JP6628073B2 - ウイルスワクチン増強剤、IgAの産生促進剤、及びTLR−7の発現促進剤 - Google Patents

ウイルスワクチン増強剤、IgAの産生促進剤、及びTLR−7の発現促進剤 Download PDF

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Description

本発明は、ウイルスワクチン増強剤、IgAの産生促進剤、及びTLR−7の発現促進剤に関する。
疫学研究より、茶を摂取することで、インフルエンザ等のウイルス感染症に感染するリスクを低下させるということが報告されている(非特許文献1)。
例えば、特許文献1には、エピガロカテキンとエピガロカテキンガレートとを所定比で含む免疫賦活剤が開示されており、該免疫賦活剤によると、IgAの産生が促進できることが開示されている。
特許文献2には、茶に含まれる成分であるL−テアニンとエピガロカテキンガレートとをそれぞれ所定量ずつ含む組成物の投与により、全身性免疫が向上し、風邪及びインフルエンザの発症が減少することが記載されている。
特開2011−168579号公報 特開2010−504354号公報
Park et al.,The Jounal of Nutrition. 141.1862−70.(2011)
高齢者は加齢に伴い免疫が低下しているため、より一層、ウイルス感染症に対する免疫の向上が求められる。高齢者のウイルス感染症に対する免疫獲得にはワクチンが使用されるが、免疫が低下している高齢者に対しては、ワクチンによる免疫向上作用が弱い。
そのため、ウイルス感染症に対するワクチンの免疫向上作用をより増強させる必要があるが、特許文献1に記載された免疫賦活剤や、特許文献2に記載された組成物は、この点で十分でない。
また、IgAは、免疫の向上に関連することが知られており、ウイルス感染症を予防するにはウイルス抗原に特異的なIgAの産生を向上させることが必要となる。しかしながら、特許文献1に記載された免疫賦活剤や、特許文献2に記載された組成物は、ウイルス抗原に特異的なIgAの産生を向上するという点で、十分でない。
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、ウイルス感染症に対するワクチンの免疫向上作用の増強効果に優れたウイルスワクチン増強剤、ウイルス抗原に特異的なIgAの産生促進効果に優れたIgAの産生促進剤、及び、ウイルスを認識する受容体であるTLR−7の発現促進剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、べにふうきの茶葉又はべにふうきの抽出物により、ウイルス感染症に対するワクチンの免疫向上作用が増強すること、ウイルス抗原に特異的なIgAの産生が促進すること、及び、TLR−7の発現が促進することを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
(1) べにふうきの茶葉又はべにふうきの抽出物を含有する、ウイルスワクチン増強剤。
(2) インフルエンザウイルス用である、(1)に記載のウイルスワクチン増強剤。
(3) べにふうきの茶葉又はべにふうきの抽出物を含有する、ウイルス抗原に特異的なIgAの産生促進剤。
(4) 前記IgAは、気管支におけるIgAである、(3)に記載のIgAの産生促進剤。
(5) べにふうきの茶葉又はべにふうきの抽出物を含有する、TLR−7の発現促進剤。
(6) メチル化カテキンを含有する、ウイルスワクチン増強剤。
(7) インフルエンザウイルス用である、(6)に記載のウイルスワクチン増強剤。
(8) メチル化カテキンを含有する、ウイルス抗原に特異的なIgAの産生促進剤。
(9) 前記IgAは、気管支におけるIgAである、(8)に記載のIgAの産生促進剤。
(10) メチル化カテキンを含有する、TLR−7の発現促進剤。
本発明によれば、ウイルス感染症に対するワクチンの免疫向上作用の増強効果に優れたウイルスワクチン増強剤、ウイルス抗原に特異的なIgAの産生促進効果に優れたIgAの産生促進剤、及び、ウイルスを認識する受容体であるTLR−7の発現促進剤を提供することができる。
「ベにふうき群」、「やぶきた群」、「Cont.PBS群」及び「Cont.vaccine群」の屠殺後に回収したそれぞれの血清中のIgG抗体量及びIgA抗体量のグラフを示す図である。(a)は、血清中のIgG抗体量のグラフを示し、(b)は、血清中のIgA抗体量のグラフを示す。 「ベにふうき群」、「やぶきた群」、「Cont.PBS群」及び「Cont.vaccine群」の屠殺後に回収したそれぞれの血清中のIgG抗体価及びIgA抗体価のグラフを示す図である。(a)は、血清中のIgG抗体価のグラフを示し、(b)は、血清中のIgA抗体価のグラフを示す。 「ベにふうき群」、「やぶきた群」、「Cont.PBS群」及び「Cont.vaccine群」の屠殺後に回収したそれぞれの気管支肺胞洗浄液中のIgG抗体量及びIgA抗体量のグラフを示す図である。(a)は、気管支肺胞洗浄液中のIgG抗体量のグラフを示し、(b)は、気管支肺胞洗浄液中のIgA抗体量のグラフを示す。 「ベにふうき群」、「やぶきた群」、「Cont.PBS群」及び「Cont.vaccine群」の屠殺後に回収したそれぞれの気管支肺胞洗浄液中のIgG抗体価及びIgA抗体価のグラフを示す図である。(a)は、気管支肺胞洗浄液中のIgG抗体価のグラフを示し、(b)は、気管支肺胞洗浄液中のIgA抗体価のグラフを示す。 「ベにふうき群」、「やぶきた群」、「Cont.PBS群」及び「Cont.vaccine群」の屠殺後に摘出した肺及びパイエル板中のIgA産生細胞の数のグラフを示す図である。(a)は、肺中のIgA産生細胞の数のグラフを示し、(b)は、パイエル板中のIgA産生細胞の数のグラフを示す。 「ベにふうき群」、「やぶきた群」、「Cont.PBS群」及び「Cont.vaccine群」の屠殺後に摘出した脾臓及び肺中のTLR−7の発現量のグラフを示す図である。(a)は、脾臓のリンパ球についてのTLR−7の発現量を示したグラフである。(b)は、脾臓のリンパ球のうち、CD11c細胞についてのTLR−7の発現量を示したグラフである。(c)は、肺のリンパ球についてのTLR−7の発現量を示したグラフである。(d)は、肺のリンパ球のうち、CD11c細胞についてのTLR−7の発現量を示したグラフである。 「ベにふうき群」、「やぶきた群」、「Cont.PBS群」及び「Cont.vaccine群」の屠殺後に摘出した脾臓のCD8T細胞割合のグラフを示す図である。
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
<ウイルスワクチン増強剤>
本発明のウイルスワクチン増強剤は、べにふうきの茶葉又はべにふうきの抽出物を含有する。これにより、本発明のウイルスワクチン増強剤は、ウイルスワクチンの増強効果に優れる。なお、本明細書において、「ウイルスワクチン」とは、ウイルス感染症に対するワクチンを意味する。また、「ウイルスワクチン増強」とは、ウイルスワクチンにより向上した免疫を増強することを意味する。
べにふうきの茶葉又はべにふうきの抽出物には、メチル化カテキンが多く含まれている。このメチル化カテキンは、TLR(Toll様受容体)−7細胞である樹状細胞中のTLR−7の発現量を増加させる。TLR−7の発現量が増加すると、ウイルス抗原に特異的なIgAを産生するB細胞が活性化し、ウイルスワクチンの増強が促進する。これにより、本発明のウイルスワクチン増強剤は、ウイルスワクチン増強効果に優れるものと推測される。
また、本発明のウイルスワクチン増強剤に含まれるべにふうきの茶葉又はべにふうきの抽出物は、CD8T細胞におけるIL−2の産生を促進することができる。本発明のウイルスワクチン増強剤は、これにより、ウイルスワクチン増強効果を促進することができる。
また、本発明のウイルスワクチン増強剤は、上述のとおり、メチル化カテキンによりウイルスワクチン増強効果に優れるものである。そのため、本発明のウイルスワクチン増強剤は、べにふうきの茶葉又はべにふうきの抽出物を含むものに限定されず、メチル化カテキンを含有するもの、又は、メチル化カテキンからなるものであってもよい。
本発明のウイルスワクチン増強剤に含まれるべにふうきは、べにふうきの茶葉又はべにふうきの抽出物のいずれであってもよい。また、本発明のウイルスワクチン増強剤は、べにふうきの茶葉又はべにふうきの抽出物の両方を含んでもよく、いずれか一方のみ含んでもよい。また、本発明のウイルスワクチン増強剤は、べにふうきの茶葉又はべにふうきの抽出物以外の成分を含んでもよく、べにふうきの茶葉又はべにふうきの抽出物のみにより構成されてもよい。
本発明のウイルスワクチン増強剤に含まれるべにふうきの茶葉又はべにふうきの抽出物には、メチル化カテキンが含まれる。本発明のウイルスワクチン増強剤におけるメチル化カテキンの含有量は、特に限定されないが、ウイルスワクチン増強効果に優れる点で、固形分含有量で、1g/100g以上であることが好ましく、1.5g/100g以上であることがより好ましく、2g/100g以上であることが更に好ましい。また、本発明のウイルスワクチン増強剤に含まれるメチル化カテキンの量の上限は、特に限定されず、例えば、固形分含有量で、3g/100g以下であってもよい。なお、本発明のウイルスワクチン増強剤中のメチル化カテキンの固形分含有量は、液体クロマトグラフィーで測定する。
メチル化カテキンの種類は、特に限定されず、例えば、エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート、エピカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート、エピカテキン−3−O−(4−O−メチル)ガレート、エピガロカテキン−3−O−(4−O−メチル)ガレート、ガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート、カテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート、カテキン−3−O−(4−O−メチル)ガレート、ガロカテキン−3−O−(4−O−メチル)ガレート、エピガロカテキン−3−O−メチルエチルガレート、エピカテキン−3−O−メチルエチルガレート、エピカテキン−3−O−(3,5−O−ジメチル)ガレート、これらの異性化体等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のウイルスワクチン増強剤は、メチル化カテキン以外のカテキン類を含んでもよく、含まなくてもよい。このようなカテキン類としては、特に限定されないが、例えば、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキン、エピガロカテキンガレート、エピカテキン、ガロカテキンカレートエピカテキンガレート、カテキンガレート等が挙げられる。これらは、単独で含まれてもよく、2種以上を含んでもよい。
本発明のウイルスワクチン増強剤は、ウイルスを認識するTLR−7の発現を向上させるため、対象とするウイルスの用途は、特に限定されないが、特に、ウイルスワクチン増強効果が優れることから、インフルエンザウイルス用のウイルスワクチン(例えば、インフルエンザワクチンヘマグルチニン等)増強剤であることが好ましい。ただし、これに限定されず、例えば、ラッサ熱ウイルス、ノロウイルス、風疹ウイルス、ポリオウイルス、エボラウイルス、黄熱ウイルス、C型肝炎ウイルス等のウイルス用のウイルスワクチン増強剤として用いてもよい。
べにふうきの茶葉の形状は、どのような形状であってもよく、例えば、方形状、円形状等に裁断したものであってもよい。また、茶葉を粉砕して粒状に丸めて成形された粉末状の茶葉であってもよい。
べにふうき抽出物は、従来の公知の方法により抽出することができる。例えば、べにふうきの茶葉を50〜100℃、5〜20分間、抽出することができる。また、抽出に使用する溶媒は、特に限定されず、例えば、水、エタノール、ヘキサン、イソプロピルアルコール、液化炭酸ガス等であってもよい。
上述の抽出液に、従来の公知の種々の成分を配合してもよく、配合しなくてもよい。そのような公知の成分としては、例えば、香料、酸味料(アスコルビン酸、無水クエン酸等)のほか、安定剤、増粘剤、乳化剤、pH調整剤(重曹等)を任意に使用できる。これら成分はどのように配合してもよく、例えば、溶媒に抽出物を抽出する前に配合してもよく、溶媒に抽出物を抽出した後に配合してもよい。
本発明のウイルスワクチン増強剤は、どのような形態で使用してもよく、例えば、上記のべにふうきの茶葉又はべにふうきの抽出物をそのままウイルスワクチン増強剤として使用してもよい。あるいは、べにふうきの茶葉又はべにふうきの抽出物を加工したものであってもよい。加工する増強剤の形状は、錠剤、顆粒剤、カプセル剤等の種々の形状であってもよく、また、液体状であってもよい。あるいは、茶抽出物を粉末化し、凍結乾燥させた状態ものであってもよい。増強剤の加工を行う場合、一般に使用される結合剤、包含剤、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、湿潤剤のような添加剤を含有してもよい。
本発明のウイルスワクチン増強剤を液体状とする場合、例えば、容器に収容された形態にすることができる。液体状のウイルスワクチン増強剤が容器に収容された場合、その量は特に限定されず、例えば、1容器当たり50ml〜3000mlであってもよいが、ウイルス増強の効果と摂取又は投与する頻度のバランスの観点から、1容器当たり100〜2000mlであることが好ましく、1容器当たり200〜1000mlであることが更に好ましく、1容器当たり300〜600mlであることが最も好ましい。
本発明のウイルスワクチン増強剤の摂取又は投与方法は、特に限定されず、例えば、経口であってもよく、非経口であってもよい。経口摂取又は投与の方法は、特に限定されず、錠剤、顆粒剤、カプセル剤等に加工したものや、あるい加工していないものをそのまま経口摂取又は投与することができる。また、非経口摂取又は投与の方法は、特に限定されず、注射、吸入等の方法により、摂取又は投与することができる。ウイルスワクチン増強剤の摂取又は投与は、ウイルスワクチンを接種する前(例えば、ウイルスワクチンの接種の1〜30日前)に行ってもよく、あるいは、ウイルスワクチンを接種した後(例えば、ウイルスワクチンの接種の1〜30日後)に行ってもよく、ウイルスワクチンの接種と同時に行ってもよい。なお、本発明のウイルスワクチン増強剤の摂取又は投与は、ウイルスワクチンの接種と同様の方法で摂取又は投与してもよく、異なる方法で摂取又は投与してもよい。また、本発明のウイルスワクチン増強剤は、連続して継続的に摂取又は投与してもよく、単発の摂取又は投与であってもよい。本発明のウイルスワクチン増強剤を継続的に摂取又は投与を行う場合、1日当たりの摂取又は投与量は、特に限定されず、目的やウイルスワクチンの量等に応じて適切に選択することができる。
<IgAの産生促進剤>
本発明のIgAの産生促進剤は、べにふうきの茶葉又はべにふうきの抽出物を含有する、ウイルス抗原に特異的なIgAの産生促進剤である。本発明のIgAの産生促進剤は、これにより、IgAの産生促進効果に優れる。本発明のIgAの産生促進剤は、上述のウイルスワクチン増強剤と同様のものを用いることができる。
本発明のIgAの産生促進剤におけるウイルス抗原は、特に限定されないが、特に、IgAの産生促進効果が優れることから、インフルエンザウイルス抗原(例えば、インフルエンザワクチンヘマグルチニン等)であることが好ましい。ただし、これに限定されず、例えば、ラッサ熱ウイルス、ノロウイルス、風疹ウイルス、ポリオウイルス、エボラウイルス、黄熱ウイルス、C型肝炎ウイルス等のウイルス抗原であってもよい。
IgAはウイルス抗原に特異的なものであれば、特に限定されず、IgAはウイルス抗原に特異的なIgAが存在する器官(例えば、口腔、鼻腔、呼吸器官、消化器官等)、組織、あるいは細胞に存在するものであれば、どのようなものであってもよい。特に、本発明のIgAの産生促進剤は、呼吸器官のうち、気管支におけるIgAの産生の促進に好適に用いることができる。
本発明のIgAの産生促進剤は、ウイルス抗原に特異的なIgAの産生を促進することから、ウイルス感染症(例えば、ラッサ熱ウイルス、ノロウイルス、風疹ウイルス、ポリオウイルス、エボラウイルス、黄熱ウイルス、C型肝炎ウイルス等)の予防又は治療の効能を有する。そのため、本発明のIgAの産生促進剤は、ウイルス感染症の予防又は治療に用いることができる。
本発明のIgAの産生促進剤は、上述のとおり、ウイルスワクチン増強剤と同様のものを用いることができるが、他方で、ウイルス感染症の予防又は治療に適しているため、その摂取又は投与は、本発明のIgAの産生促進剤を単独で日常的に摂取又は投与を行うことが好ましい。より具体的には、例えば、本発明のIgAの産生促進剤が液体状である場合、ウイルス感染症の予防又は治療に適していることから、単独で1日当たり50〜100mlの量を摂取又は投与することが好ましく、単独で1日当たり100〜800mlの量を摂取又は投与することがより好ましく、単独で1日当たり300〜600mlの量を摂取又は投与することが更に好ましい。
<TLR−7の発現促進剤>
本発明のTLR−7の発現促進剤は、べにふうきの茶葉又はべにふうきの抽出物を含有する。本発明のTLR−7の発現促進剤は、これにより、TLR−7の発現促進効果に優れる。本発明のTLR−7の発現促進剤は、上述のウイルスワクチン増強剤と同様のものと用いることができる。
本発明のTLR−7の発現促進剤により、TLR−7の発現が促進される器官、組織、細胞等の箇所は、特に限定されない。TLR−7の発現を促進する器官は、例えば、免疫器官としては脾臓が挙げられ、粘膜を有しかつ、感染の標的となる臓器としては、口腔、鼻腔、呼吸器官、腸、胃、消化管、肛門、陰茎、膣等が挙げられ、またワクチン接種を行う場合のある器官としては、筋肉等が挙げられる。
本発明のTLR−7の発現促進剤は、TLR−7の発現促進効果に優れるが、TLR−7はウイルスを認識する受容体であるため、ウイルス感染症(例えば、ラッサ熱ウイルス、ノロウイルス、風疹ウイルス、ポリオウイルス、エボラウイルス、黄熱ウイルス、C型肝炎ウイルス等)の予防又は治療の効能を有する。そのため、本発明のTLR−7の発現促進剤は、ウイルス感染症の予防又は治療に用いることができる。
本発明のTLR−7の発現促進剤は、上述のとおり、ウイルスワクチン増強剤と同様のものを用いることができるが、他方で、ウイルス感染症の予防又は治療に適しているため、その摂取又は投与は、本発明のTLR−7の発現促進剤を単独で日常的に摂取又は投与を行うことが好ましい。より具体的には、例えば、本発明のTLR−7の発現促進剤が液体状である場合、ウイルス感染症の予防又は治療に適していることから、単独で1日当たり50〜100mlの量を摂取又は投与することが好ましく、単独で1日当たり100〜800mlの量を摂取又は投与することがより好ましく、単独で1日当たり300〜600mlの量を摂取又は投与することが更に好ましい。
<べにふうきのマウスに対する投与試験>
11週齢のBALB/c雌マウスを1週間の予備飼育し、その後、平均体重が等しくなるように、実施例1に係る「ベにふうき群」、比較例1に係る「やぶきた群」、対照例1に係る「Cont.PBS群」、対照例2に係る「Cont.vaccine群」の4群(それぞれ、n=10)に分けた。
実施例1に係る「ベにふうき群」は、インフルエンザワクチンを接種させ、かつ、1質量%べにふうき含有食を摂食させるマウスの群である。
比較例1に係る「やぶきた群」は、インフルエンザワクチンを接種させ、かつ、1質量%やぶきた含有食を摂食させるマウスの群である。
対照例1に係る「Cont.PBS群」は、インフルエンザワクチンの代わりにPBS(リン酸緩衝生理食塩水)を接種させ、かつ、普通食(AIN−93G食)を摂食させるマウスの群である。
対照例2に係る「Cont.vaccine群」は、インフルエンザワクチンを接種させ、かつ、普通食(AIN−93G食)を摂食させるマウスの群である。
上記4群に分けると同時に、それぞれの群に対して、普通食、やぶきた食、又はべにふうき食の摂食を開始した。なお、摂食は、それぞれの群のマウスの屠殺が行われる12時間前まで行い、4g/日の量で行った。摂食開始から2週間後に、インフルエンザワクチンヘマグルチニン(HA)相当1mg/200mL PBS、又はPBSをそれぞれ200mL皮下注射し、初回免疫を行った。
初回免疫の2週間後に、追加免疫を行った。追加免疫の9日後にマウスの屠殺を行い、血清、気管支肺胞洗浄液(BALF;bronchoalveolar lavage fluid)を回収した。また、屠殺後のマウスから、脾臓、肺、パイエル板を摘出した。
<IgA及びIgGについての評価>
ELISA法により、上記回収後の血清、気管支肺胞洗浄液のIgA抗体量及びIgG抗体量並びにIgA抗体価及びIgG抗体価を測定し、体液性免疫及び細胞性免疫に関与する細胞の数及び割合をフローサイトメーターにて測定した。その結果を図1〜図4に示す。図1中、(a)は、血清中のIgG抗体量を示し、(b)は、血清中のIgA抗体量を示す。また、図2中、(a)は、血清中のIgG抗体価を示し、(b)は、血清中のIgA抗体価を示す。図3中、(a)は、気管支肺胞洗浄液中のIgG抗体量を示し、(b)は、気管支肺胞洗浄液中のIgA抗体量を示す。また、図4中、(a)は気管支肺胞洗浄液中のIgG抗体価を示し、(b)は、気管支肺胞洗浄液中のIgA抗体価を示す。
また、摘出後のそれぞれの群の肺、パイエル板中のIgA産生細胞の数を、抗IgA抗体による染色を行いフローサイトメーターにより測定した。その結果を図5に示す。図5中、(a)は、肺中のIgA産生細胞の数を示し、(b)は、パイエル板中のIgA産生細胞の数を示す。
図1、2に示すように、血清中のIgG抗体量及びIgA抗体量は、対照例2、比較例1、実施例1のいずれにおいても、差は見られなかった。
図3(a)に示すように、気管支肺胞洗浄液中の実施例1のIgGの抗体量は対照例2の抗体量と比較して、有意に減少していた。また、図4(a)に示すように、実施例1のIgG抗体価は、実施例1、比較例1、対照例2の間で差は見られなかった。他方、図3(b)に示すように、実施例1のIgA抗体量は、増加傾向にあり、図4(b)に示すように、実施例1においてはIgAの割合が有意に増加しており、実施例1においては、対照例2、比較例1と比較して、抗原(HA)に特異的なIgAが全体的に著しく増加していることがわかった。
図5(a)に示すように、肺中のIgA産生細胞の数は、実施例1の方が比較例1より有意に多かった。また、図5(b)に示すように、パイエル板中のIgA産生細胞の数は、実施例1と対照例2の間で有意な差が見られた。
以上に示したとおり、実施例1に係る「べにふうき群」は、比較例1に係る「やぶきた群」より、特に、気管支肺胞洗浄液中において、インフルエンザワクチンヘマグルチニン(HA)に対するIgAの抗体価が増加した。ウイルスに感染する際は、気道から感染するため、気管支において、HAに対するIgAの抗体価が増えたことは、ウイルスワクチンの効果が増強したことを意味する。すなわち、これらのことから、べにふうきは、やぶきたと比較して、ウイルス抗原に特異的なIgAの産生を促進し、優れたウイルスワクチンの増強効果を有することわかった。
なお、図3(a)に示すように、実施例1の気管支肺胞洗浄液中のIgG抗体量は、対照例2と比較して有意に減少したにもかかわらず、図4(a)に示すように、気管支肺胞洗浄液中のIgG抗体価は対照例2と差がなかった。このことは、実施例1の気管支肺胞洗浄液中ではIgGの力価が増えていることを示し、べにふうきは、感染後の免疫向上にも有効であることがわかった。
<TLR−7の発現量の評価>
摘出後のそれぞれの群の脾臓中及び肺中のTLR−7の発現量の評価を行った。TLR−7の発現量は、フローサイトメーターにより測定した。その結果を、図6に示す。図6中、(a)は、脾臓のリンパ球についてのTLR−7の発現量を示したグラフである。図6中、(b)は、脾臓のリンパ球のうち、CD11c細胞についてのTLR−7の発現量を示したグラフである。図6中、(c)は、肺のリンパ球についてのTLR−7の発現量を示したグラフである。図6中、(d)は、肺のリンパ球のうち、CD11c細胞についてのTLR−7の発現量を示したグラフである。
図6(a)より、脾臓のリンパ球において、実施例1は、対照例2より有意にTLR−7の発現が促進したことが確認された。他方、比較例1は、脾臓のリンパ球において、TLR−7の発現量が、対照例2に対して有意差がなかった。また、図6の(c)より、肺中のリンパ球において、実施例1は、比較例1及び対照例2より、有意にTLR−7の発現が促進したことが確認された。
図6(b)より、脾臓のリンパ球のうち、CD11c細胞において、実施例1は、対照例2及び比較例1より有意にTLR−7の発現が促進したことが確認された。また、比較例1は、TLR−7の発現量が、対照例2との有意差がなかった。また、図6の(d)より、肺中のリンパ球のうち、CD11c細胞において、実施例1は、対照例1より、有意にTLR−7の発現が促進したことが確認された。他方、比較例1は、肺中のリンパ球のうち、CD11c細胞において、TLR−7の発現量が対照例1に対して有意差がなかった。
この結果より、「べにふうき」は、「やぶきた」より、CD11c細胞である樹状細胞において、TLR−7の発現量を促進させることがわかった。TLR−7は、ウイルスに対するセンサーの役割を担う受容体である。
以上で述べたことから、CD11c細胞である樹状細胞中のTLR−7の発現量が増加することで、ウイルス抗原に特異的なIgAを産生するB細胞が活性化し、ウイルスワクチンの増強が促進されるものと推測される。
「べにふうき」と「やぶきた」は、いずれもカテキン類を含むが、「べにふうき」は、「やぶきた」より、メチル化カテキンの量が多い。そのため、上記の「べにふうき」のウイルスワクチンの増強効果、ウイルス抗原に特異的なIgAの産生の促進効果、及び、TLR−7の発現促進効果は、メチル化カテキンによるものであると推測される。
<CD3CD8細胞割合の評価>
摘出後のそれぞれの群の脾臓中のCD3CD8細胞割合の評価を行った。その結果を、図7に示す。CD3CD8細胞割合は、フローサイトメーターにより測定した。
図7に示すように、実施例1は、対照例1と比較して、有意に脾臓中のCD3CD8細胞割合が増加した。CD8T細胞は、細胞傷害性T細胞であり、CD8T細胞の増加は、ウイルス感染症に対する免疫が向上したことを示す。これらのことから、「べにふうき」は、CD8T細胞を増加させることで、ウイルス感染症に対する免疫を向上させることがわかった。

Claims (10)

  1. べにふうきの茶葉又はべにふうきの抽出物を含有し、前記べにふうきの茶葉又はべにふうきの抽出物はメチル化カテキンを含有する、ウイルスワクチン療法の効果増強剤。
  2. インフルエンザウイルス用である、請求項1に記載のウイルスワクチン療法の効果増強剤。
  3. べにふうきの茶葉又はべにふうきの抽出物を含有し、前記べにふうきの茶葉又はべにふうきの抽出物はメチル化カテキンを含有する、ウイルス抗原に特異的なIgAの産生促進剤。
  4. 前記IgAは、気管支におけるIgAである、請求項3に記載のIgAの産生促進剤。
  5. べにふうきの茶葉又はべにふうきの抽出物を含有し、前記べにふうきの茶葉又はべにふうきの抽出物はメチル化カテキンを含有する、TLR−7の発現促進剤。
  6. メチル化カテキンを含有する、ウイルスワクチン療法の効果増強剤。
  7. インフルエンザウイルス用である、請求項6に記載のウイルスワクチン療法の効果増強剤。
  8. メチル化カテキンを含有する、ウイルス抗原に特異的なIgAの産生促進剤。
  9. 前記IgAは、気管支におけるIgAである、請求項8に記載のIgAの産生促進剤。
  10. メチル化カテキンを含有する、TLR−7の発現促進剤。
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