以下、発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一または同等の部分には同一の符号を付す。
画像形成装置1は、電子写真方式の印刷機能を備えた装置である。画像形成装置1は、例えば、複写機、プリンタ、FAX、或いは複合機(MFP:Multifunction Peripheral)である。画像形成装置1は、非消色印刷に加えて、消色印刷が可能となっている。非消色印刷とは、非消色トナー(パーマネントトナー、或いは通常トナーともいう。)を使った通常の印刷のことであり、消色印刷とは、消色トナーを使った印刷のことである。
消色トナーは、温度、特定波長の光、圧力等の外的刺激により消色するトナーである。本実施形態では、消色トナーは、ある一定の温度(以下、消色温度という。)以上の熱を加えられることにより消色するトナーであるものとする。なお、本実施形態において「消色」とは、用紙の下地の色とは異なる色(有彩色のみならず白色および黒色等の無彩色を含む。)で形成された画像を視覚的に見えなくすることをいう。
消色トナーは、消色開始温度と完全消色温度を有する。これらの温度は消色トナーの種類により変化するが、一例として、消色開始温度は105℃、完全消色温度は125℃である。なお、本実施形態でいう消色温度は、本実施形態の性質上、典型的には消色開始温度のことをいうが、定着時にある程度の消色を許容するのであれば(或いは、ある程度の消色を予め考慮に入れて画像形成するのであれば)、消色温度は消色開始温度から完全消色温度の間の温度であってもよい。
図1は画像形成装置1のブロック図である。画像形成装置1は、シート等の記録媒体(以下、単にシートという。)に画像を形成する装置である。画像形成装置1は、操作部10と、画像形成部20と、定着部30と、記憶部40と、制御部50と、を備える。
操作部10は、画像形成装置1のユーザインタフェースである。例えば、操作部10は、ボタン、スイッチ、或いはタッチパネルから構成されるコントロールパネルである。操作部10は、印刷JOB等の印刷開始命令をユーザから受け取る入力部として機能する。操作部10は、ユーザから入力された印刷開始命令を制御部50に通知する。
印刷開始命令は、ユーザが画像形成装置1に印刷を開始させるための命令の総称である。印刷開始命令には、ネットワークを介した印刷JOBの送信のみならず、ユーザが印刷開始ボタン若しくはコピー開始ボタンを押したことに伴う、印刷開始信号の制御部50への送信も含まれる。印刷JOBが記憶部40に残された状態で電源が切られ(或いはスリープ状態に入り)、電源投入と同時に印刷が開始されるのであれば、印刷開始命令には、ユーザが電源ボタンを押したことに伴う、操作部10から制御部50への電源ON信号(或いは復帰信号)の送信も含まれる。
印刷開始命令という概念には、少なくとも非消色印刷開始命令と消色印刷開始命令とが含まれる。非消色印刷開始命令とは、画像形成装置1に非消色印刷を開始させるための命令であり、消色印刷開始命令とは、画像形成装置1に消色印刷を開始させるための命令である。なお、画像形成装置1は、通信インタフェース(ネットワーク接続インタフェース)を備え、ネットワークを介してユーザ端末から印刷開始命令を取得するよう構成されていてもよい。
画像形成部20は、シートSにトナー像を転写するトナー像転写ユニットである。図2には、画像形成部20の一例として、タンデム方式のトナー像転写ユニットが示されている。画像形成部20は、図2に示すように、露光部21と、画像形成ステーション22、23と、転写部24と、を備える。
露光部21は、像担持体に静電潜像を形成する装置である。露光部21は、例えば、ポリゴンミラー、Fθレンズ、半導体レーザー、又はLED(Light Emitting Diode)等から構成される。露光部21は、レーザー光もしくはLED光を感光体ドラム22a、23aに向けて照射することで、感光体ドラム22a、23aの周面に静電潜像を形成する。
画像形成ステーション22は、非消色トナー像を中間転写ベルト24aに転写する一次転写装置である。画像形成部20は、それぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)に対応した複数の画像形成ステーション22を有している。画像形成ステーション22は、中間転写ベルト24a上に各色のトナー像を多重転写する。
画像形成ステーション22は、それぞれ、感光体ドラム22aと、帯電チャージャ22bと、現像装置22cと、一次転写ローラ22dと、を備えている。感光体ドラム22aは、ドラム状の像担持体である。帯電チャージャ22bは、感光体ドラム22aの表面を一様に帯電する帯電器である。現像装置22cは、感光体ドラム22aの表面にトナー像を現像する現像器である。一次転写ローラ22dは、感光体ドラム22aの周面のトナー像を中間転写ベルト24aに転写するバイアスローラである。
画像形成ステーション23は、消色トナー像を中間転写ベルト24aに転写する一次転写装置である。画像形成ステーション23は、画像形成ステーション22と同様に、感光体ドラム23aと、帯電チャージャ23bと、現像装置23cと、一次転写ローラ23dと、を備える。
転写部24は、中間転写ベルト24aの表面に形成されたトナー像をシートSに転写する二次転写装置である。転写部24は、中間転写ベルト24aと、転写対向ローラ24bと、二次転写ローラ24cと、を備える。中間転写ベルト24aは、画像形成ステーション22、23によってトナー像が形成される中間転写媒体(像担持体)である。転写対向ローラ24bは、中間転写ベルト24aを回転させる駆動ローラである。二次転写ローラ24cは、中間転写ベルト24aの表面のトナー像をシートSに転写するバイアスローラである。
定着部30は、熱と圧力でトナー像をシートSに定着させる定着器である。図3には、定着部30の一例として、加圧面側の部材を加圧ベルトとした定着器が示されている。定着部30は、定着ローラ31と、発熱部32と、温度センサ33と、加圧ベルト34と、出口加圧ローラ35aと、テンションローラ35bと、加圧ベルトヒートローラ35cと、発熱部36と、ニップパッド37と、温度センサ38と、を備える。
定着ローラ31は、シートSのトナー画像形成面(以下、「定着面」という。)側を熱するためのヒートローラである。定着ローラ31は、第1のシート加熱部材として機能する。定着ローラ31は、例えば、軸方向に長い直径が45mmのローラである。定着ローラ31は、例えば、筒状のアルミニウム基体の外周面にフッ素樹脂層等の樹脂層を被覆した構成となっている。定着ローラ31は、熱源として発熱部32を備える。
発熱部32は、定着ローラ31を熱するための発熱体である。一例として、発熱部36は、高熱を発するランプ(ヒータランプ)から構成される。図3の例では、発熱部32は、センタランプ32aとサイドランプ32bとから構成されている。センタランプ32a及びサイドランプ32bは、例えば、消費電力が600Wのハロゲンランプである。なお、例えば、センタランプ32aは、定着ローラ31の長手方向(軸方向)における中央部(以下、センタ部という。)を加熱し、サイドランプ32bは、定着ローラ31の長手方向における端部(以下、サイド部という。)を加熱してもよい。
温度センサ33は、定着ローラ31の温度を計測するためのセンサである。温度センサ33は、第1のシート加熱部材(図3の例では、定着ローラ31)の温度を計測する温度計測部として機能する。温度センサ33は、例えば、サーミスタである。温度センサ33は、定着ローラ31のセンタ部に配置されていてもよいし、サイド部に設置されていてもよい。なお、図3の例では、温度センサ33は接触式の温度センサとなっているが、温度センサ33は非接触式の温度センサであってもよい。
加圧ベルト34は、定着面の反対面(以下、「加圧面」という。)側からシートSに熱と圧力を加えるための無端ベルトである。加圧ベルト34は、第2のシート加熱部材として機能する。加圧ベルト34は、例えば、回転方向に沿った外周の長さが157mm(直径に換算して50mm)の無端ベルトである。加圧ベルト34は、出口加圧ローラ35a、テンションローラ35b及び加圧ベルトヒートローラ35cに掛けまわされて架張されている。加圧ベルト34は、定着ローラ31と対面した位置に配置される。定着ローラ31と加圧ベルト34との間にはニップが形成されている。
出口加圧ローラ35aは、ニップの出口でシートSを加圧するためのローラである。出口加圧ローラ35aは、例えば、軸方向に長い直径が21mmの円筒形のローラである。
テンションローラ35bは、加圧ベルト34に張力を付与するためのローラである。
加圧ベルトヒートローラ35cは、加圧ベルト34を熱するためのローラである。加圧ベルトヒートローラ35cは、例えば、軸方向に長い直径が17mmのローラである。
発熱部36は、加圧ベルトヒートローラ35cを熱するための発熱体である。例えば、発熱部36は、ヒータランプである。一例として、発熱部36は、消費電力が300Wのハロゲンランプである。加圧ベルト34は、加圧ベルトヒートローラ35cから伝わる発熱部36の熱によって加熱される。
ニップパッド37は、加圧ベルト34を定着ローラ31の外周面に押し付けるための加圧部材である。ニップパッド37は、加圧ベルト34を挟んで定着ローラ31と対向する位置に配置されている。ニップパッド37は、例えば、角柱状の部材である。
温度センサ38は、加圧ベルト34の温度を計測するためのセンサである。温度センサ38は、第2のシート加熱部材(図3の例では、加圧ベルト34)の温度を計測する温度計測部として機能する。温度センサ38は、例えば、サーミスタである。温度センサ38は、定着ローラ31のセンタ部に配置されていてもよいし、サイド部に設置されていてもよい。なお、図3の例では、温度センサ38は接触式の温度センサとなっているが、温度センサ38は非接触式の温度センサであってもよい。
定着部30は、トナー像が転写されているシートSを図中の矢印の方向に通す。シートSは、定着ローラ31及び加圧ベルト34の間に形成されたニップで加熱及び加圧される。本実施形態の定着部30は、定着ローラ31のみならず加圧ベルト34も加熱されている。そのため、シートSは、ニップで両面から加熱される。トナー像は、定着ローラ31及び加圧ベルト34の双方から得た熱エネルギーでシートSに定着する。
記憶部40は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスク等のデータ読み書き可能な記憶装置である。記憶部40には、制御テーブル41を含む各種データが格納されている。
制御テーブル41は、定着ローラ31の制御温度を決定するために使用されるデータである。制御テーブル41は後述の印刷時定着制御処理で使用される。図4は制御テーブル41のデータ構成を示す図である。制御テーブル41には、加圧ベルト34の温度と定着ローラ31の温度とを関連付けた情報が複数格納されている。関連づけられた2つの温度は、定着部30が非消色トナー像をシートSに定着できる状態(以下、非消色トナー像定着可能状態という。)を維持できる温度の組み合わせとなっている。
図中、Tfeは定着ローラ31の定常時の制御温度、Tpeは加圧ベルト34の定常時の制御温度である。また、Tfwは定着ローラ31のウォームアップ温度、Tpwは加圧ベルト34のウォームアップ温度である。ウォームアップ温度とは、定着部30がウォームアップを完了したか否か(レディ状態となったか否か)を判別するための温度である。TpeはTpwより大きく、TpeはTfwより小さい。また、A、BはTfeからTfwまで、及びTfwからTfeまでの任意の温度である。AはBより小さい。一例として、Tfe=100℃、Tpe=90℃、Tfw=130℃、Tpw=60℃、A=10℃、B=20℃である。以下の説明では、Tfeを第1の温度、Tpeを第2の温度、Tfwを第3の温度、Tpwを第4の温度という。
なお、第1の温度Tfeは消色トナーの消色温度より低い温度である。そのため、定着ローラ31が第1の温度Tfe、及び加圧ベルト34が第2の温度Tpeにあるとき、定着部30は消色トナー及び非消色トナーのいずれのトナーで形成されたトナー像もシートSに定着させることが可能である。また、第3の温度Tfwは消色トナーの消色温度より高い温度である。そのため、定着ローラ31が第3の温度Tfw、及び加圧ベルト34が第3の温度Tfwにあるとき、定着部30は非消色トナー像をシートSに定着可能であるが、消色トナー像を定着させることはできない。正確には、消色トナー像はシートSに定着するが、消色した状態となっている。なお、本実施形態でいう「定着」には、消色した状態での定着は含まれない。制御テーブル41については後述の印刷時定着制御処理で述べる。
制御部50は、プロセッサ等の処理装置から構成される。制御部50は、後述の定着制御処理を含む種々の動作を実現する。例えば、制御部50は、不図示のROM(Read Only Memory)若しくはRAM(Random Access Memory)に格納されているプログラムをプロセッサに実行させることで、各種動作を実現してもよい。制御部50は、図1に示すように、命令取得部51、判別部52、定着制御部53、印刷制御部54としての機能を有している。これら機能ブロックは、ソフトウェアブロックであってもよいし、ハードウェアブロックであってもよい。これら機能ブロックが実現する動作については、後述の定着制御処理の説明の箇所で述べる。
次に、このような構成を有する画像形成装置1の動作について説明する。
画像形成装置1がユーザから動作開始命令を取得すると、制御部50は定着制御処理を開始する。動作開始命令とは、画像形成装置1に動作を開始させるための命令であり、例えば、印刷開始命令、電源ON命令、或いは復帰命令である。電源ON命令は、画像形成装置1を電源OFF状態から電源ON状態するための命令であり、復帰命令は、画像形成装置1をスリープ状態から復帰させるための命令である。動作開始命令は、命令取得部51が操作部10若しくは不図示の通信インタフェースを介して取得する。
なお、以下の説明では、動作開始命令取得時、画像形成装置1は電源OFF状態あるいはスリープ状態にあるものとする。また、以下の説明では、画像形成装置1が電源OFF状態(若しくはスリープ状態)から定着可能状態となるための動作のことをウォームアップ(若しくはウォーミングアップ)という。定着可能状態とは、定着部30が消色トナー像或いは非消色トナー像をシートSに定着できる状態のことである。以下、図5のフローチャートを参照して定着制御処理を説明する。
画像形成装置1の制御部50はユーザから動作開始命令を開始するとウォームアップを開始する。ウォームアップが開始されたら、まず、定着制御部53は、定着部30がプレラン開始可能状態L1となるまで定着ローラ31を急速加熱する(ACT11)。急速加熱は、発熱部32を構成するセンタランプ32aとサイドランプ32bを両方とも全点灯することで行う。このとき、加圧ベルト34は回転していないので発熱部36は点灯しない。なお、プレラン開始可能状態L1は、定着ローラ31がプレラン開始温度となった状態のことである。プレラン開始温度は装置設計者が任意に設定可能である。
次に、命令取得部51は、操作部10若しくは不図示の通信インタフェースを介してユーザから印刷開始命令を取得しているか否か判別する(ACT12)。命令取得部51は、電源ON命令あるいは復帰命令しか受信していない場合であっても、記憶部40に印刷JOBが記憶されているのであれば、印刷開始命令を取得したと判別してもよい。
命令取得部51が印刷開始命令を取得している場合(ACT12:Yes)、制御部50は印刷時定着制御処理を開始する(ACT13)。以下、図6のフローチャートを参照して印刷時定着制御処理を説明する。
判別部52は、命令取得部51が取得した印刷命令が消色印刷開始命令か非消色印刷開始命令か判別する(ACT21)。消色印刷開始命令の場合(ACT21:Yes)、定着制御部53はプレランを開始する(ACT22)。本実施形態では、プレランとは、トナー像の定着処理を開始する前に、定着部30が、定着部30の各部(定着ローラ31および加圧ベルト34等)を動作(回転)させることをいう。
プレランの開始と同時に、定着制御部53は、定着ローラ31及び加圧ベルト34の温度制御を行う。より具体的には、定着制御部53は、発熱部36を点灯させて加圧ベルト34の加熱を開始するとともに、発熱部32及び発熱部36の点灯制御を行う。例えば、定着制御部53は、予め設定された点灯パターンに従って、センタランプ32aとサイドランプ32bを交互に点灯させたり、発熱部36をパルス状にON/OFFしたりする。
定着制御部53は、定着部30が両トナー像定着可能状態L3となるまでこの制御を継続する。両トナー像定着可能状態L3は、定着ローラ31と加圧ベルト34が消色トナー像及び非消色トナー像のいずれのトナー像もシートSに定着できる温度にある状態のことをいう。本実施形態では、両トナー像定着可能状態L3は、定着ローラ31が第1の温度Tfe、加圧ベルト34の温度が第2の温度Tpeに達した状態のことをいう。
図7(A)は、消色印刷開始命令取得時のウォームアップ開始から印刷終了までの定着ローラ31と加圧ベルト34の温度推移の一例を示したものである。図中、THRが定着ローラ31の表面温度の推移であり、TPBが加圧ベルト34の表面温度の推移である。t11は、定着部30がプレラン開始可能状態L1になったタイミングであり、t12は、定着部30が両トナー像定着可能状態L3になったタイミングである。また、t13は、消色印刷が終了したタイミングである。図を見れば分かるように、消色印刷開始命令を取得した時は、定着ローラ31の温度THRは、第3の温度Tfwとなることなく、いきなり第1の温度Tfeで安定する。加圧ベルト34は温度上昇速度が遅いので、その温度TPBは緩やかに上昇する。
図6に戻り、判別部52は、定着部30が両トナー像定着可能状態L3となったか判別する(ACT23)。定着部30が両トナー像定着可能状態L3となっていない場合(ACT23:No)、定着制御部53は定着ローラ31及び加圧ベルト34の温度制御を継続する。定着部30が両トナー像定着可能状態L3となっている場合(ACT23:Yes)、印刷制御部54は消色印刷の制御を開始する(ACT24)。印刷制御部54は画像形成装置1の各部(例えば、画像形成部20等)の制御を行う。
続いて、判別部52は、消色印刷が終了したか判別する(ACT25)。消色印刷が終了していない場合(ACT25:No)、判別部52は消色印刷が終了するまで待機する。消色印刷が終了している場合(ACT25:Yes)、印刷制御部54は画像形成装置1をレディ状態に設定する(ACT26)。例えば、印刷制御部54は、画像形成装置1の状態を示す変数をレディ状態に設定する。このとき、印刷制御部54は、操作部10が備えるディスプレイに画像形成装置1がレディ状態である旨を表示してもよい。
ACT21に戻り、命令取得部51が取得した印刷命令が非消色印刷開始命令の場合(ACT21:No)、定着制御部53はプレランを開始する(ACT27)。プレランの開始と同時に、定着制御部53は、定着ローラ31及び加圧ベルト34の温度制御を行う。定着制御部53は、定着部30が非消色トナー像定着可能状態L2となるまでこの制御を継続する。非消色トナー像定着可能状態L2は、定着ローラ31と加圧ベルト34が非消色トナー像をシートSに定着できる温度にある状態のことである。本実施形態では、非消色トナー像定着可能状態L2は、定着ローラ31が第3の温度Tfw、加圧ベルト34の温度が第4の温度Tpwに達した状態のことをいうものとする。なお、非消色トナー像定着可能状態L2では、定着ローラ31の温度が消色温度を超えているため、消色印刷は実行できない。
図7(B)は、非消色印刷開始命令取得時のウォームアップ開始から印刷終了までの定着ローラ31の温度THRと加圧ベルト34の温度TPBの推移の一例を示したものである。図中、t21は、定着部30がプレラン開始可能状態L1になったタイミングであり、t22は、定着部30が非消色トナー像定着可能状態L2になったタイミングである。また、t23は、定着部30が両トナー像定着可能状態L3になったタイミングであり、t24は、消色印刷が終了したタイミングである。図を見れば分かるように、非消色印刷開始命令を取得した時は、定着ローラ31は、第1の温度Tfeで安定する前に、一旦、第3の温度Tfwとなる。
図6に戻り、判別部52は、定着部30が非消色トナー像定着可能状態L2となったか判別する(ACT28)。定着部30が非消色トナー像定着可能状態L2となっていない場合(ACT28:No)、定着制御部53は定着ローラ31及び加圧ベルト34の温度制御を継続する。定着部30が非消色トナー像定着可能状態L2となっている場合(ACT28:Yes)、印刷制御部54は非消色印刷の制御を開始する(ACT29)。
続いて、定着制御部53は、定着部30が両トナー像定着可能状態L3となるように、定着ローラ31及び加圧ベルト34の温度制御を行う。この温度制御は、印刷制御部54が非消色印刷を実行している最中に行われる(ACT30)。温度制御にあたり、定着制御部53は、加圧ベルト34が第2の温度Tpeに向かって上昇していくのに合わせて、定着ローラ31の温度を第3の温度Tfwから第1の温度Tfeに向けて徐々に低下させる。
このとき、定着制御部53は、定着部30が非消色トナー像定着可能状態を維持するように定着ローラ31の温度制御を行う。非消色トナー像定着可能状態を維持できる定着ローラ31の温度(目標温度)は、判別部52によって判別される。判別部52は図4に示す制御テーブルに基づいて定着ローラ31の目標温度を判別する。例えば、温度センサ38で計測した加圧ベルト34の温度がTpw〜(Tpe−B)の範囲であれば、判別部52は定着ローラ31の目標温度をTfwと判別する。加圧ベルト34の温度が(Tpe−B)〜(Tpe−A)の範囲であれば、判別部52は目標温度をTfe+Bと判別する。加圧ベルト34の温度が(Tpe−A)〜Tpeの範囲であれば、判別部52は目標温度をTfe+Aと判別する。加圧ベルト34の温度がTpe以上であれば、判別部52は目標温度をTfeと判別する。定着制御部53は判別部52が判別した温度を目標温度として定着ローラ31の温度制御を行う。
図6に戻り、判別部52は、定着部30が両トナー像定着可能状態L3となったか判別する(ACT31)。定着部30が両トナー像定着可能状態L3となっていない場合(ACT31:No)、定着制御部53は定着部30が両トナー像定着可能状態L3となるまで温度制御を継続する。
定着部30が両トナー像定着可能状態L3となっている場合(ACT31:Yes)、判別部52は、非消色印刷が終了したか判別する(ACT32)。非消色印刷が終了していない場合(ACT32:No)、判別部52は非消色印刷が終了するまで待機する。非消色印刷が終了している場合(ACT32:Yes)、印刷制御部54は画像形成装置1をレディ状態に設定する(ACT33)。このとき、印刷制御部54は、ディスプレイにレディ状態である旨を表示してもよい。
設定が完了したら、制御部50は図5の定着制御処理のフローに戻り、処理をACT19に進める。ACT19については後述する。
ACT12に戻り、命令取得部51が印刷開始命令を取得していない場合(ACT14:No)、定着制御部53はプレランを開始する(ACT14)。プレランの開始と同時に、定着制御部53は、定着ローラ31及び加圧ベルト34の温度制御を行う。定着制御部53は、定着部30が非消色トナー像定着可能状態L2となるまでこの温度制御を継続する。
続いて、判別部52は、定着部30が非消色トナー像定着可能状態L2となったか判別する(ACT15)。定着部30が非消色トナー像定着可能状態L2となっていない場合(ACT15:No)、定着制御部53は温度制御を継続する。定着部30が非消色トナー像定着可能状態L2となっている場合(ACT15:Yes)、印刷制御部54は画像形成装置1をレディ状態に設定する(ACT16)。このとき、印刷制御部54は、ディスプレイに非消色印刷が可能である旨を表示してもよい。
続いて、定着制御部53は、定着部30が両トナー像定着可能状態L3となるように、定着ローラ31及び加圧ベルト34の温度制御を行う(ACT17)。温度制御にあたり、定着制御部53は、加圧ベルト34が第2の温度Tpeに向かって上昇していくのに合わせて、定着ローラ31の温度を第3の温度Tfwから第1の温度Tfeに向けて低下させる。このとき、定着制御部53は、定着部30が非消色トナー像定着可能状態を維持するよう定着ローラ31の温度制御を行う。制御方法はACT30で示した方法と同じであってもよい。図7(C)は、印刷開始命令と取得していない時の定着ローラ31と加圧ベルト34の温度推移の一例である。
続いて、判別部52は、定着部30が両トナー像定着可能状態L3となったか判別する(ACT18)。定着部30が両トナー像定着可能状態L3となっていない場合(ACT18:No)、定着制御部53は定着部30が両トナー像定着可能状態L3となるまで温度制御を継続する。
定着部30が両トナー像定着可能状態L3となっている場合(ACT18:Yes)、定着制御部53は、定着ローラ31を第1の温度Tfe、及び加圧ベルト34が第2の温度Tpeに維持するための温度維持制御を開始する。温度維持制御は、定着制御処理終了後も継続される。温度維持制御が開示されたら、制御部50は定着制御処理を終了する。
本実施形態によれば、定着制御部53は、定着部30が温まっていないときに命令取得部51が非消色印刷開始命令を取得した場合には、定着ローラ31の温度を第1の温度Tfeよりも高い第3の温度Tfwまで上昇させている。定着ローラ31(第1のシート加熱部材)は加圧ベルト34(第2のシート加熱部材)よりも温度上昇速度が速いので、定着制御部53は、加圧ベルト34が第2の温度Tpeに達する前に定着部30を非消色トナー像定着可能状態とすることができる。図7(B)の例であれば、定着制御部53は、加圧ベルト34の表面温度TPBが第2の温度Tpeに達するt23より速いt22のタイミングで定着部30を非消色トナー像定着可能状態L2とすることができる。よって、画像形成装置1は、少なくとも非消色印刷時の場合には、速い印刷の開始が可能となる。
また、定着制御部53は、定着部30が非消色トナー像定着可能状態となった後、加圧ベルト34(第2のシート加熱部材)が第2の温度Tpeに向かって上昇していくのに合わせて、定着ローラ31(第1のシート加熱部材)の温度を第3の温度Tfwから第1の温度Tfeに向けて低下させることにより、定着部30を両トナー像定着可能状態L3としている。
図7(B)の例であれば、定着制御部53は、定着ローラ31の表面温度THRが第3の温度Tfwに達したt22の後、加圧ベルト34の温度が第2の温度Tpeに向かって上昇していくのに合わせて、徐々に定着ローラ31の表面温度THRを下げている。そして、定着制御部53は、最終的に、t33のタイミングで、定着部30を両トナー像定着可能状態L3(すなわち、定着ローラ31の表面温度THRが第1の温度Tfe、加圧ベルト34の表面温度TPBが第2の温度Tpeの状態)にしている。
両トナー像定着可能状態L3は、非消色トナー像と消色トナー像のいずれのトナー像も定着可能な状態である。そのため、定着制御部53は、定着部30を両トナー像定着可能状態L3とした後は、印刷が非消色印刷から消色印刷に切り替わったとしても、加圧ベルト34の温度を大きく変化させる必要はない。この結果、加圧ベルト34の温度上昇のためにわざわざ待ち時間を設ける必要はないので、画像形成装置1は、少なくとも非消色印刷の後の消色印刷の場合には、速い印刷の開始が可能となる。
なお、定着制御部53は、判別部52が判別する温度に基づき、非消色トナー像定着可能状態L2を維持しながら定着ローラ31の表面温度THRを低下させている。したがって、印刷制御部54は、定着制御部53が定着ローラ31の温度を下げている最中も非消色印刷の継続が可能となる。定着制御部53が定着ローラ31の温度を下げている最中に、印刷制御部54が非消色印刷を実行することにより、非消色印刷終了後、画像形成装置1は、大きな時間を要することなく消色印刷を開始することが可能となる。
また、印刷の開始が速くなることにより、定着動作をすることなく定着ローラ31及び加圧ベルト34を温める時間(すなわち、ウォームアップ時間、及び、非消色印刷から消色印刷へ切り替える時間)が短くなるので、画像形成装置1の消費電力は小さくなる。
また、定着制御部53は、定着部30が温まっていないときに命令取得部51が動作開始命令を取得した場合には、非消色印刷開始命令の場合と同様の温度制御を行っている。したがって、画像形成装置1は、少なくとも非消色印刷時開始命令を取得した場合には、速い印刷の開始が可能となる。
なお、上述の実施形態は一例であり、種々の変更及び応用が可能である。
例えば、上述の実施形態では、画像形成部20はタンデム方式のトナー像転写ユニットであるものとして説明した。しかしながら、画像形成部20の転写方式はこれに限定されない。例えば、画像形成部20は、直接転写方式のトナー像転写ユニットであってもよい。
また、上述の実施形態では、第1のシート加熱部材は定着ローラ(ヒートローラ)、第2のシート加熱部材は加圧ベルトであるものとしたが、第1のシート加熱部材および第2のシート加熱部材は上記に限定されない。例えば、第1のシート加熱部材および第2のシート加熱部材が両方ともヒートローラであってもよいし、両方とも加圧ベルトであってもよい。第1のシート加熱部材が第2のシート加熱部材より加熱速度が速いのであれば、第1のシート加熱部材と第2のシート加熱部材は、装置の設計に合わせ、適宜変更可能である。
また、上述の実施形態では、発熱部32はヒータランプを2つ有するものとして説明したが、発熱部32はヒータランプを1つのみ有していてもよいし、2つ以上有していてもよい。また、発熱部32はヒータランプを1つ有するものとして説明したが、発熱部32はヒータランプを1つ以上有していてもよい。また、発熱部32、36はヒータランプ方式の発熱体であるものとして説明したが、発熱部32、36はヒータランプ方式の発熱体に限られない。例えばIHヒータ方式の発熱体であってもよい。
また、上述の実施形態では、第3の温度Tfwは消色温度より高いものとして説明したが、第3の温度Tfwは消色温度より低くてもよい。また、上述の実施形態では、第1の温度Tfeと第2の温度Tpeは、消色温度より低いものとして説明したが、シート加熱部材からシートSへの熱エネルギーの伝達ロスを考慮に入れて、第1の温度Tfeと第2の温度Tpeを消色温度よりも、若干、高い温度とすることも可能である。もちろん、消色トナー像の定着時にある程度消色するのを許容するのであれば、第1の温度Tfeと第2の温度Tpeを、伝達ロス分を超えて高い温度とすることも可能である。
また、上述の実施形態では、定着部30が定常状態にある時のシート加熱部の温度(第1の温度Tfeと第2の温度Tpe)は消色印刷時と非消色印刷時とで共通の温度であるものとした。しかしながら、シート加熱部の定常時の温度は消色印刷時と非消色印刷時とで多少異なっていてもよい。
また、上述の実施形態では、制御テーブル41に設定された加圧ベルト34の温度は、図4に示すように、4段階に分かれるものとした。しかしながら、加圧ベルト34の温度は4段階以上に分かれていてもよい。制御テーブル41のデータ構成は、装置の設計に合わせ、適宜変更可能である。
また、上述の実施形態では、非消色印刷開始命令は、画像形成装置1に非消色印刷を開始させるための命令であるものとして説明した。しかし、印刷開始命令の中に非消色印刷と消色印刷とが混在しているのであれば(例えば、ページごとに非消色印刷と消色印刷が分かれていたり、1ページ内の一部分のみ消色印刷であったりしているのであれば)、その印刷開始命令は非消色印刷開始命令とみなしてもよい。
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。