本発明は、刈取部にて刈り取られた穀稈を搬送して脱穀部へと供給する搬送装置が刈取入力軸を回動軸として回動昇降可能に設けられた構成において、搬送装置の昇降動作を用いて搬送装置のコンベヤの逆方向への動作を可能とすることで、簡単な構造により搬送装置における穀稈の詰まりを解消しようとするものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
[コンバインの全体構成]
まず、図1から図4を用いて、本実施形態に係るコンバイン1の全体構成について説明する。なお、以下の説明では、コンバイン1の前方に向かって左側(図3における下側)および右側(図3における上側)を、それぞれコンバイン1における左側および右側とする。
図1および図2に示すように、本実施形態に係るコンバイン1は、刈り取った圃場の作物を機体内に掻き込み、脱穀・選別・穀粒貯留し、適宜機外に搬出可能とした収穫機としての普通型コンバインである。コンバイン1は、自走可能な走行機体2と、走行機体2の前端部に設けられた刈取部3を有する。刈取部3は、稲や麦等の未刈り穀稈を刈り取りながら取り込む刈取装置として構成されたものであり、走行機体2に対して昇降可能に取り付けられている。
走行機体2は、左右一対のクローラ部5,5を有するクローラ式の走行装置として構成された走行部4を備える。左右のクローラ部5,5間には、機体フレーム6が架設されている。各クローラ部5は、その前端部に設けられた駆動スプロケット5aおよびクローラ部5の後端部に設けられたテンションローラ5bを含む複数の回転体と、これらの回転体に巻回された履帯5cとを有する。クローラ部5を構成する複数の回転体は、走行機体2の下面側に設けられたトラックフレーム5dに設けられている。また、駆動スプロケット5aは、コンバイン1が備えるエンジン25の動力の伝達を受けて回転駆動する。
機体フレーム6上の左側には、刈取部3により刈り取られて供給された穀稈を脱穀する脱穀部7と、脱穀部7により脱穀された穀粒を選別する選別部8とが設けられている。脱穀部7および選別部8は、脱穀部7を上段、選別部8を下段とした態様で配設されている。
機体フレーム6上において、脱穀部7および選別部8の右方には、選別部8で選別された穀粒(清粒)を貯留するグレンタンク10を有する穀粒貯留部9が設けられている。グレンタンク10内には、グレンタンク10の排出口に向けて貯溜穀粒を搬送する下部排出コンベヤ11が設けられている(図4参照)。グレンタンク10の排出口に連通するように、縦搬送コンベヤ12が上下方向に沿って立設されている。縦搬送コンベヤ12の上端部には、穀粒排出コンベヤ13が連設されている。穀粒排出コンベヤ13は、水平方向に旋回可能かつ水平軸回りに上下揺動可能に設けられている。これらのコンベヤにより、グレンタンク10内の穀粒が搬送され、穀粒排出コンベヤ13の先端部に設けられた籾投口14からトラックの荷台やコンテナ等に排出される。
また、機体フレーム6上において、穀粒貯留部9の前方の位置、つまり機体フレーム6上における右側前部の位置には、オペレータが搭乗する運転部15が設けられている。運転部15は、キャビン16により覆われている。運転部15には、運転座席17、運転座席17の前方に配置された操縦ハンドル18、主変速レバー21、副変速レバー22、作業クラッチレバー23等が設けられている。作業クラッチレバー23は、脱穀クラッチ57および刈取クラッチ75(図4参照)を入り切り操作するための作業操作具である。主変速レバー21、副変速レバー22、および作業クラッチレバー23は、運転座席17の左側に設けられたレバーコラム24に配設されている。
走行機体2上における穀粒貯留部9の後方には、駆動源としてのエンジン25が設けられている。エンジン25は、ディーゼルエンジンであり、排気ガス浄化装置であるディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)26を搭載している。DPF26は、エンジン25から排出される排気ガス中の黒煙を主体とする粒子状物質等を捕集する。エンジン25は、その排気ガスをDPF26中に通過させることで、排気ガスを浄化するようにしている。
刈取部3について説明する。刈取部3は、搬送装置としてのフィーダ30と、穀物ヘッダ(プラットホーム)31と、刈刃装置32と、左右一対の分草体33,33と、掻込リール34とを有する。
フィーダ30は、刈取部3にて刈り取られた穀稈を搬送して脱穀部7へと供給する搬送装置である。フィーダ30は、ハウジングとしてのフィーダハウス35と、フィーダハウス35内に設けられた穀稈搬送用のコンベヤ36とを有する。フィーダ30は、キャビン16の左方に位置し、平面視で長手方向を前後方向とする略四角筒状に構成されたフィーダハウス35の後端開口部を脱穀部7の前側の扱口7aに連通させた状態で設けられている。
穀物ヘッダ31は、横長バケット状に構成され、フィーダハウス35の前端開口部に連通するように、フィーダ30の前側に連設されている。穀物ヘッダ31内には、掻込オーガ(プラットホームオーガ)37が設けられている。掻込オーガ37は、左右方向を回転軸方向として回転可能に軸架されている。
刈刃装置32は、穀物ヘッダ31の前下端縁部に設けられており、バリカン状に構成されている。左右一対の分草体33,33は、穀物ヘッダ31の前側の左右側部から前方へ突出するように設けられている。掻込リール34は、タインバー付きのリールであり、掻込オーガ37の前上方の位置に設けられている。掻込リール34は、穀物ヘッダ31に基端部が枢支された左右一対のリール支持アーム34a,34aの先端部間に、左右方向を回転軸方向として回転可能に支持されている。掻込リール34は、回転しながら連続的に穀稈の着莢部に作用し、穀稈の着莢部を掻込オーガ37側へ掻き込む。刈取部3の各部の動作には、各種伝動機構を介して伝達されるエンジン25の動力が用いられる。
フィーダハウス35内のコンベヤ36は、その送り終端側を軸支する駆動軸として、脱穀部7の前部に設けられ左右方向を軸方向とする刈取入力軸(フィーダハウスコンベヤ軸)38を有する。フィーダ30の後端部は、刈取入力軸38により、左右方向を回動軸方向として回動可能に支持されている。また、フィーダハウス35の下面部と機体フレーム6との間には、昇降用シリンダ39が介設されている。
昇降用シリンダ39は、その伸長時に油圧の作用をともなう単動式の油圧シリンダである。したがって、昇降用シリンダ39が油圧の作用をともなって伸長することで、刈取部3(フィーダ30)が上昇方向に回動し、昇降用シリンダ39の油圧が解除されることで、刈取部3(フィーダ30)の自重による下降にともない、昇降用シリンダ39が短縮する。
このような構成により、刈取部3は、昇降用シリンダ39の伸縮動作によって刈取入力軸38を回動支軸として昇降するように設けられている。すなわち、フィーダ30の後端部は、刈取入力軸38を回動軸として、コンバイン1の走行機体2側に回動可能に支持されている。そして、フィーダ30は、その前側に設けられた刈刃装置32や掻込リール34等とともに刈取部3を構成し、刈取部3は、昇降用シリンダ39の伸縮動作による走行機体2に対するフィーダ30の回動により昇降動作するように構成されている。フィーダ30の昇降動作は、運転部15に設けられた所定の操作部により操作される。
脱穀部7および選別部8について説明する。脱穀部7は、扱口7aを前側に開口させた扱室内に設けられた扱胴41と、扱胴41の下方に配置された受網42とを有する。扱胴41は、前後方向を軸方向とする扱胴軸41aにより回転可能に支持されている。扱胴41は、扱胴軸41aを中心軸に沿わせた円筒状の本体部を有し、本体部の外周面には、螺旋状の羽根が設けられている。扱胴41の上側には、扱室内の脱穀物の搬送速度(滞留時間)を調節するための複数の送塵弁が角度調節可能に設けられている。受網42は、穀粒を漏下させるものであり、扱胴41の下部の外周面に沿うように設けられている。
選別部8は、受網42の下方に配置された揺動部としての揺動選別盤43と、駆動源からの回転動力によって揺動選別盤43を揺動させる揺動軸44aを含む揺動機構44と、一番コンベヤ45と、二番コンベヤ46と、唐箕47とを有する。なお、図4に示すように、唐箕47の前方には、プレファン71が設けられており、唐箕47の後方には、セカンドファン72が設けられている。
揺動選別盤43は、フィードパン、フィードパンの後方に配置され穀粒漏下量を調節するチャフシーブ、チャフシーブの下方に配置されたグレンシーブ等の比重選別用の構成を有する。一番コンベヤ45は、一番穀粒を集約するように機体幅方向に延びる一番樋内に配置されている。二番コンベヤ46は、一番コンベヤ45の後方の位置において、二番穀粒を集約するように機体幅方向に延びる二番樋内に配置されている。唐箕47は、揺動選別盤43に対して前下方から後上方へ抜ける選別風を送風する。
また、脱穀部7および選別部8の配設部分の機体左側方には、還元コンベヤ48が設けられている。還元コンベヤ48は、下端部を二番コンベヤ46近傍に位置させて二番コンベヤ46に連設されるとともに、上端部を扱胴41の前端部の近傍に位置させ、前上がりの傾斜状に延設されている。また、還元コンベヤ48の上端部には、扱胴41の前方において左右方向に延びる上コンベヤ49(図4参照)が設けられている。
以上のような構成を備えたコンバイン1は、圃場において、刈取入力軸38を中心(支軸)としたフィーダ30の昇降動作により刈取部3を地上に対して所望の高さ(収穫作物である穀稈の刈取高さ)となるまで上昇させ、非作業状態から作業状態となり、その状態で走行機体2により走行する。これにより、コンバイン1は、収穫作物を左右の分草体33,33により刈取対象と非刈取対象とに分草し、刈取対象の穀稈の穂先側の着莢部を掻込リール34により掻き込みながら刈刃装置32により穀稈の着莢部を刈り取る。
所望の刈取位置で刈り取られた穀稈の着莢部は、回転駆動する掻込オーガ37により穀物ヘッダ31内に掻き込まれるとともに、穀物ヘッダ31の左右中央部のフィーダハウス35の入口付近に集められ、フィーダハウス35内のコンベヤ36によりフィーダハウス35内を通って扱口7aに投入され、脱穀部7に供給される。
脱穀部7に供給された穀稈の着莢部は、脱穀部7により脱穀処理される。具体的には、脱穀部7に供給された穀稈は、回転する扱胴41により後方に向けて搬送されながら、主に扱胴41と受網42との間で脱穀される。受網42の網目よりも小さい穀粒等の脱穀物は、受網42から漏下する。受網42から漏下しない藁屑等は、扱胴41の搬送作用によって、選別部8の後部に設けられた排塵口から圃場に排出される。
一方、脱穀部7で脱穀処理され受網42から漏下した穀粒は、選別部8により選別処理される。具体的には、扱胴41にて脱穀されて受網42から漏下した脱穀物は、揺動選別盤43による比重選別作用と、唐箕47による風選別作用とにより、精粒等の穀粒(一番物)と、枝梗付き穀粒等の穀粒と藁の混合物(二番物)と、藁屑等とに選別されて取出される。
選別部8における選別により揺動選別盤43から落下した穀粒(一番物)は、一番コンベヤ45とこれに連設された揚穀コンベヤ(図示略)とによってグレンタンク10へ搬送される。二番物は、二番コンベヤ46とこれに連設された還元コンベヤ48および上コンベヤ49とによって扱胴41の脱穀始端側に戻され、再度脱穀処理を受ける。藁屑等は、選別部8の後部に設けられた排塵口から圃場に排出される。
次に、本実施形態に係るコンバイン1の動力伝達構成について、図4を用いて説明する。コンバイン1は、エンジン25の回転動力により、刈取部3、走行部4、脱穀部7、選別部8、および穀粒貯留部9を駆動させる。
エンジン25の出力軸25aの回転動力は、出力軸25aと第1カウンタ軸51との間に設けられた第1ベルト伝動機構52により第1カウンタ軸51に伝達される。一方、エンジン25の回転動力は、オーガクラッチ53を介して、下部排出コンベヤ11等の各種コンベヤを含む穀粒貯留部9に伝達される。なお、エンジン25は、昇降用シリンダ39等を作動させるチャージポンプ54を駆動させる作業機ポンプ軸を有する。
エンジン25の出力軸25aから第1カウンタ軸51に伝達された回転動力は、脱穀部7への動力伝達系と、走行部4、選別部8および刈取部3への動力伝達系とに分岐する。
まず、脱穀部7への動力伝達系に関し、第1カウンタ軸51の回転動力は、第2ベルト伝動機構55により第1ロータ駆動軸56に伝達される。第2ベルト伝動機構55には、第1カウンタ軸51の回転動力を第1ロータ駆動軸56に任意に断続して伝える脱穀クラッチ57が設けられている。
第1ロータ駆動軸56の回転動力は、脱穀変速装置58を介してロータ駆動軸59に伝達され、ロータ駆動軸59の回転動力は、第3ベルト伝動機構60を介して扱胴軸41aに伝達される。脱穀変速装置58は、高速ギヤ列と低速ギヤ列とを有する2段式の構成を備え、コンバイン1が備える制御装置による制御下で所定のアクチュエータにより、処理対象の作物の種類等に応じて適宜変速動作させられる。
このような構成により、エンジン25の駆動力が、脱穀部7へと伝達される。そして、作業クラッチレバー23の操作により、脱穀クラッチ57がON/OFFされ、脱穀部7への動力伝達の断続が行われる。
次に、走行部4への動力伝達系に関し、第1カウンタ軸51の回転動力は、第4ベルト伝動機構61により第2カウンタ軸62に伝達される。第2カウンタ軸62の回転動力は、第5ベルト伝動機構63を介してHST入力軸64に伝達され、HST入力軸64により、走行用HSTおよび旋回用HSTを含むトランスミッション65に入力される。ここで、「HST」とは、油圧ポンプを駆動させることで発生させた油圧を油圧モータで再び回転力に変換する方式を採用した油圧式無段変速装置である。トランスミッション65の駆動力により、走行部4を構成するクローラ部5の駆動スプロケット5aが回転駆動させられる。
また、選別部8への動力伝達系に関し、第2カウンタ軸62の回転動力は、第6ベルト伝動機構66により第1PTO駆動軸67に伝達され、第1PTO駆動軸67の回転動力は、ギヤ等を含む伝動機構68を介して第2PTO駆動軸69に伝達される。第2PTO駆動軸69の回転動力は、所定の伝動機構により、プレファン71を回転させるプレファン軸71a、唐箕47を回転させる唐箕軸47a、および一番コンベヤ45を回転させる一番コンベヤ軸45aにそれぞれ伝達される。また、第2PTO駆動軸69の回転動力は、一番コンベヤ軸45aを介して揺動機構44の揺動軸44aに伝達される。また、一番コンベヤ軸45aの回転動力は、所定の伝動機構により、セカンドファン72を回転させるセカンドファン軸72aに伝達される。
揺動軸44aの回転動力は、所定の伝動機構により二番コンベヤ46を回転させる二番コンベヤ軸46aに伝達される。二番コンベヤ軸46aの回転動力は、所定の伝動機構により還元コンベヤ48を回転させる縦コンベヤ軸48aに伝達され、縦コンベヤ軸48aの回転動力は、所定の伝動機構により上コンベヤ49を回転させる横コンベヤ軸49aに伝達される。
そして、刈取部3への動力伝達系に関し、第2PTO駆動軸69の回転動力は、第7ベルト伝動機構73により刈取入力軸38に伝達される。刈取入力軸38の回転駆動により、フィーダハウス35内のコンベヤ36が作動する。第7ベルト伝動機構73には、第2PTO駆動軸69の回転動力を刈取入力軸38に任意に断続して伝える刈取クラッチ75が設けられている。なお、刈取入力軸38の右側端部には、第7ベルト伝動機構73を構成するプーリ73aが固設されている。
刈取入力軸38の回転動力は、第1チェン伝動機構76によりPF駆動軸77に伝達される。PF駆動軸77の回転動力は、第2チェン伝動機構78を介して掻込オーガ37を回転させるPFオーガ軸37aに伝達される。また、PF駆動軸77の回転動力は、第8ベルト伝動機構80を介して刈刃装置32を駆動させる刈刃駆動軸32aに伝達される。また、PF駆動軸77の回転動力は、第1リールカウンタ軸81および第2リールカウンタ軸82を含む動力伝達機構により、掻込リール34を回転させるリール軸34bに伝達される。
このような構成により、エンジン25の駆動力が、刈取部3へと伝達される。そして、作業クラッチレバー23の操作により、刈取クラッチ75がON/OFFされ、刈取部3への動力伝達の断続が行われる。
以上のような構成を備えた本実施形態に係るコンバイン1は、簡単な構造により搬送装置としてのフィーダ30における穀稈の詰まりを解消すべく、フィーダ30の昇降動作を用いてフィーダ30のコンベヤ36を逆方向へ動作させるコンベヤ逆方向動作機構部を備える。すなわち、コンバイン1は、刈取部3においてフィーダ30を備え、そのフィーダ30が刈取入力軸38を回動軸として回動昇降可能に設けられた構成において、コンベヤ逆方向動作機構部により、フィーダ30の昇降動作によってコンベヤ36を逆方向へ動作させる。以下、コンベヤ逆方向動作機構部ついて、図5から図10を用いて説明する。
本実施形態に係るコンバイン1において、フィーダ30は、フィーダハウス35内に、左右方向を軸方向として動力の伝達を受ける刈取入力軸38を駆動軸とするコンベヤ36を有し、コンバイン1の本機に対して刈取入力軸38を中心とした回動により昇降するように設けられている。すなわち、上述のとおり、フィーダ30は、フィーダハウス35と機体フレーム6との間に設けられた昇降用シリンダ39の伸縮動作によって、刈取入力軸38を中心として昇降動作するように設けられている(図5、矢印A1参照)。
フィーダハウス35は、左右の側面部91L,91Rと、下面部92と、上面部93とを有し、これらの面部によって前後両端開口の筒状体を構成している。詳細には、上面部93は、それぞれ傾斜平面状の後側面部93aおよび前側面部93bを有し、側面視で前後中央部を頂部とする屈曲面形状を有する。かかる上面部93の屈曲面形状に対応して、左右の側面部91L,91Rは、上部を山形状とする。
このようなフィーダハウス35においては、その後端部において、左右の側面部91L,91R、下面部92、および上面部93の後側面部93aの各面部の後端部により、略横長矩形状の開口部94が形成されている(図8参照)。また、フィーダハウス35の下面部92の前部に対して、昇降用シリンダ39の前側の端部が軸支部39aにより左右方向を回動軸方向として回動可能に支持されている。
コンベヤ36は、フィーダハウス35内において左右両側に互いに平行に設けられたチェン95と、左右のチェン95間に架設された複数のプレート96を有するチェンコンベヤである。プレート96は、チェン95の外周側に設けられている。プレート96は、左右のチェン95間における架設方向(左右方向)を長手方向とする細長い部材であり、クランク状あるいは略「U」字状の横断面形状を有する屈曲板状の部材である。プレート96は、ボルト等の締結具によってチェン95に固定されている。本実施形態では、15本のプレート96が、チェン95の長手方向について所定の間隔を隔ててチェン95に取り付けられている。
コンベヤ36は、その駆動軸である刈取入力軸38のフィーダハウス35内の架設部分の左右両側に刈取入力軸38と一体に回転するように設けられたスプロケット97に、チェン95の後側の部分を巻回させる。一方、チェン95の前側の部分は、フィーダハウス35内の前端部に設けられた円筒形状の前ドラム98に巻回されている。前ドラム98は、フィーダハウス35の左右の側面部91L,91R間において左右方向を軸方向とする所定の回転軸であるコンベヤ従動軸98aを中心として回転可能に軸支されている。つまり、チェン95は、スプロケット97および前ドラム98に無端状に巻回されており、刈取入力軸38の回転にともなうスプロケット97の回転により、巻回状態を維持しながらプレート96を移動させるように駆動する。コンベヤ36は、スプロケット97の後端部をフィーダハウス35の後側の開口部94から突出させるとともに、前ドラム98の前端部をフィーダハウス35の前側開口部からわずかに突出させるように設けられている。
このような構成により、コンベヤ36は、刈取入力軸38が左側面視で反時計方向(左回転方向)に回転することで(図6、矢印B1参照)、正転方向に駆動し(図6、矢印B2参照)、掻込オーガ37によりフィーダハウス35内に取り込まれた穀稈をプレート96に引っかけて斜め後上方に向けて搬送する。すなわち、コンベヤ36の正転方向の駆動時においては、スプロケット97および前ドラム98の下側に位置する直線状のチェン95の経路部分(フィーダハウス35の下面部92の直上に位置するチェン95の経路部分)が、前側から後側に移動する往路部分となり、スプロケット97および前ドラム98の上側に位置する直線状のチェン95の経路部分が、後側から前側に移動する復路部分となる。コンベヤ36により搬送された穀稈は、フィーダハウス35から扱口7a(図1参照)を介して脱穀部7に供給される。
刈取入力軸38は、フィーダハウス35の後端部において、左右の側面部91L,91R間に架設されるとともに側面部91L,91Rから左右外側に突出している。刈取入力軸38は、軸受部材等を介してフィーダハウス35に対して相対回動可能に設けられている。そして、刈取入力軸38の両端部は、それぞれフィーダハウス35の後端部の左右両側に設けられた支持ブラケット100(100L,100R)に対して軸受部材等を介して回転自在に支持されている。
支持ブラケット100は、上下方向を長手方向とする部材であり、固定面部101および支持面部102により平面視で略「L」字状をなす屈曲板状のベース部分と、ベース部分の屈曲形状の内側に架設された水平板状の複数のリブ部103とを有する。支持ブラケット100は、そのベース部分において略「L」字状の平面視形状における一辺部をなす平板状部分である固定面部101を後側に向けるとともに、同じく略「L」字状の平面視形状における他辺部をなす平板状部分である支持面部102を左右内側に向けた状態で設けられている。
左右の支持ブラケット100L,100Rは、フィーダハウス35の左右両外側において、支持面部102をフィーダハウス35の側面部91L,91Rの外側面に沿わせるとともに、支持面部102同士を互いに対向させ、ベース部分同士が略左右対称となるように配設されている。つまり、左右の支持ブラケット100L,100Rは、それぞれの支持面部102間にフィーダハウス35の後端部を左右両側から挟み込む態様で設けられている。
また、支持ブラケット100は、コンバイン1の本機側に固定された状態で設けられている。具体的には、支持ブラケット100は、コンバイン1の本機側に設けられた左右の支柱105(105L,105R)に固定されている。支柱105は、コンバイン1の本機の機枠を構成する部材であり、脱穀部7の前方において走行機体2上の左右両側の2箇所に立設されている。左側の支柱105Lの上部の前面側に、左側の支持ブラケット100Lが固定され、右側の支柱105Rの上部の前面側に、右側の支持ブラケット100Rが固定されている。
支持ブラケット100は、その固定面部101を前側から貫通する複数のボルト等の締結部材106により、固定面部101を支柱105の前面に接触させた状態で支柱105に固定されている。本実施形態では、各支持ブラケット100は、上下方向に所定の間隔を隔てて配設された4本の締結部材106により支柱105に固定されている。
このように、フィーダ30は、コンバイン1の本機側の構成である支柱105に固定された支持ブラケット100に対して左右方向を軸方向として昇降回動可能に支持されている。すなわち、フィーダ30は、その後端部を左右の支持ブラケット100L,100Rにより左右から挟持された態様で、刈取入力軸38を回動軸として本機側に対して昇降回動するように設けられている。
また、左側の支持ブラケット100Lの上部の前方には、フィーダハウス35の回動角より刈高さ(本機に対する刈取部3の高さ)の検出を行う刈取位置センサ107が設けられている。刈取位置センサ107は、支持ブラケット100Lの固定面部101の前方に設けられたセンサ支持ステー108に取り付けられており、本機側に支持されている。センサ支持ステー108は、支持ブラケット100Lを本機側に固定する4本の締結部材106のうち上側の2本の締結部材106をそれぞれ貫通させる筒状のスリーブ体106aを介して上記2本の締結部材106により固定支持されている。
刈取位置センサ107は、左右方向を軸方向として回動可能に設けられ前方に突出した検出片107aを有する。一方、フィーダハウス35の左側の側面部91Lには、検出片107aに作用する棒状の検出用ピン109が突設されている。検出用ピン109は、検出片107aの上側に位置し、フィーダ30の昇降動作における所定の動作範囲内で検出片107aに作用して検出片107aを回動させる。このような構成により、刈取位置センサ107は、フィーダ30の昇降動作において検出用ピン109の作用を受ける検出片107aの回動量に基づいて刈高さを検出する。
以上のような構成を備えたコンバイン1は、フィーダ30の昇降動作を用いてフィーダ30のコンベヤ36を逆方向へ動作させるコンベヤ逆方向動作機構部として、フィーダ30の上昇動作を刈取入力軸38に伝達し、フィーダ30の上昇動作にともなって刈取入力軸38を穀稈の搬送時(コンベヤ36の正転方向駆動時)の回転方向(以下「正転方向」という。)と逆方向(以下「逆転方向」という。)に回動させる逆転機構110を備える。すなわち、フィーダ30がその昇降動作の上昇端位置から下降した状態において、逆転機構110によりフィーダハウス35と刈取入力軸38とが係合状態となり、フィーダハウス35に対する刈取入力軸38の正転方向についての相対回動が規制された状態となる。かかる状態でフィーダ30が上昇することで、刈取入力軸38がフィーダハウス35とともに逆転方向に回動する。
逆転機構110によれば、詳細には次のような作用が得られる。刈取入力軸38は、上述のとおり左右の支持ブラケット100を介してコンバイン1の本機側に支持されるとともに、フィーダハウス35に対しては相対回動可能に設けられている。また、後述のとおり逆転機構110を構成する部材である歯車120は、刈取入力軸38に支持されており、同じく逆転機構110を構成する部材である爪部材130は、フィーダハウス35側に支持されている。
このため、逆転機構110によりフィーダハウス35に対する刈取入力軸38の正転方向の相対回動が規制された状態で、フィーダ30が刈取入力軸38を回動中心として上昇回動すると、そのフィーダ30の上昇回動量分、刈取入力軸38は、強制的にフィーダハウス35とともに逆転方向に回動する。すなわち、フィーダハウス35の上昇回動の方向(図6、矢印C1参照)は、左側面視で時計方向(右回転方向)となる刈取入力軸38の正転方向(図6、矢印C2参照)と一致しており、逆転機構110によりフィーダハウス35に対して係合状態となった刈取入力軸38は、上昇回動するフィーダハウス35と一体的に逆転方向に回動することになる。
したがって、フィーダ30の昇降動作を用いて刈取入力軸38を逆転方向に回動させる逆転機構110としては、上述のような刈取入力軸38についての係合作用が得られる構成であればよい。すなわち、逆転機構110としては、本機側に支持された刈取入力軸38がフィーダハウス35に対して相対回動する構成において、かかる刈取入力軸38の相対回動について、少なくとも正転方向の相対回動を規制する作用をなす構成であればよい。以下、本実施形態に係る逆転機構110の具体的な構成について説明する。
図5から図8に示すように、逆転機構110は、フィーダハウス35の左右側方のうち、コンバイン1の本機の左右方向の外側となる左側の側方に設けられている。すなわち、本実施形態では、キャビン16の左側方にフィーダ30が設けられており、フィーダハウス35の左側方が、コンバイン1の本機の左右方向の外側となり、フィーダハウス35の後端部の左側方に、逆転機構110が設けられている。
逆転機構110は、刈取入力軸38に支持された第1係合部材としての歯車120と、歯車120に係合する爪部材130とを有する。そして、逆転機構110は、歯車120を介して刈取入力軸38を回動させるフィーダ30の昇降動作をフィーダ30の上昇動作に制限するラチェット機構を含む構成となっている。
歯車120は、刈取入力軸38のフィーダハウス35内からの左方への突出部分38aに支持されている。歯車120は、刈取入力軸38を貫通させる円環状の板状部材であり、その内周側の部分である本体部分の外周側に、複数の歯121を有する。歯121は、歯車120の回転軸方向視で略三角形状をなす山型形状を有する。歯車120の周方向に隣り合う歯121間に、歯車120の回転軸方向視で略「V」字状をなす係合凹部122が形成される。
爪部材130は、フィーダ30に支持された状態で設けられており、歯車120に係合することでフィーダ30の上昇動作を歯車120を介して刈取入力軸38に伝達する。爪部材130は、フィーダハウス35の左側方において、歯車120の前方の位置に設けられている。爪部材130は、所定の形状部分を有する板状の部材であり、板厚方向を左右方向として、回動可能に設けられている。爪部材130は、歯車120と略同じかそれよりも薄い板厚を有し、歯車120に係合可能なように、左右方向の位置を歯車120と略同じとする位置に設けられている(図7参照)。
爪部材130は、フィーダ30を構成するフィーダハウス35の左側の側面部91Lに対して回動可能に支持された状態で設けられている。爪部材130は、側面部91Lから左方に向けて突設された左右方向を軸方向とする支軸131により、左右方向を回動軸方向として回動可能に支持されている。
支軸131は、円柱状の部分であって突出先端部を縮径部131aとし、この縮径部131aを爪部材130に貫通させるとともに、縮径部131aにおいてワッシャ135aを介して止め輪135bの嵌合を受けることで、爪部材130を回動可能に支持する。また、支軸131は、その前下側において側面部91Lとの間に設けられた補強用の支持ステー136の支持を受けている。
爪部材130は、支軸131による支持部分であって支軸131を貫通させる支持基部132と、支持基部132から上方に突出した爪本体部133とを有する。支持基部132は、支軸131の周囲に張り出した形状を有し、支持基部132の上側に爪本体部133が設けられている。爪本体部133は、支持基部132上側から後側に向けて屈曲した形状を有し、その先端部に、歯車120が位置する後方側に向けて鋭角状をなす先鋭係合部134を有する。爪部材130は、先鋭係合部134を歯車120の係合凹部122に嵌合させることで、歯車120に係合する。先鋭係合部134は、係合凹部122に合うように係合凹部122の略「V」字状の凹形状に対応した外形を有する。
このような構成により、爪部材130は、左側面視で時計方向(右回転方向)に回動することで、先鋭係合部134を、歯車120において前側に位置する係合凹部122に嵌合させ、歯車120に係合する。一方、歯車120に係合した状態の爪部材130が左側面視で反時計方向(左回転方向)に回動することで、爪部材130の歯車120に対する係合が解除される。
爪部材130は、付勢部材としてのバネ140により、歯車120に係合する方向、つまり左側面視で右回転方向(以下「係合方向」という。)に付勢されている。バネ140は、引張コイルバネであり、爪部材130に対して爪部材130を係合方向に引っ張る作用を与える。バネ140は、爪部材130に対して後下側(図10において右下側)に設けられており、爪部材130の後側の部分を下方に引っ張ることで、弾性力により爪部材130を係合方向に付勢する。
具体的には、バネ140は、その一端側である上端側のフック部140aを、爪部材130の支軸131による支持部分の後側(図10において右側)の部位を貫通する係止ピン141に係止させている。爪部材130を貫通する係止ピン141の右側(図10において奥側)への突出部分に、バネ140の上端側のフック部140aが引っ掛けられている。
一方、バネ140の他端側である下端側のフック部140bは、フィーダハウス35の側面部91Lに溶接等により固定された支持ステー142に係止されている。支持ステー142は、爪部材130の下方の位置に設けられている。支持ステー142は、側面部91Lから左側方に突出した所定の屈曲形状を有する屈曲板状の部分をなし、フィーダハウス35の前下がりの傾斜に沿う横板部142aと、横板部142aの後縁部から横板部142aに対して直角状に上側に向けて屈曲した縦板部142bとを有する。
このような支持ステー142に対し、バネ140は、その下側のフック部140bを縦板部142bに形成された係止孔142cに貫通させた状態で、支持ステー142に係止支持されている。
また、爪部材130の支軸131を中心とする回動動作は、爪部材130に連結されたワイヤ部材としての操作ワイヤ145を介して操作される。操作ワイヤ145の一端側は、連結部材146を介して爪部材130に連結されている。連結部材146は、側面視で略矩形状かつ前面視で上側開放の略「U」字状の外形をなす長手状の部材であり、その上端部を、爪部材130の支軸131による支持部分の前側(図10において左側)の部位を貫通する係止ピン147に連結させている。爪部材130を貫通する係止ピン147の右側(図10において奥側)への突出部分に、連結部材146の上端部が連結されている。係止ピン147は、連結部材146においてその長手方向に沿って形成された長孔146aを貫通し、ピンの貫通を受けて連結部材146に支持されている。これにより、連結部材146は、係止ピン147に対して長孔146aの長手方向に沿って相対移動可能に設けられている。一方、連結部材146の下端部に、操作ワイヤ145の一端部が連結されている。
操作ワイヤ145は、支持ステー142の横板部142aに固定支持された管状のワイヤ支持部材148を貫通するとともにフレキシブルな被覆チューブ149により被覆された状態で延設されている。ワイヤ支持部材148は、横板部142aを垂直状に貫通した態様でナット部材による締結作用等によって横板部142aに固定支持されている。操作ワイヤ145の他端側は、運転部15に設けられた所定の操作具によって操作されるように、後述する所定のリンク機構(リンク機構300)を構成する部材を介して所定の操作具に連結されている。
爪部材130において、爪部材130にバネ140を係止させるための係止ピン141と、爪部材130に操作ワイヤ145を連結させるための係止ピン147とは、支軸131による支持位置を間に挟んで前後略反対側に位置する。つまり、バネ140用の係止ピン141は、支軸131の後方に位置し、操作ワイヤ145用の係止ピン147は、支軸131の前方に位置する。
また、爪部材130と支持ステー142との間において、バネ140の架設方向(伸縮方向)、および操作ワイヤ145の延設方向は、いずれも前傾状の略上下方向である。そして、爪部材130は、バネ140による下方への引張り作用を常時受けており、操作ワイヤ145による下方への引張り作用の有無により、支軸131を中心として前後にシーソーのごとく回動する。
逆転機構110の動作について、図10を用いて説明する。通常、図10に示すように、逆転機構110は作動しておらず、爪部材130は、歯車120に係合する回動位置(以下「係合位置」という。)から係合方向と反対方向(以下「反係合方向」という。)に移動した非係合位置に位置する。つまり、逆転機構110は非作動状態となり、刈取入力軸38はフィーダハウス35に対して非係合状態となっている。爪部材130が非係合位置にある状態は、バネ140の係合方向への付勢作用に抗して爪部材130を反係合方向に引っ張る操作ワイヤ145の引張り作用により保持される。
そして、操作ワイヤ145を操作する所定の操作具の操作により、逆転機構110を作動状態とするための操作が行われることで、操作ワイヤ145による爪部材130の引張り作用が解除される。これにより、爪部材130は、バネ140の付勢力により係合方向に回動し(矢印D1参照)、爪部材130が係合位置に達し、先鋭係合部134が歯車120の前側に位置する係合凹部122に嵌合し、爪部材130が歯車120に係合した状態となる。つまり、逆転機構110が作動状態となり、刈取入力軸38がフィーダハウス35に対して係合状態となる。
逆転機構110の作動状態から、所定の操作具の操作によって逆転機構110を非作動状態とするための操作が行われることで、操作ワイヤ145が引っ張られる。これにより、爪部材130がバネ140の付勢力に抗して反係合方向(矢印D1と反対方向)に回動し、爪部材130の歯車120に対する係合が解除され、爪部材130が非係合位置に達し、逆転機構110は非作動状態に戻る。
なお、操作ワイヤ145の爪部材130に対する連結構造にいては、係止ピン147を連結部材146の長孔146aに係合させた構成により、操作ワイヤ145の作用方向について遊びが設けられている。これにより、爪部材130の歯車120に対する意図せぬ係合等が防止され、逆転機構110の確実な作動状態・非作動状態の切換え操作が可能となっている。
また、歯車120と爪部材130の係合構造に関し、逆転機構110は、爪部材130を歯車120に係合させた状態(作動状態)において、歯車120の、フィーダハウス35に対するコンベヤ36の逆転方向に対応する回転方向、つまり左側面視で右回転方向の相対回転が許容されるラチェット式の構造となっている。すなわち、歯車120の各歯121は、逆転機構110の作動状態において歯車120のフィーダハウス35に対する相対回転の方向が刈取入力軸38の逆転方向の回転に対応した方向に制限されるように、歯車120の周方向について、歯車120の半径方向に対してコンベヤ36の正転方向側(左側面視で左回転方向側)に傾いている。
このような構成によれば、例えばフィーダハウス35内における穀稈の詰まり作用等によって、フィーダハウス35の昇降動作にともなって刈取入力軸38がフィーダハウス35と一体的に回動する状態が生じた場合において、逆転機構110が作動状態となることで、次のような作用が得られる。すなわち、フィーダ30の上昇動作時には、歯車120は、上昇するフィーダハウス35にともなって、コンベヤ36の逆転方向に対応する方向(逆転方向)に回動する。一方、フィーダ30の下降動作時には、フィーダハウス35に対する歯車120の相対回動が許容される。ここでの歯車120の相対回動の方向は逆転方向である。つまり、フィーダハウス35の下降動作時においてフィーダハウス35に対する歯車120の相対回動が許容されることで、歯車120を介して刈取入力軸38がフィーダハウス35に対して逆転方向に相対回動することになる。このように、歯車120および爪部材130を含むラチェット構造によれば、歯車120を介して刈取入力軸38を回動させるフィーダ30の昇降動作が、フィーダ30の上昇動作に制限される。
したがって、逆転機構110の作動状態において、フィーダ30の上昇動作時にはフィーダハウス35と一体的に、フィーダ30の下降動作時にはフィーダハウス35に対して相対的に、それぞれ歯車120が逆転方向に回動することになる。つまり、フィーダ30の上昇時および下降時のいずれにおいても、歯車120を介して刈取入力軸38を逆転方向に回動させる作用が得られる。このため、フィーダ30が昇降動作を繰り返すことで、上昇・下降の動作毎に、刈取入力軸38を逆転方向に回動させる作用が得られる。
以上のように、本実施形態に係る逆転機構110は、刈取入力軸38に軸支された歯車120と、歯車120に係合する方向(係合方向)に付勢された爪部材130とを有し、歯車120を介して刈取入力軸38を回動させるフィーダ30の昇降動作をフィーダ30の上昇動作に制限するラチェット機構を含んで構成されている。
以上のような本実施形態の逆転機構110によれば、逆転機構110の作動状態において、フィーダ30が上昇回動することにより、そのフィーダ30の回動量分、刈取入力軸38に支持された歯車120について、刈取入力軸38の逆転方向に対応する方向への回動作用が得られる。かかる歯車120の逆転方向の回動作用が用いられ、刈取入力軸38が逆転方向に回動する。これにより、コンベヤ36が逆転方向に動作し、フィーダ30における穀稈の詰まりが解消される。
ここで、例えば、歯車120が刈取入力軸38に対して同軸状に固設されている場合、つまり歯車120が刈取入力軸38と一体的に回転する構成の場合、フィーダ30の上昇にともなう歯車120の逆転方向への回動量が1:1で刈取入力軸38に伝わり、コンベヤ36が逆転方向に動作することになる。一方で、このような構成の場合、フィーダ30の昇降動作の動作ストロークは限られていることから、コンベヤ36を逆転方向に動作させる刈取入力軸38の回動量について、穀稈の詰まりを解消するために十分な回転量を得ることができない可能性がある。
そこで、本実施形態に係るコンバイン1は、爪部材130を介してフィーダ30の上昇動作の伝達を受けて回動する歯車120の回動量を増幅して刈取入力軸38に伝達する増幅機構200を備える。増幅機構200について、図11から図13を用いて説明する。
図12に示すように、刈取入力軸38は、フィーダハウス35の左側の側面部91L、および側面部91Lの左側に位置する支持ブラケット100Lに対して、刈取入力軸38を貫通させる筒状の軸支部材201を介して回転自在に支持されている。
軸支部材201は、右側寄りの部位に拡径部分であるフランジ部201aを有し、右側の端部を側面部91Lに形成された軸支孔91aに嵌入させるとともに、フランジ部201aを側面部91Lの外側面(左側面)に沿わせている。軸支部材201は、側面部91Lの内側から側面部91Lを貫通する固定ボルト202により複数箇所で側面部91Lに固定されている。
また、軸支部材201は、フランジ部201aよりも左側の筒状部分を、支持ブラケット100Lに形成された軸支孔100aに相対回動可能に嵌入させている。軸支部材201は、刈取入力軸38の側面部91Lからの左側への突出部分38aを貫通させ、刈取入力軸38に固定された軸受部材203を介して、刈取入力軸38を相対回動可能に支持している。また、軸支部材201の右側の端部と刈取入力軸38との間には、軸受204が介装されている。
刈取入力軸38は、その左側の端部を、支持ブラケット100Lから左方に突出させ、その突出部分38aに歯車120を支持している。歯車120は、支持ブラケット100Lに対して左側に近接した位置に設けられている。増幅機構200は、逆転機構110の作動状態において、フィーダ30の上昇にともなう歯車120の回動量を増幅させて刈取入力軸38に伝達する。
増幅機構200は、刈取入力軸38に支持された入力軸側ギヤと、刈取入力軸38と平行に設けられた伝動軸としてのアイドラ軸215と、アイドラ軸215に支持され入力軸側ギヤに噛合する伝動軸側ギヤとを含む。本実施形態では、図11から図13に示すように、増幅機構200は、入力軸側ギヤとして、第1ギヤ211および第4ギヤ214を有し、伝動軸側ギヤとして、第2ギヤ212および第3ギヤ213を有する。
図12に示すように、第1ギヤ211は、歯車120の左側に隣接した位置に設けられている。第1ギヤ211は、刈取入力軸38に対して、軸方向に互いに隣接した2つの軸受216,216を介して相対回転自在に支持されている。第1ギヤ211は、歯車120と一体的に回転するように、刈取入力軸38を貫通させた歯車120を、刈取入力軸38の軸心に対して同軸状に支持する。
第1ギヤ211は、その右側から刈取入力軸38の外周面に対して所定の間隔を隔てるように筒状に突出した支持筒部211aを有する。第1ギヤ211は、支持筒部211aを、歯車120の内周孔120aに左側から挿嵌させた状態で、固定ボルト217により歯車120に固定されている。固定ボルト217は、第1ギヤ211に形成されたボルト孔211bを左側から貫通して歯車120の本体部分に螺挿されている。固定ボルト217による固定部は、刈取入力軸38の軸心周りに等間隔で複数箇所(本実施形態では6箇所)に設けられている。第1ギヤ211は、歯車120と外径を略同じとする。
アイドラ軸215は、刈取入力軸38の下方の位置において、軸方向を左右方向としてフィーダハウス35の側面部91Lの左側に設けられている。アイドラ軸215は、刈取入力軸38の側面部91Lからの左側への突出部分38aと略同じ長さを有する。
アイドラ軸215の一端側である右側の端部は、支持ブラケット100Lに形成された下軸支孔100bに軸受218を介して回転自在に支持されている。一方、アイドラ軸215の他端側である左側の端部は、刈取入力軸38の左側の端部を支持する架設支持プレート220の下部に支持されている。
架設支持プレート220は、その下部に、左右方向を筒軸方向とする短い筒状の軸受支持部220aを有し、この軸受支持部220a内に、軸受221を介してアイドラ軸215の左側の端部を回転自在に支持している。架設支持プレート220は、側面視で上下方向を長手方向とする略面取矩形状の外形を有する板状の部材であり、刈取入力軸38およびアイドラ軸215それぞれの左側端部を支持するとともに、これらの軸の左側端部間に架設された状態で設けられている。
アイドラ軸215において、その軸方向について第1ギヤ211に対応する位置に、第1ギヤ211と噛合する第2ギヤ212が設けられている。第2ギヤ212は、溶接等によりアイドラ軸215に固定されており、アイドラ軸215と一体的に回動する。第2ギヤ212は、第1ギヤ211よりも小径であり、第1ギヤ211に対してピニオンとして機能する。
本実施形態では、第1ギヤ211の歯数は38であり、第2ギヤ212の歯数は19である。つまり、第1ギヤ211と第2ギヤ212のギヤ比は1/2であり、第1ギヤ211から第2ギヤ212への回転の伝達に関しては、増速比が2となっている。
アイドラ軸215において、第2ギヤ212の左方に第3ギヤ213が設けられている。第3ギヤ213は、第2ギヤ212と同様に溶接等によりアイドラ軸215に固定されており、アイドラ軸215と一体的に回動する。第3ギヤ213は、第2ギヤ212よりも大径のギヤである。本実施形態では、第3ギヤ213の歯数は38である。
刈取入力軸38において、その軸方向について第3ギヤ213に対応する位置に、第3ギヤ213と噛合する第4ギヤ214が設けられている。第3ギヤ213の配置位置は、第1ギヤ211の左側に略隣接した位置となっている。第4ギヤ214は、刈取入力軸38の外周面および第4ギヤ214の内周面のそれぞれに刈取入力軸38の軸方向に沿って形成されたキー溝に嵌合した平行キー222により、刈取入力軸38に対して相対回転不能に設けられており、刈取入力軸38と一体的に回動する。第4ギヤ214は、第3ギヤ213よりも小径であり、第3ギヤ213に対してピニオンとして機能する。
本実施形態では、歯数が38の第3ギヤ213に対し、第4ギヤ214の歯数は19である。つまり、第3ギヤ213と第4ギヤ214のギヤ比は1/2であり、第3ギヤ213から第4ギヤ214への回転の伝達に関しては、増速比が2となっている。
また、刈取入力軸38の左側の端部は、第4ギヤ214を介して架設支持プレート220の上部に支持されている。第4ギヤ214は、外周側に第3ギヤ213と噛合する歯が形成された本体部の左側に、本体部とともに刈取入力軸38を貫通させた筒状の支持筒部214aを有する。一方、架設支持プレート220は、その上部に、左右方向を筒軸方向とする短い筒状の軸受支持部220bを有し、この軸受支持部220b内に、軸受223を介して第4ギヤ214の支持筒部214aの部分を回転自在に支持している。つまり、刈取入力軸38の左側の端部は、第4ギヤ214および軸受223を介して架設支持プレート220の上部に回転自在に支持されている。
刈取入力軸38は、雄ネジ部38bが形成された左側の端部を、架設支持プレート220からの左側へ突出させている。刈取入力軸38の架設支持プレート220からの突出部分は、刈取入力軸38を貫通させたワッシャや止め輪等からなる係止部224を介して雄ネジ部38bにナット255の螺合を受けて支持されている。
以上のような増幅機構200によれば、逆転機構110の作動状態において、爪部材130を介してフィーダ30の上昇動作の伝達を受けて逆転方向に回動する歯車120の回動が、歯車120と一体的に刈取入力軸38に対して相対回動する第1ギヤ211の回動となる。第1ギヤ211の回動は、これに噛合した第2ギヤ212を介してアイドラ軸215に伝達される。ここで、第1ギヤ211と第2ギヤ212の増速比により、第1ギヤ211の回動量が増加してアイドラ軸215に伝達される。本実施形態では、上記のとおり第1ギヤ211と第2ギヤ212間の増速比は2であり、第1ギヤ211の回動量は2倍に増加されアイドラ軸215に伝達される。
アイドラ軸215の回動は、アイドラ軸215と一体的に回動する第3ギヤ213および第3ギヤ213に噛合した第4ギヤ214を介して刈取入力軸38に伝達される。ここで、第3ギヤ213と第4ギヤ214の増速比により、第3ギヤ213の回動量が増加して第4ギヤ214に伝達される。第4ギヤ214は刈取入力軸38と一体的に回動することから、第4ギヤ214の回動量は、そのまま刈取入力軸38の回動量となる。本実施形態では、上記のとおり第3ギヤ213と第4ギヤ214間の増速比は2であり、第3ギヤ213の回動量は2倍に増加され第4ギヤ214を介して刈取入力軸38に伝達される。
このように、増幅機構200によれば、逆転機構110の作動状態におけるフィーダ30と一体的な歯車120の逆転方向の回動が、第1ギヤ211→第2ギヤ212→アイドラ軸215→第3ギヤ213→第4ギヤ214→刈取入力軸38の流れで増速され、刈取入力軸38の逆転方向の回動として伝達される。そして、本実施形態では、第1ギヤ211および第2ギヤ212間の増速比、並びに第3ギヤ213および第4ギヤ214間の増速比により、歯車120の回動量が2段階に増速されて4倍の回動量となって刈取入力軸38に伝達される。なお、増幅機構200におけるギヤの数や各ギヤの歯数やギヤ間の増速比等は、特に本実施形態の構成に限定されるものではない。
また、増幅機構200において、上述のとおり刈取入力軸38およびアイドラ軸215それぞれの左側端部を支持する架設支持プレート220は、その後部に、略直角状に内側(右側)に屈曲形成された支持面部220cを有する。つまり、架設支持プレート220は、刈取入力軸38およびアイドラ軸215それぞれの左側端部を支持する部分であって左右方向を板厚方向とする板状のプレート本体部220dと、前後方向を板厚方向とする板状の支持面部220cとを有し、平面視で略「L」字状をなす。
架設支持プレート220は、支持面部220cを、本機側の左側の支柱105Lの前側に接触ないし略接触させるように設けられている。架設支持プレート220において、後側の支持面部220cは、その後面220eを左側の支柱105Lの前面に対する接触面とし、支柱105Lに対する支持部分となる。
すなわち、逆転機構110の作動状態においては、フィーダ30の上昇にともない、刈取入力軸38は、爪部材130および歯車120を介して前側から後方への作用を受ける。つまり、刈取入力軸38は後方に逃げようとする。そこで、刈取入力軸38の左端部を支持する架設支持プレート220の支持面部220cを支柱105Lに対する支持部とすることで、刈取入力軸38の後方への移動が規制され、刈取入力軸38の後方への逃げが防止される。これにより、爪部材130の歯車120に対する係合について安定した係合状態を得ることができる。
また、増幅機構200においては、刈取入力軸38に支持された入力軸側ギヤと、アイドラ軸215に支持された伝動軸側ギヤとの噛合の反力等により、刈取入力軸38およびアイドラ軸215の軸同士が互いに離間する方向の作用が生じる。そこで、刈取入力軸38およびアイドラ軸215の軸間に架設支持プレート220を架設状態に設けるとともに、各軸の左端部を架設支持プレート220に軸支させた構成が採用されている。
このような構成によれば、刈取入力軸38とアイドラ軸215の軸間距離が一定に保持される。これにより、増幅機構200を構成する入力軸側ギヤと伝動軸側ギヤとが互いに離間することが規制され、これらのギヤ同士の噛合について安定した噛合状態を得ることができる。
以上のように、架設支持プレート220によれば、逆転機構110および増幅機構200において安定した動作状態を得ることができ、逆転機構110によるコンベヤ36の逆転作用、および増幅機構200による回動の増速伝達作用を確実に得ることが可能となる。
続いて、本実施形態に係るコンバイン1における逆転機構110の操作に関する構成について説明する。
逆転機構110の動作は、上述のとおり操作ワイヤ145を介して所定の操作具により操作される。本実施形態では、逆転機構110の操作具として、運転部15に設けられた、脱穀クラッチ57および刈取クラッチ75(図4参照)を入り切り操作する作業クラッチレバー23が採用されている。
すなわち、本実施形態のコンバイン1は、刈取部3および脱穀部7の操作を行うための作業操作具である作業クラッチレバー23の操作により、逆転機構110の作動・非作動が操作されるように構成されている。したがって、操作ワイヤ145の他端側は、作業クラッチレバー23によって逆転機構110が操作されるように、爪部材130と作業クラッチレバー23との間に設けられたリンク機構300の構成部材を介して作業クラッチレバー23に連結されている。つまり、爪部材130は、操作ワイヤ145を含むリンク機構300により作業クラッチレバー23に連動連結されている。
逆転機構110の操作具としての作業クラッチレバー23の操作構造および操作態様について、図14および図15を用いて説明する。図14に示すように、作業クラッチレバー23は、所定の形状を有する棒状のレバー本体部23aと、レバー本体部23aの上端部に設けられた略球状の把持部23bとを有する。
作業クラッチレバー23は、運転座席17の左側に設けられたレバーコラム24に設けられたレバーガイド部150から上側に突出した状態で設けられている。レバーガイド部150は、作業クラッチレバー23のレバー本体部23aを貫通させた状態で、所定の操作内容に対応した複数の操作位置を停止位置とする所定の操作移動経路に沿う作業クラッチレバー23の移動をガイドする。なお、レバー本体部23aは、レバーコラム24から上方に、運転座席17側である右側に傾倒状に延出するように所定の屈曲形状を有する。
レバーガイド部150は、レバーコラム24の上面部24aに形成されたガイド開口部151と、ガイド開口部151の下方に設けられたガイドプレート152とを有する。
ガイド開口部151は、作業クラッチレバー23の操作移動経路に沿う所定の開口形状を有する。ガイドプレート152は、平面視で矩形状の外形を有する。ガイドプレート152には、平面視でガイド開口部151の開口範囲内に含まれるようにガイド開口部151の開口寸法よりも小さく、しかもガイド開口部151の開口形状に沿った開口形状を有するプレート開口部152aが形成されている。プレート開口部152aは、弾性変形可能な板状の被覆部材153により覆われている。被覆部材153は、作業クラッチレバー23のレバー本体部23aを貫通させる開口部を有する。この被覆部材153の開口部は、作業クラッチレバー23の移動経路に沿うスリット状の部分と、作業クラッチレバー23の各操作位置における略円形状等の幅広の部分とからなる。
レバーガイド部150は、作業クラッチレバー23の操作移動経路を構成する経路部分として、左右方向に沿う第1の移動経路部161と、第1の移動経路部161の右端部から前方に延びる第2の移動経路部162と、第1の移動経路部161の左端部から後方に延びる第3の移動経路部163とを有する。レバーガイド部150は、これらの移動経路部により、全体として略クランク形状をなすように構成されている。なお、図14においては、便宜上、各移動経路部をハッチング部分として模式的に示している。
そして、作業クラッチレバー23は、レバーガイド部150における第1の移動経路部161と第3の移動経路部163との角部分、第1の移動経路部161と第2の移動経路部162の角部分、第2の移動経路部162の前端部分、および第3の移動経路部163の後端部分を、それぞれ所定の操作内容に対応した操作位置とする。具体的には次のとおりである。
作業クラッチレバー23は、その操作位置として、第1の移動経路部161と第3の移動経路部163との角部分に対応する停止操作位置P0と、第1の移動経路部161と第2の移動経路部162の角部分に対応する第1作業操作位置P1と、第2の移動経路部162の前端部分に対応する第2作業操作位置P2と、第3の移動経路部163の後端部分に対応する逆転操作位置P3との4箇所の操作位置を有する。
停止操作位置P0は、刈取部3および脱穀部7への動力の伝達を切状態とするとともに逆転機構110を非作動状態とする操作位置である。すなわち、作業クラッチレバー23が停止操作位置P0にある状態(図15(a)参照)では、刈取クラッチ75および脱穀クラッチ57(図4参照)はOFFの状態となり、逆転機構110においては爪部材130が非係合位置に位置し、刈取入力軸38はフィーダハウス35に対して非係合状態となる。つまり、作業クラッチレバー23を停止操作位置P0に位置させた状態は、いわばニュートラル状態である。本実施形態では、レバーコラム24の表面において、停止操作位置P0の近傍に、「OFF」の文字を表示した停止表示部170が設けられている。
第1作業操作位置P1は、停止操作位置P0から第1の方向である右方向に所定量移動した位置であって、脱穀部7への動力の伝達を入状態とする操作位置である。すなわち、作業クラッチレバー23が第1作業操作位置P1にある状態(図15(b)参照)では、刈取クラッチ75はOFFの状態、脱穀クラッチ57はONの状態、逆転機構110は非作動状態であり、脱穀部7が稼動状態となる。本実施形態では、レバーコラム24の表面において、第1作業操作位置P1の近傍に、「脱こく」の文字を表示した脱穀表示部171が設けられている。
第2作業操作位置P2は、第1作業操作位置P1から第3の方向である前方向に所定量移動した位置であって、脱穀部7への動力の伝達の入状態を保持しながら、刈取部3への動力の伝達を入状態とする操作位置である。すなわち、作業クラッチレバー23が第2作業操作位置P2にある状態(図15(c)参照)では、刈取クラッチ75および脱穀クラッチ57はONの状態、逆転機構110は非作動状態であり、刈取部3および脱穀部7が稼動状態となる。本実施形態では、レバーコラム24の表面において、第2作業操作位置P2の近傍に、「刈取」の文字を表示した刈取表示部172が設けられている。
逆転操作位置P3は、停止操作位置P0から第1の方向と異なる第2の方向である後方向に所定量移動した位置であって、逆転機構110を作動状態とする操作位置である。すなわち、作業クラッチレバー23が逆転操作位置P3にある状態(図15(d)参照)では、刈取クラッチ75および脱穀クラッチ57はOFFの状態となり、逆転機構110においては爪部材130が係合位置に位置し、刈取入力軸38はフィーダハウス35に対して係合状態となる。本実施形態では、レバーコラム24の表面において、逆転操作位置P3の近傍に、「刈取逆転」の文字を表示した刈取逆転表示部173が設けられている。
以上のように、本実施形態に係るコンバイン1において、作業クラッチレバー23は、停止操作位置P0から少なくとも第1の方向に所定量移動した位置であって、刈取部3および脱穀部7の少なくともいずれかへの動力の伝達を入状態とする作業操作位置として、第1作業操作位置P1および第2作業操作位置P2を有する。すなわち、第1作業操作位置P1は、停止操作位置P0から第1の方向(右方向)に所定量移動した位置であって、脱穀部7への動力の伝達を入状態とする作業操作位置であり、第2作業操作位置P2は、停止操作位置P0から右方向および前方向に所定量移動した位置であって、脱穀部7および刈取部3への動力の伝達を入状態とする作業操作位置である。
また、本実施形態において、作業クラッチレバー23の停止操作位置P0から逆転操作位置P3への移動操作方向である第2の方向は、第1作業操作位置P1から第2作業操作位置P2への移動操作方向である第3の方向と反対方向となっている。つまり、作業クラッチレバー23の操作方向に関し、第3の方向は前方向であって、その反対方向である後方向が、第2の方向となっている。
次に、操作ワイヤ145を含むリンク機構300について、図16および図17を用いて説明する。図16および図17に示すように、リンク機構300は、作業クラッチレバー23の基部を支持する第1リンク部材としてのレバー支持回動プレート310と、レバー支持回動プレート310の係合を受けるとともに操作ワイヤ145の他端部の連結を受ける第2リンク部材としての回動アーム体320とを有する。
レバー支持回動プレート310は、略山形状の板状の部分であるプレート部311を有する。プレート部311は、左右方向を板厚方向とする向きで、軸支部312により、左右方向に沿う第1回動軸S1を中心に回動可能に支持されている。軸支部312は、左右方向を筒軸方向とする筒状の外形をなす部分であって、プレート部311の上部(略山形状の頂部)においてプレート部311に対して貫通状に設けられている。軸支部312は、レバーコラム24内に配された所定のフレーム部材に対して所定の位置に支持されている。このように、レバー支持回動プレート310は、レバーコラム24内における固定の位置で第1回動軸S1を中心に回動可能に設けられている。
レバー支持回動プレート310は、プレート部311に、作業クラッチレバー23の基部を回動可能に支持する。所定の形状を有する棒状のレバー本体部23aは、レバーガイド部150からの下方への延出部分において、前方に向けて屈曲した被支持部23cを有する。被支持部23cは、略前後方向を軸方向(延伸方向)とした部分であり、作業クラッチレバー23の基部をなす。
プレート部311の右側の板面の下部に、作業クラッチレバー23の被支持部23cが、プレート部311の略山形状の底辺部に沿うように支持されている。被支持部23cは、プレート部311に固定された環状ないし筒状の軸支部材313により、被支持部23cの中心軸に一致する第2回動軸S2を回動軸方向として所定の位置で回動可能に支持されている。
このように、作業クラッチレバー23は、レバー支持回動プレート310により、左右方向に沿う第1回動軸S1を中心に前後方向に回動可能、かつ、平面視で前後方向に沿う第2回動軸S2を中心に左右方向に回動可能に支持されている。そして、上述した作業クラッチレバー23の操作移動経路との関係において、前後方向に沿う第2の移動経路部162および第3の移動経路部163の移動に、作業クラッチレバー23の前後方向の回動動作が用いられ、左右方向に沿う第1の移動経路部161の移動に、左右方向の回動動作が用いられる(図14参照)。
回動アーム体320は、左右方向に沿う第3回動軸S3を中心に回動する支持軸部323と、支持軸部323の軸方向の一側である右側の端部から後方に向けて延伸した第1アーム321と、支持軸部323の軸方向の他側である左側の端部から下方に向けて延伸した第2アーム322とを有する。第1アーム321と第2アーム322は、支持軸部323を介して互いに一体的に連結され、第3回動軸S3の軸方向視となる側面視で略「L」字状をなし、第3回動軸S3を中心に一体的に回動する。支持軸部323は、レバーコラム24内に配された所定のフレーム部材に対して所定の位置に支持されている。このように、回動アーム体320は、レバーコラム24内における固定の位置で第3回動軸S3を中心に回動可能に設けられている。
第1アーム321は、長手状の板状部材であり、左右方向を板厚方向とする向きで支持軸部323の右側の端部に固設されている。第1アーム321の後部には、第1アーム321の長手方向に沿う長孔321aが形成されている。長孔321aには、プレート部311の前下部から右方に向けて突出した棒状の係合ピン314が貫通している。係合ピン314は、プレート部311に固設されており、プレート部311と一体に回動する。
このように、回動アーム体320は、第1アーム321の長孔321aに係合ピン314を貫通させることで、レバー支持回動プレート310と係合している。そして、長孔321aおよび係合ピン314による係合部により、レバー支持回動プレート310と回動アーム体320の係合状態が保持されつつ、プレート部311および第1アーム321の回動にともなう係合ピン314の第1アーム321に対する相対移動が許容される。長孔321aは、係合ピン314の第1アーム321に対する相対移動の方向を第1アーム321の長手方向にガイドする。
第2アーム322は、長手状の板状部材であり、左右方向を板厚方向とする向きで支持軸部323の左側の端部に固設されている。第2アーム322の中間部に、操作ワイヤ145の他端側の端部が連結されている。操作ワイヤ145の他端部には、棒状の連結部材324が設けられている。一方、第2アーム322の中間部には、棒状の連結ピン325が、左方に向けて突出するように設けられている。連結ピン325は、連結部材324の先端部を貫通する。連結部材324は、連結部材324を貫通した連結ピン325の先端部に係止ピンを貫通させること等により、連結ピン325に係止支持されている。このようにして、操作ワイヤ145の他端部が回動アーム体320の第2アーム322に連結されている。
また、操作ワイヤ145の他端側は、第2アーム322に対する連結端から略後方に向けて水平状に延伸するように、レバーコラム24内に配されたワイヤ支持支柱331に支持ステー332を介して支持されている。支持ステー332は、側面視で略「U」字状をなす屈曲板状の部材であり、略「U」字状における底面側を前側とする向きでワイヤ支持支柱331に溶接等により固設されている。また、操作ワイヤ145を被覆する被覆チューブ149の他端側の端部には、被覆チューブ149とともに操作ワイヤ145を貫通させるワイヤ支持部材333が設けられている。ワイヤ支持部材333は、支持ステー332の前面部を貫通した態様で支持ステー332に固定されている。
このように、操作ワイヤ145の他端側の部分は、操作ワイヤ145に対する操作力(引張り力)の方向性を規定するとともにその操作力が安定して操作ワイヤ145に作用するように、略前後方向に沿って水平状に支持されている。詳細には、ワイヤ支持部材333からの操作ワイヤ145の前方への延出部分は、わずかに左斜め前に傾斜している(図17参照)。このような回動アーム体320に対する操作ワイヤ145の連結構造により、第3回動軸S3を中心とした回動アーム体320の回動によって第2アーム322が前側に移動することで、操作ワイヤ145がその他端側の端部から前方に引っ張られることになる。
以上のような構成を備えたリンク機構300を動作させる作業クラッチレバー23に対しては、作業クラッチレバー23の操作に連動する所定の部材の動作によって作動する複数のスイッチが設けられている。この複数のスイッチには、脱穀スイッチ401、刈取スイッチ402、および逆転スイッチ403が含まれる。これらのスイッチは、作業クラッチレバー23の操作位置を検出する検出手段として機能するものであり、図18に示すように、コンバイン1が備える制御部としてのコントローラ400に接続されている。
コントローラ400は、各種演算処理や制御を実行するCPU(Central Processing Unit)、記憶部としてのROM(read only memory)、RAM(random access memory)、入出力インターフェイス等の各種機能部をバス等により接続させた構成を備える。CPUは、ROM等に記憶された各種のプログラムに従って演算処理を行う。コントローラ400は、脱穀スイッチ401、刈取スイッチ402、および逆転スイッチ403の検出信号や、コンバイン1が備える各種センサからの検出信号の入力を受け、これらの入力信号に基づいて制御信号を生成する。
コントローラ400には、図示せぬ脱穀クラッチ用アクチュエータを介して脱穀クラッチ57が接続されている。コントローラ400は、脱穀スイッチ401からの検出信号に基づき、脱穀クラッチ用アクチュエータの動作制御を介して、脱穀クラッチ57の動作を制御する。また、コントローラ400には、図示せぬ刈取クラッチ用アクチュエータを介して刈取クラッチ75が接続されている。コントローラ400は、刈取スイッチ402からの検出信号に基づき、刈取クラッチ用アクチュエータの動作制御を介して、刈取クラッチ75の動作を制御する。また、逆転スイッチ403による検出信号は、コントローラ400によって行われる後述のエンジン25の始動停止制御に用いられる。
脱穀スイッチ401は、作業クラッチレバー23が脱穀「入」に対応する位置である第1作業操作位置P1から第2作業操作位置P2までの位置にあることを検出するための検出装置である。具体的には、脱穀スイッチ401は、作業クラッチレバー23が停止操作位置P0から第1作業操作位置P1に移動することで検出ONの状態となる(図14参照)。
脱穀スイッチ401は、図17に示すように、プッシュボタン401aを有するプッシュスイッチであり、プッシュボタン401aが押されることでONの状態となる。脱穀スイッチ401は、プッシュボタン401a側を後側とする向きで、レバーコラム24内において平面視で作業クラッチレバー23の左側の位置にて前後方向に沿って配された前後延伸フレーム341の左側に支持プレート342を介してボルト等の固定具によって所定の位置に固定支持されている。
一方、作業クラッチレバー23の後側には、作業クラッチレバー23の移動操作に連動してプッシュボタン401aに押圧作用する押圧部材350が設けられている。押圧部材350は、上下方向を筒軸方向とする筒状の軸支部351と、軸支部351の前側に設けられ作業クラッチレバー23に係合する係合アーム片352と、軸支部351から左方に向けて延出しプッシュボタン401aに押圧作用する押圧アーム片353とを有する。
押圧部材350は、レバーコラム24内において作業クラッチレバー23の後側に設けられた支持柱354に対して軸支部351を同軸状に支持させており、筒状の軸支部351の中心軸に一致する上下方向に沿う第4回動軸S4を中心に回動するように設けられている。支持柱354は、レバーコラム24内において前後延伸フレーム341とこれに平行に右側に配された右前後延伸フレーム343との間に架設された横フレーム344に対して、その後側に溶接等により固設されている。係合アーム片352および押圧アーム片353は、軸支部351とともに一体の押圧部材350を構成し、第4回動軸S4を中心に回動する。
係合アーム片352は、上下方向を板厚方向とする板状の部分であり、前側を二股状に分岐させて前側を開放側とする凹部352aを有する。押圧部材350は、係合アーム片352の凹部352a内にレバー本体部23aを位置させることで、作業クラッチレバー23に係合する。
押圧アーム片353は、略前後方向を板厚方向とする板状の部分であり、先端側がプッシュボタン401aの前側に位置するように設けられている。押圧アーム片353の前側の板面353aが押圧面となり、プッシュボタン401aに押圧作用する。
このような構成により、作業クラッチレバー23の第2回動軸S2を中心とした左右方向の回動が、係合アーム片352を介して押圧部材350の第4回動軸S4を中心とした左右方向の回動として伝達される。この押圧部材350の回動による押圧アーム片353の前後方向の移動により、脱穀スイッチ401のON/OFFが切り換えられる。すなわち、作業クラッチレバー23を停止操作位置P0から第1作業操作位置P1に向けて右方向に移動操作することで、押圧部材350が平面視で右回転方向(時計方向)に回動し、これにともなって押圧アーム片353が前方へ移動してプッシュボタン401aに押圧作用し、脱穀スイッチ401がONの状態となる。この脱穀スイッチ401のONの状態は、作業クラッチレバー23が、第1作業操作位置P1から第2作業操作位置P2に移動することによっても保持される。一方、作業クラッチレバー23を第1作業操作位置P1から停止操作位置P0に戻すことで、押圧部材350の回動をともなって押圧アーム片353によるプッシュボタン401aに対する押圧作用が解除され、脱穀スイッチ401がOFFの状態となる。
刈取スイッチ402は、作業クラッチレバー23が刈取「入」に対応する位置である第2作業操作位置P2にあることを検出するための検出装置である。具体的には、刈取スイッチ402は、作業クラッチレバー23が第1作業操作位置P1から第2作業操作位置P2に移動したことを検出する。
刈取スイッチ402は、図16に示すように、所定の回動軸を中心に回動する回動レバー402aを有するレバースイッチであり、OFFの状態から回動レバー402aが所定量回動することでONの状態となる。刈取スイッチ402は、回動レバー402aを上側に突出させるとともに回動レバー402aの回動軸方向が左右方向となる向きで、レバーコラム24内においてレバー支持回動プレート310の下方の位置にて水平状に設けられたスイッチ支持ステー345にボルト等の固定具によって所定の位置に固定支持されている。
一方、プレート部311には、第1レバー操作アーム371が設けられている。第1レバー操作アーム371は、L字状に屈曲した棒状の部分であり、プレート部311の前端部に溶接等により固定されて下方に延出しており、その延出端部に、左方に向けて屈曲して棒軸方向を左右方向に沿わせた横軸部371aを有する。第1レバー操作アーム371は、その横軸部371aを、刈取スイッチ402の回動レバー402aの前側に位置させる。
このような構成により、作業クラッチレバー23の第1回動軸S1を中心とした前後方向の回動によるレバー支持回動プレート310の回動にともなう第1レバー操作アーム371の前後移動により、刈取スイッチ402のON/OFFが切り換えられる。すなわち、作業クラッチレバー23を第1作業操作位置P1から第2作業操作位置P2に向けて前方向に移動操作することで、プレート部311が右側面視で右回転方向(時計方向)に回動し、これにともなって第1レバー操作アーム371の横軸部371aが後方へ移動して回動レバー402aに押圧作用して後方に回動させ、刈取スイッチ402がONの状態となる。一方、作業クラッチレバー23を第2作業操作位置P2から第1作業操作位置P1に戻すことで、レバー支持回動プレート310の回動をともなって第1レバー操作アーム371による回動レバー402aに対する押圧作用が解除され、刈取スイッチ402がOFFの状態となる。
逆転スイッチ403は、作業クラッチレバー23が刈取逆転「入」に対応する位置である逆転操作位置P3にあることを検出するための検出装置である。具体的には、逆転スイッチ403は、作業クラッチレバー23が停止操作位置P0から逆転操作位置P3に移動したことを検出する。
逆転スイッチ403は、刈取スイッチ402と同様、所定の回動軸を中心に回動する回動レバー403aを有するレバースイッチであり、OFFの状態から回動レバー403aが所定量回動することでONの状態となる。逆転スイッチ403は、回動レバー403aを上側に突出させるとともに回動レバー403aの回動軸方向が左右方向となる向きで、レバーコラム24内に設けられた所定の支持部材にボルト等の固定具によって所定の位置に固定支持されている。
一方、第2アーム322には、第2レバー操作アーム372が設けられている。第2レバー操作アーム372は、L字状に屈曲した棒状の部分であり、第2アーム322の下端部に設けられた左側への屈曲面部322aの下側に溶接等により固定されて下方に延出しており、その延出端部に、右方に向けて屈曲して棒軸方向を左右方向に沿わせた横軸部372aを有する。第2レバー操作アーム372は、その横軸部372aを、逆転スイッチ403の回動レバー403aの前側に位置させる。
このような構成により、作業クラッチレバー23の第1回動軸S1を中心とした前後方向の回動によるレバー支持回動プレート310を介した回動アーム体320の回動にともなう第2レバー操作アーム372の前後移動により、逆転スイッチ403のON/OFFが切り換えられる。すなわち、作業クラッチレバー23を停止操作位置P0から逆転操作位置P3に向けて後方向に移動操作することで、プレート部311が右側面視で左回転方向(反時計方向)に回動し、これに連動して回動アーム体320が右側面視で右回転方向に回動し、これにともなって第2レバー操作アーム372の横軸部372aが後方へ移動して回動レバー403aに押圧作用して後方に回動させ、逆転スイッチ403がONの状態となる。一方、作業クラッチレバー23を逆転操作位置P3から停止操作位置P0に戻すことで、レバー支持回動プレート310および回動アーム体320の回動をともなって第2レバー操作アーム372による回動レバー403aに対する押圧作用が解除され、逆転スイッチ403がOFFの状態となる。
以上のような構成を備えたコンバイン1の動作態様の一例について、図15、図18、図19および図20を用いて説明する。
まず、作業クラッチレバー23が停止操作位置P0にあるニュートラル状態について説明する。この状態では、図15(a)、図19(b)に示すように、作業クラッチレバー23は、前後方向については中立位置、左右方向については左側の位置に位置し、脱穀スイッチ401、刈取スイッチ402、および逆転スイッチ403は、いずれもOFFの状態となっている。すなわち、ニュートラル状態では、押圧アーム片353は脱穀スイッチ401に作用せず、第1レバー操作アーム371は刈取スイッチ402に作用せず、第2レバー操作アーム372は逆転スイッチ403に作用しない状態となっている。
また、ニュートラル状態では、図20(b)に示すように、逆転機構110は非作動状態であり、爪部材130は非係合位置に位置する。爪部材130が非係合位置にある状態は、前後方向について中立位置に保持された作業クラッチレバー23に対応してレバー支持回動プレート310を介して所定の回動位置にある回動アーム体320による、バネ140の付勢作用に抗した操作ワイヤ145の引張り作用により保持される。なお、作業クラッチレバー23が各操作位置に位置した状態は、リンク機構300における各部材の連結支持構造や別途設けられた所定の保持構造等の適宜の構造により保持される。
ニュートラル状態から、作業開始に際し、図15(b)に示すように、作業クラッチレバー23が、停止操作位置P0から第1作業操作位置P1に向けて右方に移動操作される(矢印X1参照)。これにより、作業クラッチレバー23に係合した押圧部材350が第4回動軸S4を中心に平面視で右回転方向に回動し(図17、矢印M1参照)、押圧アーム片353により脱穀スイッチ401のプッシュボタン401aが押され、脱穀スイッチ401がONの状態となる。これにより、作業クラッチレバー23が第1作業操作位置P1にあることが検出される。
脱穀スイッチ401による検出信号がコントローラ400に入力されると、コントローラ400は、脱穀クラッチ用アクチュエータに対して脱穀クラッチ57を「入」の状態とする制御信号を送る。これにより、脱穀クラッチ57がONとなり、脱穀部7が稼動を開始し、扱胴41等が回り始める。
また、作業クラッチレバー23が第1作業操作位置P1にある状態において、逆転機構110は、ニュートラル状態の場合と同様に非作動状態である(図20(b)参照)。このことは、作業クラッチレバー23が停止操作位置P0および第1作業操作位置P1のいずれの位置にある状態においても、作業クラッチレバー23が前後方向について中立位置にあることに基づく。
次に、図15(c)に示すように、作業クラッチレバー23が、第1作業操作位置P1から第2作業操作位置P2に向けて前方に移動操作される(矢印X2参照)。これにより、レバー支持回動プレート310が第1回動軸S1を中心に右側面視で右回転方向に回動し(図19(c)、矢印M2参照)、第1レバー操作アーム371により刈取スイッチ402の回動レバー402aが押されて回動し(図19(c)、矢印M3参照)、刈取スイッチ402がONの状態となる。これにより、作業クラッチレバー23が第2作業操作位置P2にあることが検出される。ここで、第1作業操作位置P1と第2作業操作位置P2との間では作業クラッチレバー23の左右方向の位置が一定であることから、脱穀スイッチ401をONの状態とする押圧部材350の回動位置が保持された状態で、係合アーム片352の凹部352aにより作業クラッチレバー23の前方への移動が許容される。
刈取スイッチ402による検出信号がコントローラ400に入力されると、コントローラ400は、刈取クラッチ用アクチュエータに対して刈取クラッチ75を「入」の状態とする制御信号を送る。これにより、脱穀部7が稼動した状態で、刈取クラッチ75がONとなり、刈取部3が稼動を開始し、フィーダ30のコンベヤ36や掻込オーガ37等が回り始める。これにより、コンバイン1が作業状態となり、刈取部3による刈取作業や脱穀部7による脱穀作業等が行われる。
そして、コンバイン1による作業中に、フィーダ30内で穀稈の詰まりが生じた場合等、図15(d)に示すように、作業クラッチレバー23が、第2作業操作位置P2から逆転操作位置P3に移動操作される。これにより、刈取部3および脱穀部7の稼動が停止するとともに、逆転機構110が作動状態となる。
ここで、作業クラッチレバー23は、第1作業操作位置P1および停止操作位置P0を経るように、第2の移動経路部162、第1の移動経路部161および第3の移動経路部163からなるクランク状の経路に沿って移動する。詳細には、作業クラッチレバー23は、コンバイン1の作業状態から、次の三段階の操作を経て、逆転操作位置P3に移動する。
すなわち、一段階目は、レバー支持回動プレート310を右側面視で左回転方向に回動させて第1レバー操作アーム371の刈取スイッチ402に対する作用を解除し、刈取スイッチ402をOFFとして刈取クラッチ75を「切」の状態とする、第2作業操作位置P2から第1作業操作位置P1への後方操作(図15(d)、矢印X3参照)である。二段階目は、押圧部材350を平面視で左回転方向に回動させて押圧アーム片353の脱穀スイッチ401に対する作用を解除し、脱穀スイッチ401をOFFとして脱穀クラッチ57を「切」の状態とする、第1作業操作位置P1から停止操作位置P0への左方操作(図15(d)、矢印X4参照)である。三段階目は、刈取逆転をONとする、停止操作位置P0から逆転操作位置P3への後方操作(図15(d)、矢印X5参照)である。
作業クラッチレバー23が停止操作位置P0にあるニュートラル状態を基準とした場合、ニュートラル状態から作業クラッチレバー23の後方操作により、逆転機構110が作動状態となる。ここで、脱穀スイッチ401については、OFFの状態が保持される。すなわち、停止操作位置P0と逆転操作位置P3との間では作業クラッチレバー23の左右方向の位置が一定であることから、脱穀スイッチ401をOFFの状態とする押圧部材350の回動位置が保持された状態で、係合アーム片352の凹部352aにより、作業クラッチレバー23の後方への移動が許容される。
作業クラッチレバー23が停止操作位置P0から逆転操作位置P3に移動操作されることで、図19(a)に示すように、レバー支持回動プレート310が第1回動軸S1を中心として右側面視で左回転方向に回動し(矢印M4参照)、これに連動して、長孔321aを貫通した係合ピン314により第1アーム321が上方に押され、回動アーム体320が第3回動軸S3を中心に右側面視で右回転方向に回動する(矢印M5参照)。これにより、第2アーム322により引っ張られていた操作ワイヤ145が緩み、爪部材130を非係合位置に保持していた操作ワイヤ145による爪部材130の引張り作用が解除される。これにより、図20(a)に示すように、バネ140の付勢力によって爪部材130が係合方向に回動して歯車120に係合し(矢印M6参照)、刈取入力軸38がフィーダハウス35に対して係合状態となる。
このように、リンク機構300は、作業クラッチレバー23の停止操作位置P0から逆転操作位置P3へのストローク動作により、爪部材130に対するバネ140の付勢力に抗した操作ワイヤ145の引張りを解除するように構成されている。逆に言うと、リンク機構300は、作業クラッチレバー23の逆転操作位置P3から停止操作位置P0へのストローク動作により、バネ140の付勢力に抗して爪部材130を係合位置から非係合位置に移動させて保持する操作ワイヤ145の引張り作用が得られるように構成されている。
逆転機構110の作動状態、つまり刈取入力軸38がフィーダハウス35に対して係合した状態において、フィーダ30が上昇動作することにより、刈取入力軸38が逆転方向に回動し、フィーダ30においてコンベヤ36が逆方向に動作することになる。これにより、フィーダ30内における穀稈の詰まりが解消されることになる。
ここで、フィーダ30内の穀稈の詰まりを解消するに際し、フィーダ30の上昇動作は、あらためてフィーダ30を下降させることで、必要に応じて複数回行われてもよい。そして、逆転機構110の作動状態においてフィーダ30が下降動作する際、逆転機構110のラチェット構造により、フィーダハウス35の刈取入力軸38に対する相対回動が許容され、刈取入力軸38の正転方向への回動は防止ないし抑制される。
フィーダ30内における穀稈の詰まりが解消された後、再度作業クラッチレバー23を第1作業操作位置P1、第2作業操作位置P2と移動操作することで、コンバイン1が作業状態となり、作業が再開される。
以上のような作業クラッチレバー23と逆転機構110の操作連動機構においては、作業クラッチレバー23の操作に応じて、リンク機構300により、逆転機構110の爪部材130が、歯車120に係合する係合位置から二段階に反係合方向に回動操作される。つまり、爪部材130は、非係合位置として、歯車120に対する係合が解除する係合解除位置に位置し、この係合解除位置からさらに反係合方向に回動した退避位置まで移動可能に構成されている。具体的には次のとおりである。
作業クラッチレバー23の4つの操作位置は、前後方向については、逆転操作位置P3が後位置、停止操作位置P0および第1作業操作位置P1が中立位置、第2作業操作位置P2が前位置となり、3つの位置に分けられる。
図19(a)に示すように、作業クラッチレバー23が後位置(逆転操作位置P3)にある状態では、図20(a)に示すように、爪部材130は歯車120に係合する係合位置に位置し、逆転機構110は作動状態となる。
作業クラッチレバー23が後位置から中立位置(停止操作位置P0または第1作業操作位置P1)に操作されることで、図19(b)に示すように、レバー支持回動プレート310は右側面視で右回転方向に回動し(矢印M7参照)、これに連動して回動アーム体320は右側面視で左回転方向に回動し(矢印M8参照)、操作ワイヤ145の他端部が前方に向けて引っ張られる(矢印M9参照)。これにより、図20(b)に示すように、爪部材130はバネ140の付勢力に抗して反係合方向に回動して係合解除位置に達し(矢印M10参照)、逆転機構110は非作動状態となる。
さらに、図19(c)に示すように、作業クラッチレバー23が中立位置である第1作業操作位置P1から前位置(第2作業操作位置P2)に操作されることで、レバー支持回動プレート310はさらに右側面視で右回転方向に回動し(矢印M2参照)、これに連動して、長孔321aを貫通した係合ピン314により第1アーム321が下方に押され、回動アーム体320はさらに右側面視で左回転方向に回動する(矢印M11参照)。これにより、第2アーム322に連結された操作ワイヤ145の他端部が前方に向けてさらに引っ張られる(矢印M12参照)。これにより、図20(c)に示すように、爪部材130は、バネ140の付勢力に抗してさらに反係合方向に回動して退避位置に達する(矢印M13参照)。すなわち、係合解除位置にある爪部材130は、作業クラッチレバー23の操作によって刈取クラッチ75が「入」の状態となることにともなって、係合解除位置からさらに反係合方向に回動した退避位置に回動する。
以上のように、逆転機構110の爪部材130と作業クラッチレバー23とを互いに連動連結させるリンク機構300は、作業クラッチレバー23が逆転操作位置P3から停止操作位置P0に移動することで、爪部材130を、歯車120に対する係合が解除する係合解除位置まで移動させ、作業クラッチレバー23が第1作業操作位置P1から第2作業操作位置P2に移動することで、爪部材130を、係合解除位置からさらに係合解除方向(反係合方向)に移動した退避位置まで移動させるように構成されている。
また、逆転機構110を備えた本実施形態のコンバイン1において、エンジン25の始動を制御するコントローラ400により、逆転スイッチ403による検出信号に基づき、エンジン25の始動停止の制御が行われる。
上述のとおり、逆転スイッチ403により、作業クラッチレバー23が逆転操作位置P3にあることが検出される。そこで、逆転スイッチ403による検出信号がコントローラ400に入力された状態において、コントローラ400は、エンジン25を始動させないように制御する。つまり、コントローラ400は、逆転スイッチ403により作業クラッチレバー23が逆転操作位置P3に位置することが検出されている状態では、エンジン25の始動を不可能とする制御を行う。かかる制御を行うための構成の一例について説明する。
図18に示すように、コントローラ400は、電源印加用のスタータスイッチ405を介してバッテリ406に接続されている。スタータスイッチ405は、所定のキーを鍵穴に差し込んで回転操作可能なロータリ式スイッチやプッシュボタン式スイッチであり、例えば運転部15において運転座席17の前方に位置するステアリングコラムに設けられている。
通常、スタータスイッチ405をON操作すると、バッテリ406からの電流がスタータに接続されたスタータリレーのコイル部に流れ込み、スタータリレーのスイッチ部が導通状態となる。これにより、バッテリ406からの通電にてスタータが作動し、エンジン25が始動する。エンジン25の始動後は、エンジン25の駆動状態と、バッテリ406から各部への電力供給とが維持される。そして、スタータスイッチ405をOFF操作すると、バッテリ406からの電力供給が停止するとともにエンジン25の駆動が停止する。
このような構成において、コントローラ400は、逆転スイッチ403からの検出信号に基づき作業クラッチレバー23が逆転操作位置P3にあることを検知している状態では、エンジン25の始動時、スタータスイッチ405がON操作されることによっても、エンジン25を始動させない。すなわち、コントローラ400は、刈取逆転ONの状態において、スタータリレーのスイッチ部の遮断状態(非導通状態)を維持するように、バッテリ406からの電流がスタータリレーのコイル部に流れ込まないような制御を行う。これにより、バッテリ406からスタータへの通電が遮断されてスタータが作動せず、その結果、エンジン25が始動しないことになる。
このような逆転スイッチ403の検出信号に基づくエンジン25の始動停止制御においては、例えば、警報ブザーを鳴らしたり、運転部15に設けられた液晶表示装置等の表示部において、例えば「刈取逆転を「切」にしてエンジンを始動してください。」といった警告メッセージを表示したりしてもよい。これにより、オペレータの中位を喚起でき、エンジン25が始動できない旨を的確に報知することができる。
以上のような構成を備えた本実施形態のコンバイン1によれば、刈取部3にて刈り取られた穀稈を脱穀部7へと搬送・供給するフィーダ30を備えた構成において、構造の複雑化を招くことなく、簡単な構造により、フィーダ30におけるコンベヤ36の逆転方向への動作を可能とし、フィーダ30における穀稈の詰まりを解消することができる。
すなわち、本実施形態のコンバイン1は、逆転機構110によって刈取入力軸38をフィーダハウス35に対して係合状態とすることで、フィーダ30の上昇動作を利用してコンベヤ36を強制的に逆方向に回転させる構成を備えている。つまり、刈取部3や脱穀部7等の作業部を駆動させる伝動系とは無関係の動力でコンベヤ36を逆方向に回転させる構成を備えている。
これにより、コンベヤの逆転用の伝動機構をエンジンから刈取部への動力伝達経路内に設けた従来構成との比較において、エンジン25から刈取部3への動力伝達構成を特に変更することなく、コンベヤ36を逆方向に動作させるための構成を安価でシンプルな構成で実現することが可能となる。また、本実施形態に係る逆転機構110は、昇降用シリンダ39によるフィーダ30の上昇動作を用いてコンベヤ36を逆方向に動作させるものであるため、コンバイン1において昇降用シリンダ39等を動作させる油圧装置についても特に変更する必要がなく、また、コンベヤ36を逆方向に動作させるために余分な動力を使う必要もない。
また、フィーダ30は昇降用シリンダ39による油圧の作用により上昇動作することから、フィーダ30の上昇動作は、フィーダ30の自重による下降動作に比して大きな操作力を容易に得ることができる。このため、例えばフィーダハウス35内における穀稈の詰まり作用等によりフィーダ30が昇降しにくい状態においても、フィーダ30を確実に上昇させることができ、逆転機構110によるコンベヤ36の逆転動作を確実に得ることが可能となる。また、フィーダ30の上昇動作は、昇降用シリンダ39の動作により能動的に行われるものであるため、フィーダ30の自重による下降動作に比して動作制御を行いやすく、逆転機構110によるコンベヤ36の逆転動作について良好な操作性を得ることができる。
また、本実施形態に係る逆転機構110によれば、エンジン25から刈取部3への動力伝達経路とは無関係に逆転機構110を構成することができる。このため、エンジン25から刈取部3への動力伝達経路においてコンベヤ36の正・逆転用の動力伝達の相互の干渉を避けるための構造を設ける必要がないので、構造が複雑となったり装置構成が大型となったりすることなく、コンベヤ36を逆方向に動作させるための構成をなすことが可能となる。
また、本実施形態に係る逆転機構110は、刈取入力軸38に支持された歯車120と、フィーダハウス35に支持されフィーダ30側に設けられた爪部材130とを主な構成部材として構成されている。このような構成によれば、逆転機構110を極めてシンプルな構成により実現することができ、コンバイン1の既存の構成に対して容易に設けることが可能となる。
また、本実施形態に係る逆転機構110は、歯車120と爪部材130とにより、逆転機構110の作動状態において刈取入力軸38を逆転方向に回動させるフィーダ30の昇降動作をフィーダ30の上昇動作に制限するラチェット機構として構成されている。このような構成によれば、逆転機構110の作動状態において、フィーダ30の下降動作時にフィーダ30を刈取入力軸38に対して相対回動させることができる。このため、フィーダ30内の穀稈の詰まりを除去するに際し、フィーダ30を昇降動作させることで、複数回、フィーダ30の上昇動作によってコンベヤ36を逆方向に動作させる場合において、フィーダ30の昇降動作を円滑に行うことが可能となる。
また、本実施形態に係るコンバイン1は、爪部材130を介してフィーダ30の上昇動作の伝達を受けて回動する歯車120の回動量を増幅して刈取入力軸38に伝達する増幅機構200を備える。このような構成によれば、フィーダ30の昇降動作を利用しながら、コンベヤ36を逆方向に動作させる刈取入力軸38の逆転方向の回動について十分な回転量を得ることができる。すなわち、フィーダ30の昇降動作の動作ストロークは限られているため、刈取入力軸38の逆転方向の回動について、穀稈の詰まりを解消するために十分な回転量を得ることができない場合があるが、増幅機構200を備えることにより、フィーダ30の上昇回動にともなう歯車120の回動による刈取入力軸38の回動量を増幅させることができる。これにより、コンベヤ36の逆方向の動作について十分な動作量を容易に得ることができ、効果的に穀稈の詰まりを解消することが可能となる。
また、増幅機構200は、刈取入力軸38に支持された入力軸側ギヤ(第1ギヤ211および第4ギヤ214)と、アイドラ軸215と、アイドラ軸215に支持され入力軸側ギヤに噛合する伝動軸側ギヤ(第2ギヤ212および第3ギヤ213)とを含んで構成されている。このような構成によれば、既存の構成を利用して増幅機構200を簡単に構成することができ、増幅機構200による回動量の増幅作用を確実かつ容易に得ることが可能となる。
また、本実施形態に係る逆転機構110は、フィーダ30においてフィーダハウス35に対して機体左右外側である左側の側方に設けられている。このような構成によれば、逆転機構110の配設部位が、コンバイン1の機体左外側部分となるので、逆転機構110に対するアクセス性を向上させることができる。これにより、逆転機構110について良好なメンテナンス性を得ることができる。したがって、例えば本実施形態に係るコンバイン1とはキャビン16のフィーダ30の配置が左右逆の構成を想定した場合、逆転機構110は、フィーダハウス35に対して機体の左右外側となる右側の側方に設けられることが好ましい。
また、本実施形態に係るコンバイン1は、運転部15に設けられた作業クラッチレバー23により逆転機構110の動作を操作するように構成されている。このような構成によれば、運転部15内で運転作業中のオペレータは、運転座席17から離席することなく逆転機構110を操作することができるため、穀稈の詰まりを除去するに際して良好な操作性を得ることができる。
すなわち、例えば、逆転機構110を操作するための操作具を別途設けた構成によれば、オペレータによる操作対象が増え、操作が煩雑となり、また、その逆転機構110の操作用の操作具が例えばキャビン16とフィーダ30との間の位置等の運転部15の外に配置した構成によれば、オペレータは運転座席17に着席した状態で逆転機構110の操作用の操作具を操作することが困難な場合があり、良好な操作性を得ることができない。そこで、本実施形態のコンバイン1のように、運転部15に設けられた作業クラッチレバー23を逆転機構110の操作具とすることで、コンベヤ36の逆転操作の操作性を向上することができる。
また、逆転機構110を作業クラッチレバー23により操作する構成を採用することにより、運転部15に設けられた既存の操作具を逆転機構110の操作具として共用することができるので、逆転機構110を操作するための操作部を別途設ける必要がなり、運転部15に配設される各種操作部の構成を簡略なものとすることができる。
さらに、例えば逆転機構110が作業クラッチレバー23とは別途設けられた操作具により操作される構成の場合、刈取クラッチ75と逆転機構110とが互いに独立して操作されることになるので、刈取クラッチ75がONの状態で逆転機構110が作動状態となること(正逆両噛み)を回避するための構成が必要となる。この点、逆転機構110を作業クラッチレバー23により操作する構成を採用することにより、刈取クラッチ75と逆転機構110の操作具の共通化を図ることができ、その操作具において刈取クラッチ75の操作と逆転機構110の操作とを互いに別操作とすることで、正逆両噛みを確実に回避することができる。
また、作業クラッチレバー23により逆転機構110を操作可能とした構成において、作業クラッチレバー23が、その操作位置として、停止操作位置P0と停止操作位置P0から右方向に移動した第1作業操作位置P1と、停止操作位置P0から後方向に移動した逆転操作位置P3とを有する。このような構成によれば、作業クラッチレバー23を不意に逆転操作位置P3に移動させることを回避することができ、良好な作業性を得ることができる。
特に、本実施形態では、作業クラッチレバー23が、その操作位置として停止操作位置P0、第1作業操作位置P1、第2作業操作位置P2、および逆転操作位置P3を有するとともに、これらの操作位置を経路端部または経路角部に有するクランク状の操作移動経路が構成されている。このような構成によれば、作業クラッチレバー23の操作移動経路の形状が牽制手段となり、刈取作業中に誤って逆転機構110を作動させることを可及的に防止することが可能となる。これにより、コンベヤ36や逆転機構110等の各部の損傷を防止することが可能となる。
具体的には、作業クラッチレバー23の移動操作に関し、停止操作位置P0を起点として作業部を駆動させる移動方向(本実施形態では右方向)とは異なる方向(本実施形態では後方向)への移動操作が、逆転機構110を作動させるための操作とされている。このため、作業クラッチレバー23の操作位置により作業部が動作している状態から、誤操作等による作業クラッチレバー23の不意な移動により逆転機構110が作動することを避けることができる。
すなわち、仮に、作業クラッチレバー23の移動操作について、作業部を駆動させる移動操作と、逆転機構110を作動させるための移動操作とが共通の直線に沿う互いに連続した移動経路の操作となる構成の場合、例えば作業クラッチレバー23の誤操作等により逆転機構110を意図せず急に作動させてしまうことが考えられる。そこで、作業クラッチレバー23のレバーガイド部150は、逆転機構110についての移動経路部として、ニュートラル状態となる停止操作位置P0を介して第1の移動経路部161とは異なる方向に設けられた第3の移動経路部163を有する。このため、逆転機構110を作動させる際に作業部がOFFの状態を確実に得ることができるとともに、逆転機構110の意図せぬ作動を避けることができ、高い安全性を得ることができる。
また、本実施形態では、逆転機構110を作動させるための作業クラッチレバー23の操作方向は、後方向であり、刈取クラッチ75をONにするための作業クラッチレバー23の操作方向である前方向と反対方向となっている。このような構成によれば、刈取部3の動作に直接的に干渉することになる逆転機構110を作動させるための作業クラッチレバー23の操作を、刈取部3を作動させるための作業クラッチレバー23の操作に対して明確に切り分けることができ、より高い安全性を得ることができる。
また、本実施形態では、爪部材130は、操作ワイヤ145を含むリンク機構300により作業クラッチレバー23に連結されるとともに、バネ140により歯車120に係合する方向に付勢されており、爪部材130をバネ140に抗して操作ワイヤ145により引っ張ることで爪部材130の歯車120に対する係合解除状態を保持する構成が採用されている。このような構成によれば、爪部材130の係合を解除して逆転機構110を非作動状態とする際に、爪部材130を操作ワイヤ145により引っ張ることで、確実に爪部材130の係合を解除させることができる。
すなわち、仮に、バネの付勢力により爪部材130の係合を解除させる構成を採用した場合、バネの状態等によっては、作業クラッチレバー23の操作がバネを介して爪部材130に十分に伝わらなかったり、バネの作用によって爪部材130が歯車120に噛み込んだ状態のままとなったりするといった不具合が考えられる。そこで、爪部材130の係合を解除させる操作部材として引張り用の操作ワイヤ145を採用することで、作業クラッチレバー23の操作を確実に爪部材130に伝達することができるので、爪部材130の噛込みを防止することができ、作業クラッチレバー23の操作により確実に逆転機構110を非作動状態とすることが可能となる。また、爪部材130の係合方向への回動についてはバネ140による付勢力を用いることで、例えば係合解除用の操作ワイヤ145とは別にワイヤを用いた構成等と比べて、爪部材130を動作させるための構造を簡単な構成により実現することが可能となる。
また、本実施形態では、爪部材130と作業クラッチレバー23とを互いに連結するリンク機構300は、作業クラッチレバー23の前後方向の操作位置に応じて、爪部材130を、係合位置から反係合方向に係合解除位置と退避位置との2段階に回動させるように構成されている。このような構成によれば、逆転機構110の作動に直接的に干渉することになる刈取部3の動作をONとする操作位置に作業クラッチレバー23がある状態で、爪部材130を係合位置から確実に退避させることが可能となる。これにより、刈取部3が作動している状態で爪部材130が歯車120に係合することを確実に防止することができ、高い安全性を得ることができる。
また、本実施形態のコンバイン1は、逆転スイッチ403を備え、その検出信号に基づいて、コントローラ400により、エンジン25の始動停止制御を行う。このような構成によれば、作業クラッチレバー23が逆転機構110を作動状態とする逆転操作位置P3にある状態(刈取逆転ONの状態)でエンジン25が始動することを防止することができる。これにより、例えば、刈取逆転ONの状態でのエンジン25の始動後にフィーダ30を上昇させることで、刈取入力軸38が逆転方向に回動し、この刈取入力軸38の回動により、刈取入力軸38から動力の伝達を受けて動作するコンベヤ36や刈刃装置32等の刈取部3の各動作部が意図せずに作動するといった不具合を解消することができる。結果として、高い安全性を得ることができる。
以上のように実施形態を用いて説明した本発明に係るコンバインは、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨に沿う範囲で、種々の態様を採用することができる。
上述した実施形態では、フィーダ30を昇降動作させる昇降用シリンダ39は、フィーダ30を上昇させる際に油圧を作用させる単動式の油圧シリンダであるが、これに限定されず、昇降用シリンダ39は復動式のシリンダであってもよい。
また、上述した実施形態では、逆転機構110を操作するための操作具として刈取部3および脱穀部7の操作を行うための作業クラッチレバー23が用いられているが、これに限定されるものではない。逆転機構110を操作するための操作具としては、刈取部3および脱穀部7のいずれか一方の操作を行うための操作具であったり、逆転機構110の操作用に別途設けた操作具であったりしてもよい。ただし、既存の構成を利用して構成の簡略化を図ったり、刈取部3等の作業部と逆転機構110との同時的な作動状態を回避したりする観点からは、逆転機構110の操作具は、刈取部3および脱穀部7の少なくともいずれかの操作を行うための作業操作具であることが好ましい。
また、上述した実施形態では、作業クラッチレバー23のレバーガイド部150は、第1の移動経路部161、第2の移動経路部162、および第3の移動経路部163により全体として略クランク形状をなすように構成されているが、これに限定されるものではない。レバーガイド部150において、停止操作位置P0から逆転操作位置P3までの第3の移動経路部163が沿う方向(第2の方向)は、停止操作位置P0から第1作業操作位置P1までの第1の移動経路部161が沿う方向(第1の方向)とは異なる方向であればよい。したがって、例えば、第3の移動経路部163が停止操作位置P0から前方に向けて設けられ、レバーガイド部150が各移動経路部により全体として略「U」字状をなすような構成であってもよい。
また、上述した実施形態では、エンジン25の始動停止制御として、コントローラ400によりバッテリ406からスタータへの通電を遮断することでエンジン25の始動を停止させる制御が行われているが、これに限定されるものではない。エンジン25の始動停止制御に関しては、逆転機構110を作業クラッチレバー23により操作する構成において、作業クラッチレバー23が逆転操作位置P3にあることを検出する逆転スイッチ403の出力信号に基づいてエンジン25の始動を停止させる制御であれば、その制御構成および制御内容は特に限定されない。