JP6631077B2 - 液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子 - Google Patents

液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子 Download PDF

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Description

本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子に関する。
従来、液晶表示素子としては、電極構造や使用する液晶分子の物性、製造工程等が異なる種々の駆動方式のものが開発されており、例えばTN(Twisted Nematic)型やSTN(Super Twisted Nematic)型、VA(Vertical Alignment)型、IPS型(In-Plane Switching)、FFS(fringe field switching)型等の各種液晶表示素子が知られている。これら液晶表示素子は、液晶分子を配向させるための液晶配向膜を有する。
近年、液晶表示素子の表示性能の更なる向上を図るべく、種々の液晶配向剤が提案されている。例えば、残像(画像の焼き付き)の低減を目的として、イミド基以外に窒素原子を有するポリイミド又はその前駆体を含む液晶配向剤を用いて液晶配向膜を形成することが提案されている(例えば、特許文献1や特許文献2参照)。
特許文献1には、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を含むテトラカルボン酸二無水物と、アミド結合を有するジアミンを含むジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸、及びテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸のイミド化重合体、とを液晶配向剤に含有させること、及び液晶配向剤中におけるイミド化重合体の有するイミド環の数の割合を特定範囲とすることが提案されている。特許文献1では、こうした液晶配向剤を用いることにより電圧保持性能及び残像特性の改善を図るようにしている。
また、特許文献2には、第三級ブトキシカルボニル基(t−BOC基)で保護されたアミノ基が1級アミノ基に対してオルト位に導入された芳香族ジアミンを用い、このジアミンを用いて得られるポリアミック酸やポリイミドを液晶配向剤に含有させることが提案されている。この技術によると、膜形成時の加熱によりt−BOC基が脱保護されてアミノ基が生成され、生成したアミノ基の分子内反応又は分子間反応(架橋反応)により複素環を形成させることで残留DC電圧の蓄積の低減を図ることが記載されている。
特開2009−294274号公報 国際公開第2013/115228号
垂直配向型やTN型、STN型などの液晶表示素子では、直鎖構造やメソゲン骨格などの液晶配向性基を側鎖に有する重合体を用いて液晶配向膜が形成される。この場合、液晶表示素子の焼き付き(特に交流電圧による焼き付き)を改良するためには、重合体の側鎖を剛直な構造にすることが考えられるが、その一方で、重合体の側鎖を剛直な構造にすると、重合体の溶剤に対する溶解性が低下してしまう。つまり、液晶表示素子の焼き付き低減と重合体の溶解性改善とはトレードオフの関係にあり、双方の特性を両立させることは困難であった。
また、大型の液晶パネルを作製する際には、液晶配向剤を基板に印刷した後、次のプレベーク工程が行われるまで一時的に保管されることで、印刷工程とプレベーク工程との間に引き置き時間が発生することがある。このとき、重合体の溶剤に対する溶解性が良好でない場合には、引き置きによって印刷ムラやピンホールが発生しやすく、結果として表示品位の低下や製品歩留まりの低下を招くおそれがある。
本発明は、重合体成分の溶剤に対する溶解性と、液晶表示素子の焼き付き低減とを両立することが可能な液晶配向剤を提供することを一つの目的とする。
本発明者らは上記のような従来技術の課題を達成するべく鋭意検討し、「−NH−」を保護基で保護した構造を側鎖に有する重合体を液晶配向剤に含有させることにより、上記課題を解決可能であることを見出した。具体的には、以下の液晶配向剤、液晶配向膜、液晶表示素子、重合体及び化合物が提供される。
本発明は一つの側面において、下記式(1)で表される部分構造を有する重合体(P)を含有する液晶配向剤を提供する。
(式(1)中、Aは単結合又は2価の連結基であり、Rは炭素数8以上の1価の有機基である。Xは保護基である。「*」は重合体の主鎖に結合する結合手を示す。)
また、別の一つの側面において、上記液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を提供する。また、上記液晶配向膜を備える液晶表示素子を提供する。
本発明は、別の一つの側面において、上記式(1)で表される部分構造を有する重合体を提供する。また、下記式(3)で表される化合物及び下記式(4)で表される化合物を提供する。
(式(3)中、Aは単結合又は2価の連結基であり、Rは炭素数8以上の1価の有機基である。Xは保護基である。)
(式(4)中、Aは2価の有機基であり、Rは炭素数8以上の1価の有機基である。Xは保護基である。)
重合体側鎖の−NH−を保護基で保護して液晶配向剤中に含有させることにより、液晶配向剤の状態では、重合体の溶剤に対する溶解性を良好にすることができる。また、液晶配向剤を基板に塗布して製膜する際には、例えば製膜時の加熱や、酸又は塩基などによって保護基が脱離して−NH−に変換されることで、製膜後には配向性の高い構造が再生され、結果として液晶表示素子の焼き付き低減(特にAC残像の低減)を図ることができる。
実施例および比較例にて製造した、パターニングされた透明導電膜を有する液晶セルにおける透明導電膜のパターンを示す説明図である。
以下に、本発明に係る液晶配向剤に含まれる各成分、及び必要に応じて任意に配合されるその他の成分について説明する。
<重合体(P)>
本発明に係る液晶配向剤は、下記式(1)で表される部分構造を有する重合体(P)を含有する。
(式(1)中、Aは単結合又は2価の連結基であり、Rは炭素数8以上の1価の有機基である。Xは保護基である。「*」は重合体の主鎖に結合する結合手を示す。)
上記式(1)において、Aの2価の連結基は、例えば、炭素数1〜20の2価の炭化水素基;炭化水素基のメチレン基を−O−、−S−、−CO−、−COO−、−COS−、−NR−、又は−CO−NR−(ただし、Rは水素原子、炭素数1〜12の1価の炭化水素基又は保護基である。)等で置き換えてなる2価の基;炭化水素基の炭素原子に結合する水素原子の少なくとも1個をハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、水酸基、シアノ基等で置換してなる2価の基;−CO−、−COO−、−NR−CO−、などが挙げられる。
ここで、本明細書において「炭化水素基」は、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含む意味である。これらのうち、「鎖状炭化水素基」は、主鎖に環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基を意味する。ただし、飽和でも不飽和でもよい。「脂環式炭化水素基」は、環構造としては脂環式炭化水素の構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基を意味する。ただし、脂環式炭化水素の構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を有するものも含む。「芳香族炭化水素基」は、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基を意味する。ただし、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環式炭化水素の構造を含んでいてもよい。「有機基」とは、炭化水素基を含む基を意味し、構造中にヘテロ原子を含んでいてもよい。
における炭素数1〜20の2価の炭化水素基の具体例としては、鎖状炭化水素基として、例えばメチレン基、エチレン基、プロパンジイル基、ブタンジイル基、ペンタンジイル基、ヘキサンジイル基、ヘプタンジイル基、オクタンジイル基、ノナンジイル基、デカンジイル基、ビニレン基、プロペンジイル基、ブテンジイル基等を;脂環式炭化水素基として、例えばシクロへキシレン基等を;芳香族炭化水素基として、例えばフェニレン基、ビフェニレン基等を;それぞれ挙げることができる。
は、アミノ基(−NH−)を不活性な官能基に変換しておくための官能基であれば特に限定されず、例えば熱、酸又は塩基で脱離する1価の有機基などが挙げられる。Xとして好ましくは、熱により脱離する1価の有機基であり、具体例としては、例えばカルバメート系保護基、アミド系保護基、イミド系保護基、スルホンアミド系保護基などが挙げられる。これらの中で、好ましくはカルバメート系保護基であり、その具体例としては、例えばt−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、1,1−ジメチル−2−ハロエチルオキシカルボニル基、1,1−ジメチル−2−シアノエチルオキシカルボニル基、9−フルオレニルメチルカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、2−(トリメチルシリル)エトキシカルボニル基などが挙げられる。熱による脱保護が容易である点や、製膜時の加熱によって脱離したXに由来する化合物を気体として膜外に排出可能な点で、中でもt−ブトキシカルボニル基が好ましい。
は、炭素数8以上の1価の有機基である。Rの炭素数は8以上であればよいが、液晶分子の配向性を高める観点から、10以上とすることが好ましく、12以上とすることがより好ましく、15以上とすることがさらに好ましく、17以上とすることが特に好ましい。炭素数の上限は特に制限されず、例えば100以下とすることができる。Rの構造は特に制限されるものではないが、下記式(2)で表される基を好ましい具体例として挙げることができる。
(式(2)中、Aは単結合又は2価の連結基であり、Rは液晶配向性基又は光配向性基である。「*」は窒素原子に結合する結合手を示す。)
上記式(2)のRにおける液晶配向性基及び光配向性基は共に、液晶分子にプレチルト角を付与可能な基である。これらのうち光配向性基は、液晶分子を配向制御する特性を光照射によって発現可能な基であり、液晶配向性基は、液晶分子を配向制御する特性を光照射によらずに発現可能な基である。Rの液晶配向性基として具体的には、例えば炭素数8〜20のアルキル基、炭素数8〜20のフルオロアルキル基、炭素数8〜20のアルコキシ基、炭素数17〜51のステロイド骨格を有する基、及び複数の環が直接又は連結基を介して結合してなる基などが挙げられ、これらは置換基を有していてもよい。
ここで、炭素数8〜20のアルキル基としては、例えばオクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基などを;炭素数8〜20のフルオロアルキル基としては、例えばパーフルオロオクチル基、パーフルオロオクチルエチル基、パーフルオロデシル基、パーフルオロデシルエチル基等を;炭素数8〜20のアルコキシ基として、例えばオクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、ノナデシルオキシ基、エイコシルオキシ基等を;
炭素数17〜51のステロイド骨格を有する基としては、例えばコレスタニル基、コレステリル基、ラノスタニル基等を;
複数の環が直接又は連結基を介して結合してなる基としては、例えば下記式(L−1)〜式(L−10)
(式(L−1)〜式(L−10)中、Xは、単結合、−C−、*1−COO−、*1−OCO−、*1−COS−、*1−SCO−、*1−NRCO−、*1−CONR−、*1−CHO−、*1−OCH−、*1−CHS−又は*1−SCH−(ただし、Rは水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、又は熱により脱離する1価の有機基である。「*1」は、「*」を有する環構造との結合手を示す。)である。nは0〜20の整数であり、mは1〜20の整数である。「*」は、上記式(2)中のAとの結合手を示す。)
のそれぞれで表される基などを、挙げることができる。炭素数8〜20のアルキル基、フルオロアルキル基及びアルコキシ基は直鎖状でも分岐状でもよいが、直鎖状であることが好ましい。
上記式(L−1)〜式(L−5)において、基「C2n+1−」は直鎖状であることが好ましい。上記式(L−6)〜式(L−10)において、基「C2m+1−」及び基「−C2n−」は、それぞれ直鎖状であることが好ましい。nは2〜20であることが好ましく、3〜15であることがより好ましい。mは1〜15が好ましく、1〜10がより好ましい。
液晶配向性基が有していてもよい置換基としては、例えば(メタ)アクロイルオキシ基、スチリル基、マレイミド基、ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基、ビニリデン基等の光重合性基などが挙げられる。これらのうち、光反応性が高い点で、(メタ)アクリロキシ基、スチリル基又はマレイミド基を好ましく用いることができる。なお、「(メタ)アクリロキシ」は、「アクリロキシ」及び「メタクリロキシ」を含む意味である。
の2価の連結基としては、例えばカルボニル基、炭素数1〜10のアルカンジイル基、「*2−CO−R−COO−」(ただし、Rは炭素数1〜10のアルカンジイル基又はシクロへキシレン基である。「*2」は窒素原子との結合手を示す。)などが挙げられる。
の光配向性基は、光異性化や光二量化、光分解等によって配向規制力を発現する基であり、その具体例としては、例えばアゾ化合物又はその誘導体を基本骨格として含有するアゾ含有基、桂皮酸又はその誘導体を基本骨格として含有する桂皮酸含有基、カルコン又はその誘導体を基本骨格として含有するカルコン含有基、ベンゾフェノン又はその誘導体を基本骨格として含有するベンゾフェノン含有基、クマリン又はその誘導体を基本骨格として含有するクマリン含有基、シクロブタン又はその誘導体を基本骨格として含有するシクロブタン含有基等が挙げられる。これらのうち、光配向性が良好である点及び重合体への導入しやすさの観点から、アゾ含有基又は桂皮酸含有基であることが好ましい。
アゾ含有基としては、アゾ基(−N=N−)を有していれば特に制限されないが、例えば下記式(y−1)で表される基などが挙げられる。
(式(y−1)中、A及びAはそれぞれ独立に2価の有機基であり、Rは液晶配向性基である。)
式(y−1)において、A及びAの2価の有機基としては、例えば、炭素数1〜20の2価の炭化水素基;炭化水素基のメチレン基を−O−、−S−、−CO−、−COO−、−COS−、−NR−、又は−CO−NR−(ただし、Rは水素原子、炭素数1〜12の1価の炭化水素基又は保護基である。)等で置き換えてなる2価の基;炭化水素基の炭素原子に結合する水素原子の少なくとも1個をハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、水酸基、シアノ基等で置換してなる2価の基、などが挙げられる。Rの液晶配向性基については、上記式(2)のRの液晶配向性基の説明を適用することができる。
上記式(y−1)で表される基の具体例としては、例えば下記式(y−1−1)〜式(y−1−10)のそれぞれで表される基などが挙げられる。
(式(y−1−1)〜式(y−1−10)中、Xは、単結合、−C−、*3−COO−、*3−OCO−、*3−COS−、*3−SCO−、*3−NRCO−、*3−CONR−、*3−CHO−、*3−OCH−、*3−CHS−又は*3−SCH−(ただし、Rは水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、又は保護基である。「*3」は、アゾベンゼン構造との結合手を示す。)である。nは0〜20の整数であり、mは1〜20の整数である。Xは、上記式(L−1)〜式(L−10)中のXと同義である。)
桂皮酸含有基について、その具体例としては、例えば下記式(x−1)で表される基及び下記式(x−2)で表される基などが挙げられる。
(式(x−1)及び式(x−2)中、R11及びR14は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20のフルオロアルキル基である。X11及びX13は、それぞれ独立に単結合、酸素原子、硫黄原子、*−COO−又は*−OCO−(ただし、「*」を付した結合手がそれぞれR11又はR14と結合する。)である。X12は単結合、酸素原子、硫黄原子、炭素数1〜3のアルカンジイル基、*−COO−又は*−OCO−(ただし、「*」を付した結合手がR12と結合する。)である。R12及びR15は、それぞれ独立に1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基である。X14は単結合、炭素数1〜3のアルカンジイル基、酸素原子、硫黄原子又は−NH−である。X15は酸素原子、*−COO−又は*−OCO−(ただし、「*」を付した結合手がR16と結合する。)である。R16は2価の芳香族基、2価の脂環式基、2価の複素環式基又は2価の縮合環式基である。R17は単結合、*−OCO−(CH−又は*−O−(CH−(ただし、「*」を付した結合手がR16と結合し、h及びiはそれぞれ1〜10の整数である。)である。X16は*−COO−又は*−OCO−(ただし、「*」を付した結合手がR17と結合する。)である。R13及びR18は、それぞれ独立にフッ素原子、シアノ基又はメチル基である。R19及びR20は、それぞれ独立に炭素数1〜10のアルカンジイル基又は1,4−シクロヘキシレン基である。a、e及びdはそれぞれ独立に0〜3の整数であり、b及びfはそれぞれ独立に0又は1であり、c及びgはそれぞれ独立に0〜4の整数である。)
上記式(x−1)で表される基の具体例としては、例えば下記式(x−1−1)〜式(x−1−13)のそれぞれで表される基などを;上記式(x−2)で表される基の具体例としては、例えば下記式(x−2−1)〜式(x−2−2)のそれぞれで表される化合物などを;挙げることができる。またその他、特開2011−133825号公報に記載の基が挙げられる。
(式中、R11及びbは上記式(x−1)中のR11及びbと同義である。)
(式中、R14及びfは上記式(x−2)中のR14及びfと同義である。)
上記式(1)で表される部分構造は、液晶表示素子の焼き付き低減の効果が高い点で、下記式(1−1)又は式(1−2)で表される基であることが好ましい。
(式(1−1)及び式(1−2)中、Aは単結合又は2価の有機基であり、Rは1価の有機基である。X、A及びRは上記式(1)と同義である。「*」は重合体の主鎖に結合する結合手を示す。)
の2価の有機基については、上記式(y−1)のA及びAの説明の例示を適用することができ、Rの1価の有機基については、上記式(1)のRの説明の例示を適用することができる。
上記式(1)中の「*」は、重合体の主鎖に結合する結合手であることを示す。ここで、本明細書において重合体の「主鎖」とは、重合体のうち最も長い原子の連鎖からなる「幹」の部分をいい、「側鎖」とは、重合体の「幹」から分岐した部分をいう。
重合体(P)の主骨格は特に制限されず、例えばポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリオルガノシロキサン、ポリエステル、ポリアミド、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレート等からなる骨格を挙げることができる。これらの中でも、耐熱性や機械的強度、液晶との親和性などの観点から、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド及びポリオルガノシロキサンよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体であることが好ましい。なお、(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートを含むことを意味する。
(ポリアミック酸)
重合体(P)がポリアミック酸の場合、該ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることによって得ることができる。上記式(1)で表される部分構造(以下「特定部分構造」ともいう。)を有するポリアミック酸は、特定部分構造(ただし、式(1)中の「*」は結合手を示す。モノマーについて以下同じ。)を有するテトラカルボン酸二無水物、及び特定部分構造を有するジアミンの少なくともいずれかをモノマー組成に含む重合により得ることができる。化合物の選択の自由度が高い点で、特定部分構造を有するジアミン(以下「特定ジアミン」ともいう。)を用いることが好ましい。
(テトラカルボン酸二無水物)
ポリアミック酸の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物としては、例えば脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物として、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物などを;
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸2:4,6:8−二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸2:3,5:6−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、エチレンジアミン四酢酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、1,3−プロピレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)などを;
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、例えばピロメリット酸二無水物などを;それぞれ挙げることができるほか、特開2010−97188号公報に記載のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。なお、テトラカルボン酸二無水物は、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ポリアミック酸の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物としては、液晶表示素子の各種特性をより良好にできる点で、上記のうち、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−3a,4,5,9b−テトラヒドロナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−8−メチル−3a,4,5,9b−テトラヒドロナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン、ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物及びピロメリット酸二無水物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことが好ましい。これらの好ましい化合物の使用量(2種以上使用する場合にはその合計量)は、ポリアミック酸の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物の全量に対して、5モル%以上とすることが好ましく、10モル%以上とすることがより好ましく、20モル%以上とすることがより好ましい。
(ジアミン)
特定ジアミンは、上記特定部分構造を有していればその余の構造は特に制限されないが、例えば下記式(3)で表される化合物等が挙げられる。
(式(3)中、A、R及びXは上記式(1)と同義である。)
上記式(3)のA、R及びXについては上記式(1)の説明を適用することができる。特定ジアミンの具体例としては、下記式(3−1)〜式(3−19)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
(式中、nは0〜20の整数である。)
なお、ポリアミック酸の合成に際し、特定ジアミンは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
重合体(P)としてのポリアミック酸の合成に使用するジアミンは、特定ジアミンのみであってもよいが、特定ジアミン以外のその他のジアミンを併用してもよい。
その他のジアミンとしては、例えば脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサンなどが挙げられる。これらの具体例としては、脂肪族ジアミンとして、例えばm−キシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどを;脂環式ジアミンとして、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)などを;
芳香族ジアミンとして、例えばドデカノキシジアミノベンゼン、テトラデカノキシジアミノベンゼン、ペンタデカノキシジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシジアミノベンゼン、オクタデカノキシジアミノベンゼン、コレスタニルオキシジアミノベンゼン、コレステリルオキシジアミノベンゼン、ジアミノ安息香酸コレスタニル、ジアミノ安息香酸コレステリル、ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサン、N−(2,4−ジアミノフェニル)−4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)ベンズアミド、下記式(E−1)又は下記式(E−2)
(式(E−1)及び式(E−2)中、XI及びXIIは、それぞれ独立に、単結合、−O−、−COO−又は−OCO−であり、Rは炭素数1〜3のアルカンジイル基であり、RIIは単結合又は炭素数1〜3のアルカンジイル基であり、XIIIは水素原子又は光重合性基である。rは0又は1であり、sは0〜2の整数であり、tは1〜20の整数であり、uは0又は1である。但し、r及びsが同時に0になることはない。式(E−2)中の2つのRIIは同じでも異なっていてもよい。)
で表される化合物などの配向性基含有ジアミン:
p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4−アミノフェニル−4’−アミノベンゾエート、4,4’−ジアミノアゾベンゼン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン、1,7−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘプタン、ビス[2−(4−アミノフェニル)エチル]ヘキサン二酸、N,N−ビス(4−アミノフェニル)メチルアミン、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、3,5−ジアミノ安息香酸などを;
ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサンなどを;それぞれ挙げることができるほか、特開2010−97188号公報に記載のジアミンを用いることができる。
上記式(E−1)における「−X−(R−XII−」で表される2価の基としては、炭素数1〜3のアルカンジイル基、*−O−、*−COO−又は*−O−C−O−(ただし、「*」を付した結合手がジアミノフェニル基と結合する。)であることが好ましい。基「−C2t+1」及び基「−C2t−」は直鎖状であることが好ましい。
IIIの光重合性基としては、(メタ)アクリロキシ基、スチリル基又はマレイミド基であることが好ましい。上記式(E−1)及び式(E−2)中のジアミノフェニル基における2つのアミノ基は、他の基に対して2,4−位又は3,5−位にあることが好ましい。
上記式(E−1)及び式(E−2)で表される化合物の具体例としては、例えば下記式(E−1−1)〜(E−1−4)及び式(E−2−1)のそれぞれで表される化合物などを挙げることができる。
その他のジアミンとしては、液晶表示素子の直流電圧による焼き付き低減の改善効果を高めることを目的として、更に、特定官能基を有するジアミンを使用することもできる。こうしたジアミンとしては、例えば、窒素含有複素環、2級アミノ基及び3級アミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種である窒素含有構造を有するジアミンや、カルボキシル基を有するジアミンなどが挙げられる。
窒素含有構造を有するジアミンとしては、例えば2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、下記式(E−3−1)〜式(E−3−6)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
カルボキシル基を有するジアミンとしては、例えば3,5−ジアミノ安息香酸、2,4−ジアミノ安息香酸、2,5−ジアミノ安息香酸などのモノカルボン酸;
4,4’−ジアミノビフェニル−3,3’−ジカルボン酸、4,4’−ジアミノビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、3,3’−ジアミノビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、3,3’−ジアミノビフェニル−2,4’−ジカルボン酸、4,4’−ジアミノジフェニルメタン−3,3’−ジカルボン酸、4,4’−ジアミノジフェニルエタン−3,3’−ジカルボン酸、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル−3,3’−ジカルボン酸などの多価カルボン酸;などを挙げることができる。
ポリアミック酸の合成に際して使用するジアミンは、重合体の溶媒に対する溶解性の改善効果や、液晶表示素子の交流電圧による焼き付き低減の効果を十分に得る観点から、特定ジアミンの配合割合を、ジアミンの全体量に対して1モル%以上とすることが好ましく、3モル%以上とすることがより好ましく、5モル%以上とすることがさらに好ましく、10モル%以上とすることが特に好ましい。特定ジアミンの使用割合の上限は、適度なプレチルト角を発現させる観点において、70モル%以下とすることが好ましく、60モル%以下とすることがより好ましく、50モル%以下とすることがさらに好ましい。
窒素含有構造を有するジアミンの使用割合は、液晶表示素子の直流電圧による焼き付き低減の効果を十分に得る観点から、合成に使用するジアミンの全体量に対して、0.1モル%以上とすることが好ましく、1〜50モル%とすることがより好ましく、2〜30モル%とすることがさらに好ましい。カルボキシル基を有するジアミンの使用割合は、合成に使用するジアミンの全体量に対して、1モル%以上とすることが好ましく、2〜90モル%とすることがより好ましく、5〜80モル%とすることがさらに好ましい。なお、その他のジアミンは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
(特定ジアミンの合成)
特定ジアミンは、公知の方法を適宜組み合わせることによって合成することができる。その一例としては、例えば、上記式(3)中の一級アミノ基に代えてニトロ基を有するジニトロ中間体を合成し、次いで、得られたジニトロ中間体のニトロ基を適当な還元系を用いてアミノ化する方法などが挙げられる。なお、ジニトロ中間体を合成する方法は、目的とする化合物に応じて適宜選択することができる。例えば、「−NH−」を有するジニトロ化合物と二炭酸ジ−tert−ブチルとを、ジメチルアミノピリジンなどの強塩基の存在下で反応させることにより、「−NH−」がt−ブトキシカルボニル基で保護されたジニトロ中間体を合成することができる。ただし、特定ジアミンの合成方法は上記に限定されるものではない。
(ポリアミック酸の合成)
ポリアミック酸は、上記のようなテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを、必要に応じて分子量調整剤とともに反応させることにより得ることができる。ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、0.3〜1.2当量となる割合がより好ましい。
分子量調整剤としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸などの酸一無水物、アニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミンなどのモノアミン化合物、フェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどのモノイソシアネート化合物等を挙げることができる。分子量調整剤の使用割合は、使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計100重量部に対して、20重量部以下とすることが好ましく、10重量部以下とすることがより好ましい。
ポリアミック酸の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において行われる。このときの反応温度は、−20℃〜150℃が好ましく、0〜100℃がより好ましい。また、反応時間は、0.1〜24時間が好ましく、0.5〜12時間がより好ましい。
反応に使用する有機溶媒としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノール系溶媒、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素などを挙げることができる。これらの有機溶媒のうち、非プロトン性極性溶媒及びフェノール系溶媒よりなる群(第一群の有機溶媒)から選択される1種以上、又は、第一群の有機溶媒から選択される1種以上と、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素及び炭化水素よりなる群(第二群の有機溶媒)から選択される1種以上との混合物を使用することが好ましい。後者の場合、第二群の有機溶媒の使用割合は、第一群の有機溶媒及び第二群の有機溶媒の合計量に対して、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは40重量%以下であり、更に好ましくは30重量%以下である。
特に好ましい有機溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド、m−クレゾール、キシレノール及びハロゲン化フェノールよりなる群から選択される1種以上を溶媒として使用するか、あるいはこれらの1種以上と他の有機溶媒との混合物を、上記割合の範囲で使用することが好ましい。有機溶媒の使用量(a)は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計量(b)が、反応溶液の全量(a+b)に対して、0.1〜50重量%になる量とすることが好ましい。
以上のようにして、ポリアミック酸を溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリアミック酸を精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。ポリアミック酸の単離及び精製は公知の方法に従って行うことができる。
(ポリイミド)
重合体(P)としてのポリイミドは、例えば上記の如くして合成されたポリアミック酸を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。ポリアミック酸を脱水閉環してポリイミドとする場合には、ポリアミック酸の反応溶液をそのまま脱水閉環反応に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで脱水閉環反応に供してもよく、又は単離したポリアミック酸を精製したうえで脱水閉環反応に供してもよい。
ポリイミドは、その前駆体であるポリアミック酸が有していたアミック酸構造のすべてを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造とが併存する部分イミド化物であってもよい。反応に使用するポリイミドは、そのイミド化率が10%以上であることが好ましく、20〜99%であることがより好ましく、30〜99%であることが更に好ましい。このイミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。ここで、イミド環の一部がイソイミド環であってもよい。
ポリアミック酸の脱水閉環は、好ましくはポリアミック酸を加熱する方法により、又はポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。このうち、後者の方法によることが好ましい。
ポリアミック酸の溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸のアミック酸構造の1モルに対して0.01〜20モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等の3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は、好ましくは0〜180℃であり、より好ましくは10〜150℃である。反応時間は、好ましくは1.0〜120時間であり、より好ましくは2.0〜30時間である。
このようにしてポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリイミドを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。これらの精製操作は公知の方法に従って行うことができる。
(ポリアミック酸エステル)
重合体(P)としてのポリアミック酸エステルは、例えば、[I]上記特定部分構造を有するポリアミック酸とエステル化剤とを反応させる方法、[II]テトラカルボン酸ジエステルとジアミンとを反応させる方法、[III]テトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物とジアミンとを反応させる方法、などによって得ることができる。
ここで、方法[I]で使用するエステル化剤としては、例えば水酸基含有化合物、アセタール系化合物、エポキシ基含有化合物等が挙げられる。これらの具体例としては、水酸基含有化合物として、例えばメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、フェノール、クレゾール等のフェノール類などを;アセタール系化合物として、例えばN,N−ジメチルホルムアミドジエチルアセタール、N,N−ジエチルホルムアミドジエチルアセタールなどを;エポキシ基含有化合物として、例えばプロピレンオキシドなどを、それぞれ挙げることができる。
方法[II]で使用するテトラカルボン酸ジエステルは、例えば上記ポリアミック酸の合成で例示したテトラカルボン酸二無水物を、メタノールやエタノールなどのアルコール類を用いて開環することにより得ることができる。また、方法[II]で使用するジアミンとしては、ポリアミック酸の合成で例示したジアミンを挙げることができ、特定ジアミンを含むことが好ましい。方法[II]の反応は、有機溶媒中、適当な脱水触媒の存在下で行うことが好ましい。有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水触媒としては、例えば4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムハライド、カルボニルイミダゾール、リン系縮合剤などが挙げられる。
方法[III]で使用するテトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物は、例えば上記の如くして得たテトラカルボン酸ジエステルを、塩化チオニル等の適当な塩素化剤と反応させることにより得ることができる。また、方法[III]で使用するジアミンとしては、ポリアミック酸の合成で例示したジアミンを挙げることができ、特定ジアミンを含むことが好ましい。方法[III]の反応は、有機溶媒中、適当な塩基の存在下で行うことが好ましい。有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。塩基としては、例えばピリジン、トリエチルアミン等の3級アミンを好ましく使用することができる。
こうしてポリアミック酸エステルを溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸エステルを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリアミック酸エステルを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。ポリアミック酸エステルの単離及び精製は公知の方法に従って行うことができる。なお、液晶配向剤に含有させるポリアミック酸エステルは、アミック酸エステル構造のみを有していてもよく、アミック酸構造とアミック酸エステル構造とが併存する部分エステル化物であってもよい。
重合体(P)としてのポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドの溶液粘度は、これを濃度10重量%の溶液としたときに、10〜800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、15〜500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。なお、重合体の溶液粘度(mPa・s)は、重合体の良溶媒(例えばγ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンなど)を用いて調製した濃度10重量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000〜500,000であり、より好ましくは2,000〜300,000である。また、Mwと、GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは15以下であり、より好ましくは10以下である。
(ポリオルガノシロキサン)
重合体(P)としてのポリオルガノシロキサン(以下、「特定基含有ポリオルガノシロキサン」ともいう。)は、例えば、
[1]エポキシ基を有する加水分解性のシラン化合物(ms−1)、又は当該シラン化合物(ms−1)とその他のシラン化合物との混合物を加水分解縮合して得られる重合体(以下、「エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン」ともいう。)と、上記特定部分構造を有するカルボン酸(以下「特定カルボン酸」ともいう。)と、を反応させる方法;
[2]上記特定部分構造を有する加水分解性のシラン化合物、又は当該シラン化合物とその他のシラン化合物との混合物を加水分解縮合させる方法;
などを挙げることができる。これらのうち、特定部分構造を高い効率で導入可能な点で上記[1]の方法が好ましい。
エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンの合成に使用するシラン化合物(ms−1)の具体例としては、例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、2−グリシドキシエチルジメチルメトキシシラン、2−グリシドキシエチルジメチルエトキシシラン、4−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、4−グリシドキシブチルメチルジメトキシシラン、4−グリシドキシブチルメチルジエトキシシラン、4−グリシドキシブチルジメチルメトキシシラン、4−グリシドキシブチルジメチルエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシランなどを挙げることができる。シラン化合物(ms−1)としては、これらのうちの1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
その他のシラン化合物は、加水分解性を示すシラン化合物である限り特に限定されず、液晶表示素子の駆動モードなどに応じて適宜選択することができる。その他のシラン化合物の具体例としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のアルコキシシラン化合物;
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(3−シクロヘキシルアミノ)プロピルトリメトキシシラン等の窒素・硫黄含有アルコキシシラン化合物;
3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン等の不飽和結合含有アルコキシシラン化合物;
トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、ケイ素−ケイ素結合を有するアルコキシシラン化合物、などを挙げることができる。その他のシラン化合物は、これらのうちの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記特定部分構造を重合体の側鎖に十分に導入することを可能にしつつ、エポキシ基が過剰量であることに起因する副反応を抑制する観点において、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンのエポキシ当量は、80〜10,000g/モルであることが好ましく、100〜1,000g/モルであることがより好ましい。したがって、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンを合成するにあたっては、シラン化合物(ms−1)とその他のシラン化合物との使用割合を、得られるポリオルガノシロキサンのエポキシ当量が上記範囲となるように調整することが好ましい。
シラン化合物の加水分解・縮合反応は、上記の如きシラン化合物の1種又は2種以上と水とを、好ましくは適当な触媒及び有機溶媒の存在下で反応させることにより行う。加水分解・縮合反応に際し、水の使用割合は、シラン化合物(合計量)1モルに対して、好ましくは0.5〜100モルであり、より好ましくは1〜30モルである。
加水分解・縮合反応の際に使用する触媒としては、例えば酸、アルカリ金属化合物、有機塩基、チタン化合物、ジルコニウム化合物などを挙げることができる。有機塩基は、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセンの如き3級の有機アミン:テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの如き4級の有機アミンが好ましい。
上記触媒としては、エポキシ基の開環などの副反応を抑制できる点や、加水分解縮合速度を速くできる点、保存安定性に優れている点などにおいて、これらの中でもアルカリ金属化合物又は有機塩基が好ましく、有機塩基がより好ましい。
有機塩基の使用量は、有機塩基の種類、温度などの反応条件などにより異なり、適宜に設定されるべきであるが、全シラン化合物に対して、好ましくは0.01〜3倍モルであり、より好ましくは0.05〜1倍モルである。
加水分解・縮合反応の際に使用する有機溶媒としては、例えば炭化水素、ケトン、エステル、エーテル、アルコールなどを挙げることができる。それらの具体例としては、炭化水素として、例えばトルエン、キシレンなどを;ケトンとして、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−アミルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなどを;エステルとして、例えば酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、乳酸エチルなどを;エーテルとして、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどを;アルコールとして、例えば1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルなどを;それぞれ挙げることができる。これらのうち非水溶性の有機溶媒を用いることが好ましい。なお、これらの有機溶媒は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
加水分解縮合反応における有機溶媒の使用割合は、反応に使用する全シラン化合物100重量部に対して、好ましくは10〜10,000重量部であり、より好ましくは50〜1,000重量部である。
加水分解・縮合反応は、上記の如きシラン化合物を有機溶媒に溶解し、この溶液を有機塩基及び水と混合して、例えば油浴などにより加熱して実施することが好ましい。加水分解・縮合反応時には、加熱温度を130℃以下とすることが好ましく、40〜100℃とすることがより好ましい。加熱時間は、0.5〜12時間とすることが好ましく、1〜8時間とすることがより好ましい。加熱中は、混合液を撹拌してもよいし、還流下に置いてもよい。反応終了後、反応液から分取した有機溶媒層を水で洗浄することが好ましい。この洗浄に際しては、少量の塩を含む水(例えば、0.2重量%程度の硝酸アンモニウム水溶液など)を用いて洗浄することにより、洗浄操作が容易になる点で好ましい。洗浄は、洗浄後の水層が中性になるまで行い、その後、有機溶媒層を、必要に応じて無水硫酸カルシウム、モレキュラーシーブなどの乾燥剤で乾燥した後、溶媒を除去することにより、目的とするポリオルガノシロキサンを得ることができる。
上記[1]の方法では、上記反応により得られたエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンを、次いで、特定カルボン酸と反応させる。これにより、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンが有するエポキシ基とカルボン酸とが反応して、上記特定部分構造を側鎖に有するポリオルガノシロキサンを得ることができる。
合成に使用する特定カルボン酸としては、上記特定部分構造を有していればその余の構造は特に制限されないが、例えば下記式(4)で表される化合物等が挙げられる。
(式(4)中、Aは2価の有機基である。R及びXは上記式(1)と同義である。)
上記式(4)のAは、上記式(1)のAの2価の有機基の説明を適用することができ、好ましくは2価の炭化水素基である。R及びXについては、上記式(1)の説明を適用することができる。特定カルボン酸の具体例としては、下記式(4−1)〜式(4−19)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
(式中、nは0〜20の整数である。)
なお、特定カルボン酸は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
特定カルボン酸の合成方法は特に限定されず、従来公知の方法を組み合わせて合成することができる。合成方法の一例としては、例えば、「−NHR」を有するハロゲン化物と二炭酸ジ−tert−ブチルとを、ジメチルアミノピリジンなどの強塩基の存在下で反応させることにより、「−NH−」がt−ブトキシカルボニル基で保護された化合物を合成し、次いで、得られた化合物と、ハロゲン原子と反応可能な官能基を有するカルボン酸とを反応させる方法などが挙げられる。ただし、特定カルボン酸の合成方法は上記に限定されるものではない。
エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンとの反応に使用するカルボン酸は、特定カルボン酸のみであってもよいが、特定カルボン酸以外のその他のカルボン酸を併用してもよい。
その他のカルボン酸は、上記特定部分構造を有さないカルボン酸であればよく、その具体例としては、例えばカプロン酸、ラウリン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸等の炭素数6〜20の脂肪酸、下記式(5−1)〜式(5−9)のそれぞれで表される化合物等を挙げることができる。
(式中、jは0〜12の整数であり、hは1〜20の整数である。)
なお、その他のカルボン酸としては、これらのうちから選択される1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンと反応させるカルボン酸の使用割合は、ポリオルガノシロキサンが有するエポキシ基の合計1モルに対して、0.001〜1.5モルとすることが好ましく、0.01〜1.0モルとすることがより好ましい。
また、特定カルボン酸の使用割合は、ポリオルガノシロキサンが有するエポキシ基の合計1モルに対して、0.01〜0.8モルとすることが好ましい。当該使用割合を0.01モル未満とすると特定部分構造の導入量が少なく、液晶配向性や焼き付き低減、溶解性のなどの改善効果が得られにくい。一方、0.8モルを超えると重合体の溶解性が劣る傾向にある。好ましくは0.03〜0.6モルであり、さらに好ましくは0.05〜0.4モルである。
エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンとカルボン酸との反応は、好ましくは触媒及び有機溶媒の存在下で行うことができる。
エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンとカルボン酸との反応において使用する触媒としては、例えば酸、アルカリ金属化合物、有機塩基、チタン化合物、ジルコニウム化合物などを挙げることができる。これらの中でも有機塩基が好ましい。触媒の使用割合は、カルボン酸と反応させるポリオルガノシロキサン100重量部に対して、好ましくは100重量部以下、より好ましくは0.01〜100重量部、更に好ましくは0.1〜20重量部である。
上記反応において使用する有機溶媒としては、例えば炭化水素、エーテル、エステル、ケトン、アミド、アルコール等を挙げることができる。これらのうち、原料及び生成物の溶解性並びに生成物の精製のしやすさの観点から、エーテル、エステル、ケトンが好ましく、特に好ましい溶媒の具体例として、2−ブタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン及び酢酸ブチル等を挙げることができる。当該有機溶媒は、固形分濃度(反応溶液中の溶媒以外の成分の合計重量が、溶液の全重量に対して占める割合)が、0.1重量%以上となる割合で使用することが好ましく、5〜50重量%となる割合で使用することがより好ましい。
上記反応における反応温度は、好ましくは0〜200℃であり、より好ましくは50〜150℃である。反応時間は、好ましくは0.1〜50時間であり、より好ましくは0.5〜20時間である。また、反応終了後においては、反応液から分取した有機溶媒層を水で洗浄することが好ましい。水洗後、有機溶媒層を、必要に応じて適当な乾燥剤で乾燥した後、溶媒を除去することにより、上記特定部分構造を側鎖に有するポリオルガノシロキサンを得ることができる。
以上のようにして得られる特定基含有ポリオルガノシロキサンは、これを濃度10重量%の溶液としたときに、1〜500mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、3〜200mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。なお、上記重合体の溶液粘度(mPa・s)は、当該重合体の良溶媒(例えばN−メチル−2−ピロリドンなど)を用いて調製した濃度10重量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
特定基含有ポリオルガノシロキサンについて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、形成される液晶配向膜の液晶配向性を良好にするとともに、その液晶配向性の経時的安定性を確保するといった観点から、1,000〜50,000であることが好ましく、3,000〜30,000であることがより好ましい。
<その他の成分>
本発明に係る液晶配向剤は、必要に応じて重合体(P)以外のその他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば重合体(P)以外のその他の重合体、分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ基含有化合物」という。)、官能性シラン化合物等が挙げられる。
[その他の重合体]
上記その他の重合体は、溶液特性や電気特性等の各種特性を改善することを目的として使用することができる。かかるその他の重合体は上記特定部分構造を有さない重合体であり、例えばポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリオルガノシロキサン、ポリエステル、ポリアミド、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、又はポリ(メタ)アクリレートを主骨格とする重合体等が挙げられる。その他の重合体としては、これらの中でも、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミック酸エステル及びポリオルガノシロキサンよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体を好ましく使用することができる。
その他の重合体を液晶配向剤に配合する場合、その配合割合は、液晶配向剤中に含まれる重合体の合計(重合体(P)とその他の重合体との合計)100重量部に対して、50重量部以下とすることが好ましく、0.1〜40重量部とすることがより好ましく、0.2〜30重量部とすることが更に好ましい。
[エポキシ基含有化合物]
エポキシ基含有化合物は、液晶配向膜における基板表面との接着性や電気特性を向上させるために使用することができる。このようなエポキシ基含有化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−シクロヘキシルアミン等を好ましいものとして挙げることができる。その他、エポキシ基含有化合物の例としては、国際公開第2009/096598号記載のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンを用いることができる。
エポキシ基含有化合物を液晶配向剤に配合する場合、その配合割合は、液晶配向剤中に含まれる重合体の合計100重量部に対して、40重量部以下とすることが好ましく、0.1〜30重量部とすることがより好ましい。
[官能性シラン化合物]
官能性シラン化合物は、液晶配向剤の印刷性の向上を目的として使用することができる。このような官能性シラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノナン酸メチル、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
その他の官能性シラン化合物を液晶配向剤に配合する場合、その配合割合は、液晶配向剤中に含まれる重合体の合計100重量部に対して、2重量部以下とすることが好ましく、0.02〜0.2重量部とすることがより好ましい。
なお、その他の成分としては、上記のほか、分子内に少なくとも一つのオキセタニル基を有する化合物や酸化防止剤、金属キレート化合物、硬化促進剤、界面活性剤、充填剤、分散剤、光増感剤などを挙げることができる。
本発明に係る液晶配向剤は、重合体成分として1種の重合体のみを含有していてもよいし、2種以上の重合体を含有していてもよい。重合体成分の好ましい態様としては、例えば以下の[1]〜[5]などが挙げられる。
[1]重合体成分として重合体(P)のみを含有し、かつ重合体(P)が、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種である態様。
[2]重合体成分として重合体(P)のみを含有し、かつ重合体(P)がポリオルガノシロキサンである態様。
[3]重合体成分として重合体(P)のみを含有し、かつ重合体(P)として、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種と、ポリオルガノシロキサンとを含む態様。
[4]重合体成分として重合体(P)とその他の重合体とを含有し、かつ重合体(P)及びその他の重合体が、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種である態様。
[5]重合体成分として重合体(P)とその他の重合体とを含有し、かつ重合体(P)が、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる一種であり、その他の重合体がポリオルガノシロキサンである態様。
これらのうち、[4]及び[5]では、保護基の導入効果で重合体(P)の疎水性が増し、保護基を有さない重合体との間で極性差が大きくなることで、液晶配向膜中で重合体(P)が上層に、その他の重合体が下層に偏在させることができるものと推測される。[4]及び[5]において、その他の重合体としては、液晶表示素子の直流電圧による焼き付き低減効果を高くできる点で、窒素含有複素環、2級アミノ基及び3級アミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種である窒素含有構造を有する重合体、カルボキシル基を有する重合体、並びに上記窒素含有構造とカルボキシル基とを有する重合体のうちの1種又は2種以上を好ましく使用することができる。
液晶配向剤の固形分(液晶配向剤の溶媒以外の成分)に対する重合体(P)の配合割合は、固形分の合計重量100重量部に対して、40重量部以上とすることが好ましく、50重量部以上とすることが好ましく、60重量部以上とすることがさらに好ましい。
<溶剤>
本発明に係る液晶配向剤は、重合体(P)及び必要に応じて使用されるその他の成分が、好ましくは適当な溶媒中に分散又は溶解してなる液状の組成物として調製される。
使用する有機溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等を挙げることができる。これらは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計重量が液晶配向剤の全重量に占める割合)は、粘性、揮発性などを考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1〜10重量%の範囲である。すなわち、液晶配向剤は、後述するように基板表面に塗布され、好ましくは加熱されることにより、液晶配向膜である塗膜又は液晶配向膜となる塗膜が形成される。このとき、固形分濃度が1重量%未満である場合には、塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜が得にくくなる。一方、固形分濃度が10重量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜が得にくく、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布性が低下する傾向にある。
特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に用いる方法によって異なる。例えばスピンナー法により基板に塗布する場合には、固形分濃度(液晶配向剤中の溶媒以外の全成分の合計重量が液晶配向剤の全重量に占める割合)が1.5〜4.5重量%の範囲であることが特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3〜9重量%の範囲とし、それにより溶液粘度を12〜50mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を1〜5重量%の範囲とし、それにより、溶液粘度を3〜15mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは10〜50℃であり、より好ましくは20〜30℃である。
<液晶表示素子>
本発明に係る液晶表示素子は、上記で説明した液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を具備する。液晶表示素子の動作モードは特に限定せず、例えばTN型、STN型、VA型(VA−MVA型、VA−PVA型などを含む。)、IPS型、FFS型、OCB(Optically Compensated Bend)型など種々の動作モードに適用することができる。
液晶表示素子は、例えば以下の工程(1)〜(3)を含む工程により製造することができる。工程(1)は、所望の動作モードによって使用基板が異なる。工程(2)及び工程(3)は各動作モード共通である。
[工程(1):塗膜の形成]
先ず基板上に液晶配向剤を塗布し、次いで塗布面を加熱することにより基板上に塗膜を形成する。
(1−A)例えばTN型、STN型又はVA型の液晶表示素子を製造する場合、まず、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板二枚を一対として、その各透明性導電膜形成面上に、液晶配向剤を、好ましくはオフセット印刷法、スピンコート法、ロールコーター法又はインクジェット印刷法によりそれぞれ塗布する。基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)などのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜などを用いることができる。パターニングされた透明導電膜を得るには、例えばパターンなし透明導電膜を形成した後、フォト・エッチングによりパターンを形成する方法;透明導電膜を形成する際に所望のパターンを有するマスクを用いる方法;などによることができる。液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面及び透明導電膜と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板表面のうち塗膜を形成する面に、官能性シラン化合物、官能性チタン化合物などを予め塗布する前処理を施しておいてもよい。
液晶配向剤を塗布した後、塗布した液晶配向剤の液垂れ防止などの目的で、好ましくは予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30〜200℃であり、より好ましくは40〜150℃であり、特に好ましくは40〜100℃である。プレベーク時間は、好ましくは0.25〜10分であり、より好ましくは0.5〜5分である。その後、溶剤を完全に除去し、必要に応じて重合体に存在するアミック酸構造を熱イミド化することを目的として焼成(ポストベーク)工程が実施される。このときの焼成温度(ポストベーク温度)は、好ましくは80〜300℃であり、より好ましくは120〜250℃である。ポストベーク時間は、好ましくは5〜200分であり、より好ましくは10〜100分である。このようにして形成される膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
(1−B)IPS型又はFFS型の液晶表示素子を製造する場合、櫛歯型にパターニングされた透明導電膜又は金属膜からなる電極が設けられている基板の電極形成面と、電極が設けられていない対向基板の一面とに液晶配向剤をそれぞれ塗布し、次いで各塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。このとき使用される基板及び透明導電膜の材質、塗布方法、塗布後の加熱条件、透明導電膜又は金属膜のパターニング方法、基板の前処理、並びに形成される塗膜の好ましい膜厚については上記(1−A)と同様である。金属膜としては、例えばクロムなどの金属からなる膜を使用することができる。
上記(1−A)及び(1−B)のいずれの場合も、基板上に液晶配向剤を塗布した後、有機溶媒を除去することによって、液晶配向膜又は液晶配向膜となる塗膜が形成される。このとき、液晶配向剤に含有される重合体が、ポリアミック酸であるか、ポリアミック酸エステルであるか、又はイミド環構造とアミック酸構造とを有するイミド化重合体を含む場合には、塗膜形成後に更に加熱することによって脱水閉環反応を進行させ、よりイミド化された塗膜としてもよい。
[工程(2):配向処理]
TN型、STN型、IPS型又はFFS型の液晶表示素子を製造する場合、上記工程(1)で形成した塗膜に液晶配向能を付与する処理(配向処理)を実施する。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。配向処理としては、塗膜を例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦ることによって塗膜に液晶配向能を付与するラビング処理、基板上に形成した塗膜に光照射を行って塗膜に液晶配向能を付与する光配向処理などが挙げられる。一方、垂直配向型液晶表示素子を製造する場合には、上記工程(1)で形成した塗膜をそのまま液晶配向膜として使用することができるが、該塗膜に対し配向処理を施してもよい。
光配向処理における光照射は、(1a)ポストベーク後の塗膜に対して照射する方法、(2a)プレベーク後であってポストベーク前の塗膜に対して照射する方法、(3a)プレベーク及びポストベークの少なくともいずれかにおいて塗膜の加熱中に塗膜に対して照射する方法、などにより行うことができる。
塗膜に照射する光は、偏光又は非偏光の放射線とすることができる。放射線としては、例えば150〜800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができる。放射線が偏光である場合、直線偏光であっても部分偏光であってもよい。また、用いる放射線が直線偏光又は部分偏光である場合には、照射は基板面に垂直の方向から行ってもよく、斜め方向から行ってもよく、又はこれらを組み合わせて行ってもよい。非偏光の放射線を照射する場合には、照射の方向は斜め方向とする。
使用する光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマレーザーなどを使用することができる。好ましい波長領域の紫外線は、光源を、例えばフィルター、回折格子などと併用する手段などにより得ることができる。光の照射量は、好ましくは100〜50,000J/mであり、より好ましくは300〜20,000J/mである。また、塗膜に対する光照射は、反応性を高めるために塗膜を加温しながら行ってもよい。加温の際の温度は、通常30〜250℃であり、好ましくは40〜200℃であり、より好ましくは50〜150℃である。
なお、ラビング処理後の液晶配向膜に対して更に、液晶配向膜の一部に放射線を照射することによって液晶配向膜の一部の領域のプレチルト角を変化させる処理や、液晶配向膜表面の一部にレジスト膜を形成した上で先のラビング処理と異なる方向にラビング処理を行った後にレジスト膜を除去する処理を行い、液晶配向膜が領域ごとに異なる液晶配向能を持つようにしてもよい。この場合、得られる液晶表示素子の視界特性を改善することが可能である。
PSA(Polymer sustained alignment)型の液晶表示素子を製造する場合には、上記工程(1)で形成した塗膜をそのまま用いて以下の工程(3)を実施してもよいが、液晶分子の倒れ込みを制御し、配向分割を簡易な方法で行う目的で弱いラビング処理等の配向処理を行ってもよい。VA型の液晶表示素子に好適な液晶配向膜はPSA型の液晶表示素子にも好適に用いることができる。
[工程(3):液晶セルの構築]
(3−A)上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、対向配置した2枚の基板間に液晶を配置することにより液晶セルを製造する。液晶セルを製造するには、例えば以下の2つの方法が挙げられる。第一の方法は、従来から知られている方法である。先ず、それぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより液晶セルを製造する。また、第二の方法は、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法である。液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に、例えば紫外光硬化性のシール剤を塗布し、さらに液晶配向膜面上の所定の数箇所に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせるとともに液晶を基板の全面に押し広げ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより液晶セルを製造する。いずれの方法による場合でも、上記のようにして製造した液晶セルにつき、用いた液晶が等方相をとる温度まで更に加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶充填時の流動配向を除去することが望ましい。
シール剤としては、例えば硬化剤及びスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。また、液晶としては、ネマチック液晶及びスメクチック液晶を挙げることができ、その中でもネマチック液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などを用いることができる。また、これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック液晶;商品名「C−15」、「CB−15」(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤;p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶などを、添加して使用してもよい。
(3−B)PSA型液晶表示素子を製造する場合には、液晶と共に光重合性化合物を注入又は滴下する点以外は上記(3−A)と同様にして液晶セルを構築する。その後、一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で液晶セルに光照射する。ここで印加する電圧は、例えば5〜50Vの直流又は交流とすることができる。また、照射する光としては、例えば150〜800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができるが、300〜400nmの波長の光を含む紫外線が好ましい。照射光の光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマレーザーなどを使用することができる。なお、上記の好ましい波長領域の紫外線は、光源を、例えばフィルター回折格子などと併用する手段などにより得ることができる。光の照射量としては、好ましくは1,000J/m以上200,000J/m未満であり、より好ましくは1,000〜100,000J/mである。
(3−C)重合体(P)の側鎖に光重合性基を導入した場合、又は重合体(P)とは別に光重合性基含有化合物を液晶配向剤中に含む場合、上記(3−A)と同様にして液晶セルを構築し、その後、一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で液晶セルに光照射する工程を経ることにより液晶表示素子を製造する方法を採用してもよい。この方法によれば、PSAモードのメリットを少なく光照射量で実現可能である。印加する電圧や、照射する光の条件は上記(3−B)の説明を適用することができる。
そして、液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより液晶表示素子を得ることができる。液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光フィルムを酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
本発明の液晶表示素子は種々の装置に有効に適用することができ、例えば、時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話、スマートフォン、各種モニター、液晶テレビ、インフォメーションディスプレイなどの各種表示装置に用いることができる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
以下の例において、重合体の重量平均分子量Mw、イミド化率、重合体溶液の溶液粘度及びエポキシ当量は以下の方法により測定した。なお、以下では、式Xで表される化合物を単に「化合物X」と記すことがある。
[重合体の重量平均分子量Mw]
Mwは、以下の条件におけるGPCにより測定したポリスチレン換算値である。
カラム:東ソー(株)製、TSKgelGRCXLII
溶剤:テトラヒドロフラン
温度:40℃
圧力:68kgf/cm
[重合体のイミド化率]
ポリイミドを含有する溶液を純水に投入し、得られた沈殿を室温で十分に減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解し、テトラメチルシランを基準物質として室温でH−NMRを測定した。得られたH−NMRスペクトルから、下記数式(1)を用いてイミド化率を求めた。
イミド化率(%)=(1−A/A×α)×100 …(1)
(数式(1)中、Aは化学シフト10ppm付近に現れるNH基のプロトン由来のピーク面積であり、Aはその他のプロトン由来のピーク面積であり、αは重合体の前駆体(ポリアミック酸)におけるNH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合である。)
[エポキシ当量]
エポキシ当量は、JIS C 2105に記載の塩酸−メチルエチルケトン法により測定した。
<化合物の合成>
[合成例1−1:化合物(a−1)の合成]
下記スキーム1に従って化合物(a−1)を合成した。
・化合物(a−1−1)の合成
攪拌子を入れた2000mL三つ口フラスコに4−(4−ペンチルシクロヘキシル)安息香酸27.4g、3,5−ジニトロアニリン18.3gを取り、ジクロロメタン1200gを加えて攪拌した。その後、0℃に冷却し、そこに1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩23.0g、及びN,N−ジメチルアミノピリジン2.44gを加え、室温で20時間攪拌した。その後、反応液を水800mLで3回分液洗浄した後、有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥させた。その後、ロータリーエバポレータにより内容量が200gになるまでゆっくり濃縮し、途中で析出してきた白色固体を濾過により回収した。この白色固体を真空乾燥することで化合物(a−1−1)を37.4 g得た。
・化合物(a−1−2)の合成
攪拌子を入れた500mL三口フラスコに化合物(a−1−1)を26.4g取り、アセトニトリル300gを加えて撹拌した。その後、0℃に冷却し,そこに二炭酸ジ−tert−ブチル14.4g、及びN,N−ジメチルアミノピリジン0.73gを加え、室温で6時間撹拌した。その後、反応液を100gになるまでロータリーエバポレータにより濃縮した後、水500g中に注ぎ、析出した白色固体を濾過により回収した。この白色固体を真空乾燥することで化合物(a−1−2)を25.9g得た。
・化合物(a−1)の合成
攪拌子を入れた300mL三つ口フラスコに化合物(a−2−1)を21.6g、亜鉛52.3g、及び塩化アンモニウム8.56gを加え、窒素置換を3回行った。その後、反応容器を0℃に冷却し、窒素バブリングしたテトラヒドロフランを150g、及びエタノール20gを加えて撹拌し、更に水10gを滴下により加え、室温で撹拌した。3時間後、反応液をセライト濾過し、濾液に酢酸エチル300gを加え、水200mLで3回分液洗浄した。その後、有機層をロータリーエバポレータにより濃縮して乾固した。得られた残渣をエタノールにより再結晶することで化合物(a−1)を13.4g得た。
[合成例1−2:化合物(a−2)の合成]
下記スキーム2に従って化合物(a−2)を合成した。
・化合物(a−2−1)の合成
出発物質として4−ブロモ安息香酸及び4−(4−ペンチルシクロヘキシル)アニリンを用いて、化合物(a−1−1)と同様の合成処方により化合物(a−2−1)を得た。
・化合物(a−2−2)の合成
化合物(a−1−1)に代えて化合物(a−2−1)を用い、化合物(a−1−2)と同様の合成処方により化合物(a−2−2)を得た。
・化合物(a−2)の合成
攪拌子を入れた500mL三つ口フラスコに化合物(a−2−2)を21.1g、4−カルボキシフェニルボロン酸を6.63g、酢酸パラジウム(II)を0.225g、炭酸カリウムを27.6g、及び1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンを0.797g加え、窒素置換を3回行った。そこに窒素バブリングしたテトラヒドロフランを80g、水を80g加え、60℃で3時間撹拌させた。反応液をセライト濾過し、濾液に酢酸エチル200gを加え、水150mLで3回分液洗浄した。その後、ロータリーエバポレータによる濃縮により内容量が50gになるまでゆっくり濃縮し、途中で析出してきた白色固体を濾過により回収した。この白色固体を真空乾燥することで化合物(a−2)を15.9g得た。
[合成例1−3:化合物(a−3)の合成]
下記スキーム3に従って化合物(a−3)を合成した。
出発物質として4−ブロモアニリン及び4−(4−オクチルシクロヘキシル)安息香酸を用いて、化合物(a−2)と同様の合成処方により化合物(a−3−1)、化合物(a−3−2)及び化合物(a−3)を合成した。
[合成例1−4:化合物(a−4)の合成]
下記スキーム4に従って化合物(a−4)を合成した。
・化合物(a−4−1)の合成
攪拌子を入れた500mL三つ口フラスコに2,5−ジニトロアニリン18.3g、無水コハク酸10.0gを取り、アセトニトリルを250g加え、10時間還流した。その後、ロータリーエバポレータで反応液を濃縮、乾固させ、化合物(a−4−1)を25.3g得た。
・化合物(a−4−2)の合成
出発物質としてβ−コレスタノール及び化合物(a−4−1)を用いて、化合物(a−1−1)と同様の合成処方により化合物(a−4−2)を得た。
・化合物(a−4−3)の合成
攪拌子を入れた300mL三つ口フラスコに化合物(a−4−2)を26.2g取り、そこにテトラヒドロフラン120gを加え、0℃に冷却した。そこに、クロロギ酸メチル3.97gを滴下し、室温で3時間撹拌した。反応液に酢酸エチル200gを加え、1mol/Lの塩酸150mL、及び水150mLで3回分液洗浄した後、有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥させた。その後、ロータリーエバポレータにより濃縮し、真空乾燥にて乾固することで、黄色固体の化合物(a−4−3)を27.1g得た。
・化合物(a−4)の合成
出発物質として化合物(a−4−3)を用いて、化合物(a−1)と同様の合成処方により化合物(a−4)を得た。
[合成例1−5:化合物(a−5)の合成]
下記スキーム5に従って化合物(a−5)を合成した。
・化合物(a−5−1)の合成
攪拌子を入れた300mLナスフラスコに4−(4−プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシルカルボン酸25.2gを加え、塩化チオニル200g、及びDMF0.25gを加え、80℃で2時間攪拌した。その後、過剰の塩化チオニルをアスピレータで除去し、残渣をジクロロメタン500gに溶解させた。これを溶液Aとした。
撹拌子を入れた2000mL三口フラスコに4−ヒドロキシ桂皮酸16.4g、水酸化ナトリウム8gを取り、更に水を500g加え、0℃に冷却した。そこに、溶液Aを30分かけて滴下し、室温で5時間撹拌させた。その後、反応液を水400mLで3回分液洗浄した後、有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥させた。その後、ロータリーエバポレータによる濃縮により、内容量が50gになるまでゆっくり濃縮し、途中で析出してきた白色固体を濾過により回収した。この白色固体を真空乾燥することで化合物(a−5−1)を31.9g得た。
・化合物(a−5−2)の合成
出発物質として化合物(a−5−1)及び3,5−ジニトロアニリンを用いて、化合物(a−1−1)と同様の合成処方により化合物(a−5−2)を得た。
・化合物(a−5−3)の合成
出発物質として化合物(a−5−2)を用いて、化合物(a−1−2)と同様の合成処方により化合物(a−5−3)を得た。
・化合物(a−5)の合成
出発物質として化合物(a−5−3)を用いて、化合物(a−1)と同様の合成処方により化合物(a−5)を得た。
[合成例1−6:化合物(a−6)の合成]
下記スキーム6に従って化合物(a−6)を合成した。
出発物質として4−(4’−ペンチル−[1,1’−ビス(シクロヘキサン)]−4−イル)安息香酸、及び4’−ヒドロキシアゾベンゼン−4−カルボン酸を用いて、化合物(a−5)と同様の合成処方により化合物(a−6)を得た。
[合成例1−7;化合物(a−7)の合成]
下記スキーム7に従って化合物(a−7)を合成した。
・化合物(a−7−1)の合成
攪拌子を入れた2000mLナスフラスコに4−フルオロ−1,3−ジニトロベンゼン18.6g、及び4−(4−ペンチルシクロヘキシル)アニリン24.5gを取り、テトラヒドロフラン1000g、及びトリエチルアミン15.2gを加え、10時間還流した。反応液に酢酸エチル1200gを加え、水1000mLで3回分液洗浄した。その後、ロータリーエバポレータによる濃縮により、内容量が200gになるまでゆっくり濃縮し、途中で析出してきた黄色固体を濾過により回収した。この黄色固体を真空乾燥することで化合物(a−7−1)を38.3g得た。
・化合物(a−7−2)の合成
出発物質として化合物(a−7−1)を用いて、化合物(a−1−2)と同様の合成処方により化合物(a−7−2)を得た。
・化合物(a−7)の合成
出発物質として化合物(a−7−2)を用いて、化合物(a−1)と同様の合成処方により化合物(a−7)を得た。
[合成例1−8;化合物(a−9)の合成]
出発物質として化合物4−(4,4,4−トリフルオロブチル)シクロヘキサンカルボン酸を用いて、スキーム5の化合物(a−5)と同様の合成処方により化合物(a−9)を得た。
<重合体の合成>
[合成例2−1:重合体(PA−1)の合成]
テトラカルボン酸二酸無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物100モル部、並びにジアミンとして化合物(a−1)20モル部、及びp−フェニレンジアミン80モル部を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解し、室温で6時間反応を行い、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。ここで得られたポリアミック酸を重合体(PA−1)とした。
[合成例2−2〜合成例2−11、2−19]
使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類及び量を下記表1のとおり変更した以外は上記合成例2−1と同様にしてポリアミック酸をそれぞれ合成した。得られたポリアミック酸をそれぞれ、重合体(PA−2)〜(PA−7)及び(Ra−1)〜(Ra−5)とした。
表1中、ジアミン及び酸二無水物の()内の数値は、重合体の合成に使用したテトラカルボン酸二無水物の合計100モル部に対する使用割合[モル部]を表す。表1中の酸無水物及びジアミンの略称はそれぞれ以下の化合物を表す。
<酸二無水物>
t−1:2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物
t−2:ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸2:4,6:8−二無水物
t−3:1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
t−4:ピロメリット酸二無水物
<ジアミン>
a−8:下記式(a−8)で表される化合物
b−1:下記式(b−1)で表される化合物
b−2:下記式(b−2)で表される化合物
b−3:下記式(b−3)で表される化合物
b−5:下記式(b−5)で表される化合物
b−6:下記式(b−6)で表される化合物
b−7:下記式(b−7)で表される化合物
b−8:下記式(b−8)で表される化合物
b−9:下記式(b−9)で表される化合物
d−1:p−フェニレンジアミン
d−2:3,5−ジアミノ安息香酸
d−3:下記式(d−3)で表される化合物
[合成例2−12:重合体(PI−1)の合成]
使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類及び量を上記表1のとおり変更した以外は上記合成例2−1と同様にしてポリアミック酸を合成した。次いで、得られたポリアミック酸溶液にピリジン及び無水酢酸を添加し、化学イミド化を行った。化学イミド化後の反応溶液は濃縮し、濃度が10重量%となるようにNMPにて調製した。得られた重合体(PI−1)のイミド化率は約30%であった。
[合成例2−13:エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン(EPS−1)の合成]
撹拌機、温度計、滴下漏斗及び還流冷却管を備えた反応容器に、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン100.0g、メチルイソブチルケトン500g及びトリエチルアミン10.0gを仕込み、室温で混合した。次いで、脱イオン水100gを滴下漏斗より30分かけて滴下した後、還流下で混合しつつ、80℃で6時間反応させた。反応終了後、有機層を取り出し、0.2重量%硝酸アンモニウム水溶液により洗浄後の水が中性になるまで洗浄したのち、減圧下で溶媒及び水を留去することにより、ポリオルガノシロキサン(EPS−1)を粘調な透明液体として得た。
このポリオルガノシロキサン(EPS−1)について、H−NMR分析を行ったところ、化学シフト(δ)=3.2ppm付近にオキシラニル基に基づくピークが理論強度どおりに得られ、反応中にエポキシ基の副反応が起こっていないことが確認された。ポリオルガノシロキサン(EPS−1)のMwは2,200、エポキシ当量は186g/モルであった。
[合成例2−14:特定基含有ポリオルガノシロキサン(PS−1)の合成]
100mLの三口フラスコに、上記合成例2−13で合成したポリオルガノシロキサン(EPS−1)を2.3g、シクロペンタノン11.1g、化合物(a−2)1.1g(ポリオルガノシロキサン(EPS−1)の有する珪素原子に対して30モル%に相当)、及びテトラブチルアンモニウムフルオリド0.03gを仕込み、90℃で36時間反応させた。反応終了後、反応混合物にメタノールを加えて沈殿を生成させ、この沈殿物を酢酸エチルに溶解して得た溶液を3回水洗した後、溶剤を留去することにより、ポリオルガノシロキサン(PS−1)の白色粉末を得た。ポリオルガノシロキサン(PS−1)の重量平均分子量は2,700であった。
[合成例2−15〜合成例2−18]
使用する化合物の種類及び量を下記の表2の通りとした以外は、上記合成例2−14と同様の合成処方により特定基含有ポリオルガノシロキサン(PS−2)〜(PS−4)及び(Rs−1)をそれぞれ合成した。
表2中、カルボン酸の配合量の数値は、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンが有する珪素原子に対する仕込み量[モル%]を示す。
表2中の化合物の略称は以下の通りである。
b−4;上記式(b−4)で表される化合物
[実施例1]
(1)液晶配向剤の調製
重合体として上記合成例2−1で得た重合体(PA−1)に、有機溶媒としてNMP及びブチルセロソルブ(BC)を加え、溶媒組成がNMP:BC=50:50(重量比)、固形分濃度5.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いてろ過することにより液晶配向剤(D−1)を調製した。
(2)液晶表示素子の製造
一対の基板として、ITO膜からなる2系統の透明電極(電極A及び電極B)を片面に有するガラス基板を用い、この一対のガラス基板上に、上記で調製した液晶配向剤(D−1)をスピンナーにより塗布し、80℃のホットプレート上で1分間のプレベークを行った後、230℃のホットプレート上で10分間ポストベークして、膜厚約0.08μmの塗膜を形成した。続いて、どちらか一方の基板の液晶配向膜を有する面の外縁に、直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、間隙を介して2枚の基板を対向配置し、外縁部同士を当接して圧着して接着剤を硬化した。次いで、液晶注入口より一対の基板間に、ネマチック液晶(メルク社製、MLC−6608)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止した。
(3)焼き付き特性(AC残像特性)の評価
上記で製造した液晶表示素子を25℃、1気圧の環境下におき、電極Bには電圧をかけずに、電極Aに交流電圧3.5Vと直流電圧5Vの合成電圧を2時間印加した。その直後、電極A及び電極Bの双方に交流4Vの電圧を印加した。両電極に交流4Vの電圧を印加し始めた時点から電極A及び電極Bの光透過性の差が目視で確認できなくなるまでの時間を測定した。この時間が20秒未満であったとき焼き付き特性「良好1(◎)」、20秒以上60秒未満であったとき焼き付き特性「良好2(○)」、60秒以上100秒未満であったとき焼き付き特性「可1(△)」、100秒以上150秒未満であったとき焼き付き特性「可2(△△)」、そして150秒を超えた場合を焼き付き特性「不良(×)」と評価したところ、この液晶表示素子の焼き付き特性は「良好1(◎)」であった。
(4)引き置き時間経過後の印刷性の評価
上記で調製した液晶配向剤(D−1)を、液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製)を用いて、ITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面に塗布した。30分間引き置きをした後、80℃のホットプレート上で1分間加熱(プレベーク)して溶媒を除去した。その後、200℃のホットプレート上で10分間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚0.06μmの塗膜を形成した。この塗膜を倍率20倍の顕微鏡で観察して印刷ムラ及びピンホールの有無を調べた。なお、重合体の溶剤に対する溶解性が低いほど、引き置き時間中に印刷ムラ及びピンホールが発生しやすくなる。評価は、引き置き時間の経過後において、印刷ムラ及びピンホールが殆ど観察されなかった場合を印刷性「良好(○)」、印刷ムラ及びピンホールが僅かに観察された場合を印刷性「可(△)」、印刷ムラ及びピンホールの少なくともいずれかが明確に観察された場合を印刷性「不良(×)」とした。その結果、この実施例では印刷性「良好(○)」の結果であった。
[実施例2〜9、11及び比較例1〜6]
使用する重合体の種類及び量を下記表3に記載の通りとした点以外は上記実施例1と同様にして液晶配向剤をそれぞれ調製した。また、調製した液晶配向剤を用いて上記実施例1と同様にして各種評価を行った。それらの結果を下記表3に示した。
表3中、重合体の配合比の数値は、液晶配向剤の調製に使用した重合体成分の合計100重量部に対する各重合体の配合割合[重量部]を示す。
[実施例10]
(1)液晶配向剤の調製
重合体として上記合成例2−5で得た重合体(PA−5)に、有機溶媒としてNMP及びブチルセロソルブ(BC)を加え、溶媒組成がNMP:BC=50:50(重量比)、固形分濃度5.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いてろ過することにより液晶配向剤(D−10)を調製した。
(2)液晶表示素子の製造
上記で調製した液晶配向剤(D−10)を、図1に示したようなスリット状にパターニングされ、複数の領域に区画された2系統のITO電極(電極A及び電極B)をそれぞれ有する一対のガラス基板の各電極面上に、液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製)を用い塗布し、80℃のホットプレート上で1分間加熱(プレベーク)して溶媒を除去した後、200℃のホットプレート上で10分間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚600Åの塗膜を形成した。その後、超純水中で1分間超音波洗浄を行い、次いで100℃クリーンオーブン中で10分間乾燥することにより液晶配向膜を有する基板を得た。この操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。
次に、上記一対の基板のうちの1枚につき、液晶配向膜を有する面の外縁に直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、一対の基板を液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化させた。次いで、液晶注入口より、一対の基板間にネマチック液晶(メルク社製、MLC−6608)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止することにより液晶セルを製造した。得られた液晶セルにつき、電極間に周波数60Hzの交流10Vを印加し、液晶が駆動している状態で、光源にメタルハライドランプを使用した紫外線照射装置を用いて、紫外線を10,000J/mの照射量にて照射した。なお、この照射量は、波長365nm基準で計測される光量計を用いて計測した値である。
(3)焼き付き特性(AC残像特性)の評価
上記で製造した液晶表示素子を25℃、1気圧の環境下に置き、電極Bには電圧をかけずに、電極Aに交流電圧10Vを300時間印加した。300時間が経過した後、直ちに電極A及び電極Bの双方に交流3Vの電圧を印加して、両電極間の光透過率の差ΔT[%]を測定した。このとき、ΔTが2%未満であった場合をAC残像特性「良好1(◎)」、2%以上3%未満であった場合を残像特性「良好2(○)」、3%以上4%未満であった場合を残像特性「可(△)」、4%以上であった場合を残像特性「不良(×)」と評価した。その結果、この実施例では「良好1」の評価であった。
(4)引き置き時間経過後の印刷性の評価
上記で調製した液晶配向剤(D−10)を用いて、上記実施例1と同様にして、引き置き時間が経過した後の印刷性を評価した。その結果、この実施例では印刷性「良好(○)」の結果であった。
これら実施例1〜11の結果から、上記特定部分構造を有する重合体を含有する液晶配向剤では、基板への塗布後に30分間の引き置き時間を設けた場合にも印刷性が良好であった。これは、重合体(P)の溶剤に対する溶解性が高いことを示唆している。
また、液晶表示素子の焼き付き特性(AC残像特性)も良好であった。この結果から、重合体に導入した保護基がポストベーク時の加熱により脱離することで、ポストベーク後には重合体側鎖が剛直な構造を有するものとなり、液晶表示素子のAC残像を十分に低減することができたものと推測される。これに対し、比較例では、焼き付き特性及び印刷性のいずれかが実施例のものよりも劣っていた。
A,B:ガラス基板

Claims (4)

  1. 下記式(1)で表される部分構造を有する重合体(P)を含有する液晶配向剤。
    (式(1)中、Aは単結合又は2価の連結基であり、Rは下記式(2)で表される基であって、炭素数8以上の1価の有機基である。X、カルバメート系保護基、アミド系保護基、イミド系保護基又はスルホンアミド系保護基である。「*」は重合体の主鎖に結合する結合手を示す。)
    (式(2)中、Aは単結合又は2価の連結基であり、Rは液晶配向性基又は光配向性基である。「*」は窒素原子に結合する結合手を示す。)
  2. 前記重合体(P)は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド及びポリオルガノシロキサンよりなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1に記載の液晶配向剤。
  3. 請求項1又は2に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
  4. 請求項3に記載の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。
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