JP5101795B2 - 免疫モジュレーターとしての全細菌細胞 - Google Patents

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Description

本発明は免疫モジュレーター、特に細胞性免疫応答を変調するワクチン、およびその使用に関する。
ワクチンおよび他の免疫モジュレーターは、病気からの罹患率および死亡率を減少させる際に大きな影響力を有する。ほとんどの現在のワクチンによって誘導される一次免疫性は体液性免疫応答によって媒介されているようである。結核およびリーシュマニア症のような細胞性免疫応答を必要とし得る病気では、現在、一様に効果的な入手可能なワクチンはない。
典型的には、アジュバントがワクチンに添加される。アジュバントの役割は、ワクチンの特異的抗原に対する身体の免疫応答を増強することである。通常使用されるアジュバントは、典型的には、体液性免疫応答を生じるが、細胞媒介免疫応答を生じない。加えて、アルミニウムアジュバントは、例えば、無菌性膿瘍、紅斑、腫脹、皮下小節、肉芽腫性炎症および接触過敏症のようなネガティブな副作用を引き起こしかねない。
ワクチンまたは他の免疫モジュレーターは、細胞性免疫応答、特に、Tヘルパー細胞応答、例えば、Tヘルパー細胞1(Th1)およびTヘルパー細胞2(Th2)応答を修飾することが求められている。
誕生から死亡に至るまで、免疫系は環境との接触を通じて学習され、一定に刺激され、調節される。感染症を予防するための現代の都会化および公衆健康の尺度により、実質的にこのような暴露が排除され、アレルギーおよび腫瘍性疾患のような病気が予期せず生じた。無害で有用な環境細菌の死菌懸濁液の使用を通じて環境の有用な影響を回復することで、免疫系の正常なバランスを矯正することができ、従って、病気の治療の際および/または健康な免疫系を促進する際に、治療的および/または予防的に作用することができる。
従って、本発明は、放線菌類のRhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurelle属およびNocardioides属のいずれか1つからの、被験者に投与された細菌の全細胞が、免疫系、特に被験者の細胞免疫系の修飾を誘導できるという驚くべき発見に基づいている。
本明細書中で用いられる用語「細胞免疫系」は、Tリンパ球の存在に依存した細胞媒介免疫応答を含む。用語「Tリンパ球」は、細胞傷害性Tリンパ球、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞および調節T細胞を含む。細胞媒介免疫応答の修飾は、例えば、免疫系アンバランスおよび免疫過敏症を含む細胞媒介免疫障害を克服するのに用いることができる。
本明細書中で用いられる用語「変調する(modulate)」、「修飾する(modify)」、「修飾(modification)」およびその他の派生語は、細胞免疫系の成分または複数成分を下方調節し、阻害し、誘導し、刺激し、上方調節し、改変し、またはそれに影響することを意味する。
[本発明の詳細な態様]
1つの態様において、本発明は、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物を提供する。
本明細書中で用いられる用語「免疫モジュレーター」は、対象の細胞免疫系を変調する物質を意味する。
本明細書中で用いられる用語「全細胞」は、無傷、または実質的に無傷の細菌を意味する。特に、本明細書中で用いられる用語「無傷(intact)」は、特異的に処理されて、それから1以上の構成要素を除去されていない全細胞、特に生きた全細胞および/または細菌に存在する構成要素の全てよりなる細菌を意味する。本明細書中で用いられる用語「実質的に無傷」は、細菌を得るのに用いられる単離および/または精製プロセスの結果、例えば、細胞が僅かに修飾されおよび/または細胞の構成要素の1以上が除去されるかもしれないが、そのような修飾および/または除去が起こる程度が有意でないことを意味する。特に、本発明による実質的に無傷の細胞は、それから1以上の構成要素を除去するために特異的に処理されていない。
細菌細胞の個々の構成要素を用いて、アジュバント効果を誘導することが提案されているが、本発明に先立っては、細胞性免疫応答を変調するためのRhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞の使用は考えられていなかった。驚くべきことに、前記属からの細菌の全細胞を用いることによって、細胞免疫系の変調を行うことができることが判明した。前記細菌の前記全細胞の投与によって引き起こされた細胞性免疫応答の変調は、有利には、細菌の個々の構成要素の投与によって誘導された応答と比較して長く継続することができる。
好ましくは、本発明による組成物は、1を超える全細胞を含み、より好ましくは複数の全細胞を含む。
さらなる態様において、本発明は、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物であって、使用時にその免疫モジュレーター組成物が細胞性免疫応答を変調する組成物を提供する。
もう1つの態様において、本発明は、抗原およびアジュバントを含む免疫モジュレーター組成物であって、前記アジュバントはRhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞を含む組成物を提供する。
もう1つの態様において、本発明は、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞および、必要に応じて任意に、医薬上許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む医薬組成物であって、使用時にその免疫モジュレーター組成物が細胞性免疫応答を修飾する組成物を提供する。
本発明は、なおさらに、本発明の医薬組成物の製法であって、本発明の化合物の1以上を医薬上許容される希釈剤、賦形剤または担体と混合するステップを含む方法を提供する。
さらなる態様において、本発明は、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞、および少なくとも1つの抗原または抗原決定基を含む免疫モジュレーター組成物および/または医薬組成物を提供する。
適当には、前記抗原または抗原決定基は以下の、BCG(CalmetteおよびGuerinのバチルス)ワクチン、ジフテリアトキソイドワクチン、ジフテリア/破傷風/百日咳(DTPまたはTriple)ワクチン、百日咳ワクチン、破傷風トキソイドワクチン、麻疹ワクチン、流行性耳下腺炎ワクチン、風疹ワクチン、OPV(経口ポリオワクチン)、Mycobacterium Vaccae、または(GB0025694.1に教示された)その部分、およびジェネリックプラスモジウム抗原、例えば、マラリア寄生虫抗原の1以上からの抗原または抗原決定基とすることができる。
適当には、免疫モジュレーター組成物および/または医薬組成物は2以上のそのような抗原または抗原決定基を含むことができる。
もう1つの態様において、本発明は、抗原または抗原決定基およびアジュバントを含む免疫モジュレーター組成物であって、前記抗原または抗原決定基が、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞を含む組成物を提供する。
細菌の全細胞が抗原または抗原決定基として機能する場合、前記組成物は、適当には、少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つの、より好ましくは少なくとも3つのさらなる抗原または抗原決定基を含むことができる。
本発明は、さらに、感染(例えば、細菌、ウイルス、例えば、ウマサルコイド、性器いぼ、および頚部の癌腫に先行する子宮頚部の形成異常を含むパピローマウイルスによって引き起こされる感染、または寄生虫感染、例えば、マラリア、トリバノソーマ症、リーシュマニア症およびトキソプラズマ症)、および/または、感染、ストレス、例えば、大外傷ストレス(major trauma stress)、心理社会的ストレスおよび慢性ストレス、アレルギー(例えばアレルギー性喘息を含む喘息、枯草熱(hayfever)、アレルギー性皮膚炎(湿疹)、アナフィラキシーショック、植物の接触または摂取に対するアレルギー、イラクサおよび昆虫刺傷のような刺傷および小昆虫(midge)、例えば、(ウマにおけるスウィートイッチ(Sweet Itch)を引き起こす)Culicoidesのような昆虫咬傷に対するアレルギー、細胞性肺気腫(heaves)、COPDおよび癌(例えば、メラノーマまたは腺癌)、に伴う免疫学的異常;免疫系不調和(例えば、子供および老人における免疫系不調和)および手術後ストレスおよび感染の1以上の治療または予防用の医薬の製造における、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用を提供する。老人における免疫系不調和は、免疫老化ということができる。
本発明は、さらに、ウイルス感染、例えば、ウマサルコイド、性器いぼ、および頚部の癌腫に先行する子宮頚部の形成異常を含むパピローマウイルスによって引き起こされる感染の1以上の治療または予防用の医薬の製造における、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用を提供する。1つの態様において、本発明は、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞、および少なくとも1つの抗原または抗原決定基を含み、前記抗原または抗原決定基はウマパピローマウイルスのウイルス抗原である免疫モジュレーター組成物および/または医薬組成物を提供する。
本発明は、さらに、例えばマラリア、トリパノソーマ症、リーシュマニア症およびトキソプラズマ症のような1以上の寄生虫感染症の治療または予防用の医薬の製造における、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用を提供する。
本発明は、さらに、例えば、大外傷ストレス、心理社会的ストレスおよび/または慢性ストレスのようなストレスの治療または予防用の医薬の製造における、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用を提供する。
本発明は、さらに、喘息(アレルギー性喘息を含む)、枯草熱、アレルギー性皮膚炎(湿疹)、アナフィラキシーショック、植物の接触または摂取に対するアレルギー、イラクサおよび昆虫刺創のような刺創、および小昆虫、例えばCulicoides(これはウマにおいてスウィートイッチ(Sweet Itch)を引き起こす)のような昆虫咬傷に対するアレルギーの1以上の治療または予防用の医薬の製造における、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用を提供する。好ましくは、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物または医薬組成物は、アレルギー性喘息を含む喘息、および小昆虫、例えばCulicoides(これはウマにおいてスウィートイッチ(Sweet Itch)を引き起こす)のような昆虫咬傷に対するアレルギーの治療または予防用の医薬の製造で用いる。
本発明は、さらに、特にウマにおける細胞性肺気腫および/またはCOPDの1以上の治療または予防用の医薬の製造における、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用を提供する。
本発明は、さらに、メラノーマおよび/または腺癌の治療または予防用の医薬の製造における、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用を提供する。
本発明は、さらに、老人における免疫系不調和の治療または予防用の医薬の製造における、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用を提供する。典型的には、本発明のこの態様による免疫モジュレーター組成物または医薬組成物は免疫エンハンサーであってよい。
本発明は、さらに、例えば、成長の増強または飼料資化効率の増加をもたらし得る免疫系増強用の医薬組成物の製造における、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用を提供する。典型的には、本発明のこの態様による免疫モジュレーター組成物または医薬組成物は免疫エンハンサーであってよい。有利には、本発明の免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を用いて、現在、家畜の成長を促進するのに用いられている抗生物質を置き換えることができる。適当には、本発明の免疫モジュレーター組成物は、単独でまたは他の治療と組み合わせて用いることができる。本明細書中で用いられる「家畜」とは、いずれの農場動物もいう。好ましくは、家畜は家禽、豚(子豚を含む)、羊(子羊を含む)、牝牛または牡牛(子牛を含む)の一以上である。より好ましくは、家畜は子豚を含めた豚を意味する。
本発明は、さらに、手術後ストレスまたは手術後感染の治療用または予防用の医薬の製造における、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用を提供する。
本発明は、さらに、子供における免疫系不調和の治療または予防用の医薬の製造におけるRhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用を提供する。
本発明は、さらに、百日咳、ワクチン接種および現在のMMRワクチン接種のような病気の子供用ワクチンに対する副反応(adverse reaction)および/またはその結果の治療または予防用の医薬の製造における、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用を提供する。本明細書中で用いられる用語「副反応(adverse reaction)」は、ワクチンまたはその投与によって引き起こされる、またはそれが引き金となる局所的または一般的な不利な応答を意味し、典型的には、短い時間フレーム内に起こるが、(例えば6ヶ月だけ)遅延し得る。「副反応」は子供の死亡を含めることができる。副反応は、別個の事象、すなわち、ワクチンまたはその投与がネガティブな引き金となった応答の結果として引き起こされ得る。
本発明は、さらに、細胞性免疫応答の修飾用の医薬の製造における、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用を提供する。
さらなる態様において、本発明は、医薬として用いられる、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を提供する。
さらなる態様において、本発明は、ワクチンにおいて、またはワクチンとして用いられる、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を提供する。
適当には、ワクチンは予防ワクチンまたは治療ワクチンであってよい。
さらなる態様において、本発明は、免疫エンハンサーとして用いられるRhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を提供する。
さらなる態様において、本発明は、感染(例えば、細菌感染、ウイルス感染、例えば、ウマサルコイド、性器いぼ、および頚部の癌腫に先行する子宮頚部の形成異常を含むパピローマウイルスによって引き起こされる感染、または寄生虫感染、例えば、マラリア、トリバノソーマ症、リーシュマニア症およびトキソプラズマ症)および/または感染、ストレス、例えば、大外傷ストレス、心理社会的ストレスおよび慢性ストレス、アレルギー(例えば、アレルギー性喘息を含む喘息、枯草熱、アレルギー性皮膚炎(湿疹)、アナフィラキシーショック、植物の接触または摂取に対するアレルギー、イラクサおよび昆虫刺創のような刺創、および小昆虫、例えばCulicoides(これはウマにおいてスウィートイッチ(Sweet Itch)を引きおこす)のような昆虫咬傷に対するアレルギー)、細胞性肺気腫、COPDおよび癌(例えば、メラノーマまたは腺癌、または例えば子宮頸癌のようなウイルス関連癌)に伴う免疫学的異常;免疫系不調和(例えば、子供および老人における免疫系不調和)および手術後ストレスおよび手術後感染の1以上の治療または予防用の、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を提供する。
さらなる態様において、本発明は、例えば、マラリア、トリパノソーマ症、リーシュマニア症およびトキソプラズマ症の1以上のような寄生虫感染の治療または予防用の、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を提供する。
さらなる態様において、本発明は、ウイルス感染、例えば、ウマサルコイド、性器いぼ、および頚部の癌腫に先行する子宮頚部の形成異常を含むパピローマウイルスによって引き起こされる感染の治療または予防用の、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を提供する。
さらなる態様において、本発明は、例えば、大外傷ストレス、心理社会的ストレスおよび慢性ストレスの1以上のようなストレスの治療または予防用の、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を提供する。
さらなる態様において、本発明は、喘息(アレルギー性喘息を含む)、枯草熱、アレルギー性皮膚炎(湿疹)、アナフィラキシーショック、植物の接触または摂取に対するアレルギー、イラクサおよび昆虫刺創のような刺創、および小昆虫、例えば、Culicoides(これは、ウマにおいてスウィートイッチ(Sweet Itch)を引きおこす)のような昆虫咬傷に対するアレルギーの1以上の治療または予防用の、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を提供する。好ましくは、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物または医薬組成物は、例えば、アレルギー性喘息を含む喘息、および例えば小昆虫、例えば、Culicoides(これは、ウマにおいてスウィートイッチ(Sweet Itch)を引きおこす)のような昆虫咬傷に対するアレルギーの治療または予防に用いられる。
さらなる態様において、本発明は、特にウマにおける細胞性肺気腫および/またはCOPDの1以上の治療または予防用の、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を提供する。
さらなる態様において、本発明は、癌(例えばメラノーマおよび/または腺癌、および/または、例えば子宮頸癌のようなウイルス関連癌)の治療または予防用の、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を提供する。
さらなる態様において、本発明は、老人における免疫系不調和、特に免疫老化の治療または予防用の、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を提供する。
さらなる態様において、本発明は、手術後ストレスおよび手術感染の治療または予防用の、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を提供する。
さらなる態様において、本発明は、例えば、家畜における、例えば、成長の増強または飼料資化効率の増加をもたらし得る免疫系の増強用の、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を提供する。
さらなる態様において、本発明は、子供における免疫系不調和の治療または予防用の、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を提供する。
さらなる態様において、本発明は、百日咳、ワクチン接種および現在のMMRワクチン接種のような子供用ワクチンに対する副反応および/またはその結果の治療または予防用の、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を提供する。
もう1つの態様において、本発明は、ワクチンまたは医薬における、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞の使用であって、前記細菌の全細胞は細胞性免疫応答を修飾する使用を提供する。
もう1つの態様において、本発明による細菌の全細胞はTh2応答を下方調節することができる。
もう1つの態様において、本発明による細菌の全細胞はTh1応答を上方調節することができる。
適当には、本発明による細菌の全細胞はTh2応答を下方調節し、かつTh1応答を上方調節することができる。
別法として、本発明による細菌の全細胞はTh2応答に影響することなく、Th1応答を上方調節することができる。
別法として、本発明による細菌の全細胞は、やはりTh1応答を下方調節しつつ、Th2応答を下方調節することができる。
別法として、本発明による細菌の全細胞は、やはりTh1応答を上方調節しつつ、Th2応答を上方調節することができる。
例示に過ぎないが、以下の生物のいずれの1以上もTh2応答を変化させることなくTh1応答を増強することができる。Rhodococcus ruber、Rhodococcus rhodocrous、Dietzia marisおよびGordonia terrae。
例示に過ぎないが、以下の生物のいずれの1以上もTh1応答を増強させ、またはTh1応答を不変化のままとし、かつTh2応答を下方調節することができる。Gordonia bornchialis、Tsukamurella inchonensis、Gordonia amaraeおよびNocardia asteroids。
例示に過ぎないが、Rhodococcus coprophilusはTh1およびTh2応答を共に下方調節することができ、適当には、Rhodococcus coprophilusはTh1およびTh2応答を共に強く下方調節することができる。
もう1つの態様において、本発明は、対象において疾患を治療または予防する方法であって、有効量の医薬組成物および/または免疫モジュレーター組成物を対象に投与するステップであって、前記組成物が細胞性免疫応答を変調するステップを含む方法を提供する。
適当には、有効量の医薬組成物および/または免疫モジュレーター組成物は単一用量として投与することができる。別法として、有効量の医薬組成物および/または免疫モジュレーター組成物は複数(反復)用量、例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、または20以上の反復用量にて投与することができる。
本発明のさらなる態様において、対象を保護(免疫化を含む)する方法であって、本発明による医薬組成物および/または免疫モジュレーター組成物を投与するステップを含む方法が提供される。
好ましくは、対象は、感染(例えば、細菌感染、ウイルス感染、例えばウマサルコイド、性器いぼ、および頚部の癌腫に先行する子宮頚部の形成異常を含むパピローマウイルスによって引き起こされる感染、または寄生虫感染、例えば、マラリア、トリバノソーマ症、リーシュマニア症およびトキソプラズマ症)および/または感染、ストレス、例えば大外傷ストレス、心理社会的ストレスおよび慢性ストレス、アレルギー(例えば、アレルギー性喘息を含む喘息、枯草熱、アレルギー性皮膚炎(湿疹)、アナフィラキシーショック、植物の接触または摂取によるアレルギー、イラクサおよび昆虫刺創のような刺創、および小昆虫、例えばCulicoides(これはウマにおいてスウィートイッチ(Sweet Itch)を引きおこす)のような昆虫咬傷に対するアレルギー)、細胞性肺気腫、COPDおよび癌(例えば、メラノーマまたは腺癌、または子宮頸癌のようなウイルス関連癌)に伴う免疫異常;免疫系不調和(例えば、子供および老人における免疫系不調和);および手術後ストレスおよび手術後感染の1以上に対して保護される、例えば免疫化される。
好ましくは、対象はマラリア、トリパノソーマ症、リーシュマニア症およびトキソプラズマ症の1以上に対して免疫化される。
好ましくは、対象は、ウイルス感染に対して、例えば、ウマサルコイド、性器いぼ、または頚部の癌腫に先行する子宮頚部の形成異常を含むパピローマウイルス感染に対して免疫化される。
好ましくは、対象は例えば、大外傷ストレス、心理社会的ストレスおよび慢性ストレスの1以上のようなストレスに対して保護される。
好ましくは、対象は喘息(アレルギー性喘息を含む)、枯草熱、アレルギー性皮膚炎(湿疹)、アナフィラキシーショック、植物の接触または摂取に対するアレルギー、イラクサおよび昆虫刺創のような刺傷、および小昆虫、例えばCulicoides(これはウマにおいてスウィートイッチ(Sweet Itch)を引きおこす)のような昆虫咬傷に対するアレルギー)の1以上に対して(免疫化を含めて)保護される。より好ましくは、対象は、例えばアレルギー性喘息を含む喘息、および小昆虫、例えばCulicoides(これはウマにおいてスウィートイッチ(Sweet Itch)を引きおこす)のような昆虫咬傷に対するアレルギー)に対して免疫化される。
好ましくは、対象は、COPDおよび/または細胞性肺気腫の1以上に対して(免疫化を含めて)保護され、特に、対象はウマである。
好ましくは、対象は手術後ストレスおよび感染に対して(免疫化を含めて)保護される。
好ましくは、対象は癌、例えば、メラノーマおよび/または腺癌および/または例えば子宮頸癌のようなウイルス関連癌の発生および/または進行に対して保護される。
好ましくは、対象は、老人において免疫系不調和に対して(免疫化を含めて)保護される。特に、本発明による組成物を用いて、対象の免疫系を調節することができる。
好ましくは、対象は子供における免疫系不調和に対して(免疫化を含めて)保護される。特に、本発明による組成物を用いて、対象の免疫系、特に子供の免疫系を調節することができる。
好ましくは、対象は子供用ワクチンに対する副反応および/またはその結果に対して(免疫化を含めて)保護される。特に、対象の免疫系、特に子供の免疫系は、子供用ワクチンの投与前および/または間および/または後に調節される。
本明細書中で用いられる用語「保護される」は、対象が、本発明による組成物で治療されていないまたはそれが投与されていない対象と比較して病気/障害に対して罹患性が低いこと、および/または対象が、本発明による組成物で治療されていない、またはそれが投与されていない対象と比較して病気/障害をより阻止しまたは克服することができることを意味する。
もう1つの態様において、本発明は、有効量の本発明による医薬組成物および/または免疫モジュレーター組成物の対象への投与を提供し、前記組成物は抗原または抗原決定基と共に投与される。
前記組成物が本発明に従って抗原または抗原決定基と共に投与される場合、前記抗原または抗原決定基は、適当には、BCG(CalmetteおよびGuerinのバチルス)ワクチン、ジフテリアトキソイドワクチン、ジフテリア/破傷風/百日咳(DTPまたはTriple)ワクチン、百日咳ワクチン、破傷風トキソイドワクチン、麻疹ワクチン、流行性耳下腺炎ワクチン、風疹ワクチン、OPV(経口ポリオワクチン)Mycobacterium vaccae、またはその部分(GB0025694.1に教示される)、およびジェネリックプラスモジウム抗原、例えばマラリア寄生虫抗原の1以上からの抗原または抗原決定基であってよい。適当には、2以上、または3以上のそのような抗原または抗原決定基を、本発明による医薬組成物または免疫モジュレーター組成物と共に投与することができる。
好ましくは、本発明による医薬は、感染(例えば、細菌感染、ウイルス感染、例えばウマサルコイド、性器いぼ、および頚部の癌腫に先行する子宮頚部の形成異常を含むパピローマウイルスによって引き起こされる感染、または寄生虫感染、例えば、マラリア、トリパノソーマ症、リーシュマニア症およびトキソプラズマ症)および/または感染、ストレス、例えば、大外傷ストレス、心理社会的ストレスおよび慢性ストレス、アレルギー(例えば、アレルギー性喘息を含む喘息、枯草熱、アレルギー性皮膚炎(湿疹)、アナフィラキシーショック、植物の接触または摂取に対するアレルギー、イラクサおよび昆虫刺創のような刺創、および小昆虫、例えばCulicoides(これはウマにおいてスウィートイッチ(Sweet Itch)を引きおこす)のような昆虫咬傷に対するアレルギー)、細胞性肺気腫、COPDおよび癌(例えば、メラノーマまたは腺癌、または例えば子宮頸癌のようなウイルス関連癌)に伴う免疫学的異常;免疫系不調和(例えば、子供および老人における免疫系不調和);および手術後ストレスおよび手術後感染の1以上の治療または予防で用いられる。
好ましくは、本発明による医薬はマラリア、トリパノソーマ症、リーシュマニア症およびトキソプラズマ症の1以上の治療または予防で用いられる。
好ましくは、本発明による医薬は、ウイルス感染、例えば、ウマサルコイド、性器いぼ、または例えば子宮頸癌の癌腫に先行する子宮頚部の形成異常を含むパピローマウイルス感染の治療または予防で用いられる。
好ましくは、本発明による医薬は、例えば、大外傷ストレス、心理社会的ストレスおよび慢性ストレスのようなストレスの治療または予防で用いられる。
好ましくは、本発明による医薬は、喘息(アレルギー性喘息を含む)、枯草熱、アレルギー性皮膚炎(湿疹)、アナフィラキシーショック、植物の接触または摂取に対するアレルギー、イラクサおよび昆虫刺創のような刺創、および小昆虫、例えばCulicoides(これはウマにおいてスウィートイッチ(Sweet Itch)を引きおこす)のような昆虫咬傷に対するアレルギー)の1以上の治療または予防で用いられる。より好ましくは、本発明による医薬はアレルギー性喘息を含む喘息、および小昆虫、例えばCulicoides(これはウマにおいてスウィートイッチ(Sweet Itch)を引きおこす)のような昆虫咬傷に対するアレルギー)の治療または予防で用いられる。
好ましくは本発明による医薬はCOPDおよび細胞性肺気腫の1以上の治療または予防で用いられる。
好ましくは、本発明による医薬は癌(例えば、メラノーマおよび/または腺癌および/または例えば子宮頸癌のようなウイルス関連癌)の治療または予防で用いられる。
好ましくは、本発明による医薬は老人における免疫系不調和の治療または予防で用いられる。
好ましくは、本発明による医薬は手術後ストレスまたは感染の治療または予防で用いられる。
好ましくは、本発明による医薬は子供における免疫系不調和の治療または予防で用いられる。
好ましくは、本発明による医薬は子供用ワクチンに対する副反応および/またはその結果の治療または予防で用いられる。
本発明のさらなる態様において、本発明による医薬組成物または免疫モジュレーター組成物は、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属の一を超えるものからの細菌を含むことができる。適当には、前記組成物は、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属のいずれか1つからの2以上、または3以上の細菌を含むことができる。
好ましくは、本発明に従って用いられる細菌は、例えば、Gordonia bronchialis、G.amarae、G.sputti、G.terrae、Nocardia asteroides、Dietzia maris、Tsukamurella paurometabola、Rhodococcus ruber、Rhodococcus rhodnii、R.copropholis、Nocardioides albusおよびTsukamurella inchonensisなどのこれらの属のいずれかからのいずれの種も含めたRhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からのものである。適当には、各特定の属からの用いられる種は、低い、好ましくは、非抗原性培地である培地で増殖させることができるものである。例示に過ぎないが、適当な非抗原性培地はSauton培地である。
より好ましくは、本発明に従って用いられる細菌は、Rhodococcus ruber(以前はNocardia rubraとして知られていた)、Rhodococcus rhodocrous、Rhodococcus rhodnii、Rhodococcus coprophilus、Rhodococcus opacus、Rhodococcus erythopolisを含めたRhodococcus属からのものである。
より好ましくは、本発明に従って用いられる細菌はRhodococcus ruberである。
例示に過ぎないが、生物Gordonia bronchialis、Rhodococcus ruber、Rhodococcus rhodocrous、Rhodococcus rhodnii、Dietzia marisおよびGordonia terraeの1以上は寄生虫感染の治療および/または予防で効果的である。
例示に過ぎないが、生物Tsukamurella inchonensis、Gordonia amaraeおよびNocardia asteroidsの1以上は、例えば、小昆虫のような昆虫咬傷に対するアレルギーのようなアレルギーの治療および/または予防、および/またはウマサルコイドのような皮膚新生物を含む癌の治療および/または予防で特に効果的であり得る。
例示に過ぎないが、Rhodococcus coprophilusは、感染、特に寄生虫感染の変調および/または家畜における成長の増強で特に効果的であり得る。
好ましくは、本発明による細菌は使用に先立って殺される。好ましくは、本発明による細菌は、その加熱処理、例えば121℃における15分間のオートクレーブ中での加熱処理によって殺される。細菌を殺すための他の適当な処理は紫外線または電離放射線、あるいはフェノール、アルコールまたはホルマリンのような化学物質での処理を含むことができる。
好ましくは、本発明による細菌は精製されおよび/または単離される。
好ましくは、本発明による細菌は水または緩衝化生理食塩水、適当にはpH8に緩衝化されたホウ酸塩に懸濁させる。
本明細書中で用いられる用語「対象」は動物を意味する。好ましくは、対象は、例えば、家畜およびヒトを含めた哺乳動物である。本発明のいくつかの態様において、対象は適当にはヒトであり得る。
本明細書中で用いられる用語「免疫モジュレーター」はワクチンを含む。
[治療的使用]
本発明の免疫モジュレーターは治療で用いることができる。特に、そのような化合物を用いて、インビボにおいてTリンパ球応答および/またはインビボにおいて免疫応答に関与する他の細胞を変調することができる。
T細胞の増殖および/または分化および/または活性を変調、特にブロックすることができる免疫モジュレーター/医薬組成物は、適応的免疫応答(adaptive immune response)、すなわち、細胞性免疫応答の変調による予防または治療に対して感受性(susceptible)であるいずれの障害に対しても用いることができる。
適当には、本発明による組成物を用いて細胞性免疫応答を変調して、感染症(細菌感染、例えば、メチシリン耐性Staphylococcus aureus、多薬物耐性結核を含めた結核、およびライ病;慢性ウイルス感染、例えば、肝炎、HIV、およびウマサルコイド、性器いぼ、および頚の癌腫に先行する子宮頚部の形成異常を含めたパピローマウイルスによって引き起こされる感染;例えば帯状疱疹(Herpes zoster)または単純疱疹(Herpes simplex)のような潜伏性ウイルス感染;または寄生虫感染症、例えば、マラリア、トリパノソーマ症、リーシュマニア症およびトキソプラズマ症のような)感染症、アレルギー性皮膚炎またはアレルギー性喘息のようなアレルギー、大外傷ストレス、心理社会的ストレスおよび慢性ストレスのようなストレス、および癌の1以上を治療または予防する(例えば、組成物は成人の生活を通じて規則的に投与して、煙草の効果を打ち消すことができる)。
障害のより広範なリストはWO-A-98/09985に掲げられている。参照の容易のために、そのリストの一部をここに示す。単球または白血球増殖病、例えば、白血病、他の癌を治療または軽減するための、過敏症、アレルギー反応、喘息に伴う炎症、アフター性潰瘍形成、潰瘍性結腸炎、肝線維症、肝硬変または他の肝臓病、皮膚炎、特にアトピー性皮膚炎、例えば、湿疹、歯周病または他の歯病。
[感染症]
T細胞の増殖および/または分化を変調、特に刺激(すなわち、誘導または増強)することができる、またはT細胞アネルギーの誘導を防止し、または逆行させることができる組成物を一般に用いて、T細胞性免疫応答を追加免疫し、または誘導することができる。実質的に全ての適応的免疫応答は、T細胞の活性化、およびそれらのサイトカイン産生細胞への分化を必要とする。従って、一般に、これらの組成物を用いて、ウイルスまたは細菌のような感染症を予防および/または治療することができる。適当には、これらの組成物を用いて、寄生虫感染、例えば、マラリア、リーシュマニア症、トキソプラズマ症およびトリパノソーマ症を予防し、治療することができる。適当には、これらの組成物を用いて、ウイルス感染、例えば、ウマサルコイド、性器いぼおよび頚部の癌腫に先行する子宮頚部の形成異常によって引き起こされる感染を予防または治療することができる。
本発明の1つの態様において、感染は好ましくはトリパノソーマ症である。
本発明のもう1つの態様において、感染は、好ましくは、パピローマウイルス、特にウシパピローマウイルス1および2によって引き起こされたものである。本発明のさらなる態様において、感染は、好ましくは、ウマサルコイド、性器いぼ、および頚部の癌腫に先行する子宮頚部の形成異常の1以上である。
[ウマサルコイド]
本発明の組成物は、ウマサルコイドを予防し、治療するのに用いることもできる。
ウマサルコイドはウマの最も普通の皮膚新生物であって、ウマパピローマウイルス1および2での感染に関連している(Chambers et al.J.Gen.Virol.2003:84:1055-1062)。この疾患は現在効果的な治療がないが、外科処置、非特異的免疫治療および細胞傷害性薬物は全てある程度の効果を有し得る。
本発明の組成物は、好ましくは、病巣または新生物と同一のリンパ節排出領域(lymph node drainage area)に投与される。
[アレルギー]
本発明の組成物を用いて、アレルギー(例えば、アレルギー性喘息を含む喘息、枯草熱、アレルギー性皮膚炎(湿疹)、アナフィラキシーショック、植物の接触または摂取に対するアレルギー、イラクサおよび昆虫刺創のような刺創および小昆虫、例えば、Culicoides(ウマにおいてスウィートイッチ(Sweet Itch)を引き起こす)のような昆虫咬傷に対するアレルギー)を予防し、治療することもできる。
スウィートイッチ(Sweet Itch)はウマ、特に野生のウマおよび/またはポニーで見られる最も普通の皮膚病の1つである。英国におけるウマの約3%がある程度罹っている。ほとんどのウマは1歳〜4歳の間に兆候を示し、状態は一般に夏季に悪化する。ある種の血統が特に前記病気に罹りやすい。Shires、HackneysおよびWelshならびにIcelandicポニーは、全て、罹患しやすい血統として示唆されている。スウィートイッチ(Sweet Itch)は、非常に小さなハエCulicoidesの咬傷に対する過敏症によって引き起こされる。英国においては、前記ハエは4月から10月に存在するが、5月から9月においてその数がピークとなる。前記ハエは、通常、尾のヘッド部の周り、および鬣下にて特定の部位においてウマで育つ。英国に存在するCulicoidesの20種があり、あるものはウマの腹部直下で育つ。
例示に過ぎないが、本発明の組成物を用いて、本発明による組成物を対象(その対象は、アナフィラキシーショックに罹る素因を有する(例えば、ピーナッツに対するアレルギーのようなアレルギーを有することが知られている対象))に投与することによってアナフィラキシーショックを予防しおよび/または治療し、従って、もし対象が(偶然にも)それらが有害に反応し得る抗原、例えば、ピーナッツと接触すれば、アナフィラキシーショックに対する対象の素因を低下させることもできる。
[細胞性肺気腫/COPD]
本発明の組成物を用いて、細胞性肺気腫および/またはCOPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease(慢性閉塞性肺病))を予防し、治療することもできる。
細胞性肺気腫はヒト喘息およびCOPDに対する類似性を有するウマ肺病である。ウマにおける臨床的兆候は、既にある程度の線維症に罹った肺において、乾草ダスト中の粒子に対するアレルギー応答によって開始される。それは、冬の数ヶ月の間家畜小屋に入れられた老齢のウマ(6歳を超える)で最もしばしば観察される。乾草は細菌および真菌のような微生物に加えて、飼料穀粒、植物、糞、ふけおよび花粉の非常に小さな粒子を含む。これらの非常に小さな粒子は乾草ダスト中でエアロゾル化され、それらが細胞性肺気腫を有するウマによって吸入されると、アレルギー応答および線維症を誘導する。細胞性肺気腫の病因に関与すると考えられている一次微生物は、Aspergillus fumigatus、Thermoactinomyces vulgarisおよびFaenia rectivirgulaである。喘息の気管支痙攣およびCOPDの線維症双方の低下は本発明の範囲内のものである。
[ストレス]
ストレスは、現代生活、高いプレッシャーを実行するライフスタイルの兆候としてしばしば現われ、その結果は胃潰瘍、高血圧、心臓病および発作のような主な病理学的疾患に導くものとして広く認められている。離婚、死別および引越しのような人生における他の主なストレスのかかる事象は心臓病に対する高リスク因子として見られる。
これらは誤った概念ではなく、農業産業は、過剰密集、拘束および輸送のような大きなストレスに家畜を付し、これにより感染に対して罹患性が増大し、潜在的な病変が生じることに由来する経済的損失を良く認識している。医師および科学者による研究は、拘束のような定義可能なストレスが内分泌(ホルモン)活性の有意な変化をもたらし、それは引き続いて身体の免疫機能に影響し得ることを示す、ますます多くの公表された業績を生み出しつつある。これは、細胞媒介免疫応答が劇的に麻痺している大外傷ストレス(外科的ストレスを含む)において顕著に示されるFaist (1996)。
Elenkov IJ(1999)は、ストレス系の最終産物であるグルココルチコイドおよびカテコールアミン、および活性化された肥満細胞の産物であるヒスタミンが選択的に細胞免疫性を抑制し、体液性免疫応答に好都合であることを示す最近の証拠を報告している。これは、Th1/Th2のパターンおよびタイプ1/タイプ2サイトカインの生産に対するストレスホルモンおよびヒスタミンの異なった効果によって媒介される。従って、全身的には、ストレスはTh2シフトを誘導し、他方、局所的には、ある条件下では、ストレスは、末梢コルチコトロフィン−放出因子−肥満細胞−ヒスタミン軸(peripheral corticotrophin-releasing factor-mast cell-histamine axis)の神経活性化を通じて前炎症活性を誘導し得る。
アカデミックなストレスを独立して研究しているPaik(2000)およびKay(2001)は、非試験期間および試験期間の間の生徒の免疫学的プロフィールを調査した。彼らはIL−2およびインターフェロンγの生産の有意な低下およびIL−6の増加を報告している。これは、身体の免疫系が、Th−Iサイトカインの下方調節およびTh2サイトカインの選択的上方調節によるストレスのかかったエピソードに応答することを示す。
拘束ストレスのマウスモデルを用いるIwakabe(1998)は、Th2優性免疫性に対する免疫応答の非対称性を報告している。
Th2免疫不調和に対するこのストレスホルモン誘導スイッチもまた、オーストラリア南極観測隊(Australian National Antarctic Research Expedition)ステーションにおいて冬を過ごす労働者の間の心理社会的ストレスのような大きくはない慢性的なストレス状況で報告されている(Mehta(2000)。彼らは、関連する潜伏性ウイルス再活性化の増加も報告している。
同様なストレスホルモンおよび免疫学的変化が、痴呆症患者の世話人(Bauer(2000))およびEuromir95任務の間の宇宙飛行士(Norbiato(1998))における慢性ストレスから報告されている。特に関心があるのは感染に対する宇宙飛行士の増大した罹患性である。
身体はストレスから回復するように設計されており、急性ストレスにおいては、感染の危険性が大外傷からの患者の回復と共に薄れるに従って明らかにそうである。
しかしながら、慢性ストレスはTh2に支配された免疫不調和を維持するようである。これは非常に深刻な結果である。というのは、引用された著者の全てが、恐らくは、感染病、炎症病、アレルギー病および腫瘍性疾患の開始および/または進行に影響する前記メカニズムを介するストレスに言及しているからである。
この結果はさらにLawrence(2000)によって支持されている。
Th1応答を刺激し、Th2を下方調節する免疫レギュレーター、好ましくは、本発明による経口投与される免疫レギュレーターは、免疫系の健康なバランスを回復し、従って、慢性ストレスに関連する深刻な病気の増大した危険性を低下させることができる。
好ましくは、本発明による組成物を用いて、ストレス、特に大外傷ストレス、心理社会的ストレスおよび慢性ストレスを治療および/または予防する。
好ましくは、本発明による組成物を用いて、動物、適当にはヒトおよび/または家畜においてストレスを治療および/または予防する。
[免疫系不調和]
上方調節、下方調節または不適切に調節された細胞性免疫応答のような免疫系不調和は、対象の人生のいずれかの時点で起こり得る。適当には、前記組成物を用いて免疫系不調和を変調することができる。すなわち、本発明による組成物を用いて、免疫系不調和を治療および/または予防することができる。
〔(a)子供において〕
適当には、免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を用いて、赤ん坊、幼児および若者を含めた子供において免疫系不調和を変調させることができる。上方調節、下方調節または不適切に調節された細胞性免疫応答のような免疫系不調和は、ワクチン接種後に、例えば、子供用ワクチン接種後に子供で起こり得る。そのような免疫系不調和の結果、アレルギー、すなわち、アレルギー性皮膚炎およびアレルギー性喘息の開始のような疾患をもたらし得る。
感染から子供を保護する目的で、ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオ、麻疹、流行性耳下腺炎および風疹に対する反復注射が与えられる。これらの全ては必要であると判断され、子供が適切な時期にワクチン接種に呈されることを確保するために健康当局によってプレッシャーが与えられている。しかしながら、人生初期に与えられたほとんどのワクチン接種は、重要な免疫学的結果を有するミョウバンアジュバントを含有する。ミョウバンは、Th2パターンの応答に対する優れた刺激体であって、結果として免疫調節不全により、子供はアレルギー、および例えば恐らくは癌の発症にかかりやすくなる。
自己と世界の残りとの双方に対する適切な認識、調節および応答に対して免疫系を再教育することが可能である。
適当には、免疫モジュレーター組成物または医薬組成物は、百日咳ワクチン接種および現行のMMRワクチン接種のような子供用ワクチンに対する副反応および/またはその結果の治療または予防で用いることもできる。
〔(b)老人における免疫系不調和〕
上方調節、下方調節または不適切に調節された細胞性免疫応答、特に下方調節、例えば、免疫機能の劣化のような免疫系不調和は、一般には60歳を超える老齢の人々で起こり得る。老齢の人々における細胞性免疫応答の下方調節は、一般には、免疫老化といわれる。典型的には、免疫機能の劣化は、例えば、感染症および新形成(neoplasia)に対する増大した罹患性を導き得る。人口の割合としての老齢人々の数は劇的に増大しつつあり、老人用医薬は臨床的プラクティスの重要な態様となりつつある。従って、免疫老化のメカニズム、および免疫系の健康と長寿との間のリンクに研究が焦点を合わせているのは驚くべきことではない。Goronzy(2001)は、老人におけるインフルエンザワクチン接種の変動する効率を調べた。この研究において、対象の17%のみが、ワクチン接種後1ヶ月において全ての3つのヘマグルチニン(成功したワクチン接種)に対して力価の上昇を示し、46%は証明可能な応答を全く示さなかった。インフルエンザワクチン接種に対する応答性は免疫老化の有用な生物学的マーカーであると提唱されている。多数の研究者は、老人における免疫機能の種々の態様を研究した。例えば、Lio(2000)はサイトカイン応答を研究し、Solana(2000)はNKおよびMKt細胞を研究し、Ginaldi(1999)は、Th1〜Th2サイトカイン生産のシフトおよびプロ炎症性サイトカインの増大した生産が、アテローム性動脈硬化症および骨粗鬆症のような年齢に関連した病理学的事象の多くの態様を説明し得ることを提唱した。従って、プロ炎症性Th2からTh1へサイトカイン応答を駆動する免疫系の非病理学的刺激が必要である。好ましくは、そのような免疫モジュレーターは急性感染からの死亡率を低下させ、開始を阻止し、年齢関連自己免疫疾患の罹患率を低下させ、恐らくは、腫瘍性疾患の率を低下させ、その全ては免疫老化に関連するものである。
典型的には、本発明のこの態様による免疫モジュレーター組成物または医薬組成物は免疫エンハンサーであり得る。
片利共生腸または酪農細菌の潜在的役割がこの領域で調べられている。例えば、3週間の間に毎日取られた用量当たり5×109または5×1010のBifidobacterium lactisまたはLactobacillus rhamnosusを補足した乳製品は、末梢血液NK、CD4およびCD25細胞の数を増大させ、一般に、老人において全身細胞性免疫を追加免疫すると報告されている(Gill,(2001))。
現在、多数のLactobacilliおよび他の腸の片利共生フローラを含有する多数の製品が「ライフスタイルエンハンサー」として積極的に販売促進されている。1950年以来の薬物として入手できるLactobacillus acidophilusの主張された共生効果についてのSanders(2001)によるレビューは、その効果が、さらに、作用メカニズムの有効化および解明を必要とすることを示唆している。抗生物質療法下痢病後に腸フローラを置き換え、抗生物質療法後にカンジダ症と戦うことからの有利な効果はあるが、免疫刺激は信頼できず、短期間のものように見える。しかし、この仕事は、好ましくは、生きた製品を維持する困難性を回避するように殺された、優れた経口投与される免疫モジュレーターの役割を明らかに突き止める。
経口ワクチン接種は、ポリオのような経口/糞病原体に対する局所的保護免疫性を誘導する長く確立された首尾よいメカニズムである。しかしながら、経口投与されるワクチンは、細胞媒介および液性双方の全身保護免疫応答を惹起することも示されている。Sharpe(2002)は、流行性耳下腺炎ウイルス抗原を含有する経口投与されたアデノウィルス構築体を用いて、流行性耳下腺炎抗原に対する全身抗体、および脾臓リンパ球応答を誘導させた。Manube(2002)は、経口投与された弱毒化Mycobacterium microtiが、伝統的な皮下投与されるBCGよりも結核でのエアロゾル挑戦に対してより高いレベルの保護を提供することを示すモデルを開発した。
Kim(2001)は、スギ花粉の供給により、油中の花粉の引き続いての注射によって誘導される特異的アレルギーに対する経口耐性が生じたことを示した。これは減少した特異的免疫グロブリンレベルおよびインターロイキン−4の生産の有意な低下に関連し、すなわち、Th2応答は下方調節された。
従って、全身免疫応答は、適当な免疫モジュレーターの経口投与のような投与によって刺激し、変調することができる。
適当には、本発明の1つの態様において、本発明による細菌の全細胞は食品調製物に含ませることができ、および/または好ましくは経口の「治療剤」のタイプとして供給することができると考えられる。
[免疫系の増強]
本発明の組成物は、対象において、例えば、成長の増強(例えば、促進)および/または飼料利用の効率の増大および/または一般に増大した安寧(すなわち、対象の総じての健康が改良される)をもたらし得る、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくは家畜において免疫系を増強させるための医薬の製造で用いることができる。対象の総じての健康は以下のパラメーター、例えば、体重データ(体重増加は肯定的な決定因子である)、警戒(十分な警戒は肯定的決定因子である)、運動(生気のない運動とは反対に精力的な運動は肯定的に決定因子である)および病気(低下した量の病気は肯定的決定因子である)の1以上によって判断することができる。典型的には、本発明のこの態様による免疫モジュレーター組成物または医薬組成物は免疫エンハンサーであり得る。
有利には、本発明の免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を用いて、現在、家畜の成長を促進するのに用いられている抗生物質を置き換えることができる。
本明細書中で用いられる用語「家畜」とはいずれの農場動物もいう。好ましくは、家畜は家禽(ニワトリを含む)、豚(子豚を含む)、羊(子羊を含む)、牝牛または牡牛(子牛を含む)の1以上である。より好ましくは、家畜は子豚を含めた豚を意味する。
また、本発明では、細胞性免疫応答の修飾のために公知の共生菌と組み合わせて投与される本発明の属が考えられる。
現在の商業的抗生物質は、通常、ダイエット増強飼料添加物(成長促進剤)として用いられ、動物飼料に配合されている。しかしながら、EUは、抗生物質の非臨床的使用に対する完全な規制を動物育種に導入するつもりである。従って、市場は効果的な代替品を必要としている。
本発明の利点は、それを、ダイエット増強飼料添加物(または成長促進剤)に対する代替物として(必要に応じて任意に、良好な動物育種プラクティスと共に)用いることができることである。
本発明の免疫モジュレーター組成物または医薬組成物は、免疫系を増強させるために用いる場合、食品添加物として投与することができる。
[癌]
適当には、本発明による組成物を用いて、細胞性免疫応答を変調し、癌を治療および/または予防する。特に、本発明による組成物を用いて、癌の発生および/または進行に対して対象を保護することができると考えられる。特に、変調された細胞性免疫応答を有する対象は、癌の発生に対して感受性がより低くあり得る。
特に、癌の成長の間に、調節されていないTh2の増加が観察される。
癌は、多くの人々に罹る病気であり、癌の65パーセントは65歳を超えた者で起こる。英国における平均寿命の予測は19世紀半ば以来ほとんど倍となっているので、癌の危険性がある集団が増えた。心臓病のような他の死亡原因からの死亡率は、近年低下し、他方、癌からの死亡は比較的安定したままであった。その結果は、3人に1人がその人生の間に癌と診断され、4人に1人が癌で死亡するであろう。
癌の例は膀胱癌、脳癌、乳癌、子宮頸癌、結腸および直腸癌、腺癌、子宮内膜癌、食道癌、腎臓癌、白血病、肝臓癌、肺癌、メラノーマ、骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、肉腫、柔軟組織および胃癌を含む。
加えて、煙草の大量喫煙および、より程度は低いが、過剰な受動喫煙は、煙に直接接触する部分、口腔咽頭部、器官、肺、食道および胃の癌腫に関連付けられてきた。これらと同様に、腎臓、膀胱、膵臓、肝臓および骨髄系白血病のもののような遠隔腫瘍は煙草の喫煙によって増大し得る。本発明においては、煙草喫煙に関連する癌腫の発生の喫煙者の危険性を低下させる試みにおいて、本発明による組成物を煙草喫煙者に投与することができると考えられる。
適当には、癌は腺癌またはメラノーマであり得る。
適当には、癌は、例えば子宮頸癌のようなウイルス関連癌であり得る。理論に拘束されるつもりはないが、ある場合には、子宮頚部の形成異常のようなパピローマウイルスによって引き起こされる感染は頚部の癌腫に先行することが見出されている。従って、子宮頸癌は本明細書では「ウイルス関連癌」と考えられる。しかしながら、本明細書中で用いられる用語「ウイルス関連癌」は、ウイルス感染によって引き起こされ得る、またはウイルス感染に関連し得るいずれの癌も意味する。
[手術後回復、ストレスおよび感染]
いずれの大きな手術後においても、多数の状況が潜在的に起こる。
外科的手術に関連するストレスは、手術前の懸念、手術手法による組織に対するストレス、回復に通常伴う苦痛、手術知見の有意性に対する不安の1以上を含む。
これらの種類のストレスはTh2に向かうT細胞機能の偏りに関連する。手術それ自体後に数時間、または数週間継続し得る予備投薬および麻酔剤の免疫抑制効果。
加えて、手術時の直接的感染に対する切断肉、および退院に先立っての回復室および病棟における感染に対する創傷の暴露もまた問題である。
これらの因子の組合せにより、患者は一連の潜在的細菌感染に暴露される。それは以下の通りである。
患者は入院しているため、そのような評判の悪い病院関連感染は、メチシリン耐性−Staphylococcus aureus(MRSA)でのものを含む。腸に対する手術により、患者は、切断組織の腸内容物への暴露によるグラム陰性感染に曝される。下肢に対する手術もまた腸フローラの通常のメンバーでの感染を被り易い。
創傷のちょっとした感染は治癒を遅らせ、より深刻な感染に遭遇するチャンスを増大させる。
これらの影響を阻止するためには、本発明の適用の結果としてのTh1への免疫調節およびTh2の下方調節は、以下の、手術後細菌感染に対する非特異的耐性の増大;創傷治癒の助力および/またはストレスの低下の1以上を行うべきである。
[Tヘルパー細胞]
本明細書中で用いられる用語「Th1」はタイプ1のTヘルパー細胞(Th1)をいう。前記用語は、本明細書中では、そのような細胞タイプによって、またはそれを通じて媒介される応答もいうことができる。そのような応答はインターロイキン−2(IL−2)の分泌、インターフェロンγ(IFN−γ)の分泌、マクロファージの活性化、細胞傷害性T細胞の活性化、またはいずれかの他のTh1関連事象の1以上を含むことができる。従って、用語「Th1」はTh1細胞ならびにそのような細胞が生じる免疫応答を含むことができる。
本明細書中で用いられる用語「Th2」はタイプ2のTヘルパー細胞(Th2)をいう。前記用語は、本明細書中ではそのような細胞タイプによって、またはそれを通じて媒介される応答をいうのに用いることもできる。そのような応答は、インターロイキン−(IL−4)の分泌、スプライス変種インターロイキンIL−4δ2の分泌、インターロイキン−5(IL−5)の分泌、リンパ球上の細胞決定基30(CD30)のレベルの増大、血液中の免疫グロブリン−E(IgE)または血液中の好酸球のレベルの増大、またはいずれかの他のTh2関連事象の1以上を含むことができる。従って、用語「Th2」はTh2細胞ならびにそのような細胞が生じる免疫応答を含むことができる。
種々の疾患は調節されていないまたは不適切に調節された細胞性免疫応答をもたらし、またはそれから由来し、特に、もし調節されていないままであるか、または不適切に調節されたならば、対象に対する1以上の有害な効果をもたらすことが見出されているTh1および/またはTh2の活性化および/または増幅をもたらし得ることが知られている。
特に、そのような調節されていない、または不適切に調節された細胞性免疫応答は、ワクチン接種の後に、例えば、子供用ワクチン接種の後に起こることが見出されており、アレルギー、すなわち、アレルギー性皮膚炎およびアレルギー性喘息の開始のような疾患をもたらすと考えられる。一例として、Lewis D.Curr Opin Immunol 2002;14:644は、IL−4、IL−5およびIL−13の分泌によって媒介されるTh2免疫応答は、アレルゲン誘導喘息、鼻結膜炎およびアナフィラキシーを含めたアトピー性障害の病因における鍵であると報告している。そのような応答は慣用的な特異的免疫療法によってある程度は下方調節されるが、このアプローチは部分的に効果的であるにすぎず、有害な効果の実質的な危険性を有する。免疫療法予防のためのおよびアトピー病の治療のための多くの戦略が、マウスアレルギーモデルに基づいて工夫されており、これは、調節性T細胞活性の誘導によるTh2応答の下方調節、Th2からTh1への免疫偏向、Th2免疫応答、アネルギーおよび免疫抑制サイトカインのTh1交差調節を含む。Choi & Koh,Ann Allergy Asthma Immunol 2002;88:584-91は、喘息、Th2関連アレルギー病を有する成人患者のBCGワクチン接種が臨床的に効果的であるか否かを調べた。BCGワクチン接種は肺機能を改良し、中程度〜ひどい喘息を有する成人における投薬使用を低下させることが示された。この軽減は抑制されたTh2タイプ免疫応答に伴い、これは、BCGワクチン接種が、喘息に対する効果的な治療様式であり得ることを示唆する。Von Hertzen,J.Allergy Clin Immunol 2002;109:923-8は、保持された過剰コルチゾル分泌に関連する延長された母性ストレスが発生する免疫系−特に、性的素因の個体における喘息およびアトピーに対する罹患性をさらに増大し得るTh1/Th2細胞分化に影響し得る確率を概説した。
加えて、調節されていない、または不適切に調節された細胞性免疫応答が病気進行の間に観察された。特に、癌成長の間に、Th2における調節されていない増加が観察される。一例として、Maraveyas et al.Anm Oncol 1999;10:817-24は、癌、すなわち、進行した段階のIV(AJCC)悪性メラノーマを有する患者においてSRL172ワクチンの効果を調べた。これらの患者からの末梢血液リンパ球(PVLC)における細胞内サイトカイン(IL−2およびINF−γ)の誘導がアッセイされ、臨床的結果と相関させた。SRL172は、段階IV(AJCC)メラノーマを有するかなり多数の患者において細胞内IL−2応答を誘導するのに効果的であることが証明された。Stanford et al.International Journal of Pharmaceutical Medicine 1999;13:191-195は、効果的な抗腫瘍免疫応答がタイプ1サイトカインによって媒介されているようであるという増大する証拠があると報告している。最近の調査は、熱で殺したMycobacterium vaccaeが信頼できるTh1アジュバントであることを示し、予備的臨床試験はメラノーマ、および前立腺および肺の癌における有益な効果を示す。より広範な制御された研究が、現在、これらの知見を確認するために行われつつある。
また、調節されていない、または不適切に調節された細胞性免疫応答が、感染、特に慢性感染の間に、例えば、進行性結核、ライ腫ライ病、内臓リーシュマニア症およびHIV感染の間に、およびアレルギーの間に観察されている。一例として、Clerici & Shearer GM Immunol Today 1993;14:107-11は、Th1からTh2へのスイッチがHIV感染の病因における臨床的過程であると提唱している。Clerici & Shearer Immunol Lett 1996;51:69-73は、HIV特異的細胞媒介免疫性が、HIV感染に対する、HIV感染のAIDSへの進行に対する保護の主要関連体であり得ることを示している。Abbot NC et al.European Journal of Vascular and Endovasucular Surgery 2002 24:202-8は、熱で殺したMycobacterium vaccaeの投与によって慢性ライ病患者における末梢血流を改良する手段として免疫療法を評価した。免疫療法は、18ヶ月より早いと仮定すれば、十分に処置された慢性ライ病患者において血流および温度検知を著しく改良することが示された。
従って、本発明の目的は、調節されていない、または不適切に調節された細胞性免疫応答のネガティブな効果を克服するように、Th1および/またはTh2の調節または変調を含めた、細胞性免疫応答の調節を促進し、確立することにある。
適当には、本発明による免疫モジュレーター組成物および/または医薬組成物の使用はTh1またはTh2応答、すなわち、例えば、組織損傷をもたらすTh1またはTh2応答を変調する。
適当には、本発明による免疫モジュレーター組成物および/または医薬組成物の使用により、Th1応答を減少させ、Th2応答を減少させることができる。一例として、そのような免疫モジュレーターおよび/または医薬組成物は、例えば、糖尿病の治療で有用であり得る。
適当には、本発明による免疫モジュレーター組成物および/または医薬組成物の使用は、Th2応答に影響することなく、Th1応答を増加させることができる。一例として、そのような免疫モジュレーターおよび/または医薬組成物は免疫エンハンサーとして有用であり得る。
適当には、本発明による免疫モジュレーター組成物および/または医薬組成物の使用は、Th1応答を増加させ、Th2応答を減少させることができる。一例として、そのような免疫モジュレーターおよび/または医薬組成物は喘息の治療で有用であり得る。
適当には、当業者であれば、本発明による各属の特異的種をテストして、その特異的Th1/Th2応答を決定することができる。
調節されていない、または不適切に調節された免疫応答は、ある病気によりシフトされたTh1および/またはTh2応答が引き起こされるという事実により、病気の確立において役割を演じることができる。これらの非典型的Th1およびTh2反応に伴うのは、一連の異常な炎症応答であり、これは、組織病理学の基礎となるメカニズムに加わることができる。
例示に過ぎないが、本発明による免疫モジュレーター組成物および/または医薬組成物は、現代の生活に相応した環境の影響(例えば、抗原)との低下した接触の不利を阻止することができ、感染(例えば、マラリア、トリパノソーマ症、リーシュマニア症およびトキソプラズマ症のような寄生虫感染)、および/または、感染、例えば、大外傷ストレス、心理社会的ストレスおよび慢性ストレスのようなストレス、アレルギー(例えば、喘息、アレルギー性喘息を含む喘息、枯草熱、アレルギー性皮膚炎(湿疹)、アナフィラキシーショック、植物の接触または摂取に対するアレルギー、イラクサおよび昆虫刺創のような刺創、および小昆虫、例えば、Culicoides(ウマにおけるスリートイッチ(Sweet Itch)を起こす)のような昆虫咬傷に対するアレルギー)、細胞性肺気腫、COPDおよび癌(例えば、メラノーマまたは腺癌);免疫系不調和(例えば、子供における免疫系不調和、例えば、子供用ワクチンおよび老人の望ましくない効果);手術後ストレスおよび手術後感染に伴う免疫学的異常の治療の影響を阻止することができる。
[ワクチン]
有効成分として1以上の物質を含有するワクチンの調製は当業者に知られている。典型的には、そのようなワクチンは液状溶液または懸濁液いずれかとしての注射剤として調製され、注射に先立って液体中の溶液または懸濁液に適した固体形態を調製することもできる。また、調製物は乳化させることができ、あるいは有効成分をリポソーム中にカプセル化することもできる。有効成分は、しばしば、医薬上許容され、有効成分に適合する賦形剤と混合する。適当な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等、およびその組合せである。別法として、ワクチンは、例えば、経口摂取させるように、および/または吸入することができるように調製することができる。
加えて、所望ならば、ワクチンは、湿潤剤または乳化剤およびpH緩衝剤のような少量の補助物質を含有することができる。
[投与]
典型的には、医師は、個々の対象に最も適したワクチン、免疫モジュレーター組成物および医薬組成物の現実の用量を決定し、それは特定の患者の年齢、体重および応答に伴って変化するであろう。以下の投与量は平均的場合の例である。もちろん、より高いまたはより低い用量範囲が有益な個々の場合もあり得る。
好ましくは、用いる現実の用量の結果、対象に対して最小の毒性がもたらされる。
本発明の組成物は直接的な注射によって投与することができる。前記組成物は非経口、粘膜、筋肉内、静脈内、皮下、眼内、皮内または経皮投与用に処方することができる。
適当には、本発明による組成物は103〜1011生物、好ましくは104〜1010生物、より好ましくは106〜10〜5×109生物、なおより好ましくは106〜109生物の用量にて投与することができる。典型的には、本発明による組成物は、ヒトおよび動物の使用で、108〜109細菌の用量で投与することができる。
もし本発明の組成物を免疫エンハンサーとして投与すべきであれば、ヒトおよび動物の使用では、用量当たり103〜1011生物、好ましくは用量当たり104〜1010生物、より好ましくは用量当たり106〜10〜5×109生物、なおより好ましくは用量当たり106〜109生物、なおより好ましくは用量当たり108〜109細菌を規則的な間隔で投与することができる。
当業者に容易に認識されるように、投与すべき用量は、前記用量を投与すべき生物に依存するであろう。
用語「投与される」は、注射、液体媒介トランスフェクション、リポソーム、免疫リポソーム、リポフェクチン、カチオン界面両親媒体(CFA)およびその組合せを含めた送達メカニズムによる送達、あるいはウイルス送達を含む。そのような送達メカニズムのための経路は、限定されるものではないが、粘膜、鼻、経口、非経口、胃腸、局所または舌下経路を含む。
用語「投与された」は、限定されるものではないが、例えば、吸入用の鼻スプレイまたはエアロゾルとして、あるいは摂取可能な溶液として粘膜経路;送達が、例えば、静脈内、筋肉内、皮内または皮下経路のような注射形態による非経口経路による送達を含む。
用語「共投与される」は、本発明のアジュバント、抗原および/または抗原決定基の各々の投与の部位および時間が、免疫系の必要な変調が達成されるようなことを意味する。従って、抗原およびアジュバントは同一時間に同一部位に投与することができるが、アジュバントとは異なる時間に異なる部位に抗原および/または抗原決定基を投与するのが有利であり得る。抗原および/または抗原決定基およびアジュバントは同一の送達ビヒクルで送達することができ、抗原および/または抗原決定基およびアジュバントをカップリングさせ、および/またはカップリングさせなくてもよく、および/または遺伝子によりカップリングさせ、および/またはカップリングさせないことができる。例示に過ぎないが、本発明による免疫モジュレーター組成物は、1以上の抗原またはさらなる抗原の投与前に、それと同一時に、または後に投与することができる。
抗原、抗原決定基、ペプチドまたはそのホモログまたはミメティックを、単一用量として、あるいは複数用量にて宿主対象に別々に、または共投与することができる。
本発明の免疫モジュレーター組成物および/または医薬組成物は、(非経口、皮下、皮内および筋肉内注射を含む)注射、鼻腔内、粘膜、経口、膣内、尿道または目投与のような多数の異なる経路によって投与することができる。
好ましくは、本発明においては、投与は注射による。より好ましくは、注射は皮内である。
好ましくは、本発明においては、投与は経口的に許容される組成物による。
ワクチン接種では、組成物は0.1〜0.2mlの水溶液、好ましくは緩衝化生理食塩水にて提供することができ、例えば、皮内摂取によって非経口投与することができる。本発明によるワクチンは好ましくは皮内注射される。僅かな腫れおよび赤変、時々は、痒みが注射部位で見出されえる。投与の形態、用量および投与の数は公知の手法によって当業者が最適化することができる。
[抗原]
本明細書中で用いられるごとく、「抗原」は、免疫応答性宿主に導入した場合に、当該存在と組み合わせることができる特異的抗体または複数抗体の生産を修飾し、および/またはTh2および/またはTh1のような関連Th応答を修飾する存在を意味する。抗原は純粋な物質、物質の混合物、または可溶性または粒状物質(細胞または細胞断片または細胞音波処理物を含む)であり得る。この意味において、前記用語は適当な抗原決定基、交差反応抗原、アロ抗原、キセノ抗原、寛容原、アレルゲン、ハプテン、および免疫原、またはその部分、ならびにそのいずれかの組合せを含み、これらの用語は明細書を通じて相互交換可能に用いられる。
本明細書中で用いられる用語「抗原決定基またはエピトープ」は、抗体またはT細胞受容体によって認識されるか、あるいはTヘルパー細胞応答を惹起することを担う抗原上の部位をいう。好ましくは、それはタンパク質抗原の部分に由来する、または前記部分としての短いペプチドである。しかしながら、前記用語は、糖ペプチドおよび炭水化物エピトープを含むことを意図する。また、前記用語は、全生物を認識する応答を刺激するアミノ酸の修飾された配列または炭水化物を含む。
もし抗原決定基が、感染症を引き起こす感染剤の抗原決定基であれば有利である。
「予防的」または「予防」ワクチンは、未処置の個体に投与して、保護免疫を刺激することなどして、疾患の発症を防止するワクチンである。
「治療」ワクチンは、存在する疾患を有する個体に投与して、前記疾患を低下させ、または最小化し、あるいは疾患の免疫病理学的結果を抑止するワクチンである。
[アジュバント]
本明細書中で用いられる用語「アジュバント」は、免疫応答の影響を増大させる、またはそれに参画することができる存在を意味する。アジュバントは、抗原に対する免疫応答を助ける、増加させる、下方調節する、修飾するまたは多様化するいずれかの物質、または物質の混合物である。
本発明による免疫モジュレーター組成物および/または医薬組成物は、免疫モジュレーター組成物および/または医薬組成物の有効性を増強する1以上のアジュバントを含むことができる。効果的であり得るさらなるアジュバントの例は、限定されるものではないが、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム(ミョウバン)、硫酸ベリリウム、シリカ、カオリン、カーボン、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、ムラミルジペプチド、細菌エンドトキシン、リピドX、Corynebacterium parvum(Propionobacterium acnes)、Bordetella pertussis、Mycobacterium vaccae、ポリリボヌクレオチド、アルギン酸ナトリウム、ラノリン、リゾレシチン、ビタミンA、インターロイキン2およびインターロイキン−12のようなインターロイキン、サポニン、リポソーム、レバミソーム、DEAE−デキストラン、ブロックコポリマーまたは他の合成アジュバントを含む。そのようなアジュバントは、種々の源、例えば、Merck Adjuvant65(Merck and Company,Inc.,Rahway,N.J.)またはフロイントの不完全アジュバントおよび完全アジュバント(Difco Laboratories,Detroit,Michigan)から商業的に入手可能である。水酸化アルミニウムのみがヒトの使用で認可されている。例えば、M.vaccaeのような他のアジュバントのあるものは臨床試験で認可されている。
適当には、アジュバントは、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属のいずれかの1つからの細菌の全細胞であり得る。
当分野においては、金粒子に付着した実質的にDNA配列であって、ヘリウムガンによって皮膚に発射されるDNAワクチンは効果的なワクチン送達系であることが知られている。慣用的なワクチンとは異なり、これらのDNAワクチンは伝統的なアジュバント成分を必要としない。本発明のさらなる態様によると、本明細書中で定義された免疫モジュレーター組成物は、適当には、そのようなDNAワクチンと組み合わせて用いて、免疫応答の影響を増大させ、またはそれに参画することができる。
[医薬組成物]
本発明は、治療上有効量のRhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の全細胞および、必要に応じて任意に、医薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤(その組合せを含む)を含む医薬組成物を提供する。
本医薬組成物は2つの成分−抗原を含む第1の成分、およびそのアジュバントを含む第2の成分を含むことができる。前記第1および第2の成分は順次に、同時にまたは一緒に、および異なる投与経路によってさえ送達することができる。
適当には、抗原は病気過程の一部として宿主組織内にさえ生じさせることができる。従って、抗原は細菌、宿主または寄生虫の侵入に由来し得、あるいはストレスタンパク質または腫瘍抗原のような組織からの物質放出であり得る。
医薬組成物はヒトおよび動物医薬におけるヒトまたは動物用法のためとすることができ、典型的には、医薬上許容される希釈剤、担体または賦形剤いずれかの1以上を含む。治療用途のための許容される担体または希釈剤は医薬分野で周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.(A.R.Gennaro編、1985)に記載されている。医薬担体、賦形剤または希釈剤の選択は、意図した投与経路および標準的な医薬プラクティスに従って選択することができる。医薬組成物は、担体、賦形剤または希釈剤として、あるいはそれに加えて、いずれかの適当なバインダー、滑沢剤、懸濁化剤、コーティング剤、可溶化剤を含むことができる。
保存剤、安定化剤、色素およびフレーバー剤でさえ医薬組成物中に供することができる。保存剤の例は安息香酸ナトリウム、ソルビン酸およびp−ヒドロキシ安息香酸のエステルを含む。抗酸化剤および懸濁化剤を用いることもできる。
異なる送達系に応じて異なる組成物/処方要件があり得る。一例として、本発明の医薬組成物は、ミニポンプを用いて、あるいは粘膜経路によって、例えば、吸入または摂取可能な溶液用の鼻スプレイまたはエアロゾルとして送達するように、あるいは送達によって、例えば、静脈内、筋肉内、皮内または皮下経路によって非経口(組成物が注射形態によって処方される)により送達されるように処方することができる。別法として、処方は双方の経路によって送達されるように設計することができる。
好ましくは、本発明においては、処方は注射形態である。より好ましくは、処方は皮内注射される。
好ましくは、本発明においては、処方は経口的に許容される組成物である。
剤を、胃腸粘膜を通って粘膜投与すべき場合、それは胃腸管を通る通過の間に安定なままとすべきであり;例えば、それはタンパク質分解に対して耐性であり、酸性pHによって安定であって、胆汁の洗剤効果に対して耐性であるべきである。
適当であれば、医薬組成物は、坐薬またはペッサリーの形態での吸入によって、ローション、溶液、クリーム、軟膏またはダスティング粉末の形態で、局所的に、皮膚パッチの使用によって、澱粉またはラクトースのような賦形剤を含有する錠剤、または単独または賦形剤を混合したカプセルまたはオビュール(ovule)にて、またはフレーバー剤または着色剤を含有するエリキシル、溶液または懸濁液の形態で経口投与することができるが、あるいはそれらは非経口、例えば、静脈内、筋肉内、皮内または皮下注射することができる。非経口投与では、組成物は他の物質、例えば、溶液を血液と等張とするための十分な塩または単糖を含有することができる滅菌水溶液の形態で最良に用いることができる。バッカルまたは舌下投与では、組成物は、慣用的に処方することができる錠剤またはロゼンジの形態で投与することができる。
[医薬的組合せ]
本発明の剤は1以上の他の医薬上活性な物質と共に投与することができる。一例として、本発明は本発明による免疫モジュレーター組成物および/または医薬組成物、および1以上のステロイド、鎮痛剤、抗ウイルス剤、IL−2のようなインターロイキン、または他の医薬上活性な物質での同時または順次の処置をカバーする。
これらの療法は順次の、同時の、または一緒での物質の投与を含む。
[免疫エンハンサー]
本明細書中で用いられる用語「免疫エンハンサー」は、単離された、または培地中のいずれかの1以上の細菌を意味し、これは、対象に投与された場合に、その対象の健康に役立つ。好ましくは、この利点は、対象の細胞性免疫応答の修飾によって達成される。
本発明によると、免疫エンハンサーは、例えば、対象、好ましくは子供または老齢の対象において免疫系不調和の治療または予防、あるいは対象、例えば哺乳動物、特に家畜またはヒトの免疫系を増強するために用いることができる。
免疫エンハンサーは、特別に設計された食品、または動物飼料、例えば本発明の細菌を補足したブタ動物飼料にて消費によって投与することができる。
免疫エンハンサーは直接的注射のような他の経路によって投与することもできる。
好ましくは、細菌を殺して、生きた製品を維持する困難性を回避する。
[細胞性免疫応答を変調する細菌の同定]
もう1つの態様において、本発明は、細胞性免疫応答を変調する(例えば、修飾する)Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌の1以上の全細胞を同定する方法であって、(a)第一のテスト動物を免疫刺激体と接触させるステップと;(b)第二のテスト動物を細菌と混合した免疫刺激体と接触させるステップと;(c)テスト動物の各々における細胞性免疫応答を測定するステップと;次いで、(d)テスト動物の各々における細胞性免疫応答を比較するステップとを含み、免疫刺激体単独と比較して細菌と混合した免疫刺激体からのより低い細胞性免疫応答を、当該細菌による細胞性免疫応答の修飾の指標とする方法に関する。
もう1つの態様において、本発明は、Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属から選択される細菌の種のTh1/Th2応答を測定する方法に関し、その方法はツベルクリン皮膚テストの利用を含む。マウスにおいては、ツベルクリン皮膚テストは、好ましくは、足肉趾で行われる。優勢なTh1反応では、陽性の足肉趾で免疫応答は24時間において最大であり、48時間で消滅する。しかしながら、Th2反応性が増加するにつれ、48時間陽性足肉趾免疫応答は増加し、24時間において足肉趾免疫応答を超えさえすることができる。
BCGワクチン接種の効果はこのツベルクリン皮膚テストを用いてよく記載されている。従って、テストアッセイを用いて、本発明による免疫モジュレーター組成物の導入によりBCG細胞性免疫応答が変調するか否かを評価することができる。
本明細書中で用いられるごとく、用語「テスト動物」は、免疫刺激体に対する細胞性免疫応答を誘導するいずれかの動物をいう。好ましくは、テスト動物は哺乳動物である。より好ましくは、テスト動物、ラット、ハムスター、ウサギ、モルモットまたはマウスである。より好ましくは、テスト動物はマウスである。
好ましくは、細菌はTヘルパー細胞応答を修飾する。適当には、細菌は、Th1およびTh2応答を減少させることによってTヘルパー細胞応答を修飾することができる。適当には、細菌はTh1応答を増加させ、Th2応答を減少させることによってTヘルパー細胞応答を修飾することができる。適当には、細菌は、Th2応答に影響することなくTh1応答を増加させることによってTヘルパー細胞応答を修飾することができる。
好ましくは、免疫刺激体は公知のTh1およびTh2応答を有する。例えば、免疫刺激体BCGでは、反応は、通常、それがTh1応答のインジケーターである場合、24時間において最大であり;48時間における反応は通常はより低く、Th2寄与を含む。BCGは圧倒的にTh1応答を刺激することが知られている。そのような免疫刺激体の使用によって、テスト細菌のTh1/Th2応答を測定することができ、従って、特定の病気および/または障害を治療および/または予防するために所望のTh1/Th2応答を有する1以上の細菌を同定することができる。
好ましくは、細胞性免疫応答はツベルクリン皮膚テストを用いて測定される。BCGのような免疫刺激体でのワクチン接種は、後にテストした場合に、ツベルクリン(Tubercle bacilliの可溶性調製物)での皮膚テストに対する応答を誘導する。局所的反応は、ツベルクリンの注射の後、種々の間隔、例えば、24時間、48時間および72時間で測定される。簡単に述べれば、ツベルクリンに対する陽性免疫応答を誘導する免疫刺激体(例えば、BCG)を用いる。テスト動物ではツベルクリン皮膚テストは、好ましくは足肉趾で行われる。優勢なTh1反応においては、陽性足肉趾応答は通常は24時間において最大であり、48時間において消滅する。しかしながら、Th2反応性が増大するにつれ、48時間陽性足肉趾免疫応答は増加し、24時間においては足肉趾免疫応答を超えさえし得る。従って、前記アッセイを用いて、本発明による免疫モジュレーター組成物の導入が細胞性免疫応答を変調するか否かを評価することができる。
好ましくは、免疫刺激体はBCGである。
実施例によって本発明をさらに記載するが、これは本発明を実施するにおいて当業者を助けるために掲げる意図のものであって、本発明の範囲を断じて制限する意図ではない。
[方法]
〔ツベルクリン皮膚テスト〕
ツベルクリン皮膚テストは、細胞性免疫応答に対する、免疫モジュレーター組成物、すなわち、本発明による全死菌細胞を含む細菌組成物/懸濁液の効果を評価するための適切なモデルアッセイである。
BCGワクチン接種はツベルクリンに対して陽性免疫応答を誘導する。マウスにおいては、ツベルクリン皮膚テストは、好ましくは、足肉趾で行われる。優勢なTh1反応においては、陽性足肉趾免疫応答は24時間において最大であり、48時間において消滅する。しかしながら、Th2反応性が増大するにつれ、48時間陽性足肉趾免疫応答は増加し、24時間において足肉趾免疫応答を超え得る。
BCGワクチン接種の効果は、このツベルクリン皮膚テストを用いてよく記載されている。従って、前記テストアッセイを用いて、本発明による免疫モジュレーター組成物の導入がBCG細胞性免疫応答を変調するか否かを評価することができる。
〔細菌懸濁液の調製〕
Rhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属からの細菌種は、発酵槽中、Sauton培地のような無抗原培地中で2〜28日間増殖させることができる。別法として、注目する細菌種は固体スロープにて増殖させることができる。代替方法は当業者に容易に入手可能である。
得られた細菌を収穫し、直接的に、または洗浄後に用いて、緩衝液中の懸濁液を作成することができる。細菌細胞懸濁液は、用量当たり100,000〜10,000,000,000バチルスの間を含有するように調製される。細菌細胞は水または生理食塩水に再懸濁させる。好ましくは、生理食塩水はホウ酸塩でpH8.0で緩衝化させる。好ましくは、適切には、121℃にてオートクレーブ中で15分間加熱することによってバチルスを不活化させる(殺す)。得られた細菌懸濁液は全細胞を含む。
[実施例1:Rhodococcus ruber(R.r.)による細胞性免疫応答の変調]
群1:若い成体メス交配マウスを対照群として未ワクチン接種で残した。
群2:若い成体メス交配マウスを、0日に、BCG(105バチルス)(Evans)でうなじにワクチン接種した。
群3:若い成体メス交配マウスを、第0日、加熱して殺したMycobacterium vaccae(M.v.)(107バチルス)が添加されたBCG(105バチルス)でうなじにワクチン接種した。
群1〜3における全てのマウスを、10日および30日において、ツベルクリン免疫応答につき足肉趾テストした。次いで、40日において、各マウスに加熱して殺したMycobacterium vaccae(107バチルス)を注射した。50日において、足肉趾でのツベルクリンテストを反復した。
群4:若い成体メス交配マウスをさらなる対照群として未ワクチン接種として残した。
群5:若い成体メス交配マウスを、0日に、BCG(Evans)(105バチルス)でうなじにワクチン接種した。
群6:若い成体メス交配マウスに、0日に、加熱して殺したMicrobacterium vaccae(107バチルス)が添加されたBCG(105バチルス)でうなじにワクチン接種した。
群7:若い成体メス交配マウスを、加熱して殺したRhodococcus ruber(107バチルス)を添加したBCG(105バチルス)でうなじにワクチン接種した。
群8:若い成体メス交配マウスを、0日に、加熱して殺したRhodococcus ruber(106バチルス)を添加したBCG(105バチルス)でうなじにワクチン接種した。
群4〜7における全てのマウス、30日において、ツベルクリン免疫応答につき足肉趾テストした。次いで、40日において、各群の半分がさらなる処置を受けず、各群の第2の半分がRhodococcus ruber(107バチルス)の注射を受けるように、各群を分けた。50日において、足肉趾についてのツベルクリンテストを反復した。
実施例1の結果を表1に示す。
Figure 0005101795
対照群1において、Mycobacterium vaccaeの処理により、24時間(p<0.01)および48時間(p<0.001)の双方の後において、ツベルクリンに対する免疫応答の統計学的に有意な増加が誘導された。しかしながら、対照群4において、Rhodococcus ruberでの処理によても、24時間および48時間双方の後において、ツベルクリンに対する免疫応答の有意な変化は誘導されなかった。双方の時点において前記M.v.の結果は前記R.r.の結果よりも有意に大きかった(p<0.02)。
BCG群(群2および群5)において、24時間〜48時間の間におけるツベルクリンに対する応答の降下は、Mycobacterium vaccaeでの処理を受けたマウスにおける(平均降下は14.9±9.6である)よりもRhodococcus ruberでの処理を受けたマウス(平均降下は28.2±15.7である)においてより大きかった(p=0.06)。
BCG+Mycobacterium vaccae群(群3および群6)において24時間から48時間の間におけるツベルクリンに対する応答の降下は、Mycobacterium vaccaeでの処理を受けたマウスにおける(平均降下は12.7±7.0である)よりもRhodococcus ruberでの処理を受けた群(平均降下は41.0±41.0)において再度より大きかった(p<0.05)。
これらのデータは、Mycobacterium vaccaeでの処理の後には観察されない、Rhodococcus ruberでの処理の後にTh2応答の下方調節があることを示唆する。
BCG+R.r.群(群7および8)において、R.r.107(群7)または106(群8)をBCGに添加する効果は非常に似ており、R.r.での第2の注射の後、24時間から48時間の間に応答の実質的な減少があった(15.5±10.0)。
[実施例2:Nocardia asteroides(N.a.)、Gordonia bronchialis(G.b.)またはTsukamurella inchonensis(T.p.)を用いた細胞性免疫応答の変調]
この実験は、BCG単独、または107のM.v.、Nocardia asteroides(N.a.)、Gordonia bronchialis(G.b.)またはTsukamurella inchonensis(T.p.)を添加したBCGで6匹のマウスの群をワクチン接種して28日後に、ツベルクリンでの足肉趾テストの効果を比較するように設計した。この効果がこれらの添加した生物の各々に対する免疫応答についてのものであるかを見出すために、動物の群を、それらを、そのワクチン接種に含ませた生物から作成した皮膚テスト試薬(Vaccin、Rubin、Asterin、BronchialinおよびInchonensin)と共にツベルクリンでテストしてから28日後、他の足肉趾でテストした。
結果を表2に詳細に示す。
Figure 0005101795
細菌懸濁液の全ては、BCG単独に続いてのそれと比較して、24時間および48時間双方において測定した28日ツベルクリン応答を抑制した(p=0.05;p=0.2)。
ツベルクリンおよびVaccinを例外として、これは、これらの皮膚テスト試薬のいずれかを用いた最初であった。24時間における新しい試薬に対する応答性の差は、恐らくは、それらがタンパク質見積もりによるものを除いて平衡化されてなかったからであった。しかしながら、全ては、50日において24時間から48時間の間の応答の降下を示し、これは、免疫調節活性を示唆する。
[実施例3:Rhodococcus ruber処理による細胞性免疫応答の変調]
この実験は、引き続いてのBCGワクチン接種に対するジフテリア/破傷風/百日咳(DTP)ワクチンおよび/または麻疹/流行性耳下腺炎/風疹(MMR)ワクチンの効果、および予め7日または28日に与えたRhodococcus ruberの加熱して殺した全細胞での、またはDTPの第1の用量での処理によってどのようにして効果が修飾することができるか調べるように設計した。
実験の設計は表4に詳細に示す。6匹の離乳雌交配マウスの群に表4に詳細を示す処理を受けさせた。全てのマウスを、BCGワクチン接種から28日後にツベルクリンテストした。
結果を表3に示す。
Figure 0005101795
〔本実験で示された傾向〕
BCG前にDTP/MMRを投与した効果(表4における群3および4):BCGでのワクチン接種前におけるDTPおよびMMRの投与は、24時間応答の増加、および24時間から48時間応答の間の良好な分離をもたらす。
BCG前にR.r.を投与した効果(表4における群6):BCGから49日前に投与したR.r.は24時間から48時間においてツベルクリン応答を増加させ、それらの間の差を増加させる。
BCG前のDTP/MMR前にR.r.を投与した効果(表4における群1および2):DTP/MMRから28日前にR.r.を投与すると、24時間から48時間ツベルクリン応答の間の分離を増加させ、他方、DTP/MMRから7日前にR.r.を投与すると、引き続いてのBCGに対する効果を抑制する。
BCG前のDTP/MMRの第1の用量と共にR.r.を投与する効果(表4における群7):DTPの最初の注射と共にR.r.投与すると、引き続いてのBCGワクチン接種に対するDTP/MMRの効果に差を生じないようであった。
予備的知見は、DTP、引き続いてのMMRでの免疫化は、BCGワクチン接種に先立って、28日後におけるツベルクリン反応性に対して効果を有する。また、前記実験は、BCGワクチン接種に先立ってのR.r.でのワクチン接種が、28日後におけるツベルクリン反応性に対して効果を有することを示唆する。BCGワクチン接種に先立っての、DTP/MMRに対するR.r.でのワクチン接種のタイミングは重要であり得る。
[実施例4:成体モルモットにおける皮内注射に対する局所的皮膚の反応]
3匹の動物の左側わき腹の毛を剃って、頭部端部に108のM.vaccaeを含有する0.1ml、および動物の尾端部に向けて5cmのところに109のM.vaccaeを含有する0.1mlの皮内注射を投与した。
もう1つの3匹の動物を右側わき腹の毛を剃り、頭部端部に108のR.rhodochrousを含有する0.1ml、および動物の尾端部に向けて5cmのところで109のR.rhodochrousを含有する0.1mlの皮内注射を投与した。
Figure 0005101795
3匹のモルモットにおいて、109のR.ruber(ヒトおよび動物用途での典型的な用量)の皮内注射(獣医学および医療プラクティスで典型的に用いられる注射の経路)に対する局所的反応は、もう1つの3匹のモルモットにおけるM.vaccaeの同一用量に対する反応と同様であった。注射後48時間において、R.ruberに対する反応はMM.vaccaeに対するものよりも小さかった(p<0.05)。従って、R.ruberはM.vaccaeよりもより医薬的に許容され得る。108用量においていずれかの製剤に対する局所的反応はなかった。
[実施例5:皮下注射に続く毒性]
皮下用量に対する毒性の証拠は、R.ruberの3注射を受けた17匹のラットを1日、14日および28日の年齢である場合にそれらのラットでは観察されなかった(これらの最後のものは、6匹を除いてTrypanosoma cruziでの挑戦から7日後に投与した)。
48時間における109のR.ruberに対する応答はM.vaccaeの同一用量に対するものよりも小さかった(p<0.05)。7日または14日において差はなかった。多くのマウスは、毒性のいずれの証拠もなくして、本発明の細菌の種々の種の注射を受けた。
[実施例6:ラットにおけるトリパノソーマ症の変調]
〔動物の調製〕
i)1日齢雄「1」ラットに、皮下注射を介して、0.1mlの体積にて107のRhodococcus ruberまたはRhodococcus coprophilusをうなじに注射した。
ii)14日後、雄「1」ラットに、0.1mlの107のR.ruberの第2の皮下注射を左側に投与した。
iii)T.cruziのTulahuen株の106のトリポマスチゴートでの皮下経路を介して、21日に、動物を生きたTrypanosoma cruziで攻撃した。感染した血液トリポマスチゴートを、CBiマウスにおける系列的継代によって維持した。
iv)注射から7日および14日後に(pi:post-infection)、5μlのヘパリン処理尾静脈血液の直接的顕微鏡観察によって、T.cruziの血流形態を標準化された条件下で評価した。データは寄生虫の数/50視野として表した。
v)7日後、107のR.ruberのさらなる皮下注射を0.1mlの体積にて右側に投与した。
対照動物にはT.cruziでの攻撃のみを受けさせた。
動物のもう1つの群は比較目的で攻撃しないままでおいた。
結果を表5に示す。
Figure 0005101795
このデータは、最大数が対照動物で見出された時点における血液中の寄生虫循環の有意な低下を示す。これは、R.ruberおよびR.coprophilusの双方がTh1応答を増強させることを示唆する(7日は、Th2経路を介する抗体生産には余りにも早い)。
[実施例7:新生マウスにおける、毒性、特に、成長速度および引き続いてのBCGワクチン接種に対するRhodococcus coprophilus NCIMB11211、Gordonia bronchialis NC10667およびTsukamurella inchonensis NC13040の効果の調査]
毒性の代替テストは、Gordonia bronchialis、Rhodococcus coprophylusまたはTsukamurella inchonensisの皮下注射を誕生の日、および別の部位においては再度、21日に投与することである。これらの動物、および生理食塩水を注射した対照を3ヶ月間にわたって規則的間隔で体重を測定した。
〔方法〕
9匹の後期妊娠期間の妊娠Balb Cマウスを用いる。
死菌懸濁液の調製:10日Sauton抗発泡ブロス培養から懸濁液を調製し、遠心し、ホウ酸塩緩衝化生理食塩水10mg/mlとして再懸濁し、オートクレーブ処理し、4℃にて貯蔵する。10mg/ml、1010/mlをホウ酸塩中に1/2希釈し、5×109が得られ、次いで、ホウ酸塩緩衝液中に1/10希釈し、用いるための20μ中の107の最終濃度を得る。
<1日>
誕生の日に、新生マウスを単独で取り出し、107死菌懸濁液で同腹子のうなじに注射し、母親に戻す。
対照同腹子のうなじに、20μlのM15ホウ酸塩緩衝化生理食塩水を注射する。
同腹子1=2匹の雌+3匹の雄(Rhodococcus coprophilus NCIMB 11211)
同腹子2=2匹の雌+3匹の雄(Rhodococcus coprophilus NCIMB 11211)
同腹子3=5匹の雌+3匹の雄(Gordonia bronchialis NC10667)
同腹子4=3匹の雌+4匹の雄(Gordonia bronchialis NC10667)
同腹子5=1匹の雌+1匹の雄(ホウ酸塩緩衝化生理食塩水)
同腹子6=3匹の雌+1匹の雄(ホウ酸塩緩衝化生理食塩水)
同腹子7=5匹の雌+3匹の雄(Tsukamurella inchonensis NC13040)
同腹子8=5匹の雌+4匹の雄(Tsukamurella inchonensis NC13040)
同腹子9=4匹の雌+5匹の雄(ホウ酸塩緩衝化生理食塩水)
<21日>
マウスを離乳させ、同腹子を性別鑑定し、2群の雄および雌に分ける。
体重を測定し、再度ワクチン接種する。消えないペンで尾をマークすることによって個体をマークする。
体重を量り、3ヶ月の間、毎週尾を再マークする。
図1は、離乳から12週間にわたっての、体重増加平均/同腹子雌テストおよび対照の結果を示す。
図2は、離乳から12週間にわたっての、体重増加平均/同腹子雌テストおよび対照の結果を示す。
体重増加は全ての群において同一であり、57匹の内2匹の動物が3ヶ月にわたって死亡したのに過ぎなかった。双方は雄であり、離乳後に、他の雄と一緒にした後に死亡した。従って、動物の体重増加および進行はテストした3つの種によって影響されないと結論することができる。
[実施例8:ツベルクリン皮膚テスト応答を通じて測定したBCG免疫化に対する効果]
BCGでのワクチン接種は、4週間後にテストした場合に、ツベルクリン(Tubercle bacilliの可溶性調製物)での皮膚テストに対して応答を誘導するという原理に基づき、免疫モジュレーターテストモデルを工夫する。ツベルクリンの注射から24時間、48時間および72時間後に局所的反応を測定する。マウスにおいては、反応は、通常、ツベルクリンにおける抗原に対するTh1応答のインジケーターである24時間において最大である。48時間における反応は通常はより低く、Th2の寄与を含む。72時間における反応は、しばしば、48時間におけるよりも僅かに低く、これはTh2応答である。このBCG後ツベルクリン反応は、先の初回抗原刺激によって変調することができ、従って、反応のTh1およびTh2成分は初回抗原刺激試薬の性質を反映するであろう。
〔方法〕
3月齢の時に実施例8に従って初回抗原刺激したマウスのうなじに、100μl中の106BCGを、各テストおよび対照群の半分に注射した。
4ヶ月にて、試薬T1475 1mg/mlでツベルクリンテストを行う。100μlを1.9mlに希釈して、50μg/mlの最終濃度とする。4℃で保存する。用量は後足肉趾に投与する50μl中の2.5μg用量である。24、48および72時間にマイクロメーターを用いてツベルクリン応答腫れを測定する。
〔結果〕
図3は、Gordonia bronchialisが24時間TH1効果を増強させることを示す。
図4は、Tsukamurella inchonensisが24時間TH1応答を増強させ、72時間TH2応答を抑制することを示す。
図5は、Rhodococcus coprophilusがTH1およびTH2応答の双方を抑制することを示す。
Figure 0005101795
〔結論〕
テストした種は、各々、BCG攻撃に従うツベルクリンテストに対して異なる効果を誘導した。
Rhodococcus rhodocrousは、Th2応答を変化させることなく増強されたTh1応答を誘導した。また、Rhodococcus rhodnii、Dietzia marisおよびGordonia terraeもこの機能を有することが示された。Rhodococcus ruberもまたこの機能を有する。
Tsukamurella inchonensisはTh1応答を増強させるか、あるいは変化しないままとし、Th2応答を下方調節した。また、Gordonia bronchialis、Gordonia amaraeおよびNocardia asteroidsもまたこの機能を有する。
Rhodococcus coprophilusは、Th1およびTh2応答の双方を強く下方調節した。
これらの結果は、本発明のいずれの代表的種での2初回抗原刺激免疫化の影響も、第2の免疫化後少なくとも9週間継続することを明らかに示す。
[実施例9:免疫モジュレーターテストモデル]
BCGでのワクチン接種は、4週間後にテストするときに、ツベルクリン(Tubercle bacilliの可溶性調製物)での皮膚テストに対して応答を誘導するという原理に基づき、免疫モジュレーターテストモデルを工夫する。ツベルクリンの注射から、24時間、48時間および72時間後に局所的反応を測定する。反応は通常、ツベルクリンにおける抗原に対するTh1応答のインジケーターとなる24時間において最大である。48時間における反応は通常はより低く、Th2の寄与を含む。72時間における反応は、しばしば、48時間におけるよりもわずかに低く、これは、Th2応答である。このBCG後ツベルクリン反応は先の初回抗原刺激によって変調することができ、従って、反応のTh1およびTh2成分は初回抗原刺激試薬の性質を反映するであろう。
公知の免疫刺激体BCGを若い3週齢マウスのうなじに注射し、マウス足肉趾へのツベルクリンの皮下注射によって、ツベルクリン応答を1ヶ月後に測定する。次いで、得られた腫れ、すなわち、「ツベルクリン応答」を24時間、48時間および72時間で測定する。24時間における腫れは、初期またはTh1媒介応答と考えられ、48時間および72時間における腫れは、後期またはTh2媒介応答と考えられる。健康なマウスにおけるBCGは、圧倒的に、TH1応答を刺激する。
〔方法〕
<(a)BCG皮内ワクチン10用量バイアル(Evans Medical)>
シリンジおよび針を用いて1ml供給滅菌水で復元して、5分間で溶解させる。1×107/mlとなるはずである。
シリンジおよび針を用い、ワクチンの全てを取り出し、プラスチックビージュウ瓶に移す。
1.35mlのM15ホウ酸塩緩衝化生理食塩水中に0.15mlを1/10希釈し100μl中の105を得る。
用量はうなじへ投与される100μl中の105である。
<(b)ツベルクリン>
T1475 1mg/ml
1.9ml中の100μlを希釈して、50μg/mlの最終濃度とする。
4℃で保存する。
用量は、後足肉趾へ皮内投与される50μl中の2.5μgである。
マイクロメーターを用い、24時間、48時間および72時間にツベルクリン応答を測定する。
図6は、非ワクチン接種対照と比較した1ヶ月後におけるBCGに対するツベルクリン応答を示す。
<(c)テスト懸濁液の調製>
遠心によって収穫したSautonブロス中で培養を増殖させ、M15ホウ酸塩緩衝化生理食塩水中10mg/mlの濃度で再懸濁し、4℃で保存する。
10mg/ml=100μl中109
1/10希釈=100μl中108
150μlの108を1.2ml M15ホウ酸塩に添加し、150μlのBCGを添加する。
今回、用量は、うなじへ注射される100μl中の105のBCG+107のテスト生物である。
〔結果〕
図7は、細菌の3つの種によるBCG効果の免疫変調を示すグラフである。ツベルクリン応答は24時間および48時間で測定する。
代表的な種は(Na)Nocardia asteroids;(Gb)Gordonia bronchialis;および(Tp)Tsukamurella inchonensisである。
図8は、細菌の2つの種によるBCG/BCG+の免疫変調を示すグラフである。ツベルクリン応答は24時間、48時間および72時間で測定する。代表的な種は(Rrh)Rhodococcus rhodocrousおよび(Dm)Dietzia marisである。
図9は、Rhodococcus属内の選択された種によるBCG効果の免疫変調を示すグラフである。ツベルクリン応答は24時間、48時間および72時間で測定する。(Rrh)Rhodococcus rhodocrous;(Rru)Rhodococcus ruber;(Rrhod)Rhodococcus rhodnii;(Rcop)Rhodococcus coprophilus;(Ropa)Rhodococcus opacus;(Reryth)Rhodococcus erythopolis。
図10は、BCG単独と比較した、108から104へのRhodococcus ruberのlog希釈で修飾されたBCGを用いるRhodococcus ruberについての最適用量を示すグラフである。
〔結論〕
このスクリーニングテストは、テスト懸濁液をBCGと混合し、BCG単独と比較することによって、28日後に、BCGに対する応答の尺度としてのツベルクリンテストが調節され、または修飾されたことを示す。この単純なモデルにおいて、免疫調節は、24時間および48時間双方における応答の大きさの低下として示される。これは、テスト懸濁液での初回抗原刺激が、BCGでの攻撃および引き続いてのツベルクリンテストの数週間前に行われるより長期の実験においてさらに調べることができる。
[実施例10:ブタにおける成長の増強]
これは、Th2の調節の有りまたは無しにて、Th1増強につき初回抗原刺激された免疫系の結果、臨床下感染によって成長の制限がより少ないという原理に基づく。従って、些細な感染がしばしばある状況において、それらの影響の低下の結果、動物がより大きな体重を獲得する。これは、Th2サイトカインの存在下で「悪液質因子」として作用する循環TNF(腫瘍壊死因子)のレベルを低下させ、食欲を減退させ、代謝速度を増加させることによって達成されるであろう。
実験は10匹の新生子豚で行った。これらの動物をその週に生まれた全ての他の子豚と共に維持した。
誕生の日:全ての子豚に、頚の左側にわたって0.1mlの皮内注射を与えた。次いで、それらの体重を測定し、雌豚に戻した。対照群(5匹の子豚)には、プラセボとしてホウ酸塩緩衝化(pH8)生理食塩水を注射した。テスト群(5匹の子豚)に、0.1mlのホウ酸塩緩衝化(pH8)生理食塩水中の500マイクログラムのRhodococcus coprophilusを与えた。
7日:全ての子豚に、頚の右側にわたって0.1mlの皮内注射を与えた。次いで、それらの体重を測定し、雌豚に戻した。対照群には、プラセボとしてホウ酸塩緩衝化(pH8)生理食塩水の注射を与えた。テスト群には0.1mlホウ酸塩緩衝化(pH8)生理食塩水中の500マイクログラムのRhodococcus coprophilusを与えた。
14日:全ての子豚に、頚の右側にわたって0.1mlの皮内注射を与えた。次いで、それらの体重を測定し、雌豚に戻した。対照群には、プラセボとしてホウ酸塩緩衝化(pH8)生理食塩水の注射を与えた。テスト群には、0.2mlのホウ酸塩緩衝化(pH8)生理食塩水中の2mgのRhodococcus coprophilusを与えた。
データを以下に掲げる。
Figure 0005101795
図11において、テスト試薬としてRhodococcus coprophilus(Ro)を投与した豚の成長増強を示すグラフが示される。
予備的調査は、Rhodococcus coprophilusを受けた子豚が、同様な注射であるが、緩衝化生理食塩水の注射を与えたプラセボ対照よりも有意により体重を増加させたことを示す。これの利点は、豚が、通常よりも2〜3週間早く正規の屠殺体重(90〜100kgの間)に到達することであろうことである。
理論に拘束されるつもりはないが、テスト試薬を受けた動物で観察された増大した体重増加は、良好な食品転換、感染の低下および低下したストレスの内の1以上によるものであろう。
[実施例11:ウマにおけるスイートイッチ(Sweet Itch)に関連するストレスの変調]
スイートイッチは、小昆虫Culicoidesによる咬傷に対してアレルギー応答をする通常ウマおよびポニーを悩ます皮膚疾患である。これは、最も普通には、鬣および尾のような毛が長い領域で起こる。毛の喪失、および強い痒みを伴う皮膚の厚化および炎症がある。ウマは刺激され、この疾患によって悩まされ、その結果として減量し得る。これは、通常、晩春および夏に罹患したウマおよびポニーに影響する毎年の疾患である。
毎年スイートイッチを発症することが知られている4匹のポニーおよびウマの群に、2週間に2回の皮内注射によって1mgのT.inchonensisを投与し、4匹には対照として緩衝化生理食塩水の注射を与え、二匹の動物には陽性対照としてM.vaccaeの1mgの注射を投与した。これはスイートイッチ季節の間に行われたので、ウマにはブランケット、フードおよびマスクを着用させて、小昆虫の咬傷から保護し、それは第2の注射から3週間後に取り除いた。コートの除去に続き、対象群においては、スイートイッチは1〜2週間以内に起こると予測され、その時に、効率の第1の十分な評価を行う。試薬の第3の注射はその時点で与えることができる。
結果を以下に示す。
Figure 0005101795
M.vaccaeおよびT.inchonensisの双方はスイートイッチによってもたらされたストレスの兆候を低下させることを示す(p<0.01)。
[実施例12:ウマにおけるスウィートイッチの予防]
小昆虫の季節に毎年かなりひどいスウィートイッチに規則的に罹ることが知られている7歳のウマに各々1月および2月に、注射の間を2週間にして、胸の全部にT.inchonensisの2回の皮内注射を与えた。5月の最後の数日およびCulicoidesの季節まで、前記ウマは、驚くべきことに、毛の喪失または皮膚の炎症のようなスウィートイッチの兆候を示さなかった。5月の終わりに、スウィートイッチは前記動物で出現せず、T.inchonensisの第3の注射を前記動物に投与した。投与から24〜48時間以内に、スウィートイッチの兆候(特に、皮膚炎症および/または毛の消失)は完全に消失した。次いで、前記動物は8月の初めまで再度スウィートイッチが無かった。再度、T.inchonensisのさらなる(4番目の)注射を投与し、再度、投与から24〜48時間内にスウィートイッチ兆候は消失した。
このデータを図21でグラフ形態で示す。
結果は、スウィートイッチ季節に先立って2回、次いで、スウィートイッチ季節の間に再度特別に、およびスウィートイッチの兆候が起こるときに投与したT.inchonensisは、スウィートイッチに対して効果的な予防および/または治療を提供するであろうことを示す。
[実施例13:癌のモデル]
この実験は、肺腺癌細胞系で攻撃したマウスの予防および治療における、106および107のGordonia bronchialis、Rhodococcus coprophilusおよびTsukamurella inchonensisの注射の効果を評価する。マウスの群に、わき腹への腫瘍細胞での皮下攻撃から5週間および2週間前に、うなじにテスト種または生理食塩水プラセボの皮下注射を与える。テスト生物および生理食塩水プラセボの第3の注射は、腫瘍攻撃から1週間の後にうなじに与える。注射された腫瘍細胞の数は、当該系に十分に精通した者が判断する。最終点は、攻撃から7日、14日および21日後における攻撃部位での腫瘍の存在およびサイズであろう。
予備的な調査は、テスト細菌の少なくとも1つが腫瘍の発生を遅らせ、腫瘍の進行を低下させることを示唆する。
[実施例14:細菌の全細胞の懸濁液が細胞抽出物よりも免疫性を変調するにおいて効果的であることを示すため、比較調製物を作成し、BCG攻撃/ツベルクリン皮膚テスト系でテストする。]
100mgのTsukamurella inchonensisを、生物の10mgの湿潤重量/mlの濃度にて、予め重量測定した遠心管中の緩衝化生理食塩水(pH8.0)に懸濁させる。全10mlを超音波処理機で処理して、生物の大部分を破壊する(70〜80%)。
音波処理物を管中で15000rpmにて1時間遠心し、上清を注意深く除去し、テスト抽出物として0.2μmのポアサイズに膜フィルターを通す。沈積物を有する管の重量を再度測定して、破壊されない全生物+細胞壁デブリスなどの割合を決定する。これは64mgである。次いで、0.01mgのT.inchonensisに同等の抽出物の体積を見積もり、これを同等な0.01mg(107に近似)全バチルスと比較する。
10匹の動物の群に、離乳時、および7日後に、抽出物またはバチルス全細胞懸濁液(0.01mg/用量と同等)または緩衝化生理食塩水プラセボの注射をうなじに与える。2週間後に、動物をBCGで攻撃する。28日後、ツベルクリンテストを行い、24時間、48時間および72時間に読み取る。(このデータは9月までに準備される)。
〔結果〕
何も無し、ホウ酸塩緩衝液、T.inchonensis全細胞または可溶性抗原(濾過した音波処理物)での初回抗原刺激後に投与したBCGワクチン接種後におけるマウスでのツベルクリン応答。
Figure 0005101795
T.inchonensis濾過音波処理物での初回抗原刺激は、48時間および72時間における応答を増加させる(Th2応答性)。これは、おそらくは、BCGおよびT.inchonensisの間の共有された抗原に対する炎症性抗体生産の増加によるものであろう。結果は、音波処理物での初回抗原刺激の結果、全死生物での初回抗原刺激に続くそれとは異なる応答がもたらされる。
予備的調査は、細菌の全細胞は細胞抽出物よりも免疫性を変調するにおいて効果的であることを示唆する。
[実施例15:豚によるストレス]
豚(子豚)におけるストレスに対するRhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属の1以上からの細菌の全細胞の効果を評価するために、これらの属の1以上からの1以上の種を豚でテストした。
唾液コルチゾルの測定は、実験室、農場、野生捕獲および放し飼い動物において急性ストレスを定量する非侵入的方法である。我々は、以下に、豚または羊からの唾液収集の方法、およびヒト唾液中のコルチゾルを測定するために設計された商業的に入手可能なコルチゾル酵素連結免疫吸着検定法(ELISA)の使用を詳細に記載する。このELISAキットは、豚および羊において唾液コルチゾルを測定するのに成功して用いられてきた。
〔方法〕
<唾液試料の収集>
1.豚は強い日周期性(毎日の)コルチゾルリズムを有しており、これは、豚が天然では1日の内で遅くよりも朝により高いレベルのストレスホルモンを有することを意味する。豚では、最高のコルチゾルレベルは0700時に見出され、深夜に向けて減少する。この理由で、唾液試料は常に1日の同時刻に採取されることは非常に重要である。
2.飼料および飲物を取ると、唾液中のホルモンの濃度に影響し得る。最も現実的な結果を得るためには、豚が飼料または飲物を取っていないときに唾液試料を採取する。豚が飼料または飲物を取る前に試料を採取するのが最善である。
3.小さな豚では、他端を保持しつつ、豚に標準生綿蕾(着色したものが乾草中で見つけるのにより容易である)上の餌を取らせる。ほぼ4つの綿蕾(両端)は各豚につき十分な唾液を収集するはずである。より大きな豚では、より大きな生綿蕾を用いて、頬内側から唾液を収集する。ほぼ2つの大きな綿蕾は、十分な唾液を収集するはずである。最小0.2mlの唾液が豚当たりに必要である。
4.収集の後直ちに、綿蕾を切断して、エッペンドルフミクロ遠心管の内側に装着する。綿蕾を頂部の綿ビットと共にエッペンドルフに入れる。最高速度にて、ほぼ2分間、または唾液がエッペンドルフの底に沈降するまで遠心する。蕾の頂部をはたいて、中空部分から残りの唾液を得る。
5.一度に1つをエッペンドルフ当たり1を超える綿蕾を遠心することによって、最小0.1ml(エッペンドルフ上の第一のマーク)の唾液が各エッペンドルフで収集されるはずである。豚当たり2つのエッペンドルフを収集する。
6.同定用の数字および日付をエッペンドルフにはっきりと記す。
7.できる限り早く、唾液試料を、好ましくは−20℃にて、フリーザー中の気密再シール可能なバッグ中で貯蔵する。
<コルチゾルアッセイ>
1.プレートプランを立てる。
2.フリーザーから唾液試料を取り出し、霜を除く。
3.オーブンを25℃でスイッチを入れる。
4.使用前にELISA試薬を室温とする。
5.製造業者の指示に従って洗浄溶液を希釈する。
6.100μlのコルチゾル標準および唾液試料を二連にて適当なウェルに分注する。
7.200μlの酵素コンジュゲートを各ウェルに分注する。
8.プレートを10秒間振盪する。
9.(オーブン中)25℃にて1時間インキュベートする。
10.内容物を流しに処理することによって全てのウェルを3回洗浄し、マルチチャネルピペットを用いて400μlの洗浄溶液を各ウェルに分注し、再度内容物を処理し、さらに2回反復する。
11.逆さにしたプレートを吸収性タオルにしっかりと当て、いずれの過剰な洗浄溶液も除去する。アッセイの洗浄段階は非常に重要であり、プレートは適切に洗浄されなければならない。
12.200μlの基質溶液を各ウェルに分注する。
13.(オーブン中)25℃にて30分間インキュベートする。
14.ウェルを空にすることなく、100μlの停止溶液を各ウェルに分注する。
15.停止溶液を添加してから10分以内に450nmにてプレートを読む。
<唾液コルチゾルELISAキット>
Immunodiagnostic Systems Ltd,10 Didcot Way,Boldon Business Park,Boldon,Tyne and Wear,NE35 9PDから入手可能なヒト唾液のための96ウェルのキット。
1以上の唾液綿棒を3週間、64日および市販年齢4〜5ヶ月において各動物から採取する。唾液をストレス関連ホルモン、特にコルチゾルにつき分析する。
1以上のテスト細菌は神経内分泌免疫学的メカニズムによってストレスを減少させることが予測される。
[実施例16:ウマサルコイドの治療]
ウマサルコイド、ウマの最も普通の皮膚新生物はウシパピローマウイルス1および2での感染に関連している。
6歳の去勢ウマ(3/4サラブレッド;1/4ベルギーウォームブラッド)は先行する1年以上にわたって多数のサルコイド病巣を発症した。2002年の春に、いくつかの小さなイボ様成長が鼠径部/内部腿領域で高いことが判明した。
2002年8月に、1つの腫瘍が鞘近くにあり、写真を撮ると、この病巣は直径が約3cmの成長のブドウ様クラスターであり、これは潰瘍化が始まっていた。このクラスターの部分は肉芽があったが、結紮には適していなかった。もう1つの群の非潰瘍化イボ様成長は、約3.5×2.5cmの領域をカバーする右前脚の頂部で発生した。Camrosa軟膏(薬草治療剤)での毎日12回の処置を開始した。
2002年の8月に撮影した写真を図15および17に示す。
2002年秋に、小さなサルコイドは変わらぬままであったが、前脚の頂部における群は継続的に拡大して、約4.3×3cmの領域をカバーし、鞘近くの潰瘍化成長はサイズが3倍となった。
2003年1月、Tsukamurella inchonensisの最初の注射を与え、Camrosa軟膏を従前のように1日に2回継続した。全ての成長のサイズの非常にゆっくりとした減少が次の数ヶ月の間に認められた。
最初に、1mgのTsukamurella inchonensisの2回の皮内注射を、胸病巣(すなわち、右側前脚の頂部としての病巣)から約8〜10cm、および同一のリンパ節排出領域において2週間間隔で与えた。第二の注射から4週間後に、胸病巣はより平坦となり、消散しつつあった。大きなペニス病巣(すなわち、鞘近くの病巣)はより明瞭に肉芽があり、壊死が開始しているように見えた。
第二の注射から1ヵ月後に、T.inchonensisの第三の注射を与え、この時点で、リンパ節排出領域において胸の左前面には、サルコイド病巣はなかった。1ヵ月後に、サルコイドのさらなる消散は観察されなかった。
第三の注射から1ヵ月後に、第四の注射を与え、この時点では、再度、右側胸の病巣は数cm内であった。その1ヵ月後に、胸病巣はほとんど完全に消散し、前記ペニス病巣の壊死は進行しつつあり、他の鼠径部病巣はより小さいことが認められた。
2003年5月、ハエ忌避剤として毎日1回継続した潰瘍化成長を除いて全てにつき、Camrosa軟膏の適用を停止した。
2003年6月に撮った写真を図13、14および16に示す。
2003年8月までに、前脚の頂部における群がそうであったように、小さな増殖物の1つを除いて全てが消失した。鞘近くの増殖物は依然として潰瘍化していたが、現在、その最大サイズの約1/4であり、組織の小さなピースが増殖物を洗浄した場合に剥がれ落ちた。
2003年8月に撮った写真を図18、19および20に示す。図17に示すサルコイドは、T.inchonensisの投与に続いて2003年8月までに完全に治癒していたことに注意されたし。
全てにおいて、T.inchonensisの7用量を1月半ばと8月半ばの間に投与した。
〔結論〕
T.inchonensis調製物はサルコイド病巣を減少させるのに効果的であった。全てのサルコイドにわたり、約75%だけ減少した。調製物は、病巣と同一のリンパ節排出領域に投与した場合に特に効果的であった。
この処置は、ウイルスが病巣に制限されているという証拠があって、それが循環しているという証拠がほとんどない場合にこの条件で特に重要であろう(Nasir et al.Res.Vet.Sci.1997,63:289-290)。
これらの結果は、とりわけ、T.inchonensisを用いて、パピローマウイルスの存在に関連する通常の皮膚新生物を治療することができることを示す。これは、本発明が、例えば、その双方がパピローマウイルスによる感染によって引き起こされる、性器いぼおよび/または頚部の癌腫に先行する子宮頚部の形成異常の治療で有用であることを示す。
前記明細書に記載した全ての刊行物をここに引用して援用する。記載された方法および本発明の系の種々の修飾および変形は、本発明の範囲および精神を逸脱することなく当業者に明らかであろう。本発明を特別な好ましい実施形態に関連して述べてきたが、特許請求する本発明はそのような特別な実施形態に限定されるべきではないと理解されるべきである。事実、生物化学およびバイオテクノロジーまたは関連分野における当業者に明らかな発明を実施するための記載された形態の種々の修飾は、特許請求の範囲内にあることを意図する。
Figure 0005101795
[参考文献]
Figure 0005101795
Figure 0005101795
Figure 0005101795
離乳から12週間にわたる体重増加平均/同腹子雌テストおよび対照の結果を示すグラフである。 離乳から12週間にわたる体重増加平均/同腹子雄テスおよび対照の結果を示すグラフである。 Gordonia bronchialisが初期TH1効果を増強させることを示すグラフである。 Tsukamurella inchonensisが初期TH1応答を増強させ、後期TH2応答を抑制することを示すグラフである。 Rhodococcus coprophilusがTH1およびTH2応答を共に抑制することを示すグラフである。 非ワクチン接種対照と比較した一ヶ月後におけるBCGに対するツベルクリン応答を示すグラフである。 細菌の3つの種によるBCG効果の免疫変調を示すグラフである。ツベルクリン応答は24時間および48時間で測定する。代表的な種は(Na)Nocardia asteroides;(Gb)Gordonia bronchialis;および(Tp)Tsukamurella inchonensisである。 細菌の2つの種によるBCG/BCG+の免疫変調を示すグラフである。ツベルクリンは24時間、48時間および72時間で測定する。代表的な種は(Rrh)Rhodococcus rhodocrousおよび(Dm)Dietzia marisである。 Rhodococcus属内の選択された種によるBCG効果の免疫変調を示すグラフである。ツベルクリン応答は24時間、48時間および72時間で測定する。(Rrh)Rhodococcus rhodocrous、(Rru)Rhodococcus ruber、(Rrhod)Rhodococcus rhodnii;(Rcop)Rhodococcus coprophilus;(Ropa)Rhodococcus opacus;(Reryth)Rhodococcus erythopolis。 BCG単独と比較した、108から104のRhodococcus ruberのlog希釈で修飾したBCGを用いるRhodococcus ruberについての最適な用量を示すグラフである。 テスト試薬としてのRhodococcus coprophilus(Ro)を投与した豚の成長増強を示すグラフである。 T.inchonensisが投与されたウマにおけるスウィートイッチの病気の発症を示す。 T.inchonensisを投与したウマにおけるサルコイド病巣を示す2003年6月に撮った写真を示す。 T.inchonensisを投与したウマにおけるサルコイド病巣を示す2003年6月に撮った写真を示す。 T.inchonensisの投与に先立ってサルコイド病巣を示す2002年8月に撮った写真を示す。 T.inchonensisを投与したウマにおけるサルコイド病巣を示す2003年6月に撮った写真を示す。 T.inchonensisの投与に先立ってサルコイド病巣を示す2002年8月に撮った写真を示す。 T.inchonensisの投与に続いてサルコイド病巣を示す2003年8月に撮った写真を示す。前記病巣はかなり減少した(その最大サイズの約1/4[写真なし])。 T.inchonensisの投与に続いてサルコイド病巣を示す2003年8月に撮った写真を示す。前記病巣はかなり減少した(その最大サイズの約1/4[写真なし])。 T.inchonensisの投与に続いてサルコイド病巣を示す2003年8月に撮った写真を示す。 ウマにおけるスウィートイッチに関連するストレス応答のグラフ表示を示す。

Claims (16)

  1. Rhodococcus属、Gordonia属、Dietzia属、およびTsukamurella属から選択される細菌の10〜1010の不活化した全細胞を含む免疫モジュレーター組成物であって、使用時に前記免疫モジュレーター組成物が細胞性免疫応答を高めるか、または抑制する免疫モジュレーター組成物。
  2. 前記組成物が抗原およびアジュバントを含み、前記アジュバントがRhodococcus属、Gordonia属、Dietzia属、およびTsukamurella属から選択される細菌の全細胞を含む請求項1に記載の免疫モジュレーター組成物。
  3. Rhodococcus属、Gordonia属、Dietzia属、およびTsukamurella属から選択される細菌の10〜1010の不活化した全細胞と、医薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤とを含む医薬組成物であって、使用時に該医薬組成物が細胞性免疫応答を高めるか、または抑制する医薬組成物。
  4. 感染と、感染、ストレス、アレルギー、細胞性肺気腫、COPDまたは癌に伴う免疫学的異常と、免疫系不調和と、手術後ストレスと、手術後感染とから選択される1以上を治療または予防する医薬の製造における請求項1〜3のいずれかに記載の免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用。
  5. 感染、ストレス、アレルギー、細胞性肺気腫、COPD、癌および免疫系不調和から選択される1以上を治療または予防する医薬の製造における請求項1〜3のいずれかに記載の免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用。
  6. 子供のワクチンに対する副反応および/またはその結果の治療または予防用の医薬の製造における請求項1〜3のいずれかに記載の免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用。
  7. 細胞性免疫応答を高めるか、または抑制するための医薬の製造における請求項1〜3のいずれかに記載の免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用。
  8. 医薬として用いるための請求項1〜3のいずれかに記載の免疫モジュレーター組成物または医薬組成物。
  9. ワクチンにおいて、またはワクチンとして用いるための請求項1〜3のいずれかに記載の免疫モジュレーター組成物または医薬組成物。
  10. 前記ワクチンが、予防ワクチンまたは治療ワクチンである請求項9に記載の免疫モジュレーター組成物。
  11. 前記組成物が細胞性免疫応答を高めるか、または抑制する請求項9または10に記載の免疫モジュレーター組成物。
  12. 前記組成物が、抗原または抗原決定基をさらに含む請求項1〜11のいずれかに記載の免疫モジュレーター組成物および/または医薬組成物。
  13. 前記抗原または抗原決定基が、BCG(CalmetteおよびGuerinのバチルス)ワクチン、ジフテリアトキソイドワクチン、ジフテリア/破傷風/百日咳ワクチン、百日咳ワクチン、破傷風トキソイドワクチン、麻疹ワクチン、流行性耳下腺炎ワクチン、風疹ワクチン、OPV(経口ポリオワクチン)およびMycobacterium vaccae、またはその部分の1以上から選択される抗原または抗原決定基である請求項12に記載の免疫モジュレーター組成物および/または医薬組成物。
  14. 前記組成物が、2以上のそのような抗原または抗原決定基を含む請求項12または13に記載の免疫モジュレーター組成物および/または医薬組成物。
  15. 前記細菌が、Rhodococcus属から選択される請求項1〜3および8〜14のいずれかに記載の免疫モジュレーター組成物および/または医薬組成物。
  16. 前記細菌が、Rhodococcus ruber、Rhodococcus rhodochrous、Rhodococcus rhodnii、Rhodococcus coprophilus、Rhodococcus opacusおよびRhodococcus erythopolisの1以上である請求項15に記載の免疫モジュレーター組成物および/または医薬組成物。
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