以下、本発明の好適な実施の形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。例えば、本発明において、成形面ファスナーの長さ寸法及び幅寸法、並びに、成形面ファスナーの基材部に配されるフック状係合素子の個数、配設位置、及び形成密度などは特に限定されるものではなく、任意に変更することが可能である。
図1は、本実施例1に係る成形面ファスナーを示す斜視図である。図2及び図3は、同成形面ファスナーの平面図及び側面図である。図4は、同成形面ファスナーの要部(樹脂侵入防止壁部)を拡大して示す要部拡大斜視図である。図5〜図7は、同成形面ファスナーの各断面図である。
なお、以下の説明において、成形面ファスナー及び一次成形体についての前後方向とは、後述するように長尺に成形される成形面ファスナー及び一次成形体の長さ方向(特に基材部の長さ方向)を言う。左右方向とは、長さ方向に直交し、且つ、成形面ファスナーの基材部の上面(又は下面)に沿った幅方向を言う。上下方向とは、長さ方向に直交し、且つ、成形面ファスナーの基材部の上面(又は下面)に直交する高さ方向(厚さ方向)を言い、特に、基材部に対して係合素子が形成される側の方向を上方とし、その反対側の方向を下方とする。
本実施例1に係る成形面ファスナー1は、前後方向に長尺な平板状の基材部11(ベース部とも言う)と、基材部11の左右側縁部に立設される樹脂侵入防止壁部20と、左右の樹脂侵入防止壁部20間に配される複数のフック状の雄型係合素子12と、左右方向に沿って配される横壁部13と、基材部11の左右側縁から外側に向けて幅方向に延設されるヒレ片部14とを有する。この成形面ファスナー1は、図8に示した後述する成形装置41及び加熱押圧装置45を備えた製造装置40を用いて製造されており、製造装置40の搬送路に沿った機械方向(MD)に長く形成されている。
本発明において、成形面ファスナー1の材質は特に限定されないが、例えば、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、PVC樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン樹脂、又はそれらの共重合体などの熱可塑性樹脂を採用することができる。
また本実施例1において、成形面ファスナー1の後述する樹脂侵入防止壁部20には、成形面ファスナー1を形成する合成樹脂に、鉄、コバルト、ニッケル等の合金からなる磁性粒子(強磁性体)が含有(混入)されている。なお、本発明において、磁性粒子の材質は、磁石に磁気的に引き付けられる材料であれば特に限定されない。
また各図面において、成形面ファスナー1における磁性粒子を含有する部分は、グレーの色を付して表されている。なお実際に製造された成形面ファスナー1においては、合成樹脂に顔料などを含有させることにより成形面ファスナー1を所望の色(例えば緑色)に着色できる。また、成形面ファスナー1の磁性粒子を含有する部分は、成形面ファスナー1の着色される色(例えば緑色)に対し、磁性粒子が呈する黒又はグレーの色が表出する。
本実施例1の成形面ファスナー1における基材部11は、上下方向の厚さ寸法が小さい平板状に形成されており、基材部11の上面及び下面はそれぞれ平坦面に形成されている。なお、本発明では、クッション体の発泡成形を行って成形面ファスナー1をクッション体に一体化するときに、成形面ファスナー1とクッション体との接合面積を大きく確保して固着強度を高めるために、例えば前記特許文献1に記載されているように、基材部11の下面に長さ方向に平行な複数の凹溝部又は突条部を設けることも可能である。
本実施例1における左右の樹脂侵入防止壁部20は、基材部11の左右側端縁から僅かに内側に入った側縁寄りの位置に、前後方向に沿って設けられている。なお、本発明において、左右の樹脂侵入防止壁部20の位置は、基材部11の左側端縁又は右側端縁から基材部11の内側に向けて所定の範囲(例えば、基材部11の左側端縁又は右側端縁から内側に向けて、基材部11の幅寸法の20%以内の範囲)に形成される側縁部の領域内であれば、任意に変更することができる。
左右の各樹脂侵入防止壁部20は、長さ方向に平行に形成される2列の縦壁列21と、これらの縦壁列21の後述する分割縦壁部22間を連結する連結壁部23と、左右方向の外側に配される縦壁列21(後述の第2縦壁列21b)の分割縦壁部22の外壁面側に設けられる補強部24とをそれぞれ有する。なお本実施例1では、補強部24を設けずに樹脂侵入防止壁部20が形成されても良い。
本実施例1の樹脂侵入防止壁部20は、縦壁列21として、樹脂侵入防止壁部20の左右方向において係合素子12に近い内側に配される第1縦壁列21aと、係合素子12から離れた外側に配される第2縦壁列21bの2列の縦壁列21を有する。
これらの第1縦壁列21a及び第2縦壁列21bは、長さ方向に沿って一列に並んで配され、且つ、所定の取付ピッチで間欠的に配される複数の分割縦壁部22をそれぞれ有する。また、各縦壁列21の長さ方向に隣接して配される2つの分割縦壁部22間には所定の間隙25が設けられている。この場合、各縦壁列21に配される分割縦壁部22の取付ピッチは、後述する係合素子12の長さ方向における取付ピッチの1/2の大きさに設定されている。
更に本実施例1において、第1縦壁列21aの分割縦壁部22と、第2縦壁列21bの分割縦壁部22とは、設置位置が長さ方向に分割縦壁部22の取付ピッチの1/2の大きさでずれた互い違いの位置で配されており、第1縦壁列21a及び第2縦壁列21bにおける分割縦壁部22は、全体的に千鳥状に配置されている。
また本実施例1の場合、第1縦壁列21a及び第2縦壁列21bの分割縦壁部22は、左右方向からの側面視(図3)において、分割縦壁部22の一部が第1縦壁列21aと第2縦壁列21bとの間で相互に重なり合う部分26を有するように設定されている。すなわち、外側の第2縦壁列21bに配される各分割縦壁部22は、図3において、内側の第1縦壁列21aの分割縦壁部22に対してその前後両端部で重なり合う。また、内側の第1縦壁列21aに配される各分割縦壁部22は、図3において、外側の第2縦壁列21bの分割縦壁部22に対してその前後両端部で重なり合う。
また本実施例1の各分割縦壁部22は、基材部11から起立する柱部22aと、柱部22aの上に長さ方向及び幅方向に張り出して設けられる頂端部22bとを有する。この場合、各分割縦壁部22の柱部22a及び頂端部22bに、隣接する縦壁列21の分割縦壁部22と側面視において重なり合う部分が設けられる。各分割縦壁部22における基材部11の上面から頂端部22bの上面までの上下方向における高さ寸法は、係合素子12の基材部11の上面からの高さ寸法の最大値と同じ大きさに設定されている。
各分割縦壁部22の柱部22aは、長さ方向に細長い四角錘台状に形成されており、柱部22aの内壁面及び外壁面(左右の側壁面)は互いに平行に形成されている。柱部22aの前壁面と後壁面とは、柱部22aの前後方向の長さ寸法が上方に向けて漸減するように上下方向に対して傾斜して形成されており、柱部22aは左右側方から見た場合に略台形状を呈する。
各分割縦壁部22の頂端部22bは、柱部22aの上端外周から長さ方向及び幅方向に張り出すように延びて形成されている。また、頂端部22bの上面は平坦に形成されている。各分割縦壁部22がこのような形状の頂端部22bを有することにより、後述するように成形面ファスナー1を金型46のファスナー保持部46aに密着させるときに(図12を参照)、成形面ファスナー1の縦壁列21と金型46のファスナー保持部46aのキャビティ面(ファスナー取付面)47との密着面積を増大させることができる。
更に、分割縦壁部22の上端部に配される頂端部22bが、上述のように長さ方向及び幅方向に張り出して形成されることにより、磁性粒子をより多量に分割縦壁部22の上端部に混入させることが可能となる。その結果、後述するように金型46に装着された磁石48によって、成形面ファスナー1をより強く吸引してしっかりと固定することができる。
またこの場合、各分割縦壁部22における柱部22aと頂端部22bとの境界部における長さ方向の寸法は、長さ方向に隣り合う2つの分割縦壁部22の境界部間の間隙25における長さ方向の寸法と同じ大きさに、又はその間隙25における長さ方向の寸法よりも小さい大きさに設定されている。これにより、第1縦壁列21aの分割縦壁部22と第2縦壁列21bの分割縦壁部22とが側面視にて重なり合う部分の面積をより小さくして樹脂侵入防止壁部20を形成できるため、成形面ファスナー1の柔軟性をより向上させることができる。
本実施例1の連結壁部23は、左右方向に沿って設けられており、第1縦壁列21aに配される分割縦壁部22の前端部(又は後端部)と、第2縦壁列21bに配される分割縦壁部22の後端部(又は前端部)とを相互に連結している。この場合、第1縦壁列21a又は第2縦壁列21bに配される分割縦壁部22は、2つの連結壁部23を介して、隣接する第2縦壁列21b又は第1縦壁列21aに配される2つの分割縦壁部22と連結される。
また、各連結壁部23における基材部11の上面からの高さ寸法は、第1縦壁列21a及び第2縦壁列21bの分割縦壁部22と同じ大きさに設定されている。すなわち、本実施例1の樹脂侵入防止壁部20は、第1縦壁列21a及び第2縦壁列21bの分割縦壁部22と連結壁部23とが、一定の高さ寸法をもってジグザグ状に蛇行するように一続きに連続して形成されている。
これにより、成形面ファスナー1を金型46のキャビティ面(ファスナー取付面)47に密着させたときに、係合領域15を樹脂侵入防止壁部20によって分断して、クッション体の発泡樹脂材料が樹脂侵入防止壁部20の外側領域から、樹脂侵入防止壁部20を超えて係合領域15に侵入することを防止できる。
なお、ここで連結壁部23の高さ寸法と分割縦壁部22の高さ寸法とが同じ大きさであるとは、多少の誤差がある場合を含むものである。例えば連結壁部23の高さ寸法と分割縦壁部22の高さ寸法とが略同じ大きさであり、且つ、成形面ファスナー1を金型46のキャビティ面(ファスナー取付面)47に密着させたときに、キャビティ面47と連結壁部23又は分割縦壁部22との間に、発泡性樹脂材料が通り抜けることのできないほどの僅かな隙間が形成される場合を含むものとする。言い換えると、本発明において、連結壁部23の高さ寸法は、成形面ファスナー1の樹脂侵入防止壁部20を金型46のキャビティ面47に密着させたときに、連結壁部23と金型46のキャビティ面47との間に発泡性合成樹脂材料が侵入できないような小さな隙間が生じる程度に、第1縦壁列21a及び第2縦壁列21bの分割縦壁部22の高さ寸法よりも僅かに小さく設定されていても良い。
また、本実施例1における連結壁部23は、曲面状の上面を備える上端部を有するとともに、左右方向に直交する断面を見たときに、上端部から基材部11に近づくにつれて前後方向の長さ寸法が漸増するテーパー状を呈する形態に形成されている。ここで、連結壁部23の上面とは、連結壁部23における平坦な前端面の上端から平坦な後端面の上端までの間に配される凸状の湾曲面の部分を言う。また、本実施例1の連結壁部23の上面は、上述のような曲面状ではなく、部分的に平坦状に形成されることもある。
更に、連結壁部23は、その左右方向の幅寸法W1(言い換えると、第1縦壁列21a及び第2縦壁列21b間の左右方向における間隔W1)を、第1縦壁列21aの左右方向の最大の幅寸法W2、又は、第2縦壁列21bの左右方向の最大の幅寸法W3よりも大きくして形成されている。更には、第1縦壁列21aの左右方向の幅寸法W2と第2縦壁列21bの左右方向の幅寸法W3との合計値よりも大きくして形成されている。またこの場合、連結壁部23の左右方向の幅寸法W1は、第1縦壁列21aの縦壁部22と第2縦壁列21bの縦壁部22とが側面視にて重なり合う部分26における前後方向の長さ寸法の最大値よりも大きく設定されている。ここで、各部位の左右方向の幅寸法は、例えば幅寸法の大きさが当該部位の高さ位置に応じて変わる場合は、当該部位の最も大きな幅寸法のことを言う。
更に本実施例1において、連結壁部23の幅寸法W1は、その連結壁部23の上面における前後方向の長さ寸法の2倍以上に、好ましくは、その連結壁部23の下端縁(連結壁部23と基材部11との境界)における前後方向の長さ寸法の2倍以上に設定されている。更にまた、連結壁部23の幅寸法W1は、樹脂侵入防止壁部20の全体における幅寸法W4(すなわち、内側の第1縦壁列21aの上端内側縁の位置から外側の第2縦壁列21bに一体形成される補強部24の外壁面の位置までの幅寸法)の1/3の大きさよりも大きく、好ましくは樹脂侵入防止壁部20の全体における幅寸法W4の40%以上の大きさに設定されている。
本実施例1の連結壁部23が、上述のような大きな幅寸法W1を有して形成されることにより、樹脂侵入防止壁部20を幅方向に広く形成できる。また、成形面ファスナー1を長さ方向に沿って上下方向に湾曲させる際に弾性変形可能な部分を大きく確保して、成形面ファスナー1を上下方向に曲げ易く形成することができる。
特に樹脂侵入防止壁部20が上述したように磁性粒子を含有する場合、磁性粒子の影響で樹脂侵入防止壁部20が硬く形成されて成形面ファスナー1が変形し難くなる傾向がある。しかし、本実施例1では、樹脂侵入防止壁部20の連結壁部23が上述のように幅方向に細長く形成されることにより、連結壁部23が変形し易くなるとともにその変形量も大きく確保できる。その結果、樹脂侵入防止壁部20を弾性変形し易くすることができる。
すなわち、連結壁部23が上述のような容易に弾性変形可能な幅寸法を有することにより、その連結壁部23の弾性変形によって第1縦壁列21aの分割縦壁部22間に形成される間隙25や、第2縦壁列21bの分割縦壁部22間に形成される間隙25を容易に拡げたり、狭めたりすることを可能にできる。従って、本実施例1の成形面ファスナー1は、より小さな力で上下方向に湾曲させることができ、また、長さ方向を軸にしてねじるように変形させることも可能となる。
更に、樹脂侵入防止壁部20の幅寸法を大きく確保できることにより、クッション体の発泡成形時に樹脂侵入防止壁部20によって発泡性樹脂材料の侵入をより効果的に防止できる。また、樹脂侵入防止壁部20が幅広に形成されることによって、樹脂侵入防止壁部20に磁性粒子を含有させる領域を大きく確保して、磁性粒子の含有量を増大できるため、金型45に装着された磁石48によって成形面ファスナー1が引き付けられる吸引力を高めることができる。
なお、連結壁部23における左右方向の幅寸法をある程度大きくすると、連結壁部23の幅寸法の増大によって成形面ファスナー1の柔軟性を向上させる効果がそれ以上得られなくなることが考えられる。更に、樹脂侵入防止壁部20が左右方向に大きくなり過ぎると、成形面ファスナー1の取扱いが難しくなることも考えられる。このため、連結壁部23における左右方向の幅寸法は、第1縦壁列21a及び第2縦壁列21bの分割縦壁部22における左右方向の幅寸法の5倍以下の大きさに、又は、樹脂侵入防止壁部20の全体における左右方向の幅寸法の70%以下の大きさに設定されることが好ましい。
本実施例1における左右の各樹脂侵入防止壁部20には、上述したように磁性粒子が含有されている。なお、本実施例1の場合、磁性粒子は、樹脂侵入防止壁部20にのみ含有されており、基材部11、係合素子12、及び横壁部13に磁性粒子は実質的に含まれていない。すなわち、基材部11は、柔軟性を備える合成樹脂により形成されており、上下方向に容易に撓ませることができる。
なお本発明において、係合素子12や横壁部13には、磁性粒子が同樹脂侵入防止壁部20の上端部よりも少ない割合で含有されているか、実質的に含まれていないことが好ましい。係合素子12に磁性粒子が多く含まれる場合、係合素子12が脆くなり、ループ状係合素子との係合強度の低下を招くからである。このため、係合素子12は、磁性粒子を実質的に含有しない合成樹脂により形成されていることが特に好ましい。
また本発明において、「磁性粒子が実質的に含まれない」とは、その部位が磁性粒子を全く含有しない合成樹脂だけで形成される場合だけでなく、磁性粒子を10wt%以下、好ましくは5wt%以下で含有する合成樹脂で形成される場合も含むものである。これは、本発明の成形面ファスナーが、環境負荷を低減するために製品の再利用を行って製造される場合があるからである。
例えば、磁性材料(磁性粒子)を一部に含む成形面ファスナーの完成製品を一度細かく裁断し、磁性材料を積極的に含有させない押出樹脂用ペレットとして再利用して成形面ファスナーの成形が行われることがある。この場合、成形面ファスナーの主材料となる合成樹脂に若干の磁性材料が含まれてしまうことがあるため、本発明は、このようなリサイクル材料で製造される成形面ファスナーも含むものである。
従って、本明細書でいう「磁性材料を含有させる部分」とは「合成樹脂に磁性材料(磁性粒子)を含有させる割合が、後述するように40wt%以上80wt%以下となる部分」を指し、「磁性材料を実質的に含有させない部分」とは「合成樹脂に磁性材料を含有させる割合が10wt%以下となる部分」を指すものとする。
この場合、本実施例1の樹脂侵入防止壁部20には、磁性粒子を含有させるとともにその含有濃度を下方に向けて減少させる濃度傾斜部50が設けられている。本実施例1の濃度傾斜部50は、樹脂侵入防止壁部20の上端部(すなわち、各分割縦壁部22の上端部と各連結壁部23の上端部)に形成され、磁性粒子を最も高い濃度で含有する高濃度部51と、磁性粒子の含有濃度を高濃度部51から下方に向けて徐々に減少させる下方傾斜部52を有する。
本実施例1の場合、高濃度部51における合成樹脂に対する磁性粒子の含有濃度(含有割合)は、50wt%の一定の大きさに設定されている。この高濃度部51は、上下方向において、分割縦壁部22の上端及び連結壁部23の上端から、分割縦壁部22及び連結壁部23における基材部11からの高さ寸法の10%以上の高さ範囲に、好ましくは15%以上の高さ範囲に設けられている。
このように磁性粒子の高濃度部51が、上下方向において、分割縦壁部22及び連結壁部23の上端からその高さ寸法の10%以上の高さ範囲に拡がっていることにより、後述する金型46のファスナー保持部46aに埋設された磁石48と、成形面ファスナー1の樹脂侵入防止壁部20に含有させた磁性粒子との間に、磁力による大きな吸引力を安定して生じさせることができる。このため、金型46のファスナー保持部46aに成形面ファスナー1を引き付けてしっかりと固定することができる。
なお本発明において、磁性粒子を一定の高い濃度で含有する高濃度部51は、樹脂侵入防止壁部20に、視認することが難しいほど極めて小さな領域のみに設けられていても良い。また、後述する変形例(図15を参照)のように、樹脂侵入防止壁部20の基材部11からの高さ寸法の全体に拡がっていても良い(すなわち、分割縦壁部22及び連結壁部23の全体が、磁性粒子を一定の高い濃度で含有していても良い)。
また本発明において、樹脂侵入防止壁部20の高濃度部51における磁性粒子の含有濃度は特に限定されるものではなく、任意に変更することができるが、この高濃度部51における磁性粒子の含有濃度は、例えば40wt%以上80wt%以下、特に45wt%以上70wt%以下に設定されることが好ましい。高濃度部51における含有濃度を40wt%以上、好ましくは45wt%以上にすることにより、金型46の磁石48によって成形面ファスナー1を磁気的に引き付けて、金型46のファスナー保持部46aに安定して固定することができる。また、高濃度部51における磁性粒子の含有濃度を80wt%以下、好ましくは70wt%以下にすることにより、樹脂侵入防止壁部20の強度を安定して確保できる。
また本実施例1の濃度傾斜部50において、磁性粒子の含有濃度が高濃度部51から下方に向けて減少する下方傾斜部52は、磁性粒子の含有濃度を下方に向けて徐々に減少させるように変化させる濃度変化部として形成されている。この下方傾斜部(濃度変化部)52は、上述した高濃度部51から下方に向けて連続して形成されている。また、下方傾斜部52は、樹脂侵入防止壁部20の下端までは延びていない。このため、樹脂侵入防止壁部20の下端部は磁性粒子を実質的に含まない合成樹脂により形成されている。
この場合、下方傾斜部52は、樹脂侵入防止壁部20における基材部11からの高さ寸法の10%以上の領域、好ましくは20%以上の領域、特に好ましくは30%以上の領域に亘って配されており、本実施例1の場合、下方傾斜部52は、樹脂侵入防止壁部20の前記高さ寸法の50%以上の領域に亘って設けられている。
このような濃度傾斜部50を備える本実施例1の樹脂侵入防止壁部20において、例えば各分割縦壁部22及び各連結壁部23を上下方向に3分割した場合、分割縦壁部22及び連結壁部23は、互いに同じ高さ寸法を有する上部領域、中間部領域、及び下部領域に区画される。この場合、分割縦壁部22及び連結壁部23の各領域における磁性粒子の平均含有濃度を比較してみると、分割縦壁部22及び連結壁部23の上部領域が最も高い平均含有濃度を有する。また、分割縦壁部22及び連結壁部23の中間領域における上記平均含有濃度は、濃度傾斜部50が設けられていることにより、上部領域よりも低い値を示し、下部領域における上記平均含有濃度は、中間領域よりも更に低い値を示す。
このように本実施例1の樹脂侵入防止壁部20に濃度傾斜部50(特に、下方傾斜部52)が設けられていることにより、本実施例1の成形面ファスナー1に、磁性粒子を含有する部分と、磁性粒子を実質的に含まない合成樹脂のみの部分との境界部がはっきりと明確に形成されることはない。そして、樹脂侵入防止壁部20の上端部から下端部にかけて磁性粒子の含有量をなだらかに減少させることができる。それにより、成形面ファスナー1における磁性粒子を含有する部分と磁性粒子を含有しない部分との密着性を、従来の成形面ファスナーよりも大幅に向上させることができる。なお、本発明で設けられる濃度傾斜部では、磁性粒子の含有量を必ずしもなだらかに傾斜させる必要はなく、含有濃度を徐々に変化させる濃度変化部が設けられていなくても良い。
また、上述のように樹脂侵入防止壁部20に濃度傾斜部50が設けられていることにより、例えば樹脂侵入防止壁部20の高濃度部51と下方傾斜部52が設けられている同じ領域に、高濃度部51と同じ一定の濃度で磁性粒子が均一に含有されている場合に比べて、磁性粒子の使用量を減少させることができる。それにより、製造コストの削減を図ることができるとともに、磁性粒子を含有することによる合成樹脂の柔軟性の低下を抑えて、成形面ファスナー1の柔軟性を適切に確保することができる。
本実施例1で形成される複数の係合素子12は、クッション体に被せられる表皮材との間で所定の結合力(係合力)が得られるように、長さ方向及び幅方向に所定の取付ピッチをもって立設されている。特に本実施例1において、係合素子12は、長さ方向に所定の取付ピッチで一列に並べられて配されているとともに、その係合素子12の縦列が幅方向に5列に並べられて配されている。本発明では、このような複数の係合素子12が形成される左右の樹脂侵入防止壁部20間の領域を、係合領域15と称することとする。
なお、本発明において、係合素子12の配置パターンは特に限定されるものではない。例えば図1及び図2に示したように、係合素子12を長さ方向及び幅方向に整列させて係合領域15を形成しても良い。また、左右の樹脂侵入防止壁部20間に係合素子12を千鳥状等の所定の配置パターンで並べることや、係合素子12をランダムに配置すること等によって係合領域15を形成しても良い。
本実施例1における各係合素子12は、前記特許文献1に記載されている係合素子と同様の形状を有して形成される。すなわち、本実施例1の係合素子12は、基材部11の上面から垂直に立ち上がる立ち上がり部と、その立ち上がり部の上端において長さ方向の前後に向けて湾曲しながら延出するフック状の係合頭部とを有しており、いわゆる雄型係合素子を構成する。
この場合、各係合素子12の基材部11からの高さ寸法の最大値は、上述のように分割縦壁部22の基材部11からの高さ寸法と同じ大きさに設定されている。なお、本発明において、各係合素子12の形状及び寸法は特に限定されるものではなく、任意に変更することができ、例えば係合素子12の基材部11からの高さ寸法を分割縦壁部22よりも低く設定することも可能である。
本実施例1における横壁部13は、樹脂侵入防止壁部20と係合素子12との間に、及び、左右方向に互いに隣接する係合素子12の間に、幅方向に沿って配されている。また、各横壁部13は、隣り合って配される係合素子12と下端部(基材部11側の端部)にて連結されており、これにより、横壁部13と係合素子12とは互いに補強されている。
また、横壁部13における基材部11からの高さ寸法は、分割縦壁部22及び連結壁部23の基材部11からの高さ寸法と同じ大きさに設定されている。すなわち、本実施例1の成形面ファスナー1では、分割縦壁部22、連結壁部23、横壁部13、及び係合素子12の高さ寸法が何れも同じ大きさに設定されており、これらの上面又は上端が同一平面上に配されている。
従って、後述するようにクッション体の発泡成形を行う際に成形面ファスナー1を金型46のファスナー保持部46aに吸着固定することにより、成形面ファスナー1の分割縦壁部22、連結壁部23、横壁部13、及び係合素子12を金型46のファスナー保持部46aのキャビティ面(ファスナー取付面)47に安定して密着させることができる。それにより、発泡性樹脂材料が、成形面ファスナー1の左右の樹脂侵入防止壁部20を越えて幅方向から係合領域15に侵入することを防止できるとともに、横壁部13及び係合素子12を越えて長さ方向から係合領域15に侵入することも防止できる。
なお、横壁部13と係合素子12とは、上述のように下端部にて連結されているものの、上端部では小さな間隔をあけて離間して配されている。このように横壁部13と係合素子12とが上端部において離間していても、その離間している間隔は非常に小さいため、クッション体の発泡性樹脂材料が横壁部13と係合素子12との間の隙間から係合領域15に侵入することはない。
本実施例1におけるヒレ片部14は、基材部11の左右側縁から外側に向けて舌片状に延設されており、左側のヒレ片部14と右側のヒレ片部14とは、長さ方向に所定の取付ピッチをもって互い違いに配されている。これらの左右のヒレ片部14は、クッション体の発泡成形を行ったときにそのクッション体の内部に埋設される部分であり、クッション体に対する成形面ファスナー1の固着強度を高めるために設けられている。
上述のような構成を備える本実施例1の成形面ファスナー1は、例えば図8に示した製造装置40を用いて製造される。
この製造装置40は、一次成形工程を行う成形装置41と、一次成形工程により成形された一次成形体10を加熱して押圧する二次成形工程を行う加熱押圧装置45とを有する。
本実施例1の成形装置41は、一方向(図面では反時計回り方向)に駆動回転するダイホイール42と、ダイホイール42の周面に対向して配され、溶融した合成樹脂材料を連続して吐出する押出ノズル43と、押出ノズル43よりもダイホイール42の回転方向下流側に配されるピックアップローラ44とを有する。
成形装置41のダイホイール42の周面には、後述する一次成形体10の一次分割縦壁部32及び連結壁部23を成形するための成形用キャビティや、上述した係合素子12及び横壁部13を成形するための成形用キャビティが形成されている。また、押出ノズル43とダイホイール42との間の間隔は、成形する基材部11の厚さ寸法に対応する大きさに調整されている。
更に、ダイホイール42は、その周面に成形される一次成形体10を冷却するために、冷却液をダイホイール42の内部に流通させている。また、ダイホイール42の下部には、同ダイホイール42の下半部を浸漬させるように図示しない冷却液槽が配されている。
押出ノズル43には、磁性粒子が混練されていない溶融状態の合成樹脂材料のみを流通させる第1流路43aと、溶融状態の合成樹脂材料に磁性粒子が混練されたものを流通させる第2流路43bとが形成されている。そして、押出ノズル43の押出面43cには、図9に示すように、溶融状態の合成樹脂材料のみを吐出する3つの第1押出口43dと、磁性粒子が混練された溶融状態の合成樹脂材料を吐出する2つの第2押出口43eとが設けられている。
この場合、3つの第1押出口43dは押出ノズル43の第1流路43aに連通し、2つの第2押出口43eは押出ノズル43の第2流路43bに連通する。また、3つの第1押出口43dのうちの左右両側に配される2つの第1押出口43dは円形に形成され、中央に配される第1押出口43dは、左右の第1押出口43dよりも大きな楕円形に形成されている。
磁性粒子が混練された合成樹脂材料を吐出する2つの第2押出口43eは、成形される一次成形体10の後述する一次樹脂侵入防止壁部30が設けられる位置に対応して、3つの第1押出口43dの上方で、且つ、中央の第1押出口43dと左右の第1押出口43dとの間に位置に円形に形成される。なお、本発明において、第1押出口43d及び第2押出口43eの位置、形状及び寸法等は、任意に変更することが可能であり、例えば3つの第1押出口43dを、互いに同じ形状及び同じ大きさで形成しても良い。
本実施例1の加熱押圧装置45は、ピックアップローラ44の下流側に配される上下一対の押圧ローラ(カレンダローラ)45a,45bを有しており、上側押圧ローラ45aの内部には図示しない加熱源が設けられている。上側押圧ローラ45aと下側押圧ローラ45bとは、所定の間隔を開けて対向して配されている。この場合、上側押圧ローラ45a及び下側押圧ローラ45b間の間隔は、図示しない高さ調整手段により調整可能であり、製造する成形面ファスナー1の分割縦壁部22の高さ寸法に対応して調整される。
なお、本発明では、上側押圧ローラ45a及び/又は下側押圧ローラ45bの代わりに、図示しない上側ベルト機構及び/又は下側ベルト機構を利用することも可能である。この場合、上側ベルト機構及び下側ベルト機構は、それぞれ、無端ベルトと、その無端ベルトが巻き掛けられるとともに、無端ベルトを一方向に回転させる左右一対の回転ローラとを有する。
上述のような成形装置41及び加熱押圧装置45を有する製造装置40を用いて成形面ファスナー1の製造を行う場合、先ず、成形装置41により一次成形体10を成形する一次成形工程を行う。
この一次成形工程では、押出ノズル43の3つの第1押出口43dから、溶融した合成樹脂材料をダイホイール42の周面に向けて連続的に押し出すとともに、2つの第2押出口43eから、溶融した合成樹脂材料に磁性粒子が所定の割合(例えば50wt%の割合)で混練された材料をダイホイール42の周面に向けて連続的に押し出す。
このように押出ノズル43から合成樹脂材料と磁性粒子を含有する合成樹脂材料との2種類の溶融材料を押す出すことにより、ダイホイール42は一方向に駆動回転しているため、ダイホイール42の回転に伴って図10及び図11に示すような一次成形体10がダイホイール42の周面上に連続的に成形される。
ここで、本実施例1の成形装置41で成形される一次成形体10(予備成形体とも言う)は、薄板状の基材部11と、基材部11の左右側縁部の上面に立設される左右の一次樹脂侵入防止壁部30と、左右の一次樹脂侵入防止壁部30間に配される複数の係合素子12及び複数の横壁部13とを有する。この場合、一次成形体10の基材部11、係合素子12、及び横壁部13は、そのまま成形面ファスナー1の基材部11、係合素子12、及び横壁部13となる。
一次成形体10に形成される左右の一次樹脂侵入防止壁部30は、後述する二次成形工程にて押圧成形されることにより、成形面ファスナー1の左右の樹脂侵入防止壁部20として形成される部分である。本実施例1の一次樹脂侵入防止壁部30は、複数の一次分割縦壁部32を長さ方向に沿って備える2列の一次縦壁列31(すなわち、一次第1縦壁列31a及び一次第2縦壁列31b)と、左右方向に隣接する一次分割縦壁部32間を連結する連結壁部23と、一次第2縦壁列31bの一次分割縦壁部32に設けられる補強部24とをそれぞれ有する。この場合、一次樹脂侵入防止壁部30の連結壁部23及び補強部24は、そのまま成形面ファスナー1の樹脂侵入防止壁部20における連結壁部23及び補強部24となる。
一次成形体10の一次縦壁列31を形成する一次分割縦壁部32は、後段の加熱押圧装置45で押圧成形されることにより、成形面ファスナー1の分割縦壁部22となる部分であり、この一次分割縦壁部32には、成形面ファスナー1の分割縦壁部22が備える頂端部22bが形成されていない。このため、一次分割縦壁部32は、左右方向から見たときに台形の形状を呈する。また、各一次分割縦壁部32における基材部11からの高さ寸法は、図11に示すように、連結壁部23における基材部11からの高さ寸法よりも大きく、また、二次成形工程が行われた成形面ファスナー1の分割縦壁部22における基材部11からの高さ寸法よりも大きく設定されている。
また、それぞれの一次分割縦壁部32及び連結壁部23には、磁性粒子が含有されるとともにその含有濃度を下方に向けて減少させる濃度傾斜部50が設けられている。この濃度傾斜部50は、磁性粒子を一定の最も高い濃度で含有する高濃度部51と、高濃度部51から磁性粒子の含有濃度を下方に向けて徐々に減少させる下方傾斜部52とを有する。この場合、濃度傾斜部50の高濃度部51は、一次分割縦壁部32の上端部及び連結壁部23の上端部に形成されている。下方傾斜部52は、一次分割縦壁部32及び連結壁部23における高濃度部51の下方に、高濃度部51から連続的に形成されている。
上述のような一次樹脂侵入防止壁部30を有する一次成形体10は、成形装置41の押出ノズル43から合成樹脂材料などがダイホイール42の周面に押し出されることにより連続的に成形される。この場合、押出ノズル43から押し出された2種類の溶融した合成樹脂材料は、ダイホイール42の外周面に担持されながら半回転することにより冷却されて硬化する。
このとき、成形装置41の押出ノズル43とダイホイール42との間にて、一次成形体10の基材部11が成形されるとともに、ダイホイール42に形成した各成形用キャビティにより、一次成形体10の一次樹脂侵入防止壁部30、係合素子12、及び横壁部13が基材部11上に一体的に成形される。
その後、ダイホイール42の外周面で冷却された一次成形体10は、ピックアップローラ44によってダイホイール42から連続的に引き剥がされる。このとき、本実施例1の一次成形体10では、一次樹脂侵入防止壁部30の連結壁部23が幅方向に長く形成されているため、一次樹脂侵入防止壁部30に磁性材料が含有されていても、一次成形体10の柔軟性が高められて、一次樹脂侵入防止壁部30が上下方向に曲がり易い。これにより、一次成形体10をダイホイール42から引き剥がし易くして、一次成形体10の引き剥がし時に生じる抵抗(一次成形体10に負荷される力)を低減できる。
例えば一次成形体10の引き剥がし時における抵抗が大きい場合、一次成形体10に、特に一次成形体10における合成樹脂のみの部分と磁性粒子が含有されている部分との間に亀裂や裂け目が生じたり、一次成形体10の一部が破損したりし易くなる。しかし、上述のように引き剥がし時の抵抗を小さくできることにより、一次成形体10に上述のような亀裂や破損などを生じ難くして、成形面ファスナー1の生産効率や歩留まりの向上を図ることができる。
更に本実施例1の場合、一次樹脂侵入防止壁部30の各一次分割縦壁部32と各連結壁部23とには、上述のように磁性粒子の含有濃度が下方に向けて徐々に減少する下方傾斜部52が形成されている。これにより、磁性粒子を含有する部分と磁性粒子を含有しない部分(磁性粒子の非含有部分)との密着性が高められるため、一次成形体10をダイホイール42から引き剥がすときに、一次成形体10に上述のような亀裂や裂け目が生じることを、より効果的に防止することができる。
続いて、ダイホイール42から引き剥がされた一次成形体10は、二次成形工程を行う加熱押圧装置45に向けて搬送され、加熱押圧装置45の上側押圧ローラ45aと下側押圧ローラ45bの間に導入される。この二次成形工程では、一次成形体10が上側押圧ローラ45a及び下側押圧ローラ45b間を通過するときに、一次成形体10の一次分割縦壁部32の上端部が上側押圧ローラ45aによって加熱されて軟化する。更に、一次成形体10の基材部11が下側押圧ローラ45bによって下方から支持されながら、一次成形体10の一次分割縦壁部32が上側押圧ローラ45aによって上方から押圧される。その結果、一次分割縦壁部32の上端部が長さ方向及び幅方向に広がるように押し潰される。
これにより、一次分割縦壁部32の上端部が熱変形して前後左右に張り出す。また、一次分割縦壁部32の上面(頂端面)が平坦化されると同時に、その高さ寸法が、連結壁部23、横壁部13、及び係合素子12の高さ寸法に合わせられる。これによって、図1などに示した柱部22aの上に頂端部22bが一体的に形成された分割縦壁部22が成形される。
また、一次分割縦壁部32において、高濃度部51で形成される上端部を押し潰すので、よりたくさんの磁性粒子を分割縦壁部22の頂端部22bに保持することができる。特にこの場合、頂端部22bの長さ方向及び幅方向に張り出して面積が大きく確保された上面(頂端面)近傍に、多量の磁性粒子を保持できる。
このような二次成形工程が、一次成形工程で得られた一次成形体10に対して行われることにより、図1などに示した本実施例1の成形面ファスナー1が製造される。更にその後、製造された成形面ファスナー1は、例えば図示しない切断部に向けて搬送され、同切断部にて所定の長さに切断されて回収され、或いは、成形面ファスナー1が長尺の状態のままで回収ローラ等にロール状に巻き取られて回収される。
なお、本発明において、成形面ファスナー1の製造に用いられる装置や製造方法は特に限定されるものではなく、任意に変更することができる。例えば本実施例1では、押出ノズル43から溶融した合成樹脂材料等を回転する1つのダイホイール42の周面に向けて連続的に押し出すことによって、一次成形体10の成形が行われている。しかし、本発明では、少なくとも一方の周面に上記のダイホイール42と同様の成形用キャビティが形成された上下一対の成形ローラを用いて、当該上下一対の成形ローラ間に向けて押出ノズルから溶融した合成樹脂材料等を連続的に押し出すことによって、一次成形体10の成形を行うことも可能である。
上述のようにして製造された本実施例1の成形面ファスナー1では、樹脂侵入防止壁部20に磁性粒子が混入されて、高濃度部51及び下方傾斜部52を備える濃度傾斜部50が形成されている。この場合、成形面ファスナー1の磁性粒子を実質的に含まない基材部11などは、合成樹脂に混入した顔料により所望の色(例えば緑色)を呈する。一方、磁性粒子を高濃度で含有する高濃度部51は黒色(又はグレー色)を呈し、下方傾斜部52は、黒色から所望の色(緑色)に徐々に変色している。
これにより、例えば本実施例1の成形面ファスナー1を上方から見た場合(平面視)においては、所望の着色された色(緑色)に、樹脂侵入防止壁部20に沿って黒色の2本の線が入った外観(見栄え)が得られる。それに対し、成形面ファスナー1を裏面側の下方から見た場合(底面視)においては、基材部が呈する所望の着色された色(緑色)のみの外観(見栄え)が得られる。このように成形面ファスナー1の表面側における色彩と裏面側おける色彩とを異ならせることにより、成形面ファスナー1の表面と裏面を容易に区別することができる。
そして、製造された本実施例1の成形面ファスナー1は、例えば自動車の座席用シートなどの図示せぬクッション体(発泡体)に好適に用いられる。この場合、成形面ファスナー1は、クッション体の発泡成形を行う際に、そのクッション体の表面に複数の係合素子12が露呈するようにして一体化される。
このような成形面ファスナー1が一体化されるクッション体を製造する場合、先ず、長尺の成形面ファスナー1を所要の長さに切断し、その切断した成形面ファスナー1を、図12に示すように、クッション体の金型46に設けられたファスナー保持部46aのキャビティ面(ファスナー取付面)47に載置する。
このとき、金型46のファスナー保持部46aの内側には、成形面ファスナー1を載置する位置に対応してネオジム磁石などの磁石48が埋設されている。成形面ファスナー1を、係合素子12が金型46のキャビティ面47に対向するように載置したときに、成形面ファスナー1が金型46のファスナー保持部46aのキャビティ面47上に磁気的に吸着して固定される。
特に本実施例1の成形面ファスナー1では、樹脂侵入防止壁部20の上端部(すなわち、分割縦壁部22の上端部及び連結壁部23の上端部)が、成形面ファスナー1の磁石48に最も近い上側に配置されるとともに、このような上端部に磁性粒子が一定の高濃度で分散する高濃度部51が形成されている。このため、金型46の磁石48によって成形面ファスナー1をより強力に吸引でき、ファスナー保持部46aのキャビティ面47に成形面ファスナー1をしっかりと安定して固定することができる。
またこの場合、本実施例1の成形面ファスナー1は、上述のように表面側の色彩と裏面側の色彩とを異ならせて表面と裏面の区別が容易になるように形成されている。更に、成形面ファスナー1の磁性粒子と金型46の磁石48との間の磁気吸引力を利用することにより、金型46のファスナー保持部46aに対する成形面ファスナー1の位置及び向きを、磁石48の位置及び向きに対応して精度良く自動的に合わせることも可能である。
このため、本実施例1の成形面ファスナー1を金型46のファスナー保持部46aに取り付ける作業を行う作業者は、成形面ファスナー1をその表裏面の向きを間違えることなく、金型46のファスナー保持部46aに容易に取り付けることができ、成形面ファスナー1の設置作業を短時間で正確に且つ効率的に行うことが可能となる。
更に、本実施例1の成形面ファスナー1は、左右方向からの側面視において第1縦壁列21aの分割縦壁部22と第2縦壁列21bの分割縦壁部22とが重なり合う部分26の面積が小さく、且つ、第1縦壁列21a及び第2縦壁列21bの分割縦壁部22間を連結する連結壁部23が弾性変形可能であるため、上下方向の柔軟性に優れている。特に本実施例1では、連結壁部23が、左右方向に沿って上述したように細長く形成されているため、柔軟性を低下させる磁性粒子が樹脂侵入防止壁部20に含有されていても、成形面ファスナー1を上下方向に容易に湾曲させることができる。
このため、金型46のファスナー保持部46aにおけるキャビティ面47が湾曲面に形成されている場合に、成形面ファスナー1を、その金型46のキャビティ面47の湾曲形状に沿って適切に湾曲させて、両者の間に大きな隙間を生じさせることなく当該キャビティ面47に取り付けることができる。特に本実施例1では、金型46のキャビティ面47が多少大きな曲率を有する湾曲面に形成されていても、その湾曲したキャビティ面47に本実施例1の成形面ファスナー1を隙間なく取り付けることが可能である。
従って、本実施例1の成形面ファスナー1を、その樹脂侵入防止壁部20の上面と、横壁部13及び係合素子12の上面又は上端部とを、成形面ファスナー1の長さ方向の全体に亘って金型46のキャビティ面47に密着させた状態で、金型46のファスナー保持部46aに安定して吸着固定することができる。
そして、成形面ファスナー1を金型46のファスナー保持部46aに上述のように吸着固定した後、その金型46のキャビティ空間内にクッション体の発泡性樹脂材料を注入する。これにより、発泡性樹脂材料が発泡しながら成形面ファスナー1の基材部11の下面(背面)側、左右の樹脂侵入防止壁部20の外側、及び、成形面ファスナー1の前後端縁へと流動しながら金型46のキャビティ空間全体に行き渡り、図13に示したようにクッション体(発泡体)49の発泡成形が行なわれる。
このとき、成形面ファスナー1は金型46の磁石48の吸引作用により所定の位置に位置決め固定されているため、発泡性樹脂材料の流動及び発泡圧によって成形面ファスナー1の位置が動かされることはない。
更に、本実施例1の成形面ファスナー1では、樹脂侵入防止壁部20の蛇行状に一続きに連続して形成される分割縦壁部22及び連結壁部23が、金型46のキャビティ面47に密着しているとともに、連結壁部23が幅方向に長く形成されて、樹脂侵入防止壁部20の幅寸法が大きく確保されている。
このため、金型46のキャビティ空間内を流動する発泡性樹脂材料は、成形面ファスナー1に対して、例えば外側の第2縦壁列21bの分割縦壁部22間から内側の第1縦壁列21aの分割縦壁部22の位置までは入り込めるものの、幅寸法の大きな樹脂侵入防止壁部20を超えて幅方向から係合領域15内に侵入することが妨げられる。またこの場合、発泡性樹脂材料が成形面ファスナー1と金型のキャビティ面47との境界部分に強く吹き付けられたとしても、成形面ファスナー1の厚い樹脂侵入防止壁部20によって発泡性樹脂材料の侵入を安定して防止することができる。
また、クッション体49の発泡性樹脂材料が、例えば成形面ファスナー1の前後方向の端部から長さ方向に沿って係合領域15に向けて流動する場合、成形面ファスナー1の最も前端側又は後端側に幅方向に沿って配される横壁部13及び係合素子12が、金型46のキャビティ面47に密着した状態で左右の樹脂侵入防止壁部20間に亘って設けられている。このため、発泡性樹脂材料は、成形面ファスナー1の前端縁及び後端縁から、横壁部13及び係合素子12が最初に配されている位置までは入り込めるものの、これらの横壁部13及び係合素子12を超えて係合領域15に侵入することが妨げられる。
すなわち、本実施例1の成形面ファスナー1では、クッション体49の発泡性樹脂材料が成形面ファスナー1の幅方向及び長さ方向から係合領域15内に侵入することを防いで、係合素子12がクッション体49の発泡樹脂によって埋設されることを安定して防止できる。
更に本実施例1では、発泡性樹脂材料が第1縦壁列21a及び第2縦壁列21bと連結壁部23とに面接触した状態で硬化することにより、クッション体49に対する成形面ファスナー1の固着強度(接着強度)を高めることができる。特にこの場合、本実施例1の連結壁部23はその幅寸法を大きくして形成されているため、成形面ファスナー1とクッション体49との接触面積をより大きく確保して、成形面ファスナー1をより強固にクッション体49に固着させることができる。
そして、発泡性樹脂材料が発泡硬化して発泡成形が終了することにより、成形面ファスナー1が所要の箇所に固定されたクッション体が製造される。このようにして得られたクッション体は、成形面ファスナー1の係合領域15に発泡体が侵入していないため、係合素子12が本来有する係合力を安定して確保することができる。
従って、得られたクッション体の表面に表皮材を被せて、表皮材の裏面に設けたループ状の係合素子を成形面ファスナー1のフック状係合素子12に容易に係合させることができる。これにより、表皮材をクッション体から浮き上がらせることなく、クッション体の表面の湾曲面に沿って密着させて正確に取り付けることができる。
更にこの場合、本実施例1の成形面ファスナー1は上下方向の柔軟性に優れている。このため、例えば表皮材が成形面ファスナー1から離間するように引っ張られた場合、成形面ファスナー1が、表皮材のループ状係合素子と係合した状態のまま、クッション体とともにその引っ張られた方向に湾曲し易くなり、表皮材のループ状係合素子が成形面ファスナー1のフック状係合素子12から外れ難くなる。このため、結果として、成形面ファスナー1における表皮材のループ状係合素子に対する係合強度が高められる。
なお本発明では、成形面ファスナー1の樹脂侵入防止壁部20に含有させる磁性粒子の含有濃度や含有範囲を任意に変更することができる。例えば実施例1において、樹脂侵入防止壁部20の上端部に形成される高濃度部51の含有濃度は50wt%に設定されているが、本発明では、その含有濃度を例えば40wt%以上80wt%以下の範囲の任意の大きさに設定することができる。
また、樹脂侵入防止壁部20に形成される高濃度部51及び下方傾斜部52の形成範囲についても任意の大きさに設定することができる。例えば、図14に示す実施例1の変形例(第1変形例)に係る成形面ファスナー1aや、図15に示す実施例1の別の変形例(第2変形例)に係る成形面ファスナー1bのように、高濃度部51及び下方傾斜部52を備える濃度傾斜部50a,50bを、樹脂侵入防止壁部20や基材部11に形成することも可能である。
ここで、図14に示す第1変形例に係る成形面ファスナー1aは、基材部11や樹脂侵入防止壁部20などの各部位が、実施例1の成形面ファスナー1と同じ形状及び寸法を有するようにして形成されている。この場合、樹脂侵入防止壁部20には、磁性粒子を一定の最も高い濃度で含有する高濃度部51と、磁性粒子の含有濃度を下方に向けて徐々に減少させる下方傾斜部52とを有する濃度傾斜部50aが設けられている。この濃度傾斜部50aの高濃度部51は、樹脂侵入防止壁部20における分割縦壁部22及び連結壁部23の上端位置から、分割縦壁部22及び連結壁部23における基材部11からの高さ寸法の略半分の高さ位置までの範囲に形成されている。
また、磁性粒子の含有濃度を下方に向けて減少させる下方傾斜部52は、含有濃度を徐々に変化させる濃度変化部として、高濃度部51の下端(すなわち、分割縦壁部22及び連結壁部23の高さ寸法の半分の高さ位置)から、基材部11の防止壁支持部11aの内部まで連続して形成されている。ここで、基材部の防止壁支持部11aは、樹脂侵入防止壁部20の下に配される基材部の部分であり、この防止壁支持部11aは、樹脂侵入防止壁部20における左右方向の幅寸法と同じ幅寸法を有し、且つ、長さ方向に沿って連続して配されている。
更に、図14に示した第1変形例において、下方傾斜部52は、基材部11の下面までは延びてはおらず、基材部11の防止壁支持部11aにおける下半分は、磁性粒子を実質的に含まない合成樹脂により形成されている。このような第1変形例に係る成形面ファスナー1aであっても、下方傾斜部52が樹脂侵入防止壁部20と基材部11の防止壁支持部11aとに跨って設けられているため、磁性粒子を含有する部分と磁性粒子を実質的に含有しない非含有部分との密着性を高めることができる。
一方、図15に示す第2変形例に係る成形面ファスナー1bでは、磁性粒子を一定の最も高い濃度で含有する高濃度部51が、樹脂侵入防止壁部20における分割縦壁部22及び連結壁部23の上端位置から下端位置までの分割縦壁部22及び連結壁部23の全体に形成されている。
この第2変形例の成形面ファスナー1bにおいて、基材部11は、実施例1の場合よりも上下方向の高さ寸法を大きくして厚く形成されている。また、樹脂侵入防止壁部20と基材部11とには、磁性粒子を一定の最も高い濃度で含有する高濃度部51と、磁性粒子の含有濃度を下方に向けて徐々に減少させる下方傾斜部52と、磁性粒子の含有濃度を幅方向に沿って減少させる幅方向傾斜部53とを有する濃度傾斜部50bが設けられている。
この場合、濃度傾斜部50bの下方傾斜部52は、樹脂侵入防止壁部20に形成されておらず、基材部11の防止壁支持部11aにおける上面位置から下面位置にかけて形成されている。このため、基材部11の防止壁支持部11aには、磁性粒子を実質的に含有しない部分が設けられていない。更に、基材部11における防止壁支持部11aの左右両側の部分には、磁性粒子の含有濃度を幅方向に沿って減少させる幅方向傾斜部53が形成されている。従って、第2変形例では、濃度傾斜部50bの下方傾斜部52と幅方向傾斜部53とによって、磁性粒子の含有濃度を徐々に減少させるように変化させる濃度変化部54が形成されている。
この第2変形例のように、下方傾斜部52と幅方向傾斜部53とを備える濃度変化部54が高濃度部51から連続するように基材部11に形成されることによっても、磁性粒子の含有部分と非含有部分との密着性を高めることができる。
なお、上述した第1及び第2変形例に係る成形面ファスナー1a,1bは、図8に示した製造装置40において、押出ノズル43の押出面43cに形成される第1押出口43d及び第2押出口43eの形状、大きさ、及び形成位置、押出ノズル43からの押出力、並びに樹脂材料の粘性等の特性を変更すること等によって製造することが可能である。
図16は、本実施例2に係る成形面ファスナーの基材部及び樹脂侵入防止壁部を拡大して示す要部拡大斜視図である。図17は、同成形面ファスナーの基材部及び樹脂侵入防止壁部の長さ方向に直交する横断面を示す断面図である。図18の(a),(b)及び(c)は、同成形面ファスナーにおける第1縦壁列、連結壁部及び第2縦壁列における幅方向に直交する縦断面をそれぞれ示す断面図である。
なお、本実施例2の成形面ファスナー2や、後述する実施例3の成形面ファスナー3では、前述の実施例1に係る成形面ファスナー1に対して、樹脂侵入防止壁部20に含有させる磁性粒子の濃度分布を異ならせているものの、基材部11や樹脂侵入防止壁部20などの各部位の形状及び寸法は、前述の実施例1の成形面ファスナー1と同様にして形成されている。従って、本実施例2及び後述する実施例3では、成形面ファスナー2,3に含有させる磁性粒子の濃度分布について主に説明することとし、前述の実施例1に係る成形面ファスナー1と実質的に同じ形状及び寸法を有する部分又は部材については同じ符号を用いて表すことにより、その説明を省略することとする。
本実施例2における樹脂侵入防止壁部20には、磁性粒子を最も高い一定の濃度で含有する高濃度部55と、磁性粒子の含有濃度を徐々に漸減させるように変化させる濃度変化部56とを備える濃度傾斜部50cが設けられている。この濃度傾斜部50cの高濃度部55は、樹脂侵入防止壁部20の上端部に設けられている。本実施例2の高濃度部55における合成樹脂に対する磁性粒子の含有濃度(含有割合)は、前述の実施例1の場合と同様に、50wt%に設定されている。
また、本実施例2の濃度傾斜部50cには、樹脂侵入防止壁部20に後述するような内向き傾斜部と長さ方向傾斜部とを有する濃度変化部56が設けられている。そのため、濃度傾斜部50cにおいて、内側の第1縦壁列21aの分割縦壁部22、連結壁部23、及び、外側の第2縦壁列21bの分割縦壁部22のそれぞれで形成される高濃度部55の範囲がそれぞれ異なる。すなわち、本実施例2では、外側の第2縦壁列21bの分割縦壁部22における高濃度部55が、内側の第1縦壁列21aの分割縦壁部22における高濃度部55よりも大きく形成されている。
この場合、外側の第2縦壁列21bの分割縦壁部22における高濃度部55は、分割縦壁部22の上面全体に形成され、且つ、前後方向における分割縦壁部22の一端部(具体的には成形面ファスナー2における機械方向の下流側の端部であり、本実施例2においては後端部)と、左右方向における外壁面側の端部とがより大きく下方に延びるように傾斜して形成されている。
連結壁部23において、高濃度部55は、連結壁部23の上面全体に形成され、且つ、左右方向において、外側の第2縦壁列21bの分割縦壁部22に連結する外側端部がより大きく下方に延びるように傾斜して形成されている。なお、この連結壁部23においても、前後方向については、高濃度部55が、外側の第2縦壁列21bの分割縦壁部22と同様に、機械方向の下流側の端部となる前後方向の一端部(後端部)がより大きく下方に延びるように傾斜して形成されている。しかし、連結壁部23自体の前後方向の長さ寸法が小さいため、上述のような前後方向のうちの一方向への傾斜がはっきりと表れないこともある。
更に本実施例2の連結壁部23は、図18(b)に示すように、比較的大きな高濃度部55が形成される高濃度連結壁部23aと、高濃度連結壁部23aよりも小さな高濃度部55が形成される低濃度連結壁部23bが、前後方向に交互に配されている。
内側の第1縦壁列21aの分割縦壁部22における高濃度部55は、第2縦壁列21bのように分割縦壁部22の上面全体に形成されてはなく、前後方向の後端部に形成されており、前後方向の前端部には濃度変化部56が形成されている。
なお、本発明において、高濃度部55は、樹脂侵入防止壁部20の上端部(特に上面)における少なくとも一部に設けられていれば、その形成範囲を任意に変更することができる。例えば本実施例2では、高濃度部55を、内側の第1縦壁列21aの分割縦壁部22の上面全体に設けることも可能である。また反対に、高濃度部55を、内側の第1縦壁列21aの分割縦壁部22に設けずに、外側の第2縦壁列21bの分割縦壁部22と連結壁部23とにのみ設けることも可能である。
また、本実施例2の樹脂侵入防止壁部20は、磁性粒子の含有濃度を変化させる濃度変化部56を有する。この濃度変化部56は、磁性粒子の含有濃度が下方(矢印56a)に向けて漸減する下方傾斜部と、磁性粒子の含有濃度が左右方向に沿って外側から内側に向けて(矢印56b)漸減する内向き傾斜部と、磁性粒子の含有濃度が前後方向に沿って前後方向の一端部(具体的には成形面ファスナー2における機械方向の上流側端部)に向けて(矢印56c)漸減する長さ方向傾斜部とを有する。
すなわち、本実施例2の濃度変化部56は、樹脂侵入防止壁部20に設けた高濃度部55から、上下方向の下方(矢印56a)と、左右方向の内向き方向(矢印56b)と、前後方向における機械方向の上流側方向となる前方(矢印56c)との3つの方向に向けて、磁性粒子の含有濃度を徐々に減少させるように変化させている。
この場合、濃度変化部56は、高濃度部55から連続的に形成されている。また、この濃度変化部56は、基材部11の上面を超えて、基材部11の一部の内部に形成されているものの、基材部11の下面までは延びてはおらず、基材部11の下端部は、磁性粒子を実質的に含まない合成樹脂により形成されている。
またこの場合、濃度変化部56は、前述の実施例1の下方傾斜部52の場合と同様に、上下方向に関して、樹脂侵入防止壁部20における基材部11からの高さ寸法の10%以上の領域、好ましくは20%以上の領域、特に好ましくは30%以上の領域に亘って配されている。
なお、本実施例2の濃度変化部56は、例えば前述の第1変形例(図14を参照)でも説明したように、樹脂侵入防止壁部20だけでなく、基材部11に跨って形成されていても良い。また、例えば前述の第2変形例(図15)で説明したように、高濃度部55が樹脂侵入防止壁部20の全体に設けられている場合には、本実施例2の濃度変化部56を基材部11のみに設けることも可能である。
上述のような濃度傾斜部50cが設けられた樹脂侵入防止壁部20を備える本実施例2の成形面ファスナー2は、図8に示した製造装置40において、前述のとおり、各押出口の形状、大きさ、及び形成位置を変更したり、溶融した合成樹脂材料を押し出す押出力を変更すること等によって製造することが可能である。
本実施例2の成形面ファスナー2では、上下方向(高さ方向:矢印56a)、左右方向(幅方向:矢印56b)、及び前後方向(長さ方向:矢印56c)の3つの方向に向けて磁性粒子の含有濃度を漸減させる濃度変化部56が樹脂侵入防止壁部20に設けられている。その結果、成形面ファスナー2における磁性粒子を含有する部分と磁性粒子を実質的に含有しない非含有部分との密着性を、例えば前述の実施例1の成形面ファスナー1の場合よりも更に高めることができる。従って、成形面ファスナー2の製造時等に、合成樹脂のみの部分と磁性粒子が含有されている部分との間に亀裂や破損などをより一層生じ難くして、成形面ファスナー2の生産効率や歩留まりの更なる向上を図ることができる。
また、樹脂侵入防止壁部20に、高濃度部55及び濃度変化部56を備える本実施例2の濃度傾斜部50cが設けられていることにより、例えば濃度変化部56の形成領域に高濃度部55と同じ一定の濃度で磁性粒子が含有されている場合に比べて、磁性粒子の使用量を減少させることができる。それにより、製造コストの削減を図ることができるとともに、磁性粒子を含有することによる合成樹脂の柔軟性の低下を抑えて、成形面ファスナー2の柔軟性を適切に確保することができる。
更に本実施例2の濃度変化部56では、矢印56bで示す内向き傾斜部が設けられて、外側の第2縦壁列21bにおける磁性粒子の含有量が、内側の第1縦壁列21aにおける磁性粒子の含有量よりも大きくなる。その結果、クッション体の発泡成形時に金型46のファスナー保持部46aのキャビティ面(ファスナー取付面)47に成形面ファスナー2を取り付けて密着させるときに(図12を参照)、金型46に設けた磁石48によって樹脂侵入防止壁部20の外側の第2縦壁列21bを、内側の第1縦壁列21aよりも強く吸引することができる。
それにより、金型46のファスナー保持部46aのキャビティ面47が、上下方向に大きく湾曲している場合や長さ方向を軸にして捩れるような複雑な曲面に形成されている場合などでも、成形面ファスナー2の樹脂侵入防止壁部20がより安定して金型46のキャビティ面47に密着する。その結果、クッション体の発泡成形時に、発泡性樹脂材料が樹脂侵入防止壁部20を越えて係合領域15に侵入することをより効果的に防止できる。
特に、例えば金型46のファスナー保持部46aが手作業で加工されて、ファスナー保持部46aのキャビティ面(ファスナー取付面)47が、成形面ファスナー2の幅方向となる横方向に沿って僅かに凸状に湾曲する湾曲面に形成されている場合、本実施例2の樹脂侵入防止壁部20に濃度傾斜部50cの内向き傾斜部が設けられていることにより、その金型46の湾曲状のキャビティ面47に対して、成形面ファスナー2の密着性をより一層高めることが可能となる。
より具体的に説明すると、本実施例2の樹脂侵入防止壁部20に上述のような濃度傾斜部50cの内向き傾斜部が設けられていることにより、ファスナーの製造工程で成形面ファスナー2が冷却されるときに、磁性粒子の含有濃度が大きくなるほど熱収縮量が小さくなる。このため、冷却後の成形面ファスナー2は、冷却時の熱収縮によって、成形面ファスナー2の全体が、左右方向に対して基材部11の幅方向中央部が下方に膨出するように僅かに湾曲した形状を有することがある。
従って、このように冷却時の熱収縮量の違いにより僅かに湾曲した本実施例2の成形面ファスナー2は、金型46のファスナー保持部46aにおける上述のように凸状に湾曲したキャビティ面47に対し、より高い密着性で、より容易に吸着固定することが期待できる。
更にまた、本実施例2の濃度変化部56では、矢印56cで示す前後方向に沿って漸減する長さ方向傾斜部が各分割縦壁部22に設けられている(図16及び図18を参照)。その結果、例えば各分割縦壁部22に長さ方向傾斜部が設けられていない場合に比べて、分割縦壁部22内の合成樹脂の割合を高めることができる。このため、ファスナーの製造工程における成形面ファスナー2の熱収縮時に各分割縦壁部22をより大きく長さ方向に熱収縮させることが期待できる。
それにより、上述の熱収縮時における基材部11と樹脂侵入防止壁部20との間の熱収縮差を小さくすることができる。このため、冷却後の成形面ファスナー2が、例えば前後方向に対して基材部11が樹脂侵入防止壁部20よりも大きく縮んで上方に反り上がるように湾曲する変形を生じ難くして、前後方向にまっすぐに延びる成形面ファスナー2が得られ易くなる。
なお、本実施例2の樹脂侵入防止壁部20において、濃度傾斜部50cの濃度変化部56は、磁性粒子の含有濃度を、上述したように、矢印56aで示す上下方向の下方と、矢印56bで示す左右方向の内向き方向と、矢印56cで示す前後方向における機械方向の下流側方向となる前方との3つの方向に向けて漸減させている。
しかし、本発明では、樹脂侵入防止壁部20の濃度変化部で形成する濃度傾斜(濃度変化)を、例えば図19に示すように、上下方向の下方と、前述の実施例2とは反対の左右方向の外向き方向と、前後方向における機械方向の下流側方向となる前方との3つの方向に向けることも可能である。また、濃度変化部の濃度傾斜を、上下方向の下方と、左右方向の内向き又は外向き方向との2つの方向や、上下方向の下方と、前後方向における機械方向の下流側方向となる前方との2つの方向に向けることも可能である。更に、左右方向の内向き又は外向き方向のみや、前後方向における機械方向の下流側方向となる前方のみの1つの方向に向けることも可能である。
例えば図19に示した第3変形例に係る成形面ファスナー2aでは、樹脂侵入防止壁部20に形成される濃度傾斜部50dが、磁性粒子を最も高い一定の濃度で含有する高濃度部55と、磁性粒子の含有濃度を徐々に漸減させるように変化させる濃度変化部57とを備える。この第3変形例の濃度変化部57は、磁性粒子の含有濃度が矢印57aで示すように下方に向けて漸減する下方傾斜部、及び、含有濃度が前後方向に沿って漸減する長さ方向傾斜部を有するとともに、内側の第1縦壁列21aが外側の第2縦壁列21bよりも多くの磁性粒子を含有するように、磁性粒子の含有濃度を矢印57bで示す左右方向の外側に向けて徐々に減少させる外向き傾斜部を有する。
なお、この第3変形例の濃度変化部57は、前述の実施例2と同様に、例えば樹脂侵入防止壁部20だけでなく、基材部11に跨って形成されていても良いし、例えば高濃度部55が樹脂侵入防止壁部20の全体に設けられている場合には、第3変形例の濃度変化部57を基材部11のみに設けることも可能である。
第3変形例では、上述のように樹脂侵入防止壁部20に、外向き傾斜部を有する濃度傾斜部50dが設けられている。その結果、例えばクッション体の発泡成形時に金型46のファスナー保持部46aのキャビティ面(ファスナー取付面)47に成形面ファスナー2aを取り付けるときに(図12を参照)、成形面ファスナー2aの間隔の狭い左右の第1縦壁列21aを、金型46の磁石48でより強く引き付けることができる。
それにより、この第3変形例に係る成形面ファスナー2aは、成形面ファスナー2aの磁性粒子と金型46の磁石48との間の磁気吸引力により、金型46のファスナー保持部46aに対する成形面ファスナー2aの位置及び向きを、より精度良く且つ円滑に自動的に合わせることができる。
また、この第3変形例に係る成形面ファスナー2aは、例えば金型46におけるファスナー保持部46aの幅寸法が小さくても、そのファスナー保持部46aの幅寸法が、成形面ファスナー2aにおける左右の第1縦壁列21a間の間隔よりも大きく設定されていれば、問題なく対応することが可能である。
図20は、本実施例3に係る成形面ファスナーの基材部及び樹脂侵入防止壁部を拡大して示す要部拡大斜視図である。図21は、同成形面ファスナーの基材部及び樹脂侵入防止壁部の長さ方向に直交する横断面を示す断面図である。図22の(a),(b)及び(c)は、同成形面ファスナーにおける第1縦壁列、連結壁部及び第2縦壁列における幅方向に直交する縦断面をそれぞれ示す断面図である。
本実施例3における成形面ファスナー3の樹脂侵入防止壁部20には、磁性粒子を一定の濃度で含有する高濃度部55aの形成範囲を下方に向けて減少させることによって、濃度傾斜部50eが設けられている。すなわち、本実施例3の濃度傾斜部50eでは、高濃度部55aの形成範囲を下方に向けて減少させることによって、樹脂侵入防止壁部20を基材部11の上面と平行に複数の高さ位置で切断した場合の樹脂侵入防止壁部20の各切断面を見たときに、断面全体における磁性粒子の平均含有濃度を下方に向けて相対的に減少させている。
従って、本実施例3の濃度傾斜部50eは、前述の実施例1及び実施例2の濃度傾斜部50,50cの場合のような含有濃度を実際に減少させる濃度変化部を備えるものではなく、樹脂侵入防止壁部20における基材部11の上面からの高さ寸法が小さくになるにつれて、高濃度部55aの形成範囲を狭くして、磁性粒子の平均含有濃度を減少させることによって形成されている。
より具体的に説明すると、本実施例3において、高濃度部55aにおける合成樹脂に対する磁性粒子の含有濃度(含有割合)は、前述の実施例1や実施例2における高濃度部55と同様に、50wt%に設定されている。なお本発明では、高濃度部55aの含有濃度を、例えば40wt%以上80wt%以下の範囲の任意の大きさに設定することができる。
また、本実施例3の高濃度部55aは、内側の第1縦壁列21aの分割縦壁部22、連結壁部23、及び、外側の第2縦壁列21bの分割縦壁部22のそれぞれで形成される高濃度部55aの形成範囲がそれぞれ異なる。
すなわち、本実施例3の濃度傾斜部50eでは、幅方向に関して、外側の第2縦壁列21bの分割縦壁部22における高濃度部55aが、内側の第1縦壁列21aの分割縦壁部22における高濃度部55aよりも、上下方向における形成範囲を下方に延ばすようにより大きくして形成されている。この場合、内側の第1縦壁列21aから外側の第2縦壁列21bに向けて、高濃度部55aの上下方向における形成範囲を、少しずつ下方に延びるように徐々に増大させている。
更に、本実施例3の濃度傾斜部50eでは、長さ方向に関して、外側の第2縦壁列21bにおいて、各分割縦壁部22の後端部に形成される高濃度部55aが、当該分割縦壁部22の前端部よりも、上下方向における形成範囲を下方に延ばすようにより大きくして設けられている。また、第2縦壁列21bでは、分割縦壁部22の前端部から後端部に向けて、高濃度部55aの上下方向における形成範囲を、少しずつ下方に延びるように徐々に増大させている。
一方、内側の第1縦壁列21aの分割縦壁部22では、高濃度部55aが、分割縦壁部22の後端部寄りに形成されており、分割縦壁部22の前端部には、磁性材料が実質的に含有されていない。
また、本実施例3の連結壁部23では、図22(b)に示すように、比較的大きな高濃度部55aが形成される高濃度連結壁部23aと、高濃度連結壁部23aよりも小さな範囲で高濃度部55aが形成される低濃度連結壁部23bが、前後方向に交互に配されている。
本実施例3の濃度傾斜部50eでは、上述のように高濃度部55aの上下方向における形成範囲が幅方向と長さ方向とに関して変化している。その結果、樹脂侵入防止壁部20を基材部11の上面に対して平行に複数の高さ位置で切断して各切断面における高濃度部55aを比較した場合に、高濃度部55aの形成範囲(面積)が樹脂侵入防止壁部20の下方に向けて減少している。
これにより、各切断面において、磁性粒子が含有されている部分の面積から算出される磁性粒子の含有量を、その切断面全体の面積で除した含有濃度の平均値(すなわち、平均含有濃度)を見たときに、本実施例3の濃度傾斜部50eには、磁性粒子の平均含有濃度が、矢印58aで示すように上方から下方に向けて減少する下方傾斜部が形成されている。
また、本実施例3の濃度傾斜部50eは、高濃度部55aの形成範囲を矢印58aで示すように下方に向けて減少させる下方傾斜部を上述のように備えるとともに、幅方向に関して、高濃度部55aの形成範囲(すなわち、切断面における平均含有濃度)を矢印58bで示すように内側に向けて減少させる内向き傾斜部と、長さ方向に関して、各分割縦壁部22で高濃度部55aの形成範囲(すなわち、切断面における平均含有濃度)を矢印58cで示すように分割縦壁部22の後端部から前端部に向けて減少させる長さ方向傾斜部とを備える。
本実施例3の成形面ファスナー3では、樹脂侵入防止壁部20に、上述のような下方傾斜部、内向き傾斜部、及び長さ方向傾斜部を備える濃度傾斜部50eが設けられている。すなわち、磁性粒子が含まれている樹脂と、磁性粒子が実質的に含まれていない樹脂との境界面を基材部11の上面に対して非平行(好ましくは長さ方向、幅方向のいずれの方向においても非平行)にすることにより、成形面ファスナー3における磁性粒子を含有する部分と磁性粒子を実質的に含有しない非含有部分との密着性が高められている。従って、成形面ファスナー3の製造時等に、合成樹脂のみの部分と磁性粒子が含有されている部分との間に亀裂や破損などを生じ難くして、成形面ファスナー3の生産効率や歩留まりの更なる向上を図ることができる。
なお、本実施例3の成形面ファスナー3では、樹脂侵入防止壁部20に設ける濃度傾斜部50eが、内向き傾斜部を備える代わりに、幅方向に関して高濃度部55aの形成範囲(切断面における平均含有濃度)を外側に向けて減少させる外向き傾斜部を備えていても良い。
また、前述した実施例1〜実施例3、並びに第1変形例〜第3変形例に係る各成形面ファスナー1,1a,1b,2,2a,3において、左右の樹脂侵入防止壁部20は、長さ方向に沿った2列の第1縦壁列21a及び第2縦壁列21bと、第1縦壁列21a及び第2縦壁列21b間の分割縦壁部22を連結する幅方向に沿った連結壁部23とを有して形成されている。
しかし、本発明における左右の樹脂侵入防止壁部は、長さ方向に沿って配される少なくとも1列の縦壁列を有していれば、その他の異なる形態で樹脂侵入防止壁部を形成することも可能である。以下に、樹脂侵入防止壁部の形態の変形例について、それぞれの樹脂侵入防止壁部に実施例1で説明した濃度傾斜部50を設けた場合を例に挙げて、図23〜図28を参照しながら説明する。
例えば図23に第4変形例に係る成形面ファスナー4を示すように、左右の樹脂侵入防止壁部60は、前述の実施例1における樹脂侵入防止壁部20と同様の形状及び大きさで形成されている。
すなわち、第4変形例の樹脂侵入防止壁部60は、縦壁列61として、内側の第1縦壁列61aと外側の第2縦壁列61bとを有するとともに、第1及び第2縦壁列61a,61bの分割縦壁部62を連結する連結壁部63とを有する。更に、第4変形例の第1縦壁列61a及び第2縦壁列61bと連結壁部63とは、前述の実施例1における第1縦壁列21a及び第2縦壁列21bと連結壁部23と実質的に同様の形状及び寸法を備える。
一方、この第4変形例の樹脂侵入防止壁部60では、係合素子12及び横壁部13に対する第1縦壁列61a及び第2縦壁列61bの分割縦壁部62と連結壁部63の相対的な位置関係が、前述の実施例1の場合と異なっている。
すなわち、前述の実施例1の場合、第1縦壁列21a及び第2縦壁列21bの分割縦壁部22は、係合素子12及び横壁部13の長さ方向における位置が、第1縦壁列21aの分割縦壁部22間に形成される間隙25の長さ方向における位置と対応するようにして配されている。
これに対して、この第4変形例における第1縦壁列61a及び第2縦壁列61bの分割縦壁部62は、係合素子12及び横壁部13の長さ方向における位置が、第1縦壁列61aの分割縦壁部62の長さ方向における配設位置と対応するようにして配されている。
言い換えると、この第4変形例における第1縦壁列61aの分割縦壁部62の長さ方向における位置は、前述の実施例1における第2縦壁列21bの分割縦壁部22の長さ方向における位置に対応している。この第4変形例における第2縦壁列61bの分割縦壁部62の長さ方向における位置は、前述の実施例1における第1縦壁列21aの分割縦壁部22の長さ方向における位置に対応している。
この場合、分割縦壁部62の一部が横壁部13の一部に連結されている。更に、分割縦壁部62に連結する横壁部13と、その横壁部13に隣接して配される係合素子12とは、前述の実施例1の場合のように下端部で連結されていることはなく、それぞれ分離した形態で基材部11に立設されている。
この第4変形例のように第1縦壁列61a及び第2縦壁列61bと連結壁部63とを配置することにより、第1縦壁列61aに隣接して配される横壁部13と、第1縦壁列61aの分割縦壁部62とを直接連結して成形面ファスナー4を形成することができる。これにより、相互に連結される第1縦壁列61aの分割縦壁部62と横壁部13とがそれぞれ補強される。
更に、樹脂侵入防止壁部60に磁性粒子を含有させることにより、第1縦壁列61aに隣接する横壁部13にも磁性粒子を容易に含有させることが可能となる。更に樹脂侵入防止壁部60には、前述の実施例1の場合と同様に濃度傾斜部50が設けられているが、横壁部13にも、前述の実施例1の樹脂侵入防止壁部20に形成した濃度傾斜部50を形成することも可能である。また、第4変形例の樹脂侵入防止壁部60と、第1縦壁列61aに隣接する横壁部13には、前述の実施例1の濃度傾斜部50に代えて、前述の実施例2及び実施例3並びに第1変形例〜第3変形例の樹脂侵入防止壁部20に形成した濃度傾斜部50a〜50eの何れかを形成することも可能である。
このような第4変形例に係る成形面ファスナー4によれば、横壁部13の上端部にも磁性粒子を多く含有させることができるため、成形面ファスナー4の上端部分に含まれる磁性粒子の量を多くすることができる。このため、第4変形例の成形面ファスナー4を、金型46の磁石48を埋設したファスナー保持部46aに、より強い吸引力で吸着固定することが可能となる。その結果、成形面ファスナー4をよりしっかりとファスナー保持部46aのキャビティ面47に密着させることができるため、クッション体の発泡成形時に、発泡性樹脂材料が係合領域15に侵入することをより効果的に防止することができる。
次に、図25に第5変形例に係る成形面ファスナー5を示す。この第5変形例において、左右の樹脂侵入防止壁部70は、縦壁列71として、長さ方向に沿って形成される内側の第1縦壁列71a及び外側の第2縦壁列71bを有するとともに、第1縦壁列71a及び第2縦壁列71b間の分割縦壁部72を連結する連結壁部73とを有する。
この場合、第1縦壁列71a及び第2縦壁列71bは、長さ方向に沿って一列に並んで配され、且つ、所定の取付ピッチで間欠的に配される複数の分割縦壁部72をそれぞれ有する。また、第1縦壁列71aの分割縦壁部72と第2縦壁列71bの分割縦壁部72は、互い違いに配されている。
更に、この第5変形例では、第1縦壁列71a及び第2縦壁列71bにおける分割縦壁部72の長さ方向における取付ピッチを前述の実施例1等の場合よりも長く設定し、第1縦壁列71aの分割縦壁部72と第2縦壁列71bの分割縦壁部72とが側面視にて重なり合わないように配置されている。なお、この第5変形例における第1縦壁列71a及び第2縦壁列71bの各分割縦壁部72は、前述の実施例1における分割縦壁部22と同様の形状及び寸法を有する。
この第5変形例における連結壁部73は、第1縦壁列71aに配される分割縦壁部72の前端部又は後端部と、第2縦壁列71bに配される分割縦壁部72の後端部又は前端部とを相互に連結するように、左右方向に対して傾斜した向きで配されている。この場合、各連結壁部73における第1縦壁列71aの分割縦壁部72と第2縦壁列71bの分割縦壁部72との間を斜めに連結する連結長さは、第1縦壁列71a及び第2縦壁列71bの各分割縦壁部72の幅寸法よりも大きく設定されている。
なお、この第5変形例では、上述のように分割縦壁部72の長さ方向における取付ピッチを前述の実施例1等の場合よりも長く設定して、第1縦壁列71aの分割縦壁部72と第2縦壁列71bの分割縦壁部72とが側面視にて重なり合わないように配置されている。しかし、本発明では、その反対に、分割縦壁部の長さ方向における取付ピッチを前述の実施例1等の場合よりも短く設定して、第1縦壁列の分割縦壁部と第2縦壁列の分割縦壁部とが側面視にて重なり合う部分の面積を、実施例1の場合よりも大きく確保することも可能である。この場合、連結壁部は、第1縦壁列に配される分割縦壁部の前端部又は後端部と、第2縦壁列に配される分割縦壁部の後端部又は前端部とを相互に連結するように、左右方向に対して傾斜した向きで配される。
次に、図26に第6変形例に係る成形面ファスナー6を示す。この第6変形例において、左右の樹脂侵入防止壁部80は、縦壁列81として長さ方向に沿って形成される第1縦壁列81a〜第3縦壁列81cと、隣接する第1縦壁列81a及び第2縦壁列81b間の分割縦壁部82並びに隣接する第2縦壁列81b及び第3縦壁列81c間の分割縦壁部82を連結する連結壁部83とを有する。すなわち、この第6変形例に係る樹脂侵入防止壁部80は、前述の実施例1に係る樹脂侵入防止壁部20よりも縦壁列81の列数を1つ多くして形成されている。
この場合、第1縦壁列81aは、樹脂侵入防止壁部80の左右方向において、係合素子12に最も近い内側に配される。第3縦壁列81cは、係合素子12から最も離れた外側に配される。第2縦壁列81bは、第1縦壁列81aと第3縦壁列81cとの間の中間位置に配される。また、第1縦壁列81a〜第3縦壁列81cは、長さ方向に沿って一列に並んで配され、且つ、所定の取付ピッチで間欠的に配される複数の分割縦壁部82をそれぞれ有しており、各縦壁列81の長さ方向に隣接する2つの分割縦壁部82間には間隙が設けられている。
更に、相互に隣接する第1縦壁列81aと第2縦壁列81bの分割縦壁部82は、前述の実施例1の場合と同様に互い違いの位置関係で配されている。また、相互に隣接する第2縦壁列81bと第3縦壁列81cの分割縦壁部82も、互い違いの位置関係で配されており、第1縦壁列81aの分割縦壁部82と第3縦壁列81cの分割縦壁部82とは、長さ方向の対応する位置に配されている。すなわち、第1縦壁列81a〜第3縦壁列81cの分割縦壁部82は、全体的に千鳥状の配置パターンで設けられている。
またこの場合、第1縦壁列81a及び第3縦壁列81cの分割縦壁部82と、第2縦壁列81bの分割縦壁部82とは、左右方向からの側面視において、分割縦壁部82の一部が相互に重なり合うように形成されている。なお、第1縦壁列81a〜第3縦壁列81cの各分割縦壁部82は、前述の実施例1における分割縦壁部22と同様の形状及び寸法を有する。
この第6変形例における連結壁部83は、左右方向に沿って配されており、第1縦壁列81a及び第3縦壁列81cに配される分割縦壁部82の前端部又は後端部と、第2縦壁列81bに配される分割縦壁部82の後端部又は前端部とを相互に連結している。この第6変形例における連結壁部83は、前述の実施例1における連結壁部23と同様の形状及び寸法を有しており、この連結壁部83の幅寸法は、第1縦壁列81a〜第3縦壁列81cの分割縦壁部82の幅寸法よりも大きく設定されている。
次に、図27に第7変形例に係る成形面ファスナー7を示す。この第7変形例において、左右の樹脂侵入防止壁部90は、縦壁列91として長さ方向に沿って形成される第1縦壁列91a〜第3縦壁列91cを有するものの、互いに隣接する縦壁列91間の分割縦壁部92を連結するための連結壁部は設けられていない。
この場合、第1縦壁列91aは、樹脂侵入防止壁部90の左右方向において、係合素子12に最も近い内側に配される。第3縦壁列91cは、係合素子12から最も離れた外側に配される。第2縦壁列91bは、第1縦壁列91aと第3縦壁列91cとの間の中間位置に配される。また、第1縦壁列91a〜第3縦壁列91cは、長さ方向に沿って一列に並んで配され、且つ、所定の取付ピッチで間欠的に配される複数の分割縦壁部92をそれぞれ有しており、各縦壁列91の長さ方向に隣接する2つの分割縦壁部92間には間隙が設けられている。
更に、相互に隣接する第1縦壁列91aと第2縦壁列91bの分割縦壁部92は、互い違いの位置関係で配されている。また、相互に隣接する第2縦壁列91bと第3縦壁列91cの分割縦壁部92も、互い違いの位置関係で配されており、第1縦壁列91aの分割縦壁部92と第3縦壁列91cの分割縦壁部92とは、長さ方向の対応する位置に配されている。すなわち、第1縦壁列91a〜第3縦壁列91cの分割縦壁部92は、全体的に千鳥状の配置パターンで設けられている。
またこの場合、第1縦壁列91a及び第3縦壁列91cの分割縦壁部92と、第2縦壁列91bの分割縦壁部92とは、左右方向からの側面視において、分割縦壁部92の一部が相互に重なり合うように形成されている。特に、第1縦壁列91a〜第3縦壁列91cの各分割縦壁部92は、前述の実施例1の分割縦壁部22よりも前後方向の長さ寸法を大きくして形成されており、隣接する縦壁列91間で分割縦壁部92が重なり合う面積が、より大きく確保されている。
このように第7変形例の成形面ファスナー7では、樹脂侵入防止壁部90が3列の縦壁列91を有するとともに、3列の縦壁列91における長さ寸法の大きな分割縦壁部92が千鳥状の配置パターンで設けられている。この第7変形例の樹脂侵入防止壁部90でも、成形面ファスナー7を金型46のファスナー保持部46aに取り付けてクッション体の発泡成形を行うときに(図12を参照)、クッション体の発泡性樹脂材料が、左右の樹脂侵入防止壁部を越えて係合領域15に侵入することを防止することができる。
すなわち、第7変形例の樹脂侵入防止壁部90には連結壁部が配されていないものの、クッション体の発泡成形時に、発泡性樹脂材料が3列の縦壁列91における分割縦壁部92間の隙間を曲がりながら侵入するものの、その侵入経路は細く曲がりくねっている。このため、発泡性樹脂材料は、成形面ファスナー7の係合領域に到達する前に冷却されて硬化するため、発泡性樹脂材料が樹脂侵入防止壁部90を越えて係合領域に侵入することを防止できる。
なお、この第7変形例の樹脂侵入防止壁部90の縦壁列91は3列で形成されているが、本発明では、樹脂侵入防止壁部90の縦壁列91を2列で形成しても良く、また、4列以上で形成しても良い。更に本発明では、第1縦壁列91a及び第3縦壁列91cの分割縦壁部92と、第2縦壁列91bの分割縦壁部92とが、分割縦壁部92よりも高さ寸法の小さい連結部を介して連結されていても良い。
次に、図28に第8変形例に係る成形面ファスナー8を示す。この第8変形例において、左右の樹脂侵入防止壁部100は、縦壁列101として、長さ方向に沿って形成される内側の第1縦壁列101a及び外側の第2縦壁列101bを有する。なお、この第8変形例の樹脂侵入防止壁部100には、第1縦壁列101a及び第2縦壁列101b間を連結するための連結壁部は設けられていない。
第8変形例における内側の第1縦壁列101aは、長さ方向に沿って切れ目なく連続的に配され、かつ、基材部11から一定の高さ寸法を備えて立設される単一の連続縦壁部103により形成されている。また、第8変形例における外側の第2縦壁列101bは、長さ方向に沿って一列に並んで配され、且つ、所定の取付ピッチで間欠的に配される複数の分割縦壁部102により形成されている。
第8変形例の成形面ファスナー8が上述のような樹脂侵入防止壁部100を有することにより、成形面ファスナー8を金型46のファスナー保持部46aに取り付けてクッション体の発泡成形を行うときに(図12を参照)、クッション体の発泡性樹脂材料が、左右の樹脂侵入防止壁部100を越えて係合領域に侵入することを効果的に防止することができる。
そして、上述したような第4変形例〜第8変形例に係る各成形面ファスナー4,5,6,7,8であっても、左右の樹脂侵入防止壁部60,70,80,90,100に、前述の実施例1の樹脂侵入防止壁部20に形成した濃度傾斜部50が同じように形成されている。また、各成形面ファスナー4,5,6,7,8の樹脂侵入防止壁部60,70,80,90,100には、前述の実施例1の濃度傾斜部50に代えて、前述の実施例2及び実施例3並びに第1変形例〜第3変形例の樹脂侵入防止壁部20に形成した濃度傾斜部50a〜50eの何れかを形成することも可能である。
このように各変形例の樹脂侵入防止壁部60,70,80,90,100が、濃度傾斜部50(又は濃度傾斜部50a〜50eのうちの何れか1つ)を有することにより、磁性粒子を含有する部分と磁性粒子を実質的に含有しない非含有部分との密着性を高めることができる。従って、成形面ファスナー4,5,6,7,8の製造時等に合成樹脂のみの部分と磁性粒子が含有されている部分との間に亀裂や破損などを生じ難くして、成形面ファスナー4,5,6,7,8の生産効率や歩留まりを向上させることができるとともに、前述した種々の効果も得ることができる。