルメタンジイソシアネート
本発明である実施例1〜3にて得られた合成皮革用中間層は、風合いに優れることが分かった。また、有機溶剤を使用していないため臭気の問題も発生しなかった。
一方、比較例1は、感熱凝固による凝固を行った態様であるが、風合いが不良であった。
比較例2は、凝固浴を加熱せず、10℃の状態で使用した態様であるが、凝固しなかった。

Claims (1)

  1. 基布、及び、中間層を有する合成皮革の製造方法であって、有機溶剤を含有せず、水性媒体として水のみを含有する水性ウレタン樹脂組成物を基布に塗工し、40℃以上に加熱した塩化ナトリウム水溶液に浸漬させて中間層を形成することを特徴とする合成皮革の製造方法。
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