JP6618969B2 - 導電性ペースト - Google Patents
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Description
また、「有酸価ロジンの酸価X(mgKOH)」は、導電性ペーストの単位質量(100g)あたりについて、次の式(1):X(mgKOH)=有酸価ロジンの酸価(mgKOH/g)×導電性ペースト全体を基準とした有酸価ロジンの含有割合(質量%);で計算することができる。上記有酸価ロジンの酸価としては、JIS K0070:1992に準じて電位差滴定法で測定された値を採用することができる。
また、「無機成分の含有量Y(g)」は、導電性ペーストの単位質量(100g)あたりについて、次の式(2):Y(g)=Σ〔導電性ペースト全体を基準とした各無機成分の含有割合(質量%)〕;で計算することができる。
ここで開示される導電性ペースト(以下、単に「ペースト」ということがある。)は、導体膜の形成に用いられる。なお、本明細書において「ペースト」とは、インクやスラリーを包含する用語である。ここで開示される導電性ペーストの成分は、無機成分(A)と有機成分(B)とに大別される。以下、各成分について順に説明する。
無機成分(A)は、典型的には導体膜の焼成時に燃え抜けず、焼成後に残存して電極層を構成する成分である。無機成分(A)は、少なくとも導電性粉末(A−1)を含んでいる。
導電性粉末(A−1)は、電極層に電気伝導性を付与する成分である。導電性粉末(A−1)の種類等については特に限定されず、一般的に使用される各種の導電性粉末の中から、用途等に応じて1種または2種以上を適宜用いることができる。導電性粉末(A−1)の一好適例として、導電性金属粉末が挙げられる。具体的には、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、アルミニウム(Al)等の金属の単体、およびこれらの混合物や合金等が例示される。
導電性粉末(A−1)の平均粒子径(電子顕微鏡観察に基づく個数基準の粒度分布において、粒径の小さい方から累積50%に相当する粒径。以下同じ。)は、例えばペーストの用途や電極層の寸法(微細度)等に応じて適宜選択することができる。通常は、導電性粉末(A−1)の平均粒子径が、概ね数nm〜数十μm程度、例えば10nm〜10μmであるとよい。
誘電体粉末(A−2)は、導体膜の焼成時に導電性粉末(A−1)の熱収縮を緩和する成分である。誘電体粉末(A−2)の種類等については特に限定されず、一般的に使用される各種の無機材料粉末の中から、用途等に応じて1種または2種以上を適宜用いることができる。誘電体粉末(A−2)の一好適例として、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、ジルコン酸カルシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ジルコニウム、チタン酸亜鉛等の、ABO3で表されるペロブスカイト構造を有するセラミックや、酸化チタン、二酸化チタン等が挙げられる。例えば積層セラミック電子部品の内部電極層を形成する用途では、誘電体層に含まれるセラミック粉末と同種の材料、典型的にはチタン酸バリウム(BaTiO3)の使用が好ましい。これにより、誘電体層と内部電極層との一体性がより良く高められる。
誘電体粉末(A−2)の平均粒子径は、例えばペーストの用途や電極層の寸法(微細度)等に応じて適宜選択することができる。通常は、誘電体粉末(A−2)の平均粒子径が、概ね数nm〜数十μm程度、典型的には0.01〜10μm、好ましくは0.3μm以下、例えば0.05μm以下であるとよい。電極層の電気伝導性や均質性、緻密性を高める観点からは、誘電体粉末(A−2)の平均粒子径が、導電性粉末(A−1)の平均粒子径よりも小さいことが好ましく、導電性粉末(A−1)の平均粒子径の1/20〜1/2程度であることがより好ましい。
有機成分(B)は、典型的には導体膜の焼成時に(例えば、酸化雰囲気中において概ね250℃以上、例えば500℃以上の温度での加熱処理で)燃え抜ける成分である。言い換えれば、有機成分(B)は、その沸点が導体膜の焼成温度よりも低いことが好ましい。有機成分(B)は、少なくとも有機バインダ(B−1)とロジン系樹脂(B−2)とを含んでいる。
有機バインダ(B−1)は、焼成前の導体膜に接着性を付与して、無機成分(A)同士および導体膜とこれを支持する基材とを密着させる成分である。有機バインダ(B−1)は、後述するロジン系樹脂(B−2)と相溶性であるとよい。有機バインダ(B−1)は、典型的には繰り返し構成単位を有する。有機バインダ(B−1)の種類等については特に限定されず、一般的に使用される各種の有機重合体(ポリマー)の中から、用途等に応じて1種または2種以上を適宜用いることができる。有機バインダ(B−1)の一好適例として、後述するロジン系樹脂(B−2)以外の有機高分子化合物、例えば、セルロース系樹脂、ブチラール系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アルキド系樹脂、エチレン系樹脂等が挙げられる。なかでも、焼成時の燃焼分解性に優れる点や環境配慮の点等から、セルロース系樹脂が好ましい。
ロジン系樹脂(B−2)は、所謂、粘着性付与剤である。例えば、感圧接着剤である。ロジン系樹脂(B−2)は、焼成前の導体膜のタック性(基材に対する粘着力)や流動性、基材との濡れ性(親和性)を高めて、導体膜とこれを支持する基材との接着性を向上する成分である。例えば積層セラミック電子部品の内部電極層を形成する用途では、導体膜とこれを支持するセラミックグリーンシートとの密着性を向上する成分である。
ロジン系樹脂(B−2)は、環球法に基づく軟化点が、概ね60〜250℃、典型的には70〜200℃、例えば80〜185℃であるとよい。軟化点が上記範囲であると、導体膜の接着性や濡れ性を、より高いレベルで安定的に発揮することができる。
ロジン系樹脂(B−2)は、固体状(粉末状)や液体状の形態であってもよいし、溶剤に分散されたエマルジョンの形態であってもよい。
有酸価ロジンの酸価の上限は特に限定されないが、市販品の製品仕様では概ね400mgKOH/g以下であり、典型的には300mgKOH/g以下、例えば250mgKOH/g以下であるとよい。これにより、ペーストの単位質量あたりの酸価量Xを微調整し易くなる。また、ペースト中の無機成分(A)との親和性が過度に高まり過ぎることを抑制することができる。したがって、ペーストの粘度上昇を抑えて、ペーストのハンドリング性や成膜時の作業性を向上することができる。さらに、セルフレベリング性を向上して、滑らかな表面の導体膜を好適に実現することができる。
有機溶剤(B−3)は、無機成分(A)、例えば導電性粉末(A−1)や誘電体粉末(A−2)を分散させる成分である。また、ペーストに適度な粘性や流動性を付与して、ペーストの取扱性や成膜時の作業性を向上する成分でもある。有機溶剤(B−3)の種類等については特に限定されず、一般的に使用される各種の有機溶剤の中から、用途等に応じて1種または2種以上を適宜用いることができる。成膜時の作業性やペーストの保存安定性を高める観点からは、沸点が概ね200℃以上、例えば200〜300℃の高沸点有機溶剤が主成分(50体積%以上を占める成分。)であるとよい。
分散剤(B−4)は、ペースト中に無機成分(A)、典型的には、導電性粉末(A−1)および誘電体粉末(A−2)を均質に分散させて、無機成分(A)の粒子の凝集を高度に抑制する成分である。なお、本明細書において「分散剤」とは、親水性部位と親油性部位とを有する両親媒性を有する化合物全般をいい、所謂、界面活性剤、湿潤分散剤、乳化剤をも包含する用語である。ただし、ロジンとその誘導体については、酸性基を有する両親媒性の化合物であっても、上記したロジン系樹脂(B−2)に分類する。
可塑剤(B−5)は、導体膜に柔軟性を付与したり、導体膜の靱性を高めたりする成分である。可塑剤(B−5)については特に限定されず、一般的に使用される各種の可塑剤の中から、用途等に応じて1種または2種以上を適宜用いることができる。可塑剤(B−5)の一好適例として、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、テレフタル酸ジオクチル等のフタル酸エステル;アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル等のアジピン酸エステル;トリメリット酸トリオクチル等のトリメリット酸エステル;リン酸トリクレシル等のリン酸エステル;アセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸エステル;セバシン酸エステル;マレイン酸エステル;安息香酸エステル;エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化植物油;アクリル酸、アクリル酸メチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル等のアクリルモノマー;カルボン酸とグリコールから成る低分子のポリエステル;等が挙げられる。
また、上記Yの値も特に限定されない。例えば、ペースト100gあたりについて、概ね30g以上、一例では40g以上、例えば50g以上であって、概ね95g以下、一例では70g以下、例えば65g以下であってもよい。
ここで開示されるペーストの代表的な使用用途として、積層セラミック電子部品における内部電極層の形成が挙げられる。ここで開示されるペーストは、例えば、各辺が5mm以下、例えば1mm以下の超小型MLCCの内部電極層の形成に好適に用いることができる。なお、本明細書において、「セラミック電子部品」とは、非晶質のセラミック基材(ガラスセラミック基材)あるいは結晶質(すなわち非ガラス)のセラミック基材を有する電子部品一般を指す用語である。例えば、セラミック製の基材を有するインダクタ、高周波フィルター、アクチュエータ、セラミックコンデンサ、低温焼成積層セラミック基材(Low Temperature Co-fired Ceramics Substrate:LTCC基材)、高温焼成積層セラミック基材(High Temperature Co-fired Ceramics Substrate:HTCC基材)等は、ここでいう「セラミック電子部品」に包含される典型例である。
次に、ここに開示される導電性ペーストを用意する。具体的には、少なくとも導電性粉末(A−1)と有機バインダ(B−1)とロジン(B−2)とを準備し、これらが上記比(X/Y)を満たすように撹拌混合して、導電性ペーストを調製する。次に、調製したペーストを上記成形した複数枚のセラミックグリーンシートの上に、所定のパターンで所望の厚み(例えばサブミクロン〜ミクロンレベル)になるように付与して、それぞれ導体膜を形成する。この導体膜は、焼成後に内部電極層となる部分である。
このようにして未焼成の導体膜付きのセラミックグリーンシートを複数枚(例えば、数百〜数千枚)作成した後、これらを積層し、圧着する。これにより、未焼成の積層チップを作製する。
まず、表1に示すように、無機成分としての導電性粉末(A−1)と誘電体粉末(A−2)、および、有機成分としての有機バインダ(B−1)とロジン系樹脂(B−2)と有機溶剤(B−3)と分散剤(B−4)と可塑剤(B−5)とを混合して、導電性ペースト(例1〜14、比較例1〜7)を調製した。なお、ロジン系樹脂の酸価については、メーカーの公称値(JIS K0070:1992に準じて電位差滴定法で測定された値。)を記載している。また、導電性粉末(A−1)としては、平均粒子径(メーカーの公称値。電子顕微鏡観察に基づく個数基準の平均粒子径。)が0.25μm、比表面積が2.75m2/gのニッケル粉末を使用した。また、誘電体粉末(A−2)としては、平均粒子径(メーカーの公称値。電子顕微鏡観察に基づく個数基準の平均粒子径。)が0.05μm(50nm)、比表面積が21m2/gのチタン酸バリウム粉末を使用した。
次に、上記した式(1),式(2)を用いて、上記比(X/Y)の値を算出した。
具体的には、まず、各例につき、ロジン系樹脂の酸価(mgKOH/g)×含有割合(質量%)から、ペースト100g中のロジン系樹脂の酸価量X(mgKOH)を算出した。次に、各例につき、導電性粉末の含有割合(質量%)と誘電体粉末の含有割合(質量%)とを合計して、ペースト100g中の無機成分の含有量Y(g−無機成分)を算出した。そして、ペースト100g中のロジン系樹脂の酸価量Xを、ペースト100g中の無機成分の含有量Yで除して、比(X/Y)を算出した。結果を表1に示す。
まず、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの表面にセラミックグリーンシートが付着している基材を用意した。次に、上記調製した導電性ペーストを、スクリーン印刷によって上記基材のセラミックグリーンシートの側の表面に、35mm×22mmの長方形パターンとなるように塗工し、80℃・5分間の熱風乾燥を行った。これにより、セラミックグリーンシート上に約1μm厚みの導体膜を形成した。
次に、上記形成した導体膜の上に第2のセラミックグリーンシートを載せ、70℃・6秒間の熱圧着を行った。これを25℃の環境下に30分間放置した後、PETフィルムを引き剥がして、導体膜の両面にセラミックグリーンシートが圧着された積層体を得た。次に、この積層体を導体膜が5mm×32mmの大きさになるように切断した。次に、一方のセラミックグリーンシートをアルミナ基板の上に両面テープで固定し、もう一方のセラミックグリーンシートに2つ折りにしたセロハンテープを付着させた。そして、引張試験機を使用し、2つのセラミックグリーンシートを、引張条件:引張速度100mm/分、剥離角度:180°で反対方向に引っ張り、導体膜とセラミックグリーンシートとを剥離させた。このときの平均荷重から、導体膜の剥離強度(対セラミックグリーンシート、単位:gf/cm幅)を求めた。
結果を表1に示す。なお、剥離強度は、値が大きいほど接合性に優れることを表す。表1では、剥離強度の値が180gf/cm以上のものを、接着性が良好と判定し、「〇」を示している。一方、接着性が180gf/cm未満のものを、接着性が不足と判定し、「×」を示している。
光干渉顕微鏡を用いて、以下の条件で導体膜の表面平滑性(算術平均粗さRa)を算出した。
装置:超分解能非接触三次元表面形状計測システム BW-A501(株式会社ニコン製)
光学顕微鏡 LV-150(株式会社ニコン製)
倍率:100倍、操作幅:±5μm、測定範囲:50μm×1000μm
結果を表1に示す。なお、Raは、値が小さいほど表面平滑性に優れることを表す。表1では、Raの値が5nm未満のものを、表面平滑性が良好と判定し、「〇」を示している。一方、Raの値が5nm以上のものを、表面平滑性が不足と判定し、「×」を示している。なお、「−」は未測定であることを示している。
以上のことから、ここに開示される導電性ペーストによれば、例えば、比較例1〜7のように、ロジン系樹脂を含まない、あるいはX/Yが小さい導電性ペーストに比べて、基材との接着性が向上した導体膜を形成することができる。
以上のことから、X/Yを3以下、より好ましくは2.6以下とすることで、X/Yが大きな導電性ペーストに比べて、表面平滑性に優れた導体膜を形成することができる。
20 セラミックグリーンシート
30 内部電極層
40 外部電極
Claims (6)
- 無機成分と有機成分とを含み、導体膜の形成に用いられる導電性ペーストであって、
前記無機成分は、導電性粉末と、誘電体粉末と、を含み、
前記有機成分は、有機バインダと、ロジン系樹脂と、を含み、
前記ロジン系樹脂は、酸価を有する有酸価ロジンを含み、
前記導電性ペーストの単位質量あたりの前記有酸価ロジンの酸価量をX(mgKOH)とし、前記導電性ペーストの単位質量あたりの前記無機成分の全体の含有量をY(g)としたときに、次の式:0.8≦(X/Y);を満たす、導電性ペースト。 - 前記X/Yが、次の式:(X/Y)≦3;を満たす、請求項1に記載の導電性ペースト。
- 前記有酸価ロジンは、酸価が100mgKOH/g以上である、請求項1または2に記載の導電性ペースト。
- 前記導電性ペーストの全体を100質量%としたときに、前記ロジン系樹脂が2質量%以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
- 前記導電性粉末が、ニッケル、白金、パラジウム、銀および銅のうちの少なくとも1つである、請求項1から4のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
- 積層セラミック電子部品の内部電極層を形成するために用いられる、請求項1から5のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
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