以下、実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
第1の実施形態の画像形成装置を図1乃至図10を参照して説明する。図1は第1の実施形態の画像形成装置の一例であるMFP(Multi Function Peripheral)10を示す概略構成図である。MFP10は、画像形成部であるプリンタ部11、スキャナ部12、給紙部13、排紙部22を備える。MFP10は、MFP10全体を制御する制御部であるCPU100を備える。
給紙部13は、それぞれ給紙ローラ15a、15bを有する第1及び第2の給紙カセット13a、13bを備える。給紙カセット13a、13bは、未使用のシート及びリユースのシート(画像を消色処理により消去したシート)を共に給紙可能である。
プリンタ部11は、矢印m方向に回転する感光体ドラム14を一様に帯電する帯電器16、スキャナ部12からの画像データ等に基づいたレーザ光17aを、帯電された感光体ドラム14に照射して、感光体ドラム14上に静電潜像を形成するレーザ露光器17を備える。プリンタ部11は、感光体ドラム14上の静電潜像にトナーを供給する現像器18、感光体ドラム14上に形成されたトナー像を記録媒体であるシートPに転写する転写器20、クリーナ21を備える。
現像器18は、トナーと磁性キャリアの混合物である二成分現像剤を用いて感光体ドラム14上の静電潜像にトナーを供給する。トナーは、例えば消色材であり、所定の温度で加熱することにより消色可能な消色トナーである。消色トナーは、バインダー樹脂と、着色剤に呈色性化合物と顕色剤とを含有する。消色トナーを用いて形成したトナー画像を所定の温度で加熱すると、トナー中の呈色性化合物と顕色剤とが解離して、トナー画像を消色する。例えば消色トナーは、90℃程度の比較的低い温度でシートに定着し、定着温度より高い100℃程度で消色する。現像器18は、所定の温度に加熱しても色が消えない非消色トナーを用いるものであっても良い。
プリンタ部11は、感光体ドラム14から排紙部22に達する間に、定着装置31を備える。MFP10は、給紙部13から感光体ドラム14、定着装置31を経て排紙部22にシートPを搬送する搬送部である搬送路27を備える。搬送路27は、搬送ローラ28、感光体ドラム14上のトナー像に同期して、感光体ドラム14及び転写ローラ20間にシートPを搬送するレジストローラ対30及び定着後にシートPを排紙部22に排出する排紙ローラ32を備える。
これらの構成によってMFP10は、給紙部13から給紙されたシートPに、プリンタ部11によって形成された消色トナー画像を転写する。MFP10は、消色トナー画像を有するシートPを定着装置31で定着し、プリント完成後排紙部22に排紙する。画像形成装置はこれに限らない。画像形成装置は、消色トナーを用いるプリンタ部と非消色トナーを用いるプリンタ部の複数のプリンタ部を備えても良い。プリンタ部のプリント方式も、電子写真方式に限定されず、インクジェット方式等であっても良い。
次に定着装置31について詳述する。定着装置31は、図2に示すように、定着部32として、定着回転部でありトナー像を有するシートPに接触するヒートローラ33と、加圧回転部である加圧ベルト機構34を備える。定着部32は、ヒートローラ33と加圧ベルト機構34の間にニップ36を形成する。定着部32は、搬送路27のガイド27aに支持されて搬送されるシートPをニップ36に挟んで搬送して、シートPにトナー像を加熱加圧定着する。
ヒートローラ33は、中空のアルミ(Al)ローラの表面に離型層を被覆している。ヒートローラ33は中空内部に、発熱部であり発熱量が同じである2本のハロゲンランプ37a、37bを備える。例えば、2本のハロゲンランプ37a、37bのうちの1本の配光エリアを、ヒートローラ33の軸方向のセンタエリアとし、他の1本の配光エリアを、ヒートローラ33のセンタエリアの両側のサイドエリアとする。2本のハロゲンランプ37a、37bで、ヒートローラ33の軸方向の全長のエリアを発熱する。発熱部はヒータランプ方式に限らず、IHヒータ方式であっても良い。
加圧ベルト機構34は、加圧ベルト38、加圧ベルト38をヒートローラ33側に加圧する加圧部である加圧パット40を備える。加圧パット40は、加圧パット40をヒートローラ33方向に加圧する加圧機構40aを備える。加圧ベルト機構34は、加圧ベルト38の矢印q方向の回転方向において、加圧パット40より上流に第1の支持部であるベルト加熱ローラ41を備え、加圧ベルト38の矢印q方向の回転方向において、加圧パット40より下流に第2の支持部であるベルト加圧ローラ42を備え、ベルト加熱ローラ41とベルト加圧ローラ42間の距離を調整するテンションローラ43を備える。
加圧ベルト38は、ニッケル(Ni)にゴム層を積層した表面をフッ素チューブ等で被覆している。ベルト加熱ローラ41は、中空のアルミ(Al)ローラの表面に離型層を被覆している。ベルト加熱ローラ41は中空内部に、加圧発熱部であるハロゲンランプ41aを備える。ベルト加圧ローラ42は、芯金の周囲にシリコンゴムを配置し、表面をフッ素チューブ等で被覆している。ベルト加圧ローラ42は、加圧ベルト38をヒートローラ33に対向し接触する。
テンションローラ43は、加圧ベルト38を一定のテンションで引っ張る。ベルト加熱ローラ41、ベルト加圧ローラ42及びテンションローラ43により加圧ベルト38を張架する。定着部32は、加圧ベルト機構34の加圧パット40からベルト加圧ローラ42までの加圧ベルト38がヒートローラ33と接触して、ワイドなニップ36を形成する。
定着装置31は、例えばモータ44によりベルト加圧ローラ42を駆動して加圧ベルト38を矢印q方向に回転し、モータ45によりヒートローラ33を矢印r方向に回転する。ヒートローラ33或いは加圧ベルト38のいずれかを駆動し、他方を従動させても良い。
定着装置31は、ヒートローラ33の温度を検知する第1の検知部である第1のサーミスタ47と加圧ベルト38の温度を検知する第2の検知部である第2のサーミスタ48を備える。第1のサーミスタ47は、ヒートローラ33のセンタ検知47aとヒートローラ33のサイド検知47bを備える。CPU100は、MFP10の電源投入時及び電源投入に続くウォーミングアップのプレラン開始時の、第1のサーミスタ47による第1の検知結果と第2のサーミスタ48による第2の検知結果から定着部32の温度状態を判断する。CPU100は、定着部32の温度状態に基づいて、電源投入に続いてMFP10がプリントを待機する間(レディ状態)或いは、MFP10がプリント動作を行う間の、加圧ベルト38の制御温度を可変制御する。
CPU100は、加圧ベルト38の制御温度の可変制御を解除した後は、第1のサーミスタ47の第1の検知結果に応じて、ヒートローラ33の温度を制御し、第2のサーミスタ48の第2の検知結果に応じて、加圧ベルト38の温度を制御する。
図3を参照してMFP10の制御系50について説明する。制御系50は、例えば、MFP10全体を制御するCPU100、リードオンリーメモリ(ROM)120、ランダムアクセスメモリ(RAM)121、インターフェース(I/F)122、表示器・オペレーションパネル制御回路123、給紙・搬送制御駆動回路130、画像形成制御駆動回路140、定着装置制御駆動回路150を備える。
CPU100は、ROM120或いはRAM121に記憶されるプログラムを実行することにより画像形成のための処理機能を実現する。ROM120は、画像形成処理の基本的な動作を司る制御プログラム及び制御データなどを記憶する。RAM121は、ワーキングメモリであり、例えば各種判断に用いる、第1のテーブル121a、第2のテーブル121b等のデータを記憶する。
I/F122は、ユーザ端末やファクシミリ等の各種装置との通信を行う。表示器・オペレーションパネル制御回路123は、オペレーションパネル123a、表示器123bを制御する。給紙・搬送制御駆動回路130は、給紙部13の給紙ローラ15a、15b或いは搬送路27の搬送ローラ28、レジストローラ対30、排紙ローラ32等を駆動するモータ群130a等を制御する。給紙・搬送制御駆動回路130は、給紙部13或いは搬送路27の各種センサ130bの検知結果を考慮してモータ群130a等を制御する。
画像形成制御駆動回路140は、感光体ドラム14、帯電器16、レーザ露光器17、現像器18、転写器20等を制御する。定着装置制御駆動回路150は、定着装置31の各種モータ150a、各種ヒータランプ150b等を制御する。定着装置制御駆動回路150は、第1のサーミスタ47、第2のサーミスタ48等の各種センサ150cの検知結果を考慮して、各種モータ150a或いは各種ヒータランプ150bを制御する。
次にMFP10の立ち上げ時の加圧ベルト38の制御温度を可変制御する例を説明する。MFP10の立ち上げ時、CPU100は、定着部32の温度を検知して定着部32の温度状態を判断する。CPU100は、定着部32の温度状態に応じて、加圧ベルト38の制御温度を可変制御する。
CPU100は、定着部32の温度状態を、RAM121に記憶する第1のテーブル121aに従い判断する。第1のテーブル121aを図4に示す。第1のテーブル121aは、温度検知タイミング条件として条件1を電源投入時とする。第1のテーブル121aに従い、CPU100は、条件1で、ヒートローラ33或いは加圧ベルト38の一番低い検知温度が40℃以下であれば定着部32が冷えていると判断し、ヒートローラ33或いは加圧ベルト38の一番低い検知温度が、41〜60℃であれば定着部32は中間温度であると判断し、ヒートローラ33或いは加圧ベルト38の一番低い検知温度が61℃以上であれば定着部32は温かいと判断する。
第1のテーブル121aは、温度検知タイミング条件として条件2をウォーミングアップのプレラン動作開始時とする。第1のテーブル121aに従い、CPU100は、条件2で、ヒートローラ33或いは加圧ベルト38の一番低い検知温度が50℃以下であれば定着部32が冷えていると判断し、ヒートローラ33或いは加圧ベルト38の一番低い検知温度が、51〜70℃であれば定着部32は中間温度であると判断し、ヒートローラ33或いは加圧ベルト38の一番低い検知温度が71℃以上であれば定着部32は温かいと判断する。
CPU100は、定着部32の温度状態に応じて、RAM121に記憶する第2のテーブル121bに従い、加圧ベルト38の制御温度を可変制御する。第2のテーブル121bを図5に示す。第2のテーブル121bは、条件1と条件2から判断される条件3であるウォーミングアップ制御終了時の定着部32の温度状態に従う加圧ベルト38の制御温度の可変制御を示す。
第2のテーブル121bは、条件1で定着部32が冷えている場合に、条件2で定着部32が冷えているか或いは中間温度なら条件3の判断として定着部32が冷えているとし、条件2で定着部32が温かければ条件3の判断を定着部32が中間温度とする。
第2のテーブル121bは、条件1で定着部32が中間温度である場合に、条件2で定着部32が冷えていれば条件3の判断として定着部32が冷えているとし、条件2で定着部32が中間温度であれば条件3の判断で定着部32が中間温度であるとし、条件2で定着部が温かければ条件3の判断で定着部32が温かいとする。
第2のテーブル121bは、条件1で定着部32が温かい場合に、条件2で定着部32が冷えていれば条件3の判断として定着部32が冷えているとし、条件2で定着部32が中間温度であれば条件3の判断で定着部32が中間温度であるとし、条件2で定着部が温かければ条件3の判断で定着部32が温かいとする。
第2のテーブル121bに従い、条件3で定着部32が冷えていると、CPU100は、ウォーミングアップ制御終了後のレディ温度をアップ制御する。第2のテーブル121bに従い、条件3で定着部32が中間温度であれば、CPU100は、ウォーミングアップ制御終了後のレディ温度及びプリント制御温度を基本温度で制御する。第2のテーブル121bに従い、条件3で定着部32が温かければ、CPU100は、ウォーミングアップ制御終了後のレディ制御温度及びプリント制御温度をダウン制御する。
MFP10のウォーミングアップに続く加圧ベルト38の制御温度は、基本制御の場合はレディ制御温度90℃、プリント制御温度90℃であり、レディ温度アップ制御の場合はレディ制御温度120℃、プリント制御温度90℃であり、レディ・プリント温度ダウン制御の場合は、レディ制御温度75℃、プリント制御温度85℃と設定する。
CPU100は、ウォーミングアップ制御終了後に加圧ベルト38をレディ温度アップ制御した場合は、レディ放置15分間又はプリント動作開始により、レディ温度アップ制御を解除する。解除後CPU100は、加圧ベルト38を基本制御温度の90℃に設定する。
CPU100は、ウォーミングアップ制御終了後に加圧ベルト38を基本制御した場合は、レディ放置10分間又はプリント動作累積時間60秒により、基本制御を解除する。解除後CPU100は、加圧ベルト38をレディ・プリント温度ダウン制御温度の75℃或いは85℃に設定する。
CPU100は、ウォーミングアップ制御終了後に加圧ベルト38をレディ・プリント温度ダウン制御した場合は、電源OFF又は余熱モード移行時に、レディ・プリント温度ダウン制御を解除する。CPU100は余熱モードに移行するまでレディ・プリント温度ダウン制御を継続する。
第2のテーブル121bに示す解除条件は限定されず、例えば、レディ放置時間やプリント動作累積時間を調整可能であるし、又、条件3で判断した定着部32の温度状態に更に条件1或いは条件2の定着部32の温度状態の履歴を考慮して、加圧ベルト38の制御温度の可変制御を解除する条件を設定しても良い。例えば条件3で、定着部32が冷えていることから、加圧ベルト38をレディ温度アップ制御した場合に、電源投入時に定着部32が冷えていたら、レディ放置15分間又はプリント動作開始によりレディ温度アップ制御をする。一方、電源投入時に定着部32が温かければ、レディ放置15分間又はプリント動作累積時間60秒でレディ温度アップ制御を解除するようにしても良い。
ウォーミングアップ制御終了時の定着部32の温度状態に従う加圧ベルト38の制御温度の可変制御を図6に示すフローチャートを参照して説明する。MFP10の電源投入(ACT200)により、CPU100は、電源投入時(ハロゲンランプ37a、37b、41aをONする前)に、定着部32の温度状態(冷えている、中間あるいは温かい)を判断制御し(ACT201)、ウォーミングアップのため定着部32の加熱を開始する(ACT202)。
(ACT203)に進み、定着部32のプレランを開始するか判断する。第2のサーミスタ48が、加圧ベルト38の温度が80℃以上に達したのを検知すると(ACT203でYes)、CPU100は、モータ44、45を駆動して、ヒートローラ33、加圧ベルト38を回転して、定着部32のプレランを開始する(ACT204)。CPU100は、プレランを開始して2秒後にプレラン開始時の、定着部32の温度状態(冷えている、中間あるいは温かい)を判断制御する(ACT206)。
(ACT207)に進み、定着部32のプレランを終了するか判断する。第2のサーミスタ48が、加圧ベルト38の温度が90℃以上に達したのを検知すると(ACT207でYes)、(ACT208)に進む。(ACT208)でCPU100は、(ACT201)で判断した条件1と(ACT206)で判断した条件2から、ウォーミングアップ制御終了時の定着部32の温度状態(冷えている、中間あるいは温かい)を判断制御する。
(ACT210)に進み、(ACT208)で判断した条件3で、ウォーミングアップ制御終了時に定着部32が冷えている状態であれば(ACT210でYes)、CPU100は、加圧ベルト38のレディ温度をアップ制御する(ACT211)。その後レディ放置15分間を経過するまで又はプリント動作開始するまでアップ制御を実施し(ACT212)、(ACT213)に進む。(ACT213)でCPU100は、加圧ベルト38の制御温度可変制御を解除して、加圧ベルト38の制御温度を90℃に設定する。
(ACT208)で判断した条件3で、ウォーミングアップ制御終了時に定着部32が温かい状態(ACT210でNo)、(ACT220でYes)であればCPU100は、加圧ベルト38のレディ・プリント温度をダウン制御する(ACT221)。その後電源OFF又は余熱モード移行時まで、ダウン制御を継続する(ACT222)。
(ACT208)で判断した条件3で、ウォーミングアップ制御終了時に定着部32が中間温度(ACT210でNo)、(ACT220でNo)であればCPU100は、加圧ベルト38の制御温度を基本制御する(ACT231)。その後レディ放置10分間を経過するまで又はプリント動作累積時間60秒までCPU100は加圧ベルト38の基本制御を実施し(ACT232)、(ACT233)に進む。(ACT233)でCPU100は、加圧ベルト38の制御温度可変制御を解除して、加圧ベルト38の制御温度をレディ・プリント温度ダウン制御温度と同じ75℃(レディ状態)あるいは85℃(プリント動作)に移行する。
次に、定着部32の温度状態に応じて加圧ベルト38の制御温度を実際に制御した場合のヒートローラ33と加圧ベルト38の温度変化について述べる。
(定着部32が冷えている場合)
ウォーミングアップ制御終了時に定着部32が冷えている場合に、図6のフローチャートに従い、加圧ベルト38の制御温度を可変制御した場合の、ヒートローラ33と加圧ベルト38の温度変化を図7に示す。図7の太い実線αは、ヒートローラ33の温度変化を示し、点線βはニップ36の入口側のベルト加熱ローラ41位置における加圧ベルト38の温度変化を示し、細い実線γはニップ36の出口側のベルト加圧ローラ42位置における加圧ベルト38の温度変化を示す。
定着部32が冷えている場合、ウォーミングアップ制御終了後のプリント待機時(レディ状態)に、CPU100は、ヒートローラ33を、消色トナーの消色温度より低い90℃の一定温度に制御する。一方、CPU100は、ウォーミングアップ制御終了後のプリント待機時(レディ状態)に、加圧ベルト38の制御温度を120℃にアップ制御する。
定着部32が冷えている場合でも、熱容量の大きいヒートローラ33は、図7の太い実線αに示すように90℃の一定温度を保持する。熱容量の小さい加圧ベルト38では、レディ制御温度を120℃にアップ制御することから、ハロゲンランプ41aを内蔵するベルト加熱ローラ41位置にあっては、点線βに示すようにレディ状態では110℃と高温を保持する。プリント動作を開始すると、CPU100は、加圧ベルト38の制御温度を基本制御の90℃に戻す。加圧ベルト38の制御温度を基本制御に戻しても、ベルト加熱ローラ41位置での加圧ベルト38の温度は、定着不良を発生する80℃よりも高温を保持し、また消色画像が発生する100℃を超えることがない。またニップ36を形成するベルト加圧ローラ42位置における加圧ベルト38は、細い実線γに示すようにレディ状態では一時的に50℃まで温度低下するものの、1枚目のシートPの定着を開始するタイミングA以降は、定着不良を発生する80℃より高温を保持する。
したがって例えば寒い季節の始業時にMFP10の電源を投入した場合に、定着部32が冷えていたとしても、シートPの定着時には、加圧ベルト38の温度低下によるニップ36でのアンダーシュート現象を解消して、トナー画像の定着不良を防止することが判明した。
(定着部32が温まっている場合)
例えば、プリント動作終了時にMFP10の電源をOFFし、その後、定着部32が冷却する前に、再度MFP10の電源をONして、ウォーミングアップ制御終了時に定着部32が温まっている場合に、図6のフローチャートに従い、加圧ベルト38の制御温度を可変制御した場合の、ヒートローラ33と加圧ベルト38の温度変化を図8に示す。図8の太い実線αは、ヒートローラ33の温度変化を示し、点線βはニップ36の入口側のベルト加熱ローラ41位置における加圧ベルト38の温度変化を示し、細い実線γはニップ36の出口側のベルト加圧ローラ42位置における加圧ベルト38の温度変化を示す。
定着部32が温まっている場合、ウォーミングアップ制御終了後のプリント待機時(レディ状態)に、CPU100は、ヒートローラ33を、消色トナーの消色温度より低い90℃の一定温度に制御する。一方、CPU100は、ウォーミングアップ制御終了後のプリント待機時(レディ状態)に、加圧ベルト38の制御温度を75℃にダウン制御し、プリント動作時に加圧ベルト38の制御温度を85℃にダウン制御する。
定着部32が温まっている場合、熱容量の大きいヒートローラ33は、図8の太い実線αに示すようにレディ状態では一時的に消色画像を発生する100℃を超える。但し加圧ベルト38をダウン制御するので、1枚目のシートPの定着を開始するタイミングBでは、ヒートローラ33の温度は、100℃以下に低下後、90℃の一定温度を保持する。熱容量の小さい加圧ベルト38では、レディ制御温度、プリント制御温度をダウン制御することから、ベルト加熱ローラ41位置にあっては、点線βに示すようにレディ状態及びプリント動作において、定着温度範囲である80℃〜90℃を保持する。ニップ36を形成するベルト加圧ローラ42位置における加圧ベルト38は、細い実線γに示すようにレディ状態では一時的に70℃まで温度低下するものの、1枚目のシートPの定着を開始するタイミングB以降は、定着不良を発生する80℃より高温を保持する。
したがって例えばMFP10の電源をOFFした直後に又電源を投入して、定着部32が余熱で温まっていた場合であっても、ウォーミングアップ制御終了時直ちにプリント動作を開始しても、シートPの定着時には、ヒートローラ33の温度上昇によるニップ36でのオーバーシュート現象を解消して、消色トナーからなる画像の消色を防止する事が判明した。
(比較例)
定着部32の温度状態にかかわらず、加圧ベルト38を常に基本制御温度である90℃で制御した場合の比較例のヒートローラ33と加圧ベルト38の温度変化を図9及び図10に示す。
ウォーミングアップ制御終了時に定着部32が冷えている場合、ウォーミングアップ制御終了後のプリント待機時(レディ状態)に、ヒートローラ33及び加圧ベルト38を90℃の一定温度で制御すると、熱容量の大きいヒートローラ33は、図9の太い実線δに示すように90℃の一定温度を保持する。熱容量の小さい加圧ベルト38は、ベルト加熱ローラ41位置にあっては、点線εに示すようにレディ状態では90℃を保持するものの、プリント動作を開始すると、定着不良発生領域である80℃以下に低下する。加圧ベルト38は、1枚目のシートPの定着を開始するタイミングC以降も、Δcの間は、定着不良を発生する80℃以下となってしまう。またニップ36を形成するベルト加圧ローラ42位置における加圧ベルト38の温度は、細い実線θに示すようにレディ状態では一時的に50℃まで温度低下する。加圧ベルト38は、1枚目のシートPの定着を開始するタイミングC以降も、Δcの間は、定着不良を発生する80℃以下となってしまう。
このため比較例では、MFP10を電源投入した場合に、定着部32が冷えていると、1枚目のシートPの定着開始(タイミングC)からΔcの間は加圧ベルト38のアンダーシュート現象により定着不良を生じる恐れがある。
ウォーミングアップ制御終了時に定着部32が温まっている場合、ウォーミングアップ制御終了後のプリント待機時(レディ状態)に、ヒートローラ33及び加圧ベルト38を90℃の一定温度で制御すると、熱容量の大きいヒートローラ33は、図10の太い実線δに示すようにレディ状態では消色画像を発生する100℃を超える。ヒートローラ33は、1枚目のシートPの定着を開始するタイミングD以降も、Δdの間は、消色画像を発生する100℃以上となってしまう。
このため比較例では、MFP10を電源投入した場合に、定着部32が温まっていると、1枚目のシートPの定着開始(タイミングD)からΔdの間はヒートローラ33のオーバーシュート現象により消色トナーによる画像の消色を生じる恐れがある。
第1の実施形態によれば、MFP10を電源投入した時と、ウォーミングアップのプレラン開始時の定着部32の、第1のサーミスタ47と第2のサーミスタ48の検知結果から、定着部32の温度状態を判断する。CPU100は、定着部32が冷たいと判断した場合は、ウォーミングアップに続くプリント待機時の加圧ベルト38の制御温度をヒートローラ33の制御温度より高く、消色トナーの消色温度より高い120℃にアップする。加圧ベルト38の制御温度のアップ制御は、レディ放置15分間又はプリント動作開始により解除して、加圧ベルト38の制御温度を基本制御温度と同じ90℃に設定する。定着部32が冷たい場合のプリント開始時に生じる、ニップ36のアンダーシュート現象を解消でき、トナー画像の定着不良を防止できる。
CPU100は、定着部32が中間温度と判断した場合は、ウォーミングアップに続くプリント待機時の加圧ベルト38の制御温度を基本制御である90℃に設定する。加圧ベルト38の制御温度の基本制御は、レディ放置10分間又はプリント動作累積時間60秒で解除して、加圧ベルト38の制御温度を75℃あるいは85℃に移行する。
CPU100は、定着部32が温かいと判断した場合は、ウォーミングアップに続くプリント待機時の加圧ベルト38の制御温度を基本制御より低い75℃にダウン制御し、プリント動作中の加圧ベルト38の制御温度を基本制御より低い85℃にダウン制御する。加圧ベルト38の制御温度のダウン制御は、電源OFF或いは余熱モード移行時まで継続する。定着部32が温かい場合のプリント開始時に生じる、ニップ36のオーバーシュート現象を解消できる。シートPに消色トナーからなる画像が形成されている場合に、定着装置31は定着中に、シートP上の消色トナー画像を消色するのを防止できる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態の画像形成装置を図11乃至図13を参照して説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態において、第2の検知部による加圧回転部の温度の検知位置が異なるものである。第2の実施形態にあって、前述の第1の実施形態で説明した構成と同一構成については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図11に示すように、第2の実施形態の定着装置70は、ヒートローラ33の温度を検知する第1の検知部である第1のサーミスタ47と、ニップ36の入口側で加圧ベルト38の温度を検知する第2のサーミスタ48と、ニップ36の出口側で加圧ベルト38の温度を検知する第2の検知部である第3のサーミスタ71を備える。CPU100は、MFP10の電源投入時及び電源投入に続くウォーミングアップのプレラン開始時の、第1のサーミスタ47による第1の検知結果と第3のサーミスタ71による第2の検知結果から定着部32の温度状態を判断する。CPU100は、定着部32の温度状態に基づいて、電源投入に続いてMFP10がプリントを待機する間(レディ状態)或いは、MFP10がプリント動作を行う間の、加圧ベルト38の制御温度を可変制御する。
MFP10の制御系50は、たとえばRAM121に、図12に示す第3のテーブル121cを備える。第3のテーブル121cは、電源投入時に、第1のサーミスタ47が検知するヒートローラ33の温度と、第3のサーミスタ71が検知する加圧ベルト38の温度から、判断される定着部32の温度状態に従う加圧ベルト38の制御温度の可変制御を示す。
第3のテーブル121cでは、ヒートローラ33の温度が40℃以下である場合に、第3のサーミスタ71が検知した、加圧ベルト38の温度が50℃以下であれば定着部32が冷えていると判断し、加圧ベルト38の温度が51〜70℃或いは71℃以上であれば定着部32は中間温度であると判断する。同様にして、ヒートローラ33の温度が41〜60℃である場合に、加圧ベルト38の温度が50℃以下であれば定着部32が冷えていると判断し、加圧ベルト38の温度が51〜70℃であれば定着部32は中間温度であると判断し、加圧ベルト38の温度が71℃以上であれば定着部32は温かいと判断する。ヒートローラ33の温度が61℃以上である場合に、加圧ベルト38の温度が50℃以下であれば定着部32が冷えていると判断し、加圧ベルト38の温度が51〜70℃であれば定着部32は中間温度であると判断し、加圧ベルト38の温度が71℃以上であれば定着部32は温かいと判断する。
第3のテーブル121cに従い、定着部32が冷えていると、CPU100は、ウォーミングアップ制御に続くレディ温度をアップ制御する。第3のテーブル121cに従い、定着部32が中間温度であれば、CPU100は、ウォーミングアップ制御に続くレディ温度及びプリント制御温度を基本温度で制御する。第3のテーブル121cに従い、条件3で定着部32が温かければ、CPU100は、ウォーミングアップ制御に続くレディ制御温度及びプリント制御温度をダウン制御する。
MFP10のウォーミングアップに続く加圧ベルト38の制御温度は、基本制御の場合はレディ制御温度90℃、プリント制御温度90℃であり、レディ温度アップ制御の場合はレディ制御温度120℃、プリント制御温度90℃であり、レディ・プリント温度ダウン制御の場合は、レディ制御温度75℃、プリント制御温度85℃と設定する。
CPU100は、ウォーミングアップに続いて加圧ベルト38をレディ温度アップ制御した場合は、レディ放置中の第3のサーミスタ71による加圧ベルト38の検知温度が51℃以上になったら又はプリント動作開始により、レディ温度アップ制御を解除する。解除後CPU100は、加圧ベルト38の制御温度を基本制御温度と同じ90℃に設定する。レディ放置中の加圧ベルト38の温度検知のタイミングは、ウォーミングアップ制御終了後60秒後から実施する。
CPU100は、ウォーミングアップ制御終了後に加圧ベルト38を基本制御した場合は、レディ放置時の第3のサーミスタ71による加圧ベルト38の検知温度が70℃以上になったら基本制御を解除する。解除後CPU100は、加圧ベルト38をレディ・プリント温度ダウン制御温度の75℃(レディ状態)或いは85℃(プリント動作)に移行する。レディ放置中の加圧ベルト38の温度検知のタイミングは、ウォーミングアップ制御終了後60秒後から又はプリント動作終了後60秒後から実施する。
CPU100は、ウォーミングアップ制御終了後に加圧ベルト38をレディ・プリント温度ダウン制御した場合は、電源OFF又は余熱モード移行時に、レディ・プリント温度ダウン制御を解除する。CPU100は余熱モードに移行するまでレディ・プリント温度ダウン制御を継続する。
定着部32の温度状態に従う加圧ベルト38の制御温度の可変制御を図13に示すフローチャートを参照して説明する。MFP10の電源投入(ACT300)により、ハロゲンランプ37a、37b、41aをONする前に第1のサーミスタ47はヒートローラ33の温度を検知し、第3のサーミスタ71は加圧ベルト38の温度を検知する(ACT301)。
CPU100は、ウォーミングアップのため定着部32の加熱を開始し(ACT302)、(ACT303)に進み、定着部32のプレランを開始するか判断する。第3のサーミスタ71が、加圧ベルト38の温度が80℃以上に達したのを検知すると(ACT303でYes)、CPU100は、モータ44、45を駆動して、ヒートローラ33、加圧ベルト38を回転して、定着部32のプレランを開始する(ACT304)。
(ACT306)に進み、定着部32のプレランを終了するか判断する。第3のサーミスタ71が、加圧ベルト38の温度が90℃以上に達したのを検知すると(ACT306でYes)、(ACT307)に進む。(ACT307)でCPU100は、(ACT301)で検知したヒートローラ33温度と加圧ベルト38温度から電源投入時の定着部32の温度状態(冷えている、中間あるいは温かい)を判断する。
(ACT310)に進み、(ACT307)で定着部32が冷えている状態であれば(ACT310でYes)、CPU100は、加圧ベルト38のレディ温度をアップ制御する(ACT311)。その後レディ放置中に第3のサーミスタ71が検知する加圧ベルト38の温度が51℃以上になるまでまたはプリント動作を開始するまでアップ制御を実施し(ACT312)、(ACT313)に進む。(ACT313)でCPU100は、加圧ベルト38の制御温度可変制御を解除して、加圧ベルト38の制御温度を90℃に設定する。
(ACT307)で定着部32が温かい状態であれば(ACT310でNo)、(ACT320でYes)であればCPU100は、加圧ベルト38のレディ・プリント温度をダウン制御する(ACT321)。その後電源OFF又は余熱モード移行時まで、ダウン制御を継続する(ACT322)。
(ACT307)で定着部32が中間温度であれば(ACT310でNo)、(ACT320でNo)、であればCPU100は、加圧ベルト38の制御温度を基本制御する(ACT331)。その後レディ放置時に第3のサーミスタ71が検知する加圧ベルト38の温度が70℃以上になるまで基本制御を実施し(ACT332)、(ACT333)に進む。(ACT333)でCPU100は、加圧ベルト38の制御温度可変制御を解除して、加圧ベルト38の制御温度を75℃あるいは85℃に設定する。
図13に示す第2の実施形態のフローチャートに従い、定着部32の温度状態に応じて加圧ベルト38の制御温度を実際に制御したところ、ヒートローラ33と加圧ベルト38は、第1の実施形態と同様の温度変化を示した。
電源投入時に定着部32が冷えていると判断した場合に、図13のフローチャートに従い、加圧ベルト38の制御温度を可変制御した場合の、ヒートローラ33と加圧ベルト38は、図7に示す温度変化と同様の温度変化を得られた。
したがって電源投入時に定着部32が冷えていた場合でも、シートPの定着時には、加圧ベルト38の温度低下によるニップ36でのアンダーシュート現象を解消して、定着不良を防止することが判明した。
電源投入時に定着部32が温まっていると判断した場合に、図13のフローチャートに従い、加圧ベルト38の制御温度を可変制御した場合の、ヒートローラ33と加圧ベルト38の温度変化は、図8に示す温度変化と同様の温度変化を得られた。
したがって電源投入時に定着部32が温まっていた場合でも、シートPの定着時には、ヒートローラ33の温度上昇によるニップ36でのオーバーシュート現象を解消して、消色トナーからなる画像の消色を防止する事が判明した。
第2の実施形態によれば、MFP10の第1のサーミスタ47と第3のサーミスタ71の検知結果から、電源投入時の定着部32の温度状態を判断する。CPU100は、電源投入時の定着部32が冷たいと判断した場合は、ウォーミングアップに続くプリント待機時の加圧ベルト38の制御温度をヒートローラ33の制御温度より高く、消色トナーの消色温度より高い120℃にアップする。加圧ベルト38の制御温度のアップ制御は、レディ放置中の第3のサーミスタ71による加圧ベルト38の検知温度が51℃以上になったら又はプリント動作開始により解除して、加圧ベルト38を基本制御温度と同じ90℃に設定する。定着部32が冷たい場合のプリント開始時に生じる、ニップ36のアンダーシュート現象を解消でき、定着不良を防止できる。
CPU100は、電源投入時の定着部32が中間温度と判断した場合は、ウォーミングアップに続くプリント待機時の加圧ベルト38の制御温度を基本制御である90℃に設定する。加圧ベルト38の制御温度の基本制御は、レディ放置時の第3のサーミスタ71による加圧ベルト38の検知温度が70℃以上になったら基本制御を解除して、加圧ベルト38をレディ・プリント温度ダウン制御温度の75℃或いは85℃に移行する。
CPU100は、電源投入時の定着部32が温かいと判断した場合は、ウォーミングアップに続くプリント待機時の加圧ベルト38の制御温度を基本制御より低い75℃にダウン制御し、プリント動作中の加圧ベルト38の制御温度を基本制御より低い85℃にダウン制御する。加圧ベルト38の制御温度のダウン制御は、電源OFF或いは余熱モード移行時まで継続する。定着部32が温かい場合のプリント開始時に生じる、ニップ36のオーバーシュート現象を解消でき、消色トナー画像を消色するのを防止できる。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、定着部が冷えた状態であっても、ウォームアップに続くプリント開始時のニップ部のアンダーシュート現象を解消して、トナー画像の定着不良を防止する。定着部が温かい状態であっても、ウォームアップに続くプリント開始時のニップ部のオーバーシュート現象を解消して、消色トナーからなる画像を消色するのを防止する。
この発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。