以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
第1実施形態.
図1は、第1実施形態に係る止水構造における止水部材10の斜視図であり、設置時に扉12(図3参照)に面する側の第一の部分14及び第二の部分16が見えている図である。また、図2は、止水部材10を設置した場合に扉12に面しない側(屋内側)の第一の部分14及び第二の部分16が見えている斜視図である。図3は、不図示の構造物の開口部に固定されるドア枠18と当該ドア枠18に取り付けられた扉12の斜視図である。図3の場合、扉12は、開口部の一方(例えば屋内側)と他方(例えば屋外側)とを仕切ることができる例えば外開き型の扉である。ドア枠18には、扉12が閉じられたときに当該扉12に対して開口部の一方(屋内側)に位置され開口部の他方(屋外側)を向いた支持面が形成されている。支持面は、例えば、ドア枠18の下部枠部分と縦枠部分に形成される。ドア枠18の下部枠部分には、例えば、扉12が閉じられたときに扉12の下縁部12aが向き合う下部戸当り18aが支持面として形成される。また、ドア枠18の縦枠部分には、扉12が閉じられたときに扉12の側縁部12bが向き合う縦戸当り18bが支持面として形成される。なお、図3の場合、扉12とドア枠18とが接続される蝶番が設けられた側の縦戸当り18bのみが図示され、ドア枠18を閉じた場合にノブ20に近い側の縦戸当り18bは不図示である。扉12を閉じられた場合に、各戸当りと扉12との間には、隙間(後述する第一の隙間A)が形成されるようになっている。なお、図3では、例えば、下部戸当り18a、左右の縦戸当り18b及びドア枠18の上部に形成された上部戸当り(不図示)には、不図示のパッキン(シール部材)が取り付けられてもよい。そして、扉12が閉じられたときに扉12がパッキンに接触する、またはパッキンを押し潰すことにより、各戸当りと扉12との間に形成される第一の隙間Aを減少させて(第一の隙間Aをシールして)、屋内の気密性を向上できるようになっていてもよい。
図1、図2に戻り、止水部材10は、第一の部分14と第二の部分16とを備える。第一の部分14は、止水部材10を構造物の開口部、すなわちドア枠18に設置する場合に、各戸当りと扉12との間に形成される第一の隙間Aに挿入される部分である。具体的には、第一の部分14のうちドア枠18の幅方向に沿って形成された下部挿入部14aは、扉12が閉じられることにより、下部戸当り18aと下縁部12a(図3参照)とによって挟持される。同様に、第一の部分14のうちドア枠18の縦方向に沿って形成された縦挿入部14bは、扉12が閉じられることにより、縦戸当り18bと側縁部12bとによって挟持される。
第二の部分16は、第一の部分14よりも扉12の周縁部から一方側(屋内側)に離れて位置される。つまり、扉12の周縁部である下縁部12a及び側縁部12bに挟持される第一の部分14より第二の部分16は屋内側に位置される。第二の部分16は、扉12の下部(例えば扉12の下端から60cm)の一方側(屋内側)で、第一の隙間Aよりも大きい第二の隙間Bをあけて面するように構成されている。止水部材10は、図1に示すように、扁平の第二の部分16の周縁部のうちドア枠18の幅方向に沿って、第二の部分16と直交するように幅方向縁部16aに連設された底壁部22aと、ドア枠18の縦方向に沿って、第二の部分16と直交するように縦方向縁部16bに連設された側壁部22bとを備える。このように、第二の部分16及びそれに直交する底壁部22aと側壁部22bとによって、止水部材10がドア枠18に設置されて扉12と対面したときに第二の隙間Bが形成される。そして、底壁部22aの一端側に下部挿入部14aが縦方向に突出するように接続されている。つまり、下部挿入部14aは、底壁部22aにおいて第二の部分16から遠い側に形成されたフランジである。同様に、側壁部22bの一端側に縦挿入部14bが幅方向に突出するように接続されている。つまり、縦挿入部14bは、側壁部22bにおいて第二の部分16から遠い側に形成されたフランジである。つまり、このフランジ(下部挿入部14a及び縦挿入部14b)が第一の隙間Aに挿入される。
また、下部挿入部14aの一方側及び縦挿入部14bの一方側、すなわちドア枠18に設置した場合に屋内側に向く側には、シール部材24が固定されている。シール部材24については、後述するが、例えば、柔軟性(可撓性、弾性)を有する材料、例えば合成樹脂材料(ゴム、エラストマ、柔軟性樹脂等)で形成されている。例えば、独立発泡型の気泡を多く含むゴム材料で、温度変化に対する劣化が少なく、耐摩耗性のある材料で構成することが望ましい。一例として、エプトシーラー(登録商標)等を利用することができる。
また、止水部材10は、第二の部分16において、底壁部22aから縦枠(高さ)方向に離れた位置に止水部材10を運搬するときやドア枠18に設置する際に手指を挿入して持ち上げる開口部26が例えば左右2カ所に形成されている。止水部材10が扉12に対面したときでも、第二の隙間Bが存在するため開口部26に利用者は手指を挿入し易く、容易に止水部材10を運搬したり、ドア枠18に設置する際に位置決めすることができる。なお、開口部26に代えて、または加えて例えば第二の部分16の一方側(屋内側)や第二の部分16の上端部(上面部)に取っ手を設けてもよい。また、止水部材10にストラップ等を付けてもよく、同様の効果を得ることができる。
止水部材10は、例えば、扁平な金属板(例えば、鉄板やステンレス板)を曲げ加工するとともに、適宜溶接等を行うことで形成することができる。また、止水部材10は、樹脂(例えば、繊維強化プラスチック等)を用いて成形してもよい。
このように構成される止水部材10の設置例を図4〜図6を用いて説明する。図4は、止水部材10の設置状態を示す図であり、開口部の他方側(屋外側)から見た場合の斜視図である。図5は、止水部材10の設置状態を示す横断面図である。また、図6は、止水部材10の設置状態を示す縦断面図である。
図4に示すように、止水部材10は、扉12が開かれた状態(屋外側に外開きの状態)のときに、ドア枠18の開口部に設置される。すなわち、扉12が閉じられたときに当該扉12の下縁部12aと下部戸当り18aとの間及び側縁部12bと縦戸当り18bとの間に形成される第一の隙間Aに第一の部分14が挿入されるように設置される。具体的には、止水部材10の第一の部分14のうち下部挿入部14aが下部戸当り18aに当接するように挿入され、縦挿入部14bが縦戸当り18bに当接するように挿入される。この場合、止水部材10は、第一の部分14が第二の部分16より屋外側になるような姿勢(向き)で支持されて、屋外側から下部戸当り18a、縦戸当り18bに当接するような姿勢で設置される。前述したように、第一の部分14より第二の部分16が屋内側に位置するので、止水部材10の重心が当該止水部材10をドア枠18に寄りかからせるような位置に存在するので、止水部材10の設置時に止水部材10は自立し易く、屋外側に倒れにくくなる。その結果、設置準備時の取り扱いが容易になる。また、止水部材10が設置し易くなり、設置機能性が改善(向上)される。
第一の隙間Aに止水部材10を挿入した後、図5、図6に示すように、扉12を閉じる。扉12を閉じることにより、下縁部12aが下部戸当り18aに対面し、側縁部12bが縦戸当り18bに対面する。前述したように、下部戸当り18a、縦戸当り18b、上部戸当り18cには、パッキン28(シール部材)が配置され、扉12が閉じられたときに、パッキン28に接触する、またはパッキン28が変形するようになっている。図6の場合、例えば、扉12の上縁部12cが上部戸当り18cに配置されたパッキン28を変形させて、気密性の向上(すきま風等の侵入抑制)を行っている。下縁部12aおよび側縁部12bも同様にパッキン28を変形させて気密性の向上に寄与できる。
扉12の下部Cにおける第一の隙間Aは、止水部材10の第一の部分14が挿入されるとパッキン28が更に変形して(潰れて)第一の隙間Aにおける止水部材10の第一の部分14の挿入状態を許容する。図5に示すように、縦挿入部14bに固定されたシール部材24が縦戸当り18bに固定されたパッキン28に当接して、互いにまたは一方が弾性変形する。同様に、図6に示すように、下部挿入部14aに固定されたシール部材24が下部戸当り18aに固定されたパッキン28に当接して、互いにまたは一方が弾性変形する。その結果、パッキン28は、止水部材10の第一の部分14が介在しない場合に比べて大きく変形する。そして、ドア枠18、第一の部分14(止水部材10)、扉12の三者の密着性(水密性)が向上される。つまり、仮に扉12の他方側(屋外側)で冠水した場合でも、シール部材24及びパッキン28により止水部材10の一方側(屋内側)がシール(止水)されるので、止水部材10の周囲から屋内側へ水が浸入することが抑制できる。
なお、図5、図6の例では、シール部材24及びパッキン28を用いる場合を示したが、いずれか一方、または両方を省略してもよい。例えば、構造物の仕様によっては、ドア枠18側のパッキン28がない場合がある。このような場合は、ドア枠18と第一の部分14との間のシールをシール部材24のみで行うようにしてもよい。この場合も、第一の隙間Aに、第一の部分14及びシール部材24が介在する(挟み込まれる)ことにより、ドア枠18、第一の部分14(止水部材10)、扉12の三者の密着性(水密性)を向上させることができる。逆に、例えば、第一の部分14のシール部材24を省略してもよい。この場合、ドア枠18のパッキン28に直接第一の部分14を接触させることになる。パッキン28は第一の部分14が介在する場合、第一の部分14が介在しない場合に比べてより圧縮させられるので、ドア枠18、第一の部分14(止水部材10)、扉12の三者の密着性(水密性)を向上させることができる。また、扉12は、一般的に金属等で形成されたフレームの表面を薄板材で覆うことによって構成されている。したがって、扉12は厚み方向に僅かに弾性変形可能である場合がある。このような場合は、シール部材24及びパッキン28の両方を省略することができる。この場合、止水部材10が設置されない場合の第一の隙間Aの寸法より僅かに第一の部分14の厚み寸法を大きくする。その結果、扉12の弾性変形を利用して、ドア枠18と扉12とによって直接第一の部分14を挟持する。この場合もドア枠18、第一の部分14(止水部材10)、扉12の三者の密着性(水密性)を向上させることができる。
なお、止水部材10の第二の部分16は、扉12の幅方向で構造物(ドア枠18)に接する位置まで延設してもよい。例えば、図5に示すように、止水部材10の幅W1(対向する側壁部22bの外面間距離)は、ドア枠18(開口部)の開口幅W0より僅かに大きくすることができる。つまり、ドア枠18に止水部材10を設置する場合、止水部材10を僅かに幅方向に圧縮させながら圧入状態で設置するようにしてもよい。このように、圧入状態で設置することにより、止水部材10の設置姿勢が安定する。また、後述するが、冠水状態で扉12を開けて屋外に出る場合でも、止水部材10がドア枠18から外れ難くなる。つまり、冠水時に扉12を開けた場合でも屋内側に水が浸入することが抑制され、利用者に安心感を与えやすくなる。なお、他の実施例では、止水部材10の幅W1をドア枠18の開口幅W0と同等または開口幅W0より小さくしてもよい。この場合、ドア枠18の所定位置に止水部材10を設置し易くなり(単に置くだけになり)、固定はもっぱら扉12とドア枠18とによる挟持により行われる。この場合、止水部材10の設置及び取り外し時の作業が容易になるというメリットがある。
図7は、止水部材10のシール部材24の固定位置を示す斜視図である。シール部材24は、第一の部分14(下部挿入部14a、縦挿入部14b)の一方側(屋内側)のみに設けられる。また、シール部材24は、第一の部分14の外縁部14cから離れた位置に固定されている。つまり、下部挿入部14aに固定されるシール部材24は、外縁部14cより底壁部22aに近い位置に固定されている。同様に、縦挿入部14bに固定されるシール部材24は、外縁部14cより側壁部22bに近い位置に固定されている。このように、シール部材24を外縁部14cから離れた位置に固定することにより、例えば止水部材10の保管時に、シール部材24が他の物体(例えば床や壁)と接触する可能性が低減できる。その結果、保管時のシール部材24の劣化を軽減できる。例えばシール部材24が保管時に壁や床に接触して長時間圧縮変形した状態が継続され弾性力(復元力)が低下してしまうことが抑制できる。なお、止水部材10を保管する場合は、図7に示すように下部挿入部14aが上方になるように、設置時とは逆さまにして保管することが望ましい。また、この場合、第一の部分14に対して第二の部分16が離れた位置に存在するので、立て掛けやすく保管しやすいというメリットもある。なお、図7の場合、方形(平帯状)のシール部材24を第一の部分14(下部挿入部14a、縦挿入部14b)に配置(固定)する例を示した。別の実施例においては、シール部材24が底壁部22aや側壁部22bまで跨いで配置(固定)されるようにしてもよい。例えば、断面形状が略L字形状のシール部材24を用いて、下部挿入部14aと底壁部22aとの両方を跨ぎシールするようにしてもよい。同様に、縦挿入部14bと側壁部22bとの両方を跨ぎシールするようにしてもよい。この場合、ドア枠18(戸当り)との密着性が更に増し、シール性をより向上させることができる。なお、下部挿入部14aと底壁部22aに別々のシール部材を配置(固定)してもよい。また、一方を止水部材10側、他方をドア枠18側に配置するようにしてもよく、同様の効果を得ることができる。
ところで、扉12が閉じられた状態で、扉12の他方側(屋外側)が冠水した場合、扉12の屋外側に水圧が作用して扉12が容易に開けない場合があるという問題がある。例えば、屋外の冠水が初期の段階では、構造物内(屋内)に避難している場合が多い。一方、冠水が所定値を越えた場合には、より安全な避難場所に移動することが望ましい場合がある。そこで、第1実施形態の止水部材10は、扉12が閉じた状態で、かつ止水部材10がドア枠18に設置された状態で、扉12の他方側(屋外側)から水(冠水した水)を止水部材10と扉12との間に導入できるように、第二の部分16が第二の隙間Bを形成している。
扉12は、ドア枠18に対して開閉自在とするために、一般的にドア枠18と扉12の下面部12d、側面部12e、上面部12fとの間には隙間が形成されている。例えば、図5に示すように、側面部12eとドア枠18との間には、縦隙間Dが形成されている。同様に、図6に示すように、下面部12dとドア枠18との間には、下部隙間Eが形成されている。そのため、冠水した水の一部は、ドア枠18と扉12との間を通過することができる。図5、図6に示すように、扉12の下縁部12aと下部挿入部14aとが当接し、側縁部12bと縦挿入部14bとが当接するが、扉12の表面は完全な平面ではなく、凹凸が存在する場合がある。例えば、意匠性の向上のために縦縞等のような凹凸の模様が付与されている場合がある。また、第1実施形態の止水部材10の場合、下縁部12aと下部挿入部14aとの間や側縁部12bと縦挿入部14bとの間にはシール部材を介在させない。そのため、図8に示すように下部隙間E(及び縦隙間D)から浸入した水は、下縁部12aと下部挿入部14aとの間(及び側縁部12bと縦挿入部14bとの間)を通り、矢印Qで示すように、止水部材10の第二の部分16、底壁部22a、側壁部22b及び扉12の一方側の面(屋内側の面)で囲まれた空間(第二の隙間B)に意図的に浸入させられる。
この場合、下部隙間E(及び縦隙間D)を通過して浸入する水の流れは、扉12の他方側(屋外側)の水頭高さと扉12の一方側(屋内側)の第二の隙間Bにおける水頭高さとが同じになった時点で停止する。この場合、扉12の他方側(屋外側)の水圧P1と扉12の一方側(屋内側)の第二の隙間Bにおける水圧P2とがつり合う(打ち消し合う)。その結果、扉12は、水中に浸かっている場合と同じ状態になり、扉12に作用する力は水の抵抗のみになり容易に開くことができる。その結果、構造物の屋内側にいた利用者は、扉12を開き屋外に移動することが可能になる。なお、この場合もドア枠18と止水部材10の第一の部分14との水密状態は、シール部材24やパッキン28により維持されるので、水が屋内側に浸入してしまうことが抑制できる。また、扉12が開かれた場合、それまでドア枠18に対して第一の部分14を押圧していた力が解放されるが、第一の部分14及び第二の部分16の他方側(屋外側)は、水圧が作用してドア枠18側(下部戸当り18a側、縦戸当り18b側)に押圧されるので、第一の部分14の付勢状態が維持される。また、図5に示すように、止水部材10の幅W1(対向する側壁部22bの外面間距離)をドア枠18(開口部)の開口幅W0より僅かに大きくすることにより、扉12を開いた場合でも止水部材10をドア枠18に対して自立させやすくなり、水圧により倒れたり、止水可能な姿勢が損なわれないようにすることができる。
図9は、止水部材10の変形例を示す斜視図である。前述したように、止水部材10は、意図的に第二の隙間Bに水を導入するが、その浸入経路は下縁部12aと下部挿入部14aとの間に形成される隙間や側縁部12bと縦挿入部14bとの間に形成される隙間である。そこで、図9に示すように、第一の部分14(下部挿入部14a、縦挿入部14b)に連通溝30を形成して、より積極的に第二の部分16と扉12の一方との間の第二の隙間Bに水が導入できるようにしている。この場合、扉12の他方側(屋外側)の水頭高さの上昇速度と扉12の一方側(屋内側)の第二の隙間Bにおける水頭高さの上昇速度の差を低減することができる。その結果、扉12を開けようとしたときに、第二の隙間Bにおける水頭高さの上昇を待たなければならないという不都合の発生を低減できる。なお、図9の場合、下部挿入部14aと縦挿入部14bの両方に連通溝30が形成されている例を示しているが、連通溝30は、下部挿入部14aと縦挿入部14bのいずれか一方でもよく、同様の効果を得ることができる。なお、連通溝30は、下部挿入部14aに形成することにより冠水の初期の段階から第二の隙間Bに水の導入ができるので、扉12の他方側と一方側の水頭高さの差の発生が抑制し易い。
止水部材10の幅は、止水部材10を設置する構造物(開口部)の仕様によって決定され、止水部材10の高さは、冠水の特性に応じて決定することが望ましい。例えば、扉12の幅が広ければ、それに応じて止水部材10も幅の広いものが選択される。また、止水部材10の高さは、過去に発生した冠水の高さに応じて、それに余裕値を加えた高さのものを選択すればよい。また、扉12の一方側(屋内側)には、様々な突起物が存在する場合がある。例えば、図10、図11に示すように、一方側(屋内側)に郵便ポスト32を備える扉12がある。このような扉12に止水部材10を適用する場合、止水部材10の高さは、郵便ポスト32と干渉しない(非干渉となる)ように選択される。図10は、標準的な大きさ(高さ)の止水部材10(例えば、50cm程度までの冠水が予想される地域で利用可能な止水部材10)の設置例を示す図である。図10は、第二の隙間Bが郵便ポスト32の厚みより薄く、高さが郵便ポスト32の下端位置より低い止水部材10が設置されている例である。このように、止水部材10は必要最小限の大きさとすることで、運搬が容易にできるととともに、保管スペースの軽減に寄与できる。
図11は、冠水高さが高いことが予想される地域で適用可能な止水部材10の設置例である。このような地域で利用するする止水部材10は、第二の隙間Bが郵便ポスト32の厚みより厚く、高さが郵便ポスト32の少なくとも一部を覆うような形状にすることができる。図11の場合、止水部材10が郵便ポスト32をほぼ覆っている。このように、扉12の突起物を覆うように止水部材10を構成することにより、冠水高さが高い場合でも、止水が良好にできる。なお、いずれの場合も、扉12が閉じられた状態で、第二の隙間Bに水を導くことができるので、冠水時に扉12を容易に開けて屋外に移動することができる。また、救助等のために扉12を容易に開けて屋内に入ることができる。なお、図10、図11に示す止水部材10は、図4等で説明する止水部材10と第二の隙間Bの厚み及び高さが異なるのみで、基本的な構成は同じであり、同様の効果を得ることができる。
このように、第1実施形態によれば、取り扱いやすく設置や撤去が容易な止水部材10を提供できる。また、止水部材10と扉12との間に形成される第二の隙間Bに水を挿入するので、冠水時でも扉12の表裏に作用する水圧差が低減可能となり、扉12の開放を容易にできる。つまり、止水の前後においても取り扱いが容易な止水部材10が提供できる。
第2実施形態.
図12に第2実施形態の止水部材40の斜視図を示す。この止水部材40も第1実施形態の止水部材10と同様に、第一の部分42と第二の部分44を備える。図12は、設置時に扉12に面しない側(屋内側)の第一の部分42及び第二の部分44が見えている図である。図12に示すように、第一の部分42と第二の部分44とは、実質的に同一平面上に位置する。つまり、止水部材40の少なくとも他方側(屋外側)は、扁平な面を有する。第一の部分42は、構造物の開口部(ドア枠18)の一方と他方とを仕切る扉12が閉じられた状態で、扉12の下縁部12aまたは側縁部12bと、扉12に対して一方側に位置され他方を向いた構造物の支持面と、の間の第一の隙間Aに挿入される。すなわち、第一の部分42は、止水部材40を構造物の開口部、すなわちドア枠18に設置する場合に、支持面となる各戸当りと扉12との間に形成される第一の隙間Aに挿入される部分である(図3参照)。具体的には、第一の部分42のうちドア枠18の幅方向に沿って形成された下部挿入部42aは、扉12が閉じられることにより、下部戸当り18aと下縁部12aとによって挟持される。同様に、第一の部分42のうちドア枠18の縦方向に沿って形成された縦挿入部42bは、扉12が閉じられることにより、縦戸当り18bと側縁部12bとによって挟持される。
第二の部分44は、第一の部分42よりも扉12の周縁部から離れて位置される。つまり、扉12の周縁部である下縁部12a及び側縁部12bに挟持される第一の部分42より第二の部分44は内側に位置される。前述したように、第一の部分42と第二の部分44とは、実質的に同一平面上に位置するので、第一の部分42が、第一の隙間Aに挿入され、ドア枠18と扉12との間に挟持されている場合、第二の部分44は扉12の一方側(屋内側)の下部Cの部分で、実質的に扉12に面する(接触する)。
また、下部挿入部42a及び縦挿入部42bの一方側、すなわちドア枠18に設置した場合に屋内側に向く側には、シール部材46が固定されている。シール部材46は、第1実施形態のシール部材24と同じであり、同様の機能を有する。すなわち、シール部材46は、例えば、柔軟性(可撓性、弾性)を有する材料、例えば合成樹脂材料(ゴム、エラストマ、柔軟性樹脂等)で形成されている。例えば、独立発泡型の気泡を多く含むゴム材料で、温度変化に対する劣化が少なく、耐摩耗性のある材料で構成することが望ましい。一例として、エプトシーラー(登録商標)等を利用することができる。
また、止水部材40は、第二の部分44において、下部挿入部42aから離れた位置に止水部材40を運搬するときやドア枠18に設置する際に用いる取っ手48が例えば左右2カ所に形成されている。止水部材40は、第1実施形態の止水部材10と異なり、手指を挿入し易い広い第二の隙間Bを持たないので、屋内側に突出して取っ手48が有効である。取っ手48を用いることで、容易に止水部材40を運搬したり、ドア枠18に設置する際に位置決めすることができる。なお、取っ手48に代えて、または加えて例えば第二の部分44の上端部(上面部)に別の取っ手を設けてもよい。また、止水部材40にストラップ等を付けてもよく、同様の効果を得ることができる。
止水部材40は、例えば、扁平な金属板(例えば、鉄板やステンレス板)や樹脂(例えば、繊維強化プラスチック等)を用いて形成することができる。
このように構成される止水部材40の設置例を図13を用いて説明する。図13は、止水部材40の設置状態を示す縦断面図である。止水部材40も第1実施形態の止水部材10と同様に、扉12が開かれた状態(屋外側に外開きの状態)のときに、ドア枠18の開口部に設置される。すなわち、扉12が閉じられたときに当該扉12の下縁部12aと下部戸当り18aとの間及び側縁部12bと縦戸当り18bとの間に形成される第一の隙間Aに第一の部分42が挿入されるように設置される。具体的には、止水部材40の第一の部分42のうち下部挿入部42aが下部戸当り18aに当接するように挿入され、縦挿入部42bが縦戸当り18bに当接するように挿入される(図3参照)。
第一の隙間Aに止水部材40を挿入した後、図13に示すように、扉12を閉じる。扉12を閉じることにより、下縁部12aが下部戸当り18aに対面し、側縁部12bが縦戸当り18bに対面する。第1実施形態で示したように、下部戸当り18a、縦戸当り18b、上部戸当り18cには、パッキン28(シール部材)が配置され、扉12が閉じられたときに、パッキン28に接触する、またはパッキン28が変形するようになっている。
第1実施形態と同様に、扉12の下部Cにおける第一の隙間Aは、止水部材40の第一の部分42が挿入されるとパッキン28が更に変形して(潰れて)第一の隙間Aにおける止水部材40の第一の部分42の挿入状態を許容する。そして、第1実施形態の止水部材10と同様に、縦挿入部42bに固定されたシール部材46が縦戸当り18bに固定されたパッキン28に当接して、互いにまたは一方が弾性変形する。同様に、下部挿入部42aに固定されたシール部材46が下部戸当り18aに固定されたパッキン28に当接して、互いにまたは一方が弾性変形する。その結果、パッキン28は、止水部材40の第一の部分42が介在しない場合に比べて大きく変形する。そして、ドア枠18、第一の部分42(止水部材40)、扉12の三者の密着性(水密性)が向上される。つまり、仮に扉12の他方側(屋外側)で冠水した場合でも、シール部材46及びパッキン28により止水部材40の一方側(屋内側)がシール(止水)されるので、止水部材40の周囲から屋内側へ水が浸入することが抑制できる。
なお、図13の例では、シール部材46及びパッキン28を用いる場合を示したが、パッキン28を省略してもよい。例えば、構造物の仕様によっては、ドア枠18側のパッキン28がない場合がある。このような場合は、ドア枠18と第一の部分42との間のシールをシール部材46のみで行うようにしてもよい。この場合も、第一の隙間Aに、第一の部分42及びシール部材46が介在する(挟み込まれる)ことにより、ドア枠18、第一の部分42(止水部材40)、扉12の三者の密着性(水密性)を向上させることができる。
なお、図12に示すように、シール部材46は、第一の部分42(下部挿入部42a、縦挿入部42b)の一方側(屋内側)のみに設けられる。また、シール部材46は、第一の部分42の外縁部42cから離れた位置に固定されている。つまり、下部挿入部42aに固定されるシール部材46は、外縁部42cより第二の部分44に近い位置に固定されている。同様に、縦挿入部42bに固定されるシール部材46は、外縁部42cより第二の部分44に近い位置に固定されている。このように、シール部材46を外縁部42cから離れた位置に固定することにより、例えば止水部材40の保管時に、シール部材46が他の物体(例えば床や壁)と接触する可能性が低減できる。その結果、シール部材46の保管時の劣化が軽減できる。例えばシール部材46が保管時に壁や床に接触して長時間圧縮変形した状態が継続されて弾性力(復元力)が低下してしまうことが抑制できる。
ところで、扉12が閉じられた状態で、扉12の他方側(屋外側)が冠水した場合、扉12の屋外側に水圧が作用して扉12が容易に開けない場合があるという問題がある。例えば、屋外の冠水が初期の段階では、構造物内(屋内)に避難している場合が多い。一方、冠水が所定値を越えた場合には、より安全な避難場所に移動することが望ましい場合がある。そこで、第2実施形態の止水部材40は、扉12が閉じた状態で、かつ止水部材40がドア枠18に設置された状態で、扉12の他方側(屋外側)から水(冠水した水)を止水部材40と扉12との間に導入できるように構成されている。
前述したように、扉12は、ドア枠18に対して開閉自在とするために、一般的にドア枠18と扉12の下面部12d、側面部12e、上面部12fとの間には隙間が形成されている。例えば、第1実施形態の図5を参照すると、側面部12eとドア枠18との間には、縦隙間Dが形成されている。また、図6を参照すると、下面部12dとドア枠18との間には、下部隙間Eが形成されている。そのため、冠水した水の一部は、ドア枠18と扉12との間を通過することができる。図5、図6に示すように、扉12の下縁部12aと下部挿入部14aとが当接し、側縁部12bと縦挿入部14bとが当接するが、扉12の表面は完全な平面ではなく、凹凸が存在する場合がある。例えば、意匠性の向上のために例えば縦縞等のような凹凸の模様が付与されている場合がある。止水部材40の場合、下縁部12aと下部挿入部42aとの間や側縁部12bと縦挿入部42bとの間にはシール部材を介在させない。そのため、図13に示すように下部隙間E(及び縦隙間D)から浸入した水は、下縁部12aと下部挿入部42aとの間(及び側縁部12bと縦挿入部42bとの間)を通り、矢印Qで示すように、止水部材40の第二の部分44と扉12の一方側の面(屋内側の面)との間に意図的に浸入させられる。
この場合、下部隙間E(及び縦隙間D)を通過して浸入する水の流れは、扉12の他方側(屋外側)の水頭高さと扉12の一方側(屋内側)の第二の隙間Bにおける水頭高さとが同じになった時点で停止する。止水部材40の場合、第二の部分44の他方側(屋外側)と扉12の一方側(屋内側)とは接近しているための、両者間に形成される隙間は小さいが、屋外側の水圧により水が下部隙間E(縦隙間D)を介して押し込まれる。この場合、扉12の他方側(屋外側)の水圧P1と扉12の一方側(屋内側)と第二の部分44の他方側(屋外側)との間の隙間における水圧P2とがつり合う(打ち消し合う)。その結果、扉12は、水中に浸かっている場合と同じ状態になり、扉12に作用する力は水の抵抗のみになり容易に扉12を開くことができる。その結果、構造物の屋内側にいた利用者は、扉12を開き屋外に移動することが可能になる。なお、この場合もドア枠18と止水部材40の第一の部分42との水密状態は、シール部材46やパッキン28により維持されるので、水が屋内側に浸入してしまうことが抑制できる。また、扉12が開かれた場合、それまでドア枠18に対して第一の部分42を押圧していた力が解放されるが、第一の部分42及び第二の部分44の他方側(屋外側)は、水圧が作用してドア枠18側(下部戸当り18a側、縦戸当り18b側)に押圧されるので、第一の部分42の付勢状態が維持される。その結果、扉12を開いた場合でも止水部材40をドア枠18に対して自立させやすくなり、水圧により倒れたり、止水可能な姿勢が損なわれないようにすることができる。
図14は、止水部材40を用いた止水構造の変形例を示す横断面図である。具体的には、第二の部分44と扉12の一方側(屋内側)との間の隙間を拡大するためのスペーサ50を介在させた場合を示す例である。前述したように、止水部材40は、第一の部分42と第二の部分44が、実質的に同一平面上に位置するため、第二の部分44と扉12との隙間は僅かである。つまり、止水部材40と扉12との間に導入できる水の量が少量である。そこで、止水部材40と扉12との間にスペーサ50を介在させる。スペーサ50は、例えば、ブロック形状の樹脂(プラスチック、ゴム等)や木材等で構成することができる。スペーサ50は、例えば、止水部材40と扉12との間で、縦挿入部42bに沿った位置に連続的または間欠的に配置することができる。スペーサ50は、止水部材40側に固定してもよいし、扉12側に固定してもよい。また、止水部材40を設置するときに、単体のスペーサ50を配置するようにしてもよい。図14に示すように、止水部材40と扉12との間にスペーサ50を介在させることにより隙間Fが形成され、下部隙間E(図13参照)や縦隙間Dを通過した水をより多く、また確実に扉12と止水部材40の間に導入することができる。つまり、扉12の一方側(屋内側)に十分な水を導入し、冠水時に扉12が水の中に浸かっている状態をより確実に実現して、扉12をより容易に開けるようにすることができる。なお、スペーサ50の厚みは、数mm〜数cm程度とすることができる。
このように、第一の部分42と第二の部分44とが実質的に同一平面上に位置するようにした止水部材40は、シンプルな構成で取り扱いやすく設置や撤去が容易となる。また、止水部材40と扉12との間に水を挿入するので、冠水時でも扉12の表裏に作用する水圧差が低減可能となり、扉12の開放を容易にできる。つまり、止水の前後においても取り扱いが容易な止水部材40が提供できる。
第3実施形態.
図15は、第3実施形態の止水部材60の横断面図である。止水部材60は、第1実施形態で示した止水部材10の変形例である。止水部材10の場合、第一の部分14や第二の部分16は、水圧に耐えうる剛性を確保するために、例えば金属で構成される。その場合、重量が重くなってしまい、運搬性が低下してしまう場合がある。一方、止水部材10を樹脂で構成する場合、軽量化は容易であるが剛性の確保が難しくなる場合がある。そこで、止水部材60は、軽量化を重視して表面部分を樹脂で構成するとともに、補強を施し水圧に耐えうる構造を有する。
止水部材60は、第一の部分62と第二の部分64を備える。そして、第二の部分64は軽量化のため樹脂の薄板材で形成されている。一方、第一の部分62(下部挿入部62a、縦挿入部62b)は第二の部分64に水圧がかかったときに挟持されていない部分が撓んだりしないように、例えば金属で形成されて、例えば矩形のフレーム66にネジ等の締結部材により固定されている。第二の部分64は、フレーム66の他面側(屋外側)に固定されている。フレーム66は例えば金属で構成することができるが、止水部材60の全てを金属で形成する場合に比べて軽量化に寄与できる。また、フレーム66を合成の高い樹脂で形成してもよい。フレーム66の一方側(屋内側)には、樹脂の薄板材等で形成される化粧板68aが固定されている。なお、図15の場合、第二の部分64の外縁部をフレーム66に固定するための化粧板68bを配置しているが、第二の部分64を樹脂成形するときに化粧板68bを一体的に成形してもよい。また、フレーム66の底面部には、樹脂の薄板材等で形成される底面板68cが固定されている。なお、図示を省略しているが、フレーム66の上面部には、樹脂の薄板材等で形成される上面板が固定されている。つまり、フレーム66は樹脂の薄板材で覆われている。また、第二の部分64と化粧板68aとの間には、複数の補強部材70が配置されている。補強部材70は、例えば高さ方向(紙面鉛直方向)に延びる、例えば弾性変形し難い樹脂ブロック等で構成され、第二の部分64を一方側(屋内側)から支える。
このように構成される止水部材60は、樹脂の薄板材が多用されるので、軽量化に寄与できる。また、第二の部分64は、フレーム66や補強部材70によって一方側(屋内側)から支えられるので、薄板材の第二の部分64が水圧によって変形する(撓む)ことを抑制できる。
図16は、扉12とドア枠18との間に設置された状態の止水部材10に水圧が付与された場合(第二の隙間Bに水が導入された場合)に、第二の部分16の撓み(変形)による外れや水漏れを抑制するための止水構造を示す斜視図である。例えば、住宅の玄関の場合、扉12の内側には玄関床面72a(靴脱ぎ場)が広がり、さらに玄関床面72aから一段高くなったフロア床面72b(室内床面)があることがある。そこで、図16に示す止水構造の場合、止水部材10を(一方側)屋内側から支える支持部材74を玄関床面72aとフロア床面72bとの段差部分で固定する(突っ張る)ようにしている。支持部材74は、例えば、支持バー74a、突っ張り部74b、固定座部74c、高さ調整部74dを含む。支持バー74aは、止水部材10の幅方向に延びる棒状部材であり、止水部材10に対して支持部材74を設置する場合、第二の部分16を他方側(屋外側)に押し戻さないように配置される。つまり、止水部材10が、水圧により変形していない場合には、僅かな隙間を有して配置されるか、触れている姿勢(実質的に押圧しない姿勢)で配置される。したがって、第一の部分14が下部戸当り18a側から離れない(水密を低下させない)ようにしている。突っ張り部74bは、支持バー74aと固定座部74cとを接続して、仮に止水部材10が一方側(屋内側)に、変形して支持バー74aを屋内側に押した場合に突っ張る。固定座部74cは、玄関床面72aとフロア床面72bとの段差部分に当接して、支持部材74が屋内側に後退しないように支持する。高さ調整部74dは、突っ張り部74bの傾斜姿勢を調整して、玄関床面72aに位置する固定座部74cに対する支持バー74aの高さを決定する。なお、支持部材74は、玄関床面72aとフロア床面72bとの段差部分以外、例えば屋内側の側壁76と接触して突っ張るようにしてもよい。この場合、例えば支持バー74aに対する突っ張り部74bの角度を調整可能として側壁76に向かって延びるようにしてもよく、同様の効果を得ることができる。
このように、止水部材10に対して支持部材74を用いることにより、止水部材10の変形や設置ズレ、それらに伴う水漏れを抑制することができる。なお、支持部材74は、止水部材10の非変形時には、止水部材10を押圧しないので、設置および取り外しが容易である。また、支持部材74は組み立て式としてもよく、収納時には分解して収納スペースを低減することができる。また、支持部材74は、止水部材40にも適用可能であり同様な効果を得ることができる。
図17は、止水部材10の補強を行う場合の一例を示す斜視図である。図17の場合、止水部材10の第二の部分16に補強部78を形成して止水部材10自体の剛性を増加させている。図17の場合、補強部78は、例えば、第二の部分16の成形時にプレス加工等により、第二の部分16の一部を一方側(屋内側)に突出させ、第二の部分16の幅方向に延びる凸部が形成されている。このような補強部78を形成することで、止水部材10(第二の部分16)が水圧により一方側(屋内側)に撓み(曲がり)、第一の部分14がドア枠18と扉12とによる挟持部分から抜けてしまうことが抑制できる。補強部78は、第2実施形態の止水部材40にも適用可能であり、同様の効果を得ることができる。補強部78は、図17に示すような屋内側に突出した凸部の他、例えば、第二の隙間B側に突出した形状(屋内側から見ると凹部)にしてもよいし、波型形状にしてもよく、同様の効果を得ることができる。第2実施形態の止水部材40に屋内側から見て凹部の補強部78や波形の補強部78を適用することにより、スペーサ50を介在させた場合と同じ状態となり、水を導入するための隙間Fを形成することができる。また、補強部78は、棒状の別部材(リブ)を溶接や接着等により固定してもよく、同様の効果を得ることができる。
ところで、上述した第1実施形態の止水部材10の場合、図7に示すように、底壁部22aを備えている。この場合、下部挿入部14aが下部戸当り18aと下縁部12aとの間に挟持されるので、止水性能が高い。一方、簡略化した別の実施例によれば、底壁部22aおよび下部挿入部14aを省略することができる。つまり、簡略化された止水部材10の場合、縦挿入部14b、側壁部22b、第二の部分16、側壁部22b、縦挿入部14bが連続する形状としてもよい。この場合、止水部材10を金属板で成形する場合、折り曲げ加工のみで成形可能となり、製造工数の削減および製造コストの低減に寄与することができる。なお、この場合、止水部材10の底辺部のシールが低下する場合がある。この場合、底面部に沿って例えば、シール部材24と同等のシール部材を設ける。このような簡易型の止水部材10を設置する場合、止水部材10は、縦戸当り18bと側縁部12bとの間に挟持される縦挿入部14bのみで支持される。そして、第二の隙間Bのシールは、縦挿入部14bと底辺部に固定されたシール部材とで行う。したがって、簡易型の止水部材10を設置する場合は、止水部材10を下方に押し下げて底辺部のシール部材を圧縮変形させた上で、扉12を閉めて底辺部の水密性を維持するようにする。逆に下部挿入部14aのみで止水部材10を挟持して縦挿入部14bを省略するようにしてもよい。この場合、側壁部22bの端部が縦戸当り18bの端部に当接することになる。したがって、側壁部22bにシール部材を固定しておくことにより、第二の隙間Bに対するシールを行い、第1実施形態の止水部材10と同様に機能させることができる。
なお、図10、図11においては、扉12の突起物の一例として、郵便ポスト32を示したが、突起物は、これに限定されず、例えば、ドアノブや扉12の下部に取り付けられたドアストッパ等でもよく、止水部材10は、これらの突起物と非干渉であればよく、同様の効果を得ることができる。また、図10は、止水部材10の高さを突起物である郵便ポスト32に干渉しないようにする場合を示し、図11は、止水部材10は、郵便ポスト32を覆う場合を説明したが、これに限らず、止水部材10と突起物とが非干渉となればよい。例えば、図10、図11では、第二の部分16が扁平である場合を示したが、突起物の位置及び大きさに対応して、第二の部分16の一部に突起物を受け入れるような形状にしてもよい。例えば、第二の部分16の一部に凹部(屋内側に凹んだ部分)を設けたり、第二の部分16の上部の一部を下方に向けて切り欠いた部分(下方に凹んだ部分)を設けて干渉しないようにしてもよい。
上述した本発明の実施形態、変形例に係る止水部材は、上述した実施形態、変形例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。本実施形態に係る止水部材は、以上で説明した各実施形態の構成要素を適宜組み合わせることで構成してもよい。