[第1の実施形態の説明]
図1は、この発明による防御システムの第1の実施形態における防御装置(防御装置の第1の実施形態)の構成例を示す図である。この第1の実施形態の防御装置1は、自律して空中を飛行して移動可能な飛行体の構成であり、移動対象物として人物を想定している。図1(A)は、この実施形態の防御装置1を、その上方から見た図であり、また、図1(B)は、この実施形態の防御装置1を、側方から見た図である。
この実施形態の防御装置1は、いわゆるクワッドコプターに、傘部を取り付けた構造の空中飛行機構部2と、駆動制御ユニット3とを備える。空中飛行機構部2は、駆動制御ユニット3により駆動制御される。図1に示すように、空中飛行機構部2は、駆動制御ユニット3から延びる4本のアーム4A,4B,4C,4Dの先端に、プロペラ機構5A,5B,5C,5Dが取り付けられて構成されている。
プロペラ機構5A,5B,5C,5Dは、エンジン部51A,51B,51C,51Dのそれぞれによりプロペラシャフト(図示は省略)を回転駆動することにより、プロペラ52A,52B,52C,52Dを回転駆動するように構成されている。エンジン部51A,51B,51C,51Dは、駆動制御ユニット3からの駆動制御信号により回転速度及び回転方向が制御される。
この例においては、駆動制御ユニット3からの駆動制御信号によって、エンジン部51A,51B,51C,51Dのそれぞれが独立に制御されることにより、飛行体である防御装置1は、離陸、着陸、上昇、下降、右旋回、左旋回、前進、後進、右シフト、左シフトなどの各種移動動作をすることができるようにされていると共に、鉛直方向に対する傾き角などの姿勢制御及びホバリング位置の位置制御ができるようにされている。
そして、この実施形態の防御装置1においては、駆動制御ユニット3の筐体に対して、傘部6が固着されて取り付けられている。この傘部6は、この例では、布や合成繊維などからなるシート部材を、例えば金属からなる骨組部材に被着して構成したものとされ、全体としてドーム型の形状に構成されている。傘部6は、この例では、駆動制御ユニット3の筐体に対して、骨組部材が固着されると共に、シート部材が接着されることにより、取り付けられている。
この傘部6は、移動対象物の例である人物の上空を覆うことにより、雨、雪、霰、霙、雹、日光、紫外線などの外乱から人物を防御できる大きさとされている。傘部6のシート部材は、防御対象の外乱に応じて、防水加工、撥水加工、紫外線カット加工、などの加工処理が施されている。なお、以下に説明する第1の実施形態では、雨、雪、霙、霰、雹などから、人物を防御する場合として説明する。
駆動制御ユニット3の筐体には、さらに、2個の脚部7A,7Bが互いに対向するように取り付けられている。この例では、脚部7A,7Bは、台形形状に成形されたパイプ部材からなり、図1(B)に示すように、着地平面8において、傘部6の縁部が着地平面に接触しない状態で、安定して防御装置1を保持するように形成されている。
駆動制御ユニット3内には、駆動制御装置部10が設けられている。図2は、この実施形態の防御装置1における駆動制御装置部10の構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、この実施形態における駆動制御装置部10は、マイクロコンピュータ(図2ではマイコンと省略)からなる制御部101に対して、システムバス100を通じて、空中飛行駆動部102、ジャイロセンサ103、地磁気センサ104、高度センサ105、降雨センサ106、風センサ107、現在位置検出部108、対象物カメラ109、周辺カメラ110、メモリ部111、通信部112、対象物認識部113、追従移動終了検出部114、飛行駆動信号生成部115、位置姿勢制御信号生成部116、バッテリーチェック部117、のそれぞれが接続されて構成されている。
空中飛行駆動部102は、制御部101の制御に従って、空中飛行機構部2のプロペラ機構5A,5B,5C,5Dのエンジン部51A,51B,51C,51Dのそれぞれに、駆動制御信号を供給する。
ジャイロセンサ103は、防御装置1における加速度変化を検出するもので、防御装置1の進行方向やその速度、また、姿勢を検出するために用いられる。地磁気センサ104は、防御装置1が、どの方位に飛行移動しているかを検出するために用いられる。高度センサ105は、防御装置1が当該時点で位置している高度を検出するためのもので、例えば気圧センサからなる。
降雨センサ106は、その時点でどのくらいの量の雨が、どのくらいの強さ(雨滴の大きさなど)で降っているかを検出するために用いられる。降雨センサ106は、雪や、霙、霰、雹などを検出することもできるものとされている。
風センサ107は、風向き及び風速を検出するために用いられる。風速は、例えば圧力センサで検出することが可能である。
現在位置検出部108は、例えばGPS(Global Positioning System)受信機を備え、防御装置1の現在位置の緯度、経度、高度を検出する。より正確な位置情報を得るために、携帯電話基地局からの電波や、Wi−Fi(Wireless Fidelity(登録商標))通信のアクセスポイントからの電波を用いて現在位置を検出するようにしてもよい。
対象物カメラ109は、移動対象物を撮像するためのカメラであり、防御装置1が移動対象物の上空に位置しているときに、その移動対象物を撮像するために、その撮像の光軸方向は、傘部6の下方を向くように、駆動制御ユニット部3に設けられている。周辺カメラ110は、防御装置1が飛行移動しているときに、その進行方向周辺を撮像するためのカメラであり、その撮像の光軸方向は、防御装置1が着陸状態にあるときに水平方向を向くように、駆動制御ユニット部3に設けられている。
メモリ部111は、制御部101の制御のための各種データを記憶するもので、この例では、基地位置記憶部1111と、追従開始位置記憶部1112と、登録撮像画像記憶部1113とを備える。
この実施形態では、防御装置1は、その不使用時には、予め定められた基地に収容されるようにされている。この基地の位置は、利用者により設定されて登録され、基地位置記憶部1111に記憶される。追従開始位置は、防御装置1が、移動対象物を認識するために待機し、移動対象物を認識したら追従移動を開始する位置であり、この実施形態では、利用者により設定されて登録され、追従開始位置記憶部1112に記憶される。さらに、この実施形態では、利用者は、防御する移動対象物の例としての人物の撮像画像を予め登録して、登録撮像画像記憶部1113に記憶保存する。
この実施形態では、以上の登録処理を行うためと、後述する防御装置1の起動情報を発信する外部携帯装置9が、防御装置1と協働する装置として用意されている。通信部112は、この外部携帯装置9と無線通信路を通じて接続するための通信部である。
なお、この場合、外部携帯装置9としては、携帯型ノートパソコンや、スマートフォンと呼ばれる高機能携帯電話端末を用いることもできる。すなわち、これら携帯型ノートパソコンや、スマートフォンには、上記の各種情報の登録処理を行うための専用のアプリケーションプログラムをインストールし、通信部112を通じて、防御装置1と接続して通信ができるようにすればよい。
利用者は、基地の位置の登録に際しては、防御装置1を基地に位置させる。そして、通信部112により無線接続された外部携帯装置9から、防御装置1に指示情報により、現在位置検出部108で検出した位置情報、例えば緯度、経度、高度を、基地の位置情報として、基地位置記憶部1111に記憶する。また、この実施形態では、利用者は、外部携帯装置9から指示情報を防御装置1に送って、当該防御装置1において、対象物カメラ109による、基地の位置や基地近傍の位置での撮像情報及び周辺カメラ110による基地の位置や基地近傍の位置での撮像情報を、基地の位置情報と対応付けて、基地位置記憶部1111に記憶させるようにする。この場合、基地の近傍の位置とは、防御装置1が基地の上空でホバリングしている状態の位置や、基地に向かっているときの近傍上空位置を含む。
後述するように、防御装置1は、飛行移動した状態から基地に戻ってくるときに、対象物カメラ109や周辺カメラ110の撮像画像と、基地位置記憶部1111に記憶されている撮像画像とを比較参照しながら飛行することで、基地に正確に帰還することができる。
次に、利用者は、追従開始位置の登録に際しては、防御装置1をそれぞれの追従開始位置に位置させる。そして、上述と同様にして、通信部112に無線接続された外部携帯装置9から指示情報を防御装置1に送り、防御装置1において、追従開始位置記憶部1112に、追従開始位置の位置情報と、対象物カメラ109による追従開始位置及びその近傍位置での撮像情報及び周辺カメラ110による追従開始位置及びその近傍位置での撮像情報を記憶させるようにする。
図3に、追従開始位置記憶部1112の記憶データの例を示す。この図3に示すように、追従開始位置記憶部1112には、外部携帯装置9において利用者により指定された追従開始位置の名称、例えば「基地」や「玄関」などと、追従開始位置ID(IDは識別情報)と、位置情報と、その追従開始位置での対象物カメラ109や周辺カメラ110の撮像画像情報とが、対応付けられて、追従開始位置のそれぞれ毎に記憶されている。
なお、外部携帯装置9には、利用者により指定された追従開始位置の名称と、追従開始位置ID(IDは識別情報)とが、対応付けられて追従開始位置メモリに記憶される。後述するように、外部携帯装置9から起動情報を発信する際に、利用者がこの追従開始位置メモリに記憶されている追従開始位置の中から、当該起動情報で指定される追従開始位置を選択指定することができるようにされている。
次に、利用者は、移動対象物の撮像画像の登録に際しては、外部携帯装置9からの指示により、防御装置1を、登録したい人物の上空にホバリングさせるように制御し、その状態で、対象物カメラ109により、登録したい人物を撮像させるように指示する。そして、外部携帯装置9において、登録する人物の名称を入力して、それを防御装置1に送信すると共に、その人物の撮像画像の登録指示を防御装置1に送る。
このときのメモリ部111の登録撮像画像記憶部1113の記憶内容の例を図4に示す。すなわち、登録撮像画像記憶部1113には、人物の名称と、その移動対象物IDと、対象物カメラ109による撮像画像の情報とが、対応付けられて記憶される。
そして、外部携帯装置9にも、人物の名称と、その移動対象物IDとが、移動対象物メモリに記憶される。そして、後述するように、外部携帯装置9から起動情報を発信する際に、利用者がこの移動対象物メモリに記憶されている移動対象物の例としての人物の中から、当該起動情報で指定する移動対象物としての人物を選択指定することができるようにされている。
通信部112は、外部携帯装置9からの起動情報を受信して、制御部101に供給する。すなわち、通信部112は、この実施形態の起動情報受信部を構成している。制御部101は、通信部112で、この起動情報を受信したことを検知して、防御装置1を起動するようにする。外部携帯装置9から発信される起動情報の例を図5に示す。この起動情報の発信に先立ち、利用者は、外部携帯装置9において、前述した追従開始位置の選択指定を行うと共に、移動対象物の選択指定を行う。
図5に示すように、起動情報は、スタート命令コードと、防御すべき移動対象物の移動対象物IDと、追従開始すべき位置を特定するための追従開始位置IDとを含む。後述するように、制御部101は、起動情報に含まれる移動対象物IDにより登録撮像画像記憶部1113を参照することにより、防御すべき移動対象物を把握すると共に、追従開始位置IDにより追従開始位置記憶部1112を参照することにより、追従開始する位置を把握する。
対象物認識部113は、この実施形態では、追従開始位置で対象物カメラ109により撮像した移動対象物の撮像画像と、登録撮像画像記憶部1113から読み出した、起動情報に含まれる移動対象物IDに対応付けられている移動対象物の撮像画像とを比較して画像認識することで、追従すべき移動対象物の人物を認識する。そして、この実施形態では、対象物認識部113は、移動対象物を認識した後には、その移動対象物の移動に追従した移動を行うために、対象物カメラ109で撮像した対象物撮像画像を、対象物画像記憶部118に記憶しておく。そして、移動対象物の移動に追従した移動のための画像認識は、対象物画像記憶部118に記憶した撮像画像情報を用いて行う。
なお、対象物認識部113において認識する移動対象物は、この例では人物であるが、この対象物認識部113で認識する対象は、人物の顔、身体のみならず、服装及び/または持ち物などとすることができる。
追従移動終了検出部114は、移動対象物の移動に追従した移動を行い、当該移動対象物が、外乱が到達しない建物内に入ったことや自動車に乗り込んだことを判別したときに、移動対象物の追従移動終了と判断し、その判断結果を制御部101に知らせる。この追従移動終了検出部114での判別は、対象物カメラ109の撮像画像情報を解析することで行う。制御部101は、追従移動終了と判断したときには、防御装置1を飛行移動により基地に戻すように制御処理を行う。
飛行駆動信号生成部115は、制御部101により起動情報に基づく指令により、基地から指定された追従開始位置に飛行移動するときには、メモリ部111の基地位置記憶部1111に記憶されている基地の位置情報と、追従開始位置記憶部1112から読み出された指定された追従開始位置の位置情報とから、基地位置から、指定された追従開始位置までの方向及び距離を計算する。また、制御部101が追従移動終了と判断したことに基づいて、現在位置から基地に戻るときには、現在位置検出部108で検出された現在位置の位置情報と、基地位置記憶部1111に記憶されている基地の位置情報とから、現在位置から基地に戻るための方向及び距離を計算する。
そして、飛行駆動信号生成部115は、計算した方向及び距離に基づくと共に、ジャイロセンサ103、地磁気センサ104、高度センサ105などの情報を用い、さらに、対象物カメラ109及び周辺カメラ110の撮像画像を参照ながら、基地位置から、指定された追従開始位置まで移動するための飛行駆動信号を生成し、空中飛行駆動部102を通じて、空中飛行機構部2に供給する。この場合、飛行駆動信号は、4個のプロペラ機構5A〜5Dのエンジン部51A〜51Dのそれぞれを駆動する信号からなる。生成された飛行駆動信号は、空中飛行駆動部102を通じて、空中飛行機構部2のエンジン部51A〜51Dのそれぞれに供給される。
空中飛行機構部2は、この飛行駆動信号を受けて、プロペラ52A〜52Dのそれぞれを回転駆動して、基地から追従開始位置へ、あるいは、追従移動を終了した現在位置から基地へ、空中飛行による移動を行う。
なお、駆動制御装置部10では、基地から追従開始位置までの飛行移動の経路における対象物カメラ109及び周辺カメラ110の撮像画像を記憶しておき、その記憶した撮像画像と、飛行移動中に対象物カメラ109及び周辺カメラ110の撮像画像とを比較参照しながら飛行駆動信号を生成して、防御装置1の基地から追従開始位置までの飛行移動の経路の駆動制御をするようにしてもよい。同様に、追従開始位置から現在位置までの飛行移動の経路における対象物カメラ109及び周辺カメラ110の撮像画像を記憶しておき、その記憶した撮像画像を逆に辿ると共に、飛行移動中に対象物カメラ109及び周辺カメラ110の撮像画像とを比較参照しながら飛行駆動信号を生成して、防御装置1の現在位置から基地まで戻る飛行移動の経路の駆動制御をするようにしてもよい。
位置姿勢制御信号生成部116は、高度センサ105、降雨センサ106、風センサ107、並びに対象物カメラ109及び周辺カメラ110の撮像画像に基づいて、移動対象物に対する傘部6の位置(移動対象物の真上か、前後左右少し離れた位置かなど、及び上下方向の位置(高さ位置))と、傘部6の傾き角及び傾きの方向などの姿勢を制御する位置姿勢制御信号を生成する。この場合に、位置姿勢制御信号生成部116は、移動対象物に対して外乱ができるだけ到達しないような傘部6の位置や姿勢となるように、位置姿勢制御信号を生成する。
例えば、位置姿勢制御信号生成部116は、降雨が有り、殆ど無風であれば、傘部6の位置及び姿勢が、移動対象物の真上、あるいは若干移動対象物の進行方向にずれた位置で、傘部6の鉛直方向に対する傾き角はゼロとするように、位置姿勢制御信号を生成する。しかし、降雨に伴い風があれば、位置姿勢制御信号生成部116は、傘部6の位置及び姿勢が、その風向き及び風力、更に移動対象物の進行方向を参酌して、降雨が移動対象物にできるだけ到達しないように位置姿勢制御信号を生成する。すなわち、例えば、風向き及び風力、更に移動対象物の進行方向に応じて、傘部6の位置が移動対象物の真上からずれた位置であって、所定の高さ位置にされると共に、傘部6の傾き角及び傾きの方向も、風向き及び風力、更に移動対象物の進行方向に応じて定められる。
バッテリーチェック部117には、バッテリー119が接続されている。すなわち、この実施形態の防御装置1は、バッテリー119を駆動電源として有している。この実施形態では、バッテリー119は、充電可能な二次電池が用いられ、ソーラーパネル(図示は省略)を備えていて、太陽光により充電可能なものとされている。そして、ソーラーパネルで受光した太陽光に基づく充電では不足となる場合を考慮して、他の発電機や電線からの電力に基づく他の充電方式によっても充電可能とされている。
バッテリーチェック部117は、この例では、バッテリー119の電圧及びバッテリー残量を検出して、その検出結果から、バッテリー119が、飛行に十分な電圧及びバッテリー残量を蓄積しているか否かをチェックし、そのチェック結果を制御部101に知らせる役割をする。制御部101は、このバッテリーチェック部117からのチェック結果を受けて、バッテリー119の充電状態が、飛行に十分な電圧及びバッテリー残量の状態にあるか否かを判断する。
制御部101は、バッテリーチェック部117のチェック結果を受けて、バッテリー119が飛行に十分な電圧及びバッテリー残量を蓄積していないと判断したときには、起動情報を送ってきた外部携帯装置9に、電圧不足やバッテリー残量不足を内容とするエラー信号を送る。このエラー信号を受けた外部携帯装置9では、表示画面に「電圧不足」や「バッテリー残量不足」などのエラーメッセージを表示するなどして、利用者に防御装置1の利用不可を知らせるようにする。
そして、制御部101は、防御装置1が飛行中においては、常時、バッテリーチェック部117からのチェック結果を監視し、バッテリー119の電圧及びバッテリー残量が飛行には危険な状態になりかけていると判断したときには、防御装置1を、強制的に基地に戻すように制御する。ここで、「バッテリー119の電圧及びバッテリー残量が飛行に必要な電圧及びバッテリー残量としては危険な状態になりかけている」か否かの判別とは、現在位置から基地に戻る飛行移動分の電源電圧及びバッテリー残量を、バッテリー119が維持できるかどうかの判別である。このため、バッテリーチェック部117は、防御装置1の飛行中においては、現在位置と基地との距離を計算し、その距離の飛行移動に必要な電源電圧及びバッテリー残量をバッテリー119が有しているか否かをチェックするようにしている。
なお、図2において、対象物認識部113、追従移動終了検出部114、飛行駆動信号生成部115及び位置姿勢制御信号生成部116は、制御部101が、ソフトウエア処理機能として実現することもできる。
[防御装置1の利用例]
図6は、第1の実施形態の防御装置1の利用例を説明するための図である。この利用例は、自宅の玄関と車庫との間の移動において、雨、雪、霙、霰、雹などが降っていたときに、それらの外乱から、家人を防御するために用いられる場合である。
この例においては、図6(A)及び(B)に示すように、家屋21の玄関22から離れた位置に車庫23が設置されており、この車庫23の例えば屋根に防御装置1の基地24が設けられている。
そして、この例では、防御装置1には、前述したようにして、防御装置1と共に用いられる外部携帯装置9(図6では図示を省略)が用いられて、家屋21に住む家人の撮像画像が、移動対象物として登録されていると共に、追従開始位置として、基地24の位置及び家屋21の玄関22が登録されているものとする。
なお、この例では、外部携帯装置9は、家人が所持しているスマートフォンの構成とされており、予め、必要なソフトウエアプログラムがインストールされている。家人が複数人である場合には、防御装置1には、家人の全ての撮像画像が、移動対象物として、登録されている。そして、家人のそれぞれが所持しているスマートフォンには、前述した追従開始位置や撮像画像の登録時に外部携帯装置9が記憶する情報の全てが、全く同様に記憶されている。
図6(A)は、家人25が車で帰宅して、車庫23に車を車庫入れした後、例えば降雨から防御するために、車庫23から玄関22までの移動に、防御装置1を使用する場合である。この図6(A)の例の場合、家人25は、自分が所持するスマートフォンにおいて、防御装置1の起動用のアプリケーションを立ち上げて、追従開始位置として基地を指定し、また、自分を移動対象物として指定して、起動情報を発信するようにする。
基地24においてスタンバイ状態であった防御装置1は、この起動情報を受信すると起動して、起動情報に含まれる追従開始位置IDから追従開始位置が基地24であることを認識すると共に、起動情報に含まれる移動対象物IDから、移動対象物が家人25であることを認識し、家人25の撮像画像を、メモリ部111の登録撮像画像記憶部1113から読み出して、対象物認識部113に供給する。
そして、基地24から発進して、車庫23の出口の上空でホバリングして待機し、対象物カメラ109での撮像を開始する。そして、防御装置1は、家人25が車庫23から出てきたら、対象物カメラ109で撮像した撮像画像と、メモリ部111の登録撮像画像記憶部1113から読み出した家人25の登録撮像画像との一致判定を行うための画像認識を行うことにより、家人25を認識し、認識したら対象物画像記憶部118に、その時の対象物カメラ109で撮像した家人25の撮像画像を、追従移動する対象物の撮像画像として記憶する。
そして、家人25が家屋21の玄関に向かって移動したら、防御装置1は、その移動を対象物カメラ109の撮像画像から検知して、家人25の移動に追従して飛行移動する。このとき、前述したように、降雨センサ106や風センサ107の検出出力と、家人25の移動方向に応じて、防御装置1は、傘部6の移動対象物に対する位置及び姿勢を制御して、外乱としての降雨から家人25を防御するために最適な状態にする。
そして、家人25が、家屋21の玄関22のドアから家屋21内に入り、外乱としての雨が到達しない領域に入ったことを検出したら、防御装置1は、追従移動終了と判断して、基地24に飛行移動して戻り、基地24に着陸して、スタンバイ状態となる。このスタンバイ状態は、制御部101が起動情報を受信することができるだけでよく、その他の各部には、バッテリー119から電源電圧が供給されない低電力消費の状態である。
次に、図6(B)は、家屋21内に居た家人26が、車で出かけるために、例えば降雨から防御するために、玄関22から車庫23までの移動に、防御装置1を使用する場合である。この図6(B)の例の場合、家人26は、自分が所持するスマートフォンにおいて、防御装置1の起動用のアプリケーションを立ち上げて、追従開始位置として家屋21の玄関22を指定し、また、自分を移動対象物として指定して、起動情報を発信するようにする。
基地24においてスタンバイ状態であった防御装置1は、この起動情報を受信すると起動して、起動情報に含まれる追従開始位置IDから追従開始位置が家屋21の玄関22であることを認識すると共に、起動情報に含まれる移動対象物IDから、移動対象物が家人26であることを認識し、家人26の撮像画像を、メモリ部111の登録撮像画像記憶部1113から読み出して、対象物認識部113に供給する。
そして、基地24から発進して、家屋21の玄関22まで飛行移動し、玄関22の上空でホバリングして待機し、対象物カメラ109での撮像を開始する。そして、防御装置1は、家人26が玄関22のドアから出てきたら、対象物カメラ109で撮像した撮像画像と、メモリ部111の登録撮像画像記憶部1113から読み出した家人26の登録撮像画像との一致判定を行うための画像認識を行うことにより、家人26を認識し、認識したら対象物画像記憶部118に、その時の対象物カメラ109で撮像した家人26の撮像画像を、追従移動する対象物の撮像画像として記憶する。
そして、家人26が車庫23に向かって移動したら、防御装置1は、その移動を対象物カメラ109の撮像画像から検知して、家人26の移動に追従して飛行移動する。このとき、前述したように、降雨センサ106や風センサ107の検出出力と、家人26の移動方向に応じて、防御装置1は、傘部6の位置及び姿勢を制御して、外乱としての降雨から家人26を防御するために最適な状態にする。
そして、家人26が、車庫23で車に乗り込んだことにより、外乱としての雨が到達しない領域に入ったことを検出したら、防御装置1は、追従移動終了と判断して、基地24に飛行移動して戻り、基地24に着陸して、スタンバイ状態となる。
[防御装置1の制御部101の処理動作の例]
次に、防御装置1がスタンバイ状態から起動情報を受けて、基地に戻るまでにおける制御部101の処理動作例を、図7及びその続きである図8のフローチャートを参照して説明する。なお、図7及び図8のフローチャートにおいては、対象物認識部113、追従移動終了検出部114、飛行駆動信号生成部115及び位置姿勢制御信号生成部116は、制御部101が、ソフトウエア処理機能として構成した場合として説明する。
防御装置1の制御部101は、起動情報の受信を監視する(ステップS101)。起動情報を受信したと判別したときには、制御部101は、バッテリー119の電源電圧を各部に供給するようにして、防御装置1を起動する(ステップS102)。次に、制御部101は、バッテリー119の電圧及びバッテリー残量をチェックして、飛行に十分な電圧及びバッテリー残量が蓄積されているか否か判別する(ステップS103)。
このステップS103で、バッテリー119の電圧及びバッテリー残量が十分ではないと判別したときには、制御部101は、電圧不足やバッテリー残量不足を内容とするエラー信号を、起動情報を送信してきた外部携帯装置9に送り(ステップS104)、処理を停止してスタンバイ状態に戻る。前述したように、エラー信号を受信した外部携帯装置9では、利用者に、電圧不足やバッテリー残量不足を報知するので、利用者は、防御装置1が起動不能であることを認識する。
ステップS103で、バッテリー119の電圧及びバッテリー残量が十分であると判別したときには、制御部101は、起動情報に含まれる追従開始位置IDにより追従開始位置記憶部1112の記憶内容を参照することにより、追従開始位置を把握すると共に、起動情報に含まれる移動対象物IDにより登録撮像画像記憶部1113を参照することにより、移動対象物となる人物の撮像画像を把握する(ステップS105)。なお、このステップS105においては、制御部101は、バッテリー119の電圧及びバッテリー残量のチェックを並行して常時行い、前述したように、バッテリー119の電圧及びバッテリー残量が不十分となった時には、基地に戻るようにする処理を実行する。その際にも、制御部101は、エラー信号を、起動情報を送信してきた外部携帯装置9に送り、その旨を知らせるようにする。
次に、制御部101は、把握した追従開始位置は現在位置、つまり、基地であるか否か判別し(ステップS106)、把握した追従開始位置は現在位置ではないと判別したときには、ステップS105において把握した追従開始位置まで、飛行移動する(ステップS107)。そして、制御部101は、追従開始位置において対象物カメラ109による撮像を行いながら、ホバリングして待機する(ステップS108)。
また、ステップS106で、把握した追従開始位置は現在位置であると判別したときには、制御部101は、基地の近傍の追従開始位置において対象物カメラ109による撮像を行いながら、ホバリングして待機する(ステップS108)。
次に、制御部101は、対象物カメラ109で撮像した撮像画像と、登録撮像画像記憶部1113から読み出した、移動対象物となる人物の撮像画像とを比較することで、移動対象物を認識したか否か判別する(ステップS109)。このステップS109で、移動対象物を認識してはいないと判別したときには、制御部101は、処理をステップS108に戻し、このステップS108以降の処理を繰り返す。
ステップS109において、移動対象物を認識したと判別したときには、制御部101は、移動対象物の上空において、傘部6により、当該移動対象物を降雨などの外乱から防御する位置及び姿勢とするように防御装置1を制御する(図8のステップS111)。
そして、制御部101は、移動対象物が移動したか否かを対象物カメラ109の撮像画像から判別し(ステップS112)、移動対象物が移動してはいないと判別したときには、処理をステップS111に戻して、このステップS111以降の処理を繰り返す。
また、ステップS112で、移動対象物が移動したと判別したときには、制御部101は、防御装置1を、移動対象物の移動に追従して飛行移動させるようにすると共に、傘部6の位置及び傾き角や傾き方向が、降雨などの外乱の防御が最適となるように制御する(ステップS113)。
そして、制御部101は、対象物カメラ109の撮像画像から、移動対象物が外乱の到達しない領域に入ったか否か判別し(ステップS114)、移動対象物が外乱の到達しない領域に入ってはいないと判別したときには、処理をステップS111に戻して、このステップS111以降の処理を繰り返す。
ステップS114で、移動対象物が外乱の到達しない領域に入ったと判別したときには、制御部101は、防御装置1を基地に戻すように飛行制御し、基地に着陸させた後、スタンバイ状態に戻るように制御する(ステップS115)。そして、この処理動作を終了する。
[第1の実施形態の効果]
以上説明したように、上述の第1の実施形態の防御システム及び防御装置1によれば、利用者が外部携帯装置9から起動情報を送ると、防御装置1が利用者の上空に飛来して、その傘部6により外乱から利用者を防御するようにする。したがって、利用者は、冒頭で説明した従来の傘保持具のような、傘を保持するためのホルダーを人体に装着したりする必要は全くなく、また、傘やホルダーを携帯する必要も全くないので、非常に便利である。
また、上述の第1の実施形態の防御装置1によれば、予め、防御すべき移動対象物の人物などを登録しておくことにより、当該登録した移動対象物を防御装置1が自動的に認識して、外乱から防御してくれるという効果がある。
また、上述の第1の実施形態の防御装置1によれば、防御装置1により外乱から防御を開始してもらいたい位置を、追従開始位置として防御装置1に登録しておき、起動情報のその追従開始位置を特定するための情報を含めるだけで、登録した追従開始位置から外乱に対する防御を開始してもらえるという効果がある。
上述の第1の実施形態の防御装置1によれば、傘部6の移動対象物に対する水平方向の位置及び高さ位置、傾き角や傾き方向を、降雨量や風向、風力などの外乱の状況に応じて、自動的に制御するようにするので、常に、外乱に対する防御効果を最適なものとすることができる。
[第2の実施形態]
上述の第1の実施形態では、防御装置1の利用者は、家人など、限定された場合とした。しかし、この発明による防御装置1は、不特定多数の利用者を想定した場合にも、適用することが可能である。第2の実施形態は、そのような不特定多数の利用者を想定した防御装置1Aの場合である。
この第2の実施形態の防御装置1Aの構成は、後述するように、防御装置1Aを起動して、追従開始位置で移動対象物を認識するための処理部の構成を除いて、第1の実施形態の防御装置1と同様である。この防御装置1Aの構成例を説明する前に、この第2の実施形態の防御装置1Aに対して想定される利用形態について、まず説明する。
以下に説明する例は、病院と薬局とが離れた場所にあり、当該病院から薬局までの移動において防御装置1Aが利用される場合である。そして、移動対象物が、病院に診察に来た患者であって、かつ、車椅子の利用者である場合である。車椅子の利用者は、車椅子を両手で操作することで、当該車椅子を移動させるために、雨や雪が降っている場合には、自分で傘を差すことはできないので、この第2の実施形態の防御装置1Aが非常に有益である。
この第2の実施形態においては、図9(A)に示すように、車椅子の利用者である患者31は、病院の会計で、診察代を支払うと共に、薬の処方箋を貰うが、その際に、薬局に行って処方箋に記載されている薬を受け取ることを、係員32に伝える。そして、病院から薬局までの移動の際に、防御装置1Aの利用サービスを受けたい旨を、係員32に申し出る。
すると、係員32は、この例では、ブレスレット型の発信装置33を、防御装置1Aの利用者としての患者31に渡す。この発信装置33は、当該発信装置33を識別するための識別情報を含む発信信号を防御装置1Aに送る機能を備える装置である。防御装置1Aは、当該発信装置33からの発信信号を受信して、前記識別情報を認識することで、当該ブレスレット型の発信装置33を装着している人物を、防御対象の移動対象物として認識するようにする。
ブレスレット型の発信装置33を、患者31に渡した係員32は、防御装置1Aに対して起動情報を送信するためのボタン34を操作する。
図9(B)に示すように、この第2の実施形態の防御装置1Aは、病院の建物35に設けられている基地に、スタンバイ状態で、収容されている。防御装置1Aは、ボタン34の操作に基づく起動情報を受信すると、第1の実施形態と同様にして、防御装置1Aを起動する。そして、防御装置1Aは、薬局に向かうための病院の建物35の出口の近傍を追従開始位置として待機し、ブレスレット型の発信装置33からの識別情報を含む発信信号の受信を待つ。
ブレスレット型の発信装置33を腕に装着した患者31が、病院の建物35の出口の近傍に到着すると、防御装置1Aは、ブレスレット型の発信装置33からの発信信号を受信する。防御装置1Aは、受信した発信信号に含まれる識別情報を、予め登録されている識別情報と比較して、一致を検出することで、当該ブレスレット型の発信装置33を装着している患者31を、防御対象の移動対象物であると認識する。
防御装置1Aは、防御対象の移動対象物を認識すると、当該移動対象物である患者31の上空に移動して、降雨から防御すると共に、当該移動対象物の患者を対象物カメラ109で撮像し、撮像した画像を、対象物画像記憶部118に格納して、その後の追従移動の対象物とするようにする。
したがって、患者31が車椅子を操作して、薬局まで移動すると、防御装置1Aは、第1の実施形態と同様にして、患者31を降雨から防御しつつ、その移動に追従して飛行移動する。そして、患者31が薬局の建物36内に入ると、防御装置1Aは、薬局の建物36に用意されている場所に着陸して、患者31が戻ってくるのを待つ。この時、防御装置1Aは、ブレスレット型の発信装置33からの発信信号を受信することが可能な状態を維持しつつ、スタンバイ状態となり、消費電力を最小にする。
患者31が薬を受け取って薬局の建物36から出ようとすると、ブレスレット型の発信装置33からの発信信号を、スタンバイ状態の防御装置1Aが受信して、再起動し、患者31の上空に位置して、患者31を再認識する。そして、薬局の建物36から、病院の建物35まで、患者31の移動に追従して、患者31を降雨から防御しながら、飛行移動する。
そして、患者31が病院の建物35に入ると、移動対象物は外乱が到達しない場所に入ったと認識した防御装置1Aは、基地で待機する。患者31は、その後、病院の会計のカウンターに戻り、ブレスレット型の発信装置33を返却する。ブレスレット型の発信装置33の返却を確認した係員32は、ボタン37を操作して、防御装置1Aに終了指示を送る。防御装置1Aは、この終了指示を受信すると、対象物画像記憶部118に記憶していた今回の移動対象物の撮像画像を消去し、基地において、スタンバイ状態に戻る。
[第2の実施形態の防御装置1Aの構成について]
この第2の実施形態の防御装置1Aの構成は、図10に示すように、図2に示した防御装置1の構成において、以下の点が異なるのみで、その他は第1の実施形態の防御装置1と全く同様の構成を有する。
すなわち、図10の第2の実施形態の防御装置1Aにおいては、第1の実施形態の防御装置1における通信部112に代わって、ブレスレット型の発信装置33からの発信信号を受信する機能を備える通信部112Aを設ける。そして、メモリ部111の基地位置記憶部1111には、病院の基地の位置の情報が記憶される。また、追従開始位置記憶部1112には、病院の建物35の出口の位置の情報が記憶される。しかし、メモリ部111には、登録撮像画像記憶部1113は設けられない。その代わりに、メモリ部111には、ブレスレット型の発信装置33からの発信信号に含まれる識別情報を記憶する識別情報記憶部1114が設けられる。防御装置1Aが複数台用意されると共に、ブレスレット型の発信装置33も、異なる識別情報を含むものが複数個用意される場合には、防御装置1Aのメモリ部111の識別情報記憶部1114には、それらの異なる複数個の識別情報が記憶される。
さらに、第2の実施形態の防御装置1Aにおける対象物認識部113Aは、登録された撮像画像と、対象物カメラ109の撮像画像とのマッチング処理による移動対象物の認識処理の機能は持たず、単に、ブレスレット型の発信装置33を所持している人物を、対象物カメラ109で撮像した画像を、ブレスレット型の発信装置33からの発信信号に含まれていた識別情報と対応付けて、対象物画像記憶部118に記憶して、当該記憶した画像を、移動対象物の撮像画像として認識する機能を備える。
防御装置1Aのその他の構成は、図10に示すように、第1の実施形態の防御装置1と全く同様である。
[第2の実施形態の効果]
この第2の実施形態の防御装置1Aによれば、追従開始位置で、ブレスレット型の発信装置33からの発信信号に含まれていた識別情報により移動対象物の認証をすると共に、対象物カメラ109で撮像した当該移動対象物の撮像画像を、前記識別情報と対応付けて、追従移動する移動対象物の撮像画像として、対象物画像記憶部118に記憶する。そして、防御装置1Aは、その対象物画像記憶部118に記憶されている撮像画像を基にして、移動対象物に追従移動するようにする。これにより、第2の実施形態の防御装置1Aによれば、第1の実施形態の防御装置1のように、事前に、登録した移動対象物のみを防御対象とするのではなく、任意の移動対象物を防御対象として追従移動することができる。
[第2の実施形態の防御装置1Aの他の利用例]
図9では、防御装置1Aを、病院と薬局との間を移動する患者を外乱から防御する場合の例であった。このため、防御装置1Aは、利用者としての患者が、病院から薬局に移動した後、薬局から病院に必ず戻ることを想定した。しかし、薬局から病院に患者が戻ることを想定しない場合には、防御装置1Aは、患者が、病院から薬局に向かい薬局に入って、外乱が到達しない状態になったら、病院の基地に戻り、対象物画像記憶部118に記憶している識別情報及び撮像画像を消去するようにしてもよい。この場合、ブレスレット型の発信装置33は、患者が薬局において返却し、薬局から病院に、それを渡すようにすればよい。
この第2の実施形態の防御装置1Aを用いた更なる他の例を、図11に示す。この図11の例は、テーマパークにおいて、種々のアトラクションが行われる複数の建物の間を、入場者が、防御装置1Aにより外乱から防御してもらいながら、移動することができるようにする場合である。
この例においては、入場者38は、テーマパークのゲート41において、防御装置1Aによる外乱からの防御サービスを契約すると、前述したブレスレット型の発信装置33を貸与される。そこで、入場者38は、ブレスレット型の発信装置33を装着して、ゲート41で待つと、テーマパークのゲート41の係員が起動ボタンを操作することに基づいて、ゲート41の基地において待機している防御装置1Aのうちの1台が、飛来する。そして、防御装置1Aは、入場者38が装着しているブレスレット型の発信装置33からの発信信号に含まれる識別情報により、移動対象物として認証すると共に、対象物カメラ109により入場者38を撮像して、前述したようにして、入場者38の撮像画像を対象物画像記憶部118に、前記識別情報と対応して記憶する。
そして、防御装置1Aは、入場者38の移動に追従して飛行移動する。入場者38が、あるアトラクションAの建物42に入ると、防御装置1Aは、入場者38は外乱が到達しない領域に入ったと判断して、ゲート41の基地に戻り、対象物画像記憶部118に記憶している識別情報及び撮像画像を消去する。そして、防御装置1Aは、次の入場者に対する外乱の防御サービスの起動指示を受信するスタンバイ状態に戻る。
アトラクションAの建物42にも防御装置1Aの基地が設けられており、複数台の防御装置1Aがスタンバイ状態で待機している。なお、前述のゲート41の基地に戻った防御装置1Aは、ゲート41の基地に戻らず、そのまま建物42の基地に待機するようにしてもよい。また、このアトラクションAの建物42には、入場者38が装着しているブレスレット型の発信装置33からの発信信号を受信して、基地に待機している防御装置1Aに転送する機能を有する中継装置421が設けられている。この例の防御装置1Aは、この中継装置421からの信号を、通信部112Aで受信する。この場合、防御装置1Aは、受信信号に含まれる発信装置を示す情報により、受信した信号が中継装置421からの信号か、ブレスレット型の発信装置33からの発信信号かを判別する。
入場者38が建物42に入ると、中継装置421は、当該入場者38が装着しているブレスレット型の発信装置33からの発信信号を受信し、その受信した発信信号を、建物42の基地に待機している防御装置1Aに対して発信する。すると、建物42の基地の防御装置1Aのうちの1台が中継装置421と通信接続する状態となり、当該1台の防御装置1Aは、中継装置421からの発信信号を受信する。そして、防御装置1Aは、受信した発信信号に含まれる識別情報を抽出して保持して、ブレスレット型の発信装置33からの発信信号の受信を待つ状態となる。
入場者38が建物42の出口に来て、ブレスレット型の発信装置33からの発信信号を防御装置1Aが受信する状態になると、防御装置1Aは、その受信した発信信号に含まれる識別情報と、中継装置421から受信した識別情報との一致を確認して移動対象物についての認証をする。そして、その認証が終了すると、防御装置1Aは、入場者38の上空において、対象物カメラ109により入場者38を撮像して、前述したようにして、入場者38の撮像画像を対象物画像記憶部118に、前記識別情報と対応して記憶する。
そして、防御装置1Aは、入場者38の移動に追従して飛行移動する。入場者38が、他のアトラクションBの建物43に入ると、防御装置1Aは、入場者38は外乱が到達しない領域に入ったと判断して、アトラクションAの建物42の基地に戻り、対象物画像記憶部118に記憶している識別情報及び撮像画像を消去する。そして、防御装置1Aは、次に建物42に入ってくる入場者に対する外乱の防御サービスをするためのスタンバイ状態に戻る。
アトラクションBの建物43にも、建物42と同様に、防御装置1Aの基地が設けられており、複数台の防御装置1Aがスタンバイ状態で待機している。なお、防御装置1Aは、建物42の基地に戻らず、建物43の基地に待機するようにしてもよい。また、このアトラクションBの建物43には、入場者38が装着しているブレスレット型の発信装置33からの発信信号を受信して、基地に待機している防御装置1Aに転送する機能を有する中継装置431が設けられている。
したがって、入場者38が建物43に入ると、前述と同様にして、中継装置431は、当該入場者38が装着しているブレスレット型の発信装置33からの発信信号を受信し、その受信した発信信号を、建物43の基地に待機している防御装置1Aに対して発信する。すると、建物43の基地の防御装置1Aのうちの1台が中継装置431と通信接続する状態となり、当該1台の防御装置1Aは、中継装置431からの発信信号を受信し、受信した発信信号に含まれる識別情報を抽出して保持して、ブレスレット型の発信装置33からの発信信号の受信を待つ状態となる。
入場者38が建物43の出口に来て、ブレスレット型の発信装置33からの発信信号を防御装置1Aが受信する状態になると、防御装置1Aは、その受信した発信信号に含まれる識別情報と、中継装置431から受信した識別情報との一致を確認して移動対象物についての認証をする。そして、その認証が終了すると、防御装置1Aは、入場者38の上空において、対象物カメラ109により入場者38を撮像して、前述したようにして、入場者38の撮像画像を対象物画像記憶部118に、前記識別情報と対応して記憶する。
そして、防御装置1Aは、入場者38の移動に追従して飛行移動する。入場者38が、更に他のアトラクションの建物に入ったり、ゲート41に戻ったりすると、防御装置1Aは、入場者38は外乱が到達しない領域に入ったと判断して、アトラクションBの建物43の基地に戻り、対象物画像記憶部118に記憶している識別情報及び撮像画像を消去する。そして、防御装置1Aは、次に建物43に入ってくる入場者に対する外乱の防御サービスをするためのスタンバイ状態に戻る。もちろん、防御装置1Aは、建物43の基地に戻らず、他のアトラクションの建物の基地やゲート41の基地に待機するようにしてもよい。なお、入場者38は、貸与されたブレスレット型の発信装置33をゲート41で返却する。もちろん、返却は、ゲート41のみならず、各建物で行えるようにしてもよい。
以上のようにして、図11の例においては、各アトラクションの建物に、防御装置1Aの基地を設けると共に、ブレスレット型の発信装置33からの発信信号を防御装置1Aに中継する中継装置を設けることにより、テーマパークの入場者に対して、各種のアトラクションの建物から他の建物への移動の際における降雨などの外乱を、防御装置1Aによって防御するサービスを提供することが可能となる。
なお、上述の第2の実施形態では、発信信号の発信装置としては、ブレスレット型の発信装置33を用いたが、ブレスレット型に限られるものではなく、利用者が装着したり携帯したりすることができるものであれば、どのような形態のものであってもよい。例えば、帽子型や、ベルトに装着するポーチ型、また、ワッペン、バッチ、シールやステッカーであってもよい。
[第3の実施形態]
第3の実施形態では、例えば大型ショッピングセンターやテーマパークにおいて、駐車場に駐車した自分の車に戻る場合に、防御装置による、降雨などの外乱からの防御のサービス提供を、自動販売機の形式で受けるようにする例である。
図12は、この第3の実施形態の防御装置1Bを用いた防御システムの全体の概要を説明するための図である。この第3の実施形態の防御システムは、図12に示すように、自動販売機61と、防御装置1Bの基地62とを備える。自動販売機61は、硬貨投入口611と、紙幣投入口612と、ディスプレイ613と、カメラ614を備えると共に、内部に、基地62に待機している防御装置1Bに起動信号やその他の信号を送信する送信部615を備える。
この第3の実施形態における防御装置1Bは、図示は省略するが、図10に示した第2の実施形態の防御装置1Aの通信部112Aに代わって、自動販売機61の送信部615からの信号を受信する通信部を備える。なお、この第3の実施形態における防御装置1Bは、それぞれ装置IDを備えていると共に、自動販売機61の送信部615は、防御装置1Bの装置IDを含む送信信号を、基地62で待機している防御装置1Bに対して送信する。そして、防御装置1Bのそれぞれは、自動販売機61の送信部615からの信号を受信すると、当該受信信号に含まれている装置IDを判別して、自装置の装置IDと一致しているときにのみ、受信した信号を、自装置宛ての信号として取り込むようにする。
そして、防御装置1Bのメモリ部111の基地位置記憶部1111には、基地62の位置情報が記憶され、追従開始位置記憶部1112には、自動販売機61が設置されている位置の位置情報が記憶される。また、識別情報記憶部1114に代わって、自動販売機61から送られてくる利用者の撮像画像を記憶する撮像画像記憶部が設けられる。
この第3の実施形態では、利用者63は、自動販売機61において、硬貨投入口611や紙幣投入口612を通じて所定の料金を投入して、ディスプレイ613で防御装置1Bを選択する。すると、自動販売機61は、カメラ614で利用者63を撮像し、その撮像画像情報と、利用者により選択された防御装置1Bの装置IDとを送信信号に含めて、防御装置1Bに送信する。更に、自動販売機61は、利用者により選択された防御装置1Bの装置IDを含めた起動信号を防御装置1Bに送る。
自動販売機61の送信部615からの撮像画像情報及び起動情報を受信した、選択された装置IDの防御装置1Bは、起動して、基地62から自動販売機61の位置に飛行移動し、利用者63を対象物カメラ109で撮像し、対象物認識部は、その撮像画像と、受信した撮像画像とを比較して、利用者63の認証確認を行う。認証確認ができたら、対象物画像記憶部118に、対象物カメラ109で撮像した利用者63の撮像画像を記憶して、追従する移動対象物とする。
そして、上述と同様にして、利用者63の移動に追従して飛行移動する。利用者63が駐車場の車に乗り込んだことにより、利用者63は外乱が到達しない領域に入ったことを確認すると、防御装置1Bは、基地62に戻り、メモリ部111の撮像画像記憶部の記憶内容を消去して、次の利用のためのスタンバイ状態に戻る。
図13に、自動販売機61の処理動作の流れの例のフローチャートを示す。すなわち、自動販売機61は、まず、所定の料金の投入を受け入れたか否か判別し(ステップS201)、所定の料金の投入を受け入れたと判別したときには、ディスプレイ613の画面に、基地62に待機している利用中でない防御装置1Bの一覧を表示する(ステップS202)。この場合、利用中である防御装置1Bは、利用中である旨を表示するようにしてもよい。
そして、自動販売機61は、利用者63による防御装置1Bの選択を受け付けたか否か判別する(ステップS203)。このステップS203で、防御装置1Bの選択を受け付けてはいないと判別したときには、自動販売機61は、利用者63により取消操作がなされたか否か判別し(ステップS204)、取消操作がなされてはいないと判別したときには、ステップS203に戻って防御装置1Bの選択の受け付けを待つ。また、ステップS204で、利用者63により取消操作がなされたと判別したときには、自動販売機61は、投入された料金を返却して、処理動作を終了する。
また、ステップS203で、防御装置1Bの選択を受け付けたと判別したときには、自動販売機61は、カメラ614で、利用者63を撮像し(ステップS206)、その撮像画像情報と利用者63により選択された防御装置1Bの装置IDを含めて、当該防御装置1Bに向けて送信する(ステップS207)。次に、自動販売機61は、利用者63により選択された防御装置1Bの装置IDを含めて、起動情報を防御装置1Bに送信し(ステップS208)、処理動作を終了する。
この第3の実施形態によれば、利用者63は、単に、自動販売機61で料金を投入するだけで、防御装置1Bによる降雨などの外乱に対する防御サービスを受けることができる。そして、ショッピングセンターで買い物をした荷物やテーマパークのお土産を両手に持っている場合など、この第3の実施形態によれば、傘などを保持する必要がないので、両手で買い物をした物品などを運びながら、雨に濡れることなく、駐車場の車まで移動することができるので、非常に便利である。
なお、上述の第3の実施形態では、自動販売機61がカメラ614で、利用者63を撮像して、その撮像画像を防御装置1Bに送るようにしたが、起動情報を自動販売機61から受信した防御装置1Bが、自動販売機61の位置に飛来して、自動販売機61の前に居る利用者63を対象物カメラ109で撮像し、その撮像画像情報を対象物画像記憶部118に記憶することで、利用者63を、追従すべき移動対象物として認識するようにしてもよい。
[第4の実施形態]
第3の実施形態は、ショッピングセンターやテーマパークからの帰宅時に、駐車場に駐車している車までの移動における外乱に対する防御である。これに対して、第4の実施形態は、ショッピングセンターやテーマパークに到着して、駐車場に車を駐車したときにも、降雨などの外乱が発生していたときに、当該外乱の防御サービスを受けることを可能にした場合の例である。
図14は、この第4の実施形態の防御システムの全体の概略の構成例を示す図であり、この図14の例は、ショッピングセンターの場合の例である。
この図14の例においては、ショッピングセンターの建物70には、防御装置1Cの基地71を設けると共に、通信装置72を設ける。そして、駐車場の各駐車スペースには、それぞれの駐車スペースに車が駐車されたことを検知する駐車センサ装置73が設けられる。駐車センサ装置73は、自装置が監視する駐車スペースに車が駐車されたことを検知すると、自装置の識別情報としての装置IDを含む駐車検知信号を通信装置72に送信する。
通信装置72は、駐車場の各駐車スペースの位置情報と、それぞれの駐車スペースに設置されている駐車センサ装置73の装置IDとの対応を示すテーブル情報を記憶している。そして、通信装置72は、駐車センサ装置73から、その装置IDを含む駐車検知信号を受信すると、記憶しているテーブル情報を参照して、駐車検知信号を送ってきた駐車センサ装置73の位置情報を検知する。そして、通信装置72は、検知した位置情報を追従開始位置の位置情報として含む起動情報を、基地71に待機している防御装置1Cの一つを指定して送信する。
この起動情報を受信した防御装置1Cは、起動して、起動情報に含まれる位置情報を抽出して、その位置情報の駐車スペースに飛行移動する。そして、当該駐車スペースに駐車している車から降車してくる利用者の上空にホバリングして、当該利用者を対象物カメラ109で撮像し、その撮像画像情報を対象物画像記憶部118に、追従すべき移動対象物の撮像画像情報として記憶する。
そして、防御装置1Cは、その後、利用者の移動に追従して降雨などの外乱を防御しながら飛行移動する。そして、利用者がショッピングセンターの建物70内に入って、外乱が到達しない領域に入ったことを確認すると、防御装置1Cは、基地71に戻り、対象物画像記憶部118に記憶した撮像画像情報を削除して、スタンバイ状態に戻る。
この第4の実施形態における防御装置1Cの構成においては、メモリ部111の追従開始位置記憶部1112には、通信装置72から取得した位置情報を追従開始位置の位置情報として記憶し、スタンバイ状態に戻る際に、追従開始位置記憶部1112の記憶した位置情報を消去するようにする。その他の構成は、第3の実施形態で変形例として説明した例の防御装置1Bとほぼ同様である。
[第5の実施形態]
第4の実施形態においては、防御装置1Cは、自律して飛行移動する装置であったが、防御装置は、飛行移動ではなく、例えば空中に懸架されたレールに沿って移動するようにする装置でもよい。図15は、そのような構成の防御装置1Dを用いた第5の実施形態の防御システムの構成例を説明するための図である。この図15の例は、図14に示した第4の実施形態の防御システムと同様に、ショッピングセンターの駐車場に駐車した車の利用者が、防御装置1Dにより降雨などの外乱からの防御サービスを受ける場合である。
図15(A)は、上空から駐車場を見た図であり、また、図15(B)は、当該駐車場を、水平方向から見た図である。さらに、図15(C)は、防御装置1Dの駆動方法を説明するための図である。
図15(A)及び(B)に示すように、レール74が、ショッピングセンターの建物70近傍から、駐車場の各駐車スペースを横切るように配設されている。レール74は、適宜の位置において、支柱75により支持されている。そして、図15(B)に示すように、防御装置1Dは、レール74に対して支持アーム76により吊り下げられており、支持アーム76の下部に、傘部6D及び摺動移動駆動制御ユニット3Dを備える。
図15(C)は、レール74の断面及びこのレール74内に収納される支持アーム76の先端に設けられている摺動移動機構部77を説明するためのものである。この図15(C)に示すように、レール74は、内部が中空で、断面形状がほぼ四角形の筒状体であり、下方に、支持アーム76がレール74に沿って移動することができるスリット74aを備える。
そして、支持アーム76の先端に設けられている摺動移動機構部77は、車軸771の両端に車輪772,773を備えると共に、支持アーム76と車軸771との連結部に設けられる車軸回転部774を備える。車軸回転部774においては、図示は省略するが、摺動移動駆動制御ユニット3Dの駆動力が、支持アーム76の内部に設けられるリンク機構を通じて、摺動移動機構部77に伝達され、この摺動移動機構部77により車軸771が、前進方向及び後進方向に回転させられるように構成されている。摺動移動機構部77は、周知の技術を用いて構成することができるので、ここでは詳細な説明は省略する。
そして、防御装置1Dの摺動移動駆動制御ユニット3Dは、ショッピングセンターの建物70側に設けられる通信装置72との間で、無線送信を行う機能を有し、通信装置72からの起動情報を受けて、自律的に前進移動(ショッピングセンターの建物70から駐車場へ向かう方向の移動)及び後進移動(駐車場からショッピングセンターの建物70へ向かう方向の移動)する。
この第5の実施形態の防御装置1Dの摺動移動駆動制御ユニット3Dの電気的構成は、前述の第4の実施形態の防御装置1Cと比較すると、防御装置1Cの空中飛行機構部2の代わりに、防御装置1Dでは、摺動移動機構部77が設けられるので、防御装置1Cの空中飛行駆動部102に代えて、摺動移動駆動部が設けられる点が異なるのと、傘部6Dの傾き角及び傾き方向を制御する機構が異なるのみで、その他の構成は、ほぼ同様である。なお、傘部6Dの傾き角及び傾き方向を制御する機構は、周知の機構を用いることができるので、ここではその説明は省略する。
そして、この図15の例においては、図15(A)及び(B)に示すように、利用者の車が駐車スペースのいずれかに駐車すると、その駐車スペースの駐車センサ装置73は、自装置が監視する駐車スペースに車が駐車されたことを検知し、自装置の識別情報としての装置IDを含む駐車検知信号を通信装置72に送信する。
通信装置72は、駐車センサ装置73から、その装置IDを含む駐車検知信号を受信すると、記憶しているテーブル情報を参照して、駐車検知信号を送ってきた駐車センサ装置73の位置情報を検知する。そして、通信装置72は、検知した位置情報を追従開始位置の位置情報として含む起動情報を、当該駐車スペースに配設されているレール74に装着されて待機している防御装置1Dの一つを指定して送信する。
この起動情報を受信した防御装置1Dは、起動して、起動情報に含まれる位置情報を抽出して、その位置情報の駐車スペースに、レール74に沿って摺動移動する。そして、当該駐車スペースに駐車している車から降車してくる利用者の上空に待機して、当該利用者を対象物カメラ109で撮像し、その撮像画像情報を対象物画像記憶部118に、追従すべき移動対象物の撮像画像情報として記憶する。
そして、防御装置1Dは、その後、利用者の移動に追従して降雨などの外乱を防御しながら摺動移動する。この時、防御装置1Dは、傘部6Dの位置及び姿勢を、前述と同様にして、移動対象物に対する外乱の防御が適切になるように制御する。そして、利用者がショッピングセンターの建物70内に入って、外乱が到達しない領域に入ったことを確認すると、防御装置1Dは、所定の基地位置に戻り、対象物画像記憶部118に記憶した撮像画像情報を削除して、スタンバイ状態に戻る。そして、防御装置1Dは、メモリ部111の追従開始位置記憶部1112に記憶した通信装置72から取得した駐車スペースの位置情報を消去するようにする。
なお、この図15の例においては、レール74を敷設して、そのレール74に沿って、防御装置1Dを自律的に移動させるようにしたが、防御装置を、自律的に移動させるのでは、なく、ロープなどで、引っ張ることにより、前進及び後進させるように構成することもできる。その場合には、通信装置により、防御装置に懸架されているロープを引っ張るロープ牽引駆動装置に対して駆動制御信号を送るようにする。そして、ロープ牽引駆動装置は、防御装置から、その対象物カメラ109からの撮像情報を取得し、その撮像情報を監視しながら、防御装置を駆動制御するように構成する。この例の場合、防御装置自身は、傘部の位置及び姿勢を制御する機構を備えるようにすればよい。
[第6の実施形態]
以上説明した実施形態では、外乱として、降雨や降雪などを想定したが、前述したように、防御装置が防御する対象の外乱は、日光や紫外線、その他の場合もある。以下に説明する第6の実施形態は、プールサイドなどや海辺の砂浜で、日光や紫外線から利用者を防御する場合の防御装置の例である。
図16は、この第6の実施形態の防御システムの構成例を示す図であり、この例は、プールサイドに設けられる日除け用のパラソルとして、実施形態の防御装置1Eを用いる場合である。
すなわち、図16に示すように、この第6の実施形態においては、プール81の周囲のプールサイドには、複数台のデッキチェア82が設置されている。そして、それぞれのデッキチェア82に付随して、防御装置1Eの基地83が設けられる。基地83は、支柱831に、防御装置1Eが着陸することができる大きさの平板からなる着陸台832が設けられた構成である。
防御装置1Eは、図10に示したものと同様の構成を有し、起動情報を受信することにより、起動する。ただし、この第6の実施形態では、メモリ部111の基地位置記憶部1111には、それぞれの防御装置1Eの基地83の位置の位置情報が記憶されていると共に、追従開始位置記憶部1112には、それぞれの基地83の位置情報が記憶されている。そして、防御装置1Eの傘部6Eは、それぞれのデッキチェア82に座る、あるいは、寝転ぶ利用者84の全体を、日射及び紫外線から防御することができる大きさで構成されている。そして、防御装置1Eの位置姿勢制御信号生成部116は、太陽の位置に応じて、傘部6Eの傾斜方向及び傾斜角を変更制御することができる姿勢制御機能を備えると共に、降雨などの際には、当該降雨を防御するために適切となるように位置及び姿勢を制御する機能を備える。この傘部6Eについての姿勢制御のための機構としては、第1の実施形態のように、飛行状態で姿勢制御するのではなく、基地83に位置している状態において、前述の第5の実施形態と同様にして、傘部6Eについての姿勢制御を行うことができるように構成してもよい。
そして、この第6の実施形態においては、デッキチェア82のそれぞれには、防御装置1Eに対する起動情報の送信装置85が設けられる。この送信装置85は、デッキチェア82に、利用者84が座ったり、寝転んだりしたことを検知するセンサと接続されており、そのセンサで、デッキチェア82に利用者84が座ったり、寝転んだりしたことを検知したときに、防御装置1Eに対する起動情報を送信する。送信装置85と接続されるセンサとしては、デッキチェア82に加わる圧力を検出するセンサが、この例では、用いられる。しかし、この送信装置85と接続されるセンサは、デッキチェア82を利用する利用者84を検出することができればよいので、人感センサであってもよい。
防御装置1Eは、この送信装置85からの起動情報を受信して、起動し、対象物カメラ109で利用者84を撮像して、その撮像画像情報を、追従して移動すべき移動対象物の撮像画像情報として、対象物画像記憶部118に記憶する。
したがって、利用者84が、図16に示すように、デッキチェア82から離れて移動すると、防御装置1Eは、その移動に追従して飛行移動する。そして、防御装置1Eは、利用者84が屋内に入って、外乱としての日差しが利用者84に到達しない状態を検出すると、自装置の基地83に戻り、対象物画像記憶部118に記憶していた利用者の撮像画像情報は消去する。
なお、この例の場合、防御装置1Eは、利用者84がプール81内に入って泳いでいるときには、その上空を覆って日差し遮るように動作する。しかし、利用者84がプール81に入った時には、防御する必要がない状態であるとして、基地83に戻るように構成してもよい。
[その他の実施形態又は変形例]
上述した第1〜第4の実施形態及び第6の実施形態の防御装置は、いわゆるクワッドコプターに、傘部を取り付けた構造の空中飛行機構部2を備える構成としたが、空中飛行機構部2は、クワッドコプターの構成に限られるものではなく、傘部を備えて、移動対象物の上空をホバリングしたり、飛行したりできるものであれば、どのような機構であってもよい。
また、移動対象物は、上述の実施形態では、人物としたが、人物に限られるものではなく、動物でもよく、また、例えば無線による遠隔操作で移動する台車に載せられて移動する荷物などについての防御の場合にも、この発明の防御装置及び防御システムが適用可能である。
また、上述の実施形態においては、外乱として、降雨、降雪、日光、紫外線などについて説明したが、外乱としては、傘部により防御できるものであれば、どのようなものでも対象とすることができ、例えば、前述もしたように、雨、雪、霰、霙、雹、日光、紫外線、さらには、粉塵、埃、煙、排気ガス、火山灰、花粉などを防御対象の外乱とすることができる。
また、第1の実施形態〜第3の実施形態では、防御装置の起動情報を発生するトリガーとしては、利用者や係員などがボタン操作をする場合を例に説明したが、タッチパネルにおける操作、音声操作、または、ジェスチャー操作に応じて起動情報を発信するようにしてもよい。
また、上述の実施形態においては、外乱が到達しない領域や建物に入ったことを検出したら、防御装置は、追従移動終了と判断していたが、それに限らず、降雨センサで雨、雪、霰、霙、雹、が止んだことを検出するなど、外乱検出センサで外乱の存在が所定時間以上無いことを検出して追従移動終了と判断してもよい。なお、外乱検出センサとして、外乱が日光の場合は光センサ、紫外線の場合は紫外線センサ、粉塵や埃の場合は塵埃センサ、煙の場合は煙センサ、排気ガスの場合はガスセンサ、火山灰の場合は火山灰用の粒子センサ、花粉の場合は花粉センサなどを用いる。