JP6628019B1 - プレス成形鋼品 - Google Patents

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Abstract

プレス成形鋼品は、第一の部位と第一の部位に接続された第二の部位とを有し、第一の部位の金属組織中のマルテンサイト分率が90%以上であり、第二の部位の旧γ粒径のアスペクト比に対して、第一の部位の旧γ粒径のアスペクト比が1.4倍以上である。

Description

本発明は、プレス成形鋼品に関する。
本願は、2018年4月13日に、日本国に出願された特願2018−077657号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
自動車や各種産業機械などに使用される鋼製品には、耐摩耗性・疲労強度などの機械的性質を向上させるために、製品形状とするための成形工程を実施し、さらに浸炭焼き入れ・軟窒化などの表面硬化熱処理工程を実施する場合がある。成形工程としては、冷間加工や、ホットスタンプなどの熱間加工が挙げられる。特許文献1に開示される技術では、例えば、鋼材をAc3変態点以上まで加熱した後、400〜600℃の温度まで急冷する。その後、当該温度範囲で上記鋼材にプレス加工を実施した後、臨界マルテンサイト焼入れ速度を超える冷却速度にて鋼材を冷却する。また、特許文献2に開示される技術では、冷間成形工程後に表面硬化熱処理工程として、浸炭焼き入れを実施する。この浸炭焼き入れでは、浸炭温度となる1040〜1100℃まで鋼材を加熱し、炭化水素ガス雰囲気下とすることで鋼材の表面に炭素を侵入拡散させて耐摩耗性を向上させる。また、特許文献3に開示される技術では、表面硬化処熱処理工程として、軟窒化処理を実施する。この軟窒化処理では、550〜620℃に鋼材を加熱し、アンモニアガス・窒素ガス・炭酸ガスなどを含む混合ガス雰囲気で熱処理を行う。そして、この熱処理によって鋼材の表面に窒素及び炭素を侵入拡散させて疲労強度を向上させる。
また、特許文献4には、熱間プレス成形前に成形加工が容易にでき、かつ、成形品内に耐衝撃部位に相当する領域とエネルギー衝撃部位に相当する領域が要求される場合に、それぞれの領域に応じて、高強度と伸びのバランスを高レベルに達成することを目的とするプレス成形品が開示されている。具体的には、特許文献4に開示されたプレス成形品は、Nの含有量に基づいてTiの含有量を規定した鋼板を用いてプレス成形され、金属組織が、残留オーステナイト3〜20%、マルテンサイト80%以上である第1の領域と、金属組織が、残留オーステナイト3〜20%、フェライト30〜80%以上、ベイテニックフェライト30%未満、マルテンサイト30%以下である第2の領域とを有している。このようなプレス成形品において、第1の領域では、マルテンサイトの面積分率が80%以上と高いため高強度であり、また、第2の領域では上記のとおりTiを制御することでアスペクト比の大きなマルテンサイト組織となり伸びが向上することが開示されている。
特表2014−517149号公報 特開2015−160982号公報 特開2015−175009号公報 特開2013−185248号公報
しかしながら、成形工程後に、特許文献2、3のような表面硬化熱処理工程を実施することは、成形工程に加えて別の工程を実施することになるため、生産性が低くなってしまう問題があった。また、特許文献1に開示されたホットスタンプによる鋼製品の成形では、冷間加工による鋼製品と比べて耐摩耗性の向上が期待できるものの、耐摩耗性のさらなる向上が求められていた。特に、トランスミッション部品などでは、他の部品と接触して高い耐摩耗性が求められる部位と、他の部品と接触しない部位、または、接触するものの相対的に耐摩耗性の要求が低い部位とがある。特許文献1に開示された技術では、このような部分ごとの耐摩耗性の差別化について解決することはできない。
また、特許文献4に開示された技術は、高強度となる部位と、低強度で伸びの特性が向上した部位とに分ける技術であり、耐摩耗性の向上に寄与するものではない。
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、特定の部分についての耐摩耗性を向上させたプレス成形鋼品を提供するものである。
上記の課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明の一態様に係るプレス成形鋼品は、第一の部位と前記第一の部位に一体に連なる第二の部位とを有するプレス成形鋼品であって、前記第一の部位の金属組織中のマルテンサイト分率が体積%で90%以上であり、前記第一の部位の旧γ粒径のアスペクト比が、前記第二の部位の旧γ粒径のアスペクト比の1.4倍以上である。
また、上記プレス成形鋼品において、前記第一の部位の旧γ粒径のアスペクト比が1.5以上であるものとしても良い。
また、上記プレス成形鋼品において、前記第一の部位の厚さ方向中心部における当該厚さ方向のビッカース硬さは、前記第二の部位の厚さ方向中心部における当該厚さ方向のビッカース硬さよりも5%以上高いものとしても良い。
また、上記プレス成形鋼品において、前記第一の部位の厚さ方向におけるビッカース硬さが、当該厚さ方向の中心部に対して表面部の方が2%以上高いものとしても良い。
また、上記プレス成形鋼品において、前記第一の部位の厚さが、前記第二の部位の厚さよりも10%以上小さいものとしても良い。
また、上記プレス成形鋼品において、円板状に形成された底部と、前記底部の周縁から円筒状に突出している縦壁部とを備え、前記底部が前記第二の部位であり、前記縦壁部が前記第一の部位であるものとしても良い。
また、上記プレス成形鋼品において、前記第一の部位は他の部品と接触する接触面を有するものとしても良い。
また、上記プレス成形鋼品において、トランスミッション部品であるものとしても良い。
本発明によれば、第二の部位と比較して第一の部位について耐摩耗性を向上させたプレス成形鋼品を提供することができる。
本発明の実施形態の成形鋼品を示す断面図である。 図1に示すプレス成形鋼品の適用例を示す概要図である。 本発明の実施形態のプレス成形鋼品の製造方法を説明するフロー図である。 本発明の実施形態のプレス成形鋼品の製造方法を説明する温度履歴図である。 本発明の実施形態のプレス成形鋼品の製造する際に用いられる加工装置の例を示す断面図である。
以下、本発明に係る実施形態について図1から図5を参照して説明する。図1は、本実施形態のプレス成形鋼品の例を示している。図1に示すように、プレス成形鋼品10は、第一の部位10aと、第二の部位10bとを備えている。プレス成形鋼品10は、鋼材からなる。プレス成形鋼品10は、カップ形状に形成されており、円板状の底部11と、底部11の周縁から突出する円筒状の縦壁部12とを備える。底部11と縦壁部12とは、断面曲線状に形成された角部13を介して一体に連なっている。本実施形態では、縦壁部12が第一の部位10aであり、底部11が第二の部位10bである。すなわち、第一の部位10aと第二の部位10bとは一体に連なっている。そして、第一の部位10a及び第二の部位10bは、角部13である曲線部分を除く部分である。また、第一の部位10aは、第二の部位10bと比較して耐摩耗性を有する耐摩耗部を構成している。また、第一の部位10aは、プレス成形前の鋼材において第一の部位10aと対応する部位が後述する製造方法により加工されたため、当該部位10aの厚さがプレス成形前の厚さより小さい減肉部を構成している。
このようなプレス成形鋼品10は、例えば、トランスミッション部品などに用いられる。具体的な適用例を図2に示す。図2は、ベルト式無段変速機1を示している。図2に示すように、ベルト式無段変速機1は、出力軸2と、プーリ3と、本実施形態のプレス成形鋼品10からなるプランジャ部材4とを備える。プランジャ部材4は、底部11が出力軸2に取り付けられている。プーリ3は、出力軸2に固定された固定側プーリ半体3aと、固定側プーリ半体3aと出力軸2の軸方向Pに対向する可動側プーリ半体3bとを有する。可動側プーリ半体3bは、出力軸2に対して軸方向Pに摺動可能に設けられている。可動側プーリ半体3bにおける固定側プーリ半体3aが設けられた側と反対側には、プランジャ部材4の縦壁部12の内周面に嵌り込む嵌合部3cが設けられている。縦壁部12の内部において嵌合部3cと底部11との間には空間が形成されており、当該空間がプーリ油室5を形成している。プーリ油室5には、可動側プーリ半体3bを固定側プーリ半体3aに向かって付勢するスプリング6が設けられている。このようなベルト式無段変速機1では、固定側プーリ半体3aに対する可動側プーリ半体3bの軸方向Pの位置を調整することで、固定側プーリ半体3aと可動側プーリ半体3bとの間隔を変化させて無段階で変速することが可能となっている。この際、可動側プーリ半体3bの移動に伴ってスプリング6が伸縮する。このため、プランジャ部材4における縦壁部12の内周面は、プランジャ部材4と異なる他の部品であるスプリング6と接触する接触面となっている。縦壁部12の内周面は、繰り返し軸方向Pに摺動することとなり、プランジャ部材4として摺動する部分の耐摩耗性が要求される。なお、縦壁部12の外周面は、周方向に沿って複数の凸部を設けた歯車形状に形成されていても良い。また、このようなプレス成形鋼品10は、予め冷間加工などでカップ形状などに成形された中間成形品を後述する製造工程を実施することで得られる。なお、プレス成形鋼品10は、円板状の鋼材から直接後述する製造工程を実施して得るようにしても良い。なお、特に断りの無い限り、本実施形態では、図1に示すように、プレス成形鋼品10の中心軸L10に沿う方向(図2における軸方向P)を上下方向Xとし、底部11が下側、縦壁部12が上側に配置され、底部11から縦壁部12が上向きに延びるようにプレス成形鋼品10及び対応する加工装置が配置されているものとして説明する。
次に、本実施形態のプレス成形鋼品10の詳細について説明する。
本実施形態のプレス成形鋼品10は、縦壁部12である第一の部位10aの耐摩耗性向上を目的として、第一の部位10aの金属組織中のマルテンサイト分率が体積%で90%以上であり、第一の部位10aの旧γ粒径のアスペクト比が、第二の部位10bの旧γ粒径のアスペクト比の1.4倍以上であることを特徴としている。また、プレス成形鋼品10は、第一の部位10aの旧γ粒径のアスペクト比が1.5以上であるものとしても良い。また、これらのプレス成形鋼品10において、第一の部位10aの厚さ方向中心部における当該厚さ方向のビッカース硬さは、第二の部位10bの厚さ方向中心部における当該厚さ方向のビッカース硬さよりも5%以上高いものとしても良い。また、これらのプレス成形鋼品10において、第一の部位10aの厚さ方向におけるビッカース硬さが、当該厚さ方向の中心部に対して表面部の方が2%以上高いものとしても良い。さらに、第一の部位10aの厚さが第二の部位10bの厚さに対して10%以上小さいものとしても良い。
(マルテンサイト分率)
このようなプレス成形鋼品10では、第一の部位10aの金属組織中のマルテンサイト分率が体積%で90%以上であり、より好ましくは体積%で95%以上又は97%以上である。マルテンサイト分率を90%以上とすることで、第一の部位10aの強度を高めることができる。なお、第一の部位10aにおけるマルテンサイト以外の残部は、残留オーステナイト、ベイナイト、パーライト、フェライトが含まれる場合がある。また、第二の部位10bについても第一の部位10aと同様にマルテンサイト分率が体積%で90%以上であっても良い。このようにすることで、第二の部位10bについても高強度の部材とすることができる。第二の部位10bについても第一の部位10aと同様に、後述する加熱工程S1、加工・冷却工程S2及び冷却工程S3を実施することで、同様のマルテンサイト分率とすることができる。ここで、マルテンサイト分率は体積分率で求められるが、金属組織面におけるマルテンサイトの占める面積率から求めるものとしても良い。
第一の部位10a、第二の部位10bなどの対象部分のマルテンサイト分率を求める場合には、まず、残留オーステナイトの組織分率を、X線回折法で求める。試験片は、フッ化水素酸と過酸化水素水とを用いて対象部分の板厚(1/4)部の表面を0.1mmの深さまで化学研磨した試験片を用いる。板厚(1/4)部とは、鋼材の表面から、鋼材の厚さ方向に鋼材の板厚(厚さ)の1/4の距離だけ離れた位置を意味している。測定条件は、Co管球を用い、2θで45°から105°の範囲で測定を行う。対象部分に含まれる体心立方格子(マルテンサイト、ベイナイト)および面心立方格子(残留オーステナイト)の回折X線強度を測定し、その回折曲線の面積比からマルテンサイト及びベイナイトの合計の体積分率と、残留オーステナイトの体積分率を測定する。マルテンサイト及びベイナイトのそれぞれの体積分率は、対象部分の板厚(1/4)部を露出させて光学顕微鏡による観察を行ってマルテンサイトとベイナイトをそれぞれ判別し測定する。なお、光学顕微鏡による識別が困難な場合には、透過型電子顕微鏡(TEM)に付属する電子線回折パターン測定装置によって測定する。対象部分の板厚(1/4)部から測定試料を切り出し、TEM観察用の薄膜試料とする。具体的には、薄膜試料の電子線の回折パターンにより、体心立方格子であるマルテンサイトやベイナイトと、面心立方格子の残留オーステナイトとを区別可能である。そして、マルテンサイトおよびベイナイト中の鉄炭化物(FeC)を回折パターンにより見出し、その析出形態を観察することで、マルテンサイトとベイナイトの組織分率をそれぞれ測定する。炭化物の析出形態が3方向析出ならマルテンサイトと判断し、1方向の限定析出ならベイナイトと判断する。TEMの電子線回折によって測定されるマルテンサイトとベイナイトの組織分率は面積%として測定されるが、本実施形態の第一の部位10a、第二の部位10bなどの場合には、面積分率の値をそのまま体積分率に置き換えることができる。残部組織としてフェライトまたはパーライトが析出しているかどうかは、光学顕微鏡などで確認することができる。析出している場合はこれらの面積分率を求め、その値をそのまま体積分率に変換し、残部組織の分率とすることができる。ただし、本実施形態の第一の部位10aは、残部組織がほとんど析出しない場合が多い。したがって、残部組織の体積分率を5%以下、2%以下又は0%としてもよい。なお、マルテンサイト分率を測定する第一の部位10aにおける長さ方向の位置としては特に限定されないが、第一の部位10aでは、例えば長さ方向に中央となる位置とすることができる。長さ方向の中央となる位置とは、第一の部位10aの起点となる角部13が形成する曲線部分の終了位置から先端までの方向における長さ寸法の半分となる位置を示す。また、第二の部位10bでは、円板の中心となる位置とすることができる。
(旧γ粒径のアスペクト比)
後述するとおり、熱間プレス成形時に存在する過冷オーステナイトは、加工後の冷却により主にマルテンサイトに変態する。第一の部位10aは、熱間プレス成形により塑性加工を受けた結果、過冷オーステナイト中に転位が蓄積され、そのアスペクト比は高くなる。一方、第二の部位10bは、第一の部位10a同様の塑性加工を施さない又は塑性加工度が小さいため、過冷オーステナイトには同様の転位が蓄積されず、粒径のアスペクト比も変化しない、または、その変化が第一の部位10aと比較して小さい。これにより、第二の部位10bの旧γ粒径のアスペクト比に対する第一の部位10aの旧γ粒径のアスペクト比の比(以下、単にアスペクト比の比率と称する)は、1.4倍以上であり、より好ましくは1.5倍以上、1.7倍以上、2.0倍以上、2.2倍以上又は2.4倍以上である。このようにアスペクト比の比率を1.4倍以上とすることで、第一の部位10aでは第二の部位10bに比較して転位密度の高いマルテンサイトを得ることができ、これにより第二の部位10bと比較して硬さを高くすることができ耐摩耗性及び疲労強度を向上させることができる。また、アスペクト比の比率の上限は、10.0倍であることが好ましく、より好ましくは7.0倍、5.0倍、3.0倍である。なお、第一の部位10a及び第二の部位10bの旧γ粒径の各アスペクト比は、それぞれ、試験片の研磨後にピクリン酸飽和水溶液などの公知の腐食液により旧γ粒を出現させた上で、光学顕微鏡で例えば0.05μm以上の範囲を観察し、個々の各旧γ粒径のアスペクト比の測定値の平均値である。第一の部位10a及び第二の部位10bの各アスペクト比は、それぞれ厚さ方向に表面から板厚の1/4の位置において測定される。第一の部位10aの測定位置については耐摩耗性が求められる側の表面から板厚の1/4の位置とすることが好ましい。アスペクト比の比率は、上記のようにして第一の部位10a及び第二の部位10bのアスペクト比を測定し、第一の部位10aのアスペクト比を第二の部位10bのアスペクト比で割ることにより求められる。計算値であるアスペクト比の比率は、第一の部位10aのアスペクト比を第二の部位10bのアスペクト比で割った値について、小数点第2位を四捨五入して小数点1位までとした値とする。なお、アスペクト比を測定する第一の部位10aの長さ方向の位置としては特に限定されないが、例えば長さ方向に中央となる位置とすることができる。また、第二の部位10bでは、円板の中心となる位置とすることができる。
また、第一の部位10aの旧γ粒径のアスペクト比自体を1.5以上とし、より好ましくは2.0以上、2.5以上又は3.0以上としても良い。このように第一の部位10aの旧γ粒径のアスペクト比を1.5以上とすることで、第一の部位10aでは第二の部位10bに比較して転位密度がより高いマルテンサイトを得ることができる。したがって、第二の部位10bと比較して硬さをより高くすることができ、耐摩耗性及び疲労強度を向上させることができる。このような旧γ粒径のアスペクト比は、まず上記のとおり合計で0.05μm以上となる金属組織面においてγ粒エッチング処理によりγ粒界を測定する。例えば、金属組織面をピクリン酸飽和水溶液で腐食することにより、旧γ粒界を現出させることで旧γ粒界をより明確に特定することが可能となる。また、上記範囲の中から、例えば、20個以上の旧γ粒径を対象とする。そして、特定されたγ粒界に基づいて該当する結晶粒の短径と長径を測定し、その比をアスペクト比とする。第一の部位10aの旧γ粒径のアスペクト比の上限を特に定める必要はないが、8.0以下、5.0以下又は3.5以下としてもよい。
(縦壁部のビッカース硬さ)
第一の部位10aにおける厚さ方向中心部における厚さ方向のビッカース硬さは、第二の部位10bにおける厚さ方向中心部における厚さ方向のビッカース硬さよりも5%以上高く、より好ましくは7%以上、10%以上又は15%以上高い。このようにすることで、第一の部位10aでは第二の部位10bに対して硬く耐摩耗性及び疲労強度を向上させることができる。また、第一の部位10aにおいて、厚さ方向のビッカース硬さは、厚さ方向中心部に対して摩擦や繰り返し荷重を直接受ける表面部の方が2%以上高いものとしても良く、より好ましくは、3%以上、5%以上又は10%以上高いものとしても良い。摩耗を直接受ける部分は表面部であるため、このようにすることで耐摩耗性を向上することができる。また、繰り返し荷重における疲労亀裂は表面から発生・進展するため、このように表面部をより高硬度化することで疲労亀裂の発生を防止するとともに疲労亀裂の進展を抑制することができ、疲労強度を向上させることができる。一方で、第二の部位10bの硬さは第一の部位10aに比較して硬さが低いので、第二の部位10bによりプレス成形鋼品全体としての靱性を確保することができる。また、第一の部位10aにおいても、上記のとおり最も摩擦及び繰り返し荷重の影響を受ける表面部は硬くするとともに、中心部は表面部に比較して硬さを抑制することで第一の部位10aとしても靱性を確保することができる。特に、トランスミッション部品などでは、耐摩耗性及び疲労強度とともに、過負荷が生じた場合において脆性破壊をしないことが重要である。この点において、上記のとおり第一の部位10aと第二の部位10bにおける硬さの相違、第一の部位10aの中心部と表面部における硬さの相違により、耐摩耗性及び疲労強度とともに靱性を確保することは重要である。なお、表面部のビッカース硬さは、表面から厚さ方向に50μmの位置で測定される。また、上記ビッカース硬さは、例えば、JIS Z2244:2009の規格に従い、試験力50gfによるビッカース硬さHV0.05により測定できる。また、計算値である第一の部位10aと第二の部位10bのビッカース硬さの比率は、第一の部位10aのビッカース硬さを第二の部位10bのビッカース硬さで割った値について、小数点第3位を四捨五入して小数点2位までとした値を百分率表示した値とする。計算値である第一の部位10aにおける表面部と中心部のビッカース硬さの比率についても同様である。なお、ビッカース硬さを測定する第一の部位10aの長さ方向の位置としては特に限定されないが、例えば長さ方向に中央となる位置とすることができる。また、第二の部位10bでは、円板の中心となる位置とすることができる。
(第一の部位の厚さ)
第一の部位10aの厚さ(板厚)は、第二の部位10bの厚さ(板厚)よりも5%以上小さいことが好ましく、より好ましくは8%以上、10%以上、20%以上又は30%以上小さいことがよい。後述する塑性加工により第一の部位10aは、第二の部位10bの厚さから厚さ方向に塑性変形を受け減肉する。これにより第一の部位10aはアスペクト比の大きい旧γ粒径を有し、第二の部位10bと比較して厚さ方向中心部における厚さ方向のビッカース硬さが高くなるため、耐摩耗性、疲労強度を向上させることができる。なお、計算値である第一の部位10aと第二の部位10bの厚さの比率は、第一の部位10aの厚さを第二の部位10bの厚さで割った値について、小数点第3位を四捨五入して小数点2位までとした値を百分率表示した値とする。プレス加工前の厚さが異なる鋼材を用いると、第一の部位10aの厚さが、第二の部位10bの厚さより5%未満とすることができる。このため、この第一の部位10aの厚さと第二の部位10bの厚さとの比を、特に規定する必要はない。
次に、本実施形態に係るプレス成形鋼品の成分組成(化学成分)の例について説明する。なお、下記成分組成は一例で、少なくともマルテンサイト分率が体積%で90%以上となれば、これに限定されない。また、成分に関する百分率は特に断りが無い限りは質量%を意味する。
すなわち、本実施形態に係るプレス成形鋼品の例では、質量%で、
C:0.10〜1.50%、
Si:0.01〜1.00%、
Mn:0.01〜3.00%、
P:0.1000%以下、
S:0.1000%以下、
Al:0〜0.500%、
N:0〜0.0500%、
O:0〜0.0500%
Cr:0〜2.000%、
Mo:0〜2.000%、
Ni:0〜2.000%、
Cu:0〜1.000%、
Nb:0〜1.000%、
V:0〜1.000%、
Ti:0〜1.000%、
B:0〜0.0500%、
W:0〜1.000%、
Ta:0〜1.000%、
Sn:0〜0.020%、
Sb:0〜0.020%、
As:0〜0.020%、
Mg:0〜0.0200%、
Ca:0〜0.020%、
Zr:0〜0.020%、
REM:0〜0.040%、
残部:Feおよび不純物
であっても良い。
(C:0.10〜1.50%)
Cは、焼入れの熱処理により鋼の強度を高める元素である。中・高炭素鋼板は、成形後、自動車のチェーン、ギヤー、クラッチ等の駆動系部品及び鋸、刃物等の素材として用いられる前に、焼入れ及び焼入れ焼戻しの熱処理が施されることにより、部品として必要な強度あるいは靭性を確保する。C含有量が0.10%未満では、焼入れによる強度の増加を得られないので、0.10%をC含有量の下限とする。一方、C含有量が1.50%を超えると、冷延焼鈍後において、粒子内部に結晶界面を持つ炭化物の個数割合が増加し、絞りが低下するので、C含有量の上限を1.50%とする。より好ましくは、C含有量は0.15〜1.30%である。
(Si:0.01〜1.00%)
Siは、脱酸剤として作用し、また、熱延板焼鈍および冷延板焼鈍における炭化物粒子の粗大化及び連結を抑制する元素である。Siの含有量が0.01%未満では、上述の効果が得られないので、Si含有量の下限を0.01%とする。一方、Si含有量が1.00%を超えると、フェライトがヘキ開破壊しやすくなり、絞りが低下するので、Si含有量の上限を1.00%とする。Si含有量は、より好ましくは0.05%以上、0.80%以下であり、さらに好ましくは0.08%以上、0.50%以下である。
(Mn:0.01〜3.00%)
Mnは、Siと同様に熱延板焼鈍及び冷延板焼鈍での炭化物粒子の粗大化及び連結を抑制する元素である。Mn含有量が0.01%未満では、上述の効果が得られないので、Mn含有量の下限を0.01%とする。一方、Mn含有量が3.00%を超えると、熱延板焼鈍及び冷延板焼鈍の際に炭化物が球状化しにくくなり、変形において、針状の炭化物を起点として割れが発生し、絞りが低下する。従って、Mn含有量の上限を3.00%とする。Mn含有量は、より好ましくは0.30%以上、2.50%以下、さらに好ましくは0.50%以上、1.50%以下である。
(P:0.1000%以下)
Pは、フェライト粒界を脆化させる不純物元素である。P含有量は少ないほど好ましいが、精錬工程においてP含有量0.0001%未満にして鋼を高純度化する場合、精錬のために要する時間が多くなり、製造コストの大幅な増加を招くので、P含有量の下限を0.0001%とする。一方、P含有量が0.1000%を超えると、フェライト粒界から割れが発生し、絞りが低下するので、P含有量の上限を0.1000%とする。P含有量は、より好ましくは0.0010%以上、0.0500%以下、更に好ましくは0.0020%以上0.0300%以下である。
(S:0.1000%以下)
Sは、MnSなどの非金属介在物を形成する不純物元素であり、非金属介在物は割れ発生の起点となるので、S含有量は少ないほど好ましい。しかし、S含有量を0.0001%未満に低減することは、精錬コストの大幅な増加を招くので、S含有量の下限を0.0001%とする。一方、0.1000%を超えてSを含有すると、絞りの低下が著しくなるので、S含有量の上限を0.1000%以下とする。S含有量は、より好ましくは0.0003%以上、0.0300%以下である。
本実施形態のプレス成形鋼品の例では、上記成分を基本成分とするが、さらに、機械的特性を向上させる目的で、以下に述べる元素の1種または2種以上を選択的に含有させることができる。ただし、以下に述べる元素の含有は必須ではないので、以下に述べる元素の下限値は0%である。
(Al:0〜0.500%)
Alは、鋼の脱酸剤として作用する元素である。Al含有量が0.001%未満では、含有効果が十分に得られないので、Al含有量の下限を0.001%としてもよい。一方、Al含有量が0.500%を超えるとフェライトの粒界を脆化させ、変形における絞りの低下を引き起こす。このため、Al含有量の上限を0.500%としてもよい。Al含有量はより好ましくは0.005%以上0.300%以下であり、さらに好ましくは0.010%以上0.100%以下である。
(N:0〜0.0500%)
Nは、鋼のベイナイト変態を促進させるとともに、多量の含有によりフェライトの脆化を引き起こす元素である。N含有量は少ないほど好ましいが、N含有量を0.0001%未満に低減することは精錬コストの増加を招くので、N含有量の下限を0.0001%としてもよい。一方、N含有量が0.0500%を超える場合、変形時にフェライトの割れを引き起こすので、N含有量の上限を0.0500%としてもよい。N含有量は、より好ましくは0.0010%以上、0.0250%以下であり、さらに好ましくは0.0020%以上、0.0100%以下である。
(O:0〜0.0500%)
Oは、多量の含有により鋼中に粗大な酸化物の形成を促す元素であるので、O含有量は少ないほうが好ましい。しかし、O含有量を0.0001%未満に低減することは、精錬コストの増加を招くので、0.0001%をO含有量の下限としてもよい。一方、O含有量が0.0500%を超える場合、鋼中に粗大な酸化物が形成し、粗大な酸化物を起点とした割れが発生するので、O含有量の上限を0.0500%としてもよい。O含有量は、より好ましくは0.0005%以上、0.0250%以下であり、さらに好ましくは0.0010%以上、0.0100%以下である。
(Cr:0〜2.000%)
Crは、Si、Mnと同様に熱延板焼鈍及び冷延板焼鈍での炭化物粒子の粗大化及び連結を抑制する元素である。しかしCr含有量が0.001%未満では、上述の効果が得られないので、Cr含有量の下限を0.001%としてもよい。一方、Cr含有量が2.000%を超えると、熱延板焼鈍及び冷延板焼鈍で炭化物が球状化しにくくなり、変形において針状の炭化物を起点として割れが発生し、絞りが低下するので、Cr含有量の上限を2.000%としてもよい。Cr含有量は、より好ましくは0.005%以上、1.500%以下、さらに好ましくは0.010%以上、1.300%以下である。
(Mo0〜2.000%)
Moは、Si、Mn、Crと同様に熱延板焼鈍及び冷延板焼鈍での炭化物粒子の粗大化及び連結を抑制する元素である。Mo含有量が0.001%未満では、上述の効果が得られないので、Mo含有量の下限を0.001%としてもよい。一方、Mo含有量が2.00%を超えると、熱延板焼鈍及び冷延板焼鈍で炭化物が球状化しにくくなり、変形において針状の炭化物を起点として割れが発生し、絞りが低下するので、Mo含有量の上限を2.00%としてもよい。Mo含有量は、より好ましくは0.005%以上、1.900%以下、さらに好ましくは0.008%以上、0.800%以下である。
(Ni:0〜2.000%)
Niは、部品の靭性の向上、および焼入れ性の向上のために有効な元素である。その効果を有効に発揮させるためには、0.001%以上のNiを含有させることが好ましい。一方、Ni含有量が2.000%を超えると、絞りが低下するので、Ni含有量の上限を2.000%としてもよい。Ni含有量は、より好ましくは0.005%以上、1.500%以下、さらに好ましくは0.005%以上、0.700%以下である。
(Cu:0〜1.000%)
Cuは、微細な析出物の形成により鋼材の強度を増加させる元素である。強度増加の効果を有効に発揮するためには、0.001%以上のCuの含有が好ましい。一方、Cu含有量が1.00%を超えると、絞りが低下するので、Cu含有量上限を1.00%としてもよい。Cu含有量は、より好ましくは0.003%以上、0.500%以下、さらに好ましくは0.005%以上、0.200%以下である。
(Nb:0〜1.000%)
Nbは、炭窒化物を形成し、熱延板焼鈍及び冷延板焼鈍での炭化物粒子の粗大化及び連結を抑制する元素である。Nb含有量が0.001%未満では、上述の効果が得られないので、Nb含有量の下限を0.001%としてもよい。一方、Nb含有量が1.000%を超えると、熱延板焼鈍及び冷延板焼鈍の際に炭化物が球状化しにくくなり、変形において針状の炭化物を起点として割れが発生し、絞りが低下するので、Nb含有量の上限を1.000%としてもよい。Nb含有量は、より好ましくは0.005%以上、0.600%以下、さらに好ましくは0.008%以上、0.200%以下である。
(V:0〜1.000%)
Vも、Nbと同様に、炭窒化物を形成し、熱延板焼鈍及び冷延板焼鈍での炭化物粒子の粗大化及び連結を抑制する元素である。V含有量が0.001%未満では、上述の効果が得られないので、V含有量の下限を0.001%としてもよい。一方、V含有量が1.000%を超えると、熱延板焼鈍及び冷延板焼鈍の際に炭化物が球状化しにくくなり、変形において針状の炭化物を起点として割れが発生し、絞りが低下するので、V含有量の上限を1.000%としてもよい。V含有量は、より好ましくは0.001%以上、0.750%以下、さらに好ましくは0.001%以上、0.250%以下である。
(Ti:0〜1.000%)
Tiも、Nb、およびVと同様に、炭窒化物を形成し、熱延板焼鈍及び冷延板焼鈍での炭化物粒子の粗大化及び連結を抑制する元素である。Ti含有量が0.001%未満では、上述の効果が得られないので、Ti含有量の下限を0.001%以上としてもよい。一方、Ti含有量が1.000%を超えると、熱延板焼鈍及び冷延板焼鈍の際に炭化物が球状化しにくくなり、変形において針状の炭化物を起点として割れが発生し、絞りが低下するので、Ti含有量の上限を1.000%としてもよい。Ti含有量は、より好ましくは0.001%以上、0.500%以下、さらに好ましくは0.003%以上、0.150%以下である。
(B:0〜0.0500%)
Bは、部品の熱処理時の焼入れ性を改善する元素である。B含有量が0.0001%未満では、上述の効果が得られないので、B含有量の下限を0.0001%としてもよい。B含有量が0.0500%を超えると、粗大なFe−B−C化合物を生成し、変形時に割れの起点となり、絞りを低下させるので、B含有量の上限を0.0500%としてもよい。B含有量は、より好ましくは0.0005%以上、0.0300%以下、さらに好ましくは0.0010%以上、0.0100%以下である。
(W:0〜1.000%)
Wも、Nb、V、およびTiと同様に、炭窒化物を形成し、熱延板焼鈍及び冷延板焼鈍での炭化物粒子の粗大化及び連結を抑制する元素である。W含有量が0.001%未満では、上述の効果が得られないので、W含有量の下限を0.001%としてもよい。一方、W含有量が1.000%を超えると、熱延板焼鈍及び冷延板焼鈍の際に炭化物が球状化しにくくなり、変形において針状の炭化物を起点として割れが発生し、絞りが低下するので、W含有量の上限を1.000%としてもよい。W含有量は、より好ましくは0.001%以上、0.450%以下、さらに好ましくは0.001%以上、0.160%以下である。
(Ta:0〜1.000%)
Taも、Nb、V、Ti、およびWと同様に、炭窒化物を形成し、熱延板焼鈍及び冷延板焼鈍での炭化物粒子の粗大化及び連結を抑制する元素である。Ta含有量が0.001%未満では、上述の効果が得られないので、Ta含有量の下限を0.001%としてもよい。一方、Ta含有量が1.000%を超えると、熱延板焼鈍及び冷延板焼鈍の際に炭化物が球状化しにくくなり、変形において針状の炭化物を起点として割れが発生し、絞りが低下するので、Ta含有量の上限を1.000%以下としてもよい。Ta含有量は、より好ましくは0.001%以上、0.750%以下、さらに好ましくは0.001%以上、0.150%以下である。
(Sn:0〜0.020%)
Snは、鋼原料としてスクラップを用いた場合に鋼中に含有される元素であり、Sn含有量は少ないほど好ましい。Sn含有量を0.001%未満に低減する場合、精錬コストの増加を招くので、Sn含有量の下限を0.001%としてもよい。また、Sn含有量が0.020%を超える場合、フェライトが脆化し、変形において絞りが低下するので、Sn含有量の上限を0.020%としてもよい。Sn含有量は、より好ましくは0.001%以上、0.015%以下、さらに好ましくは0.001%以上、0.010%以下である。
(Sb:0〜0.020%)
Sbは、Snと同様に鋼原料としてスクラップを用いた場合に鋼中に含有される元素であり、Sb含有量は少ないほど好ましい。Sb含有量を0.001%未満に低減する場合、精錬コストの増加を招くので、Sb含有量の下限を0.001%としてもよい。また、Sb含有量が0.020%を超える場合、フェライトが脆化し、変形において絞りが低下するので、Sb含有量の上限を0.020%以下としてもよい。Sb含有量は、より好ましくは0.001%以上、0.015%以下、さらに好ましくは0.001%以上、0.011%以下である。
(As:0〜0.020%)
Asは、Sn、及びSbと同様に鋼原料としてスクラップを用いた場合に含有される元素であり、As含有量は少ないほど好ましい。As含有量を0.001%未満に低減する場合、精錬コストの増加を招くので、As含有量の下限を0.001%としてもよい。また、As含有量が0.020%を超える場合、フェライトが脆化し、変形において絞りが低下するので、As含有量の上限を0.020%以下としてもよい。As含有量は、より好ましくは0.001%以上、0.015%以下、さらに好ましくは0.001%以上、0.007%以下である。
(Mg:0〜0.0200%)
Mgは、含有量が微量であっても硫化物の形態を制御できる元素であり、必要に応じて含有できる。Mg含有量が0.0001%未満ではその効果は得られないので、Mg含有量の下限を0.0001%としてもよい。一方、Mgを過剰に含有した場合、フェライトの粒界が脆化し、変形において絞りの低下を招くので、Mg含有量の上限を0.0200%としてもよい。Mg含有量は、より好ましくは0.0001%以上、0.0150%以下、さらに好ましくは0.0001%以上、0.0075%以下である。
(Ca:0〜0.020%)
Caは、Mgと同様に含有量が微量であっても硫化物の形態を制御できる元素であり、必要に応じて含有できる。Ca含有量が0.001%未満ではその効果は得られないので、Ca含有量の下限を0.001%としてもよい。一方、Caを過剰に含有した場合、フェライトの粒界が脆化し、変形において絞りの低下を招くので、Ca含有量の上限を0.020%としてもよい。Ca含有量は、より好ましくは0.001%以上、0.015%以下、さらに好ましくは0.001%以上、0.010%以下である。
(Zr:0〜0.020%)
Zrは、Mg、Ca、Yと同様に含有量が微量であっても硫化物の形態を制御できる元素であり、必要に応じて含有できる。Zr含有量が0.001%未満ではその効果は得られないので、Zr含有量の下限を0.001%としてもよい。一方、Zrを過剰に含有する場合、フェライトの粒界が脆化し、変形において絞りの低下を招くので、Zr含有量の上限を0.020%としてもよい。Zr含有量は、より好ましくは0.015%以下、さらに好ましくは0.010%以下である。
(REM:0〜0.040%)
REM(希土類金属元素)は、Sc、Yおよびランタノイドからなる合計17元素を意味し、REM含有量とはこれら17元素の含有量の合計を意味する。REMは、Mg、Ca、およびZrと同様に含有量が微量であっても硫化物の形態制御に有効な元素であり、必要に応じて含有しても良い。REM含有量が0.001%未満ではその効果は得られないので、REM含有量の下限を0.001%としてもよい。一方、REMを過剰に含有する場合、フェライトの粒界が脆化し、変形において絞りの低下を招くので、REM含有量の上限を0.040%としてもよい。REM含有量は、より好ましくは0.001%以上、0.015%以下、さらに好ましくは0.001%以上、0.010%以下である。
なお、本実施形態に係るプレス成形鋼品では、上記に述べた成分の残部はFeおよび不純物である。
次に、本実施形態のプレス成形鋼品10の製造方法の詳細について説明する。図3は、本実施形態のプレス成形鋼品10の製造方法の詳細を説明するフロー図である。また、図4は、本実施形態のプレス成形鋼品10の製造方法における、時間による温度変化を示す温度履歴図である。図3及び図4に示すように、本実施形態のプレス成形鋼品10の製造方法は、鋼材を加熱温度T1まで加熱させる加熱工程S1と、加熱温度T1の鋼材を温度T2まで冷却しつつ、冷却プロセスの中で成形加工を行う加工・冷却工程S2と、加工された鋼材をマルテンサイト変態開始温度Ms未満となる冷却温度T3まで所定の冷却速度で冷却する冷却工程S3とを備える。
加熱工程S1では、鋼材を少なくとも加熱時オーステナイト変態完了温度以上となる加熱温度T1まで加熱し、所定時間保持する。平均加熱速度HRは適宜設定可能である。当該保持時間としては例えば3分程度である。このような加熱温度T1としてはAc3温度以上又はAcm温度以上であり、例えば880〜950℃である。具体的には、C≦0.77%ではAc3温度以上、C>0.77%ではAcm温度以上となる。Ac3、Acm温度は、それぞれThermo−Calcなどの熱力学計算ソフトウェアに鋼材の成分等の条件を入れて計算することで求められる。鋼材の温度をAc3温度以上又はAcm温度以上とすることで鋼材の第二の部位10b及び第一の部位10aとなる部分をオーステナイトに変態させることができる。また、850℃以上とすることでより確実にオーステナイトに変態させることができる。また、950℃以下とすることが鋼材の靱性を確保する点においてより好ましい。
加工・冷却工程S2では、加熱温度T1まで加熱された鋼材を温度T2まで平均冷却速度CR1で冷却するとともに、冷却プロセスの中で成形加工を行う。過冷オーステナイト組織とするため、温度T2まで急冷する必要があり、平均冷却速度CR1は100℃/s以上とする。CR1の上限は250℃/sとすることがよい。温度T2は、加熱工程S1で生じたオーステナイトがマルテンサイトに変態せず過冷オーステナイト状態として残存する温度領域の温度である。具体的には、温度T2は、マルテンサイト変態開始温度Ms以上であり、700℃未満である。より好ましくは、温度T2は、400℃以上である。マルテンサイト変態開始温度Ms(℃)は、下記式(1)で計算することで求められる。
Ms=560.5−407.3×C−7.3×Si−37.8×Mn−19.8×Cr−19.5×Ni−20.5×Cu−4.5×Mo ・・・・・・(1)
ただし、式(1)中のC、Si、Mn、Cr、Ni、Cu、Moは、各成分の質量%を示している。
温度T2がマルテンサイト開始温度Ms未満であると後述する追加加工が完了する前に過冷オーステナイトがマルテンサイトに変態してしまう。また、700℃を超えてしまうと加工時に再結晶化が進んでしまい、過冷オーステナイト中に転位が蓄積されず(再結晶により転位が消滅し)、アスペクト比の高いオーステナイトを得ることができず、硬さを高めることができなくなる。
追加加工は、加工・冷却工程S2の後半において、700℃以下かつ温度T2以上の温度域で鋼材に塑性変形を施す。硬さを高めるためには、過冷オーステナイトに十分な塑性歪みを与える必要であり、この温度域の(累積)塑性歪みを0.20(20%)以上とする必要がある。図5は、加工例を示している。図5に示すように、プレス成形鋼品10を成形する加工装置30はダイス31とパンチ32と押え型33とを備えている。そして、予め形成された鋼材である中間成形品20を押え型上に配置する。そして、上方からパンチ32によって押え型33との間に第二の部位10bとなる部分21を挟み込む。このよう状態でダイス31を上昇させる。ダイス31の型面31aとパンチ32の型面32aとの間の隙間は、中間成形品20における第一の部位10aとなる部分22の厚さよりも小さく設定されている。したがって、ダイス31を上昇させることで、第一の部位10aとなる部分22には追加加工が施される。なお、第一の部位10aにおける追加加工はしごき加工としても良いし、しごき加工以外の方法で第一の部位10aに追加加工が施されても良い。そして、第一の部位10aとなる部分22は、厚さ方向に圧縮変形するとともに、厚さ方向と直交する中心軸Lに沿う上下方向Xには引張変形するように塑性変形され、第二の部位10bに対して厚さが小さくなる第一の部位10aが成形される。
この際、第一の部位10aの組織では、加熱工程S1から加工・冷却工程S2を経ることで過冷オーステナイトが存在している。そして、当該過冷オーステナイトが、上記塑性変形により、加工方向すなわち中心軸Lに沿う方向にアスペクト比が高い結晶粒に変形し、これにより転位密度を高めることができる。また、第一の部位となる部分22のうち、ダイス31及びパンチ32に接する各成形面12a、12bは、追加加工を実施している間、ダイス31及びパンチ32が摺動しダイス31及びパンチ32から摩擦力を受ける。このため、第一の部位10aにおいて、表面部は中心部と比較してより高い塑性ひずみが与えられることとなる。中心部は表面部に対して相対的に塑性ひずみが小さく冷却速度も遅いため、再結晶が生じやすく硬さが低くなる。また、中心部は、再結晶が生じない場合でも、初析フェライトが生成しやすく硬さは相対的に低くなる。
上記700℃以下温度T2以上となる温度域で第一の部位10aに与えられる塑性ひずみは、例えば0.20〜0.80程度である。また、第一の部位10aのしごき率は例えば10%〜50%である。しごき率は、加工前の厚さに対する加工前から加工後における厚さの減少量の百分率として求められる。一方、第二の部位10bはパンチ32と押え型33との間に挟まれているだけであるので、第二の部位10に塑性変形は施されず、また、摩擦力が表面に加わることもない。または、第二の部位10bには第一の部位10aと比較して限られた変形量の塑性変形が施されるのみである。具体的には、第二の部位10bの塑性ひずみとしては0.20未満又は0.10未満であることが好ましい。このため、第二の部位10bでは加熱工程S1から加工・冷却工程S2を経ることで得られた過冷オーステナイトがそのまま、または、大きな変形を受けることなく残存する。なお、しごき率が15%程度であった場合には、概ねアスペクト比の比率は1.4程度となり、しごき率とアスペクト比の比率の関係は略線形となる。
冷却工程S3では、加工を行った鋼材をマルテンサイト変態開始温度Ms以下となる冷却温度T3まで冷却してプレス成形鋼品10を得る。加工・冷却工程S2実施後に速やかに冷却工程S3を実施することで、加工・冷却工程S2で変形が生じた過冷オーステナイトが再結晶してしまうことを防止しつつ、過冷オーステナイトをマルテンサイトに変態させる。平均冷却速度CR2は30℃/s以上であることが好ましい。平均冷却速度CR2を30℃/s以上とすることで、焼き入れ効果を得て、過冷オーステナイトをマルテンサイトに効果的に変態させることができる。これにより、第一の部位10aでは、加工によってアスペクト比が高く転位密度の高くなった過冷オーステナイトをマルテンサイトに変態させ、アスペクト比が高く転位密度の高いマルテンサイトを得ることができる。
次に、本実施形態のプレス成形鋼品10の実施例について説明する。板厚4mmのホットスタンプ等に用いられる焼入れ用鋼を用いる。鋼材の成分としては表1に示す鋼種A、B、Cの3種類を用いた。なお、各成分の単位は全て質量%である。そして、これら鋼種A、B、Cの鋼材から予めカップ形状の中間成形品を製造し、当該中間成形品について加熱工程S1、加工・冷却工程S2、及び冷却工程S3を実施して、各発明例及び比較例のプレス成形鋼品を得た。加熱工程S1における加熱温度T1は表2のとおりである。平均加熱速度HRは5℃/sとした。また、加工・冷却工程S2では、温度T2まで平均冷却速度CR1で冷却しつつ追加加工を行った。型に塗布する潤滑剤としては非乾燥型白色系潤滑剤を用い、型の表面にはCr系コーティングを施した。加工条件については各発明例・比較例で異ならせた。冷却工程S3では、温度T3まで平均冷却速度CR2で冷却した。
Figure 0006628019
<実施例1>
表2、表3に示すように、発明例1−1〜1−12及び比較例1〜5について、各鋼種A、B、Cの鋼材を用いて、加工条件として、加熱工程S1における加熱温度T1、加工・冷却工程S2における平均冷却速度CR2、温度T2、700℃〜温度T2の範囲における追加加工での(第一の部位の)塑性歪みを異なるようにした。なお、表2には、さらに、Ac3又はAcm温度、マルテンサイト変態開始温度Ms、また、表3には、追加加工によって得られる(第一の部位の)しごき率を示す。しごき率は、加工前の厚さに対する加工前から加工後における厚さの減少量の百分率として求められる。発明例1−1〜1−12ではいずれも第一の部位10aにおけるマルテンサイト分率が90%以上であり、アスペクト比の比率が1.4倍以上、第一の部位10aのアスペクト比が1.5以上であった。一方、比較例1、3、4ではマルテンサイト分率が70%、80%、30%と90%未満であった。温度T2は、加工終了温度でもある。
比較例1、3、4では、加工・冷却工程S2の終了温度となる温度T2が高かったため、フェライトや、パーライトが生成されてしまい、マルテンサイト分率が低下してしまったものと考えられる。また、比較例4、5では、加工・冷却工程S2の後の冷却工程S3において、平均冷却速度CR2が低いため、ベイナイトが生成されてしまい、マルテンサイト分率が低下してしまったものと考えられる。また、比較例2、3、4では、アスペクト比の比率が1.4倍未満、さらに比較例2では第一の部位10aのアスペクト比が1.5未満であった。比較例2では、しごき率が小さく、加工・冷却工程S2における700℃以下温度T2以上の温度範囲における追加加工での塑性歪みが小さくなったことによりγ相のアスペクト比を大きくすることができなかったと考えられる。比較例3、4では、所定のしごき率で加工しているものの、しごき加工によって与えられる塑性歪みが、700℃以下温度T2以上の温度域で与えられず、700℃を超える温度域で与えられたことで、加工後に再結晶化してしまったと考えられる。
そして、第一の部位10aにおける耐摩耗性を評価した。なお、実施形態にも記載したとおり、アスペクト比の比率は計算結果の小数点第2位を四捨五入して小数点第1位までとした値とする。
耐摩耗性の評価は、国際公開第2013/150844号に開示された方法に準じて実施した。すなわち、ブロックオンリング式摩耗試験によって、対象となるブロック試験片をリング試験片に押し付けて、リング試験片を回転させて摩耗試験を実施した。押し付け荷重500Nでブロック試験片の試験面をリング試験片に押し付け、0.1m/秒のすべり速度で、総すべり距離が8000mになるまでリング試験片を回転させた。ブロックオンリング式摩耗試験終了後、ブロック試験片の試験面を、表面粗さ計を用いて非接触部、接触部、非接触部と連続して測定し、断面曲線において非接触部と接触部の最大の差を摩耗深さとした。なお、各3箇所ずつ測定し、その平均値を摩耗深さとした。このときの摩耗深さが10.0μm以下であれば耐摩耗性に優れると判断した。
表3に示すように、発明例1−1〜1−11では高い摩耗性を示した一方、比較例1〜3では十分な耐摩耗性を得ることができなかった。
Figure 0006628019
Figure 0006628019
<実施例2>
表4、表5に示すように、発明例2−1〜2−9ではいずれも第一の部位10aにおけるマルテンサイト分率が90%以上であり、アスペクト比の比率が1.4倍以上、第一の部位10aのアスペクト比が1.5以上であった。温度T2は、加工終了温度でもある。さらに、発明例2−1〜2−9では、第一の部位10aの厚さ方向中心部における厚さ方向のビッカース硬さは、第二の部位10bの厚さ方向中心部における厚さ方向のビッカース硬さに対して2%以上高い値を示した。ビッカース硬さは、試験力50gfにより実施した。また、実施例1同様に耐摩耗性について評価を行った。そして、発明例2−1〜2−9ではより高い耐摩耗性を得ることができた。なお、実施形態にも記載したとおり、ビッカース硬さの比率は計算結果の小数点第3位を四捨五入して小数点第2位までとした値とする。
Figure 0006628019
Figure 0006628019
<実施例3>
表6、表7に示すように、発明例3−1〜3−5ではいずれも第一の部位10aにおけるマルテンサイト分率が90%以上であり、アスペクト比の比率が1.4倍以上、第一の部位10aのアスペクト比が1.5以上であった。温度T2は、加工終了温度でもある。さらに、発明例3−1〜3−5では、第一の部位10aの厚さ方向のビッカース硬さが、中心部に対して表面部で2%以上高い値を示した。ビッカース硬さの測定条件は実施例2と同様である。表面部のビッカース硬さは表面より厚さ方向に50μmの位置で測定した。また、実施例1同様に耐摩耗性について評価を行った。そして、発明例3−1〜3−5ではより高い耐摩耗性を得ることができた。なお、実施形態にも記載したとおり、ビッカース硬さの比率は計算結果の小数点第3位を四捨五入して小数点第2位までとした値とする。
Figure 0006628019
Figure 0006628019
<実施例4>
表8、表9に示すように、発明例4−1〜4−5ではいずれも第一の部位10aにおけるマルテンサイト分率が90%以上であり、アスペクト比の比率が1.4倍以上、第一の部位10aのアスペクト比が1.5以上であった。温度T2は、加工終了温度でもある。さらに、発明例4−1〜4−5では、第一の部位10aの厚さが第二の部位10bの厚さに対して10%以上小さくなるまで加工された。実施例1同様に耐摩耗性について評価を行った。そして、発明例4−1〜4−5ではより高い耐摩耗性を得ることができた。なお、実施形態にも記載したとおり、厚さの比率は計算結果の小数点第3位を四捨五入して小数点第2位までとした値とする。
Figure 0006628019
Figure 0006628019
以上、本発明の実施形態及び実施例について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこれら実施形態及び実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上記各実施形態及び実施例においてプレス成形鋼品10は、円板状の底部11(第二の部位10b)及び円筒状の縦壁部12(第一の部位10a)を備えるカップ形状とするものとしたが、これに限られるものではない。プレス成形鋼品は、第二の部位10bが矩形状のものや、第一の部位10aが第二の部位10bの周縁の一部に形成されているものとし、例えば断面がU字状や断面ハット形の長尺部品としても良い。ここで、本実施形態及び実施例におけるプレス成形鋼品10は、第一の部位10aが高い耐摩耗性を有しているが故に通常焼き入れ部よりも強度が高いので、センターピラーなどの長尺部品などにも好適である。また、プレス成形品10は、円板状の鋼材20から上記方法により加工されるものとしたがこれに限られるものではなく、矩形状の鋼材20で形成され、その一部分が第一の部位10a、他の部分が第二の部位10bとしても良い。プレス成形鋼品10において、第一の部位10aが第二の部位10bに対して厚さが異なる場合、例えば一定の厚さの鋼材のうち第一の部位10aとなる部分をしごき加工等して厚さを変化させて第一の部位10aを形成した場合、厚さの相違に基づいて第一の部位10aの範囲と第二の部位10bの範囲をそれぞれ特定しても良い。また、プレス成形品10は、第一の部位10aと第二の部位10bとで同一の厚さとしても良い。例えば、厚さが部位によって異なる鋼材を用いて、厚さが大きい部位について加工して第一の部位10aを形成することで、第一の部位10aと第二の部位10bとを同一の厚さとすることもできる。この場合、第一の部位10aの範囲と第二の部位10bの範囲は、旧γ粒のアスペクト比や、ビッカース硬さなどにより特定することができる。
本発明によれば、特定の部分についての耐摩耗性を向上させたプレス成形鋼品を提供することが可能であり、産業上有用である。
10 プレス成形鋼品
10a 第一の部位
10b 第二の部位
11 底部
12 縦壁部

Claims (8)

  1. 第一の部位と前記第一の部位に一体に連なる第二の部位とを有するプレス成形鋼品であって、
    前記第一の部位の金属組織中のマルテンサイト分率が体積%で90%以上であり、
    前記第一の部位の旧γ粒径のアスペクト比が、前記第二の部位の旧γ粒径のアスペクト比の1.4倍以上であるプレス成形鋼品。
  2. 前記第一の部位の旧γ粒径のアスペクト比が1.5以上である請求項1に記載のプレス成形鋼品。
  3. 前記第一の部位の厚さ方向中心部における当該厚さ方向のビッカース硬さは、前記第二の部位の厚さ方向中心部における当該厚さ方向のビッカース硬さよりも5%以上高い請求項1または請求項2に記載のプレス成形鋼品。
  4. 前記第一の部位の厚さ方向におけるビッカース硬さが、当該厚さ方向の中心部に対して表面部の方が2%以上高い請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のプレス成形鋼品。
  5. 前記第一の部位の厚さが、前記第二の部位の厚さよりも10%以上小さい請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のプレス成形鋼品。
  6. 円板状に形成された底部と、
    前記底部の周縁から円筒状に突出している縦壁部とを備え、
    前記底部が前記第二の部位であり、
    前記縦壁部が前記第一の部位である請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のプレス成形鋼品。
  7. 前記第一の部位は他の部品と接触する接触面を有する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のプレス成形鋼品。
  8. トランスミッション部品である請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のプレス成形鋼品。
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