前記課題を解決するためになされた第1の発明は、歩行者が所持して、歩行者および車両の位置情報をそれぞれ含む歩行者情報および車両情報を、歩車間通信により車載端末装置との間で送受信する歩行者端末装置であって、自装置の位置情報を取得する位置情報取得部と、前記歩車間通信を行う通信部と、自装置を所持する歩行者の人物属性に関する人物属性情報を格納する情報格納部と、制御部と、を備え、前記通信部は、前記車載端末装置に前記人物属性情報を送信し、前記車載端末装置において前記人物属性情報に基づいて前記歩行者ごとに危険エリアの範囲を拡大するか否かを判定した結果である危険エリア判定情報を受信し、前記制御部は、前記危険エリア判定情報に基づいて、危険エリアの範囲を設定し、前記自装置の位置情報に基づいて、自装置を所持する歩行者が前記危険エリアに進入したか否かを判定し、前記通信部は、前記制御部において、前記危険エリアに進入していないと判定された場合に、前記歩行者情報の送信を停止する構成とする。
これによると、歩行者の人物属性に応じて危険エリアの範囲が設定されるため、危険な行動をとる可能性が高い歩行者の安全を確保することができる。また、危険な行動をとる可能性が低い歩行者では、危険エリアを狭く設定することができるため、歩行者端末装置の送信頻度を低減することができる。
また、第2の発明は、前記制御部は、自装置を所持する歩行者の行動履歴に基づいて、当該歩行者の人物属性を設定する構成とする。
これによると、人物属性を精度よく設定することができる。また、人物属性をユーザが入力する手間を省くことができる。
また、第3の発明は、車両に搭載されて、歩行者および車両の位置情報をそれぞれ含む歩行者情報および車両情報を、歩車間通信により歩行者端末装置との間で送受信する車載端末装置であって、自装置の位置情報を取得する位置情報取得部と、前記歩車間通信を行う通信部と、制御部と、を備え、前記通信部は、前記歩行者端末装置から送信される、当該歩行者端末装置を所持する歩行者の人物属性に関する人物属性情報を受信し、前記制御部は、前記人物属性情報に基づいて、前記歩行者ごとに危険エリアの範囲を拡大するか否かを判定し、前記通信部は、危険エリアの範囲に関する判定結果である危険エリア判定情報を前記歩行者端末装置に送信する構成とする。
これによると、第1の発明と同様に、危険な行動をとる可能性が高い歩行者の安全を確保するとともに、歩行者端末装置の送信頻度を低減することができる。そして、歩行者ごとの危険エリアの範囲に関する判定を、車載端末装置で一括して行うため、システム全体での処理の冗長化を避けることができる。
また、第4の発明は、前記制御部は、前記歩行者の位置情報に基づいて、判定対象となる歩行者がグループ行動中か否かを判定し、グループ行動中である場合には、前記危険エリアを拡大しないものと判定する構成とする。
これによると、歩行者がグループ行動中である場合には、歩行者が危険な行動をとる可能性が低くなるため、危険エリアを拡大しなくても、歩行者の安全を確保することができる。そして、危険エリアを拡大しないため、歩行者端末装置の送信頻度をより一層低減することができる。また、グループ行動に関する判定を、車載端末装置で一括して行うため、歩行者端末装置の各々で周辺に存在する歩行者端末装置から歩行者の位置情報を収集する必要がなくなるため、システム全体での処理の冗長化を避けることができる。
また、第5の発明は、前記制御部は、グループ内の別の歩行者の人物属性に基づいて、判定対象となる歩行者が危険な状態であるか否かを判定し、危険な状態である場合には、前記危険エリアを拡大するものと判定する構成とする。
これによると、判定対象となる歩行者が危険な状態である、すなわち、判定対象となる歩行者をグループ内の別の歩行者が十分に見守ることができず、歩行者が危険な行動をとる可能性が高くなる状態では、危険エリアを拡大することで、歩行者の安全を確保することができる。また、危険な状態であるか否かの判定を、車載端末装置で一括して行うため、歩行者端末装置の各々で周辺に存在する歩行者端末装置から歩行者の人物属性情報を収集する必要がなくなるため、システム全体での処理の冗長化を避けることができる。
また、第6の発明は、車両に搭載される車載端末装置と、歩行者が所持する歩行者端末装置と、を備え、歩行者および車両の位置情報をそれぞれ含む歩行者情報および車両情報を、歩車間通信により前記歩行者端末装置と前記車載端末装置との間で送受信する歩車間通信システムであって、前記歩行者端末装置は、自装置の位置情報を取得する位置情報取得部と、前記歩車間通信を行う通信部と、自装置を所持する歩行者の人物属性に関する人物属性情報を格納する情報格納部と、制御部と、を備え、前記通信部は、前記車載端末装置に前記人物属性情報を送信し、前記車載端末装置において前記人物属性情報に基づいて前記歩行者ごとに危険エリアの範囲を拡大するか否かを判定した結果である危険エリア判定情報を受信し、前記制御部は、前記危険エリア判定情報に基づいて、危険エリアの範囲を設定し、前記自装置の位置情報に基づいて、自装置を所持する歩行者が前記危険エリアに進入したか否かを判定し、前記通信部は、前記制御部において、前記危険エリアに進入していないと判定された場合に、前記歩行者情報の送信を停止し、前記車載端末装置は、自装置の位置情報を取得する位置情報取得部と、前記歩車間通信を行う通信部と、制御部と、を備え、前記通信部は、前記歩行者端末装置から送信される、当該歩行者端末装置を所持する歩行者の人物属性に関する人物属性情報を受信し、前記制御部は、前記人物属性情報に基づいて、前記歩行者ごとに危険エリアの範囲を拡大するか否かを判定し、前記通信部は、危険エリアの範囲に関する判定結果である危険エリア判定情報を前記歩行者端末装置に送信する構成とする。
これによると、第1の発明と同様に、危険な行動をとる可能性が高い歩行者の安全を確保するとともに、歩行者端末装置の送信頻度を低減することができる。
また、第7の発明は、車両に搭載される車載端末装置と、歩行者が所持する歩行者端末装置との間で、歩行者および車両の位置情報をそれぞれ含む歩行者情報および車両情報を、歩車間通信により送受信する歩車間通信方法であって、前記歩行者端末装置において、自装置を所持する歩行者の人物属性に関する人物属性情報を前記車載端末装置に送信し、前記車載端末装置において、前記人物属性情報に基づいて、前記歩行者ごとに危険エリアの範囲を拡大するか否かを判定して、その判定結果である危険エリア判定情報を前記歩行者端末装置に送信し、前記歩行者端末装置において、前記危険エリア判定情報に基づいて、危険エリアの範囲を設定し、前記自装置の位置情報に基づいて、自装置を所持する歩行者が前記危険エリアに進入したか否かを判定し、前記危険エリアに進入していないと判定された場合に、前記歩行者情報の送信を停止する構成とする。
これによると、第1の発明と同様に、危険な行動をとる可能性が高い歩行者の安全を確保するとともに、歩行者端末装置の送信頻度を低減することができる。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る歩車間通信システムの全体構成図である。
この歩車間通信システムは、歩行者が所持する歩行者端末装置1および携帯情報端末装置2と、車両に搭載される車載端末装置3およびカーナビゲーション装置4と、を備えている。
歩行者端末装置1は、自装置の位置情報を取得する測位機能と、車載端末装置3との間で歩車間通信を行う通信機能と、を備えており、これらの機能で取得した歩行者および車両の位置、進行方向、移動速度などに基づいて、自装置を所持する歩行者に車両が衝突する可能性が高いか否かを判定する危険判定を行う。
携帯情報端末装置2は、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末、ウェラブル端末などである。歩行者端末装置1および携帯情報端末装置2は相互に接続されており、歩行者端末装置1において、衝突の可能性が高いものと判定されると、事故回避のための歩行者に対する注意喚起の出力動作(例えば音声出力や振動など)を携帯情報端末装置2に行わせる。なお、歩行者端末装置1自身が注意喚起の出力動作を行うものとしてもよい。
車載端末装置3は、自装置の位置情報を取得する測位機能と、歩行者端末装置1との間で歩車間通信を行う通信機能と、を備えており、これらの機能で取得した歩行者および車両の位置、進行方向、移動速度などに基づいて、自装置が搭載された車両が歩行者に衝突する可能性が高いか否かを判定する危険判定を行う。
カーナビゲーション装置4は、運転者に対して経路案内を行うものである。車載端末装置3およびカーナビゲーション装置4は相互に接続されており、車載端末装置3において、衝突の可能性が高いものと判定されると、事故回避のための運転者に対する注意喚起の出力動作(例えば音声出力や画面表示など)をカーナビゲーション装置4に行わせる。なお、車載端末装置3自身が注意喚起の出力動作を行うものとしてもよい。
なお、車載端末装置3は、運転者が所持する携帯情報端末装置2と接続されて、運転者に対する注意喚起などの出力動作を携帯情報端末装置2に行わせるようにしてもよい。
また、歩行者端末装置1は、携帯情報端末装置2に内蔵されたものとしてもよく、車載端末装置3は、カーナビゲーション装置4に内蔵されたものとしてもよい。
さて、この歩車間通信システムでは、危険判定で必要となる歩行者および車両の位置、進行方向、移動速度などの情報を、歩行者端末装置1と車載端末装置3との間で相互に交換し、この情報交換を、ITS(Intelligent Transport System:高度道路交通システム)を利用した安全運転支援無線システムで採用されている周波数帯(例えば700MHz帯や5.8GHz帯)を利用した歩車間通信により行う。
本実施形態では、歩行者端末装置1から歩車間通信で送信される情報を歩行者情報と呼称し、車載端末装置3から歩車間通信で送信される情報を車両情報と呼称する。歩行者情報には、歩行者の位置情報の他に、歩行者端末装置1の識別情報(端末IDやMACアドレスなど)が含まれる。車両情報には、車両の位置情報の他に、車載端末装置3の識別情報(端末IDやMACアドレスなど)が含まれる。また、歩行者情報には、歩行者端末装置1あるいは携帯情報端末装置2に設けられたセンサ(図示せず)で取得した歩行者の進行方向や移動速度に関する情報も含まれる。車両情報には、車載端末装置3あるいはカーナビゲーション装置4に設けられたセンサ(図示せず)で取得した車両の進行方向や移動速度に関する情報も含まれる。
次に、危険エリアについて説明する。図2および図3は、危険エリアの一例を示す説明図である。
本実施形態では、交差点などのように事故が発生する可能性が高い場所に危険エリアを予め設定して、その危険エリアに歩行者が進入した場合に、危険エリアに歩行者が存在することを車載端末装置3に通知する。具体的には、歩行者端末装置1において、歩行者が危険エリアに進入していない状態では歩行者情報の送信を停止し、歩行者が危険エリアに進入したことを検知すると、歩行者の位置情報を含む歩行者情報を車載端末装置3に送信する。そして、車載端末装置3において、歩行者端末装置1から送信される歩行者情報を受信すると、その歩行者情報に基づいて、自車両が歩行者に衝突する可能性が高いか否かに関する危険判定を行い、この危険判定の判定結果に応じて車両の運転者に対する注意喚起が行われる。
ここで、飛び出し癖のある幼児や認知症患者は、危険な行動をとる可能性が通常の人物より高い。このため、このような危険な行動をとる可能性が人物の場合でも、運転者が十分な余裕をもって危険回避行動を行うには、危険エリアをかなり広く設定する必要がある。
ところが、危険エリアを広く設定すると、歩行者端末装置1から歩行者情報を送信する頻度が多くなる。これにより、歩車間通信のトラフィックが増大して、歩車間通信の輻輳が発生するおそれがある。また、車載端末装置3において頻繁に注意喚起が行われて、車両の運転者が煩わしさを感じるという問題が生じる。また、歩行者端末装置1の電力消費が増大して、連続使用時間が短くなるという問題も生じる。
このように危険エリアを一律に設定したのでは、危険な行動をとる可能性が高い歩行者の安全を確保することと、歩行者端末装置1の送信頻度を低減することとを両立させることができない。
そこで、本実施形態では、危険な行動をとる可能性の高さで分類した人物属性を歩行者ごとに設定し、その人物属性に基づいて危険エリアの範囲を設定するようにする。本実施形態では、飛び出し癖のある子供や認知症患者のように、危険な行動をとる可能性が高い人物に、「特定」の人物属性を設定し、危険な行動をとる可能性が低い通常の人物に、「通常」の人物属性を設定する。
そして、図2(A)に示すように、歩行者の人物属性が「通常」である場合には、危険エリア(ハッチングで示す)を通常の範囲に設定する。このとき、危険エリアは、交差点およびその交差点から横断歩道を含む所定の範囲の車道部分となる。なお、危険エリアは、交差点に対して歩行者が存在する側で長くなり、交差点の反対側で短くなるように設定してもよい。
この場合、危険エリアに歩道が含まれていないため、歩行者が歩道を歩いている状態では、歩行者端末装置1から歩行者情報が送信されない。一方、歩行者が横断歩道を渡り始めると、歩行者が危険エリアである車道に進入したため、歩行者端末装置1から歩行者情報が送信される。
一方、図2(B)に示すように、歩行者の人物属性が「特定」である場合には、危険エリア(ハッチングで示す)を拡大された範囲に設定する。このとき、危険エリアは、歩道を含むように拡大される。
この場合、危険エリアに歩道が含まれるため、歩行者が歩道を歩いている状態でも、危険エリアに進入しているため、歩行者端末装置1から歩行者情報が送信される。
また、飛び出し癖のある幼児や認知症患者のように危険な行動をとる可能性が高い人物には、その家族などの保護者や介護者が同行する場合が多い。この場合、危険な行動をとる可能性が高い人物を同行者が見守る状態となる。また、児童の集団登下校で、児童のグループの中に、危険な行動をとる可能性が高い児童が含まれる場合があるが、この場合、危険な行動をとる可能性が高い児童を他の児童や保護者が見守る状態となる。
このように危険な行動をとる可能性が高い人物、すなわち、人物属性が「特定」となる人物がグループ行動をとる場合、グループ内の人物属性が「通常」となる人物が、人物属性が「特定」となる人物を見守る状態となるため、人物属性が「特定」となる人物は危険な行動をとる可能性が低くなる。このため、危険エリアの範囲を広く設定する必要がなく、危険エリアを通常の範囲に設定しても、歩行者の安全を確保することができる。
そこで、本実施形態では、人物属性が「特定」となる歩行者がグループ行動中か否かを判定し、人物属性が「特定」となる歩行者がグループ行動中である場合には、グループ内の別の歩行者の人物属性に基づいて、対象となる歩行者が見守り状態であるか否かを判定する。すなわち、グループ内の別の歩行者の人物属性が「通常」である場合には、見守り状態であると判定し、グループ内の別の歩行者の人物属性が「特定」である場合には、見守り状態でないと判定する。
そして、図3(A)に示すように、人物属性が「特定」となる歩行者が、グループ行動中であり、かつ、グループ内の別の歩行者の人物属性が「通常」である、すなわち、見守り状態である場合には、危険エリアを通常の範囲に設定する。
一方、図3(B)に示すように、人物属性が「特定」となる歩行者が、グループ行動中であり、かつ、グループ内の別の歩行者の人物属性が「特定」である、すなわち、見守り状態でない場合には、危険エリアを拡大された範囲に設定する。
さて、このように人物属性に応じて危険エリアの範囲を設定する場合、自装置を所持する歩行者の人物属性情報を歩行者端末装置1に記憶させて、人物属性情報に基づく危険エリアの設定を歩行者端末装置1で行うことが考えられる。
ところが、歩行者がグループ行動中か否かに関するグループ判定では、周辺の歩行者端末装置1から位置情報を収集する必要があり、見守り状態の判定では、周辺の歩行者端末装置から人物属性情報を収集する必要がある。そして、このような位置情報および人物属性情報の収集および判定の処理を、歩行者端末装置の各々において実施するとなると、歩行者端末装置1の数が増えて、システム全体として処理が極めて冗長なものとなり、歩行者端末装置1の各々で電力を無駄に消費するという問題が生じる。
そこで、本実施形態では、車載端末装置3において、歩行者ごとの位置情報および人物属性情報を歩行者端末装置1から収集して、その歩行者ごとの位置情報および人物属性情報に基づいて、歩行者ごとの危険エリアの範囲に関する判定を行う。そして、歩行者ごとの危険エリアの判定結果に関する情報を車載端末装置3から各歩行者端末装置1に通知するようにする。
このようにすると、歩行者端末装置1の各々において、周辺の歩行者端末装置1から位置情報および人物属性情報を収集する必要がなくなり、歩行者端末装置1の数が増えた場合でも、システム全体として処理を簡潔なものとすることができ、歩行者端末装置1の各々での電力消費を低減することができる。
次に、歩行者端末装置1の概略構成について説明する。図4は、歩行者端末装置1の概略構成を示すブロック図である。
歩行者端末装置1は、測位部(位置情報取得部)11と、通信部12と、入出力部13と、制御部14と、情報格納部15と、バッテリー16と、を備えている。
測位部11は、GPS(Global Positioning System)、QZSS(Quasi-Zenith Satellite System)、GLONASS(Global Navigation Satellite System)などの衛星測位システムにより自装置の位置情報を取得する。なお、携帯情報端末装置2が有する測位機能を利用して、自装置の位置情報を取得するようにしてもよい。
通信部12は、車載端末装置3との間で歩車間通信を行うものである。この歩車間通信では、ITSを利用した安全運転支援無線システムで採用されている周波数帯を使用して無線通信が行われる。
入出力部13は、携帯情報端末装置2との間で情報の入出力を行うものである。この入出力部13から出力される情報に基づいて、携帯情報端末装置2において、歩行者に対する注意喚起などのための出力動作が行われる。
バッテリー16は、歩行者端末装置1の各部に電力を供給するものである。
情報格納部15は、地図情報、人物属性情報、危険エリア情報、関係者情報、グループ行動時間帯情報、および制御部14で実行されるプログラムを格納する。地図情報は、ユーザの操作に応じて、また、所定のタイミングで、自動で更新される。地図情報の更新情報は、適宜な記憶媒体を利用する他、携帯情報端末装置2の通信機能を利用してサーバからダウンロードするようにすればよい。なお、地図情報を携帯情報端末装置2から取得するようにしてもよい。
人物属性情報は、危険な行動をとる可能性の高さで分類した人物属性に関するものである。本実施形態では、危険な行動をとる可能性の高さに応じて、「特定」と「通常」との2通りの人物属性が設定される。
関係者情報およびグループ行動時間帯情報は、車載端末装置3において、歩行者の人物属性が「特定」である場合に、その歩行者がグループ行動中か否かに関するグループ判定を行う際に用いられる。この関係者情報およびグループ行動時間帯情報は、人物属性情報とともに車載端末装置3に送信される。
幼児や認知症患者のように危険な行動をとる可能性が高い人物には、家族などの保護者や介護者などの人物が付き添って、1つのグループで行動することが多い。そこで、歩行者の人物属性が「特定」である場合に、その歩行者に付き添う人物を関係者として予め登録することができ、その関係者の人物識別情報が関係者情報として情報格納部15に格納される。また、児童の集団登下校のように歩行者が習慣的にグループ行動を行う場合には、グループ行動の時間帯を予め登録することができ、その情報がグループ行動時間帯情報として情報格納部15に格納される。なお、この関係者情報およびグループ行動時間帯情報は、歩行者の保護者などが携帯情報端末装置2などを用いて登録操作を行うことで入力されるようにすればよい。
危険エリア情報は、危険エリアに関する設定情報である。本実施形態では、危険エリアについて通常範囲と拡大範囲との2つの範囲を設定することができ、この危険エリアの範囲は、制御部14の危険エリア設定部22で設定される。
制御部14は、人物属性設定部21と、危険エリア設定部22と、危険エリア進入判定部23と、歩行者情報送信制御部24と、危険判定部25と、を備えている。この制御部14はプロセッサで構成され、制御部14の各部は、情報格納部15に記憶されたプログラムをプロセッサに実行させることで実現される。
人物属性設定部21では、自装置を所持する歩行者の人物属性を設定する。危険エリア設定部22では、車載端末装置3から取得した危険エリア判定情報に基づいて、危険エリアの範囲を設定する。危険エリア進入判定部23では、測位部11で取得した歩行者の位置情報と、情報格納部15に格納された地図情報とに基づいて、歩行者が危険エリアに進入したか否かを判定する。歩行者情報送信制御部24では、危険エリア進入判定部23の判定結果などに応じて、通信部12による歩行者情報の送信を制御する。危険判定部25では、歩行者および車両の位置、移動速度、進行方向などに基づいて、注意喚起が必要か否か、すなわち、歩行者に車両が衝突する可能性が高いか否かを判定する。
特に、人物属性設定部21では、歩行者の行動履歴情報に基づいて歩行者の人物属性を設定する。この場合、歩行者の位置情報および地図情報に基づいて、車道へ飛び出すなどの危険な行動をとったことを検知して、その検知結果を行動履歴情報として情報格納部15に格納する。そして、過去の所定期間における危険な行動の頻度に基づいて、人物属性を判定する。すなわち、危険な行動の頻度が所定のしきい値を超える場合には、人物属性を「特定」に設定する。
なお、歩行者の位置情報などに基づいて歩行者の行動パターンを取得して、その歩行者の行動パターンを、認知症患者などの危険な行動をとる可能性が高い人物に特有の行動パターンと照合して、人物属性を判定するようにしてもよい。また、歩行者の保護者などが携帯情報端末装置2などを用いて登録操作を行うことで、人物属性が入力されるようにしてもよい。
次に、車載端末装置3の概略構成について説明する。図5は、車載端末装置3の概略構成を示すブロック図である。
車載端末装置3は、測位部(位置情報取得部)31と、通信部32と、入出力部33と、制御部34と、情報格納部35と、を備えている。なお、車載端末装置3には、車両に搭載されたバッテリー37から電力が供給される。
測位部31は、歩行者端末装置1の測位部11と同様に、衛星測位システムにより自装置の位置情報を取得する。なお、カーナビゲーション装置4が有する測位機能を利用して、自装置の位置情報を取得するようにしてもよい。
通信部32は、歩行者端末装置1との間で歩車間通信を行うものである。この歩車間通信では、歩行者端末装置1の通信部12と同様に、ITSを利用した安全運転支援無線システムで採用されている周波数帯を使用して無線通信が行われる。
入出力部33は、カーナビゲーション装置4との間で情報の入出力を行うものである。この入出力部33から出力される情報に基づいて、カーナビゲーション装置4において、運転者に対する注意喚起などのための出力動作が行われる。
情報格納部35は、地図情報や、制御部34で実行されるプログラムを格納する。地図情報は、ユーザの操作に応じて、また、所定のタイミングで、自動で更新される。地図情報の更新情報は、適宜な記憶媒体を利用する他、車載端末装置3やカーナビゲーション装置4の通信機能を利用してサーバからダウンロードするようにすればよい。なお、地図情報をカーナビゲーション装置4から取得するようにしてもよい。
制御部34は、危険エリア判定部41と、車両情報送信制御部42と、危険判定部43と、を備えている。この制御部34は、プロセッサで構成され、制御部34の各部は、情報格納部35に記憶されたプログラムをプロセッサに実行させることで実現される。
危険エリア判定部41では、各歩行者端末装置1から取得した歩行者の位置情報および人物属性情報などに基づいて、歩行者ごとに危険エリアの範囲を拡大するか否かの判定を行う。車両情報送信制御部42では、通信部32による車両情報の送信を制御する。危険判定部43では、歩行者および車両の位置、移動速度、進行方向などに基づいて、注意喚起が必要か否か、すなわち、歩行者に車両が衝突する可能性が高いか否かを判定する。
特に、危険エリア判定部41では、対象となる歩行者の人物属性が「特定」である場合に、その対象となる歩行者がグループ行動中か否かを判定する。このグループ判定では、歩行者の位置情報に基づいて、対象となる歩行者の近傍に存在する別の歩行者を検知して、その別の歩行者が所定時間以上継続して存在する場合に、グループ行動中と判定する。具体的には、対象となる歩行者を中心とした所定の範囲内に別の歩行者が存在し、かつ、その状態の継続時間が所定のしきい値を超えた場合に、グループ行動中と判定する。なお、継続時間のしきい値は、ユーザが適宜に変更することができるようにするとよい。
また、本実施形態では、歩行者端末装置1から人物属性情報とともに取得した関係者情報に基づいて、グループ内の別の歩行者、すなわち、対象となる歩行者の近傍に存在する別の歩行者が、対象となる歩行者の関係者(保護者や介護者など)である場合に、グループ行動中と判定する。具体的には、対象となる歩行者の関係者の人物識別情報と、その近傍に存在する別の歩行者の人物識別情報とを照合し、両者が一致すると、グループ行動中と判定する。この場合、対象となる歩行者の近傍に別の歩行者が所定時間以上継続して存在することを、判定条件から除外することができる。なお、歩行者端末装置1に付与される端末識別情報を用いて人物照合を行うことも可能である。
また、本実施形態では、歩行者端末装置1から人物属性情報とともに取得したグループ行動時間帯情報に基づいて、現在の時刻がグループ行動の時間帯に該当する場合には、グループ行動中と判定する。この場合、対象となる歩行者の近傍に別の歩行者が所定時間以上継続して存在することを判定条件に加えることで、判定精度を高めることができる。
また、対象となる歩行者の近傍に存在する別の歩行者を検知することなく、時刻に基づいてグループ行動中と判定するようにしてもよい。ただし、この場合、グループ行動中と判定する時刻において移動速度が通常時より速い場合等は、例えば、集団登下校時刻に遅れたため、1人で急いで登校している等の行動をとっているとも考えられる。このため、このような場合においては、グループ行動中と判定しないようにしてもよい。
あるいは、例えば夜間や悪天候時等のように、保護者同伴でも、人物属性が「特定」と判定された人物の行動を十分に見守ることが難しい場合も考えられる。したがって、特定の時間や天候の場合については、例え人物属性が「通常」と判定されている人物が付近にいても、グループ行動中と判定しないようにしてもよい。
また、危険エリア判定部41では、歩行者がグループ行動中である場合に、グループ内の別の歩行者、すなわち、対象となる歩行者の近傍に存在する別の歩行者の人物属性に基づいて、対象となる歩行者が見守り状態であるか否かを判定する。すなわち、グループ内の別の歩行者の人物属性が「通常」である場合には、見守り状態であると判定し、グループ内の別の歩行者の人物属性が「特定」である場合には、見守り状態でないと判定する。
ただし、車道付近の路上や公園で複数の児童が遊んでいる場合等は、グループ行動中と判断された場合においても、突然車道に児童が飛び出す恐れもある。考えられるケースとしては、ボール等をとりに車道に飛び出す場合が有り得るが、このような場合は、人物属性が「通常」と判定されている人物も遊びに夢中になっており、人物属性が「特定」と判定された人物を見守ることが困難な場合も考えられる。したがって、このように特定のケースにおいては、見守り状態でないと判定してもよい。このようなケースにおいて見守り状態でないと判定する方法としては、移動速度や加速度情報等を活用すればよい。更に特定場所に一定時間滞在し、かつ移動速度や加速度情報等が通常と異なる場合は、見守り状態でないと判定してもよい。
また、人物属性が「通常」と判断された人物と人物属性が「特定」と判定された人物とが、車道を挟んで反対側にいるような場合等においては、例え人物属性が「通常」と判断された人物が所定距離内にいたとしても、見守り状態でないと判定してもよい。これは、人物属性が「通常」と判断された人物が、車道を挟んで反対側にいる場合、人物属性が「特定」と判定された人物が車道に飛び出す恐れがあるためである。
ここで、グループ内に人物属性が「特定」となる人物が複数存在する場合がある。この場合、グループ内における人物属性が「通常」となる人物の割合に基づいて、見守り状態であるか否かを判定するようにしてもよい。すなわち、グループ内で人物属性が「通常」となる人物が少ないと、人物属性が「特定」となる人物の見守りが十分にできないため、危険な行動をとるおそれがある。このため、例えば、人物属性が「通常」となる人物が過半数を占めていれば、見守り状態であると判定する。ただし、他の人物と比較して危険な行動が特別多い人物については、例え人物属性が「通常」と判定されている人物が付近にいても、指示を無視する等の動作をすることも考えられるため、見守り状態でないと判定してもよい。危険な行動が特別多い人物かどうかの判定方法として、人物属性が「特定」と判定された人物が所持する歩行者端末装置1が判定を行うだけでなく、危険行動を行った履歴情報を親や学校の先生等が事前に収集して判定してもよいし、これらの判定方法を併用してもよい。
次に、歩行者端末装置1で行われる処理の手順について説明する。図6は、歩行者端末装置1で行われる処理の手順を示すフロー図である。
歩行者端末装置1では、まず、通信部12において、車載端末装置3から歩車間通信で送信される車両情報を受信すると(ST101でYes)、人物属性情報を歩車間通信で車載端末装置3に送信する(ST102)。
次に、通信部12において、車載端末装置3から歩車間通信で送信される危険エリア判定情報を受信すると(ST103)、危険エリア設定部22において、危険エリア判定情報に基づいて危険エリアの範囲を設定する(ST104〜ST106)。
ここで、危険エリアの判定結果が「拡大する」であれば(ST104でYes)、危険エリアを拡大範囲に設定する(ST105)。一方、危険エリアの判定結果が「拡大しない」であれば(ST104でNo)、危険エリアを通常範囲に設定する(ST106)。
そして、危険エリア進入判定部23において、測位部11で取得した歩行者の位置情報と、情報格納部15に格納された地図情報とに基づいて、歩行者が危険エリアに進入したか否かを判定する(ST107)。
ここで、歩行者が危険エリアに進入していれば(ST107でYes)、通信部12において、歩行者情報送信制御部24の指示に応じて、位置情報を含む歩行者情報を歩車間通信で車載端末装置3に送信する(ST108)。
そして、通信部12において、車載端末装置3から歩車間通信で送信される車両情報を受信すると(ST109)、危険判定部25において、歩行者に対する注意喚起が必要か否かを判定する(ST110)。
ここで、注意喚起が必要と判定されると(ST110でYes)、携帯情報端末装置2に注意喚起の実施を指示する(ST111)。これにより、携帯情報端末装置2において、歩行者に対する注意喚起の出力動作が行われる。
一方、歩行者が危険エリアに進入していない場合(ST107でNo)には、特に実施する処理はなく、歩行者情報の送信は停止したままである。また、注意喚起が不要と判定される場合(ST110でNo)にも、特に実施する処理はない。
次に、車載端末装置3で行われる処理の手順について説明する。図7は、車載端末装置3で行われる処理の手順を示すフロー図である。
車載端末装置3では、まず、通信部32において、車両情報を歩車間通信で歩行者端末装置1に送信する(ST201)。そして、歩行者端末装置1から送信される人物属性情報を受信すると(ST202でYes)、危険エリア判定部41において、人物属性情報に基づいて、危険エリアの範囲を拡大するか否かに関する危険エリア判定を行う(ST203〜ST205)。
この危険エリア判定では、まず、人物属性情報に基づいて歩行者の人物属性が「特定」であるか否かを判定する(ST203)。ここで、歩行者の人物属性が「特定」であれば(ST203でYes)、次に、歩行者の位置情報、関係者情報、およびグループ行動時間帯情報に基づいて、歩行者がグループ行動中であるか否かを判定する(ST204)。ここで、歩行者がグループ行動中でなければ(ST204でNo)、危険エリアを拡大するものと判定する(ST206)。
また、歩行者がグループ行動中であれば(ST204でYes)、次に、グループ内の別の歩行者の人物属性情報に基づいて、対象となる歩行者が見守り状態(危険ではない状態)であるか否かを判定する(ST205)。ここで、歩行者が見守り状態でなければ(ST205でNo)、危険な状態であるとして危険エリアを拡大するものと判定する(ST206)。
一方、歩行者の人物属性が「特定」でない、すなわち「通常」である場合(ST203でNo)や、歩行者が見守り状態である場合(ST205でYes)には、危険エリアを拡大しないものと判定する(ST207)。
このようにして危険エリア判定を行うと、次に、通信部32において、その判定結果に関する危険エリア判定情報を歩車間通信で歩行者端末装置1に送信する(ST208)。
そして、通信部32において、歩車間通信で歩行者端末装置1から送信される歩行者情報を受信すると(ST209でYes)、自車両の位置情報を含む車両情報を歩車間通信で歩行者端末装置1に送信する(ST210)。ついで、危険判定部43において、運転者に対する注意喚起が必要か否かを判定する(ST211)。
ここで、注意喚起が必要と判定されると(ST211でYes)、カーナビゲーション装置4に注意喚起の実施を指示する(ST212)。これにより、カーナビゲーション装置4において、運転者に対する注意喚起の出力動作が行われる。
一方、歩行者情報を受信しない場合(ST209でNo)や、注意喚起が不要と判定される場合(ST211でNo)には、特に実施する処理はない。
このように、本実施形態では、車載端末装置3において、周辺の歩行者端末装置1から人物属性情報を収集して、歩行者ごとに危険エリアの範囲を拡大するか否かの判定を行うようにした。これにより、危険な行動をとる可能性が高い歩行者では、危険エリアを拡大した範囲に設定するため、危険な行動をとる可能性が高い歩行者の安全を確保することができる。また、危険な行動をとる可能性が低い歩行者では、危険エリアを通常の範囲に設定するため、歩行者端末装置1の送信頻度を低減することができる。そして、歩行者ごとの危険エリアの範囲に関する判定を、車載端末装置3で一括して行うため、システム全体での処理の冗長性を改善することができる。
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用できる。また、上記の実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。
例えば、前記の実施形態では、危険な行動をとる可能性の高さに応じて、「特定」と「通常」との2通りの人物属性を設定して、その2通りの人物属性に対応するように、危険エリアを通常範囲と拡大範囲との2段階で設定することができるようにしたが、人物属性を3通り以上設定するとともに、危険エリアの範囲を3段階以上設定することができるようにしてもよい。この場合、危険な行動をとる可能性が高い人物属性ほど、危険エリアの範囲を大きく設定すればよい。
また、前記の実施形態では、交差点に危険エリアを設定した例について説明したが、危険エリアを設定する場所は交差点に限定されるものではなく、歩行者の事故が発生する可能性が高い場所、例えば、見通しの悪い曲がり角や、歩道のない道路などに危険エリアが設定される。
また、本発明は、歩行者だけでなく、広義の歩行者である自転車、高齢者向け電動車両、電動車椅子等に対しても適用可能である。