JP6628975B2 - 米粉、パン類の硬化抑制剤、パン類の硬化抑制方法、パン類の製造方法、パン類及びパン類用ミックス粉 - Google Patents

米粉、パン類の硬化抑制剤、パン類の硬化抑制方法、パン類の製造方法、パン類及びパン類用ミックス粉 Download PDF

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Description

本発明は、米粉、パン類の硬化抑制剤、パン類の硬化抑制方法、パン類の製造方法、パン類及びパン類用ミックス粉に関する。
米粉は、従来から、小麦粉の代替としてパン類の製造に用いられている。しかし、パン類に米粉を配合すると、パンが膨らみにくくなり、比容積が小さくなる等の問題が生じる。また、製パン時の作業性の悪化、例えば生地がべたつくという問題も生じる。
特に、損傷でん粉含有量が高い米粉を用いると、前記の問題が更に顕著になる。具体的には、損傷でん粉含有量が高い米粉を多く含むと、生地を作る際のミキシングにおいて、水を更に多く吸い、ミキシングに時間がかかる。また、生地が更にべたつくので、自動化された製造ラインにおいて、生地を製造するミキサーや、生地を分割するデバイダー、分割された生地を丸める成形機等に、顕著に影響を与える。
従って、米粉をパン類の原材料として用いる場合は、損傷でん粉含有量が低いものがよい、というのが製パン業界の常識となっていた。
そのため、米粉の製造現場では、粉を細かく粉砕しつつもでん粉の損傷を抑える製造技術が求められていた(非特許文献1)。
ここで、米粉の代表的な製造技術として、ロール粉砕、胴搗き粉砕、気流粉砕、衝撃式粉砕、せん断粉砕が挙げられる(非特許文献2)。これらの技術のうち、特に気流粉砕は、超微粒粉砕が可能であり、かつ乾式でなく湿式で製粉すると、損傷でん粉の少ない米粉が得られる(非特許文献2)。このようにして製造された米粉が、パン類の原材料に好適であるとして使用されていた。
ところが、最近、意外にも、損傷でん粉含有量をより高くした米粉をパン類の原材料に使用すると、製造後時間が経過しても硬化が抑制されたパン類が得られることが見出された(特許文献1)。
特許第5547857号公報
株式会社西村機械製作所営業部部長大西忍著、「食品機械装置 最新の米粉製造技術動向」、株式会社ビジネスセンター社、2012年11月号、第78頁 與座宏一ら著、「米粉利用の現状と課題」、日本食品化学工学会誌、第55巻、第10号、2008年10月、第445〜446頁
米粉等の穀粉の損傷でん粉含有量を高めるためには、米等を粉砕する時にでん粉粒により強い衝撃等を与える必要がある。従って、必然的に、米粉等の粒子が細かくなる。そのため、損傷でん粉含有量の高い米粉を製造する際に粒径を大きくしようという発想は、いままでに無かった。また、米粉を製造したときの粒径は、一般的に均一ではなくある程度幅のある粒度分布を示すが、特に粒径の大きい画分において損傷でん粉含有量を高めようという発想は、尚更無かった。
従って、損傷でん粉含有量が高いだけでなく、粒径も大きいという米粉を製造することは、常識の範囲外であった。
しかも、現在の製粉技術では、でん粉損傷度が大きくてかつ中位径(D50)の大きな米粉の製造は容易ではないことから(特開2013−233143号公報第0016段落参照)、損傷でん粉含有量が高くかつ粒径が大きい米粉は製造されていないというのが実情であった。
更に言えば、前記特許文献1では、粒径が小さい米粉をパン類の原材料として用いると、パン類の焼成後の時間経過による硬化をより効果的に抑制したことが観察されていたことから、パン類の硬化を抑制するためには、粒径の小さい米粉を用いることが好ましいと考えられていた。
ところが、本発明者らがパン類の硬化を抑制する米粉について更に鋭意検討を重ねた結果、全く意外にも、粒径が大きく、かつ損傷でん粉含有量が高い米粉をパン類の原材料に用いることがよいことを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、粒径75μm以上の画分における損傷でん粉含有量が15質量%以上の米粉を提供する。
本発明の米粉は、粒子径の累積分布におけるメジアン径(D50)を40μm〜100μmとすることができる。
また、粒径75μm以上の画分における損傷でん粉含有量が、米粉全体の損傷でん粉含有量と比較して同じかそれ以上であるとすることができる。
更に、本発明は、粒径75μm以上の画分における損傷でん粉含有量が15質量%以上の米粉を有効成分とする、パン類の硬化抑制剤を提供する。
また、本発明は、粒径75μm以上の画分における損傷でん粉含有量が15質量%以上の米粉を配合してパンを製造する、パン類の硬化抑制方法を提供する。
また、本発明は、粒径75μm以上の画分における損傷でん粉含有量が15質量%以上の米粉を、パン類の原材料に配合することを含む、パン類の製造方法を提供する。
また、本発明は、粒径75μm以上の画分における損傷でん粉含有量が15質量%以上の米粉を含む、パン類を提供する。
更に、本発明は、粒径75μm以上の画分における損傷でん粉含有量が15質量%以上の米粉を含む、パン類用ミックス粉を提供する。
本発明に係る米粉は、パン類の原材料に用いたときに、経時的な硬化抑制効果があることに加え、粒径が大きいことにより、粉が舞い上がりにくい等の粉のハンドリング性や、生地調製時の製パン性に優れる。また、米粉を製造する際、粒径が大きいことにより、米粉の流動性が良く、米粉製造工程内での輸送がしやすくなる。製造後、米粉を包装して重ねて保管しても、米粉が固結しにくく、塊になりにくい。
なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
<1.本発明に係る米粉>
本発明の実施形態に係る米粉は、粒径75μm以上の画分を含む。粒径75μm以上の画分の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上である。粒径が大きい画分の含有量が高いと、米粉製造時の米粉の流動性がよく、製造工程内での輸送がしやすいからである。また、米粉の保管時に米粉が固まりにくくなる。更に、米粉を扱うときのハンドリング性や、パン類製造時のミキシング時間の短縮、生地のべたつきの防止等の製パン性の点でも優れるからである。
一方で、粒径が75μmよりも小さい画分の含有量が多くなると、小麦粉等の他の粉と米粉とを混ぜたときに分離しやすくなるという問題が生ずる。
また、本発明の実施形態に係る米粉は、損傷でん粉を含有する。
本明細書において、「損傷でん粉(「DS」ともいう)含有量」とは、米粉全量中の、損傷を受けたでん粉の含有量である。当該「損傷でん粉」とは、米を粉砕する時の圧力や衝撃等により、でん粉粒が機械的な損傷を受けたでん粉のことをいう。
「損傷でん粉含有量」は、AACC Method 76−31に従って測定することができる。具体的には、試料中に含まれている損傷でん粉のみをカビ由来α−アミラーゼでマルトサッカライドと限界デキストリンに分解し、次いでアミログルコシダーゼでグルコースにまで分解し、生成されたグルコースを定量することにより測定する。また、市販のキット(例えば、MegaZyme製,Starch Damage Assay Kit)を用いて測定してもよい。
米粉の損傷でん粉含有量が高いと、当該米粉を原材料に用いたパン類の硬化を良好に抑制できる。
本発明の実施形態に係る米粉の特徴は、粒径75μm以上の画分における損傷でん粉含有量が高いことである。
従来の米粉の場合、米粉全体の損傷でん粉含有量が高かったとしても、粒径75μm以上のような大きい画分では損傷でん粉含有量が低い。そこで、粒径75μm以上のような大きい画分での損傷でん粉含有量も高くすることができれば、そのような米粉をパン類の原材料に用いることにより、パン類の硬化をより良好に抑制できる。
また、通常では損傷でん粉含有量を高くするために、より細かく米粉を粉砕するが、損傷でん粉含有量が高くありつつも大きい粒径を維持できれば、パン類の硬化をより一層抑制できるだけでなく、米粉製造時の粉の流動性、米粉の輸送性、非固結性、ハンドリング性、生地の製パン性に優れたものとなる。
本発明の実施形態に係る米粉は、粒径75μm以上の画分における損傷でん粉含有量が15質量%以上である。好ましくは、米粉の損傷でん粉含有量は、粒径75μm以上の画分において、20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。
粒径75μm以上の画分における損傷でん粉含有量が高いほど、当該米粉を原材料に用いたパン類の硬化を良好に抑制できる。
また、損傷でん粉含有量は、前述のように、製パン性の優劣に関係する。でん粉が損傷していると水分を吸収しやすいからである。
ここで、本明細書において、製パン性とは、製パン時に生じる米粉に由来する問題を総称していい、「製パン性に優れる」というときは、問題が生じにくいことを示す。当該問題には、水分を米粉が吸収するために、ミキシングに時間がかかること、生地がべたつくこと、それによる製パン用機械が受ける影響等が含まれる。
粒径75μm以上の画分における損傷でん粉含有量が15質量%以上であれば、良好な製パン性を有する。
また、本発明の実施形態に係る米粉は、粒子径の累積分布におけるメジアン径(D50)を、好ましくは40μm〜100μm、より好ましくは50μm〜100μm、更に好ましくは60μm〜100μmとすることができる。
このようなメジアン径であれば、米粉のハンドリング性に優れる。
なお、本明細書において、米粉のハンドリング性とは、米粉を扱っているときに生じる問題を総称していい、「ハンドリング性が優れる」というときは、問題が生じにくいことを示す。当該問題には、米粉の取り扱い中に舞い上がること、米粉が固結しやすいこと、他の粉と混合したときに分離しやすいこと等が含まれる。
なお、「粒径」及び「粒度分布」の測定方法は、株式会社日本レーザー社製「レーザー回折式粒子径分布測定装置HELOS&RODOS」を用いて乾式で測定できる。また、粒度分布における累積分布は、小粒径から積算した粒子の体積分率で表される。例えば、累積分布のD50における粒径とは、小粒径から積算していき体積分率が50%になった時の粒径を表す。
更に、本発明の実施形態に係る米粉において、粒径75μm以上の画分における損傷でん粉含有量は、米粉全体の損傷でん粉含有量と比較して同じかそれ以上であることが好ましい。すなわち、米粉全体の損傷でん粉含有量が15質量%であれば、粒径75μm以上の画分における損傷でん粉含有量は15質量%でもよく、20質量%であることがより好ましい。粒径が大きく、かつ損傷でん粉含有量が高い米粉は、パンの経時的硬化を抑制し、パンにしっとり感を与えることができる。
更に、本発明の実施形態に係る米粉は、アミログラフ糊化最高粘度が500BUを超えることが好ましい。より好ましくは750BUを超え、更に好ましくは1000BUを超える。アミログラフ糊化最高粘度が500BUを超える米粉を原材料に用いることにより、生地安定性の低下、べたつきの増加等、製パン性の悪化を抑えられ、また、比容積の優れたパン類が得られる。
なお、アミログラフ糊化最高粘度とは、米粉に水を加えて撹拌した懸濁液を、撹拌しながら徐々に温度を上げていき、粘度の変化をアミログラフ試験機で測定した時の最高粘度をいう。アミログラフ試験機の測定容器に、固形分50gの試料を含む水懸濁液500gを入れて装置に設置し、1.5℃/分で昇温した後、95℃到達後30分間同温度に保持して、この間の最高粘度をアミログラフ糊化最高粘度とする。
<2.米粉の製造方法>
本発明の実施形態に係る米粉は、生米を、乾式で摩擦粉砕又はせん断粉砕して製造する。生米の水分含有量は、20質量%以下が好ましく、5〜17質量%がより好ましい。
原料として、うるち米及び/又はもち米及び/又は低アミロース米及び/又は高アミロース米及び/又は超硬質米を使用できる。うるち米及びもち米及び低アミロース米及び高アミロース米及び超硬質米の種類として、特に限定されないが、ジャポニカ種、インディカ種、ジャバニカ種を用いることができる。このうち、パン類の硬化抑制が良好であることから、うるち米が望ましい。
前記原料の米の種類は特に限定されず、例えば、精白米、5分付き米、玄米、屑米等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
摩擦粉砕又はせん断粉砕する装置として、石臼等を備えた粉砕機、ボールミル等が挙げられる。市販の粉砕機として、「臼挽き職人」(カンリウ工業株式会社製)、「ミクロ・パウダー」(有限会社ウエスト製)、「ボールミル」(レッチェ社製)が挙げられるが、これらに限定されない。
生米の粉砕時には、粉砕中の生米の温度、すなわち粉砕途中の米粒や米粉の品温が、好ましくは15〜30℃、より好ましくは15〜25℃になるように調整する。粉砕時に生米の温度調整を行わないと、摩擦熱等により、粉砕された米粉が熱を有し、粘性を持った塊状になってしまう。また、アミログラフ糊化最高粘度が500BU以下になり、好ましくない。それらを防ぐために、例えば、室温を好ましくは30℃以下にし、より好ましくは0〜15℃、更に好ましくは3〜12℃にして粉砕を行うことができる。また、粉砕機を例えば25℃以下、好ましくは20℃以下、更に好ましくは10℃以下にして粉砕を行うことができる。
粉砕後、所望の篩或いは分級によって米粉の粒径及び粒度を整えることができる。
例えば、米粉の粒度分布の調整は、所望の粒径範囲となるような目開きの篩を用いて行うことができる。
また、米粉の粒度の調整は、一定質量の米粉を複数の異なる目開きの篩を用いて、粗い目開きの篩から順次かけていき、各篩上に残った画分及び全ての篩を通過した画分の配合割合を調整することによって行うことができる。
具体的な調整方法として、例えば、粒径75μm以上の米粉の含有量が高くなるように又は粒子径の累積分布におけるメジアン径(D50)が40μm〜100μmになるように前記粉砕装置で粉砕する方法、所望の各粒径に分画されるように篩分けし、粒径75μm以上の米粉の含有量が高くなるように又はD50が40μm〜100μmになるように混合する方法、篩にかけることにより小さい画分を除去して、粒径75μm以上の米粉の含有量が高くなるように又はD50を40μm〜100μmにする方法等が挙げられる。
「粒径」及び「粒度分布」は、前述の測定方法にて測定すればよい。
更に、米粉の損傷でん粉含有量を測定することにより、損傷でん粉含有量が15質量%以上であることを確認することが好ましい。損傷でん粉含有量は、前述のAACCMethod 76−31に従って測定することができ、測定は粒径の調整前、調整後のいずれにて行ってもよい。
<3.パン類の硬化抑制剤>
本発明の実施形態に係る米粉は、パン類の硬化抑制作用を有するため、当該米粉を有効成分とするパン類の硬化抑制剤として使用できる。
該パン類の硬化抑制剤は、本発明の実施形態に係る米粉以外に任意成分を必要に応じて含有させてもよい。当該任意成分としては、特に限定されないが、グルテン、乳成分、卵成分、食物繊維、増粘多糖類、乳化剤、油脂、加工でん粉等の添加剤が挙げられる。
従来のパン類の硬化抑制剤には、有効成分として乳化剤や加工でん粉等の添加剤が用いられている。しかしながら、本発明の実施形態に係る米粉を、前記の任意成分を使用せずにそのままパン類の硬化抑制を目的として使用した場合であっても、得られたパン類の硬化を良好に抑制することが可能となる。このことは、近年、乳化剤等の食品添加物の使用量の低減や新たな硬化抑制剤を求めている需要者の要望にもマッチする。
<4.パン類の硬化抑制方法>
本発明の実施形態に係る米粉を、後述するパン類用ミックス粉等の生地原料及び/又はこれより得られるパン類用生地等に含有させてパンを製造する。本発明の米粉を用いれば、パン類の硬化抑制が効率良く発揮されるので、好適である。
本発明の実施形態に係る米粉のパン類への使用量は、特に限定されないが、小麦粉と米粉の合計量を100質量部としたときに、好ましくは0.1〜20質量部であり、より好ましくは0.3〜15質量部であり、更に好ましくは0.3〜10質量部であり、より更に好ましくは1〜10質量部である。このような量にすると、パン類の硬化抑制効果が高く、食感及び風味が良好であり、製パン時の作業性にも優れ、更に製パン後の変形等もなくパン類の外観も良好であるので、好適である。
<5.パン類の製造方法及びそれにより得られたパン類>
本発明の実施形態に係るパン類の製造方法としては、直捏法(ストレート法)、中種法、液種法、サワー種法、酒種法、湯種法、冷凍生地法等の種々の製パン法を採用することができる。また、ホームベーカリーにてパン類を製造することが可能である。このうち、直捏法、中種法、冷凍生地法が好ましい。
また、通常の製パン工程では、ミキシング、発酵、分割・丸め、ベンチタイム、成形、最終発酵、焼成の順に行われる。直捏法の場合には、分割・丸めの前に、ミキシング、発酵が行われ、中種法の場合には、分割・丸めの前に、中種ミキシング、中種発酵、本生地ミキシング、フロアタイムが行われる。ホームベーカリーでの製パン工程では、ミキシング、発酵、及び焼成が行われ、分割・丸めや成形が省略される場合がある。
ミキシングしてパン類用のドウ生地を形成するが、例えば、小麦粉100質量部に対し45〜90質量部の水を加えて捏ね上げてドウ生地を形成する。
またパン類を製造する際の加熱方法として、焼成(オーブン、鉄板等)、油ちょう、蒸煮等が挙げられる。上記損傷でん粉高含有米粉を含有させたパン類用生地を焼成させて焼成パン類とするのが、風味及び食感も良好であるので、好適である。一般的な焼成条件は、150〜240℃程度の焼成温度及び8〜60分程度の焼成時間である。
前述の方法により得られたパン類は、本発明の実施形態に係る米粉を配合するため、経時的な硬化が抑制され、良好な食感及び風味を有する。また、該米粉以外の前記硬化抑制剤を配合しなくても、当該パン類は、経時的な硬化が抑制され、食感及び風味も良好なパン類である。なお、本発明の実施形態に係る米粉と、これ以外の上記硬化抑制剤を併用してもよい。
パン類の種類は、特に限定されず、膨化パン類及び非膨化パン類の何れでもよい。
また、パン類の実用的な分類として、例えば、食パン、ロールパン、硬焼きパン、菓子パン(日本式又は欧米式)等が挙げられる(一般社団法人日本パン工業会分類法)。
<6.パン類用ミックス粉>
本発明の実施形態に係るパン類用ミックス粉に用いられる穀粉類としては、小麦粉、デュラム小麦粉、ライ麦粉、大麦粉、オーツ粉、とうもろこし粉、本発明の実施形態に係る米粉、粒子の粗いセモリナ粉等、通常パン類に用いられている穀粉が挙げられる。これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。このとき、穀粉としては、小麦粉を主体とするのが、食感及び風味、製パン性が良好であるので、好適である。
なお、一般的に、小麦粉は強力粉、中力粉、薄力粉に分類されるが、強力粉は硬質小麦を原料とし、タンパク質の量が多く、水を加えて捏ねた時に生地の中にできるグルテンの量が多く力が強い。中力粉、薄力粉の順にタンパク質の量が少なくなり、グルテンの力も弱くなる。パン類には通常強力粉が好適に用いられている。
また、本発明の実施形態に係るパン類用ミックス粉には、本開示の効果を妨げない範囲で、一般的にパン類用生地原料に使用されている副材料を適宜含有させてもよい。当該副材料としては、例えば、イースト、イーストフード、食塩、糖類、油脂、グルテン、でん粉(通常のでん粉の損傷でん粉含有量は3質量%以下である)、増粘多糖類、乳成分、卵成分、無機塩類及びビタミン類等から選ばれる1種又は2種以上の成分が挙げられる。
前記イーストは、例えば、穀粉類100質量部に対し、1〜7質量部である。
前記食塩は、例えば、小麦粉100質量部に対し、0.3〜5質量部である。
前記糖類としては、砂糖、ブドウ糖、果糖、トレハロース、イソマルトオリゴ糖等の単糖類及びオリゴ糖類;水あめ、粉あめ、デキストリン等の多糖類;ソルビトール、マルチトール、パラチノース、還元水あめ等の糖アルコール等が挙げられる。これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。前記糖類は、例えば、穀粉類100質量部に対し、2〜30質量部である。
前記油脂として、例えば、バター、マーガリン、ショートニング、ラード、菜種油、大豆油、オリーブ油等が挙げられる。これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
前記乳成分として、例えば、粉乳、脱脂粉乳、ホエイタンパク質(WPC、WPI等)等が挙げられる。これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
前記卵成分として、例えば、卵黄、卵白、全卵その他の卵等が挙げられる。これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
前記無機塩類として、例えば、塩化アンモニウム、塩化マグネシウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、焼成カルシウム、アンモニウムミョウバン等が挙げられる。これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。これにより、パン生地を膨化させやすい。
前記ビタミン類として、ビタミンC、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンD、ビタミンE、カロチン等が挙げられる。
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
<米粉の損傷でん粉含有量の検討>
〔1.米粉の製造と検討〕
以下の方法にて、下記の表1に示す各例の米粉を準備した。
[比較例1]米粉「米粉ファイン」(木徳神糧株式会社製)を購入した。
[比較例2]精米後のコシヒカリを気流式粉砕機(サイクロンミル 250W 株式会社静岡プラント製)で、23±2℃に調整した室内で損傷でん粉(DS)含有量が21%になるまで粉砕した。粉砕後の米粉の温度は25℃であった。
[比較例3]精米後のコシヒカリを気流式粉砕機(マイクロマック 1型 株式会社ジェイウイング製)で、23±2℃に調整した室内でDS含有量が20%になるまで粉砕した。粉砕後の米粉の温度は25℃であった。
[比較例4]精米後のコシヒカリを衝撃式微粉砕機(コントラプレックス250CW 槇野産業株式会社製)で、23±2℃に調整した室内でDS含有量が22%になるまで粉砕した。粉砕後の米粉の温度は25℃であった。
[比較例5]精米後のコシヒカリを臼式粉砕機(ミクロ パウダー KGW−G015 有限会社ウエスト製)で、10±2℃に調整した室内でDS含有量が15%になるまで粉砕した。粉砕時の臼間隙調整目盛は2とした。粉砕後の米粉の温度は25℃であった。
[比較例6]精米後のコシヒカリを気流式粉砕機(サイクロンミル 250W 株式会社静岡プラント製)で、23±2℃に調整した室内でDS含有量が43%になるまで粉砕した。粉砕後の米粉の温度は25℃であった。
[実施例1]精米後のコシヒカリを臼式粉砕機(臼挽き職人 KP091 カンリウ工業株式会社製)で、10±2℃に調整した室内でDS含有量が21%になるまで粉砕した。粉砕時の臼間隙調整目盛は1とした。粉砕後の米粉の温度は25℃であった。
[実施例2]精米後のコシヒカリを臼式粉砕機(臼挽き職人 KP091 カンリウ工業株式会社製)で、5±2℃に調整した室内でDS含有量が27%になるまで粉砕した。粉砕時の臼間隙調整目盛は1とした。粉砕後の米粉の温度は20℃であった。
[実施例3]精米後のコシヒカリを臼式粉砕機(ミクロ パウダー KGW−G015 有限会社ウエスト製)で、10±2℃に調整した室内でDS含有量が34%になるまで粉砕した。粉砕時の臼間隙調整目盛は1とした。粉砕後の米粉の温度は25℃であった。
[実施例4]精米後のコシヒカリを臼式粉砕機(ミクロ パウダー KGW−G015 有限会社ウエスト製)で、5±2℃に調整した室内でDS含有量が47%になるまで粉砕した。粉砕時の臼間隙調整目盛は0とした。粉砕後の米粉の温度は25℃であった。
[実施例5]精米後のコシヒカリをボールミル(ボールミル P−6 レッチェ社製)で、10±2℃に調整した室内でDS含有量が22%になるまで粉砕した。粉砕後の米粉の温度は25℃であった。
[実施例6]精米後のコシヒカリを臼式粉砕機(ミクロ パウダー KGW−G015 有限会社ウエスト製)で、10±2℃に調整した室内でDS含有量が18%になるまで粉砕した。粉砕時の臼間隙調整目盛は2とした。粉砕後の米粉の温度は25℃であった。
前記比較例1〜6及び実施例1〜6の全体の損傷でん粉含有量、粒径75μm以上の画分(75μm↑画分)における損傷でん粉含有量及び粒子径の累積分布におけるメジアン径(D50)を測定した。
米粉の損傷でん粉含有量は、市販のキット(MegaZyme製,Starch Damage Assay Kit)を用いて測定した。
具体的には、各米粉試料100mgに、予め40℃で10分間プレインキュベートしたα−アミラーゼ溶液(Aspergillus oryae由来,50unit/ml)を1ml添加して、撹拌した後、40℃で10分間処理した。次いで、クエン酸−燐酸水溶液(pH2.5)を5ml添加して反応を停止させ、遠心分離(1,000g,5分)して上清を得た。この上清0.1mlにアミログルコシダーゼ溶液(Aspergillus niger由来,2unit/0.1ml)を添加して40℃で20分間処理した後、510nmで吸光度を測定し、得られた吸光度から生成したグルコース量を算出し、米粉試料中に含まれる損傷でん粉量を算出した。
米粉の粒径は、株式会社日本レーザー社製「レーザー回折式粒子径分布測定装置HELOS&RODOS」を用いて乾式で測定した。
結果を表1に示す。
Figure 0006628975
表1において、比較例1〜5の米粉では、粒径75μm以上の画分の損傷でん粉含有量が15質量%未満であったのに対し、実施例1〜6の米粉では、15質量%以上であった。
また、比較例1〜5の米粉では、粒径75μm以上の画分における損傷でん粉含有量が、米粉全体の損傷でん粉含有量と比較して、同じかそれ以下であったのに対し、実施例1〜6の米粉では、粒径75μm以上の画分における損傷でん粉含有量が、米粉全体の損傷でん粉含有量と比較して、同程度かそれ以上であった。
なお、比較例6の米粉は、粒径75μm以上の画分が含まれていなかった。
〔2.食パンの製造と検討〕
次に、比較例1〜6及び実施例1〜6の米粉を用いた食パン、及び参考例1の米粉無添加の食パンを、下記の表2に従って原材料を配合し、加水量は表1に従い、以下のA〜Eの工程で製造した。
Figure 0006628975
A.ボールにショートニング以外の上記表2の材料及び水を加え、ミキサーの低速で2分間、中速で2分間ミキシングした。
なお、小麦粉は、キングスター(登録商標)(昭和産業株式会社製)を使用した。
B.Aにショートニングを加え、更にミキサーの中速で2分間ミキシングした。生地の捏上温度は、27±0.5℃とした。
C.Bの生地を28℃、湿度80%の条件下で90分間発酵させた後、パンチを行い、さらに30分間発酵させた。
D.Cの生地を、一玉500gに分割し、丸めを行った後、28℃、湿度80%の条件下でベンチタイムを25分間とった。
E.Dの生地をロール状に成形して一斤型に詰め、38℃、湿度80%の条件下でホイロを50分間行った後、205℃で30分間焼成した。
参考例1の米粉無添加の食パン、比較例1〜6及び実施例1〜6の米粉を用いた食パンについて、焼成後1日(D+1)、焼成後2日(D+2)の硬さ、及び比容積を測定した。
硬さの測定は、厚さ16mmにスライスし、クラム部分を3.5cm四方にカットしたパンを、厚さ8mmまで圧縮した時の応力(g)についてSUN SCIENTIFIC社製sunレオメーターCOMPAC−100にて測定することにより行った。
また、D+1の硬さとD+2の硬さを比較して、時間の経過とともにどのくらい硬くなったかを変化量として前記表1に示した。
比容積の測定は、3D Laser VolumeMeasurement selnuc−Win VM2100(株式会社ASTEC社製)を用いて行った。製造したパンの体積を重量で割ることにより比容積(cm/g)を算出して前記表1に示した。
また、参考例1の米粉無添加並びに比較例1〜6及び実施例1〜6の米粉について、食パンの食感、米粉のハンドリング性、生地の製パン性を以下の評価基準に従い10名のパネラーによって評価した。
・食感
1:パン類を喫食した際にパサつきが強い。
2:パン類を喫食した際にパサつきがある。
3:パン類を喫食した際にパサつきが少ない。
4:パン類を喫食した際にパサつきがなくしっとりとしている。
5:パン類を喫食した際にパサつきがなく非常にしっとりとしている。
・ハンドリング性
1:米粉の計量、材料の混合時にだまがかなり多く、噴流性がかなり強い。
2:米粉の計量、材料の混合時にだまが多く、噴流性が強い。
3:米粉の計量、材料の混合時にだまがみられ、噴流性がある。
4:米粉の計量、材料の混合時にだまが少なく、噴流性が少ない。
5:米粉の計量、材料の混合時にだまがなく、噴流性がほとんどない。
・製パン性
1:混捏時や分割・成形時にべたつきがかなりある。
2:混捏時や分割・成形時にべたつきがややある。
3:混捏時や分割・成形時にべたつきがある。
4:混捏時や分割・成形時にべたつきが少ない。
5:混捏時や分割・成形時にべたつきがほとんどない。
表1において、参考例1の米粉無添加並びに比較例1〜5及び実施例1〜6の米粉を用いた食パンは、いずれも比容積が約4cm/gであったのに対し、比較例6の米粉を用いた食パンは、比容積が3.78cm/gと小さかった。
参考例1の米粉無添加、比較例1の市販米粉及び比較例5の米粉を用いた食パンは、時間経過による硬さの変化量が307〜327gと全体的に大きかった。また、比較例2〜4の米粉を用いた食パンは、時間経過による硬さの変化量が233g〜290gであった。一方、実施例1〜6の米粉を用いた食パンは、時間経過による硬さの変化量が130g〜233gと全体的に小さかった。
また、参考例1の米粉無添加及び比較例1〜6の米粉を用いた場合、食パンの食感、米粉のハンドリング性、生地の製パン性の少なくとも1つが評価2以下であった。一方、実施例1〜6の米粉を用いた場合、食パンの食感、米粉のハンドリング性、生地の製パン性のいずれも評価3以上であった。
これらのことより、実施例1〜6の米粉は、時間経過による食パンの硬さの変化が少なく、焼成後の食パンの比容積及び食感、米粉のハンドリング性、生地の製パン性についても、良好であることが示された。
〔3.米粉の添加量の影響の検討〕
小麦粉、米粉及び水の配合量を、下記表3の記載に従ったほかは、〔2.食パンの製造と検討〕と同様の方法で、食パンを製造した。
Figure 0006628975
表3から、米粉の配合量が実施例7に示すように0.3質量部と少なくても、また実施例12に示すように20質量部と多くても、参考例2の米粉無添加と比較して食パンの経時的な硬化抑制効果がみられた。特に、実施例9及び実施例10に示すように、米粉の配合量を5〜10質量部としたときに、高い硬化抑制効果が見られた。
〔4.各種製パン法による米粉の検討〕
(i)ホームベーカリー
以下の表4に示す配合により、ホームベーカリー(Panasonic SD-BH105)の食パン早焼きモードで食パンを製造した。参考例3(米粉無添加)、比較例7(表1の比較例1の市販の米粉使用)、比較例8(表1の比較例6の米粉使用)、実施例13〜15(表1の実施例2〜4の米粉使用)の食パンを製造した。
Figure 0006628975
製造した食パンについて、前述の方法に従って、硬さ(D+1、D+3、変化量)、比容積、食感及びハンドリング性を評価した。結果を表5に示す。
Figure 0006628975
表5において、参考例3の米粉無添加の食パンと比較して、比較例7(表1の比較例1の市販品の米粉使用)食パンでは、食感の改良効果がみられなかったのに対し、実施例13〜15(表1の実施例2〜4の米粉使用)の食パンでは、食感の改良効果がみられた。また、比較例7の食パンでは、経時的な硬化を抑制する効果がみられなかったのに対し、実施例13〜15(表1の実施例2〜4の米粉使用)の食パンでは、経時的な硬化を抑制する効果がみられた。一方、比較例8(表1の比較例6の米粉使用)では、米粉のハンドリング性が悪く、パンの経時的な硬化を抑制する効果も低い結果が得られた。
(ii)中種食パン
以下の表6に示す配合により、中種食パンを以下のA〜Fの工程で製造した。なお、本捏時の加水量は、表7の記載に従った。
Figure 0006628975
A.ボールに上記表6の中種の材料を加え、ミキサーの低速で2分間、高速で0.5分間ミキシングした。生地の捏上温度は、24±0.5℃とした。
なお、小麦粉は、キングスター(登録商標)(昭和産業株式会社製)を使用した。
B.Aの生地を28℃、湿度85%で4時間発酵させた。
C.Bの生地にショートニング以外の上記表6の本捏の材料及び水を加え、ミキサーの低速で2分間、中速で2分間ミキシングした後、ショートニングを加え、更に中速で2分間ミキシングした。生地の捏上温度は、28±0.5℃とした。
D.Cの生地を28℃、湿度85%の条件下で20分間発酵させた。
E.Dの生地を、一玉500gに分割し、丸めを行った後、28℃、湿度85%の条件下でベンチタイムを20分間とった。
F.Eの生地をロール状に成形して一斤型に詰め、38℃、湿度90%の条件下でホイロを40分間行った後、205℃で30分間焼成した。
得られた中種食パンについて、前述の方法に従って、硬さ(D+1、D+3、変化量)、比容積、食感、ハンドリング及び製パン性を評価した。結果を表7に示す。
Figure 0006628975
表7において、参考例4の米粉無添加の食パンと比較して、比較例9(表1の比較例1の市販品の米粉使用)の食パンでは、食感の改良効果が見られなかったのに対し、実施例16〜18(表1の実施例2〜4の米粉使用)では、食感の改良効果が見られた。また、実施例16〜18(表1の実施例2〜4の米粉使用)の食パンでは、経時的な硬さを抑制する効果が見られた。一方、比較例10(表1の比較例6の米粉使用)では米粉のハンドリング性が悪く、パンの経時的な硬化を抑制する効果も低い結果が得られた。
(iii)中種ロールパン
以下の表8に示す配合により、中種ロールパンを以下のA〜Fの工程で製造した。なお、本捏時の加水量は、表9の記載に従った。
Figure 0006628975
A.ボールに上記表8の中種の材料を加え、ミキサーの低速で3分間、中速で2分間ミキシングした。生地の捏上温度は、24±0.5℃とした。
なお、小麦粉は、キングスター(登録商標)(昭和産業株式会社製)を使用した。
B.Aの生地を28℃、湿度80%で2.5時間発酵させた。
C.Bの中種生地に上記表8のマーガリン以外の本捏の材料及び水を加え、ミキサーの低速で3分間、中速で3分間ミキシングした後、マーガリンを加え、更に低速で2分間、中速で3分間ミキシングした。生地の捏上温度は、27±0.5℃とした。
D.Cの生地を28℃、湿度80%の条件下で20分間発酵させた。
E.Dの生地を一玉60gに分割し、丸めを行った後、28℃、湿度80%の条件下でベンチタイムを20分間とった。
F.Eの生地をロール状に成形し、38℃、湿度85%の条件下でホイロを60分間行った後、210℃で9分間焼成した。
得られた中種ロールパンについて、前述の方法に従って、硬さ(D+1、D+2、変化量)、比容積、食感、ハンドリング性及び製パン性を評価した。結果を表9に示す。
Figure 0006628975
表9において、参考例5の米粉無添加の食パンと比較して、比較例11(表1の比較例1の市販品の米粉使用)の食パンでは、食感の改良効果が見られなかったのに対し、実施例19(表1の実施例4の米粉使用)の食パンでは、食感の改良効果が見られた。また、実施例19(表1の実施例4の米粉使用)の食パンでは、経時的な硬さを抑制する効果が見られた。一方、比較例12(表1の比較例6の米粉使用)では米粉のハンドリング性が悪く、パンの経時的な硬化を抑制する効果も低い結果が得られた。
(iv)冷凍生地
以下の表10に示す配合により、パン用冷凍生地を以下のA〜Fの工程で製造した。
Figure 0006628975
A.ボールにマーガリン以外の上記表10の材料を加え、ミキサーの低速で4分間、高速で9分間ミキシングした。
なお、小麦粉は、キングスター(登録商標)(昭和産業株式会社製)を使用した。
B.Aにマーガリンを加え、更にミキサーの低速で3分間、高速で2分間ミキシングして生地を調製した。生地の捏上温度は、20±0.5℃とした。
C.Bの生地を25℃で10分間静置した後、一玉60gに分割し、丸めを行った。
D.Cの生地を25℃で10分間静置した後ロール状に成形し、−30℃で冷凍した。
E.Dの冷凍生地を1か月間保存した後、−4℃で解凍し、更に25℃で30分間静置した。
F.Eの生地を38℃、湿度85%の条件下でホイロを60分間行った後、190℃で9分間焼成した。
得られたパンについて、前述の方法に従って、硬さ(D+1、D+2、変化量)、比容積、食感、ハンドリング性及び製パン性を評価した。結果を表11に示す。
Figure 0006628975
表11において、参考例6の米粉無添加のロールパンと比較して、比較例13(表1の比較例1の市販品の米粉使用)のロールパンでは、食感の改良効果が見られなかったのに対し、実施例20(表1の実施例4の米粉使用)のロールパンでは、食感の改良効果が見られた。また、実施例20(表1の実施例4の米粉使用)のロールパンでは、経時的な硬さを抑制する効果が見られた。一方、比較例14(表1の比較例6の米粉使用)では米粉のハンドリング性が悪い結果が得られた。
<まとめ>
以上の結果から、本発明の実施形態に係る米粉は、焼成後のパンの経時的な硬化を抑制する効果及び食感の改良効果が確認できた。また、ハンドリング性と製パン性も良好であった。更に、本発明の実施形態に係る米粉は、粒度が粗い画分の損傷でん粉含有量が高く、従来の米粉には無い物性的特徴を有することが確認できた。

Claims (3)

  1. 臼式粉砕機を用いて、粒径75μm以上の画分における損傷でん粉含有量が20質量%以上の米粉を製造する、米粉の製造方法。
  2. 前記米粉は、粒子径の累積分布におけるメジアン径(D50)が40μm〜100μmである、請求項1に記載の米粉の製造方法。
  3. 前記米粉は、粒径75μm以上の画分における損傷でん粉含有量が、米粉全体の損傷でん粉含有量と比較して同じかそれ以上である、請求項1又は2に記載の米粉の製造方法。
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