JP6614751B2 - 燃料噴射制御方法及びコモンレール式燃料噴射制御装置 - Google Patents
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Description
このような多段噴射を用いる燃料噴射制御においては、特に、近年における各噴射における指示噴射量やトータルの噴射量の低下傾向を考慮し、微小噴射における噴射制御の安定性、信頼性の確保等の観点から、次述するように、所定の条件下において、噴射パターンを変更する制御が導入されている。
そして、上述の各噴射におけるいずれかの指示噴射量が、レール圧等に基づいて定められる最小噴射量を下回る場合には、優先度の低い順から噴射を消失させ、新たな噴射パターンに変更されて噴射が行われる。
ここで、最小噴射量に対する脈動補正は、脈動補正量が負の値となった場合に適用されるものとなっており、レール圧等に基づいて定められる本来の最小噴射量から脈動補正量を減算した値が脈動補正を施した最小噴射量とされる。したがって、脈動補正量が負の値を採る場合は、結果的に最小噴射量に脈動噴射量が加算されることとなるため、脈動補正が施された指示噴射量が補正後の最小噴射量を下回ることがある。
この後、引き続き、パイロット噴射2段、メイン噴射の噴射パターンが選択されると、先に述べたように脈動補正が行われ、いずれかの噴射における指示噴射量が最小噴射量を下回ると、先に述べたと同様に、再び、2段目のパイロット噴射とメイン噴射の噴射パターンに変更されて噴射が行われることとなる。
かかるトグリング現象は、正常時とは異なるエンジンの振動、音を発生させ、乗員の運転フィーリング悪化を招く原因となるばかりでなく、トグリング現象発生状態において噴射パターンの切り替わりの際に噴射タイミングも変化し、トグリング現象発生中の燃料噴射の安定性、信頼性のさらなる低下を招くこととなる。
多段噴射における各噴射に優先度が設定され、前記各噴射における指示噴射量が所定の最小噴射量を下回る場合に優先度の低い噴射から該当する噴射を消失可能とする燃料噴射制御が実行可能に構成されてなるコモンレール式燃料噴射制御装置における燃料噴射制御方法であって、
アクセルが開放されて燃料噴射が停止された無噴射状態からアイドリング状態へ遷移する際に、エンジン回転数がアイドリング目標回転数を下回る間、前記最小噴射量を無効とするよう構成されてなるものである。
また、上記本発明の目的を達成するため本発明に係るコモンレール式燃料噴射制御装置は、
内燃機関の運転状態に応じて電子制御ユニットによる制御により燃噴射弁による前記内燃機関への多段噴射が可能に構成されると共に、前記多段噴射における各噴射に優先度が設定され、前記各噴射における指示噴射量が所定の最小噴射量を下回る場合に優先度の低い噴射から該当する噴射を消失せしめる燃料噴射制御が前記電子制御ユニットにより実行可能に構成されてなるコモンレール式燃料噴射制御装置であって、
前記電子制御ユニットは、
アクセルが開放されて燃料噴射が停止された無噴射状態からアイドリング状態へ遷移する際に、エンジン回転数がアイドリング目標回転数を下回る間、前記最小噴射量を無効とするよう構成されてなるものである。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態における燃料噴射制御方法が適用されるコモンレール式燃料噴射制御装置の構成例について、図1を参照しつつ説明する。
かかる構成自体は、従来から良く知られているこの種のコモンレール式燃料噴射制御装置の基本的な構成と同一のものである。
かかる構成において、燃料タンク9の燃料は、供給ポンプ5により汲み上げられ、調量弁6を介して高圧ポンプ7へ供給されるようになっている。調量弁6には、電磁式比例制御弁が用いられ、その通電量が電子制御ユニット4に制御されることで、高圧ポンプ7への供給燃料の流量、換言すれば、高圧ポンプ7の吐出量が調整されるものとなっている。
また、供給ポンプ5は、高圧ポンプ装置50の上流側に高圧ポンプ装置50と別体に設けるようにしても、また、燃料タンク9内に設けるようにしても良いものである。
燃料噴射弁2−1〜2−nは、エンジン3の気筒毎に設けられており、それぞれコモンレール1から高圧燃料の供給を受け、電子制御ユニット4による噴射制御によって燃料噴射を行うようになっている。
最初に、本発明の実施の形態において前提となる従来の燃料噴射制御について概括的に説明する。
まず、本発明の実施の形態におけるコモンレール式燃料噴射制御装置における1機関サイクルにおける燃料噴射は、パイロット噴射、又は、ポスト噴射と主噴射が組み合わされて複数の噴射が行われるいわゆる多段噴射であることを前提とする。
さらに、先の最小噴射量の設定や各噴射の指示噴射量の設定においては、先に背景技術の欄で述べた従来の燃料噴射量補正技術の一つである、脈動補正が行われるようになっていることを前提とする。
次いで、アクセルが開放(アクセルオフ)されているか否か、換言すれば、アクセル開度が零であるか否かが判定される(図2のステップS100参照)。
ステップS100において、アクセルオフと判定された場合(YESの場合)、次述するステップS150の処理へ進む一方、アクセルオフではないと判定された場合(NOの場合)には、無噴射状態ではないとしてエンジン3の動作状態に応じて従来同様に別途設定される最小噴射量が有効とされる(図2のステップS450参照)。
次いで、ローアイドルガバナ(LIガバナ)と称される制御処理が実行状態(アクティブ)にあるか否かが判定され(図2のステップS200参照)、LIガバナはアクティブであると判定された場合(YESの場合)には、次述するステップS250の処理へ進む一方、LIガバナはアクティブではないと判定された場合(NOの場合)には、先に述べたステップS450の処理へ進むこととなる。
次いで、ステップS150において取得されたエンジン回転数(実回転数)とステップS250において取得されたLI目標回転数との差分算出が行われる(図2のステップS300参照)。すなわち、差分は、エンジン3の実回転数からLI目標回転数を減算した結果として求められる。
そして、その算出された差分(以下、説明の便宜上「回転数差分」と称する)が予め設定された閾値Rthを越えているか否かが判定される(図2のステップS350参照)。換言すれば、エンジン3の実回転数からLI目標回転数を減算した結果が閾値Rthより大であるか否かが判定される。
すなわち、エンジン回転数と目標回転数の回転数差分が閾値Rthを越えている状態においては、最小噴射量の設定を有効とした場合、燃料噴射パターンのトグリング現象が生ずる可能性があるため、これを抑圧、回避して安定した燃料噴射制御を確保する観点から、通常時の最小噴射量の設定が無効とされる。
その結果、指示噴射量が最小噴射量を下回った場合に優先度の低い燃料噴射から順に当該燃料噴射を消失させるという先に説明したような従来の燃料噴射制御が一時的に停止されることとなる。
なお、本発明の実施の形態においては、通常時の最小噴射量の設定が無効とされると同時に、最小噴射量が零に設定されるものとなっている。
燃料噴射パターンのトグリング現象は、特に、アイドリング状態への遷移過程において生じ易い。
例えば、エンジンの運転状態等に基づいて噴射パターンとして、パイロット噴射2段の後、メイン噴射が行われる噴射パターンが選択されたとする。
この噴射パターンにおいては、各噴射の優先度が予め設定されており、例えば、優先度の高い順に、メイン噴射、2段目のパイロット噴射、1段目のパイロット噴射と優先度が定められているとする。
この例の場合、メイン噴射に対して脈動補正が適用されるとして、その補正量は−0.5mg/stと定められたとする。
この時のメイン噴射に対する指示噴射量は、上述のように1mg/stであるので、最小噴射量を下回ることとなり、優先度の最も低い1段目のパイロット噴射が消失され、噴射パターンは、2段目のパイロット噴射とメイン噴射に変更される。また、この際、トータルの噴射量が先の3mg/stとなるように、エンジンの運転状態に応じて、2つの噴射に対する指示噴射量が再設定されて噴射が実行されることとなる。
この場合、エンジンの3の運転状態等に基づいて、ローアイドルガバナ制御により指示噴射量の増加が行われたとする。その結果、脈動補正が行われても、指示噴射量が最小噴射量を下回ることが無ければ、パイロット噴射2段、メイン噴射の噴射パターンで噴射が行われる。
このようにして、2つの噴射パターンが交互に繰り返される現象がトグリング現象である。
この最小噴射量の設定手順は、基本的に従来と同様のものである。
電子制御ユニット4による処理が開始されると、最初にレール圧の取得が行われる(図3のステップS500参照)。
次いで、最小噴射量ベース値の取得が行われる(図3のステップS510参照)。
なお、最小噴射量ベース値読み出しマップにおける入力パラメータとしてのレール圧は離散的に設定されたものであるので、設定外のレール圧に対する最小噴射量ベース値は、例えば、補間法などにより算出するのが好適である。
そして、脈動補正量が負の値であると判定された場合(YESの場合)には、次述するステップS530の処理へ進む一方、脈動補正量は負の値ではない、すなわち、正の値であると判定された場合(NOの場合)には、最小噴射量に対する脈動補正は行われず、先のステップS510で得られた最小噴射量ベース値がこの時点の最新の最小噴射量として確定されて用いられることとなり(図3のステップ540参照)、この一連の処理が終了される。
すなわち、本発明の実施の形態においては、最小噴射量ベース値から脈動補正量が減算され、その減算結果が脈動補正を施した最小噴射量とされ(図3のステップS540参照)、一連の処理が終了されることとなる。
ここで、最小噴射量ベース値に対する脈動補正の例を挙げれば、例えば、最小噴射量ベース値が0.9mg/st、脈動補正量が−0.5mg/stであるとすると、脈動補正後の最小噴射量は、0.9−(−0.5)=1.4mg/stとなる。
2−1〜2−n…燃料噴射弁
3…エンジン
4…電子制御ユニット
Claims (6)
- 多段噴射における各噴射に優先度が設定され、前記各噴射における指示噴射量が所定の最小噴射量を下回る場合に優先度の低い噴射から該当する噴射を消失可能とする燃料噴射制御が実行可能に構成されてなるコモンレール式燃料噴射制御装置における燃料噴射制御方法であって、
アクセルが開放されて燃料噴射が停止された無噴射状態からアイドリング状態へ遷移する際に、エンジン回転数がアイドリング目標回転数を上回る間、前記最小噴射量を無効とすることを特徴とする燃料噴射制御方法。 - 前記最小噴射量は、レール圧に応じて定められる最小噴射量ベース値に脈動補正が施されて求められ、
前記脈動補正は、1機関サイクル中の先行する燃料噴射と後行する燃料噴射との間に生ずる燃料圧力の脈動による噴射量変化を低減する燃料噴射量補正であることを特徴とする請求項1記載の燃料噴射制御方法。 - 前記最小噴射量に対する脈動補正は、補正量が負の値の場合に適用され、前記最小噴射量からの前記補正量の減算として行われるものであることを特徴とする請求項2記載の燃料噴射制御方法。
- 内燃機関の運転状態に応じて電子制御ユニットによる制御により燃噴射弁による前記内燃機関への多段噴射が可能に構成されると共に、前記多段噴射における各噴射に優先度が設定され、前記各噴射における指示噴射量が所定の最小噴射量を下回る場合に優先度の低い噴射から該当する噴射を消失せしめる燃料噴射制御が前記電子制御ユニットにより実行可能に構成されてなるコモンレール式燃料噴射制御装置であって、
前記電子制御ユニットは、
アクセルが開放されて燃料噴射が停止された無噴射状態からアイドリング状態へ遷移する際に、エンジン回転数がアイドリング目標回転数を上回る間、前記最小噴射量を無効とするよう構成されてなることを特徴とするコモンレール式燃料噴射制御装置。 - 前記電子制御ユニットは、
前記最小噴射量を、レール圧に応じて定められる最小噴射量ベース値に脈動補正を施して算出可能に構成されてなり、
前記脈動補正は、1機関サイクル中の先行する燃料噴射と後行する燃料噴射との間に生ずる燃料圧力の脈動による噴射量変化を低減する燃料噴射量補正であること特徴とする請求項4記載のコモンレール式燃料噴射制御装置。 - 前記電子制御ユニットは、
前記最小噴射量に対する脈動補正を、前記脈動補正における補正量が負の値の場合に、前記最小噴射量からの前記補正量の減算として実行するよう構成されてなることを特徴とする請求項5記載のコモンレール式燃料噴射制御装置。
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