《シート1の基本構成について》
始めに、実施例1のシート1(乗物用シート)の構成について、図1〜図10を用いて説明する。本実施例のシート1は、図1に示すように、自動車の右側座席として構成されており、着座乗員の背凭れとなるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、を備えた構成とされている。上記シート1は、いわゆる「パワーシート」の構成とされており、シートバック2の背凭れ角度の調整やシートクッション3の着座位置の調整をそれぞれスイッチの操作による電動操作によって行うことができる構成とされている。
具体的には、シートバック2は、その左右両サイドの下端部が、それぞれ、図示しない電動式のリクライナを介してシートクッション3の左右両サイドの後端部に連結された構成とされている。これにより、シートバック2は、常時は上述した不図示の各リクライナによってその背凭れ角度が固定された状態に保持され、図示しないスイッチの操作によって各リクライナを電動操作することにより、その背凭れ角度が前後方向に調整される構成とされている。
また、シートクッション3は、車両のフロア上に、左右一対の電動式のスライドレール4を介して連結された構成とされている。これにより、シートクッション3は、常時は上述した各スライドレール4によってその着座位置が固定された状態に保持され、図示しないスイッチの操作によって各スライドレール4を電動操作することにより、その着座位置が前後方向に調整される構成とされている。
また、シートクッション3は、上述した左右一対のスライドレール4との間に、それぞれ電動式のシートリフタ5が介在して設けられた構成とされている。これにより、シートクッション3は、常時は上記シートリフタ5によってその着座高さが固定された状態に保持され、図示しないスイッチの操作によってシートリフタ5を電動操作することにより、その着座高さが調整される構成とされている。
また、シートクッション3は、その前部に、電動式のフロントチルト機構6を備えた構成とされている。これにより、シートクッション3は、常時は上述したフロントチルト機構6によってその着座乗員の大腿部を支える前部の支持角度が固定された状態に保持され、図示しないスイッチの操作によってフロントチルト機構6を電動操作することにより、上記前部の支持角度が高さ方向に調整される構成とされている。
このように、シート1は、シートバック2の背凭れ角度の調整(前後2方向)と、シートクッション3の着座位置の調整(前後2方向と上下2方向)と、シートクッション3の前部の支持角度の調整(上下2方向)と、が可能な8方向の調整が可能な構成とされている。これらの調整は、シートクッション3の車幅方向の外側(右側)の側部等の箇所に設けられた図示しないスイッチの操作による電動操作によって行われるようになっている。
また、上記シート1には、更に、上述した着座乗員の大腿部を支えるシートクッション3の前部箇所に、シートクッション3への着座による蒸れを防止するための換気を行う吸気式の空調装置10が備え付けられている。上記空調装置10は、上述したフロントチルト機構6の動作によって上げ下げされるシートクッション3のフロントパネル3Fbの底部に取り付けられている。詳しくは、上記空調装置10は、上述したフロントパネル3Fb上に形成された後述する凹部3Fb2との干渉を避けるために、フロントパネル3Fbの上記凹部3Fb2よりも後側の斜め下方向に延びる傾斜支持部3Fb1と、その後側に離れて位置するシートクッション3の両サイドフレーム3Fa間に架橋されたフロントパイプ5Cと、の間に跨るように架け渡された状態に設けられている。ここで、上述した空調装置10から空気の供給を受けるシートクッション3が、本発明の「シート本体部」に相当し、フロントパネル3Fbが本発明の「パネル」に相当し、フロントチルト機構6が本発明の「シート調節機構」に相当する。
上記空調装置10は、上記のようにフロントパネル3Fbとフロントパイプ5Cとの間に架け渡されていることで、フロントパネル3Fbがフロントチルト機構6の動作により上げ下げされる動きによって、フロントパネル3Fbとフロントパイプ5Cとの間で架け渡される架け渡し角度や架け渡し間隔の変えられる構成とされている。その理由は、フロントパネル3Fbがフロントパイプ5Cよりも後側の位置に設定された回転軸6Bを中心に上げ下げされるようになっているためである。
しかし、上記空調装置10は、上記のように架け渡し角度や架け渡し間隔の変えられるフロントパネル3Fbとフロントパイプ5Cとの間に架け渡されていても、フロントパネル3Fbの昇降動作を阻害することなく、これらに対して適切に係合した状態を維持できるように取り付けられている。以下、上述した空調装置10のフロントパネル3Fbとフロントパイプ5Cとに対する具体的な取付構造について、シートクッション3の具体的な構成と併せて詳しく説明していく。
《シートクッション3の構成について》
先ず、シートクッション3の構成について説明する。シートクッション3は、その骨格を成す金属製のクッションフレーム3Fが、シートクッション3の外周形状に沿った平面視四角枠状の形に組まれた構成とされている。具体的には、クッションフレーム3Fは、左右一対のサイドフレーム3Faと、各サイドフレーム3Faの前端部間に架橋されて着座乗員の大腿部を下方側から支持するフロントパネル3Fbと、を有し、各サイドフレーム3Faの前部間と後部間とに更に金属製の丸パイプ材から成るフロントパイプ5Cとリヤパイプ5Dとがシート幅方向に架橋されることで、全体が平面視四角枠状の形に組まれた構成とされている。上記フロントパイプ5Cとリヤパイプ5Dとの間には、クッションフレーム3Fの上部に組み付けられる図示しないクッションパッドを下方側から弾性的に柔らかく支持するための支持バネ3Sがシート幅方向の4箇所の位置に架け渡されている。ここで、フロントパイプ5Cが本発明の「丸パイプ」に相当する。
上述した各サイドフレーム3Faは、それぞれ、前後方向に長尺な板形状にプレスカットされた1枚の鋼板材により形成されている。上記各サイドフレーム3Faは、それぞれ、シート幅方向に面を向ける形に立設されて、それらの上縁部と下縁部とがそれぞれシート幅方向の外側に折り曲げられることにより、曲げや捩りに対する構造強度が高められた構成とされている。
フロントパネル3Fbは、シート幅方向に長尺な板形状にプレスカットされた1枚の鋼板材により形成されている。上記フロントパネル3Fbは、上述した各サイドフレーム3Faの前端部間に上方側から高さ方向に面を向けて跨る形にセットされている。上記フロントパネル3Fbは、その左右両側部に後方側へ延びる形に結合された各チルトアーム6Aが、それぞれ、各サイドフレーム3Faの内側部において、シート幅方向に軸を向ける回転軸6Bにより互いに同軸上の位置で回転可能に軸連結された状態として設けられている。これにより、フロントパネル3Fbは、上述した各回転軸6Bを中心とした高さ方向の回転により、その着座乗員の大腿部を支える上面部の角度が変えられる構成とされている。上述した各回転軸6Bは、フロントパイプ5Cよりも後方側、かつ、僅かに上方側の位置に配置されている(図3参照)。
上述したフロントパネル3Fbは、図1に示すように、その前側の縁部や左右両側の縁部がそれぞれシート下方側に折り曲げられて、曲げや捩りに対する構造強度が高められていると共に、外周部にエッジを立たせない形に丸められた形状とされている。また、フロントパネル3Fbは、そのシート幅方向の中央の後部領域に、後下がりに傾斜した傾斜支持部3Fb1が形成されている。上記傾斜支持部3Fb1により、フロントパネル3Fbは、着座乗員の大腿部を前上がりの安楽な角度姿勢で下方側から支えることのできる構成とされている。また、上記フロントパネル3Fbの上方側に面を向ける前部領域のシート幅方向の中央箇所には、下向きに凹んだ横長状の凹部3Fb2が形成されている。上記凹部3Fb2は、車両の前部衝突の発生時に、着座乗員の身体が前下方向に沈み込もうとする、いわゆるサブマリン現象を防止するために膨張展開する図示しないエアバッグユニットの収納部として機能するものと成っている。
《シートリフタ5の構成について》
シートリフタ5は、左右一対のフロントリンク5Aと、左右一対のリヤリンク5Bと、車幅方向の外側のリヤリンク5Bに昇降動作のための回動力やブレーキ力を伝達する駆動ユニット5Eと、を有する左右一対の4節リンク機構によって構成されている。
各フロントリンク5Aは、各側のサイドフレーム3Faに対して、それぞれ車幅方向の外側に位置する、オフセットされた左右非対称な位置に配置された構成とされている。各フロントリンク5Aは、それらの上端部が、円筒状のブッシュ5A1を介して各側のサイドフレーム3Faに対して回転可能に軸連結された状態に組み付けられ、下端部が、連結軸5A2を介して各側のスライドレール4の上部に対して回転可能に軸連結された状態に組み付けられている。上述した各ブッシュ5A1の間には、これらブッシュ5A1の円筒内に両端部が嵌合する形に縮径された段付き円管形状のフロントパイプ5Cがシート幅方向の内側からそれぞれ差し込まれて回転可能に軸連結された状態に組み付けられている。
各リヤリンク5Bも、各側のサイドフレーム3Faに対して車幅方向の外側に位置する、オフセットされた左右非対称な位置に配置された構成とされている。各リヤリンク5Bは、それらの上端部が、円筒状のブッシュ5B1を介して各側のサイドフレーム3Faに対して回転可能に軸連結された状態に組み付けられ、下端部が、連結軸5B2を介して各側のスライドレール4の上部に対して回転可能に軸連結された状態に組み付けられている。上述した各ブッシュ5B1の間には、これらブッシュ5B1の円筒内に両端部が嵌合する形に縮径された段付き円管形状のリヤパイプ5Dがシート幅方向の内側からそれぞれ差し込まれてこれらに一体的に連結された状態に組み付けられている。上記組み付けにより、各リヤリンク5Bは、上述したリヤパイプ5Dを介して互いに一体的となって回動することができる状態とされて、曲げや捩りに対する構造強度が高められた状態とされている。
そして、車幅方向の外側に配置されたリヤリンク5Bには、同リヤリンク5Bに回転駆動力やブレーキ力を伝達するための駆動ユニット5Eが連結されている。上記駆動ユニット5Eは、車幅方向の外側のサイドフレーム3Faに取り付けられており、同側に設けられたリヤリンク5Bに対して回転駆動力やブレーキ力を伝達することができるように図示しないピニオンギアとセクタギアとの噛合い構造によって動力伝達可能な状態に連結された状態とされている。
上記シートリフタ5は、上述した不図示のスイッチの操作によって上述した駆動ユニット5Eが駆動操作されることにより、車幅方向の外側のリヤリンク5Bに回動力が伝達されて、各側のリヤリンク5Bやフロントリンク5Aが一斉に昇降動作するよう操作されるようになっている。また、上記シートリフタ5は、上記不図示のスイッチの操作が行われていない非操作時には、駆動ユニット5Eにより発揮されるブレーキ力によって、各側のリヤリンク5Bやフロントリンク5Aの動きが一斉に止められた状態として保持されるようになっている。
《フロントチルト機構6の構成について》
フロントチルト機構6は、上述したフロントパネル3Fbの左右両側部に結合されて後方側に延び出すチルトアーム6Aと、各チルトアーム6Aの後端部を各サイドフレーム3Faに対して回転可能に軸連結する回転軸6Bと、フロントパネル3Fbとフロントパイプ5Cとの間にリンク連結された左右一対の屈伸リンク6Dと、車幅方向の内側(左側)の屈伸リンク6Dに屈伸運動のための回動力やブレーキ力を伝達する駆動ユニット6Cと、を有する構成とされている。
上述した各屈伸リンク6Dは、これらの詳細な図示は省略されているが、それらの根元側の端部にフロントパイプ5Cが差し込まれて、フロントパイプ5Cを介して互いに一体的となって回転することができるように連結された状態とされている。上記駆動ユニット6Cは、車幅方向の内側のサイドフレーム3Faに取り付けられており、同側に設けられた屈伸リンク6Dに対して回転駆動力やブレーキ力を伝達することができるように連結されている。
上記フロントチルト機構6は、上述した不図示のスイッチの操作によって上記駆動ユニット6Cが駆動操作されることにより、車幅方向の内側の屈伸リンク6Dにその回動力が伝達されて、各側の屈伸リンク6Dが一斉に屈伸運動するように操作されるようになっている。上記フロントチルト機構6は、図3に示すように、上記各屈伸リンク6Dの伸び運動によって、フロントパネル3Fbをフロントパイプ5Cから遠ざける形で回転軸6Bを中心に上方側へ持ち上げるように上昇動作(以下、「チルトアップ動作」という。)させるようになっている。
また、上記フロントチルト機構6は、図4に示すように、上記各屈伸リンク6Dの屈み運動によって、フロントパネル3Fbをフロントパイプ5Cに近づける形で下方側へ引き込むように下降動作(以下、「チルトダウン動作」という。)させるようになっている。また、上記フロントチルト機構6は、上記不図示のスイッチの操作が行われていない非操作時には、駆動ユニット6Cにより発揮されるブレーキ力によって、各側の屈伸リンク6Dの動きが一斉に止められた状態に保持されるようになっている。
上記クッションフレーム3Fの上部には、着座乗員の荷重を弾性的に柔らかく受け止めることのできる図示しない発泡ウレタン製のクッションパッドが組み付けられている。上記クッションパッドは、その表面全体に図示しない布製のクッションカバーが被せ付けられており、クッションカバーの前後左右の各周縁部が下方側に引き込まれてクッションフレーム3Fに止着されていることにより、クッションフレーム3Fの上部に組み付けられた状態に保持されている。
《空調装置10の構成について》
空調装置10は、図2〜図5に示すように、上述したフロントチルト機構6の動作によって昇降運動するフロントパネル3Fbと、フロントパネル3Fbの昇降動作には追従しないフロントパイプ5Cと、の間に架橋されている。具体的には、上記空調装置10は、図6〜図7に示すように、、送風機となるベンチレータ11と、ベンチレータ11の上面部に取り付けられた金属製の取付プレート12と、取付プレート12の前端部に軸ピン13により軸回転可能な状態に組み付けられた金属製の取付枠14と、取付プレート12の後端部に前後スライド可能な状態に組み付けられた金属製のフック15と、ベンチレータ11の上面側の吸気口11Aに接続されたゴム製のダクト16と、を有する構成とされている。ここで、上述した吸気口11Aが本発明の「通風口」に相当する。
上述した取付プレート12は、図7に示すように、1枚の金属板が略矩形状の形にプレスカットされて形成されており、その四隅が上述したベンチレータ11の上面部にビス締めされて一体的に結合されている。上記取付プレート12の中央部には、上述したベンチレータ11の上面部に形成された吸気口11Aを上方側に開口させる丸孔形状の通し孔12Aが貫通して形成されている。
取付枠14は、高さ方向に面を向ける1枚の金属板によって形成されており、その左右両側と後側の各縁部が下方側に垂下する形に折り曲げられた形状とされている。上記取付枠14は、図2〜図3に示すように、その左右両側の下方側に折り曲げられた各縁部の前端側領域に形成された各軸支片14Bと、天板上の後部側領域に形成された横長状の形に貫通した保持孔14Cと、天板上の前部側領域の左右2箇所の部位に上側に向かって台座状に膨らむ形に押し出されて形成された取付座14Dと、各取付座14D間の中央箇所から上側に向かって垂直に立ち上がる形に切り起こされた引掛爪14Eと、を有する形に形成されている。
上述した取付枠14は、上述したフロントパネル3Fbの傾斜支持部3Fb1に対して、次のように下側から取り付けられて固定されている。すなわち、先ず、取付枠14の左右両側の各取付座14Dを、フロントパネル3Fbの傾斜支持部3Fb1の底面に下側から当てた状態にしてセットする。次に、これらの当接箇所に上側から取付ボルト14Aをそれぞれ差し込んでこれらを締結する。上記作業により、取付枠14がフロントパネル3Fbの傾斜支持部3Fb1の底面に対して一体的に固定された状態に取り付けられている。
より詳しくは、上述した取付枠14は、上述した左右の各取付座14Dをフロントパネル3Fbの傾斜支持部3Fb1の底面に当てた状態にセットすることにより、各取付座14Dの間の箇所から立ち上がる引掛爪14Eが、フロントパネル3Fbに貫通形成された矩形状の引掛孔3Fb3内に下側から通された状態にセットされるようになっている。上記引掛爪14Eがフロントパネル3Fbの引掛孔3Fb3内に通される構成により、同引掛爪14Eに通された状態として組み付けられる後述するダクト16の前側ひれ部16Bが、上記引掛爪14Eから外れないようになっている。上述した引掛爪14Eの立ち上がった先の端部14E1は、後側に向かって垂直に折り曲げられた形状とされている。ここで、上述した引掛孔3Fb3が本発明の「孔」に相当し、引掛爪14Eが本発明の「被係止部」「立上り部位」「管路変位規制部」にそれぞれ相当し、前側ひれ部16Bが本発明の「係止部」「張出部位」「管路変位規制部」にそれぞれ相当する。
また、上述した取付枠14は、上述した取付プレート12に対して、次のように軸ピン13を介して回転可能に軸支された状態に組み付けられている。すなわち、先ず、図2に示すように、取付枠14の左右両側の縁部に形成された各軸支片14Bを、上述した取付プレート12の前端側の左右両端部に形成された上方側に折り曲げられた各軸支片12Bの間に配置させた状態にセットする。次に、これらに対して軸ピン13をシート幅方向に貫通するように差し込んだ状態に組み付ける。これにより、取付枠14が取付プレート12に対して軸ピン13を中心に回転することができる状態に組み付けられる。上記軸ピン13を介した取付枠14の取付プレート12に対する軸連結構造により、空調装置10をフロントパネル3Fbの底部に対して回転可能に枢着することが可能な前側枢着部10Aが構成されている。
また、上述した取付枠14に形成された保持孔14Cは、図3〜図4に示すように、上述した取付枠14がフロントパネル3Fbの底面部分にボルト締結されて組み付けられた状態では、フロントパネル3Fbから後方側に張り出した位置に高さ方向に孔形状を開口させた状態として設けられるようになっている。上記保持孔14Cは、その内部にダクト16の管路部16Aを下側から弾性的に押し窄めながら通すことにより、同管路部16Aの途中箇所に形成されたくびれ部位16A2と形状が合致して、同くびれ部位16A2を外周側から囲い込んで内部に嵌合させた状態として保持するようになっている。上記取付枠14は、上記保持孔14C内にダクト16のくびれ部位16A2を通して嵌合させることにより、同ダクト16の上端側の接続口16Cの向きをフロントパネル3Fbに対して常に一定の向きに向けた状態として保持するようになっている。上記位置保持により、上述したフロントチルト機構6の動作によってシートクッション3の前部の支持角度が上げ下げされても、上記ダクト16の上端側の接続口16Cの向きがフロントパネル3Fbの動きに追従して変えられるようになっている。
その結果、上記ダクト16の上端側の接続口16Cが、上記フロントパネル3Fbの動きに合わせて上げ下げされる不図示のクッションパッドと移動を共にすることとなる。したがって、上記ダクト16の上端側の接続口16Cと、この接続口16Cに接続された不図示のクッションパッドの底面部に形成された配風用の溝の接続口との位置関係がずれることなく一定状態に保持されることとなる。
フック15は、図6〜図8に示すように、上述した取付プレート12の後端部に形成されたレール片12Cに前後スライド可能な状態に組み付けられている。上記フック15は、上記取付プレート12との取付箇所から上方側に立ち上がった位置に、側面視で後方側に開口を向ける形に張り出す略C字状の嵌合形状を有した形状とされている。上記フック15は、図2〜図5に示すように、その後方側に開口する略C字の嵌合形状が、フロントパイプ5Cに対して半径方向の外側から嵌め込まれることにより、上記嵌合形状がフロントパイプ5Cの外周部に弾性的に嵌合して、フロントパイプ5Cに対して回転方向に摺動することができる状態として組み付けられている。上記フック15がフロントパイプ5Cに対して回転可能に連結される連結構造により、空調装置10をフロントパイプ5Cに対して回転可能に枢着することのできる後側枢着部10Bが構成されている。
詳しくは、上記フック15の略C字状に張り出す嵌合形状は、フロントパイプ5Cの外周部に対して、円周方向の半分以上の領域を外周側からひとまわり大きな略同心の円弧形状で囲い込む形に嵌め込まれるようになっている。上記組み付けにより、空調装置10は、上述したフロントパネル3Fbの昇降動作によってフロントパネル3Fbとフロントパイプ5Cとの間の架け渡し角度が変えられる動きを、フック15がフロントパイプ5Cに対して摺動回転する動きによって吸収することができるようになっている。ここで、図6に示すように、上記フック15の略C字状に張り出す嵌合形状の内周面上には、シート幅方向に筋状に延びる形に突出した摺動突起15Aが、C字の両端近傍箇所とその間の箇所との円周方向の3箇所の位置に形成されている。
これら摺動突起15Aは、図5に示すように、上述したフック15がフロントパイプ5Cの外周部に嵌め込まれた際に、フロントパイプ5Cの外周部に円周方向の3点で接触する点接触構造を構成するものとなっている。これら摺動突起15Aによって、上述したフック15がフロントパイプ5Cに対して摺動回転する際の接触面積が低減されて、フック15の摺動回転が円滑に行えるようになっている。上記各摺動突起15Aは、図6及び図9に示すように、上記フック15の略C字状に張り出す嵌合形状の内周面上における、シート幅方向の両端箇所を除く中央箇所に形成されている。
上述したフック15は、図7〜図8に示すように、その下端部に形成されたスライド連結部15Bが、上述した取付プレート12の後端部に形成されたレール片12Cに後側から差し込まれて前後スライド可能な状態に組み付けられている。具体的には、上記スライド連結部15Bは、図8〜図9に示すように、フック15の底面部上の左右両端箇所から前後方向に長尺状に下方側へ延びる引掛片15B1と、フック15の底面部上のシート幅方向の中央箇所から前後方向に長尺状に下方側へ延びるガイド15B2と、フック15の底面部上の上記各引掛片15B1とガイド15B2との配置間領域から前後方向に長尺状に下方側へ小さく突出する筋状突起15B3と、を有する形状とされている。
上記各引掛片15B1及びガイド15B2は、それぞれ、上記フック15の底面部上から下方側に向かって先端部まで寸胴な形で垂下する形状とされており、前後方向に一定断面で延びる形状とされている。上記各引掛片15B1とガイド15B2とは、互いに同じ高さ位置まで下方側に延び出した形状とされている。
詳しくは、上記各引掛片15B1は、それらの下方側へ延出した先の各端部に、それぞれ、互いの向かい合うシート幅方向の内側に向かって庇状に張り出す爪部15B1aが形成された構成とされている。上記各引掛片15B1は、それらの内側面間に上述した取付プレート12のレール片12Cを前方側から受け入れて、同レール片12Cをそれらの内側面によって両外側からあてがえると共に各爪部15B1aによって下方側からもあてがえた状態としてレール片12Cに組み付けられるようになっている。
詳しくは、上記各引掛片15B1は、それらの内側面間の横幅がレール片12Cの横幅よりも僅かに大きな形状とされており、レール片12Cをシート幅方向の両外側から僅かな隙間を空けてあてがえた状態とするようになっている。また、上記各引掛片15B1の爪部15B1aは、それらの上面上に前後方向に筋状に延びる形に突出して形成された各摺動突起15B1bを上記レール片12Cにそれぞれ下方側からあてがえた状態として、レール片12Cをシート幅方向の両端側の2点で下方側から支持した状態とするようになっている。
また、ガイド15B2は、上述した各引掛片15B1よりもシート幅方向の幅厚が大きな構造強度の高い構成とされている。上記ガイド15B2は、上述した取付プレート12のレール片12Cが上述した各引掛片15B1の内側面間に組み付けられることにより、同レール片12Cのシート幅方向の中央箇所に後方側に向かって開口する形に切り込まれたスリット12C1(図8参照)内に嵌め込まれて、同スリット12C1に対してシート幅方向の隙間がほとんどない状態に組み付けられるようになっている。上記組み付けにより、ガイド15B2は、レール片12Cに対してシート幅方向にガタ付かない状態に組み付けられるようになっている。
上記ガイド15B2の下方側へ延出した先の端部には、シート幅方向の両外側に張り出して上述したレール片12Cに下方側からあてがわれる張出し部15B2aが形成されている。上記張出し部15B2aは、詳しくは、上述したレール片12Cの底面部との間に高さ方向に僅かな隙間を有して下方側からあてがわれるようになっている。上記張出し部15B2aは、上述したフック15と取付プレート12との間にこれらを高さ方向に剥離させるような大荷重が入力された際に、レール片12Cの底面部に押し当てられて、フック15が取付プレート12から剥離することを防止する抜け止め部として機能するものとなっている。
また、各筋状突起15B3は、それぞれ、上述した各引掛片15B1の内側面間に取付プレート12のレール片12Cが組み付けられることにより、同レール片12Cの上面部に上方側からあてがわれるようになっている。上記各筋状突起15B3による上方側からの支えにより、レール片12Cは、上述した各引掛片15B1の爪部15B1aによる下方側からの支えと併せて、スライド連結部15Bに対して高さ方向の両側から挟持される形で、高さ方向にガタ付かない状態に組み付けられるようになっている。
上記レール片12Cは、図8に示すように、取付プレート12のシート幅方向の中央の後端箇所から後方側に向かって板状に延びる形に形成されている。上記レール片12Cのシート幅方向の中央箇所には、レール片12Cをシート幅方向に2分割するように切り分けるスリット12C1が形成されている。上記スリット12C1は、前述したようにフック15のスライド連結部15Bに形成されたガイド15B2を後側から通すための通し部として機能するものとなっている。また、上記レール片12Cの後端部には、シート幅方向の両外側に突出するストッパ12C2が形成されている。
上記ストッパ12C2は、上述したスライド連結部15Bの各引掛片15B1の内側面間の横幅よりもシート幅方向の両外側に張り出した形状とされている。上記ストッパ12C2は、上述したレール片12Cにスライド連結部15Bを後側から組み付ける動作により、スリット12C1の孔幅を狭める形でシート幅方向の内側に押し窄められてスライド連結部15Bのレール片12Cへの組み付けを許容するようになっている。そして、上記ストッパ12C2は、スライド連結部15Bがこれらを越えてレール片12Cに通された状態に組み付けられることにより、復元して、スライド連結部15Bの各引掛片15B1の後側に張り出した状態となって、スライド連結部15Bのレール片12Cからの後側への外れを防止するようになっている。
上記レール片12Cは、上述したスライド連結部15Bの各引掛片15B1の内側面間に組み付けられることにより、そのスリット12C1内にガイド15B2が通された状態として、ガイド15B2によってフック15をシート幅方向にガタ付かせないように支持した状態となる。また、上記レール片12Cは、上記組み付けにより、その底面部の左右2箇所に上述した各引掛片15B1の爪部15B1aの摺動突起15B1bが下方側からあてがわれると共に、その上面部の2箇所に各筋状突起15B3が上方側からあてがわれた状態となって、これら摺動突起15B1bと筋状突起15B3とによってフック15を高さ方向にもガタ付かせないように支持した状態となる。上記各支えによって、レール片12Cは、フック15をシート幅方向や高さ方向にガタ付かせない他、前後方向や左右方向、それに旋回方向にも傾かせることがないように支持するようになっている。
上記各支えによって、フック15は、レール片12Cに対して、ガイド15B2をスリット12C1の延びる形状に沿って前後方向に摺動させる形でスライドすることができる状態に組み付けられている。上記フック15は、上述したガイド15B2、各摺動突起15B1b及び筋状突起15B3がレール片12Cに対して部分的に接触した構成とされていることにより、レール片12Cに対して少ない接触面積で上記各方向にガタ付かないように支えられた状態として、レール片12Cに対して前後方向に円滑に摺動することができるようになっている。
上記のように、フック15が取付プレート12に対して前後スライド可能な状態に組み付けられていることにより、図3〜図5で前述したフロントパネル3Fbがフロントチルト機構6の動作によりフロントパイプ5Cに対して昇降動作することでこれらに対する架け渡し間隔が変えられる動きを、フック15が取付プレート12に対して前後スライドする動きによって吸収することができるようになっている。上記フック15が取付プレート12のレール片12Cに対して前後スライド可能に組み付けられた構成により、上述した前側枢着部10Aと後側枢着部10Bとの間の距離をスライドにより変化させることのできるスライド構造10Cが構成されている。
ダクト16は、図3〜図7及び図10に示すように、高さ方向に管路部16Aの管軸方向が延びる状態に配設され、その図示下端側の端部が上述したベンチレータ11の上面側に形成された吸気口11Aに接続され、図示上端側の端部(接続口16C)が図示しないクッションパッドの底面部に形成された配風用の溝の接続口に接続された状態として設けられている。上記ダクト16は、全体がゴム製となっており、その管路部16Aの中腹部に形成されたくびれ部位16A2が前述した取付枠14に形成された保持孔14C内に下側から通されて嵌め込まれることで、同くびれ部位16A2より上側に張り出す頭部位16A3が取付枠14の上面上に面当接した状態に乗り上がる形に拘束固定されて、同取付枠14と一体的となって動くことができるように取付枠14上に組み付けられた状態とされている。
また、上記ダクト16の取付枠14から上側に張り出す頭部位16A3には、その前面部(外周部)の幅方向の中央箇所から前側へと延び出す板状の前側ひれ部16Bが一体的に形成されている。上記前側ひれ部16Bは、その前側に延び出した先の箇所に、高さ方向に貫通する矩形状の通し孔16B1が形成された構成とされている。上記前側ひれ部16Bは、上記ダクト16のくびれ部位16A2が取付枠14の保持孔14C内に通されて嵌め込まれた状態から、その通し孔16B1を前述した取付枠14の引掛爪14Eに上側から通すことにより、同通し孔16B1の前側の内側面が引掛爪14Eの前側面に面当接した形に当てられた状態として組み付けられるようになっている(図10参照)。また、上記前側ひれ部16Bは、その通し孔16B1が引掛爪14Eに通されて取付枠14上に組み付けられる構成により、取付枠14の上面上に面当接した状態として、取付枠14とパネルフロントパネル3Fbとの間に挟まれた状態に配置されるようになっている。
上記組み付けにより、前側ひれ部16Bの後方向への移動が引掛爪14Eにより規制された状態となる。その結果、上記前側ひれ部16Bと繋がるダクト16の管路部16Aの前壁部分が、上記引掛爪14Eとの掛合によって、後方向(管内方向)に押し撓まされないように変位規制された状態となる。これにより、上記ダクト16の管路部16Aに前側から後側に押し込まれるような外部荷重が掛けられても、管路部16Aが後側(管内側)に押し潰されることなく一定形状に保持されるようになっている。したがって、上記ダクト16に不図示のクッションパッドから着座に伴う体圧の作用やその他組み付け時に意図しない前側からの外部荷重が掛けられることがあっても、ダクト16の管路部16Aが管内方向に押し潰されることなく一定形状に保持されることとなるため、ダクト16の通風機能が損なわれないようになっている。また、ダクト16の管路部16Aが過剰変形することがないことから、ダクト16がベンチレータ11との接続状態や図示しないクッションパッドの通風路の接続口との接続状態から外されにくく、これらとの接続状態が保たれやすくなっている。また、取付枠14の保持孔14Cに対する嵌合状態も維持されやすくなることから、保持孔14Cからも外されにくくなっている。
上述したダクト16の管路部16Aには、上述したくびれ部位16A2より下側の領域に、同領域の管路形状を前後左右に曲げ撓ませやすくする蛇腹部位16A1が形成されている。上記蛇腹部位16A1により、ダクト16の管路部16Aは、図3〜図5に示すように、上記取付枠14に取り付けられたくびれ部位16A2とベンチレータ11の吸気口11Aに接続された図示下端側の端部との間の領域が、フロントチルト機構6の動作に伴う取付プレート12と取付枠14との相対回転を逃がす形に曲げ撓まされやすくなっている。上記ダクト16の接続により、空調装置10は、ベンチレータ11により発揮される吸引力を図示しないクッションパッドの配風溝の接続口へと伝えて、同配風溝の所々の箇所からクッションパッドの着座面に向かって貫通して空けられた図示しない通気孔から外部の空気を吸い込んで、シートクッション3の表面を換気して着座による蒸れを防止するようになっている。
上記構成の空調装置10は、上記のように取付枠14がフロントパネル3Fbの底面部に一体的に取り付けられ、フック15がフロントパイプ5Cの外周部に回転可能に嵌め込まれた状態として、これらの間に架橋されている。上記取り付けにより、空調装置10は、上述した取付枠14がフロントパネル3Fbに対して強固に一体的に結合された状態とされている。また、空調装置10は、フック15がフロントパイプ5Cに対して円周方向の半分以上の領域に亘って外周側からひとまわり大きな略同心の円弧形状で囲い込む形に嵌め込まれた状態として、径方向外側に外れにくい形に強固に組み付けられた状態とされている。
上記空調装置10は、上記のように組み付けられていることで、フロントパネル3Fbがフロントチルト機構6の動作によって昇降動作するのに合わせて、取付枠14が軸ピン13を中心に取付プレート12に対して回転したり、フック15がフロントパイプ5Cに対して回転したりして、フロントパネル3Fbとフロントパイプ5Cとに対する架け渡し角度が変えられる動きを逃がすようになっている。また、上記空調装置10は、フロントパネル3Fbがフロントチルト機構6の動作によって昇降動作するのに合わせて、フック15が取付プレート12に対して前後スライドすることで、フロントパネル3Fbとフロントパイプ5Cとに対する架け渡し間隔が変えられる動きを逃がすようになっている。
このように、空調装置10は、フロントチルト機構6の動作によってフロントパネル3Fbの位置が変えられても、フロントパネル3Fbやフロントパイプ5Cに対して高い取り付け強度で取り付けられた状態を維持可能な状態として取り付けられている。したがって、フロントパイプ5Cに取り付けられたフック15に上方側から負荷が掛けられることがあっても、フック15がフロントパイプ5Cに強固に取り付けられた状態に維持された状態として、フック15がフロントパイプ5Cから外されることを防止することができる。また、重量物である空調装置10をフロントパネル3Fbとフロントパイプ5Cとの間で脱落させることなく安定して支持することができる。
詳しくは、上記空調装置10は、上述したフロントチルト機構6のチルトアップ動作やチルトダウン動作を前後スライドで逃がすフック15と取付プレート12とが互いにシート幅方向や高さ方向にガタ付きを生じない形で取り付けられた構造とされている。このような構成により、空調装置10は、フック15と取付プレート12との間に隙間の発生に伴う曲げの負荷が掛かりにくい、高い構造強度を発揮することのできる構成とされている。また、上記フック15と取付プレート12との取付構造は、フック15が取付プレート12に対して前後方向や左右方向に傾いたり旋回したりしないように取り付けられていることから、前後スライドをつかえさせることなく円滑に行わせて、他の部位に負荷を掛けにくい構成とされている。
《まとめ》
以上をまとめると、本実施例のシート1は、次のような構成とされている。すなわち、シート本体部(シートクッション3)との間で空気を流通させる空調装置(空調装置10)を備えた乗物用シート(シート1)である。この乗物用シートは、シート本体部と空調装置との通風口同士(図示しないクッションパッドの裏面部に形成された通風路の接続口とベンチレータ11の吸気口11A同士)を連通可能に接続する可撓性を有するダクト(ダクト16)と、シート本体部又は空調装置に取り付けられてダクトが内部に通された状態として取り付けられる取付枠(取付枠14)と、取付枠に通されたダクトの管路部(管路部16A)の取付枠に対する管内方向への変形を規制する管路変形規制部(取付枠14に形成された引掛爪14Eにダクト16に形成された前側ひれ部16Bが通されて係止される構造)と、を有する。このように、管路変形規制部によってダクトの管路部の取付枠に対する管内方向の変形が規制されることで、ダクトが外部荷重の入力を受けてもダクトの取付枠に対する形状状態が維持されやすくなる。したがって、ダクトをシート本体部又は空調装置に対する取付状態から外れにくくすることができる。
また、管路変形規制部は、ダクト(ダクト16)の管路部(管路部16A)の外周部に形成された係止部(前側ひれ部16B)と、係止部を係止可能に取付枠(取付枠14)に形成された被係止部(引掛爪14E)と、によって構成されている。このような構成とされていることにより、管路変形規制部を、別部材を用いることなく、ダクトの管路部の管外側である外周部と取付枠との間に簡便に構成することができる。
また、係止部(前側ひれ部16B)は、ダクト(ダクト16)の管路部(管路部16A)の外周部上から半径方向の外側に部分的に張り出す張出部位を有し、張出部位が被係止部(引掛爪14E)に係止される構成とされている。このような構成とされていることにより、ダクトの管路部の管外側である半径方向の外側に部分的に張り出させた張出部位によって、ダクトの管路部の構造強度を損なうことなく係止部を簡便に構成することができる。
また、被係止部(引掛爪14E)は、取付枠(取付枠14)からダクト(ダクト16)の管路部(管路部16A)の管軸方向(上方向)に立ち上がる立上り部位を有し、立上り部位に係止部(前側ひれ部16B)が係止される構成とされている。このような構成とされていることにより、取付枠の外周側に余計なスペースを取れない場合に、取付枠の管軸方向のスペースを利用して、係止部と被係止部との係止構造を省スペースに構成することができる。また、管軸方向に立ち上がる被係止部に係止部を係止させる構成により、ダクトの管路部の取付枠に対する管内方向の変形を効果的に規制することができる。
また、被係止部(引掛爪14E)の立上り部位は、その立ち上がった先の部分がシート本体部(シートクッション3)を構成するパネル(フロントパネル3Fb)の孔(引掛孔3Fb3)に通される構成とされている。このような構成とされていることにより、被係止部の立上り部位に係止された係止部(前側ひれ部16B)が、被係止部の立上り部位の立ち上がった先から抜けることを適切に規制することができ、ダクト(ダクト16)の管路部(管路部16A)の取付枠(取付枠14)に対する管内方向の変形を効果的に規制することができる。
また、係止部(前側ひれ部16B)と被係止部(引掛爪14E)との係止構造が、取付枠(取付枠14)におけるシート本体部(シートクッション3)と対向する面側の領域(上面側の領域)に設定されている。このような構成とされていることにより、ダクト(ダクト16)がシート本体部側から外部荷重を受けても、同側に設定された係止部と被係止部との係止構造により、ダクトの管路部(管路部16A)の取付枠に対する管内方向の変形を効果的に規制することができる。
また、ダクト(ダクト16)は、乗物用シート(シート1)が備えるシート調節機構(フロントチルト機構6)の動作に追従して空調装置(空調装置10)とシート本体部(シートクッション3)との間の距離が変えられる動きを管軸方向(高さ方向)の撓みによって逃がす構成とされている。取付枠(取付枠14)に対するダクトの管路部(管路部16A)の管軸方向の変位を規制する管路変位規制部(ダクト16の頭部位16A3が取付枠14の上面上に面当接して下側への移動が規制される構造、及びダクト16の前側ひれ部16Bが取付枠14の引掛爪14Eに上側から通されて取付枠14との当接により下側への移動が規制された状態に引掛けられる構造)を更に有する。このような構成とされていることにより、シート調節機構の動作に伴う空調装置とシート本体部との間の距離が変えられる動きをダクトの管軸方向の撓みによって逃がす構成としても、管路変位規制部によって取付枠に対するダクトの管路部の管軸方向の変位が規制されることで、ダクトの取付枠に対する形状状態が維持されやすくなる。したがって、ダクトを取付枠からより外れにくい構成とすることができる。
また、取付枠(取付枠14)が、シート本体部(シートクッション3のフロントパネル3Fb)に固定された、シート本体部とは別体のブラケットから成る。このように、取付枠をシート本体部とは別体のブラケットにより構成することで、同取付枠に管路変形規制部(取付枠14に形成された引掛爪14Eにダクト16に形成された前側ひれ部16Bが通されて係止される構造)を簡便に設定することができる。
続いて、実施例2のシート1(乗物用シート)の構成について、図11〜図12を用いて説明する。本実施例では、図11〜図12に示すように、ダクト16の頭部位16A3の後面部(外周部)にも、取付枠14に引掛けられて管内方向への変形を規制するように機能する後側掛部16Dが形成されている。上記後側掛部16Dは、ダクト16の頭部位16A3の幅方向の中央箇所、詳しくは図12に示すように頭部位16A3の取付枠14上から後方側へと張り出す箇所の幅方向の中央箇所から、下方側に垂下する形で一体的に延び出す形に形成されている。上記後側掛部16Dは、その下方側に延び出した先の端部に、前側に向かって断面三角形状に突出する鉤部位16D1が形成された形状とされている。上記鉤部位16D1は、その上面が後側掛部16Dの垂下する前面部分に対して垂直に立ち上がる断面三角形状の鉤形状に形成されている。
上述した後側掛部16Dは、上述した取付枠14の後側の縁部から垂下する形に折り曲げられた後側フランジ部14Fに対して、次のように引掛けられた状態とされている。すなわち、後側掛部16Dは、そのダクト16の頭部位16A3から垂下する部分の前面が、上述した後側フランジ部14Fに後側から面当接した状態に当てられると共に、その垂下した先の端部に形成された鉤部位16D1が、上述した取付枠14の後側フランジ部14Fの下端部に下側から当てられた状態となるように、後側フランジ部14Fに引掛けられている。このように引掛けられていることにより、後側掛部16Dは、後側フランジ部14Fに対して、その先端側の鉤部位16D1がその上面の後端側部位まで奥深く差し込まれた状態として、上方側に剥離しにくい形に強く掛け合わされた状態とされている。
更に、後側掛部16Dは、そのダクト16の頭部位16A3から垂下する部分の前面が、後側フランジ部14Fに対して後側から広く面当接した状態に当てられた状態として、前方向への移動が規制された状態とされている。その結果、上記後側掛部16Dと繋がるダクト16の管路部16Aの後壁部分が、上記後側フランジ部14Fとの掛合によって、前方向(管内方向)に押し撓まされないように変位規制された状態となる。これにより、上記ダクト16の管路部16Aに後側から前側に押し込まれるような外部荷重が入力されても、管路部16Aが前側(管内側)に押し潰されることなく一定形状に保持されるようになっている。
したがって、上記ダクト16に不図示のクッションパッドから着座に伴う体圧の作用やその他組み付け時に意図しない後側からの外部荷重が掛けられることがあっても、ダクト16の管路部16Aが管内方向に押し潰されることなく一定形状に保持されることとなるため、ダクト16の通風機能が損なわれないようになっている。また、ダクト16の管路部16Aが過剰変形することがないことから、ダクト16がベンチレータ11との接続状態や図示しないクッションパッドの通風路の接続口との接続状態から外されにくく、これらとの接続状態が保たれやすくなっている。詳しくは、上記後側掛部16Dは、その先端側の鉤部位16D1が、取付枠14の後側フランジ部14Fに下側から深い位置まで引掛けられていることから、上記のようにダクト16の管路部16Aに後側からの外部荷重が掛けられて前上側に引張られようとする負荷を受けても、鉤部位16D1の引掛かりによりこの負荷を強く受け止めて前上方向に引き込まれないようになっている。なお、上記以外の構成については、実施例1で示した構成と同じとなっているため、同一の符号を付して説明を省略することとする。ここで、後側フランジ部14Fが本発明の「被係止部」「立上がり部位」「管路変位規制部」にそれぞれ相当し、後側掛部16Dが本発明の「係止部」「張出部位」「管路変位規制部」にそれぞれ相当する。
《まとめ》
以上をまとめると、本実施例のシート1は、次のような構成とされている。すなわち、シート本体部(シートクッション3)との間で空気を流通させる空調装置(空調装置10)を備えた乗物用シート(シート1)である。この乗物用シートは、シート本体部と空調装置との通風口同士(図示しないクッションパッドの裏面部に形成された通風路の接続口とベンチレータ11の吸気口11A同士)を連通可能に接続する可撓性を有するダクト(ダクト16)と、シート本体部又は空調装置に取り付けられてダクトが内部に通された状態として取り付けられる取付枠(取付枠14)と、取付枠に通されたダクトの管路部(管路部16A)の取付枠に対する管内方向への変形を規制する管路変形規制部(取付枠14に形成された後側フランジ部14Fにダクト16に形成された後側掛部16Dが引掛けられて係止される構造)と、を有する。このように、管路変形規制部によってダクトの管路部の取付枠に対する管内方向の変形が規制されることで、ダクトが外部荷重の入力を受けてもダクトの取付枠に対する形状状態が維持されやすくなる。したがって、ダクトをシート本体部又は空調装置に対する取付状態から外れにくくすることができる。
また、管路変形規制部は、ダクト(ダクト16)の管路部(管路部16A)の外周部に形成された係止部(後側掛部16D)と、係止部を係止可能に取付枠(取付枠14)に形成された被係止部(後側フランジ部14F)と、によって構成されている。このような構成とされていることにより、管路変形規制部を、別部材を用いることなく、ダクトの管路部の管外側である外周部と取付枠との間に簡便に構成することができる。
また、係止部(後側掛部16D)は、ダクト(ダクト16)の管路部(管路部16A)の外周部上から半径方向の外側に部分的に張り出す張出部位(頭部位16A3の取付枠14上から後方側へと張り出した箇所に形成された構成)を有し、張出部位が被係止部(後側フランジ部14F)に係止される構成とされている。このような構成とされていることにより、ダクトの管路部の管外側である半径方向の外側に部分的に張り出させた張出部位によって、ダクトの管路部の構造強度を損なうことなく係止部を簡便に構成することができる。
また、被係止部(後側フランジ部14F)は、取付枠(取付枠14)からダクト(ダクト16)の管路部(管路部16A)の管軸方向(下方向)に立ち上がる立上り部位を有し、立上り部位に係止部(後側掛部16D)が係止される構成とされている。このような構成とされていることにより、取付枠の外周側に余計なスペースを取れない場合に、取付枠の管軸方向のスペースを利用して、係止部と被係止部との係止構造を省スペースに構成することができる。また、管軸方向に立ち上がる被係止部に係止部を係止させる構成により、ダクトの管路部の取付枠に対する管内方向の変形を効果的に規制することができる。
また、被係止部(後側フランジ部14F)が、取付枠(取付枠14)の外周縁部から成る。このような構成とされていることにより、取付枠の管軸方向(高さ方向)に余計なスペースを取れない場合に、取付枠の枠外スペースを利用して、係止部(後側掛部16D)と被係止部との係止構造を省スペースに構成することができる。また、取付枠の外周縁部を利用して、係止部を被係止部に対して管内方向に当接させる構成を簡便に得ることができ、ダクト(ダクト16)の管路部(管路部16A)の取付枠に対する管内方向の変形を効果的に規制することができる。
また、係止部(後側掛部16D)と被係止部(後側フランジ部14F)との係止構造が、取付枠(取付枠14)におけるシート本体部(シートクッション3)と対向する面側の領域(上面側の領域)と空調装置(空調装置10)と対向する面側の領域(下面側の領域)とのそれぞれに設定されている。このような構成とされていることにより、ダクト(ダクト16)がシート本体部側と空調装置側とのいずれの方向から外部荷重を受けても、それぞれの側に設定された係止部と被係止部との係止構造により、ダクトの管路部(管路部16A)の取付枠に対する管内方向の変形を効果的に規制することができる。
また、ダクト(ダクト16)は、乗物用シート(シート1)が備えるシート調節機構(フロントチルト機構6)の動作に追従して空調装置(空調装置10)とシート本体部(シートクッション3)との間の距離が変えられる動きを管軸方向(高さ方向)の撓みによって逃がす構成とされている。取付枠(取付枠14)に対するダクトの管路部(管路部16A)の管軸方向の変位を規制する管路変位規制部(ダクト16の頭部位16A3が取付枠14の上面上に面当接して下側への移動が規制される構造、及びダクト16の後側掛部16Dが取付枠14の後側フランジ部14Fに下側から当てられて上側への移動が規制された状態に引掛けられる構造)を更に有する。このような構成とされていることにより、シート調節機構の動作に伴う空調装置とシート本体部との間の距離が変えられる動きをダクトの管軸方向の撓みによって逃がす構成としても、管路変位規制部によって取付枠に対するダクトの管路部の管軸方向の変位が規制されることで、ダクトの取付枠に対する形状状態が維持されやすくなる。したがって、ダクトを取付枠からより外れにくい構成とすることができる。
また、取付枠(取付枠14)が、シート本体部(シートクッション3のフロントパネル3Fb)に固定された、シート本体部とは別体のブラケットから成る。このように、取付枠をシート本体部とは別体のブラケットにより構成することで、同取付枠に管路変形規制部(取付枠14に形成された後側フランジ部14Fにダクト16に形成された後側掛部16Dが引掛けられて係止される構造)を簡便に設定することができる。
<その他の実施例>
以上、本発明の実施形態を2つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施することができるものである。例えば、本発明の「乗物用シート」は、自動車の右側座席以外のシートにも適用することができる他、鉄道等の自動車以外の車両や、航空機、船舶等の他の乗物用に供されるシートにも広く適用することができるものである。
また、空調装置は、シートクッションとの間で空気を流通させるものの他、シートバックやヘッドレストやオットマンやアームレスト等のシート本体部との間で空気を流通させるものであってもよい。また、空調装置によるシート本体部との間での空気の流通は、シート本体部から空気を吸引するものの他、シート本体部に空気を排出するものであってもよい。また、空調装置により排出される空気は、車室内風をそのまま排出するものの他、冷暖房風を排出するものであってもよい。
また、シート本体部又は空調装置に取り付けられてダクトが内部に通された状態として取り付けられる取付枠は、ダクトの管路部が内部に通された状態として取り付けられるものであればよく、必ずしもダクトの管路部の外周部に嵌まり込んだ状態としてダクトを内部に通すものでなくてもよい。また、取付枠は、必ずしもダクトの管路部を外周側から環状に囲い込んだ状態として通すものでなくてもよく、周方向の一部領域のみを外周側から連続的或いは断続的に囲い込んだ状態として通すもの、すなわち開いた枠形状から成るであってもよい。また、取付枠は、フロントパネル等のシートフレームの構成部材自体によって構成されたものであってもよい。また、上記各実施例では、取付枠がシート本体部にも空調装置にも取り付けられる構成とされたものを示したが、これらのうちのどちらかに取り付けられる構成であってもよい。
また、管路変形規制部を構成するダクトの係止部は、ダクトの管路部の外周部上から半径方向の外側に張り出すものの他、管路部の外周部に凹状に抉られて形成されるものであってもよい。また、管路変形規制部は、ダクトと取付枠との間に別部材が架橋されて、同別部材を介して、取付枠に通されたダクトの管路部の取付枠に対する管内方向への変形を規制するものであってもよい。また、管路変形規制部は、取付枠に通されたダクトの管路部の取付枠に対する管内方向への変形を、周方向の全域において連続的に、或いは前後左右の四方等の断続的な領域において規制するように設けられていてもよい。
また、取付枠に対するダクトの管路部の管軸方向の変位を規制する管路変位規制部は、ダクトのくびれ部位から上側に張り出す頭部位が取付枠の上面に乗り上がってダクトの重力方向の変位を規制する構成の他、ダクトの管路部に取付枠に対して管軸方向のどちらか側から当接するような径方向に張り出す突起を設けた構成からなるものであってもよい。また、ダクトは、樹脂材等、ゴム以外の可撓性材料から成るものであってもよい。また、ダクトの管路形状は、特定の形状に限定されるものでなく、様々な異型の形から成るものであってもよい。
また、ダクトを追従移動させるような動作を行うシート調節機構としては、フロントチルト機構の他、各種の機構を挙げることができる。具体的には、シートクッションの高さを調節するシートリフタ、シートの前後位置を調節するスライドレール、シートバックやシートクッションのサイドサポートの支持強さを調節するサイドサポートアジャスタ、シートバックの傾斜角度を調節するリクライニングアジャスタ、シートバックのランバサポートの支持強さを調節するランバサポートアジャスタ、シートクッションの前後長を調節するクッション長可変機構、アームレストを展開収納したり使用位置を調節したりするアームレスト調節機構等の機構が挙げられる。